平成 23 年 3 月 29 日 社会保険労務士法第 25 条の 38 に規定する 厚生労働大臣への意見書 全国社会保険労務士会連合会

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Q1 社会保険とはどのような制度でしょうか 会社などで働く人たちが収入に応じて保険料を出し合い いざというときの生活の安定を図る目的でつくられた制度のことで 一般的に健康保険や厚生年金保険のことを 社会保険 といいます 健康保険法第 1 条では 労働者の業務外の事由による疾病 負傷若しくは死亡又は出

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ったと判断します なお 一時的に認定基準月額以上の収入がある月があっても 認定基準年額を超えるまでの間は認定できます また 勤務した月の給与が翌月以降に支払われる場合でも 原則 勤務月の収入として取扱います 継続して認定できる事例 認定基準月額未満であるので 継続して認定できます 認定基準月額以上の

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改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

点及び 認定された日以降の年間の見込みの収入額のことをいいます ( 給与所得等の収入がある場合 月額 108,333 円以下 雇用保険等の受給者の場合 日額 3,611 円以下であること ) また 被扶養者の年間収入には 雇用保険の失業等給付 公的年金 健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます

(協会)300829事務連絡(国内在住者扶養認定QA)

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第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

被用者年金一元化法

第14章 国民年金 

第 2 節強制被保険者 1 第 1 号被保険者頻出 択 ( 法 7 条 1 項 1 号 ) 資格要件 日本国内に住所を有する20 歳以上 60 歳未満の者 ( 第 2 号 第 3 号被保険者に該当する者を除く ) 例 ) 自営業者 農漁業従事者 無業者など 適用除外 被用者年金各法に基づく老齢又は退

被扶養者になれる者の判定

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【別紙】リーフレット①

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MR通信H22年1月号

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 15,250 円 ( 平成 26 年度 ) 付加保険料月額 400

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 16,490 円 ( 平成 29 年度 ) 付加保険料月額 400

国民年金

介護保険制度 介護保険料に関する Q&A 御前崎市高齢者支援課 平成 30 年 12 月 vol.1

に該当する者については 同項の規定にかかわらず受給資格者とする 3 病院等に入院等したことにより 本市の区域内に住所を変更したと認められる第 1 項各号に該当する者については 同項の規定にかかわらず受給資格者としない 4 第 1 項及び第 2 項の規定にかかわらず 次の各号のいずれかに該当する者は

Q3 なぜ 必要な添付書類が変わるのですか? A3 厚生労働省より 日本国内にお住いのご家族の方を被扶養者に認定する際の身分関係及び生計維持関係の確認について 申立のみによる認定は行わず 証明書類に基づく認定を行うよう 事務の取扱いが示されたことから 届出に際して 確認書類の添付をお願いすることとな

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2 障害厚生年金障害厚生年金は次の1~3の条件すべてに該当する方が受給できます 1 障害の原因となった病気やケガの初診日 ( 1) が 厚生年金保険の被保険者である期間にあること 2 障害の原因となった病気やケガによる障害の程度が 障害認定日 ( 2) に法令により定められている障害等級表 ( 3)

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の両方を提出する必要がある 問 3 還付額は 領収証に記載されている金額を還付するのか それともレセプト情報から自己負担分を計算するのか 領収証により保険診療に係る一部負担金の額を確認して還付する 問 4 領収証の紛失 または医療機関等の全壊等により 対象の被保険者が負担した一部負担金の額の確認が取

表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

標準例6

退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

8-1 雇用保険 雇用保険の適用基準 1 31 日以上引き続き雇用されることが見込まれること 31 日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き この要件に該当することとなります このため 例えば 次の場合には 雇用契約期間が31 日未満であっても 原則として 31 日以上の雇用が見込まれるもの

