みずぼうそう

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とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

あり 一人の感染者が周囲の免疫のないヒトに感染させる数である基本再生産数は 10 流行を抑制するための集団免疫率は 90% 以上です 水痘の潜伏期間は通常 14~16 日間です 水痘ワクチンの定期接種が行われている米国では 1 回定期接種を行っていた 1996 年から 2004 年までの間に 水痘患

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

スライド 1

日産婦誌58巻9号研修コーナー

症化することからハイリスクとされています VZV は細胞親和性が強く cell-to-cell にウイルスが感染するため ウイルス増殖の抑制には液性免疫よりも細胞性免疫が重要であります このため 特に細胞性免疫機能の低下した宿主においては極めて重篤となり 致死的な経過をたどることが少なくありません

水痘(プラクティス)

3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

検査項目情報 水痘. 帯状ヘルペスウイルス抗体 IgG [EIA] [ 髄液 ] varicella-zoster virus, viral antibody IgG 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

ハイリスク患者 免疫抑制者における播種性水痘 悪性腫瘍患者の死亡率は 7-17% 成人 妊婦 新生児 肺臓炎 年齢による水痘の頻度と死亡率 0~4 5~14 15~44 45~64 >65 頻度 ( 対人口

2009年8月17日

両面印刷推奨 <4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる 全く確認できない D または E のどちらかを選ぶ D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけ

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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<4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる全く確認できない D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけて さらに 1 回ワクチン接種を受ける 抗体検査を


定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

インフルエンザ(成人)

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

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Vol. 32 Suppl.II,2017 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ( ムンプス ) に関する Q&A の公開にあたって 日本環境感染学会では 平成 21 年 5 月に 院内感染対策としてのワクチンガイドライン第 1 版 を 平成 26 年 9 月に 医療関係者のためのワクチンガイドライン

2019 年 7 月 4 日 ( 木 ) 愛知県保健医療局健康医務部健康対策課感染症グループ担当内田 久野内線 ダイヤルイン 手足口病警報を発令します!! 愛知県では 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 に基づき 県内の小児科を標榜する

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院内感染対策マニュアル

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

02別添:日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A[H28.3月版]

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

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<B 型肝炎 (HBV)> ~ 平成 28 年 10 月 1 日から定期の予防接種になりました ~ このワクチンは B 型肝炎ウイルス (HBV) の感染を予防するためのワクチンです 乳幼児感染すると一過性感染あるいは持続性感染 ( キャリア ) を起こします そのうち約 10~15 パーセントは

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 014 年 10 月 1 日版日本小児科学会 乳児期幼児期学童期 / 思春期 ワクチン 種類 直後 6 週 以上 インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ )

2013 年 1 月 10 日放送 第 111 回日本皮膚科学会総会 10 教育講演 45-4 HSV 感染症 Up date( 性器ヘルペスを中心として ) 愛知医科大学皮膚科 教授渡辺大輔 はじめに単純ヘルペスウイルス (herpes simplex virus:hsv) は 皮膚 粘膜に初感染

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2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

00【議連提出資料】B型肝炎ワクチンの定期接種化について

2. 定期接種ンの 接種方法等について ( 表 2) ンの 種類 1 歳未満 生 BCG MR 麻疹風疹 接種回数接種方法接種回数 1 回上腕外側のほぼ中央部に菅針を用いて2か所に圧刺 ( 経皮接種 ) 1 期は1 歳以上 2 歳未満 2 期は5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間 ( 年

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの主な変更点 2014 年 1 月 12 日 1)13 価結合型肺炎球菌ワクチンの追加接種についての記載を訂正 追加しました 2)B 型肝炎母子感染予防のためのワクチン接種時期が 生後 か月 から 生直後 1 6 か月 に変更と なりました (

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

<4D F736F F D E9197BF34817C31817A93FA967B945D898A838F834E B94BD899E95F18D908FF38BB52E646F6378>

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

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会計 10 一般会計所管課健康推進課款 4 衛生費事業名インフルエンザ予防接種費項 1 保健衛生費目 2 予防費補助単独の別単独 前年度 要求段階 財政課長内示 総務部長 市長査定 最終調整 予算計上 増減 1 当初要求 2 追加要求等 3 4( 増減額 ) 5( 増減額 ) 6=

