経済レポート

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[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

第1章

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

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目次 調査結果の概要 1 小企業編 中小企業編 概況 3 概況 15 調査の実施要領 4 調査の実施要領 16 業況判断 5 業況判断 17 売上 1 売上 2 採算 11 利益 21 資金繰り 借入 12 価格 金融関連 22 経営上の問題点 13 雇用 設備 23 設備投資 価格動向 14 経営

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

2018年夏のボーナス見通し

2017年夏のボーナス見通し

中小企業の動向

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我が国中小企業の課題と対応策

円安の波及効果と企業収益に与える影響

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北陸 短観(2019年6月調査)

北陸 短観(2016年12月調査)

北陸 短観(2019年3月調査)

12月CPI

別紙2

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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現代資本主義論

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

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みずほインサイト 日本経済 2017 年 1 月 17 日 中小企業における賃金上昇の背景労働需給のひっ迫で上昇するも持続性には課題 経済調査部エコノミスト 上里啓 大企業の賃金上昇率が伸び悩む一方 2016 年入

平成 21 年第 1 回 ( 平成 21 年 2 月 1 日実施 ) 鳥取県企業経営者見通し調査報告 目次ヘ ーシ 御利用にあたって 1 1 業界の景気判断 3 2 自己企業の売上高判断 5 3 自己企業の経常利益判断 7 4 生産数量の判断 9 5 在庫水準の判断 10 6 生産設備の規模判断 1

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 30 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 30 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 30 年 1~3 月期 来期平成

1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

実際 円安に伴う原材料コストなどの上昇を背景に 食品メーカー各社は1 月以降の値上げを表明している ( 前頁図表 1) 即席めんや冷凍食品 アイスクリームなど幅広い品目が値上げ対象となっている模様である 日銀短観の2014 年 12 月調査によると 食料品製造業の想定為替レート (2014 年度 )

Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 28 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 28 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 29 年 1~3 月期 来期平成

第2章_プラントコストインデックス

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経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

経済情報:日銀短観(2011年6月)の結果について.doc

平成10年7月8日

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第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

スライド 1

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

富山県金融経済クォータリー(2018年夏)

( 平成 31 年 1 月判断 ) 平成 31 年 1 月 財務省北陸財務局 富山財務事務所 富山市丸の内 1 丁目 5 番 13 号 ( 富山丸の内合同庁舎 5 階 ) TEL(076) ( 財務課直通 )

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富山県金融経済クォータリー(2018年秋)

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

第 70 回経営 経済動向調査 公益社団法人関西経済連合会 大阪商工会議所 < 目次 > 1. 国内景気 2 2. 自社業況総合判断 3 3. 自社業況個別判断 4 4. 現在の製 商品およびサービスの販売価格について 8 参考 (BSI 値の推移 ) 11 参考 ( 国内景気判断と自社業況判断の推

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

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個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

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Economic Trends    マクロ経済分析レポート

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

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月例経済報告

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

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第2部

タイトル

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別 前年同期比増減率 単位 : 社 % 繊維製品 パルプ 紙 化学 石油 石炭 黒転

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

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統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

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ニュースリリース 中小企業の雇用 賃金に関する調査結果 ( 全国中小企業動向調査 2013 年 月期特別調査 ) 年 4 月 8 日株式会社日本政策金融公庫総合研究所 3 割の企業で正社員は増加 3 社に 1 社で給与水準は上昇 従業員数 2013 年 12 月において

目次 平成 30 年 6 月環境経済観測調査地域別統計表 ページ 表 A 地域別対象企業数及び回答率 1 表 1-1 我が国の環境ビジネス全体の業況 主業別 2 表 1-2 発展していると考える環境ビジネス 4 表 2-1(1) 現在行っている環境ビジネス数 主業別 6 表 2-1(2) 現在行って

平成 22 年基準 秋田県鉱工業生産指数月報 平成 30 年 12 月分 鉱工業生産指数の推移 季節調整済指数全国 東北 : 平成 27 年 =100 秋田 : 平成 22 年 =

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

関西の景気動向 2013 年 11 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直しのペースがひところと比べて鈍化している 輸出 ( 円ベース )

金融政策決定会合における主な意見

では 実際に円高はどの程度企業収益に影響を与えるのだろうか 例えば 輸出を中心に営む製造業であれば円高が進むと販売価格 ( 又は産出価格 ) が実質的に下落するため 企業収益を下押しすると考えられる (1ドルの商品を円安時には110 円で販売していたものが 円高時には100 円で販売しないといけなく

