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- ひでき いなおか
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1 漢 方 基 本 講 座 八 網 六 病 位 気 血 水 五 臓 論 医 療 法 人 財 団 北 聖 会 北 聖 病 院 漢 方 内 科 後 藤 博 三
2 = I-1. 証 とは 証 とは 患 者 が 現 時 点 で 現 している 症 状 を 陰 陽 虚 実 寒 熱 表 裏 六 病 位 気 血 水 五 臓 などの 漢 方 医 学 上 の 基 本 概 念 をとおして 認 識 し さらに 病 態 の 特 異 性 を 示 す 症 候 を 捕 らえた 結 果 を 総 合 して 得 られる 診 断 であり 治 療 の 指 示 である 西 洋 医 学 東 洋 医 学 診 断 診 断 治 療 病 因 を 解 析 治 療 生 体 の 反 応 を 解 析
3 I-2. 証 をたてる 生 体 は 種 々の 影 響 により 変 化 していく 流 動 的 な 存 在 である その 病 態 を 東 洋 医 学 の 概 念 を 通 して 診 断 し その 病 態 に 応 じた 漢 方 薬 を 選 択 することが 証 をたてることである 生 体 の 証 流 動 的 生 体 の 東 洋 医 学 的 病 態 ( 陰 陽 気 血 水 など) は 変 化 する 症 状 四 診 陰 陽 虚 実 気 血 水 など の 概 念 生 体 の 証 に 一 致 する 方 剤 を 選 択 する 方 剤 の 証 漢 方 薬 A 漢 方 薬 B 漢 方 薬 C 普 遍 的 漢 方 薬 の 適 応 病 態 は 方 剤 により 不 変
4 II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 八 綱 陰 陽 虚 実 寒 熱 表 裏 六 病 位 太 陽 病 少 陽 病 陽 明 病 太 陰 病 少 陰 病 厥 陰 病 気 血 水 気 虚 気 鬱 気 逆 瘀 血 血 虚 水 滞 五 臓 論 肝 心 脾 肺 腎
5 II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 1. 陰 陽 (いんよう) 種 々の 要 因 により 生 体 の 恒 常 性 が 乱 された 場 合 生 体 の 呈 する 修 復 反 応 の 性 質 が 総 じて 熱 性 活 動 性 発 揚 性 のものを 陽 の 病 態 ( 陽 証 )とい う これに 対 して 総 じて 寒 性 非 活 動 性 沈 降 性 のものを 陰 の 病 態 ( 陰 証 )という 陽 証 暑 がりで 薄 着 を 好 む 首 から 上 に 汗 をかく 冷 水 を 好 んで 多 飲 する 顔 面 が 紅 潮 眼 球 の 充 血 高 体 温 傾 向 脈 が 速 い 陰 証 寒 がりで 厚 着 を 好 む 電 気 毛 布 など 温 熱 刺 激 を 好 む 顔 面 が 蒼 白 低 体 温 傾 向 背 部 腰 部 首 の 周 囲 が 寒 がる 四 肢 末 梢 が 冷 える
6 II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 2. 虚 実 (きょじつ) 実 の 病 態 ( 実 証 )とは 生 体 に 加 わった 外 乱 因 子 が 強 力 で これに 対 し て 動 員 された 気 血 の 力 が 旺 盛 な 病 態 である これに 対 して 動 員 された 気 血 の 力 が 弱 い 病 態 を 虚 の 病 態 ( 虚 証 )という 実 証 虚 証 眼 光 音 声 に 力 がある 脈 が 充 実 腹 力 が 充 実 皮 膚 の 色 つ やがよい 発 赤 腫 脹 の 著 しい 皮 疹 激 しい 疼 痛 便 臭 の 強 い 便 眼 光 音 声 に 力 がない 脈 が 無 力 腹 力 が 軟 弱 皮 膚 の 色 つ やが 悪 い 自 然 発 汗 傾 向 寝 汗 便 臭 の 少 ない 便 胃 下 垂
