団塊世代の引退行動が マクロ経済に及ぼす影響

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2 給付と負担における世代間の大きな格差給付と負担を比較すると 後の世代ほど負担がより重くなっており 世代間の不公平感が高まっている 3 職業や世帯形態による制度の違い負担面での一元化が行われておらず ( 注 3) また 被用者の扶養配偶者 (3 号被保険者 ) の取扱いは 女性の就業意欲を妨げる要

要 旨 政府の社会保障国民会議は 2008 年 5 月 19 日の雇用 年金分科会で 公的年金制度に関する定量的なシミュレーションを公表した 主たる注目点は 基礎年金の財源を全額税方式とした場合の必要財源の規模と消費税率換算のシミュレーションである 基礎年金の税方式化を行うにあたっては 制度移行前の

年金改革の骨格に関する方向性と論点について

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

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目次. マクロ試算 ( 基礎年金の将来の保険料負担や国庫負担の財源規模を示したマクロ的な試算 ) () 現行制度における基礎年金にかかる保険料と国庫負担の財源規模の見通しマクロ試算 国民年金保険料の納付率の前提を置き換えた場合の影響 () 現行の社会保険方式を前提にした修正案の個別の提案内容の影響評

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つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

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いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

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< 参考資料 目次 > 1. 平成 16 年年金制度改正における給付と負担の見直し 1 2. 財政再計算と実績の比較 ( 収支差引残 ) 3 3. 実質的な運用利回り ( 厚生年金 ) の財政再計算と実績の比較 4 4. 厚生年金被保険者数の推移 5 5. 厚生年金保険の適用状況の推移 6 6. 基

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

厚生年金 健康保険の強制適用となる者の推計 粗い推計 民間給与実態統計調査 ( 平成 22 年 ) 国税庁 5,479 万人 ( 年間平均 ) 厚生年金 健康保険の強制被保険者の可能性が高い者の総数は 5,479 万人 - 約 681 万人 - 約 120 万人 = 約 4,678 万人 従業員五人

平成16年年金制度改正における年金財政のフレームワーク

また 保険料の納付対象月数に占める納付月数の割合 ( 納付率 ) は 低下傾向が続いており 2012 年度時点で59.0% となっている ( 図表 1) 保険料は過去 2 年分の納付が可能であるため 最終的な納付率は多少上昇するが 過去の傾向からみても2012 年度の最終納付率は60% 台半ば程度に

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3. 働き方や家族のあり方の構造変化への対応現在の社会保障制度は 終身雇用や年功序列 男性が世帯主で専業主婦の妻と子どもを養うという雇用 家族形態を標準モデルとしてきた しかし 雇用慣行や労働市場が激変する中で 働き方や家族のあり方も大きく変化している それらに柔軟に対応できる社会保障制度を構築する

公的年金と医療

第 9 回社会保障審議会年金部会平成 2 0 年 6 月 1 9 日 資料 1-4 現行制度の仕組み 趣旨 国民年金保険料の免除制度について 現行制度においては 保険料を納付することが経済的に困難な被保険者のために 被保険者からの申請に基づいて 社会保険庁長官が承認したときに保険料の納付義務を免除す

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社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

タイトル

保険料方式の基礎年金の問題

公的年金(1)

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女性が働きやすい制度等への見直しについて

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被用者保険の被保険者の配偶者の位置付け 被用者保険の被保険者の配偶者が社会保険制度上どのような位置付けになるかは 1 まず 通常の労働者のおおむね 4 分の 3 以上就労している場合は 自ら被用者保険の被保険者となり 2 1 に該当しない年収 130 万円未満の者で 1 に扶養される配偶者が被用者保

稲垣氏講演資料

税・社会保障等を通じた受益と負担について

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重点検討施策の現状と課題(社会保障)

( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

社会保障の定義 公的責任によるセーフティネット ( 安全網 ) の提供 1 生活を脅かす事故 ( 疾病 負傷 死亡 老齢 失業等 ) によって国民に生活上の困難が生じた場合に 2 国民に健やかで安心できる生活を保障することを目的として 3 公的責任で 4 国民に対し生活を支える給付を支給する政策 制

