第 16 回 CFO フォーラム ジャパン 2016 TPP FTA 等の通商ルールが経営に与えるインパクトを紐解く デロイトトーマツコンサルティング合同会社執行役員 / パートナー羽生田慶介 2016 年 12 月 13 日

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1 第 16 回 CFO フォーラム ジャパン 2016 TPP FTA 等の通商ルールが経営に与えるインパクトを紐解く デロイトトーマツコンサルティング合同会社執行役員 / パートナー羽生田慶介 2016 年 12 月 13 日

2 講師略歴 略歴 デロイトトーマツコンサルティング合同会社執行役員 / パートナーレギュラトリストラテジーリーダー羽生田慶介 (Hanyuda Keisuke) 経済産業省 ( 通商政策局にてアジアFTA EPA 交渉担当 /ASEAN 係長 ), キヤノン ( 経営企画にてグループ中期経営計画,M&A 担当 ), A.T. カーニー ( 戦略コンサルティング ) を経てデロイトトーマツコンサルティングに参画 経営戦略 事業戦略の豊富なコンサルティング経験と規制 制度に関する深い理解を背景に官民のルール形成やロビイング支援に注力している 著書に 最強のシナリオプランニング ( 共著 : 東洋経済新報社 ) 世界市場で勝つルールメイキング戦略 ( 共著 : 朝日新聞出版 ) がある他 日経産業新聞 TPP をどう活用すべきか (15 回連載 ) 等への寄稿 講演多数あり TPP FTA 関連の専門家としてテレビ 雑誌 新聞等での識者コメント多数 (NHK スペシャル,NHK 国際報道, 日本経済新聞, 日経産業新聞, 毎日新聞, 日経ビジネス, 週刊ダイヤモンド他多数 ) 多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授 本日のテーマに関連する主なプロジェクト ( 抜粋 ) 新興国における規制 制度環境整備 ( 政策支援 ) 日 ASEAN 経済協力支援 ( 政策支援 ) メコン産業開発ビジョン ( 政策支援 ) 国連ルール改定交渉支援 自動車産業における TPP 等国際通商ルール対応戦略 アジア新興国におけるサービス事業戦略 講師詳細 2

3 本日お伝えしたいポイントは次の 3 点です 本日のポイント 1 マーケティング戦略やオペレーション改善の努力を吹き飛ばすほど 通商動向が ゲームのルール を変える時代が到来した 2 通商ルール対応は お勉強 ではない FTA 使いこなし で当期にも利益創出が可能 サプライチェーン最適化のためには FTA の詳細な理解が必須 3 Brexit( 英国の EU 離脱 ) そしてトランプショックの現実化を見据え 各社とも欧州 北米 アジアの 3 極戦略を精査することが急務 3

4 なぜいま国際通商ルール (FTA EPA) が経営課題とされるのか 4

5 自由貿易を推進してきたグローバル経済に 2016 年大きな逆風が吹いた 英国の EU 離脱 (Brexit) 米国大統領選挙 ( トランプ ショック ) 2016 年 6 月英国国民投票結果 2016 年 11 月米国大統領選挙結果 48.1% 51.9% EU 残留 EU 離脱 ヒラリークリントン ドナルドトランプ いまだ不確定要因が大きいこれらアジェンダに対応するため 2017 年の企業は本格的に通商インテリジェンス機能を持たなければならない 5

6 自由貿易は先進国の産業競争力強化の強力なツールとして機能してきた 経済成長と貿易依存度の相関 (1970~2015 年 ) (USD) 55,000 米国 日本 (%) (USD) (%) 35 55, ,000 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 1 人あたり実質 GDP (2009 年基準 ) ( 左軸 ) 貿易依存度 (GDP に占める輸出 輸入の比率 ) ( 右軸 ) ,000 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 1 人あたり実質 GDP (2009 年基準 ) ( 左軸 ) 貿易依存度 (GDP に占める輸出 輸入の比率 ) ( 右軸 ) , ,000 自社は FTA を使いこなせているか? 出所 :US Bureau of Economic Analysis (BEA) データを基にデロイトトーマツコンサルティング作成

7 経営陣は国際通商ルールが与えるインパクトの大きさを認識すべき 国際通商ルールが与えるビジネスインパクト 関税 3% は 法人税 3 に相当 売上 ( 例えば ) 原価 (CIF 価格 ) 関税率 3% 関税額 ( 例えば ) 10 倍違う場合 税引前利益 法人税率 3 法人税額 同じ利益インパクト 規制基準 A 国 ルールの違いによる追加コストは 関税 10~2 に相当 相違ある場合相違輸出調達変更製品 P/F 変更追加開発 規制 基準の相違による追加コストは関税率 10~2 に相当 *1 追加コスト 規制基準 B 国 いずれもマーケティング オペレーション努力では対応できないレベルの大きなインパクト *1: 欧州委員会貿易総局レポートより 7

8 関税は 原価 の一部 利益損失 コンプライアンスのリスクが潜む 損益計算書 (P/L) における 関税 の位置づけ 売上高売上原価売上総利益販売費及び一般管理費営業利益営業外損益営業外収益営業外費用経常利益特別損益特別利益特別損失税引前当期純利益法人税等当期純利益 xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx xxxxx 材料費 - 関税 労務費 経費 事業部の責任 経理の責任 なので 関税は 税 の字はつけども 本社経理が横串で管理しない 事業部ごとに対応が異なる 関税対応には 利益損失 コンプライアンス リスクが潜んでいる 8

9 FTA 対応 は お勉強 ではない 当期利益を上げる重要な打ち手である 関税と法人税の発生 / キャッシュアウトのタイミング 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 関税 出荷の度に発生 原価アップとして常時キャッシュアウト FTA の活用により当期利益の創出が可能 法人税 発生 キャッシュアウト キャッシュアウト 9

10 FTA EPA は先代の経営陣のアジェンダには登場しなかった 日本における FTA EPA の活用拡大 ( 原産地証明書発給数 ) 2008 年頃まで日本が活用可能な FTA EPA は殆どなかった 多くの企業はこの 5~7 年で初めて FTA EPA を活用 原産地証明書発給数 ( 千件 ) 先代の経営陣は FTA EPA を経営アジェンダに据えてこなかった 月 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 通商ルールへの対応巧拙が競争力 収益力を左右し始めている 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 ( 凡例 ) 対象 EPA Japan-Peru Japan-India Japan-VietNam Japan-Swiss Japan-Philippines Japan-ASEAN Japan-Brunei Japan-Indonesia Japan-Thai Japan-Chile Japan-Malaysia Japan-Mexico 出所 : 商工会議所データを基に DTC 作成 10

11 世界の経済連携 (FTA EPA) 網は加速度的に重層化 複雑化している 世界の主な FTA EPA TPP (Trans-Pacific Partnership) EU TTIP( 米 EU FTA) ( ヨーロッパ連合 28ヶ国 ) (Transatlantic Trade and Investment Partnership) EUメキシコ GCC 米バーレーン ( 湾岸協力会議 ) オマーン UAE 日カナダ日 EU 韓 EU 米韓日韓日中韓 EUメルコスル中 GCC 日メキシコ中 ASEAN ACP *1 -EU EU- GCC 日チリパートナー EU-ASEAN 韓 ASEAN シップ協定日 ASEAN 印 GCC 日豪 EU 南ア米 SACU 印 ASEAN 米豪 SAFTA( 南アジア中豪豪 NZ ASEAN 自由貿易地域 ) SACU( 南部アフリカ関税同盟 ) 豪 NZ RCEP AFTA(ASEAN 自由貿易地域 10ヶ国 ) (Regional Comprehensive Economic Partnership) NAFTA ( 北米自由貿易協定 ) DR-CAFTA ( ドミニカ中米自由貿易協定 ) *2 FTAA ( 米州自由貿易地域 交渉中断 ) MERCOSUR ( 南米共同市場 ブラジル アルゼンチン パラグアイ ウルグアイ ベネズエラ ) 出所 : 経済産業省 JETRO 資料等を基に DTC 作成 ( 網羅的に世界の経済連携を示したものではない 代表的な FTA EPA を例示 ) *1:ACP= アフリカ カリブ 太平洋地域の旧植民地約 70 ヶ国 *2:DR-CAFTA 参加国 = 米 エルサルバドル コスタリカ ホンジュラス ニカラグア グアテマラ ドミニカ共和国 11 署名又は締結済交渉中又は構想段階 (2016 年 2 月時点 ) 特定の二国間においても複数の FTA EPA 協定が締結され それらが法的に併存し続ける ( 例 : 日本 マレーシア間 : 1 日マレーシア EPA 2 日アセアン EPA 3TPP 4RCEP( 交渉中 )) EU メキシコ 米 SACU EU メルコスル

