北 海 道 旅 客 鉄 道 株 式 会 社 函 館 線 列 車 脱 線 事 故 ( 平 成 24 年 2 月 29 日 発 生 ) 鉄 道 事 故 調 査 報 告 書 説 明 資 料 運 輸 安 全 委 員 会 平 成 26 年 7 月
1. 事 故 の 概 要 1. 事 業 者 名 : 北 海 道 旅 客 鉄 道 株 式 会 社 2. 事 故 種 類 : 列 車 脱 線 事 故 3. 発 生 日 時 : 平 成 24 年 2 月 29 日 ( 水 )22 時 00 分 ごろ( 天 候 : 晴 れ) 4. 発 生 場 所 : 函 館 線 八 雲 駅 構 内 ( 北 海 道 二 海 郡 八 雲 町 ) 5. 関 係 車 両 : 普 気 第 890D 列 車 (1 両 編 成 ) 6. 死 傷 者 :なし( 乗 客 2 名 乗 務 員 1 名 ) 事 故 概 要 : 長 万 部 駅 発 森 駅 行 き1 両 編 成 の 上 り 普 気 第 890D 列 車 は 八 雲 駅 で 遅 れていた 特 急 列 車 の 通 過 を 待 ち その 後 定 刻 (21 時 56 分 )より 約 2 分 30 秒 遅 れて 同 駅 4 番 線 を 出 発 した 出 発 後 運 転 士 は 分 岐 器 付 近 で 横 揺 れを 感 じたため 非 常 ブレーキを 使 用 して 列 車 を 停 車 させた その 後 確 認 したところ 列 車 は4 番 線 から 上 り 本 線 への 進 路 上 にある10 号 ロ 分 岐 器 通 過 後 前 台 車 の 全 2 軸 が 分 岐 線 側 線 路 の 進 行 方 向 右 側 へ 脱 線 していた 1
2. 事 実 情 報 本 事 故 発 生 場 所 函 館 線 函 館 ~ 旭 川 間 (423.1km) ( 単 複 蒸 気 内 燃 電 気 ) 旭 川 駅 方 北 豊 津 函 館 線 長 万 部 (おしゃまんべ) 室 蘭 線 黒 岩 山 崎 函 館 線 鷲 ノ 巣 八 雲 内 浦 湾 東 室 蘭 駅 方 事 故 現 場 函 館 駅 方 凡 例 単 線 複 線 2
事 故 現 場 付 近 の 地 形 図 長 万 部 N 駅 方 八 雲 駅 事 故 現 場 函 館 駅 方 3
脱 線 現 場 略 図 長 万 部 駅 方 駅 函 館 駅 方 町 1 番 線 駅 10イ 上 り 線 2 番 線 列 車 先 頭 (80k821m) 下 り 線 3 番 線 11 10ロ 4 番 線 観 測 21 列 車 停 止 位 置 目 標 (81k355m) 分 岐 器 前 端 80k874m 分 岐 器 後 端 80k844m 脱 線 痕 始 点 (80k857m) 21 11 10ロ 10イ 駅 観 測 町 駅 本 件 列 車 の 進 行 方 向 列 車 停 止 位 置 分 岐 器 建 物 ホーム 大 凡 の 積 雪 観 測 地 点 を 表 す 脱 線 痕 始 点 町 が 設 けた 跨 線 橋 駅 の 跨 線 橋 4
脱 線 現 場 略 図 長 万 部 駅 方 80k874m 80k869m 80k864m 80k859m 80k854m 80k849m 函 館 駅 方 80k844m 車 輪 のものと 見 られる 痕 跡 が 左 レー ル 頭 部 軌 間 内 側 の 側 面 にあった 分 岐 器 前 端 分 岐 器 後 端 80k857m 車 輪 によると 見 られる 痕 跡 が 右 リードレールの 頭 頂 面 に 左 から 右 へ 横 断 するようにあった リードレール 本 件 列 車 脱 線 箇 所 付 近 の 雪 面 の 状 況 720mm 2150mm 分 岐 線 側 長 万 部 駅 方 列 車 先 頭 (80k821m) 函 館 駅 方 分 岐 器 後 端 図 は 正 確 な 縮 尺 ではありません 5
脱 線 現 場 の 状 況 (1/2) 分 岐 線 側 前 台 車 の 状 況 直 線 側 6
脱 線 現 場 の 状 況 (2/2) 10 号 イ 分 岐 器 付 近 から 撮 影 上 り 線 分 岐 線 側 の 積 雪 状 況 7
