(Microsoft Word - 1 \225\\\216\206\201i\225\317\215X\201j.doc)

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1 PEPNet-Japan は筑波技術大学によって運営されており, 日本財団の助成による PEN-International( 本部 : ロチェスター工科大学 NTID 内 ) より一部支援を受けています

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3 はじめに 近年 聴覚障害学生の高等教育支援において 技術 機器関連の導入に対する必要性はますます増加している しかしながら 技術 機器関連の導入にはどうしても技術的な専門知識が不可欠であり それらに対する敷居の高さが払拭されきれていないことから なかなか円滑に導入できないのが現状である こうした背景から日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク (PEPNet-Japan) では 聴覚障害学生の高等教育支援における技術 機器関連の導入を円滑にサポートするために 技術導入のサポートに特化した事業である 第 4 事業 ( 支援技術導入事業 ) を立ち上げた この事業では 技術 機器関連の導入に関するノウハウや技術解説をまとめた TipSheet マニュアル等の作成 技術導入に関する調査 さらには技術 機器関連の研究 開発領域と言った 技術 機器の導入に関連する広範囲な領域を扱うことを目標としている 今回視察を行ったアメリカ メイン州は過疎地域であり 加えて 産業衰退による離職者の再教育の必要性から 遠隔での教育支援が発達してきた それらの遠隔支援技術はそのまま聴覚障害学生の教育支援全般にも活かされている 日本においては 従来型集合教育の非効率性 ( コストパフォーマンス ) 改善を目的とする企業内教育や国際理解教育での海外との交流学習などにおいて遠隔支援技術が利用されてきた 近年はeラーニング プログラムとして 社会人大学院生に対する時間と場の制約からの開放 ( 利便性の向上 ) 大学入学時の高校教育の復習を目的とした リメディアル教育 においても用いられ始めている 発展の生い立ちには若干異なる点もあるが 実運用されてからの経験の長さや 用いられている技術 システム運用法などにおいて アメリカのそれは非常に参考になる また アメリカでは もともとコスト意識が高いこともあり これら支援に関わる技術 機器分野においてもビジネスとして成り立っている部分がある これらの情報を収集し 積極的に還元することを目的に今回の視察を実施した 現地滞在 3 日間という非常に短い時間に 数多くの見学 プレゼンテーション ミーティングを持ち かなり強行軍であった しかし 期待以上の情報が得られ 十分満足のいくものであったことに異論はない 今回得られた知見を 視察報告書の形で公にすることにより 日本の聴覚障害学生支援がより一層発展することを願っている 今回の視察の実現に尽力を頂いた NETAC MainePoint プロジェクト ディレクター ( 当時 )

4 の Barbara Keefe さんや PEN-International の吉田稔さんをはじめとする関連機関のスタ ッフの方々に厚く御礼申し上げる 大倉孝昭 ( メディア教育開発センター ( 大阪大谷大学 ))

5 目次 視察概要 5 アメリカメイン州立大学の教育環境 9 メイン州立大学における CART 利用状況 12 Access Captioning Technology 社の 15 遠隔 C-Print Service CaptionMIC( 音声認識による遠隔字幕付与システム ) の紹介 19 メイン州立大学における教育オージオロジー 23 WCSH6(Maine 州 Portland のローカル放送局 ) における 25 放送字幕の付与方法 視察メンバーによるプレゼンテーション 29

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7 視察概要 ここでは 今回視察を行った地域やスケジュールに関して概略する 1. 視察地今回の視察で訪問した州と都市 ( 訪問先 ) は 以下の通りである アメリカ合衆国 Maine 州 - Augusta(University of Maine at Augusta; UMA,Maine 州教育省 ) - Portland(WCSH6(Portland ローカル放送局 )) - Mackworth Island(Maine Educational Center for the Deaf and Hard of Hearing; MECDHH,Governor Baxter School for the Deaf; GBSD) 1-1 Maine 州 UMS 概要 Maine 州はアメリカ本土の最東北部に位置する州である 州都は Augusta 人口最大の都市は Portland である 州の人口は 132 万人 (2005 アメリカ 50 州の第 40 位 ) 人口密度は 人 /km 2 5

8 ( アメリカ平均の約半分 ( ちなみに日本の平均は 337 人 /km 2 )) である 人口面における過疎化と産業の衰退化における解雇者の再教育の必要性から 遠隔による教育支援が発達した地域である もちろんこれらの支援技術は聴覚障害学生支援にも用いられている Maine 州では 州立大学 (7 校 上図の赤丸部 ) と地区の大学支援センター (University College regional outreach centers;11 箇所 ) からなる大学組織網 UMS(University of Maine System) を形成しており 州立大学キャンパス間は UNET(UMS Network for Education and Technology Services) の光回線で結ばれる UMS は 1968 年に設立された 大学で行われる講義は 州立大学キャンパス 大学支援センターの他に ローカル ITV * サイト ( 州立高校 生涯教育センター 公民館など 75 箇所 )( 添付の図 ) においても遠隔で受講することができる [2] 視察メンバが初日に訪問した UMA は連携の州立大学であり 後半 2 日間お世話になった州立バクスターろう学校 (Governor Baxter School For The Deaf; MECDHH と併設 ) はローカル ITV サイトに該当する * ITV=Interactive Television [1] University of Maine System, [2] Distance Learning Site, 6

9 2. 視察期間 ( 日 ) ( 金 )(JST) 現地 3 日間 ( 到着日 離発日含まず ) 2-1 スケジュール詳細 1/7( 日 ) 1/8( 月 ) 1/9( 火 ) 1/10( 水 ) 1/11( 木 ) 1/12( 金 ) 9:00 UMA 見学 ミーティン MECDHH にてミーテ MECDHH 見学 ミーテ 6:00 グ ィング ィング ポートラン 10:00 - UMS 紹介 - MECDHH 紹介 見学 - 教育オージオロジス ド発 - UMA 紹介 見学 - C-Print 紹介 トによる補聴機器紹介 NW :00 - UMA 学習サポートサ - CaptionMIC 紹介 - USM スタッフと遠隔 8:25 ービス紹介 ミーティング デトロイト 12:10 - CART 紹介 - MECDHH 博物館見 着 12:00 デトロイト - UMS 遠隔学習シス 学 12:35 着 テム紹介 デトロイト 13:00 13:37 デトロイト 日本視察メンバーによる日本における支援技 発 NW :00 14:30 成田発 発 NW5888 術の紹介プレゼンテー ション テレビ局 (WCSH6) 見学 15:00 NW :33 ポートラン Maine 州教育省見学 16:00 16:00 ド着 成田着 17:00 Dr. & Mrs. Connick 邸 Dr. & Mrs. Gove 邸訪問 18:00 訪問 19:00 宿泊 EASTLAND PARK HOTEL, 157 High Street, Portland, ME 7

