第 23 巻第 2 号, 1984 年 139 図 3 出血, 炎症性細胞を背景にシート状配列を示す細胞群 (Pap, 染色,x200 ) 図 1 腫瘍は, 左 11 陰唇外側にみられる ( 初診時撮影 ) 図 4 図 3 の強拡大核周囲には halo を認める (Pap 染色,x 400 )

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もえりいしなみ
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1 138 J,JpnSocClinCyto123 (2) 138N142, Apr, 1984 症例一外陰部乳頭状汗腺腫の細胞像望月東京都立墨東病院産科婦人科博守矢和人 2 ), 千葉大学医学部産科婦人科教室久保田浩一 2) 河西十九三 2 ) 症例は 41 歳の女性で, 腫瘍は左小陰唇外側にあり, 周辺組織が堤防状に隆起し, 浅いクレーター内に乳頭状面を形成していた腫瘍表面からの擦過細胞診で, 最も多くみられたのはシート状配列をした, ライトグリーン淡染性の胞体をもつ多稜形の細胞で NIC 比は中等度, 核は円形または楕円形で, 細顆粒状のクロマチンを有するものであるまた, 重積性を示す, 比較的大型の幅広い円柱状細胞で核は偏在し, 細胞質は泡沫状で核クロマチンはやや粗大顆粒状を呈し, 著明な核小体を有する細胞もみられたルポスピーでは表面が子宮頸部円柱上皮領域にみられる villi に類似した乳頭状構造を示し, 酢酸加工によっても異常ルポ所見は認められなかった組織学的には 1 2 層の円柱上皮より構成された乳頭状管状の腺腫様増殖を示し, 腺腔側では断頭分泌が, 基底側では筋上皮細胞がみられた, 以上, 細胞診所見, ルポ診所見より, 良性病変と診断され, 組織学的所見より, 外陰部乳頭状汗腺腫と診断されたこの疾患は組織学的に腺癌との鑑別が困難なことがあり, 組織診断に際しては, 細胞診所見, ルポ診所見をふまえて診断することが重要であると考えられ k Key words Vu 工 va Scraping cytology Colposcopy Papillary hidradenoma はじめにを経験したので, その臨床経過, 細胞診所見, 所見, および組織所見を検討し, 報告するルポ診女性の外陰部に発生する乳頭状汗腺腫は比較的まれな良性腫瘍である肉眼的には良性腫瘍の外観を呈することが多いが, 表面に出血巣や潰瘍を形成すると, 悪性腫瘍と診断されることもある, また, 組織学的には分化型の腺癌と誤診される可能性も高い 12 今回, 細胞診, およびルポ診が有用であった本腫瘍 Cytologicalfindings of papillary hldradenoma of the vulva Hiroshi MOCHIZUKI,M D, Kazuto MORIYA, M D Department of Obstetrics& Gynecology, Bekuto Tokyo Metropolitan HospitaI Koichi KUBOTA,M D, Tokuzo KASAI,M D Department of Ob tetrics & Gynecology,School of Medicine,Chiba University 論文別刷請求先 130 東京都墨田区江東橋 4 の 23 の 15 東京都立墨東病院産婦人科望月博昭和 58 年 10 月 31 目受付患主症者 41 歳主婦, 2 P,2 G 訴外陰部腫瘍自覚, 例家族歴, 既往歴特記すべきことなし現病歴昭和 55 年夏頃より, 左外陰部に大豆大の硬結に気づくも, 自覚症状なく放置していた, 昭和 57 年 7 月頃より, 小指頭大に増大しているのに気づく同 9 月, 腫瘍からの出血があり, 某医受診したところ, 悪性腫瘍を疑われ, 9 月 13 日, 当科を紹介された初診時所見腫瘍は小指頭大で左小陰唇外側にあり, 表面は漏斗状の浅いクレーターを形成しており, 周辺組織は提防状に隆起し, その境界は明らかであった ( 図 1 ) クレーターの直径は約 5mm で表面は赤禍色の乳頭状面を形成しており, 一部より出嵐がみられたが明ら

第 23 巻第 2 号, 1984 年 139 図 3 出血, 炎症性細胞を背景にシート状配列を示す細胞群 (Pap, 染色,x200 ) 図 1 腫瘍は, 左 11 陰唇外側にみられる ( 初診時撮影 ) 図 4 図 3 の強拡大核周囲には halo を認める (Pap 染色,x 400 ) 色で粘液の産生は認めなかった酢酸加工後では villi はやや白色調を呈するが自色上皮 (W

