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ゆいとながだき
5 years ago
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1 ミャンマーの人たちはソフトウェア技術者に適しているか? 東京情報大学総合情報学部環境情報学科教授玉置彰宏 1. このレポートの目的と構成私はこのレポートでミャンマーの人たちが潜在的に ICT(Information and Communication Technology) 分野における中級および上級の技術者として必要とされる資質と能力を充分に兼ね備えていることを明らかにしたいそのためこのレポートではまず優秀な情報処理技術者に必要なスキルを明らかにしその後でミャンマー人の性格などからミャンマーの人たちが必要なスキルの多くを兼ね備えていることを明らかにする次に現在のミャンマーの教育制度が数学に特に力点を置いていることを明らかにする多くの技術分野でそういうことが言えるが特に ICT の分野では論理的に物事を考えることが非常に重要であるこの論理的思考力は数学の修得を通して養成することができる以上の議論を通して現在のミャンマーの人たちが潜在的に ICT 分野における中級および上級の技術者として必要とされる資質能力を充分に兼ね備えていることを明らかにしてゆきたい 2. 情報処理技術者に必要とされる資質能力 (1). 情報処理技術者適性検査調査研究委員会の調査 1. 情報処理技術者適性検査調査研究委員会の調査について情報処理技術者適性検査調査研究委員会 ( 財団法人日本情報処理開発協会中央情報教育研究所 ) は 1987 年と 1988 年の二度にわたって情報処理技術者として望まれる資質能力について調査を行ったその内容と結果を紹介した文献 [1] からの 2 年間の調査の結果を以下に示す 2.SE 全体として重要と感じられる資質能力 1987 年の調査では SE として必要とされている資質能力を調べたその結果必要な資質能力は以下の 12 項目であるとしている柔軟性弾力性のある思考発想力コミュニケーション能力問題発見形成解決能力体力気力ニーズへの感受性洞察力分析力 1

2 正確性コンサルティング能力企画総合力調整力折衝力管理能力指導力統率力 3. 情報処理技術者に必要な資質能力 2で述べたことと基本的に同じような結論になっているが 1988 年の調査では 1987 年と異なるアプローチを取りその結果として優秀な情報処理技術者 (SE プログラマの両方 ) に必要な資質能力を能力分類順にまとめているそれらは以下の 9 つである 1 文章等理解力 : 説明書仕様書企画書などの文章を正しく早く理解できる能力 2 図式理解力 : 図式図解類を適切に理解できる能力 3 機械操作力 : ワークステーションやシステムを抵抗感無く早く常識的に操作できる能力 4 記号操作力 : 定まった規則に基づき記号操作できる能力例えばプログラムのコーディングができる能力 5 イメージ統合力 : 処理手順を論理的に作成できる能力例えばプログラムの論理設計をできる能力 6 指導力 : 仲間や部下の意見を調整し方向付けができる能力 7 説得力 : 自分の意見と異なる相手を自分の主張している方向に導くことができる能力 8 折衝力 : 自分の意見と異なる相手と交渉することができる能力例えばユーザ折衝ができる能力 9 責任感 : 業務の全般に責任を持ってそれを遂行できる能力 (2). 集中することの必要性トムデマルコとティモシーリスターはその著ピープルウェア [2] の中で情報処理技術者が仕事を行う際集中力の持続がたいへん重要であると述べているこの本の主な目的の一つは情報処理技術者の働く環境が重要であり良い作業環境で仕事をすることで成果物の品質の向上と成果物を作成する際の生産性の向上に大きく寄与することを明らかにすることであった換言すれば一般にこの本が書かれる以前のソフトウェア技術者の作業環境は決して良いとは言えずこれを改善することが彼らの目的の一つであったと言えるしかしこの議論の過程で彼らは前述の通り情報処理技術者が仕事を行う際集中力の持続がたいへん重要であることを明らかにしている 2