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Ⅰ 改正について 児童扶養手当法の改正 Q&A ( 公的年金等と合わせて受給する場合 ) Q1 今回の改正の内容を教えてください A: 今回の改正により 公的年金等 * を受給していても その額が児童扶養手当の額 より低い場合には 差額分の手当が受給できるようになります 児童扶養手当 は 離婚などに

釧路厚生年金事案 214 第 1 委員会の結論 申立人は 申立期間について 厚生年金保険被保険者として厚生年金保険 料を事業主により給与から控除されていたと認めることはできない 第 2 申立の要旨等 1 申立人の氏名等氏名 : 男基礎年金番号 : 生年月日 : 昭和 15 年生住所 : 2 申立内容

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

1

退職後の健康保険の任意継続ってなに?

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年金は 万が一のとき もしっかりサポートします! 一般的に 年金 と言いますと 老後の生活を支える 老齢年金 をイメージしますが それだけではありません! 年金には万が一のときに 障害厚生年金 や 遺族厚生年金 が支給される場合があります 障害厚生年金 病気やけがで障害の状態になったときは 厚生年金

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 国 ) 第 号 第 1 結論昭和 52 年 4 月から同年 8 月までの請求期間及び昭和 52 年 9 月から昭和 56 年 12 月までの請求期間については 国民年金保険料を納付した期間に訂

第 1 号被保険者 資格取得の届出の受理 種別変更の届出の受理 資格喪失の承認申請 ( 任意脱退 ) の受理 資格喪失届出の受理 資格喪失の申出 第 1 号被保険者 任意加入被保険者 付加保険料の納付の申出の受理 付加保険料の納付しないことの申出の受理 に申請 届出または申出をした場合 被保険者 世

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求期間 1について 当該期間のうち請求者のA 社における平成 21 年 9 月 1 日から平成 22 年 12 月 1 日までの期間の標準報酬月額を訂正することが

議案第49号-医療福祉費支給に関する条例の一部改正【確定】

48

ただし 対象期間の翌年度から起算して3 年度目以降に追納する場合は 保険料に加算額が上乗せされます 保険料の免除や猶予を受けず保険料の未納の期間があると 1 年金額が減額される 2 年期を受給できない3 障害基礎年金や遺族基礎年金を請求できない 場合がありますのでご注意ください 全額または一部免除

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資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

1 2

障害厚生年金 厚生年金に加入している間に初診日 ( 障害のもととなった病気やけがで初めて医者にかかった日 ) がある病気やけがによって 65 歳になるまでの間に 厚生年金保険法で定める障害の状態になったときに 受給要件を満たしていれば支給される年金です なお 障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害

現在公的年金を受けている方は その年金証書 ( 請求者及び配偶者 請求者名義の預金通帳 戸籍謄本 ( 受給権発生年月日以降のもの ) 請求者の住民票コードが記載されているもの ( お持ちの場合のみ ) 障害基礎年金 受給要件 障害基礎年金は 次の要件を満たしている方の障害 ( 初診日から1 年 6か

(3) 父又は母が規則で定める程度の障害の状態にある児童 (4) 父又は母の生死が明らかでない児童 (5) その他前各号に準ずる状態にある児童で規則で定めるもの 3 この条例において 養育者 とは 次に掲げる児童と同居して これを監護し かつ その生計を維持する者であって その児童の父母及び児童福祉

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時効特例給付制度の概要 制度の概要 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律 ( 平成 19 年 7 月 6 日施行 ) に基づき 年金記録の訂正がなされた上で年金が裁定された場合には 5 年で時効消滅する部分について 時効特例給付として給付を行うこととされた 法施行前

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特定個人情報保護評価書 ( 基礎項目評価書 ) 評価書番号評価書名 23 国民年金関係事務基礎項目評価書 個人のプライバシー等の権利利益の保護の宣言 甲府市は 国民年金関係事務における特定個人情報ファイルの取扱いにあたり 特定個人情報ファイルの取扱いが個人のプライバシー等の権利利益に影響を及ぼしかね