12 Brexit( 英国の EU 離脱 ) そしてトランプショックの現実化を見据え 各社とも欧州 北米 アジアの 3 極戦略を精査することが急務 欧州 北米 アジアにおける Brexit トランプショック の影響可能性 欧州 米国 / 北米地域 Brexit( 英国の EU 離脱 ) を受け EU は求心力を維持するための対外 FTA を加速 同時に 英国もグローバル FTA 網から孤立しないようにインド等の大国を含む FTA を加速 離脱交渉と独仏首脳選挙が同時期に始まる前に通商戦略を進展させ 迷走する米国から通商リーダーシップを奪回できるか トランプショックがメキシコ カナダを襲う場合 両国と EU で成立した FTA 活用企業が増える TPP から米国が 離脱 の場合 協定の発効要件が変更され 米国を除く国々で経済圏が成立する可能性 ( 中国やタイの動向を注視 ) NAFTA の見直し は オバマ大統領さえも選挙中に述べた常套句 実施可能性は不明 但し NAFTA 再交渉によりメキシコ カナダから米国への輸入関税がアップされれば 過去にない深刻なリスク 北米戦略は再考 メキシコ拠点の稼働確保の対欧輸出拡大か 日本 / アジア 出所 : 各種報道を基に DTC 作成 12 トランプショック (TPP 頓挫 ) を牽制するために東アジア連携 (RCEP) を加速させる意思は各国あれど インド インドネシア等の保護主義の打開は容易でない ASEAN 各国は EU へのアクセス拡大を目指し FTA 交渉を推進 ( 既にベトナムは実現済み ) この過程で欧州企業のアジア競争力が強化 米国が中国産品へのアンチダンピング課税等を乱発した場合はハイテク製品に影響大

13 TPP とトランプショック 13

14 TPP TPP は 5 年間に及ぶ交渉の結果 2016 年 2 月に署名に至った 日本は率先して国内批准実施 米国次期大統領の 離脱 宣言の影響は? TPP( 環太平洋パートナーシップ ) 交渉の経緯 以降 T P P 参加国 シンガポール ブルネイ ニュージーランド チリ 米国 豪州 ペルー ベトナム マレーシア カナダ メキシコ 日本 P 4 協定発効 P4 協定 T P P 交渉開始 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 TPP 交渉 T P P 交渉大筋合意 ( 年 10 月 ) T P P 協定署名 ( 年 2 月 ) T P P 協定発効? 2016 年米大統領選トランプ氏勝利 米国は TPP 離脱か 参加検討中 韓国 フィリピン タイ インドネシア TPP 参加? TPP 参加? TPP 参加? TPP 参加? 出所 : 内閣官房 各種報道を基に DTC 作成 (2016 年 2 月 4 日時点 ) 14

15 TPP 交渉分野と主な規定内容 前文に加え 以下の30 章で構成出所 : 内閣官房 (1) 冒頭の規定及び一般的定義 (2) 内国民待遇及び物品の市場アクセス (3) 原産地規則及び原産地手続 (4) 繊維及び繊維製品 (5) 税関当局及び貿易円滑化 TPP 協定が締約国間のその他の国際貿易協定と共存することができることを認める また 本協定の二以上の章において使用される用語の定義を定める 物品の貿易に関して 関税の撤廃や削減の方法等を定めるとともに 内国民待遇など物品の貿易を行う上での基本的なルールを定める 関税の減免の対象となる TPP 域内の原産品 (=TPP 域内で生産された産品 ) として認められるための要件や証明手続等について定める 繊維及び繊維製品の貿易に関する原産地規則及び緊急措置等について定める 税関手続の透明性の確保や通関手続の簡素化等について定める (6) 貿易救済 (7) 衛生植物検疫 (SPS) 措置 (8) 貿易の技術的障害 (TBT) (9) 投資 (10) 国境を超えるサービスの貿易 ある産品の輸入が急増し 国内産業に被害が生じたり そのおそれがある場合 国内産業保護のために当該産品に対して 一時的にとることのできる緊急措置 ( セーフガード措置 ) 等について定める 食品の安全を確保したり 動物や植物が病気にかからないようにするための措置の実施に関するルールについて定める 安全や環境保全等の目的から製品の特性やその生産工程等について 基準 が定められることがあるところ これが貿易の不必要な障害とならないように ルールを定める 投資家間の無差別原則 ( 内国民待遇 最恵国待遇 ) 投資に関する紛争解決手続等について定める 内国民待遇 最恵国待遇 市場アクセス ( 数量制限等 ) に関するルールを定める (11) 金融サービス (12) ビジネス関係者の一時的な入国 (13) 電気通信 (14) 電子商取引 (15) 政府調達 金融分野の国境を越えるサービスの提供について 金融サービス分野に特有の定義やルールを定める ビジネス関係者の一時的な入国の許可 要件及び手続等に関するルール及び各締約国の約束を定める 電気通信サービスの分野について 通信インフラを有する主要なサービス提供者の義務等に関するルールを定める 電子商取引のための環境 ルールを整備する上で必要となる原則等について定める 中央政府や地方政府等による物品 サービスの調達に関して 内国民待遇の原則や入札の手続等のルールについて定める (16) 競争政策 (17) 国有企業及び指定独占企業 (18) 知的財産 (19) 労働 (20) 環境 競争法の整備と締約国間 競争当局間の協力等について定める 国有企業と民間企業の競争条件の平等を確保する国有企業の規律について定める 特許権 商標権 意匠権 著作権 地理的表示等の知的財産の十分で効果的な保護 権利行使手続等について定める 貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定める 貿易や投資の促進のために環境基準を緩和しないこと等を定める (21) 協力及び能力開発 (22) 競争力及びビジネスの円滑化 (23) 開発 (24) 中小企業 (25) 規制の整合性 協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に 技術支援や人材育成を行うこと等について定める サプライチェーンの発展及び強化 中小企業のサプライチェーンへの参加を支援すること等について定める 開発を支援するための福祉の向上等や 女性の能力の向上 開発に係る共同活動等について定める 中小企業のための情報 中小企業が TPP 協定による商業上の機会を利用することを支援する方法を特定すること等を定める 加盟国毎に複数の分野にまたがる規制や規則の透明性を高めること等を規定する (26) 透明性及び腐敗行為の防止 (27) 運用及び制度に関する規定 (28) 紛争解決 (29) 例外 (30) 最終規定 協定の透明性 腐敗行為の防止のために必要な措置等に関するルールに関わる事項等を定める 協定の実施 運用等に関するルールなど協定全体に関わる事項等を定める 協定の解釈の不一致等による締約国間の紛争を解決する際の手続について定める 締約国に対する TPP 協定の適用の例外が認められる場合について定める TPP 協定の改正 加入 効力発生 脱退等の手続 協定の正文等について定める 15

16 TPP 産業別の TPP ビジネス影響 (1/3) 各産業が準備すべき TPP 変化のポイント 自動車 / 自動車部品 電機 機械 金属 TPP による経営へのメッセージ ( 一部 ) 米国への年間 600 億円関税撤廃を享受せよ 17 年以降の豪州への完成車輸出に活路あり 累積原産地規則でサプライチェーン再編 メキシコ拠点の戦略的位置づけが変わる 完全累積の活用に向けたサプライヤ連携を 非関税 ( 安全基準など ) 影響は軽微と想定 黒物への関税メリットはビデオモニタ等に限定 白物生産拠点を中国 タイから移管すべきか 工作機器の米国向け関税メリットは大きい 金型 手工具などの中小企業品目にもメリット 産業機械は TPP による顧客の移転に注意を 米国向け鉄鋼製品の関税メリットは大きい 米国の航空機産業向けのチタンに追い風 高付加価値金属製品の国内集約の可能性 ベトナムのインフラ鉄鋼は対韓国で有利に 原産地規則 VA CTC 双方への対応準備を ( 参考 ) 典型的な関税撤廃品目 日 米国 ギアボックス : 即時撤廃 ( 現 :0~3.8% 等 ) 日 豪州 乗用車 : 即時撤廃 ( 現 : 日豪 FTA1.7% 等 ) 日 ベトナム 大型乗用車 : 8~13 年目撤廃 ( 現 :64%) 日 米国 ビデオモニタ : 即時撤廃 ( 現 :0~5%) 日 米国 マシニングセンター : 即時撤廃 ( 現 :4.2%) 日 米国 射出成形用金型 : 即時撤廃 ( 現 : 0~3.1%) 日 米国 鉄鋼製のボルト : 即時撤廃 ( 現 :0~8.5%) 日 米国 スポンジチタン : 15 年目撤廃 ( 現 :15%) 日 ベトナム 建材用の鉄鋼 : 即時撤廃 ( 現 : 日越 FTA 最大 3%) 16