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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<4D F736F F D DC58F4994C5817A54524D5F8AB38ED28CFC88E396F B CF8945C8CF889CA92C789C1816A5F3294C52E646

報告風しん

34 片渕美和子他 表 1 各年度の B 型肝炎, 麻疹, 風疹およびムンプスに対する抗体陽性率 検査年度 HBs 麻疹 風疹 ムンプス 2003 年 3/231(1.3)* 131/217(60.4) 200/217(92.2) 114/217(52.5) 2004 年 0/231( 0) 134

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学会名 : 日本免疫不全症研究会 アンケート 1 1. アンケート 2 に回答する疾患名 (1) X 連鎖無 γ グロブリン血症 (2) 慢性肉芽腫症 2. 移行期医療に取り組むしくみあり :1 年に1 回の幹事会で 毎年 discussion している また 地区ごとの地方会で 内科の先生方にいか

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1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

事務連絡平成 28 年 2 月 5 日 各都道府県衛生主管部 ( 局 ) 御中 厚生労働省健康局健康課 厚生科学審議会予防接種 ワクチン分科会基本方針部会の審議について 本日開催された厚生科学審議会予防接種 ワクチン分科会基本方針部会における審議の結果 B 型肝炎ワクチンの定期接種化について 以下の

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14-124a(全)   感染症法一部改正

水痘帯状疱疹ウイルス _Varicella Zoster virus(vzv) ヘルペスウイルス科 Human α Herpes virus 3 二本鎖 DNA ウイルス エンベロープあり ヒトのみに感染 気道粘膜からの侵入 感染経路空気感染 飛沫感染 接触感染 水痘 _ 臨床症状 VZV の初感染

48小児感染_一般演題リスト160909

ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン<医療従事者用>

Transcription:

彩の国予防接種推進協議会講演会 2014 年 2 月 8 日 水痘 彩の国予防接種推進協議会会長医療法人自然堂峯小児科峯真人 原因ウイルス 感染様式 潜伏期間 ヘルペスウイルス科の α 亜科に属する水痘 帯状疱疹ウイルス (VZV) の初感染により引き起こされる伝染性疾患 空気感染 飛沫感染 接触感染により広がり 感染力が強い 潜伏期間は感染から 2 週間程度 (10~21 日 ) 1

症状 発疹の出現する 1-2 日前から 70% 程度の患者が 37. 5 度以上発熱する 皮疹は紅斑から始まり 水疱を形成し その後膿疱から最終的に痂皮化して終了する 皮疹出現後 4 日目までは 次々と皮疹が出現するため 紅丘疹 水疱 膿疱など様々なステージの発疹が混在するのが水痘の特徴 症状 治療を行わなければ全身の皮疹数は増加し 平均 250~300 個となる 皮疹数 50 個以下は軽症 500 個以上は重症に分類される 皮疹は躯幹や顔面に好発するが 日焼けやオムツかぶれなど皮膚炎症部があれば そこに密集する傾向がある 皮疹は掻痒感を伴う場合が多い 皮疹がすべて痂皮化するのは 1 週間から 10 日 家族内二次感染の場合 接触が濃厚で曝露ウイルス量が多くなるため皮疹数も増加する 2

水痘の初期 水痘の最盛期 3

水痘の回復期 最近の水痘の臨床的特徴 発症年齢ピーク : 以前は 4~5 歳最近は乳児保育の増加により低年齢化 90% 以上が 10 歳までに発症 水痘ワクチン接種者での発症例 : 症状は極めて軽症で非典型的であることが多く臨床診断が難しい場合が多いため むしろ感染源になりやすい 4

日本の水痘発生状況 全国発生患者数約 100 万人 / 年感染症サーベランス小児科定点報告数約 25 万人 / 年 峯小児科年間診断者数 2010 年 158 人 2011 年 107 人 2012 年 174 人 重症 ( 入院 ) 患者 厚生科学研究補助金新興 再興感染症研究事業岡部班による全国調査 ( 多屋馨子他 ) 水痘 流行性耳下腺炎 肺炎球菌による肺炎等の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究 平成 17 年度分担研究報告書 ( 入院施設を有する全国の小児科 内科 皮膚科 産婦人科を対象 ) 平成 16 年度単年度 24 時間以上入院を必要とする患者 :1,655 人死亡者 : 7 人 推定重症 ( 入院 ) 患者数約 4000 人 / 年推定死亡者数約 20 人 / 年 5

