Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students MIZUMOTO, Atsushi Graduate School of Foreign Language Education and Research, Kansai University, Osaka, Japan. 2008
Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students -------------------- A Dissertation Submitted to The Graduate School of Foreign Language Education and Research, Kansai University, Osaka, Japan -------------------- In Partial Fulfillment of the Requirements for the Degree Doctor of Philosophy in Foreign Language Education and Research -------------------- by MIZUMOTO, Atsushi September 30, 2008 Copyright by MIZUMOTO, Atsushi, 2008
論文要旨 ( 概要 ) 日本のような EFL (English as a foreign language; 外国語としての英語 ) 学習環境では, 日常生活において自然に英語を見たり聞いたりすることが難しいため, 偶発的な語彙学習 (incidental vocabulary learning) は起こりにくいと考えられる (Gu, 2003b) また, 文部科学省が定めている学習指導要領の規定どおりに授業を行ったとしても, 高等学校卒業までに英語検定教科書で指導される語彙数は,( リーディングやリスニングにおいて ) 推測により語彙が習得できるようなレベルに達するほどの量 (3,000~5,000 語相当 ; Nation, 2001) とはいえない このような日本の英語学習環境において, 学習者が語彙力の不足を補い, 英語学習を円滑に進める目的で, 自ら選び行う意図的 (strategic) な語彙学習行動を本論文では 語彙学習方略 (Vocabulary Learning Strategies: VLS) と定義づけた そして, 日本人大学生英語学習者の使用している VLS の実態を調査し, 指導によってどのような変化が起こるかを明らかにすることを論文全体の目的とした 論文は4つの実証研究を含む, 全 7 章から構成されている 第 1 章では, 本論文をまとめるために行った一連の研究が, どのような経緯から行われるようになったのかを説明する その上で,4つの実証研究のリサーチ クエスチョンをあげて, 論文全体の流れを各章の概略を提示することにより記述する 第 2 章では,1970 年代から始まり, 応用言語学の一分野として広く認知されるようになった 学習方略 と, 認知心理学 ( 特に記憶研究 ) にも根ざしている 語彙習得研究 の両分野における先行研究のレビューを行う そして,VLS に関連した, 国内外における先行研究の内容を包括的にまとめることにより, 本論文の理論的枠組みを提示する 同時に, これまでにどのような VLS 指導研究が行われたのか, また, どのような方略指導がより良い語彙学習へとつながると先行研究では考えられているのか, という点も検討していく 第 2 章の最後では,VLS 研究で用いられるデータ収集の方法について, これまでの方略研究からわかっていることのまとめを行い, I
それぞれの利点や不十分な点を明らかにする 第 3 章では, 中国人大学生英語学習者が対象であった先行研究 (Gu & Johnson, 1996) の再現結果を報告する この研究では, 平均的な英語能力の日本人大学生英語学習者が使用している VLS の現状を, 文系女子大学生 139 名対象の調査により明らかにすることを目的とした リサーチ デザインは Gu and Johnson (1996) とできるだけ同じ形にして, 質問紙は翻訳したものを用いた この結果, ほとんどの VLS 使用の傾向が先行研究のものと一致していたが, 日本人英語学習者において特殊な使用状況を示す方略 ( 例えば, 語の構造利用など ) も確認された 第 3 章の研究結果より,VLS 調査における方略の定義と, 質問紙の構成概念の問題が指摘された そこで第 4 章では 心理尺度として信頼性 妥当性を持った測定道具 ( 質問紙 ) を開発し, その妥当性の検証を行うこととした この実証研究は, 自由記述による質問紙の作成 (122 名の参加者 ), 質問紙の項目分析と因子分析 (410 名の参加者 ), そして妥当性の検証 (283 名の参加者 ) という3つの段階で構成されていた 研究の結果, 構成概念 (construct) を明確に定義し, 心理学をはじめとする分野で確立されている手法 ( 項目分析や因子分析など ) を用いることにより, 十分な信頼性 妥当性を持った質問紙が開発できることがわかった また,VLS は1つの方略では, 習熟度などとの関係において弱い相関しか示さないが, 組み合わせて1つの上位概念を作ることにより影響が大きくなることも確認された 続く第 5 章では,3つ目の実証研究(244 名の参加者 ) として, 新しく開発された VLS 質問紙と, 動機づけ, 学習時間,TOEIC テストで測定される英語習熟度との関係を, 構造方程式モデリング (Structural Equation Modeling: SEM) や, クラスター分析などを用いて分析した研究の報告を行った 研究の結果,VLS が他の変数と比べて習熟度に大きな影響を及ぼす可能性があることがわかった また, 動機づけでは, 外的動機づけよりも, 内的動機づけの方が VLS に大きな影響を及ぼすことが明らかになった さらに, 動機づけのみでは習熟度に直接影響しないが,( 習熟度に大きな影響を及ぼす ) VLS への影響があるため, 内的動機づけを高めるような指導 II
法, または学習法もあわせて導入することが重要であることがわかった 第 6 章では, 本論文の最後の実証研究として, 明示的な VLS 指導が語彙学習にどのような効果をもたらすかを検証した研究の結果を報告した この研究では, 大学における半期の授業 (10 回 ) で VLS の明示的指導を行い, 実験群 (76 名 ) と統制群 (70 名 ) の語彙定着度テストの比較を行った また, 実験群内で, はじめにどのような VLS を使用していた学習者が指導によりどのような変化を見せるのか, 及び, その理由を, 量的アプローチだけではなく, 質的アプローチも含めて検討した その結果, 授業内での明示的な VLS 指導に関して, 以下の5 点が明らかになった 1. 明示的な VLS 指導は語彙力向上に有効であり, 統制群よりも実験群に効果があった 2. 明示的な VLS 指導はもともと方略使用が少ない ( もしくはそれほど多くない ) 学習者の方略使用を高めるのに役立つ 3. もともと方略使用が多い学習者の方略使用頻度は変化しないが, 彼 ( 女 ) らがそれまでに持っている VLS の有効性に対する認識を高めることができる 4. VLS の中には, 時間がかかるなど, 何らかの理由で有効でないと思われているものがあり, それらは学習者に使われない傾向がある 5. 明示的な VLS 指導により, 学習者の内発的動機づけが高められる可能性がある これらの結果をもとにして, 筆者は, 明示的な VLS 指導が通常の授業においても積極的に取り入れられるべきである, と主張している 本論文の最終章である第 7 章では, 第 1 章で示した4つのリサーチ クエスチョンに照らし合わせる形で, 一連の研究の結果をどのように VLS の指導へ活用すべきかに関して議論がなされている 最後に, 今後の研究の方向性として VLS 研究や指導実践において, 以下の3つのような研究を行っていく必要性があることが示唆されて III
いる 1. VLS 指導を授業内外で学習者に提供する方法の模索 2. 学習者の個人差を包括的に反映した学習 指導方法の研究 3. VLS の構成概念のさらなる検証 IV