「2016年熊本地震と関連する活動に関する総合調査」への科学研究費補助金(特別研究促進費)の交付について

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この資料は速報値であり 後日の調査で変更されることがあります 時間帯 最大震度別回数 震度 1 以上を観測した回数 弱 5 強 6 弱 6 強 7 回数 累計 4/14 21 時 -24 時 /15 00 時 -24 時 30

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日本海溝海底地震津波観測網の整備と緊急津波速報 ( 仮称 ) システムの現状と将来像 < 日本海溝海底地震津波観測網の整備 > 地震情報 津波情報 その他 ( 研究活動に必要な情報等 ) 海底観測網の整備及び活用の現状 陸域と比べ海域の観測点 ( 地震計 ) は少ない ( 陸上 : 1378 点海域

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4:10 防災科学技術研究所第 2 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 9:34 防災科学技術研究所第 3 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 11:50 防災科学技術研究所職員が熊本県庁 ( 熊本県災害対策本部 ) に到着 16:00

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平成 28 年 4 月 16 日 01 時 25 分頃の熊本県熊本地方の地震 震度分布図 各地域の震度分布 : 震央 各観測点の震度分布図 ( 震央近傍を拡大 )

新潟県中越沖地震を踏まえた地下構造特性調査結果および駿河湾の地震で敷地内の揺れに違いが生じた要因の分析状況について

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平成 30 年 4 月 9 日 01 時 32 分頃の島根県西部の地震 震度分布図 各地域の震度分布 : 震央 各観測点の震度分布図 ( 震央近傍を拡大 )

図 年 [ 高度利用者向け ] 半月ごとの緊急地震速報発報回数 東北地方太平洋沖地震からほぼ単調に減少していた緊急地震速報の発報回数は 2015 年のほぼ安定した発報回数分布が 2016 年は急増しました 熊本地震直後では半月で最大 158 回 福島県沖の地震の後には 98 回となり

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目 次 1. 想定する巨大地震 強震断層モデルと震度分布... 2 (1) 推計の考え方... 2 (2) 震度分布の推計結果 津波断層モデルと津波高 浸水域等... 8 (1) 推計の考え方... 8 (2) 津波高等の推計結果 時間差を持って地震が

(/9) 07 年に発生した地震の概要. 佐賀県の地震活動 07 年に佐賀県で震度 以上を観測した地震は 9 回 (06 年は 85 回 ) でした ( 表 図 3) このうち 震度 3 以上を観測した地震はありませんでした (06 年は 9 回 ) 表 07 年に佐賀県内で震度 以上を観測した地震

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詳細な説明 2016 年 4 月 16 日に発生した熊本地震 ( マグニチュード (M) 7.3)( 図 1) は 熊本県 大分県を中心に甚大な被害をもたらしました 九州地方は 北東 - 南西方向に縦走する 別府 - 島原地溝帯 と呼ばれる顕著な地殻の裂け目によって特徴づけられます 別府 - 島原地

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に


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した 気象庁は その報告を受け 今後は余震確率の公表方法を改めることとしたという 2. 被害状況 被害要因等の分析 (1) 調査方針本委員会は 以下の調査方針で 被害調査と要因分析を行っている 1 極めて大きな地震動が作用し 多数かつ甚大な建築物被害が生じた益城町及びその周辺地域に着目して検討を進め

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れました また, 当フォーラムに将来の建設技術者を目指す若い学生が多数参加することを紹介し, 今後想定される大規模災害への備えとして, 災害に強い国作り, インフラの老朽化対策などの国土強靱化を促進する上でも, これらの方々の活躍なくしては成立しない これら若い技術者の方を含めて産学官の連携を深め,

平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

基礎 Q 地震の原因や特徴は? A 活断層の横ずれで発生し 余震の規模が大きいのが特徴です 日の熊本地震 M6.5) は 活断層 日奈久 ひなぐ ) 断層帯 の北側の一部がずれて起きました 余震が多発し その規模が大きいのも特徴です 同時多発的な地震が起きている九州中央部では活断層が連なる 別府 島

177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

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9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

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2018 年の山形県とその周辺の地震活動 1. 地震活動の概況 2018 年に 山形県とその周辺 ( 図 1の範囲内 ) で観測した地震は 2,250 回 (2017 年 :2,447 回 ) であった 山形県内で震度 1 以上を観測した地震は 図の範囲外で発生した地震を含めて 47 回 (2017

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

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ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究

