博士論文 意味処理を目的とする中国語構文解析の研究 動詞連続構文および結果構文を中心に 周振 2014 年

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2 博士論文 意味処理を目的とする中国語構文解析の研究 動詞連続構文および結果構文を中心に 周振 2014 年

3 目次 第 1 章 序論 言語学研究とコーパス 統語 意味情報をタグ付けしたコーパスの開発 研究課題 研究の意義 本稿の構成と概要 第 2 章本研究におけるアノテーション方式 ペン通時コーパス式の解析規約 ペン通時コーパス式アノテーション方式のメリット 形態素解析 統語解析の原則 SCT による意味処理の概要 要素間コントロール関係の同定 句レベルのスコープアノテーション まとめ 第 3 章動詞連続構文の解析 はじめに 中国語 SVC の定義およびその下位カテゴリー 二つ以上の別個のイベントを表す SVC 二つの動詞句が並列的に連続あるいは交替する SVC 一つの動詞句がもう一つの動詞句を修飾する SVC 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の項である SVC 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の主語である SVC 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の目的語である SVC ピボット構造を持つ SVC 二番目の動詞句が記述的なものである SVC 意味の曖昧性を持つ中国語 SVC の解析 三つ以上の動詞句からなる中国語 SVC の解析

4 3.9 まとめ 第 4 章結果構文の解析 はじめに VR 構造の文法カテゴリーとその主要部 語彙レベルにおける形成 統語レベルにおける形成 本研究の立場 本研究における結果構文の定義およびその分類 動作主型 動作主 型 動作主 対象 型 動作主 道具 型 被動作主型 被動作主 型 被動作主 動作主 型 道具型 道具 型 道具 対象 型 ツリーの変換 まとめ 第 5 章終わりに まとめ 今後の課題 補遺 A: 离合词 の一体性 A.1 はじめに A.2 課題 A.3 先行研究 A.4 VN 型動詞の抽出 A.5 使用するコーパス A.6 調査の手法

5 A.7 結果 A.8 考察 A.9 まとめ 謝辞 参考文献 付録 A: タグ一覧 品詞タグ 統辞タグ 句 複合動詞 機能タグ 空範畴 付録 B: コントロール 非コントロール動詞 コントロール構文しか作れない動詞およびその出現頻度 非コントロール構文しか作れない動詞およびその出現頻度 両方とも作れる動詞およびその出現頻度

6 第 1 章 序論 1.1 言語学研究とコーパス 電子化された文章に対して言語分析情報を付加 ( タグ付け ) したコーパスが言語研究にとって有用であることは言うまでもない しかし 日本と中国において文系の言語研究者が使用するコーパスは 文法情報では主として形態素情報だけ付加したものが中心であり これでは大量のテクストから必要な言語情報を抽出するに当たって障害が大きい 各文に対して統語解析情報をタグ付けしたツリーバンク (Treebank) はより柔軟な検索や文法情報の抽出を可能にする しかし 日本語に関して統辞情報をタギングしたコーパスは 言語処理研究上の目的で文節にもとづいて構築されたものが中心である ( 例えば 京都大学テキストコーパス (Kurohashi et al. 2003)) 一方 中国語では データの量も質も確保できるツリーバンク (Penn Chinese Treebank Xue et al. 2000) が既に公表されてはいるが 日本語の場合に類似して 元々構文解析器の評価及び訓練を目的としてデザインされたものであるため これから言語研究者が必要とする文法的依存関係を得ることは極めて困難である さらに ツリーバンクそのものにも限界がある 通常のツリーバンクでは表層的な統辞構造が示されるだけである コントロール構文や主題化構文や関係節構文等が表れた場合 文の基本をなす格名詞句と動詞との依存関係をつきとめることは非常な困難をともなう かといって 形式統語理論 (Head-driven Phrase Structure Grammar Pollard et al 等 ) を応用してこれらの複雑な構文を自動解析しようとする試みは 実用化の域に達していない 1.2 統語 意味情報をタグ付けしたコーパスの開発 4

7 これに対して バトラー (Butler 2010) が提唱するスコープ制御理論 (Scope Control Theory; SCT) では 文の表層的な統語解析情報が与えられれば その意味論的な適切性 (well-formedness) を計算することを通じて論理意味情報 ( 述語論理式 ) を得ることを可能にする 筆者が加わっている欅ツリーバンクのプロジェクトでは SCT をインプリメントしたシステムを用いて 日本語や英語のツリーバンクを入力としてそれぞれの論理意味表示をタグ付けしたコーパスを構築することを試みている 筆者らが目的とする高精度の論理意味表示がタグ付けされたコーパスの構築のためには 構造の曖昧性を克服して単純な格フレーム ( 述語 項関係 ) を超えたより複雑な構文により表現された意味情報の抽出が可能な入力データを必要とする 当初 筆者らは すでに入手可能な日本語統語解析情報付きコーパスに注目し その中に含まれた統語情報へのアクセスの試みを行った (Butler et al. 2012a) 日本語の文に対して統語解析情報を付加したコーパスはいくつかあるが その代表である京都大学テキストコーパスをはじめとして その多くは文節に基づくものであり 申請者らが目指す文の意味の自動解析に利用するには問題がある 京都大学テキストコーパス第 4 版のうち 5,000 の文については 格 照応および指示情報が付加されている 格関係の追加により ペンツリーバンク (Penn Treebank) のやり方と同じく 述語のとる項を確定することは出来る しかし 文の意味情報を述語及び述語のとる項より深いレベルまで求めたい場合 文節にもとづく解析は問題を生じる 文節にもとづく解析は 節と節との依存関係を教えてくれるが 節の壁を越えた文法関係の解明はできなかった そのため 筆者らは文が実際に表示する複雑な統語情報を京都大学テキストコーパスに基づいて得ようと試みた その一例として 文節の結合及び分割に関する処理 (Zhou et al. 2012) が挙げられる 図 1-1 と図 1-2 に 文節の分割の実例を示す 文節分割以前に一つの文節である 買えない ( 文節番号 2) を 買え ( 文節番号 2) と ない ( 文節番号 2.5) に分けることによって 否定 ( ない ) の作用範囲の調整を可能にした また 筆者が変更プログラムを開発した際に 結合及び分割の結果が文節間の依存関係全体に波及効果を与えないように注意を払い ( この例の場合 分割された文節 2 の依存関係も同時に -1D から 2.5D に変更 ) その結果 変更プログラムによる京都テキストコーパス全体に対する部分自動修正が実現できた 5

8 図 1-1 文節分割前 図 1-2 文節分割後 しかし 文節表記の壁はやはり厚く 個々の文節を超えてシステマティックに情報を補充する方法を見出すことは出来なかった しかも 現時点で必要な大規模の日本語ツリーバンクはまだ存在しないので 筆者らは 日本語ツリーバンクをゼロから構築することに方針転換した 一方 中国語の場合 上述したように 中国語版ペンツリーバンク (Penn Chinese Treebank) はその設計上の理由があって (1) の統語木である (2) に見られるように その中に収納された統語木は内部構造が複雑で階層が多く 同じカテゴリーの句や節が何度も重なって部分木を構築する ( その典型的な例は 名詞句 (NP) 及び動詞句 (VP) に対する扱いである ) ことがある (1) 之前 失去 的 机会 又 来 了 zhīqián shīqù de jīhuì yòu lái le この前 失う 補文標識 チャンス また 来る 完了 この前失ったチャンスがまたやってきた 6

9 (2) (TOP (IP (NP-SBJ (CP (WHPP-1 (-NONE- *OP*)) (CP (IP (NP-SBJ (-NONE- *pro*)) (VP (ADVP (AD 之前 / この前 )) (VP (VV 失去 / 失う ) (NP-OBJ (-NONE- *T*-1))))) (DEC 的 / 補文標識 ))) (NP (NN 机会 / チャンス ))) (VP (ADVP (AD 又 / また )) (VP (VV 来 / 来る ) (AS 了 / 完了 ))) (PU ))) また 中国語の中の複雑な統語構造をとる構文に対して深い処理を行っていない 例えば 中国語で最も多機能を果たす 把 (bǎ) 構文に対して 把 自体を動詞として扱いその後ろの部分を全て 把 の取る目的語と見なすような単純すぎるアノテーションを行っている その結果 中国語版ペンツリーバンクは 言語現象の検証を行うためのプラットホームにはなれなかったし そのデータをそのまま用いて SCT を実装した意味処理システムに入力し文の論理意味表示を得ようとすると文の構成要素間の文法関係へのアクセスおよび句の構成要素の特定が困難であるという問題が生じる そこで 意味処理の入力データに相応しい中国語ツリーバンクの開発が必要である 1.3 研究課題 論理意味表示をタグ付けした中国語ツリーバンクの構築は二つの段階に分けられる そ れは (1) 分析データとして選ばれた中国語の自然テクストに対する統語解析情報の追加 および (2) それをスコープ制御理論を実装したシステムに入力することによる自動的な文 7

10 の論理意味表示の獲得である これまでの研究で英語および日本語に対する自動意味解析の結果が良好であったことは 自然言語の文の意味に対する SCT のアプローチが的外れのものでないことを示している そのため SCT を実装したシステムの入力である中国語の統語解析情報を十分に含むコーパスの構築がうまくできれば システムに対してある程度の中国語なりの修正を行うだけで自動的に中国語の文の論理意味表示が得られると期待される 以上のことから 精度の高い中国語の統語解析情報付きコーパス( 中国語のツリーバンク ) の開発が研究の要となると思われる さて アノテーション作業が効率的に進められるように まずは中国語の主要な諸構文に対して その解析を各々決めていく必要があると思われる 周知のように 中国語は機能語や屈折形態素などに乏しい言語で その語および文はいわば漢字の並びと組み合わせだけである このような形態上のヒントが乏しい言語を対象とするアノテーションにおいては主に以下の三つの難点が予想される 1) 語を判定する基準が不明確であること ( 例 : 離合詞 ) 2) 表層構造が同じように見えても異なる言語情報を伝える構文が数多いこと ( 例 : 動詞連続構文 ) 3) 各要素間の文法関係 意味役割が複雑であること ( 例 : 結果構文 ) 1) に関しては 筆者は修士論文で 従来形態素解析の最大の問題とされてきた 離合詞 を取りあげ コーパスを使って 動詞の自他の傾向とその語としての一体性との間の関連性について考察した その結果 中国語の 離合詞 の場合 後ろに目的語が取れるタイプは語としての一体性が高く 一方 後に目的語が取れないタイプの方は一体性が低いという傾向が明らかになった ( その詳細は補遺 A を参照のこと ) その研究結果は 今後中国語を対象とする形態素解析作業に多大な示唆を与えることが出来る 一方 2) と 3) については 本論文で それらが代表するもっとも典型的な文法項目 ( 動詞連続構文および結果構文 ) を取りあげて その統語 意味解析をそれぞれ考察していきたい 以上のことから 本研究の研究課題を以下のようにまとめることが出来る 8

11 研究課題 : これまでの主要な研究を参考にしながら 中国語の動詞連続構文および結果構文に対して もっとも合理的と判断される解析法を各々決定し 適切な解析スキームを選んで それに従って記述する 1.4 研究の意義 本研究では 意味処理の要請にこたえることを目的として中国語の諸構文の統語解析法を再検討する これにより 中国語の統辞研究に新たな示唆が与えられる 従来 統辞論と意味論は緊密な関連性をもっており 意味論は統辞論と共に働くことによって力を発揮することができると言われてきた 本研究には SCT をインプリメントしたシステムを利用して意味解析を行うことにより 文の統語構造と論理意味表示との対応を形式的に考察することが出来るという意義がある また 本研究を基にして構築される中国語の約 4 万文について統語 意味情報をタギングする統語 意味コーパスは 筆者たちが取り組んでいる欅コーパスプロジェクト ( の他には 中国語は勿論のことどんな言語についても存在しない これが完成すれば 同じ解析手法で作業を行った日英中三言語の大規模の統語 意味コーパス群が手に入り これまでにない深さと広さを兼ね備えた言語研究に貢献することができる 例えば 対照分析によって目標言語の特徴を捉えようとする対照言語学に対して 本研究はその最も直接的な比較データ ( 日英中 ) の提供が可能である それだけではなく 比較データが同じ解析手法を用いているため 目標の言語サンプルへのアクセスが簡単に実現できる 例を挙げると 三言語の連体修飾節構造を比較したい場合 タグ CP-THT と CP-REL を手掛かりとして検索を行うと 修飾の限定性 補文標識 疑問代名詞 連体修飾節と主要部の位置関係などに関する情報が一目瞭然に現れ 対照が効率よく行える さらに論理意味表示にもとづいて 述語項関係 量化詞や否定辞の作用域 文中 文間の照応関係等 これまでに得られなかった種類の言語学的情報を大量に得 分 9

12 析することが出来る また 自然言語の意味の段階では言語表層上のほとんどの相違がな くなるので 適切な外国語教育支援プログラムの作成を通して 言語の教育現場への応用 も期待されている 1.5 本稿の構成と概要 本稿は全 7 章で構成されている 全体の構成を図 1-3 に示す 第 1 章序論 本研究の研究背景 研究課題と学問的意義 第 2 章本研究におけるアノテーション方式 本研究に使用されるアノテーション方式の特徴とメリットおよび SCT についての紹介 第 3 章動詞連続構文の解析 難点 2) の典型的な例を対象とする統語 意味解析 第 4 章結果構文の解析 難点 3) の代表的な例に関する統語 意味解析 第 5 章終わりに まとめおよび今後の課題の提示 図 1-3 本論文の流れ 10

13 本章では 研究の背景 研究課題および研究の意義について述べた 続く第 2 章では 本研究において適用されるペン通時コーパス (Penn Historical Corpora) 式の解析規約を紹介し 他の解析規約に比べてそれが本研究にとって最も相応しいことを説明する そして 具体例を通じて 本研究におけるペン通時コーパス式の解析規約の適用情況および中国語を対象とする形態素 統語解析の実状に応じて解析規約に対して行う修正とその原則を示す 最後に SCT による意味処理の過程を概観した上で コントロール構文の処理を例として 従来の方法ではなかなか捉えられない言語情報 ( 同一指示関係や否定の作用域など ) を得るために 本研究でいかなる処置を取ったかについて説明する 第 3 章では 上記で述べた中国語を対象とするアノテーションの難点二をめぐり 中国語の動詞連続構文 (SVC) を取りあげ 先行研究を踏まえてその下位カテゴリーを緻密に決定した上で 文を構成する要素の間の同一指示関係に留意して各下位カテゴリーに対してもっともバランスの取れた解析方法を付与する これによって SCT をインプリメントした意味処理システムを通して精度の高い論理意味表示を行い 従来の解析方法では捉えられない中国語 SVC における統語 意味情報が得られるようになることを具体例で示す 第 4 章では 中国語の結果構文を対象として アノテーションの難点三をめぐり議論を進めていく 中国語の結果構文を構築する要素の間の文法 意味関係を形式的に捉えるために 本研究は 先行研究をまとめた上で まず 動詞 + 結果補語 構造の文法カテゴリーとその主要部を決定する それから 文頭 文末に来る名詞句と第一述語との意味関係に基づいて 中国語の結果構文に七つの下位カテゴリーを付与し その統語解析および意味処理を展開していく また コーパスの中に収納されるデータの汎用性を高めるために 第 4 章の最後に tsurgeon ツールの紹介を踏まえて ツリーの変換という処理のステップの追加について検討を行う 第 5 章では 本研究の内容を整理し 総合的考察を行って 今後の課題を提示する 11

14 第 2 章本研究におけるアノテーション方式 2.1 ペン通時コーパス式の解析規約 SCT を実装したシステムの入力として適切なツリーバンクは 有用な統語情報に富んでいてしかも統語情報へのアクセスが容易に出来るものである これらの要件を満たすのはペン通時コーパス式の解析スキーム (Santorini 2010) である 本章では 同解析スキームを日本語ツリーバンク構築に応用した研究 (Butler et al. 2012b; Butler et al. 2013) に基づいて この方式を中国語ツリーバンクの枠組みとして用いる際の問題とその解決について述べる ペン通時コーパス式の解析システムは ペンツリーバンク式の解析スキームを修正したもので 文の統語構造をラベル付きの括弧で表示する ラベルには語彙レベルのラベル ( N ADJ など ) と句レベルのラベル (NP ADJP など ) の 2 種類がある 文の全ての終端要素 ( 語や助詞など ) は語彙レベルのラベルによって タグ付けされているが 必ずしも句レベルのラベルを持つ必要はない 句レベルのラベルは形式と機能を両方指すことが出来る 例えば NP-SBJ の場合 NP は句のタイプが名詞句であることを表すと同時に -SBJ はこの名詞句の機能を主語に限定している 一般的には 句レベルのラベルは機能タグを一つしか持たないが 二つ以上持つ場合 ( 例 :IP-INF-PRP = 目的を表す不定詞句 IP-IMP-SPE = 直接話法命令句 ) もある 中間レベルの構造 (N ADJ など ) は いかなる場合も明示的にタグ付けされることはない とはいえ ある特定の句のラベルを使わないことは 決してコーパスの作成者たちがアノテーションの対象とする目標言語にそういう句が存在しないと判断しているということを意味するわけではない (Santorini 2010) 中間レベルの構造を使用しないゆえに 統語木全体がフラットでシンプルになり 特定の言語サンプルを検索したりするような作業も簡単に出来る (Butler et al. 2013) (4) は その解析スキームを応用して実際に中国語の無制約の文 (3) を対象として統語解析を行った一例である 12

15 (3) 如果 没有 研究, 就 没有 科学 的 发展 rúguǒ méiyǒu yánjiū jiù méiyǒu kēxué de fāzhǎn もし ない 研究 肯定を強める ない 科学 格助詞 発展 研究なしでは科学は発展しない (4) (IP-MAT (NP-SBJ *arb*) (PP (P 如果 / もし ) (CP-ADV (IP-SUB (VE 没有 / ない ) (NP-OB1 (N 研究 / 研究 ))))) (PU,) (ADVP (ADV 就 / 肯定を強める )) (VE 没有 / ない ) (NP-OB1 (PP (NP (N 科学 / 科学 )) (P 的 / 格助詞 )) (N 发展 / 発展 )) (PU )) (4) から分かるように IP は常に述語と文レベルの要素を直接支配するので 中間レベルの I や VP などは存在しない 同様に 句のヘッド (head) は各句によって直接支配されるため 中間レベルの構造 (N ADJ など ) も示されない また 句レベルの要素は形式と機能を表すタグを両方持つことが出来るが 必ずしもその両方を備えなければならないわけではない 例えば 文レベルの NP は常に機能タグ (-SBJ -OB1 など ) によってマークされるのに対して PP はその存在位置を問わず 機能タグに関するアノテーションは一切必要としない 13

16 2.2 ペン通時コーパス式アノテーション方式のメリット ペン通時コーパス式の解析スキームは 機能を表すタグと照応関係を手掛かりとして 述語 項関係の確定ができる これは ペンツリーバンク式の解析スキームによっても可能であるが 意味処理の入力としての前者のメリットとして 主に以下の二点 (Butler et al. 2013) を挙げることが出来る 1) 句 (IP を除く ) の内部構造の一貫性を保つこと これは 句の構成を規則正しく見つけ出すためには非常に役に立つ 図 2-1 に示すように 二つの例外 ( 限定詞や動詞など解析規約によって句を投射しないようなヘッドおよび単一の単語よりなる前置修飾語 ) を除いて 一般的にはヘッドは常に句の要素を投射する (N NP P PP ADJ ADJP など ) 句レベルの要素 (NP PP ADJP など ) は主要部を直接支配する 図 2-1 句の内部構造 それは X 理論で提唱された中間レベルの欠如ということを意味する そのため ペン通時コーパス式の解析システムでは 従来の所謂指定部 (specifier) および付加部 (adjunct) は修飾語 修飾句 (modifiers) に統合され しかも修飾語も補語 (complements) も常にヘッドと同じレベルにある 一つの具体例として (5), (6) に PP と NP の内部構造を示す (5) 仅仅 为了 个人 的 微小 利益 jǐnjǐn wèile gèrén de wēixiǎo lìyì ただ ため 個人 格助詞 微小だ 利益 ただ個人の微小な利益のため 14

17 (6) (PP (ADVP (ADV 仅仅 / ただ )) <--- 修飾句 (P 为了 / ため ) <--- ヘッド (NP (PP (NP (N 个人 / 個人 )) <--- 補語 (P 的 / 格助詞 )) (ADJ 微小 / 微小だ ) (N 利益 / 利益 ))) 2) 機能を表すタグが常に句 (IP, CP) にタグ付けされること 例えば IP-IMP( 命令文 ) CP-REL( 関係節 ) のように 個々の IP と CP はその文法的な機能を指すためのタグを持っている これにより 述語 項関係に止まらないより複雑な構文により表現された意味情報を抽出することが可能になる 例えば 通常の関係節を伴う文 (7)( 主名詞 机会 は関係節の内部で目的語の働きをする ) の統語木 (8) に対して 埋め込まれた節が主名詞 机会 の内容を表している文 (9) の統語木は (10) のように表される (7) (= (1)) 之前 失去 的 机会 又 来 了 zhīqián shīqù de jīhuì yòu lái le この前 失う 補文標識 チャンス また 来る 完了 この前失ったチャンスがまたやってきた 15

18 (8) (IP-MAT (NP-SBJ (CP-REL (IP-SUB (NP-SBJ *pro*) (NP-OB1 *T*) (ADVP (ADV 之前 / この前 )) (VB 失去 / 失う )) (C 的 / 補文標識 )) (N 机会 / チャンス )) (ADVP (ADV 又 / また )) (VB 来 / やってくる ) (AS 了 / 完了 ) (PU )) (9) 去 美国 的 机会 又 来 了 qù měiguó de jīhuì yòu lái le 行く アメリカ 補文標識 チャンス また 来る 完了 アメリカに行くチャンスがまたやってきた (10) (IP-MAT (NP-SBJ (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ *pro*) (VB 去 / 行く ) (NP-OB1 (NPR 美国 / アメリカ ))) (C 的 / 補文標識 )) (N 机会 / チャンス )) (ADVP (ADV 又 / また )) (VB 来 / やってくる ) (AS 了 / 完了 ) (PU )) (8) と (10) を SCT をインプリメントした意味処理システムに入力して自動意味評価すること 16

