ヨーロッパポーランド158 世界の鉱業の趨勢 2008 ポーランド 主要データ 国名 ( 英名 ) ポーランド共和国 (Republic of Poland) 面積 (km 2 ) 312,679 海岸線延長 (km) 440 人口 ( 百万人 ) 38.5(2008 年 7 月推定 ) 人口密度 ( 人 /km 2 ) 123.1 GDP( 百万 US$) 420,300 一人当り GDP(US$) 16,300 一人当り銅使用量 (kg/ 人 ) 7.8 主要鉱産物 : 鉱石 ( 千 t) 銅 :452.0 鉛:59.9 亜鉛:126.0 銀:1306.8(t) 主要鉱産物 : 地金 ( 千 t) 銅 :533.0 鉛:80.0 亜鉛:158.9 鉱業管轄官庁 環境保護 天然資源 森林省 (EPNR&F) ポーランド地質研究所 鉱業関連政府機関 同上 鉱物エネルギー経済センター (CMEE クラクフ[Krakow]) 鉱業法 1994 年 2 月に公布された新鉱業法 (Geological and Mining Law) ロイヤルティ 有 外資法 外国投資法に基づく また 同国首相は 2008 年 4 月 国営企業の民営化 4 ヵ年計画を発表し 2008 年から 2011 年の間で国営企業 740 社の持ち株を一部または全てを 総額 140 億 US$ で売却する予定である これらの企業には KGHM 公社も含まれており 国内の経済競争力の向上 および他国の戦略に倣った外資の導入を目標としている 環境規制法 ( 環境影響調査制度 環境 排出基準の有無等 ) - 鉱業公社 KGHM Polska Miedź S.A( 政府シェア 41.79%) 鉱業活動中の民間企業 ZG Trzebionka S.A ZGH Boleslaw Northern Mining 社等 近年の鉱業関連問題 ( 資源 ナショナリズム 労働争議 特になし 環境問題等 ) 2007 年のトピックス 1. 非鉄金属一般概況ポーランドは 欧州における石炭及び銅鉱石の最大生産国の一つであるほか 1 次鉛及び亜鉛の生産国でもある 2007 年の同国における銅鉱石生産量は世界第 10 位 銀鉱石においては世界第 6 位であり 銀の埋蔵量は世界第 1 位の 140 千 t とされている (Mineral Commodity Summaries 2008 による ) なお 銅および銀の生産量は 全て KGHM の生産によるものである 2007 年の鉛鉱石生産量に関しては 世界第 9 位 亜鉛鉱石量は世界 2008 年 4 月 国営企業の民営化 4 年計画を発表 KGHM は 2007 年 5 月に シェア 2.5% を Kompania Węglowa S.A 社 ( ポーランド石炭会社 ) に譲渡し 現在 ポーランド財務省が有する同社のシェアは 41.79% と減少した Northern Mining 社が 同国ニッケル鉱床の権益 80% を獲得し 国内初の外資企業が探鉱プロジェクトを開始 16 位であった ポーランド地質調査所 (Poland Geological Institute) が 2005 年に発表した地質データによれば 同国の経済性を有する鉛 亜鉛鉱石量は 170 百万 t( 金属含有量は Zn 6.63 百万 t Pb 3 百万 t) であるとしている 2. 鉱業政策の主な動き 2-1. 国営企業の民営化ポーランド首相は 2008 年 4 月 国営企業の民営化 4 ヵ年計画を発表した 本計画によれば 2008~2011 年間で国営企業 740 社の持株を一
