研究成果報告



Similar documents
(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

KINGSOFT Office 2016 動 作 環 境 対 応 日 本 語 版 版 共 通 利 用 上 記 動 作 以 上 以 上 空 容 量 以 上 他 接 続 環 境 推 奨 必 要 2

試 験 概 略 試 験 目 的 同 同 一 一 規 規 格 格 の の 電 電 熱 熱 線 線 式 式 ヒーティングユニットを2 台 台 並 並 べ べ 片 片 方 方 のユニットに 遠 遠 赤 赤 外 外 線 線 放 放 射 射 材 材 料 料 である アルミ 合 金 エキスパンションメタルを 組

公表表紙

4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

m07 北見工業大学 様式①

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

<4D F736F F D208DE3905F8D8291AC8B5A8CA48A948EAE89EF8ED0208BC696B18BA492CA8E64976C8F BD90AC E378C8E89FC92F994C5816A>

0605調査用紙(公民)

1 書 誌 作 成 機 能 (NACSIS-CAT)の 軽 量 化 合 理 化 電 子 情 報 資 源 への 適 切 な 対 応 のための 資 源 ( 人 的 資 源,システム 資 源, 経 費 を 含 む) の 確 保 のために, 書 誌 作 成 と 書 誌 管 理 作 業 の 軽 量 化 を 図

スライド 1

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

<4D F736F F D AC90D1955D92E CC82CC895E DD8C D2816A2E646F63>

<4D F736F F D2095CA8E A90DA91B18C9F93A289F1939A8F D8288B3816A5F E646F63>

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

製 品 設 計 のための3 次 元 検 証 技 術 (ソリッド 編 ) ~ 製 品 設 計 の 考 え 方 に 基 づいた3 次 元 CADの 使 い 方 をマスターしよう!~ 受 講 料 11,500 円 /28,29.30 ( 金 土 日 ) 筆 記 製 品 設 計 業 務 において

一般競争入札について

<6E32355F8D918DDB8BA697CD8BE28D C8EAE312E786C73>

目 標 を 達 成 するための 指 標 第 4 章 計 画 における 環 境 施 策 世 界 遺 産 への 登 録 早 期 登 録 の 実 現 史 跡 の 公 有 地 化 平 成 27 年 度 (2015 年 度 )までに 235,022.30m 2 施 策 の 体 系 1 歴 史 的 遺 産 とこ

する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

(1) 社 会 保 険 等 未 加 入 建 設 業 者 の 確 認 方 法 等 受 注 者 から 提 出 される 施 工 体 制 台 帳 及 び 添 付 書 類 により 確 認 を 行 います (2) 違 反 した 受 注 者 へのペナルティー 違 反 した 受 注 者 に 対 しては 下 記 のペ

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

表紙

目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

Microsoft Word - 目次.doc

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

独立行政法人国立病院機構呉医療センター医療機器安全管理規程

目 次 整 備 方 針 の 策 定 目 的 P1 公 民 館 の 現 状 P2~P4 1 公 民 館 の 施 設 概 要 P2~P3 2 施 設 の 老 朽 化 について P3 3 公 民 館 の 耐 震 化 について P3 4 施 設 の 利 便 性 について P3~P4 公 民 館 整 備 の

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

中根・金田台地区 平成23年度補償説明業務

川崎市木造住宅耐震診断助成金交付要綱

1 リーダーシップと 意 思 決 定 1-1 事 業 所 が 目 指 していることの 実 現 に 向 けて 一 丸 となっている 評 価 項 目 事 業 所 が 目 指 していること( 理 念 基 本 方 針 )を 明 確 化 周 知 している 1. 事 業 所 が 目 指 していること

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

< DB8CAF97BF97A6955C2E786C73>

<4D F736F F D208C6F D F815B90A BC914F82CC91CE899E8FF38BB582C982C282A282C42E646F63>

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

Microsoft Word - 建築基準法第42条第2項道路後退整備のあらまし

(Microsoft Word - \220\340\226\276\217\221.doc)

JTCCM製品認証審査要綱

「節電に対する生活者の行動・意識

<947A957A8E9197BF C E786C73>

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

文化政策情報システムの運用等

Taro-データ公安委員会相互協力事

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

<8C9A90DD94AD90B696D88DDE939982CC8DC48E918CB989BB82C98AD682B782E98E9696B18EE688B CC FC90B3816A2E786477>

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

Microsoft Word - 表紙(正)

