外国為替市場のネットワーク的可視化と状態計量

外 国 為 替 市 場 の ネットワーク 的 可 視 化 と 状 態 計 量 佐 藤 彰 洋 京 都 大 学 大 学 院 情 報 学 研 究 科 数 理 工 学 専 攻 aki@i.kyoto-u.ac.p

自 己 紹 介 佐 藤 彰 洋 (ki-hiro ato) 博 士 ( 情 報 科 学 ) 出 身 大 阪 府 京 都 大 学 大 学 院 情 報 学 研 究 科 数 理 工 学 専 攻 助 教 URL: http://amech.amp.i.kyoto-u.ac.p/~aki/ 999 年 月 -200 年 3 月 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 ( 東 北 大 学 電 気 通 信 研 究 所 ) 200 年 3 月 東 北 大 学 大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 博 士 課 程 修 了 200 年 4 月 -2007 年 3 月 京 都 大 学 大 学 院 情 報 学 研 究 科 数 理 工 学 専 攻 助 手 2007 年 4 月 - 京 都 大 学 大 学 院 情 報 学 研 究 科 数 理 工 学 専 攻 助 教

参 考 文 献 [] 佐 藤 彰 洋, 経 済 物 理 学 入 門 第 7 回 データで 見 詰 める 過 去 現 在 未 来 : 外 為 市 場 の 取 引 パターンを 解 剖 する, 金 融 財 政 ビジネス, 200 年 月 25 日 第 2024 号 合 併 号, pp. 4,5--9 [2] ki-hiro ato, "Comprehensive nalysis of Information Transmission among gents: imilarity and Heterogeneity of Collective Behavior", gent-based in Economic and ocial ystems VI: Post-Proceedings of The EC International Workshop 2009, gent-based ocial ystems 8, pringer(tokyo), Eds. by.-h. Chen et al. (200), pp. --7. [3].-H. ato, M. ishimura, and J.. Hołyst, Fluctuation scaling of quotation activities in the foreign exchange market, Physica, 389 (200) 2793 2804.

高 精 度 の 外 国 為 替 市 場 の 注 文 取 引 に 関 するデータを 用 い その 状 態 をネットワーク 的 観 点 から 可 視 化 定 量 化 外 国 為 替 市 場 の 参 加 者 の 行 動 を 取 引 される 通 貨 ペアと 市 場 参 加 者 からなる2 部 グラフとしてモデル 化 ネットワーク 構 造 の 特 徴 づけと 比 較 を 通 じて 外 国 為 替 市 場 の 構 造 変 化 をとらえる ゆらぎのスケーリング 則 を 用 い ノードに 到 着 する 担 架 体 の 動 きを 特 徴 づける 研 究 内 容

概 要 はじめに 外 国 為 替 市 場 ネットワーク 中 心 性 ゆらぎのスケーリング 則 まとめと 今 後 の 課 題

動 機 高 度 化 しグローバル 化 している 現 代 社 会 で あっても 少 人 数 で 暮 らす 原 始 社 会 と 同 様 に 社 会 が 自 然 の 一 部 であることは 変 わらない 今 後 もわれわれの 社 会 が 持 続 的 かつ 安 定 的 に 維 持 されていくためには 自 然 の 諸 法 則 に 従 い 活 動 していく 必 要 がある 社 会 運 営 を 考 えるためには 憶 測 に 基 づいた 思 考 ではなく 現 実 のデータに 基 づいた 高 精 度 の 社 会 理 解 が 必 要 と 思 われる

目 的 経 済 物 理 学 の 観 点 に 立 ち 社 会 を 人 間 関 係 と 人 間 をとりまく 機 械 の 複 合 体 と 考 え マン マシンシステ ムとして 捉 える マン マシンシステムの 観 点 から 人 間 の 社 会 経 済 活 動 を 社 会 システム 内 部 におけるエネルギー 消 費 物 質 伝 播 情 報 伝 播 の 観 点 から 理 解 を 図 る 環 境 物 理 学 社 会 物 理 学 経 済 物 理 学 との 連 携 を 深 め 社 会 の 物 理 (Physics in ociety)の 発 展 に 貢 献 す る

外 国 為 替 市 場 の2 部 グラフ 表 記 deals currency pairs UD/JPY EUR/JPY /k ZR/JPY quotations participants f ( t) : 種 類 の 通 貨 からなる 通 貨 ペア / kの 時 刻 [ t,( t ) ] 間 の 注 文 行 動 / 約 定 頻 度 (, ; k,, ; t,, T)

分 析 対 象 データ データプロバイダ:ICP EB 期 間 :2008 年 6 月 日 ~200 年 月 3 日 総 レコード 数 :246,32,54 records ED: アラブ 首 長 国 連 邦 ディルハム UD : オーストラリア ドル BHD: バーレーン ディナール BKT: UD-EURバスケット 通 貨 CD : カナダ ドル CHF : スイス フラン CH: 中 華 人 民 共 和 国 元 CZK : チェコ コルナ DKK : デンマーク クローネ EUR : 欧 州 連 合 ユーロ EUQ: 欧 州 連 合 ユーロ( 小 ) GBP : イギリス ポンド HKD: 香 港 ドル HUF : ハンガリー フォリント IL: イスラエル シュケム IK : アイルランド クローナ JPY : 日 本 円 KE: ケニア シリング KET: ケニア シリング( 小 ) MX : メキシコ ペソ OK : ノルウェー クローネ ZD : ニュージーランド ドル PL : ポーランド ズロティ RO: ルーマニア レイ RUB : ロシア ルーブル R: サウジアラビア リヤル GD : シンガポール ドル EK : スウェーデン クローナ KK : スロバキア コルナ TRY: トルコ リラ THB: タイ バーツ UD /DLR: アメリカ ドル UQ: アメリカ ドル( 小 ) ZR : 南 アフリカ ランド XG : 銀 XU : 金 U: 金 ( 小 ) XPD : パラジウム XPT : プラチナ

