サッカー選手のコンディショニング 兵庫県立加古川医療センターリハビリテーション科 柳田博美 青森県フットボールカンファレンス 12/7/2013
コンディショニングとは? スポーツパフォーマンスを高めるために 筋力や柔軟性 全身持久力など 種々の体力要素を総合的に調整すること
コンディショニングの要素 有酸素能力 スピード パワー アジリティー コーディネーション等など個々についての方法論は日々進化していますが 本日は上記のすべてに関与するであろう 筋疲労の問題 をとりあげます
筋疲労をどう評価し治療するのか? 評価を練習内容や負荷コントロールに どうつなげるのか? とてもムツカシイですが これこそがシーズンを通じたコンディショニングの本星と思っています
本日のプログラム 筋疲労度の評価と治療 基本的な消炎処置 基本的なストレッチと体幹強化 現場でさっそく明日から活用いただけます
筋疲労の発生と進行 張り感 疼痛 組織の破綻 拘縮筋組織のダメージ肉離れ腱断裂腱周囲のダメージ 腱付着部炎 / 剥離骨折 腱周囲炎
筋拘縮によるトラブルは プロ / アマを問わず様々なスポーツの現場で必ず毎日起こってます. 筋肉の張り??? きわめてアナログな厄介者 誰がどう診断するの? どこでどんな治療が必要なの? ほとんどのケースで 放置 され症状は悪化 筋肉系のトラブル パフォーマンス低下 の主たる原因となっています.
筋疲労の蓄積と行方
筋拘縮の発生と進行 筋全体的な張り感 筋拘縮 筋内の部分的な硬結 全体的な柔軟性の低下
筋拘縮 腱関連疾患 筋拘縮 筋全体的な張り感 全体的な柔軟性の低下 = 拘縮 腱 ( 周囲 ) 炎 付着部炎 剥離骨折
筋拘縮 肉離れ 筋拘縮 筋内の局所的な硬結 筋腱移行部に発生することが多い 肉離れ
筋拘縮の行方 局所の圧痛 抵抗痛 ストレッチ痛 ( 肉離れの前駆症状 ) 早期に察知して 下記に至る前に対処することが重症化を防ぐために重要です 肉離れ 付着部炎 ( 鵞足炎 オスグッド病 ) 腱炎 ( 腸脛靭帯炎 ) 剥離骨折
筋拘縮の診断
筋拘縮の 3 症状 圧痛 : 押さえると痛む ストレッチ痛 : 伸ばした時に痛む 抵抗痛 : 力を入れると痛む
大腿四頭筋 圧痛 : 押さえると痛む
ストレッチ痛 : 伸ばした時に痛む 大腿四頭筋
抵抗痛 : 力を入れると痛い 大腿四頭筋
筋拘縮の3 症状圧痛 : 押さえると痛むストレッチ痛 : 伸ばした時に痛む抵抗痛 : 力を入れると痛む 上記の3 拍子すべてそろえば 満足なパフォーマンスはムリ! 治療 / 練習量のコントロールの適応
筋拘縮の治療
張り感 レベルの対処法無理して練習してると 肉離れ 筋腱付着部炎へと進行 #1. かならず入浴する ( 循環改善 ) #2. 入浴時に温冷交代浴 ( 温水 冷水 ) #3. 痛みがあれば アイシング を行う #4. 水分の補給を十分に #5. 患肢挙上 ( 疲れた部分を挙上する ) #6. 練習前後のストレッチをしっかりと #7. ウオームアップで痛ければ止める
圧痛 / 抵抗痛 / ストレッチ痛 3 拍子 そろった時の対処法少なくとも2 3 日間の治療が必要 < 患部の処置 > #1. アイシング多めの温冷交代浴 #2. アイソメトリックな筋力維持 / 強化 < 患部外の調整 > #3. 患部外の強化は継続して OK #4. プールでの調整トレーニングが有効
治療の基本 筋の疲労感 筋の全体的な張り感 筋の部分的な硬結 可逆的数日 10 日前後 X 肉離れ腱付着部炎剥離骨折 このレベルでの 非可逆的 1 ヶ月以上! 運動量の制限と治療が必要!
