03-29hp.indd

Similar documents
< 実用例 >2 3 年下 年間授業時数 35 時間 ユッニット A 題材名 教材 参考教材 オリエンテーションまたは < 追加教材 > オリエンテーション : ガイダンス及び 2 年生の復習校歌他 歌詞の内容や曲想の変化を味わって 花 p.4 荒城の月 p.14 荒城の月 ( 山田耕筰補作編曲 )

ディスコグラフィー収載 ディスコグラフィー 2018No.91 ( HP 収載 ) 分類 :CD 作曲家 : ベートーヴェン曲名 : 弦楽四重奏曲全曲演奏 : アルテミス カルテット発売 :Emi Virgin No.: 概要 : アルテミス カルテットの演奏会に行っ

ハモンドJr.2取説.indd

ローマ歌劇場 年全公演スケジュール

ラルフ カークパトリックの芸術 CD 01 ハープシコード リサイタル ウィリアム バード ピーター氏のパヴァーヌとガリア - ト ヤン ピーテルスゾーン スウェーリンク わが青春の日は既に過ぎたり変奏曲 ヨハン ヤーコプ フローベルガー トッカータ第 2 番 パッヘルベル シャコンヌ J.S. バ

Program B 最 心 残 N 響 2012 第 1 位 12 月 C プロ第 1743 回 1 2 月 7 8 日シャルル デュトワ ( 指揮 ) ( ) / 序曲 謝肉祭 / 協奏曲第 2 番 長調 / 交響詩 祭 噴水 松 3 曲全部すごくあっという間に感じてしまう演奏ですごく楽しかったで


NHK 3 N A omstedt PROGRAM A/B/C NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO 17

近藤浩志さん ( 大阪フィルハーモニー交響楽団 /2 のみ ) 枚方市在住 弘田徹さん ( 新日本フィルハーモニー交響楽団 /34 予定 ) コンサート クラシックはいとをかし また 期間中には 同演奏者によるコンサート クラシックはいとをかし をメセナひらかた会館 ( 新町 2-1-5) で開催す

パリ国立オペラ座・ガルニエ  年全公演スケジュール

展示 イベント アクアホール 展示 イベン 掲載している催しは 都合により変更となる場合があります 石巻別街道 石巻別街 石巻別街道 地場産品 の 観光と地場 2 7 火 12 10:00-18:00 日 最終日は16 00まで 入場無料 石巻別街道 国道108号 で結ばれた石巻市涌谷町美里町 大崎

2009 N C N A C 6 4 N Alexander 4 NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO PHILHARMONY OCTOBER 2016

桐朋学園大学大学院修士課程 修了演奏発表 < 大学院修士課程 2 年 > ピアノ 2019 年 1 月 21 日 ( 月 ) 9:30 開演 (9:00 開場 ) 桐朋学園大学調布キャンパス C008 教室

2016 年 12 月 7 日 ( 水 ) 発売 ベスト クラシック 100 ラインアップ 1 ブルーノ ワルター モーツァルト : 交響曲第 40 番 第 41 番 ジュピター & アイネ クライネ ナハトムジーク SICC \ 1600 ( 税抜 ) 2 ブルーノ ワルター モーツァ

音 楽 のりの 1

(2) 定期演奏会サントリーホール 8 公演 第 907 回サントリー定期シリーズ 5 月 8 日サントリーホール指揮チョン ミョンフン共演ペーター ザイフェルト ( フロレスタン / テノール ) マヌエラ ウール ( レオノーレ / ソプラノ ) 第 908 回サントリー定期シリーズ 5 月 3

N N 5 The Arts Desk NHK Paavo Järv Paavo Järvi Julia Baier PROGRAM A/C NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO 3

Microsoft Word - ほ 堀 正文

4 分の3 拍子 ) ア(123) 終わりの部分 ( コーダ ) という三部形式である アの3つの旋律は, ホルンが中心となって奏でられており, 全体的に華やかな印象である また, イでは, 弦楽器が中心となって, 主な旋律が繰り返し演奏されており, 繰り返されながら楽器が増えていくことで, 重厚で

TCM 2019年度 入学試験科目と課題曲

月のマエストロヒュ決して早くなかったが 演奏解釈は今フー ウルヒュー ウルフは国際的な環境に育ち 現在も国際的に活躍する音楽家である しかし世界の名だたる音楽家のように 幼い頃から音楽の道を一直線に走った訳ではなかった ウルフは両親の仕事の関係で パリのアメリカ人 として生まれた その後ロンドンの学

平成30年度事業計画

楽譜基礎

Ⅰ 事業の日程と内容

第2学年音楽科学習指導案

phil16May.pdf

第 1 学年音楽科 1 音楽を学ぶ意義 目的 何のために学ぶのか 表現及び鑑賞の幅広い活動を通して, 音楽を愛好するとともに, 音楽活動の基礎的な能力を伸ばし, 音楽文化についての理解を深め, 広く音楽に親しむ 2 学習到達目標 この 1 年間を通して どのような力をつけていくのか 音楽活動の楽しさ

項目 1 京都 国際音楽学生フェスティバル2017 ( 108,271,599 ) 招請国アメリカ イタリア オーストリア スペイン チェコ ドイツ フランス ポーランド ロシア日本出演学生 102 名 ( 内 4 名はプレフェスティバルコンサートにも出演 ) 開催時期プレフェスティバルコンサート平

時間芸術を鑑賞するための方法論 : 臨場感を味わいなが Titleら構造から学ぶ音楽美鑑賞法の提案 : 旋律記憶指導法と教材選択の視点 Author(s) シャイヤステ, 榮子 Citation 琉球大学教育学部音楽科論集 (4): Issue Date URL h

福田可織 Kaori Fukuda 東京音楽大学附属高校 大学を経て同大学研究科ピアノ ソロコース修了 チェンバロ聴講生 フライブルク音楽大学大学院を首席で卒業 Diplom 取得 ケルン音楽大学 Konzertexamen 科を首席で卒業 ドイツ国家演奏家資格取得 吹田音楽コンクール入賞 ピアノ教

16 日 ( 金 ) 毛利伯郎 チェロ マスタークラスレッスン日程表 16-Aug(Fri) Hakuro Mori Violoncello Master Class Lesson Schedule 13:00 受講者 Name 受講曲 Program 伴奏者 Pianist 開校式 青少年総合研修

ログラム今後の公演案内読響ニュース4. 28[ 土 ] 4. 29[ 日 祝 ] 指揮 / アジス ショハキモフピアノ / ガブリエラ モンテーロ 第 207 回土曜マチネーシリーズ東京芸術劇場コンサートホール / 14 時開演 Saturday Matinée Series, No. 207 Sa

Taro-12事例08.jtd

2-1_ pdf

3 研究課題と研究の手だて (1) 研究課題 音楽から感じ取ったことや表現したい思いを伝え合う活動の充実 研究主題 児童一人ひとりが生き生きと学ぶ授業の創造 ~ 主体的な言語活動の工夫 ~に基づき 児童一人ひとりが楽曲を聴いて 感じ取ったことや表現したい思いを伝え合うことにより 音楽に対する自分の思

ログラム今後の公演案内読響ニュース第 22 回読響メトロポリタン シリーズ東京芸術劇場コンサートホール /19 時開演 第 590 回サントリーホール名曲シリーズサントリーホール /19 時開演 プ3.4[ 金 ] The 22nd Yomikyo Metropolitan Series 3.10[

N N N 12 N N N toit 13 8 A PROGRAM A/B/C NHK SYMPHONY ORCHESTRA, TOKYO 11

(Microsoft Word - \211\271\212y\211\310\201i\340_\226{\224\362\222\271\202Q\201j.docx)

p1

Taro-プレミアム第66号PDF.jtd

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

今月のマエストロ今月のマエストロMaestro of the month 人気上昇中 新鋭指揮者の筆頭格 三大交響曲 に期待の初登場 川瀬賢太郎 Kentaro Kawase Maestro of the month 深い音楽性と的確なタクト信頼を集める最高の職人芸 円光寺雅彦 Masahiko E

メシドール アンサンブル演奏会 ヴォルフガング アマデウス モーツァルト ( ヴェルナー ロットラー編 ) 木管五重奏曲ハ短調 ( 弦楽五重奏曲第 2 番 K.406 の編曲版 ) 第一楽章 Allegro 第二楽章 Andante 第三楽章 Menuetto in Canone 第四楽章 Alle

(Microsoft Word - Weekly\223\307\216\322\203A\203\223\203P\201[\203g\222\262\215\270\214\213\211\312\203\214\203|\201[\203g_No.1_Ver.3.0.doc)

歌劇 カヴァレリア ルスティカーナ より ostermusic rental collection ピエトロ マスカーニ / 樽屋雅徳

DVD DVD

音楽科学習指導案題材名 いろいろな音色を感じ取ろう 学年 : 第 4 学年 13 名 ( 男子 8 名 女子 5 名 ) 日時 : 平成 26 年 10 月 15 日 ( 水 ) 第 5 校時指導者 : 安芸高田市立根野小学校大野裕子 1 題材について 題材の目標 いろいろな音の特徴や音色の違いを感