7 陰 証 寒 性 傾 向 陰 陽 虚 実 の 概 念 図 実 陽 証 熱 性 傾 向 陰 実 証 生 体 の 反 応 性 が 強 い 陽 虚 証 生 体 の 反 応 性 が 弱 い 虚
8 陰 陽 虚 実 を 考 慮 した 方 剤 の 選 択 法 1) 陽 実 陽 虚 陰 実 陰 虚 を 判 断 する 2)その 処 方 群 の 中 で 主 症 状 に 対 応 する 方 剤 を 選 択 する 感 冒 に 頻 用 される 方 剤 の 陰 陽 虚 実 における 位 置 実 麻 黄 湯 葛 根 湯 陰 麻 黄 附 子 細 辛 湯 桂 枝 麻 黄 各 半 湯 桂 枝 二 越 婢 一 湯 陽 真 武 湯 虚 桂 枝 湯 小 青 竜 湯
9 陽 証 と 陰 証 は 生 体 の も つ エ ネ ル ギ ー の 違 い 陽 証 陰 証 実 証 と 虚 証 は 生 体 の 反 応 性 の 違 い 生 体 の 反 応 性 外 因 ( 外 邪 ) 陽 証 では 強 い 外 因 (インフ ルエンザなど)に 対 して 強 実 い 反 応 ( 高 熱 関 節 痛 激 しい 咳 嗽 など)を 示 し 弱 虚 い 外 因 ( 感 冒 など)に 対 し て 弱 い 反 応 ( 軽 い 咽 頭 痛 な ど)を 示 す 虚 陰 証 ではいずれの 外 因 に 対 虚 しても 弱 い 反 応 しか 呈 すこ とができない
10 症 例 1 20 才 の 男 子 学 生 今 朝 から 少 し 頭 が 重 かったが 講 義 に 無 理 を して 出 ていたところ 夕 方 4 時 頃 から 頭 痛 が 強 まり 熱 感 も 出 てきた 午 後 5 時 来 院 体 温 は 38.5 脈 は 浮 数 実 で 舌 に 著 変 なし 自 然 発 汗 の 傾 向 は なく 後 頭 部 から 肩 甲 間 部 にか けて 背 筋 が 強 くこっている 自 覚 的 にも 後 頭 部 の 緊 迫 感 がある 症 例 2 20 才 の 女 子 学 生 ここ 数 日 精 神 的 なス トレスが 重 なったためか 熟 睡 できなかっ た 今 日 の 昼 頃 から 軽 い 頭 重 感 と 身 体 の 違 和 感 があった 夕 方 になると 咽 頭 痛 と 悪 寒 が 加 わったが 家 庭 教 師 のアルバイ トがあり 無 理 をして 出 かけた これを 終 える 頃 から 本 格 的 に 気 分 が 悪 くなった ため 受 診 脈 はやや 浮 で 弱 舌 には 特 変 がない 手 足 が 冷 えており 顔 色 もさえ ない 日 頃 の 元 気 がすっかり 失 せている 自 汗 の 傾 向 はなく 体 温 が37.4 であ るのに 熱 感 がなく ひたすらゾクゾクと 寒 いという 陽 証 の 病 態 麻 黄 湯 : 喀 痰 咳 嗽 発 熱 葛 根 湯 : 発 熱 咳 嗽 項 背 部 のこり 小 青 竜 湯 : 水 様 鼻 汁 咳 嗽 桂 枝 湯 : 発 熱 頭 痛 陰 証 の 病 態 麻 黄 附 子 細 辛 湯 : 咳 嗽 咽 頭 痛 真 武 湯 : 頭 痛
11 II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 3. 寒 熱 (かんねつ) 生 体 が 外 乱 因 子 によって 恒 常 性 を 乱 された 場 合 生 体 が 呈 する 病 状 が 熱 性 ( 熱 感 充 血 局 所 温 度 の 上 昇 )であるか 寒 性 ( 冷 感 冷 え 血 流 の 低 下 局 所 温 度 の 低 下 )であるか 分 かつ 考 え 方 である 寒 熱 の 認 識 は 陰 陽 の 認 識 の 一 部 を 構 成 する 要 素 であるが もっぱら 局 所 的 な 病 状 の 認 識 法 として 用 いられる 熱 証 の 所 見 として 顔 面 の 充 血 紅 潮 口 渇 頻 脈 灼 熱 性 の 疼 痛 などがあり 寒 証 の 所 見 として 顔 面 蒼 白 徐 脈 四 肢 の 冷 えなどがある 同 一 人 に 寒 熱 が 混 在 することも 多 く 上 熱 下 寒 ( 上 部 に 熱 感 があり 下 半 身 に 冷 えがある)などがその 例 である
