インド最高裁がデリー高裁を選択する 1 フォーラムショッピングを抑制 Adarsh Ramanujan, Sheetal Vohra, R. Parthasarathy 2 バパット ヴィニット 3 始めにインドの知財エンフォースメントに詳しい大抵の人は 知財エンフォースメントを行う際にはデリー高裁

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第 4 条 ( 証明書の管理者 注文手順 及びその他の利用者の義務 ) 利用者は 当社の事前審査にかかるドメイン名を提出するための 権限を有する担当者を選任します またこの担当者が 本約款に応じて 審査されたドメインの証明書の発行を承認することのできる権限者となります ( 以下 証明書管理者 ) 利

東京地方裁判所委員会 ( 第 36 回 ) 議事概要 ( 東京地方裁判所委員会事務局 ) 第 1 日時平成 27 年 10 月 22 日 ( 木 )15:00~17:00 第 2 場所東京地方裁判所第 1 会議室第 3 出席者 ( 委員 ) 貝阿彌誠, 足立哲, 大沢陽一郎, 大野正隆, 岡田ヒロミ

O-27567

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資料 10-1 海外事業者を相手方とした発信者情報開示 差止請求について ( 神田弁護士ヒアリングメモ ) 平成 30 年 8 月 6 日 1. クラウドフレアに対する発信者情報開示請求について 自分が弁護士として権利者から海賊版サイトに関する相談を受けた場合 まず, サイト管理者の連絡先を調査し,

第 4 条以下の条文を 仏暦 2537 年の著作権法第 32/1 条第 32/2 条及び第 32 /3 条として追加する 第 32/1 条著作権がある作品の原版あるいは複製物の取得者による販売は 当該著作 権がある作品の原版あるいは複製物の所有権が合法であれば 著作権の侵害とはみなさな い 第 32

限され 当事者が商標を使用する能力に直接の影響はありません 異議申し立て手続きと取消手続きで最もよく見られる問題とは 混同のおそれ と 単なる記述 です TTAB は登録の内容のみを評価するため その分析の局面には 想定に基づくものもあります 通常 TTAB では どのように標章が実際の製品において

技術的制限手段に関する現状 BSA ザ ソフトウェア アライアンス 2017 年 2 月 15 日

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

市町村合併の推進状況について

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

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Webエムアイカード会員規約

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

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に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

【PDF】MyJCB利用者規定(セブン銀行用)

特許出願の審査過程で 審査官が出願人と連絡を取る必要があると考えた場合 審査官は出願人との非公式な通信を行うことができる 審査官が非公式な通信を行う時期は 見解書が発行される前または見解書に対する応答書が提出された後のいずれかである 審査官からの通信に対して出願人が応答する場合の応答期間は通常 1

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5. 当社は 会員に対する事前の通知を行うことなく 本規約を変更できるものとします この場合 本サービスの提供等については 変更後の規約が適用されるものとします 6. 前項の場合 当社は変更前に又は変更後遅滞なく 変更後の本規約を本サイト上にて告知するものとします 第 4 条 ( 本サービスの利用料

2 当サイト内にある登録事業所が廃業または休止となっているにもかかわらず 更新されないまま3 ヶ月以上放置されていることに気付いたときは つながライン事務局に情報提供することに協力するものとします ( 利用料 ) 第 6 条本サービス利用料は無料とします ( 広告料を除く ) ( リンク ) 第 7

当社からの電子メール の受信を許諾すること (3) 当社が 会員の電力受給契約情報 本サービスの利用にあたって登録した会員情報等を本規約で定める範囲内で利用することを許諾すること 2 当社は 会員資格を満たす者から第 5 条第 1 項に定める方法による利用申込を受付け

民事訴訟法

により 利用者が投稿 掲載 表示 提供 ( 以下 提供等 という ) した内容 コンテンツ 画像 動画その他の情報 ( 以下 情報等 という ) により導かれる結果については利用者の自己責任であること (2) 利用者は 本サービスの利用に際し第三者に損害を与えた場合 自己の責任と費用においてかかる損

