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1 第 6 編ぶり

2 目次 航空輸出に係る問題点と課題 6-3 Ⅰ. 輸出の動向 輸出品目の概要 1) ぶりの国内生産量 2) ぶり ( フィレ ) の輸送形態別輸出量 3) ぶり ( フィレ ) の輸出先国 地域別税関別輸出実績 2. 輸出者と生産者の関係 1) 輸出の経緯と輸出者とのかかわり 2) 輸出の商流と物流サプライチェーン 3) 国内出荷との違い 工夫 4) 輸出への期待と展望 3. 輸出の際の取引条件 Ⅱ. 輸出する生鮮農林水産物の搭載形態 調達方法と鮮度 1) 調達基準と鮮度 2) 輸入国側のニーズ反映方法 3) 生産者への輸出意向の確認と意思伝達方法 2. 荷姿と品質管理手法 1) 包装容器とコスト 2) 保冷剤と保冷能力 3) 出荷予冷等品質管理の創意工夫 3. 混載 1) 取りまとめ主体と混載の経緯 2) 需給 集荷日時や積載率等の調整方法 Ⅲ. 水産物における検疫等の状況 空港検査の状況 2. 水産物の検疫にかかるその他条件 現状 3. 検疫のコストと時間 4. HACCP 認証の取得状況 6-1

3 Ⅳ. 温度管理の状況 求められる温度帯 鮮度管理 2. 保冷施設の設置 配置状況と課題 1) 空港までの保冷環境 2) 輸出元空港のインフラ状況 3) 輸出先空港のインフラ状況 3. クールチェーン全体でのボトルネックと課題 4. クールチェーン確保のための運用手法 6-2

4 航空輸出に係る問題点と課題 航空輸出に係る問題点 課題 今後に向けた対策を調査対象者の立場別に整理し 以下のとおりまとめた これまで輸出に取り組んだことのない理由 生鮮での航空輸出は 鮮度維持のための対応が困難である 過去に航空輸出に取り組んだことのある企業等が現在航空輸出を行っていない理由 継続的な輸出に見合う取引量が得られなかった 価格競争力が激化し 十分な利益を確保できなくなった 輸出先国 地域に鮮魚を捌ける人材がおらず 小売店で消費者が購入しやすいような切り身として販売されなかったこともあり 需要の掘り起こしにつながらなかった 現在航空輸出に取り組んでいる企業等が直面している航空輸出特有の問題点 航空運賃が高い航空輸出に係る問題点と課題 生鮮品の輸送を断るフォワーダー ( 混載業者 ) が存在する 輸出先空港によっては通関体制に合わせてフライトを調整する必要性がある航空輸出量の拡大に向けた今後の課題 生鮮品を取り扱うフォワーダーを増やすための啓発活動を行う 輸出先空港での通関体制とフライトを事前に確認する 6-3

5 Ⅰ. 輸出の動向 1. 輸出品目の概要 1) ぶりの国内生産量 2008 年における養殖ぶりの国内生産量は 図表 6-1-1のとおりであり 年間約 16 万トンである 養殖ぶりの主な産地は鹿児島県 愛媛県 大分県等であり 生産量はほぼ九州と四国で占められている ( 図表 6-1-2) 図表 国内ぶり類養殖の収穫量 ( 単位 :100t) 年次 収穫量 , , , ,579 ( 出典 : 農林水産省 平成 19 年漁業 養殖業生産統計年報 ) 図表 都道府県別国内ぶり ( 養殖 ) の収穫量 (2007 年 ) ( 単位 :100t) 都道府県 収穫量 鹿児島 591 愛媛 267 大分 166 長崎 107 宮崎 95 熊本 86 香川 85 徳島 43 その他 139 合計 1,579 ( 出典 : 農林水産省 平成 19 年漁業 養殖業生産統計年報 ) 6-4

