WWF『生きている地球レポート2014』要約版(日本語)

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アジア近隣 5 カ国における牛乳乳製品の輸入動向 資料 5-2 各国とも輸入額全体に占める脱脂粉乳及び全脂粉乳の割合が高い 高付加価値商品の販売が見込めるチーズ 育児用粉乳等についても各国で一定の割合を輸入 中国の輸入市場は規模が大きく 最近伸びているが割合の小さい LL 牛乳 (2.6%) 市場で

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なぜ自然資本プロトコルが必要か 企業活動によって自然資本が保護され強化されている世界を想像してみてほしい これに対して 現在私たちが住んでいる世界を考えてみてほしい このふたつの世界のずれから 私たち全員が直面している大きな環境問題に取り組む上で 企業が果たすことができ また果たさなければならない重

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間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

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のような事象でさえ わずか数分前の警告によって生命を救えることもある リスクの発生を定期的に再検討することが重要である たとえば 気候変動やその他の変化の結果として極端な気象現象 ( 暴風雨 熱波 野火など ) の発生頻度や激しさが高まる可能性があり 新たな地球物理学的データやその他のデータによって

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このような IUU 漁業の現状があります 本レポートは IUU 漁業の日本における リスクを把握するために 行った分析研究です 調査の背景 1974年から2013年までの水産資源 の状態を比べてみると 健全な資源 状態の水産資源が占める比率が確実 IUU漁業の現状 100 政府 NGO 漁業産業は

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Transcription:

LIVING PLANET REPORT 2014 PLACES 森林 河川や岩礁など自然の生態系は 健全で回復力がある地域社会をつくる基盤である PEOPLE 私たちが必要としているもの 福利 繁栄は自然に依存している SPECIES 生きている地球指数によると 1970 年以降脊椎動物の個体数は半減した 1986 Panda symbol WWF World Wide Fund For Nature (Formerly World Wildlife Fund) WWF is a WWF Registered Trademark. WWFジャパン ( 公益財団法人世界自然保護基金ジャパン ) 105-0014 東京都港区芝 3-1-14 日本生命赤羽橋ビル6F TEL: 03-3769-1711( 代表 )FAX: 03-3769-1717 SPACES 人間の需要は地球 1.5 個分の自然資源を利用するまでになり 生態系への負荷は増加している NASA 生きている地球レポート 2014 要約版 INT WWF.ORG REPORT IT N 2014 生きている地球 レポート 2014 要約版

人間の自然に対する需要が非持続可能生物多様性は急速に減少している 1970 52パーセント減少した 現在の自然資源を必要とする 人間が自然資本を使い対応がますます困難になった 人口増加 であり しかも増加の一途をたどる中 年以来 世界の生物種の個体数はに対する需要を満たすには 1.5 個の地球込んでしまい 未来の世代の需要へのと1 人当たりの大きなフットプリントという 二重の影響が 資源にかかる圧力を何倍 にも増幅させている 人間開発の水準が 高い国ほどエコロジカル フットプリント が増大する傾向がある 世界の国々が 人間開発を発展させつつ フットプリント を世界規模で持続可能な水準に抑える ことが課題となる 突発的または後戻り できない環境の変化を引き起こす 地球 の境界 を われわれはすでに踏み越えて しまったかもしれない 人類の福利は 水 耕作地 魚 木材などの自然資源 そして 受粉 栄養循環 土壌侵食防止など の生態系サービスに依存する 世界の 最貧層が最も脆弱であり続ける一方 食糧 水 エネルギーの保障という互い に関連する問題は 万人に影響を与える WWFの地球 1 個分という観点は 自然資産の保護 より良い生産 より賢い消費 金融投資の流れの 改革 公平な資源管理に重点を置き 生きている地球のため の解決策を提供する 現在の方向を変え 別の進路を 見つけることは簡単ではない だが それは 可能である WWF Living Planet Report 2014 Summary page 2 Summary page 3

