工 医器学 Vol.68, No.11 ( 1998 ) ( 7 ) 総 説 囀紮痛み治痴巓角さ紋い る驫醸副 Super Lizer ( 直線偏光近赤外線治療器 ) ノ亅丶 li 節良 i * は めに最近, 痛みの治療の分野で広まりつ ある治療法のひとつに光線照射療法があげれ, 用いる治療器の一つとして Super Lize i 直線偏光近赤外線治療器 ; 以下 SL ) が る. 使用法や作用機序としては低出力 tr 一ーと同様な範疇に入る治療器であるが, 本 が低出力レーザー と異なる点は波長が単一 ないこと, 実行出力が最高 1, 800mW と高 ことである, 本項では SL 具体 な適応 つき述 の原理と使用法 る, 1 原理 1 } 光線が生 に影響を与える因子としては, 波長, 偏光 および光エ ルギー密度の 3 つがあ られる. 1 ) 波長 ( 図 1 )2 > 光を 長で分類すると, 10 一呂 μ m の宇宙線から 1 μ m 1. の長波の間に様々な光線が含まれる, 痛み治療にいられる光線の波長は o 4 単位 κ m<tab> 可 祖 光線 <TAB><TAB><TAB> 紫外線 <TAB> 紫 @ 黄膏緑 檀赤 <TAB><TAB> 近煤 @ 外線 <TAB> 中間赤外線 <TAB><TAB><TAB>ii 線照射療法で用いられる波長と治療器 * 駿河台口 大学病院麻酔科光線レベルである 0. 6 n1 から 1. 6 μ m の間に入る. 図 1 に示すよ に低出力レーザーでは単一一光であるのに対, SL では 0.6 μ m から 1 6 μ m の赤色光から近赤外線領域の連続スペ N トルの複合波長を有している, 波長の 違による生体への影響は生体深達度と, 波の持つ固有な光子エネルギーに反映される. S ェ有する波長は生体深達度が高い波長帯であ, 0,6 μm 以下のもの r 血中ヘモグロビンに吸収され易く, 1. ハ m 以上では水分への吸収率が高くなる. 一方, 波長が短いほど光子エネルギーは強く なる. 例えば紫外線 それは生 体 の エ分子結合 l ルギーより強い ため, 生体に光化学作用 が起 アる とされている. 2 ) 偏 光 ( 麟 2 ) j 光は振動しているが, その方向には 3 あり, 一つは振動方向が一定な直線偏光, との 2 つは円軌跡を描く円偏光の左楕円偏 と 右楕円偏 の光源からの 光である. 自然光や電球等の通 光はこ らの 3 つの偏光成分が均等に含まれている 低出カレーザー治療器, SL は疸線偏光成 だけの光線である. 偏光成分の樹違によ 生体への影響に相違が る. 例えばモル モットの あることが判明して 創傷治癒促進 効果を見 ワ ] D.632 疑 m<tab> ヘ ム 4t ンレーザー図 1 の機序に 研究では, 直線偏光成分 と右円偏光成分の でその効果が認められた と報告されている 6 ). NII-Electronic いては明確ではないが, 偏光面 Library が揃って い膜に対ると細胞
工 ( 8 ) 医器学 Vo1.68, No.11 ( 1998 ) 瘋線偏光 1 表 2 ブタ肝臓における光線照射における組織に発生した輻射熱の相違.SL で高い. 纖面か 1 w レーザーらの縣 1 1 e 1 5mm ユ Omm 磁 一ト 0 1 旨 +0 2 +! 2 旨 ミ ± 0.oi ± 0. ± 0.0 スーパーライザー s ec ec se i 剞十 10.1 十 14.9 十 22,7 十〇.6 20mm30mm ± 0.0 ± 0,0 ± 0,0 十 ).2 十〇.1 十 5.9 十 7.o 十〇.2 十〇.2 十〇.1 十〇.1 一般光線 太陽光線 図 2 偏光された光と一般光,SL は直線偏光さ れた波長 0.6 1.6 μ m の複合スペクトルの 連続光であリ, 低出カレーザー治療器は直線偏光された単一波長の光線である. 3) 光 z ネルギー密度 光線の照射条件は出力, 照射時間および照射 面積の 3 つであるが, そのパラメーターとなる のが光エネルギー密度である. 言い換えると, 生体にどの す指標といえる. ような条件の光を照射したかを表わ 光エネルギー密度は次の式で表わされる. 光エネルギー密度 ( /cm2 ) = 出力 (W ) x 時 間 ( 秒 ) / 照射面積 (cm2 ) a. 