投書欄の少女たち一一ドイツ少女雑誌における読者像 - Kranzchen 一一細井直子 1. 少女雑誌概要ドイツで最初の少女雑誌が誕生したのは 18 世紀後半である 18 世紀前半からヨーロッパで流行した市民向け道徳週刊誌は女性をも啓蒙の対象として取り込み読者としての女性さらに書き手

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1 Powered by TCPDF ( Title 投書欄の少女たち : ドイツ少女雑誌における読者像 Sub Title Mädchenbilder Leserinnenbriefe der Mädchenzeitschrift "Das Kränzchen" Author 細井, 直子 (Hosoi, Naoko) Publisher 慶應義塾大学藝文学会 Publication year 2006 Jtitle 藝文研究 (The geibun-kenkyu : journal of arts and letters). Vol.91, No.2 ( ),p Abstract Notes Essays in Honour of Profrssor Takahiro Shibata Genre Journal Article URL

2 投書欄の少女たち一一ドイツ少女雑誌における読者像 - Kranzchen 一一細井直子 1. 少女雑誌概要ドイツで最初の少女雑誌が誕生したのは 18 世紀後半である 18 世紀前半からヨーロッパで流行した市民向け道徳週刊誌は女性をも啓蒙の対象として取り込み読者としての女性さらに書き手としての女性を生み出していたこれを受けてまずフランスのボーモン夫人による少女向けの雑誌ためになる子供の雑誌 ( 1756) のドイツ語版が紹介され (1758 ) つづいてドイツでもドイツの少女に j (1781/82) ポモーナ (1783/84) アマーリエンの休み時間 ( ) などの少女雑誌が生まれた 19 世紀後半から 20 世紀初めにかけて女子教育に関する問題意識の高まり印刷技術の向上による書籍市場の拡大などを背景として少女雑誌は最盛期を迎えるその代表的なものとして令嬢アルバム ) クレンツヒェン j ) ドイツの少女の本 ( Deutsches ) 五月の頃

1891-94) 若き少女に ( Fiir 1892-95 ) 若き少女 J Ma dchen; 1895-1902) などがある雑誌ごとにそれぞれ特徴があるがいずれも教育的な意図から編まれており道徳的訓話物語小説メルヘン詩戯曲伝記歴史美術工芸史自然科学読み物女性の職業に関する記事旅行記手芸料理衛生なぞなぞイラスト写真などを内容としていた

3 ) 若き少女に ( Fiir ) 若き少女 J Ma dchen; ) などがある雑誌ごとにそれぞれ特徴があるがいずれも教育的な意図から編まれており道徳的訓話物語小説メルヘン詩戯曲伝記歴史美術工芸史自然科学読み物女性の職業に関する記事旅行記手芸料理衛生なぞなぞイラスト写真などを内容としていた読者は主として良家の子女すなわち富裕な市民層もしくは貴族の娘たちであったまた雑誌 j とはいっても今日私たちが想像するような紙質の悪い安手のものではなく布装に金文字を入れるなどの豪華な装丁を施されている年刊雑誌の場合にはクリスマスプレゼントとして親から娘に贈られることも多かった 2. 雑誌クレンツヒェンの投書欄本稿では上記の少女雑誌の中からシュトゥットガルトの出版社であるユニオンドイツ社 ( Union Verlagsgesellschaft) 発行の週刊少女雑誌クレンツヒェン ( 図 1 ) における投書欄を取り上げるクレンツヒェンは他誌に比べて商業的娯楽的傾向の強い雑誌であると同時にファッションや女性の社会進出についても積極的に紹介するなど自由で進歩的な側面を持つ雑誌でもあった雑誌は毎号本文 16 ページからなり少し厚めの表紙で簡易製本されて毎週土曜日に定期購読者のもとに届けられたクレンツヒェンには別売りで一年分 ( 計 52 号 ) を一巻の本としてまとめて綴じることのできる立派な表紙もあ図 1 : クレンツヒェン第 15 巻表紙った投書欄および若干の広告には