10 3. 視察メンバー視察に同行したメンバーは以下の通りである 大倉孝昭( メディア教育開発センター ( 大阪大谷大学 )) 金澤貴之( 群馬大学 ) 田中美希( 静岡福祉大学 ) 三好茂樹( 筑波技術大学 ) 河野純大( 筑波技術大学 ) 白澤麻弓( 筑波技術大学 ) 黒木速人( 筑波技術大学 ) コーディネーター吉田稔 (PEN-International) 手話通訳萩原彩子 ( 筑波技術大学 ) University of Maine System (UMS) Network for Education and Technology Services 8

11 アメリカメイン州立大学の教育環境 田中美希 ( 静岡福祉大学 ) 1. はじめにメイン州は大自然に恵まれた地域である それだけに交通の便は大変悪い 州内の高校を卒業すると他の州の大学に進学する学生が多いというのもうなずける しかも大学卒業後 メイン州に戻るケースも少ないという したがって過疎化が州内の産業に及ぼす影響が懸念されてきた こうした社会的な課題を解決するために 国と州はメイン州にある大学間ネットワークの強化 オンデマンドシステムの構築事業をスタートした ここではメイン州立大学におけるネットワーク環境及び障害学生へのサポート状況を紹介する 2. メイン州立大学のネットワーク環境 教育と技術のためのメイン州立大学システムネットワーク(University of Maine System Network for Education and Technology Services(UNET)) を活用したネットワークサービスが用意されている ネットワーク環境としてはメイン州立大学の7つのキャンパス同士を光ファイバーで接続し また他の大学との間でも ISDNなどを利用した接続が可能である こうしたネットワークサービスにより 他大学の授業を履修したり 自宅にいながらインターネットを活用した講義への参加が実現した また技術的に困難な問題が生じたときには 他大学の教員がサポートにあたるなど どの大学に在籍していても同等のサービスを受けることができる 9

12 3. テレビ会議システム及びサービス 図 1 図 2 テレビ会議のデモンストレーション 図 1 と 2 の部屋は光ファイバーで接続されている テレビ会議を行うときは 民間会社が製作した TV 会議システムであるポリコム (Polycom) に接続をする また 聴覚に障害のある学生に欠かせない字幕付与サービスは ポリコムとの共同研究を通じて開発された 図 1の部屋で コミュニケーションを支援する即時字幕制作 (Communication Access Realtime Translation =CART) 方式 を活用して音声を文字化し ネットワークコントロール室にデータを送信する また ビデオ ( アナログ ) 素材に字幕を付与し TELNETで配信することもある テレビ会議時に付与する字幕は データ配信と映像配信の2 通りの方法を使う 字幕を映像として送信する場合は 字幕専用のデータ圧縮機能を活用する 4.e ラーニングシステム及びサービス 図 3 e ラーニングの様子 画面に教員 素材を同時表示する 10

13 Web ブラウザを利用した教育サービスが実施されている パソコン画面の左側に教員の画像を配し 右側にパワーポイント等の資料が提示されると同時に音声が流れる 同時に パワーポイントの下側に教員の音声を文字化した字幕情報が刻々と表示される 字幕のオン オフは学生が自由に選択できる こうしたeラーニングの長所は 一度作成したコンテンツを次の学期に再利用できるという点にある また学生も理解度に応じて繰り返し学習することが可能である 離れた場所に高等教育を提供できるという点も大きな特徴で メイン州立大学ではこうしたeラーニングに大変力を入れている 5. 障害学生へのサポート今回 見学したメイン州立大学オーガスタ校舎にはろう学生 2 人 難聴学生 4 人が在籍する そこで 同じ講義を受けた学生のノートをコピーし ろう 難聴学生に渡すなどのサービス ( ノートテイク ) や 遠隔地手話通訳サービス カート (CART) による速記字幕を使った情報保障が実施されている またノートテイクの利用者は聴覚障害学生に限らない LD 障害 精神障害 上肢に障害のある学生へのサポートサービスとしても活用されている 例えば LD 障害を持っているため 音声により理解ができても文章を書くことが困難な障害学生のためにもノートテイクは活用されている また なかにはずっと椅子に座ることで腰を痛める学生もいるという そこで そうした学生には人間工学に基づいて開発された腰に優しい椅子なども用意されている そして さまざまな理由により学習そのものに困難を覚える学生をサポートするための学習サポートセンターも設置されている そこでは支援スタッフがサポートプログラムを考案し そのプログラムに沿ってサポートを実施している わが国でも参考になる仕組みといえるだろう 11

14 メイン州立大学における CART 利用状況 三好茂樹 ( 筑波技術大学 ) 1. はじめに米国では情報保障の手段として字幕提示による手法が幾つかある その一つが CART と呼ばれる速記字幕提示である CART システムは基本的に 講師や学生のいる講義室内で字幕作成を行う このようなシステムが米国の過疎地域であるメイン州で どのように利用されているのかについて調査した 2.CART システム概要米国の法廷速記者 ( コートリポーター ) 用の機械として発展してきた機材が 教育場面でも利用されるようになり 特殊な技能をようするものの 発話者の発話内容の すべて をリアルタイムで文字化するための手法である 基本的に1 名で操作し 複数人で交代しながら実施することはしばしばあるが 連携作業による字幕作成等は行わない 図 1に CART 用のキーボードを示す また 図 2に CART 用のソフトウェアを示す キーボードから入力された情報は シリアルケーブルによって接続されたノートPCに送られる その後 ノートPC 内のソフトウェア ( 図 2) によって処理され 各種出力手法によって外部機器へ送られるようになっている これらの機能は米国国内で販売されている CART システムによって異なるようである 図 1 CART 用キーボード 図 2 CART 用ソフトウェア 12