19 により 文 (7) と (10) の述語論理式は (11) と (12) のように与えられる (11) x4 x1 e2 e3 ( x4 = pro 机会 (x1) 之前 (e2) 失去 (e2, x4, x1) 又 (e3) 来 _ 了 (e3, x1)) (12) x4 x3 e1 e2 ( x4 = pro 机会 (x3, 去 (e1, x4, 美国 )) 又 (e2) 来 _ 了 (e2, x3)) 関係節と主節との意味的関係は (11) では連言結合子 で連結される並列関係である一方 (12) では 関係節の意味の主名詞の意味への埋め込み関係となり 本質的に異なる このような差を正しく捉えることは (8) で通常の関係節を表すアノテーション CP-REL が使われる一方 (10) では埋め込まれた節を表す CP-THT が使われることによって可能となる 2.3 形態素解析 周知のように 中国語の文は 単語間の分かち書きが行われず 単なる漢字の連続として表記される 従って 品詞 統語情報をタギングする前に 文を単語ごとに分割しておく必要がある 中国語においての単語分割タスクの実行可能性については これまでに言語学者はいろいろ論じてきた 中国語の単語とは何であるかということについての中国語母語話者の間の合意の程度が非常に低い (Sproat et al. 1996) という実験結果があるが Xue et al. (2005) の調査報告によると 中国語母語話者の間に 中国語の単語の境界線がどこまで広がるかに対してはかなりの意見の相違が存在しているにも関わらず これらの意見の不一致は実はそれほど大事なものではなく 母語話者に適切なセグメンテーションの 17

20 ガイドラインさえ与えれば 中国語の単語分割タスクは順調に進めることが出来る 以上のことを踏まえながら作業の効率面への配慮もあって 本研究では 形態素の解析は 基本的には中国語版ペンツリーバンクのセグメンテーションガイドライン (Xia 2000b) および品詞ガイドライン (Xia 2000a) に従う 実際の作業では スタンフォード大学が開発した中国語版ペンツリーバンク標準の中国語用の単語セグメンタ (Stanford Word Segmenter) (Tseng et al. 2005) 品詞タガー (Stanford Log-linear Part-Of-Speech Tagger) (Toutanova et al. 2000, Toutanova et al. 2003) を使って自動解析した結果 ( 中国語版ペンツリーバンク式 ) を筆者が開発した品詞タグ自動変換スクリプトを通して ペン通時コーパス式のものに書き換える ( 例 :NN N( 普通名詞 ) CC CONJ( 接続詞 ) など ) また 必要に応じて人手による修正も行う 2.4 統語解析の原則 本研究は 基本的にはペン通時コーパス式の解析規約に従って統語解析を進めていくが 研究目的と中国語の実際の使用情況に合わせて ある程度の修正も行う 以下 解析方針 のうち 独特かつ重要なものについて説明する (ⅰ) 研究目的の実際に従ってアノテーションを行う本研究の主な目標は ある統語理論の妥当性を宣言しそれを貫徹するためではなく むしろ実用上の理由からのものである 元々 SCT では 特定の統語理論に拘らずに文の表層的な統語解析情報が与えられれば 評価を行うことによってその述語論理式を得ることが可能である 従って 本研究の統語木は 従来の X 理論で提唱された中間レベルの構造 (N ADJ など ) には基本的にはこだわらない これに対し 中国語版ペンツリーバンクのアノテーションにおいては 統率束縛 (GB) 理論を基にしたために すべての品詞カテゴリーに対する句への投射が要求された また (13), (14) が示すように中間レベルの階層を作って補部と付加部の区別も行った 18

21 (13) 晚上 做 作业 wǎnshàng zuò zuòyè 夜 やる 宿題 夜に宿題をする (14) (VP (NP (N 晚上 / 夜 )) (VP (VB 做 / やる ) (NP (N 作业 / 宿題 )))) その結果 中国語ペンツリーバンクの全てのデータを対象に標準的なツリー正規化処理 (standard tree normalizations) を施した後で 解析のために統計を行う際に マイナスの影響 ( 同じ大きさの他のツリーバンクに比べるとより乏しい句構造規則と分岐因子 ) を与えてしまうことを Levy et al. (2003) が指摘している 本研究の立場からは 中間レベルの表示を必要とする理由はない (15) には中間レベルの VP がない ( 本研究では 基本的には VP を使用しないため 最高階層の VP 自体も IP に変わった ) ただし その代りに NP にそれぞれ機能タグ-TMP( 時制的 ) と-OB1( 直接目的語 ) を付け加えている (15) (IP (NP-TMP (N 晚上 / 夜 )) (VB 做 / やる ) (NP-OB1 (N 作业 / 宿題 ))) このやり方により異なる機能タグによる両者の区別を可能にすると同時に 中間の階層が存在しないため 句の内部階層がより少なくなる また 構造的なものに比べて 明示的な機能タグのほうがより識別しやすい その結果として すべての種類の句が常に同一のフラットな構造を取り それ以後の意味処理の段階において部分木の検索やある特定の文法項目の確定が極めて簡単に行われる 意味処理の結果を (16) に示す 19

22 (16) x1 t2 e3 ( 作业 (x1) 晚上 (t2) 做 (e3, _, x1) tmp(e3) t2) また その境界を定義することが困難な句の使用もできる限り控えている 典型的な例は VP である そのため 本研究では 同じ項を共有する動詞句の並列構造 ( 第 節を参照のこと ) を表すほかには VP を使用しない そして 限定詞句 (DP) のような解析のコストがその有用性 ( 本研究の実際から考えると ) を超えてしまうカテゴリーに対しても そのアノテーションを省略することにする (ⅱ) 句の機能情報を常に丁寧にタギングする中国語は機能語や屈折形態素などに乏しい言語である しかも 少ない機能語の中には一つ以上の機能を担うものも少なくない (17) と (18) では 前置詞 (P) 在 を含む前置詞句 (PP) が それぞれ動作進行の場所と時間を指す (17) 在 公司 工作 zài gōngsī gōngzuò で 会社 仕事する 会社で仕事をする (18) 在 假日 工作 zài jiàrì gōngzuò に 休日 仕事する 休日に仕事をする 意味処理の段階でこのような曖昧性が回避できるように 各々の統語解析 (19) と (20) では 二つの PP にその機能を表すタグ (LOC TMP) を付与しておく必要がある 20

23 (19) (FRAG (PP (P 在 / で ) (NP (N 公司 / 会社 ))) (NP-LOC *) (VB 工作 / 仕事する )) (20) (FRAG (PP (P 在 / に ) (NP (N 假日 / 休日 ))) (NP-TMP *) (VB 工作 / 仕事する )) (19), (20) を踏まえて (17), (18) の述語論理式を以下の (21), (22) に示す (21) x1 e2 ( 公司 (x1) 工作 (e2) loc_ 在 (e2) = x1) (22) t1 e2 ( 假日 (t1) 工作 (e2) tmp_ 在 (e2) = t1) 元々 ペン通時コーパスの解析規約によって PP に関する機能情報のタギングが禁止されているため 本研究では PP に機能タグを直接つけること (PP-LOC PP-TMP など ) はしないが 中国語の実際の情況と意味処理からの要請を考慮し 以上の (19) と (20) で示した妥協案 (PP のすぐ右側に NP を経由してその機能情報を示す (Butler et al. 2013)) を採用した これにより ペン通時コーパスとの一致性が保てると同時に データ全体に対しても将来よりシステマティックに編集できる ( 例えば コーパスを他の目的で使うために PP に関する機能情報を必要としない場合は それらを一気に削除することができる ) ようになった このようなテクニックを用いてより柔軟なアノテーションが行えるため SCT はより豊富な統語情報を提供できる 例えば (23) と (24) の統語解析 (25) と (26) では その両方が PP 21

24 を含んでいるが 従属節と主節の意味的関係がそれぞれ等位 (coordinate) と従属 (subordinate) になっている 精度の高い述語論理式 (27), (28) を得るためには これらの区別に関する情報もアノテーションする (PP のすぐ右側にそれぞれ CRD CND をタギング ) 必要がある (23) 因为 约翰 去 我 才 去 yīnwèi yuēhàn qù wǒ cái qù から ジョン 行く 私 こそ 行く ジョンが行くからこそ 私は行く (24) 如果 约翰 去 我 就 去 rǔguǒ yuēhàn qù wǒ jiù qù もし ジョン 行く 私 如果 と呼応 行く ジョンが行くならば 私は行く (25) (IP-MAT (PP (P 因为 / から ) (CP-ADV (IP-SUB (NP-SBJ (NPR 约翰 / ジョン )) (VB 去 / 行く )))) (CRD *) (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (ADVP (ADV 才 / こそ )) (VB 去 / 行く ) (PU )) 22

25 (26) (IP-MAT (PP (P 如果 / ならば ) (CP-ADV (IP-SUB (NP-SBJ (NPR 约翰 / ジョン )) (VB 去 / 行く )))) (CND *) (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (ADVP (ADV 就 / 如果 と呼応 )) (VB 去 / 行く ) (PU )) (27) x3 e1 e2 (x3 = 我 因为 ( 去 (e1, 约翰 ), 去 (e2, x3) 才 (e2))) (28) x1 (x1 = 我 e2 如果 ( 去 (e2, 约翰 ), e3 ( 去 (e3, x1) 就 (e3)))) 2.5 SCT による意味処理の概要 SCT は 自然言語の文の意味理解を行うために動態意味論 (Dynamic Semantics Groenendijk et al. 1991, Kamp et al. 1993) を拡張 発展させた形式言語理論である 従来の諸理論においては 文の根幹をなす依存関係を統語論的なものとして捉えてきたのに対し SCT では意味論的な関係として形式化 処理を行うことに特徴がある 自然言語には 関係節による名詞修飾節や主題化などの非有界依存関係 (unbounded dependency) を初めとして多様な複雑な構文が存在し その統語 意味解析は重要な課題とされてきた この問題を解決し 多様な構文を解析するために 従来の形式文法理論では統語構造やそれにもとづく統語素性の複雑な操作を行ってきた これに対して SCT で 23

26 は 自然言語の文構造は 意味の基本的な構成要素であるスコープ ( 変項の値 ) を導入したり 操作あるいは評価することによって形作られる依存関係を直接反映したものである (Butler 2010) と考える 統語構造としては単純な表層統語構造のみを仮定し スコープを制御することにより 文の意味解析 ( 評価 ) を行う 文の解析や解釈において最も重要なことは 文が文法的 (well-formed) であるための条件を明らかにすることであるが SCT はこれを 文の各領域において必要とされるスコープの数と 割当関数によって供給されるスコープの数とが一致することであると定義する ( 表現統合性条件 ) この条件の下に 文を構成する領域ごとにスコープが導入されたり 他の変項にシフトされたり あるいは新たなスコープの出現により一時的に不活性化したりするが これにより自然言語の文の複雑な成り立ちを体系的にシミュレート出来ると考えるのである 以下 ごく単純な文の意味解析過程を示す (29) 约翰 爱 玛丽 yuēhàn ài mǎlì ジョン 愛する メアリー ジョンがメアリーを愛する ペン通時コーパス式の解析スキームを例文 (29) に適用すると ツリー (30) が得られる (30) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 约翰 / ジョン )) (VB 爱 / 愛する ) (NP-OB1 (NPR 玛丽 / メアリー )) (PU )) 論理意味表示を自動的に行うためには 木構造を評価システムの入力として受け入れられる形式に変換する必要がある これは 句構造の内部構造を探ることによって実現される 具体的には 木構造を まず補語および修飾語とヘッドとのスコープ関係 ( [ 修飾語 [ ヘッド [ 補語 ]]]) を含む中間レベルの表現 (31) に変換する 24

27 (31) NP-SBJ-in: (NPR 约翰 ) NP-SBJ-out: (NP-SBJ npr "entity" " 约翰 " LOCAL ) NP-OB1-in: (NPR 玛丽 ) NP-OB1-out: (NP-OB1 npr "entity" " 玛丽 " LOCAL ) IP-MAT-in: (NP-SBJ npr "entity" " 约翰 " LOCAL )@IP-MAT@@(VB 爱 )@IP-MAT@@(NP-OB1 npr "entity" " 玛丽 " LOCAL )@IP-MAT@@(PU ) (PU ) IP-MAT-out: (IP-MAT-fact ((npr "entity" " 约翰 ") "arg0") (((npr "entity" " 玛丽 ") "arg1") (verb lc fh "event" ["arg0", "arg1"] " 爱 ")) LOCAL "arg1"@name@"arg0") 次に これらの表現にその文法役割を表す束縛名称 (binding names) を追加した上で この中間レベルの表現を (32) のように一連の演算 (some ( 不定の限定詞 ) npr ( 固有名詞 ) verb( 埋め込みを含めない動詞 ) past ( 過去テンス ) など ) に置き換える (32) ( fn fh => ( fn lc => ( ( ( npr "entity" " 约翰 ") "arg0") ( ( ( npr "entity" " 玛丽 ") "arg1") ( verb lc fh "event" ["arg0", "arg1"] " 爱 ")))) ["arg1", "arg0", "h"]) ["constant", "event"] さらに これらの演算をシステムが評価可能な SCT 言語 (Use Hide Close Rel If Lam Clean などの関数 )(33) に変える 25

28 (33) Hide ("constant", CClose ("constant", Hide ("event", Close (" ", ("event","event"),["event"], Clean (0, ["arg0"], "c", CUse (C (" 约翰 ", "entity"), "constant", Lam ("constant", "arg0", Clean (0, ["arg1"], "c", CUse (C (" 玛丽 ", "entity"), "constant", Lam ("constant", "arg1", If (fn, Hide ("h", Hide ("arg0", Hide ("arg1", Rel (["arg1", "arg0", "h"], ["c", "c", "c"], "CHECK", [ Use ("arg1", Use ("arg0", Use ("event", Rel (["constant"], ["c"], " 爱 ", [At (T ("event", 0), "event"), At (T ("arg0", 0), "arg0"), At (T ("arg1", 0), "arg1")]))))])))), Hide ("h", Hide ("arg0", Hide ("arg1", Rel (["arg1", "arg0", "h"], ["c", "c", "c"], "CHECK", [ Use ("h", Use ("arg1", Use ("arg0", Use ("event", 26

29 Rel (["constant"], ["c"], " 爱 ", [At (T ("event", 0), "event"), At (T ("arg0", 0), "arg0"), At (T ("arg1", 0), "arg1"), At (T ("h", 0), "h")])))))]))))))))))))))) 最後に これに対して形式的な評価をすること ( その詳細は Butler, 2010 を参照のこ と ) によって 文の述語論理式 (34) が生じられる (34) e1 爱 (e1, 约翰, 玛丽 ) このように SCT がインプリメントされたシステムを使って ペン通時コーパス式の解析規約に従って構築された統語解析結果に対して処理 評価を行うことにより 通常のツリーバンクでは取り扱うことが困難な非有界依存 (unbounded dependency) などが含まれる構文における格名詞句と動詞との依存関係をつきとめることが可能になる 以下ではコントロール構文の例を示す 2.6 要素間コントロール関係の同定 一般的には 依存関係の表示および述語 項関係の再構成に必要なため 主語または目的語が動詞の必須格として求められるにもかかわらず文中で表現されていない場合 ゼロ代名詞の追加を行ってそれらを明示する必要がある ゼロ代名詞は 一般的に純粋な代名詞類の性質を持つ pro および代名詞類の性質と照応形の性質を合わせ持つ PRO に分類される 従来コントロール構文に対するゼロ代名詞のタギングは 直接 PRO を付け加えることが主流だった 目的語コントロール構文の (35) と主語コントロール構文の (36) に対して (37) と (38) が示すように 中国語版ペンツリーバンク式の解析スキームでは コントロール補文である IP に対して主語 PRO のアノテーション 27

30 を行っている (35) 张三 今晚 请 我们 吃饭 zhāngsān jīnwǎn qǐng wǒmen chīfàn 張三 今晩 招待する 私たち 食事する 張三は今晩私たちを御馳走する (36) 李四 帮 我们 叫 医生 lǐsì bāng wǒmen jiào yīshēng 李四 手伝う 私たち 呼ぶ お医者さん 李四は私たちのためにお医者さんを呼ぶ (37) (IP (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (NP-TMP (N 今晚 / 今晩 )) (VB 请 / 招待する ) (NP-OB1 (PRO 我们 / 私たち )) (IP (NP-SBJ *PRO*) (VB 吃饭 / 食事する )) (PU )) 28

31 (38) (IP (NP-SBJ (NPR 李四 / 李四 )) (VB 帮 / 手伝う ) (NP-OB1 (PRO 我们 / 私たち )) (IP (NP-SBJ *PRO*) (VB 叫 / 呼ぶ ) (NP-OB1 (N 医生 / お医者さん ))) (PU )) このようなコントロール構文の解析の仕方はある意味で論理的だが 精度の高い述語 項構造を目的として PRO の値を確定しようとする際に問題が出てしまう 即ち PRO をコントロールしている対象 ( 主文の主語か目的語か ) の同定が出来ないのである これに対して 本研究では 統語解析の段階で句にそれぞれ異なる機能タグを付与し IP CP の下位カテゴリーを緻密化することによって その中に埋め込まれた主語や目的語のディフォールト的解釈が意味処理の段階で可能となった (39) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (NP-TMP (N 今晚 / 今晩 )) (VB 请 / 招待する ) (NP-OB1 (PRO 我们 / 私たち )) (IP-INF (VB 吃饭 / 食事する )) (PU )) 29

32 (40) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 李四 / 李四 )) (VB 帮 / 手伝う ) (NP-OB1 (PRO 我们 / 私たち )) (IP-PPL (VB 叫 / 呼ぶ ) (NP-OB1 (N 医生 / お医者さん ))) (PU )) 例えば (39) と (40) では PRO のタギングが行われず その代りに 補文の二つの IP がそれぞれ IP-INF( 不定詞句 ) および IP-PPL( 分詞句 ) とされている これにより SCT において IP-PPL に対して それによって直接支配される主語項 ( NP-SBJ 或いは IP-PPL-SBJ) が文中に明示的に表示されていない場合 それより先行ししかもそれと姉妹 ( それと同じレベルにある要素 ) の関係を持つ主語項がそれが直接支配する主語項となる というディフォールト的解釈を ( 今の段階での暫定的なものとして ) 与えることが出来る また IP-INF に対しては それによって直接支配される主語項が文中に明示的に表示されていない場合 それより先行ししかもそれと姉妹の関係を持つ目的語項がそれが直接支配する主語項となる というディフォールトの解釈を同様に付与しさえすれば ほとんどの場合 空範畴を表すゼロ代名詞 PRO のアノテーションを行わずに済む これによって 文全体の統語構造が簡潔になるとともに 従来のゼロ代名詞 PRO をタグ付けする方法と比べてより精密な要素間の同一指示関係を意味処理によって捉えられるようになる (41) x4 t1 e2 e3 ( x4 = 我们 今晚 (t1) 请 (e3, 张三, x4, 吃饭 (e2, x4)) tmp(e3) t1) 30

33 (42) x4 x1 e2 e3 ( x4 = 我们 医生 (x1) 帮 (e3, 李四, x4, 叫 (e2, 李四, x1))) (41), (42) が示すとおり (35) における主文目的語と補文主語 および (36) の主文主語と補 文主語とを同一指示であるとして関係づけることが出来る 2.7 句レベルのスコープアノテーション さらに 語順変化や否定の作用域などの問題も視野に入れると 制御は一層複雑になる 一般的に言えば 中国語は世界の多くの言語と同じように主語が文頭に現れる言語である しかし 場合によっては それ以外の位置に現れることもある (43) 我 喝 啤酒 wǒ hē píjiǔ 私 飲む ビール 私はビールを飲む (44) 啤酒我喝 píjiǔ wǒ hē ビール私飲む ビールは私が飲む (43), (44) はごく単純な例である 情報伝達上に多少の相違があるとしても 二つの文に 31

34 おける各要素が同じ統語 意味的関係を持つことは確実である そこで 両文にそれぞれ (45), (46) のような統語解析を付与することが出来る (45) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (VB 喝 / 飲む ) (NP-OB1 (N 啤酒 / ビール )) (PU )) (46) (IP-MAT (NP-OB1 (N 啤酒 / ビール )) (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (VB 喝 / 飲む ) (PU )) (43), (44) はどちらも単文であるため (45) に比べて (46) では目的語が主語の前に移動し たとしても 両者は同じ意味処理の結果 (47) が得られる (47) x3 x1 e2 (x3 = 我 啤酒 (x1) 喝 (e2, x3, x1)) しかし これはあくまでも単文の話で 従属節を伴う複文を対象とすると新たな問題が 出てしまう (48), (49) は複文の例である (48) 张三 因为 昨晚 熬夜 了 今天 没 去 学校 zhāngsān yīnwèi zuówǎn áoyè le jīntiān méi qù xuéxiào 張三 から 昨夜 徹夜する 完了 今日 否定 行く 学校 張三は昨夜徹夜したから今日学校へ行かなかった 32

35 (49) 张三 今天 没 去 学校 因为 昨晚 熬夜 了 zhāngsān jīntiān méi qù xuéxiào yīnwèi zuówǎn áoyè le 張三 今日 否定 行く 学校 から 昨夜 徹夜する 完了 張三は今日学校へ行かなかった 昨夜徹夜したから (48), (49) では 主節 张三今天没去学校 と従属節 因为昨晚熬夜了 との順番が逆にな っている 今まで紹介してきた解析法を使うと 両方の統語解析結果はそれぞれ (50), (51) になる (50) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (PP (P 因为 / から ) (CP-ADV (IP-SUB (NP-TMP (N 昨晚 / 昨夜 )) (VB 熬夜 / 徹夜する ) (AS 了 / 完了 )))) (CRD *) (NP-TMP (N 今天 / 今日 )) (NEG 没 / 否定 ) (VB 去 / 行く ) (NP-OB1 (N 学校 / 学校 )) (PU )) 33

