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第3 復興整備計画 参考様式集


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1 復興整備計画の区域 ( 計画区域 )( 法第 46 条第 2 項第 1 号関係 ) 大船渡市の全域 ( 別添の復興整備事業総括図のとおり ) 2 復興整備計画の目標 ( 法第 46 条第 2 項第 2 号関係 ) 1 被災住居を低地から高台へ集団移転することにより 想定される最大級の津波 ( レ



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1 復興整備計画の区域 ( 計画区域 )( 法第 46 条第 2 項第 1 号関係 ) 大船渡市の全域 ( 別添の復興整備事業総括図のとおり ) 2 復興整備計画の目標 ( 法第 46 条第 2 項第 2 号関係 ) 1 被災住居を低地から高台へ集団移転することにより 想定される最大級の津波 ( レ



目次 Ⅰ 運用基準の策定にあたって P1 1 策定の目的 P1 2 運用基準の位置づけ P1 Ⅱ Ⅲ 土地利用のあり方 P1 地区計画の活用 P2 1 地区計画とは P2 2 地区計画の活用類型 P2 (a) 地域資源型 P3 (b) マスタープラン適合型 P3 (c) 街区環境整序型 P3 (d)

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121022資料1さっぽろビジョン(素案)

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平成 25 年度農林水産省委託業務報告書 平成 25 年度 水資源循環の見える化 調査 検討事業 報告書 平成 26 年 3 月 みずほ情報総研株式会社

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ha ha km2 15cm 5 8ha 30km2 8ha 30km2 4 14

第 2 章 許可を要しない開発行為 建築行為等 ( 事前に以下の条項のいずれに該当するかの判断資料の提出を求めること ) 第 1 農林漁業用建築物を目的とする開発行為 ( 法第 29 条第 1 項第 2 号 ) 又は建築行為 ( 法第 43 条第 1 項本文 ) 1 趣旨市街化調整区域内で農林漁業に

資料5 汚濁負荷量の状況

国土技術政策総合研究所 プロジェクト研究報告

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広報たかす

再造林 育林の低コスト化に関する指針 育林の低コスト化に関する指針平成 27 年 3 月高知県林業振興 環境部 1 指針の目的平成 24 年 9 月に策定した 皆伐と更新の指針 では 伐採時期を迎えた人工林を皆伐した後 再造林の適地と判断される伐採跡地では 森林資源の持続的な利用を図るうえでも再造林

4 農林業 経営耕地面積割合 ( 農家数 ) ( 平成 27 年 ) 畑 63.4% (171 戸 ) 田 11.3% (53 戸 ) 樹園地 25.3% (102 戸 )

0

問 2. 現在 該当区域内に居住していますか 1. 居住している % 2. 居住していない % 無回答 % % 単位 : 人 1.9% 32.7% 65.4% 1. 居住している 2. 居住していない無回答 回答者のうち 居住者が約 65

7/ /4 7/30 18:00 19:00 7/31 10:00 15:00 7/31 10:00 15:00 8/20 12:30 15:00 8/21 13:00 15:00 ( 49ha) JA () TEL

Microsoft Word - ●決定⑤地区計画-2.docx

市街化調整区域の土地利用方針の施策体系 神奈川県 平塚市 神奈川県総合計画 神奈川県国土利用計画 平塚市総合計画 かながわ都市マスタープラン 同地域別計画 平塚市都市マスタープラン ( 都市計画に関する基本方針 ) 平塚都市計画都市計画区域の 整備 開発及び保全の方針 神奈川県土地利用方針 神奈川県

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す 遺跡の標高は約 250 m前後で 標高 510 mを測る竜王山の南側にひろがります 千提寺クルス山遺跡では 舌状に 高速自動車国道近畿自動車道名古屋神戸線 新名神高速道路 建設事業に伴い 平成 24 年1月より公益財団法人大 張り出した丘陵の頂部を中心とした 阪府文化財センターが当地域で発掘調査