4 この仮の表紙裏表紙の裏側計 2 ~ 3 ページ分が充てられていたが上記の製本の際にそれが取り除かれてしまっている場合が多いこのように投書欄はいわば欄外 J の扱いであり残念ながらそのかなりの部分が散逸してしまっている筆者がこれまで実際に投書欄を確認できたのも全 46 巻 ( 1888/ /34 ) のうち 4 巻 ( 1891/92 ) から 21 巻 (1909/10) までの 8 巻分にすぎないおそらくこうした保存状態の悪さもあってフォスによる雑誌クレンツヒェンに関する論考の中で概括的に触れられている以外はこの投書欄はこれまでほとんど注目されてこなかった l しかしながら投書欄は雑誌本文からはわからない読者の実像を窺い知ることのできる貴重な手がかりであり書き手から読者へ読者から書き手へという双方向メディアとしての雑誌の全体像をつかむ上で重要な示唆を与えてくれるもちろんこの雑誌が週刊という比較的速いスピードで発行されていたこともその双方向性を支える条件であったにちがいない編集部が繰り返し断っているように読者の投書が編集印刷などの作業を経て誌面で紹介されるまでに最短で 4 週間かかったそれでも読者はせっせと投書を送り編集部からのコメントや他の読者からの返信を心待ちにした号を追うごとに投書の数はふくれあがり雑誌側は編集コスト削減のために投書欄をなくすことも考えたが読者の人気に圧されて継続したという投書欄は大きく分けておしゃべり文通相手の募集物品交換の申し込みの三つから成っているおしゃべりコーナーの内容は読者同士の誌面での通信 ( 初めて投書する読者の自己紹介クレンツヒェン結成の呼びかけ音信不通になった文通相手に消息を尋ねるなど ) 家族や友人知人へのプレゼントの相談家事に関する助言を求める相談 ( 衣服や械椴についたシミの落とし方家具や床の磨き方など ) 美容に関 Miidchenzeitung Das Kriinzchen

5 する相談 ( そばかすヒゲ手指や爪を美しくする方法など ) 自作の詩ゃなぞなぞ手芸作品の作り方女子寄宿学校やその他の高等教育機関についての問い合わせなどである交換される物品は切手絵葉書便婆封筒お菓子の付録名刺読者の写真モノグラムしおり押し花雑誌や広告イラストの切り抜きコイン錫箔など多種多様である文通および物品交換を求める投書には読者の年齢や居住地が明記されており雑誌の頒布状況をある程度知ることができるこれによればクレンツヒェン J の読者は 10 歳前後から 20 歳代前半の少女ないし若い女性である読者の居住地域はドイツを中心としてオーストリアスイスロシアポーランドハンガリーチェコベルギーフランスイギリスなどの近隣諸国また少数ながら北欧北米南米アフリカ中束中国日本にも読者がいたドイツの帝国主義的世界政策とともに読者の範囲も時代を追うごとに拡大していった様子が窺える 3. 投書欄の実際クレンツヒェンとはドイツ語でもともと小さな花環 J を意味するクレンツヒェン (Kranzchen) とは当時上流階級の少女たちの間で流行していたお茶会のことで数人のメンバーが誰かの家に定期的に集まっては読書劇詩作手芸おしゃべりにいそしんだ創刊号に掲げられた以下のモットーが示すようにクレンツヒェンという誌名もこの雑誌が少女読者たちの集う場 J として想定されていることを表すものであろうねえお母様クレンツヒェンに行ってもいい? ありがとう! お母様はなんてお優しいんでしょう愛すべき忠実なお友達と共に過ごせると思うと私はなんて幸福な気持ちになれることでしょう! そんな少女たちの声が日曜日ごとにこの広いドイツ帝国とドイツ語が話されるはるか遠くの国々から聞こえてきますすべてのドイツ人の少女たち

6 に私たちのクレンツヒェンが届くよう願いますクレンツヒェンは毎週楽しいお友達の輪を作りたいのです ( ) J ( クレンツヒェン第 l 巻 ) 投書欄には雑誌に倣って近隣に住む読者に対してクレンツヒェンの結成を呼びかける投書や最近自分たちもクレンツヒェンを結成したので参考までに他の読者の属するクレンツヒェンの会則を教えてほしいといった投書が後を絶たない各クレンツヒェンには好みの名前 ( 森の小花プラハの黒いクローパ一ウィーン記念同盟など ) がつけられ独自の会則があったたとえば陽気なマルハナバチ J ( お転婆娘の意 ) というペンネームの読者は問い合わせのあった 3 人の読者に対して自分が属しているクレンツヒェンの会則を紹介している ( 第 4 巻 20 号 ) これによれば会長は最年長者が務めること会則の遵守真の友情と友愛メンバーの聞に秘密があってはならないことだれかが秘密を打ち明けた場合には他言は絶対に無用であること会合は決まった曜日に行うこともてなしの内容 ( コーヒーパンバタージャム例タトは誕生日と祝日のみ ) と活動内容 ( 手芸読書音楽その他の娯楽 ) 決定は多数決によって行われ同数の場合は会長が決定を下すことなどが定められていたバックフィッシュ - 少女読者のアイデンテイテイ少女読者たちはクレンツヒェン誌面であるいはまた上記のように読者同士で実際にクレンツヒェンを結成して互いに交友を深めた彼女たちは互いにクレンツヒェン姉妹 J (Kranzchenschwester) としての意識を共有し読者同士のやりとりはしばしばクレンツヒェンの挨拶を送ります J ) という言葉で締めくくられたグヴエンドリーネという読者はクレンツヒェン賛歌ともいうべき詩を寄せている殿方ばかりでなく私たちも陽気に集いたい殿方が幾度も杯をワインで満たすなら私たちはコーヒーを飲み干そう ( ) とこしえ