12 熱 真 熱 仮 寒 上 熱 下 寒 黄 連 解 毒 湯 など 白 虎 加 人 参 湯 四 逆 散 など 加 味 逍 遥 散 苓 桂 朮 甘 湯 など 四 肢 厥 冷 寒 真 寒 仮 熱 当 帰 四 逆 湯 など 真 武 湯 人 参 湯 など 四 逆 湯 など
13 寒 熱 に 基 づいた 方 剤 の 選 択 法 主 訴 ) 蕁 麻 疹 症 例 A) 40 才 男 性 時 々 生 じる 蕁 麻 疹 で 来 院 赤 ら 顔 で 暑 がり 他 覚 所 見 として 脈 候 はやや 沈 実 舌 候 は 紅 舌 黄 苔 腹 候 は 腹 力 実 解 答 : 黄 連 解 毒 湯 ( 少 陽 病 期 実 証 ) 症 例 B) 36 才 女 性 時 々 生 じる 蕁 麻 疹 で 来 院 上 半 身 はそれほどでも ないが 下 肢 は 少 し 冷 える 蕁 麻 疹 発 症 時 に 時 に 熱 感 とたまに カーと 上 半 身 が 熱 くなることがある 他 覚 所 見 として 脈 候 は 弦 で 弱 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 やや 軟 解 答 : 加 味 逍 遥 散 ( 少 陽 病 期 虚 証 )
14 II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 4. 表 裏 (ひょうり) 表 証 とは 頭 痛 発 熱 項 背 筋 のこわばり 関 節 痛 など 体 表 部 に 症 状 が 表 出 されている 状 態 をいう これに 対 して 裏 証 とは 腹 満 下 痢 便 秘 などの 症 候 から 成 り 立 っている また 咳 嗽 胸 痛 などの 胸 郭 内 症 状 や 悪 心 嘔 吐 など 上 部 消 化 器 症 状 は 半 表 半 裏 (はんぴょうはんり) としてとらえる 次 に 述 べる 六 病 位 に 照 らし 合 わせると 表 証 は 太 陽 病 期 (たいようびょうき) 半 表 半 裏 証 は 少 陽 病 期 (しょうようびょ うき) 裏 証 は 陽 明 病 期 (ようめいびょうき)から 厥 陰 病 期 (けっち んびょうき)に 対 応 する 例 えば 葛 根 湯 陰 陽 では 陽 証 虚 実 では 実 証 寒 熱 では 熱 証 表 裏 では 表 証 六 病 位 では 太 陽 病 気 血 水 では 気 鬱 五 臓 論 では 肺 特 徴 項 背 の 強 ばり
15 表 証 とは 頭 痛 発 熱 項 背 筋 のこわばり 関 節 痛 など 体 表 部 に 症 状 が 表 出 されている 状 態 半 表 半 裏 (はんぴょうはん り)とは 咳 嗽 胸 痛 などの 胸 郭 内 症 状 や 悪 心 嘔 吐 など 上 部 消 化 器 症 状 裏 証 とは 腹 満 下 痢 便 秘 などの 症 候 から 成 り 立 ってい る