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

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審決取消判決の拘束力

登録商標 は著作権が侵害された旨の宣言 侵害製品販売に対する終局的差止め命令 並びに 損害賠償 但し 以下の点に注意が必要 : 裁判所において 損害裁定の指針が確 されておらず 裁判官が思い付きで判決を下すことが時折みられる 損害賠償 裁定の強制が困難であり 被告が失踪するか がないと申し てること

平成 29 年度 新興国等における知的財産 関連情報の調査 インドにおける外国語 ( 日本語 ) 商標 の取扱い Remfry & Sagar Udayvir Rana ( 弁護士 ) Remfry & Sagar は 1827 年にインドで設立された知財専門法律事務所である 現在 ニューデリーおよ

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被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成  年(行ツ)第  号

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最高裁○○第000100号

2010 3

点で 本規約の内容とおりに成立するものとします 3. 当社は OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用申込みがあった場合でも 任意の判断により OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用をお断りする場合があります この場合 申込者と当社の間に利用契約は成立し

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

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事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

Edyメールマガジン利用規約

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2. 本サービスの申込者において 本規約に反する事由 本サービスへの申込みが適当でない と当社が判断する事由等がある場合には 当社は 本サービスへの申込みを承諾しないこ とがあります 第 5 条 ( 利用契約の成立時期 ) 1. 当社が当該申込みを承諾したときに利用契約が成立するものとします ネット

目次 Ⅰ. はじめに... 1 Ⅱ. 清算手続の流れ... 1 Ⅲ. 清算手続の開始... 1 Ⅳ. 督促状による債務の確定... 2 Ⅴ. 裁判所から債務者への通知... 2 Ⅵ. 清算手続の終了... 2 Ⅶ. 清算手続の延期... 3 本報告書の利用についての注意 免責事項 本資料は ジェトロ

 

できない状況になっていること 約 6 分間のテレビ番組中で 2 分間を超える放映を し たこと等を理由に損害賠償請求が認容された X1 X2 および Y の双方が上告受理申立て 2 判旨 :Y1 敗訴部分破棄 請求棄却 X1,X2 敗訴部分上告却下ないし上告棄却最高裁は 北朝鮮の著作物について日本国

パワーポイントの品質と生産性を向上させるデザイン・テンプレート

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2 センターは 前項の届出を受理したときは 当該利用者の設定を解除するものとする ( 設定票等の再発行 ) 第 7 条利用者は センターが交付した Web-EDI 機能利用情報の書類の再交付を申請するときは 様式 WE-04 号 Web-EDI 機能利用証等再交付申込書 に必要事項を記載して センタ

Richard Bandler The Society of Neuro-Linguistic Programming San Francisco, California 日付 February 20,2005 氏名 Taro Yamada 住所 Taishido

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目次 1. 法人税上の貸倒償却とは 財務省令第 186 号 ,000 バーツを超える債権の貸倒償却 ,000 バーツ以下の債権 ,000 バーツ以下 ( 金融業 ) または 100,000 バーツ以下 ( 一般会社法人

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☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

130306異議申立て対応のHP上の分かりやすいQA (いったん掲載後「早く申請してください」を削除)

を受けた場合には 当該デベロッパーは自身の費用と責任において問い合わせなどに対応し 解決しなければならず 当社は一切の責任を負いません デベロッパーは開発したアプリケーションなどの公開の際 必ず責任の所在が当該デベロッパーにある旨を明示し 個別に連絡が取れる手段を公開するものとします また 本サービ

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

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税研Webセミナー利用規約

ただし 裁判所が自発的に賠償金額を法律で定められている最低ライン未満に減額することは認められないとロシア連邦最高裁判所は指摘した (2017 年 4 月 25 日付けのロシア連邦最高裁判所の判決 判決番号 305-ES ) 権利所有者の商標の登録対象である物品 サービスと同一のものでは