7 に輝け青春のバラ色の光よ人生の明るい春よ! ( 第 4 巻 1 号 ) こうしたクレンツヒェン読者としての仲間意識の他に彼女たちを結びつけていたものはバックフイツシュ J (Backfisch) としてのアイデンテイテイであるパックフイツシュとは漁師が小さすぎる魚を釣り上げた場合にその処分に迷い船のパック j と呼ばれる場所にとりあえず入れておいたことに由来してまだ将来の決まらない未婚の少女を指す言葉であるクレオパトラ J というペンネームの読者が寄せたバックフイツシユの生活 J と題する詩は少女たちがパックフイツシュ時代をどのように見ていたかをよく表しているノてックフイツシュの生活ほど/ すてきな生活はない!/ それは 15 歳で始まる / なんという至福の時間!/ ああかくも自由に / 笑いつつたわむれつつ人生の道をかろやかに歩む /( ) この世の苦悩など何も知らずに /( ) それがパックフイツシュの生活!/ 天よどうか / この生活がまだ長く続きますように!/ 明日何が来ようと / 不安も悩みもなく / 私たちは生きる至福の喜びのうちに J ( 第 4 巻 6 号 ) 投書欄で読者が自ら名乗るペンネームにもバックフイツシュの池 j ボンに住む三人の陽気なパックフイッシュというふうにパックフイツシュ J を取り入れた名は多いその他お転婆娘お天気少女笑い上戸バルト海の人魚 J ロシアのクマ j 犬のママといったユーモラスなものやおパカさん j 不平屋 J 悪魔ちゃん本の虫青轄博士のようにシニカルなもの野パラ J スミレ J ワスレナグサエーデルワイス j のように花の名前を用いたものジークフリートとブリュンヒルデムいばらす町ドンファン j のように有名な物語の登場人物から取ったものなど多岐にわたるこうした多様なペンネームはとりもなおさず少女読者たちの自己理解を示すものといえようすなわち美しいものロマンチックなものに憧れる一方で少年のようにやんちゃでお転婆な部分を多分に持ち知的で機転の利いた弁

8 舌時に毒舌を披露するこれらの一見相容れないさまざまな性格はアンピバレントな ( 期待を課される ) 少女時代そのものといえるのではないだろうか大人の女性になるまでのいわば猶予期間としてのパックフイツシュ時代においては少々のお転婆は許容されむしろ魅力としてポジティブに評価された褐色の水の精というペンネームの読者に編集部は次のような助言を与えている自然な快活さを抑えようとする必要はありませんあなたくらいの年齢の若い女性がある種の子供らしい元気さや無邪気さを残しているのはむしろとても素晴らしいことだと私たちは考えます J ( 第 4 巻 11 号 ) 編集部のこうした少女観は変わることなくそれから十数年後の読者からの問い合わせに対しても編集部はまったく同様の言葉を返している 2 一方悲しみに沈むスイスのパックフイッシュと名乗る読者に編集部はなぜそんなに悲しいのですか? パックブイツシュにはまるで似合いませんよ ( 第 4 巻 3 号 ) と応じまた自らの作品を送ってきた読者にはなかなかよく書けていますですがパックフイツシュにしてはまあまあなんて深刻なのでしょう! ( 第 4 巻 5 号 ) と軽くいなしていることからも分かるようにパックフイツシユニ陽気快活無邪気という固定的イメージがそのまま幅を利かせそれにあてはまらない性格はふさわしくないものとして退けられる傾向にあったマイフイツシュ ( 五月の魚の意 ) なる読者が寄せたこの詩は大人の女性と子供という相矛盾する要素を併せ持つバックフィッシュの本質と同時に当時の一般的な結婚観をも示しているパックフイツシュって何のことかみんな知っている?/ それは 2 あなたは自然な快活さを抑えようとする必要はありませんしだれもあなたにそんなことを求めたりしないはずですむしろ逆にあなたくらいの年齢の若い女性がある種の子供らしい元気さや快活さを残しているのは大変素晴らしいことなのです ( クレンツヒェン第四巻)