Q.ネットワークの 構 造 に 関 する 知 識 なしで 観 測 可 能 な 量 のみを 用 い て 中 心 性 を 見 積 もるに はどうすればよいか?.もし 網 羅 的 に 粒 子 流 量 を 計 測 することができ るならば 観 測 量 から 担 架 体 の 存 在 確 率 を 推 定 することが 可 能 計 量 方 法 Menezes and Barabasí (PRL, 93 (2004) 06870). f ( t) : 単 位 時 間 当 たりの 通 過 粒 子 数 (,, ; k, ; t,, T) f (t) T T t f t k ( t) f ( t) 0 ; k ) K 0 K ; k K

ネットワークエントロピー ネットワーク 中 心 性 の 偏 り 方 をネットワーク 全 体 で 定 量 化 H H cp c k log ( K log K log log ) (0 (0 H H c cp ) ) Hcp/Hc : 小 Hcp/Hc : 大 Hcp/Hc が 小 さい のとき ネットワークは 単 一 ノードがほとんどのリンクを 占 めている Hcp/Hc が 大 きいとき ネットワーク 上 のノードは 均 等 にリンクを 占 めている

次 数 中 心 性 に 対 するエントロピー 2008 年 7 月 頃 ~2009 年 2 月 世 界 同 時 金 融 危 機 2009 年 月 頃 ドバイショック 200 年 月 頃 ギリシャ 危 機 200 年 4 月 ~5 月 ユーロショック

2つの 期 間 でのネットワーク 中 心 性 の 比 較 Jensen-hannon divergence: K l l K l l K k l l l l K K K H K H K H D H H H D 2 2 2 c 2 2 2 cp ) ( )log ( 2 2 ), ( ) ( )log ( 2 2 ), ( 2 2 D cp /D c : 大 ( 似 てない) D cp /D c : 小 ( 似 てる)

ネットワーク 類 似 性 ( 通 貨 ペア) 08 /06 09 /0 09 /06 0 /0 0 /06 注 文 取 引

ネットワーク 類 似 性 ( 通 貨 ) 08 /06 09 /0 09 /06 0 /0 0 /06 注 文 取 引

ゆらぎのスケーリング 則 ゆらぎのスケーリング 指 数 (αの 値 )は 体 系 の 挙 動 と 関 係 すると 考 えられている C f ( / 2 ) ほとんどのネットワークは 以 下 の 二 つのクラスに 分 類 可 能 α=/2 の 時 担 体 の 移 動 は 独 立 的 に 生 じる α= の 時 担 体 の 移 動 は 共 通 性 がある ネットワーク 上 の 担 体 の 移 動 ダイナミクスが 巨 視 的 に 定 量 できる

解 析 手 順 時 間 平 均 ( 一 週 間 分 ) T=7200 [min] f 2 T T t T T t f t 2 f ( t) f C f ( / 2 )

べき 指 数 の 変 遷 2008 年 7 月 頃 ~2009 年 2 月 世 界 同 時 金 融 危 機 2009 年 月 頃 ドバイショック 200 年 月 頃 ギリシャ 危 機 200 年 4 月 ~5 月 ユーロショック

結 論 外 国 為 替 市 場 の 高 精 度 データを 用 いて 注 文 取 引 の 状 態 をネットワーク 的 に 可 視 化 した 注 文 行 動 頻 度 および 約 定 頻 度 から 外 国 為 替 市 場 の 通 貨 通 貨 ペアネットワーク 中 心 性 を 計 量 し ネッ トワークエントロピーにより 構 造 の 定 量 化 比 較 を 行 った 注 文 行 動 頻 度 および 約 定 頻 度 時 系 列 からゆらぎの スケーリング 指 数 を 週 ごとに 計 量 した スケーリング 指 数 の 値 は 週 により 異 なる 値 をとる

結 論 通 貨 通 貨 ペアに 対 するネットワーク 中 心 性 を 用 いることにより 外 国 為 替 市 場 のネット ワーク 構 造 の 変 化 を 特 徴 づけることができる ネットワーク 状 態 を 比 較 することにより 変 化 の 兆 しをとらえることが 可 能 となる 注 文 行 動 頻 度 のスケーリング 指 数 を 調 べるこ とにより 金 融 市 場 の 情 報 伝 達 の 状 況 が 定 量 化 できる 本 提 案 手 法 を 高 精 度 データに 適 用 することに より 外 国 為 替 市 場 の 通 貨 取 引 の 様 子 を 直 接 高 頻 度 で 見 詰 めることが 可 能

今 後 の 課 題 網 羅 的 な 外 国 為 替 市 場 の 状 態 計 量 を 持 続 的 に 行 うための 観 測 計 量 プラットホームの 構 築 外 国 為 替 市 場 参 加 者 の 行 動 と 本 提 案 手 法 と の 体 系 的 な 比 較 研 究

謝 辞 本 研 究 は 日 本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金 若 手 研 究 (B) エージェント 間 情 報 伝 達 構 造 の 網 羅 的 分 析 (2760059) の 財 政 支 援 を 受 けて 行 われた ここに 謝 意 を 表 する