同時期に 8 社に対し提起された大阪地方裁判所における判決 ( 大阪地裁平成 24 年 9 月 27 日判決 裁判所 HP) では, 間接侵害の成立に関し, 特許法 101 条 2 号の別の要件である その物の生産に用いる物 にあたるかが問題とされ, 1 特許法 2 条 3 項 1 号及び101 条

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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

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では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

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O-27567

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

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( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

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訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

インド特許法の基礎(第35回)~審決・判例(1)~

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

用途発明の権利範囲に関する一考察

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

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( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

平成  年(行ツ)第  号

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日税研メールマガジン vol.111 ( 平成 28 年 6 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以

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301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

できない状況になっていること 約 6 分間のテレビ番組中で 2 分間を超える放映を し たこと等を理由に損害賠償請求が認容された X1 X2 および Y の双方が上告受理申立て 2 判旨 :Y1 敗訴部分破棄 請求棄却 X1,X2 敗訴部分上告却下ないし上告棄却最高裁は 北朝鮮の著作物について日本国

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事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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平成 29 年度 新興国等における知的財産 関連情報の調査 インドにおける医薬用途発明の 保護制度 DePenning & DePenning ( インド特許法律事務所 ) Shakira ( 弁理士 ) DePenning & DePenning は 1856 年に創立されたインド有数の歴史と規模

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基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

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原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

なお 本書で紹介した切餅特許事件においては 被告製品は 原告特許発明の構成要件 Bを文言上充足するともしないとも言い難いものであったが 1 審で敗訴した原告は 控訴審において 構成要件 Bの充足が認められなかった場合に備え 均等侵害の主張を追加している 知財高裁は 被告製品は構成要件 Bを文言上充足

2016 年 5 月 25 日 JETRO アセアン知財動向報告会 ( 於 :JETRO 本部 ) ASEAN 主要国における 司法動向調査 TMI 総合法律事務所シンガポールオフィス弁護士関川裕 TMI 総合法律事務所弁理士山口現

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

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間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

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平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

11総法不審第120号

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ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

(イ係)

27 韓国レポート I. 知財権侵害の最新事件商標権侵害事件 : [ 基本情報 ] 事件番号 : 大法院 宣告 2013 ダ 判決 原審判決 : ソウル高法 宣告 2013 ナ 判決 [ 事件の概要 ] 勃起機能障害治療剤で

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参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

2 被控訴人は, 別紙標章目録記載の標章を付した薬剤を販売してはならない 3 被控訴人は, 前項記載の薬剤を廃棄せよ 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, PITAVA の標準文字からなる商標( 以下 本件商標 という ) の商標権者である控訴人が, 別紙標章目録記載の標章 ( 以下 被告標章

最高裁○○第000100号

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

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告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

米国特許ニュース AIA102( 条 (a)(1) の出願日前の販売 (on sale) は たとえ販売内容が秘密であっても旧法 102 条 (b) の オンセール と同じで 特許を無効にすると最高裁判決 服部健一米国特許弁護士 2019 年 2 月 HELSINN HEALTHCARE S. A.

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

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経済産業省 受託調査 ASEAN 主要国における司法動向調査 2016 年 3 月 日本貿易振興機構 (JETRO) バンコク事務所知的財産部

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抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

第29回 クレーム補正(2) ☆インド特許法の基礎☆

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民事訴訟法

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

実施可能要件を肯定した審決が取り消された事例

11総法不審第120号

1 分析の主旨 ビタミン剤 うがい薬 湿布薬 保湿剤に関しては 医療費適正化の観点か ら 診療報酬改定で様々な対応を行ってきている 本分析は 2012 年度から2016 年度 ( 平成 24 年度から平成 28 年度 ) の調剤レセプトのデータを用いて これらの医薬品の薬剤料 数量等の推移を示したも

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

Transcription:

ピオグリタゾン製剤併用医薬事件判決年月日平成 25 年 2 月 28 日事件名平成 23 年 ( ワ ) 第 19435 号, 同第 19436 号各特許権侵害行為差止等請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130306120730.pdf 担当部東京地方裁判所民事部第 47 部 コメント 本事案は, ピオグリタゾン塩酸塩等と他の有効成分を 組み合わせてなる 糖尿病または糖尿病合併症の予防 治療用医薬についての2 件の特許権を有する原告が, 被告らがピオグリタゾン製剤を製造販売する行為が, これらの特許権の直接侵害又は間接侵害 ( 特許法 101 条 2 号 ) にあたるとして, その製造販売の差止め及び損害賠償等を請求したものです 本判決は, 直接侵害について, 被告らは医療関係者 ( 医師, 薬剤師 ) や患者の行為を道具として利用し支配することにより, または併用される医薬品や併用投与に関する情報を提供するという教唆行為によって直接侵害を行っているとの原告の主張に対し, 併用薬の使用実態に照らし被告らが医療関係者等の行為を道具として利用したということはできない, 教唆は発明の実施にあたらず被告らが教唆したとも認定できないとして, その成立を否定しています また, 間接侵害の成否に関し, 本判決は, 特許法 101 条 2 号の その発明による課題の解決に不可欠なもの ( 不可欠要件 ) には発明の構成要素以外も含まれ得るが, 発明の構成要素であってもその発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは当たらず, 従来技術の問題点を解決するための方法として, 当該発明が新たに開示する, 従来技術には見られない特徴的技術手段について, 当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらすものであると, 東京地裁平成 16 年 4 月 2 3 日 判時 1892 号 89 頁 プリント基板メッキ用治具事件 ( 下掲 ) における規範を採用し, 本件各特許明細書の発明の詳細な説明から, 本件各発明の従来技術の問題点を解決するための方法は, ピオグリタゾンと本件各併用薬との特定の組合わせ であって, 被告ら製剤は, それ自体では, その発明による課題の解決に不可欠なもの であるとは認められないと判断しています 特許法 101 条 2 号の不可欠要件について, 均等論でいう本質的部分性の要件以上の限定的要素を織り込むとも評価される上記規範を採用した場合, 既存の医薬を組み合わせて併用する併用医薬特許について, 間接侵害が成立する場面は相当限られてくるものと思料されます 本件は, ピオグリタゾン塩酸塩である糖尿病治療薬 アクトス を製造販売する原告が, 後発品を製造 販売する被告ら 10 社に対し東京地方裁判所に訴訟を提起したものですが, 1

同時期に 8 社に対し提起された大阪地方裁判所における判決 ( 大阪地裁平成 24 年 9 月 27 日判決 裁判所 HP) では, 間接侵害の成立に関し, 特許法 101 条 2 号の別の要件である その物の生産に用いる物 にあたるかが問題とされ, 1 特許法 2 条 3 項 1 号及び101 条 2 号における 物の生産 とは, 発明の構成要件を充足しない物 を素材として 発明の構成要件のすべてを充足する物 を新たに作り出す行為をいうものであり, 素材の本来の用途に従って使用するにすぎない行為は含まれないものと解する, 2 本件において, 組み合わせてなる 医薬 とは, 一般に, 2つ以上の有効成分を取り合わせて, ひとまとまりにすることにより新しく作られた医薬品 をいう, 3 被告ら各製品は, それ自体が完成された医薬品であり, その用途に従って, 使用 ( 処方, 服用 ) されるものにすぎず, 物の生産に用いられる物 にあたらない, 4 医師による医薬品の併用処方 ( 方法の発明 そのものであって, 医療行為であるから, 特許法 29 条 1 項柱書及び同 69 条 3 項により本来特許を受けることができない ), 薬剤師による医薬品の併せとりまとめ, 患者による医薬品の併用服用のいずれも, 本件各特許発明における 物の生産 に当たらない, と判断されております なお, 本判決では特許の有効性に関する判断をしていませんが, 上記大阪地裁判決は, 本件各特許はいずれも新規性または進歩性を欠き特許無効審判により無効とされるべきものであるとしています また, 審決取消訴訟では, これらの特許について, その新規性及び進歩性を認めた部分も含め判断を誤っているとして特許無効審判の審決が各々取り消されています 参考 参考裁判例 東京地裁平成 16 年 4 月 23 日 判時 1892 号 89 頁 プリント基板メッキ用治具事件 : 平成 14 年改正により設けられた特許法 101 条 2の立法趣旨に鑑み不可欠要件について本判決と同規範に立ち, 当該発明において, 出願以前から使用されていたクリップ自体は, 従来技術の問題点を解決するための方法として, 当該手段を特徴付ける特有の構成を直接もたらす部材には当たらないとして間接侵害の成立を否定 東京地裁平成 23 年 6 月 10 日判決 医療用器具事件 : 胃瘻を造設するための胃壁固定具にかかる発明について, 医師の通常行う使用態様のひとつ ( 調査嘱託によれば約 27% の症例において採用されていた ) における被告製品の構成が特許発明の技術的範囲に属し, 被告製品は特許法 101 条 2 号の その物の生産に用いる物 に該当するとして間接侵害の成立を認めた 東京地裁平成 14 年 5 月 15 日 判時 1794 号 125 頁 ドクターブレード事件 : 平成 14 年改正前特許法 101 条 1 号の その物の生産 につき, 上記大阪地裁判決と同旨 2