9 ぴちぴちした陽気な生き物 / 半分は思慮深い乙女半分は子供 / ときにいたずらでむら気 / バックフイツシュの年月は飛ぶように過ぎる / 魅力的な乙女の五月はゆたかに花開く / ゆえに人はかの乙女を / 甘きマイフイツシュ ( 五月の魚 ) とも名づけたのだ / けれどももし五月のうちに / 乙女の手をとる若者が現れなければ / マイフイツシュ ( 五月の魚 ) はとうとう / 大きなおそろしいハイフイツシュ ( サメ ) になるばかり J ( 第 9 巻 2 号 ) 陽気で無邪気なバックフイツシュ時代の次には結婚というロマンチックで自明のゴール j が期待されていることしかし不幸にして結婚できない場合にはオールドミスとして世間の醐笑を浴びるものと少女たちが了解していることが読み取れるパックフィッシュ時代とは一時的なもの過渡期にすぎず後には成熟した女性としての義務が待ち受けている少女たちは将来への期待と同時に不安を抱き幸福な J 現在にできるだけ長くとどまりたいという一種モラトリアム的な志向を持っているように思われるバックフイツシュ時代がかりそめのものであることを知っているからこそその只中にある現在を美化するこのように少女たちが自分の置かれた状態をすでにある程度客観的に見ていることは注目に値するクレンツヒェンおばさん J クレンツヒェンポストと名づけられた投書欄はクレンツヒェンおばさん J なる人物によって運営されていた ( 図 2 ) かつて自らパックフイツシュであり現在はパックフイツシュの年頃の娘たちを持つ中年の女性とされるおばさん J はある時はユーモラスに親しみやすくまたある時はある程度の厳しさをもって読者に接した第 4 巻の投書欄にはクレンツヒェンおばさんのことをうたった読者の詩が掲載されている口私がこの世でいちばん好きなおばさんそれはクレンツヒェンおばさん O 喜びも悲しみもパックフイッシュの心をよく知っているのは

10 だれ? 善いもの美しいものに向かつてつねに私たちを優しく教え導いてくれるのはだれ? それはクレンツヒェンおばさん私たちの愛をおばさんに捧げ皆で唱和しましょう声高らかにクレンツヒェンおばさん万歳! ( 第 4 巻 1 7 号 ) 読者たちはまだ見ぬおばさん j についてあれこれ想像をふくらませおばさん j 図 2 クレンツヒェン第 4 巻投書欄クレンツヒェンポスト J の口絵の家族の消息を尋ねたりおばさん j の自筆原稿や写真がほしいおばさんに会いたいといった投書をたびたび編集部に送ったあなたの想像するおばさんはやさしく穏やかで信頼できそうな顔ときれいな白髪ですってまあ大体そんなところでしょうただし髪はまだそんなに白くありませんよちらほら生えてきたくらいです J ( 第 11 巻 3 号 ) お尋ねいただいてありがとう娘たちは元気ですいま学校のランドセルを手直しているところですもう少しすれば夏休みも終わりまた熱心に勉強しなければなりません一番上の子はもうじき本物のパックフィッシュいまからせっせと絵葉書を集めていますザビーネもとても達者にしています J ( 第 11 巻 2 号 ) またクレンツヒェンおばさんに会いたいと切望するグラーツ在住の読者に対してはそんなに慕っていただいておばさんは困ってしまいますもしかしたらいつか休暇の折にグラーツを訪れることもあるかもしれませんそうしたらあなたにもお会いして一緒にあちこち見てまわりましょう ( ) それまで達者でいたらザビーネもお伴させまし