16 主 訴 ) 下 痢 表 裏 に 基 づいた 方 剤 の 選 択 法 症 例 A) 今 朝 から 頭 痛 悪 寒 発 熱 があり 食 欲 不 振 と 下 痢 がある 他 覚 所 見 として 手 足 は 冷 たく 脈 候 はやや 浮 虚 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 弱 で 振 水 音 を 認 める 解 答 : 桂 枝 人 参 湯 構 成 生 薬 : 桂 皮 人 参 白 朮 甘 草 乾 姜 症 例 B) 元 来 食 が 細 く 疲 れやすい 数 ヶ 月 前 から 下 痢 を 時 々 生 じるようにな った また 腹 部 を 中 心 に 冷 えを 自 覚 する 他 覚 所 見 として 脈 候 はやや 沈 で 弱 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 弱 で 振 水 音 を 認 める 解 答 : 人 参 湯 構 成 生 薬 : 人 参 白 朮 甘 草 乾 姜
17 陰 陽 虚 実 に 表 裏 を 加 えた 概 念 図 ウイルス 性 胃 腸 炎 に 用 いられる 漢 方 薬 実 裏 にちかい 葛 根 湯 黄 芩 湯 表 実 陰 麻 黄 湯 葛 根 湯 真 武 湯 桂 枝 人 参 湯 五 苓 散 陽 陰 麻 黄 附 子 細 辛 湯 桂 枝 麻 黄 各 半 湯 桂 枝 二 越 婢 一 湯 陽 虚 真 武 湯 桂 枝 人 参 湯 虚 桂 枝 湯 小 青 竜 湯 表 証 と 裏 証 の 両 面 をもつ
18 陰 陽 と 虚 実 寒 熱 表 裏 の 関 係 実 虚 陽 熱 寒 陰 表 裏
19 II. 漢 方 の 基 本 概 念 と 診 断 法 5. 六 病 位 (ろくびょうい) 疾 病 状 態 は 生 体 の 側 の 気 血 水 の 量 と 外 乱 因 子 の 変 化 に 伴 い 時 々 刻 々と 流 動 するという 理 念 が 六 病 位 による 疾 病 のステージ 分 類 である 疾 病 のステージを 陽 と 陰 に 大 別 し 陽 の 群 を 太 陽 病 期 少 陽 病 期 陽 明 病 期 に 分 け 陰 の 群 を 太 陰 病 期 少 陰 病 期 厥 陰 病 期 に 分 類 する 前 述 した 証 は 時 々 刻 々と 変 化 する というのは この 概 念 に 基 づき 病 態 が 変 化 すると 考 えるからである 例 えば かぜのひき 初 めには 太 陽 病 期 の 症 状 がしばしば 認 められる それが 治 癒 せず 進 行 すると 食 欲 不 振 や 弛 張 熱 などの 症 状 が 現 れ 少 陽 病 期 に 移 行 する さらに 高 熱 が 遷 延 する 陽 明 病 期 や 体 力 の 極 端 に 疲 弊 した 太 陰 少 陰 病 期 に 移 行 し ていく 厥 陰 病 期 は 重 篤 な 肺 炎 などに 移 行 した 末 期 的 な 病 状 である
20 水 際 病 毒 体 力 内 陸 首 都 圏 首 都 裏 表 半 表 半 裏 太 陽 病 期 少 陽 病 期 陽 明 病 期 太 陰 病 期 少 陰 病 期 厥 陰 病 期
21 六 病 位 における 主 要 症 状 と 主 な 治 療 方 剤 陰 陽 病 位 主 要 症 候 主 な 治 療 方 剤 陽 証 太 陽 病 期 悪 寒 発 熱 頭 痛 項 背 部 のこわばり 疼 痛 関 節 痛 葛 根 湯 小 青 竜 湯 少 陽 病 期 悪 心 嘔 吐 食 欲 不 振 胸 内 苦 悶 弛 張 熱 小 柴 胡 湯 半 夏 厚 朴 湯 陽 明 病 期 腹 満 便 秘 口 渇 身 体 深 部 の 熱 感 大 承 気 湯 白 虎 加 人 参 湯 陰 証 太 陰 病 期 腹 満 腹 痛 食 欲 不 振 下 痢 腹 の 冷 え 少 陰 病 期 全 身 倦 怠 感 手 足 の 冷 え 背 部 悪 寒 胸 内 苦 悶 下 痢 厥 陰 病 期 全 身 の 冷 え 不 消 化 下 痢 便 口 内 乾 燥 胸 内 苦 悶 小 建 中 湯 当 帰 芍 薬 散 真 武 湯 麻 黄 附 子 細 辛 湯 茯 苓 四 逆 湯
