1. 国内市場 2013 年の市場成長率は 1.0% 程度となった模様 2014 年の市場成長率は 1.0% 程度と予測 2014 年度薬価改定は医療費抑制色の強い内容 2013 年の国内医薬品市場 ( 出荷額ベース ) は 高齢化の進展による医薬品需要増大という構造要因を背景に 新薬創出加算品 (

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( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

米国メルク社より眼科資産を 取得する件について 2014 年 5 月 14 日代表取締役社長兼 CEO 黒川明

通期 連結の売上高 営業利益 経常利益としては 過去最高 のれん及び固定資産に係る減損損失を特別損失として 517 億円計上 当期純利益が 3 月 30 日付での予想数値より増加したのは 予想数値公表時の見込み額と比べ 最終決算数値により確定した減損損失額が 53 億円 減少したことによる 事業環境

長期収載品について 長期収載品とは 明確に定義はされていないが 一般的には 後発医薬品のある先発医薬品をいう 長期収載品と後発医薬品の間には 実質的に 以下のような役割分担が生じている 安定供給 長期収載品 安定供給することが求められており 具体的には 医療機関から継続供給を求める意見が強いことなど

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

Sony IR Day 2014-モバイル・コミュニケーション分野

2018年3月期 決算説明会

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

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目次 1. 経営成績営業利益分析 / 海外売上高 / 貸借対照表 2. 業績予想 ( 修正 : 有 ) 3. 研究開発費 / 減価償却費 / 設備投資 4. 株価の状況 5. トピックス P.2 P.10 P.14 P.16 P

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1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

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Q8: 為替変動が売上収益に与えたインパクトはどの程度か? A: 為替変動により 当第 4 四半期における売上収益は前年同期比で 49 億円増加しました また 通期では 為替変動により 売上収益は前年同期比で 565 億円増加しました HR テクノロジー事業 Q9:( 通期 ) 売上収益が米ドルベー

( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

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プレゼン

四半期事業セグメント 事業セグメント ( 四半期累計 ) ( 百万円 ) 1Q 1-2Q 1-3Q 1-4Q 1Q 1-2Q 1-3Q 1-4Q 売上高 2,866 5,897 8,705 11,352 3,019 6,323 9,245 12,311 前期比 -72.9% 6.8% 8.0% 7.

Ⅰ. 経営状況 A.2019 年 3 月期第 1 四半期決算の概要 1) 概要 ( 連結 ) ( 単位 : 億円 %) 2019/3 期 1Q 実績 /3 期 1Q 実績 2 額 ( 前年比 ) 3=1-2 率 ( 前年比 ) 4=3 2 X100 上期予想 (4/27 発表 ) 5 進

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1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

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つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

Transcription:

医薬品 要約 2013 年の国内市場は 新薬創出加算品を中心に市場が拡大した一方 ジェネリック薬シフトの影響が下押し圧力となり市場成長率は 1.0% 程度となった ( 出荷額ベース ) 2014 年は薬価改定による単価下落や長期収載品のジェネリック薬シフトが進み 1.0% 程度の成長率に留まるものと予測する 欧米市場は引き続き医療費抑制の圧力が続くが 大型製品特許切れや大幅薬価引下げの影響が一巡し プラス成長に回帰 2014 年は 米国においてオバマケア施行による薬剤費支出増加が見込まれ 5% 程度の成長率を見込む 2013 年度のの業績は 大型製品の好調な推移や円安影響により増収増益 2014 年度は 国内薬価改定等のマイナス影響 決算月の変更となる企業があり売上高は減収 営業利益についても減益を予測する 2014 年 4 月以降 大型再編に向けた動きが活発化している 世界最大手の Novartis は GlaxoSmithKline との事業交換 統合を発表した 事業領域を集中させることでその分野でのグローバルトップを目指す 日本企業もこの活発化した再編の波をチャンスとできるか 正念場を迎えている Ⅰ. 産業の動き 実額 市場規模 図表 11-1 医薬品市場規模動向 摘要 12fy 13fy 14fy 13/ 上 13/ 下 14/ 上 14/ 下 ( 単位 ) ( 実績 ) ( 実績 ) ( 予想 ) ( 実績 ) ( 実績 ) ( 予想 ) ( 予想 ) 金額 ( 億円 ) 87,660 88,619 89,467 43,148 45,470 43,617 45,850 金額出荷 ( 億円 ) 88,918 89,767 90,615 43,729 46,036 44,186 46,429 金額輸出 ( 億円 ) 1,258 1,148 1,148 581 566 569 579 金額 ( 輸入 ) ( 億円 ) 28,041 30,798 32,220 - - - - 増減率 ( 対前年度比 ) ( 対前年同期比 ) 摘要 12fy 13fy 14fy 13/ 上 13/ 下 14/ 上 14/ 下 ( 単位 ) ( 実績 ) ( 実績 ) ( 予想 ) ( 実績 ) ( 実績 ) ( 予想 ) ( 予想 ) 市場規模 出荷 輸出 (%) + 1.2% + 1.0% + 1.0% + 1.6% + 0.6% + 1.1% + 0.8% (%) + 1.2% + 1.0% + 0.9% + 1.6% + 0.3% + 1.0% + 0.9% (%) 0.9% 8.7% + 0.0% + 1.8% 17.5% 2.1% + 2.3% ( 輸入 ) (%) + 11.4% + 9.8% + 4.6% - - - - ( 出所 ) 厚生労働省 薬事工業生産動態統計 より作成 ( 注 1) 指標はカレンダーベース ( 注 2) 医薬品市場規模 = 出荷 - 輸出 出荷の中に輸入 ( 最終製品の輸入 + 輸入製剤からの国内製造製品 ) を含む輸出 = 最終製品の輸出 ( 直接輸出分のみ ) 89

