災 害 支 援 ボランティアと 地 域 防 災 Disaster support volunteer and regional disaster prevention はじめに 才 田 春 夫 SAIDA Haruo 2011 年 3 月 11 日 に 発 生 した 東 日 本 大 震 災 は 歴 史 上 類 を 見 ない 大 災 害 となった 地 震 規 模 が M9.0 と 日 本 史 上 最 大 であったこと 巨 大 津 波 が 広 い 地 域 を 襲 い 浸 水 した 範 囲 は 青 森 岩 手 宮 城 福 島 茨 城 千 葉 の 6 県 62 市 町 村 で 561km²に 及 んだことが 大 きく 関 係 している 更 に 地 震 津 波 により 福 島 第 一 原 発 が 破 壊 され 水 素 爆 発 を 起 こしたために 広 い 範 囲 が 避 難 対 象 地 域 となったことが 世 界 で 類 を 見 ない 災 害 被 害 をもたらした( 国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 2011) 我 が 国 は 気 象 地 形 地 質 などの 自 然 条 件 から 地 震 津 波 台 風 洪 水 火 山 噴 火 土 砂 災 害 などが 発 生 しやすく 度 々 大 きな 自 然 災 害 に 見 舞 われてきた 1995 年 の 阪 神 淡 路 大 震 災 以 降 だけでも 新 潟 沖 地 震 中 越 地 震 能 登 半 島 地 震 など 頻 発 し 東 日 本 大 震 災 のように 多 大 な 人 命 財 産 を 失 う 災 害 も 発 生 している 北 陸 4 県 だけでも 過 去 数 年 間 に4 件 の 大 災 害 新 潟 福 島 豪 雨 ( 平 成 16 年 7 月 ) 新 潟 県 中 越 地 震 ( 平 成 16 年 10 月 ) 能 登 半 島 地 震 ( 平 成 19 年 3 月 ) 新 潟 県 中 越 沖 地 震 ( 平 成 19 年 7 月 ) 北 陸 地 方 を 中 心 とした 大 雨 被 害 ( 平 成 20 年 7 月 )などが 発 生 している( 日 本 防 災 士 機 構 2009) このような 災 害 多 発 の 社 会 にあって 我 々は 災 害 発 生 のリスクと 共 存 する 社 会 を 作 り 上 げてい かねばならない 幸 いにも 日 本 人 が 古 くから 持 ち 合 わせている 相 互 扶 助 の 精 神 が 1995 年 に 発 生 した 阪 神 淡 路 大 震 災 を 機 に 目 覚 め 138 万 人 ものボランティアが 全 国 から 駆 けつける 結 果 と なった その 後 の 度 重 なる 災 害 に 対 しても 数 千 ~ 数 万 人 のボランティアが 復 旧 復 興 に 尽 力 す るのが 当 たり 前 のようになってきている 2011 年 3 月 11 日 に 発 生 した 東 日 本 大 震 災 では 過 去 の 経 験 を 活 かしたボランティアの 早 期 対 応 が 注 目 された 石 巻 市 では 3 月 20 日 に 災 害 支 援 NGO NPO 連 絡 会 が 石 巻 専 修 大 学 内 に 発 足 し 国 内 外 から 集 まったボランティアが 連 携 を 取 りながら 被 災 住 民 の 支 援 に 取 り 組 んでいた しかし その 一 方 で 被 災 状 況 の 特 殊 性 と 被 災 地 で 活 動 するボランティア 数 は 阪 神 淡 路 大 震 災 よ り 少 ないことが 指 摘 されている( 長 坂 寿 久 2011) 想 定 を 超 えた 災 害 発 生 にいかに 備 えるべきかを 石 巻 市 におけるボランティア 活 動 を 通 して 考 察 を 行 った 45