22 六 病 位 に 基 づいた 方 剤 の 選 択 法 主 訴 ) 咳 痰 症 例 A) 今 朝 から 悪 寒 発 熱 があり 喀 痰 を 伴 う 咳 嗽 がある 自 汗 はない 他 覚 所 見 として 脈 候 は 浮 実 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 中 等 度 胸 脇 苦 満 を 認 める 解 答 : 麻 黄 湯 ( 太 陽 病 期 陽 証 実 証 表 証 熱 証 ) 構 成 生 薬 : 麻 黄 杏 仁 桂 皮 甘 草 症 例 B) 一 週 間 前 から 喀 痰 を 伴 う 咳 嗽 がある 夕 方 に 熱 っぽい 自 汗 と 口 渇 がある 他 覚 所 見 として 脈 候 はやや 浮 で 弦 実 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 中 等 度 解 答 : 麻 杏 甘 石 湯 ( 少 陽 病 期 陽 証 実 証 半 表 半 裏 証 熱 証 ) 構 成 生 薬 : 麻 黄 杏 仁 石 膏 甘 草
23 麻 黄 湯 と 麻 杏 甘 石 湯 麻 黄 杏 仁 + 桂 皮 = 麻 黄 湯 陽 実 表 証 太 陽 病 甘 草 + 石 膏 = 麻 杏 甘 石 湯 陽 実 半 表 半 裏 証 少 陽 病
24 6. 気 血 水 この 概 念 は 気 血 水 が 生 体 の 基 本 をなすという 東 洋 医 学 の 理 念 に 基 づ き 気 血 水 の 不 調 により 病 気 が 生 ずるとする 考 え 方 である 気 血 水 のいずれが 主 役 となるかで 病 状 も 異 なり 治 療 方 針 も 違 ってくる 以 下 にその 病 状 と 治 療 の 主 体 となる 漢 方 薬 を 概 説 する 1) 気 気 とは 生 命 活 動 を 営 む 根 源 的 なエネルギーである 気 の 異 常 による 病 態 には 次 の3つがある 気 虚 (ききょ): 気 の 量 に 不 足 を 生 じた 病 態 である 生 命 体 としての 活 力 の 低 下 として 表 現 される 治 療 薬 として 薬 用 人 参 を 主 体 とした 人 参 湯 類 と 桂 皮 を 主 体 とした 桂 枝 湯 類 が 用 いられる
25 気 欝 (きうつ): 本 来 順 調 に 体 内 を 巡 っている 気 の 循 環 に 停 滞 を 来 した 病 態 である 停 滞 した 部 位 により 種 々の 症 状 を 呈 する 治 療 薬 として 香 蘇 散 や 半 夏 厚 朴 湯 などが 用 いられる
26 気 逆 (きぎゃく): 気 の 循 環 の 失 調 した 病 態 である 腹 部 を 起 点 に 胸 内 に 動 悸 を 生 じ さら に 頭 痛 などを 起 こすもの 胸 部 を 起 点 に 咳 嗽 胸 満 感 を 伴 って 咽 喉 部 絞 扼 感 顔 面 紅 潮 怒 責 などを 起 こすもの 心 窩 部 の 不 快 感 で 発 し 胃 液 を 吐 出 するもの 四 肢 末 梢 を 起 点 として 冷 痛 が 中 枢 側 へ 波 及 するもの が 認 められる 治 療 方 剤 として 桂 皮 甘 草 を 配 剤 する 桂 枝 人 参 湯 苓 桂 甘 棗 湯 桂 枝 加 竜 骨 牡 蛎 湯 や 加 味 逍 遥 散 呉 茱 萸 湯 などが 用 いられる
27 気 虚 気 欝 気 逆 主 症 状 身 体 がだるい 気 力 がない 疲 れやすい 食 欲 不 振 風 邪 をひきやすい 抑 うつ 傾 向 喉 のつかえ 季 肋 部 のつかえ 感 腹 部 膨 満 感 朝 調 子 が 悪 い 冷 えのぼせ 動 悸 発 作 発 作 性 に 生 じる 症 状 ( 頭 痛 咳 腹 痛 ) 顔 面 紅 潮 臨 床 応 用 消 化 器 疾 患 悪 性 腫 瘍 諸 疾 患 の 重 症 時 高 齢 者 の 諸 疾 患 など うつ 状 態 咽 喉 神 経 症 喘 息 過 敏 性 腸 症 候 群 頭 痛 症 など 片 頭 痛 不 整 脈 喘 息 発 作 過 敏 性 腸 症 候 群 更 年 期 障 害 など 使 用 方 剤 人 参 湯 類 ( 人 参 湯 六 君 子 湯 ) 桂 枝 湯 類 ( 桂 枝 湯 小 建 中 湯 )など 香 蘇 散 半 夏 厚 朴 湯 など 桂 枝 人 参 湯 加 味 逍 遥 散 苓 桂 甘 棗 湯 など
