はじめに 本報告書は 平成 28 年度海外農業 貿易事情調査分析委託事業 の調査結果を取りまとめたものである 本事業の目的は 我が国と関係の深い国 地域 および我が国と経済連携協定 (EPA)/ 自由貿易協定 (FTA) 交渉が進展する可能性のある国 地域における主要穀物の生産 在庫といった食料をめ

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1 平成 28 年度海外農業 貿易事情調査分析委託事業 報告書 2017 年 3 月 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング

2 はじめに 本報告書は 平成 28 年度海外農業 貿易事情調査分析委託事業 の調査結果を取りまとめたものである 本事業の目的は 我が国と関係の深い国 地域 および我が国と経済連携協定 (EPA)/ 自由貿易協定 (FTA) 交渉が進展する可能性のある国 地域における主要穀物の生産 在庫といった食料をめぐる状況 直接所得補償 価格支持政策といった農業政策 農業事情 農産物貿易の動向 海外からの農業投資に係る環境および状況等について調査 分析を行うものである 本報告書作成に当たっては 学術的な論文を作成するのではなく 国会質疑や国際交渉等への対応といった 日々の政策立案業務に利用できるような実務的な情報収集 分析を行うことを重視している また 多々のニュース リソースを利用して 関連情報を収集 分析を行っている 本報告書の構成は次のとおりである 第 1 章では 主に 2014 年に制定された米国農業法の実施状況とその課題を取り扱い 2017 年 1 月に誕生したトランプ政権の農業 貿易政策およびそれらに対する農業団体の評価を補足している 第 2 章では 欧州連合 (EU) の共通農業政策 (CAP) の実施状況について調査を行い 特に農村振興政策とリスク管理施策を重点的にとりまとめた 調査を実施するにあたり 有識者による検討委員会を設立し 合計 3 回の検討会を開催したほか 2017 年 1 月に米国ワシントン DC およびイタリアとベルギーにて現地調査を実施した 検討委員会での有識者の議論と調査結果をもとに三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングが報告書の執筆を担当した 2017 年 3 月 平成 28 年度海外農業 貿易事情調査分析委託事業検討委員会 石井圭一 ( 東北大学大学院准教授 ) 和泉真理 ( 一般社団法人 JC 総研客員研究員 ) 市田知子 ( 明治大学教授 ) 手塚眞 ( 東京経済大学教授 ) 平澤明彦 ( 株式会社農林中金総合研究所主席研究員 ) 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング株式会社

3 現地調査実績 イタリア ベルギー 米国 期間 2017 年 1 月 8 日 ~20 日 ( 移動日含む ) 2017 年 1 月 22 日 ~29 日 ( 移動日含む ) 調査員 江岸伸 ( 三菱 UFJ リサーチ & コンサルテ 秋山卓哉 ( 三菱 UFJ リサーチ & コンサル ィング国際研究部研究員 ) ティング国際研究部副主任研究員 ) 訪問先ファームヨーロッパ (Farm Europe) ファーマーズユニオン (NFU) 欧州農業組織委員会 / 欧州農業共同組合ファームビューロー (AFBF) 委員会 (COPA-COGECA) 欧州酪農ボード (EMB) 全国トウモロコシ生産者協会 (NCGA) イタリア農業連盟 (Confagricultura) 全国牛乳生産者連合 (NMPF) Council of Agricultural Research and 米国綿花評議会 (NCCA) Economics (CREA) マルケ州 ( 地方自治体 ) ブルッキングス研究所 (Brookings) トスカーナ州 ( 地方自治体 ) 農務省リスク管理局 (RMA) ボルツァーノ自治県 ( 地方自治体 ) 農務省自然資源保全局 (NRCS) ヴェネト州 ( 地方自治体 )

4 目次 1. 米国 2014 年農業法の実施状況 年農業法を取り巻く環境... 1 (1) 農産物価格等の動向 年農業法の概要と支出動向... 3 (1) 米国農業法の構造... 3 (2) 2014 年農業法の主要プログラムの支出動向 PLC および ARC の実施状況... 6 (1) PLC の概要... 6 (2) ARC の概要... 6 (3) ARC/PLC の実施状況... 8 (4) ARC/PLC に関する評価と問題点 DMPP/DPDP の実施状況 (1) DMPP/DPDP の利用状況とその背景 ( 保証利幅別 州 地域別 ) (2) DMPP の実施状況 (3) DMPP に関する評価と問題点 (4) DMPP に対する主要農業団体の評価 収入保険 / 収量保険 /SCO の実施状況 (1) 作物保険の概要 (2) 収入保険 / 収量保険 /SCO の利用状況とその要因 ( 品目別 保証水準別 州 地域別 ) (3) 収入保険 / 収量保険 /SCO に関する評価と問題点 STAX の実施状況 (1) STAX の概要 (2) STAX の実施状況および課題 (3) STAX および綿種子プログラムに対する主要農業団体の評価 マーケティング ローンの実施状況 環境保全政策 ( 保全プログラム ) その他の主要政策 (1) 主要プログラムの制度概要 (CRP WRP EQIP CSP) (2) 主要プログラムの実施状況 貿易政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 ( 輸出信用保証 海外市場開発 食料援助等 ) (2) 主要プログラムの実施状況 栄養支援政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 (SNAP WIC 学校給食プログラム等) (2) 主要プログラムの実施状況 食品安全政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 ( 原産国表示 GMO 表示 カロリー表示等 ) (2) 主要プログラムの実施状況の動向とその背景 バイオ燃料政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 (2) 主要プログラムの実施状況 農村開発事業の実施状況 (1) 農村開発事業の制度概要 (2) 農村開発事業の実施状況 (3) 農村開発政策の政府支出実績の動向 米国大統領選の結果がその後の農業政策 貿易政策に与える影響 大統領選挙その後の動向... 55

5 2.2. 議会選挙結果と次期農業法への影響 TPP からの離脱 トランプ氏の政策に対する主要農業団体の評価 (1) 農業政策に対する評価 (2) TPP 離脱に対する評価 EU 共通農業政策 CAP 簡素化 (1) 近年の簡素化の動き (2) 2016 年 9 月公表の オムニバス規則 (Omnibus Regulation) について グリーニング実施 1 年後の評価 (1) グリーニング概要 (2) グリーン支払いの実施状況 (3) グリーニング実施による公平な競争市場 (Level playing field) に対する影響の評価 (4) グリーニングの生産ポテンシャルへの影響 (5) グリーニングに関するステークホルダー協議 ( 年前半 ) の概要 (6) 現地調査で得たグリーニングに対する見解 主要国の農村振興政策 ( イギリス イタリア ) (1) イギリス (2) イタリア EU リスク管理施策 (1) 概要 (2) リスク管理施策 ( ) の実施状況 (3) イタリアにおけるリスク管理施策の実施状況 フード チェーンにおける生産者の交渉力強化に関する措置の検討状況 (1) 農産品マーケットタスクフォース (2) タスクフォースレポートの内容 (3) CAP2020 以降 (4) レポート発表後の反応 有機農業制度改革 (1) 制度改革の背景 (2) 提案の概要 (3) 主な論点 (4) 第三国からの輸入 (5) 有機生産者らの見方 乳製品価格下落に伴う酪農家支援策 (1) EU 生乳クオータ制度概要 (2) 価格動向 生産の動向など (3) 生乳クオータ廃止の背景及び廃止の影響 (4) 乳製品価格下落後の対策 ( 生産調整廃止後の価格下落対策として ) (5) 欧州酪農ボードによるクオータ廃止 支援策に対する見解

6 1. 米国 2014 年農業法の実施状況 米国の農業政策は 通常 5 年ごとに制定される農業法によって規定される 2014 年 2 月に成立した現行の農業法は 議会での正式な策定作業の開始が 2012 年 2 月に議会で正式な策定作業を開始した後 成立まで約 2 年を要した これは アメリカ農業史上 もっとも長期の時間を要した農業法を意味する 1 本章では 現行農業法の実施状況とその課題 各プログラムに対する農業団体等の評価を取り上げる 2014 年農業法の策定過程 内容 2015 年の動向については過年度の報告書を参照いただきたい 年農業法を取り巻く環境 (1) 農産物価格等の動向 穀物価格が上昇に転じる前の 2005 年作物年度 (crop year) 3 のとうもろこし農場販売価格は ブッシェル (25.4kg)2.0 ドルであった それが 2007 年に 4.3 ドル (2005 年の 2.1 倍 ) に高騰し 金融危機の下で一時 3.7 ドルに下がったものの 2012 年の干ばつの発生を受け 2012 年には 6.9 ドル ( 同 3.5 倍 ) に上昇した 2013 年 12 月の価格は 4 ドル台前半に下落したが それでも 2005 年の 2.2 倍であった この状況は 大豆 小麦 コメについても同じであり 2007 年以降 7 年間 価格の高騰状態が続き それが構造化してきた こうした価格高騰状態の中で 2014 年農業法は制定された しかし 2012 年半ばをピークに農産物の価格は下落している 図表 1 はとうもろこし 大豆 小麦の国際価格の推移を示したグラフである 直近では下げ止まりつつあるものの 国連食糧農業機関 (FAO) は 2016 年は主要農産物の価格が 5 年連続で下落し 2015 年比で 1.5% 下回ったと発表した 4 1 服部信司 アメリカ 2014 年農業法 収入保障 不足払い 収入保険の 3 層構造 農林統計協会 2016 年 p.ⅰ 2 プロマーコンサルティング 平成 24 年度海外農業情報調査分析事業 ( 米州 ) 2013 年 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング 平成 25 年度海外農業 貿易事情調査分析 ( 米州 ) 2014 年 農林中金総合研究所 農業所得に影響を及ぼす米国 2014 年農業法の実施状況 ( 平成 27 年度海外農業 貿易事情調査分析事業 ( 農業所得構造分析 ) 2016 年 以下 断りがない限り アクセス日は 2017 年 3 月 14 日とする 3 米国の穀物年度は 9 月から翌年の 8 月まで 4 FAO, Food commodity prices fall for fifth year in a row in 2016, 12 January,2016, 1

7 図表 1 主要穀物の国際価格推移 ( 年 メトリックトン当たり ドル ) 出所 :IMF Commodity Market Monthly, 年 8 月に公開されたミズーリ大学の米国食料農業政策研究所 (FAPRI) のレポートによると 主要農産物の生産増加傾向が続くため 多くの農産物や畜産品の価格が下落すると予想されている 個別の農産品の価格動向は下記のとおりである 5 とうもろこし : 生産量増加により価格が下落 年の市場平均価格は 1 ブッシェル当たり 3.19 ドルになると予想 生産面積の減少により 年は価格が回復するものの 年まで 1 ブッシェル当たり 3.9 ドル以下になると予想 大豆 : 天候不順により南米の 2016 年初頭の生産量が減少 米国の大豆生産量は大きかったものの 南米での生産量減により 年の価格がわずかに上昇すると予想 今後 5 年の平均価格は 1 ブッシェル当たり 10 ドル以下と予想 小麦 : 米国および世界で 2016 年の生産量が多かったため 価格は急落すると予想 2017 年に生産量が減少すれば価格回復の可能性 綿花 : 中国での多量の綿花在庫の影響により 米国の綿花価格は今後 5 年間で 1 ポンド当たり 60 セント程度と予想 乳製品 : 供給量の増加により価格が下落すると予想 5 FAPRI, Baseline Update for U.S. Agricultural Markets (FAPRI-MU Report #05-16), August 2016, p.1, 2

8 図表 2 主要農畜産物価格予測品目単位 14/15 15/16 16/17 17/18 18/19 19/20 20/21 21/22 とうもろこし 農場価格 ドル / ブッシェル 大豆 農場価格 ドル / ブッシェル 小麦 農場価格 ドル / ブッシェル 綿花 農場価格 セント / ポンド 牛乳 全乳価格 ドル / ハンドレッドウェイト 出所 :FAPRI, Baseline Update for U.S. Agricultural Markets (FAPRI-MU Report #05-16), August 2016, 生産者は価格の下落に伴う所得減少の一方で事業費をねん出しなければならないため 米国農家の約三分の一は資金の借入をしているとされる 米国でも金利が低下しているが 支払期日を過ぎても返済できない農家が増えており 利幅が縮んでいる中で農家が返済に苦慮していることがうかがわれる 6 なお 2017 年 1 月 12 日に公表された農務省 (USDA) の最新の世界農業需給予測 (World Agricultural Supply and Demand Estimates: WASDE) によると 主要穀物の需給予測は以下のとおりとなっている 小麦 :2017 年の播種は 3238 万 3000 エーカーになるとされる 2016 年の 3613 万から 10% 程度の減少で この数字は 1909 年の 2919 万 6000 エーカーに次ぐ少なさである ただし 2016 年 12 月現在の小麦在庫は約 21 億ブッシェルで 前年期の 17 億ブッシェルを 20% 以上上回っている この在庫により播種の減少の影響が相殺されると考えられる 世界的にみると アルゼンチンとロシアでの生産増により 世界的な小麦供給量は増加すると見込まれている そのため 世界全体の小麦在庫は過去最高の 2 億 5329 万トンになるとされる とうもろこし : とうもろこしは生産量と在庫がともに減少すると見込まれている 生産量は 3 億 8478 万トンで 2016 年 12 月の 3 億 8675 万トンから微減する 世界的にはブラジルやアルゼンチンといった南米諸国で生産が増加するが 米国での生産減により世界全体では生産減になるとされる 大豆 : 米国の生産量は前回予測の 1 億 1869 万トンから微減し 1 億 1721 万トンになると見込まれている 世界的には 50 万トンほど生産が減少 年農業法の概要と支出動向 (1) 米国農業法の構造 米国農業法には USDA が所管する全ての政策が含まれている 2014 年農業法の構成は 1 作物 2 保全 3 貿易 4 栄養 5 信用 6 農村開発 7 研究 普及 8 森林 9 エネルギー 10 園芸 12 作物保険 13 雑則 となっており 実施期間は 2014 年から 5 年間である 実施期間が終わりに近くなれば 全ての政策が検討され 次期農業法に向けて議論が開始される 6 Scarce Cash in Land of Plenty: Farmers Adjust to Downturn, AG Web, 15 September,

9 図表 3 各農業法におけるプログラムの変遷 プログラムの種 1996 年農業法以 1996 年農業法 2002 年農業法 2008 年農業法 2014 年農業法 類 前 直接支払 直接支払 直接支払 直接支払 不足払い型 不足払い CCP CCP PLC 最低価格保証型 マーケティング ローン マーケティング ローン マーケティング ローン マーケティング ローン マーケティング ローン 収入変動対応型 ACRE ARC 農業保険 作物保険 作物保険収入保険 作物保険収入保険 作物保険収入保険農場収入保険マージン保険 作物保険収入保険 SCO STAX 出所 : 吉井邦恒 アメリカ 2014 年農業法の実施状況 農業経営安定対策を中心として 2016 年 14 頁に一部加筆 農業法のプログラムは作物別かつ二階建て方式となっている 7 一階部分は販売支援融資 ( マーケティング アシスタンス ローン Marketing Assistance Loan) で これは運転資金の供給と各地の市場価格が著しく低下した場合の価格補填である 二階部分は収入保障型と不足払い型によって構成され 農家は作物ごとにいずれかを選択する 2014 年農業法では 収入保障型がリスク補償 (Agricultural Risk Coverage: ARC) 不足払い型が価格損失補償 (Price Loss Coverage: PLC) となっている 一階部分の販売支援融資は 2014 年農業法以前からおおむね変更はなく プログラムの発動も限られている (2) 2014 年農業法の主要プログラムの支出動向 図表 4 は 2010 年以降の政府の農業補助支出動向を示した表である 2014 年は 97 億ドルと支出額は 100 億ドルを下回ったが 2015 年は 108 億ドルと再び 100 億ドルを超え 2016 年はさらに支出が増加し 130 億ドル程度になると予想されている 2016 年の個別のプログラムの支出をみると PLC が 19.6 億ドル ARC が 59.4 億ドル 保全計画は 36.9 億ドルと予想されている 利幅保護プログラム (DMPP) は 1000 万ドル程度の収入になる見込みである 2017 年は PLC が 32 億ドル ARC が 53.8 億ドルとなり PLC が ARC の約 6 割の規模まで拡大すると予想されている 支出額としては依然として ARC のほうが大きいものの PLC の加入面積は 5500 万エーカーで 他方 ARC は カウンティ ARC と農場 ARC の合計で 1 億 8700 万エーカーと PLC の 3.4 倍となっている ( 加入面積は 図表 8 を参照 ) 単純に支出額を加入面積で除すと 1 エーカーあたりの支出額は PLC が 58 ドル ARC が 29 ドルとなり 単位面積あたりの支出額は PLC が ARC の 2 倍となる 2015 年は ARC が 23 ドル PLC が 14 ドルと ARC のほうが単位面積あたりの支出額が大きかった 支出額の伸び率も PLC が ARC を上回っており 近年は PLC のほうがセーフティネットとしての有効性が高まりつつあるといえる 7 平澤明彦 農産物の安値に直面する米国の農業所得安定化政策 成立から 3 年目の 2014 年農業法 農林金融 号 頁 4

10 図表 4 政府農業補助支出動向 ( 年 単位 :1000 ドル ) 合計 12,391,658 10,420,530 10,635,118 11,003,796 9,766,845 10,804,486 12,996,932 12,473,139 直接支払 4,809,267 4,705,683 4,687,021 4,288,531 18,733-3,509 NA NA 綿花移行支 NA NA NA NA 459,927 24,018 NA NA 援 支 払 (CTAP) 繰綿費用配 NA NA NA NA NA NA 328, 分プログラム (CGCS) ACRE 421,387 15,978 41, , ,084 13,738 NA NA PLC NA NA NA NA NA 754,928 1,960,000 3,200,000 ARC NA NA NA NA NA 4,376,892 5,940,000 5,380,000 CCP 209,099 16,510-1, NA NA ローン不足 114,391 5, , , , ,000 支払い マーケティ 2, ,955 53, ,000 23,000 ング ローン ゲイン 農産物証券 NA NA NA NA 93,000 19,000 交換利得 MILC 51, , , DMPP NA NA NA NA NA ,580-15,000 タバコ移行 686, , , , ,399 2,574 NA 9 支払プログラム 保全計画 3,219,467 3,674,324 3,695,063 3,679,896 3,561,396 3,618,928 3,687,334 3,260,915 バイオマス 231,390 29,796 12,266 7,078 5,444 7,364 7,000 6,600 作物支援プログラム (BCAP) 補助的 災 2,647,915 1,304,552 1,102,397 1,942,908 4,725,718 1,800, , ,367 害支援プログラム その他 -2,395 1, 年 2 月 7 日時点のデータ 2016 年と 2017 年の値は予測値 出所 :USDA ERS, Farm Income and Wealth Statistics より作成 5

11 図表 5 主要プログラムの支払額実績および予測 ( 単位 :100 万ドル ) 農業保険の金額は補償額 (indemnity) で算出 15/16 以降の値は予測 出所 :FAPRI, U.S. Baseline Briefing Book: Projections for Agricultural and Biofuel Markets (FAPRI-MU Report #02-16), March 2016 に基づき作成 1.3. PLC および ARC の実施状況 (1) PLC の概要 価格損失補償 (Price Loss Coverage: PLC) は 参照価格 (reference price) に販売価格 ( 販売年度 12 か月間の全国平均価格 ) が達しない場合に その差について支払われる 支払額は ( その差 ) ( 支払単収 ) ( 基準面積 0.85) によって計算される 2014 年農業法以前の基準面積は 年の作付面積の平均 または 年の作付面積の平均 のうち 生産者が選択した面積が適用された 2014 年農業法では 基準面積を農場の総基準面積の枠内で これまでの基準面積と 年の平均作付面積 のうち 生産者が選択する方に変更できる 農場の総基準面積を変更しないという枠内において 各作物の基準面積を直近の作付面積に変更しうる 各作物の基準面積を再配分し得る といったように農場の作物の基準面積を再配分できることになっている 8 (2) ARC の概要 農業リスク補償 (Agricultural Risk Coverage: ARC) は 当該年の収入が 過去数年の平均的な収入 ( 基準収入 ) から下落した場合に補填が行われるプログラムである 農家はカウンティ ( 郡 ) べースの収入補償 ( カウンティ ARC) とするのか 個別農場をべースとする収入補償 ( 農場 ARC または個別 ARC) とするかを選択する 農家は上述の PLC か ARC のどちらかを選択する 9 8 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング 海外農業 貿易事情調査分析 ( 米州 ) 頁 9 同上 頁 6

12 図表 6 PLC/ARC 選択に関する農家の意思決定フロー 出所 : 吉井邦恒 アメリカ 2014 年農業法の概要について 農業系安定対策を中心に 農林水産政策研究所 平成 25 年度カントリーレポート第 3 号 アメリカ 韓国 ベトナム アフリカ 2014 年 24 頁 1 カウンティ ARC 当年のカウンティの 作物収入額 {( 郡の平均単収 ) ( 年度平均の全国販売価格 )} が 基準収入額の 86% よりも少ない場合に その差の支払いが行われる 基準収入額は ( 郡の 5 年オリンピック平均単収 ) (5 年オリンピック平均全国販売価格 ) である ここで オリンピック平均 とは 最低と最高の年を除く中庸年の平均 を指す 補償の幅は 10% で 当年の作物収入額が基準収入額の 76% まで低下しても 基準収入額の 86% が確保される 75% 以下は 生産者が加入する保険でカバーするという前提に立っている なお 基準収入算定に当たり 全国平均価格が PLC の参照価格よりも低い場合には 全国平均販売価格の代わりに PLC の参照価格が用いられる この場合 収入補償においても 参照価格が最低保証価格 ( 不足払い ) を兼ね備えることとなる 対象面積は基準面積の 85% で 基準面積の 85% に対して支払いが行われる 2 農場 ARC 農場の生産している各作物の収入 ( 作物の生産量 販売年度 全国平均価格 ) の総計額が 各作物の基準収入額 ( 各年度の収入額の 5 年オリンピック平均額 ) の総計の 86% を下回った場合に その差の支払いが行われる 補償の幅は カウンティベースの場合と同様の 10% である 当年の収入額の総額が基準収入額総計の 76% まで低下しても 基準収入額の総計の 86% が確保される 同上 頁 7

13 支払が行われる場合 図表 7 カウンティ ARC と農場 ARC の特徴カウンティ ARC 農場 ARC 実際の作物収入額 <リスクカバー額 の場合 実際 ( 当年 ) の作物収入額 ( カウンティの平均単収 ) ( 年度平均の全国販売価格 ) リスクカバー額 基準 ( ベンチマーク ) 収入 0.86 基準 ( ベンチマーク ) 収入 ( 郡の 5 年オリンピック平均単収 ) (5 年オリンピック平均全国販売価格 ) ( 当該作物の生産量 ) ( 年度平均の全国販売価格 ) 各作物の実際の収入額の総計 ( 農場の各年度収入額 ) の 5 年オリンピック平均 基準価格の算定に当た 全国平均販売価格 < 目標価格 の場合 り 全国平均販売価格の代わりに目標価格を用いる場合 対象面積 基準面積の 85% 基準面積の 65% 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング 海外農業 貿易事情調査分析 ( 米州 ) ( 農林水産省平成 25 年度海外農業 貿易事情調査分析事業 ) 2014 年 24 頁 3 ARC と PLC の性格の違い ARC( 収入保障型 ) と PLC( 不足払い型 ) の性格の違いをまとめる 11 収入保障型は基準価格が直近の数年間の農産物価格に連動する そのため 高価格期でも発動されやすいという特徴をもち 農産物価格高騰に伴う生産費増を賄うこともできる 他方で 安値や値下がりが続くと 発動の基準となる基準価格も下落するため 十分な補償とならない可能性がある また ARC の補償範囲が狭いため 大幅な価格下落の場合は ARC だけでは不十分で それ以上の収入補填には収入保険が必要となる 不足払い型は 基準価格が一定であり 農作物価格が高価格の場合には発動されにくい 他方で 価格下落が大幅な場合には手厚い補償が得られ 安値や値下がりが続いたとしても補償を安定的に得ることができる 農産物価格の高騰時は ARC が有利だが 価格下落時や低迷時が続くと PLC の補償額が有利になる 2012 年以降 多くの農産物の価格は下落基調にあるため 後述のとおり PLC の有利性が高まると予想される (3) ARC/PLC の実施状況 1 ARC/PLC の利用状況とその背景 ( 品目別 州 地域別 ) 2015 年 6 月 15 日のニュースリリースにおいて USDA は 176 万戸以上の農家が ARC または PLC を選択したと公表した 年農業法で廃止された直接支払の登録者が 170 万戸だったことから ARC および PLC の申請者は直接支払のそれより多い 2016 年の作付面積に占める ARC および PLC の基準面積の割合をみると 9 割以上が PLC または ARC に加入している ( 図表 8) 11 以下は 平澤 農産物の安値に直面する米国の農業所得安定化政策 成立から 3 年目の 2014 年農業法 頁に基づく 12 USDA, USDA Opens Enrollment Period for Agriculture Risk Coverage and Price Loss Coverage Safety-Net Programs, 15 June, 2015, 8

14 図表 8 PLC と ARC の基準面積および 2016 年作付面積に占める割合 PLC 基準面積 カウンティ ARC 基準面積 農場 ARC 基準面積 合計 2016 年作付面積 2016 年作付面積に占める基準面積の割合 大麦 3,876,590 1,127, ,913 5,185,717 3,052, % キャノーラ 1,436,766 31,814 7,736 1,476,317 1,714,000 86% とうもろこし 6,388,066 90,057, ,106 96,768,447 94,004, % クランベ 1, , 乾燥エンドウマメ 196, ,471 25, ,890 1,382,000 32% 亜麻仁 145,584 82,871 1, , ,000 62% ソルガム 5,965,661 2,998,211 15,557 8,979,430 6,690, % レンズマメ 151, ,798 19, , ,000 31% 大ヒヨコマメ 19,412 56,636 9,587 85, ,300 45% 長粒米 4,007,809 6,912 4,014,721 2,442, % 中粒米 167,293 6, , ,000 26% マスタード 13,845 9,431 1,439 24, ,100 24% オーツ麦 671,385 1,410,063 13,778 2,095,226 2,828,000 74% 落花生 2,013,443 6, ,020,243 1,671, % 菜種 1,100 1, ,481 11,000 23% ベニバナ 62,521 33,401 3,145 99, ,100 61% ゴマ 4, , 小ヒヨコマメ 5,004 15,006 2,057 22,067 91,000 24% 大豆 1,688,365 52,635, ,053 54,514,972 83,433,000 65% ヒマワリ 920, ,724 19,683 1,650,954 1,596, % ジャポニカ米 355, ,020 23, , 小麦 27,045,581 35,394,613 1,258,950 63,699,144 50,154, % 一般基礎面積 8,294 17,582,910 9,880, % 全米合計 55,137, ,119,381 2,106, ,355, ,375,100 93% 出所 :PLC と ARC の基準面積は USDA/FSA 作付面積は NASS 選択の内訳を見ると 大豆農家の 96% とうもろこし農家の 91% 小麦農家の 66% が ARC を選択し 長粒米農家の 99% 落花生農家の 99% 中粒米農家の 94% が PLC を選択した 9

15 図表 9 PLC と ARC の選択状況 (2015 年 5 月 29 日現在 品目別 単位 :%) PLC と ARC を選択した農家の内訳 PLC と ARC を選択した基準面積の内訳 PLC カウンテ 農 場 合計 PLC カウンテ 農 場 合計 ィ ARC ARC ィ ARC ARC 大麦 キャノーラ とうもろこし クランベ 乾燥エンドウマメ 亜麻仁 ソルガム レンズマメ 大ヒヨコマメ 長粒米 中粒米 マスタード オーツ麦 落花生 菜種 ベニバナ ゴマ 小ヒヨコマメ 大豆 ヒマワリ ジャポニカ米 小麦 全米合計 出所 :USDA/FSA, 2 ARC/PLC の政府支出実績 ( 品目別 州地域別 ) 2015 年作物年度について 2017 年 2 月 2 日現在の PLC および ARC の品目別支出上実績は下記のとおりである 2016 年 10 月 4 日 USDA は 2015 年作物年度のカウンティ ARC と PLC の支出金額が 70 億ドル以上になると発表していたが 13 実際に 2 月 2 日現在の支出実績は 78 億ドルとなり 70 億ドルをも大きく上回っている この数字は議会予算局 (CBO) の当初予想よりもはるかに大きい金額である 14 カウンティ ARC の約 7 割の支出はとうもろこしが占めている 他方 PLC は落花生と長粒米 小麦で支出全体の 8 割程度を占めている 13 USDA, USDA Issues Safety-Net Payments to Farmers in Response to 2015 Market Downturn, News Release, 4 October, 2016, 14 Paul Neiffer, The Farm CPA, AG Web, 5 October,

16 図表 年作物年度の品目別支出実績 (2017 年 2 月 2 日時点 単位 : ドル ) 品目 カウンティ ARC PLC 合計 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) 大麦 7,705, ,705, キャノーラ 465, ,738, ,204, 大ヒヨコマメ 1,721, ,721, 小ヒヨコマメ 31, , とうもろこし 4,066,098, ,214, ,119,312, アマニ 991, ,969, ,960, レンティル 1,242, ,242, マスタード 76, , オーツ麦 16,654, ,943, ,597, 落花生 394, ,632, ,026, 乾燥インゲンマメ 1,561, ,561, 長粒米 211, ,614, ,825, 中粒米 645, ,040, ,686, ベニバナ 108, , ゴマ 3, , ソルガム 55,176, ,472, ,649, 大豆 1,093,070, ,093,070, ヒマワリ 4,896, ,304, ,200, 小麦 642,263, ,942, ,142,206, 合計 5,893,318, ,914,873, ,808,191, 出所 :USDA/FSA, 2015 ARC/PLC Payments as of February 2, 2017, 2017, 州別の支出実績を見ると PLC はテキサス アーカンソー ジョージア カウンティ ARC では イリノイ アイオワ ネブラスカで支出が大きくなっている 11

17 図表 年作物年度の州別支出実績 (2017 年 2 月 2 日時点 単位 : ドル ) 州 PLC カウンティ ARC 合計 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) アラバマ 62,641, ,795, ,436, アラスカ 10, , アリゾナ 8,563, , ,686, アーカン 291,086, ,442, ,528, ソー カリフォ 18,131, ,197, ,328, ルニア コロラド 39,242, ,470, ,712, コネティ 39, , , カット デラウェ 815, ,281, ,097, ア フロリダ 31,319, ,810, ,130, ジョージ 235,029, ,838, ,868, ア アイダホ 32,632, ,001, ,633, イリノイ 10,873, ,356, ,229, インディ 2,506, ,896, ,402, アナ アイオワ 4,144, ,874, ,019, カンザス 107,418, ,843, ,261, ケンタッ 3,734, ,316, ,050, キー ルイジア 98,134, ,359, ,493, ナ メイン 27, ,820, ,848, メリーラ 2,233, ,867, ,100, ンド マサチュ , , ーセッツ ミシガン 3,171, ,965, ,137, ミネソタ 7,385, ,315, ,700, ミシシッ 67,841, ,945, ,787, ピ ミズーリ 79,347, ,071, ,419, モンタナ 80,546, ,672, ,218, ネブラス 31,811, ,779, ,591, カ ネバダ 345, , , ニューハ 12, , , ンプシャー ニュージ 105, ,401, ,506, ャージー ニューメ 14,626, ,597, ,224, キシコ ニューヨ 344, ,544, ,889, ーク ノースカ 40,229, ,329, ,559, ロライナ ノースダ 119,054, ,221, ,275, コタ オハイオ 5,179, ,666, ,846,

18 州 PLC カウンティ ARC 合計 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) 支出額 ( ドル ) 全体に占める割合 (%) オクラホ 64,861, ,153, ,015, マ オレゴン 4,550, ,348, ,899, ペンシル 1,043, ,447, ,490, バニア ロードア 1, , , イランド サウスカ 24,886, ,100, ,986, ロライナ サウスダ 25,473, ,661, ,134, コタ テネシー 3,580, ,326, ,907, テキサス 356,516, ,641, ,158, ユタ 3,980, ,631, ,611, バーモン 13, ,491, ,505, ト ヴァージ 19,267, ,890, ,157, ニア ワシント 6,729, ,694, ,423, ン ウェスト 16, ,962, ,978, ヴァージニア ウィスコ 1,738, ,939, ,677, ンシン ワイオミ 3,627, ,261, ,888, ング 合計 1,914,873, ,893,318, ,808,192, 出所 :USDA/FSA, 2015 ARC/PLC Payments as of February 2, 2017, 2017, (4) ARC/PLC に関する評価と問題点 1 農作物価格の下落とそれに伴う ARC 基準価格の低下 ARC と PLC のいずれも年間の農場価格が基準価格または参照価格を下回れば 基本的にその差額が支払われるが 農産物価格の値下がりによりいずれも発動される品目が増える見込みである 15 ARC は過去数年間にわたる価格リスクへの対応を重視しており 農産物価格が高水準であれば PLC の参照価格よりも高い基準価格を実現可能となり 生産費の高まりに対応できることがその長所であった しかし ARC は基準価格が農産物価格と収量の 5 年中 3 年平均を用いて計算されるため 高い価格水準の時期から低下した最初の数年間は収入がある程度維持されるが それ以上に長期にわたって価格が低迷した場合 基準価格が低下するため 農家の収入保障として十分に機能しなくなる懸念がある 図表 2 で示した FAPRI の価格動向予測は今後農産物価格の下落を予想しており ARC の選択率が高いとうもろこしや大豆では価格の低迷が続くのであれば それに伴い ARC の支払額も低下すると見込まれる 16 他方 PLC は法定の参照価格が固定されていることから ARC の基準価格が下落した結果 ARC 15 平澤 農産物の安値に直面する米国の農業所得安定化政策 成立から 3 年目の 2014 年農業法 51 頁 16 吉井邦恒 2014 年農業法セーフティネット プログラムの選択 アメリカの農業者は PLC と ARC のどちらを選んだのか 農林水産政策研究所 平成 26 年度カントリーレポート : 米国農業法 ブラジル 韓国 欧州酪農 2015 年 23 頁 ;Jonathan Coppess, Evaluating Commodity Program Choices in the New Farm Bill, farmdoc daily (4) 21, 6 February,

19 の支払額が PLC を下回るようになった ARC の補償の幅は 基準価格の 10% という制限が設けられているため それ以上の値下がりが発生しても ARC では補償されない ( それ以上の値下がりは作物保険でカバーするという前提 ) PLC は参照価格と販売価格の差額が保障されるため 価格が大幅な低下にも対応でき 値下がりに比例して補償率も上昇する 2015 年の政府農業補助支出は ARC が 43.8 億ドルで PLC が 7.5 億ドルであったが 2016 年はそれぞれが 59.4 億ドルと 19.6 億ドル 2017 年は 53.8 億ドルと 32 億ドルになると見込まれ PLC の支出の大幅増が予想されている ( 図表 4) すでに農産物によっては PLC が有利になるケースが生じている 年には 農産物価格が高水準だった 2011 年の価格が 2018 年には 2012 年の価格が基準価格の算定に含まれなくなるため ARC の基準価格はさらに低下する 今後も引き続き農産物価格が下落すると さらに ARC の優位性がさらに低下することになる 図表 12 PLC の参照価格およびカウンティ ARC の各品目の基準価格 ( 単位 : ドル ) PLC 参照価格 カウンティ ARC 基準価格発動価格基準価格発動価格 基準価格 ( 予測 ) 発動価格 ( 予測 ) 発動価格 2014 年比 (%) 小麦 大麦 オーツ麦 落花生 とうもろこし ソルガム 大豆 乾燥エンドウマメ レンティル 大ヒヨコマメ 小ヒヨコマメ ヒマワリ種子 キャノーラ アマニ マスタード 菜種 ベニバナ クランベ ゴマ 長粒米 中粒 短粒米 ジャポニカ米 出所 :USDA/FSA, ARC/PLC Program ( より作 成 17 平澤 農産物の安値に直面する米国の農業所得安定化政策 成立から 3 年目の 2014 年農業法 53 頁 14

20 2 カウンティ ARC 支払額の地域間格差 カウンティ ARC では郡ごとに支払金額が異なりうる 差額の発生は制度上の仕組みゆえに避けられないが 近隣の郡で大幅に支払金額が異なれば生産者に不満が生まれうる 実際 2014 年作物年度では アイオワ州のカルフーン (Calhoun) 郡はエーカー当たり支払額が ドルであったが 北に隣接するポカホンタス (Pocahontas) 郡はエーカー当たり ドル 南の 2 郡はエーカー当たり約 75 ドル支払われた 支払金額の大きな差についてアイオワ州選出のグラスリー (Chuck Grassley) 上院議員とエルンスト (Joni Ernst) 上院議員 ( ともに共和党 ) がビルサック農務長官に対して懸念とカウンティ ARC の郡平均単収の算出方法に関するより詳細な情報を求める書簡を提出した (2016 年 5 月 ) 18 このような不満はアイオワ州に限らず ミネソタ州選出のピーターソン (Collin Peterson) 下院議員も 2014 年農業法について多くの不満が農家から寄せられていると述べている 19 これらの批判に対して スキューズ (Michael Scuse) 農務副長官は 支払額の差は郡の生産履歴と天候のパターンによるものであるとしたうえで ARC 導入にあたり USDA は全米の郡の平均単収を算出する必要があったが 完全なデータが揃ったのはそのうち半分以下の郡に過ぎなかったと述べている 20 農務省全国農業統計局 (NASS) の統計は郡レベルでのサンプルが小さいために誤差が大きくなることや 郡の単収データがない場合は農業サービス局 (FSA) が新たに推計せざるを得なかったことから カウンティ ARC を実施するうえで郡単収データの不備は FSA にとって最大の課題であった 21 3 綿種子の取り扱い アーカンソーのファームビューロー (Arkansas Farm Bureau) の会長は 次期農業法では 綿花を含め全ての農産品に対してセーフティネットが設けられるべきであり 2014 年農業法は畜産農家に対して十分な支援がなされていないと述べている 22 綿花は PLC および ARC から除外されているが 綿花価格の下落を受けて 下院農業委員会委員長のコナウェイ (Michael Conaway) は 綿種子を油糧種子に含めて補助の対象に含めるよう USDA 長官のビルサック (Tom Vilsack) に提案した 23 しかし ビルサック長官は USDA に綿種子を油糧種子に指定し直す権限はないとして提案を却下し 年 3 月 10 日現在 提案は受け入れられていない 25 また 綿花補助金をめぐってはブラジルから WTO 協定違反であると訴えられ 米国の主張が斥けられるパネル裁定が下されている そうした中で 綿種子を農業プログラムに入れれば ブラジルからの反発を招く可能性がある 26 4 ARC/PLC に対する主要農業団体の評価 以下 2017 年 1 月に実施した聞き取り調査をもとに主要農業団体の ARC/PLC に対する評価をまとめる PLC については 想定通りの実施状況であり ヒアリングを実施した農業団体からは PLC の問題を指摘する意見は聞かれなかった PLC が機能している要因として 不足払いは従来から実施されてきた制度であり 生産者も慣れているとの指摘があった 18 Chuck Grassley, Grassley, Ernst Seek Information from Agriculture Secretary on USDA Payment Formula, News Release, 9 May, Difference in ARC Payments by County Raises Questions, AG Web, 16 May, Ibid. 21 平澤 農産物の安値に直面する米国の農業所得安定化政策 成立から 3 年目の 2014 年農業法 50 頁 22 Farming subsidies rise 74% in state USDA payments at $370.7M in 15, The Arkansas Democrat-Gazette, 2 December, Dispute over farm subsidies; Trying to get back in tall cotton: Growers see bill s loophole as being key, San Antonio Express-News, 6 March, USDA says no to cottonseed as an oilseed, FarmWeekNow, 6 February, 年 1 月に実施した米国における現地調査では 新政権が誕生したばかりで見直しをするかどうかは全く検討が始められていないとのことであった 26 Dispute over farm subsidies, San Antonio Express-News, 6 March,

