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の後 マイクロピペットで配位子兼溶媒であるオレイルアミン 1.5ml とオレイン酸 1.6ml を取り 加えた オレイン酸の発火点が 363 C と低く危険なため酸素を取り除く必要がある そこで三つ口フラスコに栓をしてロータリーポンプを用いて三つ口フラスコ内部を排気し 酸素を取り除き 窒素置換した その後 ナノ粒子の核を形成するために溶液を 150 C まで温め 30 分間加熱した 溶液の温度は温度調節器によりマントルヒーターの温度を制御することにより制御した その後 窒素ガスの勢いを強くして外気が三つ口フラスコ内部に入らないようにしてから三つ口フラスコのふたを開けて 還元剤である 1-2 ヘキサデカンジオールを加えた これによりナノ粒子を還元した その後窒素ガスの勢いを弱め 攪拌しつつ 250 C まで昇温し 30 分加熱した その後 マントルヒーターから三つ口フラスコを離し 溶液を室温まで戻した 作製した溶液 1に対してエタノールを 4 の割合で加え 6000 rpm で 10 分間 遠心分離を行った その後へキサン 20ml とナノ粒子のヘキサンに対する溶解度を高めるために オレイン酸 50 ml オレイルアミン 50 ml を加え 6000rpm で 10 分間遠心分離を行い ヘキサンに溶けないで残った沈殿物を取り除いた 再度不純物を取り除くためにエタノールを加え 2.3 成膜条件作製した FePt 粒子 25 mg に対してヘキサン 400 ml を加えを 0.1w% にした 触媒の成膜にはディップコート法を用いた 基板をクリップで挟み その下に溶液の入ったビーカを置く 制御部を操作し引き上げ速度 高さ 停滞時間を制御し引き上げた 触媒の成膜は基板を触媒溶液に 10 分間浸けた後 引き上げ速度 600 mm/s で引き上げた 引き上げの後に 電気炉で大気中で 400 C 5 分間のアニール処理を行った 2.4 ACCVD 法 CVD 装置を用いて CNT を成長させた 図 1 に CVD 条件を示す 炭素源にはエタノール (C 2 H 6 O) 還元剤には水素 (H 2 ) キャリアガスにはアルゴン (Ar) を用いた 図 5.3 に ACCVD 条件を示す 触媒を成膜した基板を CVD 装置の反応管に導入後 (a) Ar: 200 ccm H 2 : 20 ccm のガスを導入しながらチャンバー内部を 8kPa にして 1000 C まで昇温した (b) 温度を維持して 30 分間還元を行った (c) 水素 アルゴンを止めエタノール 350ccm を流して 30 分間 SWNTを成長させた (d) その後 15 分かけて室温まで戻した て 6000rpm で 10 分間遠心分離を行った また同様 の手順を本研究室でも行った 薬品名オレイルアミンオレイン酸鉄 (Ⅲ) アセチルアセトナト白金 (Ⅱ) アセチルアセトナト 1.2-ヘキサデカンジオール表 1 分量条件 分量 1.5 ml 1.6 ml 247.2 mg 118 mg 5.16 g 2.2 基板洗浄 10 10 mm2 の石英基板をアセトンに浸けて 5 分間 15 分間超音波洗浄を行った エタノールで 5 分間超音波洗浄を行い 窒素ブローでエタノールを吹き飛ばした その後オゾン処理を 30 分間行った 図 1 CVD 条件 3 実験結果 3.1 ナノ粒子図 2 図 3 に筑波大学にて作製した FePT の TEM 像を示す 図 2 は 200 nm スケールで撮っ 2

たものである 図 2 から 5 nm 程度の粒子と 200 nm 程度の粒子が確認できる 図 3 は図 2 でみられた 200 nm 程度の粒子を 50 nm スケールで観察したものである 200 nm 程度の粒子ではなく 5 nm の粒子が高密度に高配列している事がわかった また粒子にコントラストの違いが見られた また図 4 に本研究室で作製した FePt の TEM 像を示す 図 4 より 5nm 程度の粒子が高密度に配列していることが分かった 図 3 本研究室で作製した FePt 像 3.2 基板表面像図 4 に DFM 像を示す 数十 nm の粒子が分散して基板上に分散されていた これらの粒子の断面プロファイルでは 高さ方向が 3.52~5.02 nm 一部の大きな物は 14.93 nm であった 図 1 FePt の低倍率像 図 2 FePt の高倍率像 図 4 ディッピング後の DFM 像 3.3 ラマンスペクトル 3