序文 だれもが当事者 生きている地球レポート の最新版を読もうとするなら 気丈な人でなければならない 最も衝撃的な点は 哺乳類 鳥類 爬虫類 両生類 魚類を代表する 1 万以上の個体群の調査から算出した 生きている地球指数 (LPI) が 1970 年以降 52% 低下したことである 人間の二世代にも満たない期間に 脊椎動物の個体群の規模が半分に減少したのである 地球上の生命を維持する生態系の基盤を構成する生物は 人間のたった一つの故郷である地球に対して私たちが何をしているのかを示すバロメーターである 私たちがこの減少を無視することは 自らへの危険を招くことである 人間は 意のままに使える地球が一つ以上あるかのように 自然の恵みを利用している 生態系と自然のプロセスが供給できるよりも多く利用することで 私たちは自分たちの未来そのものを脅かしている 自然保護と持続可能な発展には密接な関係がある それらは 生物多様性と手つかずの自然を守ることだけでなく 人類の未来 すなわち 福利 経済 食糧の確保 社会の安定 つまり人類の存続そのものを確保することでもある 多くの人が貧困状態にある世界では 自然を守ることが贅沢であるかのように見えるかもしれない しかし 実はその逆で 世界の最貧層の人たちにとって 自然は生命線なのである 重要なことは だれもが当事者だということである 世界のどこで暮らそうと 人は誰もが栄養のある食物 新鮮な水 きれいな空気を必要とする 状況があまりに悪いため 未来を前向きにとらえることは難しいかもしれない 確かに困難ではあるが 不可能ではない 問題を引き起こした私たち自身の中に 解決策を見い出すことができるからだ 歴史におけるこの破滅的な章を閉じ 自然との調和の中で生き 繁栄できる未来を築くために 私たちが今のところつかみ損ねている機会を先の世代がつかめるよう 努力を重ねる必要がある 私たちは全員がつながっている 私たちはひとつになって かけがえのない地球の未来を守る解決策を見つけ 実行することができる マルコ ランベルティーニ (Marco Lambertini) WWF インターナショナル事務局長 WWF-Canon / Matthew Lee 私たちは 歴史上の破滅的な章を閉じ 自然との調和の中で生き 繁栄できる未来を築くための機会をとらえなければならない 図 1: 経済を作る社会を支える生態系 生きている地球レポート2014 このブックレットは WWFの生きている地球レポート (Living Planet Report )- 地球の現状 すなわち生物多様性 生態系 人間の自然資源への需要の変化と それらが人類にとって意味することをまとめた2 年に一度の出版物 -の第 10 回目のものの要約版である 完全な形のレポートは wwf.panda.org/lpr からダウンロードできる 生きものとすみか 人々の営み 社会と経済は健康な地球に依存する 持続可能な発展が国際的な課題として重要な位置づけになってから四半世紀以上が経過した 人々は発展の環境 社会 経済的側面を真剣に論じている にもかかわらず 私たちは環境的要素に相当な負担をかけて 経済的要素をふくらませ続けている これは 私たちが生態系に根本的に依存していることを理解せず 社会的 経済的進歩を台無しにする危険を冒していることにほかならない 社会と経済の持続可能性は 健康な地球の存在によってのみ可能である 経済を創り出す社会を生態系が支える 逆の方向ではまわらない だが 人間は自然界の産物にすぎないにもかかわらず 環境や生物物理系を形づくる支配的な力を持つようになった その結果 自らの健康 繁栄 福利だけでなく 未来そのものを脅かしている 生きている地球レポート 2014 (Living Planet Report 2014) は 私たちが地球にかける負荷の影響を明らかにする そして 社会に対して何を意味するかを探る この報告書は 現在から今後何世代にもわたり 地球が全人類を支え続けられるようにするための選択と手段の重要性を裏づける 生態的領域 経済的領域 社会的領域 WWF Living Planet Report 2014 Summary page 4 Summary page 5

生きている地球 ~ 野生のマウンテンゴリラの生息数はわずか 880 頭ほどにすぎない - コンゴ民主共和国 (DRC) のヴィルンガ国立公園には約 200 頭が生息する - 依然絶滅寸前の状態ではあるが 集中的な保護の努力によって 大型霊長類の中で唯一 個体数が増加している naturepl.com / Andy Rouse / WWF-Canon ヴィルンガにはマウンテンゴリラをはじめとする 218 種の哺乳類 706 種の鳥類 109 種の爬虫類 78 種の両生類 植物 2,000 種以上が生息する ところが 公園の 85% に石油採掘権が設定され 長期的な将来が懸念されている 石油採掘は生息地の劣化を引き起こし その結果 公園は保護区指定を解かれ 世界遺産リストから抹消され 野生生物がますます脆弱になる危険性がある 生息地の消失と劣化 狩猟 気候変動は 世界の生物多様性が直面する主な脅威である それらは 1970 年以来 生きている地球指数の 52% もの低下 ( つまり 地球にすむ哺乳類 鳥類 爬虫類 両生類 魚類が半分に減少した ) を引き起こした

生きている地球指数 脊椎動物の個体群の規模が過去 40 年間で半減 世界の生物多様性の状況は かつてないほど悪化している 何千種におよぶ脊椎動物の個体群動態を計測する 生きている地球指数 (LPI) は 1970 年から 2010 年の間に 52% 低下した ( 図 2) これは 全世界の哺乳類 鳥類 爬虫類 両生類 魚類の個体数が 平均すると 40 年前の約半数になったことを示す 地球全体の生物多様性を忠実に反映するよう 最新の手法を用いたところ 以前に報告された値をはるかに上回る減少という結果となった 生物多様性は温帯と熱帯の両方で低下しているが 熱帯の方が低下の幅が大きい 1970 年から 2010 年の間に 温帯の生きている地球指数は 1,606 種の 6,569 の個体群で 36% 低下した 熱帯の生きている地球指数は 1,638 種の 3,811 の個体群で 56% 低下した 最も減少したのは中南米で 83% の低下である 低下の主な原因は 生息地の消失と劣化 狩猟と漁業による利用である 主な脅威として次に挙げられるのは気候変動で 将来 個体群にさらに強い圧力をかけるとみられる 図 2: 生きている地球指数 (LPI) 世界の生きている地球指数は 1970 年から 2010 年の間に 52% 減少した これは 平均すると脊椎動物種の個体群は約 40 年前と比べて半分の規模に減少したことを示す この指数は 3,038 種の哺乳類 鳥類 爬虫類 両生類 魚類の 10,380 の個体群動態をもとに計算されたものである 白線は指数の値を示し 陰影部分は 95% の信頼限界を示している (WWF, ZSL, 2014) 凡例 世界の生きている地球指数 信頼限界 -39% 1970 年から 2010 年の間に陸域の生きている地球指数は 39% 低下 -76% 淡水生物種の生きている地球指数は平均 76% 低下 陸域の生きている地球指数 1970 年 ~2010 年の間に陸域の生物は 39% 減少し この傾向が衰える兆しはない 人による土地利用 特に農業 都市開発 エネルギー生産での利用による生息地の消失が 引き続き主な脅威であり さらに狩猟の脅威もある 淡水の生きている地球指数淡水の生きている地球指数は平均 76% 低下した 淡水生物種に対する主な脅威は 生息地の消失と分断 汚染 外来種である 水位の変化と淡水系のつながりの変化 - 例えば灌漑や水力発電所などによる - が 淡水の生息地への主な影響である 2 指数の変化 (1970 年 =1) 1 0 1970 1980 1990 2000 2010 年 -39% 1970 年 ~2010 年の間に海洋生物種の生きている地球指数は 39% 低下 海洋の生きている地球指数 1970 年 ~2010 年の間に 海洋生物種の生きている地球指数は 39% 低下した 1970 年 ~1980 年代半ばの間に最も減少し その後やや安定していたが 最近になって再び減少傾向に転じた 減少が最も激しかったのは熱帯と南大洋で ウミガメ類 多数のサメ類 ワタリアホウドリなどの大型渡り鳥が減少している WWF Living Planet Report 2014 Summary page 8 Summary page 9