中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書【神奈川県】

市街化調整区域内における地区計画について

書き方 ( 例 ) 別記第 17 号様式 農業生産法人報告書 自 至 平成 年 月 日平成 年 月 日 伊達市農業委員会会長様 平成年月日 主たる事務所の所在地伊達市 町 番地 法人の名称株式会社 代表者氏名 印電話番号 次のとおり農地法第 6 条第 1

木造住宅の価格(理論値)と建築数

事業計画 ( 岩手県久慈市 ) 1. 海岸対策 1 海岸の状況市内の地区海岸数被災した地区海岸数応急対策を実施した地区海岸数本復旧を実施する地区海岸数 7 地区海岸 6 地区海岸 2 地区海岸 6 地区海岸 2 堤防高 9 月 26 日及び10 月 20 日に堤防高を公表 久慈湾 :T.P. 8.0

農山性化1 農山漁村の 6 次産業化の考え方 雇用と所得を確保し 若者や子供も集落に定住できる社会を構築するため 農林漁業生産と加工 販売の一体化や 地域資源を活用した新たな産業の創出を促進するなど 農山漁村の 6 次産業化を推進 現 状 農山漁村に由来する様々な地域資源 マーケットの拡大を図りつつ

NO. 2 事業名 埋蔵文化財発掘調査事業 ( 鹿島区 ) 事業番号 A-4-2 事業実施主体 南相馬市 交付期間 H24-H26 総交付対象事業費 55,014( 千円 ) 復興事業 ( 防災集団移転 ) に伴い市内に所在する遺跡について 発掘調査事業を実施する 鹿島区内遺跡数 9 遺跡 対象面積

目次 1 背景 目的 方針の位置づけ 現状の問題と課題 今後の方針

利用することをいう (4) 林業事業者森林において森林施業 ( 伐採, 植栽, 保育その他の森林における施業をいう 第 12 条において同じ ) を行う者をいう (5) 木材産業事業者木材の加工又は流通に関する事業を行う者をいう (6) 建築関係事業者建築物の設計又は施工に関する事業を行う者をいう

案の理由書 1 南大浜地区本地区は石垣島の南部に位置し 字大浜 字真栄里 字平得の3 字を含み 用途地域が指定されている市街地の東側に隣接する地区です 本地区は 農振農用地区域が除外されたことにより 農業的土地利用と都市的土地利用が混在し 道路 公園 下水道等の都市基盤整備が不十分なまま無秩序な開発

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スライド 1

地域経済分析システム () の表示内容 ヒートマップでは 表示する種類を指定する で選択している取引価格 ( 取引面積 mあたり ) が高い地域ほど濃い色で表示されます 全国を表示する を選択すると 日本全国の地図が表示されます 都道府県単位で表示する を選択すると 指定地域 で選択している都道府県

加賀市農業委員会農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 30 年 1 月 26 日制定 加賀市農業委員会 第 1 指針の目的 農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 という ) の一部改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地等

激甚災害制度について

2 麦類 ( 子実用 ) (1) 4 麦計平成 24 4 麦の作付面積 ( 子実用 ) は26 万 9,5haで 前に比べて2,2ha(1%) 減少した ( 表 8) 麦種別には 二条大麦は前に比べて7ha(2%) 増加したものの 小麦 六条大麦及びはだか麦は前に比べてそれぞれ2,3ha(1%) 3

H22-5月号

石巻市総合計画 方針図 交通に関する方針交通に関する施策 地域連携軸と広域連携軸について市としての一体化の促進と地域間交流 連携の活性化を図るため 地域核を結ぶ地域連携軸の整備を推進する また 地理的条件から他都市との連携が不可欠であるため 地域連携軸の整備とあわせて 他都市との交流を促進する広域連

平成 28 年度 森林整備事業 ( 造林 ) 標準単価 京都府農林水産部林務課

欄の記載方法について 原則として 都道府県毎の天然更新完了基準に定められた更新調査 ( 標準地調査 ) の結果を元に造林本数欄に更新本数を記載する ただし 調査せずとも天然更新完了基準を明らかに満たしていると判断できる場合 ( 例えば 小面積の伐採等 ) には 造林地の写真その他の更新状況のわかる資

