NIES公開シンポジウム2017 家庭からの環境負荷発生 - 持続可能なライフスタイル に向けて 2017年6月23日 東京会場 メルパルクホール 国立環境研究所 社会環境システム研究センター 金森有子
家庭の電気使用量 600 電気消費量(kWh) 500 400 年平均 300 200 100 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 皆さんのご家庭の電気使用量と比較できますか 1
皆さんの考えていること 私の家と比べて多い 同じくらい 少ない 電気代で示してくれれば 比較できるけれど 家での使用量なんて 皆目見当がつかない Think globally, Act locally (広い視野を持って考え 身近なことから行動する) 2
今日お話しすること 1 家庭での主な環境負荷の発生 排出状況 2 環境負荷の削減量の目標と達成可能性 3 持続可能なライフスタイルに向けて 3
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 生活に伴い発生する環境負荷 エネルギー消費 /CO2排出量 家庭部門 業務部門 住宅内のエネル ギー使用に伴う CO2排出量 電気使用に伴う CO2排出量を含む 業務部門施 設でのエネ ルギー使用 に伴うCO2排 出量 運輸部門 輸送機器の 使用に伴う CO2排出量 産業部門 モノの生産 に伴うCO2排 出量 廃棄物/ごみ 家庭ごみ 業務部門から のごみ 生産に伴う 廃棄物 水使用 家庭での水使用 に伴う汚水 業務部門での 水使用に伴う 汚水 産業部門で の水使用に 伴う汚水 4
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 2500 250 2000 200 1500 150 1000 100 500 50 0 CO2排出量(MtCO2) エネルギー消費量(GJ) エネルギー消費量とCO2排出量 0 コークス 灯油 LPG 都市ガス 電力 熱 再生可能エネルギー CO2 2015年度 平成27年 度 の温室効果ガス排 出量(確報値 (GIO) と総 合エネルギー統計(資源 エネルギー庁)から作成 エネルギー消費量は 2000年から2010年頃最も多い10年間であったが 近年減少傾向 CO2排出量は東日本大震災後急激に増加したが 今は減少 傾向 5
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 CO2排出係数とは 1単位のエネルギーを使用する 燃焼する 際に 発生す るCO2の量を表す係数 灯油 (1L) CO2 (2.49kgCO2) 都市ガス (1m3) CO2 (2.23kgCO2) 電気 (1kWh) CO2 (5.00kgCO2) CO2 石炭 石油 ガス 水力 CO CO22 太陽光 6
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 滋賀発表資料 エネルギー消費量 環境省 家庭からの二酸化炭素排出量の推計 に係る実態調査 より作成 エネルギー消費の用途は 暖房 冷房 給湯 厨房 その他動力 エネルギー消費量の特徴は地域によって大きく異なる 北海道 近畿 その他動力 34% 厨房 4% 暖房 22% 30.87 GJ/世帯 49.1 GJ/世帯 その他動力 テレビや冷蔵庫 照明などの機器を 動かすために使われるエネルギー 暖房 49% 給湯 27% 冷房 2% 給湯 35% 厨房 7% その他動力 20% 冷房 9% 沖縄 20.63 GJ/世帯 その他動力 51% 厨房 11% 冷房 0% 暖房 1% 給湯 28% 7
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 東京発表資料 エネルギー消費量 環境省 家庭からの二酸化炭素排出量の推計 に係る実態調査 より作成 エネルギー消費の用途は 暖房 冷房 給湯 厨房 その他動力 エネルギー消費量の特徴は地域によって大きく異なる 北海道 関東甲信 その他動力 20% 厨房 4% その他動力 32% 厨房 6% GJ/世帯 暖房 22% 31.16 GJ/世帯 49.1 給湯 27% 冷房 2% 給湯 38% その他動力 テレビや冷蔵庫 照明などの機器を 動かすために使われるエネルギー 暖房 49% 冷房 9% 沖縄 20.63 GJ/世帯 その他動力 51% 厨房 11% 冷房 0% 暖房 1% 給湯 28% 7
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 エネルギー消費量とCO2排出量 生活スタイルは皆同じなのか 大きく異なる 電気の支払額 (円/月) 60000 50000 2004年9月 夫婦のみ世帯 夫婦ともに60歳以上 40000 30000 20000 10000 0 0 500 1000 世帯数 1500 8
