高分子論文集 (Kobunshi Ronbunshu), Vol.66,No.11,pp.498 502 (Nov., 2009) ポリスチレンの熱分解生成物スチレン二量体のラジカル重合およびスチレンとのラジカル共重合 小原正之 1 橋本保 1 漆 o 美智遠 1 阪口壽一 1 澤口孝志 2 佐々木大輔 3 ( 受付 2009 年 5 月 13 日 審査終了 2009 年 7 月 14 日 ) 要旨ポリスチレンの熱分解で生じるスチレン二量体 (2,4-ジフェニル-1-ブテン SD) のラジカル重合とスチレン (St) とのラジカル共重合を, 塊状重合の条件下で検討した.SD の単独重合においては,SD の嵩高い a 置換基による立体障害の影響により SD の付加が妨げられ, 重合率は低く, 生成物の分子量も 1000 程度と低分子量体であった.SD と St とのラジカル共重合においては,SD と St ともに消費され, 分子量が約 15000 の SD と St からなる高分子量体コポリマーが生成した.DSC により測定した SD を約 30 mol 含むコポリマーのガラス転移温度 (T g ) は約 130 C であり, ポリスチレンの T g よりもかなり高いことがわかった. 1 緒言 汎用高分子材料であるポリスチレンのケミカルリサイ クルを目的にポリスチレンの熱分解によりスチレンモノマーに変換することが検討されている. しかし, 熱分解で得られるスチレンモノマーの収率は約 60 であり, すべてをスチレンモノマーに戻すことは困難である 1),2). このとき生じる副生成物には,Scheme 1 に示すような末端にビニリデン型の不飽和結合を有したスチレン二量体 (2,4-ジフェニル-1-ブテン SD) やスチレントリマー (2,4,6-トリフェニル-1-ヘキセン ST) が含まれている. これまでにも SD や ST のラジカル重合の研究はされているが 3)~5), 得られている生成物は分子量が数千と低分子量体であり, 高分子量体は得られていない. また SD とスチレンとの共重合 3) も,SD を含む高分子量コポリマーを合成するという観点からはまだ詳しく研究されていない. 筆者らは前報 6) で,SD と ST のカチオン重合と SD とスチレンのカチオン共重合を検討した.SD と ST の嵩高い a 置換基から生じる立体障害のため, 連鎖移動反応が起こる傾向が強く高分子量体は得られなかったが,b 水素の脱離反応に基づく連鎖移動反応が選択的に起こるため, 構造の明確な SD の二量体と三量体や ST 1 福井大学大学院工学研究科材料開発工学専攻 ( 910 8507 福井市文京 3 9 1) 2 日本大学理工学部物質応用化学科 ( 101 8308 東京都千代田区神田駿河台 1 8 14) 3 ( 株 ) 三栄興業 ( 341 0044 三郷市戸ヶ崎 3 347) Scheme 1. の二量体を選択的に合成できることを報告した. 本研究では,SD のラジカル重合および SD とスチレンのラジカル共重合とそれによる新規ポリ ( スチレン誘導体 ) の合成を目的とした. さらに得られた生成物の熱的性質を検討した. 2 実験 2.1 試薬 SD は ( 株 ) 三栄興業によりポリスチレンの熱分解により製造され, 精製されたものを, そのまま使用した 6). スチレン (St; 和光純薬工業 ( 株 )) は 10 wt 水酸化ナトリウム水溶液, イオン交換水で各三回洗浄後, 無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させ, 水素化カルシウム上で二回減圧蒸留した.1-フェニルエチルブロミド(1-PEBr; 和光純薬工業 ( 株 )) は水素化カルシウム上で二回減圧蒸留した (75 C/6 mmhg). 過酸化ベンゾイル (BPO; シグ 498
ポリスチレンの熱分解生成物スチレン二量体のラジカル重合およびスチレンとのラジカル共重合 マアルドリッチジャパン ( 株 )) はメタノールで三回再結晶を行った.1-フェニルエチルジチオベンゾエート (PEDTB) は文献を参考に合成し 7), カラムクロマトグラフィー ( 固定相 シリカゲル, 移動相 ヘキサン ) により精製した. 臭化鉄 (FeBr 2 ; シグマアルドリッチジャパン ( 株 )), トリ n-ブチルアミン [N(nBu) 3 ; 和光純薬工業 ( 株 )], トリ n-ブチルリン [P(nBu) 3 ; 和光純薬工業 ( 株 )], TEMPO( シグマアルドリッチジャパン ( 株 )) は市販品をそのまま使用した. 