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特集大規模自然災害からの復旧 復興 参考 警察が検視により確認している死者数 50 名 災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的負担による死者数 106 名 6 月 日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震と関連が認められた死者数 5 名建物被害全壊 8,360 棟, 半壊 3

地震発生後の九州地方整備局の活動 4 月 16 日の夜明け 本震の後に再度調査を実施しておりま す その際は 道路崩壊の調査 土砂崩壊の箇所の調査 被 災地に入るための安全ルートの確認等を実施しております 次に九州地方整備局の活動について紹介させていただき ます まず最初に地震発生後の初動体制につい

Transcription:

平成 28 年 4 月 22 日 2016 年熊本地震と関連する活動に関する総合調査 への科学研究費補助金 ( 特別研究促進費 ) の交付について 文部科学省では 平成 28 年 4 月 14 日に発生した熊本地震及び関連する地震活動について 余震活動や地殻構造 地殻変動の調査 火山活動への影響調査 地域社会への影響調査等の調査研究を実施し 今後の活断層評価や防災対策に資することを目的として 九州大学等の研究者に下記のとおり科学研究費補助金 ( 特別研究促進費 ) を交付することといたしましたので お知らせいたします 1. 研究課題名 :2016 年熊本地震と関連する活動に関する総合調査 しみず 2. 研究代表者 : 清水 ひろし洋 ( 九州大学大学院理学研究院教授 ) 電話 : 0957-62-6621 3. 研究組織 : 北海道大学 東北大学 新潟大学 群馬大学 東京大学 東京工業大学 静岡大学 名古屋大学 京都大学 兵庫県立大学 広島大学 九州大学 鹿児島大学 防災科学技術研究所等 ( 計 38 名 ) 4. 研究経費 :49,900 千円 ( 科学研究費補助金 ( 特別研究促進費 )) 5. 研究概要等 : 別紙のとおり < 担当 > 研究開発局地震 防災研究課地震火山専門官浦谷純平 ( 内線 4434) 研究振興局学術研究助成課課長補佐小野耕志 ( 内線 4314) 電話 03-5253-4111( 代表 )

研究計画の概要 研究課題 2016 年熊本地震と関連する活動に関する総合調査 研究代表者清水洋九州大学大学院理学研究院教授 研究目的 2016 年 4 月 14 日 21 時 26 分頃 熊本県熊本地方の深さ約 11kmでマグニチュード (M)6.5 の地震が発生した この地震により 熊本県益城町で最大震度 7を観測し 大きな被害をもたらした さらに 2 日後の 16 日 01 時 25 分ごろ深さ約 12 kmで M7.3 の地震が発生した これらの地震により 建物の倒壊 土砂災害により40 人以上の生命が失われた この2つの地震は それぞれ南北方向, 北西 南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で 地殻内の浅い地震である 今回の地震災害は 最初の M6.5の地震で傷んだ家屋が それに続いて発生した M7.3の地震で倒壊した可能性も大きく 内陸地震の続発という現象は学術的に見て重要な現象であると同時に 今後発生する内陸地震による災害の軽減に 学術的に貢献できる重要な知見がもたらされると思われる この地域には日奈久断層と布田川断層が存在し, 今回の地震はこれらの断層で発生したと考えられる これらの地震は それぞれ異なる断層で発生していることから今後の活動の広がりに注意を払う必要がある そのために リアルタイムでの地震活動の把握が必要である 14 日に発生した地震が どのように 16 日の地震の発生に関係しているかについては 学術的に見ても非常に重要な課題である また この地域に存在する既存の活断層と地下の震源断層との関係を解明することは 活断層の活動評価研究上において非常に重要な課題である 震源断層の実態を明らかにするためには 臨時地震観測を実施して正確な余震の空間分布を決定することが必要不可欠である さらに GNSS 観測を通じて地殻の動きを把握するとともに 地殻変動観測および変動地形学的調査から 地表における変動を把握し 活断層との関連を明らかにする必要がある 一方 今回の震源域近傍には 現在活動中の阿蘇山がある 東北地方太平洋沖地震直後に いくつかの火山で活動が活発化したように 世界的にみると 大地震の後に周辺の火山活動が活発化した例もあるが 地震と火山活動の関連はわかっていない このような大規模な地震の発生機構とそれに伴い派生する現象を理解することは 他の地域における地震やそれに派生する現象の発生予測にも必要不可欠であり 社会的にも強く要請されることである 今回の地震では 斜面崩壊 地すべり等が発生した このような現象は他の地域でも見られることであり 土砂災害の発生場所は火山活動による堆積物の分布と関連が示唆されている これらのことから この研究では中山間地における前震 本震による斜面崩壊 地すべりの発生分布とメカニズムの解明のための調査を行うとともに 道路等 社会的な基盤施設の中長期にわたる脆弱性についても調査する 本研究では 余震活動調査や地殻変動調査により地震発生機構の詳細を把握するとともに 強震観測 斜面災害調査により被害の特徴と要因を明らかにする さらに 今回の地震が地域経済に及ぼした影響や災害救援活動の現状を把握することによって 今後の地震防災に資することを目的とする なお 熊本地震とこれに関連する地震活動については既に緊急的な研究が開始されているが その規模は小さく 経費等の点から今後の継続は難しい 明確な研究成果を得るためには これら研究を継続するだけでなく 観測点の密度を高め範囲を拡大するなどの規模の拡大も必要である 研究組織には九州大学 長崎大学 京都大学大学院理学研究科火山研究センター ( 阿蘇 ) の研究者が参加し 研究の拠点となる地元の機関が参加している また 災害過程の調査では既に熊本県から 研究の現地拠点設置などの協力を得ている 研究成果については 地震活動等の現地説明会の開催を予定しているほか 災害調査の結果を熊本県等に説明し復旧等に役立てることを計画している