11 ょうでもそれはまだまだ先の話ですその間にあなたは大人のお嬢さんになっておばさんのことなどとうに忘れてしまっているでしょう J ( 第 4 巻 20 号 ) と結局のところはぐらかすような答えをしているちなみにザピーネとはクレンツヒェンおばさんに長年仕える忠実な老女中とされ不適当な投書を容赦なくゴミ箱 j 送りにする人物として読者から恐れられていたこのようにクレンツヒェンおばさんはバックフイツシュの良き理解者仲間として登場し読者たちといわば家族ぐるみのやりとりをすることでより親密さを深めていったしかしながらこのように読者の人気を集めたおばさんの正体はじつは雑誌の編集責任者であるヨハンカルテンベック ( Johann Kaltenboeck) という男性であった次第に読者の間にもクレンツヒェンおばさんにはもじゃもじゃの口ひげがあるらしいという噂が洩れ伝わっていったがそれはかえって雑誌の人気を高めただけだったという 3 読者にとって親しみやすいクレンツヒェンおばさん J という人物を造形し読者を家庭的な交流に誘うと同時に雑誌側は購読者を増やすためにさまざまな策を講じた新しい読者を紹介した者にはクレンツヒェン特製の腕輪やお菓子入れ同社発行の書籍などが贈られることになっていた 4 巻の投書欄ではたびたび 112 ページほどのスペースを読者紹介キャンペーンに充て景品としてクレンツヒェンおばさんの肖像が刻まれた銀製のお菓子入れのイラストを載せているまた毎年クリスマス頃には手芸コンテストを行い入賞者の氏名年齢居住地を誌面で発表するとともに手芸道具や書籍などの賞品を与えた応募の際には 18 歳以下の予約購読者であること作品を読者自らが作ったという両親の証明書を添付すること材料費が一定額以下であることなどの条件が付けられていた特に希望がないかぎり応募作品は貧しい子供

12 3たちのクリスマスプレゼントに供されたさらに 18 巻からは趣味の写真コンテストが加わり同じく上位入賞者に賞品が贈られたちなみに 18 巻のコンテスト入賞者は手芸部門約 200 名写真部門約 100 名であった読者間の交流読者の投書活動全体は当然ながら編集部の監督下に置かれていた読者同士のやりとりをクレンツヒェンおばさんが仲介する場合もあれば初めから手紙をそのまま引用する場合もあったネクタイ王 j あてに小娘さんから次のようなお便りが来ていますあなたはご自分の先生にどんなプレゼントを贈ったらいいかとお尋ねだったでしょう? あなたの写真を撮ったら素敵じゃないかと思うのですけれどキャビネット版でそれからその写真のまわりに感じのいい額縁を付けたらどうかしら ( ) 先生はきっと喜んでくださると思うわ J ( 第 4 巻 1 号 ) 手紙が長すぎたり似通った投書をまとめて紹介する場合にはおばさんが内容を要約して伝えた上記のようなおしゃべりだけでなく文通や物品の交換に関しても当初はかなり大らかにあくまで読者本人が文通相手や特定の物品を募集していたたとえば親愛なるクレンツヒェンのお姉さま方! クレンツヒェンの楽しい通信を読んでいるうちに私も皆とおしゃべりしたくなりました私は 14 歳の駆け出しのパックフイツシュ名前はヒルダいつも陽気で快活ですどなたか私と文通しませんか? できればグラーツの方と J ( 第 4 巻 19 号 ) といった具合であるところが次第に読者間の手紙や物品のやりとりについて編集部と両親による監視が強化されていくまず文通希望は差出人の完全な住所を明記しであるもののみ掲載するという編集部の決定が伝えられさらに両親の住所を明記すること両親の許可書を添付することという条件が付けられたそれが最後には両親が娘のために文通相手や物品を探すという体裁になった文通希望が以下の両親の住所のもとに寄せ今ウムウム

13 られていますフイツシャ一夫人 ( 娘マリー ) パイロイト市カンツライ通り 10 番地 ( リガのエステレシュペッサルトのエルゼスイスのお転婆娘 15 ~ 17 歳のフランス人の少女と ) トイチュ夫人( 娘マリールイーゼ ) ハンガリ一ブラッソー市ヴアイゼンハウス通り 28 番地 ( あわせて写真絵葉書の交換も求む ) ( 第 19 巻 22 号 ) また物品交換の際には返礼の義務があることを忘れないよう編集部が再三断っているこうした変化の背景には過去にたびたびトラブルが生じたという事情があった第 21 巻の投書欄の冒頭には編集部からの次のようなお知らせが掲げられている自分の名前と住所を明記せずに相手の住所を尋ねることによりこれまでさまざまな不都合や誤解が生じましたしたがって他のクレンツヒェン姉妹と連絡を取りたい人は今後は自分の両親の住所を明記するように両親の同意書がないものは一切取り上げられません J ( 第 21 巻 28 号 ) こうした制約にもかかわらず読者同士のコミュニケーションは成立していた投書が掲載されてから何号か後に他の読者からの返信が出た上述のようにある読者からの問い合わせに答えてプレゼントの提案をしたり自分の属するクレンツヒェンの規約を教えたりあるいはまだ誌上ペンネームのない読者からの自分の性格にふさわしいペンネームを付けてほしいという依頼に答えて別の読者がいくつかの名前を挙げたりしている雑誌によって結ぼれた読者間の友情がどのような性質のものであったかを次の投書はよく示している親愛なるクレンツヒェンおばさん! クレンツヒェンのたくさんの姉妹たちを見習って私も今日おばさんにお手紙をお送りします ( ) あなたが雑誌クレンツヒェンを世に送り出してくださったことに二人の少女が心から感謝しているとお聞きになったら最愛のおばさんあなたはきっと喜んでくださると思ったからですその二人というのは文通相手の S W さんと私 E D のことです私たちがクレンツヒ A今中ヴー

