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三相交流電力の電流波形の例です 三相それぞれの電流 (Phase A Phase B Phase C) は 互いに位相が 120 度ずつずれた正弦波カーブを描きます このため ある任意の時刻に注目すると その瞬間における三相の電流値の総和は必ずゼロになります これが三相交流の特徴です 三相交流では 三相それぞれに接続する負荷が等価であれば ( いわゆる平衡負荷の状態であれば ) ある任意の時刻における三相の電流値の総和は常にゼロになります そのため 閉回路における電流帰還経路 ( 帰路 ) に電流が流れません 従って 単相交流では不可欠な帰路用の電線が三相交流では不要になり 電線が合計 3 本で済みます すなわち三相交流方式を採用すれば 送電用と帰路用に 2 本の電線が必要な単相交流システムを複数組み合わせる方式に比べて 同じ電力を伝送する場合に電線の使用量を低減できます これが 冒頭で述べたように 世界各国で現在の発電 / 送電システムに三相交流方式が標準的に採用されている理由です 三相交流方式にはこれ以外にもメリットがあります 例えば 前述の通り 平衡負荷であれば電圧と電流それぞれについて三相の瞬間的な総和が常にゼロになるため 電力に脈動が発生しません 従って 単相モータとは異なりトルクの脈動がなく 一定のトルクでモータを駆動できます 一般に 電力を使用するときは何らかの負荷を接続する必要があります 三相交流方式では 三相それぞれに等価な負荷を接続した いわゆる平衡負荷と呼ぶ状態が理想的です 三相の電源を結線する代表的な方法と しては Y( ワイ ) 結線 や ( デルタ ) 結線 があります 1 つ目の Y 結線は 三相それぞれに等価な負荷を接続し 各負荷と各電源をつなぐ帰路側の 3 本の電線を共通化して 1 本にまとめた構成です この帰路側の電線を中性線と呼びます このように帰路側の電線を共通化できるのは 先に説明したように 三相交流では各相それぞれの電流の位相が互いに 120 度ずつずれていて三相の電流値の総和が常にゼロになるため 帰路に電流が流れないからです このように結線した状態をフェザー図に表すと 下図のように Y 字型に見えます これが Y 結線の名称の由来です なお この形状は星 ( スター ) のようにも見えるので Y 結線をスター結線と呼ぶこともあります Y 結線の三相交流電源の電圧をフェザー図で表しました 三相 (Phase A Phase B Phase C) の交流電源と各負荷をつなぐ送電用電線 (Wire A Wire B Wire C) の電圧 (Voa Vob Voc) と 三相それぞれの電源のもう一端と負荷のもう一端を接続する 中性線と呼ばれる共通の電線 (Neutral Wire) の電圧 (0) をベクトルで示しています 三相交流では 三相の位相が 120 度ずつずれているため Y 結線時に 3 つの負荷が等価 ( 平衡負荷 ) であれば 中性線には電流が流れません 3 つの負荷が等価でない ( 不平衡負荷 ) 状態にも対応できますが 中性線に電 ni.com/greenengineering/ja 4

流が流れるため注意が必要です 理想的な平衡負荷の場合は 中性線を取り除いても影響がありません そのようにすれば 先の説明のように 電線は送電用の 3 本だけで済みます 2 つ目の 結線は 三相が三角型になるように接続します この 結線では 中性線はありません このため 負荷の平衡を確保することが不可欠です さてここで 電力を表現する単位について整理しておきましょう 電力の単位は W( ワット ) です 大きさによっては k( キロ ) や M( メガ ) などの接頭辞を付けた kw( キロワット ) や MW( メガワット ) も使われます 電力は 電圧に電流の流れが伴った際に発生します 1 W は 1 V の電圧をかけて 1 A の電流が流れたときに生じる電力に相当します ただし W( ワット ) は単位時間当たりの電力の大きさを示す単位ですから 電力をある時間にわたって投入し続けた場合の仕事量を表現するには 別の単位を導入しなければなりません 仕事量は 電力の値に電力を投入した時間を乗じることで求められ 通常は kwh( キロワット時 ) という単位で表します 交流電力システムでは 電力や仕事量に加えて 力率 という概念を導入する必要があります 交流の場合は 電力のすべてが負荷で有効に消費されるとは限らないからです 電圧と電流の間に位相差があると 負荷で消費されない無駄な電力 ( 無効電力 ) が発生し 負荷で実際に消費される電力 ( 有効電力 ) が減ってしまいます 電圧と電流の値を掛け合わせて求められる見かけ上の電力 ( 皮相電力 ) のうち 有効電力として実際に利用できる電力の割合を表すのが力率です 詳しく説明しましょう 交流電力システムにおける電圧 ( Voltage ) と電流 (Current) の波形です この例では 電圧と電流の位相は完全には一致しておらず 若干の位相差があります このように位相差がある場合は 負荷で消費されない無効電力が発生し 実際に負荷で仕事をする有効電力は減少します 交流電力システムにおいて 電圧と電流それぞれの位相がちょうど同じ ( 位相差がゼロ ) であれば 無効電力は発生しません 皮相電力がすべて負荷で消費されます つまり 皮相電力のうち 100% が有効電力として仕事をします この状態で運転すれば 最大の仕事量が得られるわけです ところが 電圧と電流の位相差が広がるほど 有効電力は減少します 例えば 有効電力は位相差が 15 度のときに皮相電力の 97 % 60 度のときに 50 % まで減ってしまいます 位相差がさらに広がり 90 度に達すると 有効電力は 0 % になります このことから 力率は電圧と電流の位相差を表すパラメータだともいえるでしょう 位相差が広がると 力率が小さくなって無効電力が増大し 有効電力が減少してしまいます このため 力率の低下時に同じ有効電力を負荷に供給し続けるためには 電流量を増やさなければなりません それではなぜ 電圧と電流の位相差によって力率が変化するのでしょうか 下図のように ロープでつながった荷船を引いて 運河沿いの道を歩く馬を想像してみてください 馬は 岸から少し離れて荷船を引かなければなりません そのため馬は 荷船の進行方向に対して斜めの方向に荷船を引く格好になります ですから馬が荷船を引く力は 運河に沿って荷船を前に進める力の成分だけでなく 荷船を岸に引き寄せる力の成分にも分散されてしまいます 馬がロープでつながった荷船を引きながら運河沿いの道を歩いています このとき馬が荷船を引く力 (Apparent Power) は 2 つの成分からなり 1 つは本来の目的である 荷船を前に進める ことに有効に使われる力 (Active Power) で もう 1 つは本来の目的ではない 荷船を岸に引き寄せる ことに無駄に費やされてしまう力 (Reactive Power) です ni.com/greenengineering/ja 5

(1) 進み力率と遅れ力率 力率が低いと 電力事業者はある一定の有効電力を供給するために 力率が高い場合に比べて大きな電流を流さなければなりません 発電設備の電流供給能力を高める必要があり 設備投資が膨らみます この余剰なコストは 電力の需要家である工場側も負担する必要があります 実際に電力事業者は 工場に対して力率に応じた料金を課すという仕組みを採用しています ここで 馬が荷船を引く力を交流電力システムにおける皮相電力だと見なせば 荷船を前に進める力の成分が有効電力 荷船を岸に引き寄せる力の成分が無効電力に相当します 馬と運河との距離が近くなれば 馬と荷船をつなぐロープの角度が小さくなり 皮相電力のうち有効電力の占める割合が増加します これは 力率が上昇することに相当します なお皮相電力と有効電力 無効電力はいずれも 電力 であることに変わりはないのですが 単位については通常それぞれ異なるものを使います 具体的には 皮相電力は VA( ボルトアンペア ) 有効電力は W( ワット ) 無効電力は var( バール ) で表します 電力品質を低下させる現象 ここからは 交流電力の品質に影響を与えるさまざまな現象のうち 発生頻度が特に高い 3 つを取り上げて説明します 具体的には (1) 進み力率 / 遅れ力率 (2) サグ / スウェル / 停電 (3) 高調波の 3 つです 現在 産業分野の工場のほとんどで自動化が進んでおり コンピュータ化された高精度の製造装置や通信装置が導入されています こうした装置は いずれもグラウンド電位を基準にして動作し 装置内部の処理や装置同士の接続を実現しています このため装置ごとにグラウンド電位が異なったり 各装置に供給される電力の品質が低かったりすると 工場全体の運営に悪影響が発生しかねません 電力品質に関する問題は 電力事業者側に原因があると考えられがちですが 実際には多くの場合 工場側に原因があります 工場側では 誘導性負荷あるいは容量性負荷によって 力率が低下 ( 電圧と電流の位相差が拡大 ) します モータなどの誘導性負荷の場合 電圧の位相に対する電流の位相の遅れが発生して 両者の位相差が広がります 反対に容量性負荷の場合は 電圧に対して電流が進むことで位相差が広がります 平均的な工場では総電力の 80 % がモータの駆動に消費されているため 遅れ力率 が発生しやすい傾向にあります この遅れ力率を補償するため 一般には工場側で容量性負荷として機能するコンデンサを設置します 電流の位相を進めることで力率を補償することから これを進相コンデンサと呼びます 前述のように力率によって電気料金が変わるため こうして力率を改善すれば電気料金を削減することが可能です (2) サグ / スウェル / 停電 電圧が変動し 所定の値から外れてしまう現象にも注意が必要です こうした現象には サグ ( 瞬時電圧低下 瞬低 ) とスウェル ( 瞬時電圧上昇 ) 停電の 3 つがあります 以下に詳しく説明します なお一般に このように交流電力の品質を評価する際には 電圧の値は実効値 (rms 値 ) で表現します サグは 比較的短い期間に電圧が低下し 正常時の 90 % 以下に達する現象です ただし 公称電圧の 10 % を下回ることはありません スウェルは 比較的短い期間に電圧が上昇し 正常時の 110 % 以上に達する現象を指します 停電は 比較的長い期間にわたって 電圧が公称電圧の 10 % 以下に低下する現象です ni.com/greenengineering/ja 6

サグは 上記の 3 つの現象のうち 最も高い頻度で発生します 通常 サグの原因は電力事業者側ではなく 工場側にあります 例えば 負荷の変動や配線の不備などが原因になり得るでしょう より具体的には 電気モータの始動が挙げられます モータの始動時には 非常に大きな突入電流が発生するからです 定常動作時に流れる電流に比べて 6~10 倍に達する場合もあります スウェルは一般に 負荷が急速に低下した場合に発生します 例えば 電熱器の電源を遮断したときなどです 停電は 多くの場合 何らかの原因で故障保護機能が働き 回路遮断器やヒューズが動作することで発生します また 電線の断絶が原因になることもあります サグやスウェルの状態が 3 分以上続く場合は それぞれ持続性低電圧状態 持続性過電圧状態と呼びます 持続性低電圧状態 ( ブラウンアウトとも呼びます ) は 変圧器のタップ設定が不適切な場合や 電力系統側の供給に問題がある場合に発生します サグや停電が起こると 高精度の電子装置やコンピュータ プロセス装置などの電源が遮断され 工場の操業に影響が生じる危険性もあります (3) 高調波 電圧や電流の波形というと 50 Hz や 60 Hz のきれいな正弦波を思い浮かべてしまうかもしれません しかし実際には 正弦波である 50 Hz や 60 Hz の基本波に高調波が重畳し 波形が歪んでいる可能性があります 高調波とは 基本波の周波数の倍数に当たる周波数成分です 例えば基本波が 60 Hz の場合は 高調波は 120 Hz 180 Hz 240 Hz になります 電力品質を低下させる高調波は どのような原因で発生するのでしょうか 通常は 電流を非線形な波形で引き込む装置が原因になります コンピュータ化された製造装置や通信装置といった最新の装置は 内部回路の電源としてスイッチング方式の電圧コンバータを備えています こうした電圧コンバータは スイッチング周期ごとに電流を引き込み その電流波形は短いパルス状になりま す 従ってこうした装置は 電力供給側からは非正弦波状の負荷に見えてしまいます このほかにも 蛍光灯のようにアーク放電を利用する各種装置や デジタル IC 電子部品など さまざまな種類の非線形デバイスによって 波形異常が生じたり 電力品質の深刻な劣化が引き起こされたりする危険性があります これらが電力を非線形に引き込むと 電力系統に高調波が発生し 系統に設置した配電用変圧器が過熱しかねません Y 結線を採用した交流電力システムでは こうした高調波によって中性線上に電流が流れます 先に説明した通り 理想的な平衡負荷の三相電力システムでは 高調波が発生していなければ中性線上に電流が流れることはありません 三相の電流が互いに打ち消しあうからです ところが非線形デバイスによって高調波が発生すると三相の電流値の総和がゼロにならなくなり 中性線上に電流が流れてしまいます 三相電力システムは 特に 3 の倍数の高調波 (3 次高調波 6 次高調波 9 次高調波 ) の影響を受けやすいため注意が必要です これは これらの 3 の倍数の高調波は三相ともに同位相で発生するため 互いに足し合わされて振幅が大きくなってしまうからです 三相電力システムの単相 (Phase A) の電流波形です 高調波が発生しており 波形が歪んでいることが読み取れます 三相それぞれ (Phase A Phase B Phase C) と 中性線 ni.com/greenengineering/ja 7

(Neutral) の電流波形を示しました 中性線に流れる 3 次 高調波の電流振幅が 三相に流れる電流振幅よりも最も 大きいことが分かります こうして中性線に大きな電流が流れると 回路や遮断器 変圧器が過負荷の状態に陥る危険があります こうした事態を防ぐため 場合によっては電力調整装置を設置したり 中性線の本数を 2 本に増やしたりする必要があるでしょう まとめ 電力品質の基本的な評価は 各相の電圧と電流を監視します さらに 不平衡負荷や高調波の発生が懸念される場合は 中性線上の電圧と電流も監視します 一方 電力量の計測における基本的な項目は 三相それぞれの電圧および電流の実効値と 各相の力率です 電力品質監視システムと電力計測システムを導入すれば 工場の予知保全を実現できるだけでなく エネルギー管理やコスト管理 品質制御が可能になります ni.com/greenengineering/ja 8

交流電力回路の測定技術を学ぶ 電流 電圧 位相角の測り方 概要 本稿では 交流電力回路の電力品質を評価したり 交流電力回路から負荷回路への供給電力量をモニタしたりするための測定技術を解説します まず 電流検出に使うトランス ( カレント トランス ) について 品種ごとの特徴や 使用上の注意点について述べます 次に 交流電力回路の評価に必要な測定項目を説明します 最後に 三相交流方式の電力回路を対象にした測定システムの推奨構成を示します ンス と呼ばれ 電流の大きさを検出するセンサとして機能します このほか場合によっては カレント トランスを内蔵し その出力を計装用信号に変換する機能を備えた変換器 ( トランスデューサ ) を利用することもあります これらを使えば 電力回路を流れる大電流を 測定システムが扱える比較的小さな信号に置き換えて取り出せます 大電流測定向けの電流センサも ほかの分野のセンサと同様に さまざまな用途に合わせて豊富な品種が市販されています カレント トランスとトランスデューサで安全性を確保 大電流を扱う電力回路を実験室や製造ラインで安全に測定するためには 一般的な信号集録とは異なる数多くの課題に対処しなければなりません 一般的な電流測定であれば 対象の回路内に値の小さな抵抗器を挿入し その両端の電圧降下を測定するという手法が使えます ところが大電流の電力回路では こうした手法を適用できない可能性が高いですし 場合によっては危険を伴うこともあります デジタル マルチメータなどの汎用測定器を対象の回路に直接つなぐ手法はどうでしょう 数 A の電流であれば測定可能ですが 通常こうした汎用測定器は測定データの記録容量が小さく 長時間にわたって測定を繰り返してデータを蓄積するといった使い方はできません 加えて 機器の損傷や測定作業者のけがを防止するために 細心の注意が必要です 何よりも このように対象回路に測定器を直接つなぐ手法で安全に測れる電流は比較的小さいので はるかに大きな電流を測定する用途には対応できません そこで 大電流を安全に測定するために 通常は大電流測定専用のトランスを使います これは カレント トラ 図 1: 切り欠き部を有するトロイダル コアをカレント トランスとして使った トランスデューサの模式図です 1 次導体に電流 (Input Current) が流れると磁界が発生するので ホール IC (Hall IC) で磁界の強度を検出します その後 ホール IC の出力信号を後段の増幅器で大きくしてから外部に出力する仕組みです カレント トランスはコア構造の違いで 2 種類 カレント トランスは コア構造の違いによって スプリット コア型 と ソリッド コア型 の 2 種類に大きく分けられます いずれのコアも 外形が円形や四角形の環状である点は同じですが スプリット型が環状のコアの一部を分割して取り外せる構造を採るのに対して ソリッド型はそうした構造を備えていません それぞれに構造に起因した利害得失があるので 用途に応じて適した種類を選ぶべきでしょう 具体的には 被測定回路の電流を測定す ni.com/greenengineering/ja 9

ni.com/greenengineering/ja 10 るときに 実際の測定対象である導線にカレント トランスを取り付ける際の実装容易性や コスト 検出精度などに違いがあります まず実装容易性です カレント トランスはコア構造によらず 次のような前提がありますので先に確認しておきましょう すなわちカレント トランスを使う際には 上の図 1 で示したように 電流測定の対象となる導線が環状のコアの内側を通るように配置しなければなりません あるいは 必要に応じて導線をコアに巻きつけることも可能です そのようにすれば 巻き数に応じて ある大きさの電流を流したときにカレント トランスで取り出せる信号を大きくできます すなわち 検出感度を高められます いずれにしても 測定対象の導線をコアの内側に通すことが不可欠です そこで コア構造によって実装容易性に違いが生じます スプリット型は 前述の通りコアの一部を取り外せるため 測定対象の導線を簡単にコアの内側に通せるという利点があります コアの一部を取り外し 切り欠き部分から導線をコアの内側に通してから 取り外しておいた部分を元に戻せばよいのです これに対しソリッド型は 測定対象の回路の接続をいったん外して 測定対象の導線をコアに通してから また回路を接続し直す必要があります 従って 既存の電力回路にカレント トランスを取り付ける場合は スプリット型が適しています ソリッド型では 回路を切断したり再配線したりする作業が発生し 余剰なコストが掛かります しかもこのコストは通常 カレント トランス自体の価格よりもかなり大きくなってしまいます このため カレント トランスそのものの価格を比べるとスプリット型の方がソリッド型よりも高いのですが 取り付け作業に要するコストも合わせて考えると スプリット型の方が総コストを低く抑えられる可能性があります ただし 一般にカレント トランスを同じ価格帯の品種で比較すると ソリッド型はスプリット型に比べて電流検出精度が高いというメリットがあります このため 極めて高い精度を必要とする用途では ソリッド型が適しているといえるでしょう プリット コア型 : 価格は高いものの取り付けが簡単ソリッド コア型 : 取り付けの手間は大きいものの安価かつ高精度図 2 カレント トランスの製品例測定器との接続は電流センサの出力形式に測定器との接続は電流センサの出力形式に測定器との接続は電流センサの出力形式に測定器との接続は電流センサの出力形式に注意注意注意注意カレント トランスやトランスデューサなどの電流センサは 品種によって出力形式が異なります このため測定システムに電流センサを組み合わせる際には 十分に注意してください 測定器が対応できないようなセンサを接続したり センサの接続方法を誤ったりすると 測定器だけでなくセンサ自体も損傷を受ける可能性があります 場合によっては 作業者が危険にさらされる恐れもあります 購入を検討しているセンサの品種や そのセンサを測定器に正しく接続する方法を把握しておくことが極めて重要です 先ほどは カレント トランスをコア構造の違いによって分類しました 今後は 出力形式の違いによって分けてみ