調査内容 1. 陸上臨時地震観測等による余震活動 地殻構造調査多数の陸上臨時地震観測点を設置し余震観測を行う また, 観測ではテレメータシステムも使用しリアルタイムでの地震活動の推移を把握する また 余震発生の時間変化 余震の発震機構解の時空間変化を求める 地下の地震波速度構造を詳細に調査して 内陸地震の発生機構についても調査する また,14 日に発生した地震と16 日に発生した2つの地震の因果関係を調べるとともに, 電磁気観測も行い 地下の地震波速度構造と比抵抗構造を詳細に調査するとともに 地殻変形特性の分布を明らかにし 内陸地震の発生機構について調査する 今回の地震は 阿蘇火山の近傍で発生しており 阿蘇の噴火活動に影響することが懸念される 電磁気観測により噴火の原因となる地殻浅部における地殻内流体やマグマの存在とその動きについても調査する 2.GNSS 及び変動地形学的手法を用いた地殻変動調査震源域に GNSS 観測点を設置し 地震後の正確な地殻変動を調査する また 震源域周辺で変動地形学的調査を実施し 断層帯と震源断層との関係についての基礎的なデータを取得する 震源の推移に隣り合う断層のセグメントへの影響を調べる 3. 阿蘇山における地震 火山活動の変化と大きな地震の発生に伴う火山活動への影響調査地震の発生により 震源域周辺の応力場が変化した この地震の震源域の極近傍には 現在活発な活動を続ける阿蘇山があり 今回の地震による火山の活発化の可能性が懸念される 火山周辺に発生する地震活動を調査し 以前の活動との差異を明らかにし 火山活動の活発化が確認されたときには 近傍で発生した大きな地震が火山活動に及ぼす要因を明らかにする 4. 災害調査 強震観測による強震動発生特性調査前震と本震によって震源域周辺では既存強震観測網により多数の強震記録が得られるとともに 多くの建物に被害が生じた 前震で震度 7が観測された益城町では 建物の被害分布も一様ではなく 震源特性のみならず局所的な地盤の影響を無視できないと考えられる この地震の震源域周辺での建物被害の理解には 震源と地盤の影響を踏まえた前震と本震による強震動分布の評価が不可欠である 震源域の被災地域を中心として 強震観測網記録の分析に加え 強震観測 地盤調査 微動観測 地盤増幅評価用ボーリング試掘などの現地調査を実施し 震源モデルの推定 強震動評価のための浅部 深部地盤構造モデルの構築 地盤増幅特性の評価により 前 本震による強震動分布の評価を行う これら結果を用いて 建物被害の原因を明らかにする 5. 土砂災害及び地すべり発生機構調査今回の地震によって 道路盛土地盤の崩壊 高速道路の沈下 擁壁の崩落 熊本城の石垣の崩落等 深刻な被害が発生した そのため 中長期にわたる社会基盤の脆弱性について調査する 中間山地における前震 本震による斜面崩壊 地すべりの発生分布とメカニズムの解明のための調査を行う 6. 社会素因による被災救援 地域社会に係る影響調査平成 28 年熊本地震は激しいゆれと余震を伴い 地域に被災と影響をもたらしている その状況を災害過程に沿って モニタリングし 学術的な考察を行い 今後の防災に資する提案を行う 主に 土砂災害など二次災害の影響 被災者の救援とその後の生活再建 住宅ならびに土木構造物の被災が被災者 地域に与える影響 情報の発信 共有が地域に与える影響 について調査する 2