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件数表(神奈川)

第七条二被用者年金各法の被保険者 組合員又は加入者 厚生年金保険法 国家公務員共済組合法 地方公務員等共済組合法 私立学校教職員共済法 国内居住要件 被用者年金各法 社会保険の適用事業所にお勤めの方 国家公務員 地方公務員 私立学校教職員 なし 年齢要件なし (65 歳以上の老齢厚生年金等の受給権者

(5) 認定対象者に収入がある場合は 厚生労働省通知並びに関係法令 本基準に定める範囲内であること (6) 認定対象者を被扶養者として認定する事が実態と著しくかけ離れたものではなく かつ社会通念上妥当性を欠いていないと認められること ( 扶養義務者が複数の場合の認定対象者の帰属 ) 第 4 条認定対

平成 30 年度被扶養者資格再確認に関する Q&A 調書について ( 被保険者用 ) Q1. なぜ毎年被扶養者資格再確認 ( 調書 ) を行うのでしょうか? A 健康保険法施行規則第 50 条により 保険者として被扶養者資格の再確認を実施しています 就職や収入超過等 本来は被扶養者に該当しないはずの

( 扶養義務者が複数の場合の認定対象者の帰属 ) 第 4 条 認定対象者にかかわる扶養義務者が複数ある場合は 扶養義務者の収入および扶養能力 被保険者の被扶養者としなければならない経緯または理由 生計維持の事実などを総合的に審査して組合がその帰属を判定する なお 夫婦 親子等社会通念上被保険者よりも

スライド 1

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厚生局受付番号 : 中国四国 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 中国四国 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 事業所における平成 27 年 7 月 10 日の標準賞与額を6 万 5,000 円に訂正することが必要である 平成 27 年 7 月 10 日の

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特定個人情報保護評価書 ( 基礎項目評価書 ) 評価書番号評価書名 5 国民年金関係事務基礎項目評価書 個人のプライバシー等の権利利益の保護の宣言 亀山市は 国民年金関係事務における特定個人情報ファイルの取扱いにあたり 特定個人情報ファイルの取扱いが個人のプライバシー等の権利利益に影響を及ぼしかねな

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提出書類について 証明書類等の添付を必要とするのは 通常型 です 簡易型 は原則 証明書類等の添付は不要です Q4 収入等の証明書類の提出を求める根拠はありますか A4 証明書類等の提出に関しては 健康保険法施行規則第 50 条第 2 項及び第 3 項に 規定されており 確認に必要な書類を求められた

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他の所得による制限と雇用保険受給による年金の停止 公務員として再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額停止となり 特別 ( 本来 ) 支給の老齢厚生年金の一部または全部に制限がかかることがあります なお 民間に再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額支給されますが

第 7 章 年金 福祉 1 年金 日本の公的年金制度は, 予測できない将来へ備えるため, 社会全体で支える仕組みを基本としたものです 世代を超えて社会全体で支え合うことで給付を実現し, 生涯を通じた保障を実現するために必要です 働いている世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てるという方式で

目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

実技試験 ( 個人資産相談業務 ) 次の設例に基づいて 下記の各問 ( 問 1 ~ 問 3 ) に答えなさい 設例 Aさん (33 歳 ) および妻 Bさん (29 歳 ) は 民間企業に勤める会社員である 平成 29 年 3 月に第 1 子を出産予定の妻 Bさんは 産前産後休業および育児休業を取得

D-1-1 手続きは 傷病手当金は 病気休業中の健康保険加入者とその家族の生活を保障するための制度 で 被保険者が病気や業務外のけがのために働くことができず 事業主(会社)から給与 が受けられない場合に支給されます 手続き 傷病手当金の請求には 療養の事実についての担当医師の証明と 休業期間中の賃金