28 2) 血 血 とは 血 液 のみを 指 すのでなく 東 洋 医 学 では 生 体 の 物 質 的 側 面 を 支 え る 赤 色 の 液 体 を 意 味 する このことから 皮 膚 や 毛 髪 感 覚 器 の 異 常 も 血 の 異 常 として 捉 える 血 の 異 常 による 病 態 には 次 の2つがある 血 虚 (けっきょ): 血 の 量 に 不 足 を 生 じた 病 態 である 消 耗 性 疾 患 外 科 的 侵 襲 消 化 管 出 血 不 正 性 器 出 血 などの 血 の 消 費 の 亢 進 や 成 長 に 見 合 った 血 の 生 成 ができない 薬 物 などにより 血 の 生 成 が 障 害 されるなど によりもたらされる 治 療 方 剤 として 四 物 湯 や 芎 帰 膠 艾 湯 が 代 表 的 であ る 術 後 などで 気 虚 を 伴 う 場 合 は 十 全 大 補 湯 なども 頻 用 されている
29 瘀 血 (おけつ): 気 とともに 体 内 を 順 調 に 巡 るべき 血 の 流 通 に 障 害 をきたした 病 態 である 外 的 なストレス( 寒 湿 熱 ) 打 撲 手 術 の 他 に 精 神 的 ストレス 運 動 不 足 睡 眠 不 足 便 秘 などによりもたらされる 桃 核 承 気 湯 桂 枝 茯 苓 丸 当 帰 芍 薬 散 などが 代 表 的 な 瘀 血 改 善 薬 である
30 主 症 状 血 虚 貧 血 肌 荒 れ 脱 毛 眼 精 疲 労 耳 鳴 筋 力 低 下 瘀 血 肩 こり 生 理 不 順 便 秘 しみ そばかす 臨 床 応 用 皮 膚 科 疾 患 神 経 筋 疾 患 術 後 諸 疾 患 に 随 伴 する 貧 血 など 婦 人 科 疾 患 動 脈 硬 化 性 疾 患 皮 膚 科 精 神 科 疾 患 外 傷 など 使 用 方 剤 四 物 湯 芎 帰 膠 艾 湯 など 桃 核 承 気 湯 桂 枝 茯 苓 丸 当 帰 芍 薬 散 など
31 3) 水 水 とは 生 体 の 物 質 的 側 面 を 支 える 無 色 の 液 体 である この 水 が 偏 在 し た 病 態 を 水 滞 (すいたい)あるいは 水 毒 (すいどく)という 外 乱 因 子 ( 風 寒 湿 )あるいは 気 血 の 異 常 ( 気 虚 瘀 血 ) 五 臓 の 異 常 ( 特 に 腎 )によって 生 じる 水 滞 の 生 じる 部 位 で 適 応 となる 方 剤 も 選 択 される 身 体 の 重 い 感 じ めまいなどを 主 とする 全 身 型 では 五 苓 散 や 真 武 湯 朝 のこわばり 関 節 痛 を 主 とする 皮 膚 関 節 型 では 桂 枝 二 越 脾 一 湯 や 防 己 黄 耆 湯 喘 息 などの 胸 内 型 で 水 様 鼻 汁 を 伴 う 場 合 は 小 青 竜 湯 つわりなどの 悪 心 嘔 吐 などの 心 下 型 では 小 半 夏 加 茯 苓 湯 など がその 例 である
32 全 身 型 皮 膚 関 節 型 胸 内 型 心 下 型 主 症 状 身 体 がだるい 全 身 のむくみ 下 痢 めまい 感 立 ちくらみ 尿 利 異 常 こわばり 関 節 腫 脹 皮 疹 水 様 鼻 汁 喘 鳴 悪 心 嘔 吐 臨 床 応 用 浮 腫 性 疾 患 自 律 神 経 失 調 症 めまい 症 泌 尿 器 科 疾 患 消 化 器 疾 患 など 頸 椎 症 関 節 リウマチ 変 形 性 膝 関 節 症 皮 膚 疾 患 など アレルギー 性 鼻 炎 気 管 支 喘 息 心 不 全 など 逆 流 性 食 道 炎 機 能 性 胃 腸 症 など 使 用 方 剤 五 苓 散 真 武 湯 など 桂 枝 二 越 脾 一 湯 防 己 黄 耆 湯 など 小 青 竜 湯 など 小 半 夏 加 茯 苓 湯 など