14 吋4J ェンを通して出会いお互いのことを知り愛するようになってから 9 ヶ月になります ( ) これは真の愛情生涯にわたって結ぼれた友情ですこれもすべてあなたのおかげです私たちはそのご恩をひしひしと感じています親愛なるおばさんにもう一度私たちの心からの感謝をこれから大人になっても私はクレンツヒェンと共に過ごした時をいつも喜びをもってふりかえることでしょう ( 第 4 巻 9 号 ) 誌上で結ぼれた読者間の友情は時として誌面の枠を越えて現実の個人的な交流へと発展していった同じ町に住む読者にクレンツヒェン結成を呼びかけたりスケートのシーズンが来たのでクレンツヒェンの腕輪をしてスケートをして読者であることをお互いにわかるようにしようと提案したりしている ( 第 4 巻 13 号 ) 雑誌を通じて文通するようになった読者たちが夏休みなどを利用して文通相手を訪問し合うこともあったまたもうじき寄宿制女学校に入学するので同じ学校に通う予定の読者がいたら友達になりたい引っ越すのであらかじめ現地に友達を作りたい休暇中に旅行するので旅先の読者と現地で会いたいといった投書もしばしば見られるまた第 17 巻から第 18 巻にかけては投書欄における物品交換の是非について読者の間で数ヶ月にわたって論争が繰り広げられているシユテイツプス J と名乗る読者が読者たちの物品の蒐集は無駄だと批判したことに端を発しそれに同調する意見と反対する意見とが相次いで掲載された批判する側からは捨てるしかないような物を集めて何になるのか蒐集するのは勝手だがそのためにクレンツヒェンおばさんや読者たちを煩わせるのはやめるべきだ皆が集めるから自分も集めるという考えはおかしいとかクレンツヒェンポストが退屈な交換希望だらけになってしまったパックフイツシュの活発な精神はどこへ行ってしまったのかこの世にはもはや錫箔や広告イラストしかないのか? といった意見が寄せられているこれに対し蒐集を正当化する側の意見としては錫箔を集めて寄付すれば貧しい子供たちのクリスマスプ戸守ゐ

15 レゼントになる例が示すように世の中の役に立つ蒐集もあるといった意見や人間だれしも情熱を傾ける対象を持っているものだと蒐集という行為自体を弁護する意見が出る全体として蒐集を批判する投書の方が数も多く雄弁であるこの論争に際して編集部ははじめ控えめに最近投書が殺到して対応しきれないことスペースの都合から物品交換の依頼は少し遠慮してほしいこと投書は短くまとめてほしいことを伝えるにとどまっていた ( 第 18 巻 3 号 ) しかしやがてある読者から寄せられた投書 - 当時の少女小説の典型であるじゃじゃ馬娘 4 の主人公イルゼそっくりの口調とその名も怒った小悪魔イルゼというペンネームでもって物品の蒐集に熱を上げる読者たちをからかいくだらないことはやめるべきだと忠告する内容の手紙と詩がクレンツヒェンポストの冒頭に引用される大好きなだれよりも大好きなおばさま! ああ! やっとできたわ! 骨が折れたのなんのって! 靴下をつくろう方がまだましょ! どうか聞いて読んで驚いてちょうだいおばさまなんと私がこの私が詩を作ったのよ!!! 出来はどうかつて? もちろん! だってちゃんと韻は踏んでいるもの! 親愛なるクレンツヒェンの皆のコレクションが私にこんな詩を作るだなんて絶望的な真似をさせたのよあまりに重労働でペン軸をまる一本かじってしまったくらいでもそろそろこのあたりで最高に素敵なおばさま私のたわごとを書きつけてみることにするわねえおばさまこの詩をもうじきクレンツヒェンに載せて分別ある読者の皆が無分別な蒐集をやめるようにしてくださるわね?( ) J ( 第 18 巻 5 号 ) このような投書を投書欄の冒頭に堂々と掲げたことからも編集部のじゃじゃ馬娘は 1913 年までに 65 版を重ねた大ヒット作品であるバックフイツシュ小説の古典として今日まで読みつがれており 1983 年にはテレビ向けに映画化もされた Gisela Miα dchenliteratur. S.527f. 参照ゥ /O ウ中