Microsoft Word - 11 進化ゲーム

ローマ歌劇場 年全公演スケジュール

Taro-⑪JS5シンガーソングライタ

<835A E E A B83678F578C768C8B89CA E786C7378>

3 月 日 ( 水 ) 茨城国際音楽アカデミー in かさま公開レッスン受講 0:00~ AV-4 吉村美智子 ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品 35 第 3 楽章 AP-3 望月晶 幻想曲 ( スコットランド ソナタ ) 嬰ヘ短調作品 8 U9 0:45~ AV-5 米倉姫華 ヴァイオリン協奏曲第 3

Try*・[

試験問題評価委員会報告書

これはこのままでいいのか

Transcription:

Philharmony October 2012 Lorin Maazel 今月のマエストロロリン マゼール 真に偉大なるものとは何かを知らしめるマゼールの指揮芸術 文 諸石幸生

月のマエストロロリストロということになる 以下は筆今ルン マゼー現代においては 新しい演奏家の進出が著しく 演奏スタイルも激しい変化を見せている さらに古楽演奏が普及 定着 浸透してきた中で 次の主流はどうなるのかといった関心も高い いずれにしても 現代の演奏のあり方と 20 世紀のそれが大いに異なることは明らかであろう それは 20 世紀が 巨匠芸術の時代 であり 名演の時代 と呼ばれたように 音楽を聴くということが 名演奏家たちの至芸を聴くということを意味する そんな時代であったからである 即ち 20 世紀にあっては 演奏家たちが主役となって楽壇をリード ファンも彼らの演奏家としての魅力はもとより 人格的な味わいまでも堪能してきたのである フルトヴェングラー ワルター トスカニーニ クレンペラー ベームなどがその代表格だが 21 世紀になってそうしたいわゆる大物がいなくなってきたこともあり より作品主体に鑑賞するといった姿勢が主流となり 音楽の聴き方は大きく変わってきたのである だが そのような巨匠芸術を惜しむ声は今なお大きいのも事実である 巨匠たちの時代 の継承者今回 N 響に初登場する指揮者マゼールはそうした 20 世紀の巨匠たちを直接知るだけではなく 自らをそうした演奏芸術の継承たるべきとの認識をもつ 現代では数少ないマエ 者が過去に行ったインタビューからの引用である 私はそうした 20 世紀の いや 19 世紀以来の演奏芸術の伝統を継承していく責任すら感じています 幸いにも私はストラヴィンスキー ヒンデミット ラフマニノフ シェーンベルクを直接知り さらにクライスラーやハイフェッツ ミルシテインとも交流がありました もちろんトスカニーニの演奏も聴いていますし 11 歳の時にはトスカニーニのために組織されていたNBC 交響楽団の指揮台にも立っています トスカニーニとは話もしましたが 何かを教えてもらうというのではなく 祖父のような優しい方といった印象でした 偉大なる音楽家を直接知る人も現代では本当に少なくなってきましたから 私にはそうした伝統を伝えていく責任があるのです 20 世紀が 巨匠たちの時代 であったことは疑いようがありません 私はこうした栄光の時代が 21 世紀に失われつつあることを危惧しています そしてこれは 演奏家側の責任というよりも 実は社会の問題 即ち 現代に生きる人々が偉大さを見ようとせず 探究する情熱も失っている そうした現実に根ざしているのではないかと心配しています 皆が同じでなくてはならないといった考え方がはびこり 偉大さとは無縁の生活を送ろうとしています こうした傾向はあらゆる世界で言えることですが 芸術の世界ではこ

とに顕著だと思われます 人々はスポーツの世界にスターを求めますし ちまなこ恋人を喜ばせるためには血眼になって最高のレストランを探し求めます でも音楽の世界でそうしたことはしなくなりました 演奏家に対する関心が希薄になってきたのです でも私はこう思います 人はやはり偉大なる人間に出会いたいし 名演にも触れたいのです 古楽もいいし 現代の音楽も素晴らしいです しかし 価値観の多様化が ともすると自分たちの信じるものを放棄せざるを得ない といった不思議な状況を作り出し 真に偉大なものから離れていく そんな情況すら作り出しているのではと心配しています マゼールはこのように語っているが 今回のN 響との初共演は さすがに世界を知るマエストロというべきか いや名演の歴史そのものを自ら歩んできたマエストロならではの骨太のプログラムが 3 つ並ぶ 巨匠芸術を堪能する骨太のプログラム Aプロは ロシアの作品集であり チャイコフスキー グラズノフそしてスクリャービンの名作が演奏される マゼールの各作品への想いは マゼール自らが寄せたメッセージ (N 響ホームページに掲載 ) をお読みいただくとして 振り返ってみるとマゼールの家系はもともとロシア系であり キャリアの最初期 1960 年代の初めにはウィーン フィ ルハーモニー管弦楽団とチャイコフスキーの交響曲全集を収録していたことなどが懐かしい もちろんグラズノフの ヴァイオリン協奏曲 がウィーン フィルのコンサートマスター キュッヒルのもとで演奏されるのも待ち遠しいし もっと知られてしかるべきというマエストロの真意も必ずや理解されよう そしてスクリャービンの 法悦の詩 も大作であり N 響がどのような響きと音色とでこの名作を歌い上げてくれるのか興味は尽きない Bプロは マゼール自身が 名曲コンサートであり コメントはむしろ控えて 作曲家たちの天才たる証をお愉しみあれ といった調子の文を寄せている ( 前出 :N 響ホームページ ) モーツァルトの プラハ 交響曲 はウィーン的な味わいになるのか興味津々だが ウェーバーの クラリネット協奏曲 がウィーン フィルの首席オッテンザマーのソロで聴けるというのもなんともぜいたく贅沢である さすがにウィーン フィルとの抜群の相性をもって知られるマゼールにして初めて実現可能な人選とプログラムである もちろんラヴェルの 2 曲がこの日のハイライトとなることは論を待たない 心憎い巧さで作品の核心に肉薄するだけではなく オーケストラのコントロールと表現のスケール感という点かたんのうらもマゼールの巨匠芸術を堪能する 聴きどころ満載の一夜となろう そしてCプロは リング である Philharmony October 2012

月のマエストロロリプロフィール今ン マゼールこれは 歌のない 指環 としてはワーグナーの楽劇そのものがもつ 1987 年にベルリン フィルがマゼーオーケストラ音楽としての豊かさをルのもとで録音をした版による演奏改めて堪能させてくれよう である それは ほぼ 70 分で聴くいずれにしても 今回のプログラオーケストラ版の リング だが ムは初顔合わせとは思えないほど盛不思議に聴き手は 指環 の世界をりだくさんである こんな贅沢な音かえってイメージ豊かに 想像力を楽の祭典はマゼールのみに可能なこたくま逞しくして鑑賞できるように思われとであり これもまた聴き手が憧れてならない ライトモティーフにこを胸に浸りきる巨匠芸術ということだわるのではなく 作品全体をあくになろう までも自然かつ有機的に再現しよう ( もろいし さちお音楽評論家 ) としたマゼールの労作であり それマゼールは 今や年齢的にも キ名ヴァイオリン奏者としても広く知ャリアの豊かさの点からも さらにられている 名声という点からも 世界屈指の存ウィーン フィルハーモニー管弦在である 指揮者としてのキャリア楽団とはことに関係が深く 名誉団も既に 10 歳前後からスタート 神員であり ニューイヤー コンサ童として話題を集めてきた トスカート にはこれまで 11 回登場してくんとうニーニからの薫陶も受けるなど歴史いる ベルリン フィルハーモニー的な存在でもある 管弦楽団ともたびたび共演しており これまでウィーン国立歌劇場総監ビューロー シルバー メダルが授督を筆頭に ベルリン ドイツ オペ与されている 2012/13 年のシーズラ クリーヴランド管弦楽団 バインからミュンヘン フィルハーモニエルン放送交響楽団 ニューヨーー管弦楽団の音楽監督に就任する ク フィルハーモニック フランス 1963 年以来 来日を繰り返して国立管弦楽団など世界屈指のオペラおり 最も親しまれている名指揮者ハウスや名門オーケストラなどの音の一人だが NHK 交響楽団を指揮楽監督 首席指揮者を歴任 バイロするのは今回が初めてである また イト音楽祭にも最年少の若さで登板マゼール自身が編曲したワーグナーするなど その歩み一つ一つが歴史の ニーベルングの指環 管弦楽曲的な偉業として記録されている さ集などのプログラムに期待感が募る らに作曲家 編曲家としても著名で まさに現代の巨匠である

Program A 第 1736 回 NHK ホール 10/13[ 土 ] 開演 6:00pm 10/14[ 日 ] 開演 3:00pm [ 指揮 ] ロリン マゼール [conductor]lorin Maazel 1736th Subscription Concert / NHK Hall 13th (Sat.) Oct, 6:00pm 14th (Sun.) Oct, 3:00pm Philharmony October 2012 [ ヴァイオリン ] ライナー キュッヒル [ コンサートマスター ] 篠崎史紀 [violin] Rainer Küchl [concertmaster] Fuminori Shinozaki チャイコフスキー組曲第 3 番ト長調作品 55(42 ) Ⅰ エレジー Ⅱ 憂鬱なワルツ Ⅲ スケルツォ Ⅳ 主題と変奏 Peter Il ich Tchaikovsky (1840-1893) Suite No.3 G major op.55 Ⅰ Élégie Ⅱ Valse mélancolique Ⅲ Scherzo Ⅳ Tema con variazioni 休憩 Intermission グラズノフヴァイオリン協奏曲イ短調作品 82 (20 ) Ⅰ モデラート Ⅱ アンダンテ ソステヌート Ⅲ アレグロ スクリャービン法悦の詩 (20 ) Aleksandr Glazunov (1865-1936) Violin Concerto a minor op.82 Ⅰ Moderato Ⅱ Andante sostenuto Ⅲ Allegro Aleksandr Skriabin (1872-1915) Le poème de l extase