33 気 血 水 の 概 念 による 処 方 の 選 択 法 1) 主 症 状 を 気 血 水 の 概 念 にあてはめて 処 方 群 を 選 択 する 2)その 処 方 群 の 中 で 陰 陽 虚 実 等 の 概 念 を 導 入 し 処 方 を 絞 る 例 : 生 理 不 順 瘀 血 の 処 方 群 を 選 択 陰 陽 虚 実 から 処 方 を 絞 る 特 異 的 症 候 から 処 方 を 絞 る 例 : 陽 実 証 例 :のぼせ 桃 核 承 気 湯 大 黄 牡 丹 皮 湯 桂 枝 茯 苓 丸 加 味 逍 遥 散 当 帰 芍 薬 散 桃 核 承 気 湯 大 黄 牡 丹 皮 湯 桃 核 承 気 湯
34 主 訴 )めまい ふらつき 気 血 水 による 処 方 の 選 択 法 症 例 A) 出 産 後 めまい ふらつき 感 が 生 じ 増 悪 傾 向 にある 自 覚 的 には 冷 え 性 で 尿 不 利 雲 の 上 を 歩 いているような 感 じがする 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 臍 上 悸 を 認 める 解 答 : 真 武 湯 陰 虚 証 少 陰 病 期 水 滞 構 成 生 薬 : 茯 苓 芍 薬 白 朮 生 姜 附 子 症 例 B) たまに めまい ふらつき 感 が 生 じ 最 近 増 悪 傾 向 にある 自 覚 的 には 冷 え 性 で 尿 不 利 肩 こりが 著 しい 生 理 は 不 順 傾 向 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 白 苔 腹 候 は 腹 力 軟 左 右 臍 傍 の 圧 痛 を 認 め る 解 答 : 当 帰 芍 薬 散 陰 虚 証 太 陰 病 期 瘀 血 構 成 生 薬 : 当 帰 芍 薬 川 芎 茯 苓 沢 瀉 蒼 朮
35 気 血 水 と 方 剤 の 関 係 人 参 湯 類 桂 枝 湯 類 十 全 大 補 湯 など 気 半 夏 白 朮 天 麻 湯 など 血 水 四 物 湯 類 五 苓 散 真 武 湯 など 心 身 一 如 当 帰 芍 薬 散 など 疾 病 の 発 現 と 助 長 において 心 と 身 体 とが 密 接 不 可 分 の 相 関 関 係 にあることを 約 言 した 語 で 東 洋 と 西 洋 とを 問 わず 古 代 医 学 が 本 質 的 に 具 有 した 最 も 重 要 な 理 念 の 一 つ
36 7. 五 臓 この 概 念 は 体 内 の 諸 器 官 を 五 臓 に 分 け( 現 在 の5つの 臓 器 と 重 なる 部 分 はあるが 同 一 ではない) 各 臓 器 の 異 常 がどのような 病 症 をおこす かにより 成 り 立 つ 考 え 方 である その 五 臓 の 働 きと 失 調 病 態 を 概 説 す る また 五 臓 は 互 いに 影 響 を 及 ぼし 相 生 相 剋 関 係 を 形 成 する 1) 肝 : 肝 は 精 神 活 動 を 安 定 化 させる 新 陳 代 謝 を 行 う 血 を 貯 蔵 し 全 身 に 栄 養 を 供 給 する 骨 格 筋 の 緊 張 を 維 持 するなどの 働 きをする 肝 の 異 常 により 痙 攣 発 作 易 怒 性 栄 養 不 良 眼 精 疲 労 爪 の 成 長 異 常 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 抑 肝 散 釣 藤 散 などの 処 方 があ る