17 TPP 産業別の TPP ビジネス影響 (2/3) 各産業が準備すべき TPP 変化のポイント 化学 繊維 食品 TPP による経営へのメッセージ ( 一部 ) 有機化合物 ゴム等の関税メリットは大きい 米国市場で中国製 韓国製より優位な税率に 原産地 自己証明制度 により FTA 活用進む 原産地規則 VA CTC 双方への対応準備を TPP による川下産業の変化のサキヨミが重要 ヤーンフォーワードでサプライチェーン再編 ベトナムの競争力が高まる (EU へも連結 ) 素材 ( 糸 ) 調達は中国からベトナムへシフトか 国内ブランド繊維製品の素材が国内回帰か SSL( ショートサプライリスト ) 精査が急務 テキスタイル製品 ( エアバッグ等 ) もメリット 農産品と完成品が同時に輸入関税コスト減 調味料 水産品 酒類など輸出拡大が期待 輸出を支える冷凍物流 倉庫の海外展開を 地理的表示 (GI) を活用して地域ブランド向上 検疫 (SPS) は TPP では大きな変化なし ( 参考 ) 典型的な関税撤廃品目 日 米国 有機化学品 : 即時撤廃 ( 現 :0~6.5% 等 ) 日 米国 プラスチック製品 : 即時撤廃 ( 現 :0~6.5%) 日 カナダ ゴム製品 : 即時撤廃等 ( 現 :0~15.5%) 日 米国 タオル : 5 年目撤廃 ( 現 :9.1~9.2%) 日 米国 エアバック生地 : 13 年目撤廃 ( 現 :13.6%) ベトナム 米国 合成繊維衣類 : 即時撤廃 ( 現 :6~32%) 日 米国 コメ ( 精米 ): 5 年目撤廃 ( 現 :1.4cent/Kg) 日 カナダ 清酒 : 即時撤廃 ( 現 : 最大 12.95cent/l) 日 ベトナム ブリ サバ等 : 即時撤廃 ( 現 : 日越 FTA 最大 15%) 17

18 TPP 産業別の TPP ビジネス影響 (3/3) 各産業が準備すべき TPP 変化のポイント TPP による経営へのメッセージ ( 一部 ) 金融 小売 コンテンツ 新興国の支店やATM 設置の制限が緩和 一部新興国で保険領域も規制が緩和 今後 TPPと国内金融規制の整合が課題 工場移転や都市化により金融ニーズが変化 ISDSによる投資家側のリスクはない 国内店舗は食品等の関税メリットを享受せよ ベトナムの多店舗展開等の自由化が進む 不動産業の自由化は商業施設賃貸を容易化 海外はコンビニ形態で出資か別業態運営か 急送便の通関迅速化で高付加価値品を拡販 著作権 70 年 への延長で将来利益は拡大 著作権侵害の非親告罪化の影響は軽微 法廷損害賠償制度でトロール横行の事例も SNS 等で個人情報のクラウド統合が容易に サウンドロゴの保護等の商標ルールが拡大 18

19 これまで FTA の恩恵は自動車業界が多く享受 TPP では食品 アパレル業界に新たな関税コスト削減の期待 FTA TPP による関税コスト削減ポテンシャル試算 ( 業界別 ) ( 億円 ) 20,000 バブルの大きさ :TPP 域内貿易額 (2014 年 ) 関税既コ存スのト F 削 T 減 A ポ活テ用ンにシよャるル 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 自動車 (2017) 金属金属 (2017)(2025) 医療 (2017) 医療 (2025) 自動車 (2025) 素材 化学素材 化学 (2025) (2017) 食品 (2017) 電機 電子電機 電子 (2017) (2025) 食品 (2025) アパレル (2017) アパレル (2025) ,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 3,400 3,600 3,800( 億円 ) TPP 活用による新たな関税コスト削減ポテンシャル 出所 : 国連貿易統計および各 FTA 協定内容をもとにDTC 作成 業界別関税コスト削減ポテンシャルの計算方法 TPP 参加 12ヶ国 ( 国連貿易統計が整備されていないチリおよびペルーを除く ) 間の各貿易品目の貿易額とその品目におけるFTA TPP 関税削減内容を掛け合わせて産業別 各年の関税コスト削減ポテンシャルを算出 最新の年間関税コストを2014 年貿易額に2015 年 MFN 税率として産業別に算出 TPPの発効は2017 年と想定 貿易統計と関税率を各 HS6 桁ベースで突合させるため FTA TPP 税率は6 桁コード内での最低関税率を適用し MFN 税率は6 桁コード内での最高関税率を適用 19

20 強い保護主義的メッセージを掲げたトランプ氏が米国大統領選に勝利した 2016 年 11 月米国大統領選の結果 トランプ次期大統領の通商関連の主な発言 選挙中 TPP は不公平で恐ろしい協定 (terrible onesided deal) であり 企業の海外移転を促し 米国の犠牲のもと他国を裕福にするもの TPP 当選後 米国にとって潜在的に害をもたらす TPP から離脱 (withdraw from TPP) する その代わりに アメリカの産業に雇用をもたらす公平な二国間貿易協定の交渉をする ヒラリークリントン ドナルドトランプ NAFTA 選挙中 当選後 NAFTA の再交渉 (renegotiation) を要求する 他国が再交渉に応じなければ 米国からの輸出品に関税をかける NAFTA から撤退する ( 特段発言なし ) 2016 年 11 月末時点 20

21 トランプ政権の政策は 北米シフトを進めてきた日系企業に大きく影響 日系企業 ( 各産業主要 5 社 ) の北米地域売上比率推移 自動車 北米比率 38% 39% 42% 電機 北米比率 14% 15% 16% 精密機器 各社とも日本 アジアが低調な一方で北米地域のビジネスを拡大させてきたところ 2016 年 11 月の米大統領選の結果により 北米地域の事業展開に再考が迫られる 北米比率 25% 26% 28% ( 主要 5 社 ) 自動車 : トヨタ ホンダ 日産 マツダ 富士重工, 電機 : 日立製作所 ソニー パナソニック 東芝 三菱電機, 精密機器 : キヤノン 富士フイルム ニコン リコー オリンパス出所 : 各社発表資料よりDTC 作成 21

22 TPP 発効には日本と米国の国内批准が必須要件 ( 但し 米国が 離脱 した場合は発効要件が変更される可能性も ) 22 TPP の発効プロセス (TPP 協定第 30 条 最終規定 概要 ) 1. 全ての原署名国が国内法上の手続を完了した旨を書面により寄託者に通報した日の後 60 日で発効 実現しない場合 署名 2. 署名後 2 年以内に原署名国の 2013 年の GDP 合計の少なくとも 85% を 実現しない場合 占める少なくとも 6 ヶ国が国内法上の手続きを完了した場合 署名後 2 年の期間の満了後 60 日で発効 署名 GDP85% 以上の 6 ヶ国以上が批准 3. 原署名国の 2013 年の GDP 合計の少なくとも 85% を占める少なくとも 6 ヶ国が国内法上の手続きを完了する要件が満たされた日の後 60 日で発効 署名 2 年未満 全 12ヶ国 60 日間 が批准 2 年間 全 12 ヶ国批准ならず 2 年間 全 12 ヶ国批准ならず 右記要件満たせず 発効 60 日間 GDP85% 以上の 6 ヶ国以上が批准 出所 :TPP 協定 /JETRO 資料等より DTC 作成 発効 60 日間 発効 TPP における各国 GDP シェア (2013 年 ) ( 発効における GDP 要件 ) カナダ 日本 ペルーニュージーランド 0.7% 0.7% チリベトナム % シンガポールブルネイマレーシア 0.1% メキシコ豪州 4.6% 6.6% 5.4% 17.8% 60.2% 米国 日本または米国が国内批准しなければ GDP 要件 (85%) を満たすことができず TPP は発効されない

23 TPP ( 参考 ) 米国議会は短期間で通商協定の審議を終えた実績あるが 23 通商協定に関する米国議会の審議日程実績 FTA 多国間協定実施法案 ( 注 ) 1979 年通商協定は東京ラウンド協定の実施法案に他の関連法制を加えた実施法案 コロンビア パナマ 韓国は一括審議 CAFTA-DR の対象国はエルサルバドル ホンジュラス ニカラグア グアテマラ コスタリカ ドミニカ共和国の 6 ヵ国 出所 :ITI フラッシュ ( 桜美林大学滝井光夫名誉教授 )( 下院上院下院提出から 下院提出歳入委付議本会議票決賛成 反対本会議票決賛成 反対上位可決までの日数 イスラエル 発声投票 23 日 NAFTA 日 ヨルダン 発声投票 発声投票 63 日 シンガポール 日 チリ 日 オーストラリア 日 モロッコ 全会一致 8 日 CAFTA-DR 日 バーレーン 全会一致 28 日 オマーン 日 ペルー 日 コロンビア 日 パナマ 日 韓国 日 1979 年通商協定 ウルグアイラウンド協定 日 日 ( 注 ) 日数は立法日ではなくカレンダー上の日数で記載 実際の審議日数は更に短い

24 TPP 米国が 離脱 した場合の複数のシナリオに対する準備が必要 トランプ方針 TPP 離脱 を踏まえた通商シナリオ 米国 TPP 方針 TPP 協定の行方続く通商動向 ( 想定 ) 経営へのメッセージ 議会批准 離脱 TPP 漂流シナリオ 第 30 条 最終規定 に従い 発効可能性が消滅 発効要件修正 TPP 11 発効シナリオ 関税再交渉 署名済み TPP 協定が漂流 各国批准 / 発効 非関税分野は原則そのまま 日加 EPA など TPP 国間二国間交渉 米国との二国間交渉 TPP と大差ない内容になる可能性 タイ等に注目 新規参加国加入 自由貿易は停滞 RCEP 型 FTAAP 交渉? 自由貿易は維持 TPP 型 FTAAP 交渉? 広域な拠点連携が困難な時代に突入 新興国の市場開放も限定的となり 現地化要求への対応巧拙が重要に 累積 規程で越境サプライチェーンは引続き戦略の中心 但し 北米戦略は再考が必要 再交渉要求 協定再交渉 サイドレター交渉 各国批准 / 発効 24

25 TPP ( 参考 ) 自由化率の低い日本にとって TPP の再交渉はリスクも 但し 他国に先んじて国内批准を終えたことがリスク回避につながる TPP 参加国の関税撤廃率 25 日本 米国 カナダ 豪州 ニュージーランド シンガポール メキシコ チリ ペルー マレーシア ベトナム ブルネイ 品目数 貿易額 95% 95% % % 99% % TPP が ( 米国の離脱でなく ) 再交渉の場合日本にとってはリスクとなる 出所 : 関税撤廃率は内閣官房資料より DTC 作成 TPP 発効にむけた道筋 ( 可能性 ) 日本国内批准 協国定内自プ体ロのセ再ス交を渉終リえスてクい回る避ことにでつながる (2016 年 11 月 ) 米レームダック議会での批准 ( 米国 離脱 でない場合 ) トランプ政権による再交渉要求? サイドレター交渉? 各国批准 / 発効 (2016 年 11 月 ~ 2017 年 1 月 ) (2017 年春以降 ) (2017 年夏以降?) (2018~2019 年?)