ましょう 出力形式に注目した場合も やはり大きく 2 種類に分けられます すなわち 電圧出力品と電流出力品です 以下に それぞれについて詳しく説明します 電圧出力品は 測定対象の導線に流れる電流の大きさに比例した電圧信号を出力します 高精度の負荷抵抗器を内蔵しており カレント トランスが検出した電流信号をこの抵抗器で電圧信号に変換してから出力する仕組みです こうした品種では通常 電流の検出感度を V/A ( ボルト / アンペア ) の単位で表します 例えば 0.1 V/A といった具合で この例では測定対象の導線に 1 A の電流が流れるとカレント トランスの出力に 0.1 V の電圧信号が出力されることになります このような電圧出力品は 想定される出力電圧が測定器側の最大許容入力値を超えない限り ほとんどの標準的な測定器に接続できます 出力の電圧信号はエネルギーが低い ( 振幅が小さい ) ので 電流センサに損傷を与えることはなく 測定器への取り付け / 取り外しも安全です ただし 信号出力が低エネルギーであるがゆえに 干渉や信号劣化が生じやすいという弱点があります このためセンサと測定器の間を長いリード線で接続する用途では 電圧出力品は必ずしも最適とは限りません 電流出力品は 測定対象の導線に流れる電流と波形が同じで振幅が小さい電流信号を出力します 電流の検出感度は 例えば 500:5 といった具合に表現し この例では 測定対象の導線に交流 500 A(500 AAC) が流れると カレント トランスからは交流 5 A(5 AAC) の電流信号が出力されます 電流出力品は通常 公称で交流 5 A(5 AAC) もしくは交流 1 A(1 AAC) の信号を出力するように設計されています このため ほとんどの標準的な測定器は 直接は接続できません 電流入力に対応していない測定器と組み合わせて使う場合は 電流を電圧に変換する負荷抵抗を外付けする必要があります そ 電流出力品は 出力に高エネルギーの信号が現れる場合があり 取り扱いを誤ると安全面において重大な問題が生じかねないので注意してください 具体的には 測定対象の導線に電流が流れている間は 必ず出力を終端した状態にしておく必要があります 決して開放状態にしてはいけません 通電中に出力が開放状態になると 出力に極めて高い電圧が発生し 電流センサが回復不能な損傷を受けることになります 従って 電流出力端子には 開放状態を作り出す可能性があるヒューズなどの素子を取り付けてはいけません さて 電力回路を評価するためには 電流と電圧の実効値 (rms 値 ) やピーク ツー ピーク値を求めたり 電力 電流と電圧の位相角 力率などを調べたりする必要があります ただし 電流検出の基本機能のみを備えた電流センサやカレント トランスは それ自体でこれらの特性を求めることはできません ですから もしセンサ単体でこれらの特性を調べる必要があれば 高度な機能を備えた比較的高価なセンサを選択してください ただし 基本機能しか備えていない電流センサやカレント トランスでも 出力信号をパソコンに取り込んでソフトウエア ツールで処理すれば これらの特性を算出することが可能です 実際に 電力回路を組み込む製品の設計や製造に使う測定システムでは 設計や検証に関する要件が製品ごとに異なるため ソフトウエアを使って算出する手法が好まれています 製品によってソフトウエアを書き換えることで 測定システムの構成を変更せずにさまざまな評価に対応できるからです カレント トランスやトランスデューサのベンダを紹介 以下に挙げる 3 社は カレント トランスやトランスデューサを取り扱っています の場合 信号品質 ( シグナル インテグリティ ) を確保するため 負荷抵抗は可能な限り測定器の近くに配置します 測定器が電圧入力と電流入力のどちらに対応しているか分からない場合は 測定器のメーカに問い合わせて確認してください ni.com/greenengineering/ja 11

MAGNELAB( マグネラボ社 ) 電力のベクトルが作る角 (φ) が 電圧と電流の位相差に相当 します 皮相電力の大きさが一定の場合 電圧と電流の位相差が広がると ( 位相角 φ が大きくなると ) 無効電力が増大して有効電力が減少してしまいます 電圧の測定手法 CR Magnetics(CR マグネティクス社 ) LEM( レム社 ) 電力回路の評価に必要な測定 交流電力の基本的な概念を下の図 3 に示しました この図は パワー トライアングル ( 電力三角形 ) と呼ばれています (1) 電圧 (2) 電流 (3) 電圧と電流の位相角の 3 つの項目を測定すれば この図中のすべての要素を計算によって求めることが可能です ここからは これら 3 つの項目を測定するためのシステム構成や注意点などについて解説していきます まずは 交流電力の電圧を測定する手法について説明しましょう 日本ナショナルインスツルメンツ ( 以下 日本 NI) は 電圧測定に向けて アナログ入力のデータ集録モジュールを豊富に取りそろえています その中で交流電力の測定に適した品種としては 入力電圧範囲が ±10 V の NI 9239 同 ±60 V の NI 9229 同 300 Vrms の NI 9225 をお勧めします しかもこれら 3 品種は 電圧と電流の位相角を求める際に不可欠な 同期集録に対応可能です さらに 安全に向けて カテゴリ II に準拠した 600 Vrms のチャンネル間絶縁を確保しています こうしたアナログ入力のデータ集録モジュールは 測定対象の電力回路に直接接続することが可能で 簡単に電圧を測定できます ただし 測定対象の電圧が 300 Vrms を上回る場合は工夫が必要です つまり 大電流測定にカレント トランスを利用するのと同様に 大電圧測定では電圧検出用のトランス ( パワー トランス ) を使います パワー トランスによって比較的振幅の小さい電圧信号として取り出した上で データ集録モジュールに入力して測定するわけです 図 4: アナログ入力のデータ集録モジュール NI 9225 図 3: 皮相電力 (Apparent Power 単位は VA) 無効電力 電圧入力範囲は最大 300Vrms です (Reactive Power 単位は var) 有効電力 (Real Power 単位 は W) のベクトルからなる 電力三角形 です 皮相電力と有効 ni.com/greenengineering/ja 12

電流の測定手法 次は 電流の測定手法です 電流センサの多くは 電圧出力を採用しています そこで日本 NI は 大電流測定に向けてこうした電圧出力型電流センサの出力信号を取り込めるデータ集録モジュールを用意し 複数の品種を提供しています 10 V 出力のセンサに対応する品種としては NI 9239 があります この品種は 先に電圧測定向けとして紹介した NI 9225 と同じアーキテクチャを採用しており 2 つのモジュールで同期集録が可能です 詳しくは後述しますが これらの 2 品種を組み合わせれば 時間同期をとりながら電圧と電流を測定できます 電圧と電流の位相差を高い精度で求められるので 交流電力の測定に最適だといえるでしょう 電流測定に向けたアナログ入力のデータ集録モジュールは 使用する電流センサと 測定対象の回路で発生すると想定される最大電流に応じて 適切な品種を選択します 日本 NI が提供するデータ集録モジュールは 電圧絶縁と耐電圧に関する業界標準規格すべてに準拠しています しかし モジュールの選択を誤れば センサの出力電圧がモジュールの入力電圧範囲を超えた際に測定値が飽和したり モジュールが損傷を受けたりする危険性があります 特に 産業機器では注意が必要です 起動時に大きな過渡電流が発生し その大きさが通常動作時の 4~10 倍に達することも珍しくありません センサの最大出力電圧を見積もる際には こうした過渡現象も考慮すべきです データ集録モジュールの購入を検討するときには 品種ごとのデータシートなどを参照し 想定する用途に向けて適切な仕様を備えているかどうかを確認してください 位相角の測定手法 最後は 電圧と電流の位相角の測定手法です 位相角を測定するためには 電圧と電流それぞれに対応する測定チャンネル間の同期をとる必要があります 例えば データ集録モジュールとして電圧測定に NI 9225 電流測定に NI 9239 を選択した場合 NI CompactDAQ や NI CompactRIO といったシャーシに両モジュールを 挿入することで モジュール間の同期を確保できます これらのシャーシは 日本 NI の各種データ集録モジュールを搭載することで ユーザが任意の測定システムを構築できるハードウエア プラットフォームです これらのシャーシに挿入したモジュールには バックプレーンを介して単一のクロック信号が供給される仕組みです このため すべてのモジュールの測定チャンネルは 同じクロック タイミングで入力信号をサンプリングすることが可能です このようにして電圧と電流の測定データを取得したら ソフトウエア ツールを使って位相角を計算します 多くの測定アプリケーション ソフトウエアに 位相角を求める機能が搭載されています 最も手軽なのは NI LabVIEW の電力測定向けパレット Electrical Power Measurement を入手して その中の EPM_Phasor.vi という関数(VI) を利用する方法です このパレットは 技術資料 Electrical Power Measurement Tutorial からダウンロード可能です なお 位相に関するさらに詳しい情報については 技術資料 Phase Modulation をご覧ください 図 5:LabVIEW の電力測定向けパレットが備える関数の 1 つです 電圧と電流の測定データを与えると 電圧と電流それぞれの実効値 (rms 値 ) と 両者の位相角の値を計算します 図 6:LabVIEW の電力測定向けパレットに用意された フェザー インジケータ です 三相電力回路に対応する測定システムの推奨構成 ここでは 単相二線式のほか 単相三線式や三相三線 ni.com/greenengineering/ja 13

式の交流電力回路の測定に対応可能なシステム構成を紹介します データ集録モジュールの統合用シャーシ NI CompactDAQ のシャーシ(cDAQ-9172) もしくは CompactRIO のシャーシ( 多数のオプションあり ) のいずれかを 1 個 電圧測定用アナログ入力データ集録モジュール NI 9225 (300 Vrms 対応 ) を 1 個 電流測定用アナログ入力データ集録モジュール NI 9225 (300 Vrms 対応 ) NI 9229 (60 Vpp 対応 ) NI 9239 (10 Vpp 対応 ) のいずれかを 1 個 電流センサ各相に1 個 つまり三相の場合は 3 個アナログ入力のデータ集録モジュールである NI 9225 LabVIEW 用の電力計測パレットのダウンロード https://lumen.ni.com/nicif/us/codelvelectpwr/content.xhtml 最後に このリソースキットが備える基本関数の一部を紹介します 電圧と電流のフェザー計算 ( 電圧と電流それぞれの実効値 (rms 値 ) と 両者の位相角 ) フェザー図 Power Data.vi 有効電力 (W) 皮相電力 (VA) 無効電力 (var) 力率 と NI 9229 NI 9239 は いずれも分解能が 24 ビット A-D 変換器を内蔵しており 1 チャンネル当たり 50 ks/ 秒のサンプリング速度で入力信号を捕捉します このサンプリング速度は 過渡現象や高調波を計算によって求めたい場合には特に重要です サンプリング速度が低いと 過渡現象や高調波を正確に求めることができません また これらのモジュールは 複数のチャンネルで1 個の A-D 変換器を共有するアーキテクチャではなく チャンネルごとに1 個の A-D 変換器を搭載するアーキテクチャを採用しています ですから 全チャンネルで時差なく 同じタイミングで入力信号をサンプリングすることが可能です さらに 前述の通り シャーシのバックプレーンを介して全チャンネルに同じクロック信号が供給されるため 各モジュールの同期が自動的に確保されます これは ある1 本の電線について電圧と電流の位相角を測定する際に 非常に有用です ソフトウエア処理で柔軟性 拡張性の高い測定システムを実現 この技術資料で説明した 電力に関する基本的な関数はすべて Electrical Power Measurements リソースキットに収録されています ni.com/greenengineering/ja 14

高電圧測定に不可欠な絶縁機能 原理と実例を詳説 概要 本稿は 計測の基本 シリーズの 1 本で 高電圧測定とそれに不可欠な絶縁について取り上げています 高電圧測定を実施する際には さまざまな検討が必要です 使用するデータ集録 (DAQ) 装置を選ぶときには 第一にその測定システムの安全性を考慮しなければなりません 高電圧測定では ひとつ間違えればデータ集録装置や被測定物測だけでなく 測定作業者やその周囲の人々にも危険が及ぶ可能性があるからです 絶縁を備えた測定器を使って 高電圧源と作業者との間に絶縁バリアを設けることで 測定システム全体の安全性を確保する必要があります なお日本 NI の計測の基礎シリーズは 各種の計測アプリケーションについて 理論を解説したり実例を紹介したりしながら詳しく説明する技術資料群です さまざまな計測アプリケーションを 各技術資料で 1 つずつ取り上げています 詳しくは 計測の基礎シリーズの Web ページをご覧ください 絶縁とは? 測定システムの絶縁 ( アイソレーション ) とは システム内の 2 つの領域を 物理的および電気的に分離することを指します 目的によって 電気絶縁 と 安全絶縁 の大きく 2 種類に分類できます 電気絶縁とは グラウンド ポテンシャル ( 接地電位 ) が異なる 2 つの領域をつなぐグラウンド経路を 電気的に断ち切る絶縁です 電気絶縁を施せば 2 つの領域をつなぐグラウンド経路がループ状の閉回路を形成してしまう グラウンド ループと呼ばれる現象を防ぐことができます ( グラウンド ループについては 次の項で詳しく説明します ) さらに絶縁によって DAQ システムが対応可能なコモンモード電圧の範囲を広げられるほか 一方の領域か らグラウンド ポテンシャルが異なるもう一方の領域へと 信号をレベルシフトして受け渡すことができます 安全絶縁とは 人体を傷害から保護し 作業者の安全を確保するための絶縁です 複数の標準規格があり 人体が危険なレベルの電圧に接触しないように絶縁するための仕様をそれぞれ定めています こうした標準規格はこのほか 電気システムの絶縁性能のクラス分けも示しています 作業者が触れる可能性のあるほかの電気システムへ 高電圧や過渡電圧が流出しないように防止する性能についてクラス分けします DAQ システムに絶縁機能を搭載することで (1) グラウンド ループの発生防止と (2) コモンモード電圧の除去 (3) 安全性の確保という 主に 3 つの効果を得ることができます グラウンド ループグラウンド ループは DAQ アプリケーションにおいて最大のノイズ発生源となります 同一回路において 接続された 2 点間でそれぞれのグラウンド電位に差が生じると グラウンド ループが形成され 2 点間に電流が流れます 例えば ある電気システムのグラウンドと そこから最も近くにある建物のグラウンドでも 通常は ± 数 V の電位差があります さらに 近隣で落雷があれば この電位差は数百 V まで 場合によっては数千 V にまで達する可能性があります こうして発生する電位差は そのものが測定に大きな誤差をもたらすこともありますし グラウンド電位差が生じた 2 点間に電流が流れることによって 近接したワイヤに電圧を結合させてしまうこともあります グラウンド ループに起因するこのような誤差は 過渡的に現れたり 周期的に現れたりします 例えば グラウンド ループに 60 Hz の AC( 交流 ) 電力ラインが含まれていると 60 Hz に同期した周期的な電圧誤差が測定結果に現れます ni.com/greenengineering/ja 15

下の図 1 のように 信号源側と その出力信号を受け取る測定システム側でグラウンド電位が異なり グラウンド ループが形成されている場合を考えてみましょう この場合 測定システム側で得た測定結果の値 Vm は 信号源の振幅 Vs と 両グラウンドの電位差 Vg を足し合わせた値になります すなわち Vm=Vs+ Vg です この電位差 Vg は 通常は DC( 直流 ) 電圧ではなく 交流電圧として発生します この結果 測定システムがノイズに汚染されてしまいます 前述のように 電力ラインの周波数成分 (50 Hz や 60 Hz) が測定結果にノイズとして現れることもあります 図 1: 信号源のグラウンド (Source Ground) と測定システムのグラウンド (Measurement System Ground) の間に 電位差 ΔVg が発生しています ΔVg が存在するということは 信号源のグラウンドと測定システムのグラウンドの間に 起電力が Vg の電池を接続したことに等価ですから この系全体のグラウンド経路をたどると 信号源のグラウンド~ 測定システムのグラウンド~ 起電力 Vg の電池 ~ 信号源のグラウンド というループ状の閉回路が形成されていることが分かります このとき測定システムで読み取った値 Vm には 信号源の値 Vs に ΔVg が雑音として重畳されてしまいます このようなグラウンド ループの発生を防ぐには 被測定物 ( 信号源 ) を含む測定系全体で単一のグラウンド電位を基準にするか 絶縁機能を備えた測定器を使用してください 絶縁された測定器を使えば 信号源のグラウンドと測定システムのグラウンドの間の経路を断ち切ることができるため グラウンド ループが発生せず これら電位の異なるグラウンドの間に電流が流れることもありませ ん コモンモード電圧理想的な差動測定システムは プラス (+) 側とマイナス (-) 側の 2 つの入力端子 ( 差動モード ) の間に発生した電位差だけを抽出して測定します この差動モードでの電位差が測定対象の信号になるわけですが 実際には不要なノイズ信号が重畳している可能性があります このノイズ信号は 差動のプラス側とマイナス側の両側に共通に ( 同じ波形で ) 発生します これが コモンモード電圧 と呼ばれる電圧です 理想的な差動測定システムでは コモンモード電圧は完全に除去されるため 測定結果には現れません 前述の通り 差動モードでの電位差だけを検出するため 差動モードでの両側に重畳される電圧が互いに同じであれば プラス側とマイナス側の電位差そのものは変化しないからです しかし 実際の差動測定システムは コモンモード電圧を完全には除去できません このため測定結果には コモンモード電圧の影響が現れます 差動測定システムのコモンモード電圧除去性能は コモンモード電圧範囲 や コモンモード電圧除去比 (CMRR) といった指標で表されます コモンモード電圧範囲は プラス側とマイナス側の両入力端子に印加可能な電圧の最大許容振幅です 電圧振幅の値は 差動測定システムのグラウンドを基準電位として規定します この範囲を超える電圧が入力端子に印加されると 測定結果に誤差が生じるだけでなく 差動測定システムのボード上の電子部品が損傷を受けることもあります コモンモード電圧除去比 (CMRR) は コモンモード電圧を除去する能力を表しています 差動アンプ ( 増幅器 ) では コモンモード電圧除去比が高いほど コモンモード電圧を除去する能力が高いことを意味します 次式のように コモンモード利得と差動利得の比を求めて対数をとることで計算でき 単位は db( デシベル ) です CMRR(dB)=20log( 差動利得 / コモンモード利得 ) コモンモード電圧の測定回路を下の図 2 に示しました ni.com/greenengineering/ja 16