6 2) ぶり ( フィレ ) の輸送形態別輸出量 2008 年におけるぶり ( フィレ ) の輸出量は約 560 トンである 航空輸出が輸出に占める割合は約 6 割強であり 輸出手段として重要な役割を担っている ぶりの航空輸出の動向について 貿易統計ではフィレのみしか独立して記載されていない ぶり ( フィレ ) の実績は 2008 年にコードが新設された品目であり 過去の推移を図るためのデータは貿易統計からは抽出できない なお フィレ とは 魚を 3 枚おろしにし 背骨を外した状態である この他 輸出されている加工形態としては 頭とえら 内臓を取り除いた ドレス や一本そのままの状態の ラウンド の形態がある 生食用の冷蔵ぶりの鮮度保持期間は約 10 日程度といわれている そのため 10 日以内に輸出先へ届き ぶりを捌くことができるという条件が整えば 海上輸出は可能である しかし 海上輸出は航空輸出に比べて輸出先へ届けるまでに日数がかかることを理由に 輸出者の大半は航空輸出を利用している状況にある ぶりの航空輸出は養殖ぶりが大半である その要因として 天然ぶりは漁獲時期が決まっており 時期が外れると品物が無く 注文を受けても輸出できない場合が発生するために安定供給に無理がある点が挙げられる また 天然ぶりは価格変動が激しいため 取り扱いが難しいという要因も挙げられる 一方で養殖ぶりは時期による供給変動が見られず 価格が安定しており 天然ぶりと比較して取り扱いが容易であるため 航空輸出の大半は養殖ぶりとなっている しかし 天然ぶりも輸出がまったく無いわけではなく 漁獲時期に養殖ぶりとの価格差が少ない場合には 顧客の要望に基づき輸出されている なお 養殖ぶりは日本産が圧倒的な数量を占めており 脂の乗りや鮮度 食感が海外から高い評価を受けている 最近では韓国や中国南方海域で漁獲されている天然ぶりが低価格で多少流通されているほか 豪州産のヒラマサが脂の乗り等の面でぶりに似ており 海外市場において日本産ぶりと競合している 3) ぶり ( フィレ ) の輸出先国 地域別税関別輸出実績 2008 年におけるぶり ( フィレ ) の輸出先国 地域別税関別輸出実績を 図表 6-1-3にまとめた ぶり ( フィレ ) の輸出は主に米国 カナダの北米が上位を占めているほか 続いて香港や台湾をはじめとしたアジア地域 英国 スペインなどの欧州向けが中心となっている そのほかにはアラブ首長国連邦での実績が僅少ながら見られる 南米や豪州 ロシアなどへの輸出実績は見られない なお 九州地方での養殖ぶりの生産量が多いこともあって 福岡空港からの輸出量が最も多い そのほかに 成田空港からの輸出実績も見られる 6-5

7 図表 ぶり ( フィレ ) の輸出先国 地域別税関別輸出実績 (2008 年 ) ( 出典 : 財務省 貿易統計 をもとに富士経済が作成 ) 2. 輸出者と生産者の関係 1) 輸出の経緯と輸出者とのかかわり各社 輸出相手国との取引を行ったきっかけは様々であるが 輸出を行うには現地の信頼できるインポーターとの人脈をいかに築き上げることができるかが重要となっている また 米国向け輸出等で HACCP などの認証制度を得るために 行政などとフェアを共催する等の支援を受けたことで輸出を行うことに成功した者も見られた 6-6

8 2) 輸出の商流と物流サプライチェーン輸出に係るサプライチェーンとして 九州から米国向けに輸出を行う場合の商流を図表 6-1-4に 物流を図表 6-1-5にまとめた 梱包されたぶりは韓国の仁川空港を経由して米国向けに輸出される 1 日目に福岡空港に輸送する 福岡空港に翌朝に到着した後 福岡空港の税関を通り午前の韓国便で仁川空港へ輸送する その後 仁川空港から米国の空港へ輸送し 米国各地へトラックを使用して主に日本食レストランに届ける 米国の空港からの輸送は 3 日目となり 到着は 3 日目の夕方から場所によっては 4 日後に届くことになる また 近年福岡空港から海外への直行便が減少している中 特に仁川空港は国際ハブ空港として利便性が高いため 米国向け輸出の拠点として利用している 図表 米国向け輸出の商流 日本食レストラン等輸入業者B社(輸出業者)( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 図表 米国向け輸出の物流日本食レストラン等福岡空港(通関)福岡空港内倉庫B社(輸出業者)米国各地配送A社(生産者団体)米国空港仁川空港通関A社(生産者団体)トラック 3 日目夕方 ~4 ~ 日後午前中韓国便午後の米国便午後出発に到着 1 日目 2 日目 3~4 日目 ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 次に ドイツ向け輸出を行っている九州の輸出者を例に挙げる まず 午前中までに蓄冷剤を入れて梱包した後 午後に福岡空港まで運ぶ 翌日に羽田空港まで輸送し 午後成田空港に転送し ドイツ向けに輸出を行う経路を辿っている 6-7

