週刊金融財政事情 2014 年 11 月 10 日号 外国口座税務コンプライアンス法施行後の状況と実務上の課題 QI から FATCA OECD 多国間情報交換制度へと強化される国際税務コンプライアンス 税理士法人トーマツパートナー前田幸作 2014 年 7 月 1 日の外国口座税務コンプライアンス法 (FATCA) 施行を受けて 日本の金融機関も米国内国歳入庁への登録を終え 7 月 1 日以降に新規に開設する口座について FATCA に基づく本人確認手続を実施している 今後の課題は 既存口座の本人確認手続と初回の報告であり すでに対応準備を進めている金融機関は多い 施行後 金融機関から実務的な質問を多数受け 当社もアメリカからの新しい情報や すでに公表された情報の分析を実施している それらのなかから 日本の金融機関にとって有用な事項をいくつか紹介する FATCA 報告の概要 2014 年 7 月 1 日の外国口座税務コンプライアンス法 (FATCA) 施行から約 3 ヵ月余りが経ち すでに世界中で 10 万を超える外国金融機関 (FFI) がポータルサイトでの登録を完了している このうち 日本の金融機関は 3542(9 月 24 日現在 ) にのぼる FATCA 登録を実施したのは銀行 信金 信組 農協 漁協 証券 投信会社 生保 損保だけではなく 投資事業組合や各種ファンドも含まれるため これだけ多くの登録数となっている これらの金融機関は FATCA へ準拠するためのコンプライアンスプログラムを構築し 7 月 1 日以降に新規に開設する口座については FATCA に基づく本人確認手続を実施している むね出揃っている FATCA 報告の概要を図表 1 にまとめているので 参考にされたい 様式 8966 の提出期限は 対象となる暦年の翌年 3 月 31 日となる 当該報告期限は延長様式 8809 を提出することにより 90 日間延長が可能となる 初回報告については延長様式を提出しなくとも 90 日間自動延長されることがすでに公表されている なお 不同意口座の報告については延長が認められていないので留意されたい 金融機関は所定の本人確認手続に基づいて特定し 報告について同意を得た米国人口座所有者について 直接 米国内国歳入庁 (IRS) に報告を行う すでに報告のための様式 8966 記載要領 電子申告スキーマについてのユーザーガイド (Publication 5124) が公表されており 対応に必要な情報はおお 1
図表 1 外国口座税務コンプライアンス法に基づく報告の概要 1 IRS への報告 ( 口座 ) 概要 同意米国人口座 報告対象年度 2014 年 2015 年 2016 年以降 報告期限 2015 年 3 月 31 日 2016 年 3 月 31 日毎年 3 月 31 日 氏名 住所 米国納税者番号 口座番号 口座残高 FDAP 所得 売却 償還の総額 不同意米国人口座 口座の総数および残高の合計 同意不参加 FFI 報告期限 米国源泉所得の支払い : 2016 年 3 月 15 日外国源泉所得の支払い : 2016 年 3 月 31 日 米国源泉所得の支払い : 2017 年 3 月 15 日外国源泉所得の支払い : 2017 年 3 月 31 日 氏名 住所 口座番号 口座残高 外国の報告対象となる金額 ( 注 ) 不同意不参加 FFI 口座の総数および支払いの合計 ( 注 ) 外国の報告対象となる金額 (Foreign reportable amount) : 米国源泉であれば源泉徴収対象となる FDAP( 定期定額 ) 所得 日本国内で支払う銀行預金利子や日本株 債券からの配当 利子も含まれる 2 IRS への報告対象口座 個人 / 法人 個人 米国人口座 対象口座 特定米国人 米国税法上 の米国個人 米国法人 説明 1. 米国市民権保有者 2. 米国居住者 ( 含む永住権保有者 ) 3. 米国で設立された事業体 ( 上場企業およびその関連会社 政府機関 銀行 証券会社などは報告対象外 ) 法人 米国人支配者を有する受動的 NFFE 不参加金融機関 (2014 年は報告対象外 ) 4. 米国外で設立された金融機関以外の事業体で投資 ( 利金 配当金などの利益 ) を主たる業務とし かつ支配者に米国税法上の米国人が存在する場合 5. FATCA 制度に参加していない金融機関 2