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 エネルギー消費量とCO2排出量 増加要因 人口 世帯構造の変化 世帯数の増加 世帯人員数の減少 による非効率化 機器の増加 例えば温水洗浄便座等 機器の大型化 テレビの大型化 増加or減少要因 多様なライフスタイル 環境配慮型の生活/家族の活動時間 が全員バラバラ 電気のCO2排出係数の変化 減少要因 機器の高効率化 今までより少ないエネルギー消費で機器 が稼働すること 9
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 700 30000 600 25000 500 20000 400 15000 300 10000 家庭排出ごみ 200 1人あたり家庭排出ごみ 5000 100 0 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 0 (g/日 人) 35000 日本の廃棄物処理(環 境省) から作成 一人あたりごみ排出量 ごみ排出量(千t) 家庭ごみ排出量 家庭排出ごみ 生活系ごみ 集団回収量 資源ごみ 資源として利用される直接搬入ごみ 家庭排出ごみは 国の総量 一人あたり排出量のいずれも排出量が減少 例えば2015年度は10年前と比較し 総量 一人あたりいずれも15 程度減 少 10
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 家庭ごみの内容 家庭ごみの組成を見ると 容器包装が23 製品等が77 その他の可燃物, 1.8 その他の不燃物, 1.5 流出水分等, 1.2 ガラス類 容包, 6 容器包装廃棄物の使 用 排出実態調査(平成 28年度調査)(環境省) か ら作成 金属類 容包, 1.8 金属類 製品, 1.6 紙類 製品, 25.3 厨芥類, 30.9 湿重量基準 容包 は 容器包装の略 紙類 容包, 6.7 繊維類, 4.1 プラスチック類 製品, 1.9 プラスチック類 容包, 8.6 木 竹 草類 製品, 7.3 ゴム 皮革類, 1.2 11
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 家庭ごみ排出量 増加要因 人口 世帯構造の変化 増加or減少要因 多様なライフスタイル モノ を多く購入 / あまり購入 しない 減少要因 包装の簡略化 容器 財の軽量化 ペットボトルの軽量化等 ごみの有料化 リサイクルの進展 有料化と合わせて 自治体の取り組み の進展 12
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 生活用水使用量 全国の水使用量 (億m3) 146 330 144 320 142 310 140 138 300 136 290 134 280 132 130 270 一人あたり水使用量(L/日) 水使用量/汚水発生量 ( 都市活動での使用量を含む) 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 全国 一人あたり 水の使用量は 国全体 一人当たりいずれも減少傾向 ここ10年(2001-2011)で水使用量は約9 減少 13
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 水使用量 主な水の使用用途は トイレ 洗濯 炊事 入浴 洗面 その 他 用途別の水使用量が大きく変化 平成14年度 洗面 その 洗面 その他, 6% 他, 8% 洗濯, 17% 平成24年度 風呂, 24% 洗濯, 15% 風呂, 40% 炊事, 17% 炊事, 23% トイレ, 28% トイレ, 22% 東京都水道局 平成14年度一般家庭水使用目的 別実態調査から作成 東京都水道局 平成24年度一般家庭水使用目的 別実態調査から作成 14
1. 家庭での主な環境負荷の発生状況 水使用量 水使用量/汚水発生量 増加要因 人口 世帯構造の増加 増加or減少要因 多様なライフスタイル 節水型ライフスタイル/水多消費型 ライフスタイル 入浴スタイル 洗車 庭の広さ 減少要因 節水型設備の普及 トイレ 節水型機器の普及 洗濯機 節水用品 節水型シャワーヘッド 節水コマ 15
2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 家庭ごみ 水使用に関する目標 環境負荷に関する目標 廃棄物 第三次循環型社会形成推進基本計画 平成25年制定 目標年次 平成32年度 2020年度 家庭排出ごみ量は500g/日 人 平成12年度 約660g 比約25 減 生活系ごみ処理の有料化実施地方公共団体率 耐久消費財の平均使用年数 2R 減量 (Reduce) 再利用 (Reuse) の取り組み 循環型社会に関する意識 行動 水使用 節水 雨水等の雑用水の利用 16
2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 家庭部門におけるCO2の削減 家庭部門のCO2排出量は 2013年比で2030年に39 削減 2030年以降も更なる削減を求められる 250,000 CO2排出量 (ktco2) 200,000 2013年比で 150,000 39 削減 100,000 50,000 0 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 17