2 第 23 巻第 2 号, 1984 年 139 図 3 出血, 炎症性細胞を背景にシート状配列を示す細胞群 (Pap, 染色,x200 ) 図 1 腫瘍は, 左 11 陰唇外側にみられる ( 初診時撮影 ) 図 4 図 3 の強拡大核周囲には halo を認める (Pap 染色,x 400 ) 色で粘液の産生は認めなかった酢酸加工後では villi はやや白色調を呈するが自色上皮 (W ), 赤点斑 (P ), モザイク (M ), 異型血管 (aty V ) などの異常ルポ所見は認められなかった図 2 手術摘出標本 (15 1,5 2cm ) かな潰瘍形成はなかった内診上, 内性器に異常はなく, 両側鼠径部リンパ節腫大も認めなかった腫瘍表面より木製のヘラにて擦過スミァを作製し, papanicolaou 染色を行った次に腫瘍表面を 3% 酢酸で加工し, ルポスピーにて観察した観察後, 腫瘍中心部より,biopsy を行った組織からは分化型腺癌も考えられたが, 細胞診, ルポ診より, 良性腫瘍の診断のもとに, 治療は局麻にて周辺部 5mm を含め, 腫瘍を切除した ( 図 2 ) なお, 患者の生理学的検査, 胸部 X 線像, 血液化学検査などには異常を認めなかったルポ診所見 ( 初診時所見 ) 酢酸加工前では周辺組織に囲まれたクレーター内に子宮頸部円柱上皮領域にみられる villi に類似した乳頭状構造を認めた色調は赤細胞診所見細胞診上, いくつかの細胞形態が認められた最も多く認められた細胞は周辺部が比較的不規則なシート状配列をした細胞集団で, ライトグリーン淡染性の胞体をもち, 腺細胞由来の細胞と考えられた細胞の大きさは中等大で Nlc 比は中等度, 円形または楕円形の核を有し, 核周囲に halo を有することもあった核クロマチンは細顆粒状で均等分布し, 核縁の肥厚はなく, 核小体は 1 2 個認められるが不明瞭なこともあった ( 図 3,4) 次に多くみられた細胞は重積性を有する細胞集団で比較的大型の円柱状細胞であった細胞質は明るく泡沫状を呈し, N /C 比はやや小さい核は楕円形で偏在し, 大小不同に乏しい核クロマチンは細顆粒状を呈し, 均等分布するものから ( 図 5 ), やや粗大顆粒状を呈し, 著明な 2 3 個の核小体を有する, 分化型腺癌を思わせる細胞まで認められた ( 図 6 ),

Japanese Soolety Society of Clinical Cllnloal Cytology 140 日本臨床細胞学会雑誌図 5 ライトグリーン淡染性の明るい細胞質を有する細胞群 (Pap 染色,x 1,000) 図 e 乳頭状管状の腺腫様増殖像 (H E 染色, x100 ) 潔蒸翫舞纏議嘱嬾図 6 やや粗大顆粒状のクロマチンと著明な核小体を有する細胞群 (Pap

3 Japanese Soolety Society of Clinical Cllnloal Cytology 140 日本臨床細胞学会雑誌図 5 ライトグリーン淡染性の明るい細胞質を有する細胞群 (Pap 染色,x 1,000) 図 e 乳頭状管状の腺腫様増殖像 (H E 染色, x100 ) 潔蒸翫舞纏議嘱嬾図 6 やや粗大顆粒状のクロマチンと著明な核小体を有する細胞群 (Pap 染色, 1, 000) 戴著図 9 腺腟側に乳頭状増殖を示す (H E 染色,x200 ) 町 5 生図 le 断頭分泌がみられる (H E 染色,x400 ) 図その他, 1 重積性を示し, 小型濃縮核を有する細胞群 (Pap 染色,x 200) 少数ではあるが小型の円形濃縮核を有する重積した細胞集団を認めたが, 核の構造, 細胞質などは不明な点が多かった ( 図 7 ) 以上, 細胞診上は腺細胞系由来を示唆する細胞所見が主体であり, 見を満たす細胞は認められなかった明らかな悪性所病理組織学的所見 ( 手術摘出標本 ) 腫瘍は表皮より一部突出しているが全体としては球状で出血巣や壊死像は認めず, おもに乳頭状, または管状の腺腫様増殖像を呈していた ( 図 8 ) 腺上皮の一定面積内での占拠密度は高く, 一見, back to baek の構造を示す部分も認められたが周囲間質を破壊している明らかな所見はなかった上皮は 1 層 2 層の円柱状あるいは立方伏の細胞で繊毛は認めず, 胞体は好酸性を示し, 核分裂像も少なく, 個々の核の異型性においても癌の基準を満たすものとは解しがたかた腺腔に面したとっころでは腺上皮の増殖が著明で乳頭状に突出している部分 ( 図 9 ), およ NII-Electronic N 工工一 Eleotronlo Llbrary Library