36 (51) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (NP-TMP (N 今天 / 今日 )) (NEG 没 / 否定 ) (VB 去 / 行く ) (NP-OB1 (N 学校 / 学校 )) (PP (P 因为 / から ) (CP-ADV (IP-SUB (NP-TMP (N 昨晚 / 昨夜 )) (VB 熬夜 / 徹夜する ) (AS 了 / 完了 )))) (CRD *) (PU )) (50), (51) をシステムに入力すると その意味処理の結果は次の (52), (53) のとおりになる (52) x1 t2 t3 e4 e5 ( 学校 (x1) 昨晚 (t2) 今天 (t3) 因为 ( 熬夜 _ 了 (e4, 张三 ) tmp(e4) = t2, 去 (e5, 张三, x1) tmp(e5) = t3)) (53) x1 t2 t3 e4 e5 ( 学校 (x1) 今天 (t3) 昨晚 (t2) 因为 ( 熬夜 _ 了 (e4, x1) tmp(e4) = t2, 去 (e5, 张三, x1) tmp(e5) = t3)) 34

37 (48), (49) の述語論理式としての (52), (53) は 問題点が残っている (53) では 述語 熬夜 の動作主は x1 の 学校 になってしまっている それに対して (52) では 述語 熬夜 の動作主は 张三 であり これは言語データの実情に合っているが (52), (53) とも 否定 (negation) のオペレーター が述語論理式の最初に現れている そのため (52) の意味は 張三は昨夜徹夜したから今日学校へ行ったということは真実ではない となる しかし これは明らかに文の元の意味を捉えそこなっている このような望ましくない処理の結果が出た理由としては まず CP-ADV( それを直接支配する PP が存在する場合も同様 ) が直接支配する主語項を 文中にある同一指示関係を持つ名詞句と同定するために CP-ADV によって直接支配される主語項が文中に明示的に表示されていない場合 それより先行ししかもそれと姉妹の関係を持つ目的語項 ( 目的語が存在しない場合は主語項 ) がそれが直接支配する主語項となる というディフォールトの解釈を与えていることにある このようなディフォールトの解釈により ほとんどの情況に対応できるが (49) のようにその言語が持つ一般的な語順に従わない文を対象とする場合は 矛盾をもたらしてしまう 即ち (49) では 主文の目的語 学校 は CP-ADV を直接支配している PP 因为昨晚熬夜了 よりも先行ししかもそれと姉妹の関係を持っているにも関わらず それがその主語とはならず むしろ主文の主語 张三 こそ補文の主語である さらに (50), (51) を考察すればわかるように 否定のマーカー 没 はどちらにおいても主文の述語 去 についているため その述語論理式である (52), (53) では 否定のオペレーター が共に主節に付加されている 即ち (48), (49) のような従属節を持つ複文は その主節に否定が付く場合 否定の作用域が従属節をも包含するのかそれとも主節だけを含むのかについては その文法構造から判断することが不可能である 以上をまとめると 未解決の問題点がまだ二点残っている それは 句に与えたディフォールトの解釈がいかに柔軟に様々な情況 ( 語順の変化など ) に対応できるか および否定の作用域を いかに自由に操るかということである 以上の問題点を解決するために SCT では 第 2.6 節に見られたように句に埋め込まれた主語や目的語に対してディフォールト的解釈を付与する他に スコープの階層 (scope hierarchy) という概念も導入した ペン通時コーパス式の解析規約に従って構築してきたツリーは常にフラットなために 句レベルにおける各要素間のスコープ関係は基本的には自由である とはいうものの 複 35

38 数の修飾語 句が存在する場合は ある程度の制限を加える必要がある Butler et al. (2013) によると 基本的なディフォールトの順番として 自然言語の語順が参考として用いられる 従って より最初に現れる修飾語 句はより広いスコープを取ることになる スコープの階層のディフォールト値に影響を及ぼす要因は 自然言語の語順の他にも幾つかある まず 文 句の述語 ( それが補語 (CP-THT や IP-INF など ) を伴う場合は その補語 ) は常にもっとも狭いスコープを取る それから 述語がイベント束縛を伴う動詞の場合 そのイベント束縛に掛っている全ての修飾語 句がそのイベント束縛よりも狭いスコープを取る ただし 修飾語 句に付く機能タグ (TPC( 主題 ) や VOC( 呼格 ) など ) により もっとも広いスコープに変えられることもある 最後に 機能タグ -SBJ を持つ項に対して 他の修飾語 句よりも高いスコープの階層を持つというディフォールトの値を設定する これは (50) と (52) におけるように 自然言語の語順に頼らずに従属節の主語項を自動的に主節の主語項に同定するためである 以上のようなスコープの階層を決めるためのディフォールト的設定により 自然言語のほとんどの情況に対応できる 更に (48), (49) のような特別な例外を解決できるために -HIGH および-LOW という二つの機能タグを導入することによって スコープの階層関係に関する精密的な調整も可能になる 以上を踏まえて スコープの階層を降順 ( 高い 低い ) で以下の (54) のように規定する (Butler et al. 2013) (54) 1 -TPC -VOC および-HIGH によってマークされる修飾語 句 2 -SBJ を持つ項 3 IP-PPL 4 MD( モダリティー ) 5 NEG( 否定 ) 6 -HIGH および-LOW によってマークされていない修飾語 句 ( 語順順 ) 7 -LOW によってマークされる修飾語 句 8 述語 9 補語 -HIGH あるいは -LOW が付与された修飾語 句が二つ以上ある場合 そのスコープの階 36

39 層が自然言語の語順で決まることになる スコープの階層を導入することによって CP-ADV も含めて 第 2.6 節に示した IP-PPL および IP-INF に関するディフォールトの解釈を以下のように修正 統合することが出来る CP-ADV / IP-PPL / IP-INF : それらによって直接支配される主語項 (NP-SBJ 或いは IP-PPL-SBJ) が文中に明示的に表示されていない場合 それらと姉妹の関係を持つ要素からなるスコープの階層において それらよりも高い階層にあり しかももっとも近い距離を保つ必要項 (NP-INST NP-OB2 NP-LGS NP-OB1 NP-SBJ) が それらが直接支配する主語項となる なぜ (41), (42) では 要素間の長距離依存関係の確定が出来るのか ここで考察してみ よう 以上で規定したスコープの階層に (39), (40) における IP-MAT によって直接支配さ れる各要素を当てはめると そのスコープ階層はそれぞれ以下の (55), (56) のようになる (55) [NP-SBJ ( 张三 ) [NP-TMP ( 今晚 ) [NP-OB1 ( 我们 ) [VB ( 请 ) [IP-INF ( 吃饭 )]]]]] (56) [NP-SBJ ( 李四 ) [IP-PPL ( 叫医生 ) [NP-OB1 ( 我们 ) [VB ( 帮 )]]]] すると IP-PPL / IP-INF に与えたディフォールトの解釈により (55) では NP-OB1 が IP-INF よりも高いスコープの階層にあり しかもそれともっとも近いので その主語項に なるのに対して (56) では IP-PPL よりも高いスコープの階層を持ちしかもそれにもっと 37

40 も接近しているのは NP-SBJ となるので これが IP-PPL の主語になる また (50), (51) の意味処理結果としての (52), (53) に なぜ不備があるのかという原因は以下のように説明できる (50), (51) における IP-MAT によって直接支配される各要素間のスコープ階層はそれぞれ以下の (57), (58) の通りである (57) [NP-SBJ ( 张三 ) [NEG ( 没 ) [PP ( 因为昨晚熬夜了 ) [NP-TMP ( 今天 ) [NP-OB1 ( 学校 ) [VB ( 去 )]]]]]] (58) [NP-SBJ ( 张三 ) [NEG ( 没 ) [NP-TMP ( 今天 ) [NP-OB1 ( 学校 ) [PP ( 因为昨晚熬夜了 ) [VB ( 去 )]]]]]] まず (57), (58) では NEG は常に VB や PP よりも高いスコープの階層にあるため その作用域は両者に及ぶ 従って (52), (53) では 否定のオペレーター は共に述語論理式の最初のところに出現している また (50), (51) は両方とも三つの全く同じ修飾語 句 (PP NP-TMP および NP-OB1) を持っているが それらが全部スコープの階層の6に属するため その順番は文の元々の語順に従って決まることになる すると (57) では PP( それに直接支配される CP-ADV も含めて ) との距離がもっとも近くしかもその上のスコープの階層にある必要項は NP-SBJ であるのに対して (58) では それは NP-OB1 になる 従って (52), (53) は その補文が異なる述語 - 項構造 ( 述語 熬夜 の動作主が違う ) を持つようになり その結果として (52) は問題がないが (53) は言語データの実情に違反することにな 38

41 ってしまう こうして処理失敗の理由が明らかになったが 次に解決策について考察する 問題点は ディフォールトの規定によって決定されたスコープの階層が実際の情況に合わないことにある そこで -HIGH あるいは-LOW を使うことによって スコープの階層関係を修正すればよい (59) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (PP (P 因为 / から ) (CP-ADV (IP-SUB (NP-TMP (N 昨晚 / 昨夜 )) (VB 熬夜 / 徹夜する ) (AS 了 / 完了 )))) (CRD *) (NP-TMP (N 今天 / 完了 )) (NEG-LOW 没 / 否定 ) (VB 去 / 行く ) (NP-OB1 (N 学校 / 学校 )) (PU )) 39

42 (60) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (NP-TMP (N 今天 / 今日 )) (NEG-LOW 没 / 否定 ) (VB 去 / 行く ) (NP-OB1-LOW (N 学校 / 学校 )) (PP (P 因为 / から ) (CP-ADV (IP-SUB (NP-TMP (N 昨晚 / 昨夜 )) (VB 熬夜 / 徹夜する ) (AS 了 / 完了 )))) (CRD *) (PU )) (59) では NEG に -LOW を与えた その他には (50) と全く変わりがなかった 一方 (60) では LOW を NEG および NP-OB1 の両方に付与した これによって IP-MAT によって直 接支配される各要素間のスコープ階層を以下のように変更する (61) [NP-SBJ ( 张三 ) [PP ( 因为昨晚熬夜了 ) [NP-TMP ( 今天 ) [NP-OB1 ( 学校 ) [NEG ( 没 ) [VB ( 去 )]]]]]] 40

43 (62) [NP-SBJ ( 张三 ) [NP-TMP ( 今天 ) [PP ( 因为昨晚熬夜了 ) [NEG ( 没 ) [NP-OB1 ( 学校 ) [VB ( 去 )]]]]]] -LOW にマークされる修飾語 句は スコープの階層 6から7に移るため (61) では NEG が (62) では NEG および NP-OB1 が 共に PP よりも下のスコープ階層に移動する また -LOW が付与された修飾語 句が二つ以上ある場合 そのスコープの階層は自然言語の語順で決まることになるので (62) では NP-OB1 が NEG よりも下のスコープの階層にある 両者に関するスコープの階層関係は SCT をインプリメントしたシステムの処理により その中間レベルの出力結果 (63), (64) を通して より直接に観察することが出来る 41

44 (63) ( fn fh => ( fn lc => ( ( npr "entity" " 张三 ") "arg0" ( coord fh "CRD_ 因为 " ( clause lc nil ( ( fn lc => ( ( npr "time" " 昨晚 ") "tmp" ( verb lc "event" ["tmp"] " 熬夜 _ 了 "))) ["tmp", "arg0", "arg1", "h"])) ( ( npr "time" " 今天 ") "tmp" ( ( some lc fh "entity" ( nn lc " 学校 ")) "arg1" ( neg fh exist ( verb lc "event" ["arg0", "tmp", "arg1"] " 去 "))))))) ["arg1", "tmp", "arg0", "h"]) ["constant", "event", "entity"] 42

45 (64) ( fn fh => ( fn lc => ( ( npr "entity" " 张三 ") "arg0" ( ( npr "time" " 今天 ") "tmp" ( coord fh "CRD_ 因为 " ( clause lc nil ( ( fn lc => ( ( npr "time" " 昨晚 ") "tmp" ( verb lc "event" ["tmp"] " 熬夜 _ 了 "))) ["tmp", "arg0", "arg1", "h"])) ( neg fh exist ( ( some lc fh "entity" ( nn lc " 学校 ")) "arg1" ( verb lc "event" ["arg0", "tmp", "arg1"] " 去 "))))))) ["arg1", "tmp", "arg0", "h"]) ["constant", "entity", "event"] このように 言語データの実情に合わせてスコープの階層関係を調整することによって より精度の高い述語論理式が得られるようになる (48), (49) の意味処理結果はそれぞれ以 下の (65), (66) の通りである 43

46 (65) x1 t2 t3 e4 ( 学校 (x1) 昨晚 (t2) 今天 (t3) 因为 ( 熬夜 _ 了 (e4, 张三 ) tmp(e4) = t2, e5 ( 去 (e5, 张三, x1) tmp(e5) = t3))) (66) t1 t2 e3 ( 今天 (t2) 昨晚 (t1) 因为 ( 熬夜 _ 了 (e3, 张三 ) tmp(e3) = t1, x4 e5 ( 学校 (x4) 去 (e5, 张三, x4) tmp(e5) = t2))) (52), (53) に比べると (67), (68) では 要素間の同一指示関係の面でも否定の作用域の面でもより言語データの実情が捉えられるようになっている とはいうものの (65) と (66) を比べると相違が見られる 違いは述語論理式における 学校 の出現位置である (65) では 学校 と補文とが並列関係を持ち によってつながっているのに対して (66) では 学校 が補文の中に埋め込まれている その原因は 両者が持つスコープの階層 (NEG と NP-OB1 の包含関係 ) が異なることにある すると 自然言語の文では 学校 はいったい限定されているか否かという問題になるが 中国語 ( 少なくとも (52) と (53)) には名詞が定 (definite) であるか不定 (indefinite) であるかを判断するための明示的な標識がないため それを論じることは出来ない 2.8 まとめ 44

47 本章では 統語解析および意味処理の両面から本研究が使用するアノテーション方式について説明した 従来の統語解析システムに比べて ペン通時コーパス式の解析規約は 提供できる統語情報の種類も豊富であるし それらの統語情報へのアクセスも容易に出来るので 本研究はそれを採用することにした それだけでなく 処理の対象になる中国語の実情と意味処理上の要請から考えて 元来の解析規約では取り扱わない部分に関しても PP に対する機能情報の付与や句レベルの要素を対象とするスコープの階層に関する情報の追加など様々な工夫を加えた これにより 要素間の同一指示関係の同定や否定の作用域の制御など 従来の方法ではなかなか手が届かない領域まで進められるようになり 意味表示のために適切な統語解析をいかに行うかという課題もかなりの程度解決できたと言える 次章からは 本章で紹介したアノテーション方式を用いて アノテーションの難問である動詞連続構文および結果構文を対象に中国語の実情に迫りつつ議論を展開していく 45

48 第 3 章動詞連続構文の解析 3.1 はじめに 本章では 第二章で紹介したアノテーション方式を使用し 孤立語 (isolating language) である中国語が持つ顕著な言語的特徴の一つである動詞連続構造を対象に その統語解析および意味処理を論じていく 中国語は機能語や屈折形態素などに乏しいため 表層構造が同じだとしても 動詞自体の意味や動詞句間の関係についての解釈の違いによってタイプの異なる統語 意味情報が伝えられる構文が多い その典型的な例は 中国語の所謂動詞連続構文 ( Serial Verb Construction, 以下 SVC) である 現在のところ最大の中国語ツリーバンクである中国語版ペンツリーバンクのデータやその解析規約に基づいてトレーニングされた統語解析器 (The Stanford Parser など ) によって解析された生データを考察すると 同じ Penn シリーズに属する他言語 ( 英語 アラビア語および韓国語 ) のツリーバンクに比べて 動詞句 (VP) の並列構造が非常に多いことについて疑問が生じる 筆者らの調査によると Penn Chinese Treebank (7.0) の 51,447 文の中で そのおおよそ三分の一の 16,300 文が動詞句の並列構造を持っている その原因は 中国語版ペンツリーバンクにおいては中国語のいわゆる動詞連続構文について 十分な検討を行わずに並列構造として一律に扱っているからである しかし 中国語の SVC の解析は 非常に複雑な課題である その定義および下位カテゴリーに関する区分については様々に検討されてきたが いまだに定説には至っていない しかも その研究の多くは狭義の典型的な SVC( 本研究の下位分類 1-2 に当たるもの 第 節を参照のこと ) を対象とするもので コントロール関係の問題を視野に入れるものは少ないのが現実である 本研究では 表層構造が同じ中国語 SVC の下位カテゴリーを詳しく決定する さらに 文を構成する要素の間の同一指示関係に留意し各下位カテゴリーに対して アノテーションの 4 要因 ( 意味表示からの要請 客観性 一貫性および中国語使用の実情 ) をもっともバランスよく満たす解析方法を各々付与する これによって 46

49 精度の高い論理意味表示を与え また同じ表層構造を取る構文の中に含まれるタイプの異 なる統語 意味情報についてより直接的な考察を行いたい 3.2 中国語 SVC の定義およびその下位カテゴリー 本研究では 中国語 SVC の定義を広い意味で行った Li et al. (1981) の説を出発点とする 本研究で研究対象として扱われる中国語の SVC とは 形式上から見ると二つ以上の動詞句がお互いの間の相互関係を表示するマーカーなしで並び連なっている構造を持つ文のことである ただし (67) と (68) に示すような中国語の 把 (bǎ) 構文および結果構文も一見以上の定義を満足する (67) 他 把 饭厅 收拾 干净 了 tā bǎ fàntīng shōushi gānjìng le 彼 BA 食堂 片づける きれいだ 完了 彼は食堂をきれいに片づけた (Li et al. 1981) (68) 他 喝 醉 了 tā hē zuì le 彼 飲む 酔う 完了 彼は飲んで酔った ( 山口 1989) しかし (67) の場合 把 を動詞とすると 二つの動詞句 ( 把饭厅 および 收拾 ) が並立することになるが 把 自体を動詞 前置詞のどちらとして扱うべきかについては結論がついていない また (68) における結果補語 醉 については 場合によっては 直接独立した動詞句として認めるのでなく動詞 喝 と組み合わせて 喝醉 全体を一つ 47

50 の複合動詞として扱うべきだ ( その詳細は 第 4 章を参照のこと ) というのが筆者の考えである そのため これらを本章の考察対象から外すことにする なお 中国語 SVC の下位カテゴリーの区分は 基本的には次の Li et al. (1981) に従うが 本研究で使用されているペン通時コーパス式の解析規約の制限および意味処理の要請から考えて ある程度の統合 修正も加える 1 二つ以上の別個のイベント 2 一つの動詞句がもう一つの動詞句の主語あるいは直接目的語である 2-1 一番目の動詞句が二番目の動詞句の主語である 2-2 二番目の動詞句が一番目の動詞句の直接目的語である 2-3 主語あるいは目的語を担当する動詞句が疑問文である 3 ピボット (pivotal) 構造 ( 目的語コントロール構文 ) 4 叙述的な句 4-1 実現 (realis) を表す叙述的な句 4-2 非実現 (irrealis) を表す叙述的な句 具体的には 1に対して 二つ以上の動詞句が並列関係であるかそれとも従属関係であるかによって更に二つの下位カテゴリーを与える 一方 2に関しては 従属節を担当する動詞句が疑問文であるか否かを分類基準とせず 2-3 を2-1 と2-2 に編入して一緒に考察する その代りに 文の構成要素の間の同一指示関係を解明するために 主文の動詞がコントロール動詞であるかどうかによって 2-2 をより細かく分類していく また Li et al. (1981) は 4-1 と4-2 を区別する一つの要因として 最初の動詞句の動詞が取る目的語の定 (definite) と不定 (indefinite) を取りあげたが 中国語には定と不定を判断するための明示的な標識が欠けているのが現実である しかも 非現実 類と 二つ以上の別個のイベント 類を区別する根拠は Li and Thompson (1981) の研究において不明確である アノテーションの一貫性を保つために 本研究では 叙述的な句において最初の動詞句の動詞の取る目的語は常に不定であると判断し 4に関する二つの下位カテゴリーを削除する 以上を踏まえて 本研究の分類の結果は以下の通りになる ( 各下位カテゴリーの説明および具体例は第 3.3 節以後の各章 節をそれぞれ参照のこと ) 48

51 1 二つ以上の別個のイベントを表す SVC 1-1 二つの動詞句が並列的に連続あるいは交替する SVC 第 節 1-2 一つの動詞句がもう一つの動詞句を修飾する SVC 第 節 2 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の項である SVC 2-1 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の主語である SVC 第 節 2-2 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の目的語である SVC 主文の動詞がコントロール動詞である SVC( 主語コントロール構文 ) 第 節 主文の動詞が非コントロール動詞である SVC 第 節 3 ピボット (pivotal) 構造を持つ SVC( 目的語コントロール構文 ) 第 3.5 節 4 二番目の動詞句が記述的なものである SVC 第 3.6 節 以上の下位カテゴリーに属する文の共通点は これらの構文において動詞句等が意味する出来事が 全て一つのより大きな出来事の一部として関連付けられることだと思われる 以下では 以上の各下位カテゴリーに対して 要素間の同一指示関係の変化に触れながらその解析について検討し 具体例を提示しつつその統語 意味処理結果を示していく 3.3 二つ以上の別個のイベントを表す SVC この種類の SVC は 通言語的に見られる 本研究では このタイプの中国語 SVC に対 して更に二つの下位カテゴリー ( 第 3.2 節を参照 ) を与えた 二つの動詞句が並列的に連続あるいは交替する SVC 49

52 (69), (70) および (71) はタイプ 1-1 に属する例文である (69) 她 每天 唱歌 跳舞 tā měitiān chànggē tiàowǔ 彼女 毎日 歌う 踊る 彼女は毎日歌ったり踊ったりする (70) 他 走 来 走 去 tā zǒu lái zǒu qù 彼 歩く くる 歩く 行く 彼はうろうろする (Li et al. 1981) (71) 今天 刮风 下雨 jīntiān guāfēng xiàyǔ 今日 風が吹く 雨が降る 今日風が吹いたり雨が降ったりする 二つの動詞句 ( 唱歌 と 跳舞 走来 と 走去 刮风 と 下雨 ) は並列的に 交替していると考えられるため (69) の統語解析としては動詞句 (VP) の並列構造を持つ (72) を付与する (72) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 她 / 彼女 )) (ADVP (ADV 每天 / 毎日 )) (VP (CONJP (VP (VB 唱歌 / 歌う ))) (VP (VB 跳舞 / 踊る ))) (PU )) 50