2.3 重合操作必要量の開始剤とモノマー, 添加試薬, ガスクロマトグラフィーの内部標準をガラスで作成した重合管に入れた. その後真空ラインに接続し, 凍結 脱気 解凍サイクルを三回行い, 重合管を熔封した. 重合はあらかじめ定めた温度のオイルバスに重合管をすべて浸すことで開始した. 停止は重合管を氷水で急冷して行った. 反応溶液は CH 2 Cl 2 で希釈し, イオン交換水で洗浄後, 溶媒を除去し, 生成物を回収した. モノマーの重合率はモノマーの残存量を SD にはテトラリンをスチレンにはフェニルクロライドを内部標準としたガスクロマトグラフィーで測定し求めた. 各重合条件を以下に示す. ラジカル重合では開始剤に BPO を用いて塊状重合の条件下,110 C で行った.St のラジカル重合では [St] 0 =8.5 M, BPO St=1 500.SD のラジカル重合では [SD] 0 =4.5 M, BPO SD=1 50.SD の St とのラジカル共重合では [St] 0 =[SD] 0 =2.8 M, BPO SD St= 1 250 250. 原子移動ラジカル重合 (ATRP) 8) では開始剤に 1-PEBr, 触媒に FeBr 2, 配位子に N(nBu) 3 もしくは P(nBu) 3 を用いて塊状重合の条件下,110 C で行った.St の ATRP では [St] 0 =7.6 M, 1-PEBr FeBr 2 N(nBu) 3 St=1 1 3 126.SD の ATRP では [SD] 0 =4.5 M, 1-PEBr FeBr 2 N(nBu) 3 SD=1 1 3 126.SD の St との共重合 ATRP では [St] 0 =[SD] 0 =2.3 M, 1-PEBr FeBr 2 N(nBu) 3 or P(nBu) 3 SD St=1 3 18 60 60. 安定ラジカル存在下での重合 (SFRP) 9),10) は開始剤に BPO, 安定ラジカルとして TEMPO を添加し,95 C で 3.5 時間反応させて, アルコキシルアミンを生成させてから塊状重合の条件下,120 C で行った.St の SFRP では [ St] 0 =8.1 M, BPO TEMPO St=1 1.2 255.SD の SFRP では [SD] 0 =4.5 M, BPO TEMPO SD=1 1.2 255.SD の St との共重合 SFRP では [St] 0 =[SD] 0 =2.8 M, BPO TEMPO SD St=1 1.2 127 127. 可逆付加開裂型連鎖移動 (RAFT) 7) 重合では開始剤に BPO, RAFT 剤として PEDTB を用いて塊状重合の条件下,110 C で行った.St の RAFT 重合では [St] 0 =8.2 M,BPO PEDTB St=1 5 550.SD の RAFT 重合では [SD] 0 =4.5 M, BPO PEDTB SD=1 5 550. Table 1. Monomer Radical polymerization of SD with BPO Time, h Conv. d), SD St M n e) M w /M n e) St a) 3 69 43400 2.92 SD b) 165 15 890 1.65 SD, St c) 141 31 84 13800 2.78 a) At 110 C: [St] 0 =8.5 M, BPO: St=1: 500. b) At 110 C: [SD] 0 =4.5 M, BPO: SD=1: 50. c) At 110 C: [St] 0 =[SD] 0 = 2.8 M, BPO: SD: St=1: 250: 250. d) Measured by GC. e) Measured by GPC. e) Measured by GPC. SD の St との RAFT 共重合では [St] 0 =[SD] 0 =2.8 M, BPO PEDTB SD St=1 5 275 275. 2.4 測定生成物の分子量分布測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) により行った. ポリスチレンカラムに Shodex K-805L 1 本と K-804L 3 本, 示差屈折計に島津 RI-6A, UV 検出器に日立 L-7400 を取り付けた島津 LC10-AD を用いて溶媒にクロロホルム, 流速 1.0 ml/min, 40 C で測定した. 数平均分子量 (M n ), 重量平均分子量 (M w ), 多分散度 (M w /M n ) はポリスチレン換算により求めた. 