第 9 回社会保障審議会年金部会平成 2 0 年 6 月 1 9 日 資料 1-4 現行制度の仕組み 趣旨 国民年金保険料の免除制度について 現行制度においては 保険料を納付することが経済的に困難な被保険者のために 被保険者からの申請に基づいて 社会保険庁長官が承認したときに保険料の納付義務を免除す

(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

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番号制度の実施に伴う社会保障関係システムの改修について 国 都道府県 市町村 市町村 医療保険者等 システム名 社会保険オンラインシステム 労災行政情報管理システム ハローワークシステム 障害者福祉システム 児童福祉システム 生活保護システム 国民年金システム 国民健康保険システム 後期高齢者医療シ

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国民健康保険料の減額・減免等

社会福祉事業等の事業所用 別紙 1 社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票貴事業所の現状等について 下記の項目に回答してください Ⅰ. 現在 厚生年金保険 健康保険に加入していますか ( 該当する番号に を付してください また 必要事項をご記入ください ) 加入状況加入している 下記のいずれ

04 件数表280205(東京)

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2016年 弾丸メールセミナー № 33 雇用保険法 高年齢再就職給付金

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平成 23 年 3 月 29 日 社会保険労務士法第 25 条の 38 に規定する 厚生労働大臣への意見書 全国社会保険労務士会連合会

目 次 はじめに 2 労働基準法関係 1. 労務監査制度を法制化すること 3 労働安全衛生法関係 1. 社会保険労務士が衛生管理者として事業所の委託を受け 選任者となることができる こと 3 健康保険法関係 1. 被扶養者の認定基準における収入の取扱いを改めること 4 2. 被扶養者の範囲に別居している兄姉を加えること 4 厚生年金保険法関係 1. 遺族年金における男女格差をなくすこと 4 2. 共済年金受給者と厚生年金受給者の支給停止の取扱いを平等にすること 5 3. 年金時効特例法対象者を拡大すること 5 国民年金法関係 1. 自営業者等に生計維持される配偶者の被保険者資格を見直すこと 6 介護保険法関係 1. 介護認定調査の方法を改善すること 6 その他 1. 高等学校等における労働社会保険諸法令教育を推進すること 7 1

はじめに 近年の我が国の社会情勢は 景気低迷を背景に 企業間の競争激化 雇用環境の悪化 個別労働関係紛争の急増など 雇用 労働に関する問題を生じている一方 少子高齢化の進展によって高齢世代の医療 年金 介護に関する各種の問題や 若年世代の出産 育児とワークライフバランスに関する問題を生じている これらの問題によって 失業 ワーキングプア 無年金など 国民の生活は著しく不安定な状況に陥っていることから この状況の解消が 政府の喫緊の課題となっている 国民生活を支えるセーフティネットである労働社会保険に関する諸制度のあり方は 国民ひいては我が国の行く末を左右すると言っても過言ではない したがって 政府がこれらの分野に関する政策を進める場合には 国民の声を十分に聴くべきところである 社会保険労務士は 労働社会保険の専門家であるばかりでなく 常日頃この分野の行政と接触しながらその業務を行っていることから 制度に通暁し かつ情報を早く得ることができる立場にあり 労働 社会保険 社会保障に関する的確な意見を表明することができる この観点から 今般 全国社会保険労務士会連合会は 社会保険労務士法第 25 条の38 の規定に基づき 労働社会保険諸法令の改善及びこれを実行に移すための社会保険労務士制度の運営の円滑化の方策を検討するとともに これらに関する社会保険労務士会及び会員の社会保険労務士の意見を取りまとめ 厚生労働大臣に具申する 2