15 3. 遠隔教育での CART 使用法遠隔教育において CART による字幕提示は テレビ会議とリアルタイムでの講義配信 (1 講師対複数会場複数学生 ) で利用されている テレビ会議等では Polycom 社製のテレビ会議システム (Polycom VSX 7000s) を利用している ( 図 3 参照 ) アメリカ国内で購入可能な CART システムは 幾つかの種類があり その中には各種の通信方法および接続方 法を選択できるものもある メイン州 立大学で利用している Polycom 社製 図 3 CART システムと字幕表示部 のテレビ会議システム (Polycom VSX 7000s) には 字幕データを送受信する方法が2 種類ある 一つ目は 映像の走査線の 21 番目 ( ライン 21) を字幕情報送信用として利用する方法である この手法を利用する事によって テレビ会議システムに接続した外部テレビモニタ上の映像に字幕を重ね合わせて表示することができるようになる もう一つの手法は テレビ会議システムに付属のシリアルポート (RS-232C) を利用する方法であるが メイン州立大学では この手法は利用していない ところで CART による字幕は テレビ会議システムで結ばれている複数の会場へ配信され どの会場にいても字幕をみることができる ( 必ず字幕が見える設定にしている ) テレビ会議のビデオ信号は H.323 という圧縮方式である また 字幕データは低速のデータチャンネルで送られるため劣化しない 通信形態はインターネット環境での IP 通信やデジタルの電話回線 (ISDN) でも利用することが可能である このような CART システムとテレビ会議システムの組み合わせによって カリフォルニアの聴覚障害学生のために メイン州で CART による字幕作成を行い リアルタイムで情報保障を実施するということも可能となる 13

16 4. 日本語文字での利用についてテレビ会議システムのライン 21 を利用する方法は 通常のテレビ放送番組視聴時にキャプションを表示させる手法と同様である このシステムを日本でも利用できれば良いが 残念ながらアルファベットのみの表示しかできず 日本語の表示が不可能である もう一方の手法であるシリアルポートを利用する手法では 表示用の機材等を別途用意する必要があるが 日本語の送受信が可能となる 日本国内においてシリアルケーブル ( 図 4 参照 ) を利用し 文字情報を処理および送受信しているシステムでは この手法が最適であると言えよう 図 4 キーボードと PC 間のシリアル ケーブル接続 5. おわりにテレビ会議システムと CART の組み合わせによって 都市部に居住していなくても高等教育が受けられ また聴覚障害学生も情報保障が得られる仕組みをメイン州立大学が構築している この実現は上記のシステム構築だけではなく 巨額の予算を投じて実現した各地域を通信回線で結ぶ巨大なネットワークの存在が欠かせない このネットワークが基盤となって 聴覚障害学生の情報保障システムが円滑に運用できる環境を維持している また このような情報保障システムが 定常的に運用されているということに驚きを感じる 14

17 Access Captioning Technology 社の遠隔 C-Print Service 大倉孝昭 ( メディア教育開発センター ( 大阪大谷大学 )) 1. はじめに本年正月明け 昨年の NTID と PEPNet 2006 全米大会の視察で関心が集まった ICT を活用した聴覚障害者支援 について (1) ビジネスがどのように展開されているのか (2) 遠隔支援 (ICT を利用せざるを得ない ) の実際はどうなっているのかに的を絞って 視察 調査を実施した 2. 字幕提供サービス Maine 州の行政機関のホームページには 2 社が紹介されている Pam Carr 社と今回話を聞いた Access Captioning Technology (ACT) 社である 今回のプレゼンターの Lisa Sorenson 氏は Maine 州において NTID でC-Print のトレーニングを受けた最初の人で 最も経験が長い 同社代表である 尚 C-Print に関しては NTID の HP [1] に詳細な紹介がある 本年春にバージョンアップされる 特に ネットワーク関係についての機能強化がなされるので 遠隔字幕提供についての性能が上がる予定である 3.ACT 社について 3-1 会社と事業の概要 ACT 社と事業概要を以下に示す C-Print による同時字幕提供サービスの会社 6 年前に設立された ( 遠隔サービスは2 年半前に開始 ) 現在 専任キャプショニストは3 名であるが 今春 4 名に増員予定である 健康上の理由から キャプショニストは40 時間 / 週以上働いてはいけないことになっている 15

18 字幕提供サービスには 出張サービス( キャプショニストが現地へ出向き 字幕提供する ) と遠隔サービス ( 現地とは通信回線で接続される キャプショニストは 社内において字幕入力を実施する ) の 2 種のサービスがある サービス全体の注文は徐々に増えており 現在は注文の半分が遠隔字幕提供である 遠隔サービスは 移動費用がかからない分 出張サービスより安価に提供される 遠隔サービスについては サービス概要に関する説明( はじめに準備すること 資料収集 生徒と同じくらい予習する ことの必要性を伝える ) に困難が伴う 大学は授業の方式をなかなか変えないので オンラインで説明をすると受け入れてもらえないことが多い しかし 大学まで出向いて PC を見せれば納得される 事務方より学生の方が遠隔サービスの技術に対する理解が早い 大学も遠隔サービスを一度利用すると 繰り返し発注してくれるようになる 州議会などからの受注も増えているが ACT 社から売り込んだことはなく すべて顧客側が会社を探して発注をしてきている 種類の遠隔サービス (Internet 経由 ) ACT 社では 遠隔による字幕提供サービスを 2 種行っている 2 種のサービス形態について以下で概略する (1) 双方向サービス学習者がダイアルインで会社のサーバーに接続してきて利用する C-Print に Microsoft Netmeeting を併用して 双方向コミュニケーションを実施する方式である (2) 一方向サービス遠隔地のクライアントとキャプショニストがデスクトップの画面共有機能を用いる方式である 3-3 字幕提供の対象 ACT 社の字幕提供のサービス対象は 主に以下の通りである 講義 授業 双方向会議 州議会( 会議に参加できない議員さん向けの議事録提供サービス ) カンファレンス セミナーなどである 16