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Ⅱ 外国為替市場と為替レート

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

1. 総論 総括判断 県内経済は 緩やかに回復しつつある 項目前回 (3 年 4 月判断 ) 今回 (3 年 7 月判断 ) 前回比較 総括判断緩やかに回復しつつある 緩やかに回復しつつある ( 注 )3 年 7 月判断は 前回 4 月判断以降 足下 (7 月末 ) の状況までを含めた期間で判断して

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

企業物流短期動向調査 ( 日通総研短観 ) 調査結果 ( 抜粋 ) (2008 年 9 月調査 ) 2008 年 10 月 株式会社日通総合研究所 ホームページはこちら

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

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1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

滋賀県内企業動向調査 21 年 1- 月期定例項目結果 1. 自社の業況判断 (1) 自社の業況判断 DI は 四半期連続のプラス水準を維持も は 四半期ぶりにマイナス水準に低下 1. の動向 ( 図 1-1) 今回の調査 (1 年 1- 月期 ) での自社の業況判断 DI は前回 (-9 月期 )

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情報メモ NO.26-128 原油と為替の 2 つの減価 ~ 原油安と円安は景気回復の明るい材料となるか ~ 215 年 1 月 26 日調査部担当鈴木潤 TEL:3-3246-937 1. 原油価格の大幅下落 14 年末にかけて 原油の国際価格と円ドル為替相場が大きく下落している 図表 1 この 2 つの価格低下が日本経済に及ぼすメリット デメリットについてまとめた 原油価格の低下が日本経済に及ぼす影響は ポジティブな内容が多く 大別すれば 1 企業収益の改善 2 個人消費の増加 3 貿易赤字の縮小 が挙げられる 1 企業収益の改善は 燃料など企業が仕入れる原材料の輸入価格が低下することでもたらされる 原油は生産活動で使用されるだけでなく 運送業で使用するガソリンや軽油 サービス業における光熱費などの削減につながるため 幅広い業種において原価や経費が低減される リーマン ショックなどの非常時を除けば 企業の経常利益と原油価格の間には逆相関の関係が窺われ 足元の原油価格の低下は企業収益の増加 1 に波及することが見込まれる 図表 2 2 個人消費の増加は 物価の下落による実質所得の増加を経由したものとなる 日本の輸入額に占める鉱物性燃料の割合は約 3 割にのぼり 輸入物価と連動性の高い原油価格の下落は 国内の消費者物価の低下につながる 図表 3 図表 4 原油価格と消費者物価 ( コア ) の関係を推計すると 1% の原油価格下落によって 消費者物価が.1% 低下すると試算 2 された ( 天然ガスなど鉱物性燃料全体への波及も含む 原油のみの影響では.7% 低下する ) 図表 1 ( ドル / バレル ) 12 原油価格と為替相場 (1ドル = 円 逆目盛り ) 7 ( 前年比 %) 図表 2 17 12 企業収益と原油価格 11 8 8 1 9 4 9 8 1 11 7 12 原油高円高 WTI 6 13 原油安円 / ドル ( 右逆目盛り ) 円安 5 14 1/1 11/1 12/1 13/1 14/1 ( 資料 ) 日経 FQ ( 年 / 月 ) -4-8 4:1 6:1 8:1 1:1 12:1 14:1 経常利益 ( 全規模 全産業 ) ドバイ原油価格 ( 資料 ) 財務省 法人企業統計 日経 FQ 1 みずほ総合研究所では 214 年の原油価格が 13 年に比べて 4% 下落した場合の中小企業の収益に与える影響として 約 1.8 兆円の収益改善と試算する また 三菱 UFJ モルガン スタンレー証券では 214 年 1~11 月の国内企業の燃料調達コストとして約 4.9 兆円 ( 年率換算 全産業ベース ) が削減されたと推計している 2 試算の詳細は 巻末を参照 - 1 -