16 ー意向は知られようその後さらに不毛な物品交換の代わりに意義深い質問をしたりさまざまなテーマについて意見を述べ合うようにクレンツヒェンおばさんから読者に言ってほしいそうすれば多くの人に不幸な蒐集や交換をやめさせもっと高尚な目的に向かわせることができるでしょうといった趣旨の投書がつづく ( 第四巻 6 号 ) そしてしばらくしてクレンツヒェンおばさんからある読者への返信としてよくぞ言ってくれました蒐集に熱を上げている読者たちが空いている時間をもっと役に立つことに充てた方が自分のためになると次第に悟ってくれることを私たちも望んでいます J ( 第 18 巻 16 号 ) という短いコメントが載せられるしかしこのコメントは返信としてあたかもついでのようにしかも投書欄の最後のページに他の通信の聞にまぎれて出されているにすぎない先の読者からの投書の引用とはあまりに違う扱いであるまずは読者の自由を尊重して好きなように議論させ最後に編集部としての意見を述べたと受け取れなくもないがそもそも投書の選択や配置の仕方にも編集部の意図は働いていたはずであるこれ以後も交換依頼がゼロになることはなかったが明らかに数が減りかつての熱に浮かされたような感じはなくなって蒐集をめぐる論争はとりあえず決着がついたように見える読者から雑誌へ雑誌側は読者の反応にいちいち耳を傾けその要望をある程度取り入れながら誌面を構成していったそのことは読者の手芸作品を発表してほしいとのリクエストに答えて投書欄内でそれらを紹介することにしたりある目的に合った戯曲を掲載してほしいと希望する読者にバックナンバーを見るよう指示したりしていることからも分かる読者の関心に応えて新たに記事を割くこともあったあなたからの質問を受けて私たちはこのテーマに関して特別に記事を設けその中で論じることにしました掲載までもうしばらくの辛抱を J ( 第 4 巻 3 号 ) 寸吋ムウム

17 そうして単に間接的に読者の意見が反映されただけではない投書欄の中には読者自身の作った詩ゃなぞなぞが毎号のように掲載されたし自作の詩があると書いてきた読者に投稿を促すコメントもたびたび見受けられる詩を送ってくれたら喜んで受け取りますただし出来が悪ければゴミ箱行きですよ J ( 第 5 巻 4 号 ) また詩を投稿してきた読者に対し投書欄でその詩を掲載するのと併せてすぐれたドイツの詩を読み修養を積むべきこと基本思想を単純明快に述べる能力や豊かな語葉を身につけるべきことリズムと論理性母国語を自在に操れるようになるべきことなど懇切丁寧な助言を与えたりもしている ( 第 4 巻 14 号 ) 第 11 巻の投書欄の最後には小噺のコーナーが設けられ寄稿者求む J erwtinscht) として投稿を募っている ( 第 11 巻 2 号 ) さらに時として戯曲や旅行記などの優れた投稿作品が投書欄ではなく本文中に掲載されることもあった雑誌本文を見ただけではそれが読者の作品であることは特に明示されていないためともすると見落としがちな事実であるがたとえば野火 j というペンネームの読者からの投稿についてとりあえず編集部の書類棚に入りましたいずれクレンツヒェンに登場するかもしれませんあなたの描写どおりなら大海原を越えていくのはすばらしいにちがいありません! ( 第 11 巻 1 号 ) とのコメントを述べたり読者 L G J からのリクエストにちょうど今号にクレンツヒェン読者の筆になる婚礼前夜用の戯曲を掲載しましたあなたのご希望に沿うかもしれません ( 第 11 巻 3 号 ) と答えたりしている自分の作品が採用されることは投稿者にとって大変な名誉であったにちがいない一方この雑誌の枠を越える投稿に対してはあなたの詩のテーマはあまりに高尚すぎて私たちの批評しうるところではありません ( 第 5 巻 1 号 ) とても魅力的によどみなく書けていますがこの雑誌の目的にはそぐいません原稿の返送を希望する場合は正確な住所を知らせてください ( 第 11 巻 1 号 ) というようにはっきヴムヴ占