エコロジカル フットプリント 私たちは地球が供給できる以上に利用している 40 年以上にわたり 人間の自然に対する需要は 地球が供給できる量を超過している 私たちが現在利用している生態系サービスを提供するには 地球 1.5 個分に相当する再生能力が必要である オーバーシュート 状態は 木の成長速度よりも速く伐採し 海が供給するよりも多くの魚を漁獲し 森と海が吸収できるよりも多くの炭素を大気中に排出することによる その結果 地球が吸収や再循環できる速度を上回る速度で 資源の縮小と排出物の蓄積が進行し 大気中の炭素濃度が上昇するなどの状態が発生している エコロジカル フットプリントは 人間が求める生態系が供給する産品とサービスを合計した値であり それらのサービスは土地利用をめぐり競合する エコロジカル フットプリントは耕作地 牧草地 生産阻害地 漁場 森林産物に必要な生物生産面積 ( 生物生産力 ) で構成される また 海洋が吸収できない二酸化炭素排出量を吸収するために必要な森林面積も含む 生物生産力とエコロジカル フットプリントはどちらも グローバルヘクタール (gha) という単位で表す 化石燃料の燃焼により発生する二酸化炭素は 半世紀にわたり 人間のエコロジカル フットプリントの最大の要素であり いまだに増加傾向が続いている 1961 年 二酸化炭素吸収地は総フットプリントの 36% を占めていた 2010 年には 53% を占めるに至った 1 グローバルヘクタール (gha) は世界平均の生産性を持つ土地面積の単位を表す 生産面積 1 ヘクタール当たりの平均生産量は 技術の進歩 農業による肥料 農薬の投下 灌漑により 特に耕作地において増加し 1961 年 ~2010 年の間に 地球の総生物生産力は 99 億グローバルヘクタール (gha) から 120 億グローバルヘクタール (gha) に増えた しかし 同じ間に 世界総人口も 31 億人から約 70 億人に増加し 利用可能な 1 人当たりの生物生産力は 3.2gha から 1.7gha に減少した また エコロジカル フットプリントは 1 人当たり 2.5gha から 2.7gha に増加した 従って 生物生産力は世界的には上昇したものの 今や一人ひとりに行き渡るには十分ではない 世界人口は 2050 年までに 96 億人 2100 年までに 110 億人に達すると予想され 1 人が利用できる生物生産力はさらに減少する さらに 土壌の劣化 淡水の不足 エネルギーコストの上昇に直面し 生物生産力の増大を維持することはますます難しい 2010 年の世界のエコロジカル フットプリントは 181 億 gha 1 人当たりに換算すると 2.6gha 地球の総生物生産力は 120 億 gha 1 人当たりに換算すると 1.7gha エコロジカルフットプリント ( 必要な地球の個数換算 ) 2 1 0 1961 1970 1980 1990 2000 2010 年 図 3: 要素別エコロジカル フットプリントカーボンフットプリントは世界のエコロジカル フットプリント全体の半分以上を占める (Global Footprint Network, 2014) 凡例 カーボン フットプリント 漁場耕作地生産阻害地 森林地 牧草地 図 4: 増え続ける世界のフットプリントエコロジカル フットプリント ( 生態系サービスの需要を満たすのに必要な面積を測る ) は 世界の生物生産力 ( 実際に生態系サービスを供給できる土地面積 ) よりも早く増加している 地球の生産力の増加は 世界人口の増加による需要に応えるには十分ではない (Global Footprint Network, 2014) 凡例 生物生産力エコロジカル フットプリント人口 指数 (1961 年からの変化 1961 年 =100%) 300% 250% 200% 150% 100% 50% エコロジカル フットプリント 1961 年 :76 億 gha 2010 年 :181 億 gha 生物生産力 1961 年 :99 億 gha 2010 年 :120 億 gha 人口 1961 年 :30.9 億人 2010 年 :69 億人 0% 1961 1970 1980 1990 2000 2010 年 WWF Living Planet Report 2014 Summary page 10 Summary page 11