出丿丿 ( 表 1,2) 出力が高いと生体深達度が増し, 発生する輻射熱が高くなる, 出力 leomw の低出力レー ザーとの組織透過性を比較した実験結果を表 1 表 1 ブタ肝臓を馬いた光線照射における組織透 過光線量の相達.SL の透過量が多いことがわかる ( 文献 1 より ). 組織 か頗 副 omm10mm20mm30mm40mm50mm ユ 00mW レーザー診強 4,2 1,00.D117. )00500 0,000 ユ 51 0.OOOO36 17.5 7,00,07300,007620.OO1880.00100 ( 肇位 μ W ) 一 568 ( 単位 ) に示し, 発生する輻射熱の胡違を表 2 に示した. SL は最高 1 β 00 mw の高出力を有するので紐 織透過性は高いが, こす. b. 照射時間 ( 図 3 ) 照射時間が長いと火蕩を起 光線照射において組織変駕を起こす温度と照 射時悶の関係を図 3 に示した. レーザーメス等 の高出力機器と異なり, 疼痛治療で用いる光線 照射では組織変化を起こさない の設定が必要となる. 70 65 6G β 55 趣 鋸 5045 ような照射時間 40 1 10 60 15 60 6 秒分時間 図 3 光線照射における組織変性を起こす羆射時間と温度の関係 ( 文献 2 より ), c. 照射面積 前記した光エネルギー密度の式より, 照射面 積が広くなると光エネルギー密度は低くなる. SL の照射面積の颪径は用いるレンズユニット により 3 100mm である どの程度の照射面 積が疼痛治療に適しているかにつ ら いては確立さ れていない, 疼痛部位の面積と照射の対象とす る神経組織の大ぎさによって決めているのが現 状である. 以上をまとめると, SL は生体深達度の高い 波長帯である 0.6 1.6 μ m の連続スペクトル の複合波長を, 比較的高出力で照射出来る光線
工 医器学 Vol.68,No.11 (1998) ( 9 ) 照射器と言えよう. 豆. 機器の構造 ( 図 4 ) 1 ) SL は電源 光線部, 導光部およびレンズユ ニットより構成されている. 光源には本器用に 開発されたアイオダインラソプ (150W ) が用いられている. このランプからの光を反射させ集光するための鏡には近赤外線の反射率が最も 高い金を用いている. 図 5 4 種のレンズユ ニ ツト.A A レンズユ = ト, B B レン ズユニツ ト,SG SG レ ン ッ ズユニ ソト, C C レンズユニッ ト, 詳細は 本文参照 出力は 2, 200mW であるが, 光線は拡散するのエで光ネルギー密度としては最も弱くなる. SG (stellate ganglien 星状神経節 ) タイプレ ン ズは頸部の星状神経節近傍を照射するために 考案されたものである 焦点径を 7mm とやや絞り, 先端部分を細くして照射しやすいようにしている, 出力は 1, 500mW である. また最近 では, 背部や膝関節の屈側など照射しにくい部 分用に L 字型のレンズユニット (L タイプ ) が 開発された, これらのレンズユニットは簡単に着脱でき, 用途に応じて交換する, 図 4 SL 本体.ACIOOV.50 / 6eHz 消費電力 220W. 寸法 370 510 990 mrn. 導光部は直径 50 μ 皿の光ファイバーを 1 万 9 干本束ね fc 2m 長の可動性のよいハンドルとなっている. 鬩定照射用の支持器がついており, 一点へ固定照射する場合, 術者がレンズユニヅトを持てっいる必要がなく非常に有用である. レンズユニットは用途に応じて 4 つのタイブ が用意されている ( 図 5 ),A タイプレンズは焦点径 3 エnm. 出力は 500mW となる. 光を絞っ ているので刺激感が強い. 鍼のような使型法に 適している. B タイプレンズは焦点径 10 mm で実行出力は 1,800 皿 W と最も高い. ソフトな πl 使用法 ( 図 6, 7) 照射条件は本体のコソトロールバネルで決定 する. 照射法には連続照射と断続照射 ( サイク ル照射と誉っている ) があり, スイヅチで選択 する. 連続照射の場合はレソズユニヅトを術老 の手で持ち, 一か所 2 5 秒程度の照射を照射 部位を変えつつ行う. 断続照射の場合は光線が 出る時闘 ( cycle on ) と休止する時聞 ( cycle off ) をまず設定する. それぞれ 1 秒から 9 秒の 間で設定が行える. 治療一回の総照射時間はターイマにより 1 分 から 10 分に設定でぎるが, それ以上の治療が必 要な場合には再ス ター 5 すればよい, また出力 感じの照射感であり, 組織深達度が最も高いの で筋々膜性疼痛などによく用いられる, C タイ プレソズは焦点径 100mm とラッパ状のレンズ であり, 広範な照射を行う場合に適している. 一 569 一 も 10 100 % にコントロール出来, それぞれコソト P 一ルパネル上に. 表示される, 一ヵ所への連続照射を行う場合には断続照射 モードとし,cyele on /cycle off の設定は通常
