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あおいくまじ
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1 特集あなたの会社, 大丈夫ですかこころの病から職場を守れ! 1. 職場とこころの病 1 職場の健康相談において, メンタルヘルスは近年ますますその重要性を増している本稿では, 職場でしばしば問題となるこころの病を中心に取りあげるこころの病は数多くあるが, 大きく分類すれば軽度の場合は神経症, 重度の場合は精神病, そしてそれらの中間に位置するのが境界例とされる神経症とは, パニック障害や強迫性障害, ヒステリー ( 解離性障害や転換性障害 ) など, 現実認識には問題はないが, 特定の症状のために苦悩する病態である精神病とは, 躁うつ病や統合失調症など, 現実を判断する能力が大きく障害されている病態をさす境界例とは, 症状のあり方が神経症とも精神病とも明確に分類困難な病態であるとされていたが, 最近は対人関係の病的なあり方, ないしはパーソナリティの障害といった捉え方をする場合が多いその他, 嗜癖的傾向を持つ過食症やアルコール依存症などが職場で問題となることが多いうつ病との鑑別が困難であるのが適応障害であるこれは以前, 心因反応といわれた病態にほぼ等しいつまり, 環境要因と個人要因の相互関係により, さまざまな症状を呈する病態である適応障害と密接な関係にあるのが, 職場を回避するという特有の病態を呈する職場回避性障害である本稿では, うつ病と職場回避性障害を中心に取りあげるというのは, ともに職場で問題となる頻度が高く, 職場との関連性が密接な病態だからであるとりわけ後者は, 近年問題になっている困難な病態であるこの 2 つの病態についてある程度の知識をもつことは, 職場のメンタルヘルスを考えるに際して重要であるまた, 過労と自殺, および労災については第 4 章でふれる 2 職場で問題となるこころの病としては, 気分障害がもっとも多い気分障害とは, 気分の浮き沈みを主症状とする病態である気分の高揚する場合を躁状態, 気分が低下する場合をうつ状態という従来, 躁うつ病と呼ばれていたのは, 現在では双極性障害と呼ばれているこの病態は躁状態とうつ状態が反復交代する疾患であるそれに対して, うつ病は躁状態がみられず, うつ状態のみを呈する疾患をさす生涯で 7 ~12% の男性,20~25% の女性がうつ病にかかるといわれているしたがってうつ病患者は女性が多いうつ病に親和的な性格については, 仕事熱心, 凝り性, 徹底性, 正直, 几帳面, 責任感, 秩序志向などであるうつ病の勤労者は,30 歳代と50 歳代の 2 峰性があるとされているつまり, うつ病には 4 企業診断ニュース

2 1 若年群と中高年群があるこの若年群のうつ病は, 次節で説明する職場回避性障害の病態と密接な関係にあるしたがって, これについては次節でまとめて説明したいさて具体的なうつ病の症状であるが, まずあげられるのは, 憂うつな気分の持続と興味関心の喪失である憂うつな気分というのは自分を卑下して, あのとき, ああすればよかったもう取り返しがつかないすべては自分が悪いなどと思い沈み, 絶望感に陥るまた, 大変申し訳ないことを自分がしてしまった大変な病気に自分がかかってしまった自分の家族が路頭に迷うなどと言うこのような言述にはすべて自分という言葉がつきまとっているつまり, うつ病の特徴はたいていの場合, 自分のことを気にしているといってよいそこには罪, ケガレ, 貧困, 病気などの負の烙印が押されている妄想化すると, このようなとらわれが確信にまで発展する次に興味関心の喪失であるが, これは最近, あんなに好きだったテレビを観なくなった本を読む気力がなくなったあんなに好きだった趣味なのに, まったく関心がなくなってしまったなどという訴えである以前はあった気力興味関心などがめっきりなくなり, 何もかもやる気がしないというそのため活動力意欲の減退, 疲労感の増大などをきたす人と会うことは少なからぬエネルギーを必要とするが, 活力の低下のために人と会うのを避けるようになることもある億劫という言葉は, うつ病性気力低下を表現するのに便利であるこれらが中核症状といえるが, その他に集中力低下や不眠, 食欲低下, 自殺念慮, 日内変動などが重要である集中力低下はおおかた意欲の低下のため, 思考が働かず, 同じことをぐるぐると考えてしまうこれを思考渋滞という睡眠障害に関しては, 寝入ることができない ( 入眠困難 ) とか, 早朝の 3 時や 4 時に目が覚めてしまい朝まで悶々とすることが多い ( 早朝覚醒 ) 食欲は低下することが多く, おいしく感じられない砂を噛むようだという表現も多い性欲は一般的に低下する自殺念慮は, 周囲に対して申し訳ない大変なことをしてしまったもう先はないなど自責感, 絶望感を背景としてみられるとりわけ周囲との関係が途切れてしまった状況において, 自殺の危険性が高まることには注意すべきである何らかの関係が周囲との間にあるうちはいいが, それがふっとなくなったようなとき, 自らを支えていた人との絆が途切れ, 死の世界へと赴くことはよくあるうつ状態の初期, あるいは回復期が危険であり, 本格的なうつ状態ではむしろ自殺をする気力さえもないのが通常であるとりわけ, 回復期には状態が動揺することが多く, 順調に回復していたのに急に落ち込んでしまい, もうダメだと絶望することがあるうつ病の回復には焦りが禁物である日内変動とは, 朝や午前中に調子がもっとも悪く, 夕方になると調子がよくなることをさす朝, 起きたときにああ, 嫌な 1 日がまたやってきたという思いは, たいていのうつ病患者が感じていることである夕方になると調子が少しよくなってくることが多いリズムはたいていの場合, 始まりが調子悪く, 何かをしようとしてもはじめの一歩がなかなか踏み出せない 1 週間でみると, 月曜日に調子が悪くなる傾向がある 1 日のリズムについては, 日内変動で述べたとおりであるその他に身体症状としては, 頭痛や便秘などがみられるこれらの症状のために, 生活に支障がみられたり, 苦悩の程度がひどかったりすることがおおかた 2 週間以上持続することが, うつ病の診断において基準となっていることが多い企業診断ニュース