接 支 払 制 度 を 活 用 するか 意 思 を 確 認 する 確 認 に 当 たっては 次 の 各 号 に 掲 げる 事 項 について 書 面 により 世 帯 主 の 合 意 を 得 て 代 理 契 約 を 締 結 するものとする (1) 医 療 機 関 等 が 本 市 に 対 し 世 帯 主

学校安全の推進に関する計画の取組事例

職務発明等の申請に関する手続要領について(通達)

●幼児教育振興法案

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

Microsoft Word - 特記仕様書


Microsoft Word - 論文最終.doc

本 校 の 沿 革 昭 和 21 年 昭 和 49 年 昭 和 54 年 昭 和 60 年 平 成 9 年 平 成 11 年 平 成 18 年 北 海 道 庁 立 農 業 講 習 所 として 発 足 北 海 道 立 農 業 大 学 校 に 改 組 修 業 年 限 を1 年 制 から2 年 制 に 改

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

第 8 条 本 協 議 会 における 研 修 は 以 下 のとおりとする (1) 座 学 研 修 農 業 講 座 や 先 進 農 家 視 察 など 農 業 経 営 基 礎 講 座 やその 他 担 い 手 のための 研 修 会 等 への 参 加 など 年 24 回 程 度 とする (2) 実 務 研

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 26 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 副 理 事 長 A 理 事 16,638 10,332 4,446 1,

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

<4D F736F F D D31208EC096B18F438F4B8E7793B1834B FC92F BD896694C5816A2E646F6378>

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

平成24年度 業務概況書

<819A955D89BF92B28F BC690ED97AA8EBA81418FA48BC682CC8A8890AB89BB816A32322E786C7378>

主要生活道路について

Taro-条文.jtd


スライド 1

< F2D8AC493C CC81698EF3928D8ED2816A2E6A7464>

スライド 1

SXF 仕 様 実 装 規 約 版 ( 幾 何 検 定 編 ) 新 旧 対 照 表 2013/3/26 文 言 変 更 p.12(1. 基 本 事 項 ) (5)SXF 入 出 力 バージョン Ver.2 形 式 と Ver.3.0 形 式 および Ver.3.1 形 式 の 入 出 力 機 能 を

●電力自由化推進法案

事 業 者 所 在 地 事 業 者 名 役 職 電 話 番 号 メールアドレス( 当 局 が 提 供 したデ ータから 変 更 等 があれば 入 力 を 行 うこと) アンケート 設 問 数 : 全 27 問 程 度 当 該 データをとりまとめる 際 は 必 ず2 名 以 上 によるデータのチェック

Microsoft Word 役員選挙規程.doc

第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

PowerPoint プレゼンテーション

< F2D8ED089EF95DB8CAF939996A289C193FC91CE8DF42E6A7464>

第4回税制調査会 総4-1

Microsoft PowerPoint - 資料2-別冊

現 地 調 査 では 火 口 周 辺 の 地 形 や 噴 気 等 の 状 況 に 変 化 は 見 られませんでした また 赤 外 熱 映 像 装 置 5) による 観 測 では 2015 年 3 月 頃 から5 月 29 日 の 噴 火 前 に 温 度 上 昇 が 認 められていた 新 岳 火 口

平成19年9月改定

4 調 査 の 対 話 内 容 (1) 調 査 対 象 財 産 の 土 地 建 物 等 を 活 用 して 展 開 できる 事 業 のアイディアをお 聞 かせく ださい 事 業 アイディアには, 次 の 可 能 性 も 含 めて 提 案 をお 願 いします ア 地 域 の 活 性 化 と 様 々な 世

47 高 校 講 座 モ オ モ 圏 比 較 危 述 覚 普 第 章 : 活

Microsoft Word - 設計委託特記仕様書 doc

<4D F736F F D2088B089AE95F18D908F C8E DA8E9F >

福 岡 厚 生 年 金 事 案 4486 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 申 立 期 間 については その 主 張 する 標 準 報 酬 月 額 に 基 づく 厚 生 年 金 保 険 料 を 事 業 主 により 給 与 から 控 除 されていたことが 認 められることから 申 立 期

総合評価点算定基準(簡易型建築・電気・管工事)

