[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

1 口当たりの基準価額 口数 + 再投資されていない未収分配金 - 再投資されていない未収分配金に係る源泉所得税相当額 ( 注 ) - 信託財産留保額および解約手数料 ( 消費税相当額を含む ) 注 : 特別徴収されるべき都道府県民税の額に相当する金額 および復興特別所得税を含みます ( 以下同 )

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

上場株式等の譲渡益に係る課税 上場株式等の税金について 上場株式等の譲渡益に係る税率は以下の通りです 平成 25 年 1 月 1 日 ~ 平成 25 年 12 月 31 日 平成 26 年 1 月 1 日 ~ 平成 49 年 12 月 31 日 平成 50 年 1 月 1 日 ~ % (

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

( 注 3) その他の少額上場株式等の非課税口座制度の詳細については 証券会社等の金融商品取引業者等にお問い合わせ下さ い b. 利益を超える金銭の分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 平成 27 年 4 月 1 日以後開始事業年度に係る利益を超える金銭の分配につ

第 5 章 N

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

[2] のれんの発生原因 企業 ( または事業 ) を合併 買収する場合のは 買収される企業 ( または買収される事業 ) のおよびを 時価で評価することが前提となります またやに計上されていない特許権などの法律上の権利や顧客口座などの無形についても その金額が合理的に算定できる場合は 当該無形に配

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03_税理士ラスパ_相続税法_答案用紙-1.indd

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

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海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

配当所得の入力編

平成18年度地方税制改正(案)について

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相続した財産を譲渡した場合の税務 坂本和則相談部東京相談室花野稔相談部大阪相談室 相続した財産 ( 不動産や株式など ) を譲渡し 相続税の納税資金を捻出する場合があります 特に譲渡する株式が非上場株式である場合は 譲渡しようとしても流通性が乏しく また買取資金を用意する関係などからも その株式を発行会社に買取ってもらうケースが多いと思われます そうしたケースをはじめ 財産の譲渡による所得には 原則として所得税と住民税が課税されますが 一定の場合は 税負担を軽減するなどの趣旨で 課税の特例が設けられています 今回は 相続した財産を譲渡した場合の税務について 不動産と株式を譲渡した場合を中心に 課税の特例と併せて解説します なお 平成 26 年度税制改正では 特例のうち 土地等の譲渡に係る優遇措置が見直されていますので その内容と影響についても触れます 1. 相続した財産を譲渡した場合の課税の原則 資産の譲渡による所得は 一定のものを除いて 譲渡所得 とされます これら譲渡所得は 他の所得と合算して課税される総合課税の譲渡所得と 他の所得から分離して課税される分離課税の譲渡所得とに区分されます 一般的に 相続財産のうち 預貯金などと並び大きな比重を占めると考えられるのは 不動産と有価証券 ( 特に株式 ) であり これらの譲渡による所得は 原則として分離課税とされています ただし 一定の場合には 課税の特例が設けられています [1] 不動産の場合 不動産の譲渡による譲渡所得は 売却金額 ( 譲渡収入 ) からその財産の取得に要した金額 ( 取得費 ) および譲渡に要した費用 ( 譲渡費用 ) を控除した金額とされます 譲渡収入金額 - ( 取得費 ( 1) + 譲渡費用 ) = 譲渡所得金額 注 1: 相続 遺贈により取得した場合 相続人は被相続人の取得費を引継ぐ 1

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分配 ( 下図の 利益積立金 以下 みなし配当 という ) とに分け みなし配当および譲渡所得が課税されます 非上場株式の配当 ( みなし配当を含む ) に対する課税は 少額配当として 20% ( 復興特別所得税と合わせて 20.42%) の税率による源泉徴収だけで所得税の課税が完結する一定の場合を除き ( 注 2) 超過累進税率( 所得税率と住民税率を合わせて 15~50%( 注 3)) による総合課税とされ 一定の配当控除の適用があります 一方 売却価格からみなし配当とされる金額を控除した金額が 株式の譲渡対価 とされ この譲渡対価から取得費および譲渡費用を控除した金額が譲渡所得又は譲渡損失となります 譲渡所得は税率 20%( 所得税率 15% 住民税率 5%( 注 3)) の申告分離課税とされます 注 2: 所得税は申告不要とされますが 住民税には申告不要の取扱いはありません 注 3: このほかに 所得税額の 2.1% 相当の復興特別所得税が追加的に課税されます 株式を発行会社に譲渡した場合の 譲渡損益 と みなし配当 の関係 2. 相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例 上記のとおり 非上場株式を発行会社に譲渡した場合は みなし配当 の金額によっては超過累進税率による多額の課税が生じ 相続税の納税資金確保に支障を来すことも考えられます そこで 相続または遺贈により財産を取得した個人で その相続または遺贈につき相続税があるものが 相続開 2