2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 家庭部門でCO は削減できるか 2030年 2 達成可能性 2030年の削減目標を達成するには 家庭が間接的に関与 電気のCO2排出係数 機器の効率改善 家庭が直接関与 機器の更新 省エネ型ライフスタイル 140 CO2排出量(MtCO2) 135 130 125 120 115 110 機器効率 シェアの変化 を考慮 省エネ型 ライフスタイル を考慮 削減目標ライン 特に暖房の温 度設定を下げる こと 入浴の際には 給湯量が減る工 夫 家電機器利用 の際の無駄遣い を防ぐこと C1では気温上昇によ る暖房 冷房需要への 影響を考慮 C2: B+省エネ型 B: A+機器効率 A: 人口 世帯 C1: B+省エネ型 FIX BAU LCS1 LCS2 シェアの変化 ライフスタイル ライフスタイル 構造の変化 国環研の 研究成果 18
2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 家庭部門でCO は削減できるか 2050年 2 達成可能性 2050年に例えば80 削減を達成するには 家庭が間接的に関与 電気のCO2排出係数 機器の効率改善 家庭が直接関与 電気製品へのシフト 省エネ型ライフスタイル 120 CO2排出量(MtCO2) 50%削減ライン 100 60%削減ライン 80 70%削減ライン 60 80%削減ライン 40 20 0 A: 人口 世帯 B: A+機器効率 FIX BaU シェアの変化 構造の変化 電気の排出係数 0.37 0.37 kgco2/kwh LCS C: B+省エネ型 LCS ライフスタイル LCS 0.19 0.011 0.19 0.011 kgco2/kwh kgco2/kwh 国環研の 研究成果 19
2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 家庭部門でCO 排出削減目標達成への懸念 2 達成可能性 高齢化社会の進展 ー高齢者の機器の買い替え意欲は低い ー在宅時間が長い テレビ 使用する家電機器が購入から何年 経過したか 60歳以上 60歳以上 50-59歳 50-59歳 40-49歳 40-49歳 30-39歳 30-39歳 29歳以下 29歳以下 環境省 家庭からの二酸化炭素排出量の推計 に係る実態調査 より作成 0% 20% 40% 60% 80% 100% 20年以内 エアコン 冷蔵庫 60歳以上 60歳以上 50 59歳 50-59歳 40 49歳 40-49歳 30 39歳 30-39歳 29歳以下 29歳以下 古 0% 20% 40% 60% 80% 100% 10年以内 60歳以上 60歳以上 50 59歳 50-59歳 40 49歳 40-49歳 30 39歳 30-39歳 29歳以下 29歳以下 新 0% 20% 40% 60% 80% 100% 20
世帯数分布 16% 14% 12% 10% 8% 6% 4% 2% 0% H22 2000万円以上 1500 2000万円 1200 1500万円 H17 1100 1200万円 1000 1100万円 H12 900 1000万円 800 900万円 700 800万円 600 700万円 500 600万円 400 500万円 300 400万円 200 300万円 100 200万円 100万円未満 2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 家庭部門でCO 排出削減目標達成への懸念 2 達成可能性 高齢化社会の進展 広がる経済格差 ー低所得世帯が増加し 高収入世帯が減少 H27 21
2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 家庭部門でCO 排出削減目標達成への懸念 2 達成可能性 高齢化社会の進展 ー高齢者の機器の買い替え意欲は低い ー在宅時間が長い 広がる経済格差 ー低所得世帯が増加し 高収入世帯が減少 住宅の選択 ー住宅は一度建てられたら30-40年 それ以上 使用 ー住宅に付随する設備は使用年数が長い ー2050年に現在の住宅がそれなりに残っている可能性 22
2. 環境負荷削減量の目標と達成可能性 環境負荷排出の少ない生活とは? 目標達成の考え方 地球温暖化問題/エネルギー問題 省エネ 廃棄物問題 3R ( Reduce(減量), Reuse(再使用), Recycle(再生利用)) 水資源問題 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ こまめにスイッチオフ 待機電力を削減 エアコンで節電 冷蔵庫で節電 照明で節電 テレビで節電 他にもこんなところで節 電 環境省 COOL CHOICE HPより 節水 持続可能なライフスタイル (Sustainable lifestyle) 23