研究経費 49,900 千円 研究組織 ( 研究代表者 ) 氏名所属 職名 ( 専門分野 ) 役割分担 清水洋九州大学 大学院理学研究院 教授 ( 地球物理学 ) 研究統括 ( 研究分担者 * 及び連携研究者 ) 氏名 所属 職名 ( 専門分野 ) 役割分担 松本聡 * 九州大学 大学院理学研究院 准教授 ( 地陸上臨時地震観測等による余震活動 地殻構造調 震学 ) 査 酒井慎一 * 岡田知己 * 東京大学 地震研究所 准教授 ( 地震学 ) 東北大学 大学院理学研究科 准教授 ( 地 震学 ) 渡辺俊樹 * 名古屋大学 大学院環境学研究科 教授 ( 地 球物理学 ) 飯尾能久 * 相澤広記 * 京都大学 防災研究所 教授 ( 地震学 ) 九州大学 大学院理学研究院 助教 ( 火山 電磁気学 ) 宇津木充 京都大学 大学院理学研究科 助教 ( 火山 電磁気学 ) 上嶋誠 東京大学 地震研究所 准教授 ( 地球電磁 気学 ) 松島健 * 高橋浩晃 * 中尾茂 * 鈴木康弘 * 後藤秀昭 * 九州大学 大学院理学研究院 准教授 ( 測 GNSS 及び変動地形学的手法を用いた地殻変動調査地学 ) 北海道大学 大学院理学研究院 准教授 ( 地球物理学 ) 鹿児島大学 大学院理工学研究科 教授 ( 測地学 ) 名古屋大学 大学院環境学研究科 教授 ( 変動地形学 ) 広島大学 大学院教育学研究科 准教授 ( 自然地理学 ) 大倉敬宏 * 山本希 * 中道治久 * 京都大学 大学院理学研究科 教授 ( 火山阿蘇山における地震 火山活動の変化と近接する物理学 ) 地震断層が火山に及ぼす影響東北大学 大学院理学研究科 准教授 ( 地震学 ) 京都大学 防災研究所 准教授 ( 火山物理学 ) 3

山中浩明 * 神野達夫 * 三宅弘恵 * 纐纈一起 * 浅野公之 * 松島信一 * 重藤迪子 地元孝輔 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 教授 ( 地震工学 ) 九州大学 大学院人間環境学研究院 教授 ( 地震工学 ) 東京大学 大学院情報学環 准教授 ( 地震学 ) 東京大学 地震研究所 教授 ( 地震学 ) 京都大学 防災研究所 准教授 ( 地震学 ) 京都大学 防災研究所 教授 ( 地震工学 ) 九州大学 大学院人間環境学研究院 助教 ( 地震学 ) 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 助教 ( 地震工学 ) 災害調査 強震観測による強震動発生特性調査 福岡浩 * 若井明彦 * 王功輝 * へマンタ ハザリカ * 酒井直樹 新潟大学 災害 復興科学研究所 所長 / 教授 ( 地盤工学 ) 群馬大学大学院理工学府環境創生部門教授 ( 地盤工学 ) 京都大学 防災研究所 准教授 ( 土質力学 ) 九州大学 工学研究院 教授 ( 土木工学 ) 防災科学技術研究所 水 土砂防災研究部 主任研究員 ( 地盤工学 ) 土砂災害及び地すべり発生機構調査 大井昌弘 * 田村圭子 * 木村玲欧 * 井ノ口宗成 * 臼田裕一郎 高橋和雄前原喜彦 * 赤星朋比古 * 防災科学技術研究所 災害過程研究部門 災害過程における人的被災 救援 地域社会に係部門長 ( 災害情報学 ) る影響調査新潟大学 災害 復興科学研究所 教授 ( 危機管理学 ) 兵庫県立大学 環境人間学部 准教授 ( 災害過程 ) 静岡大学 情報学部 講師 ( 災害情報学 ) 防災科学技術研究所 総合防災情報センター センター長 ( 防災情報学 ) 長崎大学 名誉教授九州大学 医学研究院 教授 ( 消化器外科深部静脈血栓症 ( エコノミークラス症候群 ) およ学 ) び衛生面の調査九州大学 医学研究院 准教授 ( 消化器外科学 ) 4