53 (72) における文レベルの各要素のスコープ階層関係は 意味処理の中間レベルの出力結 果 (73) を通して考察することが出来る (73) ( fn fh => ( fn lc => ( ( pro ["c"] fh ["entity"] ( "entity", "entity") " 她 ") "arg0" ( ( advp lc fh "event" ( adv lc " 每天 ")) ( conj fh " " free [verb lc "event" ["arg0"] " 唱歌 ", verb lc "event" ["arg0"] " 跳舞 " ])))) ["fact", "arg0", "arg1", "h"]) ["entity", "event"] (73) から分かるように 二つの述語 唱歌 と 跳舞 が同じスコープの階層にあり 她 と 每天 の影響を受けている 意味処理の結果 (74) を考察してみると 二つの動詞が同じ主語項 她 (x3) を共有し しかも Moore (1995) が提唱したファクト解析 ( fact analysis) によって解釈されているということが分かる ファクト解析は 情況 (situation) が個体 (individual) の領域 (domain) にあることを仮定することによって 情況とそれに対応する真の命題 (proposition) との関連付けを可能にした (74) を字義どおりに説明すると 彼女が歌い しかも彼女が踊るという二つのイベントが存在するようなファクト ( 或るいは情況 ) があってしかもそのファクトは毎日である になるが インフォーマルには 彼女が歌った 51

54 り踊ったりするという情況が毎日行われている と言い換えられる (74) x3 s4 e1 e2 ( x3 = 她 每天 (s4) fact(s4, 唱歌 (e1, x3) 跳舞 (e2, x3))) 一つの動詞句がもう一つの動詞句を修飾する SVC 一方 タイプ1-2 に属する中国語 SVC は 常に主要部に当たる動詞句および付加部 (adjunct) に当たる動詞句各々一つにより構成される 従来の中国語の SVC に関する研究はこれに限って狭義的に行われたもの (Müller et al. 2009; Paul 2008; など ) が多い 中国語には (75), (76), (77) における 用 在 (zài) および 朝(cháo) のような動詞と前置詞とを兼ねるものもあるため このタイプの中国語 SVC のアノテーションに曖昧性をもたらすこともある (75) 小明 用 左手 写 字 xiǎomíng yòng zuǒshǒu xiě zì 小明 使う / で 左手 書く 字 小明は左手で ( あるいは左手を使って ) 字を書く 52

55 (76) 我 在 食堂 吃饭 wǒ zài shítáng chīfàn 私 いる / で 食堂 食事する 私は食堂で ( あるいは食堂にいて ) 食事をする (77) 演员 朝 观众 笑 yǎnyuán cháo guānzhòng xiào 俳優 向かう / に 観衆 笑う 俳優さんは観衆に ( あるいは観衆に向かって ) 笑う アノテーションの一貫性を保つために 解析を行う前に 動詞か前置詞かを判断するためのテストを使ったり ( それでも判断できない場合は ) 一般的に認められている中国語前置詞のリストを参照したりして その品詞をまず決める必要があるが 本論文では 便宜上 当の構成要素が動詞であると判断されるという前提の下でその解析を論じることにする また 統語解析を行う際に 文 句 節のヘッドを決める必要があるが このタイプの中国語 SVC の場合 ヘッドの識別は非常に困難である SVC に関する研究の多くは 従来一番目の動詞句が文のヘッドであると考えるもの (Collins 1997; Sebba 1987; など ) が多い しかし このような結論は中国語の現実に合わないと反論する研究 (Li 1991; Paul 2008; など ) も数少なくない Paul (2008) によると 解釈の違いによって (78), (79) および (80) の中の二つの動詞句はどちらも文のヘッドになることが出来るとしている 例えば (78a) のように解釈すると 打电话 は主要部 叫出租车 の付加部として後者を行うための方法 手段を表すと考えられるのに対して (78b) のように解釈すると 主要部 打电话 の目的を示す役割を付加部 叫出租车 が果たしていることになる (85a) と (85b) (86a) と (86b) についても同様である 53

56 (78) 他 打 电话 叫 出租车 tā dǎ diànhuà jiào chūzūchē 彼 かける 電話 呼ぶ タクシー a 彼は電話をかけてタクシーを呼ぶ b 彼はタクシーを呼ぶために電話をかける (79) 探险家 喝 酒 壮胆 tànxiǎnjiā hē jiǔ zhuàngdǎn 冒険家 飲む お酒 肝っ玉を太くする a 冒険家はお酒を飲んで肝っ玉を太くする b 探検家は肝っ玉を太くするためにお酒を飲む (80) 参观者 买 票 入场 cānguānzhě mǎi piào rùchǎng 見学者 買う 切符 入場する a 見学者は切符を買って入場する b 見学者は入場するために切符を買う アノテーションを行う際に 以上のどちらかの解釈を選ぶためは実際の文脈を考えることが必要だが これによりアノテ タの個人差のために解析の一貫性を保つことが難しくなるし 文脈のない文を対象にすることも多いので ディフォールトの値を決めておく必要がある Li (1991) によると このタイプの中国語 SVC の場合 アスペクトマーカーの出現位置を手掛かりとして 文のヘッドを決めることが出来るとしている 完了 (perfective) を表す 了 (le) あるいは経験 (experiential) を表す 过 (guò) が付いた動詞は文のヘッドである ( 同時にもう一つの動詞に 了 あるいは 过 が付いてない限り ) のに対して 継続 (durative) を表す 着 (zhe) が付いている動詞は文のヘッドではない( 同時にもう一つの 54

57 動詞に 着 が付いていない限り ) これによると 了 が付いている 切 と 拿 が それぞれ (81a) と (81b) のヘッドになる 一方 (82) において 着 が 拍 と 笑 に付 いているため (82a) と (82b) のヘッドはそれぞれ 笑 と 拍 になる (81a) 他 拿 刀 切 了 肉 tā ná dāo qiē le ròu 彼 持つ 包丁 切る 完了 お肉 彼は包丁を持ってお肉を切った (Li 1991) (81b) 他 拿 了 刀 切 肉 tā ná le dāo qiē ròu 彼 持つ 完了 包丁 切る お肉 彼はお肉を切るために包丁を持った (Li 1991) (82a) 他 拍 着 手 笑 tā pāi zhe shǒu xiào 彼 叩く 進行 手 笑う 彼は手を叩きながら笑う (Lin et al. 2012) (82b) 他 拍 手 笑 着 tā pāi shǒu xiào zhe 彼 叩く 手 笑う 進行 彼は手を叩いて笑っている (Lin et al. 2012) しかし 実際にはアスペクトマーカーを伴わない中国語の SVC も沢山存在する Lin et al. (2012) は このような中国語の SVC( 本研究のタイプ 1-2 に当たるもの ) における二つの 55

58 動詞句のどちらがより文のヘッドになりやすいかということを解明するために Li (1991) の研究を基にして 二つの課題 ( その詳細は Lin et al. (2012) を参照のこと ) を設置し Sinica コーパス (Chen et al. 1996) を対象として 二つの動詞句におけるアスペクトマーカー 了 过 および 着 の分布について調査を行った その結果 了 と 过 は二番目の動詞句の動詞により後接しやすいのに対して 着 が常に一番目の動詞句の動詞に付く傾向があるということが分かった これにより Lin et al. (2012) は アスペクトマーカーが付いていないこのタイプの中国語 SVC の場合 二つの動詞句は両方とも文のヘッドになれるが 一番目の動詞句に比べると二番目の動詞句の方が文のヘッドになる傾向が強いという結論を出した アスペクトマーカーが付加された言語データに見られる傾向をそのままアスペクトマーカーを伴わない言語データに適用できるかについては更なる検討が必要だが 少なくとも大まかな傾向は示していると考えることが出来る 本研究では その研究結果を踏まえて この下位カテゴリーに属するアスペクトマーカーが現れない中国語 SVC に対して 二番目の動詞句をディフォールトの値として文のヘッドに設定する 従って (78) の統語解析は 次の (83) になる (83) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 他 / 彼 )) (CP-ADV (IP-SUB (VB 打 / かける ) (NP-OB1 (N 电话 / 電話 )))) (VB 叫 / 呼ぶ ) (NP-OB1 (N 出租车 / タクシー )) (PU )) 最初の動詞句は ADV という機能タグを持つ補文として CP-ADV のタグを与えられる (84) が示すように CP-ADV の 打电话 と NP-OB1 の 出租车 はどちらもスコープの階層 6( 第 2.7 節を参照のこと ) に属する要素であるため そのスコープの階層関係が自然言語の語順によって決められる そのため 打电话 は 出租车 よりも上の階層にあることになる 従って CP-ADV における主語をコントロールする要素は NP-SBJ の 他 となる 56

59 (84) ( fn fh => ( fn lc => ( ( pro ["c"] fh ["entity"] ( "entity", "entity") " 他 ") "arg0" ( ( coord fh " " ( clause lc nil ( ( fn lc => ( ( some lc fh "entity" ( nn lc " 电话 ")) "arg1" ( verb lc "event" ["arg1"] " 打 "))) ["arg1", "arg0", "h"]))) ( ( some lc fh "entity" ( nn lc " 出租车 ")) "arg1" ( verb lc "event" ["arg0", "arg1"] " 叫 "))))) ["arg1", "arg0", "h"]) ["entity", "event"] (85) は意味処理の結果である 57

60 (85) x5 x1 x2 e3 e4 ( x5 = 他 电话 (x1) 出租车 (x2) 打 (e3, x5, x1) 叫 (e4, x5, x2)) 主文と補文との意味的関係は で連結される並列関係になっている さらに CP-ADV に主語が明示されていなくとも それと同一指示の名詞句が文中に存在してコントロール関係にある場合は SCT のスコープ操作によってコントロール関係が意味論のレベルで補完されるため ゼロ代名詞 PRO としてのタグ付けをしなくても完備した述語 項構造が得られる 3.4 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の項である SVC 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の主語である SVC この下位カテゴリーの中国語 SVC の場合 二番目の動詞句の動詞は 一定の意味的特徴を持っており そのことによって一つの句を主語として受け入れることが出来る なお 言語データを網羅的に考察するために 本研究は Li et al. (1981) の中国語の動詞句に関する分類を踏まえて (86) における 难 のような述語の役割を果たす形容詞に対しても 形容詞的動詞 (adjectival verb) として扱うことにする 58

61 (86) 学 中文 不 难 xué zhōngwén bù nán 学ぶ 中国語 否定 難しい 中国語を学ぶことは難しくない (86) の統語解析木 (87) では 主語を示す機能タグ SBJ が IP に付いている しかも IP-PPL-SBJ の内部においてゼロ代名詞 pro( 純粋な代名詞類の性質を持つもの ) が追加さ れている (87) (IP-MAT (IP-PPL-SBJ (NP-SBJ *pro*) (VB 学 / 学ぶ ) (NP-OB1 (N 中文 / 中国語 ))) (NEG 不 / 否定 ) (ADJ 难 / 難しい ) (PU )) (87) を基に意味処理を行うことにより 文の述語論理式 (88) が得られる (88) x4 x1 e2 s3 ( x4 = pro 中文 (x1) fact(s3, 学 (e2, x4, x1)) e5 难 (e5, s3)) (88) に示すように 学中文 全体が一つの fact として 难 の述語 項構造に埋め込ま れ しかもそのイベント変項 s3 が主語となっている 59

62 3.4.2 一つの動詞句がもう一つの動詞句の動詞の目的語である SVC 前節と対照的に 本節の中国語 SVC は 一番目の動詞句が文のヘッドになり しかも二番目の動詞句全体を自分の目的語として取ることが出来る そして 主文の動詞がコントロール動詞であるか否かによって さらにこの種の中国語 SVC に対して二つの下位カテゴリーを与えることが出来る (89) と (90) (91) と (92) および (93) と (94) の表層構造は同一であるにも関わらず (89), (91) および (93) はコントロール構文で その補文 ( 二番目の動詞句 ) の主語が主文 ( 一番目の動詞句 ) の主語と同一指示の PRO として分析されるべきなのに対して (90), (92) および (94) は非コントロール構文で その補文の主語は主文の主語によってコントロールされず それ以外の人物を指すことも可能なので pro として扱うのが適切である (89) 玛丽 打算 去 东京 mǎlì dǎsuàn qù dōngjīng メアリー つもりだ 行く 東京 メアリーは東京に行くつもりだ (90) 玛丽 说 去 东京 mǎlì shuō qù dōngjīng メアリー 言う 行く 東京 メアリーは東京に行くと言った 60

63 (91) 我 喜欢 养 宠物 wǒ xǐhuān yǎng chǒngwù 私 好きだ 飼う ペット 私はペットを飼うことが好きだ (92) 我 反对 养 宠物 wǒ fǎnduì yǎng chǒngwù 私 反対する 飼う ペット 私はペットを飼うことに反対する (93) 小明 发誓 遵守 交通 法规 xiǎomíng fāshì zūnshǒu jiāotōng fǎguī 小明 誓う 厳守する 交通 ルール 小明は交通ルールを厳守することを誓う (94) 政府 呼吁 遵守 交通 法规 zhèngfǔ hūyù zūnshǒu jiāotōng fǎguī 政府 呼びかける 厳守する 交通 ルール 政府は交通ルールを厳守するように呼び掛ける 従って (89), (90) に対してそれぞれ (95), (96) のような統語構造が付与できる すでに 前章で述べたように SCT のスコープ操作によって要素間のコントロール関係が意味論のレベルで補完されるため (95) の IP-PPL-OB1 に主語のゼロ代名詞 PRO のタグ付けをしなくても済む 一方 (96) では IP-SUB における主語と IP-MAT の主語とは同一指示ではないため 主語のゼロ代名詞 pro を追加する必要がある 61

64 (95) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 玛丽 / メアリー )) (VB 打算 / つもりだ ) (IP-PPL-OB1 (VB 去 / 行く ) (NP-OB1 (NPR 东京 / 東京 ))) (PU )) (96) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 玛丽 / メアリー )) (VB 说 / 言う ) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ *pro*) (VB 去 / 行く ) (NP-OB1 (NPR 东京 / 東京 )))) (PU )) IP-PPL-OB1 は修飾語 句に含まれる要素であるのに対して CP-THT は補語の類に属す る要素である 従って (97) と (98) に示すように 両者と主語とのスコープ階層関係が異な る (97) [NP-SBJ ( 玛丽 ) [IP-PPL-OB1 ( 去东京 ) [VB ( 打算 )]]] (98) [NP-SBJ ( 玛丽 ) [VB ( 说 ) [CP-THT ( 去东京 )]]] 意味処理によって得られた (89), (90) の述語論理式はそれぞれ次の (99), (100) となる 両者 62

65 を比べると (99) では主文主語と補文主語とが同一指示であるとして関係づけられているのに対して (100) では 補文主語の x3 と主文主語の 玛丽 とは必ずしも同一指示ではなく 主文主語 玛丽 はむしろ補文主語 x3 の可能値の一つに過ぎないということが分かる (99) e1 e2 打算 ( e2, 玛丽, 去 (e1, 玛丽, 东京 )) (100) x3 e1 e2 ( x3 = pro{ 玛丽 } 说 (e2, 玛丽, 去 (e1, x3, 东京 ))) 以上でこのタイプの中国語 SVC に関する統語 意味解析の経緯および結果を示してきたが 実は 実際にアノテーションをする際にもう一つの大きな課題がまだ残っている それは 該当する文がコントロール構文 ( 厳密には主語コントロール構文 ) か非コントロール構文か 即ち該当する文がこのタイプのどの下位カテゴリーに相当するかという判断である (101), (102) および (103) を考察すれば分かるように 英語の場合 不定形のマーカー to および補文標識 that を手掛かりとして 該当する文がコントロール構文 ( 主語コントロール構文および目的語コントロール構文 ) であるか非コントロール構文であるか 簡単に区別できる しかし 周知のように中国語は機能語や屈折形態素などに乏しい言語であるため そのような判断は容易につけられない 更に (90) と (103) に示すように 中国語の非コントロール構文は英語とは異なり 補文の主語も省略できる その場合 一番目の動詞の後ろに名詞句が付いているかどうかを手掛かりとして 目的語コントロール構文 ( その具体例は第 3.5 節の (107), (108), (109) を参照のこと ) と非コントロール構文との区別はまだ可能であるが 主語コントロール構文と非コントロール構文の表層構造は全く同じようになり 両者の区別を文の表層構造からすることは出来ない 63

66 (101) Mary intended to go to Tokyo. (102) Mary forced John to go to Tokyo. (103) Mary said that she will go to Tokyo. 中国語のコントロール構文と非コントロール構文を区別するために 従来多くの研究 (Huang 1989; Li 1990) がなされてきた Huang (1989) は 中国語では補文に助動詞的 (auxiliary) 要素 ( アスペクトやモダリティーなど ) を許すか否かによって両者の区別が出来るとした それによると コントロール構文は不定形節で助動詞的要素を受け入れないが 非コントロール構文は定形節で助動詞的要素が出現できるとしている この対立は 次の (104) と (105) に見られる 従って (104a) はコントロール構文 ( 目的語コントロール構文 ) であるのに対して (105a), (105b) は非コントロール構文であるということになる 以下 助動詞的要素を下線で示す (104a) 我 逼 李四 来 wǒ bī lǐsì lái 私 強制する 李四 来る 私は李四に来るように強制した (Huang 1989) *(104b) 我 逼 李四 会 / 能 / 应该 来 wǒ bī lǐsì huì/néng/yīnggāi lái 私 強制する 李四 はずだ / できる / べきだ 来る 私は李四に来る ( はずだ / できる / べきだ ) ように強制した (Huang 1989) 64

67 *(104c) 我 逼 李四 来 着 wǒ bī lǐsì lái zhe 私 強制する 李四 来る 進行 私は李四に来る ( ている ) ように強制した (Huang 1989) (105a) 张三 说 ( 他 ) 来 了 zhāngsān shuō tā lái le 張三 言う 彼 来る 完了 張三は ( 彼が ) 来たと言った (Huang 1989) (105b) 张三 相信 ( 他 ) 会 来 zhāngsān xiāngxìn tā huì lái 張三 信じる 彼 はずだ 来る 張三は ( 彼が ) 来ると信じている (Huang 1989) しかし 黄 (1992) 徐 (1994, 1999) Hu et al. (2001) などが指摘したように 実際には違いはそれほど明確ではない 例えば (106a) と (106b) はそれぞれ主語コントロール構文と目的語コントロール構文であるにも関わらず 非コントロール構文と同様に 補文にモダリティーやアスペクトなどの要素を取ることが出来る (106a) 我 准备 明天 要 来 wǒ zhǔnbèi míngtiān yào lái 私 準備する 明日 つもりだ 来る 私は明日来るつもりだ ( 徐 1999) 65

68 (106b) 妈妈 逼 小明 吃 过 药 māma bī xiǎomíng chī guò yào 母 強制する 小明 食べる 経験 薬 お母さんは小明に強制して薬を飲ませた ( 黄 1992) 以上に見られるように 補文に何らかの要素を許すか否かによってコントロール構文か非コントロール構文かという判断をすることは不十分である そのため 中国語の場合 コントロール構文になれるかどうかの決め手はむしろ主文の動詞の意味によると考えられる そこで 本研究では まず中国語版ペンツリーバンクにおける PRO/pro の区別に基づいて 中国語の動詞 ( 中国語版ペンツリーバンクの中に現れたもの ) を以下の三種類 ( その詳細は付録 B を参照のこと ) に分けた ⅰ コントロール構文しか作れない動詞 : 逼 bī ( 強制する ) 愿意 yuànyì ( 願う ) 喜欢 xǐhuān ( 好む ) 拒绝 jùjué ( 断る ) 感到 gǎndào ( 感じる ) 坚持 jiānchí ( 堅持する ) 企图 qǐtú ( 企む ) 涉嫌 shèxián ( 疑われる ) 爱 ài ( 愛する ) 足以 zúyǐ ( 十分に足りる ) 恢复 huīfù ( 回復する ) 尝试 chángshì ( 試みる ) 获准 huòzhǔn ( 許可を得る ) など ⅱ 非コントロール構文しか作れない動詞 : 相信 xiāngxìn ( 信じる ) 指出 zhǐchū ( 指摘する ) 听说 tīngshuō ( 聞く ) 导致 dǎozhì ( 導く ) 研判 yánpàn ( 判断する ) 发现 fāxiàn ( 発見する ) 下令 xiàlìng ( 命令を下す ) 看到 kàndào ( 見かける ) 提到 tídào ( 言及する ) 了解 liǎojiě ( 了解する ) 裁定 cáidìng ( 裁定する ) 想象 xiǎngxiàng ( 想像する ) 证明 zhèngmíng ( 証明する ) など ⅲ 両方とも作れる動詞 : 表示 biǎoshì ( 示す ) 赞成 zànchéng ( 賛成する ) 希望 xīwàng ( 希望する ) 知道 zhīdào ( 分かる ) 确定 quèdìng ( 確定する ) 禁止 jìnzhǐ ( 禁止する ) 答应 dāying ( 承知する ) 考虑 kǎolǜ ( 考える ) 要求 yāoqiú ( 要求する ) 觉得 juéde ( 思う ) 记得 jìde ( 覚える ) 证实 zhèngshí ( 実証する ) 避免 bìmiǎn ( 避ける ) など その結果 ⅰ に属する動詞の数は 672 個であるのに対して ⅱ に属する動詞の数は ⅰ の 66

69 三分の二に近い 405 個になっている また コントロール構文でも非コントロール構文でも作成できる動詞の数は 196 個であった 中国語版ペンツリーバンクにおける区別に対しては言語学的な検証がさらに必要だが 少なくとも大まかな傾向は示していると考えることが出来る これによると このタイプの中国語 SVC の場合 コントロール構文になる可能性が非コントロール構文になる可能性より高いことと 両方とも可能な動詞が確かにある程度存在しているので アノテーションの際には注意が必要だということが分かる 実際にこのタイプに属する中国語 SVC の生テクストをアノテーションする際に 以上の動詞リストをディフォールト値とした自動修正プログラムを作って 統語解析器によって得られた自動解析結果に対して自動修正 ( 相応しい統語解析 ) をしてから 人手によるチェックと訂正を行う このように アノテーションの量が増えれば増えるほど この動詞リストが完璧になり 最終的にはこれを手掛かりとしてこのタイプの中国語 SVC の下位カテゴリーを区別する決め手が見つかると考える 3.5 ピボット構造を持つ SVC このタイプの SVC には 一番目の動詞句の目的語であると同時に二番目の動詞句の主語でもあるような名詞句があるので Li et al. (1981) は ピボット (pivotal) 構造を持つ SVC と名付けた このような統語構造上の特徴から 従来の中国語文法書において 兼语文 と呼ばれることが多い 文の要素間のコントロール関係に焦点を当てると 目的語コントロール構文に相当するものと考えても支障がない (107), (108) および (109) の場合 我们 他 および 五个人 は それぞれ主文動詞 请 劝 および 派 の目的語でありながら 補文動詞 吃饭 念 および 来 の主語としての役割も果たしている 67