雪 の 断 面 形 状 本 件 列 車 が 通 過 した 後 の10 号 ロ 分 岐 器 付 近 の 雪 の 断 面 形 状 本 件 列 車 ( 後 部 ) 本 件 列 車 進 行 方 向 8
事 実 情 報 当 日 の 運 転 状 況 除 雪 に 関 する 規 程 等 気 温 等 に 関 する 情 報 10 号 ロ 分 岐 器 から10 号 イ 分 岐 器 の 渡 り 線 を 走 行 する 列 車 は 1 日 1 本 で 本 件 列 車 と 同 じダイヤ で 運 転 される 列 車 のみであった なお 本 事 故 前 日 はダイヤが 乱 れ この 渡 り 線 は 使 われてお らず 本 事 故 前 に 使 用 したのは 二 日 前 に 本 件 列 車 と 同 じダイヤ で 運 転 された 列 車 であった 停 車 場 内 の 除 雪 の 範 囲 につい ては 災 害 時 運 転 規 制 等 マニュ アル に 除 雪 の 目 的 や 注 意 点 に ついては 予 防 除 雪 マニュアル( 八 雲 駅 ) に 規 定 提 出 された 予 防 除 雪 マニュア ル( 八 雲 駅 ) には フランジウェ イ 部 及 び 車 両 接 触 限 界 に 基 づく 除 雪 に 関 する 記 述 は 含 まれていな かった 気 象 の 観 測 施 設 の 記 録 等 から 本 事 故 発 生 前 々 日 から 本 事 故 発 生 当 日 の 気 温 等 に 関 する 状 況 は 次 の とおり (1) 本 事 故 発 生 の 前 日 前 々 日 は 気 温 が 終 日 マイナスとなってい るが 本 事 故 発 生 当 日 は 日 中 時 間 帯 にプラスとなった 後 夕 方 以 降 に 再 びマイナスとなっ ていた (2) 本 事 故 当 日 の 日 照 時 間 は7.6 時 間 であった 5 気 象 庁 のアメダス 観 測 所 ( 八 雲 )の1 時 間 ごとの 値 ( 平 成 24 年 2 月 1 日 ~3 月 1 日 ) 4.9 3.5 気 温 0 ( 日 付 ) ( ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 1-3 -5-10 日 照 時 間 (h) 1 0 積 雪 150 9
3. 分 析 本 件 車 両 の 前 台 車 の 脱 線 は 脱 線 の 原 因 に 関 する 分 析 (1) 関 係 ポイントが 正 常 に 転 換 していたことが 記 録 されていること (2) 本 件 列 車 の 車 両 の 定 期 検 査 の 記 録 に 異 常 は 認 められないこと (3) 本 件 運 転 士 は 本 件 列 車 が10 号 ロ 分 岐 器 の 方 に 走 行 していく 際 線 路 上 の 雪 の 見 た 目 はふだんと 変 わらない 感 じである 旨 を 口 述 していること (4) 脱 線 後 においてもリードレール 部 の 積 雪 がレール 頭 頂 面 と 同 じ 程 度 の 高 さになっ ている 状 況 であり また 積 雪 が 人 の 体 重 を 支 えられる 程 度 に 堅 くなっている 状 況 であること から リードレール 部 におけるフランジウェー 部 分 でレール 頭 頂 面 付 近 まで 形 成 された 堅 く 凍 った 氷 雪 に 乗 り 上 げたことにより 発 生 した 可 能 性 があると 考 えられる 10