Transcription:

平 成 21 22 年 度 助 成 研 究 ゴールドサンドウィッチガラス 碗 における 截 金 技 法 研 究 ~ 大 英 博 物 館 蔵 金 箔 入 りガラス 碗 を 中 心 として~ 並 木 秀 俊 Ⅰ- 研 究 目 的 東 京 藝 術 大 学 図 1 本 研 究 では ヨーロッパにおいて 紀 元 前 に 製 造 された とされる 大 英 博 物 館 所 蔵 金 箔 入 りガラス 碗 ( 図 1) の 截 金 技 法 の 明 確 な 解 明 を 行 うことを 研 究 目 的 とする 本 作 品 は 西 欧 各 地 で 出 土 し 二 層 の 透 明 なガラス 碗 の 間 に 金 箔 装 飾 が 施 された ゴールドサンドウィッチガラ ス 碗 と 総 称 される 作 品 の 一 つであり 近 年 日 本 での 展 示 を 機 に 截 金 分 野 で 注 目 され 始 めている 大 英 博 物 館 所 蔵 金 箔 入 りガラス 碗 截 金 とは 箔 を 様 々な 形 に 切 り 貼 りして 文 様 を 施 す 日 本 独 自 の 伝 統 技 法 と 考 えられてきたが ゴ ールドサンドウィッチガラス 碗 の 金 箔 装 飾 が 截 金 であるなら その 認 識 が 覆 されることとなるか らである 本 作 品 の 制 作 年 代 は 紀 元 前 3 2 世 紀 のものと 推 定 され 日 本 の 截 金 の 歴 史 が 6 世 紀 頃 に 始 まった 事 を 考 慮 すると 遥 か 昔 に 海 を 隔 てた 遠 い 地 で 截 金 技 法 が 存 在 したというのは 驚 く べき 事 である また 数 々の 截 金 に 関 する 新 発 見 が 近 年 アジア 圏 で 相 次 いでおり その 由 来 は 未 だ 不 明 である これまで 本 作 品 に 関 して 海 外 で 行 われた 研 究 も ガラス 分 野 以 外 の 金 装 飾 の 視 点 からは 行 われておらず 具 体 的 な 資 料 や 研 究 書 が 存 在 しない ゴールドサンドウィッチガラス 碗 が 海 外 に 所 蔵 され 截 金 が 技 術 的 に 困 難 であるなどの 問 題 から 国 内 でも 詳 細 な 技 法 の 解 明 や 再 現 制 作 も 行 われていない 本 研 究 では 他 のゴールドサンドウィッチガラス 碗 の 全 容 を 調 べるとともに 截 金 技 術 者 であ る 筆 者 の 視 点 から 日 本 の 截 金 と 研 究 比 較 し 再 現 模 造 制 作 を 行 うこととする 本 作 品 の 金 箔 装 飾 が 截 金 技 法 であり 明 確 な 技 法 の 提 示 ができれば 日 本 独 自 の 技 法 として 認 識 されてきた 截 金 の 由 来 に 新 たな 解 釈 を 加 えられ 未 だ 不 明 の 生 産 地 や 截 金 の 発 祥 についても 一 つの 手 掛 かり 提 示 を 行 うことも 可 能 である 截 金 技 法 が 唯 一 存 在 する 日 本 だからこそ 当 時 の 技 術 の 高 さと 洗 練 さ れた 感 性 を 再 び 現 代 に 蘇 らせ 諸 外 国 でかつては 存 在 していた 截 金 という 技 法 を 再 発 信 すること で 世 界 的 にも 有 意 義 な 研 究 になると 考 えられる Ⅱ- 事 前 研 究 <1> 海 外 の 研 究 書 の 収 集 と 分 析 数 多 くのゴールドサンドウィッチガラス 碗 の 全 容 を 把 握 するため 研 究 書 を 海 外 より 図 1 取 り 寄 せ それぞれのゴールドサンドウィッチガラス 碗 についてまとめたところ 本 研 究 作 品 だけ でなく 他 多 数 のゴールドサンドウィッチガラス 碗 においても 截 金 と 考 えられる 技 法 が 用 い られていることが 確 認 できた 国 内 で 本 作 品 だけが 截 金 作 品 として 知 られている 現 状 で この 技 1