70 (107) (= (35)) 张三 今晚 请 我们 吃饭 zhāngsān jīnwǎn qǐng wǒmen chīfàn 張三 今晩 招待する 私たち 食事する 張三は今晩私たちを御馳走する (108) 我 劝 他 念 医 wǒ quàn tā niàn yī 私 勧める 彼 学ぶ 医学 私は彼に医学を学ぶことを勧める (Li et al. 1981) (109) 政府 派 五个 人 来 zhèngfǔ pài wǔgè rén lái 政府 派遣する 五個 人 来る 政府は五人 ( 彼らが来るように ) 派遣する 以上を踏まえ (107) の統語構造として (110) を付与する (110) と (95) を比べると IP がそれぞれ INF PPL という機能タグを持つことが分かる これにより 目的語コントロール構文 (107) および主語コントロール構文 (89) における二つの IP の区別が可能になると同時に PRO をコントロールしている対象の確定も出来る (110) (= (39)) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (NP-TMP (N 今晚 / 今晩 )) (VB 请 / 招待する ) (NP-OB1 (PRO 我们 / 私たち )) (IP-INF (VB 吃饭 / 食事する )) (PU )) 68

71 SCT を実装した意味処理システムで二つの機能タグに関する解釈規則をインプリメント すること ( 第 2.5 節を参照 ) により 意味処理により (99) と異なり主文目的語 ( 主文主語で はない ) と補文主語とが同一指示である (111) が得られる (111) (= (41)) x4 t1 e2 e3 ( x4 = 我们 今晚 (t1) 请 (e3, 张三, x4, 吃饭 (e2, x4)) tmp(e3) t1) 3.6 二番目の動詞句が記述的なものである SVC このタイプの中国語 SVC では 一番目の動詞句の動詞は他動詞であり しかもその目的語が二番目の動詞句によって表現されている この構文は そのディスコース上の機能として以下で説明する名詞句の導入が挙げられるので 存在文 (presentative sentences) の一種類とみなされてきた そして 常に聞き手が現時点でまだ所有していない新しい情報をもたらすため 最初の動詞句の動詞が取る目的語は不定である (112a) 我 遇到 一个 外国人 会 说 中国话 wǒ yùdào yíge wàiguórén huì shuō zhōngguóhuà 私 出会う 一個 外国人 出来る 話す 中国語 私は中国語が話せる一人の外国人と出会った 69

72 *(112b) 我 遇到 外国人 会 说 中国话 wǒ yùdào wàiguórén huì shuō zhōngguóhuà 私 出会う 外国人 出来る 話す 中国語 私は中国語が話せる外国人と出会った (113a) 他 有 一个 妹妹 很 喜欢 电影 tā yǒu yíge mèimei hěn xǐhuān diànyǐng 彼 いる 一個 妹 とても 好きだ 映画 彼は映画が好きな一人の妹がいる *(113b) 他 有 妹妹 很 喜欢 电影 tā yǒu mèimei hěn xǐhuān diànyǐng 彼 いる 妹 とても 好きだ 映画 彼は映画が好きな妹がいる (114a) 我 打破 了 一个 茶杯 很 值钱 wǒ dǎpò le yíge chábēi hěn zhíqián 私 破る 完了 一個 茶碗 とても 高価だ 私はとても高価な一個の茶碗を破った (Li et al. 1981) *(114b) 我 打破 了 茶杯 很 值钱 wǒ dǎpò le chábēi hěn zhíqián 私 破る 完了 茶碗 とても 高価だ 私はとても高価な茶碗を破った 70

73 例えば (112a) では 一个外国人 は最初に来る動詞句の動詞 遇到 の目的語で その様態と情況に関する情報を 次に来る動詞句 会说中国话 が提供している 一方 (112a) と比べて 一个 を含まない (112b) は非文である それは 以上に述べたようにこのタイプの中国語 SVC では一番目の動詞句の中に含まれる目的語が常に不定でなければならないからである 即ち 次の話題の中心として取り上げられる 外国人 は聞き手にとって初めて触れる情報になるので 数量詞 一个 を加えてそれを不定化する必要がある また 関係節構文 (115), (116) および (117) と SVC である (112a), (113a) および (114a) の日本語訳が全く同じであることから 意味上では このタイプの中国語 SVC は中国語の関係節構文に似ていると考えられる (115) 我 遇到 一个 会 说 中国话 的 外国人 wǒ yùdào yíge huì shuō zhōngguóhuà de wàiguórén 私 出会う 一個 出来る 話す 中国語 補文標識 外国人 私は中国語が話せる一人の外国人と出会った (116) 他 有 一个 很 喜欢 电影 的 妹妹 tā yǒu yíge hěn xǐhuān diànyǐng de mèimei 彼 いる 一個 とても 好きだ 映画 補文標識 妹 彼は映画が好きな一人の妹がいる (117) 我 打破 了 一个 很 值钱 的 茶杯 wǒ dǎpò le yíge hěn zhíqián de chábēi 私 破る 完了 一個 とても 高価だ 補文標識 茶碗 私はとても高価な一個の茶碗を破った ただし 名詞句に関する情報伝達の手法については 両者の間にはやはり微妙な差が見 られる SVC によって伝えられる対象 ( 一番目の動詞句の取る目的語 ) の出現は 完全に 71

74 偶発的なものであるが 関係節構文が伝える対象 ( 関係節により修飾される名詞 ) は 談話の中で既に現れたか あるいはその出現が予測できるものだと考えられる 具体例 (112a), (115) を比べて考察していくと 二つの文はどちらも話し手が出会った一人の外国人が中国語が話せるという事実を述べているが (112a) では中国語が話せるということがただ起こったり判明したりしたという意味であるのに対して (115) では 話し手と聞き手が中国語が話せる外国人について今まで話題として話し合ってきたり あるいは聞き手が話し手が中国語の話せるような外国人を特にさがしていたということを予め知っていたりすることを前提条件としなければならない とはいうものの このような関係節構文との違いがあったとしても 本研究ではこのタイプの中国語 SVC に対して関係節構文に類似した統語解析を与えることにする それは 以上に述べたような相違は本研究の取り扱うことが出来る限界 ( 統語論および形式意味論 ) を超えるからである 意味処理により得られた論理意味表示を通して文の中に現れた各要素間の相互関係は確かにより直接的に考察できるが 文脈や話者の知識ベースなどを必要とする文レベルを超えた情報へのアクセスを形式的に行うことは 本論文が取り上げるテーマを超えている 従って このような相違を本研究の考察対象外のものとして (112a), (115) にそれぞれ以下の (118), (119) を与える (118) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (VB 遇到 / 出会う ) (NP-OB1 (NUMCLP (CARD 一 / 一 ) (NUMCL 个 / 個 )) (N 外国人 / 外国人 ) (CP-REL (IP-SUB (NP-SBJ *T*) (AX 会 / できる ) (VB 说 / 話す ) (NP-OB1 (NPR 中国话 / 中国語 ))))) (PU )) 72

75 (119) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (VB 遇到 / 出会う ) (NP-OB1 (NUMCLP (CARD 一 / 一 ) (NUMCL 个 / 個 )) (CP-REL (IP-SUB (NP-SBJ *T*) (AX 会 / できる ) (VB 说 / 話す ) (NP-OB1 (NPR 中国话 / 中国語 ))) (C 的 / 補文標識 )) (N 外国人 / 外国人 )) (PU )) (118) と (119) は 関係節 (CP-REL) の内部における補文標識 (C) の有無および関係節と 修飾される名詞 (N) との相対位置のほかには何の違いも存在しない 両方の意味処理の結 果は共通して (120) のようになる (120) x3 X1 e2 ( x3 = 我 一个 (X1) 外国人 (X1) 会 ( e4 说 (e4, X1, 中国话 )) 遇到 (e2, x3, X1)) 統語処理の段階でトレース (NP-SBJ *T*) に関するアノテーションを行うため 外国人 が 说 の主語項としてその意味役割を果たしているという情報を意味処理の段階で捉えることが出来る このように このタイプの中国語 SVC を関係節構文として取り扱うメリットは 関係節の内部にトレースを追加することにより最初の動詞句の取る目的語と二番目の動詞句の間の統語関係を容易に明示できることにある 一見 (112a) を目的語コントロール構文 ( 本研究における SVC の下位カテゴリー 3) として扱っても問題がなさそうだが 意味処理の結果および解析の一般化を考えるとやはり大きな支障がある 73

76 (121) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (VB 遇到 / 出会う ) (NP-OB1 (NUMCLP (CARD 一 / 一 ) (NUMCL 个 / 個 )) (N 外国人 / 外国人 )) (IP-INF (AX 会 / できる ) (VB 说 / 話す ) (NP-OB1 (NPR 中国话 / 中国語 ))) (PU )) (121) は (112a) を目的語コントロール構文として解析した結果である さらに 意味処理 の結果を次の (122) に示す (122) x3 X1 e2 ( x3 = 我 一个 (X1) 外国人 (X1) 遇到 (e2, x3, X1, 会 ( e4 说 (e4, X1, 中国话 )))) 確かに 外国人 が 遇到 の目的語であると同時に 说 の主語でもあるという情報については以上の (122) によっても捉えられるが (120) では 遇到一个外国人 と 会说中国话 は二つの独立したイベントとして によって連結されているのに対して (122) では 会说中国话 は動詞 遇到 の arg2( 間接目的語 ) の位置に埋め込められている これは言語データの実情に合わないため 目的語コントロール構文とするのは不適切である また 次の (123) のような一番目の動詞句の動詞の取る目的語が二番目の動詞句の主語ではない例については 目的語コントロール構文としての解析は適用できない 74

77 (123) 他 炒 了 一个 蔬菜 我 很 喜欢 吃 tā chǎo le yīge shūcài wǒ hěn xǐhuān chī 彼 炒める 完了 一個 野菜 私 とても 好きだ 食べる 彼は私の大好きな野菜を炒めた 三つの動詞句を含む (123) の場合 蔬菜 は二番目の動詞句の動詞 喜欢 の主語でも目的語でもなく むしろコントロール動詞 喜欢 が自分の目的語として取る三番目の動詞句の動詞 吃 の目的語である このような非有界依存構文における同一指示関係を明示するために トレースの追加が自由に出来る関係節の統語解析を適用する必要がある (123) の統語解析結果を次の (124) に示す (124) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 他 / 彼 )) (VB 炒 / 炒める ) (AS 了 / 過去 ) (NP-OB1 (NUMCLP (CARD 一 / 一 ) (NUMCL 个 / 個 )) (N 蔬菜 / 野菜 ) (CP-REL (IP-SUB (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (ADVP (ADV 很 / とても )) (VB 喜欢 / 好きだ ) (IP-PPL-OB1 (NP-OB1 *T*) (VB 吃 / 食べる ))))) (PU )) (124) では IP-PPL-OB1 の中にトレースに関する情報 (NP-OB1 *T*) が記入されている 意味処理により (123) に関する正しい述語論理式 (125) が得られ これをによって 蔬菜 は主文の動詞 炒 の目的語であるとともに 喜欢 の arg1( 直接目的語 ) として出現する三番目の動詞句の動詞 吃 の目的語でもあるという要素間の同一指示関係を正確に捉 75

78 えられるようになった (125) x6 x5 X1 s7 e2 e3 e4 ( x5 = 他 x6 = 我 {x5} 一个 (X1) 蔬菜 (X1) 很 (s7) fact(s7, 喜欢 (e3, x6, 吃 (e2, x6, X1))) 炒 _ 了 (e4, x5, X1)) 3.7 意味の曖昧性を持つ中国語 SVC の解析 本節では 先行研究と比べながら本研究で提唱した解析を用いて意味の曖昧性を持つ中国語 SVC を対象に考察を行う 中国語は機能語や屈折形態素などに乏しい言語であるため 言語の表層構造から文の曖昧性を排除することが困難である (126) は中国語 SVC の一文で 場合によっては以下の二通りの解釈がどちらでも適用できる (126) 我 找 学生 教 wǒ zhǎo xuéshēng jiāo 私 みつける 学生 教える a 我 [ 找学生 ][ 教 ] 私は教えるために学生をみつける b 我 [ 找 [ 学生教 ]] 私は学生をみつけて ( 彼らに ) 教えさせる (126) に対して 中国語版ペンツリーバンク式の解析スキームを使うと以下のような解析 を行うことが出来る 76

79 (127) (IP (NP-SBJ (PN 我 / 私 )) (VP (VP (VV 找 / みつける ) (NP-1 (N 学生 / 学生 ))) (VP (VV 教 / 教える ) (NP-OBJ (-NONE- *-1)))) (PU )) (127) では 二つの VP が並列関係を取り同一の主語 (NP-SBJ) を共有していて しかも インデックスを用いて名詞句 学生 を動詞 教 の直接目的語の位置に移動させている このような解析は一見論理的だが 実は以下のような問題点を抱えている まず インデックスを用いて名詞句を移動したため 解釈 b は確かに排除されている しかし 解釈 a において名詞句 学生 は動詞 找 の直接目的語になるべきなのにもかかわらず インデックスの使用のためにこの大切な統語情報が失われてしまっている さらに 二つの VP のどちらに対しても機能タグに関するアノテーションを行っていないため VP 間の相互関係が不明である 最後に もっとも問題なのは このような解析方法では (126) のような意味の曖昧性を持つ文に対しては 文脈によって実際に文の取る意味についての柔軟で且つ適切な対応が出来ないことである 即ち 解釈 a と解釈 b を比べれば分かるように 両者は意味上で多少の違いがあるとしても それは述語 教 の動作主が異なるだけである このような言語データの実情から考えると 木構造の微調整さえ行えば両解釈のどちらにも対応できるような解析が求められるが 中国語版ペンツリーバンクの解析スキームの場合は そのような解析は不可能である 以上の問題点が解決できるように 本研究では (126) に関する二通りの解釈をそれぞれ本研究における中国語 SVC の下位カテゴリー 1-2 と3に当てはめて VP の並列構造の代りに以下のような二通りの解析法を提案する 77

80 (128) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 我 )) (VB 找 ) (NP-OB1-LOW (N 学生 )) (CP-ADV (IP-SUB (VB 教 ))) (PU )) (129) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 我 / 私 )) (VB 找 / みつける ) (NP-OB1 (N 学生 / 学生 )) (IP-INF (VB 教 / 教える )) (PU )) (128), (129) では 基本的には補文の種類 (CP-ADV および IP-INF) を区別しただけで二種類の解釈に対応できる そして (128) において NP-OB1 に-LOW を付けることによって それと CP-ADV とのスコープ階層関係を調整した (128), (129) における文レベルの各要素のスコープ階層関係はそれぞれ以下の (130), (131) の通りになる (130) [NP-SBJ ( 我 ) [CP-ADV ( 教 ) [NP-OB1-LOW ( 学生 ) [VB ( 找 )]]]] (131) [NP-SBJ ( 我 ) [NP-OB1 ( 学生 ) [VB ( 找 ) [IP-INF ( 教 )]]]] 78

81 機能タグの違いを手掛かりとして 従属節と主節との正確な意味的関係( 並列 (coordinate) かそれとも従属 (subordinate) か ) が捉えられる それだけでなく SCT のスコープ操作を行うことにより (128) における主文主語と補文主語 および (129) の主文目的語と補文主語とが同一指示であるとして関連付けられる これにより (132), (133) が示す通り 正確な述語論理式が得られる (132) x4 x1 e2 e3 ( x4 = 我 学生 (x1) 教 (e2, x4) 找 (e3, x4, x1)) (133) x4 x1 e2 e3 ( x4 = 我 学生 (x1) 找 (e3, x4, x1, 教 (e2, x1))) 3.8 三つ以上の動詞句からなる中国語 SVC の解析 以上では 文の要素間の同一指示関係に注目しながら二つの動詞句しか含まれない例に限定し 実際の情況を単純化して中国語 SVC の全ての下位カテゴリーの解析について論じてきた しかし 実際にアノテーションをする際に 三つ以上の動詞句から構築される中国語の SVC に直面することも決して少なくはない 本研究では 中国語 SVC に対して緻密な分類をすることによって SVC の統語 意味情報の追究が体系的に行えるようになった 従って (134) のような複雑な文を対象にしても支障なく精密な処理を行うことが出来 79

82 る (134) 张三 动用 关系 让 李四 帮 王五 归还 贷款 zhāngsān dòngyòng guānxi ràng lǐsì bāng wángwǔ guīhuán dàikuǎn 張三 使用する コネ させる 李四 手伝う 王五 返す 借金 張三はコネを使って李四を王五に借金を返すようにさせた (134) は四つの動詞句から構成される中国語 SVC の一例で その統語構造を解析するた めにまず四つの動詞句間の埋め込み 相互関係を明らかにしておく必要がある 表 3-1 動詞句間の埋め込み 相互関係 コントロールする句 動詞句 コントロールされる句 本研究の下位カテゴリー 1 2, 3, , 表 3-1 に (134) における四つの動詞句間の埋め込み 相互関係を示す これを基にして (134) の統語および意味の処理結果は以下の (135), (136) のようになる 80

83 (135) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (CP-ADV (IP-SUB (VB 动用 / 使用する ) (NP-OB1 (N 关系 / コネ )))) (VB 让 / させる ) (NP-OB1 (NPR 李四 / 李四 )) (IP-INF (VB 帮 / 手伝う ) (NP-OB2 (NPR 王五 / 王五 )) (IP-PPL-OB1 (VB 归还 / 返す ) (NP-OB1 (N 贷款 / 借金 )))) (PU )) (136) x1 x2 e3 e4 e5 e6 ( 关系 (x1) 贷款 (x2) 动用 (e3, 张三, x1) 让 (e6, 张三, 李四, 帮 (e5, 李四, 归还 (e4, 李四, x2), 王五 ))) 3.9 まとめ 本章では 中国語ツリーバンクの構築における動詞連続構文の解析の問題について論じてきた 従来の中国語 SVC に関する研究は狭義で典型的な SVC を対象とするものが多いが 本研究は 中国語 SVC の定義を広義に取りその下位カテゴリーを緻密に決定することによって自然言語データを網羅的に扱えるようになった これは アノテータの個人差をコントロールするための解析マニュアルにもなるし 先行研究を踏まえて 孤立語である中国語の動詞連続構造に対する再考察にもなる 81

84 また 文を構成する要素の間の同一指示関係に留意しながら 豊富な統辞情報がシステマティックに提供できる統語解析法および文の意味処理を深いレベルにおいて行える SCT をインプリメントした意味処理システムの使用により 従来の解析方法では捉えられない中国語の SVC における統語 意味情報が得られるようになった 形態変化に乏しい中国語は 語順を除けば統語情報が乏しいために 表層構造が同じ文の中に含まれるタイプの異なる言語情報についての考察が困難になってしまう 本研究では 自然言語の文から文の論理意味表示までの処理プロセスを提示し 精度の高い述語論理式を出力することにより 動詞連続構文におけるタイプの異なる言語情報についての考察がより直接に出来るようになった 82

85 第 4 章結果構文の解析 4.1 はじめに 本章の考察対象とする結果構文は 世界の諸言語において盛んに研究されてきた 特に 英語においては 語彙意味論 生成文法 構文文法など複数の分野で様々な視点からの考察が多く行われ その統語 意味に関してはある程度解明されている しかし これらの方法を中国語に適用しようとすると 例外ばかりが目立つようになる 山田 (1975) が指摘したように屈折語であるインド = ヨーロッパ語において構成された文法をモデルにする限り 中国語の構文の規則は大雑把すぎるか 例外が多すぎるか のどちらかになるほかはないのである 例えば 影山 (1996) と Washio (1997) の研究成果によると 世界の諸言語の結果構文を二つのタイプに分けることが出来る それは 1 本来的結果構文 ( 状態変化動詞の内在的意味に刻み込まれている 変化した状態 を結果述語によって特定化するタイプ ) と2 派生的結果構文 ( 働きかけのみを表す行為動詞に結果述語が加わることによって限界的事態を表すタイプ ) である 日本語は1のみ可能な言語であり 英語は1も2も許容する言語である そして 結果構文が含まれる言語のほとんどは 日本語型 ( 朝鮮語 インドネシア語 モンゴル語など ) あるいは英語型 ( ドイツ語 オランダ語 イタリア語 スペイン語 ロシア語など ) のいずれかに振り分けることが出来ると考えている しかし 石村 (2011) が指摘したように 影山 (1996) と Washio (1997) が提唱した結果構文の類型は 一つの主要動詞からなる文に対しては有効であっても 中国語の結果構文のような二つの節 ( 動詞連続 ) からなる文にはうまく適用しない そして 中国語の場合 文頭に来る名詞句は必ずしも述語動詞の動作主 ((137)) ではなく その対象や道具 ( 石村 2011 が提唱する所謂原因型 ) になること ((138) および (139)) もあるので これまでの分析方法では これらのタイプを解明することが困難である 83

86 (137) 他 喝 醉 了 tā hē zuì le 彼 飲む 酔う 文末助詞 彼は飲んで酔った ( 山口 1991) (138) 衣服 洗 脏 了 yīfu xǐ zāng le 服 洗う 汚い 文末助詞 服を洗って汚くなった (Talmy 2000) (139) 刀 砍 钝 了 dāo kǎn dùn le 刀 切る 鈍い 文末助詞 切って刀が鈍くなった ( 陆 1997) さらに 中国語の結果構文には (140) のような結果補語の後ろにもう一つの名詞句がつ くものも存在する (140) 他们 吃 穷 了 张三 tāmen chī qióng le zhāngsān 彼ら 食べる 貧乏だ 完了 張三 彼らは食べて張三を貧乏にした (Sybesma 1999) 文を構築するこれらの四つの要素 ( 二つの述語および二つの名詞句 ) の間の文法 意味 関係を形式的に捉えることは筆者の知る限りではまだシステマティックに行われていない 本章では 中国語の結果構文における各構成要素の間の文法関係 意味役割を形式的に 84