9 図表 ドイツ向け輸出の商流 ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 図表 ドイツ向け輸出の物流 午後出発 1 日目 ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 2 日目 3 日目 ~ A社(生産者団体)日本食レストラン等輸入業者成田空港フランクフルト空港(通関)(ドイツ)日本食レストラン等羽田空港A社(生産者団体)B社(輸出業者)福岡空港(通関)福岡空港(空港内倉庫)B社(輸出業者)午後のドイツ便 3) 国内出荷との違い 工夫 国内出荷との違いについて 取材協力企業各社からは出荷時の梱包とぶりの冷やし込み時間の延長をともに挙げる声が多く聞かれた 梱包を行う際は水漏れを防ぐために厳重にテープを巻くほか 二重包装など ( 企業によって様々 ) で対応している例が見られた また 国内出荷時もぶりを輸送する際には冷やし込みを行うが ( 通常 10 分前後 ) 輸出を行う際には冷やし込みの効果を長く保つために国内出荷時よりも長い時間冷やし込みを行う (1 時間前後 ) などの工夫がみられる 国内出荷との違い 工夫 梱包の工夫 ( 水漏れ対策 温度管理 ) 出荷前の冷やし込み時間の延長 (10 分前後 1 時間前後 ) 6-8

10 4) 輸出への期待と展望生産者団体及び輸出業者等が抱いているぶりの輸出への期待と展望を輸出先別に 図表 にまとめた 図表 輸出先別に見た輸出への期待と展望 輸出先期待と展望輸出戦略で設定された重点国備考 韓国 アジア 中国 特に中国への期待が高い 香港 北米 カナダ米国 日本食レストランを中心に安定したニーズがある EU 英国フランスドイツ 日本食レストランを中心に安定したニーズがある 南米 - - 現状としてはニーズがない アフリカ - - 現状としてはニーズがない その他 - - ロシアやドバイなどの地域に期待 ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 養殖ぶりを航空輸出することは 海上輸送に比べてリードタイムを短縮することができ 高い鮮度を保持したままの食材の提供を技術的に可能にするメリットが生じる 航空輸出による養殖ぶりの調理用途としては日本料理店向けの寿司ネタや刺身向けといった生食が主である そのため 鮮度に関する品質や信頼は非常に重要なポイントとなる そのような中 日本産の食材は品質面で高い信頼を得ており 航空輸出によるコスト高となっても今後も安定した需要があるものと見ている 現在は北米のほか アジア向けや欧州向けの航空輸出が目立っている 特に米国や欧州では食肉離れや健康志向から魚を食べる機会が増えており 養殖ぶりの需要が拡大傾向にある また 中国向けの貿易手続きに関して 2005 年 9 月以降 衛生証明書の発行手続を都道府県等が行っている 中国向け輸出は拡大しており 今後も潜在需要の高さから中国向けの輸出は期待されている さらに ロシア ブラジルやバングラディッシュ エジプト インドネシア イランといった経済成長の拡大が期待される国々に対しての輸出の可能性を検討している輸出業者も見られる しかし 期待の反面 今後の輸出を懸念する意見も挙がってきている 一つには 現在の主要顧客となっている高級日本料理店や日本人向けスーパーなどはニッチ市場にとどまっており 一般市場での需要拡大を図ることは簡単ではない点や 最近の為替相場の乱れにより輸出価格が安定しない点が挙げられている 6-9

11 3. 輸出の際の取引条件香港向けの輸出を例とした価格形成の流れである 物量等によって 最終価格は多少の変動は見られるものの 輸出の際は衛生証明書や空港までの物流費 通関税 航空コストのほか現地の手数料が必要であり 香港での高級量販店での小売販売価格は国内価格の約 5 倍程度となっている ぶりの輸出時における損失の事例としては A 国に輸出した際 A 国の検疫で返品扱いとなり ( 詳細不明 ) 成田空港に引き戻された事例があった 成田空港に引き戻されても転売することができずに破棄することとなったこのケースでは 費用を全て輸出者側が負担することとなった また 荷物の取扱いの粗さについての問題が多い 例えば商品が輸出先国 地域に到着後 発泡スチロールに穴が開いていて商品に傷が付いていたり 商品の引取りをしてもらえないほど 鮮度維持が出来ない状況にまで温まっていたりといった諸問題に直面している 輸出者側としても諸問題をできるだけ減らすように努力しているが どこの時点で問題が発生しているかなど明確にならない事も多く 損害負担についてはフォワーダー 輸入者を含めた話し合いで決められている こうした輸出上の輸送 保管時の問題をいかに減らすかは ビジネスに不可欠なノウハウで 輸出者は常日頃努力しているとのことである 6-10