法 が 広 範 囲 で 製 造 されていたことがわかったのは 今 後 截 金 の 由 来 に 関 する 有 力 な 情 報 となり 得 る また それぞれに 描 かれた 文 様 は 共 通 性 があった また ガラス 碗 の 製 造 方 法 に 関 しては 鋳 造 法 であるという 文 献 が 見 つかり 数 あるガラス 技 法 の 中 で 方 法 を 特 定 できた <2>ゴールドサンドウィッチガラス 碗 メダイオンの 熟 覧 調 査 本 研 究 では 本 作 品 金 彩 碗 ( 中 近 東 文 化 センター 蔵 ) 金 箔 ガラス 製 メダイオン( 図 新 1 婚 の 夫 婦 とヘラクレス) ( 大 英 博 物 館 蔵 )では 高 精 彩 デジタルカメラやデジタルマイクロスコープ により 記 録 サンプルによる 調 査 を 行 った また Piatto con scena di caccia (レッジョ カラブリア 国 立 博 物 館 蔵 )では 高 精 彩 デジタルカメラによる 記 録 を 行 った その 後 調 査 結 果 に 基 づき 詳 細 な 展 開 図 を 作 成 するなど 再 現 模 造 および 研 究 を 行 うための 資 料 を 作 成 した 本 作 品 金 彩 碗 金 箔 ガラス 製 メダイオン の 調 査 サンプル 照 合 を 行 った 作 品 はすべて 一 号 箔 と 同 等 の 高 純 度 の 金 箔 が 使 用 されており その 薄 さから 箔 の 製 造 技 術 が 非 常 に 発 達 していたと 考 えられる また 接 着 しにくい ガラスへの 箔 装 飾 を 行 うために 粘 膜 性 の 強 い 接 着 材 を 用 い るなどの 工 夫 が 行 われたものと 推 測 された 文 様 は 細 い 三 角 形 や 菱 形 の 文 様 を 貼 りあわせて 表 現 され 日 本 の 截 金 との 共 通 性 が 感 じられた また 2 層 のガラスは 完 全 に 融 着 していないことも 確 認 できた なお 金 箔 ガラス 製 メダイオン に 関 しては 截 金 では 不 可 能 な 文 様 が 確 認 でき 再 現 模 造 制 作 の 必 要 性 を 感 じた 図 2 <3> 截 金 技 法 検 証 実 際 にガラスに 截 金 を 施 し 日 本 の 截 金 技 法 における 素 材 や 道 具 と 比 較 しながらサンプルを 作 成 し 検 証 を 行 った ( 図 2) 本 作 品 と 箔 装 飾 技 法 が 異 なると 推 察 した 金 箔 ガラス 製 メダイオン の 再 現 模 造 制 作 も 行 い 本 作 品 との 比 較 を 行 った 日 本 の 截 金 との 比 較 平 安 時 代 から 鎌 倉 時 代 に 多 く 見 られる 截 金 は 長 い 直 線 を 構 成 させ 連 続 文 様 が 多 く 一 度 に 数 百 本 の 細 い 線 状 の 箔 を 切 る 事 が 可 能 な 竹 刀 ならではと 考 えられる 一 方 ゴールドサンドウィッチ グラス 碗 に 施 された 截 金 は 直 線 であったとしても 短 く 大 量 には 切 れないナイフの 様 なものが 用 いられていた 可 能 性 が 高 い 線 の 表 現 だけでなく 右 図 のように 日 本 では 見 られない 多 角 形 の 截 箔 が 見 受 けられ 截 箔 を 駆 使 して 表 現 され 截 金 よりも 寧 ろ 截 箔 の 技 術 に 特 化 しているもの が 多 い 事 がわかった ( 図 3) 図 1 図 3 2