審査基準本判決ではなく, 上記大阪地裁の判決においては, 明細書の発明の詳細な説明に記載のある 併せとりまとめ類型 ( 二以上の医薬成分を別々に製剤化し, 混合することなく, 別々に, 同時に, または時間差をおいて同一対象に投与するような場合 ) が本件各特許発明の技術的範囲に含まれるかが問題とされた 審査基準においては, 人間を治療する方法 ( 患者への投薬を含む ) はいわゆる医療行為であって, 産業上利用することができる発明 ( 特許法 29 条 1 項柱書 ) に該当しないが, 二以上の医薬成分を組み合わせた医薬 は 物の発明 であるので, ヒトへの投与, 塗布といった適用を予定したものであるとしても, 医療行為に該当せず, 産業上利用することができる発明 に該当するとしている ( 第 Ⅶ 部第 3 章 2.1 第 Ⅱ 部第 1 章 2.1 参照 ) そして 二以上の医薬成分を組み合わせた医薬 では, 薬効増大, 副作用低減といった当業者によく知られた課題を解決するために組合せを最適化することでは足りず, 引用発明と比較した有利な効果が出願時の技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであること等, 他に進歩性の存在を推認できる場合に進歩性は肯定されるとする項において ( 第 Ⅶ 部第 3 章 2.3), 二以上の医薬成分を組み合わせた医薬は, ~ 治療用配合剤, ~ 治療用組成物, 組み合わせたことを特徴とする~ 治療薬 等として特許請求されることが想定できるが, 判断手法としては, いずれの場合にも基本的に差異はない と記載されている 本件で問題となったような, 二以上の医薬成分を別々に製剤化し, 混合することなく, 別々に, 同時に, または時間差をおいて同一対象に投与するような医薬が, 物の発明 と認められる医薬発明の類型に含まれるかについては, 審査基準上必ずしも明確ではないが, 改訂経緯等からは, 複数医薬を併用した医薬発明についても用法又は用量に特徴のある医薬の一類型として扱う意図であったかと思料される なお, 欧州においても, 治療方法の発明であること自体が不特許事由に該当するが, 米国においては, 治療方法であることを理由に有用性が否定されることはなく, 医療方法特許が認められる 但し, 医師の行為に対しては, 特許権侵害の救済規定 ( 差止, 損害賠償 ) の適用はない 事例 先行医薬品の特許権存続期間満了後における, 当該医薬品と他の医薬品との組合せ, 併用についての特許に関して, 被告らによる当該医薬品の製造販売行為が, 本件各併用薬と組み合わせてなる医薬を生産等したとはいえないとして直接侵害を否定し, 被告らの製造販売にかかる当該医薬品は, 本件発明が新たに開示する従来技術に見られない特徴的技術手段について, 当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらすものに当たるということもできないから, 特許法 101 条 2 号における 発明による課題の解決に不可欠なもの とは認められないとして間接侵害にも該当しないとした事例 3