21 他方 ARC に対しては様々な問題点が指摘された 一つは 上述のとおり PLC の支払額の地域間格差であり 郡の単収データを算出するにあたり NASS のデータが十分ではなく 作物保険のデータなど異なるデータソースが用いられた可能性があり それが地域間格差を生む一因になったと推測する意見が聞かれた NASS のデータ整備状況については 州によっては NASS データの整備状況は特に遅れており データ自体がほとんど存在しなかったケースもあるという NASS のデータが未整備なのであれば リスク管理局 (RMA) のデータ等で補完する必要があるとの指摘があった 2014 年農業法の成立当時は 農産物価格が高値で推移していたため ARC は農家の収入を高水準で保証できるため ARC の導入を歓迎したが 当初の想定以上に NASS のデータ整備状況が遅れていたことが後に判明したとの指摘も聞かれた ARC と PLC の選択は 2014 年農業法実施中一度しかなく 選択したのちはもう一方のプログラムに切り替えることはできない しかし 農家が数年先の農産物価格を予測することは困難であり ARC の支払額の予測可能性が低いことを問題視する指摘もあった 他方で 今回のヒアリング調査の範囲内では 近年の農産物価格の下落とそれによる ARC 発動価格の低下という状況を踏まえても ARC への選択を後悔している農家が多いとの指摘は聞かれなかった 基準価格は低下しているものの プログラム実施後 1 年目 2 年目は多くの支払いを得られたのであり 少なくとも短期的に収入を確保したいと考える農家にとって ARC の選択を不利なものではなかったという 結局のところ プログラム導入後すぐに支払いを受けるか それともしばらく期間が経過してから支払いを得るかという支払いを受けるタイミングの問題に過ぎない ある農業団体では加盟農家に不足払いか収入保障か 27 のいずれのプログラムを希望するかという意見収集を実施したところ 依然として収入保障を選択する農家が多かったという 基準価格の低下により ARC の選択を後悔する農家も一定数は存在し ARC への信頼性が低下する一方で PLC への信頼性が高まった面はあるものの 全体としてみると選択を後悔する農家は少なく 仮に改めて選択の機会が与えられても ARC を選択する農家が多いのではないかとのことであった ただし 次期農業法で ARC を維持するにしても 現状のプログラムでは基準価格の低下が避けられないため 基準価格を引き上げられるような制度設計 ( たとえば オリンピック平均の算出対象期間を 5 年ではなく 10 年に拡大して 高騰時の農産物価格を計算に含められるようにする等 ) が必要との指摘がなされた 1.4. DMPP/DPDP の実施状況 (1) DMPP/DPDP の利用状況とその背景 ( 保証利幅別 州 地域別 ) 1 酪農マージン保護計画の概要 利幅保護プログラム (DMPP) は 生乳所得損失補償契約 (MILC) に代わって導入された制度で 酪農利幅 (MPP マージン : 全国平均牛乳販売価格 - 全国平均飼料コスト ) の保証水準 ( カバーレベル ) が 4 ドル /100 ポンドから 8 ドルまで 0.5 ドル刻みで設定され 生産量に乗じる保証率 ( カバー率 ) も 25% から 90% へと 5% 刻みで設定されている 2 か月間の平均 MPP マージンが保証水準を下回った場合 生産者 ( 酪農経営体 :dairy operation) は支払いを受けられる 支払額は下記の計算方法によって算出される ( 保証水準 -2 か月平均の MPP マージン ) 保証率 過去 3 年間のうちの最高の生産量 ( または 直近 2 か月間の牛乳生産量のいずれか少ない方 ) 1/6 28 DMPPでは 生産者が政府に管理料として年間 100 ドルを支払ったうえで 保証水準に応じた掛 29 け金を政府に納める USDAによると 2016 年 6 月 30 日現在 米国の認定酪農経営体は 45, PLC か ARC かという質問でないことに注意 不足払いか収入保障かというより抽象度の高い聞き方で行われた 28 たとえば 基準生産量が 300 万ポンド (30000cwt) で 保護水準を 7 ドルにして カバー率を 50% に設定したとする 実際の 2 か月平均のマージンが 5 ドルだった場合 5 ドルは保護水準の 7 ドルを下回るため DMPP による支払いがなされる 支払額は (7 ドル ( 保護水準 )-5 ドル (2 か月の平均マージン )) 0.5( 保証率 ) 30,000( 基準生産量 ) 1/6=5000 ドルとなる USDA, 2014 Farm Bill Fact Sheet, June 2015, p.3, 29 酪農経営体 (dairy operation) とは 単一の酪農経営として牛乳を生産し販売する一人または一人以上の生産者を指 16

22 で うち DMPP に登録した経営体数は 25,966 となっている 30 2 乳製品寄贈プログラム (Dairy Product Donation Program) 乳製品寄贈プログラム (Dairy Product Donation Program: DPDP) は 低マージン時における生産者への支援を目的とする制度である 前 2 カ月間のマージン (MPP マージン ) が 4 ドル以下になった場合に USDA は乳製品を買い入れる活動を始める 2014 年農業法導入以来 MPP マージンは 4 ドルを下回っていないため 本報告書では割愛する (2) DMPP の実施状況 USDA が 2016 年 7 月 6 日に発表した DMPP の登録状況を見ると 2016 年は保証水準を 4 ドルで設定した生産者が多いことが読み取れる 2015 年は生産者のうち保証水準を 4 ドルにしたのは 4 割程度であるのに対して 2016 年は約 8 割が 4 ドルに設定している 保証水準を 6.5 ドル以上の比較的高めに設定する生産者の割合は 2015 年から 2016 年にかけて大幅に減少している これは 2015 年の MPP マージンが 7.5 ドル以上であったことによると考えられるが 後述するとおり 2016 年 5/6 月の MPP マージンは 5.76 ドルとなり ( 図表 16 参照 ) 2017 年の MPP 保証水準の選択に影響を与える可能性がある (2017 年 3 月 10 日現在 2017 年の保証水準選択状況は未発表 ) 図表 13 DMPP 保証水準選択状況の比較 ( 年 ) 出所 :USDA, Dairy farmers shifted to catastrophic coverage under the MPP-Dairy Program in 2016, 6 July, 2016, す 複数の酪農経営体の経営も可能であるが その場合には 経営として明確に分離されている必要がある 認定酪農経営体 (dairy operations licensed) とは 牛乳販売を認可された酪農経営体を指す 服部 アメリカ 2014 年農業法 収入保障 不足支払い 収入保険の 3 層構造 77 頁 30 USDA, Dairy Operations Establishing Production History for 2014, 2015, and 2016 Margin Protection Program (MPP), 30 June, 2016, 17

23 図表 14 保証水準別の参加生産者内訳 ( 州別 2016 年 6 月 30 日現在 ) 州 4 ドル 4.5 ドル 5 ドル 5.5 ドル 6 ドル 6.5 ドル 7 ドル 7.5 ドル 8 ドル 合計 アラバマ アラスカ 2 2 アリゾナ アーカンソー カリフォルニア 1, ,181 コロラド コネティカット デラウェア フロリダ ジョージア ハワイ 1 1 アイダホ イリノイ インディアナ アイオワ ,020 カンザス ケンタッキー ルイジアナ メイン メリーランド マサチューセッ ツ ミシガン ,135 ミネソタ 1, ,841 ミシシッピ ミズーリ モンタナ ネブラスカ ネバダ ニューハンプシ ャー ニュージャージ ー ニューメキシコ ニューヨーク 2, ,455 ノースカロライ ナ ノースダコタ オハイオ ,040 オクラホマ オレゴン ペンシルバニア 1, ,178 プエルトリコ ロードアイラン ド サウスカロライ ナ サウスダコタ テネシー テキサス ユタ ヴァージニア ヴァージニア ワシントン ウェストヴァー ジニア ウィスコンシン 4, ,580 ワイオミング 合計 19, ,991 2, ,663 合計 ( 割合 ) 77% 0% 2% 1% 8% 9% 1% 1% 1% 出所 :USDA, MPP-Dairy Count of operations by coverage level, 18

24 図表 15 DMPP 登録酪農経営体の基準生産量 (2016 年 6 月 30 日現在 単位 : ポンド ) 州 $4.00 $4.50 $5.00 $5.50 $6.00 $6.50 $7.00 $7.50 $8.00 合計生産量 アラバマ 63,120,528 6,602,877 69,723,405 アラスカ 3,084,346 3,084,346 アリゾナ 4,614,015,350 4,614,015,350 アーカンソー 78,767,642 4,274,262 5,332,907 2,096,036 3,680,532 94,151,379 カリフォルニア 35,986,428,245 41,275, ,035, ,170, ,797,970 59,855,811 8,473,383 3,025,729 37,441,063,237 コロラド 2,272,616,366 48,515,188 13,369, ,228, ,476,725 3,135,206,957 コネティカット 292,763,742 10,015,765 39,913, ,693,472 デラウェア 80,251,537 2,440,550 82,692,087 フロリダ 1,673,076,197 7,795, ,434,939 1,961,306,252 ジョージア 791,598, ,491,284 9,926,205 2,739,259 1,220,755,611 ハワイ 18,577,849 18,577,849 アイダホ 14,096,345, ,480,391 35,548, ,097,041 33,038,858 24,247,698 14,635,758,079 イリノイ 1,315,784,060 6,298,331 36,820,673 14,482, ,521, ,940,193 20,044,887 22,557,719 10,096,057 1,748,545,396 インディアナ 2,696,242,701 4,109,423 5,275,272 8,075,078 91,184, ,194,423 5,011,256 3,112,997 23,681,076 2,978,886,387 アイオワ 3,509,573,809 5,139,597 29,162,625 74,129, ,457, ,555,127 33,349,535 66,381,526 3,715,892 4,497,465,459 カンザス 1,959,523,377 1,858, ,605,434 3,000, ,013,912 67,986,304 5,819,648 5,401,317 3,899,244 3,186,107,936 ケンタッキー 625,309,795 1,050,506 31,131,050 18,606,954 6,224,594 4,662,987 1,416, ,402,841 ルイジアナ 141,823, ,890 14,579,820 7,382,106 1,588, ,862,091 メイン 550,793, ,212 6,450,556 9,742,472 5,076, ,719,022 メリーランド 559,564,636 2,343,339 1,958,597 24,088,709 5,454,233 3,456, ,865,711 マサチューセッツ 168,415, ,748 41,317,240 16,801, ,606 1,382, ,823,697 ミシガン 7,084,124,453 31,106,265 93,802,436 44,863, ,963, ,485,374 7,062,270 18,660,428 10,612,353 7,556,680,092 ミネソタ 5,477,389,177 14,241, ,262,347 69,423,717 1,766,593,142 1,305,495,737 63,797,282 94,215,867 36,580,879 8,955,999,457 ミシシッピ 120,300, ,012 5,810,812 5,161,117 2,879,647 2,935, ,762,178 ミズーリ 555,065,843 7,229,953 11,404,186 11,955, ,732, ,807,331 26,503,596 43,626,678 10,679,418 1,000,005,305 モンタナ 254,534,811 27,763,777 6,134,320 3,462, ,895,372 ネブラスカ 1,172,353,213 10,078,292 5,149,433 5,774, ,008,575 49,218,674 2,166,576 2,148,864 1,374,898,603 ネバダ 827,863, ,863,090 ニューハンプシャー 176,954,699 3,789,360 10,697, ,441,720 ニュージャージー 86,906,610 1,425, , ,968 1,131,725 91,151,194 ニューメキシコ 7,760,150, ,866,296 3,187,934 14,188,086 7,921,392,696 ニューヨーク 9,470,576,287 31,211, ,800,705 25,629, ,516, ,650,479 3,248,724 11,932,802 15,929,443 10,189,494,886 ノースカロライナ 840,631,124 3,828,099 25,699,236 20,416,268 15,994, ,569,081 ノースダコタ 249,028,065 11,059,726 17,988,954 3,060, ,137,539 オハイオ 3,639,586,825 33,184,983 54,383,576 15,448, ,308, ,652,076 5,053,288 31,287,933 12,392,986 4,087,298,915 19

25 州 $4.00 $4.50 $5.00 $5.50 $6.00 $6.50 $7.00 $7.50 $8.00 合計生産量 オクラホマ 521,246,737 1,149,593 6,343,230 12,694,293 17,169,626 1,077,719 2,325, , ,656,938 オレゴン 2,110,332,959 31,659,442 52,554,500 50,882,975 5,647,131 19,322,601 1,723,630 2,272,123,238 ペンシルバニア 4,445,019,186 12,099,506 69,256,874 48,623, ,902, ,888,458 8,520,457 26,399,040 22,541,306 5,511,250,781 プエルトリコ 92,781,103 2,202,998 2,103,091 97,087,192 ロードアイランド 11,225, , ,088 12,705,597 サウスカロライナ 85,710,109 1,205,514 3,009,126 1,252,048 11,732, ,908,843 サウスダコタ 1,262,440,055 95,962,295 15,342, ,761,709 94,576,825 7,881,972 9,571,160 3,485,552 2,252,021,955 テネシー 650,905,342 5,181,881 3,824,887 8,860,365 2,721, ,494,419 テキサス 6,927,626, ,186,821 74,136,009 1,816,735, ,990,886 9,718,615 13,647,432 4,845,668 9,622,887,284 ユタ 1,863,433,738 3,457,791 17,377,235 40,089, ,864 1,924,923,158 ヴァージニア 1,821,254,725 1,256,856 12,730,978 19,273,629 17,984,147 1,109,219 1,873,609,554 ヴァージニア 1,113,261,599 5,118,192 18,490,027 2,533,040 68,747,152 57,946, ,965 10,027,201 12,591,082 1,289,522,524 ワシントン 4,871,095, ,576,421 36,824, ,308,633 59,610,307 5,264,411 5,242,680,162 ウェストヴァージニア 63,216, ,635 10,095,208 1,491,546 75,580,735 ウィスコンシン 20,623,060,014 39,890, ,275, ,012,514 1,709,867,765 1,999,735, ,215, ,041, ,409,875 25,384,508,713 ワイオミング 96,911,024 13,895, ,806,419 合計 155,772,663, ,564,464 3,502,158,403 1,081,235,655 10,924,232,916 6,339,658, ,850, ,332, ,368, ,103,064,204 合計 割合 ) 87.0% 0.2% 2.0% 0.6% 6.1% 3.5% 0.2% 0.3% 0.2% 出所 :USDA, Production History for Dairy Operations Enrolled in 2016 Margin Protection Program (MPP), 30 June, 2016, 20

26 1 MPP マージンの推移と支出動向 図表 16 は牛乳販売価格と飼料価格の動向と MPP マージンを示した表である 2 か月平均 MPP マージンが 8 ドル未満で支払いが発動されるが 2016 年 5 月 /6 月の 2 か月平均 MPP マージンは 5.76 ドルと DMPP 導入後で最も低い水準となった これを受けて USDA は 4852 の酪農経営体に対して合計 1120 万ドルを支払うと発表した 31 支払いを受けられるのは保証水準を 6 ドル以上に設定していた酪農経営体である DMPP に参加した酪農経営体は 25,663 であるから 受給できたのは DMPP に参加する経営体数の 2 割弱となる 図表 17 は州別の支払額を示しているが 最も多くの支払いは受けたのはウィスコンシン州で 1465 の酪農経営体に対して 283 万ドルが支払われた ミネソタ州 アイオワ州 テキサス州がそれに続く MPP マージンが大きく低下した状況を受けて 農務長官のビルサックは 生産者に対して 5 月 /6 月の状況を踏まえて 2017 年の保証水準を決定するよう促した 32 なお 2017 年の保証水準決定の登録期限は 2016 年 9 月 30 日までであったが USDA はこれを 12 月 16 日まで延長すると発表した 33 また 60 名の下院議員 全米生乳生産者連盟 (NMPF) ファームビューロー (AFB) は USDA に対して乳価を引き上げるためにチーズを買い上げるよう要求した 年 8 月 23 日 USDA は 11 万ポンドのチーズを民間の在庫から買い上げて全国のフードバンクに配分する計画を公表した 35 買い上げ額は 2000 万ドル規模で 本計画により栄養支援政策対象者への支援と過去 2 年で 35% 下落した酪農家の収入回復 過去 30 年で最高水準にあるチーズの在庫削減になるとしている なお 2016 年 7 月 /8 月の MPP マージンは 8.42 ドルまで回復し 以降は 8 ドルを上回っている 31 USDA Will Make $11.2 Million in Dairy MPP Payments, Farm Jounral s MILK, 4 August, Ibid. 33 Jim Dickrell, What a way to run a dairy program, Dairy Herd, 3 September, Ibid. 35 USDA, USDA to Purchase Surplus Cheese for Food Banks and Families in Need, Continue to Assist Dairy Producers, News Release, 23 August, 2016, 21

27 図表 16 牛乳販売価格と飼料価格の動向と MPP マージン保証水準 (2014 年 3 月 年 1 月 ) 月 支払期 とうもろこし ( ドル / ブッシェル ) アルファルファ ( ドル / トン ) 大豆油かす ( ドル / トン ) 全牛乳価格 ( ドル /CWT) 最終飼料価格 ( ドル /CWT) マージン ( 全牛乳価格 - 最終飼料価格 ) MPP マージン 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 出所 :USDA, Margin Protection Program (MPP) Calculations, 図表 17 は 2016 年 5-6 月の州別 MPP 支払額を示している 上述のとおり 最も支払いを受ける州はウィスコンシン州で 1465 の酪農経営体に 283 万ドルが支払われた 同州とミネソタ州で全体の 4 割強が支払われている 州の支払額を経営体数で除して経営体当たりの平均受給額を算出すると フロリダ州が最も大きく 一経営体当たり平均で 23,251 ドルとなり コロラド州 カリフォルニア州 テキサス州 ジョージア州がこれに続く 22

28 図表 17 MPP 受給額 (2016 年 5-6 月 単位 : ドル ) 州 受給額 経営体数 経営体当たり平均受給額 アラバマ 4, ,416 アーカンソー 3, カリフォルニア 305, ,954 コロラド 314, ,456 コネティカット 43, ,098 デラウェア 2, ,236 フロリダ 93, ,251 ジョージア 151, ,636 アイダホ 147, ,101 イリノイ 351, ,132 インディアナ 190, ,948 アイオワ 711, ,259 カンザス 156, ,486 ケンタッキー 55, ,074 ルイジアナ 12, ,125 メイン 8, メリーランド 19, ,004 マサチューセッツ 35, ,527 ミシガン 209, ,636 ミネソタ 2,164, ,166 ミシシッピ 16, ,617 ミズーリ 425, ,617 モンタナ 21, ,400 ネブラスカ 82, ,838 ニューハンプシャー 9, ,081 ニュージャージー 5, ,444 ニューメキシコ 13, ,692 ニューヨーク 403, ,244 ノースカロライナ 85, ,763 ノースダコタ 25, ,424 オハイオ 263, ,892 オクラホマ 30, ,368 オレゴン 15, ,568 ペンシルバニア 586, ,588 プエルトリコ 1, ロードアイランド サウスカロライナ 16, ,611 サウスダコタ 376, ,087 テネシー 5, テキサス 684, ,217 ユタ 42, ,372 バーモント 26, ヴァージニア 130, ,453 ワシントン 83, ,791 ウェストヴァージニア 3, ウィスコンシン 2,832,010 1,465 1,933 合計 11,169,506 4,852 2,302 出所 :USDA FSA, 20payments%20by%20state.pdf. 23

29 (3) DMPP に関する評価と問題点 1 支払額の地域間格差とセーフティネットとしての有効性 図表 17 のとおり MPP 支払額は州ごとで大きく異なるが 地域間での支払格差について コネティカット州や北部州の生産者が MPP は中西部や西部の州の大規模生産者に有利な制度であるとの不満を抱いているとする指摘もある 36 MPP マージンの算出に用いられる乳価および飼料代は全国平均の値が使用されるが コネティカット州の飼料代は西部州よりも高値であり 結果的に不利になっているという不満につながっている また マージン算出の基礎となる飼料コストの計算方法の妥当性に疑問の声が上がっており MPP マージンが 5.76 ドルとなった 2016 年 5 月 /6 月には 4852 の酪農経営体に対して 1120 万ドルが政府より支払われたが 一経営体当たりの平均受給額は約 2300 ドルに過ぎず 生産者の経営を保証するには十分とはいえないとされる 37 また 支払いを受けられた生産者は参加経営体数の 2 割弱にとどまっており セーフティネットとしての有効性も問われかねない 低受給額および受給生産者の少なさといった問題により 酪農業界は 2014 年農業法の保障メカニズムに不満を抱いており たとえば ファームビューローのシニアディレクターのサッチャー氏 (Mary Kay Thatcher) は 2014 年農業法の保障メカニズムは価格の下落に対応できないと批判したうえで 2018 年農業法制定に向けて生産者が自身の立場を訴えるべきと主張している 38 2 その他 DMPP では生産者が保証水準を自由に選択できるため 生産者の選択によっては政府のコストが大幅に増大するリスクを伴う また DMPP によって牛乳生産量が増大すると それに伴い牛乳価格は下落し ひいては牛乳販売価格から飼料コストを差し引いた MPP マージンの低下がもたらされる そのため 生産者が十分に牛乳生産量を減らさないと 低 MPP マージンの期間が延びるおそれがある また 生産者が毎年保証水準を調整できるとはいっても 調整は過去の生産割合と MPP マージンのみにひもづけられているため 家畜の飼育頭数に大幅な変化があったとしても過去の生産量を調整することができないとの指摘もある 39 (4) DMPP に対する主要農業団体の評価 以下 2017 年 1 月に実施した聞き取り調査をもとに主要農業団体の DMPP に対する評価をまとめる 上述のとおり 低マージン時でも支払いを受けられる生産者数が少ないという問題を DMPP は抱えているが ある農業団体によると このような問題の発生は事前に予測されたとする その農業団体によれば 2014 年農業法の策定過程において MPP の素案を作成している際に 飼料コストの計算公式を作成したが 予算の制約により飼料コストが低めに計算されるように修正されてしまったという それゆえ 2016 年 5 月 /6 月に MPP マージンが 5.76 ドルとなったにもかかわらず 支払いを受けられる生産者が少なかったが 制度設計過程で飼料コストが低めに計算されるように修正されていたため そのような問題がいずれ発生することは事前に予測できた それでも 2014 年と 2015 年は MPP マージンが 8 ドルを下回ることは少なく また下回った場合でもその下落幅は小さかったため DMPP はほとんど発動されることはなかった そのため 2016 年は多くの生産者が 4 ドルの保証水準を選択したと考えられる ヒアリングを実施した 2017 年 1 月時点では 2017 年の保証水準の選択状況は明らかとなっていないが 2016 年 5/6 月の MPP マージンの下落は生産者の 2017 年の選択に影響を与え 4 ドルよりも高い保証水準を選択した生産者が増える可能性はあるという 36 Dairy Farmers Hopeful Despite Difficult Economy, Hartford Courant, 3 January, Paul Neiffer, The Farm CPA, AG Web, 7 August, Ag Groups to Prepare Ideas Before New Farm Bill, AG Web, 9 September, James M. MacDonald, Jerry Cessna, and Roberto Mosheim, Changing Structure, Financial Risks, and Government Policy for the U.S. Dairy Industry: A report summary form the Economic Research Service, USDA/ERS, March

30 支払額の地域間格差とそれへの対策についてはヒアリングした農業団体で意見が分かれた ある農業団体は 飼料コストが低めに算出される点に生産者の間で不満があり 算出する基準も地域ごとにすべきとする 東部州と西部州ではコストや生乳価格に差があるため 全国平均では飼料コストが全国平均よりも高い地域から不満が生じる DMPP は保険に類似したプログラムだが MILC では生乳価格が目標価格に届かなかった場合 政府が差額の一定割合を補填し 生産者は費用負担の必要がなかったが DMPP は生産者が保険料負担をしなくてはならない点で前制度と大きく異なっている 生産者は保険料を支払う仕組みに慣れておらず また 保険料は掛け捨てなので 支払いがなくても払い戻しを受けられない点も不満であるという 他方 別の農業団体は 地域間格差の問題とプログラムに不満を抱く農家が存在することを認めつつも DMPP それ自体は優れたプログラムと評価する 飼料コストや乳製品価格が地域によって異なるため その農業団体も地域レベルの価格やコストを MPP マージン算出に用いるべきという意見があることは把握しているが DMPP は全国平均をもとにマージンを算出することを前提に設計された制度であり 地域レベルでの算出方法に変更すると保証水準等も地域ごとに設定する必要性が生じかねず 結果として地域間の不公平を生むおそれがある 州レベルなどの地域レベルのデータを用いても多くの生産者にとっては利益をならず プログラムの根幹を変えなければならないため その団体は MPP マージン算出に地域レベルのデータを用いることには否定的であるという 次期農業法については 2014 年農業法でプログラムを MILC から MPP に大転換しているため 次期農業法で再度プログラムを根本的に変えるというよりは プログラムの改善を目指す意向であるとする また MPP 算出のデータに関しては 全国レベルのデータにも問題があり 地域レベルのデータも使用すべきでないとしても 代わりにいかなる計算方法やデータ使用が望ましいかについては現在検討中とのことである 1.5. 収入保険 / 収量保険 /SCO の実施状況 (1) 作物保険の概要 米国の作物保険 (crop insurance) は任意加入である 作物保険は収量保険と収入保険に大別できる 作物保険を管理 運営するのは USDA のリスク管理局 (RMA) と連邦作物保険公社 (FCIC) であり 民間の保険会社 18 社が保険を販売している 政府は助成金をそれら民間保険会社に支払っている 作物保険の概要は下記のとおりである 収量保険 収入保険 図表 18 作物保険の対象保険対象リスク保険対象農作物等自然災害等による収量の減少 穀物 油糧種子 果樹 野菜 工芸作物 干ばつ 凍霜害 湿潤害 暴風雨 洪水 牧草 養蜂 養殖等病害 虫害 獣害 火災 噴火等 上記自然災害等による収量の減少 価格の低下のいずれか または その両方による収入の減少 作物別 とうもろこし ソルガム 小麦 コメ 大豆 菜種 ヒマワリ 綿花 ポップコーン 豆類 果樹 ( チェリー イチゴ かんきつ類など ) 経営単位 すべての農産物 ( 家畜 畜産物を含む ) 出所 : 吉井邦恒 アメリカ 2014 年農業法の実施状況 農業経営安定対策を中心として 農林水産政策研究所 2016 年 29 頁 25

31 米国の作物保険制度は 1938 年に設立されたが 当初は小麦のみを対象としていた 年代前半までは農家の作物保険加入率は低かったが 1994 年に連邦作物保険改革法によって作物保険制度が改革されると 作物保険が拡大し 作物保険の加入面積はゆるやかに増加していった 41 図表 19 は 主要農産物 ( とうもろこし 綿花 落花生 コメ 大豆 小麦 ) における作物保険加入面積の推移を示している 1996 年農業法の制定により 価格変動リスクへの対応策として収入保険が導入されると 42 徐々に収入保険の加入面積が増加し 2016 年は作物保険加入面積の約 9 割を収入保険が占めている 収入保険の利用が拡大した背景であるが 2000 年代後半に農産物価格と生産費が高水準となって価格変動対応型支払 (CCP) の目標価格を常に上回るようになり CCP が十分に機能しなくなったことに加えて 農産物の短期的な価格変動が拡大したことがある 43 また 融資先農家が CCP では収入変動リスクをコントロールできないことに対して金融機関が関心を持ったことも要因である 図表 19 主要農産物における作物保険加入面積の推移 とうもろこし 綿花 落花生 コメ 大豆 小麦の合計出所 :USDA/RMA, Summary of Business( より作成 収入保険の 1994 年以降の保証水準別加入面積の割合推移をみると 当初は 60% 台が加入面積の約 7 割を占めていたが 徐々に高い保証水準の割合が増加し 2016 年は保証水準 70% 以上の割合が保険加入面積の 8 割を超えている 高い保証水準の選択が高まった背景としては 2000 年に導入された農業リスク保護法により 農家がより保証水準の高い作物保険への加入を促進するため 補助金水準が引き上げられたことが一因と考えられる 手塚眞 米国農業政策と直接支払の廃止 2014 年農業法下のデカップリングのゆくえ 東京経大学会誌 第 285 号 2015 年 14 頁 41 同上 15 頁 ; 清水徹朗 農業共済の現状と収入保険導入を課題 農林金融 2016 年 10 月号 12 頁 42 清水徹朗 農業共済の現状と収入保険導入を課題 農林金融 2016 年 10 月号 13 頁 43 平澤明彦 米国 2014 年農業法の農業所得安定化政策 緊縮財政下で進む農産物の高値への適応 農林金融 2014 年 12 月号 6-7 頁 44 手塚 米国農業政策と直接支払の廃止 2014 年農業法下のデカップリングのゆくえ 15 頁 26

32 図表 20 主要農産物における保証水準別の加入面積の割合 ( 収入保険 ) とうもろこし 綿花 落花生 コメ 大豆 小麦の合計出所 :USDA/RMA, Summary of Business( より作成 2014 年農業法では 所得保障を補完するものとして 補足的カバーオプション (SCO) が導入された これは 収入 ( 保険設計上の期待収入 または期待収量 ) の 86% までを保障する保険である SCO は単収 収入のいずれかの保険であり 既存の保険商品との併用が必須となっている 45 保険料補助は 65% で保険料補助の平均 62% よりやや高い PLC は SCO と併用可であるが 保険ではないものの機能が SCO に類似している ARC( 保障率も 86% で同じ ) とは機能の重複を避けるために併用ができない SCO は 2015 年産の農産物から実施に移された PLC を用いるとみられるコメ農家は SCO を評価した 46 事実 後述するとおり コメは他の農産物に比較して SCO への加入率が高くなっている (2) 収入保険 / 収量保険 /SCO の利用状況とその要因 ( 品目別 保証水準別 州 地域別 ) 1 各種保険の利用状況 RMA のニュースリリースによると 2016 年現在 作物保険プログラムは 543 品目に対して 118,000 の補償種類 (coverage option) を有する この補償種類の数字は 2009 年時点の 64,000 の約 2 倍とされる 47 保険債務 (insurance liability) は 2009 年に 795 億ドルであったが 同期間で 1024 億ドルまで拡大している RMA は主要作物の作付面積の 85% が作物保険によってカバーされていると見積もっており 作物保険によってカバーされているエーカー数は 2009 年の 2 億 6470 万エーカーから 2015 年に 2 億 9700 万エーカーに増加した 果物 野菜 その他特殊作物 (specialty crops) については 同期間で 770 万エーカーから 830 万エーカーに増加している 平澤 米国 2014 年農業法の農業所得安定化政策 緊縮財政下で進む農産物の高値への適応 15 頁 46 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング 海外農業 貿易事情調査分析 ( 米州 ) 25 頁 47 USDA/RMA, USDA Builds on Record of Crop Insurance Success for America s Farmers and Ranchers, News Release, No. RMA , 7 July, 2016, 48 Ibid. 27

33 2014 年農業法のもと SCO や収穫除外過去実績生産保険 (APH Yield Exclusion) といった新たな保険手法が導入され RMA の予備的調査によれば 2016 年には 1000 近い保険契約者が後者を利用しているとされる 年には総農場収入保証保険 (Whole-Farm Revenue Protection: WFRP) が導入されるなど RMA は作物保険のオプションを拡大している 50 保険に加入する有機農家のエーカー数は 2009 年の 576,700 エーカーから 2015 年には 100 万エーカーまで約 2 倍に増加している 収量保険 収入保険 図表 21 各種保険制度の概要名称概要大災害作物保険 (Catastrophic Crop Insurance: 通常年 ( 過去 4-10 年 ) の平均単収の 50% を下 CAT) 回った場合 下回った分について予想市場価格の 55% を支払う 保険料は全額政府が負担するが 加入する作物ごとに 300 ドルの手数料を支払う 過去実績生産保険 (Actual Production History: CAT では不十分だと感じる農業者に対して上 APH) 乗せの保証 (50-85%) を行う保険 保証価格は期待予想価格 (FCIC が決定 ) の % の範囲で加入者が選択し 選択した条件に応じた保険料を支払う 収量保証保険 (Yield Protection: YP) 基本的仕組みは APH と同じ 適用される価格は ARH と異なり作付前先物価格を使用地域収量保証保険 (Area Yield Protection: AYP) 個々の農場の収量ではなく 郡ベースの収量をもとに保証する作物保険収入保証保険 (Revenue Protection: RP) 単収低下と価格低下によって実際の販売収入が収入保証額 ( 基準単収 基準価格 保証率 ) を下回った場合に 下回った分を補償 過去実績収入保証保険 (Actual Revenue History: ARH) 地域収入保証保険 (Area Revenue Protection: ARP) 総農場収入保証保険 (Whole Farm Revenue Protection: WFRP) 果樹を対象に単収 価格 品質低下によって実際の販売収入が過去の平均単収 保証水準を下回った場合に補償 AYP と同様に郡ベースの収入額をもとに収入を保証 経営単位の農業収入が基準収入 ( 過去の平均収入 保証水準 (50-85%)) を下回った場合に補償する収入保険 出所 : 清水徹朗 農業共済の現状と収入保険導入を課題 農林金融 2016 年 10 月号 13 頁 図表 22 は 2016 年の主要農産物の作物保険加入面積を示している コメを除くすべての農産物で収入保険の加入面積が収量保険を上回っている 特にとうもろこし 綿花 大豆 小麦は 7 割以上が収入保険に加入している 収量保険と収入保険を合計すると すべての農産物で保険カバー率が 8 割を超えている 49 Ibid. 50 Ibid. 28

34 AYP 図表 22 主要農産物の作物保険加入状況 (2016 年 単位 :1000 エーカー ) 収量保険 YP 収量保険合計 ARP 保険加入面積 ARPH P 収入保険 RP RPHP E 収入保険合計 合計 作付面積 保険カバー率 (%) とうもろこし 164 6,378 6,542 1, , ,544 82,085 94, 綿花 1,789 1,789 7, ,613 9,402 10, 落花生 ,406 1, コメ 1,695 1, ,039 2,733 3, 大豆 232 5,939 6,171 1, , ,001 73,173 83, 小麦 9 5,358 5, , ,406 42,774 50, 出所 :USDA/RMA, Summary of Business( より作成 作付面積は USDA/NASS( より 収量保険 収入保険 合計 2015 年に導入された WFRP は 従来から導入されていた調整総収入保険 (Adjusted Gross Revenue: AGR) 等よりも充実した保証の提供を目的として導入された収入保険である 主な対象は 果樹 野菜生産者 有機農産物生産者 多角化経営である 経営単位での農業収入全体を対象とする保険としては 1999 年に導入された調整総収入保険 AGR と 2003 年に導入された AGR の加入条件を一部簡素化した AGR-Lite があった AGR は 当該年度の農業収入が収入保証額を下回った場合に その差額の一定割合を保険金として支払う仕組みで 保証水準は 65% 75% 80% 保険料補助率が 48~59% となっていた 年からは AGR および AGR-Lite に代わり WFRP が導入された WFRP の概要は下記のとおりである 図表 23 WFRP の概要項目概要対象者継続する 5 年間の農業所得税申告書を提出できる者 ( 新規農業者は 3 年間 その他 4 年間でも可の場合あり ) 収入保証額が 850 万ドルを超えていないこと家畜 畜産物または種苗 施設栽培からの収入が 100 万ドルを超えていないこと対象収入税申告書の農業収入から 収穫後価値増加分 補助金 農業保険金 起用労働収入等を除いたもの対象リスク保険期間に発生した避けられない自然災害や市場変動 ( 価格低下 ) による収入の低下基準収入所得税申告書に基づく過去 5 年間の平均対象農業収入と農業経営報告に基づく当年度の予想収入を比較して 小さい方の額平均対象農業収入を計算するとき 規模拡大等に応じて調整を行う収入保証額基準収入に保証水準 (50-85%) を乗じた額保険料保険料率は加入者ごとに設定 保険料補助率は 56-80% 出所 : 吉井邦恒 アメリカ 2014 年農業法の実施状況 農業経営安定対策を中心として 農林水産政策研究所 2016 年 34 頁 WFRP は 当該保険年度の農業収入としてカウントされるべき金額 ( 算定収入額 ) が収入保証額 ( 基準収入額 保証水準 ) を下回った場合に 保険金が支払われ 保証水準は 50~85% の範囲内で保険加入者が選択する 52 農家は当該保険年度の確定申告後 60 日以内に保険金を請求する ( 保 51 吉井邦恒 アメリカの収入保険制度 星勉 吉井邦恒 鈴木宣弘 姜薈 石井圭一 安藤光義 農業収入保険を巡る議論 我が国の水田農業を考える 筑波書房 2015 年 13 頁 52 吉井邦恒 アメリカ 2014 年農業法の実施状況 農業経営安定対策を中心として 農林水産政策研究所 2016 年 35 頁 29

35 険金の支払いは翌年の春以降 ) 保険金を算定するための損害評価は ほ場に収穫物がない状態で行われるため 書類による審査が中心となる 53 WFRP は 2015 年に 37 の州で利用可能となり 2016 年に全 50 州で利用可能となった 2015 年から 2016 年にかけて加入証券数が 2 倍に伸びているが これは利用可能州が増加したことが一因と考えられる もっとも 2016 年は加入証券数が 2000 件を超え 同種の保険であった AGR と AGR-Lite の加入証券数を大きく上回るものの 米国の作物保険加入証券数全体からみれば WFRP のウェイトは大きいとはいえない 54 図表 24 経営単位収入保険の加入証券数 出所 :USDA/RMA, Summary of Business ( より作成 2 SCO の利用状況 SCO は 2015 年に大麦 とうもろこし 綿花 コメ ソルガム 大豆 小麦で利用可能となり 2016 年作物年度からは アルファルファ キャノーラ 野生コメ (cultivated wild rice) 乾燥えんどう豆 飼料生産 (forage production) 牧草種子 (grass seed) ハッカ オーツ麦 たまねぎ じゃがいも ライ麦が一部の郡で対象に追加され 将来的には大麦や冬小麦が追加される予定となっている 55 図表 25 は SCO の加入面積と作付面積に占める割合を示している 2015 年と 2016 年の加入面積比をみると 大麦と綿花を除いて多くの作物で加入面積が減少している 作付面積に占める割合をみても コメ以外の作物は 5% 未満であり コメにしても 2015 年は 22.2% だったのが 8.2% まで減少している 特に加入率が低いのが とうもろこしと綿花 大豆であるが 綿花は STAX があること とうもろこしと大豆はカウンティ ARC に加入する農家が多く ARC 加入者が SCO を利用できないことが低加入率の一因と考えられる 53 同上 36 頁 54 吉井 アメリカの収入保険制度 19 頁 55 USDA/RMA, Supplemental Coverage Option (SCO), 30

36 図表 25 SCO 加入面積および作付面積に占める割合 ( 単位 : エーカー ) 総計 増減 作付面積 作付面積に占める割合 (%) % 大麦 35,552 46, ,623,000 3,052, とうもろこし 280, , ,019,000 94,004, 綿花 6,773 9, ,580,500 10,074, ソルガム 179, , ,459,000 6,690, コメ 583, , ,625,000 3,150, 大豆 296, , ,650,000 83,433, 小麦 2,641,906 1,480, ,999,000 50,154, 合計 4,024,804 2,442, 出所 :USDA/RMA, Summary of Business ( より作成 3 収入保険 / 収量保険 /SCO の政府支出実績 ( 品目別 保証水準別 州地域別 ) 図表 26 は作物保険の政府保険料補助額の推移を示しているが 2000 年代に顕著に増加し 2011 年に過去最高の 74 億 6300 万ドルを記録している 作物保険別の支出状況をみると 収入保証保険が補助金額全体の約 8 割を占め 過去実績生産保険が 1 割弱となっている ( 図表 27) 新たに導入された SCO および後述する STAX はともに全体に占める割合は非常に小さい 図表 26 作物保険の保険料補助額の推移 ( 単位 : 百万ドル ) 出所 :USDA/RMA, Summary of Business ( より作成 31

37 図表 27 作物保険別の保険料補助額 ( 単位 :1000 ドル ) 保険 補助金額 全体に占める全体に占める補助金額割合割合 RP 4,767, ,471, APH 534, , YP 293, , STAX 76, , ARP 71, , WFRP 38, , SCO 22, , その他 282, , 総計 6,086,315-5,854,822 - 出所 :USDA/RMA, Summary of Business ( より作成 (3) 収入保険 / 収量保険 /SCO に関する評価と問題点 1 SCO の低加入率 図表 25 が示すとおり 2016 年の主要農産物の作付面積に占める割合は比較的高いコメでも 1 割に満たない 農家は SCO のみにセーフティネットを依存しているわけではないが 低加入状況が続くようであれば SCO のセーフティネットとしての存在意義が問われかねない SCO を所管する USDA/RMA は SCO の普及を図るべくインターネットを通じた宣伝や保険会社が SCO の仕組みを説明できるよう教育の場を設けるなどの活動をしているとのことであるが 2017 年 1 月現在 SCO の利用拡大を示すようなデータはないとしている 56 2 保険料補助率の正当化 オハイオ州立大学の Carl Zulauf 教授は 6 割を超える保険料補助率を客観的に正当化できる根拠はないと指摘する 57 補助率は政治によって決定されるのであり 保険料補助プログラムが疑問視されない限り保険料補助率が議論の俎上にのぼる可能性は少ないものの 客観的な指標によって根拠づけられないかぎり 究極的にはプログラムの削減や廃止の危険性がある 2014 年農業法で直接支払が廃止されたのもプログラムの正当化に失敗したためであり プログラムへの支持を維持するためには補助率を正当化する何らかの根拠が必要となる 1.6. STAX の実施状況 (1) STAX の概要 2014 年農業法では 2008 年農業法の固定支払い 価格変動対応型支払 (CCP), 平均作物収入 選択支払い (ACRE) が廃止となった そのかわりに 作物保険の一種である 積み上げ所得保障計画 (Stacked Income Protection Plan:STAX) が導入された これは 収入保険の一種であるが この保険は綿花に限った保険である 綿花のみを対象に STAX が設けられたのは アメリカの綿花政策が WTO 協定に整合していない という WTO 裁定への対応を目的にしているためである STAX では 期待収入の 10% から 30% 以内の損失を補償する ( 期待収入の 70-90% を保障 ) 期待収入 ( 期待価格 期待郡単収 ) における期待価格については グループリスク所得保護保険 (GRIP) 58 の期待価格 または 作物保険公社が提供する期待価格のいずれかを用いる 56 USDA/RMA ヒアリング 2017 年 1 月 57 Carl Zulauf, Why Crop Insurance Has Become an Issue, farmdoc daily, 20 April, グループリスク所得保護保険 :1 基準収入は ( 全国農業統計局の設定する カウンティ ( 郡 ) の平均単収 )x( 連邦保険公社の設定する 収穫時の価格 ) 2 カウンティの当年の平均収入が基準収入を下回れば 補償支払いが行われる 3 カバー率 : 基準収入の 90% まで 32