1. 災 害 ボランティア 活 動 報 告 東 日 本 大 震 災 発 生 後 2 回 の 災 害 支 援 活 動 (1 回 目 は 3 月 29 日 ~4 月 3 日 までの 6 日 間 2 回 目 は 5 月 23 日 ~27 日 の 5 日 間 )を 行 った 巨 大 地 震 と 津 波 で 日 本 が 大 変 なことになっている!と 聞 いたのは 3 月 11 日 17 時 ミクロネシアの JICA 事 務 所 を 訪 ねた 時 だった テレビ 映 像 で 見 た 津 波 の 様 子 は 衝 撃 的 だったが 現 地 では 情 報 量 が 限 られていたため 被 害 の 大 きさと 事 態 の 重 大 さを 知 ったのは 帰 国 した 17 日 の 津 波 と 火 災 で 大 きな 被 害 を 受 けた 門 脇 小 学 校 ことだった ニュースを 見 るたびに なん とかしかしなきゃ 現 地 に 行 かねば という 思 いが 込 み 上 げてきた ここで 行 かねば 一 生 後 悔 する!と 思 い 早 速 ボランティア 仲 間 と 連 絡 取 り 合 い 震 度 5の 余 震 が 続 く 3 月 29 日 に 石 巻 市 に 入 った 旧 市 街 地 は 特 に 津 波 被 害 が 大 きく 家 屋 がほとんど 流 されてしまっ た 地 区 倒 壊 は 免 れたけれど 浸 水 によって 泥 だらけになった 地 区 地 区 全 体 が 流 されてき た 車 や 瓦 礫 などで 埋 まった 地 区 など 目 を 覆 街 じゅうに 流 されてきた 車 や 瓦 礫 の 山 うような 惨 状 だった 被 災 者 の 人 たちにどん な 言 葉 をかけたものかと 考 え 込 むような 状 態 だった 石 巻 市 では 3 月 20 日 に 災 害 支 援 NGO NPO 連 絡 会 が 石 巻 専 修 大 学 内 に 発 足 してお り 全 国 及 び 海 外 から 集 まったボランティア 団 体 や 個 人 ボランティアが 連 携 を 取 りながら 被 災 住 民 の 支 援 に 取 り 組 んでいた 連 絡 会 議 は 毎 晩 開 催 され 7 時 からの 全 体 会 議 とその 後 の 活 動 分 野 別 会 議 によって 情 報 の 共 有 化 と 活 動 内 容 の 調 整 が 行 われた その 日 の 活 動 を 毎 晩 開 催 される NGO NPO 災 害 支 援 連 絡 会 議 終 えたボランティア 達 が 会 議 室 に 駆 け 込 み 活 動 報 告 とどこでどんな 支 援 が 必 要 か それ を 誰 が 実 施 するかなど 情 報 共 有 と 活 動 の 効 率 化 が 図 られる 会 議 は 夜 10 時 頃 までかかる 時 もあ るが 一 人 ひとりの 思 いや 意 見 に 誰 もが 耳 を 傾 け 真 剣 に 議 論 が 交 わされているのが 印 象 的 だっ た 参 加 団 体 には 石 巻 専 修 大 学 構 内 でテント 生 活 している 団 体 や 独 自 に 開 設 した 拠 点 を 他 団 体 や 個 人 ボランティア 解 放 している 団 体 など 様 々であるが この 連 絡 会 の 存 在 が 石 巻 の 支 援 活 動 の 46
組 織 化 と 効 率 化 に 大 きな 貢 献 をしたことは 間 違 いない 発 足 当 時 参 加 団 体 や 個 人 ボランティア は 下 記 の 何 れかに 入 って 活 動 していた 1 炊 き 出 し 隊 2ローラー 隊 ( 被 災 者 宅 を 回 ってニーズ 発 掘 物 資 配 達 安 否 確 認 などを 実 施 ) 3マッドバスターズ( 泥 だし) 4リラクゼーション( 足 湯 隊 整 体 師 によるマッサージ&マッサージャー 養 成 ) 5 医 療 隊 私 が 6 日 間 お 世 話 になった 南 境 の 拠 点 (ヒューマンシールド 神 戸 が 3 月 17 日 に 開 設 )では 常 時 20 名 前 後 のボランティアが 宿 泊 しており 毎 朝 7 時 半 から 打 ち 合 わせを 行 い 8 時 半 に はそれぞれの 現 場 に 向 けて 出 発 という 流 れ が 出 来 上 がっていた この 拠 点 は 四 万 十 塾 八 ヶ 岳 ピースワーカーズなど 災 害 支 援 活 動 実 績 のある 団 体 や 個 人 ボランティアなどが 入 った ゆるやかな 連 