具体的には 電気代やガス代などの光熱費 ガソリンなどの自動車関係費が低下しやすくなるため その他の財 サービスの購買力が向上 ( 実質所得の増加 ) し 消費が増加することになる 特に 自家用車での移動が多い地方ではガソリンに対する出費負担が重く ガソリン価格の低下は地方経済にとって明るい材料となろう 図表 5 図表 6 加えて 1 企業収益の改善による業績回復は ベアや賃上げなどの下地となり 実質所得の増加に寄与する また 収益改善で企業の値下げ余力が広がることで さらに実質的な購買力は上昇しやすくなり 消費の増加要因となる 輸送用機器 4% 図表 3 その他 12% 品目別輸入額 食料品 8% 原料品 6% 図表 4 輸入物価は原油価格に連動 (21 年 =1 ドル/ バレル ) 14 13 12 一般機械 7% 電気機器 13% 原料別製品 8% ( 資料 ) 財務省 貿易統計 213 年度輸入総額 84.6 兆円 化学製品 8% 鉱物性燃料 34% 28.4 兆円 11 1 9 8 7 6 輸入物価 WTI 5 1/1 11/1 12/1 13/1 14/1 ( 年 / 月 ) ( 資料 ) 日本銀行 企業物価指数 日経 FQ 図表 5 (1 万分比 ) 3 2 1 北海道 東北 関東 消費に占めるガソリンの割合 北陸 甲信越 東海 全国平均 近畿 中国 四国 図表 6 (1 万分比 ) 35 自動車保有とガソリン負担 消 3 鹿児島費全国平均に北海道占 25 め岐阜る神奈川福島ガ 2 ソ愛知リ山梨ン大阪兵庫埼玉 15 沖縄の割京都合 1 東京 円の大きさは自動車保有台数合計九州 5 2 4 6 8 1, ( 注 ) 消費に占めるガソリンの割合は 消費者物価におけるガソリンのウェイトを算出 ( 資料 ) 総務省 平成 22 年基準消費者物価指数の解説 国土交通省 自動車保有車両数 全国軽自動車協会連合会 軽自動車車両数 < > 徳島 山形 < 自動車保有台数 > 群馬 ( 台 / 千人 ) - 2 -

3 貿易赤字の縮小は 交易条件 3 の改善を通じてもたらされる 輸入物価に対する原油の寄与は大きく 原油価格に連動して輸入物価 ( 契約通貨ベース ) は大幅下落している一方 輸出物価の低下は小幅にとどまっており 交易条件は改善している 図表 7 図表 8 仮に 日本を企業体としてみると 現在の交易条件の改善は 仕入価格が大幅に下がっている中で 販売価格の引き下げをほとんど行わない結果 採算が改善することを意味する 震災以降 原油の輸入額は増加しており 13 年度は 14.8 兆円にのぼる ( 鉱物性燃料の輸入額は 28.4 兆円 ) 図表 9 その結果 貿易収支は毎年 1 兆円を超える赤字に膨らんでいる 図表 1 試算を単純化するため為替変動を考えなければ 原油価格は 13 年度平均の約 98 ドル / バレル (WTI) に対し 足元では 5 ドル前後まで下落しているため 原油輸入額の半分にあたる約 7.4 兆円分 ( 鉱物性燃料ベースでは約 14.2 兆円 ) が貿易収支の改善に寄与することになる もちろん 為替変動やエネルギー取引が長期契約であることを勘案すれば 改善幅はより小さなものとなろう それでも 原油に先導されて エネルギー資源の国際価格は低下しており 資源輸入国である日本の貿易赤字が相応に縮小することは期待できる 図表 7 (21 年 =1) 12 < 交易条件 > 改善 輸出入物価と交易条件 1 図表 8 ( 前年比 %) 1 5 輸出価格上昇 輸出入物価と交易条件 2 輸入価格低下 11 悪化 1 9 輸出物価 輸入物価 交易条件 8 1/1 11/1 12/1 13/1 14/1 ( 注 ) 契約通貨ベース ( 資料 ) 日本銀行 企業物価指数 ( 年 / 月 ) -5-1 -15-2 輸入 輸出 輸出価格低下 < 交易条件 > 改善 悪化 輸入価格上昇交易条件前年比 -25 1/1 11/1 12/1 13/1 14/1 ( 注 ) 契約通貨ベース ( 年 / 月 ) ( 資料 ) 日本銀行 企業物価指数 ( 兆円 ) 図表 9 その他 8 石油製品鉱物性燃料 鉱物性燃料の輸入額 天然ガス原油 図表 1 ( 兆円 ) 1 貿易収支と鉱物性燃料の輸入額 6 5 4 2 9:1 1:1 11:1 12:1 13:1 14:1 ( 資料 ) 財務省 貿易統計 鉱物性燃料の輸入額 貿易収支 -5 4:1 6:1 8:1 1:1 12:1 14:1 ( 資料 ) 財務省 貿易統計 3 交易条件とは ある国が商品 1 単位輸出した場合に 何単位の輸入品と交換できるかを表した概念 交易条件は 輸出物価を輸入物価で割って算出することが多く 輸入物価よりも輸出物価の方が上昇すれば交易条件は改善したと考える - 3 -