38 期待郡単収については 作物保険公社の設定する郡単収 または 5 年オリンピック平均郡単収のいずれか大きい方を用いる { 郡の期待収入 )-( 郡の実収入 )} に差が生ずれば その差が支払われる 支払い保険料全体のうち政府が 80% 負担する 生産者の負担は 20% にとどまる 59 (2) STAX の実施状況および課題 2016 年の STAX 利用面積は 253 万エーカーであった 年の綿花作付面積が 1007 万エーカーであったから STAX 利用率は 25% 程度にとどまっている ( 政府の補助金支出額については上記図表 27 を参照 ) 2015 年も利用面積は作付面積の 3 割程度に過ぎなかったが このように利用率が伸びない要因としては 現行農業法が成立した 2014 年の夏に綿花価格が大幅に下落し STAX が導入された 2015 年以降は価格が横ばいとなり 作付前から半年前後の価格下落に対応することを目的とされた STAX では 2014 年以来の値下がりへの補填にさほど貢献しなかったこと 新制度であるため農家に馴染みがなかったこと 保険料が高いといった点が指摘されている 61 (3) STAX および綿種子プログラムに対する主要農業団体の評価 以下 2017 年 1 月に実施した聞き取り調査をもとに主要農業団体の STAX に対する評価をまとめる STAX の加入率が低迷しているのは 同プログラムは 2014 年農業法で新設されたもので 浸透への時間が不十分であり 新たなプログラムへの経験が足りないことが一因である また 保険料負担が重荷となっており STAX では保険料の 80% を政府が補填するが 1 エーカー当たりの保険料が少額であっても 数千エーカーともなれば大きな金額となり 経営が順調でなければ たとえ政府補助があっても追加的な保険料を払うインセンティブはないという 2015 年のプログラム導入時から綿花価格は低迷しており 今後も低迷が予測されれば保険に加入するインセンティブがなくなるが 反対に綿花価格が上昇すれば STAX への加入率が高まるかもしれないとのことである 綿花生産者としては政府補助率が 80% 以上になれば歓迎するが 政府の財政的な余裕を考慮すれば 補助率拡大は期待できない このように問題のあるプログラムではあるが STAX のコンセプト自体は支持しており そのため次期農業法では STAX の廃止を求めるのではなく 必要に応じて新プログラムの導入を求めるとの意見が聞かれた STAX ではないが 綿繰費用分担プログラム (Cotton Ginning Cost Share) のようなアドホックな助成も歓迎するものの 綿種子の作物プログラム (ARC や PLC) への追加のほうが継続的な支援を受けられるため優先度が高いとのことである 1.7. マーケティング ローンの実施状況 マーケティング アシスタンス ローン ( 販売支援融資 :Marketing Assistance Loan) は価格支持機能を有するプログラムである 各地の市場価格が著しく低くなった場合の価格補てんを行う 対象作物は 小麦 とうもろこし ソルガム 大麦 オート麦 陸地綿 長繊維綿 長粒米 中粒米 落花生 大豆 その他油糧種子 羊毛 ( 等級あり ) 羊毛 ( 等級なし ) モヘア 蜂蜜 乾燥えんどう豆 レンズ豆 小ヒヨコ豆 大ヒヨコ豆である 農家は任意の量の作物を担保として 9 か月の短期融資を得る 短期的な資金を確保することで 農家は収穫期に収穫した農産物を一度にすべて販売する必要がなくなり 農作物が高値になった時点での販売が可能となる また この融資には元本請求権がないため 農家が担保にした農作物を政府に引き渡せば 農家は返済義務から免除される そのため 農作物価格が融資額を下回る場合は 農家は市場に販売せずに政府に農作物を引き渡し 返済しないことを選択できる これにより 農家は市場価格よりも高い融資単価で販売したのと同じ収入が確保される 年農業法でもマーケティング アシスタンス ローンは維持されているが ほとんど発動されていない 59 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング 海外農業 貿易事情調査分析 ( 米州 ) 頁 60 USDA/RMA, Summary of Business: National Summary by Insurance Plan as of 30 January, 平澤 農産物の安値に直面する米国の農業所得安定化政策 成立から 3 年目の 2014 年農業法 57,59 頁 62 平澤 米国 2014 年農業法の農業所得安定化政策 緊縮財政下で進む農産物の高値への適応 4-5 頁 33

39 図表 28 は全国の作物別ローンレートである 郡や地域レベルのローンレートは各品目の全国ローンレートに基づいて設定されるため ローンレートは地域によって異なり 農産品が貯蔵される郡または地域の平均価格および生産量に基づいて設定される 年農業法により 政府補助金の支払額に上限が設定され PLC ARC マーケティング ローン 融資不足払い (Loan Deficiency Payments: LDP) で支払われる額は 12 万 5,000 ドルが上限とされた 64 図表 年の全米ローンレート ( 生産単位ごと ) 品目 生産単位 小麦 bushel $2.94 とうもろこし bushel $1.95 ソルガム bushel $1.95 大麦 bushel $1.95 超長綿 pound $ 陸地綿 pound * オーツ bushel $1.39 長粒米 cwt $6.50 中粒米 cwt $6.50 大豆 bushel $5.00 その他油糧種子 cwt $10.09 乾燥エンドウマメ cwt $5.40 レンズマメ cwt $11.28 小ヒヨコマメ cwt $7.43 大ヒヨコマメ cwt $11.28 羊毛 ( グレードあり ) pound $1.15 羊毛 ( グレードなし ) pound $0.40 はちみつ pound $0.69 落花生 ton $ モヘア Pound $4.20 出所 :USDA, 2014 Farm Bill Fact Sheet, February 2016, 環境保全政策 ( 保全プログラム ) その他の主要政策 (1) 主要プログラムの制度概要 (CRP WRP EQIP CSP) 1 環境保全留保計画 (CRP:Conservation Reserve Program) 1985 年にロナルド レーガン大統領が法案に署名し成立した CRP は 農業サービス庁 (FSA) による土地保全プログラムであり 米国最大の私有地保全事業である 農家や土地所有者による自発的な参加によって CRP はこれまで水質向上 土壌侵食の減少 絶滅 あるいはその危機にある種の生息環境の向上を促進してきた 同プログラムに参加する農家は 年間 土壌侵食されやすい土地を休耕し 環境衛生や土壌品質向上に資する種子を蒔いて被覆する その間 土地の商業的な利用はできないが USDA から地代相当額の支払を受けることができる 同プログラムは長期的に価値ある土地被覆を再建し 水質向上 土壌侵食阻止 及び野生動物の生息環境の逸失を減らすことを目的とする USDA, 2014 Farm Bill Fact Sheet, February 2016, p Ibid. 65 USDA, Farm Service Agency (FSA), Conservation Reserve Program, 三菱 UFJ リ 34

40 CRP に登録するには 2 つの方法がある 第一は 競争的手続で CRP 一般契約 ( CRP General Sign-up) として知られており 定期的に USDA 長官が公募を行う 第二は CRP 継続契約 (CRP Continuous Sign-up) と呼ばれるものであり 継続的に実施される 全ての登録手続きは USDA の地域事務所で行うことができる CRP に登録するための要件として 農家は原則として CRP の登録期間の少なくとも 12 ヵ月前には土地を所有する あるいは管理していなければならない もっとも従前の所有者の死亡により新規に土地を譲り受けた者 担保権実行により所有権を得た者 CRP への登録を全く意図せずに新規所有権者により購入された土地は例外として登録が可能である CRP の対象となる土地は耕作地で 農作物を 2008 年から 2013 年の 6 穀物年度中 4 年間作付された土地で 物理的 法律的に農作物の作付が可能な土地 あるいは特定の放牧地で 河川の緩衝地や同様の水質保全目的に適した土地である 66 2 湿地保全プログラム (WRP: Wetlands Reserve Program) WRP は任意的プログラムで 土地所有者が保有する湿地帯を保護 回復 強化する機会を提供する USDA の自然資源保全局 (NRCS) は 2008 年農業法により設置された全ての事業を実施し 受益団体に WRP 参加によるメリットを広報する また NRCS は土地所有者が WRP を通じて湿地帯を回復するための技術的及び金銭的支援を行う 同プログラムは長期的な保全及び野生動物保護の機会を構築する機会を土地所有者に与える 2014 年農業法により WRP の地役権 (the WRP easements) の管轄は NRCS から農業保全地役権プログラム (ACEP) に移転した 67 3 環境改善奨励プログラム (EQIP: Environmental Quality Incentives Program) EQIP は保全プログラムの中でも人気が高い政策であり 自発的参加が基本のプログラムである EQIP は農業用地や産業用でない私有の森林地上の土壌 水 植物 動物 大気 関連する天然資源の改善のための保全活動を農業生産者が計画し実施するために金銭及び技術支援を行う また EQIP は 生産者が連邦 州 部族 地方レベルの環境規制を遵守するように支援する 68 EQIP を通じた金銭補助は 適格要件のある生産者が承認を得た保全行為を実施するために支払われる または適格ある土地上で生産者が特定の土地使用の問題に対処するため 保全活動計画 (CAP) の作成を支援するために支払われる 支払は EQIP 契約上に明記され NRCS 基準を満たす実施済みの行為や活動に対してなされる CAP は生産者が農業実施における特定の天然資源に関する問題に対処するために作成される EQIP 参加者によって選定される認証あるテクニカル サービス プロバイダー (TSP) が各 CAP の作成を行う EQIP への申し込み期間は州によって異なる NRCS は EQIP 申請書を継続的に受理し処理する 各州は締切を設けることができる 4 保全励行計画 (CSP: Conservation Stewardship Program) 環境保全に有利な農法等を実施する生産者に対して 直接支払を実施する政策である CSP は農業生産者が既存の保全システムを維持向上させ 優先的な資源問題に関して追加的に保全活動を実施するための支援をする 参加者は保全成果に対して CSP 支払を受ける 成果が高ければ高い程 より多くの支払が受けられる 69 7,000 万エーカーの生産用農地と森林地を保全する 米国で最大 サーチ & コンサルティング 海外農業 貿易事情調査分析 ( 米州 ) 31 頁 西澤栄一郎 アメリカ保全休耕プログラム 農林水産政策研究所レビュー No 年 9 月 29 頁 66 USDA FSA, 67 USDA, Natural Resources Conservation Service (NRCS), Wetlands Reserve Program, USDA, Natural Resources Conservation Service (NRCS), NRCS Conservation Programs, 68 USDA, Natural Resources Conservation Service (NRCS), Environmental Quality Incentives Program, 69 USDA, Natural Resources Conservation Service (NRCS), Conservation Stewardship Program, 35

41 規模の保全事業である 天然資源を保全し営利事業を促進するものであるので 数千人規模の国民が同プログラムへ登録を希望する 同プログラムに参加することにより 畜牛の収穫の向上 作物生産高の向上 野生生物の増加 生産者の投入費用の減少 異常気象への耐性の強化等の恩恵を受けることができる 70 EQIP と CSP の助成要件 対象の違いについて 端的にいえば EQIP は生産者が未だ実施していないが 今後実施を予定する保全行為あるいは保全活動計画 (CAP) の作成を実施するために支払われる これに対し CSP は従来 環境保全に有利な農法等を実施してきた生産者に対して 既存の保全システムの維持向上及び追加的保全活動の実施をさらに奨励するために支払われる点といえる 助成の適格要件の詳細は下記表の通りである また 助成対象の適格要件についても EQIP では農業生産者であり 土地の所有者又は管理者であることが要件とされている これに対し CSP は FSA の農家登録があればよいとされており 要件的には緩やかである また CSP は実質的に日々の土地管理 農業管理ができる者であることが求められている 対象 図表 28 EQIP と CSP の助成要件 対象の比較 EQIP CSP 生産者が今後予定する保全行為の実 従来 環境保全に有利な農法等を実施 施あるいは保全活動計画 (CAP) の してきた生産者による既存の保全シス 開発 テムの維持向上及び追加的保全活動 助成要件 農業生産者であること ( 私人 法人 農業関係共同事業体 農業生産又は森林管理従事者 ) 適格要件を充たす土地の所有者又は管理者 補正後の総収入 (AGI) が 90 万ドル未満であること ( 連邦政府が認証するアメリカ及びアラスカの先住民部族は除く ) 著しく侵食を受けやすい土地及び湿地の保全要件に適合すること 少なくとも 1 つ 天然資源の課題に対処する EQIP の事業計画を作成すること 著しく侵食を受ける水土地及び湿地の保全要件に適合すること FSA の農家登録があること 契約期間中において 土地管理を効果的に実施できること 日々の農業管理に積極的に従事でき 農業生産に関わるリスクを共有できること 申請時において少なくとも 2 つの資源問題の限界基準 (threshold) を満たさなければならない 出所 :USDA, Environmental Quality Incentives Program, USDA, CSP Fact Sheet, Aug 2016, (2) 主要プログラムの実施状況 1 CRP 2016 年 3 月時点での CRP 参加農家の分布は以下の図の通りである 小麦ベルト上に参加農家が多い 合計で 2380 万エーカーが対象である 70 USDA, CSP Fact Sheet, Aug 2016, 36

42 図表 29 CRP 加入状況 2016 年 3 月 31 日時点 出所 :USDA FSA, 6.pdf 契約数 参加農家数及び対象面積については 2012 年以降 年々減少しており CRP の規模は縮小傾向である 図表 30 CRP の契約数 参加農家数 対象面積の推移 契約数 738, , , , ,702 農家数 409, , , , ,879 対象面積 ( エーカー ) 29,530,000 26,840,000 25,450,000 24,180,000 23,880,000 出所 :USDA FSA, 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサ 37

43 イト上で公表している内容に基づきまとめる 71 年月内容 2014 年 6 月 4 日 USDA は 生産者が土地を保全し 新規就農者 少数派農家 退役軍人農家が農業を開始することを支援するプログラムを発表 2014 年 6 月 19 日 USDA はチェサピーク湾水質パートナーシップのため財政支援を行うと発表 2015 年 5 月 29 日 USDA は野生動物の生息地や湿地帯の CRP のために 追加的に 80 万エーカーの高度に環境配慮的な土地を 特定の湿地帯及び野生動物イニシアティブに基づき CRP へ参加させることを発表 2015 年 7 月 15 日 USDA は同年 9 月 1 日より 農家や畜産農家が家畜の放牧地を維持しつつ 草地や牧草地 放牧地保全のために財政支援に申請可能となることを発表 2016 年 12 月 7 日 USDAは今後 農家や畜産農家にCRPのより多くの参加機会を提供すると発表した これには野生動物や授粉媒介動物 湿地へ利益となる水質保全のためのCRPの新しい活動も含まれ 110 万エーカーの追加となる 年 12 月 9 日野生動物の生息地や私有の森林地改善のため USDAのFSAは CRPに登録 73 された森林地の運営のために 追加的な奨励策を発表 CRP の政府支出の総額は以下の通りである 2013 年に支出額は予測値であるが急増したものの 農業法制定後は 大幅に下落している 前述のとおり CRP の対象面積は 2012 年以降削減傾向にあり 政府支出も下落している 図表 31 環境保全留保計画 (CRP) 総支出 ( 単位 :1,000 ドル ) 2013 年と 2014 年は予測値 出所 :USDA 2012 年度年次概要書及び 年の月次概要書 ( vation-reserve-program-statistics/index) を基に当社作成 71 USDA, Progress on 2014 Farm Bill Implementation, 72 USDA/FSA, 73 USDA/FSA, 38

44 2 WRP 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容に基づきまとめる 74 年月内容 2014 年 9 月 8 日 USDA は湿地帯と農地 景気向上の保全のため 3 億 2800 万ドルを提供するとした 2015 年 3 月 31 日 USDA は 3 億 3200 万ドルを 農業用地や草地 湿地帯の保護と回復のため提供するとした WRP の総負担額の推移は以下の通りである 農業法が制定された 2014 年に大幅に減少したものの 2015 年には若干増加がみられる 図表 32 湿地保全プログラム (WRP) のタイプ別負担額 ( 単位 :1000 ドル ) 出所 :USDA, NRCS Conservation Programs: Wetlands Reserve Program (WRP), 3 EQIP 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容に基づきまとめる USDA, Progress on 2014 Farm Bill Implementation, accessed on 4 August, Ibid. 39

45 年月内容 2015 年 4 月 7 日 USDA はミシシッピ川流域の水路支援のため財政支援を行うことを発表 USDA の自然資源保全局 (NRCS) は 27 の新規の優先度の高い分水地点と 水質を改善し農業運営を強化するための 13 の既存事業に対し 1000 万ドルを投資する予定 これは優先的な分水地点での深刻な水質問題に対処するために 4 ヵ年で1 億ドルの予算が予定されているが 本措置はその一部 2015 年 5 月 18 日 USDA は干ばつ被害を受けた州の復興のため 水保全への投資を拡大すると発表 EQIP の総負担額は以下の通りである 農業法制定以前は増加傾向にあったものの 2014 年の農業法制定後は小幅であるが減額傾向がみられる 図表 33 環境改善奨励プログラム (EQIP) のタイプ別負担額 ( 単位 :1000 ドル ) 出所 :USDA, NRCS Conservation Programs: Environmental Quality Incentives Program (EQIP), 4 CSP 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容に基づきまとめる 76 年月内容 2014 年 6 月 23 日 CSP の最初の参加者は 5 年間の更新が可能となる CSP 契約の有効期限が切れる生産者は 2014 年 7 月 11 日から 9 月 12 日までに 天然資源を改善し保全計画を安定させる保全活動を更新 追加しなければならない 2014 年 12 月 23 日 USDA は CSP 規則に関するパブリックコメント期間を 2015 年 1 月 20 日まで延長 CSP については 農業法制定以前から総負担額は増加し続けており 2014 年の農業法制定後もさらに増加している 従来に比べて 技術支援が占める割合が増加している CSP 負担額が 2010 年から急増している原因であるが 2009 年から CSP プロジェクトは開始されたものの 2008 年農業法の実施が遅れたため 2009 年は USDA から CSP 参加者に支払う義務がなく 76 USDA, Progress on 2014 Farm Bill Implementation, accessed on 4 August,

46 その 2009 年契約分の支払いが 2010/11 に回されたことによる 77 図表 34 保全励行計画 (CSP) のタイプ別負担額 ( 単位 :1000 ドル ) 出所 :USDA, NRCS Conservation Programs: Conservation Stewardship Program (CSP), 以上各事業の予算動向をまとめると CRP WRP の需要 予算は減少傾向にあるのに対し CSP は増加している この背景として 元々 CRP も WRP も湿地を休耕させる生産調整の代わりとしての意味合いがあるプログラムであり 農作物プログラムと互換的に実施され 農作物価格が高騰すると減少するという関係にある 2014 年農業法施行時は農作物価格が高騰していたため 農家は農地を休耕させずに生産に優先し CRP WRP への参加が減ることになったと考えられる これに対し CSP は天然資源を保全し営利事業をさらに促進するものであるため 農産物価格が上昇していることもあり CSP への参加が増え 予算が増加したと考えられる 1.9. 貿易政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 ( 輸出信用保証 海外市場開発 食料援助等 ) 1 輸出信用保証 (GSM-102:Export Credit Guarantee Program) GSM-102 プログラムは 米国輸出業者へ信用保証を提供し 米国農業製品の商業輸出を促進する 予定される支払いのために外国為替の用意が可能な程に十分な財政体質を有する途上国の買い手 ( 輸入業者 ) への 米国輸出業者からの輸出を奨励する 同プログラムは 高価値で消費者志向の冷凍食品や生鮮食品 肉類 調味料 ワインやビール 中間生産物 繊維質食品の輸出業者が利用可能である 農務長官が WTO 綿花補助金紛争で米国とブラジルが合意した条件を履行するために同プログラムを実施されている USDA の海外農業局 (FAS) が 信用保証を実施する農産物信用公社 (CCC) を代表して同プログラムを運営する 78 通常 保証水準は信用売買の融資額 ( 輸入代金 ) の 98% 及び利子の一部である 2018 年まで 毎年 55 億ドルの予算が予定されている 2 海外市場開発 (FMD: Foreign Market Development Program) FMD プログラム ( 協力者プログラムとも呼ばれる ) は米国の農業製品のために長期的輸出市場を 77 USDA/NRCS ヒアリング 2017 年 1 月 78 USDA, Foreign Agricultural Service (FAS), About the Export Credit Guarantee Program (GSM-102), -gsm

47 創出 拡張 及び維持することを支援する 同プログラムにおいては FAS は米国農産物の海外流通のため 非営利農産物又は 協力者 と呼ばれる貿易組合を代表する米国の農業生産者及び加工者と連携する FMD プログラムは 消費者志向のブランド製品を海外で流通させることよりも 米国農産物を包括的に海外で流通させることを重視する 全産業を代表する機関又はメンバーシップや 対象が全国的な機関を優先する 79 3 食料援助 80 米国の国際的食料援助プログラムは複数の法律に基づき実施されており 2 つの連邦機関 USDA と USAID により実施される 平和のための食糧法タイトル I( 経済支援と食料保障 ) は米国農生産物の途上国や民間団体への無償的販売を定める タイトル II( 緊急及び民間支援 ) は米国農産物を直接的に寄付し さらに緊急援助や開発のために柔軟な資金支援も補完的に提供する タイトル III ( 開発のための食糧 ) は政府対政府での 政策の変更を条件とする農産物への補助金を定めるが 2002 年以来実施されていない タイトル V は農家への任意的技術支援で 農家や農業団体 農業事業者が利用できる 米国国際開発庁 (USAID) がタイトル II III および V のプログラムを実施し USDA はタイトル I を実施する その他 1949 年農業法が創設したプログラム ( 進展のための食糧プログラム 教育と児童の栄養のための McGovern-Dole 国際食糧プログラム 地方食料支援調達プログラム ) を実施する (2) 主要プログラムの実施状況 1 GSM-102 GSM-102 の登録保証額は 2014 年の農業法制定により大幅に減少したが 2016 年は若干の増加がみられる 図表 35 登録保証額の概要 (GSM-102) 出所 :USDA, Foreign Agricultural Service, Yearly Activity Reports, ( を元に当社作成 2 FMD 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサ 79 USDA, Foreign Agricultural Service (FAS), Foreign Market Development Program, 80 USDA/USAID, U.S. International Food Assistance Report FY 2015, 42

48 イト上で公表している内容に基づきまとめる 81 年月内容 2016 年 11 月 15 日 USDA 長官は USDA/FASは MAPやFMDプログラムを通じて米国農業や食料品の輸出市場拡大を支援するために 2 億ドルを 70 以上の米国農業団体 82 へ供与すると発表 FMD 資金の割当は以下の通りである 農業法が制定された 2014 年以降 毎年増加しているが 2017 年予算は減少となった 図表 36 FMD 資金の割当合計 ( 単位 : 米ドル ) 28,000,000 27,500,000 27,461,705 27,000,000 26,500,000 26,000,000 25,500,000 26,735,153 26,569,501 25,000,000 24,500,000 24,643,785 24,000,000 23,500,000 23,000,000 FY 2014 FY 2015 FY 2016 FY 2017 出所 :USDA, Foreign Agricultural Service, FMD Funding Allocations-FY 2016, ( s-fy-2017) を元に作成 3 食料支援 現在予算が当てられているのはタイトル II( 緊急及び民間支援 ) とタイトル V( 農家への任意的技術支援 ) のプログラムだけである タイトル Ⅱ は 2018 年度まで毎年 25 億ドルを上限に割り当てられている ( 平均 19 億ドルとなる ) 表題 V は 2018 年度まで 最低 1500 万ドル予算が割当てられる 81 USDA, Progress on 2014 Farm Bill Implementation, 82 USDA/FSA, 43

49 1.10. 栄養支援政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 (SNAP WIC 学校給食プログラム等 ) 1 補足的栄養支援計画 (SNAP: Supplemental Nutrition Assistance Program) SNAP は低所得者や世帯に 果物や野菜 全粒粉等 健康に必要な食糧の購入を支援する等の栄養支援を提供し コミュニティに経済的支援を行う制度であり 食糧が足りず窮乏する人々へのセーフティネットとして最大のプログラムである USDA の食糧栄養局 (FNS) は 栄養支援に適格な者が情報を得た上で同プログラムへの参加申請の決定を行い 便益を得られるように 州の機関や栄養関係の教育者 近隣の宗教的社会奉仕活動を行う機関と協働する 83 2 婦人児童向け栄養強化計画 (WIC: Women, Infants and Children) WIC は女性 幼児 子どもを対象とした補足的栄養プログラムである 低所得で栄養リスクにある妊娠 分娩後 授乳中の女性 幼児 5 歳までの子どものセーフガードと健康を支援する 食生活を補う栄養価の高い食料 授乳の促進を含む健康的な食事に関する情報 健康ケアに関する参考資料を提供する WIC プログラムの国家及び地方レベルで運営するのは FNS である 84 3 学校給食プログラム 学校給食プログラムは連邦政府が支援する食事プログラムであり 10 万校以上の公立や非営利の学校 居住者用保育機関で実施される 栄養バランスのとれた 低価格あるいは無料の昼食を授業日に提供する 2012 年には 3100 万人以上の子どもが昼食の提供を受けた 同プログラムは国家学校給食法に基づくもので 1946 年にトルーマン大統領が署名し施行された 1998 年に 議会は同プログラムを拡張し 放課後教育や習い事に参加する 18 歳までの子どもを含む子ども達に間食代を償還するプログラムが加えられた 学校給食プログラムは連邦レベルでは FNS の管轄であり 州レベルでは通常州の教育機関が 学校給食の権限ある機関との契約に基づき運営する 85 4 低所得家計への光熱費補助 (LIHEAP: Low Income Home Energy Assistance Program) LIHEAP は低所得層に光熱費を補助する連邦政府の政策であり 保険福祉省が管轄する子どもと家族のためのプログラムである 貧困ライン 150% までの低所得世帯に受給資格が与えられる 連邦政府は資金を一括して州に与え (2011 年度 :47 億ドル ) プログラムの運用は州に委ねられている 2008 年度の 1 世帯平均の受給額は平均 293 ドル / 月 2009 年度には 740 万世帯が受給していた 86 補助的なレバレッジ奨励資金は 州やその他管轄機関で LIHEAP の適格世帯へ付与された連邦資金を超えて さらに追加的便益やサービスを報償として与えるものである 訓練技術支援ファンドは訓練と技術支援を LIHEAP の包括的補助プログラムを運営する州やその他管轄機関へ提供する 87 (2) 主要プログラムの実施状況 1 SNAP 関連条項 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサ 83 USDA, Food and Nutrition Service (FNS), Federal Jobs Training Programs, accessed Aug 4th, USDA, Food and Nutrition Service (FNS), Supplemental Nutrition Assistance Program (SNAP), accessed on Aug 5th, USDA, Food and Nutrition Service (FNS), Women, Infants and Children (WIC), accessed on Aug 5th, USDA, Food and Nutrition Service (FNS), National School Lunch Program (NSLP), accessed on Aug 5th, USDA, Food and Nutrition Service (FNS), National School Lunch Program, accessed on Aug 5th, 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング 海外農業 貿易事情調査分析 ( 米州 ) ( 農林水産省平成 25 年度海外農業 貿易事情調査分析事業 ) 2014 年 頁, 年 8 月 5 日参照 87 USDA, National Agricultural Library, Low-Income Home Energy Assistance, 44

50 イト上で公表している内容に基づきまとめる 88 年月内容 2014 年 8 月 25 日 USDA は SNAP 雇用及び訓練プログラムの革新を促進するため 2 億ドルを提供すると発表 2015 年 3 月 20 日 USDA は SNAP 受給者が良い仕事を得るための技術訓練のために 2 億ドルを給付 2015 年 7 月 13 日 USDA は低所得で自宅から出られない高齢者や障害者の栄養ニーズを満たすための支援として新しい方策を提案 SNAP 総費用の動向は以下の通りである 農業法が制定された 2014 年以降 若干減少はみられるものの 制定前とおよそ同水準で推移している 90, 図表 37 SNAP 総費用の動向 (2017 年 1 月 6 日時点 )( 単位 : 百万ドル ) 80, , , , , , , , , , , , , , 総費用 30, , , 出所 :USDA, Food andnutritionservice, ( を元に当社作成 2 WIC WIC プログラム費用は 2011 年が最多であったが 以来毎年減額傾向にあり 2015 年には 2008 年度と同水準まで減少した 88 USDA, Progress on 2014 Farm Bill Implementation, 45

51 図表 38 WIC プログラム総費用の動向 (2017 年 2 月 3 日時点 ) 8,705 6, ,122 9,175 8,961 8,908 7, , , , ,663 8,258 8,024 6, , , ,697 5, 総費用 ( 百万ドル ) 参加者数 ( 千人 ) 出所 :SDA, Food and Nutrition Service, WIP Program, ( を元に当社作成 3 LIHEAP 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容に基づきまとめる 年月 内容 2014 年 3 月 5 日 FNSは LIHEAPの受給額が 20 ドル以下の世帯に対する低所得過程光熱費控 89 除 (Standard Utility Allowance: SUA) の自動適用の廃止を発表 食品安全政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 ( 原産国表示 GMO 表示 カロリー表示等 ) 1 原産国表示 (COOL: Country of Origin Labeling) COOL は USDA の農業市場局が管轄するプログラムである 総合食料品店 スーパーマーケット 会員制大型ディスカウントストア等の小売業者が顧客へ特定食品の原産地情報を知らせるよう求める制度である 90 対象となる食料品は 食肉及び挽肉 ラム肉 ヤギ肉 鶏肉 天然または養殖の魚介類 生鮮及び冷凍果物と野菜 落花生 ピーカン マカデミアナッツ 朝鮮人参である 同プログラムは 2008 年農業法で導入されたが メキシコとカナダが COOL に反対し WTO へ訴え 米国は原審パネル 上級委員会 履行確認パネル 上級委員会のいずれでも敗訴した 肉牛生産者ロビー団体の米国牧場主 肉用牛生産者行動法律基金 (R-CALF-USA) や消費者団体 パブリック シチズン などは制度の維持を求めていたが 議会多数派の共和党は制度撤廃に向け動き出し 全米豚肉生産者協議会も制度撤廃を求めた オバマ大統領も 2015 年 12 月に COOL 制度の修正法案へ署名した USDA/FNS, Supplemental Nutrition Assistance Program (SNAP), 90 USDA, Agricultural Marketing Service (AMS), Country of Origin Labeling (COOL), accessed on 5 August, 米国の食肉表示は 違反 と WTO が判断 貿易戦争に発展か ロイター 2015 年 5 月 19 日 ; 勝又健太郎 米国 46

52 2 GMO 表示 遺伝子組み換え (GMO) 食品のラベル表示は農業法では特に規定はないが GMO 食品の含有表示を義務付ける動きが全米各州で高まっており オバマ政権も 2016 年 7 月 29 日 米国遺伝子組み換え食品表示法 (The National Bioengineered Food Disclosure Law) に署名した 92 3 カロリー表示 2014 年 11 月 米国食品医薬品局 (FDA) は 食品のカロリーを飲食店のメニューや飲食施設での小売り品 自動販売機上に表示することを義務付ける 2 つの規則を制定した この規則は 2010 年制定の患者保護並びに医療費負担適正化法 (the Patient Protection and Affordable Care Act) に基づくものであり 消費者が情報を得た上で好ましい選択ができるようにする 特にメニュー表示は 20 ヵ所以上で営業するチェーン店で 同じ商号で事業を行い 同じメニューを割引価格で提供する あるいはそのような割安の食品を提供する飲食店や飲食施設に義務付けられる 自動販売機の表示は 20 以上の自動販売機を運営する管理者に 販売商品のカロリー表示を義務付けるものであるが 控除要件もある 93 (2) 主要プログラムの実施状況の動向とその背景 1 COOL 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 年月内容 2015 年 5 月 8 日 WTOの仲裁委員会に提出したアメリカ通商代表部 (USTR) の予測によると 肉類に対する米国のCOOLによって カナダは 4320 万ドル メキシコは 4760 万ドルの損失となるのみである そのため 米国はWTOに巨額の罰金請求を却下するよう要求した メキシコとカナダの請求により 2 回の仲裁聴聞会が 9 月 15 日と 16 日にジュネーブにて開催 94 WTO 上級委員会は 5 月 18 日 米国の 2013 年 11 月導入の改定 COOL 規則が 輸入家畜について詳細な原産国表示の負担を生産者に強いたもので不当と裁定を下した 年 12 月 18 日下院と上院は 2016 年度の一括支出法案を可決したが それには豚肉と牛肉についての原産国表示を廃止する規定が含まれていた これによりUSDAは同規定の実施を停止することとなった 年 2 月牛肉と豚肉の食肉 牛挽肉 豚挽肉の必要的原産国表示の削除に関する最終規則が制定 97 USDAはこの規則を 2016 年度包括予算法 (the Consolidated Appropriations Act) の修正と共に発行 年 3 月 2 日 USDAはCOOL 要件削除に関して 牛と豚の食肉と挽肉の原産国表示要件を削除することは 小売業者 卸売販売業者 および生産者に合計 18 億ドル 99 の利益になるとの見解を発表 における食肉の原産国表示の義務化と WTO 紛争 農林水産政策研究所 平成 26 年度カントリーレポート米国 WTO ロシア ( プロジェクト研究研究資料第 5 号 ) 2015 年 92 USDA, GMO Disclosure & Labeling, 93 US Food & Drug Administration, Menu and Vending Machines Labeling Requirements, 94 Informa Economics, COOL Costs Canada and Mexico Only $91 Million, Issue Monitor, May 8th WTO 上級委 食肉原産国表示の改定規則は不当と裁定 通商弘報 2015 年 5 月 25 日 96 Informa Economics, USDA s Vilsack: No longer enforcing COOL requirements on pork, beef, Issue Monitor, Dec 18th, USDA, Agricultural Marketing Service (AMS), Country of Origin Labeling (COOL), 98 USDA, 99 Informa Economics, USDA: COOL Removal Benefits Likely Significant`, Issue Monitor, March 2nd,

53 2 GMO 表示 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 上述のとおり 2016 年 7 月にオバマ政権は米国遺伝子組み換え食品表示法に署名したが そこに至るまでは紆余曲折があった 2014 年 5 月現在で GMO 食品の含有表示を義務付ける動きが米国の 20 州以上で出ており 4 月に下院議員は GMO 食品表示に関する統一的枠組みを設置する法案を公表していた 年 3 月に GMO 食品の表示に関して統一的な枠組みを設ける法案が 3 月 25 日 下院に再提出された 業界団体は 州ごとに異なる規制が導入されると対応のコストがかさむとして 連邦レベルでの規制導入の動きを歓迎していた しかし 同法案は 3 月 16 日 上院で可決に至らなかった 食品産業とその支援者は議会において GMO は安全で 各州に表示基準を設置させることは実行不可能であるとし 代わりに USDA が導入する任意的表示プロセスが好ましいと主張していた 他方 任意的アプローチに反対する立場からは 消費者は自身が食べる物についての情報を望むし 食品パッケージの表示は消費者がその商品を購入すべきか否かの判断基準となるものであり 上院案はそれを排除してしまうとしていた 101 連邦レベルでの立法化は進まなかった一方で 各州での表示に向けた動きが活発化しており たとえば メイン州の下院は 2016 年 3 月 23 日 GMO 食品のパッケージ表示をすべきかに関する住民投票を承認した メイン州下院は GMO 食品表示法を 85 対 59 で可決した なおメイン州の法律は仮に可決したとしても 2018 年までに同様の法律が他の州で成立しない限り効力は生じないこととなっていた 年 7 月 29 日 オバマ大統領は国家 GMO 表示法にとって代わる超党派の方策である法律に署名した 103 同法案については 食品の情報を得るために消費者は QR コードをスキャンする等の行為が必要として 企業に QR コードや無料電話番号 (1-800) を GMO 表示の手段として利用することを許容している点を批判する見方もある また 連邦レベルの規制導入により 連邦法が州法に優越するが 同法案は一部の州法 ( バーモント州法など ) に比べて厳格ではないとする批判もある カロリー表示 米国の飲食店オーナーに対するカロリー表示の義務付けは当初 2016 年 12 月 1 日とされていたが 食品医薬品局はこれを 2017 年 5 月まで延期している バイオ燃料政策の実施状況 (1) 主要プログラムの制度概要 バイオマス作物支援プログラム (BCAP: Biomass Crop Assistance Program) 107 同プログラムは バイオマス原料を生産し 販売することを望む 農業用や非産業用の私有森林地の所有者や運営者に資金支援を行うものである バイオマス転換施設は 熱 エネルギー バイ 100 GMO 食品の表示義務付ける州法に下院議員が牽制法案 - 消費者と生産者の駆け引きが活発化 通商弘報 2014 年 5 月 29 日 101 Informa Economics, Senate GMO Food Labeling Bill, Issue Monitor, March 19th, Informa Economics, Maine House gives initial ok to public vote on GMO label, Issue Monitor, March 25th, J.R. Pegg, Absent fanfare, Obama signs GMO disclosure bill, sclosure-bill htm?ctr=dnart, accessed on Aug 5th, Fortune, President Obama Signed This GMO Labeling Bill, accessed on Oct 14th, Reuters, After delay, calorie counts to hit U.S. restaurant menus in 2017, May 13th, 2016, accessed on Oct 14th USDA, Progress on 2014 Farm Bill Implementation, accessed on Aug 4th USDA, Energy Program, 48

54 オマス製品またはバイオマス原料から得られるバイオ燃料を生産するものであるが 補助金は 条件を満たすバイオマス変換施設に納入される対象原料に対して支払われる 同プログラムへの参加と年間の支払は BCAP 事業地域内の契約した土地でプログラムで認められたバイオマス作物を生産するために農産物信用団体 (CCC) と契約した生産者が利用することができる 2 バイオプリファード プログラム 108 同プログラムの目的は バイオ製品の購入と使用を増加させることである 2002 年農業法で導入され 2014 年農業法で改めて承認され拡大された 同プログラムは経済発展 雇用創出 農産品の新市場拡大を目的とする バイオ燃料の利用によって 石油依存の減少 再生可能な農業資源の使用増加 環境や健康への悪影響が減少するとされる 同プログラムは 経済的な支援を提供するものではなく 連邦機関とその請負業者の義務的な購買要件 およびバイオ製品の任意的ラべリング イニシアティブという 2 つにより構成される 3 米国のための農村エネルギー計画 (REAP: Rural Energy for America Program) 109 同プログラムは農業生産者や農村部の小規模事業主 地方の農業電力共同組合 (rural electric cooperative) へ 再生可能なエネルギーからエネルギー効率化技術の設置や改善のために補助金と融資保証を提供する 同プログラムは全米の全農業セクターが対象となる REAP は クリーンエネルギープログラムとしては 2014 年農業法で最大のプログラムとされる 4 その他のプログラム 110 バイオ市場プログラムは連邦政府がバイオ製品を調達することを奨励するものである 2014 年農業法はバイオ製品の調達のためにラベル表示ガイドライン 管理条件 その他の施行基準を規定している 生物精製所 再生可能な化学およびバイオ製品製造支援プログラムは 同製品の製造施設の開発促進のために融資保証を提供する また 2014 年農業法でも既存のバイオ燃料教育プログラムが継続されている 5 再生可能燃料の使用義務量 (RFS: Renewable Fuel Standard) 111 RFS プログラムは 温室効果ガスの排出を減少させ 石油の輸入への依存を減らし 再生可能燃料セクターを拡大させることを目的として創設された 2005 年のエネルギー政策法により創設され 2007 年のエネルギー自立 安全保障法 (EISA) により拡張された EISA のもとで RFS の対象期間は 2022 年までと定められているが EPA は実態を勘案して毎年 RFS を決定することとなっている 2016 年 11 月 23 日に EPA は 2017 年の RFS についての最終決定を公表した これによれば 2017 年の RFS は 192 億 8000 万ガロンとされ 同年 5 月の当初案である 188 億ガロンから上方修正された もっとも EISA では 2017 年は 240 億ガロンと定められており これを下回っている 種類別では先進的バイオ燃料およびバイオディーゼルが当初案から上方修正となった 108 USDA, What is Biopreferred? accessed on March 16, FarmEnergy.org, 2014 Farm Bill s Energy Title Provisions, FarmEnergy.org, 2014 Farm Bill s Energy Title Provisions, EPA, Final Renewable Fuel Standards for 2017, and the Biomass-Based Diesel Volume for 2018, sel-volume. 農畜産業振興機構 再生可能燃料の使用義務量を公表 ( 米国 ) 49