第3回税制調査会 総3-2


公的年金(2)

金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

消費税 5% 引上げによる社会保障制度の安定財源確保 消費税率 ( 国 地方 ) を 2014 年 4 月より 8% へ 2017 年 4 月より 10% へ段階的に引上げ 消費税収の使い途は 国分については これまで高齢者 3 経費 ( 基礎年金 老人医療 介護 ) となっていたが 今回 社会保障

平成 24 年度国民健康保険税税率改定案 1 医療保険分 ( 基礎課税額 ) 現行 改定 増減 伸率 所得割額 4.30 % 4.63 % % 資産割額 % 9.80 % % 税率等 均等割額 17,100 円 18,000 円 900 円 5.3%

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2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 介護保険は社会保険を構成する 1 つです 介護保険制度の仕組みや給付について説明していきます 介護保険制度 介護保険制度は 高齢者の介護を社会全体で支えるための制度

年金額の改定について 公的年金制度は平成 16 年の法改正により永久に年金財政を均衡させる従来の仕組みから おおむね ( 100 ) 年間で年金財政を均衡させる仕組みへと変わった この年金財政を均衡させる期間を 財政均衡期間 という これにより 政府は少なくとも ( 5 ) 年ごとに財政の検証をおこ

意 持続可能な年金制度構築に向けた提言 ~ 将来不安を払拭し 活力ある経済社会をめざして ~ 2012 年 11 月 15 日 公益社団法人 関西経済連合会

年金制度を保障しなければいけない理由 存在意義について 生涯を安心して暮らすためには やがて必ず訪れる老後において 現役時代と大きく変わらない生活のできる収入が確保されていることが必要です このような収入を確保する上で 我々は3つのリスク ( 不確定要因 ) に直面します 1 老後の余命期間は予測不

( 万円 ) が発生の空洞化は否めない 未納の理由としては 社会保険庁が信用できない 年金制度の将来が不安 との回答が合わせて 20.7% に上り 年金制度に対する国民の不信感が高まっていることがわかる ( 平成 2 0 年国民年金被保険者実態調査 ) 非正規労働者の増加など社会環境の変化による低年

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別紙2

4月20日(水)衆・厚労委 古屋範子議員の議事録(抜粋)

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国民健康保険税率等の諮問 について 国立市健康福祉部健康増進課国民健康保険係 国立市富士見台 : ( 代表 ) 内線

平成 30 年 5 月 21 日 ( 月 ) 平成 30 年第 6 回経済財政諮問会議資料 4-1( 加藤臨時議員提出資料 ) 資料 年を見据えた社会保障の将来見通し ( 議論の素材 ) 平成 30 年 5 月 28 日 厚生労働省

社会保障改革に欠かせない視点

2. 年金改定率の推移 2005 年度以降の年金改定率の推移をみると 2015 年度を除き 改定率はゼロかマイナスである ( 図表 2) 2015 年度の年金改定率がプラスとなったのは 2014 年 4 月の消費税率 8% への引き上げにより年金改定率の基準となる2014 年の物価上昇率が大きかった

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三鷹市健康福祉総合計画2022

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国 都道府県による財政リスクの軽減 運営については 保険料徴収は市町村が行い 財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が行う 広域連合の財政リスクの軽減については 国 都道府県が共同して責任を果たす仕組みとする 2 年単位の財政運営 負担 負担 高額医療費に係る公費負担 給付増リスク 後期

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

第5回基礎問題小委員会 礎5-4

年の家族 2-1 世帯モデル設定本章では 3 つの社会変化をもとに世帯モデルを以下のように設定する 1 専業主婦世帯 ( 標準モデル世帯 ) 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加入した夫と 45 年間専業主婦の夫婦 2 生涯単身男性世帯 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

第8回税制調査会 総8-2(案とれ)

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改革の方向性 1 未来への投資 ( 子ども 子育て支援 ) の強化 ~ 子ども 子育て新システムの創設 ~ 待機児童の解消や幼保一体化 市町村が責任を持って 地域の子育て支援を充実 子どもを生み 育てやすい社会に 待機児童を解消 ( 保育 放課後児童クラブを量的拡充 ) 保育に携わる職員の専門性を高