交易条件によって生じる利益として 交易利得という考えがある 近年の日本の場合 輸出品は国際競争の下で価格が上げられない一方 輸入品は資源価格などが上昇しており 交易利得はマイナスが続いている 図表 11 足元の原油価格の低下は この交易利得の改善にもつながる 交易利得と原油価格の間には負の相関関係がみられ WTI 原油価格が 1 ドル / バレル下落すると 交易利得は約 3.8 兆円増える ( 交易損失は減る ) 足元の 5 ドル / バレルが続けば これまで 2 兆円以上も海外に流出していた国民所得が ほぼゼロまで改善する計算となる 示してきたように 原油価格の低下は企業収益の改善 個人消費の増加 貿易収支の改善など メリットが大きい 一方で デメリットを敢えて挙げれば 国内物価が下押しされることで デフレマインドの払拭が遅れることである 日本銀行は 設定している物価目標の達成が遠のくことを見越して 予防的に追加緩和を決定したのであろう 図表 11 交易利得と交易条件 ( 兆円 ) (21 年 =1) 5 14 交易利得交易条件 ( 右 ) 13 ( 兆円 ) 1 図表 12 交易利得と原油価格 y = -.376x + 18.55 R² =.931-5 -1 12 11 < 交易利得 -1-15 1-2 -2 9 > -25 8 5:1 7:1 9:1 11:1 13:1 ( 注 ) 交易利得は年率値 交易条件は四半期平均 ( 資料 ) 内閣府 四半期 GDP 速報 日経 FQ -3 5 1 15 <WTI 原油価格 > ( ドル / バレル ) ( 注 )WTIは四半期平均 ( 資料 ) 内閣府 四半期 GDP 速報 日経 FQ 2. 円安の進行 ここまでは 為替変動を考慮しないで議論を進めたが 214 年 1 月の日本銀行による追加緩和発表以降 円安が進行している 円安の進行は 原油価格低下の効果を打ち消す部分が多く デメリットが表れやすい 大きな波及経路としては 1 交易条件の悪化 2 消費者物価の上昇 3 実質所得の減少 である 1 交易条件の悪化は 自国通貨が減価することによる輸入物価の上昇で生じる 輸入取引が円建て契約であれば 円安影響を考慮する必要はないが 輸入物価指数における外貨建て比率は約 73% あり 特にウェイトの大きい鉱物性燃料は 9% を超える 図表 13 輸入物価の上昇は企業の仕入コストに対する増加圧力となり 採算を下押しする この輸入物価の上昇が 2 消費者物価を引き上げ 3 実質所得の下押しにつながる 近年の消費者物価 ( コア CPI) を要因分解すると 13 年以降の物価上昇は円安要因が主導していたことが分かる 図表 14 この試算では 前年比 1% の円安が コア CPI において同 +.25% の上昇をもたらす 円安のコストプッシュ インフレにより購買力が低下すれば 個人消費も減少しかねない - 4 -