87 解明することを目指して 第 2 章で紹介したアノテーション方式を用いて 中国語の結果構文を対象として統語解析および意味処理を進めていきたい なお その前に まず明確にしておくべきことが二点ある それは 中国語結果構文の大半を占める 動詞 + 結果補語 構造 (verb-resultative complement compound, 以下 VR 構造 ) の文法カテゴリーに関する問題 ( 即ち 語かそれとも句か ) とそのヘッドの位置をめぐる問題である 以下 先行研究を紹介しつつ 本研究の実情を考慮した上で この二点について検討を行う 4.2 VR 構造の文法カテゴリーとその主要部 VR 構造の文法カテゴリーに関しては これまでの研究において意見が分かれている V と R の間に助詞 得 と副詞 不 による挿入が観察されることから VR 構造を連語 ( 句 ) とみなすもの ( 王 1943, 1944 朱 1982) がある一方 呂 (1976) は VR 構造は文の構成要素としては一つの文しか作ることが出来ないと述べ V と R を二つの成分に分けるべきではないと強調している 呂 (1976) の他に Chao (1968) Li et al. (1981) Sun (2006) なども VR 構造を結果複合動詞 (resultative verb compound) と称し複合語として扱ってきた このように V と R が緊密な関連性を持ち 文中で一つの動詞と同じように機能すると同時に 得 と 不 の挿入も可能である 現代中国語の実情を考察すると 石村 (2011) が指摘するように 中国語動詞の中には 扩大 kuòdà( 拡大する ) 革新 géxīn( 革新する ) 改良 gǎiliáng( 改良する ) のように一定の強さで結合しているために 中間に 得 と 不 を挿入できないものも存在する 厳密に言えば 純粋に複合動詞と呼ぶことが出来るのは これらのように既に語彙化 (lexicalization) を遂げたものである また 中国語結果構文の VR 構造について 語彙レベルでの形成を主張する立場と統語レベルでの形成を主張する立場で これまで様々な理論的分析が行われてきた Hashimoto (1964, 1971) や Baron (1971) などは変形文法 (transformational grammar) を使用し統語レベルでの形成を主張した これに対して V と R の間の 得 と 不 の挿入に関してそれまでの文構造分析では十分な説明が得られないという理由で Thompson (1973) は語彙レベルによる形成を主張した その他 形態論 (Cheng et al Li 1990, 1993, 1995 沈 85

88 1993 など ) 事象構造に基づく分析法 (Lin 2004 湯 2002 など ) 語義指向分析 ( 呂 1986 王 1993 など ) など 様々な観点からの考察が行われている しかも 各自の分析では 結果構文の主要部が V であるかそれとも R であるかについても意見が分かれている V をヘッドとみなすもの (Cheng et al Li 1990, 1993, 1995 袁 2000 など ) も R をヘッドとして扱うもの ( 李 1984 沈 1993 Tai 2003 など ) も数多く存在している 本節では この点に関する主要な先行研究を概観し 本研究の立場を明らかにする 語彙レベルにおける形成 Li (1990, 1993, 1995) の一連の研究では 述語の項構造 (argument structure) という観点から 項の同定 (theta-identification) 主題階層 (thematic hierarchy) および主要部特性の浸透 (head-feature percolation) という三つの手法を用いて 結果複合動詞に関わる問題を分析している (141) における VR 構造は 他動詞の 追 と非対格動詞 累 からなっている (141) 滔滔 追 累 了 友友 了 tāotāo zhuī lèi le yǒuyǒu le タオタオ 追う 疲れる 完了 ヨウヨウ 文末助詞 ここで 追 と 累 の項構造は以下の (142) のとおりである (142) 追 <1 <2>> 累 <ⅰ> 86

89 (141) は意味の曖昧性を持つ文である 二つの項 ( 内項と外項 ) を取る 追 と一つの項 ( 内項 ) を取る 累 からなる複合動詞 追累 に含まれる項は三つあるべきだが 追累 の取れる項の数は二つまでである 従って 格フィルターの違反が避けられるように項の同定が必要になる その可能な組み合わせおよびそれに対応する文の意味を以下の (143), (144) に示す (143) a <1( 滔滔 ) <2=ⅰ( 友友 )>> b <1=ⅰ( 滔滔 ) <2( 友友 )>> c <1=ⅰ( 友友 ) <2( 滔滔 )>> *d <1( 友友 ) <2=ⅰ( 滔滔 )>> (144) a タオタオがヨウヨウを追いかけた結果 ヨウヨウが疲れた b タオタオがヨウヨウを追いかけた結果 タオタオが疲れた c ヨウヨウがタオタオを追いかけた結果 ヨウヨウが疲れた *d ヨウヨウがタオタオを追いかけた結果 タオタオが疲れた 母語話者に容認度のチェックをしてもらうと 四つの組み合わせの中で (144d) だけが非文的となるということが分かる Li (1990) は まず Jackendoff (1972) と Grimshaw (1990) が提案する主題階層 (thematic hierarchy) を使って 以上の四つの可能性の適格性と非適格性を説明した 主題階層とは 項の生起位置が意味役割の階層 (145) によって規制されるという原則である (145) 動作主 (agent) > 着点 (goal) > 対象 (theme) これによると 階層の中でより上位にある意味役割ほど構造的に高い位置に生成される すると 動作主は常に着点や対象よりも高い階層に現れるため 動作主は最上位の主語の 87

90 位置を優先的に占めることになる Li (1990) は これを踏まえて 形態的主要部である V の外項特性が複合動詞 (VR 構造 ) 全体に浸透することが適格な文を産出する条件であると主張する 即ち V が VR 構造の主要部で しかもその主要部特性が複合動詞全体に浸透してその語彙特性を決定すると Li (1990) は考えている (144a) と (144b) では どちらも V の外項 1 が VR 構造の主語になり 主題階層を守っているので 適格な文となる これに対して (144d) では V の内項 2 が VR 構造の主語として選ばれ 主題階層に違反しているので 非文的となる 一方 同じく主題階層を違反している (144c) がなぜ成立できるかという理由を説明するために Li (1995) は 主題階層に加えて 使役役割 (causative-roles) という新たな意味役割を導入した これは V と R の項構造に関わらず複合動詞全体によって付与されるマクロ的な意味役割で 使役者 (cause) と被使役者 (affectee) からなっている 使役役割の付与条件として Li (1995) は次の二つを設定している (146) a. The argument in the subject position receives the c-role Cause form a resultative compound if it receives a theta role only from Vcaus.( 主語の位置にある項は 一番目の動詞 (V) だけから意味役割を受け取る場合 複合動詞 (VR 構造 ) から使役者という意味役割を得る ) b. The argument in the object position receives the c-role Affectee from a resultative compound if it receives a theta role at least from Vres.( 目的語の位置にある項は 少なくとも二番目の動詞 (R) から意味役割を受け取る場合 複合動詞 (VR 構造 ) から被使役者という意味役割を得る ) そして Li (1995) は 使役者および被使役者という二つのマクロ的な意味役割も 階層性に従って項の割り当てを受けなければならないと述べ これを使役階層 (causative hierarchy) と呼んでいる さらに 主題階層に対する使役階層の優位性についても次の (147) のように規定した 88

91 (147) Theta roles can be assigned contrary to the thematic hierarchy if the arguments receiving them are assigned c-roles in ways compatible with the causative hierarchy.( 項が使役階層に適合して使役役割を割り当てられる場合 主題階層に違反しても意味役割を割り当てることが出来る ) (144c) は 主題階層に違反するが (146) に示す二つの条件に満たしているため (147) によって意味役割の付与を受けることが出来る 一方 (144d) は (146a) を満たしているが (146b) を満足することが出来ず (147) によって意味役割の付与が受けられない これにより (144c) の適格性および (144d) の非適格性を両方説明することが出来るようになった しかし Cheng et al. (1994) などが指摘するように Li の項構造分析では 文の表層に現れる主語が VR 構造の二つの述語のいずれの項構造にも関与しない文の適格性を説明することが出来ない このような指摘を受けて Li (1995) では (146a) を次の (148) のように修正した (148) The argument in the subject position receives the c-role Cause from a resultative compound only if it does not receive a theta role from Vres.( 主語の位置にある項は 二番目の動詞 (R) から意味役割を受けない場合に限り 複合動詞 (VR 構造 ) から使役者という意味役割を得る ) それにしても 石川 (2011) が指摘するように これによると使役事象構造を有する文の成否を決定しているのは R の振る舞いになり その文の成立に主要部 V1 のいかなる項も関与しないことを自ら認めたことになってしまう Li の説に反論して 沈 (1993) は V に対して R の優位性を強調し VR 構造全体の項構造を決定するのは常に R の項であり V の取る項は全て非固有項であると主張する 沈 (1993) は 複合動詞 (VR 構造 ) の取れる項の数の制約に対して 編入と削除という二つの規則を導入している 89

92 (149) a. 复合的 A 要素和 B 要素具有指同一指示物的参项时, 其中的 1 个参项编入另一个参项中 ( 複合動詞に含まれる二つの要素が同じ指示対象の項を持つ場合 その一つがもう一つの項の中に編入される ) b. 复合的 A 要素和 B 要素具有指不同指示物的参项时, 其两个参项中有 1 个参项消失 ( 複合動詞に含まれる二つの要素が異なる指示対象の項を持つ場合 二つのうちの一つが削除される ) 以上の規則を用いて 以下の用例の派生を考察することが出来る (150a) 张三 唱 哑 了 嗓子 zhāngsān chàng yǎ le sǎngzi 張三 歌う かれる 完了 喉 張三は歌って喉をからした (150b) 嗓子 唱 哑 了 sǎngzi chàng yǎ le 喉 歌う かれる 文末助詞 歌うことで喉がかれた?(150c) 张三 唱 哑 了 zhāngsān chàng yǎ le 張三 歌う かれる 文末助詞 張三は歌ってかれた 90

93 (151a) 张三 拉 断 了 绳子 zhāngsān lā duàn le shéngzi 張三 引っ張る 切れる 完了 縄 張三は引っ張って縄を切った (151b) 绳子 拉 断 了 shēngzi lā duàn le 縄 引っ張る 切れる 文末助詞 引っ張ることで縄が切れた?(151c) 张三 拉 断 了 zhāngsān lā duàn le 張三 引っ張る 切れる 文末助詞 張三は引っ張って切った まず (150a) では 唱 は本来他動詞であるが 文中で実際に取る名詞句が一つしかないので 1 項述語とみなす (150c) の容認度が低いことから (150a) から (150b) までの派生プロセスにおいて 削除されたのは V の項 张三 であり R の項 嗓子 が保有されているということがわかる さらに (151a) では 拉 は 2 項述語で 拉 と 断 の内項が VR 構造全体に編入されて 目的語の位置に現れている (151a) の派生である (151b) を考察すると 削除されるのはやはり V の外項 张三 である このように a 文から b 文が派生するプロセスにおいて 削除が適用されるのは常に V の項であり それに対して R の項は保有される 従って V の取る項はみな非固有項であり R こそ VR 構造の主要部であるべきだと沈 (1993) は主張する 沈の主張は一見非常に説得力があるが 実際にとる項が一つであるからといって 2 項述語であるべき他動詞を 1 項述語として扱うやり方は大雑把すぎるように思われる そのため 主語の位置に現れる項が V の動作主ではなく その対象や道具などになる VR 構造 91

94 の文を (151a) と区別して考察することが出来なくなっている 統語レベルにおける形成 Hashimoto (1964, 1971) は VR 構造に含まれる様々な文法現象を説明するためには 形態論のレベルでは困難だと指摘した Hashimoto は (152) のような他動詞用法 ( 文頭および文末に現れる名詞句と第一動詞 V とがそれぞれ動作主および対象という意味関係を持つ ) の結果複合動詞 (VR 構造 ) に集中して それが埋め込み文 (embedded clause) から派生すると主張する (152a) 张三 吃 完 饭 了 zhāngsān chī wán fàn le 張三 食べる 終わる ご飯 文末助詞 張三はご飯を食べ終えた (152b) 张三 吃 饱 饭 了 zhāngsān chī bǎo fàn le 張三 食べる いっぱいになる ご飯 文末助詞 張三はご飯を食べてお腹がいっぱいになった そして 第一動詞 V と第二動詞 R の動作主が同一指示的か否かによって 他動詞用法の VR 構造を二つの種類に分けている (152a) では 吃 と 完 が同じ主語を共有していないのに対して (152b) では 吃 と 饱 の主語がどちらも 张三 になっている さらに 以上に見られた二種類の VR 構造は表層的には同じ構造を持つかに見えるが 受動文に転換しようとすると異なる文法的振舞いを示す 92

95 (153a) 饭 给 张三 吃 完 了 fàn gěi zhāngsān chī wán le ご飯 受身マーカー 張三 食べる 終わる 文末助詞 ご飯は張三に全部食べられた *(153b) 饭 给 张三 吃 饱 了 fàn gěi zhāngsān chī bǎo le ご飯 受身マーカー 張三 食べる いっぱいになる 文末助詞 ご飯は張三に食べられてお腹がいっぱいになった (153a) は適格だが (153b) は非適格となる Hashimoto は このような複雑な文法現象を考察するために 補文構造を含める深層構造を導入し両文の適格性の相違についての説明を試みた しかし 生成文法理論に基づく Hashimoto は 中国語の結果構文をシステマティックに解明することに成功していない 中国語の結果構文の場合 構成要素間の統語 意味関係が複雑で 文頭に来る名詞句は必ずしも述語動詞の動作主ではなく その対象と道具になることも可能である それだけでなく 文末にもう一つの名詞句が来ると 各要素間の指示関係の同定が一層困難になる Hashimoto と類似した考えを持つ Lu (1977) は 以下のような VR 構造を持つ各文が深層構造において実は二つの節からなるとし 統語分析の有効性を主張する (154a) 他 拉 开 了 门 tā lā kāi le mén 彼 引く 開く 完了 ドア 彼はドアを引き開けた 93

96 (154b) 他 喝 醉 了 酒 了 tā hē zuì le jiǔ le 彼 飲む 酔う 完了 お酒 文末助詞 彼は酒を飲んで酔った (154c) 他 饿 病 了 tā è bìng le 彼 飢える 病気になる 文末助詞 彼は飢えて病気になった 二つの節からなると判断できる理由として Lu は (154) の各文はすべて以下の (155) が 示すように二つの節に分けて書き換えることが出来ると述べている (155a) 门 开 了 是 因为 他 拉 的 缘故 mén kāi le shì yīnwèi tā lā de yuángù ドア 開く 完了 助動詞 から 彼 引く 補文標識 わけ ドアが開いたのは彼が引いたからだ (155b) 他 醉 了 是 因为 ( 他 ) 喝 酒 的 缘故 tā zuì le shì yīnwè i tā hē jiǔ de yuángù 彼 酔う 完了 助動詞 から 彼 飲む お酒 補文標識 わけ 彼が酔ったのはお酒を飲んだからだ 94

97 (155c) 他 病 了 是 因为 ( 他 ) 饿 的 缘故 tā bìng le shì yīnwèi tā è de yuángù 彼 病気になる 完了 助動詞 から 彼 飢える 補文標識 わけ 彼が病気にかかったのは飢えたからだ これらの用例を踏まえて Lu は V を VR 構造の主要部として (156) のような深層構造 を提案し 中国語の VR 構造を次の (157) のように再定義した (156) (157) An RV is a V-V construction in a sentence where the second verb indicates a result caused by the action or the process represented by the first verb.(vr 構造は一種類の動詞連続構造であり 行為や過程を表す一番目の動詞とそれによって引き起こされる結果を表す二番目の動詞によって構築された文に使われる ) しかし VR 構造とされる言語データは実際は複雑多岐にわたり (156) のようなあまりに単純な深層構造によってすべてを把握することには問題がある 言語処理に応用する場合は限界が感じられるし 中国語の結果構文から見られる結果補語 R の移動 ( 繰り上げ ) についても Lu は その研究では ほとんど言及していなかった これに対して GB 理論を採用する湯 (1992a, b) は 結果補語 R の能格化 (ergativization) と主要部特性の浸透 (the head-feature percolation) という二つの考え方を提案し 結果補語 R の移動過程を説明している 95

98 湯の説によると 現代中国語の VR 構造における一部の R( 例えば 醒 xǐng( 目覚める ) 湿 shī( 落ちる ) 坏 huài( 酔う ) など ) は 古代語に存在する使動用法 ( 自動詞と形容詞が単独で目的語を取る ) を留めている そして 能格化することによってその語彙特性が第一動詞 V にも浸透する ( 従って R が主要部 ) ため VR 構造全体に使役義が生じ 目的語が取れるようになる その変形操作のプロセスは次の (158) の通りである (158) a. NPi {Vi/A/Vt NPj} [NPj {Vi/A}] b. NPi {Vi/A/Vt NPj} [({Vi/A}>)Ve NPj] c. NPi [Ve {Vi/A/Vt} Ve] NPj 一方 能格化が出来ない R( 例えば 饱 bǎo( 満腹する ) 醉 zuì( 酔う ) 去 qù ( 行く ) など ) を含む VR 構造の場合 V と R がそれぞれ取れる項の数と VR 構造全体が取れる項の数に関する比較を通して VR 構造全体に浸透しているのが V の素性であるということが観察される 従って VR 構造の主要部は V であると主張する このように 湯の分析では VR 構造の主要部の位置が一定していない 湯の提案は 中国語の VR 構造から見られる結果補語 R の移動の理由についてうまく説明しているが 現代中国語において自動詞あるいは形容詞にほぼ定着化した R が能格化する具体的な証拠を示さない限り説得力に乏しいと考えられる 本研究の立場 以上 語彙 統語レベルにおける VR 構造の形成およびそのヘッドの判定に関する研究を概観してきた 語彙レベルにおける形成を支持する Li と沈は それぞれ V の外項特性の複合語への浸透および複合語全体の R の項の継承という視点から 各自の説 (V 主要部および R 主要部 ) を主張してきた しかし 都合の悪い例も出現するため Li はやむを得ずその矛盾が問われる使役の事象構造を導入したり 沈は第一動詞 V の項構造の違いを捨 96

99 象するなど その説の一般化はうまく行っていない これに対して 統語的分析の有効性を主張する Hashimoto Lu および湯は 生成文法理論や GB 理論などを採用して VR 構造の統語レベルにおける形成を論じたが 結果述語 R の移動が生じる理由がうまく説明できなかったり R の能格化する具体的な証拠が提供できなかったりして 語彙レベルにおける形成を支持する研究と同じように 説の一般化が問題になる このように 意見の相違が見られると同時に 両者とも中国語の VR 構造を徹底的に解明することが出来ていない 一方 既に第 2.4 節で述べたように 本研究の目標は ある理論の妥当性を宣言しそれを用いて中国語の結果構文の生成を解釈しようとするものではなく むしろ実用上からのものである 即ち 実際に存在する結果構文の様々なパターンを網羅的に考察し そして一般化できる解析方法 ( 第 2 章を参照のこと ) を使って それに表層的な統語解析情報を付与し 意味処理を行うことによって 結果構文に含まれる各要素間の意味関係を形式化することである その過程において 述語 項構造の再構築や要素間の同一指示関係の同定など一連の複雑な処理を行うためには 語彙レベルの解析だけでは無理である 従って 本研究では 中国語の結果構文を 従属節を含む複文として扱うことにする とはいうものの 将来構築完了するツリーバンクの実用性から考えると 動詞 V と結果補語 R を語彙化するほうが妥当だと思われる 例えば V と R の組み合わせ可能性をまとめたい場合 VR 構造を抽出する際に 統語構造を考察し複雑な検索パターンを作成するよりも VR 全体に一つの品詞ラベルを与え それを手掛かりとして作業を進めるほうがより効率的であろう このように VR 構造に含む深層情報を考察するためには統語レベルにおける形成を取ることが必要であるが 言語の表層情報に留まる考察についてなら語彙レベルの形成でも十分である 一つのコーパスの中でそれらを両立させるための方法は第 4.7 節で検討するが 今の段階では 上述のように中国語の結果構文を従属節を含む複文として扱って まずその統語 意味解析を展開していくことにする また 主要部の選択を論じる前に まず本研究における中国語の結果構文の分類を決定する必要があるが それについては 次の第 4.3 節で検討する 97

100 4.3 本研究における結果構文の定義およびその分類 中国語の結果構文は 以上に見た VR 構造の他に (159), (160) のような V と R の間に 得 (de) あるいは 不 (bù) が挿入されるもの ( 以下 得 / 不 構造 ) も存在する (159) 农药 杀 得 死 害虫 nóngyào shā de sǐ hàichóng 農薬 殺す 前置詞 死ぬ 害虫 農薬は害虫を殺そうとしてそれを死なせることが出来る ( 農薬は害虫を殺すことが出来る ) (160) 农药 杀 不 死 害虫 nóngyào shā bù sǐ hàichóng 農薬 殺す 否定 死ぬ 害虫 農薬は害虫を殺そうとしたが それを死なせることが出来なかった ( 農薬は害虫を殺すことが出来ない ) 本研究は 得 / 不 構造を VR 構造に統合して考察する 結果構文の定義については 基本的には朱 (1982) を踏襲するが 本研究の目的から考えてある程度の修正も行う すると 本研究で研究対象として扱われる中国語の結果構文とは 事態変化を起こす動詞 V +( 得 / 不 )+ 結果事態を表す結果述語 R という形式によって あるものの状態もしくはその形状が変化したという結果の意味を表す構文のことである 中国語結果構文の分類は 従来様々な視点から行われてきた 例えば R の意味の相違を意識した Lu (1977) と Li et al. (1981) の分類では Lu (1977) は 動補 (VR) 構造における第二動詞 (R) の意味機能の違いに基づいて 結果 (result) 方向 (direction) 到達 (achievement) および完成 (completion) という 4 分類を提案している 同様に Li et al. (1981) は 第二成分 (R) の意味の違いによって 原因 (cause) 到達 (achievement) 方向 98