Soloist Program A Winnie Küchl ヴァイオリン ライナー キュッヒル Rainer Küchl ウィーン フィルハーモニー管弦楽団の名コンサートマスターであり ソリストとしても世界的に活躍している 1950 年 8 月 25 日 オーストリアのヴァイトホーフェン アン デア イプスに生まれた 14 歳でウィーン国立音楽アカデミー ( 現ウィーン国立音楽大学 ) に入学し 1971 年 21 歳でウィーン フィル及びウィーン国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターに就任 カール ベームの時代から現代に至るウィーン フィルの名演を支える 1973 年にキュッヒル カル テット ( オーストリア国外およびCDではウィーン ムジークフェライン弦楽四重奏団 ) を結成 1982 年からウィーン国立音楽大学教授を務め ヴァイオリン科主任のポストにある NHK 交響楽団とは 2007 年 12 月の定期公演でプフィッツナーの ヴァイオリン協奏曲 を共演 また 2011 年 5 月の定期公演ではゲスト コンサートマスターを務め R. シュトラウスの交響詩 英雄の生涯 で素晴らしいソロを披露した ( 山田治生 )

Peter Il ich Tchaikovsky 1840-1893 チャイコフスキー 組曲第 3 番ト長調作品 55 チャイコフスキーは 交響曲第 4 ォ 6/8 拍子 プレスト ホ短調 テ番 (1877 年 ) 以後 交響曲をたびたンポでほかの 3 曲と対比をなす A び試みては断念する BAの構造 2 つの動機 3 小節 1884 年 4 月 7 月 ウクライナの ( 木管 ) と 5 小節 ( 弦 ) からなり カメンカでは結局 組曲に変え 同 2/4 拍子が挿入される 第 4 曲 主年末に 組曲第 3 番 の最終稿を完題と変奏 主題は 4/8 拍子 アンダ成 ドイツ人指揮者エルトマンスデンテ コン モート ト長調 ロコルファー (1885 1889 年在露 ) にコ風の主題による変奏曲 (1877 年 ) 捧げた 第 3 番 はすぐ人気作となとともに 彼の高い変奏技術を示す った チャイコフスキーの自作指揮全 12 の変奏曲で 前半 6 曲は優雅なリストでも 1889 年から 1893 年ま主題をあまり変えず 楽器編成などで全曲を計 9 回ともっとも多い 彼で新しい表現に挑戦 グレゴリオ聖の組曲は現在 さほど重視されてい歌 ディエス イレ を響かせた第 4 ないが 交響曲の規範から解放され変奏 ( ロ短調 ) とフーガの第 5 変奏た作曲者は 自由に純粋な音楽美を (55 小節 ) 以外は 曲の長さと調性めざす 後の交響曲への試行錯誤のなどは共通する 後半 6 曲では 多跡としても この作品は興味深い 彩な音楽イメージを発展させた 第第 1 曲 エレジー 6/8 拍子 アン 7 変奏で主題のヴァリアントを表現 ダンティーノ モルト カンタービレ 第 8 変奏でフリギア旋法を響かせる ト長調 ABCBAのシンメトリッ第 9 変奏 ( イ長調 ) で民衆の祭りをクな構造 2/4 拍子が巧みに挿入され再現 第 10 変奏 ( ロ短調 ) から都会ゆううつる 第 2 曲 憂鬱なワルツ 3 /4 拍風の舞踊音楽になる 第 11 変奏 ( ロ子 アレグロ モデラート ホ短調 長調 ) で持続低音を効果的に響かせ ワルツを愛したチャイコフスキーの 第 12 変奏のポロネーズで終わる 悲しいワルツ 第 3 曲 スケルツ ( 伊藤恵子 ) Philharmony October 2012 作曲年代 :1884 年 4 月 7 月 19 日 / 31 日 * 初演 :1885 年 1 月 12 日 / 24 日 * ペテルブルク ハンス フォン ビューロー指揮 ロシア音楽協会交響楽演奏会 日付は旧ロシア暦 * は西暦 楽器編成 : フルート 3( ピッコロ 1) オーボエ 2 イングリッシュ ホルン 1 クラリネット 2 ファゴット 2 ホルン 4 トランペット 2 トロンボーン 3 テューバ 1 ティンパニ 1 大太鼓 小太鼓 シンバル トライアングル タンブリン ハープ 1 弦楽

Program A Aleksandr Glazunov 1865-1936 富裕な生家 音楽に理解のある両 親 早くからの楽壇の認知と庇護 グラズノフの音楽修業時代は ロシアのどの先輩よりも恵まれていた その後 1890 年代には作曲家 指揮者としてロシア内外で名声を確立 教育界でも活躍し 20 世紀初頭には 30 代半ばにして ロシア音楽界の実力者となっていた 創作力の絶頂期となる当時の代表作が 交響曲第 7 番 (1902 年 ) と 第 8 番 (1905 1906 年 ) そしてこの ヴァイオリン協奏曲 である 初の協奏曲だが 13 年前のヴァイオリンとオーケストラのための小曲 瞑想 作品 32(1891 年 ) せいちに比べ 二つの媒体の精緻な書法とそこから生まれる豊かな表現力ほか あらゆる点で作曲当時の彼の円熟ぶりがうかがわれる この作品は協奏曲としては短く 全体は休みなく演奏される モデラート アンダンテ ソステヌート アレグロという 伝統的な 3 つの楽章を並べながらも モデラートと中間楽章を重層的につなげた そのため作品は単一楽章とも 2 楽章構成とも解釈できる グラズノフは音楽理論を完璧に修め 完成度の高い 形式を多数試みた すぐれた形式感 かいぎやく で知られる彼の諧謔的な仕掛けとも 言えるだろうか そこでは 重厚で グラズノフ ヴァイオリン協奏曲イ短調作品 82 ひ ご 壮麗なオーケストラ 名技の魅力にあふれる独奏ヴァイオリンが躍動する ラフマニノフの ピアノ協奏曲第 2 番 を想わせる色彩豊かな半音階的進行が多用され 哀しさと優しさ 緊張感と安らぎにみちた美しつむい旋律が次々と紡ぎだされる ヤッシャ ハイフェッツほか多くの名手が早くからこの曲を愛奏した 以来演奏家と音楽ファン双方に絶大な人気を博し 世界の舞台に定着した数少ないグラズノフ作品のひとつとなった 現在ではチャイコフスキーやプロコフィエフ ショスタコーヴィチらのヴァイオリン協奏曲とともに ロシア ヴァイオリン音楽の名作とされる 力強い一団 ( ロシア五人組のこと ) とチャイコフスキーら恩師と先輩のよき伝統を守り その発展をひたすら心がけた 19 世紀ロシアの古典派作曲家グラズノフ 16 歳で出世作 交響曲第 1 番 を書いたかつての ロシアのモーツァルト の創作力は それからほぼ四半世紀を経た 40 歳前後で 発展の終わりを迎えることになる 多くの時間と精力を要した音楽院の仕事 健康状態の悪化と ロシア革命などの社会不安に加え ますます強くなる新たな音楽潮流が影響したのだ 折衷主義者とされた彼は 音楽史の転換期に

あって 新たな可能性を求める大胆な実験には激しい拒否感を示した R. シュトラウスの音楽にさえ嫌悪感をおぼえ 後輩であるプロコフィエフ ストラヴィンスキーらの音楽など論外だった ただし若きショスタコーヴィチの輝かしい未来を予知できる眼力はもっていたが グラズノフの ヴァイオリン協奏曲 は 彼の創作力の絶頂期の終わりを 少なくとも終わりの始まりを 告げる作品だった それはまた終わりゆく後期ロマン派を締めくくる最後の輝かしいヴァイオリン協奏曲となった 多くの楽器を修得したグラズノフだが 独奏ヴァイオリンのパートの創作には ペテルブルク音楽院の同僚レオポルド アウアーらに助言を仰いだ 完成作を献呈されたこの同僚は初演を快諾 翌年 2 月 / 3 月 * の初演で作曲者は誇らしげに指揮棒を振った 第一次ロシア革命直後のペテルブルク 少なからぬ音楽院学生が革命運動に参加し 教師の中には革命支持派も多い 街には不穏な空気が充満していたが 演奏会場をうめた聴衆は この協奏曲に陶然となり アサフィエフほか評論家連も新作を高く評価し 歓迎した グラズノフの新作誕生に 強い影響を与えたチャイコフスキーの ヴァイオリン協奏曲 ( 初版 ) は 同じアウアーに献呈されたが初演は断うよきよくせつられ 紆余曲折を経てやっと実現した初演 ( ウィーン ) は ハンスリックから酷評された 先輩の名曲初演秘話を想えば この新作はまことに祝福されて登場したのだった 第 1 楽章モデラートイ短調 4/4 拍子 自由なソナタ形式 第 1 主題はイ短調 第 2 主題はへ長調 第 2 主題を中心とした展開部は 完結しないままアンダンテに代わる 第 2 楽章アンダンテ ソステヌート変ニ長調 3/4 拍子 変ニ長調の哀しげな主題が歌われ 独奏ヴァイオリンのピッツィカートを経て 前楽章の展開部と再現部が始まる 第 1 主題 ( イ短調 ) は嬰ハ短調などで展開され 前楽章の二つの主題が互いに応答を繰り返す 作曲者自作の華麗で技巧的なカデンツァが続き 完全に終結しないまま 第 3 楽章に移る 第 3 楽章アレグロイ長調 6/8 拍子 自由なロンド形式 狩猟音楽のモティーフによる二つの主題は バグパイプやバラライカの響きを模倣して 南ロシアの陽気で楽しい祭りの雰囲気を漂わせる ( 伊藤恵子 ) Philharmony October 2012 作曲年代 :1904 年初演 :1905 年 2 月 19 日 /3 月 4 日 * ペテルブルク 作曲者の指揮による 独奏レオポルド アウアー 日付は旧ロシア暦 * は西暦 楽器編成 : フルート 2 ピッコロ 1 オーボエ 2 クラリネット 2 ファゴット 2 ホルン 4 トランペット 2 トロンボーン 3 ティンパニ 1 トライアングル シンバル グロッケンシュピール ハープ 1 弦楽 ヴァイオリン ソロ