12 Ⅱ. 輸出する生鮮農林水産物の搭載形態 1. 調達方法と鮮度 1) 調達基準と鮮度ぶりの主な出荷形態は 以下のとおり 3 分類に大別される ぶりの主な出荷形態 ラウンド 一本そのままの状態 ドレス えらと内臓を取り 頭と尾を切り落とした状態 フィレ ドレス を 3 枚におろして背骨をはずした状態 フィレ には背側 腹側に分けたロインも含む ぶりの主要輸出先を米国 欧州 アジアに 3 分類し その嗜好性と仕入形態の特徴を図表 のとお りにまとめた 図表 地域別に好まれているぶりの仕入形態等 輸出先 主な仕入形態 嗜好性 米国 フィレ より脂がのっているもの 欧州 フィレドレス より脂がのっているもの アジア ラウンド 大きいものを好む より脂がのっているもの ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) ぶりの仕入形態は地域によって好む形態が異なる傾向がある 米国ではフィレの要望が多い 寿司や刺身のほかに焼いて食べる傾向があり ステーキ文化や利便性が高いものを好む影響もあってかフィレの形態での仕入を好む傾向にある アジアでは頭を調理することもあって ラウンドの仕入れ要望が強い また 大きさにもこだわる傾向がある 欧州ではアジアと違い頭を調理する傾向が見られないため フィレまたはドレスの形態で仕入れる傾向が見られる そのため 1. 輸出の概要 で説明した貿易統計上ではフィレの実績のみでしかまとめられていないが ラウンドやドレスの実績が加味されれば アジア諸国や欧州の輸入実績が増加する可能性が高いと考える関係者が見られた ただし 当然のことながら 地域別に好まれているぶりの仕入形態 は傾向であって 米国向けはフィレのみを輸出しているというように 輸出形態が絞られているわけではない 2) 輸入国側のニーズ反映方法輸入国側の魚の品質に係る要望としては 脂が乗っていることなどが米国や中国等の国々で高いことが挙げられる 日本の養殖ぶりは脂身が高い点に加えて品質が高い点が認められていることから 海外のニ 6-11

13 ーズが高い傾向にある ただし 海外では 養殖ぶりの飼育管理が行われていることが求められるケースがあるが こうした対応を行っている生産者等は限られており 生産者の多くは 日本国内をターゲットとして飼育管理を行っている このため 今後は海外のニーズに合致した生産体制の構築が課題の一つである 3) 生産者への輸出意向の確認と意思伝達方法輸出者が水産物を仕入れる際 中央卸売市場を介する輸出の場合は 卸売業者に輸出する日の前日ならびに当日に電話 FAX E メールで連絡して仕入れることが一般的である また 生産者 生産者団体が直接輸出する場合は 輸入者からの発注を受けてから輸出する当日までに輸出商品を用意する傾向が見られる 2. 荷姿と品質管理手法 1) 包装容器とコスト 包装容器とコスト 水漏れを防ぐための厳重な包装 保冷剤やかち割り氷を使用 ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 航空輸出をする際の輸出梱包は貨物の形態や性質などの特性を理解して 温度に敏感なもの 水や湿度に影響を受けやすいものなどを十分に理解したうえで 梱包をしなくてはならない また 輸送の間には多くの外的要因が加わることがあり 輸出先での気象の変化や荷役の保管などの諸条件についても可能な限り情報をまとめることが必要である 養殖ぶりの場合 包装容器は国内出荷と同様に発泡スチロール製の容器で梱包されているケースが多い しかし 国内出荷とは違い 輸出向けには水漏れを防ぐために企業ごとに様々な工夫が行われている また 保冷能力を高めるために輸出向けとして保冷剤やかち割り氷を使用した例も見られる そのため こうした国内向けとは違う輸出向けに工夫した梱包を行うことにより 国内出荷で輸送する包装容器コストに比べて輸出向け出荷に使用する容器コスト費用が高くなる傾向がみられる 2) 保冷剤と保冷能力輸出者の多くは鮮度を保つために水産物を入れた発泡スチロール内に保冷剤を入れて輸出しており 輸出先国 地域のフライト時間や天候に応じて 2 前後の鮮度を可能な限り保てるように 使用する保冷剤の大きさや量などを調整している 保冷剤のほかには氷を入れて輸出する場合も見られるものの 航空会社側が水漏れを懸念し 氷を梱包しての輸出を断る場合も稀ではあるが見られる また ドライアイスを梱包して輸出するケースも見られるが ドライアイスは爆発の可能性があるため航空機内では一般貨物ではなく危険物扱いとなりコスト増の材料となるため 一般的に使用は少ない 6-12