また 日 本 の 阿 弥 陀 如 来 立 像 ( 光 台 院 所 蔵 )の 条 の 中 の 小 鳥 や 阿 弥 陀 如 来 三 尊 像 ( 茨 城 県 万 福 寺 蔵 )の 脇 侍 の 野 菜 の 様 な 截 金 で 線 描 を 描 いた 絵 画 的 な 要 素 が 確 認 できる 本 作 品 では 躍 動 感 あ るアカンサスの 葉 や Piatto con scena di caccia (レッジョ カラブリア 国 立 博 物 館 蔵 )に 見 られる 豹 を 狩 る 姿 を 見 事 に 表 現 して いる 截 金 ( 図 4)は まさに 日 本 の 截 金 との 共 通 性 である 絵 画 的 描 写 であるといえる 図 4 Piatto con scena di caccia ( 中 央 部 ) 描 き 起 こし 金 箔 ガラス 製 メダリオンにおける 金 装 飾 の 再 現 制 作 熟 覧 調 査 において 筆 者 の 経 験 からメダリオンの 装 飾 は 截 金 とは 異 なる 性 質 であると 感 じたため その 技 法 的 な 差 異 を 明 確 にすべく 再 現 制 作 を 行 った この 作 品 の 絵 柄 において 人 物 を 描 写 する 細 い 線 が 箔 のない 余 白 部 分 で 表 現 され また 截 金 独 特 の 鋭 角 な 表 情 が 見 受 けられ なかったことから 截 金 技 法 は 適 さないと 考 え 針 の 様 なもの で 文 様 や 図 柄 を 削 り 出 す 方 法 を 考 えた 結 果 図 柄 を 削 り 出 す ことで 原 本 に 非 常 に 近 い 装 飾 を 施 すことができた このことか 図 5 エッチングによる 削 りだし ら 金 箔 ガラス 製 メダリオン に 用 いられている 装 飾 技 法 は 截 金 によるものではなく 図 柄 を 削 り 出 して 表 現 するエッチング 技 法 であることが 判 った Ⅲ- 再 現 模 造 制 作 調 査 結 果 を 基 に 本 研 究 の 対 象 作 品 である 大 英 博 物 館 蔵 金 箔 入 りガラス 碗 の 再 現 模 造 制 作 を 行 った サンドウィッチガラス 碗 の 再 現 土 台 であるガラス 碗 の 制 作 は ガラス 研 究 の 第 一 人 者 でもある 倉 敷 科 学 芸 術 大 学 の 迫 田 岳 臣 先 生 の 協 力 を 得 て 実 寸 で 再 現 した ガラス 製 造 法 に は 様 々な 方 法 が 存 在 するが 研 究 書 の 記 述 と 吹 き ガラス 法 の 発 祥 が 1 世 紀 以 降 であるという 背 景 から 鋳 造 法 によって 製 造 することとした 調 査 で 得 た 資 料 を 基 に3D データを 作 成 し 内 側 と 外 側 の 器 がぴったりに 重 なる 原 型 を 作 り 出 した 熟 覧 調 査 で 2 層 は 溶 着 していなかったためそのように 仕 上 げた 砕 いたガラスを 型 に 入 れ 加 熱 と 水 砕 を 行 った 後 ガラス 片 をふるいにかけて 大 きさを 選 別 する 雌 型 の 内 側 に 糊 を 混 ぜたガラスを 貼 り 付 けてから 片 側 も 合 わせ 電 気 炉 に 入 れ 加 熱 湿 気 抜 き 昇 温 融 解 徐 冷 図 6 3

