集, 抗 菌 な どの 作 用 を 示 す とい う研 究 に興 味 を も っ た. れ を 集 め て 精 製 に使 用 した (図1). しか し, 新 しい タ ンパ ク質 を精 製 す る こ とは筆 者 ら に は らの研 究 室 で は諸 種 平 滑 筋 の 収 縮 を指 標 と して 神 経 ペ プ 到 底 無 理 な こ と と思 った が, 気 に な っ て, 試 しに シ マ ミ チ ドの探 索 を行 な っ て い た が, ミ ズ のCFを させ るの で, CF中 い き な りラ ッ ト, マ ウ ス, ウ ズ ラ に 静 注 (10 50μl/kg) し て み た とこ ろ, 数 分 で死 ぬ こ と を見 つ 前 述 の よ う に, 筆 者 シマ ミ ミズ のCFも 収縮 の 活 性 物 質 の 精 製 に は ラ ッ トの胸 部 大 動 脈 血 管 標 本 の 収 縮 を 指 標 と し, ゲ ル濾 過 と陰 イ オ ン け驚 い た. 腹 腔 内 注 射 や 経 口 投 与 で は 死 な な い(4). こ の 交 換HPLCの2ス こ とが あ って, 何 は と も あれ シ マ ミ ミズ のCF中 ア ミ ドゲ ル 電 気 泳 動 上 で 単 一 の バ ン ドを 示 す 活 性 タ ンパ の活性 テ ッ プ で 行 な い, SDSポ リ ア ク リル ク質 を単 離 した(6). 物 質 の 精 製 を 始 め よ う と決 心 した. 以 上 が 冒頭 の 質 問 へ の 答 え で あ る. 農 家 の シ マ ミ ミズ 活 性 タ ンパ ク質 の一 次 構 造 は, cdnaク ロー ニ ン グ に の 養 殖 場 の 見 学, 大 量 の シ マ ミ ミズ の 入手, 飼 育 小 舎 の 設 営, 飼 育 の た め のパ ル プ の 入 手, 餌 の選 択 な ど, 研 究 開始 まで の模 索 は楽 しい 苦 労 で あ っ た. ち な み に, 以 前 コイ の ウ ロ テ ン シ ンI, IIの 構 造 を決 め た と き も, ラ ッ トに コ イ の尾 部 下 垂 体1個 (ゴ マ 粒 大) の 酸 抽 出 液 を静 注 し た と こ ろ, 著 し い血 圧 降 下 が起 こ り死 ん で し まい(5), そ れ に驚 い て 研 究 を始 めた とい う経 緯 が あ る. 活 性 物 質 の 精 製 と命 名 シ マ ミ ミズCFか らの 活 性 物 質 の構 造 決 定 は, 筆 者 の 一 人 関 沢 が 東 大 へ 出 向 し, 薬 学 部 の 中 嶋 暉 躬 教 授 (現 サ ン ト リー 生 物 有 機 科 学 研 究 所 所 長), 萩 原 健 一 先 生, な ら び に名 取 俊 二 教 授, 久 保 健 雄 助 教 授 の ご指 導 を得 て行 な 図1 シ マ ミ ミ ズ の 背 孔 か ら の 体 腔 液 の 放 出 わ れ た. 用 い た シマ ミ ミズ は釣 餌 と し て 養 殖 した もの で, シ マ ミ ミズ を水 に入 れ, 棒 で機 械 的刺 激 を与 え, 体 腔液 を放 出 させ 電 気 刺 激 を与 え て 背 孔 か ら体 腔 液 を体 外 へ 放 出 させ, た. DP: 図2 ライセ ニ ンの 一次 構造 化学と生物 Vol. 36, No.4, 1998 257 こ 各環 節 の 間 に あ る背 孔, CF: 放 出 され た体 腔 液
図5 ラ イ セ ニ ン の マ ウ ス 精 子 に対 す る致 死 作 用 と そ の 結 合 部 位 a: 精 子 は尾 部 を丸 め て死 ぬ (位相 差 顕微 鏡 に よ る), b: 同一 切 片 をFITC螢 る. ス ケテ ル20μm 光 抗体 法 で観 察 した もの. 螢 光 は精 子 全 長 に わ た って 見 られ ラ イ セ ニ ン の生 産 部 位 と機 能 免 疫 組 織 学 的 に抗 ラ イ セ ニ ン抗 体 を用 い, シマ ミ ミズ 体 内 の ラ イ セ ニ ンの 分 布 を調 べ た と こ ろ, 比 較 的 大 型 の 体 腔 細 胞 で, 体 腔 液 中 に 存 在 す る もの, また 体 腔 上皮 に 付 着 す る もの とが 陽 性 免疫 反 応 を 示 し た. つ ま り, この 細 胞 が ラ イ セ ニ ン を生 産 し て い る と考 え られ る(11). 