示差走査熱量測定 (DSC) は, 理学 Thermo Plus 示差走査熱量計 DSC8230L を用いて, 窒素雰囲気下,5 C/min で 200 C まで昇温した後,-100 ~200 C の温度範囲で降温, 昇温を三回繰返して行った. ガラス転移温度 (T g ) は, 第二昇温過程の熱容量の変化の中心点の温度とした. 熱重量分析 (TG-DTA) は, 理学 TG-DTA8078G1 により, 窒素雰囲気下, 昇温速度 10 C/min で行った. 熱分解温度 (T d ) は重量が 5wt 減少した温度とした. 3 結果と考察 3.1 BPO によるラジカル重合 St, SD の重合と SD と St の共重合を BPO を用いた塊状重合の条件下で行った. 重合結果を Table 1 に示す. St は約 3 時間で分子量 40000 以上の高分子量体が得られた. しかし,SD は重合時間が 165 時間にもかかわらず, 分子量は 890 と低分子量体であった. また,Figure 1(A) に示すように SD は低重合率であり, 重合率と生成物の分子量と分子量分曲線は時間に対して大きく変化しなかった. これは SD のモノマー連鎖が長くなると SD の嵩高い a 置換基による立体障害の影響が大きくなり,SD の付加が起こりにくくなったためと考えられる. そこで SD の立体障害を軽減させるために St との共重合を行った. 共重合においては 141 時間で SD を 31, Stを 84 消費し, 分子量約 14000 のポリマーが生成した. また Figure 1(B) に示すように分子量分布曲線は重合を通して単峰性であった. 499
小原 橋本 漆 o 阪口 澤口 佐々木 3.2 制御ラジカル重合 SD の重合を制御するために, 制御ラジカル重合であ る ATRP, SFRP, RAFT 重合を検討した. 重合結果を Table 2 に示す. St の ATRP, SFRP, RAFT 重合はいずれも高重合率 に達し, 高分子量体が得られた. また, 分子量分布は比較的狭く (M w /M n =~1.21) リビング性を示した. しかし,SD の重合においては,ATRP では 46 時間で重合率は 1, 分子量は 570 であり,SFRP では 236 時間で重合率は 1, 分子量は 420 であった. また RAFT 重合でも 147 時間で重合率が 1, 分子量は 480 といずれの場合も重合がほとんど進行せず, 生成ポリマーの分子量は低かった. これは SD の嵩高い a 置換基による立体障害の影響が強いことと, ドーマント種の形成によりラ Figure 1. GPC traces of the products obtained by the bulk polymerizations of SD (B) and the bulk copolymerization of SD with St (A) with BPO at 110 C. (A) [SD] 0 =4.5 M, BPO SD=1 50. (B) [St] 0 =[SD] 0 =2.8 M, BPO SD St=1 250 250. ジカル活性種の濃度が非常に低いことが考えられる. そこで立体障害を軽減するため St との共重合を行った. いずれの重合も長時間を要したが比較的高分子量ポリマーが生成した.ATRP による SD の St との共重合においては N(nBu) 3 を用いると 224 時間で SD が 43, St が 77 重合するが,M w /M n の値は 5.06 と広く, 分子量は 5180 と低分子量体であった. 一方,P(nBu) 3 を用いると 252 時間で SD が 38,St が 84 重合し,M w / M n の値が 2.74, 分子量は 11400 のポリマーが得られた. これは配位子に N(nBu) 3 を用いる場合, 重合系が不均一系になるのに対し,P(nBu) 3 を用いると重合系が均一系になり, 有効な触媒濃度が増加したためと考えられる.Figure 2(A) に配位子に P(nBu) 3 を用いて得られたポリマーの分子量分布曲線を示す. 分子量分布曲線は重合率の増加とともに高分子量側にシフトすることはなく,M w /M n の値が 2.7 前後と分子量分布も広かった. SFRP による SD の St との共重合においては 236 時間で SD が 41,Stが94 消費され,M w / M n の値が 1.95, 分子量が 5760 の重合体が得られた.Figure 2(B) に示すように, 分子量分布曲線は重合率の増加とともに高分子量側にシフトすることはなく, 低分子量ポリマーであった. また, 分子量分布も M w /M n の値が 1.95 以上と広かった.ATRP と SFRP の二つの共重合でリビングラジカル重合が進行しなかったのは Scheme 2 で示すように成長ポリマーラジカルが SD から水素を引き抜き 3), 安定なアリル型のラジカルを生成する連鎖移動反応が起こりやすいためと推定される. また,SD の成長ラジカルのように a 置換基が非常に嵩高い場合は,St への連鎖移動反応も起こる可能性がある 11). 