3 (3). 情報処理技術者の資質能力についてのその他のコメント 1. 性別による能力差 1988 年に行った調査の結果 [1] では性別による特徴はあまり無く SE プログラマとも優秀平均劣るの 3 つに区分した割合もほとんど同じと報告されている 2.SE とプログラマに差があるか 1987 年の調査 [1] に SE プログラマとも非常に優秀優秀平均劣る非常に劣るの 5 つに区分し相互の関連を調べた結果があるそれによると最優秀のプログラマが必ずしも最優秀の SE ではないが一般に優秀なプログラマは SE としても優秀でありプログラマとして劣る人は SE としての能力も高くなく相互に関連が見られると報告されている (4). 情報処理技術者の資質能力についてのまとめ以上の検討から情報処理技術者として必要な資質能力は次のようなものと言うことができる 1. 論理的に物事を考えることができる能力推理力洞察力記号操作力 : 定まった規則に基づき記号操作できる能力例えばプログラムのコーディングができる能力イメージ統合力 : 処理手順を論理的に作成できる能力例えばプログラムの論理設計をできる能力文章等理解力 : 説明書仕様書企画書などの文章を正しく早く理解できる能力図式理解力 : 図式図解類を適切に理解できる能力機械操作力 : ワークステーションやシステムを抵抗感無く早く常識的に操作できる能力問題発見形成解決能力企画総合力洞察力分析力柔軟性弾力性のある思考発想力 2. 円満な人間関係を重視ししかしその中で自分の考えをしっかりと相手に伝えることができる能力指導力 : 仲間や部下の意見を調整し方向付けができる能力説得力 : 自分の意見と異なる相手を自分の主張している方向に導くことができる能力 3

4 折衝力 : 自分の意見と異なる相手と交渉することができる能力例えばユーザ折衝ができる能力調整力折衝力管理能力指導力統率力コミュニケーション能力コンサルティング能力 3. まじめで仕事熱心勤勉であること責任感 : 業務の全般に責任を持ってそれを遂行できる能力正確性体力気力ニーズへの感受性 4. 職務遂行能力時間管理能力計画立案能力計画通りに仕事を遂行しようとする意志力 5. 何事にも集中できること 3. ミャンマー人の性格 (1). ミャンマー人の一般的な性格次に一般的なミャンマー人の性格について述べてみたいミャンマーの人たちについて書かれたいくつかの優れた本が出版されている [3][4][5] これらの本によると一般にミャンマーの人たちの性格は以下に述べるようなものであるというミャンマーの人たちはたいへんに信心深いミャンマーの人たちはたいへんに信心深く瞑想を行う習慣がある ( これについては後述する ) グループで宗教行事に参加し共同で作業を行う習慣があるミャンマーの人たちは調和を大切にするミャンマーの社会は個人の自由と平等を基本にした階級のない社会であるミャンマーの人たちはリーダ ( ルージー ) の意見に従って行動する習慣がある 4

5 ミャンマーの人たちは目上の人や年長者を敬うミャンマーの人たちは他の人たちへの親しさをたいへんに重要視するミャンマーの人たちは相互扶助に徹して常に温かい人間関係を保持することに務めるミャンマーの人たちは控えめな性格で自己主張をしない不言実行型の人が多いミャンマーの人たちは心優しい人たちであるミャンマーの人たちの家族の絆はたいへんに強いミャンマーの人たちは人間関係を重視するミャンマーの人たちは受けた恩義は忘れないミャンマーの人たちは勤勉真面目で技術習得に熱心であるミャンマーの人たちは一般に権力欲や私利私欲とは縁遠い仕事があれば土日を返上してでも働く人が多いミャンマーの人たちは労働奉仕をいとわない英国の植民地だった影響もあって一般に英語力が強い英語教育は小学校から始まり大学では全ての授業が英語で行われているミャンマーの人たちはたいへんな親日家である日本語を勉強している人が多いメイドインジャパンの信仰が強いお互いに同じ仏教徒同士であるとの意識がミャンマーの人たちに強いこれまでの日本の実績をたいへんに高く評価しているミャンマーの人たちと日本人は国民性がたいへんによく似ているミャンマーの人たちと日本人は風貌がたいへんに似ている (2). 瞑想についてミャンマー人の約 90% が仏教徒であると言われているこの点では我々日本人と共通する部分があるしかし彼らの仏教徒としての敬けんさは我々日本人の及ぶ所ではない日常生活の隅々に仏教徒としての要素が多く盛り込まれているパゴダを初めとする仏教の施設にお参りした時の態度僧侶などに接する時の態度男の子を少なくとも二度は僧侶にする習慣などに我々はそれを容易に見ることができるその仏教徒としての習慣の中の重要な要素として瞑想がある日本の仏教にも禅宗に座禅があるしかし日本の座禅に比較してミャンマーの瞑想はもっと一般的 / 普遍的でありほとんどのミャンマー人はこの瞑想の経験を持っている成人して職に就いている人でも仕事の都合をつけて休暇を取り各所にある瞑想センター (Meditation Center) にこもって瞑想にふけることがあるという特に学生は夏休み (4 月と5 月 ) 中に父兄の一部がボランティア的に学生に瞑想の機会 5