55 図表 39 再生可能燃料使用義務量 ( 単位 :10 億ガロン ) セルロース由来 n/a バイオディーゼル 先進的バイオ燃料 n/a 再生可能燃料 n/a 出所 :EPA, Final Renewable Fuel Standards for 2017, and the Biomass-Based Diesel Volume for 2018, ( mass-based-diesel-volume) を元に当社作成 トランプ大統領は 選挙期間中に公約として EPA 予算 権原の大幅縮小を掲げており RFS の継続について今後の動向が注目されている すでに 3 月上旬には EPA の予算の 25% が削減される意向が示されている 112 農業団体やトランプ大統領は RFS 自体については支持しており 再生可能燃料は農村地域で雇用や経済基盤を創出することから RFS は廃止困難とする見方もある (2) 主要プログラムの実施状況 1 バイオマス作物支援プログラム 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 年月 内容 2014 年 5 月 20 日 USDA は再生可能なバイオマス エネルギーのため 2500 万ドルの支援を発 表 2014 年 7 月 23 日 USDA はバイオマスを配給するため 36 のエネルギー施設を選定 2 バイオプリファード 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる なお 2015 年 6 月に公表された USDA の報告書によると バイオ製品産業は 3690 億ドルの経済効果と 400 万人の雇用創出効果があるとされる 113 年月内容 2014 年 7 月 14 日 USDA のバイオプリファード プログラム事務局は 2014 年 8 月 1 日に公聴会を開催し 利害関係者間で成熟した市場 ( 木材 ) 製品のバイオプリファード プログラムへの統合について議論すると発表 2014 年 8 月 6 日 USDA はバイオプリファード プログラムの対象となる木材製品とその他製品を発表 112 Trump's EPA budget proposal targets climate, lead cleanup programs, Reuters, 2 March, USDA, New Report Shows U.S. Biobased Products Industry Contributes $369 Billion, 4 Million Jobs to American Economy, 17 June, 2015,

56 3 バイオディーゼル燃料教育プログラム 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 年月 内容 2014 年 5 月 5 日 研究 教育 再生可能エネルギー委員会 (REE) はバイオディーゼル燃料利 用の利益について消費者を教育するために 96 万ドルを提供すると発表 農村開発事業の実施状況 (1) 農村開発事業の制度概要 114 農村開発事業は USDA 農村地域開発局の管轄であり 米国の農村地域の経済や生活の質の改善を促進する事業である 事業内容は多岐に渡り 融資 補助金 融資保証を提供し 住宅や経済開発 医療ケア 緊急救援サービスや機器 水 電気や通信インフラの整備を支援する 2014 年農業法の成立により 人口 35,000 人までの地域 農村地域は参加が可能となった 銀行や信用組合 コミュニティ主体の融資スキームなどを通じてビジネスへ融資を行うものである また コミュニティの能力強化プログラム実施のために技術支援を行う 農村地域の住民が安全で安価な住宅を購入または借りることができるよう支援するとともに 安全に暮らせるための修繕のための支援も提供する 2014 年農業法によって承認された農村開発事業の各プログラムの概要は以下の通りである 図表 40 農村開発事業の各プログラム概要 分野とプログラム 1. 経済開発と雇用創出新農村ビジネス開発補助金プログラム ビジネス及び産業融資補助金プログラム 中間再貸付事業 農村小規模企業家支援事業 付加価値生産者補助金 概要 農村ビジネス機会補助金及び農村ビジネス企業補助金プログラムの目的に合致する補助金を統一し 新農村ビジネス開発補助金プログラムにより農村の小規模な新興企業の発展と成長を支援する 農村地域において 融資目的での運転資金を含み 融資保証及び融資担保として売掛金の利用を許諾し ビジネス用の資金へのアクセスをさらに向上させる 遠隔地で不利な農村ビジネスの振興及び雇用促進のための資金調達のため 継続して提供される 同事業は2014 年度から2018 年度にかけて 農村の小規模企業家及び小規模企業へのビジネス資金融資を支援するために年間 300 万ドル割当てられた 同補助金は 消費されるまで利用可能な義務的資金 6300 万ドルを伴い2018 年まで認められた これは農家や牧場主の 地方あるいは地域的な 食物システム及び特殊農産物生産を含む新しいマーケットへの展開を支援するためのものである 同補助金事業は幅広い種類の事業を奨励し資金を提供する 中小規模農家や牧場の経営者 新規参入あるいは社会的に不利な農家や牧場 退役軍人を優先する 2. 地方 地域的食料システム地方 地域的食料システムは 食料拠点 農家市場 地方又は地域的に焦点をあてた農場ビジネスのための追加的支援と共に著しく強化された 特にインフラ 事業サービス サプライチェーンの調整 そして農村部の食糧生産者と地域的マーケット機会の新しい連携を通じて増加する経済活動を支援する 現地で生産された食料に費やされる資金は現地の雇用創出と経済成長の可能性を促進させるため このような取組みは農村地域の健全な経済の加速となる 付加価値生産者補助ファンド同ファンドの一部は食料流通ネットワークとセンターのために留保されている これには地方や地域的に生産された農業生産物の 114 USDA Rural Development, 51

57 分野とプログラム概要調整 集積 貯蔵 加工 地方での流通マーケットに資する食料拠点が含まれる これらのネットワークは中間層のバリューチェーンとされるが 消費者の需要を満たし サービスが不十分なコミュニティにおける子どもや勤労者世帯 高齢者や障碍者の 栄養ある食品へのアクセスを向上させる 健康的な食糧融資イニシアテ十分なサービスを受けていな地域に対する健康的な食糧へのアクィブセスを増加させるイニシアティブが承認された 3. 農村エネルギー及びバイオエコノミーを通じた新規経済機会の促進あらゆるエネルギー資源を利用し 農村部で雇用機会を創出する政府の戦略を支援する 新興のバイオに基づく経済に投資することによって農村部の経済成長の潜在性を拡大する バイオは多くの場合 農村部における農業と製造業という2つの重要な経済原動力でもある 米国のための農村エネルギー事業 生物精製所 再生可能な化学薬品 及びバイオに基づく製品製造支援プログラム 同事業は 5000 万ドルの義務的資金及び2000 万ドルまでの2014 年から2018 年にかけての毎年の機密資金を伴って承認された 同法は 再生可能なエネルギーやエネルギー効率性プロジェクト 農家や農村部の小規模ビジネスの費用削減のために 様々な事業や継続的支援のための資金調達を奨励する 従前の生物精製所補助プログラムの名称を変えたものである 同事業は拡大し 改良されたバイオ燃料や再生可能な化学薬品を製造する バイオに基づく製品生産施設や生物精製所も含む 再供給支援プログラム同プログラムは2018 年まで延長された 2014 年の義務的資金 1200 万ドルは消費されるまで利用可能である バイオ燃料のためのバイオエバイオ燃料のためのバイオエネルギー事業は2018 年まで延長されネルギー事業た 2014 年から2018 年にかけて年 1500 万ドルの義務的資金を伴う 農村エネルギー節約事業消費者のエネルギー効率的な投資に対して融資を実施する 4. 安全で手頃な農村住宅の確保中程度及び低所得世帯の住宅ローン及び安全で手頃な賃貸住宅へのアクセスを支援する 2014 年農業法は現在の適格性基準を変更し 本来的に農村地域である人口 人までの地域はUSDAによる農村住宅事業に適格性が認められることとなった 5. コミュニティ インフラへの投資 2014 年農業法は 他の公的もしくは民間の資金源からの追加的 レバレッジされた資金調達を奨励するために 戦略的資金を提供し 健全なコミュニティ及び良好な成長に必要な清潔な水やモダンな電気通信 高品質の公的施設を保障する 緊急切迫したコミュニティの 2014 年から2018 年度 3500 万ドルが再度承認された 水支援補助プログラムコミュニティ施設事業同事業は技術支援や研修補助のために資金利用を承認する 農村ブロードバンド事業同サービスが十分でない農村地域の支援に取り組む これに加えて 新農村ギガバイト ネットワーク パイロット事業も承認され 超高速サービスが農村地域に設置され あるいは拡張された 6. 包括的で持続する経済開発のための発展したコミュニティ パートナーシップ 2014 年農業法は 包括的な支援を提供し 農村コミュニティのための 継続し 持続可能なソリューションを促進するために USDA 農村開発が民間や公的 非営利等の複数のパートナーと地域的に連携することを促進する 農村共生開発補助プログラム機関間グループを形成し プログラムやサービスの調整を向上させる 連邦機関と国家や地方共同体の農村共生開発補助を実施する 出所 :USDA, USDA Rural Development: Highlights of the Agriculture Act of 2014, (2) 農村開発事業の実施状況 1 ブロードバンド 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 52

58 年月内容 2014 年 10 月 22 日 USDA は農村ブロードバンド及び電気通信インフラへの資金 1 億 9050 万ドルを発表 2015 年 3 月 23 日 USDA はアーカンソー州 アイオワ州 ニューメキシコ州でのブロードバンド プロジェクトへの資金を発表 2 農村住宅の定義 2014 年 5 月 5 日 農村地域開発局はどの農村地域が住宅プログラムの参加適格があるかを示す地図を公表した 3 農村協同開発補助金 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 年月 内容 2014 年 4 月 29 日 USDA は本プログラムのための 580 万ドルの予算を発表 4 農村経済開発融資と補助金プログラム 中間再貸付制度 農村ビジネス開発補助金 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 年月 内容 2015 年 7 月 29 日 USDA は農村ビジネスの雇用機会創出を支援するため 1810 万ドルを供与 することを発表 5 付加価値生産者補助金 (VAPG) 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 年月内容 2014 年 3 月 25 日農村地域開発局は連邦公報において 2013 年度と 2014 年度の補助金のために 2550 万ドルまで利用可能な VAPG 資金への申請期間を延長する旨の通知 2014 年 8 月 19 日 USDA は農業起業家が農産物を付加価値製品にするために 2500 万ドルの予算を発表 2015 年 5 月 8 日 USDA は食品起業家や農業生産者が新製品を開発するための 3000 万ドルを供与する用意があることを発表 6 水とゴミ処理融資と補助金プログラム 2014 年農業法施行後の主な動きについて 以下 2014 年農業法の実施状況を USDA がウェブサイト上で公表している内容等に基づきまとめる 年月内容 2014 年 4 月 22 日 USDA は同プログラムを通じた 116 のプロジェクト補助金を発表した 補助金の合計は 3 億 8700 万ドルであり 農業法により支援される補助金 1 億 5000 万ドルが含まれる 53

59 (3) 農村開発政策の政府支出実績の動向 下記表は農村開発事業のプログラム資金額合計の推移である 2014 年農業法施行以来 資金額は減少し 以降安定的に推移している 図表 41 農業開発事業全プログラム資金額 ( 単位 : 米ドル ) 出所 :USDARD, USDA Rural Development, 2016 Progress Report, p.10, USDARD, USDA Rural Development, 2015 Progress Report, p.6, USDARD, USDA Rural Development, 2014 Progress Report, p.8, 54

60 2. 米国大統領選の結果がその後の農業政策 貿易政策に与える影響 2.1. 大統領選挙その後の動向 2016 年の大統領選挙は共和党候補のドナルド トランプ氏と民主党候補のヒラリー クリントン氏との間で争われた 物議を醸す発言を繰り返し 当初は泡沫候補とみなされていたトランプ氏が同年 11 月 8 日に実施された大統領選挙でクリントン氏を押さえて勝利した 選挙期間中 農業政策について具体的な発言は少なかったが 農業に影響を及ぼす可能性のある政策としては 環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) からの離脱や北米自由貿易協定 (NAFTA) の再交渉 移民の規制 バイオ燃料の使用義務制度 (RFS) の支持 環境規制の緩和 相続税の廃止 農業者の税負担軽減などがある 115 選挙期間中 トランプ氏は元農業州の知事や元 USDA 職員 アグリビジネス企業幹部等 70 名によって構成される農業政策諮問パネルを設置し バイオ燃料政策への支持や環境規制の廃止などを訴えていた 116 これらの政策は農業団体から支持を得る一方で TPP からの撤退や NAFTA 再交渉 移民規制は米国農業界にとって不利益となりうる政策である 米国は農産物の輸出大国であり 中国を含む他国との貿易関係の見直しによって負の影響を受ける可能性があり また 労働力を移民に依存する構造からトランプ氏の移民規制が厳格に適用されると 労働力不足になるおそれがある 117 第 115 回議会において議論される税制改革と次期農業法について ファーム ビューロー (AFB) のシニアディレクターの David Salmonsen 氏は 2017 年 1 月 27 日 国境調整税を含む税制改革の中身を精査中で 税制改革は農家にとって有益になりうるとしつつも AFB として賛成 反対の立場の最終決定には至っていないとの見解を表明した 118 他方 税制改革をメキシコとの国境壁建設と結びつけることは問題を複雑にさせると批判している とうもろこし精製協会会長の John Bode 氏は 1 月 31 日 税制改革が 輸出が重要な食糧 農業業界にとって有利になるかどうかを注視するとコメントした 119 USDA の人事では 大統領就任式直前の 2017 年 1 月 19 日 USDA 長官ポストに Sonny Perdue 氏が指名された 120 氏は ジョージア州の元知事で 2016 年 11 月にトランプ氏と会談がもたれていた Perdue 氏は 上院議員でトランプ氏を支持していたとされる David Perdue 氏のいとこである Perdue 氏の指名にいたるまで USDA 長官の候補として テキサス州の Henry Bonilla 元下院議員や元農業委員の Susan Combs 氏 Elsa Murano 元テキサス A&M 大学学長 元カリフォルニア州副知事の Abel Maldonado 氏が取沙汰されていた トランプ氏は これらの候補者たちと 12 月末に会談し その中でフードスタンププログラムの改革と農業規制の緩和の意向を示したと報道された 議会選挙結果と次期農業法への影響 同日に実施された連邦議会議員選挙では 上下院とも共和党が制した 下院の議席数は共和党が 241 民主党が 194 上院の議席数は共和党が 52 民主党が 46 となっている 結果 2019 年以降が対象となる次期農業法の審議は上下院とも共和党が多数派を占める状況で実施される公算が高く 上下院とも共和党の多数派が占める中で次期農業法が成立すれば 1954 年以来はじめてのこととなる 122 一般的に共和党のほうが財政規律を重視する傾向があり したがって 次期農業法の審議に際しても予算問題が大きな影響を及ぼす可能性がある また 共和党の選挙綱領には SNAP の USDA 管轄からの切り離しと オバマ政権下で縮小された SNAP 受給者の労働従事要件の復活が含まれているが 米国農業法は低所得者向けの SNAP によって都市議員の支持を獲得し 農業補助金と福祉予算を同時に成立させる仕組みとなっていることから 両者を切り離しが実現すると次期農業法の 115 平澤明彦 米国の大統領 議会選挙結果と農業 調査と情報 ( 農林中金総合研究所 ) 第 58 号 4 頁 2017 年 116 Trump s Ag secretary search tests his support from farmers, POLITICO, 24 December, Trump to Nominate Sonny Perdue as Agriculture Secretary, Bloomberg, 19 January, Ag industry examining GOP tax plan; Soybean group pushing for more trade funding in Farm Bill, Inside U.S. Trade, 31 January, Ibid. 120 Trump to Nominate Sonny Perdue as Agriculture Secretary, Bloomberg, 19 January, Trump s Ag secretary search tests his support from farmers, POLITICO, 24 December, 2016; Trump meets with candidates for agriculture secretary, The Associated Press, 31 December, 平澤 米国の大統領 議会選挙結果と農業 5 頁 55

61 審議は大きく難航することが予想される TPP からの離脱 2017 年 1 月 23 日 トランプ大統領は TPP から撤退する大統領令に署名した 124 大統領選挙期間中より トランプ大統領と民主党候補のであったヒラリー氏はともに TPP に否定的な立場であったため 米国での TPP 批准は難航が予想されていたが トランプ大統領は 1 月 20 日に大統領に就任してすぐに公約であった TPP からの撤退を決断した TPP を政権のレガシーにすることを目指していたオバマ大統領は 11 月の大統領選挙から自身が退任する 2017 年 1 月までのレームダック会期中での審議 承認を目指していた ヒラリー氏については TPP への反対は選挙対策であり大統領当選後には TPP 支持に回帰するとの期待もあったが 共和党候補であったトランプ氏は党大会でも TPP は米国の製造業を破壊するものであり 労働者を害する貿易協定には決して署名しないと明確に反対していた 125 仮にレームダック会期で審議されるにしても 批准には共和党の協力が欠かせないが 共和党は 1 生物製剤のデータ保護期間が米国法の 12 年より短いこと 2 投資家と国家との紛争解決 (ISDS) でたばこの規制措置が適用除外になっていること 3 電子商取引に関して 外資系企業に対するコンピュータ関連設備 ( データセンターやサーバーなど ) の自国設置の強要をしてはならないという規定が金融サービスについては例外とされていることを問題視していた 共和党内でもケビン ブレイディ (Kevin Brady) 下院歳入委員会委員長が アジア太平洋地域での米国の影響力の確保 拡大という地政学的理由および成長地域であるアジアへの米国からの輸出促進になるという経済的な理由によりレームダック会期中で TPP が批准される可能性が残されていると発言したが 126 一方で ミッチ マコーネル (Mitch McConnell, Jr.) 上院院内総務は 2016 年中に TPP の批准投票はされないとの見解を示していたし 127 ポール ライアン (Paul Ryan, Jr.) 下院議長は 2016 年 10 月 7 日のインタビューでレームダック会期では可決に必要な票が集まらないので採決はしない と述べていたなど 128 レームダック期間中の批准も難航が予想されていた 結局 レームダック会期中でも TPP は批准されなかった それでも トランプ氏の大統領就任までは希望を込めた楽観的な分析もみられた Inside US Trade 誌によると TPP の名称や中身については修正される必要があるものの トランプ氏は中国に対して強硬な姿勢をとっており 戦略的な意味において TPP は中国に対抗する上で有効な手段とされるため トランプ氏が TPP を支持する可能性が残されているとの分析もあった 129 対中国強硬政策を優先するのであれば TPP を反故にするのはトランプ政権にとって利益にならないことから TPP はトランプ政権の対中政策上有効なカードになりえるものであった 上院の農業委員会委員長の Pat Roberts( 共和党 カンザス州 ) は 中国の農産物輸出が進み 米国農産物の輸出を強化しなければならない状況では TPP は米国農業に利益をもたらすと主張した 上院財政委員会委員長の Orrin Hatch( 共和党 ユタ州 ) も自由貿易協定は米国にとって利益になるとして トランプ政権の反 TPP 姿勢の再考を促していた 130 このように大統領選挙後もトランプ氏の翻意に期待する分析もあったが 上述のとおり 1 月 23 日にトランプ大統領は TPP からの離脱を決定し 今後の FTA 交渉は二国間交渉に場を移そうとしている TPP 以外の貿易政策について トランプ氏は通商代表部 (USTR) 代表に レーガン政権で USTR 次席代表を務めた経験がある弁護士のライトハイザー (Robert Lighthizer) 氏を指名した この起用 123 平澤 米国の大統領 議会選挙結果と農業 5 頁 124 Trump signs executive orders on federal hiring freeze, TPP withdrawal and global abortion policy, The Washington Post, 23 January, トランプ氏 反 TPP 明言 米産業を壊滅 国益を優先 日本経済新聞 2016 年 7 月 23 日 ( 朝刊 ) 126 Robert J. Samuelson, Will the TPP rise from the dead?, The Washington Post, 28 September, McConnell Says Current TPP Deal Will Not Be Voted On This Year, Inside US Trade, Aug 28, Edmund Kozak, Ryan Rules Out Lame-Duck TPP, PoliZette, 7 October, TPP action unlikely in 17, but a rebranded deal seen as possible in future, Inside U.S. Trade, Vol.35, No.1, January 6, Finance members meet with USTR pick; Hatch pledges to push for TPP, Inside U.S. Trade s World Trade Online, 13 January,

62 に対して 全国牛乳生産者連合 (NMPF) は 米国の乳製品の海外市場拡大とそれに伴う米国内の雇用創出に資するとして賛意を表している 131 EU との間で交渉が進められていた大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定 (Transatlantic Trade and Investment Partnership: TTIP) に対するトランプ大統領の態度は不明確であるが TTIP 交渉が進展するか否かは TTIP が多国間 FTA とみなされるか それとも事実上の二国間 FTA とみなされるかによるとの見方がある 国家通商会議 (National Trade Council) 委員長のナヴァロ氏 (Peter Navarro) は TTIP は多国間 FTA とみなしており そうであればトランプ大統領は多国間 FTA に否定的であることから TTIP 交渉が進展する見込みは小さくなるが ある政府高官は TTIP は米国と EU との間の二者間の FTA とみなしうるので そうなれば二国間 FTA に積極的なトランプ大統領の支持が得られるとする 132 ただし 2017 年はオランダ フランス ドイツで選挙が控えているため EU 側が TTIP 交渉を進められる状況にないともいえる トランプ氏の政策に対する主要農業団体の評価 現地調査にて トランプ氏の政策について主要農業団体および有識者にヒアリングを実施した 以下 その内容をまとめる (1) 農業政策に対する評価 Perdue 氏の指名については ヒアリングを実施したすべての農業団体が支持している 氏は農業州であるジョージア州の州知事経験を持つため農業政策への理解が深いとみなされており その意味で彼の指名は驚きではなく 他の閣僚候補は議会での承認が難航する可能性があるが Perdue 氏は就任が否決されるような事態は発生しないだろうとのコメントが聞かれた Perdue 氏の指名が大統領就任式の直前まで延びた理由としては 先に指名された他の閣僚候補は女性やマイノリティが少なく多様性に欠けていたため 最後の枠として残った USDA 長官のポストでバランスをとろうと多くの候補者を模索した可能性があるとの指摘があった 移民政策については 農業団体は一様に反対であった とうもろこしのように生産現場では機械化が進み移民に労働力を依存しない農産品であっても 加工段階や供給先である畜産業界では多くの移民が働いているため 直接移民労働力に頼らない業界も移民規制には反対の立場である すでに移民規制をめぐっては 連邦裁判所がトランプ政権の移民入国制限に関する大統領令の一時的な差し止めを命令するなど大きな混乱が発生している 今後も移民規制が導入されるようであれば 議会の動向も重要であることから 農業団体の中には 移民規制に反対の議員に働きかけたり 公聴会の場で移民の必要性を訴えるなどの対策をとるとする団体もあった 移民規制が取り上げられる場の一つとして下院司法委員会があるが Steve King 議員のような司法委員会に所属する農業州出身議員に働きかけたり 司法委員会以外でもカリフォルニア州選出の Dianne Feinstein やフロリダ州の Marco Rubio といった農業州出身議員を啓蒙するなど議会全体に働きかけて 移民規制に対抗する準備を進めていくとしている 移民規制にはヒアリングをしたすべての農業団体が反対であったが RFS のようなバイオ燃料規制や環境規制の緩和についてはトランプ氏の政策を支持する団体が多かった (2) TPP 離脱に対する評価 交渉中の段階から TPP に懸念を表明していたファーマーズユニオン (NFU) を除くと ヒアリングをしたすべての農業団体は TPP 撤退を予測された結末としつつも農業界にとってマイナスの決定だったと評している NFU は そもそも TPP は為替操作が盛り込まれず労働基準 環境基準の規定も不十分であり 政府の自律的な規制を妨げる一方で多国籍企業や大企業だけが利益を得る 投資家と国家の紛争解決 ( ISDS) にも反対という立場であったことから TPP 撤退は合理的であったと評価している 自由貿易交渉は今後二国間交渉に重点が置かれると予想されるが 多国間 FTA であっても二国間 131 US dairy industry gives thumbs up to USTR selection, Agra Europe, 5 January, Official: White House position on TTIP up in the air until Lighthizer is confirmed, Inside U.S. Trade s World Trade Online, 10 March, Official: White House position on TTIP up in the air until Lighthizer is confirmed, Inside U.S. Trade s World Trade Online, 10 March,

63 FTA であっても FTA には為替操作 労働基準 環境基準に関する規定が盛り込まれ 他方で ISDS は除外されるべきとする 他の農業団体は TPP は米国産農産品の市場拡大にとって利益になるはずであり 離脱の決定は農業界にとって不利益であると指摘している TPP は完璧な協定でないにしても満足できる内容であったとする TPP の批准が最善の選択としつつも 事実上 TPP 発効の可能性がなくなった状況では 二国間 FTA 交渉を後押しするとの意見が聞かれた しかし 二国間交渉が順調に進むと予測する意見はなく 日本やアジア諸国 英国と二国間交渉をしつつ NAFTA の再交渉をするには通商政策の専門家が多数必要であるが それだけの人的資源を確保することは難しいとされる 通商問題だけでなく為替操作や税制改革といった他の重要課題もあり 迅速な二国間 FTA 交渉は容易ではない カナダとメキシコは米国農産品の主要輸出相手国であり その意味で TPP 離脱だけではなく NAFTA 再交渉も大きな懸念材料であるとの意見が多く聞かれた トランプ政権の動向は予想がつかないが 農業団体としては 従来通り 通商政策にかかわりのある政府省庁や議員 議会の委員会などに働きかけて 自由貿易推進に貢献するとの指摘もなされた TPP は外交戦略上も米国にとって利益となる協定であり 中国に対して強硬なトランプ大統領にとって 彼の外交政策と TPP は両立しうるものであった しかし 米国の重要な同盟国である豪州のターンブル首相との電話会談を決裂させるなど トランプ大統領の政策や言動は中国を利するものであり そうした一連の行動から推測すると トランプ大統領にとって外交政策は重要ではなく 移民政策や国内の雇用問題のほうが優先度が高いと指摘する有識者もいた 理論的にはトランプ大統領が翻意して TPP の支持に転じるシナリオもありえる しかし 当初 彼はビジネス経験が豊富で損得勘定を計算できるため TPP が利益になると判断すれば TPP 支持に転じるという楽観的な分析もあったが 大統領選挙後のトランプ氏の発言から推測すると むしろ TPP や NAFTA に対する反発はより強化されており 大統領だけでなく労働組合を支持基盤に持つ民主党もそれらの協定に否定的であることから 米国を含む TPP の発効の見通しはほとんどないとされる 日本としてはTPPを完全に廃案にさせるのではなく オプションの一つとして残しておいてもよいとの指摘もなされた 米国を除く 11 か国で貿易協定をつくり 米国が後から加盟できる余地を 134 残しておけば 将来的に米国を含む多国間 FTAが達成されるかもしれない FTAには貿易転換効果があるため 11 か国の多国間 FTAが成立し 米国産農産品が豪州やニュージーランド産農産品との競争力を低下させれば 米国内の農業セクターが反発し 彼らの支持を重視する農業州出身議員が議会や政府に圧力をかける可能性がありうるという 上述のとおり トランプ大統領は二国間 FTA を重視するが 交渉は容易ではないとされる 日米 FTA 米英 FTA NAFTA 再交渉を同時にするにはそれぞれの国と FTA に精通した専門的な人材が必要であるが それだけの人的資源を確保することは容易ではない 日米 FTA 交渉を進めるにしても 再び FTA に不満を抱く国内の産業界を説得するという大きな作業が発生する いずれの国も再交渉となれば 米国農業セクターは TPP 以上の関税引き下げを求めたり 米国自動車業界は TPP 以上に有利な条件での関税引き下げスケジュールを求めたり 他にも為替操作条項の盛り込みや原産地規則 知的財産権など TPP で得られなかった利益を獲得しようとするセクターが出てくるなど 各セクターが TPP 以上の成果を求めようとするため 交渉を妥結させるに際してこれらのセクターを説得するのは容易ではない また トランプ大統領はアメリカファーストの立場であり 国内市場開放についてオバマ政権以上の譲歩をする気はなく 彼を支持するラストベルト (rust belt) 地域の有権者が自由貿易に否定的なため 二国間交渉で互いに妥協するのは困難であるとされる 134 貿易転換効果とは FTA 形成により 従来域外の世界中で最も効率的な生産国から輸入していたものが FTA 加盟国の間で関税がなくなった結果 従来の輸入国から関税が撤廃 削減された FTA 加盟国に転換 代替される状況を指す 58

64 3. EU 共通農業政策 3.1. CAP 簡素化 (1) 近年の簡素化の動き EU では 官僚的形式主義および政策達成上不要な要求事項の緩和と税の適切な管理を目的に CAP の簡素化を進めている 簡素化は 2015 年より開始され 下図が示すとおり 直接支払の申請期間や環境重点用地要件 青年農家の支援制度 グリーニング等について措置が実施 予定されている 図表 29 簡素化の展開年月内容 2015 年 5 月規則第 2015/747 号によって 直接支払への申請期間を延長 規則第 2015/1383 号によって 自主的カップル支払いに関して加盟国の裁量拡大環境重点用地 (Ecological Focus Area: EFA) などに関する管理ガイドラインの変更 2015 年末 年初頭 継続中 IACS に関するルール修正 加盟国は援助申請の予備的なクロスチェックを行い 申請者が誤りを修正できるようにした 誤り率が低い加盟国は現場チェックの数を削減できる ( 規則第 2015/2333 号 ) 青年農家への支援制度を改め 支援受給の適格性に関する柔軟性を拡大自主的カップル支払いスキームを変更し 加盟国が異なる措置間で資金を移転することが可能に ( 規則 141/2016 号 ) IACS に関するルール修正 直接支払と地域振興措置に関連する行政罰に関する IACS のルール改正 ( 第 141/2016 号 ) 直接支払に関連して グリーニングの再検討を 2015 年 12 月に開始 欧州委員会は 2016 年 6 月に作業文書を公表 本作業文書を踏まえて 簡素化への提案を作成中 市場支持に関して 現在存在する 200 以上の規則を統合して 40 以下に削減する予定 出所 :European Commission: Simplification of the Common Agriculture Policy (CAP) 上表の各簡素化施策の内容は下記の通りである ( 表中に説明のあるものは除く ) 規則第 2015/747 号によって 直接支払いへの申請期間を延長欧州委員会実施規則 809/2014 号の第 13 条において 各加盟国は各年の直接支払い申請期限を 5 月 15 日以前に設定しなければならないとの定めがあるが 新たな支払スキームに関する実務的な問題を考慮し (Member States have experienced some difficulty in their practical implementation of the new direct payment schemes( 規則 2015/747 より )) 上記規則にて例外を認め 2015 年に関しては加盟国が 5 月 16 日以降に申請期限を設定できるようにした 規則第 2015/1383 号によって 自主的カップル支払いに関して加盟国の裁量拡大カップル支払の受給要件を定めた欧州委員会委任規則 639/2014 号の第 53 条第 4 項に対し 欧州委員会委任規則 2015/1383 により要件を緩和するパラグラフを追加した 具体的には 加盟国が定めた期日までに家畜の種類の特定 登録が完了することを条件に カップル支払の対象とすることとした (without prejudice to other eligibility conditions, an animal shall also be deemed eligible for support where the identification and registration requirements are met by a date to be fixed by the Member State 59

65 ( 規則第 2015/1383 より )) 環境重点用地 (Ecological Focus Area: EFA) などに関する管理ガイドラインの変更環境重点用地の登録義務について 加盟国は届出のあった用地のみを登録すればよいこととした ( 従来は環境重点用地の候補地についてできるだけ多く登録することを推奨されていた ) なおこれらの措置は 2014 年 6 月に欧州委員会が発表した ガイドライン に対する変更にあたるため 立法行為を経ず実行された 青年農家への支援制度を改め 支援受給の適格性に関する柔軟性を拡大青年農家に対する支援を法人が受ける際の条件を示した規則 639/2014 号の第 49 条を欧州委員会委任規則 2016/141 で修正し 青年農家を含む法人 ( もしくは自然人の集団 ) が支援を受ける際の要件を加盟国が柔軟に運用できるようにした 自主的カップル支払いスキームを変更し 加盟国が異なる措置間で資金を移転することが可能に ( 規則 141/2016 号 ) 財源の効率的な利用のため 加盟国の判断によって 実施中の各自主的カップル支払いの間で支払い額を加盟国の裁量により調整できるようにした 市場支持に関して 現在存在する 200 以上の規則を統合して 40 以下に削減する予定 現在は特定セクターの支援に関する規則や市場介入 ( 支持 ) に関する規則が 200 以上存在しており それらを統合し 40 以下に削減 この取り組みを通じ 公的介入や在庫補助 輸出入ライセンスなどに関する規則の簡素化を行う (2) 2016 年 9 月公表の オムニバス規則 (Omnibus Regulation) について 2016 年 9 月 14 日 欧州委員会より 年多年度財政枠組み (The EU s Multi-Annual Financial Framework: MFF) の中間レビューの一環である オムニバス規則 (Omnibus Regulation) が公表された オムニバス規則においては 農村振興政策に関するセクター別の所得安定化策 (Income Stabilisation Tool) や貸付および他の金融的手段 (Financial Instruments: FIs) の導入 直接支払について 活動的農家 (active farmer) 定義に関する加盟国の裁量拡大等が提案されている 135 セクター別所得安定策では 特定のセクターに合った政策の設計が可能になるよう加盟国の権限を認める提案がなされている 貸付 金融的手段に関する導入提案は 金融的手段の利用によって 農家 ( 特に青年農家 ) の資金へのアクセスを拡大することを目的としている 公的資金の投入先選定の合理化と農業セクターの競争力向上が目指されている 活動的農家の定義に関する加盟国の裁量については 加盟国が現行の定義を継続して適用するか否かを選択でき 本提案が実現されれば 活動的農家の認定に関して必要な事務作業が軽減され 農家および加盟国政府の利益になるとされる 直接支払に関連して グリーニングの再検討が 2015 年 12 月より開始され 2016 年 6 月にはグリーニング実施後一年の評価に関する作業文書が公表された ( 作業文書の内容については後述 ) この作業文書に基づき欧州委員会は簡素化に関する提案を行う予定である 提案は 2016 年までに採択され 2017 年から適用される予定となっている 2016 年 7 月 18 日 フィル ホーガン農業 農村開発担当欧州委員は 農業 漁業理事会 ( 以下 農相理事会 という ) において作業文書について説明し グリーニングの導入は政策の設計 実施 管理の面で課題をもたらすものの 環境重点用地における農薬の使用禁止は環境保護の観点から最も有効であるとの考えを示した いくつかの EU 加盟国はすでにそれらの農薬の使用を制限しているのであって EU レベルでの規定の調和化ができるとした ただし グリーニングの簡素化に対しては加盟国からは反対や懸念の声が上がっている 2016 年 7 月 22 日 農相理事会の議長国あるスロバキアの Gabriela Matečná 農業大臣は ホーガン欧州委員にレターを送付したが そのレターの中で CAP 簡素化措置が 2013 年改革で提案された農業政策 135 European Commission, Omnibus Regulation - Further Simplification of the CAP, 14 September, 2016, 60

66 の主要な目的を変えるようなことがあってはならず CAP 予算配分を削減する口実として利用されてはならないと述べた 136 Matečná 農業大臣は CAP およびグリーニング簡素化に関する欧州委員会農業総局の努力を支持するとしつつも 農相理事会で簡素化措置をめぐって各国から多くの不満が出たと指摘した 例えば 農相理事会においてドイツ ハンガリー エストニア スペイン ルーマニア ルクセンブルクは環境重点用地での殺虫剤使用禁止提案に懸念を表明した ドイツ食料農業大臣であるシュミット (Christian Schmidt) は 厳しいルールは野生生物の保護やタンパク質を多く含む作物の栽培に有害になりうると指摘した 動物タンパク質の国内供給促進のために豆類を栽培する農家は多いが 豆類栽培の農薬の利用を禁止するのは EU のタンパク質に関する政策に矛盾するというのがその根拠である さらに フィンランド ルクセンブルク マルタ ベルギー ブルガリア ハンガリー ドイツなどは 休耕地で少なくとも 9 か月間 農作物の生産を禁止するルールが設けられてしまうと 冬アブラナ (winter oilseed rape) が作付けできなくなると批判した 英国とスウェーデンは 制度変更を履行に移すためにより多くの時間が必要であると述べ すべての措置を一気に義務化するのではなく 一部を 2017 年に自主的な措置とし 義務化は 2018 年からにするべきとした CAP 簡素化は EU 基本法の議論には立ち入らないが フランスの代表はグリーニングの簡素化はとても重要なテーマであるため EU 基本法の幅広い文脈から検討されるべきと強調した 年多年度財政枠組みの中間レビューに関して ベルギー ブリュッセルの農業系シンクタンクである Farm Europe へのヒアリングでは 今回の CAP 見直しに関して 政策面では所得安定化策などへの言及はあるものの 予算面で特段の変更はない 今回の中間レビューで変更が少ないのは EU は現在 改革疲れ (Reform fatigue) に陥っているからである 2013 年に改革が行われ 2015 年から実質的に第 3 期の CAP が始まったばかりで 所得安定化策など僅かな政策を除いて改革の意欲は低い という声を聞いた 136 CAP SIMPLIFICATION MUST NOT ALTER KEY FARM POLICY AIMS, SLOVAK PRESIDENCY, Agra Facts, No.57-16, 27 July,

67 3.2. グリーニング実施 1 年後の評価 現行 CAP(2014 年 年 ) の第 1 の柱における新たな施策としてグリーニング支払い制度が 2015 年に本格導入された そして 欧州委員会農業総局は 2016 年 6 月 22 日に Commission Staff Working Document, Review of greening after one year を公表し グリーニング実施から 1 年後の中間レビューを紹介した レビューでは 1 新たな方式導入によって生じうるあらゆる行政負担 2 加盟国のグリーニング支払い実施による公平な競争環境への影響 3 生産能力への影響 について検討している また 本レビューはCAP 簡素化に向けた議論も提供している 欧州委員会は 2014 年秋以降に全てのステークホルダー 特に 加盟国及び欧州議会と早期かつ広範な協議を行っており 彼らのCAP 簡素化への優先事項を聴取した結果 グリーニングに高い期待を持っていることが分かったため 2016 年の規制適正化プログラム (Regulatory Fitness and Performance Programme:REFIT) にグリーニングの見直しを含めることを決定した この目的のために欧州委員会は 2015 年と 2016 年前半にオンライン調査 137 を含むステークホルダー協議を実施している グリーニングによるEU 農業への環境効果が明らかになるには 1 年以上を要することから 本レビューは農業の環境パフォーマンスへの影響を詳細に評価することを目的とはしていない 欧州委員会からは環境重点用地 (Ecological Focus Area: EFA) に関する評価報告書が 2017 年 3 月 31 日までに提出され 138 環境効果を含むCAP ( ) 実施に関する第一次評価報告書は 2018 年 12 月 31 日までに提出が予定されている ( 第二次評価報告書は 2021 年 12 月 31 日までに提出予定 ) 139 (1) グリーニング概要 CAP の 2013 年改革では 厳しい財政難の EU 予算からこれまで通り巨額の農業予算を確保 ( 維持 ) することを正当化するために直接支払いを基礎支払いと グリーニング支払い等の各種目的別支払いに再編された 各国の直接支払い予算のうち 30% はグリーニング支払いに配分されることとされ 農家はグリーニング支払いを受給するため 従来のクロス コンプライアンスに加え それを上回る環境要件 ( 作付品目の多様化 環境重点用地の設定 永年草地維持 ) の遵守が義務づけられた 140 (2) グリーン支払いの実施状況 少なくとも一つ以上のグリーニング要件が課された農地は EU 全体の農地の 72% であった レビューでは グリーニング要件は広範な農地をカバーしていることから グリーニングは EU の農地に対して環境上プラスの効果をもたらしうるとしている 少なくとも一つ以上のグリーニング要件が課された農業者数は 250 万人であった ( 直接支払い受益者の 36%) 137 調査で得た回答はおよそ 3,300 であり 回答全体の 80% が農業者からの回答だったという CAP greening improvement package to come in July, Agra Europe, 28 June, Under Article 110(5) of Regulation (EU) No 1306/ Recital (37) of Regulation (EU) No 1307/ 農林水産省 EU の農業政策 62