図 5 に ACCVD を行った基板のラマンスペクトルを示す 1353 cm -1 と 1606cm -1 にピークが確認できた また RBM のピークは確認できなかった ったと考えた TEM 像と同様に 5 nm 程度ではあるが TEM 像では 1.5 nm のばらつきは確認できなかった これは粒子の測定部位が球の中心軸から多少ずれていたために TEM 像 Intensity [ a.u. ] 1000 500 0 より小さな粒子に見えたのだと考えた しかし図 5 より 1353 cm -1 と 1606cm -1 にピークが確認できた 1353 cm -1 は D-band 1606cm -1 は G-band であると考えた D-band はグラファイトの六員環起因のピークであり G-band は六員環の欠陥に起因するピークであるため CNT が成 0 1000 2000 Wavenumber [ cm -1 ] 図 5 ラマンスペクトル 4 考察図 1 を見ると粒子にコントラストの違いが見られる TEM は電子を透過させて観察しているが 厚みがあるほうが透過しにくく コントラストが低くなる ゆえにコントラストの低いところに粒子が重なって存在していると考えた 図 1 と図 2 より分散された 5 nm の粒子と密集した 5 nm の粒子が見られた これは FePt 溶液をメッシュに垂らし乾燥する過程で 溶液が基板一面同時に乾燥せず 局所的に乾燥したことにより 粒子がダマになってしまったのだと考えた 図 2 と図 3 よりともに 5nm の粒子が確認できたことから 本研究室でもナノ粒子合成を再現できたことが確認できた 図 4 の表面像より数十 nm 程度の粒子が確認できたが 断面プロファイルではその高さは 3.52~5.02 nm であった TEM 像の結果と比べると平面方向の粒子の大きさに大きなずれがある これは DFM は測定プローブの針の直径が 20 nm 程度なので 針の直径より小さな粒子の測定は困難であり また DFM の測定は 1 1 m 2 の範囲を 256 点取ることにより行った 測定点の間隔は約 4 nm であるために TEM 像とのズレが生じたと考えた その為 断面プロファイルの結果から 3.52~5.02 nm の物があ 長していると考えた しかし G/D 比が 1 と低いため CNT の成長量が少なく アモルファスカーボンが多かったのではないかと考えた これは FePT の触媒能が低いため CNT の成長量が少なかったのではないかと考えた また低波数側に現れる SWNT 特有の直径に起因するピーク (RBM) は確認できなかった これにより SWNT は成長しなかったのではないかと考えた 今回 SWNT が成長しなかったのは FePt 微粒子が 5 nm と大きいため MWNT が成長してしまったのではないかと考えている 今後 SWNT を成長させるために より触媒能の高い Co を用いより小さな粒子を作ることを目標とする 5 総論我々は SWNT のカイラリティを制御を達成し 電子デバイスへの応用に繋げる事を考えている そこで 直径を均一に小さくすることでカイラリティの種類を減らし 制御しやすくすることを目標とした その為に直径の均一な粒子の作製を試みた 実験は筑波大学の寺西研究室で指導を受け 化学的な手法である還流法により行った 金属前駆体として白金 (Ⅲ) アセチルアセトナト 鉄 (Ⅱ) アセチルアセトナトを用い配位子にオレイルアミン オレイン酸を用い金属表面を保護することで粒径を制御した その結果 直径 5 nm の均一なナノ粒子の作製に 4

成功した その後 本研究室でも同様の手順で実験を行い ナノ粒子作製を再現することに成功した またこれらのナノ粒子をディップコート法を用いて基板に成膜し ACCVD 法を用い成長温度 1000 C で SWNT の成長を目指した D-band G-band は確認したが G/D 比は 1 と低かった また RBM が確認できず SWNT の成長が確認できなかった G/D が低かったのは Pt の触媒能が低いためアモルファスカーボンが成長してしまったのだと考えた また SWNT の成長が確認できなかったのは 触媒粒子の径が 5nm と大きいためであると考えている 今後は SWNT を成長させるために より小さなナノ粒子の作製を目指す また CNT の成長量を増やすために 触媒能の高い Co を用いた FeCo ナノ粒子の作製と CoPt CoMo ナノ粒子の作製を目指す 6 参考文献 [1] 齋藤弥八, 坂東俊治, カーボンナノチューブの基礎,pp.58-69,( 社 ) コロナ社, 東京,1998 [2]Shouheng Sun, Hao Zeng,David B. Robinson Simone Raoux,Philip M. Rice Shan X. Wang,and Guanxiong Li J. Am. Chem. Soc., Vol.126, iss.1, 273-279(2004) [3] M. Nakaya, M. Kanehara, and T. Teranishi, Langmuir Vol.22, 3485-3487(2006) 5