14 3) 出荷予冷等品質管理の創意工夫 出荷予冷等品質管理の創意工夫冷やし込み時間の延長 (10~20 分 1 時間程度 ) 出荷前の冷やし込みを国内出荷に比べて長い時間行い 品質管理を行っているところが大半である 通 常国内出荷の際は 10 分から 20 分ほどの冷やし込みを行うが 海外出荷の際には 1 時間ほどかけて冷やし 込みを行っている 3. 混載 1) 取りまとめ主体と混載の経緯生鮮ぶりの輸出においては混載の事例は見受けられない 2) 需給 集荷日時や積載率等の調整方法混載は行われていないため 記述事項はない 6-13

15 Ⅲ. 水産物における検疫等の状況 1. 空港検査の状況空港検査を含む輸出において輸出者が掲げた留意事項を図表 6-3-1にまとめた 空港検査の状況は 例えば米国では輸出業者が航空機の出発の24 時間前にどのような貨物を積むのかという情報を米国税関に送付する必要が見られるが 米国以外の他国では 通常 輸出国における衛生基準への適合や衛生証明書の添付など相手国政府が求める要件に対応すれば 空港到着後数時間後には検査を終了して荷物を受け取ることができる 図表 空港検査の状況 輸出先国 地域 空港検査の状況 米国の場合 日本とは違い米国の祝日の際にはFDAによる輸入許可が降りないため 着日を変更する必要がある また 生鮮真空フィレパックはFDAによる強制捜査の対象となる ( ドレスは検査対象外 ) 米国 米国の輸入通関は申告から許可まで税関コンピューターシステムにより進められ ている 農水産物はバイオテロ法に基づき 貨物の到着前に 貨物情報を食品医薬品局に届けなければならない 輸送業者は航空機の出発の24 時間前にどのような貨物を積むのかという情報を米国税関に送付する必要がある EU 祝祭日や土曜日の生産 出荷の場合 保健所に事前に出張を依頼する必要があり 急なオーダーには対応しづらい 中国向け輸出には毎回衛生証明書が必要なことや 検査結果の有効期限が半年間 中国 と短いことから それらの費用が転嫁され中国での販売価格を押し上げてしまっ ている EU 向けは HACCP 取得及び更新の負担が重い EU 向けは 輸出の都度 当該 EU 都道府県の保健所から生産 出荷の現地 ( 生産工場 ) 立会い ( 費用発生なし ) が 必要である 香港 香港はブリの場合 大腸菌 ビブリオ菌などの細菌検査証 マグロの場合 水銀 検査証が必要で アジ サバ イワシなどの輸出にも衛生面の要求が厳しい ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 6-14