101 (direction) および相 (phase) の四つに分類している 本研究では 結果構文の深層構造に着目する 文頭に来る第一名詞句と第一述語 V との意味関係を基にして 中国語の結果構文を三つの種類に分ける さらに 文末に第二名詞句が現れる場合 それと第一述語 V との意味関係も考えると更に各種類に二つ以上の下位カテゴリーを与えることが出来る その分類の結果は以下のようになる 1 動作主型 1-1 動作主 型 1-2 動作主 対象 型 1-3 動作主 道具 型 2 被動作主型 2-1 被動作主 型 2-2 被動作主 動作主 型 3 道具型 3-1 道具 型 3-2 道具 対象 型 なお 本研究では 得 / 不 構造を VR 構造の特別形式とみなすため 以上の各下位カテゴリーには 構造的に見るとみな典型的な VR 構造 (V と R の間に 得 あるいは 不 が挿入されていないもの ) および非典型的な VR 構造 (V と R の間に 得 あるいは 不 が挿入されているもの ) がそれぞれ含まれる 以上のような分類は二つの名詞句と第一述語 V との意味関係に基づくものであるため 第一述語 V が自然に結果構文の主要部になる それだけではなく 得 / 不 構造を VR 構造に統合して解析を支障なく進めるのに V を主要部に設定することは非常に役に立つ まず 得 は助詞 P として扱うことが一般的であるが 得 が VR の間に挿入される場合 もし第二述語 R をヘッドにすると (161) が示すように 第一述語 V が含まれる従属節 (CP-ADV) と一緒に 得 をヘッドとする後置詞句 (PP) を生成せざるを得なくなる しかし 中国語は元々助詞前置 ( 前置詞 ) の言語であるため これは不都合である これに対して (162) が示すように 第一述語 V をヘッドに設定すると このような問題を避けることが出来る 99

102 (161) (162) また 不 が両者の間に挿入される用例の場合 否定の作用域の問題を視野に入れる と V を主要部とするやり方の妥当性が一層強くなる R と V をそれぞれヘッドとした (163), (164) を比べると 不 (NEG) の出現位置が異なるということが分かる (163) (164) (163) では 否定が主節の中に含まれるのに対して (164) では 否定が従属節 (CP-ADV) の中に入っている これにより (164) の場合 否定の作用域は従属節の内部に止まって 主節にその影響を及ぼすことはない ( 即ち 第二述語 R だけが否定される ) が (163) の場合 ディフォールトの値として NEG が CP-ADV よりも高いスコープ階層にある ( その詳細は第 2.7 節を参照のこと ) ため その影響は主節だけでなく従属節にも及ぶようになる ( 即ち 第二述語 R も第一述語 V も否定される ) (160) の意味からも分かるように 中国語の場合 不 構造において否定になるのは常に第二述語 R のみである そのため (164) 100

103 はこのままで適切な解析になるが (163) を適用するためには NEG に-LOW を付け加えることによって そのスコープ階層を手修正する必要がある 以上のような理由で 本研究では 第一述語 V を中国語の結果構文の主要部として設定する 以下では 第 2 章で紹介したアノテーション方式を用いて 以上の各下位カテゴリーを対象にその統語解析および意味処理を行うことによって 中国語の結果構文に含まれる各要素の間の文法 意味関係を形式的に考察していく 4.4 動作主型 このタイプの中国語の結果構文では 文頭の名詞句が第一述語 V に対して常に動作主の意味役割を持つ そして 文末に第二名詞句が来る場合 それが常に第二述語 R の動作主になるが 第一述語 V との意味関係は動作の対象だけではなく その道具になることも可能である 動作主型は 生産性がかなり高い結果構文で 本研究の分類法では三つの下位カテゴリーに分類される さらに 第一述語 V は 他動詞 非対格動詞および非能格動詞のいかなる範囲に渡っている 動作主 型 (165), (166), (167) は 動作主 型に属する用例である 第一述語 V はそれぞれ他動詞 非対格動詞と非能格動詞が担当している 101

104 (165) (= (137)) 他 喝 醉 了 tā hē zuì le 彼 飲む 酔う 文末助詞 彼は飲んで酔った (166) 蛇 冻 死 了 shé dòng sǐ le 蛇 凍える 死ぬ 文末助詞 蛇は凍えて死んだ (167) 张三 跑 累 了 zhāngsān pǎo lèi le 張三 走る 疲れる 文末助詞 張三は走って疲れた 本研究は 中国語の結果構文を 従属節が含まれる複文として扱い しかもその主要部を第一述語 V とするため 以上の三文の統語構造はそれぞれ次の (168), (169), (170) の通りになる なお 了 (le) については 先行研究 (Li et al 刘他 2001 など) によると 主にアスペクト助詞および文末助詞という二つの使い方があるが その使い分けは大変複雑な課題で 従来様々な論争が行われてきたにもかかわらず いまだに意見がまとまっていない 本論文では 了 に関する詳しい検討はしないが 結果構文における文末に来る 了 を便宜上で全部 状態に変化が生じたこと ( 刘他 2001) を表す文末助詞として取り扱う 102

105 (168) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (PRO 他 / 彼 )) (VB 喝 / 飲む ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (VB 醉 / 酔う )))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) (169) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (N 蛇 / 蛇 )) (VB 冻 / 凍える ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (VB 死 / 死ぬ )))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) (170) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (VB 跑 / 走る ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (VB 累 / 疲れる )))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) 動作主 型においては名詞句は一つしかなく しかもその名詞句は第一述語の動作主であり機能タグ-SBJ によってマークされている NP-SBJ は CP-ADV に比べてより高いスコープの階層にあり しかもそれともっとも近い距離を保つ VB の必要項になる これは CP-ADV に与えておいたディフォールトの解釈を満たすため SCT をインプリメントした意味処理システムなら NP-SBJ と従属節に埋め込む第二述語との長距離依存関係がそのまま読み取れるはずである しかし (168), (169), (170) では わざと CP-ADV に-LOW を付け加えてある これは 元々のスコープ階層関係を調整したいというわけではなく 文末に第二の名詞句が来るタイプも含めて 第 節で取り上げた典型的な VR 構造に関する語彙レベルの形成と統語レベルの形成とを一つのコーパスで両立させるために デー 103

106 タの標準性 ( その詳細は第 4.7 節を参照のこと ) を保つためのものである なお 動作主 型の場合 ( 実は 被動作主 型も 道具 型も同様 ) -LOW を CP-ADV に付与したとしても 文の構成要素間のスコープ階層関係が変わらないので 後程で意味処理に望ましくない影響を与えたりすることはない (168), (169), (170) にもとづき (165), (166), (167) の意味処理の結果はそれぞれ次の (171), (172), (173) になる (171) x3 e1 e2 (x3 = 他 醉 (e1, x3) 喝 (e2, x3)) (172) x1 e2 e3 ( 蛇 (x1) 死 (e2, x1) 冻 (e3, x1)) (173) e1 e2 ( 累 (e1, 张三 ) 跑 (e2, 张三 )) 事態変化を起こす動詞 喝 冻 跑 と結果事態を表す結果述語 醉 死 累 とがそれぞれ同じ主語項 他 蛇 张三 を共有している 一方 (165), (166), (167) の VR の間に 得 あるいは 不 を挿入すると それぞれ以下の (174), (175), (176) の通りになる (174a) 他 喝 得 醉 tā hē de zuì 彼 飲む 前置詞 酔う 彼が飲んで酔うことはあり得る ( 彼が飲んで酔う ) 104

107 (174b) 他 喝 不 醉 tā hē bu zuì 彼 飲む 否定 酔う 彼が飲んで酔うことはあり得ない ( 彼が飲んで酔わない ) (175a) 蛇 冻 得 死 shé dòng de sǐ 蛇 凍える 前置詞 死ぬ 蛇が凍えて死ぬことはあり得る ( 蛇が凍えて死ぬ ) (175b) 蛇 冻 不 死 shé dòng bu sǐ 蛇 凍える 否定 死ぬ 蛇が凍えて死ぬことはあり得ない ( 蛇が凍えて死なない ) (176a) 张三 跑 得 累 zhāngsān pǎo de lèi 張三 走る 前置詞 疲れる 張三が走って疲れることはあり得る ( 張三が走って疲れる ) 105

108 (176b) 张三 跑 不 累 zhāngsān pǎo bu lèi 張三 走る 否定 疲れる 張三が走って疲れることはあり得ない ( 張三が走って疲れない ) 得 あるいは 不 が VR の間に挿入しても 結果構文全体の統語構造が激しく変化 しないため (177), (178), (179) が示すように 従属節の内部には多少の変わりがあったと しても 主節 + 従属節 という文全体の統語構造が依然のままである (177a) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 他 / 彼 )) (VB 喝 / 飲む ) (PP (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (VB 醉 / 酔う )))) (PU )) (177b) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 他 / 彼 )) (VB 喝 / 飲む ) (CP-ADV (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (VB 醉 / 酔う ))) (PU )) 106

109 (178a) (IP-MAT (NP-SBJ (N 蛇 / 蛇 )) (VB 冻 / 凍える ) (PP (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (VB 死 / 死ぬ )))) (PU )) (178b) (IP-MAT (NP-SBJ (N 蛇 / 蛇 )) (VB 冻 / 凍える ) (CP-ADV (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (VB 死 / 死ぬ ))) (PU )) (179a) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (VB 跑 / 走る ) (PP (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (VB 累 / 疲れる )))) (PU )) (179b) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (VB 跑 / 走る ) (CP-ADV (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (VB 累 / 疲れる ))) (PU )) ここでは 非典型的な VR 構造が統語レベルにおいて形成されるので 両レベルにおけ る形成を両立させるという典型的な VR 構造が抱える課題は生じない そのため データ 107

110 の標準性を考える必要がなく CP-ADV に -LOW をつけなくても済む 意味処理によって (174), (175), (176) の述語論理式 (180), (181), (182) を得ることが出来る (180a) x3 e1 e2 s4 ( x3 = 他 Fact(s4, 醉 (e1, x3)) 喝 (e2, x3) 得 (e2) = s4) (180b) x2 e1 (x2 = 他 e3 醉 (e3, x2) 喝 (e1, x2)) (181a) x1 e2 e3 s4 ( 蛇 (x1) Fact(s4, 死 (e2, x1)) 冻 (e3, x1) 得 (e3) = s4) (181b) x1 e2 ( 蛇 (x1) e3 死 (e3, x1) 冻 (e2, x1)) (182a) e1 e2 s3 (Fact(s3, 累 (e1, 张三 )) 跑 (e2, 张三 ) 得 (e2) = s3) (182b) e1 ( e2 累 (e2, 张三 ) 跑 (e1, 张三 )) 得 が挿入される (180a), (181a), (182a) では ファクト解析を使うことによって 従属節 醉 死 累 が 得 を介してそれぞれ主節 他喝 蛇冻 张三跑 と結合しているという意味情報の表出を可能にしている 一方 各文の統語構造において否定が常に従属節の中に入るため 意味表示 (180b), (181b), (182b) では 否定のオペレーター は全て結果事態を表す部分だけに掛っている 108

111 4.4.2 動作主 対象 型 動作主 対象 型は 普通の SVO 構文と同じように 述語の動作主と対象が揃っている それだけではなく 対象が述語から影響を受けた結果 それ自身に何らかの変化が起こったということを第一述語 V の後ろに第二述語 R を付けることによって表すことも出来る このように 文のヘッドは内項と外項が両方とも取れるものに限られるので この下位カテゴリーの中国語の結果構文において 第一述語 V は常に他動詞が担当する (183) がその一例である (183) 张三 打 死 李四 了 zhāngsān dǎ sǐ lǐsì le 張三 打つ 死ぬ 李四 文末助詞 張三は李四を打殺した (183) には 張三が李四を打った結果 李四が死んだ という意味が含まれる 文の主 要部は第一述語 打 であり 第二述語 死 は従属節を形成するという本研究の判断に 基づいて (183) の統語解析として以下の (184) を与える (184) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (VB 打 / 打つ ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (VB 死 / 死ぬ ))) (NP-OB1 (NPR 李四 / 李四 ))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) 動作主 型と異なって 動作主 対象 型はディフォールトのスコープ階層関係を 満たさないため CP-ADV に -LOW をつけて 要素間のスコープ階層関係のディフォール 109

112 ト値を調整する SCT による中間レベルの処理結果を 次の (185) に示す (185) ( fn fh => ( fn lc => ( ( npr "entity" " 张三 ") "arg0" ( ( npr "entity" " 李四 ") "arg1" ( ( coord fh " " ( clause lc nil ( ( fn lc => ( verb lc "event" [] " 死 ")) ["arg0", "arg1", "h"]))) ( verb lc "event" ["arg0", "arg1"] " 打 "))))) ["arg1", "arg0", "h"]) ["constant", "event"] 死 と 李四 のスコープ階層が調整され 李四 が 死 よりも高いスコープ階 層にあるようになった これにより 意味処理システムの評価によって 正しい要素間の 同一指示関係が得られるようになる 処理の最終結果は以下の (186) の通りである (186) e1 e2 ( 死 (e1, 李四 ) 打 (e2, 张三, 李四 )) 李四 が事態変化を起こす 打 の対象であると同時に 結果事態を表す 死 の動作主にもなる これは (183) に含まれる 張三が李四を打った結果 李四が死んだ という結果構文の意味を精確に表している 一方 VR の間に 得 あるいは 不 を入れた (183) の変種は 次の (187) になる 110

113 (187a) 张三 打 得 死 李四 zhāngsān dā de sǐ lǐsì 張三 打つ 前置詞 死ぬ 李四 張三が李四を打殺すことはあり得る ( 張三は李四を打殺す ) (187b) 张三 打 不 死 李四 zhāngsān dā bù sǐ lǐsì 張三 打つ 否定 死ぬ 李四 張三が李四を打殺すことはあり得ない ( 張三は李四を打殺さない ) 動作主 対象 型に属する非典型的な VR 構造の統語解析結果を以下の (188) に示す (188a) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (VB 打 / 打つ ) (PP-LOW (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (VB 死 / 死ぬ )))) (NP-OB1 (NPR 李四 / 李四 )) (PU )) 111

114 (188b) (IP-MAT (NP-SBJ (NPR 张三 / 張三 )) (VB 打 / 打つ ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (VB 死 / 死ぬ ))) (NP-OB1 (NPR 李四 / 李四 )) (PU )) (188a) では P 得 が CP-ADV を取って PP を投射するが PP も CP-ADV と同じように修飾句であるため それと NP-OB1 とのスコープ階層関係は文の元々の語順に従う すると NP-OB1 は PP より低い階層に立ち それを制御することが不可能になってしまう 従って PP に-LOW を付け加えることによって NP-OB1 とのスコープ階層関係を調整する必要がある (188) を入力として 主文目的語と補文主語とが同一指示的に関係づけられる (189) が得られる (189a) e1 e2 s3 ( Fact(s3, 死 (e1, 李四 )) 打 (e2, 张三, 李四 ) 得 (e2) = s3) (189b) e1 ( e2 死 (e2, 李四 ) 打 (e1, 张三, 李四 )) 動作主 道具 型 動作主 道具 型は 表層構造が 動作主 対象 型と全く同じように見えるが 文 112

115 末に来る名詞句は 第一述語 V に対して 動作を受ける側 ( 対象 ) ではなく それを行う ための道具の意味役割を持つ また 動作主 対象 型と違って 第一述語は他動詞の他 に 非能格動詞の可能性もある (190), (191) がそれぞれ非能格動詞と他動詞の例である (190) 她 哭 湿 餐巾纸 了 tā kū shī cānjīnzhǐ le 彼女 泣く ぬる ティッシュ 文末助詞 彼女は ( ティッシュを使って ) 泣いて ティッシュを濡らした (191) 他们 吃 穷 张三 了 tāmen chī qióng zhāngsān le 彼ら 食べる 貧乏だ 張三 文末助詞 彼らは ( 張三のお金で ) 食べて 張三を貧乏にさせた 通常の中国語の文では 動作の方法 手段を示す部分は (192), (193) のように 動詞 用 などを伴う従属節 ( 第 節を参照のこと ) を通して表す必要があるが 動作主 道 具 型の結果構文の場合 名詞句だけで述語が表す動作を可能にする道具を表示できる (192) 她 用 餐巾纸 哭 tā yòng cānjīnzhǐ kū 彼女 使う ティッシュ 泣く 彼女はティッシュを使って泣く 113

116 (193) 他们 用 张三 ( 的 钱 ) 吃 tāmen yòng zhāngsān de qián chī 彼ら 使う 張三 格助詞 お金 食べる 彼らは張三のお金を使って食べる その代りに 第二述語 R の追加により 道具が第一述語 V によって与えられた影響の結 果まで言及する必要がある (190), (191) の統語構造は次の (194), (195) に示す通りである (194) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (PRO 她 / 彼女 )) (VB 哭 / 泣く ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (ADJ 湿 / 濡れる ))) (NP-INS (N 餐巾纸 / ティッシュ ))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) (195) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (PRO 他们 / 彼ら )) (VB 吃 / 食べる ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (ADJ 穷 / 貧乏だ ))) (NP-INS (NPR 张三 / 張三 ))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) 第二名詞句に機能タグ-INS を付けて それが道具格であることを明示している さらに NP-INS は NP-OB1 と同様に 修飾句のカテゴリーに属するため CP-ADV を制御できるように CP-ADV に-LOW を付け加えてそれと NP-INS とのスコープ階層関係を調整してある 意味処理により (190), (191) に関する述語論理式 (196), (197) を得ることが出来る 114

117 (196) x4 x1 e2 e3 ( x4 = 她 餐巾纸 (x1) 湿 (e2, x1) 哭 (e3, x4) instr(e3) = x1) (197) x3 e1 e2 ( x3 = 他们 穷 (e1, 张三 ) 吃 (e2, x3) instr(e2) = 张三 ) 餐巾纸 张三 がそれぞれ 哭 吃 の方法 手段であると同時に 湿 穷 の主語項でもあるということが分かる 一方 (190), (191) の変種である非典型的な VR 構文は 以下の (198), (199) のようになる (198a) 她 哭 得 湿 餐巾纸 tā kū de shī cānjīnzhǐ 彼女 泣く 前置詞 ぬる ティッシュ 彼女が ( ティッシュを使って ) 泣いてティッシュを濡らすことはあり得る ( 彼女は ( ティッシュを使って ) 泣いて ティッシュを濡らす ) (198b) 她 哭 不 湿 餐巾纸 tā kū bu shī cānjīnzhǐ 彼女 泣く 否定 ぬる ティッシュ 彼女が ( ティッシュを使って ) 泣いてティッシュを濡らすことはあり得ない ( 彼女は ( ティッシュを使って ) 泣いて ティッシュを濡らさない ) 115

118 (199a) 他们 吃 得 穷 张三 tāmen chī de qióng zhāngsān 彼ら 食べる 前置詞 貧乏だ 張三 彼らが ( 張三のお金で ) 食べて張三を貧乏にさせることはあり得る ( 彼らは ( 張三のお金で ) 食べて 張三を貧乏にさせる ) (199b) 他们 吃 不 穷 张三 tāmen chī bu qióng zhāngsān 彼ら 食べる 否定 貧乏だ 張三 彼らが ( 張三のお金で ) 食べて張三を貧乏にさせることはあり得ない ( 彼らは ( 張三のお金で ) 食べて 張三を貧乏にさせない ) 動作主 道具 型に属する典型的な VR 構造を参考にして (198), (199) の統語解析と して それぞれ以下の (200), (201) を付与する (200a) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 她 / 彼女 )) (VB 哭 / 泣く ) (PP-LOW (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (ADJ 湿 / 濡れる )))) (NP-INS (N 餐巾纸 / ティッシュ )) (PU )) 116

119 (200b) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 她 / 彼女 )) (VB 哭 / 泣く ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (ADJ 湿 / 濡れる ))) (NP-INS (N 餐巾纸 / ティッシュ )) (PU )) (201a) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 他们 / 彼ら )) (VB 吃 / 食べる ) (PP-LOW (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (ADJ 穷 / 貧乏だ )))) (NP-INS (NPR 张三 / 張三 )) (PU )) (201b) (IP-MAT (NP-SBJ (PRO 他们 / 彼ら )) (VB 吃 / 食べる ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (ADJ 穷 / 貧乏だ ))) (NP-INS (NPR 张三 / 張三 )) (PU )) 以上の統語解析結果を意味処理システムに入力すると (198), (199) に相当する述語論理 式 (202), (203) が得られる 117

120 (202a) x4 x1 e2 e3 s5 ( x4 = 她 餐巾纸 (x1) Fact(s5, 湿 (e2, x1)) 哭 (e3, x4) instr(e3) = x1 得 (e3) = s5) (202b) x3 x1 e2 ( x3 = 她 餐巾纸 (x1) e4 湿 (e4, x1) 哭 (e2, x3) instr(e2) = x1) (203a) x3 e1 e2 s4 ( x3 = 他们 Fact(s4, 穷 (e1, 张三 )) 吃 (e2, x3) instr(e2) = 张三 得 (e2) = s4) (203b) x2 e1 ( x2 = 他们 e3 穷 (e3, 张三 ) 吃 (e1, x2) instr(e1) = 张三 ) 4.5 被動作主型 118

121 このタイプの中国語の結果構文では 文頭に現れる名詞句は 第一述語 V の被動作主である さらに 文末に第二の名詞句が来る場合 常に第二述語 R および第一述語 V の動作主の役割を果たす 本研究の分類法では 被動作主型は 二つの下位カテゴリーを持つ 第一述語 V は動作主および対象 ( 被動作主 ) の両方が取れる二項述語に限られるため 他動詞だけが適切である 被動作主 型 (204) は 被動作主 型の一例である (204) 暖瓶 踢 倒 了 nuǎnpíng tī dǎo le 魔法瓶 蹴る 倒れる 文末助詞 蹴って魔法瓶が倒れた (204) は普通の能動文のように見えるが 実はそのヘッドである動詞 踢 は 受身の意 味で使われている ( 形態上に何の標識がないにもかかわらず ) この点 踢 の前に受身 のマーカーである 被 を付け加えても 文 (205) は依然として文法的である (205) 暖瓶 被 踢 倒 了 nuǎnpíng bèi tī dǎo le 魔法瓶 受身マーカー 蹴る 倒れる 文末助詞 蹴られて魔法瓶が倒れた 119