V-=Vcm として 20 log (Vcm/Vout) でコモンモード電 圧除去比 (db 値 ) を求められます 試験電圧 対象とする電気システムを試験する際に 適合性を 保証するために準拠すべき電圧値です 過渡電圧 ( 過電圧 ) 想定される電圧レベルを上回る パルス状やスパイ ク状の電圧のことです 図 2 CMRR の測定回路差動入力の計装アンプ (Instrumentation Amplifier) の入出力電圧の値から CMRR(dB 値 )=20log(Vcm/Vout) と求められます ただし V-=Vcm とします 図 2 のような非絶縁の差動測定システムでは 入力と出力の間に電気的な経路が存在します このため 入力可能なコモンモード電圧の最大値は アンプの電気的な特性によって決まってしまいます そこで絶縁アンプを使えば 入出力間の電気的な経路を断ち切ることができ コモンモード電圧除去比を大幅に高めることが可能になります 絶縁に関する検討事項 ここではまず 絶縁システムを構成する際に知っておくべき用語を説明します 次に 絶縁の実現手法や 絶縁に関する安全規格について詳しく解説します 設置カテゴリ ( 過電圧カテゴリ ) 対象とする電気システムに過渡電圧が印加された際に 安全に運用できる最大値 ( インパルス耐電圧 ) を規定した等級です この設置カテゴリについては 後ほどさらに詳しく説明します 動作電圧対象とする電気システムを 絶縁を損なうことなく安全に連続運用できる最大動作電圧です 破壊電圧電子部品の絶縁が破壊されてしまう電圧値のことです 破壊電圧は 動作電圧をはるかに上回るレベルであり 通常は過渡電圧よりも高い値になります 装置を破壊電圧に近い状態で長時間作動させると 装置の安全性は保証されません 絶縁の種類 絶縁の実現手法として最も基本的なのは 絶縁する 2 つの領域の間に物理的なバリアを形成するという手法です 例えば 2 つの領域の間に絶縁体を挟み込んだり エア ギャップを設けたりするなどの方法で 電気的に分離された状態を作り出します ただし このような物理的な絶縁を施してしまうと 2 つの領域の間で電気的な信号をやりとりできません 測定システムでは 絶縁を確保しながらも こうした絶縁バリアを超えて信号を伝送する必要があります そこでデータ集録システムでは 次の 3 つの方式のいずれかを使って 電気的な絶縁を確保しながら 絶縁バリアを超えて信号を受け渡します すなわち (1) 光結合方式 (2) 磁気結合方式 (3) 容量結合方式です 以下に 順番に説明します (1) 光結合方式光結合方式は デジタル信号を伝送する絶縁システムでよく使われています 物理絶縁は通常エア ギャップによって確保し その間を光信号でつなぎます つまり 物理絶縁された 2 つの領域の一方に発光素子 もう一方に受光素子を配置し 両者の間で光信号によって情報を伝達する仕組みです 具体的には 発光素子は 測定した電気信号の大きさに比例する強度の光信号を出力 ni.com/greenengineering/ja 17

し それを絶縁バリアを超えて受光素子が受信して 電 気信号に復元します 図 4 磁気結合方式に使う変圧器 ( トランス ) 1 次側のコイルに電気信号を印加すると その大きさに比例した強度の磁界が発生します 2 次側のコイルでは この磁界を検出することで 結果として 1 次側の電気信号に大きさが比例した電気信号を取り出すことができます 図 3 光結合方式によって信号を受け渡す 光学式絶縁の原理この例では 送信側は赤外線ダイオード (Infrared diode) をオン / オフすることでデジタル変調された光信号を出力します 受信側はその光信号をフォトトランジスタ (Photo-transistor) で検出し デジタル電圧信号に変換して出力します リレー スイッチ NI SCXI-1163 は 光絶縁を施したソリッドステート リレーを 32 チャンネル備えています (2) 磁気結合方式磁気結合方式では エア ギャップやそのほかの非導電性バリアによって電気的に絶縁された 2 つの領域を 変圧器 ( トランス ) を使って磁気的に結合させます 2 つの領域をまたぐように 1 対の導電コイルを配置します この状態で 一方のコイルに電気信号を印加すると 電気信号の大きさに比例した強度の磁界が発生するので もう一方のコイルでそれを検出するという仕組みです (3) 容量結合方式容量結合方式は コンデンサを利用したものです コンデンサの 2 つの電極の間で絶縁を確保します 電極の一方に電気信号を印加すると コンデンサに蓄えられた電荷が移動し 電界の変化を引き起こします この電界の変化量は 印加した電気信号の大きさに比例します このため もう一方の電極で電界の変化を検出することで 絶縁バリアを超えて信号を伝送することが可能です 図 5 コンデンサによる容量結合方式の模式図コンデンサの 2 つの電極の間で 一方の電極に印加する信号の変化を電界の変化としてもう一方の電極に受け渡す仕組みです 絶縁トポロジ 測定システムを構築する際は 測定器が採用する絶縁トポロジを把握しておくことが重要です 絶縁トポロジごとに コストや信号伝送速度などの利害得失が異なるからです ここでは 代表的な絶縁トポロジとして (1) チャンネル間絶縁と (2) バンク絶縁を取り上げ それぞれの特徴を説明します ni.com/greenengineering/ja 18

(1) チャンネル間絶縁チャンネル間絶縁は 最も堅牢性が高い絶縁トポロジです このトポロジでは 複数の測定チャンネルすべてが互いに絶縁されています さらにこれらの測定チャンネルは 測定システム内の非絶縁領域からも絶縁されています このほか チャンネルごとに独立した絶縁型電源を備えており 電源を介した結合はありません 信号伝送速度に関しては アーキテクチャによって異なります 一般に A-D 変換器を測定チャンネルごとに備えた絶縁アンプを採用する測定器の方が すべての測定チャンネルで同時に信号を伝送できるため 高い信号伝送速度が得られます ただし 測定チャンネルの数だけ A-D 変換器が必要になるので コストは比較的高くなってしまいます 一方 下に示す図 6 のように 複数の測定チャンネルをまとめて ( 多重化して )1 個の A-D 変換器で処理するアーキテクチャでは コストは比較的低く抑えられるものの 信号伝送速度は低くなってしまいます チャンネル間絶縁を実現するもう 1 つの方法として すべての測定チャンネルに単一の絶縁型電源から電源を供給する方法があります ただしこの場合は アンプのコモンモード電圧範囲が電源電圧以下に制限されてしまうため注意が必要です ただし フロントエンドにアッテネータ ( 減衰器 ) を挿入すれば この限りではありません (2) バンク絶縁バンク絶縁は 複数のチャンネルを並列化して 1 つのバンクとしてまとめ それらで単一の絶縁アンプを共有する絶縁トポロジです 同一バンク内ではチャンネル間のコモンモード電圧の差を低く抑えられるものの バンクと測定システム内の非絶縁領域との間で コモンモード電圧の差が比較的大きくなってしまう可能性があります このトポロジでは 同一バンク内の測定チャンネルは互いに絶縁されていませんが バンク同士や 各バンクとグラウンドの間は絶縁されています このトポロジは 絶縁アンプと電源がそれぞれ 1 個で済むため 絶縁の確保に費やすコストを低く抑えられます 図 6 チャンネル間絶縁トポロジで 多重化方式のアーキテク チャを採用した測定システムの例赤い矢印で示した部分が互いに絶縁されています すなわち 各測定チャンネルの差動アンプの入出力間と 各測定チャンネル間がいずれも絶縁されています 各差動アンプの絶縁出力側をマルチプレクサで多重してまとめてから 1 個の A-D 変換器ボードに供給してデジタル信号に変換するアーキテクチャを採用しています 図 7 バンク絶縁の例複数の測定チャンネルを並列にまとめてバンクとし それらを単一の絶縁アンプを介して A-D 変換器ボードに接続するトポロジです 安全規格と環境関連規格 データ集録システムを構築する際は 以下の手順に ni.com/greenengineering/ja 19

従って 測定器が安全規格を満たしていることを確認してください 動作絶縁電圧や設置カテゴリなど 使用環境について検討する これらの動作条件や安全性に応じて 適切な絶縁方式を選ぶ 求める精度や 所望の周波数範囲 動作絶縁電圧 想定される過渡電圧に応じて 適切な絶縁方式を選ぶ すべての絶縁バリアが安全な絶縁を確保できるとは限りません たとえ測定器に搭載された電子部品は高い耐電圧の絶縁を確保していても 測定器そのものが高電圧に対する安全規格に準拠しているかどうかは 使用部品ではなく測定器全体の設計で決まります 安全規格は複数あり 人体が危険なレベルの電圧に接触しないように絶縁するための要件をそれぞれ定めています こうした要件は アプリケーションや動作電圧レベルによって変わりますが 通常は 危険電圧を扱う領域と 人が触れる可能性がある回路や部品との間に 二重の絶縁を設けることが規定されています 試験装置や測定器に対する安全規格は 危険電圧レベルや感電の危険性に関する要件だけを定めているわけではありません それらのほかに 環境条件やアクセス容易性 火災の危険性 これらの危険を防止するための使用方法を説明する文書についても規定しています さらに 温度 湿度の変化や 経年劣化 製造プロセスばらつきがあっても絶縁バリアの品質を確実に維持できるように 絶縁装置の構造に関する特有の要件も定めています 高電圧に対応する測定器の安全規格は 欧州委員会 (EC:European Commission) と米国保険業者安全試験所 (UL:Underwriters Laboratories Inc.) がそれぞれ定めています 基本になるのは 安全性の検討を必要とする電圧レベルについて大まかな仕様をまとめた 低電圧指令 (Low Voltage Directive) と呼ばれる文書であり この文書に基づいた個別の安全規格 ( 適合性の認証に使用 することが承認されている規格 ) が約 200 あります 機器メーカに関連がある規格としては EN 61010 が挙げられます この規格は 測定や制御 実験室での使用に向けた電気装置の安全要求 (Safety Requirements for Electrical Equipment for Measurement, Control, and Laboratory Use) を定めています EN 61010 では 30 Vrms もしくは 60 VDC を危険電圧として規定しています さらに こうした高電圧に対する設計要件のほか 可燃性や耐熱性といった 非電気的な安全性に関する制約条件も定めています 機器メーカは CE マークを取得するために EN 61010 に記載された仕様をすべて満たさなければなりません EN 61010 に大変よく似た規格に IEC 1010 と UL 3111 の 2 つがあります これらのうち IEC 1010 は EN 61010 の前身に相当する規格で 国際電気標準会議 (IEC:International Electrotechnical Commission) によって策定されました その後 欧州委員会が IEC 1010 を採用し 名称を EN 61010 に変えたのです UL 3111 もまた IEC 1010 から派生した規格です IEC 1010 を基に UL がいくつか変更を加えて UL 3111 として標準化しました UL が策定したこの規格は 測定器や制御機器 実験器具に向けた既存の安全規格で 要件が比較的緩やかだった UL 1244 を置き換える新規格で 要件は厳しくなっています 機器メーカは UL 3111 に記載された仕様をすべて満たさない限り 新たに設計する機器の UL 認証を取得できません 設置カテゴリ IEC は 想定される過渡電圧の大きさなどに応じて 複数の設置カテゴリ ( 過電圧カテゴリとも呼びます ) を定義しました 高電圧送電ラインから機器に至る系を区分けしており 設置カテゴリごとに過渡電圧 ( 過電圧 ) の減衰量が規定されています この減衰量によって 系の中で発生した過渡電圧が低減されるわけです すなわち 電源コンセントに近ければ近いほど そして高電圧送電ラインから離れれば離れるほど 系の減衰量は増加します ni.com/greenengineering/ja 20

IEC は 過渡現象による過電圧レベルの違いに応じて 4 つの設置カテゴリを設定しています 設置カテゴリ IV:1 次給電系 ( 架空線など ) 設置カテゴリ III: 固定設備 ( ヒューズ盤など ) 設置カテゴリ II: 設置カテゴリ III の固定設備から給電を受ける機器 ( 壁に設置した電源コンセントなど ) 設置カテゴリ I: 過渡現象による過電圧が設計によって十分低いレベルに抑えられている回路に接続するための機器図 8:IEC が定める 4 つの設置カテゴリ 絶縁を必要とする主なアプリケーション ここでは これまでに説明してきたような絶縁機能を備えた測定器を使う 代表的な測定アプリケーションをいくつか紹介します 単相交流向け監視システム 120 VAC/240 VAC の電力測定器による消費電力測定では 電圧と電流の瞬時値を記録します しかし最終的に求めるのは 瞬時電力ではなく ある時間内に消費された電力の平均値や 消費電力量に応じたコストの情報かもしれません 電圧と電流の測定結果をソフトウエア ツールで処理すれば 平均電力の算出をはじめ さまざまな解析が可能になります 高電圧を測定するには 何らかの電圧減衰器を使って 高電圧信号を測定器の入力範囲に収まるように調節しなければなりません また 電流を測定するには 精度の高い抵抗器が必要です 抵抗器による電圧降下を測定すれば オームの法則 (I =V/R) から電流値を計算できます 燃料電池測定システム燃料電池の試験システムでは さまざまな測定を実行します それらの測定の多くは 検出した信号そのもの ( 生の信号 ) を直接 データ集録システムでデジタル化するのではなく 生の信号に何らかの調節 ( シグナル コンディショニング ) を施してから データ集録システムに取り込みます 絶縁が特に重要な役割を果たすのが 燃料電池スタックの試験です 燃料電池では 各セルが生成する電圧は約 1 V にとどまるので セルを多層に重ね合わせるスタック構造によって数 kv と高い出力電圧を実現しています 積層数が多い大型の燃料電池スタックにおいて スタックを構成する各セルの電圧を正確に測定するには 広いコモンモード電圧範囲と 高いコモンモード電圧除去比が必要です 隣接するセルには ほぼ同じコモンモード電圧がかかるため 絶縁トポロジとしてはバンク絶縁を採用できる場合があります 高コモンモード電圧の熱電対測定熱電対の測定では 高いコモンモード電圧がかかる場合があります 一般的なアプリケーションとしては モータに取り付けた熱電対による温度測定や 導電コイル内の温度拡散特性の測定が挙げられます こうした用途では コモンモード電圧が数 V の環境において mv( ミリボルト ) オーダの微小な電圧変化を測定しなければなりません このため コモンモード電圧除去比が高い 絶縁された測定器を使うことが重要です シリアル通信用インタフェース電圧スパイクやノイズが発生しやすい環境で稼動する機器は シリアル通信用インタフェースに絶縁を施して 信頼性を確保することが不可欠です 具体的には POS ネットワークや ATM 銀行業務受け付け機 CNC( コンピューター数値制御 ) 方式の生産装置といった 商業用あるいは産業用のアプリケーションです 絶縁を施すことで 制御システムに障害が及ぶリスクを軽減し システム ni.com/greenengineering/ja 21

の運用を確実に継続できるようにします このほかに絶縁が必要なアプリケーションとしては 工業用プロセス制御装置やファクトリ オートメーション機器 シリアル ネットワーク装置 高速モデム 監視装置 長距離通信装置 プリンタ 遠隔機器制御などが挙げられます NI が提供する絶縁製品 日本 NI は 測定システムや自動制御システムに向けて 絶縁機能を備えた製品を数多く取り揃えています NI SCXI や NI SCC NI FieldPoint などの製品ラインのほか 高電圧リレーやスイッチ デジタル マルチメータ (DMM) などを用意してします これらのほとんどは 測定や制御 実験室での使用に向けた安全規格である IEC 1010-1 と UL 3111-1 に準拠しています 以下に こうした製品を詳しく紹介していきます 高電圧測定と絶縁に向けた SCXI システム NI SCXI ( Signal Conditioning extensions for Instrumentation) は パソコン ベースの測定アプリケーション用に シグナル コンディショニング ( 信号調節 ) 機能と DAQ システムを組み合わせたものです SCXI システムには シールド済みのシャーシが用意されており さまざまなシグナル コンディショニングに対応する入力モジュールと出力モジュールを組み合わせて このシャーシに収納することができます さらに SCXI の入力モジュールには 各種のセンサを直接つないだり さまざまな形式の信号を直接入力したりすることが可能です この SCXI システムは シグナル コンディショニング用のフロントエンドとして パソコンへのプラグインに対応した DAQ デバイスや PCMCIA タイプの DAQ デバイスと組み合わせて利用できます 図 9 シグナル コンディショニング機能とデータ集録機能を備えた SCXI システムの構成例 NI SCXI-1125 は 8 チャンネルの絶縁アンプを備えたアナログ入力モジュールです 二重絶縁タイプで設置カテゴリ II の CE 認証を取得しており チャンネル間と チャンネルとグラウンドの間でいずれも 300 Vrms の動作絶縁電圧を確保しています さらにこのモジュールは アナログ入力チャンネルごとに プログラマブルなゲイン調整機能とローパス フィルタ機能を搭載している上 高電圧の減衰機能を備えた端子台 NI TBX-1316 と組み合わせることで 入力電圧範囲を 1000 VDC まで拡張できます この測定システム構成は ミリボルト (mv) オーダあるいはボルト (V) オーダの電圧入力や 0~20 ma の電流入力 熱電対を対象とした 増幅や絶縁に最適です NI SCXI-1121 と NI SCXI-1122 は 絶縁を必要とする幅広いタイプのセンサや信号入力に向けて設計された 増幅モジュールです NI SCXI-1121 は チャンネルごとに絶縁アンプとフィルタ 励起を備えており それぞれを個別に設定可能です NI SCXI-1122 は マルチプレクサ モジュールで 絶縁アンプとフィルタ 励起を 1 つずつ搭載しており 全チャンネルがこれらを共有しています いずれのモジュールも 250 Vrms の動作絶縁を実現しており 歪みゲージや RTD( 測温抵抗体 ) 熱電対 mv オーダあるいは V オーダの電圧入力 0~20 ma の電流入力に対応しています ni.com/greenengineering/ja 22