筋拘縮に対する治療法のまとめ 局所の安静 局所の消炎処置 ジャンプやキック動作の制限スポーツ活動の停止 アイシング ( 炎症症状の沈静化 ) 温冷交代浴 ( 血流の改善 ) 周囲筋のストレッチ 骨端部 - 筋腱付着部へかかるストレス軽減 筋力の維持増強 / 基本的なアイソメトリック 筋萎縮の予防と血流の改善 The 神業 : 強刺激マッサージ ( 一般的ではありません )
局所の処置 : アイシング 台所用 ( 中サイズ ) のポリ袋と幅のせまいラップ が便利です
局所の処置 : 温浴 ( 渦流浴 )
消炎処置 ケガの直後や 出血や腫れがある時期急性期は 冷やす (RICE 処置 ) 慢性期は 温める が基本 温める と 冷やす を繰り返す 温冷交代処置 ( 急性期を過ぎた後の循環改善に極めて有効 )
病期による消炎処置の選択 急性期 亜急性期 慢性期 アイシング 温熱療法 温める と 冷やす を繰り返す 温冷交代処置 の適応範囲は極めて大きい
筋肉痛の原因による消炎処置の選択 疲労物質の蓄積 温熱療法 筋損傷の要素 アイシング 温める と 冷やす を繰り返す 温冷交代処置 の適応範囲は極めて大きい
Rest Ice Compression Elevation RICE 処置 冷却時間は 10 分が基本です
筋力強化の基本的な方法 アイソメトリック vs アイソトニック
動的運動 ( アイソトニック ) 関節の角度 筋肉の長さが変化する運動 静的運動 ( アイソメトリック ) 関節の角度 筋肉の長さを一定にして行う運動
動的運動 ( アイソトニック : 筋緊張度合いが不変 ) 関節の角度 筋肉の長さが変化する運動
静的運動 ( アイソメトリック : 長さが不変 ) 関節の角度 筋肉の長さを一定にして行う運動
アイソメトリック vs アイソトニック 長所特別な道具は不要高齢者でも安全 筋肥大や持久力 upに有効 短所 運動が単調 特殊な器具が必要 持久力向上には 時に危険を伴う つながらない
アイソメトリックの基本形
SLR (Straight Leg Raise) 5-10 秒 x 5 セット程度より ( 筋力 / 体調に応じて )
アブリフト + 膝伸展
サイドブリッジ
クロスアップ
ストレッチの基本形 ID ストレッチング ( 鈴木重行編三輪書店 ) より抜粋
FIFA 11+ 11+ は 14 歳以上の男女のサッカープレーヤーを対象とした 傷害予防のためのウォーミングアッププログラムです 国際的な専門家のグループによって作成されたもので 11+ を週 2 回以上行ったチームは 傷害発生が 30~50% 減少するという結果が出ています 日本サッカー協会 HP JFA メディカル 11+
The 神業 強刺激マッサージ 大腿二頭筋に発生した硬結部分 はじめは肘 手掌など広い接地面で 次いで母指を使って硬結を つぶす 硬結部分を つぶす イメージ
考察
病期に応じた消炎処置 筋力強化の方法 復帰へ向けた調整トレーニングの考え方
局所の疼痛 外傷治療の一般的なながれ 消炎処置 筋力の維持と増強 アイシング 温熱療法 炎症症状の沈静化に応じて 温冷交代浴 ( 血流の改善 ) アイソメトリック抵抗運動 筋萎縮の予防と血流の改善 筋柔軟性の回復 ストレッチ
局所の疼痛 Time Zero 筋拘縮 治療の実際 消炎処置 筋力の維持と増強 新鮮外傷筋柔軟性の回復 アイシング 温熱療法 炎症症状の沈静化に応じて 温冷交代浴 ( 血流の改善 ) アイソメトリック抵抗運動 筋萎縮の予防と血流の改善 Time Zero ストレッチ
局所の疼痛 消炎処置 アイシング X 温熱療法 筋力強化 アイソメトリック X 抵抗運動 筋柔軟性の回復 調整の方法 急性期 / 慢性期 : 次期相応のきめ細かな治療オプションの組み合わせが大事です X ストレッチ 患部外トレーニング Walking-Jogging ステップ動作 - 加速走ダッシュ, ジャンプ, ターン動作ボールトレーニング初診対敵動作
ケガをしました さて どこへ行きましょうか?
小児期の足関節捻挫における受療行動 病院 : 14% 整骨院 : 41% 両方を受診 :18% 放置 : 27% 高橋周 : 日本整形外科スポーツ医学会誌 2010
確定診断 病期に応じた適切な治療方法の選択と実施 整形外科医以外にできません!
整形外科へ Go! のなぜ?? 骨肉腫 : 長管骨の骨幹端に好発 50% 以上が膝周囲に発症 60% が 10 才未満で発症 オスグッド? 骨腫瘍??? たぶんオスグッドだろう では不十分 時に とんでもない見落とし につながります 整形外科でレントゲンを撮って確定しましょう
スポーツドクターの資質 行動的目標 アイシングを含めた消炎処置を行える 張り感 の評価と適時な治療 練習負荷の調整ができる その結果 究極の目標 肉離れや骨端症等を未然に防ぐ アスリートのコンディショニングができる
本日 いちばんお伝えしたかった事 パフォーマンスの悪さ のいちばんの原因 コンディショニングの不良 筋疲労の蓄積が コントロールできていないこと!
よりよいコンディショニングと は? 筋疲労度の評価と共通理解が重要です
適切な練習負荷へのフィードバック 連日変化する筋疲労の状況を評価 適切な負荷 / 練習方法への反映 肉離れや炎症性疾患 外傷の予防 練習可能かどうか? レベルの判断 筋肉の疲労度合いをどう評価するかが重要です 全てのスポーツの現場で誰かがやらないとダメだ!!
まとめ 1. 筋疲労が肉離れや筋腱付着部炎などへ至る過程を紹介しました 2. 疲労度の指標として筋肉の張り感 : 筋拘縮の評価と治療法を紹介しました 3. アイシングを含む適時な消炎処置 柔軟性と筋力の調整がよりよいコンディショニングに繋がります 4. 筋疲労の評価と共通認識 練習負荷へのフィードバックが重要です
APPENDIX 1. 練習をやらせる方向へのベクトルを へし折るヒトが必要です 痛み止めを使い ムリして出場して よかったことは少ないです 2. シーズンを通したコンディションの 維持 / 向上に有用なサプリメント? クエン酸 : アシドーシスの改善 生姜 : 体温上昇 免疫力向上 安価で想像以上の効果をもたらします!!