26 TPP トランプ次期大統領は 二国間 FTA を進める と述べたが TPP 自体が多くの二国間交渉を経て完成した協定 多国間 ( マルチ ) 交渉における方式 一般的な多国間 ( マルチ ) 協定 共通譲許方式 TPP 共通譲許 + 二国間交渉 輸入国 米国 米国 関税約束 輸出国 米国共通譲許表 ( すべての締約国に適用 ) 例 :5% = 例 :5% = 例 :5% 例 :5% 例 :1 ベトナム日本豪州 米国譲許表 for ベトナム 米国譲許表 for 日本 米国譲許表 for 豪州 TPP 交渉 TPP 交渉米豪 FTA 反映 例 :3% ベトナム日本豪州 日米の二国間 FTA 交渉となれば 一定 TPP よりもハードな交渉となる可能性あるが 新たに二国間 FTA を交渉しても大半の攻防は TPP の踏襲となる 26

27 最終形態 FTAAP の積み石となるのは TPP か RCEP か すくなくとも 個別の二国間 FTA が FTAAP のベースにはなり得ない アジア太平洋地域の経済連携協定の発展 2000~2005 年 2005 年 ~2015 年 2015 年 ~ 2 国間の協定 2 国間の協定 2 国間の協定 P4 協定 ASEAN + インド ASEAN + 豪 NZ ASEAN + 日本 ASEAN + 中国 ASEAN + 韓国 日本が主導 米国が主導 CEPEA *1 ( 参加国 : ASEAN+6) EAFTA *2 ( 参加国 : 中国 ASEAN+3) が主導 中国が合流 TPP 関税撤廃率は 98% RCEP 関税撤廃率は 8 前後か?? FTAAP *3 アジア太平洋地域における経済連携の 最終形 豪州 ペルー ブルネイ フィリピン カナダ ロシア チリ シンガポール 中国 台湾 香港 タイ インドネシア 米国 日本 ベトナム 韓国 マレーシア メキシコ ニュージーランド パプアニューギニア トランプ方針 二国間 FTA でも 交渉結果は TPP と大差ない可能性 傍ら 米国はグローバル通商リーダーシップを喪失 出所 : 各種報道資料を基にデロイトトーマツコンサルティング作成 *1:CEPEA:Comprehensive Economic Partnership in East Asia *3:FTAAP: Free Trade Area of the Asia Pacific 27 *2:EAFTA: East Asia Free Trade Area

28 RCEP では新興国への配慮から TPP ほどの高水準な自由化は期待薄 TPP と RCEP の内容の比較 ( 主要項目 ) TPP( 署名済み ) RCEP( 交渉中 ) 28 現状参加国 対象範囲 物品貿易 サービス貿易 投資 ISDS 電子商取引 知的財産 基準認証 オーストラリア, ブルネイ, カナダ, チリ, 日本, マレーシア, メキシコ, ニュージーランド, ペルー, シンガポール, 米国 ベトナム (12 ヶ国 ) 物品 サービス 投資 電子商取引 知財 政府調達 規制調和 競争 環境 労働等の 30 分野 全品目のうち 95% の関税を撤廃 ( 工業製品は 99.9% の品目の関税を撤廃 ) ネガティブリスト方式を採用し 原則として全てのサービス分野を自由化の対象とする ネガティブリスト方式を採用し 原則として全ての分野を自由化の対象とする 一部の例外分野を除き 投資家保護のための ISDS( 国家対投資家の紛争解決 ) の規定を導入 デジタルプロダクトへの関税不賦課 サーバ設置場所の規定の緩和等を多国間協定で実施 商標 地理的表示 特許 意匠 著作権等に関し 一部 WTO 協定を上回る水準の保護を規定 強制規格の導入に対する意見提出期間を WTO 協定より延長するなど 一部で既存協定を上回る 出所 : 内閣官房 経済産業省 Asian Trade Centerを元にDTC 作成 ブルネイ, カンボジア, インドネシア, ラオス, マレーシア, ミャンマー, フィリピン, シンガポール, タイ, ベトナム, 中国, 日本, 韓国, インド, オーストラリア, ニュージーランド (16 ヶ国 ) 物品 サービス 投資 電子商取引 知的財産 基準認証 開発等の 12 分野 全品目のうち 8 の関税撤廃を目指す ポジティブリスト方式を採用し 一部の分野の自由化に留まる見込み ネガティブリスト方式を採用し 原則として全ての分野を自由化の対象とする見込み 投資家保護のため ISDS ( 国家対投資家の紛争解決 ) の規定の導入を検討中 中小企業を保護するための規定が導入される見込み 既存の国際協定でカバーしていない新しいルールの導入を検討中 ( ただし詳細は不明 ) 既存協定の規定を確認する内容に留まる見込み

29 NAFTA 北米地域は NAFTA の恩恵で主要貿易品目はほぼゼロ関税 これらのコストアップは地域の事業活動に大きなネガティブインパクト $24Bn/ 年 $10Bn/ 年 加 米 NAFTA の恩恵を受けてきた貿易品目の例 品目 貿易額 関税率 MFN NAFTA 石油 $50Bn ~ 10.5c/kg 中型車 $21Bn 0~2.5% アルミ $2Bn 0~2.6% 米 加 中型車 $6Bn 0~6.1% 軽質油 $5Bn 0~5% ギアボックス $2Bn 0~6% 墨 加 CANADA 中型車 $2Bn 0~6.1% モニター $1Bn 0~5.5% 大型車 $0.5Bn 0~6.1% 墨 米 USA 中型車 $16Bn 0~2.5% 石油 $13Bn ~ 10.5c/kg モニター $11Bn 0~3.9% NAFTA 加 墨 20~ 中型車 $0.3Bn 5 タイヤ $0.2Bn 0~15% 骨付き肉 $0.1Bn 2 29 米 墨 ギアボックス $2.4Bn 0~5% 中型車 $1.7Bn 20~ 5 医療機器 $1.1Bn 0~1 出所 : 6 桁ベースの貿易額 (2015 年度 ) を UNComtrade より取得 MEXICO

30 ( 参考 : 北米関税分析の例 )TPP 離脱の影響が大きな品目とは NAFTAからTPPへ切り替える可能性がある品目例 分析 : 輸入額 (US$B) *1 輸入国 輸出国 品名 (2014 年 ) 23,952 乗用自動車 (3 千 cc 超 ) MFN レート (2016 年 ) 2.5% NAFTA レート (2025 年 ) TPP レート *2 (2025 年 ) カナダ フ ラスチック一次製品 2, % アメリカ カナダ メキシコアメリカメキシコアメリカ 貨物自動車 (5t 以下 ) カラーテレビ 乗用自動車 (3 千 cc 以下 ) ベーカリー製品 ( その他 ) 乗用自動車 (3 千 cc 以下 ) 男子用ズボン 乗用自動車 (3 千 cc 超 ) プラスチック製品 ( その他 ) 11,903 10,792 6, , ,692 2,243 25% 5% 6.1% 14.5% 6.1% 17% 5 15% T P P と N A F T A が同じ特恵関税率 メキシコ 乗用自動車 (3 千 cc 超 ) カナダ ハ ス 貨物自動車用タイヤ % 30 *1: UN Comtrade データより DTC 作成 *2: TPP の発効を 2017 年と仮定