しており 入力電圧範囲は ±50 mv~±42 V です モジュール型の信号調節システム SCC シリーズ NI SCC シリーズ は 携帯性に優れたモジュール型のシグナル コンディショニング システムで データ集録モジュール (DAQ デバイス ) である NI M シリーズ や NI E シリーズ そのほかの低価格 DAQ デバイスと組み合 プラグイン型のデータ集録ボード 日本 NI が提供する工業用 DAQ デバイスの NI M シリーズと NI SC シリーズ の PCI 対応 DAQ デバイスと PXI 対応 DAQ デバイスは 高精度な絶縁測定に向けて設計されています 専用の端子台を使って 外部信号を簡単に接続できます わせて使えます さまざまなアナログ入力やデジタル入出力信号を調節可能です モジュール型を採用しているため チャンネルごとに最適な信号調節方法を選択できます 図 11:PCI 準拠の工業用 DAQ デバイス M シリーズ 工業用 M シリーズには 例えば NI PCI-6230 などがあり 60 VDC のバンク絶縁を備えるアナログ入力や アナログ出力 5V TTL デジタル入出力 2 つのカウンタ / タイマを搭載しています アナログ入力はチャンネル数が 8 図 10: シグナル コンディショニング システム NI SCC さまざまなシグナル コンディショニング モジュールを組み合わせることで 任意のフロントエンド システムを構築できます SCC シリーズの NI SCC-A10 は 2 チャンネルを備えたモジュールで 最大 100 V の入力電圧に対応します 各チャンネルにそれぞれ 1/10 の減衰器と 低インピーダ チャンネルで 入力電圧範囲が ±10 V 分解能が 16 ビット サンプリング速度が最大 250 ks/ 秒です これらの DAQ デバイスは M シリーズの基本的な特徴も備えています 例えば キャリブレーション機能を搭載した NI-Mcal や 改良済みの内部信号配線 複数デバイスの同期が可能な RTSI(Real-Time System Integration) ケーブルへの対応などが挙げられます ンス出力の差動計装アンプを搭載しているため DAQ デバイスのデータ取得速度を最大限に高めることが可能です さらに この減衰器は高インピーダンスのバイアス抵抗を備えています このため バイアス抵抗を外付けすることなく フローティング電位やグラウンド電位を基準とした信号を直接入力できます このほか DAQ デバイスを最大 250 Vrms の過電圧から保護する機能を搭載し ました 一方 アナログ入力モジュールの NI SSC-AI は 設置カテゴリ II に対応した 300V の絶縁特性を備え ています 各モジュールともに ローパス フィルタを内蔵 図 12:PXI 準拠の絶縁型 DAQ デバイス SC シリーズ SC シリーズの NI PXI-4224 は 連続 60 VDC のチャン ni.com/greenengineering/ja 23

ネル間絶縁を備える 8 チャンネルのアナログ入力を搭載しています 入力電圧範囲は ±10 V で 分解能は 16 ビットです チャンネル当たりの帯域幅は 30 khz 最大サンプリング速度は 200 ks/ 秒です 各種プラットフォームに対応する C シリーズ 入出力モジュール NI C シリーズ は パソコンや工業用 PXI 組込みコントローラといった さまざまなプラットフォームと接続オプションに対応します C シリーズのモジュールのいくつかは USB キャリアや USB 接続可能な NI CompactDAQ シャーシに対応しており ドライバ ソフトウエアである NI-DAQmx を使えばパソコンや PXI システムから制御することが可能です さらに C シリーズのモジュールは NI CompactRIO シャーシでも使えるため 再構成可能な制御システムやデータ集録システムを構築できます これらのモジュールの多くは コントローラ側のデジタル インタフェースとの絶縁も確保していますが 一部のモジュールでは高電圧に対する絶縁しか施されていません 図 13: 絶縁機能を備える C シリーズ の DAQ デバイス モジュール型の組込み制御 / 分散型入出力システムです このシステムを利用すれば 工業用のハードウェアの導入や構築が容易になります FieldPoint と Compact FieldPoint はいずれも信号調節機能を内蔵しているため センサやアクチュエータに直接接続できます さらにこれらのモジュールは 熱電対や RTD( 測温抵抗体 ) 歪みゲージ 4~20 ma の電流信号 高電圧の信号源といった さまざまな信号を入力可能です FieldPoint と Compact FieldPoint は NI LabVIEW Real-Time の実行専用の組込みプロセッサを搭載しており 組込みリアルタイム制御に対応可能です このほか Ethernet やシリアル CAN Foundation Fieldbus など各種の工業用バス インターフェースを介してパソコンと接続することもできます Compact FieldPoint は 電磁雑音や 広い範囲の動作温度 高強度の衝撃や振動への対応が求められる 厳しい環境下での使用に向けて設計されています FieldPoint と Compact FieldPoint の両製品ラインは 高電圧信号の測定や 負荷や信号経路を切り替えるスイッチ処理に対応しています こられの製品ラインのモジュールはすべて バックプレーンとの絶縁を確保しており 動作絶縁電圧は 250 V 過電圧保護は 2300 V です NI cfp-ai-102 は 12 ビット分解能のアナログ入力モジュールで ±120 VDC の測定に対応します NI cfp-di-330 は 最大 250 V の交流信号と直流信号に対応したデジタル入力モジュールです NI cfp-rly-420 と NI FP-RLY-422 は 最大 250 VAC もしくは最大 120 VDC の信号のスイッチ処理が可能なリレー モジュールです NI 9206 は バンク絶縁を施した 16 チャンネルのアナログ入力モジュールで チャンネルとグラウンドの間で 600 VDC( 米国 ) の絶縁を確保しています 入力電圧範囲は ±10 V 分解能は 16 ビット 最大サンプリング速度は 250 ks/ 秒です 高電圧測定に向けた FieldPoint プログラマブル オートメーション コントローラ (PAC) 製 品である NI FieldPoint と NI Compact FieldPoint は 測定や制御 データロギング アプリケーションに向けた 図 14: 工業用の制御と測定に使えるプログラマブル オートメーション コントローラ Compact FieldPoint ni.com/greenengineering/ja 24

RS232/RS485 シリアル通信インタフェース 日本 NI は 最大 2000 V の光学式絶縁機能を備えた PCI PXI AT シリアル ハードウエアを提供しています これらを利用すれば 工業環境でも安全かつ信頼性の高い通信が可能です グラウンド電位の差によってグラウンド ループが形成されたり ノイズの多い環境に配置したラインに高いコモンモード電圧が発生したりした場合でも 絶縁ポートを介して高い信頼性で通信すること可能です 各通信ポートとホスト パソコンの間を絶縁できるので ある通信ポート上に突発的な高電圧やライン サージが発生した場合でも ホスト パソコンや ほかの通信ポートに接続したデバイスは損傷を受けることがなく 安全に動作を続けることができます 図 15: 絶縁機能を備えるシリアル インタフェース ボード NI 8433/2 は 高性能の 2 ポート絶縁型 RS485 シリアル イ ンタフェース ボードです 絶縁機能を備えた製品の情報については 以下の Web ページをご覧ください SCXI 高性能信号調節 http://sine.ni.com/nips/cds/view/p/lang/ja/nid/1604 SCC: 低コストなポータブル信号調節システム http://sine.ni.com/nips/cds/view/p/lang/ja/nid/3162 FieldPoint ファミリ : リモート I/O http://sine.ni.com/nips/cds/view/p/lang/ja/nid/1199 シリアル インタフェース http://www.ni.com/serial/ja/ ni.com/greenengineering/ja 25

工業計測に必要な高い信頼性を実現する絶縁技術 概要工業 / プロセス制御アプリケーションにおいて 電圧 / 電流 / 温度 / 圧力 / 歪み / 流量計測は極めて重要な部分です そのようなアプリケーションでは 危険電圧や過渡信号 コモンモード電圧 接地電位の変動などが発生する環境にあり 計測システムに障害を及ぼす可能性や計測精度に影響を与える可能性が大いにあります そのような難題を克服するため 工業用アプリケーション用に設計された計測システムでは 電気的な絶縁処理を行っています このホワイトペーパーでは アナログ計測における絶縁について説明し 絶縁に関する一般的な質問に対する回答や 様々な絶縁実装技術に関する情報を提供します グランドの間に存在するコモンモード電圧は 全て遮断されます それにより グランドループの形成を防ぐことができると同時に センサライン上のノイズが除去されます 絶縁とは 絶縁とは 危険な電圧 *1 にさらされる可能性のあるセンサ信号を 計測システム側の低電圧バックプレーンから電気的に分離するものです 絶縁を行うと 以下のようなメリットがあります 高価な機器 ユーザ データの過渡電圧からの保護 ノイズイミュニティ性の向上 グランドループの除去 コモンモード電圧除去性能の強化絶縁された計測システムは センサ側のアナログフロントエンドと PC 側のシステムバックプレーンで別々のグランドプレーンを使用することで センサ計測をシステムの他の部分から切り離すことができます 絶縁機能付きフロントエンドのグランド接続は 接地グランドとは異なる電位で動作可能な浮動ピンです 図 1 は アナログ電圧計測デバイスを示しています センサグランドと計測システム 図 1: バンク絶縁型のアナログ入力回路 *1 危険な電圧とは 30 Vrms 42.4 Vpk または 60 VDC より 高い電圧です 絶縁の必要性 以下のような場合には 計測システムの絶縁を検討する ことをお奨めします 危険な電圧への接近 過渡電圧の発生の可能性がある工業環境 コモンモード電圧や変動的なグランド電位が存在 する環境 工業用モータなど 電気的ノイズの多い環境 計測システムを介して電圧スパイクが伝達されるのを防 ぐ必要のある 過渡電圧の影響を受けやすい感度の高 いアプリケーションコモンモード電圧や高電圧過渡電流 電気ノイズがよく発生するアプリケーションの例として 工 ni.com/greenengineering/ja 26

業用計測 プロセス制御 自動テストなどがあります 絶縁機能搭載の計測機器を使用すると 過酷な環境でも信頼性の高い計測が可能です 患者に直接用いられる医療機器の場合 絶縁処理により電源ラインの過渡電圧が機器を通して患者に伝達されるのを防ぐことができます 絶縁計測には 電圧とデータ転送レートなどの条件によっていくつかのオプションがあります プラグインタイプのデバイスは ノートブック PC デスクトップ PC 工業用 PC PXI Panel PC CompactPCI で使用でき 絶縁機能付きや外部信号調節を使用したオプションがあります また絶縁計測は プログラマブルオートメーションコントローラ (PAC) と USB 対応計測システムを使って行うこともできます 光結合 LED は 電圧が印加されると光を生成します 光学絶縁では LED とともに光検出デバイスを使用して 電気信号を光に変換し 絶縁バリア上を光信号が導通します 光検出器は LED が伝達した光を受信し それを元の信号に再度変換します 図 3: 光結合光学絶縁は 絶縁の中でも最も一般的に使用されているものです 光学絶縁のメリットとして 電気 / 磁気ノイズへのイミュニティがあります デメリットとしては LED 切り替え速度の制約を受ける伝送速度 高消費電流 LED の損耗などがあります 静電結合 静電絶縁は 蓄電板上の電荷レベルによって変化する電場に基づくものです この電荷は絶縁バリア全域で検知され 計測された信号のレベルに比例しています 図 2: 絶縁機能付きデータ集録システム 絶縁の実装方法 絶縁を行うと 直接的に電気接触することなく信号が絶縁バリアを通して導通されます 発光ダイオード (LED) コンデンサ インダクタの 3 つのコンポーネントは 直接の接触がなくても電気信号の導通が可能です これらのデバイスの基となっている原理が光結合 静電結合 および誘導結合で 一般的な絶縁技術の核となるものです 図 4: 静電絶縁 ni.com/greenengineering/ja 27

静電絶縁のメリットの 1 つに 磁気ノイズへのイミュニティがあります 光学絶縁と比較した場合 静電絶縁では LED の切り替えが必要ないため より速いデータ伝送レートに対応することができます ただし静電結合では電場を利用してデータを伝送するため 外部の電場からの干渉による影響を受けやすくなっています 誘導結合 19 世紀初頭 デンマークの物理学者 ハンス エルステッドは 電線コイルを流れる電流が磁場を生成することを発見しました そして後に 1 つめのコイルの変化する磁場のすぐ近くに 2 つめのコイルを配置することで 電流は 2 つめのコイルの中で誘導されることがわかりました 2 つめのコイルによる電圧と電流の誘導は 最初のコイルにおける電流の変化のレートにより決まります この原理は相互誘導と呼ばれ 誘導絶縁の基礎となるものです 絶縁を行っています アナログ入力 / 出力チャンネルにおける絶縁は AD コンバータ (ADC) が信号をデジタル化する前にボードのアナログ部分で行うか ADC が信号をデジタル化した後に行う ( デジタル絶縁 ) かのいずれかです 絶縁を実装している回路の位置により 上記のテクニックのいずれかを基に異なる回路を設計する必要があります アナログとデジタルのどちらの絶縁を選ぶかは データ集録システムの性能 コスト 物理的条件などによって決まります 図 6 は 絶縁実装の各段階を示しています 図 6a: アナログ絶縁 図 5: 誘導結合誘導絶縁では 絶縁体のレイヤで分離された 2 つのコイルを使用します 絶縁体により 物理的な信号伝達が全て遮断されます いずれかのコイルの電流の流れを変えることで 絶縁体のバリアを通って 2 つめのコイルに同様の電流が誘導され それによって信号が伝送されます 誘導絶縁は 静電絶縁と同様の高速伝達が可能です 誘導結合では磁場を利用してデータを伝送するため 外部の磁場からの干渉による影響を受けやすくなっています アナログ絶縁とデジタル絶縁 現在では市販コンポーネントが複数市場に出ていますが その多くは上記のテクニックのいずれかを利用して 図 6b: デジタル絶縁以下のセクションでは アナログ絶縁とデジタル絶縁についてさらに詳しく説明するとともに それぞれの実装方法をいくつか紹介します アナログ絶縁 データ集録デバイスのアナログフロントエンドで絶縁を行うには 通常絶縁増幅器を使用します 図 6a の ISO Amp は 絶縁増幅器を表しています ほとんどの回路では 絶縁増幅器はアナログ回路における第一のコンポーネントです センサから送られたアナログ信号は絶縁増幅器に渡され そこで絶縁が行われて AD 変換回路に送られます 図 7 は 絶縁増幅器の一般的な配置を示しています ni.com/greenengineering/ja 28

図 7: 絶縁増幅器 理想的な絶縁増幅器では アナログ出力信号はアナログ入力信号と同一です 図 7 で 絶縁 と示された部分では 前セクションで説明したテクニック ( 光学 静電 誘導結合 ) のいずれかを用いて絶縁バリアの反対側に信号を渡します 変調器回路は絶縁回路用に信号を準備します 光学方式の場合 この信号はデジタル化するか可変光度に変換する必要があります 静電および誘導方式では 信号を可変電場 / 磁場に変換します すると次に復調回路が絶縁回路出力を読み取り それを元のアナログ信号に変換します アナログ絶縁は 信号がデジタル化される前に行われるため 非絶縁タイプの既存の集録デバイスとともに使用する外部信号調節の設計に使用するには最適な方法です この場合 データ集録デバイスが AD 変換を実行し 外部回路が絶縁を行います データ集録デバイスと外部信号調節を組み合わせることで 計測システムベンダは汎用データ集録デバイスとセンサに特化した信号調節を開発することが可能です 図 8 は 絶縁増幅器を使用した柔軟な信号調節を機能を搭載したアナログ絶縁の実装を示しています アナログフロントエンドで絶縁を行うと ADC(AD コンバータ ) などのアナログ回路を電圧スパイクから保護できるというもう 1 つのメリットがあります 図 8: 柔軟な信号調節ハードウェアで絶縁増幅器を使用汎用データ集録デバイスと外部信号調節を採用した計測製品は 何種類か市場に出回っています 例えば ナショナルインスツルメンツの M シリーズには 高性能のアナログ I/O とデジタル I/O を備えた非絶縁タイプの汎用マルチファンクションデータ集録デバイスがいくつかあります 絶縁が必要なアプリケーションでは NI M シリーズにナショナルインスツルメンツの SCXI や SCC モジュールなどの外部信号調節を組み合わせて使用することができます そのような信号調節プラットフォームでは ロードセル 歪みゲージ ph センサなどの工業用センサへ直接接続する際に必要となる絶縁や専用の信号調節が利用可能です デジタル絶縁 AD コンバータは あらゆるアナログ入力データ集録デバイスにおいて重要なコンポーネントの 1 つです 最高性能を実現するには AD コンバータへの入力信号を元のアナログ信号にできる限り近づける必要があります アナログ絶縁を行うと 信号が ADC に到達する前にゲイン 非線形性 オフセットなどの誤差が混入する可能性があります ADC を信号源に近づけることで 性能が向上することがあります またアナログ絶縁コンポーネントは コストがかかるとともにセトリングタイムが長くなる傾向があります デジタル絶縁の方が 性能が優れているにもかかわらず これまでアナログ絶縁が使用されてきた理由の 1 つとして 高価な AD コンバータを保護する目的がありました ADC の価格が大幅に低下するなかで 計測機器ベンダは ADC の保護よりもデジタル絶縁器の性能と低 ni.com/greenengineering/ja 29