19 4. 遠隔字幕サービスの事例 遠隔字幕提供のデモンストレーション ( クライアント側 ) ネットミーティング窓 音声を会場から遠隔地のキャプショニストに送るために用いる 字幕窓会場の声を遠隔地 ( 会社 ) で受信し C-Print で文字化したものが 1 文字ずつリアルタイムに提示される 修正の様子もそのまま再現される チャット窓 会場でのトラブルなどの際 学生と遠隔地のキャプショニストが簡単なメッセージを交換できる <デモの印象 > 当日行われたデモでは Lisa Sorenson 氏の発話の約 3 秒後には当該文章の行頭単語が画面に出力された 要約しながらであるため 文末の方になると 遅れ や 意味ベースでの置換 ( 短い表現にする ) が多くなる傾向が見られた しかし 遠隔地にいるキャプショニストが 1 人で入力作業を実施しているという条件を考慮すれば 十分実用に耐えうる速度であるといえる 複数人の連携入力を導入して文字化率を上げる ( 要約率を下げる ) 必要性はあまり感じられなかった 効率という点で 同音異義語の少ない英語ならではの特徴だといえるだろう 17

20 5. 字幕サービスのビジネスとしての評価以下は ACT 社提供のサービスにこだわらず Speech to Text サービス全般について Lisa Sorenson 氏との Q&A をまとめたものである 1 音声や状況 ( 拍手や笑い声など ) の文字化率は最も高い 高価格 CART 2 音声の文字化率は最も高いが, 誤りもある 中価格 音声認識方式 3 音声の文字化率はやや低いが要約されている 安価 C-Print 現在 利用者は1から3いずれのサービスでも遠隔方式が選択可能 CART は法廷の速記サービス ( 発話全てを正確に文字化する目的 ) C-Print は聴覚障害者学生のための PC ノートテイク サービス ( 要約文章化目的 ) で設計されているため 位置づけが異なる そこに 音声認識 (Voice Captioning) 方式の文字化サービスが登場した 放送局における字幕サービスは 現在ステノグラファー (CART 入力者 ) を中心に運用されているが 徐々に VC が入り込んでいる しかし 精度の点で VC は CART に劣る 一方 授業など個人やグループを対象にした低価格サービスでは C-Print が優位である 特に 学生ボランティアにより普通の PC で安価な支援が実現できるため 最近仕事が増えている 精度より量の充実が望まれる現在の 授業の情報保障 においては C-Print が優勢である C-Print の入力方法の選択肢である音声認識エンジンについて 多くのキャプショニストの共通理解は 以下のようである 1 市販品ではドラゴンスピーチ ナチュラリー (DNS) が優位である 2 多数の言語において認識率が実用レベルに達するにはしばらく時間がかかる 3DNS を選択するより 十分訓練を積んだキャプショニストに委託した方が信頼性が高い [1]NTID の C-Print に関する情報 : 18

21 CaptionMIC( 音声認識による 遠隔字幕付与システム ) の紹介 黒木速人 ( 筑波技術大学 ) 1. はじめに CaptionMIC は 音声認識技術を用いた 大学等を対象にした授業向け字幕付与システムである 製造 販売を行う会社の ULTECH では これらのハードウェアのみを提供し 字幕付与のサービス自体は行わない アメリカにおける音声認識による字幕付与方式の一端を探る目的で CaptionMIC のセールス担当者とミーティングを持った その内容を報告する 2.ULTECH とは ULTECH[1] は放送向けの字幕挿入関連の機器を製造する会社で 1991 年に設立 2002 年に NCI(National Captioning Institute; テレビ字幕放送を全米に推進させるために設けられた非営利団体 ; テレビ向けに字幕サービスを提供している会社としては全米最大 )[2] に買収された NCI は 生字幕作成のために速記タイプ (Stenograph) 以外の方法を自社で得るために ULTECH を買収した 3.CaptionMIC と ccsatellite とは CaptionMIC は 音声 - 字幕変換を行う装置で PC 音声認識ソフト マイクなどで構成される CaptionMICでは 復唱による音声認識 1 の方式を採用しており ( 図 1) 復唱者(ULTECH では Voice Captioner と呼ぶ ) がこの装置を使用する 復唱者は教室内でマスクマイクを用いて復唱することもできれば 教室外の遠隔から復唱することもできる 音声認識のエンジンはViaVoice であり 現在 DragonSpeech の実装もテスト中である 復唱方式による生字幕だけでなく PCに読み込ませておいた事前原稿の呈示も切り替えで直ぐにできる 1 話者が話した内容を, 音声登録を済ませた復唱者が音声認識装置に対して復唱することで音声認識を行う音声 - 文字変換の方式 19

22 ccsatellite は 教室 復唱者間の音声 字幕の通信のための中継器の役割と 教室での字幕の出力の役割を果たす 字幕の出力はビデオ VGA Web ( 学生は Web ブラウザで字幕を閲覧 ) Line21 など 様々ある CaptionMIC と 1 台もしくは 2 台の ccsatellite が同時に使用される CaptionMIC と ccsatellite のみの組み合わせでは 遠隔ではなく ローカルな教室に字幕を提供する使用法となる 遠 隔地に対して字幕を呈示させる場合は ccsatellite が 2 台必要になり 2 台目を遠隔地に配置する ( 図 図 1 CaptionMIC による復唱音声認識の様子日本語の ありがと を単語登録し 認識させようと試みたが 英語版 ViaVoice では Are get though I got the などに誤変換された 2) ULTECH では もともと放送向けの字幕挿入機器を製造しており それらの機器の出力の仕方を変更すれば 講義向けの簡便な字幕付与システムが実現できると言う発想から CaptionMIC ccsatellite は開発された 現在 大学の講義における利用の他 連邦政府や教会でも用いられている 図 2 CaptionMIC と ccsatellite のシステム図 4. 復唱の訓練と復唱者の養成に関して ULTECH はハードウェアの会社であり 字幕付与のサービス自体は提供しないため 自社で復唱者の雇用 養成は行っていない CaptionMIC の購入者に対しても養成プログラム等の提供は行っておらず 復唱に関する方法のアドバイスのみ電話で行う場合がある 例えば 子 20