12 10 8 6 4 2 0 クウェートカタールアラブ首長国連邦デンマークベルギートリニダード トバゴシンガポールアメリカ合衆国バーレーンスウェーデンカナダオランダオーストラリアアイルランドフィンランドウルグアイオーストリアスイスチェコエストニアオマーンモンゴルフランススロベニアドイツイタリアポルトガル英国ガザフスタンギリシャ韓国モーリシャスサウジアラビアイスラエルキプロスリトアニアポーランドベラルーシロシアスペインパラグアイ日本トルクメニスタンラトビアスロバキアレバノンリビアクロアチアメキシコベネズエラニュージーランドブルガリアブラジルマケドニアマレーシアチリイランハンガリーアルゼンチンボツワナパプアニューギニア世界平均ウクライナトルコ南アフリカガボンボスニア ヘルツェゴビナセルビアボリビアコスタリカルーマニアモーリタニアニジェールタイパナマ中国ジャマイカエルサルバドルジャマイカエルサルバドルヨルダンミャンマーエクアドルチュニジアコロンビアマリエジプトアルバニアチャドグアテマラガーナウズベキスタンアルジェリアスワジランドギニアビサウガンビアキューバギニアホンジュラスシリアベトナムモルドバアゼルバイジャンアルメニアイラクペルーブルキナファソモロッコニカラグアスーダンドミニカ共和国ベニンキルギスインドネシアジンバブエセネガルウガンダナイジェリアラオス北朝鮮スリランカカメルーン中央アフリカタンザニアグルジアリベリアソマリアカンボジアエチオピアマダガスカルシエラレオネフィリピンレソトアンゴラトーゴコートジボアールケニアインドコンゴブルンジイエメンザンビアルワンダモザンビークタジキスタンネパールマラウィコンゴ民主共和国バングラデシュパキスタンアフガニスタンハイチエリトリアパレスチナ自治区東ティモール エコロジカル フットプリント (1 人当たりに必要な gha) 国別フットプリント 図 5:2010 年の国別 1 人当たりのエコロジカル フットプリントデータがすべて揃う 人口 100 万人を超えるすべての国を対象としている (Global Footprint Network, 2014) 凡例 生産阻害地漁場森林地牧草地耕作地カーボン フットプリント ( 二酸化炭素吸収地 ) 世界平均の生物生産力 ある国の 1 人当たりのエコロジカル フットプリントの大きさと要素は その国の平均的国民が利用する物品とサービス そして 物品とサービスを提供するために使う化石燃料などの資源利用効率によって決まる 予想どおり 1 人当たりのエコロジカル フットプリントが最も大きい 25 ヵ国のほとんどは高所得国である また それらの国のほぼすべてにおいて二酸化炭素が最大のフットプリント構成要素となっている 地球全体の生態学的な赤字 ( オーバーシュート ) への貢献度合いは 国によって異なる たとえば 地球上のすべての人のフットプリントがカタール国民の平均と同じであれば 4.8 個の地球が必要になる 米国民の標準的なライフスタイルを取り入れたとすれば 3.9 個の地球が必要になる スロバキアの標準的国民と同じであれば地球 2 個 韓国であれば 2.5 個 南アフリカであれば 1.4 個 アルゼンチンであれば 1.5 個が必要になる 調査した国の 4 分の 1 で 二酸化炭素吸収地がエコロジカル フットプリントの半分以上を占める 世界平均の 1 人当たり生物生産力は 1.7gha (2010 年 ) 国名 WWF Living Planet Report 2014 Summary page 12 Summary page 13

地域のニーズ 世界規模の圧力 ~ 週一回 ヴィツンビ (Vitshumbi) で開かれる市場では 新鮮な野菜やエドワード湖で捕れた新鮮な魚が買える この湖は 英国に本社を置くソコ インターナショナル社 (Soco International PLC) による石油採掘事業の中心となる場所であった WWF が先頭に立って繰り広げた国際的キャンペーンの結果 今年初めに同社はヴィルンガ国立公園からの撤退に同意した Brent Stirton / Reportage for Getty Images / WWF-Canon コンゴ民主共和国ほど生物生産力と自然資源に恵まれた国は少ない 国民のエコロジカル フットプリントは世界の最低レベルであり 国連 不平等調整済み人間開発指数 (IHDI) は世界最低である 高所得国の持続可能でないライフスタイルを助長することになるヴィルンガでの石油採掘は ごく少数の人々に短期的利益をもたらすかもしれない しかし 真の発展は実現しないだろう ニジェール川デルタ地帯では 石油資源の発見以降 貧困と不平等の指数が悪化した 長期的に見れば コンゴ国民のニーズを満たし 将来への見通しを明るくする唯一の方法は 自然資本の持続可能な管理と賢明な利用である