68 加盟国 直接支払いの受益者数 ( 人 ) 図表 30 少なくとも一つ以上のグリーニング要件が課された農業者数及び土地面積 グリーニング要件が課 全農地面積 (ha) グリーニング要件が グリーニング要件が グリーニング要件が される農業者数 ( 人 ) 課される全農地面積 課される耕地面積 課される永年草地面 グリーニング要件が課される永年作物地面積 (ha) (ha) (ha) 積 (ha) ベルギー 34,732 32,433 1,307,900 1,311, , ,907 25,681 ブルガリア 98,942 22,725 4,650,940 3,408,375 3,090, ,452 28,373 チェコ 29,854 25,111 3,491,470 3,074,485 2,462, ,963 50,108 デンマーク 42,930 33,078 2,619,340 2,432,591 2,193, ,572 27,965 ドイツ 316, ,946 16,699,580 15,762,091 11,415,880 4,174, ,226 エストニア 17,184 13, , , , , アイルランド 124, ,480 4,959,450 4,554, ,491 4,104,636 3,267 ギリシャ 689, ,564 4,856,780 2,237,689 1,004,627 1,099, ,627 スペイン 834, ,980 23,300,220 18,360,625 11,801,605 5,129,108 1,429,912 フランス 353,870 N/A 27,739,430 N/A N/A N/A N/A クロアチア 96,330 50,234 1,571, , , ,734 38,017 イタリア 1,122, ,044 12,098,890 4,446,695 2,900,609 1,228, ,540 キプロス 32,950 2, ,330 77,669 72,252 2,654 2,763 ラトビア 60,394 36,340 1,877,720 1,339,882 1,005, ,148 5,002 リトアニア 140, ,110 2,861,250 2,816,737 2,136, ,796 15,820 ルクセンブルク 1,865 1, , ,756 57,484 62,955 1,317 ハンガリー 173,678 74,445 4,656,520 4,588,913 3,854, ,626 87,079 マルタ 5, , オランダ 46,993 42,802 1,847,570 1,659, , ,117 15,068 オーストリア 107,528 63,830 2,726,890 1,883,091 1,120, ,334 21,161 ポーランド 1,348, ,986 14,409,870 11,729,649 9,466,074 2,203,649 59,926 ポルトガル 159,759 6,341 3,641, , , , ,748 ルーマニア 1,050, ,369 13,055, ,518,986 1,679,749 66,977 スロベニア 56,457 55, , , , ,397 18,149 スロバキア 17,665 11,120 1,901,610 1,785,536 1,302, ,776 12,922 フィンランド 55,900 41,575 2,282,400 1,973,301 1,837, ,148 3,771 スウェーデン 61,630 62,334 3,035,920 2,973,737 2,079, ,118 30,711 英国 166,186 99,968 17,326,990 9,132,188 4,544,824 4,582,648 4,716 EU 全体 7,246,694 2,468, ,613, ,821,439 72,020,885 31,115,717 2,684,837 注 : グリーニングのレビューのデータ表に弊社で直接支払いの受益者数と各国の農地面積を加えたが それぞれのデータ年次が違うため一部の国で矛盾が生じている それらの箇所は赤字とした ( 直接支払いの受益者数と各国の農地面積はそれぞれ 2015 年 2013 年のデータ ) 出所 :European Commission, Agriculture and Rural Development Commission Staff Working Document, Review of greening after one year Annex II European Commission Indicative figures on the distribution of direct aid to farmers, financial year 及び Eurostat データ より作成 63

69 グリーニング要件が課されていない地域は以下の通りである 直接支払いを申請していない農地 (EU 内の全農地のおよそ 11% に該当 ) グリーニング要件の遵守が免除されている地域 すなわち 農業者が小農スキーム 有機農業 耕地面積が 10ha 未満であること ( 永年作物地要件は免除の対象にはならない ) のいずれかから裨益している場合 ( それぞれの免除条件が重複しているため 比率の算定はできない ) 永年作物地 (EU 内の全農地の 6% に該当 ) 中間レビューのデータでは 永年作物しか扱わない農家の数値は除外している グリーニング要件が課されている状況は国ごとに異なる 以下のグラフは各国の全農地面積に占める少なくとも一つ以上のグリーニング要件が課される農地面積の割合である 図表 31 各国の全農地面積に占める少なくとも一つ以上のグリーニング要件が課される農地面積の割合 出所 :European Commission, Agriculture and Rural Development Commission Staff Working Document, Review of greening after one year Annex II df. 上記グラフによると グリーニング要件が課される面積割合が高い国は北部に多く 割合が低い国は南部に多く見られる傾向がある 作付品目の多様化要件の下にある耕地は EU の全耕地の 75%(2 種以上の作付が求められる土地が 13% 3 種以上の作付が求められる土地が 62%) である しかしながら 各国間でその割合には大きなばらつきがあり 耕地に占める対象面積の割合が 10% 以下の国から 90% 以上の国まである 永年草地の EU の全体の農地に占める割合は 29% である 環境重点用地の要件が適用されるのは EU 全体の耕地面積のおよそ 68% である 加盟国レベルでは ベルギー ブルガリア チェコ デンマーク ドイツ ハンガリー スロバキアはそれぞれの国の耕地面積の 90% に環境重点用地の要件が適用される その他の加盟国の対象面積は 40-80% である 作付品目の多様化と永年草地の維持に関するルールは EU レベルで統一されているが 環境重点用地については要件を満たすための方法の裁量が加盟国及び農家に広く認められている EU 全体の農業者によって宣言された環境重点用地の種類は 窒素固定作物 (45.4 %) キャッチクロップ ( 間作 )(27.7 %) 休耕地 (21.2 %) 景観(4.3 %) 緩衝帯 ( 1 % 以下 ) である 生産活動と関連する窒素固定作物とキャッチクロップ ( 間作 ) が全環境重点用地の 73.1% を占める 64

70 また 環境重点用地の合計面積の算出にあたって 加盟国は面積の加重係数の利用が可能である 加重係数処理前の上記の環境重点用地の種類について 環境価値 (environmental value) に基づき加重係数をかけると次のような比率に変更される すなわち 窒素固定作物 (39.4 %) 休耕地 (38.0 %) 間作 (14.8 %) 景観 (4.8 %) 緩衝帯 (2 % 以下 ) の順となる 係数換算がされた後も窒素固定作物の比率は依然として高いが 休耕地の割合が大きく増えることとなる 図表 32 EU 全体における環境重点用地の種類の割合 ( 環境価値に基づく加重係数処理の前後 ) 出所 :European Commission, Agriculture and Rural Development, Commission Staff Working Document,Review of greening after one year, 環境重点用地が耕作地に占める割合は 加重係数換算前で 14% 換算後は 9% となるが いずれの値でもグリーニングで定める最小要件である 5% を上回っている EU レベルにおいては グリーニング要件が免除される小農スキーム (15 加盟国で適用 ) の対象となる農業者数は 41% であるが 農地面積は 4% にとどまる また 同じくグリーニング要件が免除される有機農業者数は EU の直接支払い受給者の内およそ 1% のみである 面積ベースでみると全農地面積の 4% となる ただし 有機農業に力を入れている国々の有機農地面積の割合は大きい チェコ エストニア ラトビアは 15% 以上 イタリアとオーストリアは農地の 20% 以上が有機農地である 65

71 図表 年のグリーニングの実施を評価するために用いた主要指標 グリーニング指標 値 定義 グリーニング要件が課される全農地 ( 面積 ) 105,821,439 ha グリーニング要件が課される全農地面積 (ha) グリーニング要件が課される全農地 (%) 72 % グリーニング要件が課される全農地面積 (ha) / 実際に使用されている農地面積 (ha) 2013 年 Eurostat FSSデータより グリーニング要件が課される農業者数 ( 人 ) 2,468,541 人 グリーニング要件が課される農業者数 グリーニング要件が課される農業者数グリーニング要件が課される農業者数 / 36 % (%) 2014 年の直接支払い受益者数 作付品目の多様化の要件が課される耕作地作付品目の多様化の要件が課される耕作 75 % (ha)/ 耕作地面積 (ha) 2013 年 Eurostat FSS 地 (%) データより Natura 2000のグリーニング農家によって宣 40 % 言された環境特別永年草地面積 (ha) / 宣言された環境特別永年草地 (%) Natura 2000の永年草地面積 (ha) グリーニング農家によって宣言された全 16 % 環境特別永年草地面積 (ha) / 永年草地面 積 (ha) 永年草地 (%) 29 % 永年草地面積 (ha) / 全農地面積 (ha) 環境重点用地の要件が課される耕作地 (%) 68 % 加重係数をかける前の環境重点用地 (%) 14 % 加重係数をかけた後の環境重点用地 (%) 9 % 環境重点用地の要件が課される耕作地面積 (ha) / 耕作地面積 (ha) 2013 年 Eurostat FSS データより加重係数をかける前の環境重点用地面積 (ha) / 環境重点用地の対象となる耕作地面積 (ha) 加重係数をかけた後の環境重点用地面積 (ha) / 環境重点用地の対象となる耕作地面積 (ha) 出所 :European Commission, Agriculture and Rural Development, Commission Staff Working Document, Review of greening after one year Annex II (3) グリーニング実施による公平な競争市場 (Level playing field) に対する影響の評価 EU 内の加盟国間の多様な状況と生産条件の幅広さから グリーニングの実施には高度な柔軟性 (~50 の異なるオプション ) が導入されている このことはグリーニングの実施をより実効的なものにする目的があった しかしながら 各国または地域の農業者がグリーニング制度に異なる条件の下で従うことは公平な競争に関する懸念を提起した しかし 中間レビューによる調査の結果 グリーニング実施から 1 年が経過した現段階ではこの問題に関する懸念はあまり無いことが分かった 1 グリーニング要件遵守において 小農スキームの選択は重要な利点にはならなかった調査によれば 小農スキームの下にある平均的な農場面積は 2.6 ha であり 多くの小農スキーム下にある農場は作付品目の多様化と環境重点用地の遵守要件が発動する土地面積 ( それぞれ 10ha 15ha) より小さい さらに 永年草地の維持が義務付けられる農場は EU 全体の 4.5% と小さなシェアしかないため わずかな影響と予測される 結果として 15 の加盟国が実施する小農スキームは EU 内の農業者の公平な競争に対してあまり影響を与えなかった 66

72 2 同等措置は EU レベルでは重要な役割を果たさなかった同等措置は オーストリア フランス アイルランド オランダ ポーランドの 5 か国で実施されている 141 うち オーストリアを除く 4 か国では同等措置によってグリーニング要件を満たした農業者の数は極めて少なく これらの国で ( 少なくとも一つ以上の ) グリーニング要件が課された全農業者数の 0.75% 以下に過ぎなかった オーストリアではこの比率は 18.5% と高かった 同国の同等措置は農業環境支払い ( 作物多様化 環境重点用地 ) である 142 しかし オーストリアのこうした同等措置の高い実施率も 多額な補助金を受給できる農業環境 気候支払いの二重払い禁止原則によって 農業者にとって同等措置の仕組みを利用する経済的メリットをもたらさなかった 結果として 同等措置という農業者へのグリーニング要件遵守のための追加的柔軟性の提供は 公平な競争への目立った影響を与えなかった 3 加盟国間の環境重点用地の種類の選択の違いは公平な競争に本質的な影響を与えなかった農業者が環境重点用地を全種類から選択できる加盟国 ( ドイツ ハンガリー ) で最も採用されたのは窒素固定作物 間作 休耕地であった この 3 種類はその他の多くの加盟国でも採用されている 農業者が環境重点用地の設定においてその他 16 種類をあまり採用しなかったことで 加盟国は本質的に公平な競争に対する影響を受けずに済んだ ( 特に景観に関して ) 反対に EU 内で最も選択された上記 3 つの環境重点用地の種類を農業者に提供しなかった場合はその加盟国に不利な影響をもたらすだろう 窒素固定作物に関しては 1 か国 休耕地は 2 か国 キャッチクロップ ( 間作 ) / グリーン カバー ( 緑肥 ) に関しては 11 か国が該当する ( 図表 34 参照 ) ただし 加盟国ごとに適した環境重点用地の種類がありうるため ある国 ( たとえばドイツやハンガリー ) で採用された選択が他国にも当てはまるとは限らない 図表 34 加盟国の環境重点用地の種類の内訳 出所 :European Commission, Commission Staff Working Document: Review of greening after one year, Annex 2, 2016, p.41 上記 1~3 とは対照的に制約された範囲の下ではあるが 以下 4~6 な場合に公平な競争に影響を与えることがありうる 141 Review of greening after one year, p 農林中金総合研究所 年 CAP における直接支払い及び農村振興政策の選択状況 ( 英独仏 )( 農林水産省平成 26 年度海外農業 貿易事情調査分析事業 ( 欧州 ) 報告書 ) 2015 年 V-4 頁 67

73 4 クロス コンプライアンスで保護される景観を環境重点用地としても認めることは景観に係る環境重点用地の実施面積に影響を与えうる それゆえ加盟国間で異なるルールが作られているクロス コンプライアンスと環境重点用地の双方に景観が含まれることは より適切な用地維持のために加盟国ごとの景観に関する取り組みへの余地を認めさせる さらに 2 つのルールを通じて 農業者は景観を守るべき複数の義務を負うことになる 5 環境重点用地の間作 / 緑肥や窒素固定作物に農薬や肥料の投入制限ないし最低実施期間 (minimum periods of presence) といった管理条件を追加することは 制限つきながら公平な競争に影響を与えるだろう環境重点用地の間作 緑肥と窒素固定作物への農薬や肥料の制限は 環境重点用地の環境目標と一致する しかし これらの制限を採用したのはわずかな加盟国のみであり 間作については 4 か国 窒素固定作物については 1 か国のみである こうした制限の下にいない他の加盟国の農業者は生産地での農薬や肥料の投入によって特定の経済的利点を得ることができる可能性がある 6 作付品目の多様化要件において 作付の実施期間が加盟国間で大きく異なる場合は公平な競争に影響を与えるだろう加盟国で設定された作物多様化をコントロールする期間は 欧州委員会に伝達される情報には含まれない しかしながら 該当年における加盟国によって規定されたコントロール期間の長さとタイミングが農家をどれほど制約するかを決定する そして それゆえもし 加盟国間よって期間が大きく変われば公平な競争に影響を与えることになる ( ただし 欧州委員会の検証に関する 3 か月の期間を定めたガイドライン 143 は加盟国間の状況の違いの調和を助けられたかもしれない ) 以上 1~6 の分析をまとめると 加盟国間のグリーニング実施における選択の違いは EU 内の公平な競争に対して重要な影響は与えていないと言える しかし 現行のグリーニング制度の下では 類似の条件下の農業者が彼らの農業活動に直接 間接に影響しうる異なるルールを各加盟国でそれぞれ遵守していく必要がしばしばある こうした状況は 特に国ごとに異なる特定の環境重点用地の種類の実施面積 環境重点用地の間作 / 緑肥や窒素固定作物への投入制限 作付品目の多様化要件での作付の実施期間のような加盟国の選択に由来する (4) グリーニングの生産ポテンシャルへの影響レビューによる調査結果からは グリーニングの実施に伴う短期的な生産レベルへの影響は確認できなかった CAPRI(Common Agricultural Policy Regionalised Impact) モデル及び統計によれば 2010 年から 2015 年の間の生産トレンドは安定していた 分析を通じて分かったのは グリーニングの生産への影響を価格 市場の成長 傾向 天候等といった他の要素と完全に切り分けることは難しいということである 市場指向型部門 ( 多くは穀物 油料種子 ) のような一般的な市場メカニズムは 2015 年のグリーニング制度の導入によって歪められることはなかった 政策によってより推進されるタンパク質作物 (protein crops) のような部門では 特定作物支援 (coupled support) の影響が生産ポテンシャルの安定化という結果をもたらした CAPRI モデルは グリーニングの導入が 導入しなかった場合と比べて EU の中期的な農業生産にとって ±1.5% 以上の変化を将来もたらすものではないとした そのため EU レベルでの生産状況は比較的安定していることを指摘している ただし CAPRI モデルでは長期的には特定加盟国のいくつかの農産物の生産量が変化する可能性も指摘している 特にタンパク質作物の生産は 他の作物が ±3% 以内の変化に止まると予想されるのに対して 5% 以上の成長を予想している 1 作付品目の多様化要件作物品目の多様化要件については 農家の生産傾向に大きな変化はなく 多くの農家にとっては 143 article 72 of Regulation (EU) No 1306/20131 DSCG/2014/39 Final rev 1 68

74 既に実施している作付パターンによって要件を遵守することが可能である 分析によると 実際に作付品目の変更が必要となる土地は EU の耕地面積の 1% 未満にとどまる しかしながら 作物品目の多様化要件は単一の作物のみを生産する農家の生産パターンを変える措置としては効果的な仕組みであり 小麦 大麦 とうもろこし農家の生産品目に対する中期的な土地の再配分に影響を与えることができると考えられる 2 永年草地維持要件 2015 年の永年草地に関する Eurostat データが利用可能になるのは 2016 年後半以降のため 本レビュー公表時点 (2016 年 6 月 22 日 ) では十分な政策の影響評価を行うことはできない 近年の永年草地面積の傾向は 年の間は僅かに減少しているものの 年の間で見ると相対的に堅調に推移している CAPRI モデルによると グリーニングの 3 要件が同時に遵守された場合に 3.22% の永年草地が増加すると試算している 3 環境重点用地の設定要件環境重点用地の遵守義務の効果の個別的な検証は難しいとされる しかしながら 環境重点用地の遵守義務は 2010 年から減少を続けていた休耕地の増加の役割を果たすことが期待できる 休耕地に関する 2015 年のデータが入手可能になるのは 2016 年後半である CAPRI モデルによれば グリーニングの 3 要件の遵守によって休耕地は 8.9% 増加するとされている (5) グリーニングに関するステークホルダー協議 ( 年前半 ) の概要欧州委員会によって実施された 年前半のステークホルダー協議によると 多くのステークホルダーはグリーニングの概念自体に反対はしなかった 他方で 環境団体等からはグリーニングの環境効果に対する有効性について疑義が示された上 政策に関する詳細な調査が要求された また 協議ではグリーニングの実施がルールの複雑さ及び農家と行政に課せられる制約によって課題を伴うことが示された 農家からは生産に対するグリーニングのネガティブな影響への懸念が示めされている このことは特定の地方や地域条件の観点から考慮されるべき事柄であろう ((4) 参照 ) グリーニングの公平な競争市場への影響については 各ステークホルダー間で実施の在り方の違いが認識されているにも関わらず ステークホルダーからの懸念はあまり見られなかった また ステークホルダーからは以下のようなルールの修正が求められた 作付品目の多様化における期間の要件に関する簡素化 環境重点用地 (EFA) のルールに関する簡素化又は整理と ( もしくは ) 加盟国がそれらルールを自ら定義できるようにする柔軟性を与えること 継続的に利用される一時草地が 5 年後に永年草地となるルールに関する問題への対応 ステークホルダー協議の結果は グリーニングの関連法令である No 639/2014 や No 641/2014 と言った EU 規則の修正に関する意思決定プロセスに伝えられることになるだろう (6) 現地調査で得たグリーニングに対する見解 グリーニングは環境要件を第 1 の柱に組み込んだことに大きな意味がある 既に第 2 の柱に農業環境支払や持続的な土地管理に関する施策がある中で 第 1 の柱の中にも環境に関する施策ができたことは EU の将来にとって非常に重要であった グリーニングの環境効果についてはまだ評価中である そのため グリーニングの政策的な是非の結論を出すのは早すぎる 私の 69

75 意見では 公衆のグリーニングへの評価は肯定的である 環境 NGO にも評価されている ( 欧州委員会農業総局 ) 率直な印象として グリーニングのインパクトは非常に小さい なぜならグリーニングが対象にしているのは グリーニングの実施前から既に農家が実施しているプラクティスばかりだからである それでは何も改善しない また 環境効果そのものを測定するのは非常に難しい CAP は農業のあり方を規定するものだから 排気ガスや環境汚染といった要素は測りづらい グリーニングの未来はもう少ししたら多少具体的には分かる なぜなら実際の環境効果が公表されるからである ( 農業系シンクタンク Farm Europe) グリーニングはただの格好つけであり ブリュッセルによるパフォーマンスであって中身は無い 作付品目の多様化 要件の遵守に困難はない 大豆の栽培によってクリアできる グリーニングの影響でイタリア国では全国的に大豆の生産が増えた ただし 作物の多様化 要件では畜産関係のトウモロコシの単作では問題が多少あった ( ただし グリーニングの影響というより トウモロコシの下落の方が農家には影響があった ) 追加的な環境効果はなかったと認識している グリーニングについては 同じ成果を別の手段で達成できるのは確かである グリーニングの 3 要件は第 2 の柱の農村振興政策にそれぞれブレークダウンできるし なぜグリーニングという制度を作ったか分からない しかもグリーニングの要件を守っているかは厳しく確認させられるため 農家からの批判がある 環境重点用地 (EFA) の要件の遵守が農家にとって一番厳しい ただ 幸い農家は大豆の栽培で対応することができた しかし環境団体は EFA における大豆の栽培を有機や無農薬のものでなくてはいけないと運動しており そうなった場合は農家にとって厳しいだろう ( イタリア地方自治体 ) 70

76 3.3. 主要国の農村振興政策 ( イギリス イタリア ) (1) イギリス イングランドの CAP 第 3 期 ( ) における第 2 の柱の農村振興プログラムの予算配分は下記のとおりである ( 英国の EU 離脱前データ ) イングランドの農村振興プログラムの特徴として 農業環境支払い (Countryside Stewardship) への配分に予算が大きく傾斜していることが分かる 図表 35 イングランドの CAP 第 3 期 ( ) における予算配分 施策 予算額 ( 単位 : ポンド ) 割合 1 農業環境支払い (Countryside Stewardship) 3,100,000,000 87% 2 農林業の生産性向上 (Countryside Productivity Scheme) 140,000,000 4% 3 農村経済の振興 (Growth Programme) 177,000,000 5% 4 LEADER 138,000,000 4% 出所 :Institute for European Environmental Policy (IEEP) Countryside Stewardship: the new agri-environment-climate scheme in England を元に作成 1 農業環境支払い (Countryside Stewardship) 144 イングランドにおける農業環境支払いは 旧制度の Environmental Stewardship( 以下 ES 制度 ) が 2014 年に失効し 新たに 2015 年から Countryside Stewardship( 以下 CS 制度 ) として再スタートした CS 制度は土地管理者の環境保全的な活動に対して財政的インセンティブを与えるもので 申請手続きは農家 森林所有者 森林労働者 その他の土地管理者に対して開かれる 従来の ES 制度と違い 申請された案件は CS 制度下の特定の評価基準に基づく競争的な申請手続きの下で審査されるため 特に ES 制度の ELS 事業のようにほぼ全ての申請案件が採用されるような場合は無くなった 新制度を通じて 助成ターゲットを明確に絞り 申請案件を評価基準に基づき得点付することで 結果として申請者の所属地域における環境目的の達成を助けることになるとされる CS 制度においては自然環境 特に生物多様性と水質の保全 強化が制度の主要な目的であるが 二次的な目的として 森林 ( 林地 ) の改善 洪水管理 歴史的資産の保全 景観保全 種の保存 教育目的がある 英国の環境 食料 農林地域省 (Department for Environment, Food and Rural Affairs:Defra) の CS 制度のトップページには CS 制度の取組例として以下の活動が挙げられている 野生生物の生息地の保全と再生 (conserving and restoring wildlife habitats) 洪水管理 (flood risk management) 森林の創出と管理 (woodland creation and management) 農業汚染水の拡散の減少 (reducing widespread water pollution from agriculture) 田園地域の特性の維持 (keeping the character of the countryside) 歴史的資産の保全 (preserving features important to the history of the rural landscape) 人々の教育的なアクセスの促進 (encouraging educational access) 144 英国環境 食料 農林地域省 (Department for Environment, Food and Rural Affairs:Defra) の Countryside Stewardship ページ上の公開資料を参照 71

77 CS 制度は以下の 3 つの主要事業によって構成される 中度事業 (Mid Tier) 中度事業は シンプルであるが効果的な環境便益の実現が期待できる options と capital items に対して実施される ( 詳細は付表を参照 ) 中度事業の中には森林または教育的なアクセスに関する options や capital items は存在しない 他方で 水質改善に関する助成対象項目は中度事業に含まれる 原則 全ての中度事業は 5 年間継続される ただし 水質改善の capital items のみで構成される協定は 2 年間の事業継続となる 2015 年の中度事業の申請手続きについては 申請受付期間が 3 月 14 日 ~9 月 30 日であり 10 月に申請が評価基準に基づき審査され 採択された案件については 10 月から 11 月に順次申請者に協定がオフォーされた その案件を申請者が受託するか拒絶するかの回答期限が 12 月 15 日であった 高度事業 (Higher Tier) 高度事業は 環境上最も重要な場所 共有地 森林を対象としている 高度事業の助成対象項目においては 中度事業と比べてより複雑な options や capital items が助成対象項目となる ( 詳細は付表を参照 ) 高度事業の協定を結んだ申請者には Natural England や森林保護委員会 (Forestry Commission) のアドバイザーが付くことになる 原則 ほぼ全ての高度事業は 5 年間継続される ただし 森林管理の capital items のみで構成される協定は 2 年間の事業継続となる 2015 年の高度事業の申請手続きについては 3 月 14 日 ~4 月 30 日 ( 森林管理は 5 月 31 日 ) であり 5 月末までに申請が評価基準に基づき審査され その時点で残っている案件については 9 月 30 日まで申請内容の修正期間が与えられた ( 森林管理は 10 月に審査される ) その修正された申請内容に基づき 最終的な採択案件が決定し 10 月から 11 月に順次申請者に協定がオフォーされた その案件を申請者が受託するか拒絶するかの回答期限が 12 月 15 日であった 投資助成 (Capital grants) 投資助成の助成対象項目は capital items のみで構成される ( 詳細は付表を参照 ) 投資助成の協定の実施期間は 2 年間で 以下の事業カテゴリーが助成の対象となる 生垣と境界線 森林サポート 高度事業に向けた計画策定 ( フィージビリティ調査 管理 実施計画を含む ) 生垣と境界線については 2016 年 4 月 30 日に申請の受付は終了している 一方 森林サポートについては 森林管理計画の開発と樹木の健康問題への対処については申請者はいつでも申請できるが 森林の創造と森林の改善は 2016 年の申請期間は終了している クロス コンプライアンス及びグリーニング ( 環境重点用地 ) との関係農村振興政策は同一土地上での二重給付を禁止しているため グリーニングの環境重点用地と CS 制度の 19 のオプションが重複する場合には減額措置を受ける CS 制度とクロス コンプライアンス及び環境重点用地との関係性の一例として 以下のような水路のケースがある 72

78 図表 36 事例 : 水路の中央から土手の上部までが 1 メートルのケース クロス コンプライアンス遵守のため 水路の中央から最低 2m を確保 CS 制度によるオプション ( 又は作付 ) はここからスタート ( 例 : 緩衝帯オプション SW1 SW4 等 ) 1m FIELD クロス コンプライアンス遵守のため 土手上部から 1m を確保 水路 EFA 要件の水路に関する緩衝帯部分 出所 :Countryside Stewardship:Mid Tier Manua, p.55 より作成 al.pdf. 耕地と永年草地においては CS 制度の対象エリアとしてカウントするのは 水路から見たクロス コンプライアンスと環境重点用地の対象エリアが終わった地点からである また 環境重点用地と CS 制度のオプションとの間で用地上の重複が無い場合は 支払いに関する減額は行わない 73

79 図表 37 各事業における助成対象項目と支払い単価 コード番号 対象となる項目の内容 支払い単価 中度事業 高度事業 投資助成 グリーニングと重複時の減額分 AB1 Nectar flower mix 511/ha 107 AB2 Basic overwinter stubble 84/ha AB3 Beetle banks AB4 AB5 Skylark plots *1 ( 9 per plot, minimum 2 plots /ha) Nesting plots for lapwing and stone curlew 18/ha * ( 4per plot) 524/ha 96 AB6 Enhanced overwinter stubble 436/ha 8 AB7 Whole crop cereals 495/ha AB8 Flower-rich margins and plots 539/ha 209 AB9 Winter bird food 640/ha 271 AB10 Unharvested cereal headland 640/ha AB11 Cultivated areas for arable plants 532/ha 165 AB12 Supplementary winter feeding for farmland birds *2 for every 2 ha of winter bird 632/tonne *2 food AB13 Brassica fodder crop 100/ha AB14 Harvested low input cereal 266/ha AB15 Two year sown legume fallow 522/ha 144 AB16 Autumn sown bumblebird mix 550/ha 146 BE1 Protection of in-field trees on arable land 420/ha BE2 Protection of in-field trees on intensive grassland 190/ha BE3 Management of hedgerows *3 8/100 for 1 side of hedge *3 16/100m for 2 sides of hedge BE4 Management of traditional orchards 212/ha BE5 Creation of traditional orchards 281/ha BE6 Veteran tree surgery 221/tree BE7 Supplement for restorative pruning of fruit trees 62/tree CT1 Management of coastal sand dunes and vegetated shingle 217/ha CT2 Creation of coastal sand dunes and vegetated shingle on arable 314/ha land and improved grassland CT3 Management of coastal saltmarsh 77/ha CT4 Creation of inter-tidal and saline habitat on arable land 442/ha CT5 Creation of inter-tidal and saline habitat by 271/ha non-intervention CT6 Coastal vegetation management supplement 117/ha CT7 Creation of inter-tidal and saline habitat on intensive 276/ha grassland ED1 Educational access 290/visit

80 コード番号 対象となる項目の内容 支払い単価 中度事業 高度事業 投資助成 グリーニングと重複時の減額分 GS1 Take field corners out of management 365/ha GS2 Permanent grassland with very low inputs (outside SDAs) 95/ha GS3 Legume and herb-rich swards 331/ha GS4 Legume and herb-rich swards 309/ha GS5 Permanent grassland with very low inputs in SDAs 16/ha GS6 Management of species-rich grassland 182/ha GS7 Restoration towards species-rich grassland 145/ha GS8 Creation of species-rich grassland 267/ha GS9 Management of wet grassland for breeding waders 264/ha GS10 Management of wet grassland for wintering waders and 157/ha wildfowl GS11 Creation of wet grassland for breeding waders 406/ha GS12 Creation of wet grassland for wintering waders and wildfowl 310/ha GS13 Management of grassland for target features 90/ha GS14 Creation of grassland for target features 253/ha GS15 Haymaking supplement 85/ha GS16 Rush infestation control supplement 73/ha GS17 Lenient grazing supplement 44/ha HS1 Maintenance of weatherproof traditional farm buildings 3.25/m² HS2 Take historic and archaeological features out of 425/ha 91 cultivation HS3 Reduced-depth, non-inversion cultivation on historic and 79/ha archaeological features HS4 Scrub control on historic and archaeological features 137/ha HS5 Management of historic and archaeological features on 30/ha grassland HS6 Maintenance of designed/ engineered water bodies 440/ha HS7 Management of historic water meadows through traditional 440/ha irrigation HS8 Maintenance of weatherproof traditional farm buildings in 6.73/m² remote areas HS9 Restricted depth crop establishment to protect archaeology under an arable 174/ha rotation LH1 Management of lowland 274/ha 75

81 コード番号 対象となる項目の内容 支払い単価 中度事業 高度事業 投資助成 グリーニングと重複時の減額分 heathland LH2 Restoration of forestry and woodland to lowland heathland 184/ha LH3 Creation of heathland from arable or improved grassland 517/ha OP1 Overwintered stubble 116/ha OP2 Wild bird seed mixture 640/ha 375 OP3 Supplementary feeding for farmland birds *4 for every 2 ha of wild bird 494/tonne *4 seed mixture OP4 Multi species ley 115/ha OP5 Undersown cereal 86/ha OR1 Organic conversion improved permanent grassland 75/ha OR2 Organic conversion unimproved permanent 50/ha grassland OR3 Organic conversion rotational land 175/ha OR4 Organic conversion horticulture 400/ha OR5 Organic conversion top fruit 450/ha OT1 Organic land management Improved permanent grassland 40/ha OT2 Organic land management unimproved permanent 20/ha grassland OT3 Organic land management rotational land 65/ha OT4 Organic land management horticulture 200/ha OT5 Organic land management - top fruit 300/ha OT6 Organic land management - enclosed rough grazing 8/ha SP1 Difficult sites supplement 62/ha SP2 Raised water level supplement 127/ha SP3 Bracken control supplement 153/ha SP4 Control of invasive plant species supplement 324/ha SP5 Shepherding supplement 7/ha SP6 Cattle grazing supplement 45/ha SP7 Introduction of cattle grazing on the Scilly Isles 279/ha SP8 Native Breeds at Risk supplement 94/ha SP9 Threatened species supplement 120/ha SP10 Administration of group managed agreements 6/ha supplement SW1 4-6m buffer strip on cultivated land 353/ha 79 SW2 4-6m buffer strip on intensive grassland 170/ha SW3 In-field grass strips 557/ha 94 SW m watercourse buffer 512/ha 96 76

82 コード番号 対象となる項目の内容 支払い単価 中度事業 高度事業 投資助成 グリーニングと重複時の減額分 strip on cultivated land SW5 Enhanced management of maize crops 133/ha SW6 Winter cover crops 114/ha 0 SW7 Arable reversion to grassland with low fertiliser input 311/ha SW8 Management of intensive grassland adjacent to a 202/ha watercourse SW9 Seasonal livestock removal on intensive grassland 88/ha SW10 Seasonal livestock removal on grassland in SDAs next to 36/ha streams, rivers and lakes SW11 Riparian management strip 440/ha SW12 Making space for water 640/ha 206 SW13 Very low nitrogen inputs to groundwaters 251/ha SW14 Nil fertiliser supplement 131/ha UP1 Enclosed rough grazing 39/ha UP2 Management of rough grazing for birds 88/ha UP3 Management of moorland 43/ha UP4 Management of moorland vegetation supplement 10/ha UP5 Moorland re-wetting supplement 18/ha UP6 Upland livestock exclusion supplement 16/ha WD1 Woodland creation maintenance payments 200/ha WD2 Woodland improvement 100/ha WD3 Woodland edges on arable land 323/ha 17 WD4 Management of wood pasture and parkland 46/ha WD5 Restoration of wood pasture and parkland 244/ha WD6 Creation of wood pasture 409/ha WD7 Management of successional areas and scrub 74/ha WD8 Creation of successional areas and scrub 87/ha WD9 Livestock exclusion supplement scrub and 121/ha successional areas WT1 Buffering in-field ponds and ditches in improved grassland 201/ha WT2 Buffering in-field ponds and ditches on arable land 501/ha 73 Management of ditches of high WT3 environmental value 37/100m *5 for the management of both *5 sides of the ditch Management of ponds of high WT4 wildlife value (100 sq m or 103/pond less) WT5 Management of ponds of high 183/pond 77

83 コード番号対象となる項目の内容支払い単価中度事業高度事業投資助成 wildlife value (more than 100 sq m) WT6 Management of reedbed 78/ha WT7 Creation of reedbed 323/ha WT8 Management of fen 39/ha WT9 Creation of fen 446/ha WT10 Management of lowland raised bog 164/ha WT11 Wetland cutting supplement 440/ha WT12 Wetland grazing supplement 304/ha BN1 Stone-faced bank repair 31/m BN2 Stone-faced bank restoration 86/m BN3 Earth bank creation 13.50/m BN4 Earth Bank Restoration 7/m BN5 Hedgerow Laying 9.40/m BN6 Hedgerow Coppicing 4/m BN7 Hedgerow Gapping-up 9.50/m (Water capital item 含 む ) BN8 Hedgerow supplement casting up 3/m BN9 Hedgerow Supplement - Substantial Pre-Work 4.10/m BN10 Hedgerow Supplement Top Binding and Staking 3.40/m BN11 Planting new hedges 11.60/m BN12 Stone Wall Restoration 25/m (Water capital item 含む ) BN13 BN14 BN15 Stone wall supplement Top wiring Stone wall supplement Stone from quarry Stone wall supplement - Difficult sites 3.60/m 44/m FG1 Fencing 4/m FG2 Sheep netting 4.90/m FG3 Permanent electric fencing 4.90/m FG4 Rabbit fencing supplement 2.50/m (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) 7.90/m (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) グリーニングと重複時の減額分 78

84 コード番号対象となる項目の内容支払い単価中度事業高度事業投資助成 FG5 Fencing supplement - difficult sites 1.24/m (Water capital item 含む ) FG6 Invisible Fencing System 1.80/m FG7 Anti-predator combination fencing 11.10/m FG8 Anti-predator temporary electric fencing 2.85/m FG9 Deer fencing 7.20/m FG10 Temporary deer fencing 5.20/m FG11 Deer exclosure plot 136/unit FG12 Wooden Field Gate 390/gate FG13 Stone gate post 280/post FG14 Badger Gates 135/gate FG15 Water Gates 240/gate (Water capital item 含 む ) LV1 Cattle grid 835/item LV2 Livestock handling facilities up to 80% of costs LV3 Hard bases for livestock (Water 110/base drinkers capital item 含む ) LV4 LV5 LV6 Hard bases for livestock feeders Pasture pumps and associated pipework Ram pumps and associated pipework 170/base 220/pump 1,480/pump LV7 Livestock troughs 110/trough LV8 Pipework for livestock troughs 2.65/m (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) PA1 Implementation Plan 1,100/plan PA2 Feasibility study up to 100% of actual costs PA3 Woodland management plan First 100 ha: 20 per ha (minimum payment 1000) Over 100 ha: 10 per ha RP1 Resurfacing of gateways 92/gateway (Water グリーニングと重複時の減額分 79

85 コード番号対象となる項目の内容支払い単価中度事業高度事業投資助成 RP2 Gateway relocation 340/gateway RP3 Watercourse crossings 300/crossing RP4 Livestock and machinery hardcore tracks 33/m RP5 Cross drains 245/drain RP6 Installation of piped culverts in ditches 340/culvert RP7 Sediment ponds and traps 10/m² RP8 RP9 RP10 Constructed wetlands for the treatment of pollution Earth banks and soil bunds *6 For each unit (100m of bund) Silt filtration dams or seepage barriers 80 capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) 50% of costs 155 *6 75/unit RP11 Swales 5.95/m² RP12 RP13 Check dams and woody debris dams Yard - underground drainage pipework 42 for each dam 5.50/m RP14 Yard inspection pit 200/unit RP15 Concrete yard renewal 27.14/m² RP16 Rainwater goods 11.40/m (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water グリーニングと重複時の減額分

86 コード番号対象となる項目の内容支払い単価中度事業高度事業投資助成 RP17 Storage tanks underground 350/m³ RP18 Above ground tanks 100/m³ RP19 RP20 First-flush rainwater diverters/downpipe filters Relocation of sheep dips and pens 125/unit 3,675/unit RP21 Relocation of sheep pens only 1,830/unit RP22 RP23 RP24 RP25 Sheep dip drainage aprons and sumps Installation of livestock drinking troughs (in draining pens for freshly dipped sheep) Lined biobed plus pesticide loading and washdown area Lined biobed with existing washdown area 18.25/m² 68/unit 118/m² 77/m² RP26 Biofilters 990/unit RP27 RP28 RP29 RP30 Sprayer or applicator load and wash-down area Roofing (sprayer washdown area, manure storage area, livestock gathering area, slurry stores, silage stores) Self-supporting covers for slurry stores Floating covers for slurry stores and lagoons 40/m² 62/m² 30.50/m² 5.60/m² 81 capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) (Water capital item 含む ) グリーニングと重複時の減額分

87 コード番号対象となる項目の内容支払い単価中度事業高度事業投資助成 RP31 SB1 SB2 Equipment to disrupt tramlines in arable areas Scrub control and felling diseased trees Scrub control - difficult sites 1,500/machine Scrub control and felling diseased trees (SB1) rates: 80% of actual costs SB3 Tree removal 144/tree SB4 Chemical Bracken Control 170/ha SB5 Mechanical Bracken Control 169/ha SB6 Rhododendron control Level or gentle slope (0 to 11 degree incline) Average height is less than 2.5m tall 2,800 per ha Moderate slope (12 to 18 degree incline) Between 2.5m to 4m tall 3,200 per ha Steep or very steep slope (19 degrees or more) Average height is over 4m tall 4,400 per ha TE1 Planting Standard Hedgerow Tree 8.80/tree TE2 Planting Standard Parkland Tree 24.50/tree TE3 Planting Fruit Trees 22.50/tree TE4 Supply and plant tree 1.28/tree TE5 Supplement for use of individual tree-shelters 1.60/unit TE6 Tree Guard (Tube and mesh) 4/guard TE7 Tree Guard (Wood post and rail) 59.50/guard TE8 Tree Guard (wood post and wire) 84/guard TE9 Parkland tree guard - welded steel 170/tree TE10 Coppicing Bank-side Trees 52/tree TE11 Tree surgery * /tree when cutting limbs up to & including 20cm in diameter *7 200/tree when cutting limbs over 20cm in diameter TE12 Stump grinding 24/stump TE13 Creation of dead wood habitat on trees 175/tree TE14 Identification of orchard fruit tree varieties 29/variety AC1 Access capital items Up to 100% of actual costs AC2 Countryside Educational Visits 175 グリーニングと重複時の減額分 82