第 23 巻第 2 号, 1984 年 141 ramml ) の報告にもみられるように漏斗状のクレータ L 内に子宮頸部円柱上皮領域と類似した, 赤色調の乳頭状構造を示し, 粘液分泌や異常ルポ所見は認められないこのようにルポスピーによる観察は子宮頸部病変同様, 本腫瘍の診断においても有用と考えられる 2 10 病理組織学的所見 1 層または 2 層の円柱状あるいは

4 第 23 巻第 2 号, 1984 年 141 ramml ) の報告にもみられるように漏斗状のクレータ L 内に子宮頸部円柱上皮領域と類似した, 赤色調の乳頭状構造を示し, 粘液分泌や異常ルポ所見は認められないこのようにルポスピーによる観察は子宮頸部病変同様, 本腫瘍の診断においても有用と考えられる 2 10 病理組織学的所見 1 層または 2 層の円柱状あるいは立方状の上皮が腺管状に問質内に拡がる腺腔側ではときに乳頭状に増殖し, 増殖が著明で腺腔が充実性に置換される部分もみられる腺腔側では好酸性の細胞質が一部乳頭状に突出している部分もみられ, アポクリン腺の図 11 基底側には筋上皮細胞を認める (H E 染色,x200 ) び断頭分泌がみられた ( 図 10) また, 上皮細胞の基底側には白く抜けた細胞質内空胞を有する細胞を一部認め, さらに基底側では小型紡錘形で上皮の外周に沿って存在する筋上皮細胞 ( my epitheliai cells ) 力雪認められた ( 図 1 以上の所見より, 乳頭状汗腺腫と診断された考外陰部に発生した乳頭状汗腺腫についての報告は Werthii に始まり,Woodw rth12 らは 69 例の報告を行っており, それによれば, Werthii ) 以来, 約 300 例の報告がなされているのにすぎず, 案まれな疾患であると述べているしかし, 現在では以前, 考えられていたほど, まれな疾患ではないといわれており ie), 日常の臨床でも経験する可能性があり, 臨床医にとってもこの疾患を知ることが診断上 t 重要と思われる組織由来については McDonald5 5 ) 以来, apocrine 腺由来と一般的に考えられている n 臨床像好発年齢は 50 代, 60 代が最も多く, 40 代, 70 代がこれに次ぐ発生部位は大陰唇が最も多く, 口, 小陰唇がこれに次ぎ, のもある 12 ) 陰唇会陰部, 肛門周囲に発生する大きさは直径 2mm から 3cm ほど } こわたるが 1cm 前後のものが多い 12 ) 多中心性に発生することもあるが多くは単一発生である直上の皮膚に異常がなければ, 単なる線維腫, 脂肪腫などの良性腫瘍との鑑別は難しい症状については Woodworthi2 ) によれば, 65 % は無症状であり, 次いで本症例のような腫瘤自覚がみられたという潰瘍を形成しても出血, 掻痒感, 疼痛などの症状がみられないこともある IZ ) ルポ診所見ルポスピーによる所見は Sch 一特徴の 1 つとされているまた, 基底側には上記の細胞と基底膜の間に核がやや濃染萎縮した小型紡錘形の筋上皮細胞がみられ, 診断上のポイントとなる S > Woodworth ら 12) が, 最初の組織診断が正しかったのは 57 % にすぎず, 28 % は腺癌と診断されたと報告しているように組織診による診断は誤診する可能性が高く, 診断に際しては慎重でなければならない, 本症例も bi opsy による組織検査では腺癌を完全には否定できず, 手術摘出標本よりの組織検査で乳頭状汗腺腫と診断された細胞学的所見細胞診に関して最初に報告した Sch rammi ) らによれば 3 種類の細胞像がみられたという小型立方状の細胞で濃縮核を有する筋上皮細胞由来と考えられる細胞中等大の立方状または円柱状の細胞で核クロマチンは細顆粒状で均等分布し, ときに小さな核小体を有し, 管状小胞状の腺を構成すると考えられる上皮細胞大型の幅広い円柱状細胞で, 細胞質は明るく, 空胞状または泡沫状を呈し, 核は大型円形, クロマチンはやや粗大顆粒状であるが均等分布し, ときに著明な核小体を有するアポクリン腺由来と考えられる細胞である Husti4 ら 4) は本腫瘍の touch smear による細胞診所見を報告しているが, それによると軽度の核の大小不同性を伴うが核クロマチンは細顆粒状で均等分布する腺細胞と細胞質が豊富で, 顆粒状の細胞をもった細胞の 2 種類が認められたという細胞像について本邦では森本 T ), 9) 3 小川, 本間らの報告があり, いずれも細胞学的には悪性基準を満たさなかったとしている細胞診の報告で共通して多数認められる細胞はシート状配列で出現する異型性の乏しい腺上皮由来の細胞で, 腺腔を構成する円柱または立方状細胞である Schramm ら 10) は小型立方状の濃縮核を有する筋上皮細胞を認めているが今回の症例で認められた小型の濃縮核を有する細胞群は小川ら 9) の指摘するように間質結合識由来の細胞と考えたほうが妥当であろう, 本症例では大型の円柱状