工 (10 ) 医器学 Vol.68,No.11 ( 1998 ) 衷 3 SL の適応疾患 図 6 治療の実際 (1 ). 肘関節の腱鞘炎の治療. 圧痛点をよく探して照射することが必要. 図了治療の実檪 (2 ). 新鮮帯状疱疹の治療. Th 3 領域の帯状庖疹患者.Th 3 の神経根 の出口へはレンズユニットを固定した断続 照射を行いつつ, 皮疹部へはレンズユニッ トを術者が持って照酎点を変えつつ連続照射を行っている. 1 3 秒 / 1 4 秒 (A, B, SG タイプレンズ の場合 ), 5 8 秒 / 3 5 秒 (C タイプレソ ズ ) とすることが多いが, どのような設定が最 適かについては明確にされていない, 一ヵ所照 射の場合は火傷に対する洋意が必要で, 経験上, cycle on / cycle off は A, B, SG タイプレン ズで 2 / 4 秒程度がよく用いられる, 皮膚疾患など皮疹部への直接照射や, 粘膜面 への照射時にはレソズをサラソラップ等で覆っ 1 ) ペインクリニック t 整形外科領域 聾急性, 慢性の筋肉痛, 腱鞘炎, 種 k の神経痛, 新鮮帯状疱疹 ( 皮疹, 疼痛 ), 帯状疱疹後神経 痛, 捻挫, 筋の攣縮による疼痛, 肩関節周囲炎, 緊張型頭痛 7 リュウマチ性関節炎, 慢性期変形 性関節炎による疼痛, 交感神経緊張による不定 愁訴 血行傷害 筋緊張, 反射性交感神経ジス トロフィー RSD ), リハビリテーションの補 助, レイノー現象 2 ) 脳タト羊斗. 外 $ 斗領域 種々の頭痛, 脳血量改善, 三叉神経痛, 創創治 癒促進, 術後浮腫 3 ) 皮麿科領域 アトピー性皮膚炎, 慢性湿疹 皮膚炎, 難治性 皮膚潰瘍, 爪甲疾患, 円形性脱毛症, ジョクソ ウ 4) 耳二鼻手斗領域 耳鴨り, 突発性難聴, 花粉症 ( 鼻アレルギー ) 5) 産婦人科領域 産婦乳房の管理 ( 乳汁分泌促進, 鎮痛 ) 歯科領域 顎関節症, 7) その他 膚科, 歯肉知覚過敏瘢 スポーツ医学, 獣医科領域 ( リハビリテー一ショ ソ, 疼痛 ) 産婦人科, 外科などほとんどの臨床医学 の面で用いられており, 疼痛以外にも広くその 有用挫が認められている. 星状神経節近傍照射 ( 図 8 ) 9 1 ) ペインクリニヅク領域では, 頸部の交感神経 節である星状神経節に局所麻酔薬を注入し, 感神経の遠心性イ V パルスを遮断する方法であ る星状神経節ブロックを頻用する. 適応疾患と しては血管性頭痛, 緊張型頭痛, 肩手症候群, 変形性頸椎症による肩, 上腕痛, E 肢の反射性交感神経ジストロフ n (RSD ), 頭頸部 肩 上肢の帯状疱疹による痛みなどである. しかし, 交 て行う. これによる出力の低下はほとんどないことが判明している. 1>. 適応疾患 ( 表 3 ) T s } 本器を用いた治療の対象疾患については, 非常に多くの有効例が報告されている ( 表 3 ), 診療科でみると, 麻酔科 ( ペィンクリニック ), 整形外科, リハビリテーショソ科, 脳外科, 皮 本ブ P ックの合併症として覆声や腕神経叢プロ ヅ クの発生が希でなく起こることで施行にはあ る程度の熟練が必要なこと, また抗凝固療法中の患考, 高齢者で循環動態の不安定な患者等では本ブロックが施行出来ないことなどで, 本ブ P ックに代わる治療法が求められていた. そこで SL を経皮的に星状神経節へ向けて照射する 星状神経節近傍照射法が開発された, SG タイ 一 570 一