88 コード番号対象となる項目の内容支払い単価中度事業高度事業投資助成 FM1 FM2 HE1 HE2 Accreditation Scheme (CEVAS) Management of geodiversity features Major preparatory work for Priority Habitats (creation and restoration) and Priority Species Historic and archaeological feature protection Historic building restoration once/agreement Up to 100% of actual costs Up to 100% of actual costs Up to 100% of actual costs Up to 80% of actual costs HE3 Removal of eyesore 290/item WB1 Small Wildlife Box 28.50/box WB2 Medium Wildlife Box 39/box WB3 Large Wildlife Box 100/box WN1 Blocking Grips or Drainage Channels 14.80/block WN2 Creation of scrapes and gutters 2.80/m² WN3 Ditch, Dyke and Rhine restoration 7.30/m WN4 Ditch, Dyke and Rhine Creation 8.40/m WN5 Pond Management (first 100 sq m) 270/pond WN6 Pond Management (areas greater than 100 sq m) 170/100m² WN7 Restoration of large water Up to 100% of bodies actual costs WN8 Timber Sluice 315/sluice WN9 Brick, Stone or Concrete Sluice 2,480/sluice WN10 Construction of water penning Up to 100% of structures actual costs FY1 Deer high seat 300/unit FY2 Woodland infrastructure 40% of actual costs 出所 :Countryside Stewardship:Mid Tier Manual al.pdf Countryside Stewardship Higher Tier Manual nual.pdf より作成 グリーニングと重複時の減額分 2 農林業の生産性向上 (Countryside Productivity Scheme) イギリス ( イングランド ) における農林業の生産性向上のための施策は 農家 森林所有者及び林業請負業者を対象として 農林業の生産性及び持続性向上を目的とする取組み ( 研究活動等 ) に対して補助金を与えるものである 補助対象となる活動と補助のタイプ 及び対象者は以下のとおりである 83

89 図表 38 農林業の生産性向上スキームの補助対象活動とその内容 活動 補助タイプ 対象者 家畜の生産性 健康 多様 ( 2,500~ 35,000 補助対象コストの 40% まで ) 牛 羊及び豚農家 及び福祉向上 耕作及び園芸の生 LED 照明購入及び波長制御に対する補助 ( 2,500~ 耕作及び園芸農家 産性向上 35,000 補助対象コストの 40% まで ) 果実 野菜の CA 貯蔵 (controlled atmosphere storage) 導入に対する補助 ( 3,500~ 1000,000 補助対象コストの 40% まで ) リモート センサー導入に対する補助 ( 2,500~ 35,000 補助対象コストの 40% まで ) 耕作ロボット導入に対する補助 ( 35,000~ 1000,000 補助対象コストの 40% まで ) 森林生産性向上 森林伐採及び小規模加工に対する補助 ( 2,500~ 1000,000 補助対象コストの 40% まで ) 私有林所有者 中小林業請負業者 資源管理 サプライ アプリケーション システム導入に対する補助 農家全般 ( 2,500~ 35,000 補助対象コストの 40% まで ) 空気清浄器及び廃熱回収交換器の導入に対する支援 養豚 鶏農家 ( 2,500~ 35,000 補助対象コストの 40% まで ) LED 照明導入に対する補助 養豚 養鶏 酪農農家 ( 2,500~ 35,000 補助対象コストの 40% まで ) 水資源の効率的利用のためのシステム導入に対する補助 ( 35,000~ 1000,000 補助対象コストの 40% まで ) 農家もしくは農家グループ 家禽敷料乾燥システム導入に対する補助 ( 35,000~ 1000,000 補助対象コストの 40% まで ) 養鶏農家 注 : 上記の他 農村経済の振興プログラム (Growth Programme) 及び LEADER また農業生産性 持 続可能性のための欧州イノベーション パートナーシップ (EIP-Atri) による補助も適用可能である 出所 :Countryside Production Scheme ( 3 農村経済の振興 (Growth Programme) イギリス ( イングランド ) における農村経済振興プログラム (RDPE Growth Programme) は 農村地域 (Local Enterprise Partnerships (LPE) area) における雇用創出と経済成長を目的として行われる 下記三種類のプロジェクトに対して補助を行うものである 補助金は欧州農村開発農業基金 (EARFD) から拠出される ビジネス デベロップメント 食品加工 農村ツーリズム インフラ 各タイプのプロジェクトにおける補助の概要は以下のとおりである 84

90 図表 39 農村経済振興プログラムの補助対象とその内容 プロジェクト 補助対象の内容と補助金額 対象者 ビジネス デベロップメント 食品加工 農村ツーリズム インフラ 国家優先目標 ( 雇用創出 事業の拡大 技術革新による生産性向上 市場開拓 輸出振興 ) 及び各 LPE の優先目標に適うプロジェクトに対して補助を行う 補助金額は通常 35,000 以上 補助対象コストの 40% まで ただし LPE 地域により異なる 国家優先目標 ( 同上 ) 及び各 LPE の優先目標に適うプロジェクト ( 建物の建築ないし改修 新規設備及び機械の購入 ) に対して補助を行う 補助金額は通常 35,000 以上 補助対象コストの 40% まで ただし LPE 地域により異なる 国家優先目標 ( 雇用創出 観光シーズンの拡大 観光客誘致とインフラ開発 利益拡大 ) 及び各 LPE の優先目標に適う下記プロジェクトに対して補助を行う 商業的 営利的プロジェクト( 観光客誘致 宿舎建設 小売 食品 飲料等 ) 補助金額は 35,000~ 200,000 補助対象コストの 40% まで ただし上限は LPE により異なる コストのみ回収する非営利的プロジェクト( 小規模な観光情報施設等 ) 補助金額は通常 35,000 以上 補助対象コストの 80% まで ただし上限は LPE 地域により異なる 収益を生まないプロジェクト( 地域のランドマーク整備 サイクル パス整備等 ) 補助金額は通常 35,000~ 200,000 補助対象コストの 100% まで ただし LPE により異なる 小規模及び零細企業 ( 社会的企業を含む ) 及び農家 ( 兼業農家を含む ) ただしいずれかの LPE 地域にあること 所定の農産物及び園芸作物 ( 肉 牛乳 穀物及び根菜等 魚は対象外 ) の加工を行う食品 飲料加工業者 ( 中小及び零細企業を優先 ) ただしいずれかの LPE 地域にあること いずれかの LPE 地域にある下記企業 農家等 小規模企業 ( 社会的企業を含む ) 農家 農村企業( 社会的企業を含む ) 農家 土地所有者 農村コミュニティ 慈善団体 公的機関 同上 出所 :Growth Programme :Business Development Handbook, Food Processing Handbook, Rural Infrastructure Handbook. 4 LEADER 農村の持続的経済発展のための EU の財政支援策である LEADER(Liaison entre Actions de Developpement de I Economie Rurale: 農村経済振興活動連携 ) を イングランドの農村振興プログラムの一環として実施するもの 地域企業 コミュニティ 農家 森林 土地管理者等による雇用創出 事業の成長 農村経済への裨益を目的するプロジェクトに対して 認可された地域活動グループ (Local Action Groups: LAGs) を通じて補助を行う 補助対象となるプロジェクトは LEADER の下記 6 つの優先目標のうち 少なくとも一つを支持する必要がある 零細 小規模企業及び農業多様化の支援 農村ツーリズムの振興 農業生産性の向上 林業生産性の向上 農村サービスの提供 文化 歴史的活動の提供 85

91 2017 年 2 月現在 イングランドには 79 の LAGs があり 2015~2020 年の期間で総額 13,800 万の補助金が利用可能である (2) イタリア 1 全体像 ( 概要 ) イタリアでは CAP 第 3 期 ( ) の農村振興プログラムでは 23 のプログラムが実施されており 2 つの国家プログラムと 21 の州別プログラムがある 予算総額は 7 年間で 208 億ユーロであり 国家プログラムが 22 億ユーロ 州別プログラムの合計が 186 億ユーロである 州別プログラムに予算の多くが配分されている通り イタリアでは州ごとに農村振興プログラムが決められている 国家プログラムでは Psr Rete Rurale Nationale( 国の農村振興ネットワーク ) に 1 億ユーロ Psr Nationale( 国の農村振興政策 ) に 21 億ユーロが配分されている さらに Psr Nationale は 3 分野に分かれており Gestione del Rischio( リスク管理施策 ) に 16.4 億ユーロ Biodiversità animale( 生物多様性 ) に 2 億ユーロ Piano irriguo( 灌漑に関する計画 ) に 3 億ユーロが配分されている 左記のように国全体として管理 実施すべき施策は国家プログラムとして運営されており 例えば国家プログラムである農村振興ネットワークでは RDP における全国的な支払の一括管理や各州間における知見の共有や情報伝達の促進を担っている 州別の農村振興プログラムの予算配分額は以下の通りである 86

92 図表 40 イタリアの州別農村振興予算歳出 ( 年 ) 地方自治体 予算額 ( 単位 : ユーロ ) 割合 ボルツァーノ自治県 ( トレンティーノ アルト アテ ィシ ェ州 ) 366,405, % エミリア ロマーニャ州 1,189,679, % フリウリ ヴェネツィア ジュリア州 296,131, % ラツィオ州 780,120, % リグーリア州 313,708, % ロンバルディア州 1,157,646, % マルケ州 537,961, % ピエモンテ州 1,093,054, % トスカーナ州 961,841, % トレント自治県 ( トレンティーノ アルト アテ ィシ ェ州 ) 301,470, % ウンブリア州 876,651, % ヴァッレ ダオスタ州 138,715, % ヴェネト州 1,184,320, % アブルッツォ州 432,795, % モリーゼ州 210,468, % サルデーニャ州 1,308,406, % バジリカータ州 680,160, % カラブリア州 1,103,561, % カンパニア州 1,836,256, % プーリア州 1,637,880, % シチリア州 2,212,747, % イタリア全体 18,619,984, % 出所 :Rete Rurale Nazionale, FEASR REPORT DI AVANZAMENTO DELLA SPESA PUBBLICA DEI PSR より作成 dxsahweulwkhyo2aksqfggamaa&url=http%3a%2f%2fwww.reterurale.it%2fflex%2fcm%2fpage s%2fserveattachment.php%2fl%2fit%2fd%2f2%25252f8%25252fd%25252fd.65f895f7a66fef %2FP%2FBLOB%253AID%253D16409%2FE%2Fpdf&usg=AFQjCNGCO8kzoK_B8fN3HLo4pH anstdqnw イタリア国内における北部地域と南部地域の農村振興プログラムは予算の原資の点で大きな違いがある 原則 北部の州では予算の 60% をイタリアが負担し ( 中央政府及び地方政府 ) CAP は予算の 40% を負担する 他方で 南部の州では予算の 50% をイタリアが負担し ( 中央政府及び地方政府 ) CAP は予算の 50% を負担する また プログラムの特徴は個別の州ごとに異なると言えるが 145 南北のプログラムの特徴の傾向を大まかに分けると 北部では農業環境 気候支払い 生産性向上のための設備投資などが多いのに対して 南部では地域における社会結束 多角化 イン 145 例えばイタリア南部のシチリア州の第 3 期 CAP( ) の予算配分は次のとおりであった 1- 知識移転 情報に関する取組みに 9,000,000 ユーロ (0.4%) 2- 助言サービス 農業経営 農業支援サービスに 7,000,000 ユーロ (0.3%) 3- 農産品 食品の品質制度に 11,000,000 ユーロ (0.5%) 4- 物的資産への投資に 712,000,000 ユーロ (32.2%) 5- 自然災害に 12,500,000 ユーロ (0.6%) 6- 農業 事業開発に 244,700,000 ユーロ (11.1%) 7- 農村地域における基礎的サービスおよび村の再生に 38,000,000 ユーロ (1.7%) 8- 森林地域振興および森林の存続能力改善への投資に 202,150,000 ユーロ (9.1%) 10- 農業環境 気候支払いに 226,000,000 ユーロ (10.2%) 11- 有機農業に 417,000,000 ユーロ (18.8%) 12- Natura 2000 支払いに 42,000,000 ユーロ (1.9%) 13- 山間部条件不利地域への補填支払いに 102,400,000 ユーロ (4.6%) 15- 森林の環境 気候サービスおよび森林保全に 4,000,000 ユーロ (0.2%) 16- 協同に 41,160,000 ユーロ (1.9%) 19-LEADER 事業に 122,650,000 ユーロ (5.5%) が配分されている ( 出所 : 87

93 フラ整備などに力が入れられているという (Crea でのヒアリングより ) 2 州別状況 本調査では マルケ州 トスカーナ州 ボルツァーノ自治県 ヴェネト州の 4 地方自治体を取り上げる 以上の 4 地方自治体の選定の際には ローマの農業系シンクタンクである Crea の Roberto Henke 氏の助言に従った Henke 氏からは イタリアの州別農村振興政策を初めて調査する場合においては 農村振興政策のグッドガバナンスにおいてはマルケ州 自然等制約地域支払いにおいてはボルツァーノ自治県 農業環境 気候支払いにおいてはヴェネト州が良いと推薦を受けた また トスカーナ州はアグリツーリズムが盛んな州として農業の多角化が進んでおり 近年の我が国の農業の 6 次産業化等の取り組みの参考になる可能性があると考え 弊社で独自に追加した 各地方自治体の所在地は以下地図の通りである 図表 41 本調査で取り上げた地方自治体の所在地 3 ボルツァーノ自治県 4 ヴェネト州 2 トスカーナ州 1 マルケ州 出所 : 弊社作成 88

94 A) マルケ州 図表 42 マルケ州の農村振興プログラムの予算配分 施策 予算額 ( 単位 : ユーロ ) 割合 1- 知識移転 情報に関する取組み (Formazione e informazione) 10,600, % 2- 助言サービス 農業経営 農業支援サービス (Consulenza) 5,000, % 3- 農産品 食品の品質制度 (Qualità) 11,000, % 4- 物的資産への投資 (Investiment in immobizzazaioni materiali) 122,300, % 5- 自然災害 (Calamità) 13,000, % 6- 農業 事業開発 (Sviluppo aziende agricole e imprese) 44,600, % 7- 農村地域における基礎的サービスおよび村の再生 (Servizi di base e rinnovamento dei villaggi) 29,000, % 8- 森林地域振興および森林の存続能力改善への投資 (Investimenti nello sviluppo delle aree forestali e miglioramento della redditivitá delle 37,000, % foreste) 9- 生産者集団の設立 (Costituzione di associazioni e organizzazioni di produttori) 2,000, % 10- 農業環境 気候支払い (Pagamenti agro-climatico-ambientali) 27,800, % 11- 有機農業 (Agricoltura biologica) 80,000, % 12- Natura 2000 支払い (Indennità Natura 2000) 4,500, % 13- 山間部条件不利地域への補填支払い (Indennità compensativa montagna) 43,000, % 14- 動物福祉支払い (Benessere degli animali) 5,000, % 15- 森林の環境 気候サービスおよび森林保全 (Servizi silvo-ambientali e climatici e 1,000, % salvaguardia delle foreste) 16- 協同 (Cooperazione) 26,602, % 19-LEADER 事業 (Sostegno al LEADER) 60,560, % 20- 技術支援 (Assistenza tecnica) 15,000, % 出所 : マルケ州政府提供資料より作成 マルケ州の CAP 第 3 期 ( ) の予算は 2015 年 7 月に可決した マルケ州の農村振興プログラム ( ) の予算は 5.38 億ユーロである その内 EU(EAFRD) の原資が 2.32 億ユーロ イタリア側 ( 中央政府 + マルケ州 ) の原資が 3.06 億ユーロである 以下の内容はマルケ州政府農村振興政策担当者からのヒアリング内容に基づく 農村振興プログラムのガバナンス方針 農村振興プログラムで重要な州の役割は SWOT 分析による州農業の状況把握とステークホルダーからの意見聴取である 州としてどのような農家にプログラムに参加をしてほしいかは プログラムの策定や受給要件を通じて決定される そのため基準の策定は極めて重要と言えるため 州政府関係者だけでな 89

95 く様々な利害関係者の代表者を集めた委員会 ( 生産者 環境団体 研究者等の他 農林政策省の代表者 1 名 欧州委員会の代表者 1 名 ) が立ち上げられ そこで決定される 実施したプログラムの評価は重要である 評価は州から独立した民間の評価機関が行う 評価機関がマルケ州のプログラム実施前に立てた方針がどれだけ達成されたかを確認し それぞれのプログラムがどのように州の農業に影響を与えたかを試算する 農村振興プログラムの評価制度自体は EU には元々あるもので マルケ州特有ではない ただし あえて言うなら どの州もモニタリングを真面目に実施しているかというとそうでは無く マルケ州はモニタリングの精神に従って取り組んでいると自負しており その点で成果に違いが出ているかもしれない イタリアでは 年前程前までモニタリングの文化は無かったが その時からマルケ州の幹部がモニタリングに理解があり 実施していた モニタリングが上手くいくことで 斬新な取組みも新たに自信を持って導入ができた その他のマルケ州の農村振興プログラムで評価される点として 前期 CAP から全てのデータが IT 化された点が挙げられる 評価機関からも透明性の観点化から高く評価されている 農家は PC 端末があれば直接申請手続についてトラッキンングできる 申請が却下された理由も閲覧できる イタリアで農村振興プログラムに IT を最初に導入したのはマルケ州で その後同じシステムを他の 5 州 ( サルデーニャ州 トレント自治県等 ) が導入した 現時点におけるイタリア国内の IT の導入州数は分からないが 少ないはずである 申請におけるトラッキングシステムはイタリア国内で今でも先駆的である IT 化の一つの問題として 支払い時におけるデータのインターフェイスの一致がある イタリアでは農村振興プログラムにおける支払いは全国機関である The Italian agricultural payments agency (AGEA) であるが AGEA と州政府間のインターフェイスが一致していないと農家は自身のデータをトラッキングできない それを上手く実施しているのがマルケ州である ロンバルディア州とヴェネト州は支払いを AGEA に委託するのではなく 独自の支払い機関を設立した 独自機関の設立によってインターフェイスの不一致の問題は起きず データは一貫して管理できる このような独自の支払い機関を設置できない州は マルケ州のような例を除いて 農業者に十分な情報を与えることができない状況にある 有機農業に関する取り組み マルケ州に関しては有機農業は非常に力を入れている 農村振興政策を通して 有機農業の促進を支持している 支援の全体像は 州は EU の規定に基づき EU 資金を利用して 農家の有機農業への転換や既に有機農業を行っている農家を支援する形である 具体的にはマルケ州政府は有機農業者にどれだけ支払うか 慣行農業に比べて有機農業はどれだけコストが上がり収率が減るかというのをベースに有機農業者への支援額を計算する 計算方法自体は州ではなく EU の規定に基づく 実際の計算を行うのは州である 実際の州の状況等を配慮して計算を行う 州の他の有機農業に関する取り組みは 有機農業に関するプロモーションである 良質の生産に関する PGI 146 PDO 147 表示の取得の支援 有機認証機関の監督等である 州では有機認証を受けている農家のデータベース管理を行う そもそも EU 内では有機農業は環境に配慮した優れた農法だからという理由で促進されがちだが マルケ州の戦略としてはそれだけでなく市場の中で有機農産品が価値を認められ より消費してもらえるようにしている 農家が有機農業に転換するメリットを感じてほしいからである 有機農業市場は確実に拡大している ただし 残念ながら小規模農家の農産物が必ずしも市場に辿りつけない問題がある その理由として 彼らには販路がないことや 同じ EU 内や域外からの有機農産物が市場に入ってきているからである そうした状況を是正するために マル 146 Protected Geographical Indication( 地理的表示保護 ) JETRO ホームページより 147 Protected Designation of Origin( 原産地呼称保護 ) JETRO ホームページより 90

96 ケ州では有機農産物のサプライチェーンの確立を目指す取組みを行っている 有機農産物の促進に関して重要なのは しっかりとしたサプライチェーンを確立させることが鍵である 生産者側である農家を団結させ一定の供給を確保し 農家と卸業者 加工業者が契約を結び 最終的に消費者の元に農産物が届くような仕組みを作らなくてはいけない サプライチェーン構築のための具体的支援として マルケ州では農村振興プログラムの第 16 手法 (Cooperazione) を通じて有機農業者の団結を促している 支援内容は生産者のための協会設立を後押しし 運営に関する事務費用を州が負担することである また 農村振興プログラムのその他の有機農業に関する支援内容の一部 ( 設備投資 教育 品種研究など ) において当該協会が優先的に申請できるようにしている もう一つの有機農産物の促進に関する戦略としては 有機農産物の生産の盛んな地域を作ることである 元々有機農業が盛んな地域に有機農業が盛んな地域であると認証を与え 地域によってはその地域の病院や学校の給食に有機食品を使うように指導する 観光レストランで有機農産物を使うように行政が働きかけたりするなどである 有機農業を州内で促進させる際の困難として 一つは ( イタリア農業全体に通じる話だが ) マルケ州では農家の個人主義の傾向が強く 農家に団結を求めるのが難しいことである もう一つは有機農業のコストが依然高いことである 震災対応 148 震災時の対応は州ではなく国が中心となって行った 農村振興プログラムの第 5 手法 (Calamità) は自然災害で被害を受けた農家の支援を行うものであるが 天候による災害が中心で地震は対象としていない 震災直後の支援は州農業局の役割としては 職員による被害状況の確認であった ( 特に畜産 ) 代替設備などの提供は国の機関が行った 復興段階では 農家による設備の申請に対して州が確認を行い提供を行う この費用はすべて農村振興プログラムの予算外から拠出される 被災 4 州 ( 一つの被災地域が 4 州にまたがっている ) の CAP 予算は元々中央政府が 70% 地方政府が 30% を負担するはずだったが 年の 3 年間は震災対応として 100% を中央政府が負担する 4 州の免除された予算分は被災地全体を復興するプログラム予算に充当される B) トスカーナ州 トスカーナ州政府の提供資料によると トスカーナ州の農業部門の GDP は 30 億ユーロ 農業従事者は 63,000 人である 輸出額は 20 億ユーロ ( その内 ワインが 7 億 7000 万ユーロ オリーブオイルが 5 億 4300 万ユーロ 観葉植物が 2 億 1600 万ユーロ ) である トスカーナ州はイタリア国内でも有数のアグリツーリズムが盛んな州として知られる 年 10 月 16 日に発生したマルケ州を震源とした地震についての回答 特に山岳部において大きな被害があった 91

97 図表 43 トスカーナ州の農村振興プログラムの予算配分 施策 予算額 ( 単位 : ユーロ ) 割合 1- 知識移転 情報に関する取組み (Formazione e informazione) 8,000, % 2- 助言サービス 農業経営 農業支援サービス (Consulenza) 38,000, % 3- 農産品 食品の品質制度 (Qualità) 4,000, % 4- 物的資産への投資 (Investiment in immobizzazaioni materiali) 284,000, % 5- 自然災害 (Calamità) 30,000, % 6- 農業 事業開発 (Sviluppo aziende agricole e imprese) 7- 農村地域における基礎的サービスおよび村の再生 (Servizi di base e rinnovamento dei villaggi) 8- 森林地域振興および森林の存続能力改善への投資 (Investimenti nello sviluppo delle aree forestali e miglioramento della redditivitá delle foreste) 10- 農業環境 気候支払い (Pagamenti agro-climatico-ambientali) 108,000, % 42,000, % 143,000, % 59,000, % 11- 有機農業 (Agricoltura biologica) 129,000, % 13- 山間部条件不利地域への補填支払い (Indennità compensativa montagna) 10,000, % 16- 協同 (Cooperazione) 35,000, % 19- LEADER 事業 (Sostegno al LEADER) 58,000, % 20- 技術支援 (Assistenza tecnica) 13,000, % 出所 : トスカーナ州政府提供資料より作成 トスカーナ州の CAP 第 3 期 ( ) の予算は 2015 年 5 月に可決した トスカーナ州の農村振興プログラム ( ) の予算は 9.61 億ユーロである その内 EU(EAFRD) の原資が 43% イタリア中央政府が 39% トスカーナ州政府が 17% である アグリツーリズムに関しては州の管轄のため州の法律が定められているが 青年の新規就農に関する支払については州の法律は無い ( 法律や規則を作るほどの内容ではないため ) トスカーナ州の設備投資 ( 農村振興プログラムの第 4 手法 ) は機械が多い 以下の内容はトスカーナ州政府農村振興政策担当者からのヒアリング内容に基づく 青年の新規就農に関する支払 青年の新規就農に関する支払は農村振興プログラムの第 6 手法において実施される 青年の新規就農に関する支払の目的は農業における世代交代である トスカーナ州においても高齢化は深刻な問題である 農業者の平均年齢は専業農家が 51 歳 兼業農家が 65 歳である < 支援内容 > 新規就農の際は 1 農家あたり 30,000 ユーロが支給される ( 山岳地帯の農家の場合は 40,000 ユーロ ) 支給された金額の使途は自由である 支給回数は 1 回である 92

98 また 設備投資 149 や多角化における 50,000 ユーロ以上の投資に対しては 申請金額の 40-60% が補助される 申請は個人又は会社を立ち上げ複数人で行うことができる 会社として複数人で申請する場合は構成員それぞれが 30,000 ユーロ受給できる 受給のためには会社の株主であること 資本金の最低 20% 以上を保有していることが求められる つまり 一つの会社で受給できる青年は 5 人までとなる トスカーナ州としては個人で申請するよりも会社として申請することを推奨している そのことによって農家の競争力が高くなるからである < 受給要件 > 申請時に 18 歳から 40 歳までであること 申請時から起算して 12 か月以内に農業を始めていること 起業プランを作成していること ( 投資内容 目標等 ) 起業プランは最大 3 年間で その間に専業農家として生計を立てられるようになる必要がある 目安としてプランの間に 13,000~ 19,000 ユーロの売り上げが予想できることが求められる 売上予測は統計及び州内の他農家のと比較して決められる つまりある程度の売り上げが見込める能力のある会社でなくてはいけない 申請の時点で農業を営むための能力があること ( 農業関係の学位を有している等 ) 又はこれから取得する意志があることを約束しなくてはいけない < 支払について > 30,000 ユーロの支払いのタイミングについて その内 70% は申請が認められてすぐに支払れる 残りの 30% は策定した起業プランが達成されたことが認められた後に支払われる < 申請結果 > 2015 年 (7 月 ~) 応募総数 :1786 人 支援対象 :686 人 支援金額 :1 億ユーロ 2016 年応募総数 :882 人 ( 審査中 ) 支援金額 :2000 万ユーロ ( 確実に増加見込み 特に 2015 年は 1 億ユーロを全て使わなかったため ) < その他ヒアリング内容 > 農村振興プログラムには新規就農に関する支払は青年向けと非青年用の 2 種類あるが トスカーナ州としては青年の新規就農の手法だけを採用した 受給要件の内 申請時から起算して 12 か月以内に農業を始めていること は当初は 6 か月以内だったのを 12 か月以内に定義を拡大した 申請時の加点条件として 山岳地域 ( 条件不利地域 ) に居住していること 女性であること 売上予測の 30% が牛 羊 オリーブ関係であること 社会的活動に対して 15,000 ユーロ以上の投資をしていること 投資の 35% 以上が機械などの技術的投資であること 等があげられる 青年の新規就農に関する支払にトスカーナ州が力を入れている理由として 近年青年が農業に関心を持ち始めている社会的要請に応えるためである 経済不況も影響して農業活動に対する再評価が行われている 多角化に関する取り組み < 支援内容 > 宿泊施設 レストラン等における建物の改造等 農業キャンプ 学校の課外活動 社会的活動 農業の伝統に繋がるレジャー活動 149 イタリアの設備投資は許認可が非常に複雑である ただし 申請時に許認可が全てクリアされていることは求められない ただし 全ての支払いが精算される段階で許認可の全てがクリアされていることを証明する必要がある ( ヒアリングより ) 93

99 上記活動のための投資金額の内 40% を補助 ( 山岳部では 50%) 支援額の上限は 3 年間で 200,000 ユーロである (EU 規則に基づく ) < 受給要件 > 専業農家であること ( ただし 学校の課外活動及び社会的活動はそれ以外の農家でも応募ができる ) 農業活動が多角化の活動よりも主要なものでなくてはならない その判定は所得と労働時間に基づき行う < その他ヒアリング内容 > 多角化における社会的活動はトスカーナ州でも新しい取組みである (CAP 第 3 期 ( ) ~) 活動内容は 保育園や幼稚園に関わる活動 障害者に関わる活動 難民に関わる活動 治療的活動などである 社会的活動における支援を申請する際には事前の許認可を得ている必要がある トスカーナ州では農業の多角化が進んでおり 農家にとっては宿泊設備やレストランの経営から得られる所得は魅力的である 特にトスカーナ州の農家は北イタリアのロンバルディア州やエミリア ロマーニャ州と違って規模が小さいため ( ワイン農家以外 ) 多角化による所得向上は重要である ここ最近 10 年で多角化の概念は広がっているように思える 当初 多角化は宿泊設備の整備位しか指していなかったが 近年は学校に対するサービスやエネルギーの生産まで広義の意味を持っている 近年のトスカーナ州では 特に農業活動を通じて社会的弱者が社会に入る手段として多角化の中の社会的活動を重視している 人々の間では多角化の中に社会的活動を含めることに抵抗を感じる人がいるが その分公募において社会的活動を行う農家に加点を与えるようにしている C) ボルツァーノ自治県 南アルプスの麓に位置し 県面積 7400 km2の内 92% が何らかの条件不利地域に相当する 150 ボルツァーノ自治県の農村振興プログラムは 下記予算配分及びヒアリングの通り 条件不利地を山間部条件不利地域への補填支払い及び農業環境 気候支払いの二本立てで支えているのが特徴である 150 European Commision, Factsheet on Rural Development Programme for Bolzano, _en.pdf 94

100 図表 44 ボルツァーノ自治県の農村振興プログラムの予算配分 施策 予算額 ( 単位 : ユーロ ) 割合 1- 知識移転 情報に関する取組み (Formazione e informazione) 1,400, % 4- 物的資産への投資 (Investiment in immobizzazaioni materiali) 48,006, % 6- 農業 事業開発 (Sviluppo aziende agricole e imprese) 25,720, % 7- 農村地域における基礎的サービスおよび村の再生 (Servizi di base e rinnovamento dei villaggi) 18,779, % 8- 森林地域振興および森林の存続能力改善への投資 (Investimenti nello sviluppo delle aree forestali e miglioramento della redditivitá delle 22,000, % foreste) 10- 農業環境 気候支払い (Pagamenti agro-climatico-ambientali) 100,000, % 11- 有機農業 (Agricoltura biologica) 9,000, % 13- 山間部条件不利地域への補填支払い (Indennità compensativa montagna) 117,000, % 16- 協同 (Cooperazione) 1,800, % 19- LEADER 事業 (Sostegno al LEADER) 20,298, % 20- 技術支援 (Assistenza tecnica) 2,400, % 出所 : ボルツァーノ自治県政府提供資料より作成 ボルツァーノ自治県の CAP 第 3 期 ( ) の予算は 2015 年 5 月に可決した ボルツァーノ自治県の農村振興プログラム ( ) の予算は 3.66 億ユーロである その内 EU(EAFRD) の原資が 43% イタリア中央政府が 39% ボルツァーノ自治県が 17% である 以下の内容はボルツァーノ自治県政府農村振興政策担当者からのヒアリング内容に基づく ボルツァーノ自治県農村振興プログラムの全体像 CAP 第 3 期 ( ) のプログラム策定時の狙いとして簡略化があった しかし 現時点で簡略化の狙いは十分に達成できていない CAP 第 3 期が開始してから 2 年が経過したが 採用しなくてもよかった政策手法があったと反省している 農村振興プログラムの内 第 1 手法の予算額は小さい割に手続きが煩雑ななため実施しなくても良いのではと思っている 第 4 手法の設備投資において 第 4.1 手法が農家に対して 第 4.2 手法が協同組合の設備投資に対して支援が行われる 青果物に関する投資への補助率は 30% 加工品への補助率は 20% ワイン用ブドウへの補助率は 30% 牛乳の加工への補助率は 30% である 400 万ユーロ以上の設備投資は農村振興プログラムから支援を行い 400 万ユーロより小額な設備投資に対しては CMO(Common Market Organisation) によって補助が行われる また 第 4.4 手法において生産とは関係ない生物多様性 環境に関する設備投資も規定されている 第 6 手法では青年の新規就農支援に関する支払が規定される 1 回最高 33,000 ユーロが受給できる 第 7 手法では 第 7.3 手法で 100 メガのブロードバンドの設置 ( 欧州委員会による義務 ) を原則市が実施する 第 7.5 手法では森林における小さな整備事業 ( 山道の整備 案内板の設置な 95

101 ど ) を行う 第 7.6 手法の Monitoraggo Natura 2000 は実施手続きが煩雑すぎるため実施しない予定である 第 10 手法の農業環境 気候支払いでは ボルツァーノ自治県ではサブ手法として独自に ( アルプス特有の ) 高地草地を守る目的 生物多様性の面から価値ある土地を守る目的の手法を導入している これはボルツァーノ自治県の伝統的農法である標高の高い草地での放牧を守るために行われる 第 13 手法の山間部の補填支払では標高と傾斜で支払金額を換算する 第 10 手法よりも条件は柔らかである 第 16 手法は欧州委員会による義務的な規定である 予算が小さい割に手続きは煩雑であるとして ボルツァーノ自治県の RDPs 担当者は実施の意義を見出せないと述べている 第 19 手法も義務的な規定であり 予算の 5% 以上を配分する必要がある ボルツァーノ自治県における LEADER 事業の行動単位は一渓が一単位となる < その他ヒアリング内容 > 山間部の酪農に従事するのは小農が多い 個人的には公的支援を行わない限り 市場では絶対に生き残れないと思う 農村振興プログラムは色々なメニューから政策を選べるのは素晴らしいが もっと自治体が手段を自由に選べるようにするべきである 制度は信頼に基づいたものであるべきである 次期 CAP 2020 年は 3 年後だが 一つの問題は欧州議会の選挙が 2019 年にあることである Trilogue の後 そのため 2021 年からの CAP も実施が遅れるだろう リンゴの生産について ボルツァーノ自治県におけるリンゴの生産は圧倒的に多く 毎年 100 万トンの生産がある イタリア国内のリンゴの生産の 50% を占め EU 全体の 10% の生産量を占める チェリー アプリコットの生産も伸びている ナシの生産は止めている 市場施策 (CMO:Common Market Organization) には過剰生産な調整する仕組みがあるが ボルツァーノ自治県のリンゴの生産で使ったのは 1992 年が最後である ( そうした措置が必要ないほど我々は強い体制を作った ) 桃やアプリコットのような商品化できる期間が短い農産物は毎年のように CMO の措置を使っている 毎年新しい設備投資が必要である そうしないと海外産地との競争力を保てない 特に世界との競争力を保つにはリンゴの製品そのものの質もさることながら 卸先へのサービス力 ( パッケージング 出荷のタイミング等 ) が必要 販売先は大型量販店が多いため 彼らが求めるパッケージを作れル必要がある 有機農業に関する取り組み ボルツァーノ自治県における有機農家数は 件中 1000 件程度である CAP 前期から今期にかけては有機農業に対する支払単価を上げた 前期は 1 ha あたり 380 ユーロだったのに対して 後期は 1 ha あたり 460 ユーロに支払単価を上げた また 有機農業に転換したばかりの農家は最初の 3 年間は 1 ha あたり 550 ユーロを受け取る CREA による全国を対象とした慣行農業から有機農業に転換した時の所得の変化の研究によると 所得が一番減るのが畜産 青果 ブドウだと言う 反対に所得の変化が少ないのが穀物だという ボルツァーノ自治県のリンゴの有機生産に関してはそれほど所得は減っていない 生産コスト以上に有機リンゴを上手く販売する能力があるからである EU 域内の有機リンゴの生産の 50% がボルツァーノ自治県である 南のトレント自治県はリンゴの生産面積に関してボルツァーノ自治県とほぼ同じだが ほとんど有機リンゴの生産は行われていない 現地農場施設訪問 1( 山岳部の個人酪農家 ) 農村振興プログラムの手法 4.1 を利用して牛舎を建築 (2016 年 8 月完成設 ) ボルツァーノ自治県で最も近代的な牛小屋 建築コストは 70 万ユーロであった ( オーナーの負担は 20 万程度 ) オーナーは県を通じて申請 96

102 飼育しているのは成牛が 16 頭 (20 頭まで可能 ) 子牛が 7-8 頭である 建物の構造は 1 階が牛小屋で 2 階が飼料の保管倉庫になっている 給餌から糞尿の掃除まで全てコンピューターで管理している 一家族で管理している 建物完成後にコストの確認が行政によって行われる ただし 2021 年以降は細かな監査は行われなくなる可能性がある 写真 :2016 年に購入した全自動給餌機 ( 撮影 : 筆者 ) 写真 : 季節に応じて側面が開閉可能な牛舎 ( 撮影 : 筆者 ) 写真 : 飼料の保管倉庫 ( 撮影 : 筆者 ) 97

103 写真 : 牛舎が農村振興プログラムによって建設されたことの証書 ( 撮影 : 筆者 ) 現地農場施設訪問 2( 県内 Marling 市のリンゴ選果場 ) 建物は 2008 年に完成 選果場ともう一つのプロジェクトを合わせて総建築コストは 万ユーロであった 6 割が自己負担 4 割を前期 CAP の農村振興プログラムの手法 4.2 から支援してもらった この選果場は 8 時間で 150 トン ( 繁忙期は 300 トン ) のリンゴを処理することができ 年間では 5 万 5 千トンのリンゴを処理する能力がある 県内には 20 か所の選果場がある 昔は小さい規模のものが多かったが 現在は合併を繰り返して大規模選果場に統合されつつある ボルツァーノ自治県としては 前期の方が果物に力を入れていた 今期は酪農とブドウの方に力を入れている この選果場で働く人員は最高 120 人である ( 事務所の 6-7 人含め ) 写真 : 農家から送られてきた選果前のリンゴ ( 撮影 : 筆者 ) 98

104 写真 : 選果場が農村振興プログラムによって建設されたことの証書 ( 撮影 : 筆者 ) 写真 : かごに貼られたトラッキングラベル ( 撮影 : 筆者 ) 写真 : リンゴが大きさや色ごとに選別される様子 ( 撮影 : 筆者 ) 99

105 D) ヴェネト州 151 図表 45 ヴェネト州の農村振興プログラムの予算配分 施策 予算額 ( 単位 : ユーロ ) 割合 1- 知識移転 情報に関する取組み (Formazione e informazione) 23,191, % 2- 助言サービス 農業経営 農業支援サービス (Consulenza) 36,873, % 3- 農産品 食品の品質制度 (Qualità) 17,857, % 4- 物的資産への投資 (Investiment in immobizzazaioni materiali) 446,892, % 5- 自然災害 (Calamità) 8,116, % 6- 農業 事業開発 (Sviluppo aziende agricole e imprese) 7- 農村地域における基礎的サービスおよび村の再生 (Servizi di base e rinnovamento dei villaggi) 8- 森林地域振興および森林の存続能力改善への投資 (Investimenti nello sviluppo delle aree forestali e miglioramento della redditivitá delle foreste) 10- 農業環境 気候支払い (Pagamenti agro-climatico-ambientali) 131,725, % 51,716, % 42,439, % 166,280, % 11- 有機農業 (Agricoltura biologica) 21,799, % 13- 山間部条件不利地域への補填支払い (Indennità compensativa montagna) 120,129, % 16- 協同 (Cooperazione) 27,829, % 19- LEADER 事業 (Sostegno al LEADER) 71,428, % * 第 2 期 ( ) 農村振興政策からの関連予算 1,159, % 20- 技術支援 (Assistenza tecnica) 16,880, % 出所 : ヴェネト州政府提供資料より作成 以下の内容はヴェネト州政府農村振興政策担当者からのヒアリング内容に基づく ヴェネト州農村振興プログラムの全体像 ヴェネト州の農村振興プログラム ( ) の予算は 11.8 億ユーロである 州の農業 GDP は 55 億ユーロ 食品産業の GDP は 26 億ユーロである 利用されている農地面積は約 80 万 ha である 通常 農村振興プログラムを実施する前には数か月に及ぶ SWOT 分析とステークホルダー協議を行う ステークホルダー協議についてはヴェネト州はかなりしっかり行った (EU からもベストプラクティスと認められた ) 力を入れた理由はヴェネト州には農業関係者が多いからである 農業関係者は 万人程いる ( その内 5 万人が専業農家 ) このような分析は予算配分の振り分けを明らかにすることが第一の目的である 151 ヴェネト州政府提供資料 (2016 年版 ) 及びヒアリング内容に基づく 100