Program A Aleksandr Skriabin 1872-1915 スクリャービン 法悦の詩 アレクサンドル スクリャービンの同一性を信じ 自分の芸術によっは 43 歳という若さで亡くなったて世界を変革し 原初の単一性に回ので 作曲家としての活動期間はそ帰させることができると 本気で信れほど長いわけではない しかし じるようになった さらには 自分彼が初期に書いたショパン風のピアには奇跡的な力があると信じ キリノ曲と 後半生の作品 例えば後期ストをまねて ジュネーヴで湖水ののピアノ ソナタとの間には 同じ上を歩こうとするなど 常軌を逸し作曲家の作品とは思えないほどの違た行動も現れた スクリャービンのいがある スクリャービンの作風に周囲には このような彼の変化につこのような大きな変化をもたらしたいていけなくなった人も少なくなかのは 神智学と呼ばれる思想であっった 当時すでに別居していた妻ヴた ェーラもその一人だった スクリャスクリャービンが神秘主義に傾倒ービンはヴェーラを捨て 彼の思想するようになったのは 創作力が最を理解してくれる内縁の妻タチヤーも充実していた 1903 年ごろからだナとともに イタリアへ行き そこった 彼は さまざまな哲学書を読に居を構える みふけり 神秘主義的傾向の強い哲 法悦の詩 をスクリャービンが学者ウラディーミル ソロヴィヨフ作曲し始めたのは 1905 年頃だった らに強い影響を受け 次第に音楽と彼は一時期 朝から晩まで騒々しい哲学の融合を考えるようになる こ八百屋の屋根裏部屋で カフェからの傾向は 1905 年 ブラヴァツキ借りた音程の狂ったピアノでこの曲ー夫人の著作 神智学の鍵 を読んを作曲していたが 作曲に夢中だっだことにより 決定的となる たので何一つ不平を言わなかったと神智学とは 古代ギリシャやインいう 作曲中から彼は 法悦の詩 ドの思想からカバラや錬金術まで を何人かの知り合いにピアノで聴かあらゆる宗教や思想を統合しようとせていて 評判はよかったようだ するもので 全宇宙の根底には万物全曲の完成は 1907 年冬 ニューヨの根源たる絶対的な神性が存在し ークでの初演は 1908 年の末だった 人間はその神性と本質的に同一であ年が明けた 1909 年 1 月には ペるというような考え方を基本にしてテルブルクでフーゴー ヴァルリッいる このような考え方に強く共感ヒの指揮する宮廷交響楽団によりロしたスクリャービンは 自分と神とシア初演が行われた 当時ペテルブ

ルク音楽院の学生で 仲の良い友人であったプロコフィエフとミャスコフスキーがこの演奏を聴いているが 将来の大作曲家二人は この音楽がまったく理解できず 当惑して顔を見合わせたという 2 月にはモスクワでも演奏されたが 評価は二分された 曲は 夢想的な序奏に始まり 寄 こうこつ せては返す恍惚感の波が次第に高揚 していき 鐘やオルガンが鳴り渡る圧倒的なクライマックスへと到達する 自由なソナタ形式とされているが あまり古典的な枠組みにはめ込んでしまう必要はないだろう 法悦の詩 を交響曲と呼ぶべきかどうかについては いろいろな意見がある スコアには 交響曲 の文字はなく 単に 管弦楽のための法悦の詩 というタイトルが書かれているだけだ ゆるやかなソナタ形式とはいえ 単一楽章でトランペットの独奏を持つ外貌も 伝統的な意味での交響曲という形式に沿っているとは言えない ただ 実際にどう呼ぶかはともかく この曲が 楽あいまい章融合や調性の曖昧さへの指向という点でも 神秘主義的な内容という点でも 第 3 番 までの交響曲の 延長線上にある ( その間には大きな飛躍があるとしても ) 作品であるとは言っても良いだろう なお この曲と関連して スクリャービンは 一つのテキストを書いている これは 300 行以上にわたるかなり長大な詩で 魂は 生への渇望の翼をもって 飛翔へと導かれる と始まり 宇宙は喜ばしい叫びに響き渡る 我あり! という詩句で終わる 象徴主義風な内容を持っている 彼はこのテキストを重要なものと考えていたが 結局 楽譜には印刷しなかった 詩の内容は 音楽と関連してはいるが 音楽がこれを直接描写しているわけではないので 描写音楽とみなされることを避けたためと思われる ( 増田良介 ) Philharmony October 2012 作曲年代 :1905 1907 年初演 :1908 年 12 月 10 日 ニューヨーク モデスト アルトシューレル指揮 ニューヨーク ロシア交響楽団協会 楽器編成 : フルート 3 ピッコロ 1 オーボエ 3 イングリッシュ ホルン 1 クラリネット 3 バス クラリネット 1 ファゴット 3 コントラファゴット 1, ホルン 8 トランペット 5 トロンボーン 3 テューバ 1 ティンパニ 1 トライアングル シンバル 大太鼓 タムタム 鐘 グロッケンシュピール チェレスタ ハープ 2 オルガン 弦楽

Program B Program B 第 1738 回サントリーホール 10/24[ 水 ] 開演 7:00pm 10/25[ 木 ] 開演 7:00pm 1738th Subscription Concert / Suntory Hall 24th (Wed.) Oct, 7:00pm 25th (Thu.) Oct, 7:00pm [ 指揮 ] ロリン マゼール [conductor]lorin Maazel [ クラリネット ] ダニエル オッテンザマー [ ゲスト コンサートマスター ] ヴェスコ エシュケナージ [clarinet] Daniel Ottensamer [guest concertmaster] Vesko Eschkenazy モーツァルト交響曲第 38 番ニ長調 K.504 プラハ (25 ) Ⅰ アダージョ アレグロ Ⅱ アンダンテ Ⅲ プレスト ウェーバークラリネット協奏曲第 2 番変ホ長調作品 74(25 ) Ⅰ アレグロ Ⅱ アンダンテ コン モート Ⅲ アラ ポラッカ Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) Symphony No.38 D major K.504 Prague Ⅰ Adagio Allegro Ⅱ Andante Ⅲ Presto Carl Maria von Weber (1786-1826) Clarinet Concerto No.2 E-flat major op.74 Ⅰ Allegro Ⅱ Andante con moto Ⅲ Alla polacca 休憩 Intermission ラヴェルスペイン狂詩曲 (16 ) Ⅰ 夜への前奏曲 Ⅱ マラゲーニャ Ⅲ ハバネラ Ⅳ 祭り ラヴェルボレロ (15 ) Maurice Ravel (1875-1937) Rapsodie espagnole Ⅰ Prélude à la nuit Ⅱ Malagueña Ⅲ Habanera Ⅳ Feria Maurice Ravel Boléro ヴェスコ エシュケナージ 1970 年 ブルガリア生まれ ロンドンのギルドホール音楽院を 1992 年に修了 1999 年よりロイヤル コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートマスターに就任 コンセルトヘボウ室内管弦楽団およびピアニスト リュドミル アンゲロフとのデュオでも活躍する N 響には 2 回目の登場となる

Soloist Philharmony October 2012 Dieter Schewig クラリネット ダニエル オッテンザマー Daniel Ottensamer 父エルンストに続き ウィーン フィの 大二重奏曲 を収録したCDもリリルハーモニー管弦楽団の首席クラリネッースした オーケストラ奏者としてはウト奏者を務めているダニエル オッテンィーン フィルハーモニー管弦楽団およザマーは 1986 年ウィーン生まれ ベびウィーン国立歌劇場管弦楽団で演奏し ルリン フィルハーモニー管弦楽団の首楽団員を中心とした室内楽にも参加 人席奏者を務めている弟のアンドレアスと気ピアニストや歌手たちとの共演も多い 共に まだ 20 代でありながら世界的にその一方でソリストとしても ザルツブ注目されるプレイヤーとなった 父弟とルク モーツァルテウム管弦楽団 ウィ共演したCD オッテンザマーと息子たーン放送交響楽団 東京交響楽団などにち は ウィーン特有のサウンドを伝え客演 NHK 交響楽団との共演は今回がる名演として絶賛されている 2011 年初めてとなる にはブラームスのソナタ集とウェーバー ( オヤマダアツシ )