不平等な需要 不平等な影響 低所得国はフットプリントが最小であるにもかかわらず 最大の生態系劣化に苦しんでいる ほとんどの高所得国が半世紀にわたり 地球全体で利用可能な 1 人当たりの生物生産力を上回るフットプリントを保ち続け そのライフスタイルを支えるために 主に他国の生物生産力に頼ってきた 同じ期間に 1 人当たりのフットプリントが比較的小さい中 低所得国は 1 人当たりのフットプリントがほとんど増加していない 平均所得水準が異なる各国の 生きている地球指数 (LPI) の傾向を比較すると 著しい差がある 高所得国は生物多様性が上昇傾向 (10%) にあるのに対し 中所得国は低下傾向 (18%) 低所得国は激減傾向 (58%) にある ただし この数値には 欧州 北米 オーストラリアにおける 1970 年以前の大規模な生物多様性の低下は表れていない また 高所得国が資源を輸入していることが多分に影響し 高所得国は事実上 生物多様性の低下とその影響を低所得の国々に肩代わりさせているのである 低所得国では生物多様性と人の生活の両面で壊滅的な傾向が続く エコロジカル フットプリント (gha/ 人 ) 7 6 5 4 3 2 1 0 1961 1970 1980 1990 2000 2010 年 図 6: 高 中 低所得国 (1961 年 ~2010 年 世界銀行の分類と情報に基づく ) における 1 人当たりのエコロジカル フットプリント ( g h a ) の変化緑色の線は 1 人当たり生物生産力の世界平均を示す (Global Footprint Network, 2014) 凡例 高所得国中所得国 低所得国世界平均の生物生産力 図 7: 生きている地球指数と所得別国分類 ( 世界銀行の分類による ) 1970-2010 年 (ZSL, WWF,2014) 凡例 高所得国中所得国低所得国 指数の変化 (1970 年 =1) 2 1 0 1970 1980 1990 2000 2010 年 WWF Living Planet Report 2014 Summary page 16 Summary page 17

持続可能な発展への道 地球規模で持続可能なフットプリントを維持しつつ高水準の人間開発を達成した国はないが 正しい方向へ進んでいる国はある 国が地球規模での持続可能な発展をするには 文化的な生活水準を維持しつつ 1 人当たりのエコロジカル フットプリントを 1 人当たりの生物生産力よりも小さくする必要がある これは 1 人当たりのフットプリントを 1.7gha 以下にすることを意味し 世界的なオーバーシュートに至らずにすべての人々が利用できる最大値なのである 生活水準については 国連 不平等調整済み人間開発指数 (IHDI) の 0.71 以上となることが望ましい 現在 この 2 点の基準の両方を達成した国はない 図 9: エコロジカル フットプリントと人間開発指数経年推移 (1980-2010) は国のなかから少数を選んだものを示す 点線は人間開発指数の閾値が 低 中 高 非常に高 を表す (Global Footprint Network, 2014; UNDP,2013) 注 :IHDIは2010 年までは導入されていなかったため この図のHDIは不平等調整済みではない 凡例 中東 / 中央アジア アジア太平洋 低開発 中開発 中国 高開発 ブラジルトルコ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 国連人間開発指数 (HDI) 非常に高開発 世界の持続可能な発展の領域 米国 ドイツ 10 8 6 4 2 0 1.0 1 人当たりのエコロジカル フットプリント (gha) 南米 低開発 中開発 高開発 非常に高開発 世界の持続可能な発展の領域 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 国連不平等調整済み人間開発指数 (IHDI) 10 8 6 4 2 0 1 人当たりエコロジカル フットプリント (gha) 図 8: エコロジカル フットプリントと不平等調整済み人間開発指数 ( データ入手最新年 ) 各国を表す点の色は地域を示し 大きさは人口を相対的に示す 右下の四角枠の 持続可能な発展の領域に達している国はまだ存在しない 凡例 アフリカ中東 / 中央アジアアジア太平洋南米中米 / カリブ海地域北米欧州連合 北米欧州連合 しかし 正しい方向へ進んでいる国はある 発展の経路は国により異なる 図 9 は フットプリントを比較的低く抑えつつ 人間開発を大幅に上昇させた国や 人間開発を高水準に維持しつつ フットプリントを抑えた国があることを示している 高所得国における人間開発の上昇は エコロジカル フットプリントの増大という代償を払って達成された この関係性を断ち切り 逆転させることが世界的な重要課題である その他の欧州 WWF Living Planet Report 2014 Summary page 18 Summary page 19

