地 質 調 査 研 究 報 告, 第 66 巻, 第 1/2 号, p. 15-20, 2015 概 報 Report 新 たに 認 定 された 第 四 紀 火 山 の 放 射 年 代 : 笹 森 山 火 山 山 元 孝 広 Takahiro Yamamoto (2015) Radiometric age of a newly recognized Quaternary volcano: Sasamoriyama Volcano, NE Japan, Bull. Geol. Surv. Japan, vol.66 (1/2), p.15-20, 3 figs, 2 tables. Abstract: In 2009, it was decided to make the Quaternary with its base at approximately 2.6 million years ago. Corresponding to this revision, Geological Survey of Japan, AIST has published VOLCANOES OF JAPAN (third edition), including Gelasian volcanoes (Nakano et al., 2013). Sasamoriyama Volcano, which is located in the southwestern part of the Fukushima City, NE Japan, is one of such volcanoes. This consists of an andesitic composite edifice in 3.7 to 2.0 Ma. Around the edifice, there are dacite pumice flow deposits, which is newly named as the Horai Pyroclastic Flow Deposit. Fission-track ages of zircons from two samples of this deposit were determined as 1.8±0.3 Ma and 1.9±0.2 Ma, respectively. These ages represent the final activity of Sasamoriyama Volcano. Keywords: Sasamoriyama Volcano, Horai Pyroclastic Fow Deposit, Quaternary, fission-track age 要 旨 福 島 市 南 西 部 の 笹 森 山 火 山 は, 第 四 紀 下 限 の 年 代 が 改 正 されたことにより, 新 たに 追 加 された 第 四 紀 火 山 の 一 つである. 安 山 岩 溶 岩 からなる 山 体 の 周 辺 にはデイサイ ト 質 の 軽 石 流 堆 積 物 が 分 布 しており, 本 報 告 ではこれを ほうらい 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 物 として 新 たに 定 義 した. 本 堆 積 物 の ジルコンからは1.8±0.3 Maと1.9±0.2 Maのフィッショ ン トラック 年 代 値 が 得 られ, 笹 森 山 火 山 の 最 末 期 の 活 動 を 示 している. 1.はじめに 2009 年 の 国 際 的 な 勧 告 により 第 四 紀 の 定 義 が 変 更 さ れたことに 対 応 して, 産 総 研 地 質 調 査 総 合 センターは 日 本 の 第 四 紀 火 山 第 3 版 を 発 行 した( 中 野 ほか,2013). これには, 第 四 紀 の 下 限 が 約 180 万 年 前 から 約 260 万 年 前 に 引 き 下 げられたことにより, 新 たに 第 四 紀 火 山 とし て 認 定 されたものが 多 数 リストアップされている. 福 島 県 にある 本 報 告 の 笹 森 山 火 山 はそのような 新 規 に 追 加 さ れた 第 四 紀 火 山 の 一 つである.ここでは 笹 森 山 火 山 起 源 と 考 えられるこれまで 未 記 載 の 火 砕 流 堆 積 物 から 新 たな フィッション トラック 年 代 を 報 告 し, 火 山 活 動 履 歴 情 報 の 充 実 を 図 るものである. 2. 地 質 概 略 笹 森 山 火 山 は, 福 島 市 の 南 西 部, 安 達 太 良 火 山 の 東 に 位 置 する 安 山 岩 を 主 体 とする 著 しく 開 析 された 火 山 体 か ら な る( Fig. 1). 