3 IRS への報告方法等 14 年度 15 年度 報告期限 15 年 3 月 31 日毎年 3 月 31 日 14 年度のみ 90 日間の自動延長期限が設定 延長 (90 日 ) を要する場合は Form8809 のされているため 実際には 15 年 6 月 29 日提出が必要が報告期限となる ただし 不同意口座の総数報告は延長不可のため 3 月 31 日 報告方法 電子的報告 ( 原則 紙ベースでの報告は不可 ) 電子報告が免除されている報告者は Form8966 の紙ベースでの報告が可郵送先住所 : Internal Revenue Service FATCA, Stop 6052 AUSC 3651South IH 35 Austin, Texas 78741 データ形式 提出方式 別途公表されている FATCA の XML スキーマを参照 後日公表予定 公表の想定されている 電子申告に関する Notice は 14 年 10 月現在未公表 既存口座の本人確認手続既存個人富裕口座については 15 年 6 月末まで その他の既存口座については 16 年 6 月末までに本人確認手続の完了が求められている 報告対象となる米国人口座の数が多くない金融機関は早々に確認手続を完了するほうが望ましいと考える傾向にあるが 報告対象口座が多い場合には手続の実施時期を繰り延べる傾向がある これは 一つには 秋の臨時国会で提出が予定されている犯罪収益防止移転法の改正案をふまえ 重要顧客へ追加書類の依頼は 一度で済ませたいとの意向があるようだ また たとえば 今年 10 月に既存個人口座についてシステム情報のチェックを行い 米国人示唆情報が特定された顧客に対して追加情報の提出を依頼したとしても 顧客からの返信がないケースが想定される その場合に 金融機関は今年 6 月 30 日時点の口座残高が 100 万ト ル以下である低額口座であれば 16 年 6 月末時点で不同意米国人口座と区分すればよいこととなる したがって 前述のケースでは 16 年に初めて報告対象とすればよいこととなる ( 報告期限は 17 年 3 月末 ) 自己宣誓書類の有効性に関する懸念 IRS が公表している FATCA についての一般的な質問と回答 (FAQ) が 9 月 25 日に更新された 追加された FAQ において FATCA 政府間協定付属書 Iは自己宣誓を IRS 様式 W-8 またはその他の 同等の合意様式 で行うことができると規定しているが 同等の合意様式 であるためには 一定の要件を満たすことが求められ 要件を満たさないものは 適切な自己宣誓とみなされないと明記されている 一方 個人から入手する同等の合意様式は 財務省規則 1.1471-3(c)(6)(v) の規定を満たす非 IRS 様式が認められること また法人から入手する同等の合意様式は 財務省規則 1.1471-3(c)(4) の規定を満たす声明書 (Written Statement) が認められることが明記されている 新規口座開設時の自己宣誓については 日米声明において 特段 W-8 またはその他の同等の合意様式であることは求められていないが 既存口座については FAQ に指摘のとおり W-8 またはその他の同等の合意様式と明記されており 一定の要件を満たすことが求められる 日本の金融機関が独自に自己宣誓書として使用している様式のなかには これらの要件を満たさないものも多数あり 今後 取り直しや 将来の検証において重大な問題となる可能性がある 3
租税条約適用のための W-8BEN-E FATCA の施行に伴い 金融機関が自身の FATCA ステータスを口座開設先金融機関や取引相手から問われ そのステータスを証明するために様式 W-8BEN-E( 米国源泉税および報告に関する受益者証明書 ) を提出する機会が増加している 様式 W-8BEN-E は たんに FATCA ステータスを証明する目的の場合と 米国投資に伴う日米租税条約を適用する目的の場合とでは 記載方法が異なる 日米租税条約を適用する場合には 次の事項についても確認が必要となる Part III に租税条約適用のための必要事項を記載する 非上場証券からの配当 利子 ロイヤルティー その他所得を受け取る場合で 租税条約に基づく非課税 または軽減税率の適用を受ける場合には Part I の Line 8 へ米国納税者番号を記載する なお 米国納税者番号をもっていない場合には 事前に様式 SS4 等により IRS へ申請し 米国納税者番号を取得することが必要となる 日本法人の海外支店が米国源泉所得を受け取る場合には Part I には本店に関する情報を Part II には海外支店に関する情報を記載する 金融機関や投資事業組合等 受取人が最終受益者でない場合には W-8BEN-E ではなく W-8IMY, Withholding Statement( 源泉徴収区分表 ) とともに最終受益者または持分保有者の W-8BEN または W-8BEN-E を提出する FATCA ステータスを証明する目的の場合には 