ムンプスウイルスおよび水痘 帯状疱疹ウイルス感染による 重症化症例と重篤な合併症を呈した症例についての調査 ( 日本医師会 日本小児科医会 日本小児科学会合同調査委員会 ) 保坂シゲリ 小森貴 保科清 峯真人 細矢光亮 五十嵐隆 入院施設を有する全国の病院のうち 小児科 内科 皮膚科 皮膚 泌尿器科 産婦人科を標榜した医療施設を対象とし 19,921 施設中 3,765 施設より回答 ( 回答率 18.9%) ) 平成 21 年 1 月 1 日から平成 23 年 12 月 31 日までの 3 年間を調査対象期間 1. 水痘により 24 時間以上入院を必要とした患者 3 年間で 3,407 人 ( 男 1,851 人 :54.3% 女 1,556 人 :45.7%) 2. 帯状疱疹により 24 時間以上入院を必要とした患者は 3 年間で 18,091 人 ( 男 8,168 人 :45.1% 女 9,923 人 :54.9%) 3. 水痘により入院が必要となった原因水痘の重症化 1,031 人 肺炎 気管支炎 318 人 入院中に水痘を発症 243 人 脱水症 230 人 熱性痙攣 196 人 細菌による二次感染 174 人 肝機能障害 150 人 基礎疾患の増悪 123 人 脳炎 脳症 80 人 小脳失調 6 人 その他 856 人 ムンプスウイルスおよび水痘 帯状疱疹ウイルス感染による 重症化症例と重篤な合併症を呈した症例についての調査 ( 日本医師会 日本小児科医会 日本小児科学会合同調査委員会 ) < 水痘 > 平成 21 年平成 22 年平成 23 年 男女合計男女合計男女合計 肺炎 気管支炎 43 61 104 71 50 121 52 41 93 318 肝機能障害 31 19 50 32 20 52 26 22 48 150 脳炎 脳症 10 10 20 17 12 29 16 15 31 80 小脳失調症 - - 0 3 1 4 1 1 2 6 脱水症 45 31 76 38 46 84 44 26 70 230 熱性けいれん 38 30 68 37 27 64 33 31 64 196 細菌の 2 次感染による重症化 30 22 52 39 29 68 22 32 54 174 合併症なく水痘の重症化で入院 198 128 326 202 166 368 183 154 337 1,031 水痘による基礎疾患の増悪にて入院 合計 22 16 38 21 17 38 29 18 47 123 入院中に水痘発症 40 39 79 44 32 76 41 47 88 243 その他 124 114 238 162 155 317 157 144 301 856 小計 581 470 1,051 666 555 1,221 604 531 1,135 3,407 < 帯状疱疹 > 帯状疱疹にて入院 2,348 2,799 5,147 2,438 2,958 5,396 2,347 2,930 5,277 15,820 入院中に帯状疱疹発症 297 380 677 343 427 770 395 429 824 2,271 小計 2,645 3,179 5,824 2,781 3,385 6,166 2,742 3,359 6,101 18,091 合計 3,226 3,649 6,875 3,447 3,940 7,387 3,346 3,890 7,236 21,498 6

水痘による重症合併症例 年齢性別基礎疾患疾患名後遺症 症例 1 1 歳女なし急性脳症 多臓器不全 意識障害 人口呼吸器に装着し呼吸管理中 症例 2 4 歳女なし 症例 3 5 歳女自閉症 症例 4 8 歳女なし 頭痛 嘔吐 左片麻痺 左顔面神経麻痺 急性脳症 ( 脳浮腫と左小脳梗塞 ) 髄膜脳炎とその後の脳性塩類喪失症候群 中大脳動脈の閉塞による左片麻痺 左顔面神経麻痺が残存 小脳失調症が残存 運動機能障害が残存 症例 5 9 歳男なし急性脳症局在関連性てんかん 症例 6 58 歳 男 高血圧高尿酸血症慢性腎不全 急性脳症 記憶障害 運動麻痺が残存 症例 7 70 歳 男 高血圧糖尿病 急性脳症 両側頭葉の梗塞による記憶障害と失語症が残存 症例 8 90 歳 女 高血圧言語障害 急性脳症 意識障害 運動麻痺が残存 症例 9 89 歳女腎癌急性脳症意識障害 運動麻痺が残存 表 4 水痘の重症化率 合併症 水痘ワクチン未接種の自然感染者 400 人に 1 人以上が入院 全入院患者中の小児入院患者 37.5% 入院原因の半数は合併症による入院 ( 合併症 : 熱性痙攣 肺炎 気管支炎 肝機能障害 皮膚細菌感染症 脳炎 脳症など ) 全入院患者中の成人入院患者 62.5% 入院原因の多くが水痘そのものの重症化 7