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

アクセスキー 基礎年金番号 リバースエンジニアリング ターネットカフェ等の不特定多数の人が利用可能なパソコンにインストールしている場合があります 平成 23 年 4 月以降に被保険者に発行される ねんきん定期便 等に記載されている17 桁の番号で 日本年金機構ホームページから ねんきんネット サービ

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

たイベントや店舗等の情報を拡散し 当社の運営する Web サイトを多くの方々に閲覧して頂くための企画です 2. 開店ポータルアンバサダーの業務に対する対価は無償としますが 新規店舗の割引券の贈答等 飲食に関するサービスや各イベント等にご招待いたします 第 5 条 ( 利用資格 ) 1. 開店ポータル

1. 本報告書の検討対象 本報告書の目的は (i) Google, Inc. ( グーグル ) による書籍のデジタル検索 配信サービス グーグル ブックサーチ ( 現在の名称は グーグル ブックス ) をめぐる米国での著作権侵害訴訟 ( 本件訴訟 ) において 原告である米国作家協会 (the Au

(33)【東南アジア知財事情】高橋氏インタビュー(下)(2013年11月26日)

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

第 3 条 ( 利用者 ) 1 本プログラムの利用者は 次の各号に定める方ご本人に限ります (1) 当社発行のセゾンカード又は UC カード ( 法人カード コーポレートカードを除きます ) のうち 対象カードを有効に保有されている会員 ( セゾンカードについては本会員 UC カードについては本人会

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SureServer証明書加入契約書

( 登録の審査及び登録 ) 第 7 条市長は, 前条の規定による申請を受けたときは, 第 5 条に規定する登録の要件を満たしていることを確認の上, 届出のあった情報を登録するものとする ( 登録情報の利用 ) 第 8 条市長は, 次に掲げる事由に該当するときは, 市民等の生涯学習活動を促進し, 又は

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体内で使われているエネルギー基質を推定するのに呼吸商を用いるが,その説明として妥当なものはどれか

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

特許庁工業所有権保護適正化対策事業

に含まれるノウハウ コンセプト アイディアその他の知的財産権は すべて乙に帰属するに同意する 2 乙は 本契約第 5 条の秘密保持契約および第 6 条の競業避止義務に違反しない限度で 本件成果物 自他およびこれに含まれるノウハウ コンセプトまたはアイディア等を 甲以外の第三者に対する本件業務と同一ま

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

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法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

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いても使用者責任が認められることがあります 他方 交通事故の原因が相手方の一方的な過失によるものであるなど 被用者に不法行為責任が発生しない場合には 使用者責任も発生しません イ 2 使用関係被用者との使用関係については 実質的な指揮監督関係があれば足りるとして広く解されており 正社員 アルバイト

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インド知的財産ニュースレター 第 2015-5 号 2015 年 12 月 18 日 インド最高裁がデリー高裁を選択するフォーラムショッピングを抑制 発行者株式会社サンガム IP 100-0014 東京都千代田区永田町 2-17-17 アイオス永田町 415 www.sangamip.jp 免責事項本ニュースレターは インドの知的財産に関する情報を届けることを目的としており 個別の法律問題について回答やアドバイスするものではありません 仮に本ニュースレターに記載されている内容そのものまたはその誤り等に起因して読者又は第三者が損害を被ったとしても筆者または筆者が属する会社や事務者は一切責任を負いません