始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後 3 年を経過する日までの間に その相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された非上場株式を発行会社に譲渡した場合は みなし配当課税は行わず 売却価格 ( 譲渡対価 ) 全額を譲渡収入として 申告分離課税とされる特例が設けられています この特例により 仮に総合課税されるとしたならば 申告分離課税による場合より多額の課税となるケースでは税負担が軽減されることになります また この特例は 次項の 相続税の取得費加算の特例 と併せて適用を受けることができるとされています 3. 相続税の取得費加算の特例 [1] 平成 26 年度改正前の特例の内容 相続または遺贈により財産を取得した個人で その相続または遺贈につき相続税があるものが 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後 3 年を経過する日までの間に その相続財産を譲渡した場合は その譲渡所得の計算上控除する取得費に 譲渡した財産に対応する相続税額を加算し 譲渡所得課税を軽減する特例です 平成 26 年度改正前は 譲渡する資産が 土地等以外の場合 と 土地等 ( 土地および土地の上に存する権利 ) の場合 では 加算する取得費の計算方法が異なり 譲渡所得金額および取得費加算額の計算は以下の通りとされていました (1) 譲渡資産が土地等以外の場合譲渡した財産に対応する相続税額を取得費に加算します 譲渡収入金額 -( 取得費 + 譲渡費用 + 取得費加算額 )= 譲渡所得金額 この場合の取得費加算額は 以下の計算式で計算されます その者の確定相続税額 その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされた譲渡資産の価額 その者の相続税の課税価格 + その者の債務控除額 (2) 譲渡資産が土地等の場合 相続財産である土地等の一部を譲渡した場合であっても 譲渡した土地等を含む相続したすべての土地等に対応する相続税額を取得費に加算することができる特例が設けられていました 譲渡収入金額 -( 取得費 + 譲渡費用 + 取得費加算額 )= 譲渡所得金額 3

この場合の取得費加算額は 以下の計算式で計算されます その者の確定相続税額 その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされた土地等の価額の合計額 その者の相続税の課税価格 + その者の債務控除額 [2] 平成 26 年度改正による見直し ( 土地等の場合 ) 平成 24 年 10 月に会計検査院が 土地等の譲渡に関わる取得費加算の特例について 現行制度では譲渡していない土地等に対応する相続税相当額も取得費に加算されるため 土地等を多く相続して その一部を譲渡したものは取得費の加算上著しく有利な状況となっている などと指摘したことを受けて 平成 26 年度税制改正により 土地等に関する相続税の取得費加算の優遇措置は廃止されました この改正により 平成 27 年 1 月 1 日以後に開始する相続または遺贈により取得した土地等の譲渡については 土地等以外の相続財産を売却した場合と同様に 譲渡した土地等に対応する相続税相当額のみしか取得費に加算できないこととなりました 取得費加算額は 上記 (1)-1の計算式により算出することとなります 4. 取得費加算特例の改正に伴う影響について 取得費加算特例の計算において 改正前と改正後で 譲渡に係る税額の負担にどのくらい違いがでるのかを簡単な事例をもとに比較します なお 平成 25 年度改正による改正後の相続税の基礎控除と税率は 平成 27 年 1 月 1 日以後の相続または遺贈により取得した財産に係る相続について適用されますので 以下の改正前 ( ケース1) と改正後 ( ケース2) の取得費加算の計算では その前提である相続税額も異なることとなります 設例 ( 以下の計算では便宜上 1 万円未満を切り捨て ) 相続財産および相続税評価額 財産 評価額 財産 評価額 土地 A 8,000 万円 建物 B 1,000 万円 土地 B 2 億円 建物 C 600 万円 土地 C 4,400 万円 預金 2,000 万円 すべての相続財産の相続税評価額の合計 ( 相続税の課税価格 ) 3 億 6,000 万円 法定相続人 :1 人 ( 子ども ) 相続税額 : ケース 1 平成 26 年 12 月 31 日以前の相続または遺贈により取得 1 億 300 万円 ケース 2 平成 27 年 1 月 1 日以後の相続または遺贈により取得 1 億 2,000 万円 相続税の納税資金確保のために相続した 土地 A を売却予定 ( 一般長期譲渡に該当 ) 売却予定額 1 億円 取得費 500 万円 譲渡費用 500 万円 4

ケース1 相続税額の取得費加算額相続したすべての土地等の相続税評価額 ( 土地 A B Cの相続税評価額合計 ) 3 億 2,400 万円相続税の課税価格 3 億 6,000 万円 1 億 300 万円 ( 確定相続税額 ) 3 億 2,400 万円 / 3 億 6,000 万円 = 9,270 万円 譲渡所得金額 1 億円 ( 譲渡金額 )-(500 万円 ( 取得費 )+500 万円 ( 譲渡費用 )+9,000 万円 ( 取得費加算 ) )=0 円 取得費加算額は譲渡益が上限となるため 上記計算で算出された 9,270 万円ではなく 9,000 万円が上限 譲渡に係る税額はなし ケース2 相続税額の取得費加算額譲渡した土地 Aの相続税評価額 8,000 万円相続税の課税価格 3 億 6,000 万円 1 億 2,000 万円 ( 確定相続税額 ) 8,000 万円 / 3 億 6,000 万円 = 2,666 万円 譲渡所得金額 1 億円 ( 譲渡金額 )-(500 万円 ( 取得費 )+500 万円 ( 譲渡費用 )+2,666 万円 ( 取得費加算 ))=6,334 万円 譲渡に係る税額 : 6,334 万円 ( 譲渡所得 ) 20%( 所得税 15% 住民税 10%)=1,266 万円 ( ほかに復興特別所得税 ) このように 平成 27 年 1 月 1 日以後の相続または遺贈により取得する財産に複数の土地が含まれ 納付すべき相続税があり それらの土地等の一部を譲渡する場合は 相続税の基礎控除額の引下げや税率構造の見直しに加え 取得費加算の特例の優遇措置の廃止の影響を受けることになります このようなケースでは 今まで以上に事前の検討と対策が必要になると考えられます 内容は 2014 年 9 月 8 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務等の一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士等 ) にご相談ください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所相談部東京相談室 03-3591-7077 / 大阪相談室 06-6226-1701 http://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5