元 々は 笹 森 山 安 山 岩 と 呼 ばれ 旧 定 義 の 鮮 新 世 のK-Ar 年 代 値 が 報 告 されていた( 八 島,1990). その 後,5 万 分 の1 地 質 図 幅 二 本 松 ( 阪 口,1995)や 20 万 分 の1 地 質 図 幅 福 島 ( 久 保 ほか,2003)により 火 山 岩 の 分 布 が 単 一 ユニットとして 示 されている(Fig. 1の Pa).さらに, 長 橋 ほか(2004)は, 山 体 の 各 地 から 合 計 9 試 料 のK-Ar 年 代 値 を 報 告 し, 笹 森 山 山 頂 を 含 む 南 部 の 岩 体 から3.7Ma 前 後 の 年 代 を,それ 以 外 の 部 分 から2.4 ~ 2.0Maの 年 代 を 得 ている. 長 橋 ほか(2004)の 年 代 値 から にしからすがわ 判 断 すると, 笹 森 山 の 西 に 分 布 する 西 鴉 川 火 山 岩 ( 阪 口, 1995;Fig. 1のV1a)の 一 部 ( 黒 森 山 岩 体 )も, 笹 森 山 火 山 の 一 部 に 含 めるべきであろう.この 岩 体 は, 八 島 (1990) で 笹 森 山 安 山 岩 の 一 部 とされていたものである. 笹 森 山 火 山 の 北 東 山 麓 では, 笹 森 山 の 安 山 岩 円 礫 から なる 扇 状 地 堆 積 物 の 上 位 にデイサイト 軽 石 に 富 む 本 報 告 の 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 物 (Fig. 1のV1pの 一 部 )が 直 接 重 なり, 見 かけ 上 山 体 の 最 上 部 を 構 成 している. 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 ふしおがみ 物 の 更 に 上 位 には 伏 拝 岩 屑 なだれ 堆 積 物 ( 阪 口,1995; Fig. 1のV2f)が 重 なるが, 本 堆 積 物 中 にも 笹 森 山 火 山 起 源 の 火 山 岩 ブロックが 普 遍 的 に 含 まれている. 伏 拝 岩 屑 すなこはら なだれ 堆 積 物 を 被 覆 する 風 成 層 中 には 砂 子 原 佐 賀 瀬 川 テフラ(Sn-SK; 約 29 万 年 前 )や 砂 子 原 久 保 田 テフラ(Sn- 産 業 技 術 総 合 研 究 所 地 質 調 査 総 合 センター 活 断 層 火 山 研 究 部 門 (AIST, Geological Survey of Japan, Institute of Earthquake and Volcano Geology) Corresponding author: T. Yamamoto, Central 7, 1-1-1 Higashi, Tsukuba, Ibaraki 305-8567, Japan. Email: @aist.go.jp 15
地質調査研究報告 2015 年 第 66 巻 第 1/2 号 第1図 笹森山火山周辺の地質図 MA = 先白亜紀変成岩; U = 超塩基性岩; G2a + G2b + G2c = 白亜紀花崗岩類; Eb = 前期 中期中新世玄武岩質火 山岩; M2 = 中期中新世堆積岩; M2r = 中期中新世流紋岩質火山岩; Ll = 後期中新世湖成堆積物: Pa + V1a = 笹 森山火山岩; V1p = 蓬莱火砕流堆積物+清水町層; V2f = 伏拝岩屑なだれ堆積物; V3f = 山崎岩屑なだれ堆積物; th = 高 位 段 丘 堆 積 物; V4p = 安 達 太 良 湯 川 火 砕 流 堆 積 物; tl = 低 位 段 丘 堆 積 物; l = 地 す べ り 堆 積 物 20 万分の 1 地質図幅 福島 久保ほか 2003 の一部を使用した K-Ar 年代値は 長橋ほか 2004 による Fig. 1 Geologic map around Sasamoriyama Volcano. MA = pre-cretaceous metamorphic rocks; U = ultramafic rocks; G2a + G2b + G2c = Cretaceous granitic rocks; Eb = Middle-Miocene basaltic volcanic rocks; M2 = Middle-Miocene sedimentary rocks; M2r = Middle-Miocene rhyolitic volcanic rocks; Ll = Late-Miocene lacustrine sedimentary rocks: Pa + V1a = Sasamoriyama Volcanic Rocks; V1p = Horai Pyroclastic Flow Deposit + Shimizumachi Formation; V2f = Fushiogami Debris Avalanche Deposit; V3f = Yamazaki Debris Avalanche Deposit; th = higher terrace deposits; V4p = Adatara-Yukawa Pyroclastic Flow Deposit; tl = lower terrace deposit; l = landside deposits. This is the part of the geologic map of 1:200,000 Fukushima (Kubo et al., 2003). K-Ar ages are taken from Nagahashi et al. (2004). 16
