スライド 1

Similar documents
スライド 1

肺炎球菌感染症とワクチン 走査型電子顕微鏡 グラム陽性双球菌 表面は莢膜多糖体 ( ホ リサッカライト ) で覆われている ホ リサッカライト の抗原性による少なくとも 90 種類の血清型が存在 血清型特異抗体と補体が同一血清型あるいは交差血清型の肺炎球菌に対する感染防御を担っている

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

2. 定期接種ンの 接種方法等について ( 表 2) ンの 種類 1 歳未満 生 BCG MR 麻疹風疹 接種回数接種方法接種回数 1 回上腕外側のほぼ中央部に菅針を用いて2か所に圧刺 ( 経皮接種 ) 1 期は1 歳以上 2 歳未満 2 期は5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間 ( 年

ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン<医療従事者用>

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

48小児感染_一般演題リスト160909

<4D F736F F D208FAC8E A8B858BDB838F834E CC90DA8EED82F08E6E82DF82DC82B7312E646F6378>

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

種の血清型 (6A,9A,9L,18B,18F) に対する交差免疫もあるため これを含めるとカバー率はさらに上昇する PCV7でカバーできる薬剤耐性肺炎球菌の割合が カバーできない薬剤耐性肺炎球菌より高いため 薬剤耐性肺炎球菌だけでみると90% がカバーできるとされている ワクチン接種前に既に肺炎球

日本内科学会雑誌第104巻第11号

H30_業務の概要18.予防接種

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

耐性菌届出基準

平成 30 年 9 月 10 日第 11 回ワクチン評価に関する小委員会資料 資料 1-1 肺炎球菌ワクチン (PPSV23) について 経緯平成 22 年 7 月第 11 回感染症分科会予防接種部会において 肺炎球菌ポリサッカライドワクチン ( 成人用 ) に関するファクトシート が報告された 平

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

<34398FAC8E998AB490F55F DCC91F092CA926D E786C7378>

Microsoft PowerPoint - 【資料1】シンフロリックス_基本方針部会

39b-1

9 予防接種

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

untitled

2.2. 緒言肺炎球菌はヒトの主要な細菌の一つである 肺炎球菌は莢膜を有するグラム陽性双球菌で 鼻咽腔の常在菌であるが 上気道の近接部位に感染すること ( 局所感染 ) や血流に乗って遠隔組織に広がること ( 侵襲性感染 ) がある 世界中において肺炎球菌は多くの疾患や死亡の主たる原因菌である 世界

Weekly Report on Aomori Prefecture Infectious Disease 青森県感染症発生情報 (2019 年第 3 週 ) 発行青森県感染症情報センター (2019 年 1 月 24 日 ) ( 青森県環境保健センター : 担当微生物部 ) TEL

呼吸器感染症診療:最近の動向

<B 型肝炎 (HBV)> ~ 平成 28 年 10 月 1 日から定期の予防接種になりました ~ このワクチンは B 型肝炎ウイルス (HBV) の感染を予防するためのワクチンです 乳幼児感染すると一過性感染あるいは持続性感染 ( キャリア ) を起こします そのうち約 10~15 パーセントは

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

pdf0_1ページ目

第1 入間市の概要

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症

新たに定期接種ワクチンとされたことから 本邦における HPV ワクチンによる免疫獲得状況を把握 して 将来の子宮頸癌予防計画に役立つ基盤データを蓄積することを目的に 14 年度から本事業にて HPV16 抗体価の測定調査を実施することとなった 2. 感受性調査 (1) 調査目的ヒトの HPV16 に

pdf0_1ページ目

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 014 年 10 月 1 日版日本小児科学会 乳児期幼児期学童期 / 思春期 ワクチン 種類 直後 6 週 以上 インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ )

2表05-10.xls

pdf0_1ページ目

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.6 伝染性紅斑 りんご病

名称未設定

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 歳 歳以上 合計 ( 注 ) *

Microsoft Word - WIDR201839

1

Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx


ヒブ ( インフルエンザ菌 b 型 ) 対象者 : 生後 2ヶ月から5 歳未満までのお子さん標準的な接種開始期間は 生後 2ヶ月から7ヶ月未満です 生後 2ヶ月を過ぎたら 早目に接種しましょう 接種方法 : 接種開始時の年齢により接種方法が異なります 接種開始が生後 2ヶ月から7ヶ月未満の場合 (