31 ( 参考 : 北米関税分析の例 )NAFTA 再交渉の影響が大きな品目とは TPP 発行後もNAFTAの活用メリットが大きい品目例 分析 : 輸入額 (US$B) *1 輸入国 輸出国 品名 (2014 年 ) 強力糸 ( ナイロン等 ) 191 MFN レート (2016 年 ) 8.8% NAFTA レート (2025 年 ) TPP レート *2 (2025 年 ) 4% カナダ 男性用ジャケット % 8.7% アメリカ T シャツ ( 綿製 ) % 10.7% カナダ メキシコアメリカメキシコアメリカ 陶磁製品 ( 建設用 ) 貨物自動車 (5t 以下 ) 糖類貨物自動車 (5t 以下 ) 革靴果糖水乗用自動車用タイヤ 263 6, , % 6.1% 11% 6.1% 18% 125% 15% T P P よりも N A F T A が有利 0.8% 1.1% 1% 1.1% 4.5% 84% 1.5% メキシコ じゃがいも ( 冷凍 ) % カナダ 細幅織物 % 31 *1: UN Comtrade データより DTC 作成 *2: TPP の発効を 2017 年と仮定

32 米国こそ自由貿易の進展とともに経済発展を遂げてきた最大の国 米国経済の成長と貿易依存度の相関 (1970~2015 年 ) 一人あたり実質 G D P ( 年基準 ) (USD) (%) 55,000 50,000 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 GATT WTO 0 1 人あたり実質 GDP ( 現在計 20ヶ国と発効 ) FTAs 貿易依存度 NAFTA 82 ヶ国 93 ヶ国 153 ヶ国 米豪 FTA 東京ラウンドウルグアイ ラウンドドーハ ラウンド 米韓 貿易依存度 ( G D P に占める輸出 輸入の比率 ) 32 出所 :US Bureau of Economic Analysis (BEA) データを基に DTC 作成

33 選挙において自由貿易は常に悪役 だが TPP NAFTA を否定した後の通商 プラン B のない米国はトランプ政権でも冷静な判断が求められる オバマ大統領の大統領就任前 ( 選挙中 ) の NAFTA 関連発言 Remarks for Senator Barack Obama: National Gypsum in Lorain, Ohio Lorain, OH February 24, 2008 Our economy has been struggling for some time now. ( 中略 ) I've proposed a job-creation agenda that starts with making sure trade works for American workers. We can't keep passing unfair trade deals like NAFTA that put special interests over workers' interests. Now, Senator Clinton has been going to great lengths on the campaign trail to distance herself from NAFTA. Yesterday, she said NAFTA was "negotiated" by the first President Bush, not by her husband. But let's be clear: it was her husband who got NAFTA passed. In her own book, Senator Clinton called NAFTA one of "Bill's successes" and "legislative victories." And yesterday, Senator Clinton also said I'm wrong to point out that she once supported NAFTA. But the fact is, she was saying great things about NAFTA until she started running for President. A couple years after it passed, she said NAFTA was a "free and fair trade agreement" and that it was "proving its worth." And in 2004, she said, "I think, on balance, NAFTA has been good for New York and America." One million jobs have been lost because of NAFTA, including nearly 50,000 jobs here in Ohio. And yet, ten years after NAFTA passed, Senator Clinton said it was good for America. Well, I don't think NAFTA has been good for America - and I never have. I didn't just start criticizing unfair trade deals like NAFTA because I started running for office - I'm doing it because I've seen what happens to a community when the factory closes down and the jobs move overseas. I began my career as a community organizer on the South Side of Chicago, fighting joblessness and poverty in neighborhoods that were devastated when the local steel plant closed. And it's because of this longstanding commitment to working families that I will not sign any trade agreement as President that does not have protections for our environment and protections for American workers. And I'll pass the Patriot Employer Act that I've been fighting for ever since I ran for the Senate so we can end tax breaks for companies that ship our jobs overseas, and give those breaks to companies that create good jobs with decent wages here in America.( 後略 ) オバマ大統領も自身の選挙時に NAFTA 反対 再交渉する 米国の労働者と環境の保護ができない貿易協定にはサインしないと演説 オバマ大統領の外交 通商の中心政策として TPP を推進 トランプ次期大統領も冷静な外交 通商判断として TPP NAFTA を反故にできるか Dec. 2007: 2007 Des Moines Register Democratic debate, Senator Barack Obama There s no doubt that NAFTA needs to be amended. I ve already said I would contact the president of Mexico and the prime minister of Canada to make sure that labor agreements are enforceable. 33 出所 : 各種報道資料を基に DTC 作成

34 NAFTA の修正で対米輸出に障壁ができることはカナダ メキシコに深刻な影響あり 両拠点の活路は FTA 活用による 対 EU ビジネス拡大 EU- メキシコ自由貿易協定 (FTA) 概要 EU- カナダ包括的経済 貿易協定 (CETA) 概要 各分野の概要 ステイタス 特徴 物品貿易 サービス貿易 政府調達 2000 年に発効 2016 年 6 月より 改訂に向けた協議を実施中 物品貿易 サービス貿易 政府調達 競争 知的財産権等を規定 EU は 2003 年に全工業製品の関税を撤廃済み メキシコは 2007 年に全工業製品の関税を撤廃済み 金融 通信 小売 エネルギー 観光等の分野で 原則として外資出資規制 支店数の制限 従業員数の規制等の導入を禁止 EUは WTOと同様の機関の調達をメキシコに開放 メキシコは NAFTAと同様の機関の調達をEUに開放 34 出所 :EUウェブサイト JETRO 各種報道を元にDTC 作成 各分野の概要 ステイタス 特徴 物品貿易 サービス貿易 2016 年 10 月 30 日 カナダ - EU サミットにて署名 2017 年秋頃に欧州理事会承認が得られる見通し カナダが合意した貿易協定の中で最も広範な内容をカバー 物品貿易 サービス貿易 政府調達 投資 ISDS 基準認証 知的財産権 政府調達 貿易円滑化等を規定 カナダ EU 共に一部の農産品 ( 牛肉 豚肉等 ) を除く全ての品目について 7 年以内に関税を撤廃 カナダは 98.2% の品目の関税を即時撤廃 EU は 97.7% の品目の関税を即時撤廃 企業の従業員の投資を目的とした一時的な移動に関して 労働許可等の要求の禁止を規定

35 トランプ次期大統領の政策により シナリオ次第では北米のみならずアジア 欧州の戦略にも大きな影響あり ( サマリー ) 通商 トランプショック の概要と 2017 年に企業がすべきこと 直接影響アジェンダ 右記のほか TTIP 等も影響あるが割愛 短期 ~ 中期短期 ~ 中期長期 環太平洋経済連携協定北米自由貿易協定アジア太平洋自由貿易圏 TPP NAFTA FTAAP 楽観 ベトナム等各国が批准 米国も続き 17~18 年発効 オバマ同様 トランプも選挙中と論調を変え 再交渉せず 中国も TPP と RCEP の中間程度の自由化を約束 通商トランプショックとは 軽度ケース 深刻ケース サイドレター等にて微修正 米国も含めて 18~19 年発効 米国を除く 11 ヶ国で発効 米国が批准せず TPP 消滅 メキシコ カナダから米国へ輸出する関税コストアップ TPP が発効遅れ 保護主義に傾倒した協定が実現 WTO 頓挫のまま FTAAP 実現せず 経済鈍化 ブロック化 経営へのメッセージ TPP が発効せずとも 既存の FTA 活用で利益創出が可能 日 EU RCEP は加速 重層化した二国間 多国間 FTA には 使い漏れ リスクが 通商の停滞 = コストダウンせず と違い コストアップ は過去にない深刻な影響 北米事業への影響のみならず 欧州の調達戦略も影響 次の中計は外部環境の変数が過去にないほど複雑 グローバル経営は 資産を自社で抱える 所有 型から柔軟性の高い 利用 型へ 2017 年企業がすべきこと 35 (TPP の動向に注視しつつ ) 既存の FTA 最大活用による当期利益アップと社内のコンプライアンス体制強化 ( 特に製造業の場合 ) 米国現地生産のコスト精査 メキシコ工場の稼働確保のための欧州との連携強化 シナリオプランニングによる通商動向の不確実性への耐性ある中期経営計画策定

36 通商ルール (FTA EPA) 対応アプローチ 36

37 通商ルール対応によって短期 中長期の 利益創出 と リスク回避 が可能 通商ルール (FTA EPA) 対応アプローチ 利益創出 リスク回避 関税 FTA 使い漏れ 解消 サプライチェーン最適化 投資計画 落とし穴 探し 累積を活かした拠点戦略 コンプライアンス対応 当局からの検認対応 社内体制整備 必ず効果がある これまで未対策の企業が多い これだけで利益 1up の例も 通商ルールが複雑化した今この対応がなくては恐くて中期計画立てられない TPP 自己証明 は新たな課題 顧客 サプライヤとの連携巧拙次第でビジネスを失う可能性も 非関税 投資 サービス 政府調達 その他 市場開放にともなう事業機会探索 ( 新規入札, 海外進出 ) 海外ローカル企業への M&A 競争 対応 投資保護 知的財産保護等 37