122 しかし (204) と (205) には情報伝達上の違いがある 結果構文の (204) は 動作がもたらした結果を強調するのに対して 受身構文である (205) は被動作主が誰あるいは何かによって転倒されたという受動の意味が強い とはいうものの 第 3.6 節で論じたように このような文脈や話者の知識ベースなどを必要とする文レベルを超えた情報へのアクセスを形式的に行うことは困難である そこで 本研究では 動作主 型の結果構文に受動文と類似する統語構造を付与する (204) の統語解析は次の (206) の通りである (206) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (N 暖瓶 / 魔法瓶 )) (VAN 踢 / 蹴る ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (VB 倒 / 倒れる )))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) 一般の能動動詞の語彙的ラベル VB とは異なり 受動動詞は VAN というラベルを持つ これを手掛かりとして 意味処理システムは 能動文と受動文の識別ができるようになる また データの標準性を保つために 動作主 型と同じように CP-ADV に LOW を付与した (206) を入力として (204) に関する述語論理式 (207) が得られる (207) x1 e2 e3 ( 暖瓶 (x1) 倒 (e2, x1) 踢 (e3, _, x1)) (207) を考察すると 第一述語 踢 に関する述語論式では x1 の 暖瓶 が arg1( 直接目的語 ) の位置に入っていて しかも arg0 のところが空白のままであるということが分かる 即ち 統語解析の段階において 暖瓶 に主語を示す機能タグ -SBJ を与えたとしても 意味処理の段階で システムは これが受動文であると判断したため 主語 目的語などの文法関係を動作主 対象 ( 被動作主 ) などの意味関係に当てはめる時に 自動的に調整した ( 主語 被動作主 目的語 動作主 ) のである 一方 VR の間に 得 あるいは 不 を入れて形成したこの下位カテゴリーの非典型 120

123 的な VR 構造の文は次の (208) になる (208a) 暖瓶 踢 得 倒 nuǎnpíng tī de dǎo 魔法瓶 蹴る 前置詞 倒れる 蹴って魔法瓶が倒れることはあり得る ( 蹴って魔法瓶が倒れる ) (208b) 暖瓶 踢 不 倒 nuǎnpíng tī bu dǎo 魔法瓶 蹴る 否定 倒れる 蹴って魔法瓶が倒れることはあり得ない ( 蹴って魔法瓶が倒れない ) (206) を参考にして (208) の統語解析を以下の (209) に示す (209a) (IP-MAT (NP-SBJ (N 暖瓶 / 魔法瓶 )) (VAN 踢 / 蹴る ) (PP (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (VB 倒 / 倒れる )))) (PU )) 121

124 (209b) (IP-MAT (NP-SBJ (N 暖瓶 / 魔法瓶 )) (VAN 踢 / 蹴る ) (CP-ADV (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (VB 倒 / 倒れる ))) (PU )) 以上の統語解析にもとづき 意味処理により この下位カテゴリーに属する非典型的な VR 構造の述語論理式 (208) を得ることが出来る (210a) x1 e2 e3 s4 ( 暖瓶 (x1) Fact(s4, 倒 (e2, x1)) 踢 (e3, _, x1) 得 (e3) = s4) (210b) x1 e2 ( 暖瓶 (x1) e3 倒 (e3, x1) 踢 (e2, _, x1)) 被動作主 動作主 型 (207) が示す通り 被動作主 型では 第一述語 V の実際の動作主が現れていないが 被動作主 動作主 型の場合 文末に来る第二の名詞句が第一述語 V の動作主の意味役割を担う そして 第一述語 V の影響によって引き起こされた動作主の変化の結果は 第二述語 R によって表出される (211) は 被動作主 動作主 型の一例である 122

125 (211) 白酒 喝 醉 张三 了 bǎijiǔ hē zuì zhāngsān le 白酒 飲む 酔う 張三 文末助詞 白酒を飲んで張三が酔った 主要部である 喝 は 被動作主 型の場合と同じように 受身形になっているが 通常の受身構文とは異なり 動作主 张三 が受身のマーカーである 被 によってマークされるのではなく 第二述語 醉 の後ろに来ている (211) の統語構造は次の (212) の通りである (212) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ (N 白酒 / 白酒 )) (VAN 喝 / 飲む ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (VB 醉 / 酔う ))) (NP-LGS (NPR 张三 / 張三 ))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) 文末に現れる NP に-LGS を付与し これが文の論理上の主語であるということを示している NP-LGS も修飾句の一種類なので それが従属節を制御することが出来るように CP-ADV に-LOW を与えて両者のディフォールトのスコープ階層を調整してある (212) を基に (211) の意味処理結果 (213) を得ることが出来る (213) x1 e2 e3 ( 白酒 (x1) 醉 (e2, 张三 ) 喝 (e3, 张三, x1)) 白酒 は統語構造において -SBJ としてマークされているにも関わらず 喝 に関す る述語論理式の直接目的語の位置にあり 喝 の実際の主語は 张三 である しかも 第二述語 醉 の主語と第一述語 喝 の主語とは同一指示関係になっている 123

126 一方 この下位カテゴリーに属する非典型的な VR 構文は次の (214) になる (214a) 白酒 喝 得 醉 张三 bǎijiǔ hē de zuì zhāngsān 白酒 飲む 前置詞 酔う 張三 白酒を飲んで張三が酔うことはあり得る ( 白酒を飲んで張三が酔う ) (214b) 白酒 喝 不 醉 张三 bǎijiǔ hē bu zuì zhāngsān 白酒 飲む 否定 酔う 張三 白酒を飲んで張三が酔うことはあり得ない ( 拍手を飲んで張三が酔わない ) その統語解析および意味処理の結果をそれぞれ以下の (215), (216) に示す (215a) (IP-MAT (NP-SBJ (N 白酒 / 白酒 )) (VAN 喝 / 飲む ) (PP-LOW (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (VB 醉 / 酔う )))) (NP-LGS (NPR 张三 / 張三 )) (PU )) 124

127 (215b) (IP-MAT (NP-SBJ (N 白酒 / 白酒 )) (VAN 喝 / 飲む ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (VB 醉 / 酔う ))) (NP-LGS (NPR 张三 / 張三 )) (PU )) (216a) x1 e2 e3 s4 ( 白酒 (x1) Fact(s4, 醉 (e2, 张三 )) 喝 (e3, 张三, x1) 得 (e3) = s4) (216b) x1 e2 ( 白酒 (x1) e3 醉 (e3, 张三 ) 喝 (e2, 张三, x1)) 4.6 道具型 このタイプの中国語の結果構文では 文頭の名詞句は 第一述語 V の道具になる そして 文末に第二の名詞句が現れる場合 それが常に第二述語 R の動作主および第一述語 V の対象の意味役割を担う 本研究の分類法では 道具型は 被動作主型と同様に二つの下位カテゴリーを持つ その際 非意識的に道具を使ってある行為を行うことは考えにくいので 第一述語 V は 意識的に行うことの出来る行為を表す他動詞および非能格動詞のほうが相応しい 125

128 4.6.1 道具 型 (217), (218) は 道具 型の用例である 第一述語 V はそれぞれ他動詞および非能格動 詞になっている (217) (= (139)) 刀 砍 钝 了 dāo kǎn dùn le 刀 切る 鈍い 文末助詞 切って刀が鈍くなった (218) 鞋 跑 坏 了 xié pǎo huài le 靴 走る 壊れる 文末助詞 走って靴が壊れた 本研究のアノテーション方式では 道具を述語の主語と見なさない そのため (217), (218) において 第一述語 V の主語は明示的に表示されず しかもそれと同一指示の名詞句も文中に存在しないので 統語解析を行う際に 空範畴を表すゼロ代名詞 pro のアノテーションが必要になる (219), (220) が以上の両文の統語解析結果である (219) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 刀 / 刀 )) (VB 砍 / 切る ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (ADJ 钝 / 鈍い )))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) 126

129 (220) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 鞋 / 靴 )) (VB 跑 / 走る ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (ADJ 坏 / 壊れる )))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) 道具格の NP に機能タグ -INS を付与した また 動作主 型および 被動作主 型と同 じように データの標準性を保つために CP-ADV に -LOW を付け加えた 以上の統語解 析結果を基に意味処理を行い (217), (218) の述語論理式 (221), (222) が得られる (221) x4 x1 e2 e3 ( x4 = pro 刀 (x1) 钝 (e2, x1) 砍 (e3, x4) instr(e3) = x1) (222) x4 x1 e2 e3 ( x4 = pro 鞋 (x1) 坏 (e2, x1) 跑 (e3, x4) instr(e3) = x1) 個体変項 (individual variable) x1 は 第二述語 钝 および 坏 を述語定項 (predicate constants) とする e2 の主語の位置にあり しかも instr によって e3 にリンクされている さらに e3 の主語は x4 の pro になる 一方 VR の間に 得 あるいは 不 を挿入すると (217), (218) がそれぞれ以下の (223), (224) のようになる 127

130 (223a) 刀 砍 得 钝 dāo kǎn de dùn 刀 切る 前置詞 鈍い 切って刀が鈍くなることはあり得る ( 切って刀が鈍くなる ) (223b) 刀 砍 不 钝 dāo kǎn bu dùn 刀 切る 否定 鈍い 切って刀が鈍くなることはあり得ない ( 切って刀が鈍くならない ) (224a) 鞋 跑 得 坏 xié pǎo de huài 靴 走る 前置詞 壊れる 走って靴が壊れることはあり得る ( 走って靴が壊れる ) (224b) 鞋 跑 不 坏 xié pǎo bu huài 靴 走る 否定 壊れる 走って靴が壊れることはあり得ない ( 走って靴が壊れない ) (219), (220) を参考にして (223), (224) の統語解析を以下の (225), (226) に示す 128

131 (225a) (IP-MAT (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 刀 / 刀 )) (VB 砍 / 切る ) (PP (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (ADJ 钝 / 鈍い )))) (PU )) (225b) (IP-MAT (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 刀 / 刀 )) (VB 砍 / 切る ) (CP-ADV (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (ADJ 钝 / 鈍い ))) (PU )) (226a) (IP-MAT (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 鞋 / 靴 )) (VB 跑 / 走る ) (PP (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (ADJ 坏 / 壊れる )))) (PU )) 129

132 (226b) (IP-MAT (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 鞋 / 靴 )) (VB 跑 / 走る ) (CP-ADV (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (ADJ 坏 / 壊れる ))) (PU )) (223), (224) の意味処理の結果を以下の (227), (228) に示す (227a) x4 x1 e2 e3 s5 ( x4 = pro 刀 (x1) Fact(s5, 钝 (e2, x1)) 砍 (e3, x4) instr(e3) = x1 得 (e3) = s5) (227b) x3 x1 e2 ( x3 = pro 刀 (x1) e4 钝 (e4, x1) 砍 (e2, x3) instr(e2) = x1) (228a) x4 x1 e2 e3 s5 ( x4 = pro 鞋 (x1) Fact(s5, 坏 (e2, x1)) 跑 (e3, x4) instr(e3) = x1 得 (e3) = s5) 130

133 (228b) x3 x1 e2 ( x3 = pro 鞋 (x1) e4 坏 (e4, x1) 跑 (e2, x3) instr(e2) = x1) 道具 対象 型 文末にもう一つの名詞句が来る場合 道具 型とは異なり 第二述語 R が表す動作の 結果は 文頭の名詞句のものではなく 文末に現れる名詞句のものになる (229) が 道 具 対象 型の一例である (229) 大炮 轰 开 城门 了 dàpào hōng kāi chéngmén le 大砲 爆撃する 開く 城門 文末助詞 大砲で城門を爆撃して 城門が開いた 道具 対象 型では 第一述語 V の動作主は依然として不明のままであるが その対 象の役割は文末の名詞句が担当することになる (229) の統語構造を次の (230) に示す 131

134 (230) (CP-THT (IP-SUB (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 大炮 / 大砲 )) (VB 轰 / 爆撃する ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (VB 开 / 開く ))) (NP-OB1 (N 城门 / 城門 ))) (SP 了 / 文末助詞 ) (PU )) CP-ADV に-LOW を付けたため それが普通の修飾句 (NP-INS と NP-OB1) よりも下のスコープの階層に移動する そして NP-INS と NP-OB1 は同じスコープの階層に属する要素なので そのスコープの階層関係が自然言語の語順で決まることになる 従って CP-ADV とより近い距離を保つ項は NP-OB1 となり CP-ADV に与えておいたディフォールトの解釈によると NP-OB1 が CP-ADV( 実はそれが直接支配する IP-SUB) が直接支配する主語項を制御することになる 意味処理の中間レベルの結果は次の (231) の通りになる 132

135 (231) ( fn fh => ( fn lc => ( ( pro ["c"] fh ["entity", "group"] ( "entity", "entity") "pro") "arg0" ( ( some lc fh "entity" ( nn lc " 大炮 ")) "instr" ( ( some lc fh "entity" ( nn lc " 城门 ")) "arg1" ( ( coord fh " " ( clause lc nil ( ( fn lc => ( verb lc "event" [] " 开 ")) ["arg0", "arg1", "h"]))) ( verb lc "event" ["arg0", "instr", "arg1"] " 轰 ")))))) ["arg1", "instr", "arg0", "h"]) ["entity", "event"] システムの評価によって 処理の最終結果は以下の (232) に示す 133

136 (232) x5 x1 x2 e3 e4 ( x5 = pro 大炮 (x2) 城门 (x1) 开 (e3, x1) 轰 (e4, x5, x1) instr(e4) = x2) e3 と e4 の arg0 が同じ個体変項 x1 であり 個体変項 x2 が instr によって e4 に掛っている そして 道具 型と同様に 第一述語 轰 を述語定項とする e4 では その主語が pro になっている 一方 VR の間に 得 あるいは 不 を入れて形成したこの下位カテゴリーに属する非典型的な VR 構造の文は次の (233) になる (233a) 大炮 轰 得 开 城门 dàpào hōng de kāi chéngmén 大砲 爆撃する 前置詞 開く 城門 大砲で城門を爆撃して城門が開くようなことはあり得る ( 大砲で城門を爆撃して 城門が開く ) (233b) 大炮 轰 不 开 城门 dàpào hōng bu kāi chéngmén 大砲 爆撃する 否定 開く 城門 大砲で城門を爆撃して城門が開くようなことはあり得ない ( 大砲で城門を爆撃して 城門が開かない ) その統語解析および意味処理の結果をそれぞれ以下の (234), (235) に示す 134

137 (234a) (IP-MAT (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 大炮 / 大砲 )) (VB 轰 / 爆撃する ) (PP-LOW (P 得 / 前置詞 ) (CP-ADV (IP-SUB (VB 开 / 開く )))) (NP-OB1 (N 城门 / 城門 )) (PU )) (234b) (IP-MAT (NP-SBJ *pro*) (NP-INS (N 大炮 / 大砲 )) (VB 轰 / 爆撃する ) (CP-ADV-LOW (IP-SUB (NEG 不 / 否定 ) (VB 开 / 開く ))) (NP-OB1 (N 城门 / 城門 )) (PU )) (235a) x5 x1 x2 e3 e4 s6 ( x5 = pro 大炮 (x2) 城门 (x1) Fact(s6, 开 (e3, x1)) 轰 (e4, x5, x1) instr(e4) = x2 得 (e4) = s6) 135

138 (235b) x4 x1 x2 e3 ( x4 = pro 大炮 (x2) 城门 (x1) e5 开 (e5, x1) 轰 (e3, x4, x1) instr(e3) = x2) 4.7 ツリーの変換 以上 中国語の結果構文を従属節を含む複文として扱ってきた 結果構文に含まれる意味情報を形式化する際に 述語 項構造の再構築や要素間の同一指示関係の同定など一連の複雑な処理を行うためには 統語レベルの解析が不可欠である 一方 現代中国語には既に語彙化を遂げたもの ( 扩大 など ) も存在するように V と R の独立性が比較的に低く VR が一つの複合体のように働いていることも考えられる また 第 節で論じたように 実用上のこと ( 例えば 特定の言語項目の検索など ) を考えると V と R を一つのまとまりにすることは ある意味で便利でもある このように コーパスの利用目的の相違によって 結果構文 ( 本研究における典型的な VR 構造 ) に対する取り扱い方も変わってくる 語彙レベルにおける形成かそれとも統語レベルにおける形成か 二つの選択肢は排他的であり 一つのツリーバンクにおいて両方の立場から解析作業を進めることは無論困難であるが コーパスの汎用性を高めるためにはそれらを両立させる方法を考える必要がある 結果構文の用例 (137) を具体例として 処理の手順を振り返って確認すると 図 4-1 に示す通りになる 通常 文の論理意味表示を出力するために 文の統語解析が意味処理システムの入力として使われるが それと同時に それ自体がツリーバンクの中に含まれるツリーにもなる 結果構文の場合も同様にして ⅲを得るためにはⅱが不可欠であるが ⅱ をそのまま統語解析の最終結果としてツリーバンクの中に入れると VR 構造が普通の動 136

139 詞句よりも緊密な複合体であるという統辞情報が失われてしまう すると VR 構造まで 直接導く手掛かりが無くなり VR 構造を検索したい場合 複雑な検索パターンの作成を 余儀なくされる 図 4-1 元の処理の流れ このような矛盾を解決するために 本研究は 標準的なツリー正規化処理 ( ツリーに対 する後始末 ) からヒントを得て 処理のステップを増やすことを考えた 図 4-2 新たな処理の流れ 図 4-2 が示すように 文の統語解析と文の論理意味表示の間に ツリーの変換という新 137

140 たな処理のステップを追加した ⅱとⅲは ⅰに関する二通りの統語解析結果である ⅱ では VR 構造が語彙レベルにおいて形成するという立場から V と R を一つの複合動詞として VRD (verb resultative compound) という品詞ラベルを与えた 一方 ⅲでは 従来と同じように V と R を二つの独立した要素として統語レベルにおいてその解析を行った ツリーバンクの中に収納されるデータとしてはⅱが使用されるが 文の述語論理式を得るための統語情報としてはⅱをそのまま使うのではなく ツリーの変換を通してⅱをⅲに変えてから意味処理システムに入力することになる これで 一つのコーパスで多様な使用目的に対応できるようになり データの汎用性を改善することが出来る ただし 以上の発想が実用化できる段階に辿り着くまでは もう一つの問題に直面しなくてはならない それは ⅱからⅲまでの自動化である ツリーの変換というステップは 決して結果構文だけの話ではない 実は それは 標準的なツリー正規化処理と似たようなもので 空範畴を示す要素の自動的追加など アノテーションの効率を向上させるために 統語 意味情報付きのコーパスを構築する際に頻繁に使われている そのステップの一般化と効率化を保つために 結果構文に対しても ⅱ( 語彙レベルにおける形成 ) から ⅲ( 統語レベルにおける形成 ) までの変換を自動的に行うための方法を確立する必要がある 以下 ツリーの変換ツールを簡単に紹介した上で その結果構文への応用について詳しく検討していく ツリーの変換は Levy et al. (2006) が開発した tsurgeon ツールを活用したスクリプトによって行われる 例えば (236) は名詞句の並列関係を表すペンツリーバンク式の部分統語木である (236) これを (239) のようなペン通時コーパス式のツリーに変換したい場合 次の (237) のような tsurgeon スクリプトを書けばよい 138

141 (237) 1 NP < (NP=x $+ CONJ=y) 2 adjoinf x move y $- x (237) に示す tsurgeon スクリプトは 1オリジナル木構造の描写及び2 実行するアクションという二つの部分からなっている 1は処理したい部分木の検索パターンである 1を通して NP および CONJ を直接支配していて しかも支配される NP は支配される CONJ より先行する ( 即ち NP は CONJ の左側にある ) ような NP( 即ち (234)) の特定が出来る 2は実行するアクションの部分である 二つのアクション ( 行ごとに一つ ) が (237) の中に含まれている まず x( 即ち 1における NP) を直接支配する親の CONJP を構築する すると (236) が次の (238) のように変わる (238) それから y( 即ち 1 における CONJ) を x の右側に移動する すると (238) が更に 以下の (239) のように変化する (239) (239) がペン通時コーパス式の名詞句の並列構造を表す部分木になるので これでツリー の変換が完了した このように tsurgeon スクリプトは構造が単純なわりに強力なパワーを持っている こ 139

142 れをうまく使えば ツリー変換のほとんどの情況に対応できる 次に tsurgeon スクリプトを用いて 結果構文に関するツリーの変換を考察する ツリーの変換を行う前に まず確認しておくべきことがある それは 変換しようとするツリーは データの標準性が確保できるかどうかということである 結果構文 ( 典型的な VR 構造 ) の場合 本研究は それに計七個の下位カテゴリー ( 第 4.3 節を参照のこと ) を与えて 統語解析を行ってきた まずは 各下位カテゴリーに一例ずつ捉まえてその木構造を確認しよう (240) (= (169)) : 動作主 型 (241) (= (184)) : 動作主 対象 型 140

143 (242) (= (194)) : 動作主 道具 型 (243) (= (206)) : 被動作主 型 (244) (= (212)) : 被動作主 動作主 型 141

144 (245) (= (219)) : 道具 型 (246) (= (230)) : 道具 対象 型 (240) ~ (246) は それぞれ七つの下位カテゴリーに属する典型的 VR 構造の用例に関する統語構造である 各例は見た目が別々であるが 第一述語 V と第二述語 R に関する部分 ( 点線によって囲まれた領域 ) に注目すると データの標準性を見つけることが出来る 即ち 第一述語と第二述語の持つ品詞ラベルの組み合わせパターン ( VB + VB VB + ADJ VAN + VB など ) が変化しても 第一述語 V がいつも主節の構成要素になるのに対して 第二述語 R が常に従属節 CP-ADV-LOW を投射する こういうデータの標準性は (247) のように一般化できる (XP は任意の句を意味する ) (247) 142

145 すると VR 構造を一つの複合動詞として取り扱う解析法を一般化した (248) から (247) に 変換するための tsurgeon スクリプトを作成すればよい (248) (249) VRD=x <1 =y <-1 move y $+ x adjoinf x relabel x IP-SUB (249) は (248) を (247) に変換するための一通りのやり方である 全ての tsurgeon スクリプトと同じように (249) は 二つの部分からなっている しかも (247) に至るまで 三つの実行アクションが必要である 木構造の変換プロセスを次の (250) に示す (tsurgeon 表現の詳細については Levy et al を参照のこと ) (250) これで ⅱ から ⅲ までのプロセスの自動化が可能になり アノテーション作業に余計な 負担をかけずに データの汎用性の向上が実現できる 143

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