1. 国内市場 2013 年の市場成長率は 1.0% 程度となった模様 2014 年の市場成長率は 1.0% 程度と予測 2014 年度薬価改定は医療費抑制色の強い内容 2013 年の国内医薬品市場 ( 出荷額ベース ) は 高齢化の進展による医薬品需要増大という構造要因を背景に 新薬創出加算品 ( イノベーティブな医薬品で薬価は維持される ) を中心に市場が拡大した一方で ジェネリック薬シフトが下押し要因となり 成長率は 1.0% となった ( 図表 11-1 ) 2014 年は薬価改定年であり 2.8% 相当の薬価引下げ ( 消費税増税補填分 2.9% を含む 通常改定分は 5.7% 相当 ) が実施されたことに加え ディオバン ブロプレス等の生活習慣病領域の大型製品が特許切れすること 長期収載品からジェネリック薬へシフトが進むことが市場の下押し要因となり 成長率は 1.0% 程度を予測する 2014 年度の薬価改定では 新薬収載時の薬価算定ルールの見直し等でイノベーションをより高く評価する施策が盛り込まれた一方 ジェネリック薬の当初収載時の薬価引下げや ジェネリック薬への適切な置き換えが進まない場合の長期収載品の特例引下げの制度化等 薬剤費抑制の方向性が色濃く表れたものとなった 図表 11-2 2014 年度薬価改定における主な制度改正 項目 内容 新薬 新薬創出加算の試行継続 新薬収載時のイノベーションの評価拡充 従来と同様の枠組みで試行継続 当該加算の対象品目 対象企業の在り方等 現行方式の見直しについても引続き継続 原価計算方式の際のイノベーション評価範囲を拡大 世界先駆け加算 の導入 長期収載品長期収載品の特例引下げ ジェネリック薬収載後 5 年を経ても適切な置き換えが図られていない場合 長期収載品の追加引下げを薬価改定の都度実施 新規に収載されるジェネリック薬の薬価について 従来の 先発新規収載価格引下げ品の70% から 先発品の60% に( 銘柄数が10を超える時は 50% ) 各価格帯毎の加重平均で薬価を統一価格帯の3 分割 30% 未満 30% 以上 50% 未満 50% 以上 ジェネリック薬 診療報酬改定 機能評価係数 Ⅱ 診療報酬改定 後発医薬品調剤体制加算 後発医薬品の使用割合を評価する指数として 後発品指数 を導入 後発医薬品指数 ( 置き換え率 ) の評価上限は 60% 医薬品一部数量 ( 後発数量 + 後発品のある先発品数量 ) における後発品数量の割合に応じて加算 55% 以上 18 点 65% 以上 22 点 ( 出所 ) 厚生労働省資料より作成 特にジェネリック薬企業にとって短期的に厳しい内容 またジェネリック薬の促進に向けて 診療報酬改定において DPC 病院の評価係数にジェネリック薬の使用状況を加える等の施策も導入された このような施策や従前からの啓発策の結果 ジェネリック薬シフトは一段と加速しており 2013 年度のジェネリック医薬品割合 ( 数量ベース ) は 45.1% となっている 我が国はジェネリック薬の普及において諸外国比遅れを取ってきたなか 現在政府はさらにジェネリック医薬品の使用促進を目的として 2018 年 3 月末までにジェネリック薬数量シェア 60% 以上 を掲げているが 現状のペースであれば達成は十分可能と考えられる 図表 11-3 では国内大手医薬品卸の直近期の取扱品目の売上シェアについて記載している 大手医薬品卸の傾向として 新薬創出加算品の取扱増加 と 長期収載品のジェネリック医薬品シフト が挙げられる 2014 年はこの動きがさらに加速するものと考えられる 90