平成 21 年度から あいち森と緑づくり税 を活用し 森林 里山林 都市の緑の整備 保全等に取り組んできた結果 第 4 章に示したとおり 一定の成果を上げることができました しかしながら 本県の森と緑を健全な状態で将来に引き継ぐためには 依然としてさまざまな課題があります 次ページ以降に 森と緑づく

4. 地区計画の基本的な考え方 1. 市街化を抑制すべき区域 という市街化調整区域の基本理念は 地区計画の策定によってその性格が変わるものではないこと 2. 開発行為を伴う地区計画については いたずらに市街地を拡大しないよう その必要性 周辺の公共施設の整備状況 自然環境 景観や農林業との調和等の観

筑豊広域都市計画用途地域の変更 ( 鞍手町決定 ) 都市計画用途地域を次のように変更する 種類 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域 面積 約 45ha 約 29ha 建築物の容積率 8/10 以下 8/10 以下 建築物の建蔽率 5/10

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

第 1 部森林及び林業の動向 森林 林業の再生に向けた新たな取組 東日本大震災 で森林 林業 木材産業に甚大な被害 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律 の成立 生物多様性に関する新たな世界目標 ルールの採択 国際森林年 林業 木材産業関係者が天皇杯等を受賞 木材の需要拡大の背景 ( )

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

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市有財産 ( 土地 ) 運用管理 マスタープラン 概要版 平成 27 年 8 月 中津川市

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14 12 ( ) 2004

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総務委員会会議録

特別支援1~8ページ.PDF

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第1 予算編成の基本的な考え方

2

0.表紙


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(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)


Taro 土地利用基本計画(

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平成 30 年度 森林整備事業 ( 造林 ) 標準単価 京都府農林水産部林務課

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人工林 ( 左 ) と天然林 ( 右 ) 農業と暮らしを支えた里山の役割 集落の近くにあって 農業や生活に使われてきた森林のことを日本では 里山 と呼ぶ 里山は 農業と生活を支える大切な役割をもっていた 近代化が進んだ日本でも とくに農村地帯では 比較的近年まで 森林 ( 里山 ) からの資源を農業



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平成 25 年度公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会調査研究報告書 岩手県気仙地方における里山文化について

崎浜集落高台より越喜湾を望む 目次 はじめに 1 調査研究の背景 2 調査研究の目的 3 調査研究の対象地域と視点 01 02 02 Ⅰ 気仙地方の里山と人間とのつながり 03 Ⅱ 気仙地方の概要 1 位置と地形 2 歴史 3 自然と土地利用 05 06 07 Ⅲ 気仙地方における生活の営みと里山文化 1 気仙地方の山 里 海 2 山の営みと技 3 里の営みと自然 4 海の営みと文化 5 集落の組織力 6 里山と新しい酒蔵 7 里地と新しい風景 8 里海と新しいコミュニティ 9 広がる花づくり活動の輪 09 11 13 15 17 19 21 23 25 27 Ⅳ 崎浜を事例とした里山文化の継承に向けて 1 崎浜地区の概要 2 崎浜地区の 里山文化 の特徴 3 崎浜地区における 里山文化 の継承に向けて 29 33 36 Ⅴ 被災地における復興への対応 崎浜地区復興会議の活動 37