6 を与えほとんど全ての学生は小学生から高校生の間にこの瞑想に参加する機会を持っている瞑想にはいくつかの段階があり宗教的儀式であることから最終的には仏教に固有のある境地に到達することを目的としている [6] しかしその最初の段階は静かに呼吸しながら息を吸い込む / 息を吐き出すことを意識することから始め次に自分の身体の状態心の状態を意識することが続くというこの瞑想を通してミャンマーの人たちは集中することができる技術を身につけるこれは瞑想の場以外のところでも充分に効果を発揮している (3). ミャンマー語は日本語に似ている次にミャンマー語 ( ビルマ語 ) について述べてみたいミャンマー語は次のような点で日本語にたいへんよく似ているということである [4] 言葉の順序が SOV になっている (SVO ではない ) 否定を表す言葉が文の最後にくる分かる場合には主語も目的語もどんどん省いてしまうてにをはを多用するこのことは漢字など別の種類の問題はあるもののミャンマーの人たちが日本語を勉強する場合習得が早いという効果が期待できる 4. ミャンマーの人たちは中級 / 上級の ICT 技術者として適しているか以上の議論から言えることはミャンマーの人たちは中級 / 上級の ICT の技術者としてたいへんに適した資質と能力を持っているということができるつまりミャンマーの人たちは前述の通り以下に述べるような性格と資質 / 能力を持っているこれらは中級 / 上級の ICT の技術者として必要不可欠なものであるということができる 1 ミャンマーの人たちは集中することができるこれは ICT 関係の仕事をする上でたいへんに重要な素養である 2 ミャンマーの人たちは論理的に物事を考えることができるこれは ICT 技術者として不可欠のことである 3 ミャンマーの人たちは他の人たちと協調して仕事を行うことができる最近のソフトウェアはたいへん規模が大きいしたがってこれらのソフトウェアを独力で開発することは不可能でありチームを作り多くの人が協力して作業しなければソフトウェアを開発することができない協調性はこの面から非常に大切な性格である 4 ミャンマーの人たちは真面目で仕事熱心であるこの性格は何の仕事をする上でも重要であるが ICT 関係の仕事でもこの重要性は少しも変わらない 6

7 5 ミャンマーの人たちは勤勉で技術習得に熱心である ICT の分野はドッグイヤーと言われるように変化が早い勤勉で技術習得に熱心であることは ICT の分野の最先端領域に常に居続けるために不可欠の要素である ICT 分野の最先端技術に関わる論文や文献が英語で書かれていることが多いミャンマーの人たちが英語に堪能であることはこの吸収がより容易であることを意味している 6 ミャンマー語が日本語に似ていることも良い効果を期待できる前述のように ICT の関係ではコミュニケーションがたいへんに重要である現時点ではまだ日本語に堪能な ICT 技術者の数は多いとは言えないが今後日本語教育を充実させることによりミャンマーの技術者が日本人の技術者や顧客と充分に意思疎通ができる下地があることになる 5. ミャンマーの教育制度における数学の取り扱い次にミャンマーの教育制度の中での数学の取り扱いについてふれてみたい数学に慣れ親しむことで論理的に物事を考えることができる能力が充分に身に付くと考えるからであるミャンマーの初中等教育は幼稚園を含めた初等教育が5 年中等教育の前半が4 年後半が2 年という構成になっている義務教育の制度はないが初等教育と中朝教育の前半について費用は全額政府が負担し両親の経済的な負担はないその成果は顕著に表れていて国民の識字率は 91.2%(2001 年の調査 ) と非常に高い [7] 1948 年の独立直後にミャンマーは教育の基本方針を策定したそれは 3つの R (Reading Writing Arithmetic) と呼ばれたがこの段階で既に数学を重要視する姿勢が表れているその後何度か制度的な変更が加えられて現在に至っているがこの数学重視の姿勢は現在まで変わらない現在の制度は 1994 年にスタートしたものであるそこでの初中等教育期間中のミャンマー語 ( 国語 ) と英語および数学の時間数とそれぞれの全体の時間数に占める割合を図表 1に示す [8] 科目 KG 中等教育初等教育中等教育 ( 前半 ) ( 後半 ) Gr Gr Gr Gr Gr Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Gr Gr Gr Gr Gr Ⅵ Ⅶ Ⅷ Ⅸ Ⅹ ミャンマ時間数ー語割合 28% 28% 28% 20% 20% 14% 14% 14% 14% 14% 14% 時間数英語割合 10% 10% 10% 13% 13% 17% 17% 17% 17% 14% 14% 数学時間数