図表 11-3 医薬品卸のカテゴリー別売上構成比 比単位 :% メディパル HD アルフレッサ HD スズケン東邦 HD 構成比売上伸長率構成比売上伸長率構成比売上伸長率構成比売上伸長率 新薬創出加算品 29.0 16.3 29.3 13.9 32.6 23.6 28.1 12.8 その他特許品 30.4 11.1 36.8 8.2 26.4 5.5 30.6 10.5 長期収載品 32.7 9.9 26.9 10.2 33.1 0.1 33.0 12.5 後発品 7.9 11.8 7.0 11.7 7.9 10.6 8.3 9.3 ( 出所 ) 各社 IR 資料より作成このような環境変化は 我が国新薬メーカーのビジネスモデルに大きな影響を与えることとなる 我が国の薬価制度は イノベーションへの評価が充分でないことが指摘される一方 特許切れ後もジェネリック薬への切り替え圧力や価格引き下げ圧力は緩やかであり 長期収載品が新薬メーカーの収益源として長く機能してきた経緯がある 一方欧米 ( 特に米国 ) は従来から特許が切れればジェネリック薬が急速に浸透する市場であるが 近年は医療費抑制策の影響で新薬 ジェネリック薬問わず 代替品が存在するマーケットでは価格が大きく引き下げられる傾向にあり 特許切れ製品を取り巻く環境は一段と厳しくなりつつある 翻って我が国の市場も 近年の薬価改定やジェネリック薬促進策の浸透の結果 市場は着実に欧米型に変わりつつあり 収益を長期収載品に依存する事業モデルは早晩限界を迎えるものと予測される 新薬メーカーとしては ジェネリック薬メーカー等との提携等を通じたローコストオペレーションやオーソライズド ジェネリックへの取組みにより長期収載品からの収益剥落を可能な限り防止することも重要であるが 第 Ⅲ 章トピックスで後述するように自社のポートフォリオ見直しを通じて 新薬事業に関する競争力を高める取組みが早急に求められよう 2. 海外市場 2013 年米国市場はプラス成長 2014 年はオバマケアによる保険加入者増により成長率上昇 2013 年の米国市場は 公的保険であるメディケアが入札による調達を進めていること等を背景にジェネリック薬や代替薬が存在する領域での医薬品価格は大幅低下傾向にあるが 前年にピークを迎えた大型製品特許切れの影響が一巡しスペシャリティ領域を中心に新薬の市場が伸張したことにより全体の成長率は 4% 程度となった模様 2014 年の米国市場は 医療保険制度改革法 ( オバマケア ) の施行による保険加入者の増加が医薬品市場に大きな影響を与える オバマケアでは医療保険への加入の原則義務化により 2014 年以降医療保険加入者を 3,000 万人強増加させる計画であり これら新規加入者の医療支出が 2014 年から 2015 年にかけて市場の底上げ要因となる オバマケアについては 将来的には医療費抑制に向けたさらなる施策が想定されるものの足許では保険加入者増加のプラス要因が大きく 2014 年は 5% 程度の市場成長を予測する 91