脱 線 した 背 景 要 因 に 関 する 分 析 除 雪 方 法 の 教 育 に 関 する 分 析 分 岐 器 周 辺 の 除 雪 に 関 しての 教 育 については 駅 長 及 び 八 雲 駅 の 冬 期 契 約 社 員 に 対 して 実 施 しかしな がら 八 雲 駅 における 冬 期 契 約 社 員 が 除 雪 の 際 に 理 解 しておくべき 事 項 が 記 載 されている 予 防 除 雪 マ ニュアル( 八 雲 駅 ) に フランジウェイ 部 および 車 両 接 触 限 界 に 基 づく 除 氷 雪 に 関 する 記 述 無 し 現 場 等 において 管 理 者 等 が 冬 期 契 約 社 員 に 対 し 口 頭 等 でフランジウェー 圧 雪 に 関 する 注 意 を 数 回 程 度 行 っていたとしても 冬 期 契 約 社 員 は その 重 要 性 を 十 分 認 識 していなかった 可 能 性 があると 考 えられる フランジウェー 部 の 除 雪 状 況 に 関 する 分 析 事 故 発 生 日 の 前 日 の 夜 間 に 各 駅 に 対 し 今 後 の 気 象 状 況 からフランジウェー 部 分 の 凍 結 による 列 車 等 の 脱 線 等 が 懸 念 されるとして 分 岐 器 部 等 のフランジウェー 部 分 等 の 圧 雪 凍 結 状 態 の 把 握 と 除 氷 雪 作 業 の 実 施 を 通 知 八 雲 駅 では 翌 朝 ( 本 事 故 当 日 ) 出 勤 してきた 冬 期 契 約 社 員 には 周 知 されていない 状 況 本 事 故 発 生 当 日 のポイント 部 は 除 雪 されているにもかかわらず ポイント 部 以 外 の 箇 所 の 除 雪 はほとんど されていなかったことから 冬 期 契 約 社 員 は 10 号 ロ 分 岐 器 については 主 にポイント 不 転 換 防 止 のための 除 雪 をしていた 可 能 性 が 考 えられる 除 雪 状 況 の 管 理 に 関 する 分 析 管 理 者 の 口 述 によれば 部 分 的 ではあるが 駅 舎 からホームに 移 動 する 際 等 に 構 内 の 側 雪 等 の 積 雪 状 況 を 見 ていた 脱 線 後 においても リードレール 部 の 積 雪 がレール 頭 頂 面 と 同 じ 程 度 の 高 さになっている 状 況 であったこと から 除 雪 状 況 の 把 握 が 十 分 に 行 われていなかった 可 能 性 があると 考 えられる 11
4. 原 因 本 事 故 は 列 車 が 分 岐 器 を 分 岐 線 側 に 走 行 する 際 リードレール 部 においてフ ランジウェー 部 分 のレール 頭 頂 面 付 近 までに 形 成 された 堅 く 凍 った 氷 雪 があった ため 前 台 車 の 車 輪 が 右 リードレールに 乗 り 上 げて 脱 線 したものと 考 えられる フランジウェー 部 分 に 堅 く 凍 った 氷 雪 があったことについては 除 雪 が 十 分 に 行 われていなかったことによるものと 考 えられる 除 雪 が 十 分 に 行 われていなかったことについては * 八 雲 駅 の 教 育 資 料 には 分 岐 器 のフランジウェー 部 分 の 除 氷 雪 に 関 する 記 述 が 欠 落 していたことから 冬 期 契 約 社 員 がフランジウェー 部 分 の 除 氷 雪 の 重 要 性 を 十 分 には 認 識 していなかった 可 能 性 が 考 えられること * 同 社 として 除 雪 に 関 する 報 告 及 び 冬 期 契 約 社 員 の 除 雪 状 況 の 把 握 方 法 を 定 めていなかったこと から 駅 での 除 雪 状 況 の 把 握 が 十 分 ではなかったことが 要 因 となった 可 能 性 が あると 考 えられる 12
5. 再 発 防 止 策 * 冬 期 契 約 社 員 を 管 理 する 者 に 対 して フランジウェー 部 分 の 除 雪 の 必 要 性 に 関 する 教 育 を 十 分 に 行 い その 重 要 性 を 認 識 させるとともに 除 雪 の 実 施 状 況 等 について 適 切 に 管 理 することが 必 要 * 人 力 で 除 雪 作 業 をする 者 に 対 しても 除 雪 に 関 する 教 育 を 十 分 に 行 う ことが 必 要 * 緊 急 を 要 する 連 絡 事 項 について 同 社 員 へ 早 急 に 周 知 することが 重 要 13