クチ ワ ン で安心 予防接種は集団生活前に子育て応援券を有効活用 感染症発生動向速報 ( 平成 31 年第 10 週分 3 月 4 日 ~3 月 10 日 ) インフォメーション 予防接種をご確認くださいこの春から保育所 幼稚園に通い始めるお子さんも多いと思います 一般に乳幼児は感染症に対する抵抗

pdf0_1ページ目

pdf0_1ページ目

274 炎球菌は 細胞内に侵入し粘膜バリアを越えることがある このメカニズムとして 気道上皮細胞上の polymeric immunoglobulin receptor(fc receptor) に PspA が結合し エンドサイトーシスにより肺炎球菌が細胞内を通過し粘膜下組織へ侵入することが報告さ

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの主な変更点 2014 年 1 月 12 日 1)13 価結合型肺炎球菌ワクチンの追加接種についての記載を訂正 追加しました 2)B 型肝炎母子感染予防のためのワクチン接種時期が 生後 か月 から 生直後 1 6 か月 に変更と なりました (

鹿児島県感染症発生動向調査事業 ( 内容に関するお問い合わせ : 健康増進課感染症保健係 ) 感染症のホームページアドレス 第 20 週の手足口病の定点当た

Microsoft Word - 予防接種2011

予防接種従事者研修会感染症情報センター

スライド 1

スライド 1

- 日中医学協会助成事業 - 肺炎球菌ワクチンに対する免疫応答性の日中間における比較に関する研究 研究者氏名教授川上和義研究機関東北大学大学院医学系研究科共同研究者氏名張天托 ( 中山大学医学部教授 ) 宮坂智充 ( 東北大学大学院医学系研究科大学院生 ) 要旨肺炎球菌は成人肺炎の最も頻度の高い起炎

定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

肺炎球菌ワクチンの定期接種を実施する場合に おける接種対象者及び接種方法について

pdf0_1ページ目

第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

Microsoft Word - WIDR201826

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

【資料1】結核対策について

(Microsoft PowerPoint \217\254\216\231\227\\\226h\220\332\216\355\202\314\214\273\217\363.ppt)

syuho_43.xls

syuho_49.xls

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

% ORG/WIKI/FILE:SALKWS.JPG 1. ORG/WIKI

Microsoft PowerPoint - 森岡先生スライドアップロード用.pptx

神戸市感染症発生動向調査週報 1 年 月 11 日作成 全数把握対象感染症発生状況 ( 三類感染症細菌性赤痢 ) 女 5 代 - 1 年 月 5 日 1 年 月 日 sonnei(d 群 ) 分離 同定による病原体の検出 ( 便 ) なし 接触感染 第 13 週報告患者の家族 全数把握対象感染症発生

1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

平成 24 年 7 月改定版 すべての予防接種につきましては 次のページに記載してあります 平成 24 年度予防接種日程表 ( 国の通知により 内容が変わる場合があります 毎月の 広報みなみちた でご確認ください 新 麻しん風しん混合 3 期 4 期 ( 個別 ) 対象 :3 期 ( 中学 1 年生

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

子宮頸がん予防ワクチン及びヒブ・小児用肺炎球菌ワクチンの接種助成事業スタート

Microsoft PowerPoint - 51w 梅毒

Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.5 伝染性紅斑 りんご病

【掲載用】Health21-No.30 原稿

syuho_3.xls

Microsoft PowerPoint - 11.髗胜燔ㇹㅩ㇤ㅛ朕挰盋.pptx

東京大会と感染症サーベイランス ~ 普段とどこがちがうのか ~ 疾患疫学が変化する可能性 多数の訪日外国人の流入 多くのマスギャザリングイベント 事前のリスク評価に基づいたサーベイランスと対応の強化の必要性を検討する 体制構築の観点から 行政と大会組織委員会の責任範囲と協力体制の構築が必要 国内移動


第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

疾患名 平均発生規模 ( 単位 ; 人 / 定点 ) 全国 県内 前期 今期 増減 前期 今期 増減 県内の今後の発生予測 (5 月 ~6 月 ) 発生予測記号 感染性胃腸炎 水痘

第 3 章支持 緩和医療 3. 感染症対策 ; 予防接種 FN はじめに高齢者のがん診療においては治療法の選択 化学療法の強度の決定や期待通りの治療効果を得るために感染症対策は重要な因子となる 代表的な感染症である発熱性好中球減少症については臨床腫瘍学会の 発熱性好中球減少症 (FN) 診療ガイドラ