絡 会 だったが しっ かりとしたワーキング 体 制 が 確 立 されてい た ボランティア 元 年 と 言 われるきっかけと なった 1995 年 の 阪 神 淡 路 大 震 災 以 降 多 く の 災 害 を 経 験 した 日 本 では 災 害 支 援 地 元 のお 母 さん 方 と 700 人 分 の 炊 き 出 し 準 備 NGO NPO が 確 実 に 力 をつけていることの 証 だと 言 える 私 は 四 万 十 塾 メンバーが 中 心 の 炊 事 班 で 連 日 500~2000 人 分 の 炊 き 出 しを 行 ってきた 炊 き 出 しは 小 学 校 の 校 庭 や 避 難 所 から 離 れた 地 区 の 広 場 ( 例 えば 区 長 宅 の 庭 集 合 住 宅 の 庭 コンビ ニの 駐 車 場 などで 行 い 被 災 者 を 待 つだけではなく 別 の 地 区 へデリバリーも 行 った 私 たちが 行 う 炊 き 出 しなどは 無 理 のない 範 囲 で 被 災 者 の 方 々にも 手 伝 ってもらうという 姿 勢 で 行 ってい た 支 援 者 と 被 災 者 が 共 同 作 業 を 行 うことで 被 災 者 のリフレッシュや 話 を 聞 くきっかけ 作 りに なるからである 包 丁 を 握 るのは 2 週 間 ぶりだ わ 料 理 ができてうれしいな という 声 が 聞 こ えた 顔 見 知 りになったおばさんたちが 津 波 の 状 況 を 徐 々に 語 り 始 め それを 笑 い 話 にした ときは ヘルプのお 願 いをしたことが 正 しかった ことを 確 信 した 炊 き 出 しには 食 べ 物 を 提 供 す 久 しぶりの 温 かい 味 噌 汁 に 笑 顔 満 点 るだけでなく 不 便 な 避 難 生 活 からの 一 時 の 精 神 的 解 放 効 果 もある 被 災 者 と 寄 り 添 うというのは 同 情 するということではなく 私 も 一 緒 に 頑 張 りますよ というメッセージを 送 ることなのであ る それが 協 働 の 効 果 なのだ ただし 被 災 者 の 年 齢 性 別 健 康 状 態 などによって 対 処 方 法 を 変 えることが 肝 要 である 2 回 目 の 活 動 には 学 生 8 人 ( 男 子 3 名 女 子 5 名 そのうち 3 名 が 留 学 生 )が 参 加 してくれた 47
これに 元 非 常 勤 講 師 の 川 尻 氏 を 加 え 10 名 が 2t トラックと 大 学 のマイクロバスとに 分 乗 して 石 巻 市 牡 鹿 半 島 に 向 かった 人 手 が 少 なくなるゴー ルデンウイーク 後 の 平 日 に ボランティアがあま り 入 っていない 牡 鹿 半 島 を 選 んだのは 正 しい 選 択 だった 今 回 もヒューマンシールド 神 戸 の 吉 村 氏 が 開 設 した 大 原 浜 生 活 センターを 拠 点 に 小 網 倉 浜 から 鮎 川 浜 までの 地 区 を 対 象 に 活 動 した 活 動 内 容 は 多 岐 にわたり 炊 き 出 し 瓦 礫 撤 去 保 存 計 画 のある 浸 水 した 蔵 からの 貴 重 品 持 ち 出 し とクリーニング 避 難 所 でのマッサージや 子 供 あ 学 生 たちが 避 難 所 の 清 優 館 で 炊 き 出 し そばせ 活 動 大 原 浜 地 区 住 民 との 交 流 など 毎 日 午 前 8 時 ~18 時 頃 ( 時 には 23 時 )までフル 活 動 だった 50 歳 以 上 の 住 民 が 8 割 を 超 える 150 名 程 度 の 村 に 8 名 の 元 気 な 学 生 が 笑 顔 を 振 りまく それだけでも 人 々に 活 力 と 奮 起 を 与 える 効 果 があったのは 明 らかだった 2. 