Ⅳ 崎浜を事例とした里山文化の継承にむけて 1. 崎浜地区の概要 1 位置及び土地利用 位置図 2 人口動態 崎浜地区は 大船渡市市街地よ 崎浜地区では 矢じりや土器の破片が発見されていることから 縄文時代中期には人間が居住していた り約 20 の三陸町越喜来の東部 とされている その後の集落動態は明らかではないが 寛永 20 年 1643 年 の伊達藩による検地によっ に位置し 首崎灯台を最東端にも て 18 戸が記録されている さらに 明治6年 1873 年 の地図から判読すると 84 戸が数えられ 明治 崎浜地区 ち 北西部には大六山 標高 514. 8m 東部に外山 標高 445 m に囲まれて 29 年 1896 年 に 95 戸と推移している 当時の一戸当たりの人口の記録がないが 明治 29 年には 95 戸で人口が 657 人であったとの記録から 一戸当たり6 9人と一世帯当たりの構成員は現在より多かっ 甫嶺地区 たと推測される 昭和に入り 昭和8年の三陸津波時には 1,368 人であった人口が 昭和 63 年には 1,186 いる 2 同地区の海域の南は越喜来湾 人と減少した 昭和 60 年には 北里大学水産学部の学生が居住することによって人口減少に歯止めがかかっ 大船渡市中心部 0 北は小壁や吉浜 きっぴん アワ ビで知られる吉浜湾 西は浦浜に 1 2 [km] 出典 国土地理院 地理院地図 たものの 震災後は北里大学の東京移転に伴い 学生人口が減少している 3 産業 崎浜地区は漁業が主産業であり 18 世紀末から定置網漁業がはじまっていたとされる 昭和 14 年調査 接する典型的なリアス式海岸となっている 地区の面積は約 14 で そのうち森林が約 13.3 と約 95 を占め宅地が約 12ha 畑は約 40ha 田が によると 崎浜漁業戸数は 141 戸で漁業人口は 948 人であり 建網業 いか釣業 捕鮑業 採藻業などに 約7ha である 森林のうち二次林が約 50 スギ林が約 24 アカマツ林が約 10 で その他にヒノキ林 分類される業種が行われていた また 水産加工製造業者は 11 者で カツオ節 干しスルメ 魚粕など 1 カラマツ林がみられる また 岩手県内陸部と比較して温暖で 冬から春まで晴天が多い地域である が製造され 昭和初期まで盛んであった 近年は 養殖漁業が盛んとなり ホタテ貝 ホヤの養殖 ワカ 土地利用図 S=1/5000 メの養殖 加工が続けられている 主な凡例 針葉樹林 その他農地等 3 岩手県は 明治 30 年代以降 薪炭生産が盛んであったが 崎浜でも明治末期から大正年間にかけて盛ん に製炭が行われていた 当時は常に 焼子 とよばれる人を雇って炭を焼き 人力で浜まで運び さらに 広葉樹林 建築物等 草地 未利用地等 船で塩釜まで廻送していた 昭和9年頃からは製炭者数人が村有地の雑木の払い下げをうけて製炭を始め 昭和 30 年頃からは農業協同組合に委託して販売するようになった さらに 昭和 31 年に三陸村になった後 製炭原木伐採跡地にスギの造林を行った 造林後は製炭者及びその家族が育林業務に従事していたが 造 代表的な土地利用 針葉樹林 林区域の拡大と共に 育林に多数の労働力が必要とされたこと ガス 石油 電力などの燃料革命とあいまっ て 木炭生産は減少していった このように崎浜地区における林業は 木炭生産からスギ造林へと移行していったが 養殖漁業が盛んに 4 なり漁業収益が拡大することと木材価格の低迷によって 林業は低迷している 一方 同地区の農業生産 をみると 戦前は麦 粟 ヒエを栽培し 裏作として大豆 小豆などが栽培されていたが 昭和 46 年頃 には麦作をはじめ雑穀栽培が姿を消し 現在は自給用野菜の栽培が中心である また 大正時代半ばから 5 昭和6年頃までは養蚕も盛んに行われていたが 昭和8年の津波被害などをきっかけとして衰退した 1 出典 崎浜郷土誌1 9頁 2 出典 崎浜郷土誌 11 13 頁 3 出典 崎浜郷土誌 178 180 頁 4 出典 崎浜郷土誌 143 147 頁 5 出典 崎浜郷土誌 113 139 頁 畑 木炭を生産する炭窯 小壁漁場の船への乗降のための桟橋 草地 未利用地等 大船渡市災害復興計画図及び現地調査より作成 出典 崎浜郷土誌 出典 崎浜郷土誌

公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会