受動的 NFFE(Non-Financial Foreign Entity: 金融機関以外の外国事業体 ) で残高が 100 万ト ルを超える等の一定の場合を除いて 提出した様式 W-8BEN-E は記載内容に変更がない限り 無期限で有効となるが 租税条約を適用する目的の場合には原則どおり 署名日から 3 年を経過した後の年末までが有効期限となる なお 記入漏れが生じた場合 FATCA ではなく 既存の米国財務省規則に基づき 30% の源泉徴収の対象となる アメリカで申請を行うことにより還付は可能であるが 還付手続は複雑で 還付までに 1 年以上かかるケースもあるので 慎重な対応が求められる プリペイド式クレジットカードの発行者以前から クレジットカード会社が FATCA における FFI に該当する可能性が指摘されている ただし 多くの日本のクレジットカード会社では 原則 預金を受け入れず 顧客が 請求額を超えて支払を行った場合でも 超過支払額がただちに顧客に返金されていることから FFI に該当しないと整理している しかし プリペイド式クレジットカードについては 入金残高が預金残高と考えられるため プリペイド式クレジットカートを発行している また発行を予定している場合には FFI としての登録が必要となる ただし 預金が 5 万ト ルを超えない場合には 適格クレジットカード会社として 登録みなし遵守 FFI の要件を満たすことができる なお 英国歳入関税庁 (HMRC) が公表している FATCA に関するガイダンスでは 現金がチャージされている電子マネーの発行者も FFI に該当するものと明記されている FATCA 対応新 QI 契約米国内国歳入法第 4 章 (Chapter 4) において FATCA が規定されているが 第 3 章 (Chapter 3) では QI(Qualified Intermediary: 適格仲介人 ) 制度が規定されている QI 制度は FATCA の前身となるアメリカの制度で 01 年から導入され 米国源泉の利子 配当 その他の FDAP 所得 ( 一定額または予測可能で毎年または定期的に支払われる所得 ) を米国外の投資家に支払う金融機関は IRS と QI 契約を締結し 最終受益者の本人確認書類の入手 保管 IRS への年次報告 および源泉徴収義務等を負っている 現在 世界中で約 6000 の金融機関が QI 契約を締結しており 日本ではメガバンク 信託銀行 証券会社 アセットマネジメント会社など約 200 社が QI 契約を締結している 6 月 27 日 Revenue Procedure 2014-39 において FATCA に対応した新 QI 契約が公表された 旧 QI 契約は 14 年 6 月 30 日をもって無効となり 同日から世界中の QI 契約を締結する金融機関は新 QI 契約に準拠することが求められている 新 QI 契約は旧 QI 契約から内容が大きく変更されており QI 契約を維持するためには早急に 1 書面での方針と手続 2 研修 3システム 4モニタリング 5 定期的検証 6 定期的宣誓を含む 新 QI 契約に基づくコンプライアンスプログラムの構築が必要とな 4
る なお これまで QI 対応については 決済部 事務部 業務部等で対応を行っている金融機関が多いが 国際的なコンプライアンスへの対応が必要となっていることから コンプライアンス部 経営企画部等で FATCA と平仄を合わせた対応を検討している金融機関が増えている 米国サムライ債取扱金融機関の FATCA 対応アメリカでは 国外からアメリカへの投資を促すため 一定の要件を満たした外国の投資家に支払われるポートフォリオ利子に関し 非課税措置を適用している しかしながら 新規則により 12 年 3 月 18 日から後に発効される外国向け債券 (Foreign-Targeted Obligation) については だれもが比較的自由に購入できる無記名 (Bearer) 形式で発行された場合には非課税措置が適用できないこととなった アメリカの事業体が日本市場で発行するサムライ債についても この新規則により非課税措置が撤廃されることが危惧されていたが 経過措置として FTRO (Foreign-Targeted Registered Obligation) ルールと呼ばれる手続に従うことにより 15 年 12 月 31 日までに発行されたものに限り 非課税措置が継続されることとなっている 16 年 1 月 1 日以降に発行される債券について非課税措置を受けるためには より厳格な本人確認手続と報告義務の対象となり 米国事業体発行のサムライ債を取り扱う金融機関は IRS と QI 