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

生ワクチン 不活化ワクチン ジフテリア 百日咳 破傷風 不活化ポリオ混合ワクチン の接種から20~24 週あけて3 回目を接種 別の種類のワクチンを接種する場合は 中 27 日 ( いわゆる4 週間 ) 以上あけて受けます 別の種類のワクチンを接種する場合は 中 6 日 ( いわゆる1 週間 ) 以

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 0-5 ヶ月 6-11 ヶ月 1 歳 歳以上 合計 (

審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7


スライド 1

平成24年、秋、日本の予防接種はこのように変わります

今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

3.2013/14シーズンのインフルエンザアップデート(12/25現在)

市中肺炎に血液培養は必要か?

このワクチンの接種前に 確認すべきことは? ワクチン接種を受ける人または家族の方などは このワクチンの効果や副反応などの注意すべき点について十分理解できるまで説明を受けてください 説明に同意した上で接種を受けてください 医師が問診 検温および診察の結果から 接種できるかどうか判断します 次の人は こ

Transcription:

資料 2-2 ヒブ 肺炎球菌ワクチンの接種に伴う サーベイランスの必要性について いはら としあき 庵原俊昭 ( 独立行政法人国立病院機構三重病院院長 ) 厚生労働科学研究費補助金新型インフルエンザ等新興 再興感染症研究事業 新しく開発された Hib 肺炎球菌 ロタウイルス HPV 等の各ワクチンの有効性 安全性並びにその投与方法に関する基礎的 臨床的研究 代表研究者

1 ヒブ 肺炎球菌ワクチンの接種に伴うサーベイランスの必要性について 1. 疾病 ワクチン総論 2. ワクチン導入後の疾病の推移 ( 研究班 ) 3. 疾病の推移の把握 ( 全数 ) 4. まとめ及び今後の展望 1) インフルエンザ菌 : グラム陰性小桿菌 莢膜型 :a, b, c, d, e, f 無莢膜型 (non-typable) 細菌感染症 侵襲性感染症 : 菌血症 敗血症 髄膜炎 関節炎 喉頭蓋炎 肺炎 表在性感染症 : 中耳炎 副鼻腔炎 2) 肺炎球菌 : グラム陽性双球菌 莢膜をもつ 90 種類以上の血清型 小児で多い血清型 成人で多い血清型 * 莢膜の役割 好中球の貪食から免れている 抗体と補体が莢膜と反応すると好中球に貪食されるようになる ( オプソニン化 ) 肺炎球菌

莢膜多糖体 ( ポリサッカライド ) 抗原と感染防御 インフルエンザ菌 b 型 肺炎球菌 髄膜炎菌オプソニン化抗体 (IgG2) 薬剤耐性 補体莢膜 ( 多糖体 ポリサッカライド ) *IgG2 抗体産生能が成熟するのは4 歳頃 2 細胞内殺菌 好中球の貪食 (NHO 三重病院 )

肺炎球菌の常在化と感染 ( 伝播 ) 細菌性髄膜炎 中耳炎 菌血症 侵襲性肺炎球菌感染症 肺炎 * * 血液培養陽性の肺炎 1. 小児感染症学 診断と治療社岡部信彦編集 :p226~230 2. 日常診療に役立つ小児感染症マニュアル 2007 東京医学社. 日本小児感染症学会編 :p37~47 3. Hull MW, et al.: Infect Dis Clin North Am 21:265, 2007 4. Cardozo DM, et al.: Braz J Infect Dis 10:293, 2006 5. Regev-Yochay G, et al.: Clin Infect Dis 38:632, 2004 6. Chi DH, et al.: Am J Rhinol 17:209, 2003

本邦の5 歳未満児の年間推定患者数 VPD 年間患者数 (0~4 歳 ) /10 万人 結核 34 0.63 Hib 髄膜炎 412 7.63 Hib 非髄膜炎 337* 6.24 肺炎球菌髄膜炎 137* 2.54 肺炎球菌非髄膜炎 1266* 23.4 ポリオ 4 ジフテリア 0 百日咳 18800* 348.1 * 推計値 (5 歳未満人口 540 万人 ) ワクチン株によるポリオ麻痺例 結核は2009 年結核研究所データ 侵襲性 Hib 感染症 侵襲性肺炎球菌感染症は2009 年神谷班報告書 百日咳は2009 年感染症情報センターデータ 4 ( 三重病院 )