16 2. 水産物の検疫にかかるその他条件 現状輸出先別に見た輸入検疫にかかるその他条件 現状について図表 6-3-2にまとめた ぶりの輸出に際しては 輸出先国 地域における衛生基準への適合や衛生証明書の添付など相手国政府が求める要件に対応しなければならない 図表 輸出先国 地域別に見た輸入検疫にかかるその他条件 現状 1(2009 年 3 月現在 ) 輸出先国 地域 輸入検疫にかかるその他条件 現状 魚類及びその製品については 輸出国の工場や施設が米国の求める基準 (HACCP) に合うものとして登録され また輸出商品 ( 品目 ) も登録されている必要がある 登録業務は輸出者が米国の申請期間に行うのではなく 米国基準に合うかど 米国 うかを輸出国の担当機関 ( 日本の場合は厚生労働省の各県の機関 ) が判定し 認定する 各機関により 合格施設として登録された施設は その登録され た品目を輸出することが出来る 米国での輸入許可は税関と食品医薬品局の双方の許可が必要となる 食品医薬品局は到着した際に書類や輸入者情報をチェックし 必要があると判断された場合には貨物の現物調査やサンプル調査 成分調査を行うことになる 中国国内における通関検疫手続きなどにおいて必要な書類としては 全ての貨物に共通する1 船積み指示書 2インボイス 3パッキングリストに加えて 衛生証明書 原産地証明書の書類を準備する必要性がある 水産食品を製造 加工 処理または保管する施設の登録および中国の水産物の安全基準に適合することを署名する衛生証明書の添付のほか 原産地証明 中国 書が必要である 衛生証明書は 2005 年以前 検査に 1 週間以上要していたため 結果が出る 頃には 鮮魚の価値がなくなり輸出が出来ない状況であった そうした中 2005 年 9 月に中国向け輸出のための制度が改正され輸出のたびに必要とされていた検査が鮮魚などに関しては検査結果が半年間有効となり 結果的に鮮魚の輸出が可能となった ただし 衛生証明書自体は毎回発行が必要である タイ 日本からの輸出手続きで必要なものは輸入前に食品医薬品局 (FDA) および 水産局 (DOF) で取得した許可書 承認書の提出が必要である 6-15

17 図表 輸出先国 地域別に見た輸入検疫にかかるその他条件 現状 2(2009 年 3 月現在 ) 輸出先国 地域 輸入検疫にかかるその他条件 現状 EU 向け輸出においては EU 向け生産工場の許可を都道府県衛生局より受 け HACCP を用いた自主管理を実施する必要がある (EU 向けに製造す EU る品目も登録するので 認可された施設からの許可された品目のみが EU に 輸出が可能である ) また 産品を輸出する際には公的機関発行 ( 厚生労働省所管の保健所等 ) の衛生証明書を取得しなければならない 手続きに必要な添付書類インボイスとパッキングリスト ロシア 契約書と契約書への別添明細書 輸出国の機関による衛生証明書 原産地証明 ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 3. 検疫のコストと時間輸出先別に見た検疫のコストと時間を図表 6-3-3にまとめた ぶりの輸出に際し 検疫に係る料金に加え 検疫の際に必要となる衛生証明書の取得に係る負担が重いという指摘が生産者団体から発せられている 検疫に係る時間に関しては 中国における最初の検疫に係る時間の長さを指摘する声がある 4.HACCP 認証の取得等の状況 HACCP 認証の取得等の状況を図表 6-3-4にまとめた 米国 EU 向けにぶりの輸出を行う際 輸出者は HACCP の認証を取得しなくてはならないが HACCP を取得するために施設の改築等を行う際 億単位の費用がかかるため 容易に輸出に取り組めない状況となっている 6-16

18 図表 HACCP 認証の取得等の状況 企業名 HACCP 認証の取得等の状況 対米国の HACCP を取得するに際し 第三者機関の認定を必要とするケースでは A 社 施設の改築等に係る整備のための費用が必要となる 中小企業によってはそのコス ト負担に耐えられないケースが生じている EU HACCP の認定を受けている場合は 国内向けにおいても徹底した衛生管理を行っているため 顧客から高い信頼を受ける傾向も強い しかし 米国向け輸出に必要な対米 HACCP は 認定取得後に毎年受ける査察が B 社 保健所から年 6 回 厚生労働省地方厚生局から年 2 回となっており 負担になって いる EU 向け輸出に必要な対 EU HACCP は 冷凍庫 加工場のほかに 漁場や漁船の衛生管理まで査察が及ぶ こうした負担が重い割に 欧州の生食用水産物市場の拡大のスピードが遅いことも参入主体の意欲をそぐことにつながっている ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 6-17