18 ノりと拒否の意を伝えているクレンツヒェンの本文には女教師や医者学者とならんで女流画家や女流作家などの芸術家になろうとする少女を主人公とする物語がたびたび掲載されておりそうした職業に憧れる読者も少なくなかったろうしかしながら雑誌側は読者の書く試みを積極的に促す一方でそれを職業にすることまで無条件に奨励したわけではないむしろ読者ローレライ J への以下の返信に見られるようにまずは少女としての義務を忘れないよう忠告し戒めているあなたは詩人の狂気にとりつかれたたとえ古典作品の列に加えてもらえなくとも一生詩作をやめないだろうと言いますが詩作に没頭するあまり日頃の義務を怠ってはなりませんいつか狂気があなたを去ったときひどく後悔するかもしれませんよ J ( 第 11 巻 2 号 ) このことは上記の物語の主人公たちが ( しばしば結婚という別の職業 J を見出すことによって ) 志をまっとうせずに終わる筋書が少なくないこととも一致しているそもそも女性の本来の使命とは妻となり母となることであるというのが当時の女性観であり女性の職業は結婚との二者択一の中で語られる傾向にあったまたクレンツヒェン読者たちの属する上級階級では女性が働かずに済むことが伝統的に一種のステイタスと見なされてもいた結婚年齢の上昇と婚姻率の低下といった社会状況の変化に応じて上流階級の娘たちも徐々に就業の道を模索しつつあったもののそれもあくまで女性に許容された j 職業選択の範囲内であり天分の問題は別にしても男性と肩を並べる専門的創造的職業に就こうとする際の困難は相変わらずで既婚の女流作家の場合には妻主婦としての本来の勤めをきちんと果たしているという言い訳をして自己の作家活動を正当化するのがいまだ通例であった著名な女流作家クレメンティーネヘルム ( Clementine 5 がクレンツヒェンポストに寄せた手紙もそういった意味で興味深い私のところには絶えず若いお嬢さんたちからクレンツヒェンに掲載された宛名を記した手ウウム

19 紙が届きますですがこれは誤りですので訂正をお願いします私の名前はフロイラインではなくフラウクレメンティーネパイリヒ旧姓ヘルム住所はクアフユルステンダム 140 番地です ( 第 5 巻 1 号 ) 読者が雑誌編集部だけでなく作家個人に直接手紙を書くことはよくあることでクレンツヒェンポスト内でもしばしば読者からの問い合わせに答えて作家の住所を公表しているすでに 40 冊近い著作を発表していた大作家ヘルムが未婚の女性につける敬称であるフロイライン J ではなく既婚女性の敬称フラウ j に改めるようわざわざ断っているのであるこうした時代を背景としてクレンツヒェン投書欄の中から果たしてどれほどの作家および文筆業に携わる女性が育っていったのかを検証することは今後の課題の一つである 4. まとめ以上見てきたように投書欄は保存状態の悪さ編集部による投書の取捨選択といった基本的な制約があるとはいえ読者の実体や雑誌への反応など雑誌がいかに動的に形成されていったかを伝え雑誌の全体像を補完する情報を与えてくれるきわめて興味深い資料である産業化による女性の職業選択肢の拡大都市や海外への憧れ写真術の普及に伴う読者の肖像写真の登場と写真コンテストの開催など筆者が入手できたわずかな号だけを見ても読者の関心は時代とともに確実に移り変わっておりその意味で投書欄はまさに時代を映す鏡である二度の世界大戦の前後に読者がどのような投書を寄せていたのかということも非常に興味を惹かれるところであるさらに読者の用いる語葉や文体の変化についてももっと長期的に跡付けられればと考えている今後も可能なかぎり投書資料の収集に努め詳細な検討を重ねていきたい 5 彼女の代表作であるパックフイッシュの苦悩と喜び (Backfischchen 1863) はローデンのじゃじゃ馬娘と並ぶ少女小説の古典的作品とされる

『いい夫婦の日』夫婦に関するアンケート調査　【プレゼント編】調査報告書

『いい夫婦の日』夫婦に関するアンケート調査　【プレゼント編】調査報告書いい夫婦の日夫婦に関するアンケート調査プレゼント編調査報告書 2015 年 10 月 26 日いい夫婦の日をすすめる会 Copyright (C) 2015 Asahi Advertising inc. All Rights Reserved 0 調査概要いい夫婦の日をすすめる会と日本最大級のプレゼント検索サイトベストプレゼントを運営する LUCHE HOLDINGS PTE.