莢膜多糖体 ( ポリサッカライド ) 抗原に対するワクチン ポリサッカライド抗原の接種 ;T 細胞非依存性 Circulatory B cells を刺激 B B IgG2 抗体 ; 弱い刺激 長続きしない 4 歳未満児は産生力が弱い IgG2 抗体 ; より強い刺激 長続きする 4 歳未満児は産生力が弱い Follicular B cellsを刺激 PRP T T T T T 細胞依存性 5 (NHO 三重病院 )

プレベナーの製造工程 4 6B 9V 14 18C 19F 23F 1 血清型別に培養して増殖させた後 肺炎球菌莢膜ポリサッカライドを抽出して精製 それぞれの肺炎球菌莢膜ポリサッカライドをキャリアたん白と結合させる 2 これらを混合してシリンジに充填 3 6 神谷齊 : 小児科臨床 59(11):2293, 2006 及びプレベナー添付文書より作図

結合型 Hib ワクチンの効果 ( 接種開始 5~10 年後 ) 国 Hibワクチン 髄膜炎発症 鼻咽頭 接種開始 ( 年 ) 減少率 コロニー率 フィンランド 1986 95% ~0% アイスランド 1989 100% ~0% ノルウエー 1992 96% スエーデン 1992 96% ~0% イングランド 1992 97% フランス 1992 90% デンマーク 1993 98% ドイツ 1993 94% USA 1990 98% 日本 * 2008 57% *2008 年から発売が開始され 2010 年 12 月に子宮頸がん等ワクチン接種緊急処置事業が開始 多くの市町において公費助成で接種が可能となったのは 2011 年 4 月以降 2011 年の減少率 ( 庵原俊昭 : モダンメデイア 54:15; 2008 改編 ) 7

プレベナー導入前後の IPD 発症率の推移 ( 米国 ) 5 歳未満の小児における IPD の発症率 発症率 ( 人口 10 万対 ) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 プレベナー導入 All serotypes 全血清型株 (PCV7 (PCV7+ + nonvaccine) 非ワクチン血清型株 ) PCV7 プレベナー serotypes (PCV7) 血清型株 試験デザイン : 5 歳未満小児における米試験. 最新公表データは CDC の Active Bacterial Core surveillance による 0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 プレベナー接種導入前 年 耐性菌の減少 PCV7 でカバーされない血清型の増加 8 Hicks LA, et al.: J Infect Dis 196:1346, 2007

高齢者の感染症予防にもつながったプレベナー接種の間接効果 ( 米国 ) プレベナー導入前後での年齢 年次ごとのワクチン血清型株の IPD 発症率 100定期接種の対象となる年齢層 発症率 (10 万対 ) 80 60 40 20 0 94% の減少 <5 5 17 18 39 40 64 65 年齢 ( 歳 ) プレベナー未接種集団 65% の減少 Active Bacterial Core 調査, 米国, 1998 年 -2003 年 p<0.05, 2003 年対 1998-1999 年 1998-1999 to 1999 2000 2001 2002 2003 9 MMWR 54(36):893, 2005

欧米諸国の現状 1) 侵襲性インフルエンザ菌感染症 侵襲性 Hib 感染症の発症率は 90% 以上減少している 非莢膜型インフルエンザ菌による侵襲性感染症が増加してきている Hib と異なる莢膜型 (Hia) による侵襲性感染症の増加がカナダから報告 2) 侵襲性肺炎球菌感染症 (IPD) ワクチンでカバーされる IPD は 90% 以上の減少 全ての血清型の IPD は 70% の減少 耐性菌の割合が減少 高齢者の肺炎発症率の減少 ワクチンでカバーされない血清型による IPD の増加 breakthrough infection 例の存在 10

11 2008 Hib ワクチン承認 2010 PCV7 承認 2010 緊急促進事業 2011 助成での接種開始 ( 新しく開発された Hib 肺炎球菌 ロタウイルス HPV 等の各ワクチンの有効性 安全性並びにその投与方法に関する基礎的 臨床的研究 ) 研究テーマ 1) 小児侵襲性細菌感染症のアクテイブサーベイランス 2) ロタウイルス感染症のアクテイブサーベイランス 3)HPV ワクチンの安全性 登録制度の研究 4) ワクチン投与方法 ( 皮下注 筋注 ) の安全性の研究