コストを優先するようになってきています ( 図 9 参照 ) ションコントローラなどの工業用デジタル I/O 製品で多く 採用されています 図 9:16 ビット AD コンバータの価格の推移 出典 : ナショナルインスツルメンツおよび主要 ADC ベンダ絶縁増幅器に比べ デジタル絶縁コンポーネントは低コストでありながら高いデータ転送レートを実現します また デジタル絶縁テクニックを使用すると アナログ設計用のコンポーネントをより自由に選ぶことができると同時に 計測デバイスのアナログフロントエンドを最高性能で実現することが可能となります デジタル絶縁を搭載した製品は 電流 / 電圧制限回路を用いて ADC を保護しています デジタル絶縁コンポーネントも アナログ絶縁の基本となる光学 静電 誘導結合と同じ基本原理に基づいています Avago Technologies ( www.avagotech.com ) Texas Instruments ( www.ti.com ) Analog Devices (www.analog.com) などの主要なデジタル絶縁機器ベンダは そのような基本原理のいずれかを基に絶縁技術を開発しています Avago Technologies は光学結合 Texas Instruments は静電結合 Analog Devices は誘導結合による絶縁器を提供しています 光カプラ 光学結合原理に基づいたデジタル絶縁器である光カプラは 最も古くから一般的に採用されているデジタル絶縁技術の 1 つです 高電圧に耐えられるとともに 電気 / 磁気ノイズへの高いイミュニティを備えています 光カプラは ナショナルインスツルメンツの PXI-6514 絶縁デジタル入出力ボード ( 図 10 参照 ) や PCI-7390 工業用モー 図 10: 光カプラを採用した工業用デジタル I/O 製品ただし高速アナログ計測の場合 光カプラには速度 消費電流 光学結合に関連する LED の制約などの点でデメリットがあります 静電結合および誘導結合に基づいたデジタル絶縁器は 光カプラの欠点をカバーすることができます 静電絶縁 Texas Instruments では 静電結合を利用したデジタル絶縁コンポーネントを提供しています 同社の絶縁器は データ転送レートと過渡電圧イミュニティがともに優れています ただし静電および光学絶縁方式と比較すると 誘導絶縁の方が消費電力を抑えることができます 誘導絶縁 Analog Devices が 2001 年に発表した icouplerr テクノロジ (www.analog.com/icoupler) は 誘導結合を利用して 高速アプリケーションや多チャンネルアプリケーションに適したデジタル絶縁を提供するものです icouplers は メガヘルツ単位のサンプルレートを実現する 16 ビットアナログ計測システムにおいて 100 Mb/ 秒のデータ転送レートで 2,500 V の絶縁耐圧に対応します 光カプラに比べ icoupler は低消費電力ながら動作温度範囲は 125 と高く 過度電圧イミュニティは最大 25 kv/ms となっています icoupler テクノロジは 小型のチップスケール変圧器に ni.com/greenengineering/ja 30

基づいています icoupler は トランスミッタ 変圧器 受信器という 3 つの主要部分からなっています トランスミッタ回路は エッジトリガエンコーディングを使用し デジタルライン上の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを 1 ns のパルスに変換します それらのパルスは 変換器を使って絶縁バリア経由で伝送され 受信回路により反対側でデコードされます ( 図 11 参照 ) 10 分の 3 ミリメート ルほどの小さな変換器のおかげで 実質的に外部磁気ノイズの影響は全く受けません また icoupler を採用することで 1 つの集積回路 (IC) につき最大 4 つの絶縁チャンネルを統合して計測ハードウェアのコストを低減できると同時に 光カプラに比べ必要な外部コンポーネントの数も少なくすみます 図 12: ナショナルインスツルメンツの絶縁機能付き M シリーズマルチファンクション DAQ の使用方法 まとめ 絶縁機能付きのデータ集録システムを使用すると 危険なレベルの電圧や過渡電流が存在する過酷な工業環 境にも耐えうる信頼性の高い計測が行えます 絶縁の必 要性は 計測アプリケーションや周辺の環境により決まり ます 汎用データ集録デバイス 1 台から様々な専用セン 図 11: 誘導結合を利用した Analog Devices の icoupler テクノロジ出典 : Analog Devices(www.analog.com/iCoupler) 計測ハードウェアベンダは icoupler を使用することにより 高性能なデータ集録システムを低価格で販売できるようになりました 絶縁機能付き M シリーズマルチファンクションデータ集録デバイスなど 高速計測に適したナショナルインスツルメンツの工業用データ集録デバイスは icoupler デジタル絶縁器を採用しています ( 図 12 参照 ) 複数のアナログ/ デジタルチャンネルで 60 VDC の連続絶縁と 1,400 V( 実効値 )/1,900 VDC のチャンネル-バス間耐圧 (5 秒 ) が可能な上 250 ks/ 秒のサンプリングレートをサポートします NI PAC プラットフォーム NI CompactRIO NI CompactDAQ その他の NI 高速 USB デバイスで使用されるナショナルインスツルメンツの C シリーズモジュールでも icoupler テクノロジが採用されています サに接続する必要のあるアプリケーションでは アナログ絶縁を施した外部信号調節の使用をお奨めします 低コストで高性能のアナログ入力を必要とするアプリケーションの場合は デジタル絶縁搭載の計測システムが適しています ナショナルインスツルメンツの絶縁製品 NI 絶縁機能付き M シリーズおよび S シリーズ NI USB-6218 - バンク絶縁機能付き USB マルチファンクション DAQ NI PCI-6230 - バンク絶縁機能付き PCI/PXI マルチファンクション DAQ NI PCI-6154 - チャンネル間絶縁機能付き PCI 同時サンプ リング DAQ ni.com/greenengineering/ja 31

NI CompactDAQ USB データ集録システム NI Motion NI 9211 - バンク絶縁機能付き熱電対入力モジュール NI 9206 - バンク絶縁機能付き 600 VDC CAT I アナログ入力 絶縁機能付きプラグイン モーションコントローラ モジュール NI Serial NI SCXI 多チャンネル外部信号調節 絶縁機能付き RS-232/RS-485 NI SCXI-1125 - チャンネル間 デバイス 絶縁増幅器 NI SCXI-1121 - バンク絶縁機能付きユニバーサル入力センサ計測増幅器 NI CompactRIO 再構成可能組込式制御 / 集録システム NI 9203 - 絶縁機能付き電流入力モジュール NI 9422 - チャンネル間絶縁機能付きデジタル入力モジュール NI Compact FieldPoint 分散型プログラマブルオートメーションコントローラ NI cfp-tc-125 - チャンネル間絶縁機能付き熱電対入力モジュール NI cfp-ai-118 - チャンネル間絶縁機能付き電圧入力モジュール ni.com/greenengineering/ja 32

電気機器に向けた絶縁および安全に関する規格 概要 ある測定器ベンダは 当社の DMM( デジタル マルチメータ ) は カテゴリ II の絶縁耐性を有した製品です と表現し 別の測定器ベンダは 当社の DMM は二重絶縁を備え カテゴリ I に該当します と表現しているとしましょう さて 各社はいったい何を言わんとしているのでしょうか? また 両社の DMM の定格電圧がいずれも 250 V だとすれば この 2 つの DMM には一体 どのような違いがあるのでしょうか? 本稿では 電子機器の絶縁と安全性能に関する こうした用語の意味について説明します 図 1: 電子機器に掲示される一般的な安全規格認証マーク例 安全規格と規格策定団体 一般に 製品の安全性を問題にする場合は 安全か 安全でないか を判断する何らかの基準が必要です 通常は 安全性に関する標準規格がその役割を果たします 高電圧を扱う機器の安全性についても 例外ではありません すなわち 高電圧機器の安全性について定めた規格を 欧州委員会 (EC:European Commission) と米国保険業者安全試験所 (UL:Underwriters Laboratories Inc.) がそれぞれ標準化しています 欧州委員会は 1973 年に 低電圧指令 (Low Voltage Directive) (72/23/EEC) と呼ぶ規格を策定しました この指令は 電気機器が内部で取り扱う電圧について 安全性に関して特に注意を必要とするレベルを明確に規定しています 具体的には以下の通りです 最低電圧 :50 Vrms( 実効値 ) もしくは 75 VDC 最高電圧 :1000 Vrms( 実効値 ) もしくは 1500 VDC 低電圧指令への適合は 1997 年 1 月 1 日以降 CE マークの認証を取得する上で必須条件となっています 低電圧指令には 個別の安全規格 ( 適用を承認された規格 ) が約 200 あります 機器メーカに関連がある規格は EN 61010 です この規格は 測定や制御 実験室での使用に向けた電気装置の安全要求 ( Safety Requirements for Electrical Equipment for Measurement, Control, and Laboratory Use) を定めています EN 61010 は 低電圧指令よりも若干厳格な規格で 30 Vrms もしくは 60 VDC を危険電圧として規定しています さらに EN 61010 は こうした高電圧に対する設計要件のほか 可燃性をはじめとした非電気的な安全性に関する要件も定めています 機器メーカが CE マークを取得するためには EN 61010 に記載された要件をすべて満たさなければなりません EN 61010 に大変よく似た規格に IEC 1010 と UL 3111 の 2 つがあります これらのうち IEC 1010 は EN 61010 の前身に相当する規格で 国際電気標準会議 (IEC:International Electrotechnical Commission) によって策定されました その後 欧州委員会が IEC 1010 を採用し 名称を EN 61010 に変更したのです UL 3111 もまた IEC 1010 から派生した規格です IEC 1010 を基に UL がいくつか変更を加えて UL 3111 として標準化しました UL が策定したこの規格は 測定器や制御機器 ni.com/greenengineering/ja 33

実験器具に向けた既存の安全規格で 要件が比較的緩やかだった UL 1244 を置き換える新規格であり UL 1244 に比べて要件が厳しくなっています 機器メーカは UL 3111 に記載された要件をすべて満たさない限り 新たに設計する機器の UL 認証を取得できません これ以降の項では 電気機器の安全性をめぐる要件について取り上げます 機器メーカは 自社製品を上記の安全規格に適合させるために こうした要件を把握しておくべきでしょう この技術資料では説明を簡潔にするため 各安全規格の下敷きとなった IEC 1010 についてのみ言及しますが 以下で述べる IEC 1010 に関する情報はすべて UL 3111 と EN 61010 についても同様に当てはまります 安全確保における絶縁の役割 機器メーカは さまざまな手法で高電圧機器の安全を確保していますが 絶縁もその 1 つです 絶縁とは 電気システム中の 2 つの領域を物理的および電気的に分離することを指します ただし通常は 絶縁された領域の間で信号をやりとりする必要がありますから 電気的な絶縁を確保しながらも何らかの手段で 2 つの領域を結合させなければなりません 代表的な方式としては フォトカプラを使う光結合方式 ( 伝送媒体は光 ) と トランスを利用する電磁結合方式 ( 伝送媒体は磁界 ) コンデンサなどの容量性結合器を使う容量結合方式 ( 伝送媒体は電界 ) の 3 つがあります 絶縁には 以下のようなメリットがあります グラウンド ループを断ち切ることができる コモンモード電圧除去性能を高められる 単一の電気システム内の 2 つの領域それぞれで レベルがけた違いに異なる電圧を扱える 従って 一方の領域が危険な電圧レベルを扱っていても もう一方の領域は安全を維持できる 絶縁を安全に行うためには (1) 高信頼性を備えた絶縁素子 ( フォトカプラやトランス 容量性結合器 ) と (2) 絶縁バリアとして安全を確保できる絶縁体の 2 点が必要不 可欠です 絶縁体の例としては プラスチックや プリント配線板のキープアウト エリア ( 配線禁止領域 ) エア ギャップなどが挙げられます 安全確保に必要な絶縁性能 絶縁バリアに要求される絶縁体の性能は 以下に挙げる要因によって決まります 動作絶縁電圧 : 絶縁バリアに印加される電圧です この値が大きければ大きいほど 高い絶縁性能が求められます 過渡電圧 : 絶縁バリアに瞬間的に印加されるスパイク状の電圧です ある動作電圧に対する耐性を備えた絶縁体でも それを上回る過渡電圧が発生すれば破壊に至る恐れがあります そのため 過渡電圧が大きければ大きいほど 高い絶縁性能が必要です 汚染度 : 絶縁体の性能は 大気中の汚染物質によって劣化することがあります そのため 汚染度が高い環境ほど あらかじめ高い絶縁性能を確保しておくことが必要になります 単一故障電流パス : 絶縁体が破壊された際に 人間が短絡電流に接触する危険があると想定される場合は 特に高い絶縁性能が求められます 上記の絶縁性能に関する要件は IEC 1010 のセクション 6 に規定されています このほか IEC は 設置カテゴリ ( 過電圧カテゴリ ) や汚染度 二重絶縁などについても規定しています 以下に それぞれを詳しく説明します 設置カテゴリ IEC は 機器の過渡電圧 ( インパルス電圧 ) 耐性を規定した 4 段階の 設置カテゴリ を定義しています 設置カテゴリは 過電圧カテゴリ とも呼ばれており 各カテゴリで求められる耐過渡電圧は 下の表 1 に示す通りです カテゴリ IV に分類される機器は 通常の動作電圧と比較して最も高いレベルの過渡電圧に対する耐性を備えています 反対にカテゴリ I に分類される機器は 過渡電圧の耐性が最も低く 低い過渡電圧でなければ耐え ni.com/greenengineering/ja 34

られません 例えば カテゴリ IV に分類される公称電圧が 50 V の機器は 最大 1500 V の過渡電圧に耐えられますが カテゴリ I に分類される公称電圧 50 V の機器は わずか 330 V の過渡電圧にしか耐えられません す 例えば 電力計や 1 次給電の過電流保護装置などが該当します 注 :IEC はカテゴリ IV について IEC 1010 そのものでは規定しておらず 別の規格で定義しています 過渡電圧の許容値 公称 カテゴリ カテゴリ カテゴリ カテゴリ 電圧 I II III IV (VAC VAC) 50 330 500 800 1500 100 500 800 1500 2500 150 800 1500 2500 4000 300 1500 2500 4000 6000 600 2500 4000 6000 8000 1000 4000 6000 8000 12000 表 1:IEC が定義する各設置カテゴリの過渡電圧 IEC による各設置カテゴリの定義は以下の通りです 設置カテゴリ I: 過渡現象による過電圧が設計によって十分低いレベルに抑えられている回路に接続する機器です 例えば 保護機能を備えた電子回路などが該当します 設置カテゴリ II: 設置カテゴリ III の固定設備から供給された電力を消費する機器です 例えば 家電や携帯工具といった電気機器などが該当します また これらの電気機器が扱う電圧レベルの測定に使う測定器も 同じく同カテゴリ II の過渡電圧耐性が求められます 設置カテゴリ III: 固定設備内に設置された機器と 信頼性や可用性が特殊な要件に基づく機器です 例えば 固定設備内のスイッチ 固定設備に恒久的に接続された工業機器などが該当します また これらの固定設備の電圧レベルの測定に使う測定器も 同じく同カテゴリ III の過渡電圧耐性が求められます 設置カテゴリ IV: 設備の起点部分で使用される機器で 図 2: 一般家庭向け電力伝送網における設置カテゴリの概要図それでは こうした設置カテゴリの情報から 一体何を読み取ればよいのでしょうか 図 2 に示した 一般家庭向け電力伝送網を例に説明します この図では 送電線はカテゴリ IV に分類されています 電力事業者が供給する電力には過大な過渡電圧が重畳されているため 最上位レベルのカテゴリ IV に分類されるのです この過渡電圧は ヒューズ盤を介して家庭内の配電設備に流れ込むまでに 保護回路の働きによってカテゴリ III のレベルまで低減されます エアコンやヒータなどの固定設備は このカテゴリ III の電力を使用することができ このカテゴリの過渡電圧にも耐えられます しかし 家庭用電気製品のほとんどは こうした固定型ではなく コンセントを抜いて移動することができます こうした非固定型の機器はカテゴリ III の過渡電圧には耐えられませんが カテゴリ II レベルの過渡電圧であれば対応可能です 非固定型の機器の例としては テレビや 電気ドリルなどの工具 電子レンジなどが挙げられます 家庭内向け配電網には通常 過渡電圧を十分に低減する工夫が施されているため 壁の電源コンセントからはカテゴリ II レベルの電力が供給されます ni.com/greenengineering/ja 35

カテゴリ I に分類される機器は過渡電圧耐性が最も低く 低い過渡電圧にしか耐えられません このため 電源コンセントなどのように身近にある カテゴリ II の電源から供給される電力では カテゴリ I の機器を駆動できません カテゴリ I の機器を動かすには カテゴリ II の電力に含まれる過渡電圧を低減するために 図 2 中の絶縁トランスのような 何らかの保護素子を追加する必要があります こうした保護素子を備えるカテゴリ I の回路の例としては オーディオ装置に搭載されているアンプ回路が挙げられます すなわちオーディオ装置は アンプ回路用の電源回路を内蔵しており その電源回路で壁のコンセントから供給されるカテゴリ II の電力を受け取って過渡電圧を低減し カテゴリ I レベルの電力を生成してから供給することで アンプ回路の損傷を防いでいます 汚染度 IEC 1010 では 機器の周囲環境におけるさまざまな汚染について規定されています 汚染度が高い 厳しい環境下ほど 高い絶縁性能が求められます 逆に言えば 絶縁性能を向上させる代わりに 絶縁個所周辺の微小空間の汚染度を改善することでも規格を満たすことが可能です このような低汚染度の微小空間は 絶縁個所を筺体に収納したり カプセルに封入したり 気密パッケージに封止したりすることで作り出せます 汚染度 1: いかなる汚染物質も存在していないか もしくは乾燥した非導電性の汚染物質のみが存在する環境です このレベルの汚染は いかなる影響も及ぼしません 例えば IC チップのように 気密パッケージに封止された回路などが該当します パッケージ内に空気が流入する可能性が無いため 結露や導電性粒子の侵入が発生しません 汚染度 2: 非導電性の汚染物質のみが存在する環境です ただし 結露によって一時的に導電性粒子が発生する可能性があります 例えば オフィス環境で使用される回路などが該当します 具体的には パソコンに搭載されている回路は この汚染度に分類されます 汚染度 3: 導電性の汚染物質が存在する環境 もしくは 乾燥した非導電性の汚染物質が存在しており 結露によって導電性に変化する恐れがある環境です 例えば 外気にさらされているものの 雨などの降水を避けられる場所に設置された回路などが該当します 具体的には 車庫の開閉装置がこの汚染度に分類されます 注 :IEC は汚染度 3 について IEC 1010 そのものでは規定しておらず 別の規格で定義しています 汚染度 4: 導電性のほこり もしくは雨や雪など 恒久的に導電性を有する汚染物質が存在する環境です 例えば 屋外に露出した 送水ポンプ用の制御ボックスなどが該当します 注 :IEC は汚染度 4 について IEC 1010 そのものでは規定しておらず 別の規格で定義しています 絶縁の種類 どのような絶縁方式を採用する場合でも 絶縁バリアを設けるために ある一定の絶縁性能が必要になります IEC 1010 ではこれを 基本絶縁 と呼びます 万が一 絶縁体が破壊された場合に 人間にとって危険なレベルの電流が流れてしまう可能性があれば 基本絶縁だけでは十分な安全性を確保できません その対策として IEC 1010 では 絶縁性能を改善する対策をいくつか示しています その中で主な改善策として挙げられるのが 二重絶縁 と 強化絶縁 です 二重絶縁とは 基本絶縁に何らかの付加的な絶縁を加える方法です 例えば 基本絶縁層をもう一層追加することで実現可能です 万が一 基本絶縁が破壊されたとしても ( 単一故障 ) 付加絶縁によってユーザの安全は維持されます 一方で強化絶縁は 狙いそのものは二重絶縁と同じですが 基本絶縁層と追加絶縁層をそれぞれ単独でテストできない点が異なります IEC 規格の意義とは? このように IEC 規格について学ぶと 手持ちの測定器が対応可能な範囲を把握できる上に 今後どのような測定器を購入する必要があるかも見えてきます ni.com/greenengineering/ja 36