インド最高裁がデリー高裁を選択する 1 フォーラムショッピングを抑制 Adarsh Ramanujan, Sheetal Vohra, R. Parthasarathy 2 バパット ヴィニット 3 始めにインドの知財エンフォースメントに詳しい大抵の人は 知財エンフォースメントを行う際にはデリー高裁が好んで選ばれることを知っているだろう もちろん その主な理由の一つは デリー高裁が扱う知財エンフォースメントの件数である 特に 商標及び著作権の件数が多く インド国内の他の高裁或いは地裁と比べても 恐らく多いだろう デリー高裁は スムーズな判決要録作成及び提訴された侵害に対する一方的差止命令を一日で出すことで よく知られている 商標及び著作権のエンフォースメントにおいては 個別の法律の中で作られた管轄の特別規定を適用することができる 最高裁は Indian Performing Rights Society 対 Sanjay Dalia & Anr.*1 の事件の際 デリーでエンフォースメント手続きを行う状況に制限をかけ インド国内における訴訟戦略の根本を変える判決を 2015 年 7 月 1 日に下した 背景最高裁で決着した上訴は 元々デリー高裁に対する知財エンフォースメント訴訟として始まった その訴訟は マハーラーシュトラ州 ( インドの西側 ) のムンバイに本社を置き デリーに支社がある企業 / 組織によるものであった 被告は 聴聞の管轄がデリー高裁であることを問題視した デリー高裁は これに賛同し 管轄地が適切でないとの理由により 棄却した この訴訟の争点は 1957 年著作権法の第 62 条及び 1999 年商標法第 134 条 (2) にある 著作権法第 62 条第 62 条本章に基づき生じる事由に対する裁判所の管轄権 (1) 著作物に対する著作権の侵害または本法が認める他の権利の侵害に関して本章に基づき生じる訴訟または他の民事手続の各々は 管轄を有する地方裁判所に提起するものとする (2) 第 (1) 項において 管轄を有する地方裁判所 とは 1908 年民事訴訟法 (1908 年第 5 号 ) または当面効力を有する他の法に含まれるいかなる文言にかかわらず 訴訟または他の手続の提起時において 当該訴訟または他の手続を提起した者 ( 複数の者がいる場合には そのいずれか ) が現実かつ任意 1 Lakshmi Kumaran & Sridharan 法律事務所発行 IPR AMICUS SPECIAL EDITION 2014 年 7 月 2 Lakshmi Kumaran & Sridharan 法律事務所 3 株式会社サンガム IP 東京 日本 インド国登録特許弁理士 2

に居住しまたは事業を行いまたは営利のために個人的に就労するその管轄の地域内の地方裁判所を含むものとする http://www.cric.or.jp/db/world/india/india_c3.html#12_62 商標法第 134 条第 134 条地方裁判所に提起されるべき侵害訴訟等 (1) 次に掲げる訴訟については これについて裁判管轄権を有する地方裁判所より下級の裁判所に対して 提起することはできない (a) 登録商標の侵害に対する訴訟 又は (b) 登録商標における権利に関する訴訟 又は (c) 登録か非登録かを問わず 原告の商標と同一又は酷似する商標の被告による使用から生じた詐称通用に対する訴訟 (2) (1)(a) 及び (b) の適用上 裁判管轄権を有する地方裁判所 とは 1908 年民事訴訟法又は現に効力を有するその他の法律に拘らず 訴訟若しくはその他の手続を提起した時点で 当該訴訟若しくは手続を提起した者 又はそれらの者が 2 人以上の場合はその何れかの者が実際に かつ 任意に居住するか又は営業を行い若しくは個人で営利活動を行っている地域に裁判管轄権を有する地方裁判所を含む 説明 --(2) の適用上 者 とは 登録所有者及び登録使用者を含む http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/shouhyou.pdf 上記各法の第 2 項により 裁判所の管轄を原告が 任意に居住するか又は営業を行い若しくは個人で営利活動を行っている 場所とみなす擬制が成立する この訴訟の場合 創作的な擬制が必要とされる なぜならば 経験則上は 民事訴訟法において定められた通常の管轄権規則に基づき 訴訟の原因となる活動の全体或いは一部が生じた場所 又は提訴された侵害者が居住する / 働く場所を示すからである 最高裁は 実際にどんな判決を下したのか問題の条文の歴史を読むと 上記特別規則は 商標法及び著作権法において被告に不利 原告に有利になるよう規程されていたと最高裁は述べた 覚えておくべきことは 多くの場合 被告は原告の居住地及び事業地とは別の場所で居住 / 事業活動をしており 訴訟原因 ( 侵害行為 ) がインド国内の第三の管轄地で起こっている可能性があることである 裁判所は この特別規則のために 著作者 / 権利者にとって 通常居住 営利活動 事業をしている場所とは異なる場所での知財エンフォースメントは 財政面での制限があり難しいことを強調した 一方で 財政面での制限を受けない原告は インド国内の複数の場所に事務所や支社を設置することがあり 特別規則を口実にして他の場所ではなく ある場所を選択することは上記目的達成に役立つことにならない 裁判所は このような状況では 被告側の管轄地以外の場所 或いは訴訟 ( 侵害行為 ) の発生地でもない場所で 被告を訴えることは 原告が支社 / 事務所をその管轄地に持っているからに過ぎず 被告に不利な結果しかもたらさないので 必ずしも応じる必要がないと述べた 3