(%) 1 木材 木製品 図表 13 輸入物価における外貨建ての割合 総平均 8 < 外貨建て比率 > 6 4 2 鉱物性燃料 金属製品 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 < ウェイト > ( 千分比 ) ( 注 )213 年 12 月時点 ウェイトは 輸入全体に占める割合を指す 一般機械は はん用 生産用 業務用機器を指す ( 資料 ) 日本銀行 企業物価指数 その他の製品 食料品 飼料 一般機械 輸送用機器 電気 電子機器 化学製品 繊維品 ( 前年比 %) 4 3 2 図表 14 消費者物価の要因分解 その他 消費税 食料 賃金 輸入物価 円安 需給要因 コアCPI 1-1 -2-3 8:1 8:3 9:1 9:3 1:1 1:3 11:1 11:3 12:1 12:3 13:1 13:3 14:1 14:3 ( 注 ) 要因分解は筆者の推計による 輸入物価は契約通貨ベース その他は推計誤差を指す ( 資料 ) 総務省 消費者物価指数 日本銀行 企業物価指数 厚生労働省 毎月勤労統計 内閣府 日経 FQ 円安によるメリットの主なものは 1 企業収益の改善と 2 生産の国内回帰である 1 円安によって輸出企業の収益は 円建て 外貨建て契約に関わらず改善しやすくなる 円建て契約の場合は 円安によって現地価格が下がるため価格競争力が高まり 販売数量増加による収益改善が見込まれる 一方 外貨建て契約の場合は現地価格に変化がなければ円換算の利益が増加する 加えて 値下げ余地も広がるため 値下げにより販売数量を増加させることも可能である なお 日本の輸出における外貨建て契約の割合は 62% であり 輸送用機械などで 7 割を超える一方 一般機械は 4 割を下回る 図表 15 これらの企業収益は 1 円の円安で.89% ポイント改善すると試算 4 される 図表 16 1 月以降に約 1 円の円安が進行しているため 単純計算で経常利益は 8.9% ポイント増加することとなる 2 国内回帰は生産コストの極小化を目指して行われる 円高時は国内の労働コストが相対的に割高となったため 積極的に海外への生産移管がなされたが 円安に転じたことでコスト圧力が緩和された そのため 大手メーカーの一部では国内生産へ移管する動きが 既に表われ始めている 図表 17 4 試算の詳細は 巻末を参照 - 5 -

国内回帰によって国内生産が活発化すれば 設備投資の誘発や名目所得の増加など 好循環による景気回復を後押しすることになる ただし 現状の国内回帰は 消費地の近辺で生産するというグローバルな拠点配置戦略の一部にとどまっている これまで逆輸入して日本で販売していた製品を 円安を機に国内生産に戻した段階であり 海外向け製品の生産現地化は今後も進められるものとみられる 現に 輸出数量指数は円安が定着した 13 年以降も増加しておらず 低迷している 図表 18 行き過ぎた海外生産移管を修正するにとどまっており 円安であっても輸出の急速な回復は期待できなくなっている 5 (%) 図表 15 輸出物価における外貨建て比率 1 < 外貨建て比率 > 8 6 4 2 繊維品 総平均 1..5 そ金化の一属学輸送用他電気 般製製機器の電子機器機品品製械品. 2 4 6 8 1 < ウェイト > ( 千分比 ) ( 注 )213 年 12 月時点 ウェイトは 輸出全体に占める割合を指す 一般機械は はん用 生産用 業務用機器を指す ( 資料 ) 日本銀行 企業物価指数 図表 16 1 円の円安で上昇する企業利益率 ( 経常利益に対する効果 % ポイント ) 1.5.89 1.17 1.8 1.26.61 全産業製造業素材業種加工業種非製造業 ( 注 ) 想定為替レートが前回調査より1 円変化したときの経常利益修正率を推計 対象企業規模は全規模 非製造業の想定為替レートの調査対象は卸 小売 情報通信業に限定される 推計期間は 24 年 7-9 月期 ~14 年 7-9 月期 推計の詳細は 参考図表 2 を参照 ( 資料 ) 日本銀行 短観 企業時期内容 川崎重工業 ダイキン キヤノン ホンダ 日立 日産 図表 17 13 年 14 年 14 年 15 年 15 年 15 年 ( 資料 ) 各種報道 国内回帰の事例 二輪車の組み立てをタイから国内に移管 二輪車部品の 1/4( 金額ベース ) を国産品に切り替え エアコン 25 万台を中国から国内工場に移管 国内生産比率を 4 5% に引き上げ 原付バイクの一部を熊本工場に移管 家庭用ルームエアコンを栃木工場に完全移管 日本での年間生産を 1 万台ずつ増加 図表 18 輸出数量指数 (21 年 =1) 11 一般機械金属製品 1 9 8 輸送用機器総合 ( 季調値 ) 電気機器 7 1:1 11:1 12:1 13:1 14:1 ( 資料 ) 財務省 貿易統計 5 輸出の伸び悩みについては 輸出の誤算 ( 情報メモ NO.26-61) を参照 - 6 -