新 たに 認 定 された 第 四 紀 火 山 の 放 射 年 代 : 笹 森 山 火 山 ( 山 元 ) KB; 約 22 万 年 前 )が 認 められ(Fig. 2; 山 元,2012), 本 岩 屑 なだれの 発 生 時 期 はテフラ 層 序 から 恐 らく50 万 年 前 頃 と 推 定 される.この 時 期 には 既 に 安 達 太 良 火 山 の 先 駆 的 活 動 は 始 まっており( 藤 縄 ほか,2001),その 分 布 から も, 安 達 太 良 起 源 の 岩 屑 なだれとみられる. 3. 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 物 定 義 本 堆 積 物 は,かつて 吉 田 ほか(1968)により 伏 拝 火 砕 流 堆 積 物 と 呼 ばれた 福 島 盆 地 の 南 縁 に 分 布 する 安 山 岩 岩 塊 に 富 む 火 砕 物 の 一 部 であるが,この 火 砕 物 は 風 成 層 を 挟 んで 上 位 の 伏 拝 岩 屑 なだれ 堆 積 物 と 下 位 の 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 物 に 区 別 される(Fig. 2; 山 元,2012). 福 島 市 の 蓬 莱 団 地 (Loc. 1) 造 成 中 に 大 規 模 な 露 頭 が 出 現 した が,そのほとんどは 既 に 消 失 している. 現 在 も 観 察 可 能 な 本 火 砕 流 堆 積 物 の 露 頭 は 福 島 市 小 田 の 東 北 自 動 車 道 脇 (Loc. 2)にあり, 模 式 地 としてはこの 地 点 がふさわしい. 層 厚 と 構 造 本 火 砕 流 堆 積 物 の 層 厚 は 最 大 15m 程 度 で, 笹 森 山 火 山 体 の 北 東 山 麓 に 広 く 分 布 する. 分 布 の 西 側 で は 笹 森 山 火 山 体 の 扇 状 地 堆 積 物 を 直 接 覆 うが, 東 側 では 下 位 に 清 水 町 層 ( 吉 田 ほか,1968)と 呼 ばれる 礫 砂 泥 からなる 河 川 堆 積 物 が 分 布 している. 清 水 町 層 も 含 めた 本 堆 積 物 は, 北 に 数 度 程 度 傾 斜 する 構 造 を 持 ち, 白 亜 紀 深 成 岩 類 (Fig. 1のG2a G2b)を 削 り 込 んだ 二 本 松 面 と 呼 ばれる 侵 食 小 起 伏 面 ( 中 村,1960; 小 池,1968;Koike, 1969; 木 村,1994; 久 保 ほか,2014)を 薄 く 被 覆 している. 本 堆 積 物 に 対 比 される 火 砕 流 堆 積 物 はこの 侵 食 小 起 伏 面 に 点 在 しており, 二 本 松 市 沼 ヶ 作 (Loc. 3)に 分 布 するも のは 吉 田 ほか(1968)により 沼 ヶ 作 層 と 呼 ばれていた. 岩 相 本 火 砕 流 堆 積 物 は, 斜 方 輝 石 単 斜 輝 石 デイサイト 軽 石 に 富 む 塊 状 で 非 溶 結 の 凝 灰 角 礫 岩 火 山 礫 凝 灰 岩 からなる. 本 質 物 のデイサイト 軽 石 は 白 色 で 発 泡 が 良 く, 暗 灰 色 でやや 発 泡 の 悪 い 安 山 岩 軽 石 を 包 有 して,しばし ば 縞 状 の 軽 石 となる. 最 大 径 約 4mの 笹 森 山 火 山 体 由 来 の 石 質 安 山 岩 の 異 質 岩 片 を 場 所 によって 多 く 含 む 場 合 が ある. 基 質 は 火 山 ガラス 片 に 富 み, 長 径 2 ~ 3mmの 輝 石 結 晶 片 が 目 立 っている.これに 対 し,Loc. 3の 本 火 砕 流 堆 積 物 は 異 質 岩 片 をほとんど 含 まず, 福 島 市 南 部 のもの とは 見 かけの 岩 相 が 異 なっている. 化 学 組 成 Loc. 2の 本 火 砕 流 堆 積 物 から 採 取 した 白 色 デ イサイト 軽 石 のSiO2 量 は62 wt% 前 後, 暗 灰 色 安 山 岩 軽 石 のSiO2 量 は 約 60 wt% 前 後 で,どちらも 中 カリウム 系 列 にプロットされる(Fig. 3, Table 1).また, 両 軽 石 の 化 学 組 成 は 長 橋 ほか(2004)が 報 告 した 笹 森 山 火 山 の2.4 ~ 2.0Ma 安 山 岩 とは,ほぼ 一 連 の 組 成 トレンドをなしてい る. 