労働基準法関係 1. 労務監査制度を法制化すること労働基準法第 89 条に基づき 常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は 就業規則の作成と届出の義務があるものの 作成していない事業所や 一度作成したまま見直しを行っていない事業所も多く見られる 昨今の個別労働関係紛争の増加は このような就業規則や その他規程類の整備状況 運用状況を要因として発生する場合が多く 発生することにより 当該事業所が被る社会的評価の低下 それに伴う生産性 売上高の減少など社会的損失も計り知れない そこで 現在 内部統制として財務分野については公認会計士による会計監査制度が法制化されているが これを人事労務分野においても実施し 労務監査制度として法制化すべきである なお 労務監査制度において 監査の実施 監査報告書の作成を行うのは 社会保険労務士とすべきである 労働安全衛生法関係 1. 社会保険労務士が衛生管理者として事業所の委託を受け 選任者となることができること現在 常時 50 人以上の労働者を要する事業場においては 事業所規模ごとに衛生管理者を1 名以上選任しなければならず 選任者の資格要件は1 衛生管理者免許者 2 衛生工学衛生管理者免許者 3 労働衛生コンサルタント 4 医師 歯科医師となっている しかし 五十人前後の事業所においては 従業員の入退社が多く 衛生管理者も中途退職者がいて不安定である為 絶対数が不足していること 衛生管理者の選任をしなければならない事業所においても選任ができないでいる事業所があること 社会保険労務士が衛生管理者の資格を所持していても 事業所においては専属でないため衛生管理者の資格が有効に使える機会が少ないこと ( 労働衛生コンサルタントの資格者はなお少ないこと ) との問題点がある そこで 現在の社会保険労務士制度には 社会保険労務士試験に労働安全衛生法の科目があること 社会保険労務士法別表第 2の社会保険労務士が関与できる法律に労働安全衛生法があること 委託先の事業所の労務管理及び安全衛生の指導を日常的に行っていることから総合的に考え 労働安全衛生法施行規則第 7 条 専属の者 を削除及び労働安全衛生法の改正と社会保険労務士法の改正をすることで 以下の条件を満たした社会保険労務士は 衛生管理者の職務を遂行することが出来るものとするべきである 社会保険労務士と事業所との間に業務委託契約が締結されていて かつ 社会保険労務 士が衛生管理者の有資格者の場合 当該事業所の衛生管理者に選任出来ること 3

健康保険法関係 1. 被扶養者の認定基準における収入の取扱いを改めること現在 一般の被扶養者の収入認定基準は年間 130 万円未満である 当該収入には給与及び事業収入が含まれ 失業者に給付される雇用保険の基本手当も含まれる ところが 医療保険者の基本手当受給者に対する被扶養者の認定は 年間の給付額ではなく 日額 3,612 円を境に行われているのが実態である これは130 万円を雇用保険改訂前の所定給付日数である360 日で除した金額を用いているからであり 現状の所定給付日数は一般被保険者で最長 150 日 特定受給資格者で最長 330 日となっている また 所定給付日数 360 日が支給されるのは就職困難者の特定年齢層 (45~60 歳 ) に限られている したがって 当該被扶養申請者が雇用保険のどの被保険者区分に属するかを確認のうえ 認定処理すべきであるが 実態は確認されていない そこで このような認定基準の運用は雇用保険に対する請求を阻害し また基本手当受給者 ( 求職活動者 ) の健康保険無保険者の拡大を助長することに繋がるため ぜひ改めるべきである 2. 被扶養者の範囲に別居している兄姉を加えること現在 健康保険法第 3 条第 7 項において 同法上の被扶養者には弟妹は生計維持されていれば同居は条件ではないが 兄姉は同居が条件となっている しかし 雇用情勢や住宅事情から弟妹に扶養されているものもいるのが現実であるとともに 民法第 877 条では 兄弟姉妹は 互いに扶養する義務がある と定められている そこで 健康保険法第 3 条第 7 項第 1 号の 弟妹 を 兄弟姉妹 に改定するべきである 厚生年金保険法関係 1. 遺族年金における男女格差をなくすこと遺族年金の受給権者のうち 配偶者 について 労働者災害補償保険法の遺族 ( 補償 ) 年金では 妻 は無条件でもらえるが 夫 は年齢または障害要件がある 妻 を亡くした場合 年金が受けられず一時金のみの場合が多く たった1,000 日分の一時金のみが支払われる場合がある 厚生年金保険法の遺族厚生年金では 妻 は無条件でもらえるが 夫 は年齢要件がある そのため 夫が厚生年金保険の被保険者である 妻 を亡くした場合 一切支給がなく 保険料の支払いが意味をなさない場合がある 国民年金法の遺族基礎年金では 高校生以下の子のある 妻 しか受けられず 妻 を亡くしても一切支給がない 仮に 亡くした 妻 が第一号被保険者として35 年間自腹 4