Program B Wolfgang Amadeus Mozart 1756-1791 1787 年 1 月 モーツァルトは初めてボヘミア ( 現チェコ ) の首都プラハを訪れた 前月 同地で上演され 大ヒットとなった フィガロの結婚 の作曲者として招待されたのである 彼はオペラの作曲を依頼され 同じ年の秋にもう一度 ボヘミおもむアの古都に赴く 新作 ドン ジョヴァンニ も やはり大成功を収 めた この年 2 回の旅行を通じて きずな モーツァルトとプラハとは特別な絆 で結ばれることとなった その都市の名前が 交響曲第 38 番 の愛称となっているのは この曲が 1 月の旅行中に開かれた演奏会で披露されたからである もっとも 交響曲はプラハからの招待に先立って出来上がっていたようだから 同地での演奏を目的として書かれたとは考えにくい 完成からボヘミアの地に旅立つまでの約 1 か月の間に ウィーンですでに初演されていた可能性も大いにある とはいえ 作曲家の音楽に深い理解を示した都市であり 黄金のプラハ とも呼ばれる美しい中欧の街の名は この傑作交響曲のネーミングとして いかに モーツァルト 交響曲第 38 番ニ長調 K.504 プラハ も似つかわしいものということができよう 交響曲の分野では 第 36 番 リンツ 以来 3 年ぶりの作品である その間 モーツァルトは 12 曲ものピアノ協奏曲を生み出し 弦楽四重奏曲集 ハイドン セット を完結させ フィガロの結婚 を作曲した 輝かしいオーケストラの響き 豊富な楽想 主要諸動機の徹底的な活用など 3 年間の創作経験すべてが この交響曲に活かされているといってよい 一方では ドン ジョヴァンニ を予告するかのごとく 随所に強い劇的な表現も聴かれる 2 年半後に書かれる いわゆる 三大交響曲 と並ぶ モーツァルトの交響曲の頂点をなす作品なのである 第 1 楽章アダージョ アレグロニ長調 4/4 拍子 第 2 楽章アンダンテト長調 6/8 拍子 第 3 楽章プレストニ長調 2/4 拍子 ( 松田聡 ) 作曲年代 :1786 年 12 月 6 日完成初演 : 一般に 1787 年 1 月 19 日 プラハの国立劇場において とされているが それ以前の可能性もある ( 本文参照のこと ) 楽器編成 : フルート 2 オーボエ 2 ファゴット 2 ホルン 2 トランペット 2 ティンパニ 1 弦楽

Carl Maria von Weber 1786-1826 ウェーバー クラリネット協奏曲第 2 番変ホ長調作品 74 18 世紀以降 協奏曲 というジャンルは 作曲家と独奏楽器の名手との出会い そして共同作業を通して育まれてきた モーツァルトにとってクラリネット奏者アントン シュタードラーがそうであったように カール マリア フォン ウェーバーにとっては ハインリヒ ベールマン (1784 1847) という稀代の奏者の知遇を得たことが その創作欲を駆り立てる大きな源となった ウェーバーとベールマンが出会っ 尽くしていた 明快で叙情的な曲調によって 同年の初演は大いに賛美された ベールマンの独奏は ウェーバーいわく 神のような 演奏であったという この卓越した奏者の特性に精通していた作曲家は それにぴたりと寄り添う音楽を書いたのである 当時はクラリネットがマイナーな楽器であったためか 正式な形での出版は遅れたが 現在ではこの楽器の魅力をいかんなく発揮できる稀有な傑作となって久しい たのは 1811 年のミュンヘンである ベールマンの卓越した音色や技巧を聴き知ったウェーバーは この年にクラリネットを主役とした曲を立て続けに生み出すこととなった 経緯はこうである まず クラリネット小協奏曲作品 26 が書かれ 宮廷管弦楽団によって演奏されると バイエルン王マクシミリアンはこれに深く心を打たれ ウェーバーに協奏曲の新作を 2 作も求めたのだった 1 作目はヘ短調の 作品 73 そして 2 作目が本作である モーツァルトの クラリネット協ほうふつ奏曲 を彷彿とさせる 実際 ウ 第 1 楽章アレグロ変ホ長調 4/4 拍子 協奏曲風ソナタ形式 跳躍をはじめとした難解な技巧がちりばめられている 第 2 楽章アンダンテ コン モートト短調 特筆すべきことに 中間部ではこの楽器に レチタティーヴォ アド リビトゥム と書かれており この箇所で独奏者は 作曲者が得意としたオペラにおけるような自由な表現性を発揮できる 第 3 楽章アラ ポラッカ変ホ長調 3/4 拍子 ロンド形式 名称のとおりポロネーズ風のリズミカルなフィ ェーバーは先人のこの傑作を研究し ナーレ ( 西田紘子 ) Philharmony October 2012 作曲年代 :1811 年初演 :1811 年 11 月 25 日 ミュンヘンの宮廷劇場 ハインリヒ ベールマンの独奏 楽器編成 : フルート 2 オーボエ 2 ファゴット 2 ホルン 2 トランペット 2 ティンパニ 1 弦楽 クラリネット ソロ

Program B Maurice Ravel 1875-1937 ラヴェル スペイン狂詩曲 モーリス ラヴェルが生涯を通じて示したスペインへの関心は 同時代のフランスに流行した異国趣味とは一線を画す バスク人の母が歌う民謡を子守唄に育ち スペイン音楽に最大の称賛の念を抱いている と語ったラヴェルにとって スペイン音楽の情熱 陰影 神秘性は特別な親近感を呼ぶものであった スペイン狂詩曲 は最初の大規模な管弦楽曲だが ラヴェルはこのオーケストラの色彩の中に マヌエル デ ファリャが言うところの 母を通して理想化された形で彼 ( ラヴェル ) が感じてきたスペイン を溶かし込むことに成功している 自らの内にあるスペインの情景を描くことが 多彩な楽器の組み合わせから洗練された響きを生む 斬新なオーケストラ書法を導き出す一因となったので ある ちゆうよう 第 1 曲 夜への前奏曲 ごく中庸を 得た速さでイ長調 3/4 拍子 冒頭の ヘ ホ ニ 嬰ハ の 4 音モティ ーフは 第 3 曲 ハバネラ を除き作品全体を貫く 弱音器の使用や弦の分割による抑制的な音量 精妙な音色の変化が 神秘的な異国の夜を幻出させる 第 2 曲 マラゲーニャ 十分活発にイ長調 3/4 拍子 4 音モティーフの変形が華やかなトランペットに乗っつむて紡がれ 活発なリズムをカスタネットやタンブリンが彩る 第 3 曲 ハバネラ 十分に悠然と 緩慢なリズムで嬰へ短調 2/4 拍子 1895 年に書かれた同名曲 (2 台ピアノ用 ) の編曲 2 種類の物憂げなハバネラのリズムが 様々な楽器で繊細に色彩付けられる 第 4 曲 祭り 十分活気をもってハ長調 6/8 拍子 5 つの民謡風のモティーフが 打楽器の小気味よい響きで生き生きと提示される 中間部で前奏曲の雰囲気が呼び戻された後 再び活気が蘇り 夜の静寂を打ち破けんそうる祭りの喧騒のうちにフィナーレを迎える ( 関野さとみ ) 作曲年代 :1907 1908 年 2 月 ( ハバネラ の 2 台ピアノのための原曲は 1895 年作 ) 初演 :1908 年 3 月 15 日 パリ エドゥアール コロンヌ指揮 コロンヌ管弦楽団 楽器編成 : フルート 2 ピッコロ 2 オーボエ 2 イングリッシュ ホルン 1 クラリネット 2 バス クラリネット 1 ファゴット 3 コントラファゴット 1 ホルン 4 トランペット 3 トロンボーン 3 テューバ 1 ティンパニ 1 大太鼓 シンバル トライアングル タンブリン カスタネット 小太鼓 タムタム シロフォン ハープ 2 チェレスタ 弦楽

Maurice Ravel 1875-1937 モーリス ラヴェルの作品のなかーケストラのレパートリーとしてでも 特に有名な ボレロ は ロ定着するとは予期していなかったシア生まれの名舞踏家イダ ルビンが 案に相違して この作品は爆発シテインの依頼で作曲された 彼女的な成功を収め ラヴェルの名前はは元ロシア バレエ団の一員で 自津々浦々にまで知られるようになっ分が主宰するバレエ団のために ラた ラヴェルは 1930 年 1 月 このヴェルにスペイン風のバレエ作品を作品の演奏会形式による初演を自ら委嘱したのである ラヴェルはアメの指揮で行って以来 しばしば指揮 リカ旅行から帰った後 1928 年 7 月から 10 月にかけて ボレロ の作曲に取り組んだ その夏 ラヴェルは サン ジャン ド リューズで友人と泳ぎに行く前にピアノでメロディーを 1 本指で弾いてみせ この主題には何かしつようしら執拗なものがあると思わないかい と問い ぼくはこいつを全然展開させずに何度も何度も繰り返して 自分のできる限り オーケストレーションを少しずつ大きくしていこうと思っているんだ と述べたという 初演はルビンシテインを主役とする彼女のバレエ団によって 1928 年 11 月 22 日にパリ オペラ座で行われた 舞台はスペインの小さな酒場 若い女性が舞台で物憂げなボレロを踊りはじめ 次第に回りの人々もその踊りに引き込まれ 最後には全員が踊りに熱狂するという筋書きである ラヴェル自身は ボレロ がオ ラヴェル ボレロ 台に立ったが 彼の指揮はつねに厳 ちゆうよう 格で 中庸のテンポを守ったものだ った ところが 1930 年 5 月初旬 名指揮者アルトゥーロ トスカニーニがニューヨーク フィルハーモニー管弦楽団 ( 現ニューヨーク フィルハーモニック ) を率いてパリ オペラ座で公演を行った際 ボレロ の演奏を聴いたラヴェルはひどく憤慨した トスカニーニのテンポが速すぎ しかもアッチェレランドしていたからである ラヴェルに怒られたトスカニーニは あなたは自分の音楽がわかっていない こう演奏するしかないんです! と言い返した トスカニーニは結局 1937 年までラヴェルの音楽を一切指揮しなかったが トスカニーニが改めてラヴェルの音楽に取り組んだとき 演奏会場にラヴェルの姿はなかった 病気のため 彼はもはや演奏を聴ける状態ではなくなっていたのである この作品は スペイン舞曲の一種であるボレロのリズムに乗って ス Philharmony October 2012