立法過程や民事訴訟法管轄地一般的な管轄地規則を詳しく分析すれば この訴訟における最高裁判決は 以下のように要約できる : 1) 商標及び著作権のエンフォースメントに関する訴訟は 原告の本社がある管轄地に提訴できる 2) 商標及び著作権のエンフォースメントに関する訴訟は 単に原告の子会社 ( 或いは支社 ) があるだけの管轄地では提訴できない この規則には 3 つの例外がある : a) 商標及び著作権のエンフォースメントに関する訴訟は 管轄地で訴訟の原因 ( 侵害行為 ) の全て或いは一部が発生したという証明がある場合には 原告の子会社 ( 或いは支社 ) がある場所で提訴できる b) 商標と著作権のエンフォースメントに関する訴訟は 被告の居住地或いは被告の企業の本拠地がある管轄地の場合 原告の子会社 ( 或いは支社 ) がある場所で提訴できる c) 商標及び著作権のエンフォースメントに関する訴訟は 被告の子会社 ( 或いは支社 ) がある管轄地又は訴訟の原因 ( 侵害行為 ) の全て或いは一部が発生したという証拠がある場合には 原告の子会社 ( 或いは支社 ) がある場所でも提訴することができる 特別規則で定められた管轄地は アクセス可能なウェブサイトの存在によって確立できるか? この問題は 今回の裁判で現れたものではなく 最高裁の判決の一年前に World Wrestling Entertainment 対 Reshama Collection*2 の訴訟で現れた問題である デリー高裁は アメリカの原告とムンバイの被告による訴訟がデリーで提訴されるという状況に直面し 原告が裁判所管轄地内で商品及びサービスを販売するウェブサイト上の 仮想店舗 を維持しているとの判断を下した デリー高裁は 実際の 店舗が存在すれば 原告が法廷地で事業を行っていることを示すには十分であり ( 具体的な事実に依存する ) ウェブサイト上の 仮想 店舗は 異なる状態とは言えないとして この判決を下した 法廷の管轄地にいる顧客がウェブサイトから何かを購入しようとする場合 管轄地内で注文し 支払いをするということは ほぼ間違いないため 原告は ある程度は 管轄地内で 事業を行っている とデリー高裁は述べた *3 デリー高裁は 原告が行っていた事業がどの 程度 であるかを明言せず 今回の 程度 が管轄地要件を満たしているか決定しなかったにもかかわらず 上記の訴訟がデリーで係属中であることは注目しておく必要がある その一方 デリー高裁は 被告が 実際の 管轄地を問題にしていることを明らかにした *4 おそらく 裁判所は 事業の 重要な部分 がその管轄で行われていなければならない代わりに ある場所で販売された商品は 明らかにその場所で事業を行っていたという意味にはならない という Dhodha House 対 S.K. Maingi 事件の最高裁判決のとおりの事実を引用した これは 事実 / 実際の証拠に基づき 証明或いは反論されるに過ぎない *5 4