5 142 日本臨床細胞学会雑誌細胞で細胞質は明るく泡沫状で, やや粗大顆粒状のクロマチンと著明な核小体を有する軽度の異型細胞が認めら文献れたが, これらの細胞は Schramml ) のいうアポクリン腺由来の細胞と考えられるまた, これらの細胞群はシート状に配列した細胞群と連続した部分もみられ, 本腫瘍を構成する細胞像として, 細胞診上, 重要な所見と考えられた本腫瘍は組織学的には腺癌と誤診されることが多く, ルポ診, 細胞診を併用することによってその診断はより確実なものになると考えられる本症例の要旨は, いて発表した第 2 回日本臨床細胞学会千葉県支部会にお Summary 41year old female cornplained leftvulvar tumor with bleeding and crater like appearance of 5 皿 m illdiameter Colposcopy revealed v 三 Ilous papillary prel feration and eros 工 0 ロ 1n crater Scraped smear preparationindica ヒ ed shee し ljkearrange ment of columnar cells with no or mlnor nuclear atypia In some of the cell groups,nuclei were slightly enlarged with chromatin condensation and moderately swollen nucleolei Histology exhibited gland proliferation with back to back arrangement but no ceuular atypia and itlvasive, growth, and diagnosis was given to be papmary hidra denoma Discussions with preceeding papers on hidra denoma were performed on the importance Df combined diagnosis of clinical and morphological approach Blaustein, A Pathology of the female genital tract, New York Heidelberg Berlin,Springer Verlag,1977 2) Fritsches, H G, Busch, W E The importance of cemplementary cytology and ce!poscopy in a detec tion program,acta CytoL,21 10, ) 本間滋, 田中耕平他外陰に発生した papi!1ary hid 卑 denoma の 1 例, 目臨細胞誌, ,1983 4) Hustin,J, et al Identificationof papillary hidra denoma ef the vulva by imprint cytology,acta Cyto1,24 466N467,1980 5) McDonald,JR, Lovelady, S B, and Waugh,JM Adenocarclnoma of the vulva,am JObstet & Gynec, , ユ 941 6) McDonald, エ R Apocrine sweat gland carcinoma of the vulva,am,jclinpathol, , ) 森本紀彦, 江崎洋二郎他 Papiltary hidradenoma の 1 例, 日臨細胞誌, ,1980, 8) Novak,E R,and Woedruff,SD, Gynecologic and obstetric pathology,8 th ed 32 33,Philadelphia W B Saunders, ) 小川英弌, 備前美輝子, 真木正博外陰部に発生した乳頭状汗腺腫の細胞像, 産婦入科の実際, , ) Schramm G Diagnosis of papilrary hidradenoma of the vulva by slmultaneous cytology and colpos copy,acta CytoL, , ) Werth,R Anatomy f cysts ef the vulva,zentralbl Gynljk, ) Woodworth,H,Dockerty,M B,Wilson,R B and Pratt,J,3Papillary hidradenoma of the vulva ;A clinicopathologie study of 69 cases,am JObstet & Gynec,1D , 1971,

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション症例 1: Intraductal papilloma 乳頭状集塊の出現や背景の泡沫状マクロファージの出現から嚢胞内乳頭状病変が示唆される細胞集塊は全体的に結合性が強く乳頭状集塊の中心には比較的太い線維性結合織が認められ集塊内とくに腺上皮と線維性結合織の間には筋上皮の介在が窺われる LBC 検体を用いた免疫染色ではシート状集塊において高分子量サイトケラチン (CK5/6) のモザイク状陽性所見が認められ

第 23 巻第 2 号, 1984 年 139 図 3 出血, 炎症性細胞を背景にシート状配列を示す細胞 群 (Pap, 染色,x200 ) 図 1 腫瘍は, 左 11 陰唇外側にみられる ( 初診時撮影 ) 図 4 図 3 の強拡大 核周囲には halo を認める (Pap 染色,x 400 )

第 23 巻第 2 号, 1984 年 139 図 3 出血, 炎症性細胞を背景にシート状配列を示す細胞群 (Pap, 染色,x200 ) 図 1 腫瘍は, 左 11 陰唇外側にみられる ( 初診時撮影 ) 図 4 図 3 の強拡大核周囲には halo を認める (Pap 染色,x 400 )