1 未来への投資 ( 子ども 子育て支援 ) の強化 ~ 子ども 子育て新システムの創設 ~ 待機児童の解消や幼保一体化 市町村が責任を持って 地域の子育て支援を充実 子どもを生み 育てやすい社会に 待機児童を解消 ( 保育 放課後児童クラブを量的拡充 ) 保育に携わる職員の専門性を高め 体制も強化

< 現行 > 対象者医療区分 Ⅰ(Ⅱ Ⅲ 以外の者 ) 1 * 医療の必要性の低い者医療区分 Ⅱ Ⅲ 1 2 * 医療の必要性の高い者 ( 指定難病患者を除く ) 3 指定難病患者 2 生活療養標準負担額のうちにかかる部分 1 日につき32 1 日につき 1 日につき < 見直し後 > 対象者医療区

年金制度のポイント

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米国の給付建て制度の終了と受給権保護の現状

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2004 年の制度改革案の審議中に国会議員の未納問題が話題になり 公的年金の実態は国民の誰もが注目するものになった そもそも公的年金 国民年金は日本の福祉政策の中で最も大きなもののひとつであり 国民皆保険というように国民すべてが加入の義務を負う 国民すべてが働ける間は保険料を納め 老後になると年金を

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Transcription:

社会保障国民会議 報告書の 読み方 2009 年 6 月 22 日 RIETI BBL 国際基督教大学八代尚宏 yashiro@icu.ac.jp 1

社会保障国民会議の意義 2008 年 1 月に官邸に設置 11 月に最終報告書 社会保障審議会との差 年金 医療 介護 少子化等を総合的に検討 年金の財政方式について社会保険料と税の比較 医療 介護サービスについて将来財政試算 書かれていること と 書かれていないこと 経済財政諮問会議等での年金 医療制度改革についての視点の違い 2

社会保障制度改革の主要な課題 社会保障財政の均衡 世代間格差の是正 社会保険料の引き上げ 後代世代の負担増 給付の削減 高齢者の生活不安 年金支給開始年齢引き上げ 高齢者就業機会制約 なし崩しの後代世代への負担の転嫁 世代内の給付と負担の公平性 働き方の多様化で専業主婦と独身 共働き世帯の差 国民年金の未納 厚生年金の適用漏れ 国民健康保険料の収納率低下 3

国民会議の保険料の未納問題の認識 未納はマクロ的には年金財政に大きな影響を与えるものではないが 未納の増加 ( とそれによる無年金者 低年金者の発生 ) は皆年金制度の理念を脅かす大きな問題 ( 最終報告 ) 未納者の増大は真面目に納付する人々の不公平感を増大させ 制度への信頼を低下させ 更なる未納の増大を招く危険がある その意味でも未納問題は基礎年金制度にとって重大な問題 ( 中間報告 ) 最終報告ではカット 4

保険料の未納問題の認識 ( 続き ) 長期にわたって保険料が未納の者は 現在の制度のもとでは老後に無年金となってしまうから 年金以外の所得源がないと厳しい貧困にさらされることになる 社会としては 彼らの所得保障のために 生活保護等の税財源の負担増 ( 第一分科会報告 ) 社会としては 問題だが年金制度の問題でなし? 公的年金の重要な機能として 勤労時の強制貯蓄 現行の無年金者の2/3は生活保護受給者 負担の実効的な強制力を欠く年金制度は欠陥品 5

年金財政に大きな影響を与えないとい う根拠 ( 報告書には明記なし ) 1 保険料を負担しない者には将来給付もなし 後代世代に無関係な完全積立方式の下では成立 賦課方式の下で すでに存在している受給者の給付と積立不足を賄う被保険者の脱退は保険財政悪化 年金保険料と給付とのバランスに大きな世代格差がある中で 不利な立場の若年層を中心とした脱退は年金財政に より大きな影響を与える筈 とくに 基礎年金制度を通じて 国民年金の受給者の負担を厚生年金の被保険者が負う仕組み 6