で保険料を払ったとしても たった32 万円の死亡一時金しかもらえない このことは 男女共同参画社会を目指すには矛盾のある制度といえる そこで 女性が一家の大黒柱の場合もあるし 夫婦が協力して家計を支えている場合もあるのだから 社会保険に関して男女平等になるよう 年齢制限の撤廃など 遺族 の要件の見直しや中高齢加算の見直しなど 適正な見直しをするべきである 2. 共済年金受給者と厚生年金受給者の支給停止の取扱いを平等にすること 60 歳から64 歳までの在職老齢年金制度において 厚生年金受給者が厚生年金の被保険者になったときは 賃金と年金の合計額が28 万円を超える場合 超える額の2 分の1 に相当する額が支給停止され 賃金が47 万円を超える部分については 賃金が増加した額だけ支給停止される 一方 65 歳未満の退職共済年金または障害共済年金等の受給者が厚生年金の被保険者となったときは 賃金と年金の合計額が47 万円を超える場合 超える額の2 分の1に相当する額が支給停止される これは 国民皆年金制度における平等性を欠いた仕組みになっていると言えることから 共済年金受給者と厚生年金受給者とを同様の取扱いとすべきである 3. 年金時効特例法対象者を拡大すること同法は年金記録の訂正により年金額が増加する者を救済の対象としているが 例えば厚生年金の老齢給付の未請求者の中には加入期間が20 年に達せず 受給権がないものと諦めていたが 実際には男子 40 歳 ( 女子は35 歳 ) 以降 15 年以上の加入期間があり 特例により受給権を取得していた者がいる場合がある これらの未受給者は受給権を放棄したのではなく 単に中高齢者の加入期間に関する特例についての年金知識がなかっただけと解すべきである 該当者の中には既に死亡している人も当然いると考えられ 配偶者もかなり高齢者と思われる 配偶者が生存していれば遺族給付の受給権が発生する 両方のケースとも記録の訂正がなかっただけで 本法の救済の対象外として放置されるのは極めて不合理であり 行政上の公平性の確保と年金記録問題解決の一助とするために同法の一部を改正し 老齢給付の受給資格期間を満たしているが裁定請求をしていない者 ( 未請求のままで死亡したものを含む ) や該当者が死亡している場合の遺族給付も救済の対象に加える とすべきである 5