一方, Table 2. ATRP, SFRP, and RAFT polymerization of SD ATRP SFRP RAFT Monomer Initiator Additive Time, h SD Conv. j), St M n k) M w /M n k) St a) 35 69 11700 1.21 SD b) FeBr 2 46 1 570 1.03 1-PEBr N(nBu 3 ) SD, St c) 224 43 77 5180 5.06 SD, St c) FeBr 2 P(nBu 3 ) 252 38 84 11400 2.74 St d) 27 79 22400 1.17 SD e) BPO TEMPO 236 1 420 1.20 SD, St f) 236 41 94 5790 1.95 St g) 91 79 8370 1.19 SD h) BPO PEDTB 147 1 480 1.13 SD, St i) 697 18 82 3260 1.65 a) At 110 C, [St] 0 =7.6 M, 1-PEBr: FeBr 2 :N(nBu) 3 :St=1: 1: 3: 126. b) At 110 C, [SD] 0 =4.5 M, 1-PEBr: FeBr 2 :N(nBu) 3 :SD=1: 1: 3: 126. c) At 110 C, [St] 0 =[SD] 0 =2.3 M, 1-PEBr: FeBr 2 :N(nBu) 3 or P(nBu) 3 :SD:St=1: 3: 18: 60: 60. d) At 120 C, [St] 0 =8.1 M, BPO:TEMPO:St=1: 1.2: 255. e) At 120 C, [SD] 0 =4.5 M, BPO: TEMPO: SD=1: 1.2: 255. f) At 110 C, [St] 0 =[SD] 0 =2.8 M, BPO: TEMPO: SD: St=1: 1.2: 127: 127. g) At 110 C, [St] 0 =8.2 M, BPO: PEDTB: St=1: 5: 550. h) At 110 C, [SD] 0 =4.5 M, BPO: PEDTB: SD=1: 5: 550. i) At 110 C, [St] 0 =[SD] 0 =2.8 M, BPO: PEDTB: SD: St=1: 5: 275: 275. j) Measured by GC. k) Measured by GPC. 500
ポリスチレンの熱分解生成物スチレン二量体のラジカル重合およびスチレンとのラジカル共重合 Figure 2. GPC traces of the products obtained by the (A) ATRP, (B) SFRP, and (C) RAFT copolymerization of SD with St. (A) [St] 0 =[SD] 0 =2.3 M, 1-PEBr FeBr 2 P(nBu) 3 SD St=1 3 18 60 60. (B) [St] 0 =[SD] 0 =2.8 M, BPO TEMPO SD St=1 1.2 127 127. (C) [St] 0 = [SD] 0 =2.8 M, BPO PEDTB SD St=1 5 275 275. Scheme 2. RAFT 重合による SD の St との共重合においては 697 時間で SD が 18,St が 82 消費され,M w /M n の値が 1.65, 分子量が 3260 の重合体が得られた.Figure 2(C) で示すように, 分子量分布曲線は低分子量側にテーリングが見られるため, 分子量分布も徐々に広くなっているが, 重合率の増加とともに高分子量側にシフトし, 寿命の長い成長種が生成していることがわかった. これは Scheme 2 に示すような,PEDTB によって起こる可逆付加開裂型連鎖移動反応が水素引き抜きによる連鎖移動反応よりも優先的に起こるためと推定される. 