例えば カテゴリ I に該当する定格 250 V の DMM は 標準的な壁コンセントから供給される電力の電圧測定には適していません 先に説明した通り 壁コンセントの電力はカテゴリ II に分類されます 従ってこの DMM は 壁コンセントの過渡電圧に耐えられるように設計されていないことが分かります 一方で カテゴリ II に該当する定格 250 V の DMM は 壁コンセントの電圧測定に適しています カテゴリ II に対応する製品としては 例えば日本ナショナルインスツルメンツの 5½ 桁 DMM NI PCMCIA-4050 があります この DMM は追加絶縁層を備えているため 壁コンセントの過渡電圧にも耐えられます 高電圧を測定する際に 最も注意すべきは安全性です 手持ちの測定器を使用するときや 新たに測定器を購入するときには 定格電圧以外の仕様も十分に考慮してください そうした測定器が UL や CE IEC が定めた規格のうち 想定する用途に該当する規格に適合していることを確認する必要があります こうした点を守れば 高電圧を安全に測定できるでしょう ni.com/greenengineering/ja 37

NI CompactRIO 用電力品質監視スタータキットのスタートアップガイド 概要 本稿では ナショナルインスツルメンツ (NI) が提供する NI CompactRIO 用電力品質監視スタータキット (Power Quality Monitor Starter Kit) のハードウェアとソフトウェアのセットアップ方法を 手順を追って説明します このスタータキットは NI LabVIEW 2009 ソフトウェアと LabVIEW Real-Time モジュール FPGA モジュールを使います スタータキットで用いるハードウェアについては 下記のパーツリストで全製品を紹介しています CompactRIO 用電力品質監視スタータキットをダウンロード Zip ファイルをダウンロード ( 英語 ) 電力品質監視スタータキットに使うコンポーネント このスタータキットは 下記の表に掲載したコンポーネントで構成するシステムに向けて開発されています 各ハードウェアコンポーネントの価格や詳細については こちらの電力品質監視スタータキット用パーツリストをご覧ください 以下で説明するサンプルコードは LabVIEW バージョン 8.6.1 用がダウンロード提供されています NI C シリーズのソフトウェアサポートのページ ( 英語 ) では NI C シリーズの全製品と 各製品が対応する LabVIEW のバージョン システムを構築する際に必要になるドライバの一覧を掲載しています 電力品質監視スタータキットでは LabVIEW 8.6.1 以降を使用してください これより前のバージョンでは スタータキットに使う C シリーズモジュールの NI 9225 と NI 9227 がサポートされていないからです ソフトウェアのセットアップ スタータキットを電力品質監視スタータキット用パーツリストに掲載されているデバイス上で使用する CompactRIO システムが起動して動作を始めたら PQ Starter Kit(PQ スタータキット ) のプロジェクトを開いて実行できます ビットファイルに関する矢印ボタンが破損している場合は ビットファイルが移動されていないかどうかを確認してください スタータキットフォルダをダブルクリックして開き フォルダ内にある.lvbitx ファイルを探します CompactRIO システムのセットアップ方法について詳しく は NI CompactRIO のセットアップとサービスに関する ページをご覧ください ni.com/greenengineering/ja 38

スタータキットを別の CompactRIO ハードウェア上で使用する このサンプルコードはもともと スタータキット用のハードウェアを使う実装に向けて開発されています そのため このプロジェクトを別のハードウェア上で実行するには 新規のプロジェクトを作成し ユーザの手持ちのコンピュータに接続した特定のハードウェアで実行できるように構成 ) しなければなりません 以下に ユーザの手持ちのハードウェアに向けたプロジェクトを新規作成する手順を説明します 1. LabVIEW プロジェクトエクスプローラでこのサンプルを開いた状態で メニューバーから File» Save As... ( ファイル >> 別名で保存 ) と進みます 3. 新規プロジェクトと関連ファイルを保存するフォルダを選択します プロジェクトファイルには適当な名前を付けてください プロジェクトファイル以外のプロジェクトコンテンツはすべて コピー元のサンプルコードで使われているファイル名をそのまま引き継ぎます 4. コピー元のサンプルプロジェクトを閉じます 2. Save( 保存 ) ダイアログボックスが表示されます ここで Duplicate.lvproj file and contents(.lvproj ファイルおよび内容を複製 ) のオプションボタンを選び その下の Include all dependencies( ( すべての依存項目を含む ) のオプションボタンが選択されていることを確認してください Continue ( 継続 ) をクリックします 5. 新しく複製して保存したプロジェクトを開きます プロジェクトエクスプローラで最上層の Project: <Name> (<Name> は手順 3 で付けたプロジェクトファイル名 ) を右クリックし New» Targets and Devices ( 新規 >> ター ゲットとデバイス ) を選択してください ni.com/greenengineering/ja 39

7. Targets and Devices の下にある Real-Time CompactRIO フォルダを展開し 表示されるリストの中から 実際に使用する CompactRIO を選択してください 8. OK をクリックします 6. Add Targets and Devices( ターゲットとデバイスを追加 ) ダイアログボックスが表示されます Existing target or device( ( 既存ターゲットまたはデバイス ) のオプションボタンを選択し ターゲットまたはデバイスが開発用コンピュータと同じサブネット上にある場合は その下の Discover an existing target(s) or devices(s)( ( 既存ターゲットまたはデバイスを検出します ) のオプションボタンが選択されていることを確認してください 9. Select Programming Mode( プログラミングモードを選択 ) ダイアログボックスが表示されます ここでは サンプルに適したプログラミングモードを選択するようにします 電力品質監視スタータキットでは シャーシをスキャンモードではなく FPGA インタフェースモードにコンフィギュレーションしなければなりません または インストール済みのモジュールを検索して使用することも可能です いずれの方法を選択しても モジュールは後から簡単に追加できます ここまでの作業で コピー元で当初からターゲットとして設定されていた DEMO-9024 と ユーザが手順 7 で新たに追加したターゲットの合計 2 つのターゲットを含むプロジェクト ( 下図を参照 ) が作成されました 次は コピー元のターゲットからすべてのコンポーネントをドラッグして 新規のターゲットにドロップします 10. 旧ターゲットの RT CompactRIO コントローラを開いて その下層にある VI をドラッグし 手順 7 で新規ターゲット としてプロジェクトに追加した CompactRIO コントローラの ni.com/greenengineering/ja 40

下層の同じ相対位置にドロップします この時 VI が適切なターゲットの下に配置されるように注意してください つまり PQ Host Program(PQ ホストプログラム ) はリアルタイムターゲットの下に [FPGA] Main(FPGA メイン ) は当該のシャーシの下層にある FPGA ターゲットの下にドロップします また FPGA ターゲットの下層にある DATAU32 DMA チャンネルも忘れずにドラッグ & ドロップしてください 下図は PQ Host Program をコピー元のターゲットから新規ターゲットに移動した後の状態を示しています 11. フォルダについては 仮想フォルダを作成し そのフォルダを自動更新フォルダに変換することで サブ VI をすべてこのフォルダに移動させます まずディスク上のプロジェクトフォルダから適切なフォルダを選んで そのフォルダ内に仮想フォルダを新規作成してください 次に Convert to Auto-populating Folder ( 自動更新フォルダに変換 ) を選択します 12. チャンネルアドレス名は重要な役割を担います 以 下の手順を踏めば 統一性のあるチャンネル名を簡単に 割り当てることができます a. FPGA ターゲットを右クリックして New»C Series Modules dules ( 新規 >>C シリーズモジュール ) を選択 ni.com/greenengineering/ja 41

b. 自動で作成された関連フォルダ ( 通常はモジュール # と名付けられる ) を削除 c. PQ スタータキットのプロジェクト内にある名前と一致 するように モジュール名を変更 ( 例えば 電流なら I 電 圧なら V など ) d. 新たに名前を付けたモジュールを右クリックして New» FPGA I/O( ( 新規 >> FPGA I/O) と選択 e. これで モジュール名を使ってチャンネルにアクセス 可能 14. [FPGA] Main プログラムを開くと 実行の矢印ボタンが壊れていますが これは正常な状態です このプログラムを新規ターゲット上で実行するには 下記の手順で調整を実施してください a. NI 9225 と NI 9227 を同期させます どちらかのモジュールを右クリックして Properties( プロパティ ) を開き Export Onboard Clock( エクスポートオンボードクロック ) にチェックを入れてください 13. フォルダの作成と VI の移動 モジュールの検索が完了したら 旧ターゲットを右クリックして Remove from Project( ( プロジェクトから削除 ) を選択し プロジェクトから削除します ni.com/greenengineering/ja 42

b. もう一方のモジュールの Properties( プロパティ ) を開き Master Timebase Source( マスタタイムベースソース ) のプルダウンメニューから 手順 a でエクスポートしたモジュールを選択します これで シャーシ内で 2 台のモジュールの同期をとれるようになりました グコースも設けています リアルタイムアプリケーション開発や LabVIEW FPGA モジュールに関するクラスでは さまざまな CompactRIO アプリケーションの基礎について学習します 詳しくは NI のトレーニングに関するページをご覧ください c. 不良ワイヤがあるかを確認します チャンネルアドレスの名前が正しくない場合 I/O ノードの配線が破損している可能性があります チャンネルの順序が重要になるため V0 I0 V1 I1 というように正しい順序で並んでいるかどうかを確認して下さい ( 下図を参照 ) d. 不良ワイヤが無くなったら VI を保存して 閉じてくだ さい 15. PQ Host Program を開き フロントパネル上の Run( 実行 ) ボタンをクリックしてください サンプルを実行する前に FPGA VI のコンパイルを促すメッセージが表示されます コンパイルが完了すると サンプルは自動的に実行されます コンパイルにかかる時間はシステムによって異なりますが 通常は 20 分程度で完了します CompactRIO の高度プログラミング さらに高度なシステムを設計したり アプリケーシ CompactRIO 開発者ガイド ( 英語 ) をご覧ください この資料では CompactRIO に向けた多数のアプリケーションをまとめて包括的に学習できるほか これらのアプリケーションに最適な開発手法を紹介しています NI では CompactRIO 開発について個人的に学びたいと いうユーザを対象に 講師が実地で指導するトレーニン ni.com/greenengineering/ja 43

NI シングルボード RIO 組込制御システムによる 15% のエネルギー消費削減 " 市場投入までの時間を短縮することは最優先課題でした NI プラットフォームによって NI シングルボード RIO と LabVIEW を使用した 2 ヶ月という記録的な短期間での試作が可能となりました これにより 開発期間を 6 ヶ月分短縮できたことになります " Siddharth Verma, Saara Embedded Systems Pvt Ltd 課題 エネルギーパラメータ またインフラおよび企業資産の消費の管理 / 監視を効果的に行う 特に地理的に分散した複数の設備がある場合 ソリューション 堅牢性および柔軟性に優れた組込電力監視 / 制御システムを構築し NI シングルボード RIO と NI LabVIEW をベースとした設備管理を行って 大規模な設備のエネルギー消費を削減する 組込テクノロジのサービス / ソリューション統合型プロバイダである Saara Embedded Systems 社は 世界各国のお客様に組込設計および製品開発サービスをお届けしています 最先端の設計 / 検証サービス 研究開発サポート ソリューション設計 エンジニアリング プロジェクト管理 専門分野のテクノロジ およびシステム統合ソリューションを提供しています 当社はナショナルインスツルメンツ (NI) のアライアンスパートナーであるため NI による支援を受けられるというメリットを活用し なおかつ社内の設計力を発揮して コスト効率の高いエンドツーエンドソリューションを構築しています 組込電力監視 / 制御システム 当社の RFMS(Remote Facility Management System) は 設備やインフラの総エネルギー消費量を正確に監視し 管理します この RFMS は ディーゼル発電機 HVAC 標識ボード セキュリティシステム 冷凍設備 照明装置 非常用電源 プリンタ 飲料自動販売機 単一スイッチまたはバルブの開閉などが必要なデバイスなどへのリアルタイム制御を実現します 組込リモート端末 (RTU) の柔軟性により インフラの異なるポイントを監視し 管理することができるため RFMS は 効率の良いエネルギー消費および最適化のシステムと言えます インドにおける導入以来 あるお客様は RFMS によって 15% のエネルギー消費削減を実現しました RFMS を実装すると 燃料補充の頻度が大幅に減りました 補充が見通しの立つオンデマンドシステムに基づくようになったことと 燃料消費の計算が正確になったこと 燃料の窃盗問題が解決されたことが理由です リモート制御機能では 一貫したデジタル標識および空調のスイッチオン / オフ制御が行われます RTU を導入する支社の数が増加するにつれ 電力消費の節約も増加します オフィス内の一貫したポリシーによってカスタマサービスの質が大幅に向上したため お客様はエネルギー節約の先駆者として競争力を高めることができました 加えて 当社の RFMS の性能が良いため お客様は当社のソリューションにかかったコストをエネルギー節約によって 6 ヶ月で回収しています 電力監視 / 管理用 RTU の設計 NI シングルボード RIO に基づいたハードウェアソリューション このカスタム組込制御 / 監視システムは NI シングルボード RIO および LabVIEW をベースに設計しました NI シングルボード RIO は 高性能な多目的プラットフォームで オープンアーキテクチャを特長としており 独自のカスタム I/O モジュールを構築する柔軟性を備えているため アプリケーションに特化した I/O および通信のニーズを ni.com/greenengineering/ja 44

満たすことができます 当社が使用している NI sbrio-9601 デバイスは オンボードのリアルタイムプロセッサ FPGA(field-programmable gate array) およびデジタル I/O ラインを Ethernet および RS232 ポートとデータロギング用オンボードストレージと統合しています RS232 ポートがエネルギーメータと通信し リモートシステムからのデータは中央サーバに送信されますが その際に使用されるのは TCP/IP などのあらゆる通信プロトコル または ZigBee GPRS CDMA などの安全なワイヤレスモードです NI シングルボード RIO の柔軟性と設計により カスタムの Mezzanine ドータカードを作成し デジタル I/O コネクタに直接接続しました 作成したドータカードにはカスタム信号調節機能が含まれていて 様々な自社製センサの I/O 要件を満たしました これらのセンサは 照明 空調 自動販売機 ディーゼル発電機 燃料貯蔵設備といった異なるシステムパラメータからの信号を監視し 管理します RTU は アナログおよびデジタル I/O を制御し あらゆるセンサやソースからのデータを集録できます NI シングルボード RIO デバイスのケースおよびドータカードも作成し 任意の環境にソリューションを簡単に実装できるようにしました さらに LabVIE および NI シングルボード RIO を使用すれば 電源監視 / 管理の組込ソリューションに高度な機能を簡単に追加することができます こういった機能には Google マップとの Web ベースインタフェース ワイヤレス接続 あらゆるアナログおよびデジタルセンサとの接続などが含まれます LabVIEW ベースのソフトウェアソリューション 当社の LabVIEW の認定開発者は あらゆる点を網羅した それでいてシンプルな GUI を作成するのに成功しました これにより 実装は簡単になり お客様のエンジニアチームがシステムを学ぶ時間を短縮することができます LabVIEW ツールの生産性と LabVIEW の内蔵 UI 機能のおかげで 短期間でシステムソフトウェアを設計できました NI LabVIEW Real-Time モジュールおよび NI LabVIEW FPGA モジュールを使用して リアルタイムプロセッサおよび FPGA を NI シングルボード RIO でプログラミングしました NI LabVIEW FPGA を使用すれば FPGA をすばやくプログラミングして カスタムデジタル信号伝達で ドータカードに接続することができます LabVIEW および NI LabVIEW Real-Time の Web パブリッシュ機能を使用して 外挿データ ( エネルギー消費パラメータと場所特定のデータから構成されたデータ ) を業界標準の ASP.NET 経由で Web 上でリモート表示できる高度な機能を追加しました この GUI は 統合型ダッシュボードで表示でき どのような遠隔地からでもインターネットを使用して制御することができます NI ソリューションのメリット 当初 当社の設計チームでカスタム RTU を作成して電力監視 / 管理アプリケーションの要件を満たしましたが プロジェクトの動的性質とスケーラブルなソリューションのニーズから NI との共同作業に乗り出しました ナショナルインスツルメンツの市販ハードウェアおよびソフトウェアテクノロジを使用して 簡単に拡張できる 信頼性と堅牢性に優れたソリューションを実装できました これは NI 組込ツールの柔軟性と性能のおかげです さらに ハードウェアの堅牢性および信頼性の高さ そして 24 時間体制の NI のサポートがあったからこそ あらゆる気象条件の下でも機能し 亜大陸内のあらゆる通信サービスプロバイダにも対応する RTU ソリューションを作成することができました NI ハードウェアおよびソフトウェアは Web パブリッシュの内蔵機能も備えており 実装したシステムのリモートからのアップデートおよびプログラミングを可能にします これは リモート組込管理 / 監視ソリューションの主たるメリットです 堅牢な NI システムは当社のお客様の動的な要件を満たしました 市販の NI ハードウェアおよびソフトウェア そして Saara Embedded Systems 社製センサ ドータカード およびソフトウェアを組み合わせることにより エネルギー ni.com/greenengineering/ja 45