年金財政に大きな影響を与えないとい う根拠 ( つづき ) 保険料未納者は年金加入者の 5% に過ぎず 未納率とは 本来 保険料を払うべき人 との比率 国民年金未納者を 源泉徴収者や免除者も含めた公的年金加入者全体と比較した数字の意味? 未納付者を免除者に変えれば納付率は向上? 未納者の定義 =2 年間の時効時点までの未納付者 未納税金のような延滞利子もなし 年金制度は破綻しない 破綻 の定義次第 7

保険料未納者は年金加入者の 5%? 第一号被保険者の減少 未納付増加を 第二号被保険者負担で補う財政調整 ( 取れるとことから取る ) 8

金額ベースの未納付率は 64%(2007 年 ) 免除者も含めれば 47% 保険料納付対象月数に対する現実の納付月数 免除者を増やすことで未納付率低下に歯止め ( 免除者含む ) 実質納付率は継続的な低下 90 国民年金納付率の推移 85 80 75 70 % 65 60 55 50 45 1986 1990 1995 2000 2005 2007 厚生労働 公的年金加入状況等調査 により作成 9 納付率 免除者 猶予者含む納付率

国民会議による未納者対策 = 未納者の属性を分析し 対応策? 1 低所得者についての免除制度の積極的活用 2 確信的不払者 ( 多くは中高額所得者 ) に対する強制徴収の実施 徴収コストの大きさは? 3 非正規雇用者 非適用事業所雇用者への厚生年金適用の拡大 雇用主による代行徴収 厚生年金の適用事業所漏れは全体の約 3 割 従業員ベースで267 万人 ( 平成 18 年総務省行政監察推計 ) 事業所ぐるみの未納付 行政の徴収コストを事業主の負担へ転嫁 10

自営業主が減少すれば納付率が 自然に高まるか? 国民年金被保険者の半分以上は すでに零細企業の社員やパートタイム労働者 経済の長期停滞が続けば非正社員は今後も増加 厚生年金から空洞化している国民年金への移動 11

保険料未納問題への認識 ( まとめ ) 未納問題は財政問題ではない 深刻な財政問題 皆年金制度の理念を脅かす大きな問題 = 制度自体は変えず 運用面のみで対処すること 年金の 強制貯蓄 機能を果たせるように改革 公平性を欠く年金制度は国民の信頼感を喪失 未納の悪循環 のリスク ( 強制徴収の厚生年金から任意徴収 未納が容易な国民年金へのシフト ) 年金に関する徹底した情報開示 ( 例 年金白書 ) 12

基礎年金の財政方式 ( 報告書の引用 ) 基礎年金制度の財政方式については 平成 21 年度からの基礎年金国庫負担の1/2への引き上げ実施を前提に 基礎年金制度の財政方式について 現行社会保険方式 現行社会保険方式の修正案 税方式 ( 複数案 ) について 客観的 中立的な定量的シミュレーションを実施し 関連資料とともに公表した 建設的な制度改革論議を行うためには 共通の土台となる客観的 実証的データに基づく議論が不可欠 このシミュレーション結果がそのような 共通の土台となる基礎資料 として活用され 基礎年金の財政方式に関する議論がさらに深まることを期待する 13

社会保険方式と異なり多様な税方式 社会保険方式の 自立 自助原則 保険料負担なければ給付なし 申請主義 社会保険への国庫負担金との組合せ 税方式 = 国民皆年金 国民の権利としての基礎年金受給権 所得税 消費税 法人税の一般財源を充当 社会保障目的税方式 社会保険料 ( 厚生労働省の社会保障目的税 ) を一定時点から社会保障目的消費税に置き換え 負担なければ給付なし の社会保険の原則維持 14

3 一般財源の税方式と目的税 ( 特定財源の税 ) 方式との違い 税方式では権利性を欠くため給付制限? 社会保障目的税であれば社会保険料と同様に負担期間に応じた給付の原則が成立 米国の社会保障税は拠出型の社会保険方式 個人の拠出記録との対応性では医療保険と同じ 15