Program B ペイン=アラブ風の主題が徹頭徹尾繰り返されるという単純かつ大胆な形式によって書かれている 主題はフルートのソロに始まり 楽器の組み合わせをさまざまに変えながら しだいに厚みを増していく 冒頭の 4 小節において 特徴あるリズム主題が小太鼓によってピアニッシモで奏でられ ヴィオラとチェロのピッツィカートが拍子の重点を補強する このリズム主題は 340 小節からなる全曲のなかで 169 回打ち鳴らされ続け 他の楽器が随時そのリズムに加わる このリズムから解放されるのは最後の 2 小節だけである そして 和声的な土台となる ハ音 ト音 が 326 小節に渡って聞かれる 第 5 小節から始まる主題はハ長調で 全音音階的な部分とより半音階的な部分に分かれる このA Bは それぞれ リズム主題を前奏 ( または間奏 ) としてもち 音色を変えながら合計 9 回現れる うち 4 回はA A B Bの形式 最後はA Bに縮められた形で提示される この最後のBの部分で意外にもホ長調へ転調するが すぐ にハ長調に戻り主和音で終わる つまり ボレロ は一般的な意味での主題の変奏や展開などは一切行われず もっぱら音色の変化と音量の増大に焦点が当てられており 音色のパッサカリア と評されるほど楽器法上の変化に富む作品になっている なお 自筆譜を調査したラヴェル研究者のアービー オレンシュタインによれば トライアングルとカスタネットは当初加えられていたが 結局 除かれたという ラヴェルがスペイン色の濃いこの作品の楽器編成から あえてカスタネットを外したことは興味深い ( 井上さつき ) 作曲年代 :1928 年 7 月 10 月初演 :1928 年 11 月 22 日 パリ オペラ座 ワルター ストララム指揮 アレクサンドル ブノワ舞台装置と衣裳 ブロニスラヴァ ニジンスキー振付 演奏会形式による初演は 1930 年 1 月 11 日パリ 作曲者自身の指揮によるラムルー管弦楽団 楽器編成 : フルート 2 ピッコロ 1 オーボエ 2( オーボエ ダモーレ 1) イングリッシュ ホルン 1 クラリネット 2(Es クラリネット 1) バス クラリネット 1 ソプラノ サクソフォン 1 テナー サクソフォン 1 ファゴット 2 コントラファゴット 1 ホルン 4 トランペット 4( ピッコロ トランペット 1) トロンボーン 3 テューバ 1 ティンパニ 1 シンバル タムタム 大太鼓 小太鼓 チェレスタ ハープ 1 弦楽

Program C 第 1737 回 NHK ホール 10/19[ 金 ] 開演 7:00pm 10/20[ 土 ] 開演 3:00pm [ 指揮 ] ロリン マゼール [conductor]lorin Maazel 1737th Subscription Concert / NHK Hall 19th (Fri.) Oct, 7:00pm 20th (Sat.) Oct, 3:00pm Philharmony October 2012 [ ゲスト コンサートマスター ] ヴェスコ エシュケナージ [guest concertmaster] Vesko Eschkenazy ワーグナー ( マゼール編 ) 言葉のない 指環 ~ニーベルングの指環管弦楽曲集 (70 ) Ⅰ ラインの黄金かくして ライン川の 緑あやなすたそがれ が始まる / 神々の城への歩み / 地の底へと潜ったこびとたちが鉄を鍛える / 雷神ドンナーが槌を振り下ろし 喉の渇きを覚えジークムントが這いつくばりながら 竈のそばにいるジークリンデに水を求める Ⅱ ワルキューレ 響きの暗号 のうちに ジークムントの愛の眼差しを 見る 我ら / ジークムントとジークリンデの逃避行 / ウォータンの怒り / ワルキューレ ( ブリュンヒルデの妹たち ) の騎行 / ウォータンと その愛する娘ブリュンヒルデとの別れ ウォータンの別れと魔の炎の音楽 Ⅲ ジークフリートミーメの 怖れ / 魔法の剣を鍛えるジークフリート / ジークフリート 森をさまよう 森のささやき / 大蛇を退治 / 大蛇の嘆き Ⅳ 神々のたそがれジークフリートとブリュンヒルデの情熱を包む朝焼け / ジークフリートのラインの旅 / 家臣を招集するハーゲン / ジークフリートとラインの少女たち / ジークフリートの葬送行進曲 / ブリュンヒルデの自己犠牲 Richard Wagner (1813-1883) / Lorin Maazel (1930-) Der Ring ohne Worte ~ Orchestral Highlights from the Ring Cycle Ⅰ Das Rheingold So beginnen wir also in der grünlichen Dämmerung des Rheins / Treiben flußaufwärts zur Burg der Götter / Sinken hinab zu den schmiedenden Zwergen / Schwingen mit Donners Hammerschlag, kriechen mit dem durstlechzenden Siegmund zum heimatlichen Herde der Erquickung spendenden Sieglinde Ⅱ Die Walküre Im Klang-Kode sehen wir auch buchstäblich Siegmunds teilnahmsvollen Blick auf Sieglinde / Der beiden Flucht / Wotans furchtbare Wut / Den Walkürenritt der Schwestern Brünnhildes / Wotans schmerzlichen Abschied von seiner Lieblingstochter Ⅲ Siegfried Mimes angsterfülltes Zittern / Wir sehen wie Siegfried das magische Schwert schmiedet / Dem Waldweben lauscht / Den Drachen erschlägt / Wir hören Fafners mattes Klagelied Ⅳ Götterdämmerung Wir sehen die Morgenröte wachsen um Siegfrieds und Brünnhildens Leidenschaft / Siegfrieds Rheinfahrt / Wie Hagen auf dem Stierhorn blasend seine Mannen herbeiruft / Siegfried und die Rheintöchter / Seinen Tod, den Trauermarsch und schließlich / Der Götter Ende im Feuerschein * この公演に休憩はございません あらかじめご了承下さい * This concert will be performed with no intermission. ヴェスコ エシュケナージ 1970 年 ブルガリア生まれ ロンドンのギルドホール音楽院を 1992 年に修了 1999 年よりロイヤル コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートマスターに就任 コンセルトヘボウ室内管弦楽団およびピアニスト リュドミル アンゲロフとのデュオでも活躍する N 響には 2 回目の登場となる

Program C Richard Wagner 1813-1883 / Lorin Maazel 1930- ワーグナー ( マゼール編 ) 言葉のない 指環 ニーベルングの指環管弦楽曲集 オペラにおける 聴きどころ を歌劇場以外の場所で演奏するためには かならず何らかの工夫が必要となる 番号オペラであれば アリアや重唱 序曲や間奏曲は独立していることが多いので 演奏会で披露するためにはその部分だけを抜き出せばよい だが 歌 オーケストラ そして演劇が一体となった 総合芸術 を志し 無限旋律によって自らの理想とする 楽劇 を追究したリヒャルト ワーグナー (1813 1883) の後期作品の場合は その音楽を無理に断ち切り 新たな終結部を作る必要に迫られる もっとも 作曲家自らがその目的のために手がけた加筆が 必ずしも成功しているとは限らないのが興味深いところで ワーグナー自身が トリスタンとイゾルデ 第 1 幕の最後に付け足した演奏会用終結部が 現在演奏されることはめったにない 単に終結部を作ればよいというものかもではなく 音楽が醸し出す作品世界こわを毀さぬよう 特段の配慮が求められるのだろう ( 同作の場合は 前奏曲にそのまま第 3 幕最後の 愛の死 つなを繫げるという最高の解決策があったことも大きい ) 上演に 4 夜を要する ゲルマン神話に題材をとった超大作 ニーベ ルングの指環 の場合も 事情は同じである 現在 歌劇場以外の場所でこの作品の断片を聴けるのは 超有名曲となった ワルキューレ の第 3 幕冒頭 ワルキューレの騎行 を筆頭に 神々のたそがれ から ジークフリートのラインの旅 ジークフリートの葬送行進曲 などに限られており オーケストラだけの見せ場に乏しい ラインの黄金 ジークフリート の断片が演奏される機会はめったにない 指揮者としてだけでなく 自らも作曲の筆をとり ジェームズ ゴールウェイに委嘱された フルートと管弦楽のための音楽 ロストロポーヴィチに委嘱された チェロと管弦楽のための音楽 そしてジョージ オーウェルの同名の小説をオペラ化した 1984 年 などの作品を手がけてきたロリン マゼール 1987 年 マゼールはベルリン フィルハーモニー管弦楽団から編曲の委嘱を受け ( 逡巡した末にようやく引き受けたという ) 指揮者 作曲家という両方の視点から ワーグナー作品の編曲にまつわる問題を克服しようと試みた マゼールは この管弦楽曲を編むにあたり 以下のような 4 つの方針を掲げている この方針からは マゼールが 指環 という壮大