国民年金法関係 1. 自営業者等に生計維持される配偶者の被保険者資格を見直すこと現在 自営業者等に扶養される20 歳以上 60 歳未満の国内居住の配偶者は 生計維持されていても 第 1 号被保険者となり 自ら保険料を納付する義務を負っている 一方 被用者年金各法の被保険者等に主として生計維持される20 歳以上 60 歳未満の配偶者は 第 3 号被保険者となり 原則として自ら保険料を納付する義務を負わない 生計を維持する配偶者の一方が自営業者か被用者のいずれかにより 他方の配偶者に保険料負担の有無が生じたり 国内居住要件を求められることは不合理であることから 見直すべきである 介護保険法関係 1. 介護認定調査の方法を改善すること平成 21 年 4 月からの介護保険の認定調査のやり方をめぐっては 実態に合わない 介護切りという批判が強く 厚生労働省も同年 4 月から 要介護認定の見直しに係る検証 検討会 を設けて検討を開始した 介護保険の給付を受けることは 被保険者の権利なのだが 介護保険被保険者証を持って 介護事業者のところへ行けば ヘルパー派遣などのサービスが受けられるという仕組みにはなっていない 被保険者が介護サービスを受けるためには, 住んでいる市町村の介護保険担当窓口に行って要介護認定申請という手続きをしなければならない 申請をすると後日 日程を打ち合わせたうえで調査員が来るが 市町村の職員が来る場合と 市町村から委託を受けたケアマネージャーが来る場合がある この調査の際に改善すべき点を以下にあげる 1 要介護者の特性にあわせた質問内容の改善市販されている解説書では 調査のとき 格好をつけて 出来ないことを出来ると言わないように などと書いてある しかし そのような要介護者の特性 ( 見栄を張ることがある ) を理解したうえで 質問の方法を改善すべきである 2 調査員の聞き取り能力を向上すること調査員が持参する調査票の記入結果は コンピューターにかけて第 1 次判定をすることになるが 質問項目は3 肢択一 2 肢択一 5 肢択一など さまざまである 生きた人間の生活では できる できないの間に できるけど上手にはできない という領域があるのが普通であり 調査員には 要介護者を十分理解したうえで 質問項目を聞き取る能力の向上を図るべきである 3 調査票は複写式にし 控えを調査対象者に交付すること介護保険に関する解説書のなかには 択一式の質問と答えでは意をつくせないことがある 調査される側として特に訴えたい問題 困りごとなどは特記事項に書いてもらえ と 6

書いてあるものがある しかし 実際には調査員が 被調査者から聞いたことを調査票の裏面に鉛筆でメモ書きし 事務所などに帰ってから清書しているようであり 特記事項を その場で見せてもらうのは 調査の現場では難しいと思う しかし 調査員が提出した調査票を基に要介護度が決定されることから 調査票の記載内容について 被調査者としては知っておきたい 市町村から介護認定の結果通知が来るまで 要介護度が下がったらどうしよう と心配するのは精神衛生上良くないものである 労働基準監督官が 事業所に立入り調査したときには 是正すべきことがあれば 複写で作成した 是正勧告書 という書類を事業主または代理人に交付する 病院で手術を受ける前には 手術について説明を聞いて承諾したという書面を提出する この書類も複写式で患者の手元に控えが残る このようなことから 権利義務に係る調査票を複写式にして 控えを調査対象者に交付するべきであるとともに 調査に行く前に 被調査者に記入説明書と調査票を送付し あらかじめ記入しておいてもらい 調査日には調査員が実際に目で見て あるいは被調査者と話し合って 身体の状況や物事の理解度の確認と補足質問をする方法へと改善すべきである その他 1. 高等学校等における労働社会保険諸法令教育を推進すること高等学校等において 学生が法律の仕組み ( 労働契約法 労働基準法 労災保険法 雇用保険法 国民年金法 厚生年金保険法 健康保険法 ) のガイドラインを就職する前に知ることは 昔と違って複雑な働き方をしなければならない状況下で 会社はこれだけの負担をしてくれている あるいは 法律の適用になっていること等を知ることにより 将来に対する不安感を払拭し さらには労働契約をしていることの責任を感じてもらうことに繋がる これまでの厚生労働省の政策を見ると 求職する側に職業訓練や適職を見つける部分に力を入れているものの 働く仕組みが複雑になっているにもかかわらず 肝心の労働社会保険諸法令教育が行なわれていない不十分な状態となっている文部科学省と連携する必要もあるが 学校教育の中に組み込んで教育していかなければ 正確な知識を持たない国民はますます将来に対する不安が解消されず 逆に教育を行うことによって 国の政策に対し評価する目を国民は持つことができ 将来に対する根拠のない不安が解消されると思われる そこで このような取り組みを厚生労働省が率先して進めるとともに 当該分野の授業の際には 社会保険労務士を活用するべきである 7