注意が必要な合併症 先天性水痘症候群 : 妊娠初期の感染 発生頻度 : 2% 新生児水痘 : 出産 5 日前 ~ 出産 2 日後の妊婦の水痘感染 中枢神経系合併症 : 脳炎 脳症 小脳失調症 髄膜炎 / 脳炎 横断性脊髄炎 Reye 症候群を合併するとされてきたが サリチル酸系製剤の使用との関連が疑われ注意喚起が強化されて以降 その頻度は激減している 先天性水痘症候群 水痘は TORCH 症候群のひとつ 妊娠初期に感染すると 発生頻度は 2% で胎児 新生児に重篤な障害を起こす可能性が高い 症状として四肢低形成 瘢痕性皮膚炎 眼球異常 精神発達遅滞などがある 妊娠 5 ヶ月目以降で水痘罹患した妊婦の児では 帯状疱疹が早期に発症するとされている 8

新生児水痘 乳児期早期水痘 出産 5 日前 ~ 出産 2 日後に妊婦が水痘を発症した場合 抗ウイルス薬治療が行われないと新生児は生後 5~10 日頃水痘を発症し約 30% が死亡する 母親に水痘罹患歴のない生後 6 か月未満の乳児および新生児では 移行免疫による軽症化効果が期待されず 重症になる危険性がある 診断 発疹の特徴から臨床的に鑑別が容易であるが 軽症の場合 ( 特にワクチン接種者での水痘発症 ) や皮膚色が濃く発疹が見逃される場合には 実験室診断が必要になる ハイリスク児では より早期に診断することで重症に至る前に治療を行うことが可能となる 9

ウイルス分離 ウイルス DNA の検出 ウイルス量が多い水疱内容物を用いて行う ウイルス DNA の検出だけを目的とする場合には PCR 法 LAMP 法などが迅速検査として便利 VZV に対するモノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法 感度は PCR に比べ落ちるが 迅速性あり 発疹出現 5 日前ころから 1~2 日後までであれば PCR 法などを用いて末梢血単核球中にウイルスを検出することも可能 ワクチン接種後の水痘発症などでワクチン株と野生株を判別するには PCR- RFLP 法など各種 LightCycler を用いた Tm 解析法 株特異的プライマーを用いた LAMP 法などが有用 血清学的診断 感染細胞からウイルス糖蛋白を濃縮し ELISA の抗原とする gpelisa 法 市販の ELISA EIA キットなどがある 感染細胞を用いて細胞膜抗原を検出する蛍光抗体法 FAMA は簡便であり 一定の熟練があれば容易に判定が行える 免疫粘着赤血球凝集反応法 (IAHA) や中和抗体測定法 (NT) なども用いることができる IAHA 法は迅速であるが EIA 法などと比べると感度が低く また 時として擬陽性結果が出る 急性期と回復期で IgG 抗体の有意な上昇を確認するか IgM 抗体を検出することにより診断がなされる 安価で頻用される補体結合反応 (CF) は 感度 特異性に問題があるため その使用は推奨できない EIA などの血清学的診断は コマーシャルラボで対応できる 10