判決内容の概要 1 本件特許権 (1) 本件第 1 特許権の特許請求の範囲 請求項 1 (1) ピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,(2) アカルボース, ボグリボースおよびミグリトールから選ばれるα-グルコシダーゼ阻害剤とを組み合わせてなる糖尿病または糖尿病性合併症の予防 治療用医薬 請求項 5 α-グルコシダーゼ阻害剤がボグリボースである請求項 1 記載の医薬 (2) 本件第 2 特許権の特許請求の範囲 請求項 1 ピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と, ビグアナイド剤とを組み合わせてなる, 糖尿病または糖尿病性合併症の予防 治療用医薬 ( 請求項 2,3 及び7 省略 ) 2 直接侵害について 被告らは, 被告ら各製剤を製造販売しているが, さらに進んで, これと本件各併用薬とを組み合わせてなる医薬を生産等したことを認めるに足りる証拠はない 医師がピオグリタゾン製剤や本件各併用薬などの薬剤をどのように使用するかについては, その裁量によって決するものであり, また, 薬剤師がピオグリタゾン製剤や本件各併用薬などの薬剤をどのように調剤するかについては, 医師の処方せんによらなければならないものであるし, さらに, 患者が被告ら各製剤と本件各併用薬とを服用するのは, 医師や薬剤師の指示や指導に従って行うに過ぎないから, これらをもって, 被告らが医師, 薬剤師, 患者の行為を道具として利用したとか, これを支配したということはできない 教唆をする者は, 自らが発明を実施するわけではないし, 前記 (1) に判示したところに照らせば, 被告らが, 医師や薬剤師等の医療関係者を教唆したということもできない 3 間接侵害について 特許法 101 条 2 号における 発明による課題の解決に不可欠なもの とは, 特許請求の範囲に記載された発明の構成要素 ( 発明特定事項 ) とは異なる概念で, 発明の構成要素以外にも, 物の生産に用いられる道具, 原料なども含まれ得るが, 発明の構成要素であっても, その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは, これに当たらない すなわち, それを用いることにより初めて 発明の解決しようとする課題 が解決されるようなもの, 言い換えれば, 従来技術の問題点を解決するための方法として, 当該発明が新たに開示する, 従来技術に見られない特徴的技術手段について, 当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらすものが, これに該当すると解するのが相当である そうであるから, 特許請求の範囲に記載された部材, 成分等であっても, 課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手 4

段を直接形成するものに当たらないものは, 発明による課題の解決に不可欠なもの に該当しない 本件各発明が, 個々の薬剤の単独使用における従来技術の問題点を解決するための方法として新たに開示したのは, ピオグリタゾンと本件各併用薬との特定の組合せであると認められる ( ピオグリタゾンや本件各併用薬は, それ自体, 本件各発明の国内優先権主張日より前から既に存在して2 型糖尿病に用いられていたのであり, 本件各発明がピオグリタゾンや本件各併用薬自体の構成や成分等を新たに開示したということができないのは当然である ) そうすると, ピオグリタゾン製剤である被告ら各製剤は, それ自体では, 従来技術の問題点を解決するための方法として, 本件各発明が新たに開示する, 従来技術に見られない特徴的技術手段について, 当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらすものに当たるということはできないから, 本件各発明の課題の解決に不可欠なものであるとは認められない 本件各発明は, ピオグリタゾンと本件各併用薬という, いずれも既存の物質を組み合わせた新たな糖尿病予防 治療薬の発明であり, このような既存の部材の新たな組合せに係る発明において, 当該発明に係る組合せではなく, 単剤としてや, 既存の組合せに用いる場合にまで, 既存の部材が その発明による課題の解決に不可欠なもの に該当すると解するとすれば, 当該発明に係る特許権の及ぶ範囲を不当に拡張する結果をもたらすとの非難を免れない このような組合せに係る特許製品の発明においては, 既存の部材自体は, その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものに過ぎず, 既存の部材が当該発明のためのものとして製造販売等がされているなど, 特段の事情がない限り, 既存の部材は, その発明による課題の解決に不可欠なもの に該当しないと解するのが相当である 以上 文責 : 辻淳子 5