国民会議の 税方式 の比較の仕方 現行の 社会保険料方式 と対比できる税方式は ケースB( 過去の保険料未納期間に応じて減額 ) 基礎年金保険料引き下げで 純負担増なし ケースA( 過去の納付状況に関係なく一律給付 ) は 別個の保険料未納者対策との組合せ 未納付者対策を欠く 社会保険料方式 にも必要 ケースC( 過去の保険料納付相当分を加算して給付 ) では保険料納付者との公平性にも配慮 税方式では3 1/2~12% の消費税引き上げ 16

マクロ試算 ; 国庫負担 1/2 を超えて追加的に必要となる税財源の 消費税率換算 17

18

ミクロ試算の問題点 1 事業主負担分がなくなることで勤労者の負担増? 国民経済計算では事業主負担 = 賃金コストの一部 事業主が賃金で支払い 労働者が保険料を負担することと同じ ( 労働者負担の代行 ) 事業主保険料が上がれば賃金抑制 雇用削減 2 自営業等の未納付者の負担増は? 3 個人として保険料を負担しない専業主婦の負担増 世代内の公平性向上の効果を指摘していないこと 19

事業主負担分保険料の軽減問題 消費税化による事業主負担分 ( 約 3.7 兆円 ) の処理 事業主負担分保険料 = 雇用税 が軽減されれば 賃金コストの軽減で雇用需要の増大効果 消費税化でも事業主負担分の保険料は据え置き 保険料負担の労使按分原則の修正 年金の報酬比例部分の過去債務の償却に充当 事業主負担保険料の処理については多様な選択肢があり 年金の財政方式と切り離した議論が可能 20

高齢世帯の負担増問題 消費税率引き上げによる物価スライドの適用なし 保険料を払い終えた高年齢者の負担増 給付と負担の世代間格差の是正で年金制度の持続性の確保 イ. 移行前に保険料を完納していたケース 制度移行時に 60 歳の者で 移行前に 40 年間保険料を完納していた場合 20 歳 60 歳 65 歳 40 年 年金支給 消費税負担 現行制度では負担せずに済んだ 60 歳以降の消費税負担分が 追加的な負担 となる 既に年金を受給している者についても同様の問題 ( 年齢によって影響は異なる ) 21

消費税の逆進性問題 現行の定額の国民年金保険料は 人頭税 と同じ 高所得層ほど消費税を通じて多くの負担 消費税は所得比例の保険料と同じ 定額の基礎年金との組み合わせで再分配効果 現行の免除者へは給付面で対応可 ( 年金目的税 ) 将来の消費税率の高まりに対しては 給付つき税額控除 ( 低所得層への戻し税 ) の活用も 自営業等 所得源泉差に無関係な 水平的公平性 22

厚生労働省試算の世代間格差 23

社会保障目的消費税の利点 保険料未納問題の根本的 低コストの解決 課税ベースの拡大と世代間格差の解消への第一歩 保険料納付記録がなくなること ( 医療保険方式 ) 申請主義 の撤廃で多様な被保険者の利便性 二重課税組織の解消で行政費用の大幅な軽減 負担なし給付の第三号被保険者問題の解決 税方式に移行後は 国内居住期間が 保険料 拠出期間となり 過去の拠出実績は給付に反映 時間をかけて徐々に完全な税方式へ移行 24

国民会議の 医療 介護費用のシミュレーション 高齢化社会での具体的な制度改善の道を提示 病院の機能分化 ( 急性期医療に重点的な整備 ) 平均在院日数の短縮 過剰な病床数削減で 医療の質向上 重度の特別擁護老人ホームと軽度の在宅介護との中間のグループホームや小規模多機能施設の充実 介護ケア付き住宅の量 質面での拡充 財政面の課題 ( 保険料 公費 私費の分担 )? 25

医療費について 公的保険の守備範囲の明確化 医療技術の高度化 人口高齢化で医療費の増加 すべての医療費を税と公的保険で の現実性? 医療の内で 感染症 急性症と慢性症との仕切り 臓器移植 遺伝子治療は公的保険の枠外 介護的医療は介護保険へ 現行制度の 選定療養 と 評価療養 の拡大 医療費の財源として 強制的な保険料 税 患者負担の他に 利用者が選択できる 医療サービス との組み合わせ 26