23 供向け番組や歴史番組など ゆっくり話す話者の復唱から始めなさい などである そのため CaptionMIC をうまく使いこなせる組織もあれば そうでない組織もある 復唱者の適性は様々であり 直ぐに 90% の復唱精度を達成できる人もいれば まったく出来ない人もいる ある導入先では 70% の方々が復唱者になった例もある ( 対応してくれた Mark さん曰く 60 80% の人が Voice Captioner になる能力を持っているだろうとのこと C-Print(PC 要約筆記の一種 ) などのキー入力のスキルと文の要約のスキルを兼ね備える人の養成の困難さを考えると この点が CaptionMIC の利点になる C-Print は meaning-to-meaning( 要約 ) であるのに対し CaptionMIC は 95 98% の字幕精度があるため word-to-word の要約のないシステムであると言える ) 復唱による字幕付与 (Voice Captioning) は まだ始まったばかりの方式で 復唱者は全米で 200 名以下と思われる 音声認識技術を用いて大学の授業向けに音声 - 文字変換を行うシステムとして IBM とカナダの Saint Mary s 大が共同で行っている Librated Learning[3] があるが これは講師が直接音声認識に対して音声入力を行う方式であるため 精度が良くないとのこと CaptionMIC の採用する復唱方式はその点においても優れている とのことである 5. 字幕付与サービスの費用に関して ULTECH 自体は字幕付与のサービスは提供しないために サービス対価と言うものは存在しないが 今回のプレゼンターであるセールス担当の Mark Hall 氏とのミーティングにおいて いくつか参考になる情報が得られたので下記に記述する NCI では 速記タイピスト (Stenographer) 以外に復唱者 (Voice Captioner) も雇用しているが NCI が放送用途ではない 授業向けに字幕サービスをした例はない NCI の Voice Captioner を雇えば $120/h は必要になり コストに見合わないためである C-Print のタイピストは約 $30/h の費用がかかり C-Print の Voice Captioner は安くても $60/h かかるとのことである (C-Print では音声認識入力にも対応している ) CaptionMIC を利用して 大学が自前で Voice Captioner を養成し アルバイトとして雇用すれば $10 $17/h の賃金で雇うことができる 自前で行うことで安価に字幕提供するというやり方が CaptionMIC の目指すところである 21

24 6. 字幕の精度に関してアメリカでは字幕に対する要求精度の規定はなく 放送字幕に関しては現状では存在する しないが問われる NCI では自社で精度の目標値を定めていて その値は 98.5% である CaptionMIC でそこまでの値を達成することは困難であるが 現状は容認できるレベルに達成しているとのことであった 最優秀な Stenographer の能力に 復唱による字幕付与 (Voice Captioning) は敵わないが あまり上手くない Stenographer よりかは高い精度の字幕を提供することができる 字幕精度を向上させる目的で 音声認識結果に対して修正を施すと言う考え方は アメリカにはない 復唱方式など 生の状況に対応する字幕付与の方式は リアルタイム性を重んじるため 修正を行うことでタイムロスに繋がるためである 修正を行う時間があるのであれば 音声で修正 ( は の間違い など ) するやり方が効率的である という考え方である [1] ULTECH ホームページ, [2] NCI ホームページ, [3] Librated Learning ホームページ, ミーティング日時 :2007 年 1 月 9 日 ( 火 )(EST) 15:00-16:00 ミーティング場所 :MECDHH(Maine Educational Center for the Deaf and Hard Hearing) 先方対応者 :ULTECH 社 Mark Hall (Director of Sales; セールス担当ディレクタ ) 22

25 メイン州立大学における教育オージオロジー 三好茂樹 ( 筑波技術大学 ) 1. はじめにメイン州にも聴覚障害学生が在籍する学校を巡回し 各聴覚障害学生に対する教育的効果に配慮した聴覚活用や訓練を行う教育オージオロジストが活躍している 教育オージオロジストたちは 聴覚障害学生個別の補聴器等や訓練を実施するだけではなく 教室内での学習環境に関するアドバイスや様々な音響的な補助機器についてのアドバイスを各学校に提供している 2. 教育現場での教育オージオロジストの役割教育オージオロジストは 聴覚を失った場合の診断 補聴装置を装着することの手助け そして聴覚を改善するための様々な教育的な指導をすることが主な役割である 当日対応して頂いた教育オージオロジストは メイン州で出生時から高校までを担当しており 教育環境である託児所や学校 ( 大学含む ) そして家庭環境下でのサポートを実施している 例えば 授業などにおいて 教員がどれだけ明瞭に発話しているか また教室の音響的な環境などの評価も行っている また 聴覚障害学生自身が聴覚的な情報取得が確実に確保されているかどうかなどの評価も行い 改善を図る手助けも行っている 一方 教員に対する聴覚障害への理解を進めるような啓蒙的な役割も担っている すなわち 聴力が無いということがどういうことなのかを正確に理解して貰い 聴覚障害者に対する教育的配慮の必要性を認識して貰うといったことである そのような教育的配慮下で成長した聴覚障害学生は 自分達にはどのような配慮が必要なのかを自分で要請できるようになるはずである と述べていた 教育オージオロジストと聴覚障害学生を図 1に示す 図 1 教育オージオロジストと聴覚障害学生 23

26 3. 教育現場での問題聴覚障害学生のジェシーさんは左の耳は完全に聴力は無くて 右の耳もかなりの聴覚障害があるとのことであった よって 右の耳にのみ補聴器をつけている 補聴器が一番役に立つ状況は 実際に話をする相手が自分の位置から 3 フィートから 6 フィート程度離れたところから発話する場合に 効果的であるとのことであった しかし 教室内においては 幾つかの問題点もある まず 教員がそのように近くに立つということは頻繁には無い状況なので 発話者が遠くなればなるほど聞こえなくなってしまい ある一定の距離以上になると もう何も聞き取れなくなるとのことである もう一つの問題は方向性の問題であり 全く聴力が無い側の耳の方に人が立って発話されると 頭部の回折によって聞き取りづらくなる 発話者との距離の問題の他に 方向性の問題もあるということである 一方 最近の教育環境においては 父兄たちが参加をしたり また学生たちに意見を述べさせたりなど そういう人たちからの音声も明瞭に聞き取ることが出来る必要がある このようなことからも 教室内で 適切な技術をどのような形態で整備するかということが重要になる 4. 各種補聴システムについてサウンドベンディングテクノロジーという技術の紹介がなされた 特別なスピーカーが置かれている教室内に 音を均等に分散させるシステムである また 各種補聴システム (FM 赤外線通信利用 ) の紹介がなされた ( 図 2 参照 ) 図 2 各種補聴システム 24