ポーランド部または全てを 総額 140 億 US$ で売却する予定である これらの対象企業には KGHM も含まれており 国内の経済競争力の向上 および他国の戦略に倣った外資導入を目標としている しかしながら 金融市場の逼迫による通貨流動性の世界的抑圧により 欧州連合等の反対が予想されており 本計画が完了するのは 早くとも 2011 年になると見込まれている 3. 主要鉱産物の生産 消費 輸出 輸入動向 表 3-1. 主要非鉄金属の生産量 消費量 ( 単位 : 千 t 但し銀のみ t) ヨ鉱石生産量地金生産量地金消費量鉱種 2006 年 2007 年 2006 年 2007 年 2006 年 2007 年 世界の鉱業の趨勢 2008 159 銅 497.1 452 556.6 533.0 268.9 298.7 鉛 50 59.9 96 80 107.5 75.8 亜鉛 126 126 133.9 158.9 100.3 118.3 ニッケル - - - - 2.1 1.7 銀 1,306.3 1,306.8 - - - - 出典 :World Metal Statistics Year Book 2008 表 3-2. 主要非金属地金の輸出量 ( 単位 : 千 t) 鉱種 2006 年 2007 年 増減率 (%) 2007 年輸出上位 3 カ国 銅地金 287.7 239.5-16.8 ドイツ フランス 中国 鉛地金 27.1 30.6 12.9 ドイツ イタリア 英国 亜鉛地金 62.3 72.4 16.2 ドイツ スロバキア イタリア 出典 :World Metal Statistics May 2008 ICSG/ILZSG Monthly Bulletin May 08 表 3-3. 主要非金属地金の輸入量 ( 単位 : 千 t) 鉱種 2006 年 2007 年 増減率 (%) 2007 年輸入上位 3 カ国 銅地金 112.7 61.3-45.6 N/A 鉛地金 38.6 26.4-31.6 スウェーデン チェコ ルーマニア 亜鉛地金 28.7 31.8 10.8 スペイン ルーマニア ドイツ 出典 :World Metal Statistics May 2008 ICSG/ILZSG Monthly Bulletin May 08 4. 鉱山会社活動状況 動向等 : 2007 年 5 月までポーランド財務 1 KGHM 省が同社のシェア 44.28% を保有していたが 沿革 :KGHM は ポーランドの大手銅公社 2007 年 5 月には そのシェア 2.5 % を で 2007 年の銅鉱山生産量 441 千 t は世界 Kompania Węglowa S.A 社 ( ポーランド石炭会 第 8 位 銀地金生産量 1,215t は世界第 3 位 社 ) に譲渡し 現在 ポーランド財務省が有 である KGHM は同国内に 本部および 10 箇 するシェアは 41.79% に減少した その他 所に部門を設置し それら部門は 3 銅山 ドイツ銀行 (5.01%) JP Morgan Chase 社 (Lubin 鉱山 Polkwice-Sieroszowice 鉱山 (4.76%) 等が同社のシェアを保持している Rudna 鉱山 ) 3 か所の製錬所 (Głogów 製錬所 前年に引続いて粗鉱品位が平均 Cu1.67% ま Legnica 製錬所 Cedynia 線材工場 ) 選鉱場 で低下したことや 国家労働視察団による鉱 尾鉱堆積場 鉱山 / 選鉱場の緊急センター 山労働者の労働時間の制限命令により 2007 データ処理センターからなる 年の同社の銅鉱石採掘量は前年比 3.3% 減の ーロッパ
ヨーロッパポーランド160 世界の鉱業の趨勢 2008 30.3 百万 t となった これに伴い 2007 年の電気銅の生産量も前年比 -5.9% の 533 千 t となった しかしながら 同社の売上高はヘッジ取引による損失の減少 銅および銀の価格上昇により 前年比 7.8% 増加している 2007 年は 探鉱費が前年に比べて 20.3% 増加した これは銅回収率向上のための選鉱技術の開発 そして Głogów 鉱床プロジェクトの開発投資によるものである 同社は国内より生産コストの安い国外での製 錬所開発を目指し 同社の 100% 子会社である KGHM Congo SPRAL が Kimpe 湿式銅製錬プロジェクトを開発していたが 同プロジェクトの採算性と DRC コンゴにおける地政学的リスクが要因となり 2006 年 7 月より同プロジェクトは休止している 