管理ソリューションを記録的な短期間で設計し 統合す ることができました ni.com/greenengineering/ja 46

Nucor 社 : NI LabVIEW と NI のハードウェアを使用した鉄鋼のリサイクル "PLC とラダーロジックでのプログラミングに対し LabVIEW と PAC を使ってプログラミングしたことで 効率が劇的に向上しプラントオートメーションにかかるコストを大幅に削減することができました " Dave Brandt, Nucor Corp 課題 : 州のエネルギー条例に準拠したエネルギー消費量の削減を実現する 安全性と効率性に優れた鉄鋼リサイクル施設のオートメーションシステムを開発する ソリューション : ナショナルインスツルメンツのプログラマブルオートメーションコントローラ (PAC) と NI LabVIEW グラフィカルプログラミング環境を使用して 鉄鋼のリサイクルに必要なエネルギー消費量を正確に計測し 施設の安全性を高めるプラントオートメーションソリューションを開発した 生産される鉄鋼の総量の 3 分の 2 は使用済みの鉄鋼が再利用され 北米で最もリサイクルの進んだ物質となっています 鉄鋼をリサイクルすると 原料から新たに生成する場合に比べエネルギー消費量を 60~74 パーセント削減できます これは 1,800 万世帯に必要なエネルギー量に相当します 鉄鋼リサイクルの改良 鉄鋼メーカーは 効率的で環境に優しいプロセスを目指し リサイクル工程の改良に常に取り組んでいます Nucor 社は環境資源の管理を重視しており その結果同 社は北米最大のリサイクル企業に成長しました 2005 年には オハイオ州マリオンにある Marion Steel Company を買収しました これは米国の鉄鋼の 60 パーセント近くを消費する地域の中核をなす地理的に重要な拠点となるものです 買収後も同社の高い設備基準を維持するには 施設の効率と安全性を高めるオートメーションシステムの実装が必要であることを直ちに認識しました NI ソフトウェアとハードウェアでエネルギー消費量を削減 マリオンの施設では リサイクルの鉄鋼を使って鉄筋 標識支柱 視線誘導標 ケーブルバリアシステムなど様々な製品を製造しています 鉄鋼のリサイクル工程では スクラップ金属を電気アーク炉で熱し 生産する鉄鋼の種類によっては粘性の鉄鋼に複数の成分を加えて合金鋼を生成します この工程では大量のエネルギーを消費しますが その量は溶鉱炉に加える金属の量に大きく左右されます マリオンの施設を買収した際には 溶鉱炉に入れる鉄鋼の量を推測で決めるしかなかったため 金属が過熱されることもしばしばでした そのようにして生産した製品は不十分なために再度リサイクルされることになり 時間とコストとエネルギーの浪費となっていました 過熱を防ぐため 同社では LabVIEW と NI Compact FieldPoint コントローラを使用して 1 回の加熱で使用する鉄鋼の量を正確に計算しました 溶鉱炉に入れるスクラップ金属の量を正確に知ることで 溶鉱炉を加熱するために必要な電力量も正しく計算することが可能となりました このスケールシステムを導入する前は 鉄鋼の計測は勘に頼っていました 新システムの導入以前は再加熱の回数を追跡する方法がありませんでしたが 新システム導入後の 2007 年には 6,000 を超えるバッチのうち再加熱は 10 回にとどまりました これは 2006 年に比べ大幅な減少です LabVIEW と NI CompactRIO でフリッカを除去 リサイクルのために溶鉱炉を加熱するのに大量の電力を消費すると 配電網にフリッカが起こるリスクが生じます 大量の電力を消費すると コスト面で不利益を被るだけ ni.com/greenengineering/ja 47

でなく 配電網のフリッカはマリオンの住民にも迷惑をかけることになります 電力消費量を削減するため 同社では LabVIEW FPGA モジュールと CompactRIO プラットフォームを使用して 配電網から引き込まれるエネルギー量を計測するオンラインリアクタを溶鉱炉と直列に設置しました 溶鉱炉が既定の限度値に達すると システムはすばやく制御方法を変更して引き込まれる電力量を減らします LabVIEW で施設の安全性を向上 Nucor 社では 従業員の安全を何よりも重視しています 今回の新システム導入のもう 1 つの目的は マリオンの施設を安全な職場にすることでした まず認識したのは EAF のオン / オフ切り替え方法を変更する必要性です 旧システムでは オペレータが手動でオン / オフスイッチを切り替える必要があったため ヒューズが飛んだときには負傷の危険がありました Compact FieldPoint PAC と HMI を使用してリモート電源スイッチを導入したことで オペレータを危険な場所に配置する必要がなくなりました NI PAC を使用したファクトリオートメーションのメリット NI のソフトウェアとハードウェアを使用して オハイオ州マリオンにある施設で電力消費量を大幅に削減し安全性に関わる問題を解消する様々なオートメーションシステムを開発しました PLC とラダーロジックでのプログラミングに代わって LabVIEW と PAC を使ってプログラミングしたことで 効率が劇的に向上しプラントオートメーションにかかるコストを大幅に削減することができました さらに ナショナルインスツルメンツのプラットフォームを使用して電力消費量監視に積極的に取り組んだ結果 配電網のフリッカが発生しなくなったことでマリオンの住民への不都合も軽減することができました ni.com/greenengineering/ja 48

アナログサンプリングの基礎 概要 このチュートリアルは ナショナルインスツルメンツの計測の基本シリーズの一環です このシリーズの各チュートリアルでは 理論や実用的な例を通して一般的な測定アプリケーションから特定のトピックを解説します このチュートリアルでは アナログサンプリングの基礎について説明します -3 db = 20 LOG (Vppout / Vppin) このとき Vppout = 出力波形のピーク-ピーク電圧 Vppin = 入力波形のピーク-ピーク電圧 = 1 V( 上記の例において ) -3 = 20 LOG (Vppout / 1) Vppout = 0.7079 V = 約 0.7 V このチュートリアルの内容を自習できるインタラクティブプレゼンテーションもご利用いただけます また アナログサンプリングの基礎のオンラインデモは こちらからご覧ください 図 1. 100 MHz デジタイザにより減衰された 100 MHz 正弦波 チュートリアルのリストについては 計測の基本メイン ページを参照してください 帯域幅の定義と計算 帯域幅は 一定の周波数範囲にわたって信号を大幅に減衰させずに回路または伝送チャンネルを通過させる度合いと定義されます 帯域幅は 信号振幅がパスバンド周波数より-3 db 低くなる上限周波数ポイントと下限周波数ポイントの差を測定したものです この-3 db ポイントは 電力半値ポイントと呼ばれます 単位ヘルツ (Hz) 例たとえば 帯域幅が 100 MHz の高速デジタイザに 1 V 100 MHz の正弦波を入力した場合 信号はデジタイザのアナログ入力パスによって減衰され サンプルされた波形の振幅はおよそ 0.7 V になります この 0.7 V という値は 次の式で算出されます 図 2. 100 MHz デジタイザの標準的入力応答測定信号における理論上の振幅誤差最小振幅誤差で信号をキャプチャするには デジタイザの帯域幅を測定信号における対象最高周波数成分の 3 ~5 倍にすることが推奨されます ( 必要周波数 = (3~5) x 対象周波数 ) 測定信号の理論上の振幅誤差は デジタイザ帯域幅 (B) と入力信号周波数 (fin) との比率 (R) で計算できます ni.com/greenengineering/ja 49

図 3. 信号の立ち上がり時間は 信号が最大信号振幅の 10% から 90% へ移行する時間範囲 このとき R = B / fin 方程式 1. 振幅誤差 最小立ち上がり時間エラーをキャプチャするには デジタイザ入力パスの立ち上がり時間を測定信号の 1/3 から 1/5 の立ち上がり時間にすることが推奨されます 測定された立ち上がり時間 (Tr m ) は デジタイザの立ち上がり時間 (Tr d ) と実際に入力される信号の立ち上がり時間 (Tr s ) を使って計算できます 方程式 1 を使うと 100 MHz 正弦波を 100 MHz 高速デジタイザで測定した場合 ( 比率は R=1) の振幅誤差は 約 29.3% になります 図 1 を参照すると この場合の入力波形のピーク-ピーク振幅は 1 V 出力波形のピーク-ピーク振幅は約 0.707 V になります 他にも例えば 周波数が 150 MHz の NI オシロスコープに 75 MHz 正弦波を入力した場合 比率は R= 2 となります 方程式 1 を使うと 理論上の振幅誤差は約 10.6% になります 方程式 2. 理論上の立ち上がり時間たとえば 立ち上がり時間が 3.5 ns の NI 5122 高速デジタイザで立ち上がり時間が 15 ns の正弦波信号を測定した場合 方程式 2 を使うと 正弦波信号の理論上の立ち上がり時間は約 15.4 ns となります インタラクティブプレゼンテーションを表示 立ち上がり時間帯域幅に関連するもう 1 つの重要な要素は立ち上がり時間です 入力信号の立ち上がり時間は 信号が最大信号振幅の 10% から 90% へ移行する時間であり 帯域幅に逆比例します サンプルレート サンプルレートは データをサンプルする速度です サンプルレートは 高速デジタイザの帯域幅仕様と直接関連はありません サンプルレートは 信号がアナログ入力パスを通過した後 デジタイザの ADC が入力信号をデジタル値に変換する速度です そのため デジタイザは アナログ入力パスが減衰 ゲイン および / またはフィルタなどを適用した後で信号をサンプルし 結果の波形をデジタル化します 高速デジタイザのサンプルレートは ADC が瞬間的なアナログ電圧をデジタル値に変換するタイミングを制御するサンプルクロックに基づいています 現在 NI M シリーズデータ集録デバイス ダイナミック信 号集録デバイス デジタルマルチメータなど 最大サン プルレートの異なる様々な製品が販売されています 測 ni.com/greenengineering/ja 50

定信号のタイプに基づいて お使いのアプリケーション に最適なデバイスをお選びください メモ : ナイキスト周波数 の定義は 計測器業界で確立されていません サンプルレート や 最高周波数成分 を示す用語として定理の中で使用されている場合があります このチュートリアルでは エイリアシングを回避できるサンプル周波数の最高周波数成分を ナイキスト周波数 と呼びます 単位サンプル / 秒 (S/s) 例 NI 高速デジタイザは デバイスの最大サンプルレートから分割されたさまざまな有効サンプルレートをサポートします デバイスの最大サンプルレートは 水晶発振器 ( デバイス上のハードウェアの 1 つ ) の振動レートにより決定されます ただし 最大サンプルレートを整数値で割ることにより より低いサンプルレートを設定できます たとえば 最大サンプルレートが 200 MS/s の NI 5124 高速デジタイザでは サンプルレートを 200/n MS/s(n = 1 2 3 4...) に設定できます サンプルレート設定は重要な要素です 図 5 は 様々なサンプルレートの影響を示しています ケース A では 周波数 f の正弦波が 同じ周波数 f でサンプルされています 再構築された波形では DC でエイリアス現象が発生しています ところが サンプルレートを 2f に高めると デジタル化された波形の周波数は正しくなりますが ( サイクル数は同じ ) 三角波として表示されます この場合は f がナイキスト周波数です サンプルレートを f よりも大幅に高く ( たとえば 5f) することにより より正確な波形を再現することができます ケース C では サンプルレートは 4f / 3 ナイキスト周波数は(4f / 3) / 2 = 2f / 3 です fはナイキスト周波数よりも高いため このサンプルレートでは 周波数と波形が共に正しくないエイリアス波形が生成されています 図 4. 3 ビットデジタイザを使ってサンプルされた正弦波インタラクティブプレゼンテーションを表示 ナイキスト定理とナイキスト周波数 ナイキスト定理は サンプルレート (fs)> 2 測定信号の最高周波数成分 で 対象信号の最高周波数成分をキャプチャするには 信号の最高周波数成分の 2 倍以上のレートでサンプルする必要があるとします これが実行されないと 高周波成分は対象スペクトル内の周波数 ( パスバンド ) でエイリアス現象を起こします 図 5. 信号サンプリングにおけるサンプルレートの影響インタラクティブプレゼンテーションを表示 ni.com/greenengineering/ja 51

エイリアス処理とアンチエイリアスフィルタ ナイキスト周波数の 2 倍を下回るサンプルレートで信号をサンプルすると 正しくない低周波数成分がサンプルデータに表示されます この現象をエイリアスと呼びます 以下の図は 6 MS/s の ADC によってデジタル化された 5 MHz の正弦波を示します 点線は ADC が集録したエイリアス信号を示します 5 MHz の周波数がパスバンドでエイリアス現象を起こしており 不正確な 1 MHz の正弦波として表示されています イキスト周波数よりも大きい入力信号の周波数をすべて減衰するローパスフィルタ ) を設定する必要があります たとえば NI 4461 ダイナミック信号集録デバイスでは デジタル入力のエイリアスを防ぐ目的でアナログフィルタとデジタルフィルタの両方がハードウェアに装備されています 入力信号は 最初に固定アナログフィルタを通過し ADC のレンジ外にある周波数成分を含む信号はすべて除去されます 次に デジタルアンチエイリアスフィルタがカットオフ周波数を自動的に調節し プログラムされたサンプルレートの半分よりも高い周波数成分をすべて取り除きます 図 6. エイリアス現象が発生した正弦波 例サンプル周波数 fs が 100 Hz で 入力信号に 25 Hz 70 Hz 160 Hz および 510 Hz の周波数が含まれているとします 以下の図に これらの周波数を示します エイリアス周波数 エイリアス周波数は 入力信号の周波数とサンプルレー トの最も近い整数倍数の差の絶対値です エイリアス周波数 = ABS( サンプル周波数の最も近い整数倍数 入力周波数 ) ここで ABS は絶対値を表します 実世界では 多くの信号にナイキスト周波数より高い領域の周波数成分が含まれています このようにエイリアス現象を起こした周波数が 正しくサンプルされた信号成分に追加されてしまうと サンプルデータに歪みが生じます サンプルされたデータを使用してシステムで正確な測定を行うには サンプルレートを十分高く ( 信号の最大周波数成分の 5~10 倍 ) 設定してエイリアスを防ぐか 入力信号の帯域幅を制限してサンプリング基準を満たすために ADC の前段に任意でアンチエイリアスフィルタ ( ナ 図 7. 入力信号の周波数以下の図に示されているとおり ナイキスト周波数 (fs/2= 50 Hz) 未満の周波数は正しくサンプルされています ナイキスト周波数以上の周波数では エイリアス現象が発生しています たとえば F1 (25 Hz) は正しく表示されていますが F2 (70 Hz) F3 (160 Hz) および F4 (510 Hz) は エイリアスにより 30 Hz 40 Hz および 10 Hz として表示されています ni.com/greenengineering/ja 52

図 8. 測定した信号の周波数と ADC 通過後エイリアスが発生した周波数エイリアス F2 = 100 70 = 30 Hz エイリアス F3 = (2)100 160 = 40 Hz エイリアス F4 = (5)100 510 = 10 Hz インタラクティブプレゼンテーションを表示 量子化誤差 量子化は アナログ信号をデジタル信号に変換するプロセスと定義されます 量子化は アナログ-デジタル変換器 (A/D 変換器または ADC) で実行されます アナログ信号をデジタルデータストリームに変換すると PC やソフトウェアを使って信号の操作や計算ができます これを実行するには 明確 ( かつ制限された ) 離散時間でアナログ波形をサンプルし アナログドメインとデジタルドメインの時間関係を密接に保つ必要があります こうすることにより 信号をデジタルドメインに再現して処理し さらに必要に応じて信号をアナログドメインに復元しなおすことができます 時間分解能は ADC の最大サンプルレートにより制限されます 図 9 に示されているように たとえサンプルレートを無限に高めることができたとしても そのサンプルレートは 入力信号のような真の 連続時間 にはなりえません このような限界は確かにありますが 実世界のほとんどのアプリケーションにおいてこれは非常に有益です しかし 時間分解能と振幅分解能が上がるほど デジタル表記の有用性も当然高くなります 振幅分解能は ADC の離散出力レベルの数により制限されます たとえば 3 ビットの ADC は レンジを 8 区分 (2 3 ) に分割します 000 から 111 の間のバイナリコードまたはデジタルコードは各区分を表します ADC は アナログ信号の各測定値をデジタル区分の 1 つに変換します 図 10 は 3 ビットの ADC によって取得された 5 khz 正弦波のデジタル画像を示しています 図 11 に示されているように 変換器のデジタル区分はアナログ信号の異なる電圧を表すには少なすぎるため デジタル信号は元の信号を正確に表示していません しかし 分解能を 16 ビットに上げて ADC の区分数を 8(2 3 ) から 65,536(2 16 ) に増やすと 16 ビットの ADC はアナログ信号を非常に正確に表示できるようになります アナログ値をデジタル化する際に生じるこの不確実性は 量子化誤差と呼ばれます 量子化誤差は エラー ノイズ および非線形性のほかに 変換器のビット数により異なります 図 10. 3 ビットの ADC によって取得された 5 khz 正弦波のデジタル画像 図 9. アナログ信号をデジタルドメインに変換する場合は 離散時間で信号値を集録する ni.com/greenengineering/ja 53