第 2 図 Loc.1の 柱 状 図. Ad-MH5 = 安 達 太 良 水 原 5テフラ; Az-FK = 吾 妻 福 島 テフラ; Sn-KB = 砂 子 原 久 保 田 テフラ; Sn-SK = 砂 子 原 佐 賀 瀬 川 テフラ. Fk101, Fk103 等 は 山 元 (2012) の 試 料 番 号.T = テフラ 層 の 厚 さ.D = テフラ 層 中 の 粒 子 の 平 均 最 大 粒 径. 山 元 (2012)による. Fig. 2 Stratigraphic columns at Loc. 1. Ad-MH5 = Adatara-Mizuhara 5 tephra; Az-FK = Azuma-Fukushima tephra; Sn-KB = Sunagohara- Kubota tephra; Sn-SK = Sunagohara-Sakasegawa tephra. Fk101, Fk103, etc. are the sample number in Yamamoto (2012). T = thickness of the tephra unit. D = averaged maximum diameter of grains in the tephra unit. Modified from Yamamoto (2012). 17
地 質 調 査 研 究 報 告 2015 年 第 66 巻 第 1/2 号 第 3 図 笹 森 山 溶 岩 と 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 物 の 主 成 分 及 び 微 量 成 分 化 学 組 成. Fig. 3 笹 森 山 溶 岩 のデータは 長 橋 ほか(2004)による. 低 カリウム 中 カリウム 系 列 の 境 界 はGill (1981)による. Major and trace elements variations for the Sasamoriyama Lava and Horai Pyroclastic Flow Deposit. Data of the Sasamoriyama Lava are taken from Nagahashi et al. (2004). Fields of Low-K and Medium-K are based on Gill (1981). 18
新 たに 認 定 された 第 四 紀 火 山 の 放 射 年 代 : 笹 森 山 火 山 ( 山 元 ) 第 1 表 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 物 中 の 軽 石 の 全 岩 化 学 組 成. 主 成 分 及 び 微 量 成 分 の 測 定 は XRFと ICP-MSによ る.LOI は 灼 熱 減 量. Table 1 Bulk compositions of pumices in the Horai Pyroclastic Flow Deposit. Major- and trace-elements are measured by XRF and ICP-MS. LOI is loss of ignition. Sample FKP01 FKP03 FKP04 ('%) SiO 2 60.13 60.38 58.16 Al 2 O 3 16.04 15.53 16.31 Fe 2 O 3 (T) 7.45 7.26 8.44 MnO 0.127 0.133 0.149 MgO 2.86 2.66 2.82 CaO 6.88 6.57 6.62 Na 2 O 2.34 2.48 2.32 K 2 O 1.06 1.1 0.89 TiO 2 0.587 0.629 0.673 P 2 O 5 0.07 0.05 0.08 LOI 2.48 2.28 3.08 Total 100.00 99.08 99.56 (ppm) Sc 26 25 25 V 154 149 159 Ba 294 292 287 Sr 198 211 211 Y 23 22 22 Zr 95 96 96 Cr 30 30 70 Co 13 13 15 Zn 60 50 60 Ga 12 12 12 Rb 25 26 21 Nb 3 4 4 Cs 2.5 2.6 2.2 La 10.6 10.2 9.6 Ce 24.4 22.7 23.2 Pr 2.84 2.58 2.5 Nd 12.5 11.5 11.1 Sm 3.2 3 2.9 Eu 0.87 0.85 0.89 Gd 3.7 3.4 3.3 Tb 0.7 0.6 0.6 Dy 4.1 3.9 3.7 Ho 0.8 0.8 0.8 Er 2.5 2.4 2.3 Tm 0.38 0.37 0.35 Yb 2.5 2.5 2.4 Lu 0.42 0.42 0.39 Hf 2.7 2.7 2.6 Ta 0.3 0.3 0.3 Tl 0.1 0.1 0.2 Pb 8 6 7 Th 3.3 3.3 3.5 U 0.6 0.6 0.5 4.