中国の五鉱集団公司は 1 月中旬に KGHM と 2008 年に 3 億 US$ に相当する電気銅 4 万 t を購入する契約を締結した KGHM からの電気銅を直接輸入する契約関係は 1997 年以降継続している 表 4-1.KGHM の財務状況 ( 単位 : 百万 ) 2006 年 2007 年 増減率 (%) 売上高 2,993 3,226 7.8 営業利益 1,129 1,240 9.8 当期損益 924 1,005-33.4 探鉱費製錬所開発費総額 0.95 0.62 1.57 1.15 0.43 1.58 21.1-30.3 0.6 出典 :KGHM Annual Finance Report 2007 5. 鉱山 製錬所状況 5-1. 操業中の鉱山 表 5-1. ポーランドの主な稼働鉱山 鉱山名 企業 鉱種 採掘方法 Lubin KGHM Polska Miedz Cu, Ag UG Polkowice- Sieroszowice KGHM Polska Miedz Cu, Ag UG Rudna KGHM Polska Miedz Cu, Ag UG Trzebionka ZG Trzebionka S.A. Zn, Pb UG Pomorzany ZGH Boleslaw Zn, Pb UG 1 Lubin Polkowice-Sieroszowice Rudna 銅 銀山 (Cu,Ag) KGHM が所有する 3 銅山は 欧州でも最大の銅山の一つであり 現在稼動している銅山は Lubin Polkowice-Sieroszowice 及び Rudna で ポーランド南西部に位置し 鉱山操業範囲は 468km 2 に及ぶ 3 銅山の銅鉱石の採掘権の有効期間は 2013 年までであるが 現在鉱山開発が 行われている Rawanice Wschod は 2015 年 RudnaⅡは 2046 年までとなる Polkowice- Sieroszowice 鉱山では 貴金属鉱化帯において銀のほかに 金や PGM 品位の向上も確認されている 2007 年は 鉱山労働者の労働時間制限命令および粗鉱品位が低品位であったため 銅精鉱生産量は前年に比べ 18.8% 減少している
ポーランド表 5-2.Lubin Polkowice-Sieroszowice Rudna 鉱山の生産量 2006 年 2007 年 増減率 (%) 粗鉱処理量 (t) 25,903,000 23,940,400-7.6 銅精鉱生産量 (t) 556,624 451,900-18.8 銅品位 Cu(%) 1.79 1.67-12.0 出典 :KGHM Annual Report 2007 表 5-3.Lubin Polkowice-Sieroszowice Rudna 銅 銀山の推定および確定鉱石埋蔵量 ヨ鉱石埋蔵量品位品位銅含有量鉱区名 ( 百万 t) Cu(%) Ag(g/t) ( 百万 t) Lubin 280.031 1.27 79 3.543 世界の鉱業の趨勢 2008 161 Polkowice-Sieroszowice 348.922 2.69 54 9.374 Rudna 398.248 1.83 43 7.301 出典 :KGHM Annual Report 2006 2 Trzebionka Pomorzany 鉱山 (Zn,Pb) Trzebionka SA 社と ZGH Boleslaw 社の 2 社に ポーランドにおける鉛 亜鉛産業は 同国の よって行われている ZG Trzebionka 社が所有 主要鉱産物である銅に次いで古くから生産され する Trezebionka 鉱山の現在の年間生産能力は てきている 鉛 亜鉛鉱石の中心は ポーラン 亜鉛 3,000t/ 年 鉛 1,000t/ 年であるが 鉱量 ドの南西部に位置する Silesia-Cracow 地域で 枯渇のため 2008~2009 年に閉山が予定されて ある 同地域では 中世より鉛 亜鉛の生産が いる ZGH Boleslaw 社が操業する Pomorzany 行われてきたほかに 未開発の Zawiercie 地域 鉱山は 2014~2019 年間の操業が予定されて 等からなる 14 ヵ所の未開発鉱床が存在する いる 鉛及び亜鉛生産は 地元企業である ZG 5-2. 