19 Ⅳ. 温度管理の状況 1. 求められる温度帯 鮮度管理輸送時の鮮度保持のための理想の保存温度帯は 2 前後である 航空輸送されるぶりは 主に寿司ネタや刺身向けの生食を目的として販売されている そのため 鮮度保持のための温度管理が必要であり 輸送する際には氷や保冷剤を使用している 2. 保冷施設の設置 配置状況と課題 1) 空港までの保冷環境空港まで輸送する際に温度管理を図った保冷車での輸送は可能である 実際は空港までの届け先の距離に応じて 輸出者は保冷車で輸送するか否かを決めているケースも多い 輸出量が少ない 空港までの距離が短いなどの場合は 発泡スチロールに保冷剤を詰めた状況で輸送すれば 養殖ぶりは長時間の鮮度管理が可能なため 保冷車を使用しないで輸送することもある 2) 輸出元空港のインフラ状況冷蔵ぶりは生産地が九州に多いことから福岡空港からの利用が多い 福岡空港からは米国向けなどの直行便がないため 韓国の仁川空港経由もしくは成田空港 関西空港経由で輸出している現状にある 3) 輸出先空港のインフラ状況鮮度管理を行う場合 現地の輸出先空港における保税蔵置場での冷蔵庫の有無が重要となる 主要空港における保税蔵置場での冷蔵庫の配置状況を図表 6-4-1にまとめた クールチェーンを徹底する場合 輸出先空港における保税蔵置場での冷蔵庫が必要となる 主要輸出先空港の保税蔵置場には冷蔵庫があり 適切な航空会社を選択すれば 保冷状態を維持することができる ただし 検疫所での保冷環境に関しては定かでない また 通関に係る時間が短時間で終了する香港では あえて上屋で冷蔵庫内に保管しないという選択をする輸出者の例も見られる ぶりの潜在需要のある主要輸出先空港については 輸入上屋の冷蔵設備の不備に対する懸念は薄い 6-18

20 図表 輸出先空港別に見た保税蔵置場の保冷環境 空港名ワシントン ダレス国際空港 ( 米国 ) ロスアンジェルス国際空港 ( 米国 ) サンフランシスコ国際空港 ( 米国 ) ジョン F ケネディ国際空港 ( 米国 ) オヘア国際空港 ( 米国シカゴ ) ロンドン ヒースロー国際空港 ( 英国 ) シャルル ド ゴール国際空港 ( フランス ) フランクフルト国際空港 ( ドイツ ) ウィーン シュヴェヒャート国際空港 冷蔵庫 ( オーストリア ) 台北桃園国際空港 ( 台湾 ) インチョン国際空港 ( 韓国 ) 金浦国際空港 ( 韓国 ) シンガポール国際空港スワンナプーム国際空港 ( タイ ) 北京首都国際空港 ( 中国 ) 上海浦東国際空港 ( 中国 ) 上海虹橋国際空港 ( 中国 ) 香港国際空港 ( 香港 ) 不詳 ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 3. クールチェーン全体でのボトルネックと課題輸送段階別に見たクールチェーン全体でのボトルネックと課題を図表 6-4-2にまとめた 冷蔵ぶりの冷蔵物流の重要性を主張する業者は 荷物積み込みや機内を除く物流過程において 冷蔵物流を実現しているが 空港や輸送過程で冷蔵設備を使用すると金銭的負担がかかり最終価格を押し上げるため 冷蔵物流の完備よりは梱包における保冷強化を図る輸出者が大半である 6-19

21 図表 輸送段階別に見たクールチェーン全体でのボトルネックと課題 輸送段階 クールチェーン全体でのボトルネックと課題 クールチェーンを完備するために必要なリーファーコンテナの使用料 空港上屋 ( 卸価格 レンタル料は輸送量 1t 以上で初めてペイできる ) や 空港の冷 蔵庫使用料でコストがかかる 梱包や品質の強化の方が現実的である 中国を含めた途上国では十分な保冷車が無いのが現状であり 冬場はま 現地輸出先国 だ良いが 夏場の輸送時には輸送時間が長い場合等で問題が発生する可 能性がある ( 出典 : 富士経済がヒアリング調査をもとに作成 ) 4. クールチェーン確保のための運用手法鮮度保持のための工夫として 以下の二点が挙げられる 1 冷やし込み時間の延長 2 輸出先での気象変化や荷役の保管などの諸条件に合わせて保冷剤や氷の量を調整して梱包している 6-20

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<4D F736F F D20939D8D B81A88BD18CEF2E646F63> 第 7 編錦鯉 7-2 目次 航空輸出に係る問題点と課題 7-3 Ⅰ. 輸出の動向 7-4 1. 輸出品目の概要 1) 錦鯉の国内生産量 2) 錦鯉の輸送形態別輸出量 3) 錦鯉の輸出先国 地域別税関別輸出実績 2. 輸出者と生産者の関係 1) 輸出の経緯と輸出者とのかかわり 2) 輸出の商流と物流サプライチェーン 3) 国内出荷との違い 工夫 4) 輸出への期待と展望 3. 輸出の際の取引条件 Ⅱ.

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