Indian Performing Rights Society Ltd. 対 Sanjay Dalia & Anr. 事件の最新の判決では 最高裁は World Wrestling Entertainment の判決の影響を検討する機会がなかった この件に関する今後の決定 特に World Wrestling Federation の判決が 最高裁判決によって どのように維持或いは修正されていくか注視していくと面白いだろう 電子商業空間におけるエンフォースメントに関してどのような意味を持つか技術的には この判決そのものは エンフォースメントに関連したドメイン インターネット上での商品及びサービスの販売 保護コンテンツの放送といった電子商業空間における侵害を直接扱うものではない もちろん この判決は 管轄が 被告の居住地 原因の発生地の場合には 民事訴訟法の元来の規則に影響は与えない この最高裁判決以前は インターネットに関しては こうした判決が数件しかなかった 要約すると ドメインネーム或いは侵害品のデザイン / ロゴを使用する等 被告のウェブサイト上で生じた侵害場所は 被告が 意図的に利用している 管轄地を証明することにより 原告が管轄地を示すことができた *6 これは アメリカの 最小接点 理論の展開に似ている 例えば インド国内にいる原告は 被告の行動が 管轄地及び被告が法廷地州にいる原告を 侵害を起こしたとする法廷地州の具体的なターゲット上にあるウェブユーザーとの商取引を完結させる意図を示すことを証明することにより この要件を証明することができる 結論 現実的な意味デリーに子会社が存在するという単純な理由によって エンフォースメント訴訟がデリーに起こされている現状は なくなるだろう この判決は インドのエンフォースメントの状況に実質的な損害を与えるものではなく 商標及び著作権のエンフォースメントを効果的に 分散化 させる 原告は本社所在地でエンフォースメント訴訟をしなければならないことになり デリー以外の地域の訴訟件数が増えることが期待される デリーであろうとなかろうと 本社所在地でエンフォースメント訴訟が可能であることは 依然として便利な選択肢となる 原告は 単純にデリー高裁での訴訟の可能性を仮定するよりも 訴訟戦略を練る際の重要な要素として 管轄地を評価しなければならなくなる この意味では 以下の最高裁判決は 興味深い *7: デリーで訴訟をする方が利便性が高く 訴訟の大部分がデリーに提訴され デリーの弁護士は経験豊富であると考えられている そのような面は 土地管轄の決定とは無関係である 管轄地を決定するのは 弁護士や彼らの経験の利便性ではない このように その考えは 即座に否定される 言い換えれば この判決は 潜在的原告が彼らの本社がある地方の弁護士を好むようになるかもしれないという点において 法律サービスの市場に影響を与えると言えるかもしれない インド全土でワンストップ型のエンフォースメ 5

ント訴訟を検討している訴訟当事者は 戦略上 この件を重要な要素として考慮しなければならないだろう 6

参考情報 *1:Indian Performing Rights Society Ltd. 対 Sanjay Dalia & Anr. ; 2015 年 7 月 1 日 ( インド最高裁 ;Civil Appeal No. 10643-10644, 2010 年 ) *2:2014 年 10 月 15 日 ( デリー高裁, FAO (OS) 506/2013) *3: 同 21 段落目 *4: 同 22 段落目 *5:Doodha House 対 S.K. Mainigi., 2006 年 9 月 ) SCC 41, para. 47 *6:Banyan Tree Holding (P) Limited 対 A. Murali Krishna Reddy, 2009 年 11 月 23 日 ( デリー高裁 ;CS (OS) 894/2008) *7:Indian Performing Rights Society Ltd. 対 Sanjay Dalia & Anr., 2015 年 7 月 1 日 ( インド最高裁 ;Civil Appeal No. 10643-10644, 2010 年 ) 45 段落目 本資料は Lakshmikumaran & Sridharan 法律事務所が執筆した原稿を発明推進協会が翻訳 株式会社サンガム IP が監修し 同協会が運営するポータル 知財よろずや に掲載したものです 7