探鉱プロジェクト 表 5-4. ポーランドにおける主な探鉱プロジェクト プロジェクト 企業 鉱種 プロジェクト状況 Glogow Gleboki Przemyslowy KGHM Cu Ag 生産準備段階 Szkary Northern Mining 社 Ni ボーリング調査 1 Glogow Gleboki Przemyslowy プロジェクト されている (Cu,Ag) 動向等 :2007 年 5 月までには シャフト 3 沿革 :KGHM の最も重要な探鉱案件は 台 坑内の探鉱設備 インフラ設備などの建 Rudna 鉱山に隣接する Głogów Gleboki 設を完了し 鉱石運送系統システムの改良を Przemyslowy 銅 銀探鉱プロジェクトである 行っている 2008 年にはシャフトがもう 1 同プロジェクトは 2004 年に開始され 長 台増設される予定である 期的な生産を維持するための投資計画が検討 ーロッパ
ヨーロッパポーランド162 世界の鉱業の趨勢 2008 権益 : KGHM 100% 鉱床型 : 不明 ( 鉱種 :Cu, Ag) 採鉱方法 : 坑内採掘 ( マインライフ : 未発表 ) 埋蔵量 [ 推定及び確定鉱石埋蔵量 ]:268 百万 t ( 品位 Cu 2.4% 含有量 Cu 6,432 千 t 品位 Ag 78.0g/t) 生産計画 :2012 年操業開始 銅生産量 10 万 t/ 年 ( 生産コスト : 未発表 ) 初期起業費総額 :618 百万 US$ 2 Szklary プロジェクト (Ni) 沿革 : これまで探鉱を行っていた Geologia I Ocharona Srodowiska(GEPCO) 社が 2007 年 3 月 Northern Mining 社 ( 以下 NMI 社 本社 : 豪 Perth) にキャッシュ 20 万豪 $(161,659US$) および NMI 社の 4 百万株式の発行により 同プロジェクトの権益 80% を売却した なお 残り 20% は NMI 社社長が経営する Lockett Consulting Services 社が所有している 動向等 :NMI 社と KGHM は 2008 年 6 月 Szklary 鉱床を再評価するための共同 FS 調査に調印した 2008 年 4 月には新たなボーリング調査結果を発表し 着鉱幅 2m( 深度 22m) 品位 Ni 1.72% 着鉱幅 3.3m( 深度 11m) 品位 Ni 1.19% を捕捉している 権益 : Northen Mining 社 ( 本社 : 豪 Perth 権益 80%) Lockett Consulting Services 社 ( 本社 : 豪 Perth 権益 20%) 鉱床型 : ラテライト鉱床 ( 鉱種 :Ni) 採鉱方法 : 露天採掘 ( マインライフ : 未発表 ) 資源量 [ 推測鉱物資源量 ]:14,644,000t( 品位 Ni 0.8%) 生産計画 : ニッケル生産量 :1 万 t/ 年 初期起業費総額 :300 百万 US$
ポーランド6. 我が国との関係 2007 年の日本の対ポーランド貿易は総額 2,380 億円 ( 日本からの輸出 1,934 億円 日本への輸入 446 億円 ) で 日本からの主要輸出品目は自動車 輸入品目は自動車部品である 2007 年 5 月 日 ポーランド国交回復 50 周年で 麻生外相 ( 当時 ) がポーランド訪問した際は ポーランド外相から日本の投資を強く感謝 歓 図 5-1. 主な稼動鉱山および探鉱案件の位置図 凡例 : 操業鉱山 探鉱開発 世界の鉱業の趨勢 2008 163 ヨーロッパ迎するとともに さらなる投資貿易拡大への期待が表明された 7. その他トピックス 2007 年 日本がポーランドから主要非鉄金属を輸入した実績は無い (2008.6.27/ ロンドン事務所フレンチ香織 )