8 割合 18% 18% 18% 18% 18% 23% 23% 23% 23% 14% 14% 全体の時間数図表 1 ミャンマーの教育制度でのミャンマー語英語と数学の時間数と割合 ( 注 : 初等教育での1コマの長さは 30 分中等教育では 45 分 ) 初等教育の期間中はミャンマー語 ( 国語 ) の比率が高く特にその前半では 28% の時間が割り当てられているこれはたいへんよく理解することができるその中で数学は 18% と六分の一以上の時間数が割り当てられている中等教育の前半では数学が 23% と四分の一近くを占めるようになりミャンマー語を含む全体の科目の中で一番割合が高い後半にはさすがに 14% と他の科目並みに引き下げられているがそれでもミャンマー語英語と同じ位置づけがなされている以上のことからミャンマーの現在の教育制度の中で数学は非常に重要な位置を占めていると言うことができるなお最近ミャンマー政府は学校を卒業する全ての子供がコンピュータと科学的な考え方に慣れ親しむようにすることを目標として定めその方針に沿って各学校にコンピュータを導入し情報関係の教育にも力を入れ始めている 6. まとめこのレポートでは先ず ICT 関係の中級から上級の技術者として必要な素養資質を分析しついで一般的なミャンマーの人たちの性格を述べてそれらを組み合わせてミャンマーの人たちがこれらの職種に向いていることを明らかにした次に最近のミャンマーの教育制度で数学が重視されていることを述べた ICT 関係の技術者は論理的に物事を考えることが重要であるが数学はこの論理的な思考力を高める上でたいへんに効果があるこれらのことからミャンマーの人たちは中級から上級にかけての ICT 関係の技術者としての素養を充分に持っていることを明らかにした 7. 参考文献 [1] 三重野博司立田ルミ監著情報処理技術者の適性検査応用技術出版 1990 年. [2] トムデマルコティモシーリスター著松原友夫他訳ピープルウェア第 2 版日経 BP 社 2002 年. [3] 田村克己根上敬編暮らしがわかるアジア読本ビルマ河出書房新社 1997 年. [4] 山口洋一著ミャンマーの実像日本大使が見た親日国勁草書房 1999 年. [5] 綾部恒雄石井米雄編もっと知りたいミャンマー第 2 版弘文堂平成 6 年. [6]Sayadaw U Janakabhivamsa, Vipassana Meditation : Lectures on Insight Meditation, The Corporate Body of the Buddha Educational Foundation, [7] 基礎データ: ミャンマーより 8

9 [8]Win Htain, Kyi Kyi Hla, Present Situation and Problems in the Future of Science Education in Myanmar, 注 ) このレポートは経済産業省が実施した平成 14 年度アジア経済産業基盤強化等事業の人材育成支援調査 ( ミャンマーの IT 政策の動向等調査 ) の報告書の一部として書いたものに手を入れたものである当初の標題はミャンマーにおける ICT 分野での高度人材育成に関するシーズというものだったそれを手を入れたときに今のものに替えたしかし作成日と私の肩書きは当初のものから変えていない以上 9

3-2 学びの機会グループワークやプレゼンテーションディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加この8 年間でグループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイントプレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

3-2 学びの機会グループワークやプレゼンテーションディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加この8 年間でグループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイントプレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0 3-1 大学教育観大学に指導や支援を求める意見が 8 年間で増加 3 大学生の学びこの8 年間で学習方法を自分で工夫するよりも大学の指導を受けたいと考える学生が11.4ポイント学生生活について学生の自主性に任せるよりも教員の指導支援を受けたいと考える学生が22.9ポイント増加しており大学に指導を求める声が大きくなっているまた単位取得が難しくても興味のある授業よりもあまり興味がなくても楽に単位を取得できる授業