ここまで原油安と円安の影響を示してきたが それぞれが逆に作用する項目も多い 両者の波及効果を総合するため 原油価格を 5 ドル / バレル (9 月比約 5% 下落 ) 為替相場を 12 円 / ドル ( 同約 1% 下落 ) の水準を前提とすると 原油価格の下落幅の方が大きく その影響度合いも強く表われる 交易条件において 原油価格は輸入物価にしか作用しないが 円安は輸出物価の上昇 ( 交易条件の改善要因 ) も引き起こすため 交易条件は改善が強く表われよう 国内物価においては 消費者物価 ( コア ) への影響を比較すると 原油安が.5% ポイント下押しする一方 円安が +.25% ポイント上昇させるため 今後物価の伸び率は縮小するだろう 実質所得は 物価の下押し圧力が強いため 増加する見込みである また 企業収益の改善や国内回帰など 名目所得の増加要因も多数存在することから 所得環境は改善が続くとみられる これらの所得の増加に伴って 個人消費も増加が見込まれる 以上のように 原油安のメリットが円安のデメリットを上回っており 景気回復には好材料である 特に 実質所得の増加は 昨年の消費税率引き上げ以降に長引いている個人消費の落ち込みを克服するためには不可欠であり 政府も最も大きな政策課題の一つとして取り組んでいる 原油安は日本経済への追い風となり 足踏み状態にある景気回復が 15 年度に再び加速することが期待される 原油価格 ベア 賃上げ 人手不足 人口減少 貿易赤字 輸入物価 名目所得 円高要因 交易条件 企業収益 国内物価 実質所得 消費 円安 交易条件 輸出物価 国内物価 実質所得 消費 輸入物価 国内回帰 ( 参考文献 ) 内閣府 平成 22 年度経済財政白書 内閣府 平成 25 年度年次経済財政報告 みずほ総合研究所 消費の回復は期待できるのか (214 年 12 月 19 日 ) 大和総研 原油安から消費者物価への波及効果について (214 年 12 月 24 日 ) 三菱 UFJ モルガン スタンレー証券 燃料安 が企業収益に与える影響 (214 年 12 月 25 日 ) - 7 -

( 注 2) 参考図表 1 消費者物価の要因分解 物価関数の推計推計式 :CORE=.55*GAP+.233*WH+.33*IPI+.25*YEN-1+1.878*DUM14+.539*CORE-1+FOOD CORE: 消費者物価 ( 生鮮食品を除く総合 ) 前年同期比 GAP:GDPギャップ WH: 時間当たり賃金 ( 所定内 ) 前年同期比 IPI: 輸入物価 ( 契約通貨ベース ) 前年同期比 YEN: ドル円相場前年同期比 DUM14: 消費税ダミー FOOD: 生鮮食品を除く食品価格の前年同期比 GDPギャップは2 期移動平均 時間当たり賃金は3 期移動平均 推計期間:28 年第 1 四半期 ~214 年第 3 四半期 GDPギャップ 時間当たり賃金は1% 水準 輸入物価 ドル円相場 消費税ダミーは5% 水準で有意 R-squared:.936 Durbin-Watson stat:2.182 GDPギャップは内閣府試算 GDPギャップ=( 現実のGDP- 潜在 GDP)/ 潜在 GDP 生鮮食品を除く食品価格は 実績が公表されているため 変化率にウェイトを掛けた値を寄与度として算入している ( 資料 ) 内閣府 国民経済計算 総務省 消費者物価指数 日本銀行 企業物価指数 厚生労働省 毎月勤労統計 日経 FQ 内閣府 平成 22 年度経済財政白書 ( 注 4) 参考図表 2 円安が企業収益に与える影響 為替影響の推計推計式 : π=a+a1* E+a2* DD π: 経常利益修正率 E: 想定為替レートの前回調査との差 DD: 業況 DIの変化 想定為替レートが前回調査より1 円変化したときの経常利益修正率を推計 推計期間:24 年第 3 四半期 ~214 年第 3 四半期 加工は1% 水準 全産業 製造業 素材 非製造業は5% 水準で有意 対象企業規模は全規模 ( 資料 ) 日本銀行 短観 内閣府 平成 25 年度年次経済財政報告 本資料は情報の提供を目的としており 投資勧誘を目的としたものではありません 投資判断の決定につきましては お客様ご自身の判断でなされますようにお願いいたします また 文中の情報は信頼できると思われる各種データに基づいて作成しておりますが 商工中金はその完全性 正確性を保証するものではありません - 8 -