な作品に対する そして作曲家ワーグナーその人に対して抱いている尊敬と愛情が透けて見えるようにすら思われる 1. 全体は自然に 切れ目なく続いていくようにせねばならない そして 物語の筋に沿い ラインの黄金 の最初の音に始まり 神々のたそがれ の最後の音で終わらねばならない 2. 曲のつなぎ目は 和声の面からも 時間配分という面からも正統的で不自然にならないように そして曲同士のテンポの対比も 作品全体の長さと釣り合いの取れた状態にせねばならない 3. もとの作品のうち 声楽なしで 書かれた音楽はそのほとんどを使う 歌のある部分で 欠くことのできない重要な旋律は加えるが その箇所は 歌の旋律が他のオーケストラの楽器で重ねて演奏されていて 聴き手がその歌を 想像できる 部分か ( 稀なケースではあるが ) 完全に楽器で置き換える部分とする 4. すべての音符は ワーグナー自身が書いたものだけに限る 上記の通り オペラの筋書きに沿って その順番通りに抜き出された各部分は休みなく演奏される この各部分には以下のような標題が付けられており これを見るだけでほぼ筋書きもわかるように工夫されている 新たにつけられたタイトルに関しては ( ) 内にマゼールが実際 に抜き出した箇所を便宜的に補った ラインの黄金 かくして ライン川の 緑あやなすたそがれ が始まる ( 序奏 )/ 神々の城への歩み / ワルハラ城への神々の入城 ( 第 2 場冒頭 正確には眠りから覚めたウォータンが完成したワルハラ城を妻フリッカと眺める場面 )/ 地の底へと潜ったこびとたちが鉄を鍛える ( 第 2 場から第 3 場への場面転換音楽 )/ 雷神ドンナつちのどーが槌を振り下ろし 喉の渇きを覚はえたジークムントが這いつくばりなかまどがら ( たまたま ) 竈のそばにいるジークリンデに水を求める ( 前半は第 4 場幕切れ近くの同場面 後半は ワルキューレ 第 1 幕の前奏曲後半およびそれに続く同場面より ) ワルキューレ 響きの暗号 のうちに ジークまなざムントの愛の眼差しを 見る 我ら ( 前場面より続く )/ ジークムントとジークリンデの逃避行 ( 第 1 幕幕切れ )/ ウォータンの怒り ( 第 2 幕前奏曲と幕切れ )/ ワルキューレ ( ブリュンヒルデの妹たち ) の騎行 ( 第 3 幕第 1 場冒頭 )/ ウォータンと その愛する娘ブリュンヒルデとの別れ ウォータンの別れと魔の炎の音楽 ( 第 3 幕第 3 場後半より幕切れまで ) ジークフリート ミーメの 怖れ ( 第 1 幕第 3 場冒頭から前半 )/ 魔法の剣を鍛える Philharmony October 2012

Program C ジークフリート ( 第 1 幕第 3 場幕切れ 正確には鍛えた剣の切れ味をミーメに見せる箇所 ジークフリートの歌唱部分がトロンボーンで加えられている )/ ジークフリート 森をさまよう 森のささやき / 大蛇を退治 / 大蛇の嘆き ( 以上 3 箇所 第 2 幕第 2 場 ) 神々のたそがれ ジークフリートとブリュンヒルデの情熱を包む朝焼け ( 序幕後半 )/ ジークフリートのラインの旅 ( 序幕から第 1 幕への場面転換音楽 )/ 家臣を招集するハーゲン ( 第 2 幕第 3 場 )/ ジークフリートとラインの少女たち ( 第 3 幕第 1 場 )/ ジークフリートの葬送行進曲 ( 第 3 幕第 2 場から第 3 場への場面転換音楽 )/ ブリュンヒルデの自己犠牲 ( 第 3 幕第 3 場後半から幕切れまで ) 手にも どちらにも違和感なく受け容れられるような完成度を持つに至る 1987 年にベルリン フィルハーモニー管弦楽団とこの作品を初めてともに演奏して以来 この編曲がいわば 指環 管弦楽曲用編曲の 定番 としての地位を得たのは まったく不思議なことではない 編曲者自らの指揮によって聴くことによって その説得力はいや増すことだろう ( 広瀬大介 ) わずかの例外を除き マゼールは一音符もワーグナーの総譜を書き換えることなく 見事な手腕を駆使してみせた そのお陰で 本編曲は初めて 指環 の世界に触れる聴き手にも そして作品を熟知した聴き 作曲年代 :1848 1874 年楽器編成 : フルート 3( ピッコロ 1) ピッコマゼール編曲 :1987 年ロ 2 オーボエ 3 イングリッシュ ホルン 1 初演 : ワーグナー 指環 全曲初演 :1876 年クラリネット 3 バス クラリネット 1 ファ 8 月 バイロイト マゼール編 :1987 年 12 月 ゴット 3 ホルン 8( ワーグナー テューバ 4) ベルリン トランペット 3 バス トランペット 1 トロンボーン 4( コントラバス トロンボーン 1) テューバ 1 ティンパニ 2 トライアングル シンバル 大太鼓 小太鼓 タムタム グロッケンシュピール 金床 ハープ 2 弦楽

シリーズ名曲の深層を探る第 2 回 スクリャービン 法悦の詩 時代性と歴史性のはざまで 小鍛冶邦隆 Philharmony October 2012 スクリャービンの特異な音楽的性格について その 神秘思想 が取り上げられることが多い またスクリャービンの音楽には 20 世紀初頭から第一次世界大戦前夜のヨーロッパ近代音楽 シェーンベルク ドビュッシー ストラヴィンスキーとは異なる 音楽語法の革新性が見られる点からも興味深い存在といえよう スクリャービンの音楽技法スクリャービンの音楽語法 とりわけ 法悦の詩 (1908 年初演 ) 以降の特徴は 調的であっても音響的特性の際立った和音 ( たとえば 神秘和音 と称されるもの ) のきわめて緩やかな交代と微妙な音響変化により 従来の調的和声機能と音楽形式が一致した音楽表現とは異なる領域を探究している シェーンベルクの無調性 ( アトナリティー ) に対して スクリャービンの音楽が汎調性 ( パン トナリティー ) といわれる ゆえん 所以は 調的機能 ( トナリティー ) の原点としての倍音的音響に依拠しながらも 3 和音と韻律的操作によ る調的カデンツから一定の距離を置く書法によるものである 当時流行した 神智学 に由来する 根源的な調性感 = 倍音和音の緩慢で浮動的な響きのエクスタシーと しばしばスケルツォ的な逸脱的瞬間 をはさみながら エロス = タナトス しゆうえん 的な忘我的終焉 あるいは変容 ( ト ランスフィギュレーション ) に向か う音楽は スクリャービンを時代の ちようじ 寵児に仕立てた 第一次世界大戦へ と向かう不安に満ちた世相が メシア的 ( 終末論的 ) な神秘主義の幻覚を必要としたといえようか 神秘和音 に向かって 法悦の詩 冒頭から聴かれる ぼうよう茫洋とした響きの和音 ( 変ホ ト ロ 変ニ へ音 譜例 1) は 数年後に完成される プロメテウス ( 火の詩 ) (1908 1910 年 ) における 神秘和音 ( ハ 嬰へ 変ロ ホ イ ニ音 譜例 2) の前形態といえるものであるが 神秘和音 におけるハ音の第 2 倍音から第 13 倍音を自由に組み合わせたものと比べると 変ホ音上の倍音列 ( 譜例 3) の

第 9 倍音までしか含まない ( 譜例 1 の和音中 ロ音は第 3 倍音 = 変ロ音の半音階的変化音と考えられる ) 本来 調性和音に対する非和声音として考えられてきた半音階的 全音階的変化音 ( それぞれ譜例 2 の 神秘和音 中の嬰へ音やイ音) を含むこれらの和音が 本来の倍音列に含まれる構成音を用いた 倍音和音 として独立的に用いられる これらの和音は あたかも中心和音 = 主和音 ( トニック ) として用いられるが 同時にその和声的性質 ( 上述した両和音は属 9 ないし属音上の増 11 の和音に分類される ) から属和音 ( ドミナント ) ともなる 法悦の詩 の冒頭和音や 神秘和音 は スクリャービンがピアノ的な音響感覚を通じて 倍音構成音を感覚的に取捨選択したものである以上に 調的和声のヒエラルキーを一時的に廃棄 ないしは停止する結果に至ったと思えるプロセスが重要といえる この特徴的な音響的性格を持つ和音から生じる多様なテクスチュアの並置と 無限とも思われる反復による長大な持続により 調的 和声にもとづく音楽形式 ( 変奏やソナタ形式等 ) とは 明らかに異なる音楽を作り出している またロシア近代音楽特有の鐘の響きを模した和音 ( ラフマニノフの音楽等にも頻出する ) と そのヴァイブレーション レゾナンス ( 振動 反せいち響 ) を精緻に音楽化したかのような様々なトリル書法 さらに最後のクライマックスでは本当の鐘が加わり宗教的エクスタシーが演出される構成においても 法悦の詩 はきわめてユニークな音楽であるといえる 法悦の詩 の音楽ところで スクリャービンが 法悦の詩 作曲当時に参照していたといわれる ドビュッシーの管弦楽曲 海 (1905 年初演 ) からの影響は 管弦楽的書法に明らかであるし さらに緩やかな和音交代による長大な持続から生じる 法悦的 なクライマックスには ワーグナーの楽劇 トリスタンとイゾルデ 以降の音楽の影響 ( ワグネリズム ) が強く感じられる しかしながら彼は すぐれたピアニストとして 創作活動初期からピアノ作品を中心に 作曲家としてのキャリアを築いてきた 逆説的な意味で 法悦の詩 には ドビュッシーとも共通するところの 従来の管弦楽法の伝統とは異なる せんさい ピアニスティックともいえる 繊細 で精密な新しい管弦楽的音響が試みられているのである 同時期に作曲され 広く知られた