27 WCSH6(Maine 州 Portland のローカル 放送局 ) における放送字幕の付与方法 黒木速人 ( 筑波技術大学 ) 1. はじめにアメリカでは ほぼ 100% の TV 番組に対し字幕が付与される 字幕付与されることにより 聴覚障害者のみならず 健聴者 ( 例えば ESL( 英語が母国語以外の第 2 言語 ) の人達 ) にも恩恵があることが社会的に認知されている 字幕付与に関する法律の整備など日本とは異なる背景は数多くあるが 字幕付与を行う方法に関して アメリカの放送局ではどんな手法を採用しているかを把握するために見学を行った その結果を報告する 2.WCSH6 とは WCSH6 は Maine 州の最大の都市 Portland にある放送局である WCSH6 とは 放送局のコールサインである W( アメリカの放送局を示す )Congress Street Hotel( 設立当初の本部があった場所 ) の頭文字と 放送チャンネルの 6ch を意味する [1] [2] アメリカ 3 大ネットワークの 1 つである NBC のネットワーク局である 3. アメリカにおける放送番組に対する字幕付与 (Closed Caption; CC) に関する法律アメリカにおいて字幕付与に関連する法律は 3 法あり ADA(American Disabilities Act; 障害を持つアメリカ人法 ) TDCA(Television Decoder Circuitry Act; テレビデコーダ法 ) 電気通信法 (Telecommunications Act) がそれらである これらの制度は FCC(Federal Communications Commission; 連邦通信委員会 ) が現在管轄している ADA は Closed Caption の 基本環境の生成 ( 字幕挿入の義務の規定など ) の役割 TDCA が 物理環境の整備 ( 字幕デコーダ内蔵の規定など ) の役割 電気通信法が 運用環境の整備( 番組の放送に関する規定など ) の役割を果たす[3] [4] 例えば 電気通信法では 新規に製作される英語の TV ビデオ番組の 100%(AM6:00 AM2:00 の時間帯の番組 CM は除く ) に対し 2006 年 1 月までに字幕付与することと規定し これまで制作された英語番組に対しても 25

28 2008 年 1 月までに 75% を字幕付与することと規定している [5] 4. WCSH6 における字幕付与の方法 WCSH6 では 41 時間 / 週の番組を製作している 製作する番組は ニュース 天気 スポーツ Maine 州観光案内がほとんどである ドラマなどは自局では製作せず ネットワーク局である NBC の番組を使用する NBC が製作した番組には既に字幕が付与されているため WCSH6 では自局製作 の番組にのみ字幕を付与する 字幕制作の費用負担は番組の スポンサが行う この TV 番組の字幕は が提供 とい 図 1 テレビ字幕に関する説明の様子 う案内が TV 番組中に案内される 現在アメリカでは CM に対する字幕付与の義務はないが 顧客層の拡大などの理由で CM にも字幕付与をするスポンサは増加する傾向にある WCSH6 では 字幕付与に 2 種の方法を用いている リアルタイム字幕による方法と News Computer(Computer Script) による方法の 2 つである 4-1 リアルタイム字幕リアルタイム字幕は Caption Colorado[6] がサービスを実施している Caption Colorado は全米最大の放送向けリアルタイム字幕サービス会社で 全米で 100 社以上にサービス提供をしている 放送中の番組音声をアナログ電話回線にて Caption Colorado に送信する Caption Colorado では その音声を字幕化する ( 字幕化は Stenograph を使用 所要人数は不明 ) 字幕データをアナログ電話回線にて WSCH6 に戻し 放送中の番組に挿入する タイムラグは5 8 秒 (Portland Colorado の距離が 2000mile=3600km であることを考えると妥当とのこと ;Mike 氏談 ) 緊急時でも依頼を申し込んだ後 5 分以内にサービス提供を行う契約になっている 体制が整う 5 分間は字幕の付与が無くなるわけではなく ホワイトボードに書いた手書き文字を小画面 (Picture in Picture) にて呈示させる体制がある WSCH6 では約 10 時間 / 週 Caption Colorado に字幕サービスを依頼している 対談形式の番組 ニュース速報 緊急放送などに対して リアルタイム字幕は有用性を発揮する 送られてくる字幕の精度は 100% ではなく 多少の間違いが含まれることがある 例えば Portland の地名はインディアンの名残があるものもあるために 土地外の人には聞き慣れないことがある 番組を見ているのは Portland の人であるために そのような間違いに対して 26

29 は 何を示しているか ある程度判断が付くとのことである 4-2 News Computer による手法 News Computer による手法は キャスタが読む原稿を事前に News Computer に保存しておき キャスタの喋る音声に合わせて原稿の該当部分をオペレータがジョグダイアルでスクロールさせる ( 図 2) 原稿の該当部分は TV 映像に字幕としてスーパインポーズされると共に キャスタ用のプロンプタにも呈示される News Computer のソフトは Avid 社 [7]WinCueClient を使用しており ソフトにより複数の番組の原稿が管理されている News Computer への原稿の差し替えは非常に簡単 図 2 News Computer システム ( 左から News Computer 字幕スクロール用モニタ 字幕が合成された最終出力画面である ) であるため 番組中でも随時更新は可能である News Computer のバックアップとして 事前原稿を直接カメラで撮影し TV 映像にスー パインポーズさせる機材も脇に整備されている 5. Closed Caption に関する技術規格 5-1 字幕の記述に関するフォーマット字幕の記述フォーマットに関しては 文字色 使用フォント 下地の帯の色 呈示行数 1 行の文字数などの規定はなく 字幕の呈示位置に関しては 映像上の他の情報を隠さない位置に呈示すると言う規定のみ全米ルールとしてある WCSH6 では 黒色の帯に白文字 画面の最下段を避けた下位置に 3 行以内で呈示する CM によっては上位置に付けるものもある ( 商品名などは 下に呈示されるものが多いため ) 話者の変更は日本のように色の変更ではなく >> あるいは >> speaker_name: の記号で示す >>> の記号は ニュース番組における新しい話題や 2 者目以上の話者の発言を示す [8] 5-2 電気通信上の規格 従来の NTSC スタンダード画質 (SDTV) では Line21 と呼ばれる 21 本目の走査線に 字幕データが挿入される Line21 の放送では 1 本の走査線で 16bit のデータ (2Byte) を 27