地球の境界 地球上の生命にとって安全な領域の定義 地球全体の問題に注目したり 特定の地域 テーマ 種に焦点を絞ったりして 互いに補い合う情報と指標を活用することで 生きている地球 についての理解を深めることができる 過去 1 万年間 ( 完新世と呼ばれる地質時代 ) 特別に予測可能で安定した環境状態は 人類に多大な恩恵を与え 定住を通じて人間社会が発達し 最終的に今日の現代社会へと発展することができた しかし 世界は新たな時代を迎えた 人間活動が地球規模の変化をもたらす最大要因となる 人新世 と呼ばれる時代になった 変化の速度と規模を考えると 地球上の生存条件が突発的にかつ復元できない形に変わってしまう臨界点に達する可能性を もはや排除できない 大気エアロゾル負荷 化学物質汚染 気候変動 海洋酸性化 図 10: 地球の境界地球の境界を定義することにより 人類が安全に活動できる範囲 を定めることができ その範囲では長い将来にわたり 発展繁栄を続けられる可能性が高い (Stockholm Resilience Centre, 2009) 凡例 2009 年の状況安全限界 成層圏オゾンの減損 図 11: オックスファムが提唱するドーナツ型経済 - 人類が安全かつ公正に活動できる領域環境の臨界点を超えないという点で安全で すべての人が一定の標準的な健康 富 権限を持ち 参画が可能で公正な社会 (Raworth, 2012) 地球の境界という枠組みでは 地球の安定性を調節する環境プロセスを特定する 個々のプロセスに関し 入手可能な最善の科学的知識に基づき 安全な境界の定義を試みる これらの境界を踏み越えると 突発的な負の変化が生じやすくなる危険域に突入する 正確な臨界点を何らかの信頼性を持たせて決定することは不可能であるが すでに地球の境界の 3 要素は越えてしまったようである 生物多様性の損失 気候変動 窒素循環で それらは人間の健康と食糧 水 エネルギー需要において すでに目に見える影響を与えている 地球の境界という概念は 人類が 1 万年あまりにわたって暮らし 恩恵を受けてきた地球の存続が 地球を管理する役目を負う私たち人間の行動にかかっていることを示唆している 生物多様性の劣化 オゾン減損 土地利用変化 食料 保健衛生 ジェンダー平等 気候変動 環境面の上限 社会基盤 水 社会的衡平性エネルギー 雇用 所得 教育 人間にとって安全で公正な活動領域 回復力 発言権 淡水利用 包括的で持続可能な経済の発展 リン循環 窒素および 海洋酸性化 生物多様性の劣化 土地利用変化 地球規模での淡水利用 窒素循環 リン循環 ( 生物地球化学的循環の境界 ) 大気エアロゾル 負荷 化学物質汚染 地球の境界という概念は 地球 1 個分の範囲内での公平性と発展について問題を提起する 環境面の上限には 容認できない環境ストレスが存在するように 社会基盤 よりも下に 容認できない人間の困窮が存在する WWF Living Planet Report 2014 Summary page 20 Summary page 21

Brent Stirton / Reportage by Getty Images / WWF-Canon 明るい兆し ~ エネルギー生産がいつも環境に被害をもたらすとは限らない この溶接工はコンゴ民主共和国ムトワンガの地域水力発電プロジェクトで働いている ヴィルンガ国立公園の水を利用するプロジェクトである コンゴ野生生物管理局が立ち上げたこのプロジェクトは 25,000 人の住民に電気を提供する 学校 病院 孤児院にも電気を提供し 雇用と事業機会を創出する 同時に 近隣住民にとっては 水の供給に不可欠な公園内の森林と湿地を大切にする大きな誘因となる 世界中には不備の多い水力発電開発計画が多数存在するが それらとは異なり このプロジェクトは生態系に対して最小限の影響しか与えない このようなプロジェクトが 発展と保全は両立すること 自然資本の保全によって社会と経済の真の進歩が可能になることを実証している

気にかけなければならない理由 環境の変化はすべての人に影響を与える 多くの人にとって 地球と 私たちが組み込まれている驚異的な生命のつながりには価値がある 自然の精妙さへの驚きと 深い畏敬の念は たくさんの文化や宗教に深く根を下ろしている 地球は先祖から引き継いだものではない 子孫から借りているのだ というよく知られた言葉に 人は本能的に共感する だが 私たちは地球を借り受けたよき住人と言えるだろうか 今のニーズを満たすために使われている方法では 未来の世代のニーズを満たす力を損ねてしまう これは持続可能な発展とは正反対のやり方である 2013 年 72 億人 2050 年 96 億人 世界の人口は急速に増加している 2011 年 36 億人 2050 年 63 億人 20 億人 70% と 30% 森林生態系は 20 億人以上の人々に住宅 生計手段 水 燃料 食糧を提供する 世界の総人口の過半数は都市に居住している 食糧の生産には 世界の水使用量の約 70% エネルギー使用量の 30% が投入されている 6 億 6000 万人 海洋生態系は世界で 6 億 6000 万人以上の雇用を支えている 人間の福利と繁栄 存在そのものが 清潔な水 生活ができる気候 食糧 燃料 繊維 肥沃な土壌まで 健康な生態系とそれが供給するサービスに依存する 近年 自然資産とその経済的価値を数値化する技術が進歩した 自然の価値算定は 自然を保護し 持続可能な生活をすることの経済的価値を示す ただし 生態系サービスなしには地球上に生命は存在し得ないのであり 生態系サービスのいかなる価値評価も かぎりなく甚だしい過小評価 なのである 2008 年の世界の環境被害総額は 6 兆 6000 億ドルと推定された これは世界の GDP の 11% に相当する 3 分の 1 主要都市の 3 分の 1 は 飲料水の確保のために自然保護区に依存している 6 兆 6000 億ドル >40% 世界の淡水に対する需要は 2030 年までに現在の供給量を 40% 以上超過すると予想される 15% 45% 7 億 6800 万人 63 ヵ所中 39 ヵ所 漁業は食物として摂取する動物性タンパク質の 15% を供給し アフリカとアジアの後発発展途上国の多くでは 50% 以上にのぼる 先進国における淡水利用の 45% が発電に使われる 7 億 6800 万人が安全で清潔な水の供給を受けていない 最も人口が集中する大都市圏 63 ヵ所のうち 39 ヵ所が 洪水 暴風 干ばつなど 1 種類以上の自然災害に襲われる高いリスクを抱えている WWF Living Planet Report 2014 Summary page 24 Summary page 25