3 特集 3 藤井久和氏らは, 抜擢に伴う配置転換やリストラ, 仕事内容の大きな変化, 職場内における対人関係の葛藤などの職場要因に対して, 性格傾向や価値観, 就職動機などの個人的要因がうまく適応できずに, 出勤したいが出勤できないという葛藤や, 就業への不安恐怖緊張焦燥感部分的うつ状態を呈したものを職場不適応症と名づけたここでいう部分的うつ状態とは, 仕事会社に対してのみ, 抑うつ症状を呈するものをいう職場不適応症ではうつ病は除外されている職場不適応症で問題となるのは, 出勤したいが, どうしても出勤できないといった職場出勤への葛藤である職場が近づくにしたがい動悸や冷汗がみられ, 足がすくんでしまうそれを回避するために通勤途上から U ターンして, 図書館や公園, 映画館, 喫茶店で時間をつぶすこともある私は以前, 自分が診ていた患者と彼が勤務する会社に行ったことがある彼と橋の上を歩いていたとき, 急に会社のビルが見えて, 彼は脂汗を流し始めた足がすくみ, もう立っていられないという表情は苦痛に歪んでいたなんとか, 喫茶店に一緒に入って一息ついたそして気をとり直し, いざ会社のビルに入ろうとしたとき, そこでの一歩がなかなか踏み出せなかった彼の顔には脂汗がびっしりだった私は思った職場を避けているといっても, それは気軽なものではない本当に避けざるをえないほどの不安と苦しみがあるのだと彼らはどうしても会社に行けないのだ中高年型のうつ病の患者は, 概して仕事も真面目であり, かなり具合が悪くなるまでめったに欠勤することはないしかし, 最近の若年群のうつ病は, この職場不適応症との区別がなかなか難しい若年群のうつ病は, 逃避的色彩が強く, 自責的というより他責的であり, 職場の環境に適応が困難といった印象があるそのためにさまざまなトラブルが起き, 適応障害と診断されることがある適応障害とは, 日常生活のさまざまなストレスを契機に, 抑うつや不安, 異常な行動を予想される範囲の反応の程度を逸脱して呈する場合に診断される以前, 心因反応といわれた病態と近い職場回避を呈する症例が, 単なる反応, つまり適応障害ではなく, 長い経過からするとうつ病と診断されることがあり, 実際にはうつ病であるか, 適応障害であるかの鑑別は困難であるここでは, 職場回避や出勤困難などの問題を呈する一群を取りあげる背景の病態としては適応障害からうつ病まで幅広くあるが, 適応障害からうつ病の非定型群, あるいは軽症群を想定しているただし, うつ病として典型的な場合や重症のうつ病は除外するこのような一群を私は職場回避性障害と呼んでいるただし, 精神医学の一般的な用語ではなく, 便宜上このように呼んでいる職場回避性障害は, 億劫や倦怠感, 思考や集中力の低下など先に述べた定型うつ病と共通する症状もあるが, 異なる部分も多い年齢は20 代後半から30 代前半で, 多くは男性である女性もいないわけではないが, 男性のようにうつ病的であるよりも, 対人関係の問題で会社が怖くなる恐怖症的色彩が強くなるセクハラ問題が背景にあることも, しばしばである症状は, 何といっても朝の過剰睡眠が多いひどいときには午後, ときに夕方に起床することもある夜更かしが多く, 遅寝遅起である完全に昼夜逆転することもある目覚まし時計が 2 ~ 3 個鳴っても気がつかないほど 6 企業診断ニュース