3.3 SD と St の共重合体の熱的性質ラジカル重合,ATRP, SFRP, RAFT 重合によって得られた共重合体のガラス転移温度 (T g ) を DSC により検討した.Figure 3 にラジカル重合で合成したポリスチレンとラジカル重合,ATRP, SFRP, RAFT 重合で合成した共重合体の第二昇温過程のサーモグラムを示す. ラジカル重合で生成した共重合体は 135 C,ATRP で生成し Figure 3. DSC thermograms of poly(st), poly, poly-atrp, poly-sfrp, poly(sdstat-st)-raftonsecondheating. た共重合体は 131 C,SFRP で生成した共重合体は 124 C,RAFT 重合で生成した共重合体は 117 C とポリスチレンの 104 C よりもかなり高い値を示した. Table 3 に測定したT g の分子量との関係をポリスチレンと比較して示す. ポリスチレンの T g は分子量が 40000 以上でも 104 C であった. しかしながら, 共重合体では分子量が 10000 未満の生成物があるにもかかわらず,T g がすべて 100 C を超え, 高い値を示した. これは SD によりポリマー中に嵩高い置換基が導入されたことで, 分子のたわみやすさを減らす効果が働き, 高分子鎖の運動が束縛されたためであると考えられる 12). また, 共重合体の熱分解温度 (T d ) を Table 3 に示す.T d 501
小原 橋本 漆 o 阪口 澤口 佐々木 Table 3. Thermal properties Polymer Additive Composition SD St M n M w /M n T g a) ( C) T d b) ( C) Poly (St) 0 100 43100 2.92 104 382 27 73 14500 2.65 135 306 FeBr 2 /P(nBu) 3 30 70 14500 2.45 131 310 TEMPO 30 70 6440 1.86 124 307 PEDTB 18 82 4030 1.41 117 330 a) Measured by GPC. b) Measured by DSC; 2nd heating scan. c) Measured by TG-DTA; 5 weight loss. はラジカル重合で生成した共重合体は 306 C, ATPR で生成した共重合体は 310 C, SFRP で生成した共重合体は 307 C,RAFT 重合で生成した 330 C とポリスチレンの 382 C よりも低い値を示した. また,SD の組成比が大きくなるほど T d は低くなった. これは主鎖中に存在する嵩高い a 置換基を有する SD の結合部分が繰返し単位間の立体障害を増大させ, 結合解離エネルギーが減少し, 熱分解を促進させているためであると推定される 1). 4 結論 SD のラジカル単独重合においては, 嵩高い a 置換基の立体障害により SD の付加が妨げられたため, 分子量が約 1000 の低分子量ポリマーしか得られなかった. 一方,SD の St との共重合においては, 成長反応における立体障害が軽減され,SD を約 30 mol 含む高分子量体ポリマーが生成した.SD の ATRP,SFRP, および RAFT 重合においては, 嵩高い a 置換基の立体障害とラジカル活性種の濃度の低下により, 重合はほとんど進行しなかったが,SD と St の共重合では比較的高分子量ポリマーが生成した.SD と St の共重合により得られたポリ ( スチレン誘導体 ) のガラス転移温度は, ポリスチレンよりもかなり高く, ポリスチレンよりも高温で使える プラスチック材料として有望であるとわかった. 文 1) 三田達, 高分子の熱分解と耐熱性, 神戸博太郎編, 培風館 (1974) II.6 節高分子の熱分解機構. 2) 基礎高分子科学, 高分子学会編, 東京化学同人 (2006) 7.4 節高分子の分解とリサイクル. 3) 澤口孝志, 高分子加工, 46, 375(1997). 4) 澤口孝志, 高分子学会予稿集, 45, (1996 年 10 月, 広島 ), p. 3583. 5) 澤口孝志, 高分子学会予稿集, 45, (1996 年 5 月, 名古屋 ), p. 250. 6) 小原正之, 橋本保, 漆 o 美智遠, 阪口壽一, 澤口孝志, 佐々木大輔, 高分子論文集, 66, 483 (2009). 7) Y. K. Chong, J. Krstina, T. P. T. Le, G. Moad, A. Postma, E. Rizzardo, and S. H. Thang, Macromolecules, 36, 2256 (2003). 