3. 持続可能なライフスタイルに向けて 持続可能なライフスタイルとは Sustainable lifestyles are patterns of action and consumption, used by people to affiliate and differentiate themselves from others, which: meet basic needs, provide a better quality of life, minimise the use of natural resources and emissions of waste and pollutants over the lifecycle, and do not jeopardise the needs of future generations. 持続可能なライフスタイルは 基本的なニーズを満たし より良い生活の質を提供し ライフサイクルにわたり天然資源の使用と廃棄物と汚染物質の 排出を最小限に抑え 将来世代のニーズを脅かさない ような 行動と消費 使用のパターンである 引用元 マラケシュタスクフォースでの定義 https://esa.un.org/marrakechprocess/pdf/issues_sus_lifestyles.pdf 24
3. 持続可能なライフスタイルに向けて 持続可能なライフスタイルとは 基本的なニーズと生活の質 基本的なニーズ (Basic needs) (1) 消費のための家族の最低限の必需品 適切な食糧 住居 衣服や家庭用品や家具など (2) 安全な飲料水 衛生設備 公共交通機関 保健施設 教育施設など コミュニティ全体が提供する必須サー ビス Employment, Growth and Basic Needs: A One-World Problem, http://staging.ilo.org/public/libdoc/ilo/1977/77b09_355_engl.pdf 生活の質(Quality of life; QOL) 健康 人間関係 家族 コミュニティ 物質的豊かさ 仕事 安全性 自由 平等といった様々な要素で構成さ れるもの 個人の考える より良い生活の質 には 価 値観や嗜好なども強く影響する 25
3. 持続可能なライフスタイルに向けて 私 あなた にできることは何か 我慢をして節約生活を送るしかないの 我慢し続けるだけの生活を 持続 させることは困難です 夏場に 冷房28 に設定 に固執して 熱中症になった ら本末転倒です 現在の機器を利用した便利で快適な生活を否定すること も 非現実的です でも 何かを変えることが必要です 26
3. 持続可能なライフスタイルに向けて 私 あなた にできることは何か 環境負荷の削減は お得 です 無駄なエネルギー消費の削減 無駄な財の購入を減らすこ とで 無駄な出費を防げます 日々のエネルギー使用に伴い 地球温暖化対策税 再生 利用エネルギー発電促進賦課金 が徴収されています 地球温暖化対策税 石油 天然ガス 石炭といったすべての化石燃料の利用 に対し 環境負荷に応じて広く薄く公平に負担を求めるもの 再生利用エネルギー発電促進賦課金 再生可能エネルギーの買取りに要する 費用は 電気のご使用量に応じた賦課金として 電気を使用する客が負担 温室効果ガスの削減が進まない限り 私たちの温室効果ガ ス削減への出費は増えるばかりです 27
3. 持続可能なライフスタイルに向けて 私 あなた にできることは何か 生活の見直しは各自のスタイルに合わせて 細かい努力が好き 得意な方は 次のスライドに示す省エ ネのポイントを確認して 生活の改善点を探して下さい 毎日の見直しが面倒な方は 機器の買い替えの際に高効率 機器の導入 住宅へのHEMS(Home energy management system)を導入するという手もあります 日本人の判断を示すことができます 電気 ガスは選べる時代 商品を購入する際に 生産時の CO2排出量がわかる時代に変わるかもしれません 今後 地球温暖化対策に対して私たちの判断が迫られます 28
3. 持続可能なライフスタイルに向けて 省エネのポイント 機器の稼働時間を短く 使用していない機器のプラグを抜く 保温時間は短く 機器の稼働強度は適切に 冷暖房の温度設定 換気をしてから冷房 冷蔵庫の温度設定 機器の稼働規模は適切に こたつの布団カバー お湯を無駄に使用しない 家庭でエネルギーを 多く消費する 代表的な機器 冷蔵庫 テレビ 照明 温水洗浄便座 エアコン 電気機器の特性を知る 熱を出す電気機器は 電気を多く消費 炊飯器 ポット 洗濯乾燥機 ドライヤー 温水洗浄便座等 29
3. 持続可能なライフスタイルに向けて 家庭の電気消費量 最初のスライドを 覚えていますか 全国平均 平成26年10月から平成27年9月 600 世帯人数 2.49人 電気消費量(kWh) 500 400 年平均 300 200 100 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 30 環境省 家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査 より作成