欧州市場は若干のプラス成長 2013 年の欧州市場は 依然として医療費抑制の圧力が強くフランスやスペインではゼロ近傍もしくはマイナス成長となったものの ドイツやイギリスでは欧州危機以降実施された大幅薬価引下げ等の緊急避難策の反動増もあり 6% 程度の成長率となった模様 2014 年も医薬品需要増大と医療費抑制圧力の綱引きの結果 全体で 3% 程度の市場成長を予測する 図表 11-4 欧米主要国の医療用医薬品市場 2010 年 2011 年 ( 単位 : 億ドル ) 2012 年 2013 年 2014 年予測 成長率成長率成長率成長率成長率 米国 3,196 6% 3,315 4% 3,213-3% 3,334 4% 3,501 5% 欧州 ( 主要 5 ヶ国 ) 1,471-1,541-1,436-1,510-1,555 3% ドイツ 399 3% 423 1% 399 2% 435 6% フランス 385 0% 400-1% 367-1% 372-2% イタリア 264 3% 284 3% 260-1% 277 3% イギリス 203 4% 209-1% 212 3% 221 6% スペイン 220 3% 225-3% 198-5% 205 1% ( 出所 )IMS Health Knowledge Link より作成 ( 注 1)Copyright 2014 IMS Health 無断転載禁止 ( 注 2) 成長率については 為替変動の影響を除外したもの ( 注 3)2014 年の数値は予測 Ⅱ. 企業業績 1.2013 年度は円安影響等により増収増益 海外事業が堅調 大型製品伸張 円安影響等により増収増益 2013 年度の国内の企業業績は 売上高は前年度比 +10.6% の増収 営業利益は前年度比 +12.5% の増益となった ( 図表 11-5 ) 薬価改定の非実施年度で国内市場が安定的に推移するなか 海外市場では 大塚ホールディングスの Abilify 等大型製品の米国での好調な推移や新興国向け販売の拡大に加え 円安影響が各社の海外売上を押し上げた 2.2014 年度は薬価改定影響により減収減益を見込むが 特殊要因を除けば増収増益 売上高横這いも 経費削減により若干の増益 2014 年度は 売上高は前年度比 5.7% の減収 営業利益は前年度比 2.0% の減益を予測する ただし売上 利益を押し下げる一過性要因として 第一三共の Ranbaxy 非連結化 大塚ホールディングスの決算期変更 (9 ヶ月決算 ) の影響があり これらを除くと若干の増収増益を予測 売上面では 薬価改定や長期収載品のジェネネリック薬シフトにより多くの企業において国内売上が前年度比マイナスとなる見込みである一方 大塚製薬の Abilify やアステラス製薬の XTANDI 等 一部の大型製品の米国での伸長が全体を牽引する見通し 92

利益面では 国内の減収要因に加え エーザイ等で海外の新製品立ち上げにあたり販管費が増加することが下押し圧力となるが 上記の一部大型製品の売上伸長が大きく貢献する見通し 図表 11-5 国内の企業業績 実額 ( 社数 ) 12fy 13fy 14fy 売上高 営業利益 ( 単位 ) ( 実績 ) ( 実績 ) ( 予想 ) ( 億円 ) 67,936 75,167 70,887 ( 億円 ) 8,463 9,517 9,331 増減率 ( 対前年度比 ) 摘要 12fy 13fy 14fy ( 単位 ) ( 実績 ) ( 実績 ) ( 予想 ) 売上高 営業利益 ( 億円 ) + 2.7% + 10.6% 5.7% ( 億円 ) 9.8% + 12.5% 2.0% ( 出所 ) 各社有価証券報告書等より作成 ( 注 1) : 武田薬品工業 アステラス製薬 大日本住友製薬 塩野義製薬 田辺三菱製薬 中外製薬 エーザイ 第一三共 大塚ホールディングス ( 証券コード順 ) ( 注 2)2014 年度の数値は予測 Ⅲ. トピックスリーディングカンパニーの最新動向 ~ 医薬品産業 ~ 2014 年 4 月以降 大型再編に向けた動きが活発化 2014 年 4 月以降 医薬品産業において大型再編に向けた動きが活発化している ( 図表 11-6 ) 大手製薬企業を巡る動きで業界内に最も大きなインパクトを与えたのは Novartis と GSK がワクチン OTC 癌の 3 領域に渡る事業の交換 統合を発表したことであろう 図表 11-6 足元の再編動向 2014 年 対象企業買売 内容 NovartisがGSKの抗がん剤事業を160 億ドルで買収 GlaxoSmithKline Novartis GSKがNovartisのワクチン事業を145 億ドルで買収 両社のOTC 事業を統合 (GSK63.5% Novartis36.5%) 4 月 Eli Lilly Novartis 動物薬事業を 54 億ドルで買収 Valeant Allergan 総額約 450 億ドルで買収提案 Pfizer AstraZeneka 総額 1,000 億ドルで買収提案 5 月 Bayer Merck コンシューマー ケア事業を 142 億ドルで買収 6 月 Abbvie Shire 460 億ドルで買収提案 ( 2014 年 7 月 540 億ドルで買収 ) 7 月 Pfizer InnoPharma 2.25 億ドルで買収 ( 出所 ) 各社 IR 資料より作成 93