一 方, 当研 究所 の太 田 尚 志 所 員 は昭 和 大 学 解 剖 学 教 室 の 中 井 康 光 教 授, 塩 田 清 二 助 教 授 の 協 力 を 得 て, コ ロイ ド金 粒 子 を用 い た免 疫 電 顕 観 察 を 行 な った (東 京 医 科 歯 科 大 の 和 気 健 次 郎 教 授 に も種 々 御 教 示 を い た だ い た). シ マ ミ ミズ の 咽 頭 部 外 側 周 囲 に は 一 種 の腺 (唾液 腺 と も 言 わ れ て い る) が あ る が, 腺 構 成 細 胞 は ほ とん ど粗 面 小 図6 ラ イ セ ニ ンの 作 用 に よ る ラ ッ ト精 子 細 胞 膜 の 拡 張 胞 体 で 占 め られ (図7), そ の 中 に 多 数 の ゴル ジ複 合 体 が 埋 もれ て い る. ゴ ル ジ複 合 体 に み られ る 多 くの 小 胞 は, ス ケー ル200nm ラ イ セ ニ ン の 存 在 を示 す 金 粒 子 を含 ん で い る. これ らの ほ ぼ 同 じ (10ng/ml) で あ るの で, ラ イセ ニ ンの 作 用 は 小 胞 は癒 合 して 金 粒 子 を含 む大 き な空 胞 に な る. 空 胞 は ス フ ィ ン ゴ ミエ リ ン を 介 す る同 じ よ う な機 構 に よ っ て起 細 胞 間 隙 に放 出 さ れ, 腺 周 囲 に 移 動 し, 腺 を覆 う基 底膜 こっ た と考 え られ る. さ ら に文 献(10)で調 べ て み る と, 哺 に 入 り, そ の 外 側 の体 腔 上 皮 を 経 て 体 腔 に 放 出 され る と 乳 類 の 心 筋, 赤 血 球, 精 子 の 細 胞 膜 で は, 外 層 の ス フ ィ 考 え られ る. また, 基 底 膜 中 に も金 粒 子 が み られ る. 免 ン ゴ ミエ リン は 内 層 よ り多 い とい う共 通 性 が あ る こ とが 疫 組 織 化 学 で抗 ラ イ セ ニ ン抗 体 に 陽 性反 応 を示 した 体腔 わ か った. 結 局, 細 胞 で の ラ イ セ ニ ンの 生 産 に つ い て は, in situ ハ イ ブ ラ イ セ ニ ン は細 胞 膜 の 外 層 の ス フ ィ ン ゴ ミエ リン に結 合 し, 細 胞 膜 に何 らか の 変 化 を起 こ し, 上 記 の 作 用 を もた ら した もの と考 え られ る. 千 葉 大 学 医 リダ イゼ ー シ ョン法 に よ っ て確 認 中 で あ る. さて, 体 腔 液 中 に存 在 す る ラ イ セ ニ ンは 体 内 で い か な 学 部 解 剖 学 教 室 外 山 芳 郎 講 師 に, ラ イセ ニ ン (1μg/ml) る 生 理 作 用 を して い る の で あ ろ うか. で 処 理 し た ラ ッ トの 精 子 を 電 顕 で観 察 して い た だ い た と す る外 敵 に対 し て どの よ うな 防 禦 作 用 を す るの で あ ろ う ころ, 精 子 に よ って は細 胞 膜 が 膨 れ 上 が り, 軸 糸 との 間 か. これ らの こ とは一 切 不 明 で あ る. シマ ミ ミズ に 化 学 に大 きな 空 間 を もつ もの が み られ た (図6). お そ ら く, また, 体 内 に 侵 入 的 あ る い は物 理 的 刺 激 を与 え る と, 環 帯 よ り少 し前 の 環 ラ イ セ ニ ン に よ り細 胞 膜 に 何 らか の 変 化 が 起 こ り, 透 過 節 か ら, 体 の 末 端 に到 る まで の 各 環 節 の 間 に存 在 す る背 性 が変 わ っ た結 果 で あ ろ う. 孔 か ら, 体 腔 細 胞 を 含 む体 腔 液 が 体 外 へ放 出 さ れ る (図 化 学 と 生 物 Vol. 36, No. 4, 1998 259
図7 G: シ マ ミ ミズ の 咽 頭 部 外 側 周 囲 に あ る 一 種 の 腺 細 胞 の 内 部 (a) とそ の 周 辺 部 (b) ゴル ジ複 合 体, M: ミ トコ ン ドリア, RER: 粗 面 小 胞体, s: 小 胞, v: 空 胞, sv: 細胞 周 辺 に送 られ つ つ あ る分 泌 空 胞, 矢 印: 金粒 子 (ラ イセ ニ ン の存 在 を示 す). ス ケ ー ル500nm bm: 腺 基 底膜, cc: 体 腔, inc: 腹 腔 上 皮 に見 られ る空 胞, m: 体 腔 上皮, p: 体 腔 上 皮 に 見 られ る小 孔, RER: 粗面 小 胞 体, v: 基 底膜 に 移 動 中 の 空胞. スケ ー ル500nm 1). し た が っ て, ラ イ セ ニ ン は体 外 へ放 出 さ れ て 一 種 の ま とめ と今 後 の 展 開 防 禦 作 用 を し て い る の か も知 れ な い が, 何 に対 して 防 禦 作 用 を す る の か 不 明 で あ る. 