106 ヴェネト州の設備投資の中には環境保護に繋がる設備投資も行っている その背景には 農業環境支払などの環境そのものへの支援も重要だが 環境に配慮できる効率的な農業企業が育成されてこそ環境に配慮した農業ができるという考えがある 2008 年のリーマン ショックに伴う農業市況の低迷の際にはヴェネト州が実施した施策として 融資の円滑化システムの導入 債務処理 銀行への利子保証の提供などがある ただし これらの措置は効果小さく 現在は州の緊縮財政を理由として実施していない 他方で 現在の農業市況の低迷に対しては 融資を希望する農家の利子保証を RDP の枠組みで検討している 平均農家の規模小さい場合には生産物の付加価値を高める上で一番良い手段は良質の生産 (PGI PDO) を取得することである 近年 ヴェネト州ではイタリアで最も PGI PDO が多い州である 州の PGI PDO の取得は 1980 年代終わりから州政府の要請が非常に強かった 他方でヴェネト州の農業環境は元々多様である ( 北極のような気候から地中海のような気候まで ) その中で付加価値の高い生産としてワイン用ブドウ 肉はイタリアで最もブランド価値が高い 青果物もランキングが高い 州によって全国的に登録されている PGI PDO は 350 ほどある 近年 品質の強調によって成功した顕著な例としてプロセッコワインが挙げられる ブランドを守るため 州政府によってプロセッコの名称を名乗っていいのはイタリアのヴェネト州のものだけにした ( それまではドイツ クロアチア産のワインもプロセッコの名称を使っていた ) 農業環境 気候支払い ヴェネト州では 1960 年から漸進的に生垣の再生に力を入れてきた結果 直近 20 年間で新規に 7,000 キロメートルの生垣が再生した 当初は国の政策で保護に取り組んでいたが 現在は農村振興プログラムの枠内で継続実施している 近年 農村振興プログラムに関する様々な場面で IT 化が進んでいる ヴェネト州では農業環境 気候支払いの影響分析に真剣に取り組んでおり パドワ大学と協力してデータベース化と分析を行っている こうした研究は他州でも行っているが それらは州内の限定的な地域だけを対象にしたものだろう ヴェネト州の研究では州全体を対象にしている こうした研究の結果は次年度以降の政策に反映される点で重要である 酪農 酪農に関して ヴェネト州は生乳の市場規模に影響を及ぼすほどの生産量はない クオータ制が廃止されたことで 欧州域内国 ニュージーランド オーストラリア等の域外国との競争に晒されているのは他地域と同じだろう 酪農の中心は協同組合である ヴェネト州の酪農家の 50% は協同組合に参加しているが 協同組合を通じて価格の低下に立ち向かった クオータ制廃止後の生乳の生産量はほとんど変わっていない 変わった点は生産の集中が行われるようになったことである つまり小規模農家が廃農し 大規模農家への統合が進んだ 品質向上を伴う農家の競争力が戻ってきたので 生乳価格は容認できるレベルまで戻ってきている ヴェネト州では乳製品の加工が非常に盛んなため 州内だけでなく他の地域からも生乳を多く輸入している 今後のヴェネト州における酪農の取り組みは 1PDO などの生産や特徴あるチーズ ヨーグルトなどの加工乳製品に集中する 2 製品全体の質を上げる 3 新市場の開拓 ( 具体的には東欧 ) である クオータ制の廃止後の急激な価格下落について もちろん EU もある程度事前の研究を行っていた ただ 今回価格が大きく下落した背景には グローバル市場でニュージーランド オーストラリアの生乳の生産が増加するなど 世界的な価格動向の問題もあったと思われる ヴェネト州には 1994 年の時点で 3 万人の酪農家がいたが 今は 3000 人にまで減った ただし 牛の数は減っておらず 生産が集中したことになる 昔は酪農家のおよそ半分が牛の飼育数が 101

107 10 頭以下の小規模酪農家であった 廃農する酪農家の傾向として 山岳 丘陵地 元々協同組合が無い地域 加工業者との繋がりが無い酪農家が挙げられる ヴェネト州では 州の西側が酪農の盛んな地域であり 現在は西部にだけ生産が集中している その背景には 過疎化 山や森林の放棄があり それゆえ一定の地域に生産が集中していく 近年は畜産業自体に圧力がかっている 例えば 環境に優しくない等 また 消費者の嗜好として肉離れも進んでいる 農業経済の観点からは酪農と畜産はヴェネト州では大きな問題である 幸いヴェネト州では農業の多角化が進んでいるので 全体への影響は重大な影響はない 他方でロンバルディア州では州の農産業が畜産及び ( 特に ) 酪農に集中しているので州全体の農業に影響を与えている ヴェネト州内で廃農したのはほとんど山岳部の酪農家であった 理由は 酪農家の高齢化と世代交代が無かったために自然に廃農していった 経済不況によって 若者が農業を営む傾向がある それを農村振興プログラムによって後押しする 大規模農家への集中が進む中で ( 過疎化及び競争の拡大 ) イノベーションも合わせて進んだイメージ 規模が大きくなることは効率化が重要になる その際にイノベーションが導入される また動物福祉も可能になる 酪農家数が 1994 年の 3 万人から 3000 人に減ったが 生産量と牛の数は減っていないと述べたが 酪農地面積は減っている なぜなら 土地市場は柔軟性が無く価格も高いため 酪農家は牛の数が増えてもその分土地を買うことはできていない ( ヴェネト州がイタリアで最も土地が高い ) それよりも規模を拡大した農家は土地を買うよりも近代化の設備に投資する 現地農場施設訪問 : 州内の中規模農場 ( 農地面積 :40 ha) < 農場データ> ( 農地面積 ) 総合農地面積利用農地面積 ha ha( 最低 EFA 面積 :1.89 ha) 耕地作物 ha(efa 実施面積 :2.86 ha) 軟質小麦 ha とうもろこし 9.75 ha 大豆 3.81 ha(efa 係数 0.7:2.67 ha) 輪作飼料栽培及びその他 ha ブドウ 0.30 ha 生け垣等 樹木 0.09 ha(efa 実施面積 :0.09 ha) 堀 ) 0.10 ha(efa 実施面積 :0.1 ha) ( 畜産 ) 乳牛 95 頭子牛 (12 カ月まで ) 48 頭牛 (1~2 年 ) 48 頭 102

108 図表 46 ヴェネト州訪問先農家の CAP 交付金支払い基準 2015 年 CAP 対照面積 37.4 ha 2014 年基準金額 38,636 基本支払い ( ) greening ( ) 合計 ( ) 2015 年 23,747 11,902 35, 年 22,100 11,077 33, 年 20,298 10,173 30, 年 18,545 9,295 27, 年 16,792 8,416 25,208 ( 農村振興を使用した取り組み ) 農村振興 家畜の食料供給の機械 農村振興 家畜の食料供給の機械 20 年前からと比べて牛の飼育数は倍になった また 以前の生産量は 1 頭当たり生乳 8 トンだったのに対して 今は 1 頭当たりの生産は 11.4 トンとなった 牛舎の環境を良くすると 生産量と質が向上する 農村振興プログラムで支援を受けるためには 取組みの質の良さをアピールしなくてはいけない ( サプライチェーンがあること ブランドがあること等 ) RDP の制度で大切なことはどれだけ簡単に融資を得られるかである 2016 年のプログラムの補助で購入したのが牛舎内の扇風機である ( 牛は暑がりのため 20 度以上になると自動的に回り出す ) 農場の経営はオーナーである自分 1 人と従業員 1 名である 農場の土地のほとんどは借りている ( 自らの土地は 16 ha のみ ) 以前はそれほど借りていなかった 1 ha あたり 500 ユーロで借りているがその土地は CAP の支払の対象になる グリーニング導入で変わったことはない 元々 大豆を作っていたためである ただし 今まで自由に取り組んできたことが義務的になったのは窮屈に感じる 農業環境 気候支払いは申請していない 補助金を受給するよりも生産性を重視したからである 牛舎の屋根の太陽光発電も RDP の支援で購入した 生乳クオータの廃止によって生産量を増やすことが出来た しかし価格は下がったため 利益は変わっていない ミルクについては協同組合を通すことで販路を確保することができる 以前 協同組合が上海で牛乳を売るという話があった ( 結局無くなってしまった ) 今も中国市場への期待は大きい 空輸代で価格が高くなったとしてもである 農業保険は 家畜の病気の死に関する民間保険しか入っていない 被助成保険でないため 全て自身で支払う リスク管理施策の農業保険の前制度である被助成保険は複数リスクに加入しないと補助金が出ない点が不満だった ( 単一リスクの保険には補助金が出ない ) このような制度は大規模農家にとってはいいが それ以下の農家は雹以外に関心が無いため困る また 生産量の 30% 以上の被害が生じないと支払が行われるのも困る 103

109 写真 : 外から見た牛舎 ( 撮影 : 筆者 ) 写真 :RDP で購入した飼料を混ぜる機械 ( 撮影 : 筆者 ) 写真 :RDP で購入した糞尿分離機 ( 撮影 : 筆者 ) 104

110 写真 :RDP で購入した農場内の灌漑設備 ( 撮影 : 筆者 ) 写真 : 農場が登録する牛乳の PDO( 撮影 : 筆者 ) 105

111 3.4. EU リスク管理施策 (1) 概要 平成 26 年度海外農業 貿易事情分析事業 ( 欧州 ) 報告書 によれば 2014 年 CAP 改革におけるにおけるリスク管理施策導入の背景及び概要は以下のようなものである 152 気候変動や価格変動の増大により 農業者の直面する経済的および環境上のリスクは拡大している ( 説明条項 30) また そうしたリスクの背景には CAP 改革による市場施策の縮小や 貿易自由化による国際競争の拡大 生産費の変動 家畜や作物の病気の発生があるといってよい そうしたリスクを緩和するため 新たにリスク管理施策が導入された これは加盟国が保険 相互基金 所得安定化策のいずれかの施策を行う場合に助成がなされるものである なお 保険と相互基金の施策は 当初ヘルスチェックの際にいわゆる 68 条支払の一環として直接支払規則に導入されたが 今回の改革でカップル支払いの一元化により 68 条支払いが廃止されたことを受けて 農村振興規則に移管された 保険は 作物 ( 収穫 ) 動物 植物 ( 果樹など ) の農業保険を指している EAFRD は 有害な気象 動植物疾病 害虫のまん延 環境事象のいずれかによる農業者の経済的損失に対応する保険の 保険料に対して財政拠出を行う (36 条 ) 相互基金は 農業者の経済的損失を補償する EAFRD は 有害な気象 動植物疾病の発生 害虫のまん延 環境事象のいずれかに対応する相互基金に対して財政拠出を行う (36 条 ) 所得安定化策は 所得が急激に減少した農業者に補償を与える EAFRD は 相互基金の形態をとる所得安定化策に対して財政拠出を行う 補償は個々の農業者の年間所得が直前数年間の水準 (3 年間平均値あるいは 5 年間のうち最高 最低の年を除いた 3 年平均値 ) を 30% 以上下回った場合に支払われ 補償の水準は所得減少額の 7 割未満である (39 条 ) また 欧州議会農業農村開発委員会に提出された調査資料によれば リスク管理施策の枠組は 2014 年 CAP 改革の前後で 以下のように変化している 図表 47 リスク管理施策の枠組みの変化 CAP 第 2 期 ( 年 ) CAP 第 3 期 ( 年 ) CAP: 第 1の柱を通じて 68 条支払いの一環として支援 ( 直接支払規則 ) 果物 野菜 ワインが対象 CAP: 第 2の柱を通じて 農業保険 相互基金 所得安定化策について支援 果物 野菜 ワインが対象 国家補助 : 国家補助 : 事前支援: 農業保険 相互基金 事前支援: 農業保険 相互基金 事後支援: 自然災害 動植物の病気 事後支援: 自然災害 動植物の病気 出所 :Isabel Bardaji, State of play of risk management tools implemented by MS during the period : national and European frameworks, Research for AGRI Committee-European Parliament すなわち 加盟諸国の多様性に配慮して柔軟な支援枠組みとしたこと 野菜 果実及びワインを除き CAP による支援は第 1 の柱 (68 条支払い ) から第 2 の柱 (RDPs) にシフトしたこと 所得安定化策 (IST) が市場リスクに対する唯一の支援策として新たに導入されこと等である 152 農林中金総合研究所 平成 26 年度海外農業 貿易事情分析事業 ( 欧州 ) 報告書第 IV 部 年 CAP における農村振興政策の概要及び主な変更点 2015 年 3 月 106

112 153 (2) リスク管理施策 ( ) の実施状況 1 CAP 枠内での支援策 ( 農村振興プログラム ) CAP 第 3 期 ( ) における農村振興プログラム (RDP) の下のリスク管理施策に対する各国の支出予定額 (2014 年から 2020 年 ) は下表のとおりである RDP の承認プロセスは長く また情報を得ることも困難であるが 得られたデータに基づく限りにおいては 9 カ国 3 地域がこの枠組みにおけるリスク管理施策を利用する予定である 図表 48 農村振興プログラム (RDP) におけるリスク管理施策に対する支出予定額 (2014 年 ~2020 年 ) 農業保険 相互基金 所得安定化策 合計 (100 万 EU 拠出割合ユーロ ) (%) ベルギー ( フランダース地方 ) スペイン ( カスティーリャ イ レオン州 ) フランス クロアチア イタリア ラトビア リトアニア ハンガリー マルタ オランダ ポルトガル - 本土 アゾレス諸島 マデイラ諸島 ルーマニア 合計 出所 :European Parliament (2016) 金額面ではフランスとイタリアが突出しており イタリアはこれらの国の中で唯一 3 種類のリスク管理施策 ( 保険 相互基金及び所得安定化策 154 ) を実施する予定 155 であること フランスは改革に伴い第 1 の柱から第 2 の柱に移転されるEUの補助金を最大限に利用する予定であるため EUの助成率が高い リスク管理施策を採用した国の中では 保険が利用国 金額とも多く スペイン及びルーマニアのみが保険の利用予定がない スペインについては 国家補助に基づく保険の助成制度が非常に発 153 European Parliament, Directorate-General for Internal Politics, Policy Department B: Structural and Cohesion Policies, Agriculture and Rural Development, Research for Agri Committee-State of Play of Risk Management Tools Implemented by Member States During the Period : National and European Frameworks (March 2016) に基づく 154 保険が対象にするのは保険会社が商品化しているようなリスクであり 最も主要なものは穀物の雹や霜のリスクである 相互基金は保険会社が商品化していないリスクで 例えば植物の病気等を対象とする 相互基金はイタリア国内ではまだ具体的に運用されていない 155 イタリア農業連盟 (Confagricultura) でのヒアリングによると リスク管理施策の 3 つのツール間での二重給付の問題はそれほど心配ないはないという なぜなら農家は EU の規定により 一つの災害リスクに対して農業保険と相互基金のどちらかでしか保障を受けられないことが決まっているからである また 罹災後に保険金が支払われることで所得は保障されるため 所得安定化策との重複も生じない 107

113 達していることが理由と見られる 相互基金についてはルーマニア イタリア及びフランスが実施予定であるが ルーマニアとイタリアについては従来第 1 の柱での実績がなく 新規の実施となる 所得安定化策についてはイタリアとハンガリー 及びスペイン ( カスティーリャ イ レオン州 ) のみが実施予定である 他国はこの施策の実施を見送るものが多く 例えばフランスは 所得安定化策の導入は保険や相互基金等の既存の施策との重複 支払い遅延の可能性 モラルハザードのリスクが高い 予算に対する影響が大きい等 多くの問題を引き起こす可能性が高いと見ている 2014 年から 2020 年の間に支出が予定されているリスク管理施策の合計金額約 27 億ユーロのうち 63% に相当する 17 億ユーロが第 2 の柱予算から支出される この金額は第 2 の柱予算の 2% 未満 2014 年から 2020 年の間の CAP 予算総額の 0.4% に満たない すなわち 農業部門のリスク管理施策に対する CAP による支援は 改革以前と同様 極めて低いレベルに留まっている 図表 49 農村振興プログラム (RDP) におけるリスク管理施策の支援対象農業経営体 (2014 年 ~2020 年 ) 農業保険 相互基金 所得安定化策 合計 対象農家割合 ベルギー ( フランダース地方 ) スペイン ( カスティーリャ イ レオン州 ) フランス クロアチア イタリア ラトビア リトアニア ハンガリー マルタ オランダ ポルトガル 本土 アゾレス諸島 マデイラ諸島 ルーマニア 合計 出所 :European Parliament (2016) CAP 第 2 の柱の農村振興プログラム (RDP) によるリスク管理施策の支援を受けることが期待される農業経営体 ( 農家 ) 数は上の表の通りである 495,000 農家が支援を受けるフランスが突出して多く 156 同国農家全体の 96% が支援を受けることになる また そのうち 40 万軒近くが相互基金の適用対象である 157 続いて多いのはイタリアであるがその数は 9 万農家とフランスからは大きな隔たりがあり 国内農家のカバー率は 5.6% に過ぎない 158 さらに カバー率が最も低いポル 156 農業系シンクタンク Farm Europe へのヒアリングによると フランスの相互基金の農業経営体 ( 農家 ) 数が極端に多いのは 小額の衛生プログラムに加入する農家数を含めているからだという 157 フランスでは 農業生産に関わる全ての農家 ( ただし 林業 水産業 狩猟等を除く ) に対して唯一の公的相互基金である FNMSE( 国家衛生環境農業基金 ) への加入が義務付けられている 158 他方 イタリアの相互基金に対する支出予定金額は 5,000 軒の農家に対して 97 百万ユーロと フランスを上回る その背景要因としては イタリアでは 1970 年代から保険を補完する仕組みとして 国家連帯基金 (National Solidarity Fund) という相互基金が設置されていたこと EU リスク管理施策の導入に際して相互基金に対する関心が高まってい 108

114 トガルについては 0.3% に満たず フランスとの各差は甚大である 2 国家補助 ( CAP の枠外で 国家助成に関する EU の規則に基づき 各国が独自に行う措置 ) 2014 年における各国の国家補助によるリスク管理施策の支出状況は下表のとおりである 加盟諸国の支出総額は 億ユーロであるが 前年の 13.4 億ユーロからは減少している この減少傾向は 2007~2008 年の金融危機から厳しい財政事情を反映して継続しており 2015 年の支出額も 2014 年を下回っていることが確認されている 図表 50 国家補助による民間保険への助成支出状況 (2014 年 ) 単位: 百万ユーロ Natural Adverse Animal and Insurance 加盟国合計 disasters weather events plant diseases premiums ベルギー ブルガリア チェコ デンマーク ドイツ エストニア アイルランド ギリシャ スペイン フランス クロアチア イタリア キプロス ラトビア リトアニア ルクセンブルグ ハンガリー マルタ オランダ オーストリア ポーランド ポルトガル ルーマニア スロべニア スロバキア フィンランド スウェーデン 英国 合計 (28 か国 ) 注 :Natural disasters は地震 雪崩 地滑り 洪水 台風 火山噴火 野火等を指し Adverse weather events は左記の中でも特に天候に起因するものを指す 出所 :European Parliament (2016) たことを指摘し得る Antonella Pontrandolfi and Giuliana Nizza, Perspectives on risk management as climate change adaptation measure in Italian agriculture, Building resilience for adaptation to climate change in the agriculture sector (FAO, 2012). 109

115 支出額の多い国は スペイン イタリア及びドイツ等である イタリアについては 2014 年の国家補助の支出額 1.9 億ユーロは 2013 年の 2.5 億ユーロから大きく減少しており この傾向は 2020 年まで続くものと見られている その理由は イタリアはリスク管理のための予算の多くを CAP 第 2 の柱の枠組みで計上しているためである フランスについても かつてのように国家補助によるリスク管理の支出額上位 3 カ国に名を連ねることはなくなっており 重心を国家補助から改革後 CAP の予防措置に移している 補助の種類に関しては 動植物の病害に対する補償が最も支出金額が大きく 保険料の助成がこれに続いている 前者については英国とドイツが 後者についてはスペインとイタリアが主に実施している 3 同一災害リスクに対する CAP と国家補助の二重助成の禁止 EU 規則によると EU の第 2 の柱によるリスク管理施策を導入している国では 支援対象の保険が EU 規則で規定されている場合 その保険への国家補助による支援が禁止される 159 同一の保険に対して EU のリスク管理施策と国家補助の両方からの支援は禁止される意味である 他方で 畜産等の分野では EU が規定していない種類の保険もあり そうした保険は国家補助のる支援対象としても良いことになっている 基本的に EU のリスク管理施策を導入している国においては 国家補助による助成は例外的な扱いとなる 所得安定化策に関しては国家補助ではなく EU の資金で賄うものとされている 4 各国のリスク管理施策の実施状況の変化リスク管理施策に対する支出が第 1 の柱から第 2 の柱に移行するに従って その主要な実施国 ( 利用国 ) の変化を類型的に示したのが下図である これに従うと 第 1 の柱の実施国 4 カ国 ( イタリア フランス ハンガリー及びオランダ ) は全て第 2 の柱においてもリスク予防策を実施している 支出額は 主にイタリアとフランスのために 僅かに増加している また 第 1 の柱においてはフランスのみが相互基金を利用していたが 第 2 の柱ではフランスに加えてイタリアも利用予定である 所得安定化策については イタリアとハンガリーがこの新たな施策を農村開発計画に含めて実施を予定している 他方 第 1 の柱ではリスク管理施策を実施していなかった 8 カ国 ( ルーマニア クロアチア ポルトガル リトアニア スペイン ラトビア ベルギー及びマルタ ) が第 2 の柱での実施を予定しており この中ではルーマニアが最大の支出額を予定している ルーマニアは 同国の民間保険によってはカバーされない気候変動による被害を補償するために 相互基金を新たに実施することを予定している 図表 51 第 1 の柱 ( 第 68 条 ( )) から第 2 の柱 (RDP( )) へのリスク管理施策の 移行と主な実施国 CAP 第 2 期 ( 年 ) CAP 第 3 期 ( 年 ) 第 1の柱 (68 条支払い ) 第 2の柱 ( リスク管理施策 ) 保険 (89%) 相互基金 (11%) 保険 (82%) 相互基金 (13%) 所得安定化策 (5%) イタリア フランス イタリア ルーマニア イタリア フランス フランス イタリア ハンガリー ハンガリー ハンガリー フランス スペイン オランダ クロアチア オランダ ポルトガル リトアニア ラトビア ベルギー マルタ () 内は予算割合出所 :European Parliament (2016) 159 イタリアの Council of Agricultural Research and Economics (CREA) でのヒアリングより 110

116 160 4 資金問題 EU 加盟国の中東欧諸国を中心とした第 5 次 6 次拡大 2008 年のリーマンショック以後の欧州経済の悪化等に伴い 各国に財源負担を求める第 2 の柱の資金源のあり方は近年の CAP の課題となっている そのため 今期 CAP( 年 ) 及び次期 CAP の第 2 の柱における農村振興プログラムの実施においては その資金源をいわゆる金融的手段 (Financial Instruments: FIs) に求めようとする動きが見られる 欧州投資銀行 (EIB) の環境 持続的地域開発局長 Werner Schmidt 氏は 金融的手段 (FIs) を農業セクターにおける資金調達の梃子として用いることの有用性を認めつつも 関係者が これまでの無償資金ベースのシステムから融資ベースのメカニズムに思考様式を変更する必要があると述べている また 欧州委員会と欧州投資銀行は 両者が共同で設立した 欧州戦略投資基金 (European Fund for Strategic Investment) を通じて 第三者による資金提供を可能にするような新たな FIs を作るための取組みも行っていくとも述べている Schmidt 氏によれば RDP の現在の CAP 第 3 期 ( 年 ) の間に金融的手段 (FIs) を導入するためには 加盟諸国による明示的な要求と詳細な分析が必要である 一方 これに対して農民側は 金融的手段 (FIs) は農村地域のファイナンスに対する万能薬ではなく 追加的な施策が必要であると反応している そもそも 制度上 EUによる助成は一部補助にとどまるため 支援を受ける農家側も通常半分以上を自己負担する必要があるため 追加的な融資ベースの支援が導入されても農家自身は手法の便益を感じづらい ドイツ農民協会 (DBV) のPeter Pascher 氏は 2020 年以降の取組みとして完全な融資ベースのメカニズムは間違いであるとして むしろドイツではCOSME programme 161 のような中小企業支援施策が上手く機能していると述べている 同様に アイルランド農民協会のJohn Ryan 氏は 特に周辺地域の小規模農家においてはむしろ農地放棄が問題であり これに対して金融的手段 (FIs) は有効ではないと指摘している さらに 欧州委員会のフィル ホーガン農業 農村開発担当委員は 将来の CAP においても何らかの所得支援策が必要であることや 米国中西部の農地放棄と同様の事象が欧州においても起こる可能性を指摘し 欧州の農村における農地の管理人としての農民に対する所得支援の必要性を示唆している 欧州委員会農業総局へのヒアリングでは 財政の制約という極めて現実的な理由から 金融的手段 (FIs) の活用はますます重要になる 農業総局のコミッショナーであるホーガン氏も補足的に金融的手段 (FIs) の活用には支持の立場である 誰もが 2020 年からの次期 CAP で今までと同じ予算を確保できるとは思っていない ホーガン氏は欧州投資銀行の総裁と極めて近い関係で働いており 今後の欧州投資銀行を通じた資金提供の活用を現実的に考えているだろう と述べていた 5 今後の EU における所得安定化策 (IST) の導入に関する動向 CAP による所得安定化策は 農業者の直前数年間の年間所得 (gross margin= 売上総利益 ) の 30% 以上を損失しない場合でないと支援の対象とならない この 30% という水準は WTO ルール ( グリーンボックス ) に基づき定められたものであるが 30% 以上の損失をしない限り支援対象とならないのは農家にとって非常に高いハードルである そのため EU 内での所得安定化策の各加盟国への普及を大きく妨げる要因となっている また イタリア農業連盟 (Confagricultura) へのヒアリングによると 所得安定化策の現行の制度では補償の支援対象となった場合も EU から補填されるのは損失の 45% であり 残りは農家同士が加入している基金の積立金の中から支払われるという イタリア農業連盟による現行制度への批判では 結局 所得安定化策のための基金を作るのは農家であり その時点では EU は何も支援しない 支払いが必要となった時 EU は事後的に補填するのみである また 農産物価格の下落が激しい場合にイタリア全体の基金が十分でなくなる可能性がある そうすると基金は民間銀行からお金を借りなくてはならない ( その時の利息は EU が 65% を保証する ) という 160 EIB official predicts decline in CAP funding post-2020, Agra-Europe, Sep.6, 2016 及び欧州委員会農業総局へのヒアリング内容に基づく 161 EU が 2014~2020 年の間に 23 億ユーロの予算をかけて実施する計画の中小企業の競争力強化プログラム 資金や市場へのアクセス促進 経営者訓練等を主な支援内容とする 111

117 しかしながら この EU 規定における支援の発動下限が 30% から 20% に引き下げられる議論が現在欧州委員会で行われており 提案が採用された場合は今後の EU における所得安定化策の本格的な普及が進むものと考えられる ベルギー ブリュッセルの農業系シンクタンク Farm Europe でのヒアリングによると この支援の発動下限の変更は欧州委員会と欧州議会の間でコンセンサスが取れており 早ければ 2017 年 9 月には採用される予定で その可能性自体は高いという また 2016 年 9 月に公表された 年多年度財政枠組み (The EU s Multi-Annual Financial Framework: MFF) の中間レビューおいても 所得安定化策の導入促進の言及がある 162 Farm Europe によると 上記の 20% 措置が導入されたら場合 CAP による所得安定化策が最初に導入されるのは酪農部門である さらに 導入を考えている国はフランス ドイツ アイルランドであろう アイルランドについては既に民間資金を使って協同組合が基金を運用している と述べた EU 規定の支援発動下限を 30% から 20% に引き下げることは 所得安定化策の導入推進に非常に有効と思われるが 他方で 元々 EU 規定で 30% と規定されたは WTO ルールへの配慮のためのはずである EU としては 20% に引き下げることで黄の政策を新設したと見做されるのは避けたいはずで この点に関して今後欧州委員会がどのように説明を行うかは注視が必要だろう (3) イタリアにおけるリスク管理施策の実施状況イタリアは今期 CAPの第 2 の柱におけるリスク管理施策の導入に際して 保険 相互基金 所得安定化策の 3 つのツールの全てを導入している上 配分予算額も約 16 億ユーロと加盟国の中で最も多い そこでイタリアにおけるリスク管理施策については 現地調査に基づき 以下の通り実施 163 状況については調査した 1 CAP 第 2 の柱によるリスク管理施策の導入の背景 元々 EU 内ではイタリアとスペインが最も農業保険制度の整備が進んだ国 164 であり さらにイタリアは国内制度が不安定だったためにCAPを通じて安定して予算を確保するためにCAP 予算の中にリスク管理施策の導入を働きかけた 当初イタリアはリスク管理施策を第 1 の柱の中で予算化しようと試みたが ( 第 2 の柱の方が手続きとして複雑で 制約条件も厳しいため ) 全額をCAP 予算から支出する第 1 の柱からの拠出を他加盟国から反対されたため 第 2 の柱からの拠出を行うこととなった その結果 現在イタリアはCAP 予算の中で農業保険を運用しているが スペインは今も国の予算で農業保険制度を運営しているという 2 イタリアにおける農業保険制度 2015 年にEU 予算で運営されるリスク管理施策が導入されるまで イタリアでは国家予算で運営される被助成保険制度 ( イタリア名 :Assicurazioni agevolate) 165 が農業者の保険金支払いの一部を負担していた 被助成保険制度は 1970 年に法律が制定されているが その前から制度は運用されており 当初はワイン用のブドウに対する雹の単一リスク ( 天候災害 ) 向けの保険料の一部を国が負担することから始まった 単一リスク向けの保険加入の支援から始まった被助成保険制度は 2004 年の制度改革以降 現在では 8 種類の災害リスク ( 雹や干ばつ 洪水など ) の内 最低 3 つ以上の複数リスクの保険を申請しないと助成を受けられなくなった 被助成保険制度の対象は主に天候災害 166 である そのため 火災や地震は保険の対象外である ( 農家が火災や地震で被害を受けた際は そのつど国が一時立法を作って対応する ) 162 European Perliament New income stabilisation tools and price volatility in agricultural markets, イタリアにおけるリスク管理施策実施状況については イタリア農業連盟 (Confagricultura) 及び Council of Agricultural Research and Economics (CREA) から話を伺った 164 イタリアで農業保険が発達したのは イタリアの農産物が天候の影響を受けやすい しかし付加価値の高いものが多いためと考えられている 165 日本語による定訳が無いため 翻訳者に相談の上 イタリア語原文を忠実に和訳した 166 元々 イタリアの天候災害の支援は被災後の事後払いが中心だったという しかし 年代以降 事後保障はコストが高くなりがちなこと 保障額の予測が困難なこと また災害の予防措置を怠る農家のモラルハザードを生んだことから 保険料の事前の一部負担に政策の焦点が移った 112

118 イタリア国内の被助成保険制度の発達の過程では 保険会社と農家との間で健全な市場の形成が難しくなったことから 2004 年にイタリア国内の被助成保険制度の改革が行われた 制度改革の最大の変更点は保険会社のカルテルが解体されたことで それによって保険会社と農家の加入する保険の種類や保険料に関する交渉は地域ごとに個別で行われるようになった 同時に 被助成保険制度の全国的な制度の一貫性を保つために ISMEA という機関が設立され ISMEA が各農産物や地域のリスクを測定して そこで算出された基準を基に農家と保険会社が保険料の交渉を行うようになった イタリアの農業保険の運営で重要な役割を果たすのが農業保護コンソーシアム ( イタリア名 : Consorzio Difesa Produzioni Agricole) である 農業保護コンソーシアムは 農家によって構成された民間組織である イタリア国内の各地域に存在し イタリア国内の組織数は 66 程である 農業保護コンソーシアムの役割は 被助成保険に関わる支払の全てをコンソーシアムが農家に対して代行することである 例えば 最初に保険料を保険会社に支払う際はコンソーシアムが農家の代わりに支払い その後に国と EU からの助成金をコンソーシアムが受け取る 最終的にコンソーシアムは国と EU の支援だけで賄えなかった保険料の差額を農家に請求する また 実際に支払われる保険金もコンソーシアムを通して農家に支払われる ただし 2015 年からイタリアにおける主要な保険料助成は国家補助から CAP による支援に変わったため コンソーシアムの役割は縮小した 今後の保険料に対する助成は第 2 の柱による農村振興プログラムが農家に対して直接行う ( ただし それにより農家の手続き負担は増大した ) 3 現在のイタリアのリスク管理施策の実施状況 2015 年の CAP の第 2 の柱によるリスク管理施策の導入に関して 各ツールに関するイタリアでの実施状況は以下のとおりである 保険 167 については リスク管理施策導入後に農家に対する保険料が上昇した等の影響は特にない ISMEA によると 2015 年の農業保険の対象となった農産品の総額は 74 億ユーロである 納められた保険料は 4 億ユーロで 実際に支払われた保険金は 2.3 億ユーロである 農産品の保険対象総額は 北イタリアが 85% 南イタリアが 15% と北部に偏っている 168 また 農家にとって 既存の被助成保険制度から新たなCAPによる支援制度に移行するメリットは国とEUからの支援が 2020 年までの 7 年間保証されることだという それまでの被助成保険制度は国の単年度予算に基づき運営されていたが 新制度の下では保険会社と農業者の双方が 2020 年まで市場が保障されることになる CAP 第 2 の柱におけるリスク管理施策の内 相互基金と所得安定化策の運用は始まっていない そのため 両制度とも加入者はまだいない状態である ただし 国内で実施するための法律は新制度導入後に制定された ( それまでのイタリアの法律では農家によって作られた基金に公的予算を投じることはできなかった ) 相互基金に関しては イタリアは制度運用の実験を経て政策化の意思はあるという 相互基金は保険会社が保険商品を作ろうとしない農業保険の対象外の災害 ( 例 : 植物の病気 ) に対して有効だからである 相互基金に関する制度的な実験は 2017 年に北東イタリア 169 のいくつかの自治体 ( ヴェネト州やトレント自治県 ) で始まる予定という 他方で 所得安定化策については 2017 年の制度的実験は行われず イタリアの近年の政策化の意図はないという 今は所得安定化策を使用すべき場面や効果をISMEAが研究している段階とのことである また 所得安定化策の制度上の最大の課題は農家の所得の正確な確認である イタリアの農家の 90% は正確な所得が確認できないため 制度の本格導入の障壁となっているという 167 保険については様々な種類があるため 全てが CAP のリスク管理施策の対象になるわけではない 引き続き イタリアの国家予算だけで補助される保険もある ( 例 : 動物の遺体処理 ビニールハウスの破損等 ) 168 イタリア農業連盟 (Confagricultura) でのヒアリングによると イタリア国内で保険制度が根付いているのは北イタリアのエミリア ロマーニャ州 ロンバルディア州 ヴェネト州 トレンティーノ = アルト アディジェ州だけで その他の地域には根付いていないという 169 所得安定化策はそもそも相互基金の形態をとっている そのため加入者は農家だけだという 113

119 3.5. フード チェーンにおける生産者の交渉力強化に関する措置の検討状況 (1) 農産品マーケットタスクフォース 1 タスクフォース立ち上げの経緯及びその役割 年 11 月 14 日 農産品マーケットタスクフォース (Agricultural Markets Task Force: AMTF) によって作成されたレポート サプライチェーンにおける生産者の地位向上 (Improving Market Outcomes: Enhancing the Position of Farmers in the Supply Chain) が発表された 171 このタスクフォースは EU 農産品 食品セクターのグローバル市場への参加によってもたらされた農産品市場の不安定性や 大きな価格変動によって生じる課題に対応する取り組みの一環として 欧州委員会が立ち上げたものである 2015 年 10 月に欧州委員会のフィル ホーガン農業 農村開発担当委員が立ち上げの計画を明らかにしたもので 同タスクフォースは有識者グループとして農産品市場の機能とフードサプライチェーンにおける生産者の立場に関しアドバイスを提供し 持続可能な農業の実現を考慮に入れた上で政策提言を行うことが役割とされた なお タスクフォースの役割は 欧州委員会の決定により組成された食料セクターの政策検討会である フードサプライチェーン改善ハイレベルフォーラム (High Level Forum for a Better Functioning Food Supply Chain) の役割を補完するものとして位置づけられている 2 レポートの作成方法 タスクフォースの検討は 2016 年 1 月に始まり レポートの発表までに計 8 回の会合が持たれ 議論を深めるためタスクフォースのメンバーに加え 欧州委員会メンバーや外部有識者を招き検討が行われた また インターネット上でサプライチェーン関係者からの意見を募り 計 58 件の意見が寄せられた その中には加盟国から提出された意見も含まれている これらに文献調査及び業界団体 サプライチェーン関連業者 欧州議会農業総局 理事会からのヒアリングを踏まえた上でレポートはまとめられた ( タスクフォースメンバーは本項末尾参照 ) 3 レポートの構成 提言の要点及びその背景 このレポートは サプライチェーンにおける生産者の立場を強化すべきとの主張を要点としている (this report focusese on strengthening farmers position through the entire chain, レポート 11 頁 ) レポートの三部構成となっており 主要部である第二部では 以下に記す 7 つの領域それぞれにおいて なぜ生産者の立場強化が必要かを現状の考察により示した上で 強化をするにあたっての行動を欧州委員会に提言するという構成を採用している 7 つの領域における提言に至る前段の第一部 ( 導入部分 ) では 市場機能の活用を志向する CAP が生産者に与える影響を概説している 公的市場介入や民間在庫補助といった措置の削減により 政策による支援は危機的状況における最低限のセーフティネットのみに縮小する一方 消費者は農産品 農業生産の安全性 持続性に関心を持つようになり 市場経済の仕組みだけでは生産者に対し農業を続ける十分なインセンティブが発生しないとしている これらに加え EU 農業がグローバル経済に開かれたものとなるにつれ 大きな価格変動や価格下方圧力が発生するようになり 生産者の所得にマイナスの影響が与えらていると指摘する さらに 生産者を挟むサプライチェーンの上流 ( 肥料や種の生産 販売業者 ) 下流 ( 加工及び小売業者 ) の双方で業界の集中化が進む中で 生産者はコントロール外の要因 ( 天候や疫病 ) により生産数量 品質は柔軟に変えることができないために 一次生産者の交渉力低下が引き起こされるとしている こうした背景は 7 つの領域各論においても繰り返し紹介されるが このような背景を考慮した上でサプライチェーンにおける生産者の立場を議論することが重要であるとレポートは指摘している なお 世界経済の危機による農村開発に利用可能な EU 内の財源が縮小している点にも触れつつ レポートの提言のほとんどは大きな予算措置を必要とするものではないとしている 170 Hogan names chair of Agri Markets Task Force, Agra Europe, December レポートは欧州委員会 HP から入手可能 114

120 レポートの構成 要約 第一部 : 導入 1. タスクフォースの立ち上げ経緯及び役割 2. レポート作成手法 3. 背景 第二部 : フードサプライチェーンに関する政策提言 1. 市場の透明性 2. リスク管理 3. 先物取引及びその他派生的取引 4. 農産品市場における取引方法 5. 契約の使用 6. CAP と競争法 7. 金融へのアクセス 第三部 :2020 年以降の CAP に関する考察 * 第三部は生産者の交渉力は特化して論じたものではなく 一般的な CAP に対する考察となっているため本項では詳しく取り上げない (2) タスクフォースレポートの内容 上記の通りレポートは大きく三つのパートから成り 第一部は全体の導入 第二部が中核となる部分で下記 7 つの領域において生産者の立場を論じている 第三部では 2020 年以降の CAP に関する考察が行われている 本項では第二部における 7 つのテーマの議論を紹介する 1 Market Transparency( 市場の透明性 ) 2 Risk Management( リスク管理 ) 3 Futures and Other Delivetive Instruments( 先物取引及びその他派生的取引 ) 4 Trading Practices in Agricultural Marketns( 農産品マーケットにおける取引方法 ) 5 Use of Contracts ( Contractualisation )( 契約の使用 ) 6 The CAP and Competiton Law(CAP と競争法 ) 7 Access to Finance( 金融へのアクセス ) レポートでは 上記 7 つの領域それぞれで 導入 現状の概説 現状の評価 そして 欧州委員会への提言 を示すという共通のフォーマットで記述されている 導入や問題点 問題点の評価の記述に比べ 欧州委員会への提言は箇条書きでごく簡潔に記述されていることから 具体的 現実的な政策提言を行うよりも 生産者がサプライチェーンの中で置かれている境遇を明らかにし公表することにレポートの主眼が置かれているものと推測される 1 Market Transparency( 市場の透明性 ) A) 導入 市場の透明性は 全ての市場参加者が価格 天候 生産 取引 消費 在庫など市場に関する情報を入手できる状態を指し 生産リソースの効率的な分配を可能にする また生産者の立場に関して言えば 市場の見通しが良くなることで 生産調整及びリスク対策を可能にするものである 特に価格の透明性は生産者の売買契約における交渉の立場を強化する しかしながら 現実の市場はこのような理想的環境になく 比較的理想に近い場合もあれば遠い場合もある 115