ピアノ ソナタ第 5 番 (1907 年 ) は 法悦の詩 とその音楽的性格( さらに 法悦の詩 と題された詩的テクスト ) を共有すると同時に その独自のピアニズムが管弦楽的書法として 法悦の詩 に反映している その意味で 法悦の詩 の演奏は 楽器法の明確な対比 交代による従来の管弦楽的形式区分と異なる ピゆうずうむげアノ演奏的な自由で融通無碍のアゴーギク ( 緩急法 ) やデュナーミク ( 強弱法 ) を用いるという意味でも 指揮者とオーケストラに困難な技術的課題を要求しているといえよう スクリャービンの音楽の影響スクリャービンの音楽は 必ずしも彼の音楽を評価しなかったストラヴィンスキーの初期のバレエ組曲 火の鳥 や ホルストの 惑星 等にも見られるほどに 当時大きな影響をもたらした またシェーンベルクがウィーンにおいて主宰し 同時代の新しい音楽を積極的に紹介した 私的音楽演奏協会 においても 法悦の詩 ピアノ 2 台編曲版を含むスクリャービン作品が紹介されている これらの影響は ベルクの初期作品にも明らかである いっぽうメシアンについていえば 第二次世界大戦後の前衛的創作に先立つ時期 ピアノのための 前奏曲集 (1929 年 ) から トゥランガリラ交響曲 (1946 1948 年 ) に至る音楽には スクリャービンからの直接的な影響というより メシアン 独自の作曲技法として その音楽語法に内包される倍音原理から導き出された複合旋法である 移調の限られた旋法 と 倍音和音 が用いられている スクリャービンの音楽は時代的な影響の強さが強調される半面 それゆえか死後その存在が急速に忘れられた事実を指摘されることが多い 一方 上記のメシアンの特異な音楽書法との共通のみならず プロメテウス ( 火の詩 ) における色光ピアノの使用に見られる創作原理としての音と色彩の交感 ( 共感覚 ) の応用といった点にも メシアンの音 ( 旋法あるいはそこから導き出された和音 ) と特有の色彩の対応に共通する点が認められる 加えてスクリャービン最晩年に構想され 序幕 のスケッチのみが残された 神秘劇 における 音楽のみならず演劇や舞踊 ( さらには色彩や香り ) をも加えた壮大な構想が暗示するマルチメディア的側面が 1960 年代以降のスクリャービンの音楽の再発見につながったように 今日その音楽は 特筆されるべき時代的影響力と同様に 歴史的視点からも捉え直されている スクリャービンの音楽は 1980 年以降の音響的スペクトル楽派の在り方にも関わっているとも考えられるが そうした点にもスクリャービンの音楽における時代性と歴史性の問題が見られよう Philharmony October 2012

A Program *11 月定期公演の聴きどころ * 11 月の定期公演は オランダの的に取り組んでおり 武満作品ではベテラン指揮者エド デ ワールトが フロム ミー フローズ ホワット A B C 3 つのプログラムを指ユー コール タイム をシドニー揮する 交響楽団と録音している エド デ ワールトはこれまでロッ得意のワーグナーからは ワルテルダム フィルハーモニー管弦楽キューレ 第 1 幕が演奏会形式で取団をはじめ サンフランシスコ交響り上げられる 前回の客演でのデ 楽団やミネソタ管弦楽団の首席指揮フリーハー編曲による 指環 オー者を歴任してきた名指揮者 現在はケストラル アドベンチャー に続ミルウォーキー交響楽団の音楽監督いて 今回もワーグナーをたっぷおよびロイヤル フランダース フィりと堪能できるのは喜ばしい限り ルハーモニー管弦楽団の首席指揮者 ワルキューレ 第 1 幕はもっともを兼務している また 2011/12 シ演奏会形式で上演される機会の多いーズンまで香港フィルハーモニー管オペラのひとつだろう 3 人の歌手弦楽団の芸術監督を務めるなど アがそろえば 合唱も不要で 長さとジアとの縁も深い N 響とは 2009 いう点からもコンサートに程よいと年 4 月に初共演を果たしている いう実際的な理由もあるにはちがい名門アムステルダム コンセルトヘないが 物語性に依存せずとも一気かせいボウ管弦楽団のオーボエ奏者を出発呵成に聴かせてしまう音楽のテンシ点として コンサートおよびオペラョンの高さと シンフォニックな魅の指揮者として百戦錬磨の経験を積力にあふれた管弦楽の雄弁さこそが んだ名匠のこと オーケストラの持演奏機会の多さの最大の要因ではなち味を引き出して 円熟味あふれるいだろうか 4 管編成の大オーケス演奏を聴かせてくれるにちがいない トラをステージ上に配して聴くことができるのも演奏会形式ならでは 4 管編成の ワルキューレ を味わうオペラ劇場のピットとはまた違った Aプロ管弦楽に焦点を当てた聴き方もでき Aプロは武満徹の名作 遠い呼びるはずだ 声の彼方へ! および ノスタルジア アンドレイ タルコフスキーの R. シュトラウスの精緻 絢爛たる追憶に と ワーグナーの楽劇 ワ響きを味わう Bプロルキューレ 第 1 幕 ( 演奏会形式 ) Bプロはドイツ オーストリア系という意外な組み合わせ デ ワーの作曲家によるロマン派以降の作ルトは従来より現代の音楽にも積極品が並ぶ メンデルスゾーンの序

曲 フィンガルの洞窟 で幕を開け 続くブルッフの ヴァイオリン協奏曲第 1 番 では 現在欧米の主要オーケストラから引く手あまたの人気を誇るジャニーヌ ヤンセンが登場する N 響とは前回の 2009 年のデ ワールト指揮でも共演し 好評を博した 豊かなテンペラメントと確かな技巧によって 作品のロマン的な高揚感を力強く表現してくれることだろう 後半の演目は R. シュトラウスの 家庭交響曲 前回客演時の アルプス交響曲 と同様 今回も大編成せいちけんらんのオーケストラによる精緻かつ絢爛たる響きを味わうことができる 作曲者本人と妻パウリーネ 息子フラにぎにぎンツらによる賑々しい家庭生活を描いた一種の自画像的作品であるが 家庭 というもっとも身近な題材を扱いながらも 大オーケストラに 高度な機能性を求め 雄大な交響曲に仕立てているところにこの作曲者ならではの機知を感じる 近年のブルックナー演奏の成果を披露する Cプロ Cプロではブルックナーの 交響曲第 8 番ハ短調 ( ノヴァーク版 ) が演奏される 幅広いレパートリーを誇るデ ワールトであるが 従来ブルックナーを振る指揮者というイメージはなかったように思う しかし近年はロイヤル フランダース フィル他でこの曲を指揮しており 満を持してブルックナーに取り組んでいる様子がうかがえる 作品の威容を強調する起伏に富んだ演奏となるのか 質朴剛健とした聖なる野人像を描くのか この名作にふさわしい格別の感銘をもたらしてくれることを期待したい ( 飯尾洋一 ) Philharmony October 2012 *11 月の定期公演 * 11/10( 土 )6:00pm 11/11( 日 )3:00pm (Aプロ)NHKホール指揮 : エド デ ワールトヴァイオリン : 堀正文 * ジークリンデ: エヴァ マリア ウェストブレーク ジークムント : フランク ファン アーケン フンディング : エリック ハルフヴァルソン武満徹 / 遠い呼び声の彼方へ!(1980) * 武満徹 / ノスタルジア アンドレイ タルコフスキーの追憶に (1987) * ワーグナー / 楽劇 ワルキューレ 第 1 幕 ( 演奏会形式 )( 字幕つき ) 11/21( 水 )7:00pm 11/22( 木 )7:00pm (Bプロ) サントリーホール指揮 : エド デ ワールトヴァイオリン : ジャニーヌ ヤンセンメンデルスゾーン / 序曲 フィンガルの洞窟 作品 26 ブルッフ / ヴァイオリン協奏曲第 1 番ト短調作品 26 R. シュトラウス / 家庭交響曲作品 53 11/16( 金 )7:00pm 11/17( 土 )3:00pm (Cプロ)NHKホール指揮 : エド デ ワールトブルックナー / 交響曲第 8 番ハ短調 ( ノヴァーク版 )