工 医器学 Vol.68,No ほ 1 ( 1998 ) ( 11 ) 与してい るものと思われる, これまでに報告さ れたり, 考えられている主な作用機序としては以下の通りである. 1) 神経興奮性の抑制緲 2 ) 筋の弛緩作用 3) 飢管拡張作用 4) 生体活性物質産生促進 5) ーコラゲン新生の促進 6) 自律神経機能の調整 7) 生体恒常性維持機能の調整 8) リラクザイション 9) その他 おわ りに SL を含め光線照射療法の最大の利点は, 正 しく用いた場合, 副作用が全く無いと言えるほ 図 S SL による星状神経節近傍照射. レンズユ ニットを囿定出来る本器の構造. 辷の特長を活かした治療法である. ゾレンズユニットが考案され, より容易に施行 でぎるようになっ た. 適応症としては星状神経 節ブロックの適応と同じである, 副作用は全く と言ってよいほど無いことが特長で, 小児も含 め, どのような患者にも施行可能である. 方法としては, 患老は枕をばずした仰蹴位と し, 輪状軟骨と胸鎖乳突筋前縁との間に SG タ ィブレンズユニットを垂直に, 皮膚をやや強く 圧するようにして当て, cycie onlcycle off を 2 / 4 秒程度とし, 出力 7C} 100 % で 7 10 分 照射する, 効果において星状神経節プロヅクと異なるの は, 回ごとの交感神経ブ P ヅク効果も長期効 果もゆっくり出現することである. またブ U ヅ クでは施行側のみに交感神経遮断の徴候 榲度上昇 ) が認め ( 皮膚 られるのに対し, SL では両 側性に認められることが多い, この理由につい ては今だ明確ではないが, 視床等へ えられてい る d V. 作用 機序 t IE ) の影響が考 直線偏光近赤外線による疼痛治療における作 垠機序については低出力レーザーと同じと考え られているが, 本器ではその熱作用も鎮痛に関 ど安全であるこ とである. 患考にやさしい医療 がさけばれ, また高齢化社会も迎えてこのよう な長所をもつ治療器が普及してきたことは当然 のことと思われる, また, その効果発現は穏や かであるため, 西洋医学に慣れた医師からは効 果を疑問視されるこ ともあるが, 効果の現われ かたを理解すると, その効果は予想以 L で ある ことに気づくはずである. われわれのベインク リ = ックでも選択された治療方法における光線 療法の占める割合は 1992 年には 10 毎程度であっ たが現在では 50% を越えた. 今後, 領域におい たい. 疼痛治療の て無くてはならない治療器と結論し 文 1) 近藤宏明 直線偏光近赤外線治療器の紹介, ベ インクリ = ヅク,18 903 907,1997. 2) 菊池真 ; レーザー治療最近の進歩 波利井清 糸己 1 吾左修, 克誠广 1 } f, 棄京,1997,Pp 18 21. 3 ) 山田英明 レーザー & オブチクス カ イ ド, 日本 メ レス グリオ社, 蓑東,1986,p276. の御! 子柴憲彦, 佐藤俊, 益チ信郎, 他 偏光し た近赤外発光ダイオ ド光による創傷治癒効果の基礎的研究, 日本レーザー医学会誌,6 179. 185,1986. 献 5) 卜 {1 口喜 Nli, 黒ナ ilr 芝望, プ ( 原丁 IJ,f 曳 倉 [ 傷治癒 促進に対する光の偏光特性による照射効果. 口 本レーザー医学会誌,7169 75,1987, 一 571
工 (12 ) 医器学 Vol.68,No.11 ( 1998 ) 6) ill 本泰久, 伊藤晴美, 佐藤俊一, 他 創傷治癒 促進に対する光の偏光特性による照射効果 第 2 報. 日本レーザー医学会誌, 8 249 255, 1987. 7) 佐藤のり T ; 直線偏光近赤外線療法の臨床. ペ インクリー = ヅク,18 9 }9 915,1997. 8 ) 大塚浩司, 大久保和章, 今井真, 他 星状神 経近傍へ の直線偏光期赤外線照射によるレイノ ー現象の軽減. 麻酔,41 1814 1817,1992. 9) 吉澤明孝, 峯島孝雄, 関誠, 他 低出力レー ザー, 直線偏光近赤外線による星状神経節近傍 ev への照射効果について. 理学診療,5 13 18, 1994. 10) 吉澤明孝, 峯島孝雄 直線偏光近赤外線による痛みの棡御一星状神経節近 ee への照射効熟こついて, 骨 関節! 靱帯,7 663 668,1994. 11) 森田秀樹, 他レーザーの生体作用. 図説半導ーザーと病みの治療, 劒物修編集 Medi 体レ cal View, 東京,1996,PP 24 65. 12) 河合正仁, 土屋喜由 低出力レーザーによる宋梢感覚神経伝導の遮断, ペインクリニック, 16 533 539,1995. 一. 572.