38 通商ルール (FTA EPA) 対応アプローチ 1 FTA 使い漏れ 解消 2 サプライチェーン最適化 3 コンプライアンス対応 38

39 1 FTA 使い漏れ 解消 FTA 使い漏れが解消すれば現状の物流 商流で当期利益が改善可能 FTA 使い漏れ 初期診断 ( 事例 ) 分析結果 関税コスト ( 百万円 ) 関税率 : A 社 ( 日本タイ ) エポキシ樹脂 50 FTA 適用前 使い漏れ FTA 適用後 解消 2.4% 0.3 億円削減 関税コスト ( 百万円 ) B 社 ( 中国ベトナム ) 炊飯器 100 C 社 ( 中国ベトナム ) ハンドミキサー (HS: ) (HS: ) (HS: ) 取引額 10 億円 ( 換算 ) 取引額 10 億円 ( 換算 ) 取引額 10 億円 ( 換算 ) 1 億円削減 250 関税率 : 200 FTA 適用前 FTA 適用後 使い漏れ 解消 使い漏れ 解消 2 1 関税率 : 25% 1 関税コス ト ( 百万円 ) FTA 適用前 100 FTA 適用後 1.5 億円削減 イ品ン目パごクとトの 営業利益 2~3%up 営業利益 5~1up 営業利益 10~15%up 39

40 1 FTA 使い漏れ 解消 使い漏れは 自社が FTA を詳細に理解しない限り必ず発生する FTA 使い漏れ 発生理由と典型的な事例 FTA 使い漏れ 理由典型的な使い漏れの状況何故? 申請しない 調べない 商社 フォワーダー任せ が続き 自社で商流 物流管理する局面で活用できる FTA を見逃してしまう 昨年どおりの物流 = 昨年どおりの FTA で良いと思い込んでおり 最適な関税率を適用できていない 特恵税率の適用を受けるための条件を満たしていないと誤解し FTA 活用を諦めてしまう 協定が発効したら自動的にコストが下がる という誤解 受益者 = 輸入者 ( 販社 ) でありながら 作業者 = 輸出者 ( 工場 ) であるため社内取引でも調整が簡単でない 関税率は FTA 毎 輸出国 輸入国の組合せ毎 品目毎 年毎 に異なり 調査が容易でない 1 万種類の各 HS コードに充てられた原産地規則の調査も必要 協定に用意された例外規定 救済措置を正しく理解するには専門性が必要 - 積送基準 : Back to Back C/O/ 非加工証明等 - 原産地規則 : 累積 / デミニマス / SSL 等 事例 1 事例 2 事例 3 40 敢えて使わない ( コスト リスクから判断して意図的に FTA を活用しない ) 関税削減効果 < 原産性判定コスト となる 原産性 第三者証明 の際に 競争力の源泉である製造プロセス レシピ ( 化学メーカー等 ) を発給機関 ( 商工会議所等 ) にも開示したくない

41 1 FTA 使い漏れ 事例 1 申請しない : 食品卸売 A 社 商社任せ の調達を切り替えた際にFTA 利用を失念 使い漏れ の発生 タイ 日本 使い漏れ の解消 商社経由での調達 製造者 CO 手配 CO 作成 商社 フォワーダー CO 提出 調達切替 税関 FTA 税率 商社が FTA 活用の書類作成を実施 A 社 Details of Item_HS Details of Item_ Trade ID Exporting Country Importing Country Category Item Name Code (Destination Current Tariff Rate amount side) HSコード整理番号輸出国輸入国製品種別製品名年間調達額 (USD) 現在の関税率 ( 輸入国ベース ) 1001 Australia Indonesia xxxxx xxxxx , Australia Indonesia xxxxx xxxxx , Australia Indonesia xxxxx xxxxx , % FTA 使い漏れ診断 の実施原産地証明書の取得 直接調達 CO: Certification of Origin( 原産地証明書 ) 41 製造者 CO 手配 CO 作成 商社 フォワーダー CO 提出 税関 一般税率 1~5% 商社に関税対応を お任せ していたため 使い漏れ に 2 年間気付かず A 社 製造者 CO 作成 タイ 商社 CO 手配 フォワーダー CO 提出 税関 FTA 税率 日本 A 社

42 1 FTA 使い漏れ 解消 FTA 使い漏れ診断 必要なデータを収集する データ収集フォーマット ID Exporting Country Importing Country Category Item Name 整理番号輸出国輸入国製品種別製品名 Details of Item_HS Code (Destination side) HSコード ( 輸入国ベース ) Details of Item_ Trade amount 年間調達額 (USD) Current Tariff Rate 現在の関税率 1001 Australia Indonesia xxxxx xxxxx , Australia Indonesia xxxxx xxxxx , Australia Indonesia xxxxx xxxxx , % 42

43 1 FTA 使い漏れ 解消 FTA 使い漏れ診断 適用可能なFTAと関税削減額を確認する FTA 適用の検証イメージ # 輸出者仕向地品目詳細 会社名国会社名国製品名型番 HS コード ( 仕向地側 ) 貿易額 ( 百万円 ) FTA 適用の有無 現在の関税率 適用可能な FTA FTA 詳細 FTA 税率 削減が見込まれる関税額 ( 百万円 ) ヒアリングに基づく原産性の判定 日本 1 本社日本 2 本社日本 3 本社 AAA. 4 Co.,Ltd 日本本社 日本 日本 日本 タイ Japan 130 AAA. Co., Ltd. AAA. Co., Ltd. AAA. Co., Ltd. BBB. Pvt., Ltd. BBB. Pvt., Ltd. FTA 適用前支払い関税額 タイ 部品 A XXX 無 X% JP-ASEAN FTA 1~2 タイ 部品 B XXX 無 X% JP-ASEAN FTA 5.5~11 タイ 部品 C XXX 無 X% JP-ASEAN FTA 5~10 インド 完成品 D XXX 無 X% JP-ASEAN FTA 2~6 India- インド 完成品 F XXX 無 X% ASEAN 2.5~3 FTA 削減が見込まれる関税額の合計 16 ~ FTA 活用による関税コスト削減見込み額 98 FTA 適用後支払い関税額 原産地証明書が取得可能か コスト削減の実現可能性を調達担当者にヒアリング 当該 FTA の原産地規則 ( 品目別規則 ) を満たしているか サプライヤーからの証明書提出等の協力が得られるか 輸入国の税関当局との見解の相違はないか

44 1 FTA 使い漏れ 解消 原産地証明書取得 様々な利害関係者の協力が必要 原産地証明書取得に向けた商流別タスク ( 例 : 日本 ) 輸出国側 部品 原材料製造 輸出製品製造 販売 輸出 輸入国側 1 サプライヤー サフ ライヤー証明書取得 輸出者 ( メーカー ) 原産地証明書 2 サプライヤー サフ ライヤー証明書取得 メーカー ( 生産者 ) 同意通知 輸出者 ( 商社 物流会社等 ) 原産地証明書 メーカー 顧客企業 3 サプライヤー サフ ライヤー証明書取得 製造委託先 必要情報 メーカー ( みなし生産者 *) 同意通知 輸出者 ( 商社 物流等 ) 原産地証明書 4 サプライヤー サプライヤーが海外の場合もある サフ ライヤー証明書取得 メーカー ( 生産者 ) 原産品判定依頼 原産品判定番号付与 原産地証明書発給申請 原産地証明書交付 凡例メーカー輸出者タスク 44 原産地証明発行機関 * みなし生産者 : 他者が製造した商品を自社商品として輸出者 ( 商社等 ) 経由で輸出する 作成書類

45 1 FTA 使い漏れ 事例 2 調べない (1/2): 衣料製造販売 B 社経年での最適なFTA 選択ミス 使い漏れ の発生輸入開始時にはベストの特恵関税率だったFTA が 2 年後には別のFTAより条件劣位となっていた ( 関税率の逆転現象 ) 関税率 ( % ) 日本 ベトナム ( 綿織物 HS Code: ) 日ベトナム EPA MFN( 一般税率 ) 日アセアン EPA 7.5% 7% 4.5% 税率逆転 4% 年より日アセアン EPA 利用 適切 FTA 選択ミス (FTA 使い漏れ ) 使い漏れ の解消 IT ツールを活用して複数 FTA の関税削減スケジュール 原産地規則を確認 最も関税削減効果の高い FTA を選択

46 1 FTA 使い漏れ 解消 : TPP 発効に向けて TPP 関税撤廃 削減は3 種類 日本からの輸出条件以外も分析が必要 TPP 分析は TPP 協定分析だけでは不足 TPP 関税削減の 3 つの顔 1 新規 FTA としての TPP 貿易フロー日本 米国日本 米国日本 カナダ 品目名 ギアボックス MFN レート ~3.8% 25 cents each +3.9% 既存 FTA レート TPP 約束内容 (FTA なし ) 即時撤廃 *1 ビデオモニタ ~5% (FTA なし ) 即時撤廃 有機化学品 ~8% (FTA なし ) 即時撤廃 2 ( 既存 FTA に対する ) 深堀 FTA としての TPP 日本 ベトナム日本 ベトナム日本 豪州 乗用車 (3,000cc 超 ) 64% 再協議 8~13 年目撤廃 建材用の鉄鋼 ~1 ~3% 即時撤廃 乗用車 (1,500cc-3,000cc) 5%+ $12,000 each 1.7%+ $12,000 each 即時撤廃 *2 3 out-out のための TPP マレーシア 米国ベトナム 米国 過熱水ボイラー 3.3% (FTAなし) 即時撤廃 綿製のシャツ 15.4% 19.7% (FTA なし ) 即時撤廃 出所 :USTR 経済産業省資料等を基に DTC 作成 *1:HS コード のみ 10 年目撤廃 *2: 中古車のみ 1 台あたり 12,000 ドルの税は残る 46