8) K. Matyjaszewski, M. Wei, J. Xia, and N. E. McDermott, Macromolecules, 30, 8161(1997). 9) P. J. MacLeod, R. P. N. Veregin, P. G. Odell, and M. K. Georges, Macromolecules, 30, 2207 (1997). 10) M. K. Georges, R. P. N. Veregin, P. M. Kazmaier, and G. K. Hamer, Macromolecules, 26, 2987 (1993). 11) J. P. Fischer and W. L äuders, Makromol. Chem. 155, 239 (1972). 12) L. E. Nielsen 著, 高分子と複合材料の力学的性質, 小野木重治訳, 化学同人 (1976) 1.3 節ガラス転移. 献 Radical Polymerization of Styrene Dimer and Radical Copolymerizations of Styrene Dimer with Styrene Masayuki OHARA 1,TamotsuHASHIMOTO 1,MichioURUSHISAKI 1, Toshikazu SAKAGUCHI 1, Takashi SAWAGUCHI 2,andDaisukeSASAKI 3 1 Department of Materials Science and Engineering, Graduate School of Engineering, University of Fukui (3 9 1, Bunkyo, Fukui 910 8507, Japan) 2 College of Science and Technology, Nihon University (1 8 14, Kandasurugadai, Chiyoda-ku, Tokyo 101 8308, Japan) 3 San-ei Kougyou Corp. (3 347, Misato, Saitama 341 0044, Japan) Radical polymerizations of a styrene dimer, 2,4-diphenyl-1-butene, as a thermal degradation product of polystyrene for chemical recycling, were investigated under variable reaction conditions: benzoyl peroxide (BPO)-initiated radical polymerization, atom transfer radical polymerization (ATRP), stable free radical polymerization (SFRP), and reversible addition-fragmentation chain transfer (RAFT) polymerization conditions. The homopolymerizations of SD hardly proceeded probably because of steric hindrance of bulky a-substituent of SD. Radical copolymerizations of SD with styrene produced relatively high-molecular-weight-copolymers [the number-average-molecularweights (M n )=4030~14500] containing of SD about 30 mol. The glass transition temperature (T g ) of these copolymers was ~130 C, much higher than that of polystyrene. KEY WORDS Styrene Dimer / 2,4-Diphenyl-1-butene / Radical Polymerization / Controlled Radical Polymerization / Polystyrene / Chemical Recycling / (Received May 13, 2009: Accepted July 14, 2009) [Kobunshi Ronbunshu, 66 498 502 (2009)] 2009, The Society of Polymer Science, Japan 502