支 援 体 制 の 問 題 点 の 一 つにボランティア 不 足 東 日 本 大 震 災 でのボランティア 参 加 人 数 は 阪 神 淡 路 大 震 災 と 比 べると 極 端 に 少 ないことが 指 摘 されている 兵 庫 県 の 調 査 によると 震 災 発 生 後 1カ 月 の 間 に 約 62 万 人 のボランティアが 被 災 地 で 活 動 を 行 った( 兵 庫 県 2002) それに 対 して 東 日 本 大 震 災 では 東 北 3 県 ( 岩 手 県 宮 城 県 福 島 県 )の 合 計 11.5 万 人 と5 分 の1にしか 達 して いないのが 実 情 である( 全 国 社 会 福 祉 協 議 会 2011) 被 災 地 域 が 長 さ 約 25km 程 度 の 被 害 だっ た 神 戸 に 比 べ 3.11 の 地 震 は 約 500km と 規 模 が 桁 違 いに 広 いので ボランティアの 必 要 性 は 高 い はずである しかし 鉄 道 道 路 のマヒにより 現 地 入 りが 難 しいことや 宿 泊 場 所 が 限 定 されて いることに 加 え 福 島 第 一 原 発 事 故 の 影 響 もある 行 政 や 社 会 福 祉 協 議 会 も 大 きなダメージを 受 け 上 に 職 員 が 被 災 者 自 身 となり 被 災 地 域 自 治 体 の 支 援 大 勢 に 無 理 があることが 指 摘 される この ような 状 況 は 当 然 予 想 され 今 後 の 支 援 体 制 に 活 かさねばならない 初 めての 経 験 なので と いう 言 い 訳 は 許 されない 3. 地 域 防 災 に 向 けて マーサージをする 学 生 @ 清 優 館 避 難 所 子 ども 遊 ばせ 隊 出 動 48
一 生 懸 命 に 取 り 組 んでいる 行 政 の 方 々の 批 判 をする 訳 ではなく 災 害 救 援 支 援 や 復 興 支 援 を 行 政 に 頼 る 日 本 社 会 の 体 質 を 改 めねばならないということである 防 災 は 自 助 共 助 公 助 の 順 に 対 応 せねばならないこと 私 たちが 認 識 する 必 要 がある また 地 域 では 共 助 としての 支 援 体 制 の 確 立 を 急 ぐ 必 要 がある 今 回 石 巻 市 での 災 害 ボラン ティアに 参 加 して ボランティアによる 災 害 支 援 活 動 が 確 実 に 成 長 していることを 確 信 してきた 阪 神 大 震 災 以 来 災 害 支 援 に 積 極 的 に 取 り 組 んできた NGO NPO がプロ 化 しているということ を 感 じた 彼 らの 存 在 が 災 害 支 援 の 初 動 活 動 をリードしており 彼 らの 存 在 抜 きに 復 興 を 語 るこ とはできない このようなボランティア 集 団 と 手 を 結 んで 次 世 代 のボランティアを 育 成 する 必 要 がある また 富 山 にも 災 害 支 援 経 験 団 体 や 個 人 ボランティアが 着 実 に 増 えており これらの ネットワーク 化 と 機 能 化 が 富 山 の 地 域 防 災 にとって 重 要 だということを 指 摘 しておかねばならな い 参 考 文 献 1) 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 : 東 日 本 大 震 災 の 概 況 と 政 策 課 題 調 査 と 情 報 第 708 号 2011 2) 日 本 防 災 士 機 構 : 近 年 の 自 然 災 害 に 学 ぶ 防 災 教 本 平 成 21 年 度 版 3) 長 坂 寿 久 : 東 日 本 大 震 災 への 取 り 組 みとNGO 石 巻 モデル と 企 業 とNGOの 協 働 CSR Magazine http://c2011sr-magazine.com/ 4) 兵 庫 県 県 民 生 活 部 県 民 生 活 部 生 活 文 化 局 生 活 創 造 課 : 阪 神 淡 路 大 震 災 一 般 ボランティア 活 動 者 数 推 計 (H7.1~H12.3) 5) 全 国 社 会 福 祉 協 議 : 災 害 ボランティアセンターで 受 け 付 けたボランティア 活 動 者 数 の 推 移 ( 仮 集 計 ) http://www.saigaivc.com/ボランティア 活 動 者 数 の 推 移 / 49