37 2) 心 : 心 は 意 識 水 準 を 保 つ 覚 醒 睡 眠 のリズムを 調 整 する 血 を 循 環 させるなどの 働 きをする 心 の 異 常 により 失 神 不 眠 逆 上 感 不 安 感 動 悸 舌 炎 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 黄 連 解 毒 湯 半 夏 瀉 心 湯 などがある 3) 脾 : 脾 は 食 物 を 吸 収 し 水 穀 の 器 を 生 成 する 血 の 流 通 をなめらか にし 血 管 からの 漏 出 を 防 ぐ 筋 肉 の 形 成 維 持 を 行 うなどの 働 きをす る 脾 の 異 常 により 焦 燥 感 抑 うつ 易 疲 労 筋 力 低 下 出 血 傾 向 食 欲 低 下 下 痢 口 角 炎 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 人 参 湯 六 君 子 湯 などがある
38 4) 肺 : 肺 は 呼 吸 により 気 を 取 り 入 れてその 一 部 を 赤 色 化 し 血 を 生 成 し 一 部 を 水 に 転 化 する 皮 膚 の 機 能 を 制 御 し その 防 衛 力 を 保 持 するなど の 働 きをする 肺 の 異 常 により 憂 うつ 易 感 染 性 鼻 閉 呼 吸 困 難 病 的 な 発 汗 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 小 青 竜 湯 麦 門 冬 湯 などが ある 5) 腎 : 腎 は 成 長 発 育 生 殖 能 を 制 御 し 骨 歯 牙 の 形 成 と 維 持 水 分 代 謝 の 調 整 呼 吸 能 の 維 持 思 考 力 判 断 力 集 中 力 を 維 持 するなど の 働 きをする 腎 の 異 常 により 易 驚 性 発 育 不 良 インポテンツ 骨 代 謝 異 常 水 分 代 謝 異 常 排 尿 障 害 腟 炎 難 聴 などが 生 じる 治 療 方 剤 として 八 味 地 黄 丸 牛 車 腎 気 丸 などがある
39 五 臓 論 による 処 方 の 選 択 法 主 訴 ) 全 身 倦 怠 感 症 例 A) 55 才 男 性 最 近 仕 事 が 忙 しく 過 労 気 味 であった 全 身 倦 怠 感 も 自 覚 するようになったため 近 医 で 諸 検 査 を 受 けたが 明 らかな 異 常 所 見 を 認 めず 全 身 倦 怠 感 とともに 食 欲 不 振 冷 えも 生 じてきた ため 当 科 を 初 診 した 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 白 苔 で 舌 縁 に 歯 痕 を 認 める 腹 候 は 腹 力 軟 心 下 痞 鞕 を 認 める 解 答 : 人 参 湯 陰 虚 証 太 陰 病 期 脾 虚 症 例 B) 70 才 男 性 最 近 全 身 倦 怠 感 が 続 くため 当 科 を 初 診 した 食 欲 は 以 前 と 変 わらない 時 に 腰 痛 を 自 覚 し 夜 間 尿 も 一 晩 に2 回 ほど ある 下 肢 は 冷 える 他 覚 所 見 として 脈 候 は 沈 細 舌 候 は 紅 舌 で 鏡 面 舌 腹 候 は 腹 力 軟 小 腹 不 仁 を 認 める 解 答 : 八 味 地 黄 丸 陰 虚 証 太 陰 病 期 腎 虚
40 五 臓 の 相 生 相 剋 関 係 木 腹 が 立 つ 肝 水 腎 心 火 イライラ 動 悸 肺 脾 食 欲 低 下 金 土 相 生 関 係 相 剋 関 係
41 漢 方 の 基 本 概 念 の 臨 床 応 用 八 綱 時 間 経 過 で 考 えやすい 六 病 位 愁 訴 気 血 水 の 概 念 に あてはめやすい 気 血 水 五 臓 の 異 常 ととらえると 考 えやすい 五 臓 論
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