契約を締結することなどが必要となるので留意されたい 14 年 7 月 1 日以降に FTRO ルールに基づき発行された債券については 経過措置期間であるため 取扱金融機関は必ずしも QI 契約を締結する必要はな いが FATCA で求められる米国源泉所得の仲介人としての対応は必要となる 非課税措置を適用するためには 米国源泉所得を仲介人となる支払代理人および取扱金融機関は様式 W-8IMY および FFI Withholding Statement を提出し FATCA 上の源泉徴収対象でないことを証明することが必要となる可能性があるため 留意されたい FATCA 政府間協定締結国の拡大 FATCA を世界中に広めるため 米国政府は各国の政府と交渉を行い FATCA に関する政府間協定を順次締結している 日本は 13 年 6 月に日米政府間声明を締結しており その後もアメリカは次々と各国政府と交渉を行い FATCA 協定を締結している 図表 2 にあるとおり FATCA 協定締結国は 44 カ国 大筋合意した みなし協定締結国 をあわせるとすでに 100 カ国を超えている FATCA 協定には 国内法を整備して対応するモデル 1 と 国内法の整備を行わないモデル 2 の 2 種類がある 日米政府間声明はモデル 2 であることから 日本の金融機関は国内法整備がなされないなか 日米政府間声明だけではなく FFI 契約 米国財務省規則にも準拠した対応が必要となっている 今後 日本においても OECD 多国間情報交換の枠組みへの参加が予定されており そのための国内法整備が必要となることから モデル 1 への移行についても検討されることになろう すでにスイス政府は モデル 2 で協定を締結したが モデル 1 への移行についてアメリカと交渉を行うことを公式に表明している ただし 米国 FATCA とOECD 多国間情報交換については 基本的なルールが異なる部分も多く 課題は多い 図表 2 FATCA 協定参加国一覧表 (2014 年 10 月 16 日現在 ) 協定参加国 44 カ国 モデル 1 協定参加国 : 39 カ国 Australia( オーストラリア ) Israel( イスラエル ) Belgium( ベルギー ) Italy( イタリア ) Brazil( ブラジル ) Jamaica( ジャマイカ ) British Virgin Islands( 英領ヴァージン諸島 ) Jersey( ジャージ島 ) Canada( カナダ ) Latvia( ラトビア ) 5
Cayman Islands( ケイマン諸島 ) Liechtenstein( リヒテンシュテイン ) Costa Rica( コスタリカ ) Lithuania( リトアニア ) Czech Republic( チェコ共和国 ) Luxembourg( ルクセンブルグ ) Denmark( デンマーク ) Malta( マルタ ) Estonia( エストニア ) Mauritius( モーリシャス ) Finland( フィンランド ) Mexico( メキシコ ) France( フランス ) Netherlands( オランダ ) Germany( ドイツ ) New Zealand( ニュージーランド ) Gibraltar( ジブラルタル ) Norway( ノルウェー ) Guernsey( ガーンジー島 ) Poland( ポーランド ) Hungary( ハンガリー ) South Africa( 南アフリカ ) Honduras( ホンジュラス ) Spain( スペイン ) Ireland( アイルランド ) Slovenia( スロベニア ) Isle of Man( マン島 ) Sweden( スウェーデン ) United Kingdom( イギリス ) モデル 2 協定参加国 : 5 カ国 Austria( オーストリア ) Japan( 日本 ) Bermuda( バミューダ ) Switzerland( スイス ) Chile( チリ ) みなし協定参加国 57 カ国 モデル 1 みなし協定参加国 : 49 カ国 Algeria( アルジェリア ) Kuwait( クウェート ) Anguilla( アンギラ ) Malaysia( マレーシア ) Antigua and Barbuda( アンティグア バーブーダ ) Montenegro( モンテネグロ ) Azerbaijan( アゼルバイジャン ) Panama( パナマ ) Bahamas( バハマ ) Peru( ペルー ) Bahrain( バーレーン ) Portugal( ポルトガル ) Barbados( バルバドス ) Qatar( カタール ) Belarus( ベラルーシ ) Romania( ルーマニア ) Bulgaria( ブルガリア ) St.Kitts and Nevis( セントキッツ島ネビス島 ) Cabo Verde( カーボベルデ ) St.Lusia( セントルシア ) China( 中国 ) St.Vincent and the Grenadines ( セントビンセント グレナディーン ) Columbia( コロンビア ) Saudi Arabia( サウジアラビア ) Croatia( クロアチア ) Serbia( セルビア ) 6