細胞性免疫能を評価する方法 VZV 感染歴や VZV に対する細胞性免疫能を評価する方法として 水痘皮内抗原を用いた皮内テストがある この方法では 市販の 水痘抗原 液を皮内注射し 24~48 時間後に出現する発赤を元に VZV に対する細胞性免疫を評価する 陰性者を感染のハイリスク群とし ワクチン接種をするか 接触があってから 7 日 ( 潜伏期間の中間 ) から治療量の半量のアシクロビルを使うと 感染して いても発病はせず約 80% の成功率で免疫を獲得 水痘皮内テスト 0.1ml を皮内注射し 24 時間 ~48 時間後に発赤最大径が 5mm 以上の場合に VZV に対する細胞性免疫が陽性であると判定される これは 迅速に診断が求められる場合に有効な方法である 国立感染症研究所感染症情報センター 11

水痘の治療 治療の多くは対症療法 皮膚細菌感染症に対して抗菌薬内服 外用 重症例に対して抗ヘルペスウイルス薬投与 ( アシクロビル ACV バラシクロビル VACV) ACV,VACV 投与の基準 米国 英国など : 投与対象者を明確に限定 日本 : 水痘ワクチン任意接種 接種率低迷 :30~40% 重症化予防目的 症状出現期間短縮目的の ACV.VACV 投与例多数 医療費高騰 12

水痘罹患が子ども自身に及ぼす影響 水痘そのものの症状による影響 水痘の合併症による影響 保育園 幼稚園 学校生活に及ぼす影響 勉強 運動会 遠足 誕生会などの行事 集団生活以外の社会生活に及ぼす影響 地域子ども会 習い事 祝い事 家族旅行など 水痘罹患が家族に及ぼす影響 家族への感染リスクの増加 看病にかかわる人と時間と費用の負担増 就労家族 ( 母親 ) の休業対策 核家族化の問題 病児保育施設不備の問題 休業による就労現場対応 会社における育児休暇制度の不備など 家族旅行などの家庭生活上の計画変更 13

水痘が医療環境に及ぼす影響 外来医療 外来待合室での相互感染 保育園医 幼稚園医 学校医としての対応 入院医療 病棟での相互感染 感染拡大阻止目的の入院制限 緊急入院への病床確保困難 さまざまな悪影響を防ぐ最も有効な手段 水痘ワクチン接種 水痘ワクチンに関するファクトシート ( 平成 22 年 7 月 7 日版 ) に基づく情報を提供 14

水痘ワクチンの効果 感染防止効果 重症化防止効果 集団免疫効果 帯状疱疹患者数減少 症状軽減効果 第 62 回日本感染症学会学術集会東日本地方会学術集会 2013.10.30 11.1 シンポジウム 2 ワクチンで予防できる疾患が予防できない日本の現実 - 今 我々は何をしなくてはいけないのか?- 水痘 医療法人自然堂峯小児科理事長峯真人 15

水痘ワクチン定期接種の必要性 日本では今でも水痘が流行し続けている 水痘による小児や成人の健康被害は大きい 水痘ワクチンの効果と安全性は示されている ワクチン導入の費用対効果も十分である 接種年齢とスケジュールも示されている 厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会基本方針部会でもその必要性が示されている 予防接種推進専門協議会など多くの団体から水痘ワクチンの定期接種化実施に関する要望書が複数回提出されているこれ以上 どんな情報があれば定期接種化が決定されるのであろうか?? 次は実行あるのみ!! 定期接種を念頭においた 水痘ワクチンの接種対象者 接種方法のイメージ 対象年齢 生後 12 月から生後 36 月に至るまでの間にある者 接種方法 乾燥弱毒生水痘ワクチンを使用し 合計 2 回皮下に注射する 接種間隔は 3 月以上おくものとし 接種量は毎回 0.5 ミリリットルとする 予防接種を受けることが適当でない者 発熱や急性疾患などワクチン全般に共通するもの以外特記事項なし 標準的な接種期間 生後 12 月以降なるべく早期に初回接種の機会を確保した後 初回接種終了後 6 月から 12 月に至るまでの間隔をおいて 1 回行うこと 16

定期接種を念頭においた 水痘ワクチンの接種対象者 接種方法のイメージ 経過措置 〇生後 36 月から 60 月に至るまでの間にある者を対象とし 1 回注射する ただし平成 26 年度限りとする その他 〇既に水痘に罹患したことがある者は対象外とする 〇任意接種として既に水痘ワクチンを受けたことがある者は 既に接種した回数分の接種を受けたものとみなす 17