食糧 水 エネルギー 人間の需要は生物圏の健全性と結びついている 世界人口は 2050 年までに 20 億人の増加が見込まれ 一人が必要とする食糧 水 エネルギーをすべての人に提供することは すでに悲観的な見通しとなっている 今日 ほぼ 10 億人が飢えに苦しみ 7 億 6800 万人が安全で清潔な水の供給を受けることができず 14 億人が安定した電力を利用できていない 気候変動と生態系および自然資源の衰退が 状態をさらに悪化させている 世界の最貧層が最も脆弱という状況は変わらないが 食糧 水 エネルギー保障の問題はすべての人に影響を与える 食糧 水 エネルギーの保障と生態系の健全性は密接につながっている これらは相互に依存しているため 1 つの要素を保障しようとすると 他の要素が不安定になる場合がある たとえば 農業の生産性を上げようとすると 水とエネルギーの投入量が増大し 生物多様性と生態系サービスに影響を与える 私たちが求めるものを調達する方法は生態系の健全性に影響を与え 生態系の健全性は私たちの求めるものを保障することに影響する このことは世界の大都市だけでなく 生計のために直接自然に依存することが多い最貧層の農村地域にも同じように影響を与え 環境悪化による洪水や汚染などの脅威に対して ますます脆弱になる 自然を守ること 責任ある形での自然資源の利用は 人間開発と福利 回復力を備えた健全な地域社会を築くための前提条件である 図 12: 生物圏と食糧 水 エネルギー保障との相互関係と相互依存性食糧生産 水利用 エネルギー生産の方法が これからのニーズを支える生物圏に影響を与える 食 エネルギーは農作物からも生産できる 食糧生産はたくさんのエネルギーを使う 水は食糧生産に欠かせない 食糧生産は水の供給に影響を与える 水はエネルギー生産に欠かせない エネルギー 水 エネルギーは貯水 水の清浄 輸送に利用される 今日 約 1 0 億人が飢えに苦しみ 7 億 6800 万人が安全で清潔な水の供給を受けることができず 14 億人が安定した電力を利用できていない 健康な地域社会は 人々の心身と社会の健全さの土台となる そして健康な地域社会の土台となるのは健全な環境である WWF Living Planet Report 2014 Summary page 26 Summary page 27

地球 1 個分という観点の解決策 より良い選択が可能であり 現実的な解決策はある WWF の 地球 1 個分という観点 は すべての人のために 食糧 水 エネルギーを保障できるよう 地球の生態学的な許容の範囲内で自然資源を管理 利用し 共有するためのより良い選択肢を提示するものである 自然資産の保護劣化した生態系を再生し 重要生息地の消失に歯止めをかけ 保護地域を大幅に拡大する より良い生産投入する資源の量と廃棄物の量を削減し 資源を持続可能に管理し 再生可能エネルギーの生産を拡大する より賢い消費フットプリントが少ない生活習慣を通して 持続可能なエネルギー消費や健全な食糧消費を促す 金融投資の流れの改革自然の価値を査定し 環境面および社会的コストを勘定に入れ 自然保護 持続可能な資源管理および技術革新を支援 奨励する 公平な資源管理今ある資源を共有し 公平で生態学的な影響を考慮した選択をし GDP を超えた成功指標を用いる 図 13: 地球 1 個分という観点 (WWF, 2012) WWF Living Planet Report 2014 Summary page 28 Summary page 29

地球1個分という 観点の行動 事例の詳細は wwf.panda.org/lpr に掲載されている デンマーク 2013年12月 デンマークの電 力 消 費 量 の57.4%は風力発電によっ て賄われた これは数十年 に及ぶ技術革新と それを支 える政策の成果である ルワンダ ウガンダ エコ ツーリズム計画が 絶滅危 惧種であるマウンテンゴリ ラの個体数増加に役立つ と同時に 地域社会に大き な利益をもたらした アースアワー シティ チャレンジ 多くの都市が 持続可能な未 来のためにフットプリント削減への変革を先導する意欲を示し ている ベリーズ 新規に立案され た沿岸管理計画では 観 光 漁業 沿岸保護という 側面において サンゴ礁や マングローブ 林などの自 然生態系が持つ計り知れ ない価値を考慮に入れて いる チリ 自然保護の専門家が先 住民社会 漁業 養殖業界 政 府 金融 小売業界などのパー トナーと連携し 世界で最も重 要な海洋生態系のひとつに数 えられる場所で保護活動を進 めている WWF Living Planet Report 2014 Summary page 30 南アフリカ 賢明な土地利用計 画が重要な湿地の回復に役立 ち 隣接する商用植林地と世界 遺産登録地の両方が共存繁栄 できている オーストラリア サトウキビ 栽培の効率改善により 農 薬や肥料と土壌の流出によ る影響が軽減され グレー トバリアリーフの保全に役 立っている Summary page 31