47 1 FTA 使い漏れ 事例 3 調べない (2/2): 電機メーカー C 社協定上の救済措置を知らなかった 使い漏れ の発生 日本製の製品をシンガポール倉庫に保管し注文毎に分割発送 ( 輸出 ) 積送 ( 直送 ) 基準の救済措置を知らず FTA を利用できないと誤解 使い漏れ の解消 FTA 協定の救済措置を活用 (Back to Back CO: 連続する原産地証明書 ) MFN 税率 タイ 1 ベトナム 5-15% MFN 税率 日本 FTA 税率 タイ ベトナム FTA 税率 日本 MFN 税率 マレーシア 15-2 製造 日本原産品 マレーシア FTA 税率 Back to Back CO 製造 日本原産品 47 倉庫 シンガポール シンガポールで倉庫に保管 ( 一切加工は加えず ) 各国への分割出荷時に シンガポールで原産性喪失と考え FTA を利用せず 出所 : 各 FTA 協定をもとに DTC 作成 倉庫 シンガポール 日アセアン EPA での積送基準救済措置 Back to Back CO をシンガポールで発給

48 通商ルール (FTA EPA) 対応アプローチ 1 FTA 使い漏れ 解消 2 サプライチェーン最適化 3 コンプライアンス対応 48

49 2 サプライチェーン最適化詳細にFTA 関税削減内容を分析し 投資計画の 落とし穴 を見つける 日本からアジア諸国への輸出における FTA 関税削減 ( 例 ) 2015 年 2020 年 ( フラットロール 鉄鋼製品 )HS:code タイ 日泰 EPA (2013~) 日越 EPA *1 ベトナム 7% 日馬 EPA 4.6% マレーシア 日本 タイ 日泰 EPA ベトナム (2013~) 日越 EPA *1 7% 日馬 EPA マレーシア 日本 (2016~) 国 品目により関税削減する / しないが分かれる 出所 : 各 FTA EPA 協定 ( 譲許表 ) を基に DTC 分析 但し 最新の関税率については各国政府資料 税関サービスをもとに都度確認が必要 *1: 該当品目は日越 EPA の関税率削減対象外のため MFN 税率が適用される 49

50 2 サプライチェーン最適化 FTA 税率の優劣は 逆転 する 今の調達先が来年も最適とは限らない FTA 協定別関税削減スケジュール フィリピンへの輸入 自動車車輪 付属品 ( 例 ) ( 例 ) (HSコード: ) 米国への輸入 有機化学品 ( 環式アルコール ) (HS コード ) 韓国 (AKFTA) MFN 15% 8 関税率 ( % ) FTA 税率逆転 インド (AIFTA) 中国 (ACFTA) 関税率 ( % ) 6 4 日本 (TPP) FTA 税率逆転 MFN 5.5% 豪州 (AANZFTA) ASEAN(ATIGA) 日本 ( 日比 EPA AJCEP) 韓国 ( 米韓 FTA) 出所 : 各 FTA 譲許表より算出 TPP は 2017 年発効と仮置き 最新の関税率については各国政府資料 税関サービスを基に都度確認が必要脚注 : 協定上未定の将来税率については 確定済み最終年の税率を延長し仮置き ( 破線で表示 ) 50

51 2 サプライチェーン最適化 TPP 累積原産地規則 がサプライチェーン戦略の選択肢を拡大させる TPP 累積原産地規則 のビジネス影響 TPP 協定の要点 経営へのメッセ ジ 原産地規則 累積原産地規則 で生産拠点戦略の選択肢が拡大 複数の生産地の付加価値 加工工程を 累積 することで メイド イン TPP 原産性を獲得 原産性 ( 自由化メリットを享受するための条件 ) を得やすくするためのルール 域内分業を促進 付加価値基準 ( 自動車など ) 関税番号変更基準 ( 化学など ) 加工工程基準 ( 繊維など ) いずれも 累積 の考え方を適用可能 日本企業は今後 タイの加入を切望 コア部材の開発生産を国内に集約可能 高機能部材 ( 例 : 自動車の新パワートレイン等 ) は開発と量産が一体化した体制で推進 日本に高付加価値な工程を残したまま TPP 域内でサプライチェーン最適化が可能 メキシコ ベトナムの戦略的役割が変化 ともに TPP 参加 EU とも FTA 実現 日本の高付加価値部材 ( 自動車部品 高機能素材など ) と 累積 して原産性を獲得しつつ 大市場 (US 等 ) に輸出拡大が期待される 51

52 2 サプライチェーン最適化 累積原産地規則 によりコア部材の開発生産が国内に集約可能となる TPP が無いサプライチェーン 部材組立市場 付加価値率 ( 例 ) 30 % 日本 1 マレーシア 30 % 中国 3 NAFTA 原産性を満たさない メキシコ高関税 NAFTA 米国 脚注 : 累積原産地規則が導入されている既存の FTA(AJCEP 等 ) の域外を含んだサプライチェーンでは 付加価値計算の累積は不可 TPP で想定される原産地規則 累積 メリット 部材組立市場 30 % 日本 10 % マレーシア 3 中国 30 % メキシコ 累積で TPP 原産性あり 55% 以上 低関税 / 無税 TPP 米国 生産プロセス ( 加工工程 ) の自由度を保持しながら 関税メリットを享受できるようになる 日本に高付加価値なコア部材開発 生産を集約したままサプライチェーン最適化等 52

53 2 サプライチェーン最適化 TPPを含む FTAハブ となるメキシコ ベトナムの戦略的役割が変化 メキシコ ベトナムの EPA FTA 網 署名又は締結済交渉中又は構想段階 (2016 年 2 月 4 日時点 ) EU メキシコ EFTA メキシコ E U 2016 年 2 月署名 TPP NAFTA EU メキシコ EFTA メキシコ イスラエル - メキシコ 日メキシコ中 ASEAN 2016 年 1 月発効イスラエル-ベトナム EUベトナム韓ベトナム 2015 年 12 月署名 韓 ASEAN 中米 5ヶ国 -メキシコ 印 ASEAN 日ベトナム日 ASEAN ペルー -メキシコ AFTA 豪 NZ ASEAN RCEP チリ - メキシコ イスラエル - メキシコ コロンビア - メキシコ メキシコ - メルコスール特恵関税協定 ( 自動車 自動車部品 ) 出所 :JETRO 資料を基に DTC 作成 53 メキシコ ベトナムは アメリカ大陸と EU という巨大経済圏をつなぐ FTA ハブとしての存在感を拡大させる

54 通商ルール (FTA EPA) 対応アプローチ 1 FTA 使い漏れ 解消 2 サプライチェーン最適化 3 コンプライアンス対応 54

55 3 コンプライアンス対応企業のFTA 活用メリット増大と同時にコンプライアンスリスクも増加 コンプライアンスリスク増加の背景 想定されるイベント ( 検認 ) と内容 FTA 増加に伴う輸入国での関税収入減少 原産性判定ルールの複雑化 自己証明制度の導入 FTA 締約国以外が特恵メリットに対してフリーライドしていないか精査するインセンティブあり 累積原産地規則の広範囲化や 品目別原産地規則の複雑化 ( 特例 除外規定等 ) に伴い 原産性判定の精度に疑義が強まる 第三者がチェックする従来の証明制度から 何らチェック機能が無い自己証明への移行が進み 虚偽申請の可能性が高まる 輸入当局による検認 (Verification) の増加 輸入国当局は FTA の適用を受けて輸入された貨物の原産性を 直接 間接 ( 輸出国の当局経由 ) に検証 検認時の確認項目 書類の整備状況 インボイス B/L( 船荷証券 ) 等の輸送関連書類 原産地を決定した根拠 ( 付加価値計算等 ) と財務諸表との整合性 サプライヤー証明書類 サプライヤーの原産地判定の適格性 原産性判定の正確性 適切な関税番号分類 (HS コード ) の使用 加工工程等の個別要件が正しく行われているか 55

56 3 コンプライアンス対応検認対応の失敗はビジネスに多大な影響を与える (1/2) 検認の影響 金銭面 追徴課税 (FTA の利用による関税セーブ額 + 利子 ) の支払い 罰金の支払い ( 状況や国に拠る ) その他 調査対応工数の発生 輸出 / 生産国 輸入国双方で 書類収集 説明資料作成 税関対応等で膨大な工数が発生する 機密書類 価格情報の没収 通関ストップ 税関検査の強化 AEO 剥奪等 ( 状況や国に拠る ) サプライチェーンへの影響 レピュテーションリスク ( 参考 ) 韓国が受けた FTA に関係する検認数 韓国は 日本に先んじて米国 (2012 年 3 月発効 ) EU(2011 年 7 月暫定発効 ) と FTA を締結した FTA 先進国 であるが 発効後 5 年経たずして 既に米国 EU 双方から多数の検認を受けている 輸入国 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 EU( 間接検認 ) ,450 2,822 US( 直接検認 ) その他 ( 間接検認 ) 出所 : 韓国税関庁のプレスリリースを元に DTC 作成 56