4 1 眠っている仮に朝, 家を出たにせよ, 独身の場合は, 出勤途上で家に U ターンして帰ってしまう既婚者の場合, 喫茶店や公園, 本屋で時間をつぶし, 結局夕方頃になって会社に行ってきたような顔をして帰宅することもある数日間の欠勤を反復するタイプから, 持続的欠勤を呈するタイプまである彼らは人と接触したくないとりわけ職場の人との接触を避ける自宅への引きこもりが顕著になることも多い欠勤して家に引きこもっているときは, 職場からの電話に怯えて電話は一切とらない留守電にしていることも多い彼らは職場で具合が悪くなる以前から, 人と一面的な接触をしていることが多いつまり良いところも悪いところもみせたうえで接触するのではなく, 良い面でしか人と接触しようとしないのである身体症状も多様である半数以上に下痢腹痛吐き気などの消化器症状がある多くのうつ病患者では便秘が問題となるのに対して, この点は特徴的であるその他に頭痛や微熱, 腰痛, めまい, 胸痛, 動悸などの身体症状がある飲酒量の増加は比較的多い眠れないから飲むが, かえってそのために朝起床できなくなることがある性格特徴としては, 几帳面で完全主義者が多いときに自信家でプライドが高く, 注目を浴びたいとか, 葛藤状況からの逃避願望が目立つケースもあり, 一概に描き出すことは困難である意識的であれ, 無意識的であれ不安の関与が推定される職場異動を契機に発症することが多く, うまく職場環境に適応できないところがある多くは解放状況で発症するつまり, しばらく多忙で緊張を強要される状況が持続し, その後, 仕事が一区切りした時点でホッとして緊張感から解放され, 力が湧かず, 睡眠過剰で寝てばかりの虚脱状態になる経過であるこのように仕事の負荷軽減状況で発症悪化が多いために, 休日や連休明けに症状がひどくなったり出勤不能になったりすることはよくある燃え尽き症候群とはいままでガムシャラに 1 つの物事に没頭していた人が, 身体的情緒的な極度の疲労を背景として, 無気力や自己嫌悪, 仕事拒否になることであるあるとき突然に燃え尽きたように働く意欲を失い, 職場に適応できなくなる職場回避性障害は燃え尽き症候群と似ている葛藤や不満の内容には, さまざまなものがある職場での孤立感, 仕事のやりがいのなさ, 上司や同僚との関係がしっくりいかないこと, 仕事をちゃんと評価してもらっていないなどの不満がある几帳面で完全癖をもつ30 代前半の男性比較的裕福な家庭に育った大学卒業後, 大手企業に就職した長期にわたって深夜帰宅する多忙な日々が約 1 年半続いた仕事がうまくいかなくなり, 次第に集中力も低下するようになった自分が仕事をこなせないことを人に知られたくないために, 上司や同僚に相談することなく徐々に仕事を抱え込んでいった夜になっても, なかなか眠れない日々が続いたある日, 休み明けに数日間の欠勤をした朝, 眠くて起きられず, 体が動かない状態であったかろうじて起きて会社に行こうとしても, 吐き気と下痢に悩まされる数日後に妻に促されてなんとか家を出たが, 会社に足が向かず, わけのわからない不安から電車を降りてしまう高層ビルを見ると飛び降りることを考えてしまう終日パチンコをして過ごし, 夕方になるとそっと帰宅する上司から電話があると, 翌日は必ず出勤しますと元気そうに対応するしかし, 翌日には出社ができなくなるそのような状態がしばらく続いたが, ある日突然, 歩行困難になり足に力が入らなくなってしまったこのような症例は1970 年代後半から少しずつ目立ち始め, 現代では少なからぬ症例が類似の病態を呈するようになったこのような職場回避性障害の病態に対し, どのように対処すべきかについては第 4 章で取りあげたい企業診断ニュース

5 特集 ( しばやままさとし ) 企業診断ニュース

Ⅴ-2-2 うつ病とは心のエネルギーが低下した状態生涯でかかる割合は~% 女性は男性の約倍多い働く世代で増加しているからだの不調として現れることがある症状 ( 次頁の資料次の資料 )) がが週間以上続くようなら 2 らうつ病の可能性が高いうつ病とはストレスなどの理由から脳がうま

Ⅴ-2-2 うつ病とは心のエネルギーが低下した状態生涯でかかる割合は~% 女性は男性の約倍多い働く世代で増加しているからだの不調として現れることがある症状 ( 次頁の資料次の資料 )) がが週間以上続くようなら 2 らうつ病の可能性が高いうつ病とはストレスなどの理由から脳がうま Ⅴ-2 Ⅴ 抑うつポイント抑うつの症状抑鬱者への対応を知るポイント抑うつの症状抑うつ者への対応を知る Ⅴ-2-1 うつ状態一時的に憂うつになって憂鬱になって気分がおちこんでふさいでいて元気が失せて心身の不調をきたした状態うつ病うつ状態とうつ病うつ状態うつ病その原因となる病名うつ状態の原因にはうつ病以外にもあるうつ病とうつ状態は異なるものですうつ状態は

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