一 方, こ の 放 出 物 の 中 に は ラ イ セ ニ ン 以 外 の 活 性 物 質 も 含 ま れ て い る と考 え ら れ る. Milochau ニ ン と ア ミ ノ 酸 配 列 に お い て10%が (fetidin) が シ マ ミ ミ ズCF中 こ の fetidin ら(3)は ラ イ セ 異 な る タ ンパ ク質 に 存 在 す る こ と を 報 告 し, は 溶 血 活 性 を 示 し, Bacillus 以 上, 述 べ て き た こ と を ま とめ る と次 の よ う に な る. ラ イ セ ニ ン は シ マ ミ ミズ の 体 腔 液 か ら 精 製 さ れ た33 kdaの タ ンパ ク 質 で あ り, リ ン脂 質 の うち ス フ ィン ゴ ミ エ リ ン に特 異 的 に結 合 す る. 心 筋 に対 して 陽 性 変 時 変 力 作 用, 溶 血, 精 子 致 死 作 用 を 示 す. これ らの 作 用 は, ラ イ セ ニ ン が細 胞 膜 の 外 層 に あ るス フ ィ ン ゴ ミエ リ ン と megaterium や Aeromonas hydrophila に対 して 抗 菌 作 用 を も つ と 結 合 し, 細 胞 膜 の 透 過 性 を変 え る こ とに起 因 す る と考 え 報 告 し て い る. ラ イ セ ニ ン に は抗 菌 作 用 は認 め られ て い られ る. ラ イ セ ニ ン は 咽 頭 周 囲 に あ る一 種 の 腺 で生 産 さ な い. ま た 最 近, シ マ ミ ミ ズCFよ り eiseniapore づ け られ た溶 血 活 性 を もつ タ ンパ ク質 さ れ た が, (38kDa) と名 れ る が, 体 腔 細 胞 で も生 産 さ れ る可 能 性 が あ る. ラ イ セ が単離 ニ ン は シ マ ミ ミズ に お い て い か な る機 能 を果 た して い る ス フ ィ ン ゴ ミエ リ ン と ガ ラ ク ト シ ル セ ラ ミ ド の 両 方 に 結 合 す る と い う(12). こ れ ら の タ ン パ ク 質 も ラ イ セ ニ ン と 同 様, シ マ ミ ミズ に お い て い か な る 機 能 を も つ の か は, 今 の と こ ろ不 明 で あ る. ラ イ セ ニ ン様 活 性 タ ン パ ク 質 は フ ト ミ ミズ に は検 出 さ れ な い. ラ イ セ ニ ン は リン脂 質 の 代 謝 の研 究 の他, エ ク ソ サ イ フ トミ ミズ で は生 物 検 定 お よ び免 トシ ス, エ ン ドサ イ トシス, カ ベ オ ラ (細 胞 膜 小 胞), 受 疫 組 織 化 学 的 に も ラ イ セ ニ ン様 タ ン パ ク 質 は 検 出 で き な 精 時 の 先 体 反 応, 細 胞 融 合 な ど細 胞 膜 が 直 接 関 与 す る い こ と か ら, 生 物 現 象 の 解 明 に役 立 つ で あ ろ う し, また 精 巣 上 体 管 中 も の か 明 白 で は な い. ラ イ セ ニ ン は シ マ ミ ミズ に 特 異 的 な 現 象 に 関 与 し て い る に 違 い な い. で の 精 子 成 熟 に伴 う 細 胞 膜 リ ン脂 質 の 変 化 の 研 究, cryobiology 260 で 問 題 と され る精 子 細 胞 膜 の リ ン脂 質 の 変 化 学 と生 物 Vol. 36, No. 4, 1998
Usadel, Springer-Verlag, Heidelberg, New York, 1997, p. 255. 5) T. Ichikawa, D. McMaster, K. Lederis & H. Kobayashi: Peptides, 3, 859 (1982). 6) Y. Sekizawa, K. Hagiwara, T. Nakajima & H. Kobayashi: Biomed. Res., 17, 197 (1996). 7) Y. Sekizawa, T. Kubo, H. Kobayashi, T. Nakajima & S. Natori: Gene, 191, 97 (1997). 8) T. Kojima, A. Koike, S. Yamamoto, T. Kanemitsu, M. Miwa, H. Kamei, T. Kondo & T. Iwata: J. Immunother., 13, 36 (1993). 9) M. Ito, S. Abe, Y. Sekizawa & H. Kobayashi: Biomed. Res., 18, 399 (1997). 10) A. Zachowski: Biochem. J., 294, 1 (1993). 11) Y. Sekizawa, N. Ohta, S. Natori & H. Kobayashi: Biomed. Res., 17, 327 (1996). 12) S. Lange, F. Nussler, E. Kauschke, G. Lutsch, E.L. Cooper & A. Herrmann: J. Biol. Chem., 272, 20884 (1997).