モデル 1 みなし協定参加国 : 49 カ国 Curacao( キュラソー島 ) Seychelles( セーシェル共和国 ) Cyprus( キプロス ) Singapore( シンガポール ) Dominica ( ドミニカ国 ) Slovak Republic( スロバキア共和国 ) Dominican Republic( ドミニカ共和国 ) South Korea( 韓国 ) Georgia( グルジア ) Thailand( タイ ) Greenland( グリーンランド ) Turkey( トルコ ) Grenada ( グレナダ ) Turkmenistan( トルクメニスタン ) Guyana ( ガイアナ ) Turks and Caicos Islands ( タークス カイコス諸島 ) Haiti( ハイチ ) Ukraine( ウクライナ ) India( インド ) United Arab Emirates( アラブ首長国連邦 ) Indonesia( インドネシア ) Uzbekistan( ウズベキスタン ) Kosovo( コソボ ) モデル 2 みなし協定参加国 : 8 カ国 Armenia( アルメニア ) Moldova( モルドバ ) Hong Kong( 香港 ) Paraguay( パラグアイ ) Iraq( イラク ) San Marino( サンマリノ ) Nicaragua( ニカラグア ) Taiwan( 台湾 ) 続く国際税務コンプライアンス強化の動き 01 年度から開始した QI 制度に加え 14 年 7 月から FATCA が加わった FATCA は既存の QI 制度に代わるものではなく 米国内国歳入法第 4 章として追加された FATCA がいまや世界中に広がるなか この仕組みを利用して米国人だけではなく 各国の外国居住者を特定する OECD 多国間情報交換制度が急速に広がりをみせている すでに 日本を含め 93 カ国が賛同を表明し このなかで 58 カ国は早期導入国として 16 年からの同制度導入を表明している ( 本文中の税務アドバイスは 税務当局により賦課せられる可能性がある いかなるペナルティの回避をも目的としたものではなく したがって ペナルティ回避に使用することはできない ) 日本 スイスなどは国内法整備に時間がかかり 早期導入国となることはむずかしいようだ その場合 17 年からの導入を目指すこととなる 一方 アメリカは OECD 多国間情報交換に参加しないもようだ その場合 日本など他の参加国の金融機関は多国間情報交換制度と FATCA 双方への対応が必要となり 複雑化が懸念される 最後に QI FATCA OECD 多国間情報交換の相違点を図表 3 にまとめているので参考にされたい 7
FATCA 施行後の課題 図表 3 QI FATCA OECD 多国間情報交換規定 QI (Qualified Intermediary) 2001 年 1 月 FATCA (Foreign Account Tax Compliance Act) 2014 年 7 月 OECD 多国間情報交換 2016 年 1 月 ( 早期導国 ) 2017 年 1 月 ( スイス等 ) 目的 米国外への支払いに対して 租税条約および米国税法に基づき 適切な源泉税率を適用する 米国人による 米国外金融口座を利用した租税回避を阻止する 各国居住者による 国外金融口座を利用した租税回避を阻止する 対象国 QI の要件を満たした国 (65 カ国 ) すべての国 ( 協定締結国 :101 カ国 ) OECD 加盟国および賛同国 (64 カ国 ) 対象機関 仲介人 ( 証券会社 信託銀行 投信会社 カストディ銀行等 ) すべての金融機関 ( 保管機関 預金機関 投資事業体 特定保険会社 ) 全ての金融機関 ( 保管機関 預金機関 投資事業体 特定保険会社 ) 対象口座 QI 口座 ( 米国投資のためのカストディ口座 ) 全口座 ( 預金口座 カストディ口座 投資事業体の資本 負債持分 貯蓄性のある保険契約 ) 全口座 ( 預金口座 カストディ口座 投資事業体の資本 負債持分 貯蓄性のある保険契約 ) 特定対象 各国居住者 米国人 ( 米国市民 米国居住者 ) 米国パートナーシップ 米国人 ( 米国市民 米国居住者 ) 米国法人 米国人保有外国事業体 不参加 FFI 非居住者 非居住法人 非居住者保有事業体 源泉 徴収 有一部有り不要 準拠法 米国税法 モデル 1: 協定 国内法 モデル 2: 協定 米国税法 協定 国内法 まえだこうさく 米国公認会計士 税理士法人トーマツ パートナー 大手会計事務所 ニューヨーク事務所で経験を積み 04 年に税理士法人トーマツ入社 米国税務のなかでも外国口座税務コンプライアンス法 (FATCA) 米国源泉徴収制度 (QI 制度 ) 租税条約適用に伴う外国法人米国連邦税申告書( 様式 1120F/8833) 等を専門とする Northwestern University LLM-Tax 修了 8
トーマツグループは日本におけるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( 英国の法令に基づく保証有限責任会社 ) のメンバーファームおよびそれらの関係会社 ( 有限責任監査法人トーマツ デロイトトーマツコンサルティング株式会社 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー株式会社および税理士法人トーマツを含む ) の総称です トーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり 各社がそれぞれの適用法令に従い 監査 税務 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています また 国内約 40 都市に約 7,800 名の専門家 ( 公認会計士 税理士 コンサルタントなど ) を擁し 多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています 詳細はトーマツグループ Web サイト (www.deloitte.com/jp) をご覧ください Deloitte( デロイト ) は 監査 税務 コンサルティングおよびファイナンシャルアドバイザリーサービスを さまざまな業種にわたる上場 非上場のクライアントに提供しています 全世界 150 を超える国 地域のメンバーファームのネットワークを通じ デロイトは 高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて 深い洞察に基づき 世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています デロイトの約 200,000 名を超える人材は standard of excellence となることを目指しています Deloitte( デロイト ) とは 英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( DTTL ) ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します DTTL および各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です DTTL( または Deloitte Global ) はクライアントへのサービス提供を行いません DTTL およびそのメンバーファームについての詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください 本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり その性質上 特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません また 本資料の作成または発行後に 関連する制度その他の適用の前提となる状況について 変動を生じる可能性もあります 個別の事案に適用するためには 当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき 本資料の記載のみに依拠して意思決定 行動をされることなく 適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください 2013. For information, contact Deloitte Tohmatsu Tax Co. Member of Deloitte Touche Tohmatsu Limited 9