フィッション トラック 年 代 フィッション トラック 年 代 測 定 は,( 株 ) 京 都 フィッ ション トラックに 依 頼 した. 以 下 は, 年 代 測 定 報 告 書 の 所 見 である. Loc. 2の 測 年 試 料 001113-4 は, 火 砕 流 堆 積 物 中 のデイ サイト 軽 石 である. 試 料 のジルコン 結 晶 含 有 量 はやや 少 なく,かつ 無 色 ~ 淡 桃 色 で 自 発 トラック 密 度 の 小 さい 自 形 結 晶 以 外 に, 赤 ~ 褐 色 で 自 発 トラック 密 度 の 大 きい 摩 耗 結 晶 も 含 まれている. 測 定 は 自 形 結 晶 を 対 象 としてい る.1 粒 子 当 たりの 自 発 トラック 数 が 少 ないため 測 定 30 粒 子 データはばらつくが,χ 2 検 定 には 合 格 し, 統 計 上 特 に 問 題 は 指 摘 されない. 従 って 測 定 30 粒 子 を 同 一 起 源 に 属 するものとして,1.8±0.3Maの 年 代 値 を 算 出 して い る( Table 2). Loc. 3の 測 年 試 料 100425-1は, 火 砕 流 堆 積 物 の 基 質 部 である. 試 料 のジルコン 結 晶 には 淡 桃 色 で 自 発 トラック 密 度 の 小 さいものと, 褐 色 で 自 発 トラック 密 度 の 大 きい ものが 含 まれるが, 両 者 の 違 いは 明 瞭 である. 測 定 は 前 者 を 対 象 としている. 測 定 した30 粒 子 データのまとま りは 良 く,χ 2 検 定 にも 合 格 した. 従 って 測 定 30 粒 子 を 同 一 起 源 に 属 するものとして,1.9 ±0.2Maの 年 代 値 を 算 出 している(Table 2). 5. 年 代 値 の 解 釈 試 料 001113-4 の 年 代 値 1.8±0.3Maと 試 料 100425-1の 年 代 値 1.9±0.2Maは 誤 差 の 範 囲 で 一 致 している.Loc. 1 とLoc. 2の 蓬 莱 火 砕 流 堆 積 物 は, 携 帯 型 磁 化 方 位 計 によ る 測 定 では 逆 帯 磁 していることから, 年 代 値 の 誤 差 も 考 えると,その 噴 出 時 期 はOlduvai subchronの 前 後 (1.95Ma 以 前 か1.77Ma 以 降 )とみられる.どちらであっても 得 ら れた 年 代 値 は, 長 橋 ほか(2004)の K-Ar 年 代 値 と 層 序 関 係 で 矛 盾 していない. 本 火 砕 流 堆 積 物 が 笹 森 山 火 山 体 の 山 麓 部 に 分 布 すること, 笹 森 山 山 体 由 来 の 異 質 岩 片 に 富 むこと, 化 学 組 成 に 大 きな 違 いがないことを 考 えると, この 火 砕 流 は 笹 森 山 火 山 の 最 末 期 の 噴 出 物 で, 得 られた 年 代 値 は 火 山 活 動 の 終 息 時 期 を 示 すものと 判 断 できよう. 文 献 Danhara, T. and Iwano, H. (2009) Determination of zeta values fission-track age calibration using thermal nertron irradistion at the JRR-3 reactor of JAEA, Japan. Jour. Geol. Soc. Japan, 115, 141-145. Danhara, T., Kasuya, M., Iwano, H. and Yamashita, T. (1991) Fission-track age calibration using internal and external surfaces of zircon. Jour. Geol. Soc. Japan, 97, 977-985. 藤 縄 明 彦 林 信 太 郎 梅 田 浩 司 (2001) 安 達 太 良 火 山 の 19
地 質 調 査 研 究 報 告 2015 年 第 66 巻 第 1/2 号 第 2 表 試 料 001113-4 及 び100425-1 中 のジルコンを 対 象 としたフィッション トラック 年 代 測 定 結 果. Table 2 Results of fission-track dating for zircons of samples 001113-4 and 100425-1. Locallity Number Spontaneous Induced Dosimeter Sample No of grain ρs [Ns] ρi [Ni] ρd [Nd] r U Age±1σ P(χ 2 ) (10 5 /cm 2 ) (10 6 /cm 2 ) (10 4 /cm 2 ) (ppm) (Ma) (%) Loc. 