図 12. 8 ビット測定と 14 ビット測定の比較 図 11. 3 ビット ADC を使用した場合の量子化誤差図 12 は 14 ビットデジタイザ (NI 5122 高速デジタイザ ) と 8 ビットデジタイザ (NI 5112 高速デジタイザ ) を使って 2.5 V 入力レンジで信号を取得した場合を示しています 8 ビットデジタイザまたはオシロスコープによる 256 の離散電圧ステップに比べて 14 ビットデジタイザによる 16,384 のステップの方が入力信号を正確に表現していることが分かります さらに 高分解能デジタイザを使うと 複数のタイプの時間領域測定および周波数領域測定を 1 つの機器で行うことができます このグラフには 時間領域測定および周波数領域測定に高分解能デジタイザを使用した場合の利点が明らかに示されています 8 ビット = 256 離散レベル 12 ビット = 4,096 離散レベル 14 ビット = 16,384 離散レベル インタラクティブプレゼンテーションを表示 ディザリング 時間ドメインで量子化する場合は 十分な速度でサンプルすることにより波形データの情報をほぼ完全に維持できます 振幅ドメインでは ディザリングにより波形データの情報をほとんど維持することができます ディザリングとは 入力信号に意図的にノイズを追加する作業を指します これにより 振幅分解能における小さな差分が平坦化されます ランダムノイズは 隣接するレベル間を信号がバウンスできるように追加します もちろん これだけでは信号のノイズが大きくなるだけです しかし 信号を集録した後このノイズをデジタル平均化すると信号は平滑化されます メモ : ディザリングなしでデジタル信号を数学的に平均化しても 量子化ステップを排除することはできません この場合 図 13bに示されているように 信号は単に丸め込まれます ni.com/greenengineering/ja 54

図 14. ディザリングにより 12 ビットデバイスの量子化誤差を削減する インタラクティブプレゼンテーションを表示 図 13. 正弦波入力に対するディザリングおよび平均化の影響 例 NI 6070E マルチファンクション DAQ デバイスなどのいくつかの NI E シリーズデータ集録 (DAQ) 製品では ソフトウェアでディザリングを完全に有効または無効にできます ( 平均化の方法は設定できません ) ソフトウェアを有効にすると 約 0.5 LSBrms のガウスホワイトノイズが入力信号に追加されます このノイズは 信号が ADC に入力される前に追加されます これにより ボードが検知できる最小電圧差 ( コード幅と呼ばれる ) 内にある信号は そのコード境界の上下をランダムにバウンスします サンプルされるとポイントは境界の上下両方に表示され コード幅の上部や底部にあるポイント数は実際の信号の場所により決定されます その後 平均化機能を使ってボード指定の分解能を超えるまで拡大することで 高帯域幅ノイズの影響がより少ない確度で測定できます たとえば ディザリングを有効にすると 12 ビットボードは 14 ビットの分解能で動作することができます また 平均化を使用しない高速アプリケーションに対してはディザリングを無効にすることも可能です ni.com/greenengineering/ja 55

完全な電力品質解析プラットフォームを NI CompactRIO を使って商用品で構築 " 電力品質アナライザの ENA(ELCOM Network Analyzer) ファミリは 最新の国際規格に合わせて または追加機能を求める顧客のニーズに応じて 短期間で容易に修正したり拡張したりすることが可能です " 大きな量を貯蔵しておくことが簡単にはできないので常に供給を続ける必要がありますし 消費前に品質保証書をチェックすることもできません 例えば 品質の低い電力は生産ラインに多大な損害をもたらす可能性があります そこで 電力品質を監視すれば 深刻な金銭的損害につながる前に 潜在的な問題を検出できるようになります 低品質の電力による損害を防ぐのは比較的安価に済みますが 実現手法については 最優良事例 ( ベストプラクティス ) の設計検討を適用するシンプルな方法から 監視 制御用装置の世界規模での導入に至るまで 多岐にわたります 何を計測すべきか Daniel Kaminský, ELCOM, a.s. 課題 : 電力品質の解析に必要なすべての指標値を計測でき 複数台を並列に動作させられる電力品質アナライザを 複数の計測器を組合わせたリアルタイム OS 搭載の小型ハードウェアシステム上に実装する さらに 計測アルゴリズムとデータ処理アルゴリズムを設計する際に最新の IEC(International Electrotechnical Commission) 規格や EN(European Norm) 規格に対応できるように システムの拡張性を確保しておかなければならない 標準的な電力品質アナライザは 電力網内の 3 つの電圧 ( 三相 ) を計測し それを基に国際規格で定義されている電圧品質を算出します 電圧品質を定義する要素は 周波数と 電圧レベルの変動 フリッカ 三相系の不平衡 高調波スペクトル 全高調波歪み 信号電圧レベルです 場合によっては 電圧だけでなく 電流信号との解析が必要になります それによって 電流パラメータを解析できる他 有効電力や無効電力 エネルギーといった間接的な指標値を算出することも可能です ソリューション : 堅牢性と拡張性に優れたハードウェアプラットフォームである NI CompactRIO や グラフィカル開発プラットフォームの NI LabVIEW などの商用品 (COTS: Commercial-Off-The-Shelf) をベースに 電力品質の国際標準規格に準拠した電力品質アナライザを構築する なぜ電力品質の計測が重要なのか? 電力は 電気事業者にとってはお客様に提供する 製品 そのものです また電力は 現代の商工業社会において最も重要な 原料 だと言っても過言ではないでしょう 電力は 生活にもビジネスにも不可欠な存在でありながら その他一般の必需品とは特性が大きく異なります つまり 図 1. 電力品質の監視機能を組込んだ電力配電網の模式図当社 (ELCOM 社 ) は 電力品質を解析するソフトウェアとハードウェアをまとめたモジュール式の複雑なシステムを ni.com/greenengineering/ja 56

ENA(ELCOM Network Analyzer) と呼んで提供しています この製品は 電力品質を国際規格や各国の国内仕様に沿って監視することが可能です 開発プラットフォームを選択する際の検討事項 当社は 自社システムを実装する際に ナショナルインスツルメンツ (NI) の NI CompactRIO プラットフォームをベースとし そこに C シリーズのモジュールを組合わせる手法を選択しました NI CompactRIO は PC ベースの計測器に比べて堅牢性に優れ サイズも高さ 88 mm 幅 180 mm 奥行 90 mm(3.4 インチ 7 インチ 3.5 インチ ) と小型です また 広い動作温度範囲 ( 動作温度 :-40 C ~+70 C) を確保している上 消費電力も非常に低く ( 約 8W) 抑えられています さらに CompactRIO 製品ファミリにさまざまなフォームファクタのモデルが用意されているのも 当社としては重要なポイントでした 顧客やアプリケーションごとに異なったニーズに対応する必要があるからです た 当社は CompactRIO ベースの電力品質アナライザとして 使用する CompactRIO モジュールや入力モジュールが異なる数種類のモデルを用意しています ENA 電力品質アナライザのファームウェアを稼働させるには 最低限 400 MHz プロセッサコントローラと 2 M ゲート FPGA( フィールドプログラマブルゲートアレイ ) を内蔵したシャーシが必要です CompactRIO ベースの電力品質アナライザ 本稿では ENA450 というモデルを紹介します ただし当社はこのモデル以外にも 顧客やアプリケーションごとの異なるニーズに対応する フォームファクタの異なる複数のモデルを用意しています それらは CompactRIO 製品ファミリの拡張性や LabVIEW コードの優れた移植性によって実現できました このように完璧な柔軟性を備える CompactRIO システムをベースにした実装 (ENA450.EC) の他に 当社は下記のようなシステム構成のターンキーソリューションも設計しました 多彩な I/O モジュールの中から 当社は 300 V の計測範 1 つのシャーシでリアルタイムプロセッサと再構成可能な囲に対応する高電圧計測用アナログ入力モジュールの FPGA を組合わせた統合型 CompactRIO システム NI 9225 を選びました このモジュールは 110 V 電力網 (ENA450.EB ENA450.NB) の相線 中性線間 (line-to-neutral) 計測や相線間 CompactRIO システムの 3 つの主要コンポーネント ( リア (line-to-line) 計測 240 V 電力網の相線 中性線間計ルタイムプロセッサ FPGA I/O) を 1 枚のプリント回路基測に適しています 電流計測には NI 9227 を使いました 板に統合したシングルボード RIO システム NI 9225 と NI 9227 で同時に 50 ks/ 秒で各チャンネルをサンプリングすることで 三相電力測定の他 フリッカやアナライザの機能は 計測用のハードウェアとソフトウェ高調波 力率といった電力品質の計測を高い精度で実アによって定義されています ENA 電力品質監視システ行できます もう 1 つの方法として アナログモジュールムは アナライザのリモート制御や 保存したデータの解の NI 9215 をベースに自社製の信号調節装置を組合わ析 インターネットを介した電力品質データの表示などをせた電力計測モジュール (EL9215U-R1) と電流計測モ可能にするソフトウェアアプリケーション群を収録していジュール (EL9215I-R1) も作製しました これらのデバイます モジュール式のコンセプトを採用することで コストスは CompactRIO シャーシの 3 つのスロットに組込みまを最小限に抑えながらすべての顧客のニーズに応えるこす とが可能になりました ENA を構成するソフトウェアコンポーネントはすべて NI LabVIEW で開発しました LabVIEW は簡単に使える上 に 移植性や拡張性にも優れているため 大変有用でし ni.com/greenengineering/ja 57

計測機能 ファームウェアの ENA-Node( 画像ギャラリーをご覧ください ) は CompactRIO ベースの ENA450 アナライザ上で直接稼働し データの集録と計算 保存のすべてを担う計測サービスを提供します ENA-Node は 以下に挙げるソフトウェアモジュールを含 んでおり これらのモジュールが並行に動作します 図 2. ENA450 の配線図 電力線との接続方法 FFT アナライザ 計測可能な指標値を以下の表に示します ベクトルアナライザ 電力潮流モニタ フリッカメータ EN50160 電圧モニタ 半周期 RMS モニタ 電圧のテレグラムとアラーム デジタル入力 上記のファームウェアモジュールはいずれも 50 Hz と 60 Hz の電力系に適しています ユーザは 計測器のディスプレイ上でデータを確認したり そのデータをデータファイルに保存したりすることが可能です 計測器はすべて チャンネル当たり 9.6 ks/ 秒のサンプリングレートで動作 します このサンプリングレートは 計測した信号の周波数に同期しています 実装したアルゴリズムは IEC61000-4-30 や IEC61000-4-15 IEC61000-4-7 といった電力品質規格の要件に準拠しています このソフトウェアは 電力網の三相電圧信号 ( 最大 300 V rms) と三相電流の瞬時値を解析して さまざまな指標値を算出します 具体的には RMS 値や周波数 高調波スペクトル 全高調波歪み (THD) フリッカ 三相系の不平衡 有効電力 無効電力 エネルギーといったさまざまな指標値を求めることができます 電流については 変流器の出力 (1A/5A) を電流入力モジュールの NI 9227 で直接計測したり 当社製の電流計測モジュールである EL9215I-R1 をカレントクランプを介して接続して計測したりすることが可能です 計測器制御とデータ管理 レポート作成用のユーザインタフェース ENA-Touch は ENA の計測サービス用の使い勝手に優れたグラフィカルなユーザインタフェースです ユーザはこのインタフェースを介して 計測器の制御や データの表示 計測設定をすべて行うことができます 計測した指標値は 見やすく構成された画面に表示します データの視覚化用パネルは 2 種類あり 1 つは固定的な組合わせの指標値を表示するパネルです もう 1 つは 表示する指標値をユーザが設定でき 表示方法についても 表形式や周波数領域グラフ スコープ ベクトルスコープ 電力品質の統計結果など さまざまな形式を選べるパネルです ENA-Touch ユーザインタフェースは タッチスクリーンディスプレイによる制御に向けて最適化されており ni.com/greenengineering/ja 58

ディスプレイの解像度が 800 480 画素の超小型ノート PC(UMPC:Ultra Mobile PC) でも使えます ENA-Touch は TCP/IP プロトコルを利用し Ethernet を介して ENA-Node をリモートで制御することが可能です このシステムでは データをすべてオンラインで表示すると同時に オフライン解析用にデータを保存することもできます 計算した指標値は逐次収集し 一部のデータについては保存前に統計的な処理を施します データはあらかじめ設定しておいた時間間隔で周期的に保存されますが イベントベースのデータについてはイベントが発生したタイミングで直ちに保存されます ル I/O や GPS や GSM の無線モジュールを新たに追加することが可能です 当社は 柔軟性に優れた NI CompactRIO と NI LabVIEW を活用することで PMU(Phase Measurement Unit: 位相計測装置 ) アナライザを数週間という期間のうちに完全な状態で実装することができました この PMU アナライザは IEEE C37.118-2005 規格に沿って同期フェーザを高い精度で評価することが可能です 当社は現在 この PMU アナライザと 電力品質アナライザの ENA450 を単一の計測器に統合する取り組みを進めています ENA-Report を使用すれば 保存したデータをオフライン で簡単に析できる他 レポートも生成することも可能で す ENA で分散型の電力品質監視システムを構築 ENA450 アナライザを複数台使用すれば 分散型の監視システムを構築できます この分散型システム上にあるデータは MS-SQL や ORACLE といったデータベースに複製できるので 一括保存やオフライン解析も可能です まとめ 本稿で紹介した電力品質監視システムの最大のメリットは 優れた性能と高い柔軟性 そして小型のフォームファクタです 信号調節機能を内蔵する C シリーズモジュールを採用し 強力で使い勝手の良いソリューションを実装することで ソフトウェアの保守を大幅に簡素化できる上 既存のソリューションに影響を及ぼすことなく 派生システムを開発することが可能になりました 現行の規格が更新されたり変更されたりしても 計測器の機能を素早くアップデートできるため システムを最新の状態に維持できます しかもこのソリューションはオープン性が高いので 顧客のニーズや既存の SCADA システムへの統合に合わせて通信プロトコルを調整し 他のシステムと簡単に統合できます ハードウェアもオープンなアーキテクチャを採用しているため 監視や制御に使うデジタ ni.com/greenengineering/ja 59

環境エンジニアリング用プロトタイピングキットのスタートアップガイド 概要 このスタートアップガイドでは ナショナルインスツルメンツ (NI) の組込ソフトウェア評価キットと 2 つの NI C シリーズモジュールを用いる電力監視システムのプロトタイプをセットアップする方法を 手順を追って説明します このプロトタイプでは NI LabVIEW 2009 と LabVIEW Real-Time モジュールおよび FPGA モジュール LabVIEW 用電力計測 (EPM:Electrical Power Measurement) パレットを使って NI sbrio-9631 デバイスをプログラミングします 本稿では 試験用のサンプル負荷を動作させて電力と電力品質の基本的な計測する方法について説明します を行います 次に 上表の電力計測 (EPM) パレットのリンクをクリックして EPM パレットをダウンロードし インストールします インストールが完了したら PC を再起動してください Download NI 電力監視プロジェクト (LabVIEW 8.6 用 ) NI 電力監視プロジェクト (LabVIEW 2009 用 ) 組込ソフトウェア評価キットの使用方法をステップバイステップで紹介するスタートアップガイド I. ハードウェアを接続する まず NI C シリーズモジュールと電源 イーサネット 負荷 電流変換器を接続します 使用するコンポーネント a. C シリーズモジュールを接続します i. NI 9229 を NI sbrio-9631 の Mod2 ポート に接続します ソフトウェアのインストール 組込ソフトウェア評価キットに同梱されているソフトウェア DVD を PC に挿入し 画面の指示に従ってインストール ii. NI 9225 を NI sbrio-9631 の Mod3 ポートに接続します b. 電源とイーサネットポートを PC に直接接続します ni.com/greenengineering/ja 60

i. 同梱の電源を NI sbrio-9631 の電源入力に接続します iii. トロイダルコイル型電流変換器から NI 9229 の AI0+ に正極線を接続します ii. 同梱のイーサネット配線を NI sbrio-9631 のイーサネットポートに接続します iv. トロイダルコイル型電流変換器から NI 9229 の AI0-に負極線を接続します v. 電流変換器とネジ留め式端子コネクタが確実に接続されているかどうか 接続した配線を連結部付近で軽く軽く引っ張って確認してください e. Mod3(NI 9225) を負荷に接続します i. 同梱の 2 ピンネジ留め式端子コネクタを NI 9225 のチャンネル 0 に挿入します ii. 負荷の正極側端子から NI 9225 の AI0+ に正極線を接続します c. 負荷と電流変換器を外部電源に接続します ( 上図を参照 ) i. 正極線を 120 V 電源から トロイダルコイル型電流変換器を介して負荷の正極側端子に接続します ii. 負極線を 120 V 電源から負荷の負極側端子に接続します d. Mod2(NI 9229) を電流変換器に接続します i. 同梱の 2 ピンネジ止留め式端子コネクタを NI 9229 のチャンネル 0 に挿入します ii. オプション : 電流変換器の余分な配線を取り除きます このとき センサとモジュールを接続するのに十分な長さを残すようにしてください iii. 負荷の負極側端子から NI 9225 の AI0- に負極線を接続します 注 : 電流変換器から余分な配線を取り除いていた場合は その配線をここで使用できます iv. 負荷と NI 9225 が確実に接続されているかどうか 接続した配線を連結部付近で軽く引っ張って確認してください II. ハードウェアを構成する 次は NI 組込評価セットアップユーティリティを使用して NI シングルボード RIO デバイスの IP アドレスを構成します この作業を行うには 評価版ソフトウェアをあらかじめインストールしておかなければなりません a. Windows のスタートメニューから Programs» National Instruments» Embedded Evaluation と進み セットアップユーティリティを立ち上げます ni.com/greenengineering/ja 61

b. セットアップユーティリティの指示に従ってス テップ 1 からステップ 5 まで作業を進め ハード ウェアの構成を完了してください d. RT NIEP Monitor.vi をダブルクリックして その Real-Time VI を開きます III. ハードウェアをプログラミングする 最後に NI シングルボード RIO ターゲットに向けてプロジェクトをセットアップします 後はこのプロジェクト内のリアルタイムプログラムを実行するだけで そのリアルタイムプログラムがターゲットに実装されます a. Electrical Power Monitoring sbrio( 電力監視 sbrio) フォルダを開き NIEP Monitor sbrio.lvproj をダブルクリックして プロジェクトを立ち上げます b. Project Explorer( プロジェクトエクスプローラ ) ウィンドウ上で ターゲットである NI sbrio-9631 を右クリックしてください ショートカットメニューから Properties( プロパティ ) を選択すると General ( プロパティ全般 ) の設定画面が表示されます e. 実行の矢印ボタンを左クリックして RT NIEP Monitor.vi を実行します c. IP Address/DNS Name(IP アドレス /DNS サーバ名 ) のテキストボックスに NI 組込評価セットアップユーティリティで設定した IP アドレスを入力し OK をクリックしてください ni.com/greenengineering/ja 62