の 順 にプレス 法 を 行 う プレスの 際 に 多 く 気 泡 が 入 るように 意 図 的 に 選 別 したガラスの 粒 子 を 揃 えたことで 熟 覧 調 査 で 確 認 した 多 数 の 気 泡 を 再 現 できた ( 図 6) 雌 型 からガラスを 取 り 出 し 轆 轤 を 使 用 しながら 研 磨 し 完 成 させる 2 層 が 一 致 するには 別 々に 研 磨 する 方 法 は 適 さないため 当 時 の 人 は2 層 の 間 に 砂 を 入 れて 回 すことで 表 面 の 凹 凸 を 均 す 方 法 を 用 いていた 事 と 考 えられる 截 金 の 再 現 ガラス 碗 の 作 成 に 使 用 した 石 膏 の 型 に 下 書 き 線 を 描 き ガラ 図 7 ス 碗 を 被 せて 下 書 き 線 を 辿 りながら 截 金 を 施 す 手 がかりとし た 調 査 の 結 果 から 金 箔 は1 号 箔 を 使 用 した サンプル 作 成 時 の 経 験 から 水 分 を 吸 収 せず 乾 燥 が 遅 いガラスの 曲 面 では 水 分 が 多 いと 箔 が 流 れ 落 ちてしまうことがわかったため 接 着 剤 は 粘 膜 性 が 強 く 可 逆 性 があるアラビアゴムを 使 用 した また 形 を 整 える 研 磨 時 にできたものと 考 えていたガラスの 削 り 跡 図 8 が その 溝 が 接 着 剤 のガラスへの 吸 着 性 を 高 める 効 果 をもたら していることがわかった ( 図 7) 金 箔 の 裁 断 は 鉄 製 の 小 刀 で 行 い 文 様 の 主 要 となる 太 い 線 を 最 初 に 貼 りつけていった 波 文 様 が 特 に 難 易 度 が 高 く 描 く 際 にはまず 線 を 描 き その 間 を 三 角 形 の 截 箔 で 埋 めるなどの 工 夫 図 9 が 必 要 だった ( 図 8)こうした 高 度 な 文 様 を 描 くには 日 本 の 截 金 と 同 様 先 が 利 く 筆 のような 物 が 必 須 であり そうした 技 術 も 進 んでいた 可 能 性 が 窺 えた 装 飾 を 終 えたら 片 側 のガラスを 被 せ 接 着 し 完 成 させた ( 図 9) 再 現 模 造 制 作 では 文 様 を 施 すだけでも 数 ヶ 月 を 要 し 本 作 品 に 費 やされた 時 間 と 労 力 を 実 感 した 4

図 9 Ⅳ- 結 論 本 研 究 を 行 った 結 果 国 内 外 で 未 だ 成 されなかったゴールドサンドウィッチガラス 碗 の 金 箔 装 飾 の 再 現 に 成 功 し 大 英 博 物 館 所 蔵 金 箔 入 りガラス 碗 が 截 金 技 法 による 装 飾 であることが 明 確 に 証 明 できたと 考 える また 金 箔 装 飾 において 截 金 以 外 にエッチング 技 法 の 存 在 を 提 示 でき た この2つの 技 法 で 作 品 群 を 類 別 化 することで 今 後 ゴールドサンドウィッチガラスにおける 截 金 技 法 の 新 たな 位 置 づけを 行 い 更 には 制 作 年 代 の 判 別 未 だ 詳 細 が 明 かされていない 制 作 地 の 論 争 についても 新 たな 指 標 を 提 示 できるのではないかと 考 える 当 時 の 截 金 は 面 で 構 成 されていたため 裁 断 の 精 度 を 要 求 しないナイフなどの 可 能 性 が 高 く 日 本 の 緻 密 な 截 金 を 効 率 的 に 行 うための 箔 盤 と 竹 刀 は アジアに 入 り 確 立 されたと 思 われる また 本 碗 の 生 産 地 は 金 箔 の 加 工 技 術 が 進 んでいる 土 地 であり ガラス 制 作 と 金 箔 装 飾 を 行 っ た 場 所 は 近 い 位 置 に 存 在 し 共 同 作 業 で 行 われていた 可 能 性 が 考 えられた 単 なる 文 様 による 装 飾 ではなく 線 描 で 躍 動 感 ある 人 物 など 現 実 の 物 をより 忠 実 に 描 こうと する 姿 勢 は 文 様 という 領 域 からの 逸 脱 を 図 っているようにも 見 え 当 時 の 作 者 の 強 い 熱 意 が 感 じられた そして 工 芸 の 領 域 にとどまっていたかの 様 にみられるゴールドサンドウィッチガラ スの 截 金 の 絵 画 的 側 面 は 仏 画 仏 像 の 領 域 から 芸 術 へと 花 開 いた 日 本 の 截 金 文 化 との 共 通 性 が 見 出 せるものであった 本 研 究 により ゴールドサンドウィッチガラスの 截 金 にヨーロッパと 日 本 との 共 通 点 があるこ とが 示 され 截 金 技 法 がシルクロードなどの 道 を 渡 って 中 国 へ 伝 播 してきた 可 能 性 が 浮 かび 上 が った また ゴールドサンドウィッチガラス 碗 が 截 金 の 源 流 に 最 も 近 い 形 の 作 品 である 可 能 性 は より 濃 くなったと 言 える 途 絶 えてしまったが 故 に 海 外 では 研 究 されなかった 截 金 技 法 を 日 本 から 再 び 世 界 へと 発 信 す る 一 歩 となれば 幸 いである 5