30 送信する 1 フレームは奇数 偶数フィールドの 2 つのフィールドで構成され 1 秒間に 30 フレーム更新されるため 16bit 2 フィールド 30 フレーム =960bps(bit/ 秒 ) のデータ (120Byte/ 秒 ) を 1 秒間に送信する これは EIA-608 で規格化されている [9] ハイビジョン (HDTV) に関しては EIA-708 で規格化されている [10] [1] WCSH6 ホームページ, [2] search result about WCSH from Wikipedia, [3] 石川准 関根千佳 米国における字幕の歴史 [4] NCI, Related Lows, [5] FCC, Closed Caption Rules, [6] Caption Colorado, [7] Avid Technology, Inc., [8] search result about Closed Caption from Wikipedia, [9] search result about EIA-608 from Wikipeda, ミーティング日時 :2007 年 1 月 10 日 ( 水 )(EST) 14:30-16:00 ミーティング場所 :WCSH6 先方対応者 :WCSH6 社 Mike Marshall(vice president/programming & marketing; マーケティングマネージャ 会社のプロモーションメッセージ作成や政府の色々な放送に関する規制に自局の番組が遵守しているかどうかのチェックを担当 ) 28

31 視察メンバーによるプレゼンテーション 金澤貴之 ( 群馬大学 ) 1. はじめに今回のアメリカ視察では 日本側のメンバーによるプレゼンテーションの機会を頂くことができた 当初 6 名が発表する予定になっていたが 予想以上に参加者からの質問が多く寄せられ 結果的に 3 名のみの発表となってしまった 以下にそれぞれの概要と質疑応答の内容について紹介する 2.2 人入力によるPC 要約筆記の手法 ( 群馬大学金澤貴之 ) 日本で最も普及している要約筆記ソフト IPtalk を利用した 2 人の入力者が同時に入力する方法について紹介し その具体例として 群馬大学での利用状況について説明がなされた PC 画面では 一方の入力者がタイプしたものは 入力部 に表示され もう一方の入力者がタイプしたものは モニター部 に表示されるようになっている ( 図 1) 講演会などでは PC と同じ画面を大きなスクリーンに映し出している IPtalk の機能としては最大で8 人の連携が可能だが その場合は 休 憩している人もおり 交代する時に連絡が入るようになっている 休憩している人が字幕の修正をすることもできる 群馬大学では 2 名のみで情報保障を行っている 入力者は 2 人でパートナーを組み 聴覚障害学生がその斜め後ろに座る形態をとっている ( 図 2) その理由として PC 画面の見易さ 準備の簡単さに加えて 聴覚障害学生が友達と一緒に座りたいというニーズもあった 状況に 図 1 入力者の IPtalk 画面構成例 応じて 無線 LAN を使用する場合もあり 入図 2 2 人入力時の人員配置 29

32 学式では入力者は舞台の脇におり 聴覚障害学生はタブレット PC 上にリモートで送られる字幕を見る形をとった 質疑応答 : Q:2 人の入力者がいるが 聴覚障害学生が見るのはどの画面なのか? A:2 人の入力者はセンテンスごとに区切ってタイプし 2 人で1つの文章を作っていくので PC の画面は両方で同じものを表示している 大学の講義では PC2 台をクロスケーブルでつないでいるが 研究室での卒論指導では表示用の PC を何台か並べる形をとっている PC をたくさん並べる理由は 聴覚障害学生だけでなく 他の学生もモニタリングするためであり 時にはプロジェクターで表示することもある その時に重要なのは 講義と講義の間の休憩時間 10 分以内で設置できることである Q: この方法は 一言一句タイプするのか それとも要約しているのか? A: 完全に一言一句タイプするのは難しいが 内容は漏れのないようにしている Q:2 人の入力者はどのように役割を調整しているのか? A: 話し言葉を一人でタイプしようとすると間に合わないため 途中で追いつかなくなる その辺りを判断して 文章の切れ目からもう一人がタイプし始める はっきりしたルールはないが 情報が重ならないように 相手の入力状況を自分の PC 画面上で確認しながら お互いの呼吸で交代している そのため タイプが上手ではない人とベテランがパートナーになった場合は タイプするスピードが違うために要約が増え その結果文字数が減ることにもなる Q: 入力部のものを表示するのは誰かが調整しているのか? A:Enter キーを押すと 入力者がタイプしたものがそのまま画面に表示される Q: 見ている側は皆同じ画面を見ているのか? A: スクリーンには 入力部を表示していないものを映し出している しかし 群馬大学では リアルタイムで内容を把握したいという要望があったので 入力部分を含めたものを映している 3. まあちゃん ソフト開発( 静岡福祉大学田中美希 ) まあちゃん とは チャット機能を活用した文字による情報保障のためのソフトとして制作されたものであり 教育機関で活用しやすいように 障害学生の意見を取り入れて改良を重ねているものである 聾の学生を主な対象としているが 聞こえる人も利用可能である 発表では問題点を3つ挙げ それらについての対策が述べられた 30

33 1 点目は 話し言葉と 文章をただ読んだものとの違いが分かりにくいということであり ことばを入力後 あるボタンを押すことで 自動的に がつけられる機能を追加した また 漢字での表記が難しいときは漢字の後に ( ) で振り仮名を入れる機能も 用意されている ( 図 3) 2 点目は 話速が速いなどの理由で文章が 図 3 まあちゃん ソフト送り仮名を ( ) 内に示している様子 長くなってしまった時に 最初の文章が消えてしまうということである この改善のために スクロールで戻せる機能を追加した 3 点目は 2 人での連携入力ができないという点である 質疑応答 : Q: この方法は遠隔で行うことはできるか? A: できると思う Q: 聾の方はどのように利用してるのか? 自分のパソコンに移すことも考えているのか? A: 字幕をプリント コピーして 自宅でも利用可能 Q: 手話通訳よりもスクリーン表示のほうがいいという人向けなのか? A: 状況によりけり 手話通訳者は地域によってはいないということもある 4.Remote Captioning Services using Steno-captioning Technology in Japan( 筑波技術大学三好茂樹 ) リモートで利用することで 全国どこでも人材が少なくてすむ字幕システムについてのプレゼンがなされた 筑波技術大学では 講義室の内容と音声を遠隔地 ( 東京 ) のスタジオに送り スタジオから字幕が送り返されるシステムになっている 通信方法はISDNかインターネットを利用している 速記の特徴は 要約しないこと にある そのために メインの入力 1 人と構成担当 1 人の2 人で1グループとなり TV 番組の速記には1~3グループ利用する 入力には特殊なキーボードを使用する PS2 図 4 速記用キーボード 31