57 3 コンプライアンス対応検認対応の失敗はビジネスに多大な影響を与える (2/2) 主な検認事例 事例 1 日本 - タイ EPA 事例 2 ASEAN- インド FTA 事例 3 米国 - 韓国 FTA 事例 4 日本 - ベトナム EPA 概要 タイに輸入していた自動車の EPA 適用可否につき タイ税関から検認を受けた インドに輸入していた家電の FTA 適用可否につき インド税関から検認を受けた 米国に輸入していた航空機部品の FTA 適用可否につき 米国税関から検認を受けた 日本に輸入していた靴の EPA 適用可否につき 日本税関から検認を受けた 否認理由 原産部品 として現地付加価値にカウントした輸入部品が 原産地規則を満たしていなかった 原産地規則を誤って解釈したことにより原産性を満たさなかった 原産性を示す根拠書類が適切に保管されていなかった 確認すべき部品点数が膨大であり 原産性を示す根拠資料が網羅的に保管されていなかった 原産地規則を満たしていなかった 影響 通関ストップ 立ち入り調査対応 訴訟対応 約 400 億円超の追徴課税 ( 報道資料より ) メディアで報道 タイでの生産 販売を一時休止 通関ストップ 立ち入り調査対応 約 50 億円の追徴課税 ( 報道資料より ) メディアで報道 立ち入り調査対応 約 10 億円の追徴課税 ( 報道資料より ) メディアで報道 立ち入り調査対応 約 7,000 万円の追徴課税 57

58 3 コンプライアンス対応 TPPはこれまでのFTAよりも高度なコンプライアンス対応を求める TPP 活用を踏まえたコンプライアンス上の論点 TPP のルール メリット コンプライアンス上の論点 求められる対応 自己証明制度 手続きコスト 時間削減 - 商工会議所への 2,500 円 / 件の支払 承認までの時間を削減 原産地証明書 (CO) 発給機関への情報開示が不要 企業自らが輸入国税関からの検認 ( 問合せ ) に対応 - 原産性を示す書類が妥当な内容か - モデル毎 出荷毎に適切に保管されているか 社内体制 業務再構築 累積原産地規則 原産性判定時に TPP 加盟国での付加価値をサプライチェーンを遡って利用可能 (= 原産性の獲得容易化 ) 原産性の正確な判定の難度向上 - 仕様 価格 為替の変更を反映 サプライヤから受領した原産性判定のための情報 ( 機密情報 ) の適切な管理が必要 - サプライヤのサプライヤ の原産性判定情報も管理が必要 顧客への機密情報 ( 技術情報や原価情報など ) 提示ルールの整備が必要 - 顧客 ( さらに 顧客の顧客 ) との機密情報管理ルールを取り決める - 機密情報を社外に提出する際の社内ルールを取り決める 取引先との連携 関係者へのトレーニング IT システムの活用 58

59 FTA 活用による利益創出の第一歩を踏み出すために 59

60 Deloitte 通商 Web サービス Trade Compass TM が FTA 活用を支援 Trade Compass TM の提供価値 Trade Compass TM 仕様 (2016 年 10 月時点 ) 対象国 対象 FTA 品目 データ期間 検索 確認 ASEAN10 カ国 日本 中国 韓国 インド オーストラリア ニュージーランド アメリカ カナダ メキシコ EU スイス チリ ペルー 対象国間で締結された発効済み FTA (TPP は暫定データとして提供 ) 全 HS コード ( 各国別各約 10,000 品目 ) 2016 年 ~2026 年 ( 将来先 10 年 ) FTA 税率検索 ( 輸出入国 HS コード組合わせ別 ) 関税率年数別推移確認 ( グラフ / 表形式 ) 原産地規則 GSP 特恵有無確認 機能 効果分析 FTA 関税削減ポテンシャル確認 為替 関税率変動を考慮した調達コストシミュレーション その他 無料相談税務アドバイザリー 各国税制情報提供 ( 法人税 VAT 税 移転価格税制等 ) データ更新 (MFN/HS コード等 ) FAQ 対応 60 推奨環境最新版のGoogle Chrome/ Internet Explorer 11 ブラウザ以下当社 Webサイトに説明ビデオ掲載

61 Trade Compass TM の活用が企業の国際競争力強化を支援する 想定ユーザー Trade Compass TM の提供価値 企業競争力強化への貢献 経営 事業企画 財務 経理部門 通商 財務 経理部門 サプライチェーン最適化 税務リスクマネジメント FTA 協定別 輸出入品目別に極めて多岐にわたる関税率を将来 (10 年先 ) まで詳細に把握 中期経営計画や投資 / 増産計画の策定に際し 国際通商ルールを反映した最適サプライチェーンを実現 関税に関するアドバイザリーサービス ( 契約企業あたり月 1 回 1 時間無料 ) 経営意思決定の質の向上 関税コスト削減 企業の自社サプライチェーンに即した物流データに基づく FTA 活用可能性と関税コスト削減ポテンシャルをシミュレーション 通商 調達 営業 物流 財務 経理部門 海外関連業務効率化 FTA 使い漏れの防止による当期利益への貢献を実現 FTA 協定の読解 税率解釈や各国当局からの情報収集が必要となる輸出入 海外事業展開に関する情報をワンストップで把握 多様な FTA 関税率 ( 年次別 複数国間 ) 原産地規則 主要 60 ヶ国以上の税務情報 ( 法人税 /VAT/ 移転価格等 ) コスト削減 / 利益創出 61

62 通商 Web サービス Trade Compass TM Trade Compass TM 主な機能 / 画面イメージ Tariff Search ( 関税率 原産地規則確認機能 ) Cost Reduction Potential( 関税コスト削減試算機能 ) 仕出地 仕向地 HS コード FTA 別で関税率を確認 複数国間の関税率を同時に比較 FTA 別原産地規則 将来関税率を確認 Sourcing Analysis( サプライチェーンコスト分析機能 ) FTA を活用した場合の関税削減効果額を試算 Taxation & Investment ( 諸税 法令情報 ) 為替変動を考慮したサプライチェーン別の調達コスト分析 63 様々な税制情報を国別に確認

63 早急に自社の FTA 活用による利益創出 リスク回避 余地を診断すべし FTA 活用 簡易チェックリスト 1 中国 ASEAN メキシコ等のアジア大洋州に生産拠点が集中している 2 日本 中国とASEANの間の輸出入が多い Yes 3 4 複数の国から部材を輸入しているがサプライヤとFTAの話をしたことがないアジアで生産しているがシンガポール倉庫を経由した後 FTAを活用していない 3 つ以上 Yes なら いますぐ FTA 使い漏れ のチェックを 5 海外に輸出している自社工場で 原産地証明 の作業をしたことがない 6 原価低減の社内プロジェクトが生産現場主導で行き詰っている 7 自社サプライチェーンにおける将来の関税率が把握できていない 8 9 汎用品の調達を製造コスト ( 人件費 インフラコスト ) の比較のみで検討しているベトナム メキシコ等のFTAハブ国からの生産撤退を検討している 2 つ以上 Yes なら FTA 活用によるサプライチェーン見直しが必要 10 台湾 バングラデシュでの生産増強を計画している FTA 原産地証明を本社が統轄せず事業部によって対応方法が異なる原産地証明の際に取引先 ( 顧客 サプライヤ ) との情報共有が必要となる 1 つ以上 Yes なら コンプライアンスリスク対応に着手 出所 : DTC 作成 63

64 デロイトトーマツグループは日本におけるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( 英国の法令に基づく保証有限責任会社 ) のメンバーファームおよびそのグループ法人 ( 有限責任監査法人トーマツ デロイトトーマツコンサルティング合同会社 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社 デロイトトーマツ税理士法人および DT 弁護士法人を含む ) の総称です デロイトトーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり 各法人がそれぞれの適用法令に従い 監査 税務 法務 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています また 国内約 40 都市に約 8,700 名の専門家 ( 公認会計士 税理士 弁護士 コンサルタントなど ) を擁し 多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています 詳細はデロイトトーマツグループ Web サイト ( をご覧ください Deloitte( デロイト ) は 監査 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリーサービス リスクマネジメント 税務およびこれらに関連するサービスを さまざまな業種にわたる上場 非上場のクライアントに提供しています 全世界 150を超える国 地域のメンバーファームのネットワークを通じ デロイトは 高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて 深い洞察に基づき 世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスをFortune Global 500 の8 割の企業に提供しています Making an impact that matters を自らの使命とするデロイトの約 225,000 名の専門家については Facebook LinkedIn Twitterもご覧ください Deloitte( デロイト ) とは 英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( DTTL ) ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します DTTL および各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です DTTL( または Deloitte Global ) はクライアントへのサービス提供を行いません Deloitte のメンバーファームによるグローバルネットワークの詳細は をご覧ください 本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり その性質上 特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません また 本資料の作成または発行後に 関連する制度その他の適用の前提となる状況について 変動を生じる可能性もあります 個別の事案に適用するためには 当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき 本資料の記載のみに依拠して意思決定 行動をされることなく 適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください Member of Deloitte Touche Tohmatsu Limited