2 (37.71191 N, 140.44521 E) 001113-4 30 1.32 [31] 2.28 [535] 8.396 [4299] 0.443 210 1.8±0.3 28 Loc. 3 (37.57469 N, 140.47725 E) 100425-1 30 1.75 [119] 4.85 [3290] 13.3 [3990] 0.603 340 1.9±0.2 10 (1) ρ and N are density and total number of fission tracks counted, respectively. (2) All analyses by internal detector method using ED2. (3) P(χ 2 ) is the upper χ 2 tail probability corresponding to the observed χ 2 -statistics. (4) Age calculated using dosimeter glass SRM612 and ζ = 372±5 (Danhara et al., 1991) for 001113-4 ζ = 391±4 (Danhara & Iwano, 2009) for 100425-1 (5) r is correlation coefficient between ρs and ρi. (6) U is uranium content. (7) the total decay rate for 238 U: λd = 1.480x10-10 / yr. K-Ar 年 代 : 安 達 太 良 火 山 形 成 史 の 再 検 討. 火 山,46, 95-106. Gill, J.B. (1981) Orogenic andesites and plate tectonics. Springer-Verlag, Berlin, 358p. 木 村 和 雄 (1994) 阿 武 隈 高 地 北 部 の 侵 食 小 起 伏 面 と 後 期 新 生 代 地 形 発 達 史. 季 刊 地 理 学,46, 1-18. 小 池 一 之 (1968) 北 阿 武 隈 山 地 の 地 形 発 達. 駒 沢 地 理, no. 4/5, 109-126. Koike, K. (1969) Geomorphological development of the Abukuma Mountains and its surroundings, Northeast Japan. Japan. Jour. Geol. Geogr., 40, 1-24. 久 保 和 也 柳 沢 幸 夫 山 元 孝 広 駒 沢 正 夫 広 島 俊 男 須 藤 定 久 (2003) 20 万 分 の1 地 質 図 幅 福 島. 産 総 研 地 質 調 査 総 合 センター. 久 保 和 也 山 元 孝 広 村 田 泰 章 牧 野 雅 彦 (2014) 川 俣 地 域 の 地 質. 地 域 地 質 研 究 報 告 (5 万 分 の1 地 質 図 幅 ), 産 総 研 地 質 調 査 総 合 センター,86p. 長 橋 良 隆 木 村 裕 司 大 竹 二 男 八 島 隆 一 (2004) 福 島 市 南 西 部 に 分 布 する 鮮 新 世 笹 森 山 安 山 岩 のK-Ar 年 代. 地 球 科 学, 58, 407-412. 中 村 嘉 男 (1960) 阿 武 隈 隆 起 準 平 原 北 部 の 地 形 発 達. 東 北 地 理,12, 62-70. 中 野 俊 西 来 邦 章 宝 田 晋 治 星 住 英 夫 石 塚 吉 浩 伊 藤 順 一 川 辺 禎 久 及 川 輝 樹 古 川 竜 太 下 司 信 夫 石 塚 治 山 元 孝 広 岸 本 清 行 (2013) 日 本 の 火 山 ( 第 3 版 ). 200 万 分 の1 地 質 編 集 図 11. 産 総 研 地 質 調 査 総 合 センター. 阪 口 圭 一 (1995) 二 本 松 地 域 の 地 質. 地 域 地 質 研 究 報 告 (5 万 分 の1 地 質 図 幅 ), 地 質 調 査 所,79p. 八 島 隆 一 (1990) 東 北 日 本 弧 における 鮮 新 世 火 山 岩 のK-Ar 年 代 : 阿 闍 羅 山 安 山 岩, 青 ノ 木 森 安 山 岩, 七 ッ 森 デイ サイト, 笹 森 山 安 山 岩. 地 球 科 学, 44, 150-153. 山 元 孝 広 (2012) 福 島 - 栃 木 地 域 における 過 去 約 30 万 年 間 のテフラの 再 記 載 と 定 量 化. 地 質 調 査 研 究 報 告,63, 35-91. 吉 田 義 伊 藤 七 郎 鈴 木 敬 治 (1968) 福 島 郡 山 間 の 第 四 系. 第 四 紀, no.13, 10-29. ( 受 付 :2014 年 9 月 10 日 ; 受 理 :2015 年 5 月 8 日 ) 20