34 にそのまま繋がるもので 連携にはRS232を利用する 主に 10 個のキーで構成されるキーボード使って 文章をつくる ( 図 4) 手を前後左右に動かさないのでタイプが速いが 特殊な入力方法を覚える必要がある そのためのトレーニングをする2 年制の学校がある サポートをするには更に1 年くらい必要で 学校に通ったうちの約 5% しかできるようにならないという 手話通訳者の学校とほぼ同じくらい厳しい世界である 速記者はヘッドホンで音声を聞きながら 数秒単位で交代していく 天気予報の速記が最も難しく この速さに対応するための人数は6 人 専門用語が出てくる講義には 知識のある人間が単語を選択して入力することで 専門性の高い授業にも対応している 事前にパワーポイントや資料に出てくる専門用語 キーワードを抜き出し それをサポートとして使うことで 精度を高めている 速記者は PC とキーボードの間にキーワード表示用のノートPCを置き 利用している ( 図 5) 質疑応答 : Q: なぜ6 人必要なのか? A: 発話を正確に文字化するため 人数を減らすと 速記者に要約の技術は無いので内容が欠落したり 図 5 キーワード表示用ノート PC 精度が落ちたりしてしまう グループごとの反応度は同じだが 人数の違いで段階的に差が出てきてしまう Q: 動画で 声を出しながら速記していたのはなぜか? A: 速記者は自分がタイプし始める文章の先頭の音を発声する たとえば こんにちは なら こ と言うように 次のグループがタイプし始める位置が叫ばれると そこまでしか入力できない 速記に余裕があるときはローテーションが早まる Q:10 個はどういうキーなのか? A: 同時に複数のキーを押すと 自動的に決まったセンテンスが出てくる 一度押したときに出てくる文字の数はばらばらで まとまったフレーズが出てくるようになっている Q: 講義の映像と合わせて使うことはあるのか? A: 後日 字幕を資料として配布することはある Q:1 分間に何文字くらいタイプできるのか? A:350~400 文字程度 日本語入力なので英語とは比較できない 32

35 5. さいごに本プレゼンテーションの質疑応答を通じて得られた検討課題について以下にまとめる 1) 作成された文字データの活用 NTID では 情報保障のためにその場で作成された文字データは 積極的に活用していく方針をとっているが 日本においては 情報保障はリアルタイムでの通訳だという考え方にたち 作成された文字データを聴覚障害学生本人には渡すことは認めていないケースもある 情報保障に ICT が活用されるようになったことで 特に文字媒体については 容易にデータの保存 コピーが可能になった ただ 技術的に可能であるということと 作成されたデータをどのように活用していくかは別問題であり 日米双方において 今後の新たな検討課題として議論が必要なところである 2) どの程度の支援者を投入し どの程度の情報量を保障するのかアメリカでのパソコン要約筆記は 通常 1 名で入力作業を行っており 話し言葉の情報量の全てを文字化できるわけではなく 要約した形での文字情報の提示にならざるを得ない 一方 日本のパソコン要約筆記では 2 名による連携入力も行われており その場合 ほぼ要約せずに文字化することが可能になっている さらに今回のプレゼンテーションでは 音声情報をほとんど漏らさずに字幕化する先端技術の紹介もあった 情報量は減るが すでに恒常的に運用されている手段を持ち そのイメージを頭に置いて話を聞くアメリカ側からすれば なぜ 2 名 あるいは6 名もの入力者が必要なのかについて 理解が得られにくかったのではないかと思われる 日本側のプレゼンテーションのそれぞれの位置づけや目的を最初に丁寧に伝えておけば 双方の理解は一層進んだかもしれない 当日は以上の内容で時間切れとなってしまったが 本プレゼンテーションの翌日 Barbara 氏からは ぜひ質問したかったこと として (1) どのように組織化しているのか (2) 予算はどのように確保しているのか の2 点があげられた この 2 点にこそ まさにアメリカの関係者から見た日本のプレゼンテーションに対する本質的な疑問であったといえよう 現実的に運用可能な範囲で 実践の中で恒常的に ICT を活用しているアメリカからすれば これだけの人的 & 物的資源を投入して どうやってコスト的に間に合わせているのか? という素朴な疑問を感じたのは 至極当然のことといえる 同時にこの質問は 日本側にとっての大きな課題でもある 日本側にはまだ この質問に答えられるだけの ICT の恒常的な利用体制が整っているとは言えないからである そのためにも 情報保障 33

36 の手段として ICT が日常的に活用される環境の整備に向けて PEPNet-Japan の事業展開 を進めていく必要があると思われる 34

37 著者大倉孝昭 ( メディア教育開発センター ( 大阪大谷大学 )) 金澤貴之 ( 群馬大学 ) 田中美希 ( 静岡福祉大学 ) 三好茂樹 ( 筑波技術大学 ) 黒木速人 ( 筑波技術大学 ) 協力者河野純大 ( 筑波技術大学 ) 白澤麻弓 ( 筑波技術大学 ) 吉田稔 (PEN-International) 磯田恭子 ( 筑波技術大学 ) 萩原彩子 ( 筑波技術大学 ) 聴覚障害学生サポートネットワークの構築を目指して - 第 4 回アメリカ視察報告書 - 発行日 :2007 年 7 月 2 日発行 : 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク PEPNet-Japan: The Postsecondary Education Programs Network of Japan 茨城県つくば市天久保 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター支援交流室聴覚系 WG 内 PEPNet-Japan 事務局白澤麻弓 PEPNet-Japan は筑波技術大学によって運営されており, 日本財団の助成に よる PEN-International( 本部 : ロチェスター工科大学 NTID 内より一部支援を受けています

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