小児期侵襲性細菌感染症の罹患率 ( 最新版 ) (5 歳未満人口 10 万人当たり ) 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 Hib 髄膜炎 4.8 8.3 7.1 7.8 3.3 Hib 非髄膜炎 1.0 3.8 5.2 6.3 3.0 肺炎球菌髄膜炎 肺炎球菌非髄膜炎 1.8 3.3 2.8 2.3 2.1 5.7 21.4 21.3 23.8 18.1 GBS 髄膜炎 0.9 1.2 1.3 1.3 1.3 GBS 非髄膜炎 0.4 1.1 1.4 1.0 1.1 * 北海道 2010 年の岡山県は髄膜炎のみが報告対象 12 減少率 (%) P value Hib 髄膜炎 57 <0.0001 Hib 非髄膜炎 41 0.0080 SP 髄膜炎 25 0.1821 SP 非髄膜炎 18 0.0175 減少率は 20011 年と 2008~2010 年の比較による

肺炎球菌分離例の年齢群別年度変異 ( 三重病院 ) 耳鼻科 ( 中耳炎 ) 中耳腔液 小児科 ( 気道感染症による入院例 ) 咽頭拭い液 90 30 80 70 60 50 40 30 H21 年度 H22 年度 H23 年度 25 20 15 10 H21 年度 H22 年度 H23 年度 20 10 5 0 1 歳未満 1-2 歳未満 2-3 歳未満 3-4 歳未満 4 歳以上 0 1 歳未満 1-2 歳未満 2-3 歳未満 3-4 歳未満 4 歳以上 P=0.7483 2010(H22) 年 PCV7 の発売開始 2010 年 12 月緊急接種促進事業の国会承認 ( 補正予算 ) 2011(H23) 年 2~4 月三重県市町で公費助成による接種開始 13 P=0.8553 (NHO 三重病院資料 )

14 15 serotypes

15 種類ハイリスク HPV 90 種類の肺炎球菌 子宮頸がん HPV 16, 18 カバー率 =70~80% 侵襲性肺炎球菌感染症 PCV7 カバー率 =75% HPV ワクチン 16 型 18 型 PCV7 ニューモバックス (23 価 ) 莢膜型 6 種類 7 種類ロタウイルス 侵襲性インフルエンザ菌感染症 Hib ワクチン Hib カバー率 95% ロタウイルス感染症 RV1, RV5 年によりカバー率が異なる * 現行のワクチンでは 100% カバーできない カバーできない血清型 / 遺伝子型の流行を監視 (NHO 三重病院 ) 15

*Breakthrough Infection( ワクチンを受けたけれども発症した人 ) 1 インフルエンザ菌 Nontypable Haemophilus Influenzae (NTHi) の侵襲性感染症 b 群以外の莢膜型の侵襲性感染症 不十分なワクチン接種による感染 2 肺炎球菌 PCV7 でカバーしない血清型の感染 :19A, 3, 6A, serotype 15 など 不十分なワクチン接種による感染 :2 ヶ月からの接種 オプソニン化抗体の産生が不十分なために感染 * ワクチンを受けていない 1 歳以上の未接種者の発症 1 キャッチアップ接種 アクテイブサーベイランスが必要 16

3. 疾病の推移の把握 ( 全数 ) 1 全数調査の必要性 必然性 (passive reporting system) 疾患の重要性を気づかせる 全国の流行状況を知る 県ごとの接種率と罹患率との関係を知る ( 地域差?) 2 全数調査の実現性 Hib ワクチン PCV の接種率が上昇し 患者数が減少すれば可能 報告者に温度差 罹患率が低く計算される危険性がある 3 全数調査を行う上での課題 ( 研究班との連携の必要性 ) アクテイブサーベイランスと全数把握の罹患率の比較 研究班では分離された菌の莢膜型 ( インフルエンザ菌 ) 血清型 (SP) 薬剤感受性も調査 17

18 4. まとめ及び今後の展望 1 研究班と平行して Hib 肺炎球菌のサーベイランスを実施する必要性 アクテイブサーベイランス * ワクチン接種後発症者の血清型 薬剤感受性の調査が必要 自発性サーベイランス * 県ごとの発症率を調査 2 成人肺炎球菌感染症サーベイランスの必要性 小児への PCV 接種による集団免疫効果の評価 成人用 PPSV 接種の有効性の評価 今後使用される ( と予測される )PCV13 の有効性の評価