新薬開発企業として生き残るためのハードルが上昇 <Novartis> M&A による多角化路線から事業領域特化へ変更 <Novartis> ワクチンとコンシューマーヘルス事業を GSK へ売却 統合 このような動きの背景には 新薬開発の難易度上昇や医療費抑制の動き等から 新薬開発企業として生き残るためのハードルが上昇していることが挙げられる 先進国では高齢化の進展により医療費の支払い能力の限界が顕在化しており かかる状況下 各国は費用対効果が十分で無い製品や代替品のある製品についての承認及び保険収載のハードルを高めている 費用対効果を追及する政府の圧力やゲノム解析や疾病毎の知見の進歩により 今後の新薬開発には個別化医療のアプローチが不可欠となっている 個別化医療が進捗すると製品毎の市場が細分化する一方 一つの適応に対して複数製品が存在する必要性は薄く 適応毎に 1 社総取り の市場となる可能性が高い 製薬企業は新薬等の開発力を高め 保険者や医療機関に対して効果的にアプローチするためにも特定領域でのプレゼンスを高めることが重要になっている Novartis は 1996 年にサンドとチバガイキーが合併して発足した M&A を重ねることにより ワクチンをはじめとするヘルスケア事業や動物薬 ジェネリック医薬品といった分野を強化し 多角化を図ってきた しかしながら 昨今は当社の主力製品の特許期間満了 独占期間の終了予定により 事業の見直しを迫られていた 事業環境が変化する中において 多角化から事業領域特化へと戦略を変更した GSK との事業統合前は Novartis の事業は 医薬品 アルコン サンド ワクチン コンシューマーヘルス と 5 部門に分かれていたが ワクチン事業とコンシューマーヘルス事業を GSK へ売却 統合したことにより 医薬品 アルコン サンドの 3 事業領域に特化することが鮮明となった また 医薬品部門も領域を 5 領域に特化 (1がん2 心不全 3 皮膚科 4 呼吸器 5 細胞療法 ) としたことにより それぞれの領域でグローバルトップを維持 または目指すことが可能となった ( 図表 11-7 ) 図表 11-7 Novartis GlaxoSmithKline イメージ図 Novartis 医薬品 <$32.2bn> Novartis が GSK の抗がん剤事業を 160 億ドルで買収 抗がん剤 <$2bn> GSK 医薬品 <$30.7bn> アルコン ( 眼科 ) <$10.5bn> サンド ( ジェネリック ) <$9.2bn> ワクチン <$2bn> コンシューマーヘルス OTC ($3bn) 動物薬 ($1bn) Novartis が GSK にワクチン事業を 145 億ドルで売却 コンシューマーヘルス事業を統合 (Novartis36.5% GSK63.5%) Novartis が Eli Lilly に動物薬事業を 54 億ドルで売却 ワクチン <$5.7bn> コンシューマーヘルス <$8.7bn> Eli Lilly 動物薬 <$2.15bn> ( 出所 )Novartis IR 資料より作成 94

事業領域の絞り込みが重要に 翻って 日系企業の現状を見ると 国内最大手の武田薬品工業でも売上規模で世界トップの Novartis の 1/3 以下の規模であるにも関わらず 各社の事業領域は総じて分散している また周辺領域での多角化の状況を見ても ハイブリッド経営を標榜する第一三共においても そのワクチン事業や OTC 事業の売上は数百億円に止まる 昨今 日系各社はグローバル展開にも注力をしているが どの地域にも欧米メガファーマが台頭している上に 領域の絞り込みを目的とした再編により 領域毎の競争環境はさらに激しくなろう 先般 参天製薬は米国メルクから眼科事業を買収し 製品とともに海外事業のプラットフォームも獲得したといった動きも出てきているが 日系企業がグローバルで存在感を高めるには 各社夫々が自社の強みを発揮できる分野に事業領域を絞り込んだ上でさらに強化していくことが求められよう グローバルで起きている事業再編 事業売却の流れを自社のグローバル展開を拡大させるチャンスにできるか 日系製薬企業は今 正念場を迎えている ( ライフケアチーム大谷舞 ) mai.ootani@mizuho-bk.co.jp /46 2014 No.3 平成 26 年 8 月 21 日発行 2014 株式会社みずほ銀行本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 取引の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 弊行が信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが 弊行はその正確性 確実性を保証するものではありません 本資料のご利用に際しては 貴社ご自身の判断にてなされますよう また必要な場合は 弁護士 会計士 税理士等にご相談のうえお取扱い下さいますようお願い申し上げます 本資料の一部または全部を 1 複写 写真複写 あるいはその他如何なる手段において複製すること 2 弊行の書面による許可なくして再配布することを禁じます 編集 / 発行東京都千代田区大手町 1-5-5 Tel. (03) 5222-5075 95