未来へジャンプ ~ コンゴ民主共和国は世界で最も若く 急増する人口を抱える国のひとつである しかし エドワード湖南岸の漁村ヴィツンビの子どもたちにはどのような未来が待っているのだろうか ヴィルンガ国立公園は先祖から受け継いだ財産であり 大きな可能性を秘めている 最近 WWF が委託した調査では この国立公園が適切に保護されるような安定した状態が確保された場合 その経済価値は年間 10 億ドル以上に達することが示唆された 国立公園内の観光をはじめとする産業の責任ある発展は 45,000 人に雇用を提供する可能性がある Brent Stirton / Reportage by Getty Images / WWF-Canon

未来への道 私たちの過ちを示すまさにその指標が より良い前途を指し示す 生きている地球指数 の低下 あるいは生態学的オーバーシュートの増大は 避けられないものではない それらは自然を守る重要性をわずかにしか もしくはほとんど考慮せずにおこなった 以下のような数百万件の決定が積み重なったものである 地方 国 国際レベルでのガバナンス不全 経済成長と狭い範囲の利益のみに近視眼的に集中した政策 短期的利益のみを重視し 外部費用と長期的なコストを考慮に入れることを怠ったビジネスモデル エネルギーの生産と利用 漁獲 食糧生産 物資と人の輸送を行うための非効率で時代遅れで不必要に破壊的な方法 生計を立てるための必死の戦略 ほとんどだれも幸福にも健康にもしない過剰消費 どの場合でも より良い選択肢が存在する 現在の方向を変え 別の経路を見つけることは容易ではない だが それは実行可能である 2012 年の リオ +20 会議で 世界の各政府は われわれの地球と現在および未来の世代のための 経済的 社会的 環境的に持続可能な未来 の実現という公約を確認した これが 私たちの共通のビジョン すなわち目標である それは地球規模の持続可能な発展の領域 すなわち エコロジカル フットプリントを地球の生物生産力の範囲内に収めつつ すべての人が高い水準の人間開発を享受できるという 現在はどの国も達していない領域である ( 図 8) これは本質的に オックスファム ドーナツで構想したものと同じ領域 つまり 地球環境の境界の範囲内にとどまりつつ すべての人が受け入れられる水準の健康 福利 機会を手にすることができる 安全で公正な活動の領域 である ( 図 11) WWF の 地球 1 個分という観点 ( 図 13) は 一連の現実的な行動を通じ それを達成する方法についてアイデア提供をする 環境問題の原因を作り出す投資から解決策への投資に切り替える必要がある ひとつには 私たちが共有する資源の管理方法について 公正で先を見通した選択 生態系に関する情報を熟知した上での選択をするために あるいはまた 残された自然資産を保持し 重要な生態系と生息地を保全し 回復するために そしてまた より良い方法で生産し より賢明な方法で消費するために どこに行きたいのかはわかっている たどりつく方法もわかっている 今必要なのは 動き始めることだ WWF 世界ネットワーク WWF Offices* Armenia Azerbaijan Australia Austria Belgium Belize Bhutan Bolívia Brazil Bulgaria Cambodia Cameroon Canada Central African Republic Chile China Colombia Cuba Democratic Republic of Congo Denmark Ecuador Finland Fiji France French Guyana Gabon Gambia Georgia Germany Ghana Greece Guatemala Guyana Honduras Hong Kong Hungary India Indonesia Italy Japan Kenya Laos Madagascar Malaysia Mauritania Mexico Mongolia Mozambique Myanmar Namibia Nepal Netherlands New Zealand Norway Pakistan Panama Papua New Guinea Paraguay Peru Philippines Poland Republic of Korea Romania Russia Senegal Singapore Solomon Islands South Africa Spain Suriname Sweden Switzerland Tanzania Thailand Tunisia Turkey Uganda United Arab Emirates United Kingdom United States of America Viet Nam Zambia Zimbabwe WWF Associates Fundación Vida Silvestre (Argentina) Pasaules Dabas Fonds (Latvia) Nigerian Conservation Foundation (Nigeria) 2014 年 7 月現在 出版の詳細 2014 年 9 月発行 WWF( 世界自然保護基金 ) スイス グラン本刊行物の一部または全文の複製には題名を明記するとともに 上記発行者を著作権所有者として明記すること 推奨する引用の記載は以下のとおり WWF. 2014. Living Planet Report 2014: People and places, species and spaces. [McLellan, R., Iyengar, L., Jeffries, B. and N. Oerlemans (Eds)]. WWF, Gland, Switzerland. 文章及び画像 : 2014 WWF. All rights reserved. 教育または非営利目的の本刊行物 ( 写真を除く ) の複製は WWF への書面による事前通知および上記のような適切な記載によって認可される 転売や商業目的の複製は WWF の事前許可書なくしては発行できない 写真複製はいかなる目的でも W W F の事前許可書なくしては使用できない 本報告書中の資料および地理上の呼称は いずれかの国 領土もしくは地域の法的地位に関し またはその境界もしくは国境の画定に関して W WF としての何らかの見解の表明を示唆するものではない デザイン : millerdesign.co.uk 表紙の写真 : CEuropean Space Agency ISBN 978-2-940443-88-8 日本語訳 :W W Fジャパン東京都港区芝 3-1-14 日本生命赤羽橋ビル 6F Tel 03-3769-1711 Fax 03-3769-1717 http://www.wwf.or.jp WWF Living Planet Report 2014 Summary page 34 Summary page 35