121 B) 現状の概説と評価 市場での売買に関する意思決定を行うには 1 価格 そして 2 需給 ( 生産 在庫 加工業者のキャパシティなど ) の両面における情報が必要であるが 現状では需給に関する情報の正確性 比較可能性 速報性に問題がある 生産者はサプライチェーンの下流 ( 最終消費者に近い ) の取引に関して限定的な価格情報しか持ち合わせていないが 一次生産者価格の透明性は高いことから 大規模な下流業者と零細な生産者との間で情報の非対称性が存在することとなる 農産品市場が上手く機能するには 最終消費者 買い手 売り手の間で十分な情報の流れが確保される必要がある 生産者のビジネスにとって必要な情報を提供する上で 欧州委員会が情報収集 集計 周知の面で果たす役割は今後も大きい 情報の標準化 信頼性 速報性 そして容易なアクセスは改善すべきポイントとして優先度が高く 費用対効果も高いだろう また加盟国と EU との間の情報連携 統合も必要となる ( 品目の定義の一貫性など ) C) 提言 食肉 果物 野菜 及び酪農セクターでの価格報告の義務化 ( 義務の内容につきレポートでは 具体的な記述はないものの レポートは米国における食肉加工業者の政府に対する畜産物取引 価格の報告義務を引き合いに出しており 同様の制度を想定しているものと推測される ) 主要食品に関し EU レベル 加盟国レベルでの フードユーロ の導入及び公表 ( フードユ ーロは 消費者が食品に支払った額と生産者が創造した付加価値額 (= 生産者が手にする額 ) の関連を示す指標として紹介されている ) 市場情報の標準化を通じた情報の比較可能性の向上 加盟国間の市場情報の交換を促すためのプラットフォームの創設 加盟国によるデータ収集手法の現代化 ( アップデート ) インターネットにより容易にアクセス可能で利用者が使いやすい市場情報提供の継続 原材料価格に関する情報を既存の市場情報システムに統合できるかの検討 生産者がより多くのビジネスに関連情報を利用できるようになるための適切な支援 2 Risk Management( リスク管理 ) A) 導入 農業分野におけるリスク管理とは 生産者がビジネスリスクを緩和するために用いることができる手段全般を指す幅広い概念であり 民間セクター 公的セクターの両方がそのリスク管理手段の提供者となりうる リスクは大きく二つに分類でき 一つは環境 天候要因から影響を受ける生産 ( 収量 品質 ) に関するリスクで もう一つは価格に関するリスクである 価格は農産品以外のコモディティ市場 ( 原油やガス 鉱物など ) や金融市場 為替レートといったマクロ経済要因から影響を受ける B) 現状の概説とその評価 価格リスク 生産リスクは生産者の収入だけでなく 農業の持続可能性や競争力強化のための投資計画にも影響を与えるため 効果的なリスク管理は必要不可欠である 現在 多くの加盟国はそのリスク管理施策において リスクが現実のものとなった後の事後的且つ急場しのぎの補償支払いに注力している EU の施策としては 2008 年の CAP ヘルスチェックにおいて 果物 野菜 ワイン分野で保険料補助や相互基金への補助金を拠出する可能性を初めて示した また 加盟国は直接 116

122 支払の予算から保険料補助をすることも可能であった しかしながら EU がリスク管理施策を包括的な政策の中に取り込み 農村振興政策の中に位置づけたのは 2013 年 CAP 改革においてであった 現在の農村振興政策における リスク管理ツールキット は下記の三つの要素で構成される 悪天候や疫病などによる経済的損失に対する保険の 保険料支援 経済的損失を補てんするための 相互基金への助成 相互基金への助成を通じた収入減少時の 所得安定化策 (Income Stabilistion Tool) 現時点では EU 全体での協調のとれたリスク管理施策は導入されていない また EU のリスク管理ツールキットは加盟国には浸透しておらず CAP 予算の 0.5% 程度が使われているのみである 加盟国によって農業に関するリスクの特性が違うことが原因の一つとして推測される リスク管理は 1 生産者と生産者団体及び仲介業者 2 市場における保険会社や再保険会社などのプレイヤー そして 3 政策決定者の三者による関与を必要とする しかし 事前に支払わなければならない保険料や事後的な公的損失補てんの存在 リスクが現実のものとなった後に保険金を受け取るまでに要する時間などが 個別の生産者がリスク管理の導入に前向きでないことの原因として挙げられる また複数の生産者が集まって相互基金を作るといった取り組みに対する積極さには文化的 地域的影響により大きくばらつきがある EU の生産者が農業を行う環境がグローバル経済に対しより開かれた環境となったことや 気候変動に伴う天候リスクの高まりを背景に 生産者が積極的にリスク管理を取り入れる必要性については多くの関与者が賛成する しかし 実際に生産者がリスク管理を取り入れることには複数の障壁がある 相互基金については ( 加盟国による法的措置がない限り ) 協同組合など生産者による団体を通じてしか設立できず 資金を万一の備えとして維持するには生産者間の強い連帯が必要となる 現時点では加盟国によるリスク管理施策は積極的には行われておらず ほとんどが生産者団体によるものである こうした取り組みは それぞれのセクターが直面するリスクに応じることができ 他のセクターとの調整を要しないという利点があるものの 加盟国政府の公的支援を受けずに運営されていることから生産者に対する負担は大きくなりがちであり それが参加率が余り高くないことの原因ともなっている C) 提言 EU の生産者に対するアドバイザリーサービスに リスク管理に関する項目を導入し 教育及 び知識の伝達を実施 (CAP 第 2 の柱である ) 農村振興プログラムにおいて 生産者のリスク管理を促すアクション の必須化を検討 加盟国やその他当事者がリスク管理に関する情報を交換するためのプラットフォームの立ち 上げ リスク実現時に 損失額や補てん額を算出するための計算モデルと計算に用いる指標の導入の 検討 農作物保険支払の基準となる損失額の最少額を再検討 EU 支援による再保険スキームの検討 117

123 EU 及び加盟国レベルにおいて 生産量のばらつきや疫病の発生などリスク関連情報をモニタ リング 評価できるシステムへの投資 加盟国の既存の取り組みの協調性を高めるための情報交換の推進 3 Futures and other derivative Instruments ( 先物取引及びその他派生取引 ) A) 導入 先物取引市場は 将来における商品の売買を約束し その価格を現時点で決める取引のための市場である 先物取引は 相対取引である先渡取引から派生した B) 現状の概説とその評価 先物取引市場は 市場志向型の農業政策と親和性が高い可能性がある 伝統的な市場政策が使われなくなっていることからも この可能性の重要性は増している 先物取引市場の参加者は生産者や加工業者などリスク回避者である この生産者と加工業者は 取引を行いたいタイミングやその取引量などで一致することはないため リスクをとる投資家の存在が必要となる 農産品の価格が大きく変動する国々では 生産者は長く先物取引を利用してきた 欧州では穀物 油脂 加工用のじゃがいも 砂糖などで先物取引が広く使われてきた 一方粉乳 バター 豚肉などの先物市場は 6 年程前に導入されたばかりであり 初期ステージにある 上手く機能する先物市場を発展させるには時間が必要である 一般的に取引量は徐々にしか増えず また市場が成立しないコモディティもある 先物取引の成立には市場関与者の努力や ( 先物取引を受け入れるための ) 文化的な変容などが必要となる 現物市場における価格情報の不足 先物市場に対する認知の低さ 知識の欠如 取引対象となる商品の不十分な規格化 標準化は先物市場の発展を妨げる要因となり得る 先物取引は価格変動性が高まっている時には生産者にとって重要なリスク管理手法となる 但し 先物は短期的な価格変動には有効であっても 長期間持続する価格の低迷に対する効果は薄い C) 提言 農村振興プログラムの予算を生産者 生産者団体に対する先物取引の実践的トレーニングに使 うよう推奨 先物取引に関する適切な情報を周知するためのキャンペーンの展開 ( 先物取引は投機家を利す る難解な金融手法だとする単純化されたイメージに対抗するため ) 過剰な金融規制が先物市場に与えるリスクに関するアドバイスを提供 ( 先物市場は投機家や投 資家 金融機関なしには成立しないため 過剰な規制は先物市場の成長阻害要因となりうる ) 新たなニーズに応える先物市場を設計するため 加盟国の資金拠出を推奨する 加盟国内に保証基金の設立を促し 証拠金の拠出が難しい生産者の参加を可能にする それぞれの商品の指標価格の速報性のある周知を可能にするための価格モニタリングシステ ムの導入 主要な商品に関する規格の標準化 及びその仕様の世界標準化 118

124 4 Trading Practices in Agricultural Marketns( 農産品市場における取引方法 ) A) 導入 不公平な取引方法 (Unfair Trading Practices 以降 UTPs) とは 誠実で公正な取引の原則から著しく逸脱する方法と定義することができ 具体的には過度の支払遅延 ビジネスリスクの不公平な移転 一方的もしくは過去に遡及しての契約変更 及び不公平な契約終了を挙げることが出来る 欧州委員会が 2016 年 1 月に発表したレポートでは 規制などにより対応すべき UTPs を 4 つに分類して説明している 契約当事者の一方が 自身で負うべきコスト及び事業上のリスクを他方に不公平にもしくは過度に移転させてはならない 契約当事者の一方は 提供されるサービスと関係のない便宜を他方に対し求めてはならない 契約において公平な条件で認められていない限り 当事者の一方が一方的にもしくは過去に遡って契約を変更してはならない 不公平な契約関係の終了 及びその強要があってはならない UTPs はサプライチェーンのどの段階でも起きうるものであり その影響はサプライチェーンの他の部分にも波及するが 生産者に対して顕著に影響を及ぼすものである 中小規模の事業者は 生産者 加工者いずれの場合であっても影響を受けやすい弱い立場にある B) 現状の概説と評価 フードサプライチェーンにおいては購買力の不均衡が生じている 食品業界におけるサプライチェーンは他のセクターとは異なる特徴を持っており 例えば 多くの食品セクターにおいて 1 つか 2 つの大きな加工業者が市場において強い影響力を持っており また最終消費者につながるサプライチェーンの最下流においても大きな小売チェーンが存在している これに対し 生産者及び一次加工者は分散して存在している 納入条件に関しては 穀物など貯蔵可能な産品の場合は品質や価格について折り合いがつかない場合は他の商機を探すこともできるが 貯蔵の効かない生乳や果物 野菜の場合は 品質 価格について折り合いがつかない場合も 買い手の示す条件で納入する以外の選択肢を見つけることは難しい 書面での契約書が必ず存在するわけではなく 存在したとしても一般的な条件を定め 詳細については解釈の余地を残している場合が多い 中小事業者にとって特に有害な UTPs は遅い支払期限と 過去に遡及してのクレームである EU 立法で支払期限について規定はあるが 必ずしも全てのセクターに有効であるわけではない つまり 納入から最終消費までの期限が短い生鮮食品などの分野では EU 立法が定めているような比較的長い支払期限は適切ではない UTPs はサプライチェーンにおける中小生産者及び加工業者の成長を妨げている 20 の加盟国が既に国内で UTPs に対する法的措置を導入しており 多少の成果は見られるものの UPTs の解決には至っていない EU 全体のレベルで満足できる UTPs に対する解決策を導入するのは不可能であると思われるが 最大公約数的な共通のフレームワーク 及び政策協調のためのベースラインを示すことはできるだろう その場合には 既存の単一 CMO 規則 168 条の規定を前提に設計するのが有効であると考えられる 不適切な取引に対しては 制裁を与える権限も重要である どの程度の罰金が適切か定めるのは難しいが 不適切な取引方法を用いることによる便益を上回るレベルとする必要があるだろう 119

125 D) 提言 EU における枠組み立法の導入 及び加盟国での UTPs 禁止に関するベースラインを CMO で設 計 ベースラインには下記を含む 30 日を超える支払期限の禁止 一方的な または過去に遡及しての契約変更( 数量 品質基準及び価格に関する ) の禁止 広告 マーケティング費用負担の禁止 廃棄品及び売れ残り関する苦情の禁止 生鮮品の直前の発注取り消しの禁止 契約受注のための事前支払要求の禁止 UTPs 関連ルールの確実な履行を確保 加盟国の決定を強制執行できる独立した当局を設置 ルールが遵守されない場合には制裁を科すルールの執行権限当局の情報交換プラットフォームの設立複数国に跨る事例を扱うための準備 5 Use of Contracts ( Contractualisation )( 契約の使用 ) A) 導入 Contractualisation( 契約化 ) という用語は一般の英語で使われることは滅多にないが 生産者からその顧客への販売を契約で規定することを指し示す用語として使われることがある セクターによって契約の形態は異なり 文書であることもあれば口頭であることもあり 柔軟性を残す内容のこともあれば 厳密に細部を規定する契約もある 生産者とその顧客の間の契約形態は多岐にわたり 現物市場における取引契約もあれば サプライチェーンが垂直統合されている場合もある 垂直統合が進んでいる場合には 一つの事業者が生産から加工までのビジネスリスクを一手に引き受けるため 契約は不要となることもある 垂直統合に近いがその統合程度が完全でないものとして契約生産があり この場合は買い手が指定する品質及び納入条件に従って生産が行われる 協同組合は特殊なケースであり その場合生産者が協同組合の所有者でもある 協同組合と生産者の納入条件は協同組合の性質などにより異なる 個別の一次生産者がその顧客と個別に結ぶ契約と 生産者が共同でサプライチェーン下流の取引相手と結ぶ契約の間にも性質の違いがある 生産者団体 及び生産者団体連盟などによる基本契約は サプライチェーン下流の取引相手との交渉力のバランスを取りために有効である可能性がある このような基本契約の詳細度はケースによって異なり 個別の契約が記載すべき情報をカバーした詳細なものもあれば 取引価格帯などの基本的な要素のみを定めたものもある B) 現状の概説及びその評価 長期にわたる契約は生産者のキャッシュフロー確保及びリスク管理に役立つものである そして 契約化は生産者だけでなく 契約相手及び消費者をも利するものであり 交渉力の弱い農業生産者が望んだ場合で 契約相手が中小事業者に該当しない場合であれば EU 立法により書面での契約を義務化するべきだと考えられる 標準的な契約条項 ( 雛形 ) の設定及び周知が 交渉力が一般的に弱いとされる生産者の立場強化につながると考えられる 農業政策は サプライチェーン上にある事業者の相互依存性の理解を促進するものでなければならない 生産者が搾取され価格競争に陥っている場合には 最終的には消費者が享受するサービスの品質が低下することとなる 契約化は 契約主体の双方を利する形でサプライチェーン上の関係構築をするものである 但し 契約化のみによって交渉力の不均衡が是正できるわけでないことに 120

126 も留意が必要である C) 提言 農業生産者が望んだ場合で 契約相手が中小事業者に該当しない場合であれば 書面での契約 を義務化 契約化に関する好事例 ( ベストプラクティス ) の特定 促進及び周知 ベストプラクティスを 参考に 契約化に対し前向きに取り組むよう関与者に推奨 生産者 生産者団体及びそれらの顧客が個別の契約において使える標準契約書面の設定 6 The CAP and Competiton Law(CAP と競争法 ) A) 導入 生産者は 生産者同士で協力してビジネスにおける共通目的を追求することができる これは生産計画から販売にいたるまで農業のプロセス全面に当てはまることであり ある生産者単独では効率的に達成できない もしくは全く成し得ない目的がある場合に 生産者が協力して行動するインセンティブが生まれる こうした協力は一般的には協同組合といった形をとることが多く 協同組合は加工業者や小売業者を取り込んで垂直的な協力関係に発展することもある B) 現状の概説とその評価 CAP は発足当初から 分散して存在する生産者の対策を一つの目的としてきた 欧州においては大部分の食製品が 100 強の買い入れ業者を通じて提供されるのとは対照的に 2012 年において 300 万の生産者が一次産品の 75% を提供した CAP は生産者団体及び生産者団体連盟を通じた共通行動を促している 団体はサプライチェーンで発生する付加価値のうち生産者の取り分増加に貢献し また肥料や種子といった資材の入手を容易にするといったメリットがある しかし 本来なら競合しうる生産者同士の協同組合は EU 及び加盟国における競争法との適合性について疑問を生じさせる そのような協同組合は競争の制限につながりうるため 協力から生じるメリットが消費者に届く場合のみの例外的扱いとして認められているものである EU 法はカルテル禁止の規則の中に 農業分野の協同組合を例外扱いする明示的規定を有していない 現在農業分野において通用している例外措置は これまでの歴史の中で場当たり的に許容されてきた措置をつなぎ合わせたようなものであり 生産者がどのような場合に協力行動をとって良いかという限度や制限が不明確な点に問題がある C) 提言 欧州委員会は農業生産者の協力の制限に関する混乱を終息させる措置をとるべきである 最も 分かりやすい手法は単一 CMO 規則を改定し農業分野の例外を明確にすることである 生産者団体及び生産者団体連盟を EU 競争法のカルテル禁止の例外とし 生産者団体等が共同 で生産 販売を行えるようにする EU の酪農業界が置かれている環境を鑑み 生乳販売に関する競争法の例外扱いを継続し 同 様の扱いを他の農業セクターにも水平展開する 単一 CMO 規則における危機的状況におけるカルテルに関する条項を維持する 121

127 単一 CMO 規則 209 条の改定し 例外が認められる状況を明確且つ利用可能なものとし 生産 者が事前に適法であることを確認できるようにする 7 Access to Finance( 金融へのアクセス ) A) 導入 農業セクターにおける金融サービスの利用可能性は EU の政策 とくに金融的手段 (Financial Instruments: FIs) への支援によって高めることができる ここでいう金融的手段 (FIs) とは EU 予算によって加盟国と共同で拠出されている金融支援策のことであり 具体的には株式投資 融資 保証供与 リスク分担の仕組みなどを指す EU レベルにおける金融措置に関するルールは横断的規則 ( 規則 1306/2013) によって定められており 欧州構造投資基金に関する部分は共通規定規則 ( 規則 1303/2013) で定められている その他のルールは例えば EAFRD などそれぞれの財源に関する規則で定められている 172 EU においては 金融措置は EU レベルもしくは加盟国との共同管理で実行することができる 欧州投資銀行及び欧州投資基金は近年もっとも力のある金融プレイヤーとなった FI の主要な目的は 必要な投資のために資金手当が出来ない人々に金融サービスを提供することである つまり 金融措置は市場の失敗により銀行や民間プレイヤーが資金を出したがらないセクターに対応するものである 金融措置は一般的に 他社からの投資を呼び寄せ 利用可能な資金の総量が増加するように設計されている B) 現状の概説及びその評価 農業セクターは金融業界ではリスクの高い分野だとされ続けている これは事業者の規模が小さいこと 経営者が概して高齢であること 与信履歴の積み重ねがないこと 会計報告が不十分であることなどが背景として挙げられる またバーゼル改革により金融機関に必要とされる最低限の自己資金に関する規制が厳しくなりつつあり これが金融機関にリスクを取りにくくさせているという側面もある 金融措置については 2007 年から資金需要は微増している 一方で EU の努力にもかかわらず経済 金融危機により農業分野に向けられる予算は EU の多くの国で減少している その問題は現在も続いており 経済は回復しつつあるものの予算制約はいまだに厳しい状況である EU では農業分野に特化した金融措置は存在しておらず 農業特有のニーズに沿って設計されたスキームはない 欧州の農業法人は現在構造改革の最中にあり 生産者は新しい生産手法や社会全体からの要請 環境保護への適応を求められている これにより生産を止めてしまった事業者もある こうした構造改革には資本財に対する投資のため金融サービスが必要だが そのための選択肢が十分でない現状がある 金融措置はこの現状を解決するための手法となりうる 既に利用可能な資金と新たに民間セクターから集めた資金により 構造改革を必要としている欧州の農業に対する投資を促進することが出来る 172 農林水産省平成 26 年度海外農業 貿易事情調査分析事業 ( 欧州 ) 報告書第 IV 部 年 CAP における農村振興政策の概要及び主な変更点 (2015 年 3 月 ) によると 共通規定規則 ( 規則 1303/2013) は 各種の欧州構造 投資基金 (ESI 基金 ) に共通した規定を新たに一元化したものである 農村振興規則もその中に含まれている 正式名称は 欧州地域振興基金 欧州社会基金 結束基金 欧州農業農村振興基金 欧州海事 漁業基金にかかる共通の規定を定め また欧州農業農村振興基金 欧州社会基金 結束基金 欧州海事 漁業基金にかかる一般規定 (general provisions) を定める 2013 年 12 月 17 日の欧州議会 理事会規則 (EU) No 1303/2013 である 横断的規則 ( 規則 1306/2013) は CAP の各種施策 (CMO 直接支払い 農村振興 ) に共通した規定を一元化したものである 同様の趣旨で制定された旧 CAP 財政規則 1290/2005 を拡張したものとみることもできる 内容は CAP 財政のほか クロスコンプライアンス 農業助言制度 統制制度 罰則を含む 正式名称は 共通農業政策の財源 管理 監視と 理事会規則 (EEC)No 352/78, (EC) No 165/94, (EC) No 2799/98, (EC) No 814/2000, (EC)No 1290/2005, (EC) No 485/2008 の廃止にかかる 2013 年 12 月 17 日の欧州議会 理事会規則 (EU) No 1306/2013 である 122

128 欧州投資銀行にはより深い関与が求められる 技術革新には目覚ましいものがあり グリーン経済 バイオ経済 再生可能エネルギーといった先端分野の技術が投資の向け先として役割を果たすだろう C) 提言 CAP 予算による支援を通じ 欧州投資銀行が農業セクターに対し資金を向けるよう促す特に 地銀へのリスク保証により 地銀による生産者への融資を可能にする各加盟国の EIB との接点 関係構築の推奨金融措置が CAP の必要不可欠な政策要素となるまで改善を続ける 委員会が管理する金融措置の検討 ( 加盟国の管理負担を軽減するため ) 新規市場開拓のリスクを低減するため 欧州投資銀行による輸出補償スキームの設立を検討 (3) CAP2020 以降 この章は レポート第二部で紹介された 7 つのテーマに関するサプライチェーン関連の提言とは独立し CAP の今後に関する検討を述べている この章では CAP の歴史を振り返り CAP を 2020 年以降も継続すべき理由や根拠があるかを検討している 結論として 一次生産者なくして食糧は存在せず 安価な食料品を求める消費者が生産者を追い詰めつつあることを紹介し CAP は将来の農業セクター 延いては EU の世界におけるポジションの向上のために効率的なソリューションであるとしている (4) レポート発表後の反応 173 レポートは 2016 年 11 月 14 日に発表され 15 日には農相理事会でレポートの提案が議論された 現時点でタスクフォースを主導したホーガン委員は報告書に基づいた EU 立法を提案するとは明言していないものの 生産者が不公平を蒙っているため対策の必要性はあると繰り返し述べている フードサプライチェーンにおいて生産者の立場を強化する法案は 生産者団体や欧州議会が長く求めてきたものであるが 流通業界及びいくつかの加盟国は反対の立場を示している EU 加盟国のほとんどは国独自の規制や ( 生産者団体 流通団体などによる ) 自主的なルールの設定により第一次生産者をサプライチェーンの中で保護しているが EU 全体として不公正な取引方法が規制されるべきかについては加盟国間で意見が分かれている イタリア アイルランド リトアニア ルーマニア スペイン ポーランド スロベニアは EU 全体での不公平な取引方法の規制を支持している一方 ドイツ 英国 フィンランド デンマーク オランダは自主的な取り組み及び加盟国レベルでの措置を望ましいとしている スウェーデンは透明性向上の必要性は支持しつつも EU 立法と加盟国における措置との不整合に懸念を示している ベルギーの Borsus 農相は市場安定化の措置は不可欠だとの見方を示し 市場への適応力向上及び生産者の立場強化に取り組むべきだとしている イタリアは EU 全体としての規制を支持し 生産者保護のため生産者とサプライヤーとの契約には生産コストと連動する価格指標を取り入れるべきだとしている デンマーク及びオランダは EU 全体での規制にもっとも強い反対を表明しており 自主的な取り組みを支持している 英国も国内の規制で生産者は不公平な取引から十分保護されているとして自主的な取り組みを支持している 加盟国の反応が分かれる一方 欧州議会は EU 立法による不公平な取引方法対策を支持しており 173 Farm Council: Governments divided on EU UTP legislation, Agra Europe, November

129 2016 年 6 月には非立法的決議を採択し 生産者所得の適正化等のために欧州委員会に不公平な取引方法対策を求めている 図表 52 参考 : タスクフォースメンバー 名前 所属等 出身国 Cees P. VEERMAN ( 議長 ) ティルブルフ大学 ワーゲニンゲン大学教授 ( 農村開発 ) オランダ Andrzej BABUCHOWSKI 元ポーランド農業 農村開発省幹部 ポーランド Jérôme BEDIER カルフールグループ副 CEO フランス Gianpiero イタリア協同組合連盟酪農セクター担当コーディネ CALZOLARI ーター イタリア David DOBBIN United Dairy Farmers グループ CEO 英国 Louise FRESCO ワーゲニンゲン大学総長 オランダ Helfried GIESEN Westfleisch 社 ( 食肉加工企業 ) 元 CEO ドイツ Torbjörn IWARSON 消費財マーケットアドバイザー スウェーデン Aniko JUHASZ 農業経済研究所 ( 在ブタペスト ) 所長 ハンガリー Anne Laure PAUMIER 欧州農業協同組合委員会メンバー穀物専門グループ フランス Igor SARMIR スロバキア農業 食品協議会 (NGO) 商取引専門家 (2016 スロバキア Esther VALVERDE CABRERO 年 9 月に死去 ) スペイン農業 食品 環境省フードサプライチェーン担当副責任者 スペイン 124

130 3.6. 有機農業制度改革 現在 EUでは 2007 年に採択された有機農業規則 174 (2007 年有機農業規則 適用は 2009 年 1 月 1 日より ) の改革に関する検討が進められている 2014 年 3 月 25 日 欧州委員会はこの有機農業規則の改革案を提示し 農相理事会は 2015 年 6 月に 欧州議会農業委員会は同年 10 月に共通の立場を採択し 11 月には三機関による協議が開始されたが 2017 年 2 月現在三者合意には至っていない 本章では 2007 年有機農業規則の改正が提案された背景及び提案の概要を示し 次に三者合意に至っていない改革案の争点を示す また 第三国からの有機農産物輸入ルールについては 本邦にとっての重要度の高さを鑑み個別に項目を設けた (1) 制度改革の背景 1 現行規則制定の経緯 有機農業に関して EU が最初に法律を定めたのは 1991 年である 175 有機農業の基準と管理措置に関する理事会規則 (EEC)No 2092/91 が 91 年に制定 93 年に施行され これによって EU 域内における有機農法と有機農産物の認証について規定するようになった 95 年には 有機表示と種子に関する規定 ( 欧州委員会規則 No 1202/95) が 99 年には理事会規則 No 2092/91 を補完するかたちで 畜産に関する規定 ( 理事会規則 No 1804/99) が導入された 年に畜産物 水産物の基準 さらに遺伝子組み換え作物不使用の規定なども加えた包括的な改正法 (EC 規則 834/2007) が定められ 現在はこれが基本となっている 177 なお 有機食品に関連する法令としては EC 規則 834/2007 の他に下記を挙げることができる 178 有機生産および有機製品の表示に関する規則 834/2007 に関し 有機生産 表示およびコン トロールについての施行規則を制定する 2008 年 9 月 5 日付欧州委員会規則 889/2008(2008 年 9 月 18 日付官報 L250 掲載 ) 規則 834/2007 に関し 第三国からの有機製品の輸入についての施行規則を制定する 2008 年 12 月 8 日付欧州委員会規則 1235/2008(2008 年 12 月 12 日付官報 L334 掲載 ) 理事会規則 834/2007 は 近年の有機製品の増加とその需要拡大を背景に 有機生産に関する目的やルールをより明確に定義し これらを透明性の高いものにするとともに域内共通の認識を固めるための枠組みを定めている 欧州委員会規則 889/2008 は その実施細則を定めるものである 欧州委員会規則 1235/2008(2009 年 1 月 1 日より適用 ) は 第三国から輸入される有機製品も域内産品と同様に規則 834/2007 の要件を満たすことを義務付けた 年制定の規則 2092/91 号は 有機生産に関するルール 有機ラベルの表示に要する要件 そして有機製品輸入に関するルールを定めることで 不正有機ラベル表示から消費者及び有機生産者 174 規則 2092/91 を廃止し 有機生産および有機製品の表示に関する 2007 年 6 月 28 日付理事会規則 834/2007(2007 年 7 月 20 日付官報 L189 掲載 )( 規則 967/ /2013 により改正 ) 規則名の訳出は ジェトロ EU 輸入管理その他 VI. 食品ラベル表示 添加物に関する規制 を参考にした 市田知子 EU の食と農 ヨーロッパ農業モデル は実現するのか? 国際問題 No.639(2015 年 3 月 ) 176 ジェトロ産業技術 農水産部 平成 16 年度食品産業技術高度化可能性調査英国の有機農産物生産 市場調査 (2004 年 10 月 ) 市田知子 前掲書 178 ジェトロ EU 輸入管理その他 VI. 食品ラベル表示 添加物に関する規制 同上 125

131 を保護するための基礎を築いており この規則が 2007 年有機農業規則の制定により改正され現在適用されているが その際の主な改正点として下記を挙げることができる 180 有機生産定義の詳細化畜産物に関する加盟国の独自ルールを廃止し 有機生産ルールの域内での調和性を改善加盟国の責任で期限付き例外的措置をとることが出来る可能性を導入有機生産の管理 監視と 食料の公的検査を定めたEC 規則 882/ と関連付けを実施輸入制度の変更 (EU が認証した EU 域外の登録認定機関を 有機同等性及びコンプライア ンスのチェックのために活用 ) 一点目の 有機生産定義の詳細化 については規則前文 (1) に記述があり 有機生産はこのように説明されている 有機生産とは 環境に最適な方法 高いレベルでの生物多様性保護 天然資源の保全 高い動物福祉基準の適用 および 天然物質と自然過程を用いて 特定の消費者の嗜好に合った形で生産されるそのメソッド これらすべてを組み合わせた 農業経営全般と食品生産のシステムのことである 182 このような有機生産手法の例として下記を挙げることが出来る 183 耕地の資源を効率的に利用するためさまざまな作物を交代で栽培 化学合成殺虫剤や合成肥料の使用 家畜に抗生物質を与えること 食品添加物や加工補助品 などの使用を厳しく制限 遺伝子組み換え作物の使用の全面禁止家畜の堆肥や農場でとれた飼料などの資源の活用農作地などの条件に合わせて 病気に強い作物や家畜を選ぶ家畜を屋外の自由に動き回れる場所で育て 有機飼料を与えるそれぞれの家畜の種類に合った畜産を行う 2 拡大する EU 有機農業 欧州の有機食品市場は 世界的に景気が落ち込んだ 2008 年以降も年率で平均約 7.5% の急成長を遂げており また 欧州のほぼ全ての国において有機農業が盛んになっている 欧州の有機市場が拡大してきた理由としては 近年食の安全に係わる事案が発生していることを背景に 食品の安全性 環境問題などに対する消費者意識 ( 農薬への懸念や遺伝子組み換え食品に対する抵抗感 ) が高まってきたことが挙げられる これらに加えて多様な新しい価値観 ニーズ ( 菜食主義者や食品アレルギー等をもつ消費者からのニーズ ) が発生しており それらの共通項として有機食品が求め 180 欧州委員会有機農業改革案説明覚書 (Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the council on organic production and labelling of organic products, amending Regulation (EU) No xxx/xx of the European Parliament and of the Council [Offical Controls Regulation] and repealing Council Regulation (EC) No 834/ 飼料 食品関連法ならびに動物の衛生および動物の福祉に関するルールの遵守を確実に保障するために実施される公的検査に関する 2004 年 4 月 29 日付欧州議会 理事会規則 882/2004 規則名の訳出は ジェトロ EU 輸入管理その他 II. 食品 農水産品に対する規制 検疫 輸出入ライセンス詳細 に従った 駐日欧州連合代表部の公式ウェブマガジン EU MAG 欧州農業のこれから より 2007 年有機農業規則の有機生産に関する定義を紹介した部分を引用 同上 126

132 られていることが大きな要因である 184 実際のデータを見てみると 2014 年末時点で EU 域内においては 26 万の有機生産者が 1,030 万ヘクタールの農地 ( 農地面積の 5.7% にあたる ) で有機農業が行っており 有機農業の農地面積は 1999 年比で倍となっている 185 IFOAM EU グループの資料によると 2014 年時点での把握されている有機農業市場の成長は下記の通りである EU 域内欧州全体 図表 53 近年の欧州における有機農業に関するデータ 需要 ( 消費 ) の側面 供給 ( 生産 ) の側面 小売売上高 ( 単年成長率 ) 一人あたり消費額 生産者数 (10 年間成長率 ) 加工業者数 ( 単年成長率 ) 輸入業者数 ( 単年成長率 ) 有機農地面積単年成長率 240 億ユーロ約 26 万約 5 万約 1, ユーロ (7.4%) (57%) (19%) (18.6%) 1.1% 262 億ユーロ約 32 万約 5 万 1,000 約 1, ユーロ (7.6%) (81%) (17%) (16%) 2.3% 出所 :IFOAM EU Gropu Organic in Europe Prospects and Developments in EU 域内の有機製品小売売上高は約 240 億ユーロであり 単一市場としては米国の 271 億ユーロについで第二位の規模である 市場規模は単年では 7.4% の成長率であるが 過去 10 年で見ると EU の有機市場は 2 倍以上となった EU 域内の一人あたり有機製品への支出額も過去 10 年間で見るとほぼ倍増である 有機生産者について過去 10 年で見ると 57%( ヨーロッパ全体では 81%) の増加である 有機農地面積の成長率は減速傾向にあり 1.1% であるが 2005 年比では 60% の増加である 図表 54 ヨーロッパにおける有機小売市場の推移 (2005~2014) 出所 :IFOAM EU Gropu Organic in Europe Prospects and Developments in 2016 より図表 1 を転載 184 ジェトロロンドン事務所 欧州におけるオーガニック食品市場の動向 出典資料中では Organic に対して 有機 の代わりに オーガニック の訳語が使われているが 一貫性のため 有機 に編集した FIBL & IFOAM Organics International The World of Organic Aguriculture Statistics &Emerging Trend 2016 及び EU 委員会有機農業規則案説明覚書 127

133 図表 55 ヨーロッパにおける有機農場面積の推移 (1985~2014) 出所 :IFOAM EU Gropu Organic in Europe Prospects and Developments in 2016 より図表 15 を転載 3 有機農業改革のきっかけ 有機農業市場が需給両面で拡大を続ける一方で 2007 年有機農業規則が不十分になりつつあることへの懸念や 管理強化の必要性を指摘する向きが出始めた 欧州委員会のダチアン チオロシュ農業担当委員 (2014 年 3 月の有機農業改革案提出当時 ) によると 改革の主な狙いは 急速な成長により多くの事業者が有機農業に関与するようになり 収益のみを追求する事業者が不正により消費者の信頼を裏切るリスクが高まっており 管理 監督の強化によりそのリスクに対応することであるという 有機製品のサプライチェーンにおいては 生産者よりも加工業者や流通業者のほうが不正を行う誘因が強いとも述べている またチオロシュ委員によると 有機農業規則の改革案は 例外措置の多さへの対応 域外国に対する有機同等性認証の仕組みの明確化 及び小規模事業者の有機農業への移行利便化などの狙いも含まれているという 186 こうした見解に加え 2012 年 6 月に会計監査院 (the European Court of Auditors) が発行したレポートで 有機農業規則は例外が多く管理が不十分であり 消費者の信頼を損なわないためにも改善が必要だと指摘したことが改革の提案を促したとの見方もある このように 市場規模 農地面積 有機生産者数 そしてサプライチェーンに関与する加工業者や輸入業者といった様々な側面での有機農業分野の急速な成長に対し 管理の強化を通じて不正を防止し 消費者の信頼を維持するために改革案は起草された (2) 提案の概要 1 規則案の意図 2014 年 3 月 25 日 欧州委員会は有機製品の生産や表示に関する新しい規則案を発表した EU 委員会ホームページからは改革案文書の他付属文書が入手可能である 説明覚書は 需要拡大により有機市場はこの 10 年間で力強い成長を遂げ 1999 年以来世界の有機市場は 4 倍の規模となり 毎年 50 万ヘクタールの土地が有機農業に転用され EU 域内の有機農 186 Organic policy update to target fraudesters Ciolos, Agra Eurpoe March 25,

134 地面積は 2 倍となった一方で 域内生産も法的フレームワークもこの成長に追いついてこなかったとしている 具体的な問題点としては 消費者の新たな期待 懸念に対応していない有機生産に関するルール 複雑な有機表示に関するルール 管理システム及び貿易制度の欠陥 管理業務の煩雑さによる小規模農家の有機農業参入の阻害 必要のなくなった例外措置などを挙げている その上で 説明覚書は 3 つの改革案の目的を示している (1) 域内における有機生産の持続的成長の阻害要因を取り除く (2) 生産者及び事業者に公正な競争環境を保証し 域内市場の効果的に機能させる (3) 有機生産物に対する消費者の信頼を維持 向上させる 2 改革案概要 現行の有機農業規則 834/2007 号は 42 条の条文からなっており 農業委員会の改革案の 45 条と比して条文数自体は大きく変わらないものの 欧州委員会ホームページから入手できる文書で比較すると現行有機農業規則は全 23 ページ 改革案は 73 ページとなっており 語数でみても改革案は現行規則の大よそ倍程度の長さとなっている これは現行規則が他の様々な規則などに依拠しつつ規制の体系を構成しているのに対し 改革案は生産者など有機農業関係者が単一の法的根拠 ( テキスト ) に基づいて意思決定を行えるよう欧州委員会が意図したことが分量の差となって表れたものと推測できる ここでは改革案の概要を示すため 改革案の条文構成及び欧州委員会による改革案の要約を示す 欧州委員会による改革案文書には冒頭に説明覚書 (EXPLANATORY MEMORANDUM) が示されており その第 3 章 1 項が改革案の概要を説明している 187 欧州委員会による要約は 下表の 改革案内容 の通りである なお 改革案の目的 (1)~(3) への分類や小項目は改革案文書には示されておらず 本報告書作成時に行ったものである 複数の目的を意図したと思われる内容もあるが 作表の便宜上一つの項目に分類した 図表 56 欧州委員会による改革案内容 目的 小項目 改革案内容 有機生産に関連するルールの明確化 簡素化 調和性の向上により 管理 監督の質を高める 2007 年有機農業規則で義務付けられている全ての有機事業者に対 する毎年の検査を廃止し リスクに基づいたアプローチによる管理 ( リスクベース管理 ) を実施する 各事業者の不正のリスクに応じ (1) 域内における有機生産の持続的成長の阻害要因を取り除く 管理監督の強化 効率化 て実地検査の頻度を調整することで ルール遵守を続けている事業者の検査負担が減り公平性が保たれ 不正のリスクが高い業者を念入りに検査することで 管理に必要なリソースを効率的に利用する 管理費用として徴収される資金の透明性を向上させ 事業者の有機 認証状況に関する情報公開を強化する 有機生産者の負担軽減 小規模農家のグループ認証制度 ( グループとして有機生産者として の認証を受ける ) を導入し 管理 認証関連のコストの削減を図り つつ 第三国の事業者との公平な競争環境を提供する 187 EU 委員会有機農業規則案説明覚書 129

135 目的小項目改革案内容 管理 監督に関するルールは 関連する条項を飼料 食料に関する 公的検査関連規則に依拠 統合させ 生産者などの事業者が単一の 法的根拠を参照できるようにする トレーサビリティ向上及び不正防止のため ある事業者の製品のバ リューチェーン各段階における管理 監督は 同じ所轄当局 登録 認定機関によって行うこととする 有機農家は 有機生産に関するルールに従って経営される必要があり 有機農家への転換期間の遡及的承認は認めない ( 慣行農法から有機農法へ移行するには作物により必要な転換期間が定められており 実質的に有機農法を行っていた期間をある時点から遡及して (2) 生産者及び事業者に公正な競争環境を保証し 域内市場の効果的に機能させる 転換期間に含めることを容認しない ) 生産に関するルールの例外措置撤廃による管理強化 及びルールの 調和性向上を図る ( 危機的状況において有機生産の継続 再開が危 ぶまれるケースを除く ) 一定の条件のもと小売業者に認めていた各種義務免除を排除し 188 加盟国間の条文解釈相違をなくし 管理監督を容易にする 有機加工食品の原材料は 全て有機生産によるものとする 零細農家 海藻生産業者 水産養殖業者を除き 有機生産者 加工 者 流通業者などの事業者に環境に与える影響の改善プラン作成を 消費者の信頼の維持向上 要求する 域外と域内の競争環境の公平性と消費者の信頼を高める貿易制度を 導入する 第三国との有機同等性認証の仕組みは残すが 第三国に (3) 有機生産物に対する消費者の信頼を維持 向上させる おいて有機生産の認証を行う登録認定期機関には EU 基準への完全準拠 ( コンプライアンス ) を求める方向性へ段階的にシフトする 公平な競争環境 域内市場の適正な機能 消費者の信頼を維持するため 不正が発見された際 EU 全域共通の対処措置を示す 但し制裁 については加盟国の権限に属するものとする 不正対策 不正な製品 残留物が検出された際の対応の調和性を保つ条項を導 入する ある事業者が意図しない混入により有機製品としての販売 が出来なくなった際の損失について 加盟国は欧州委員会の許可に よりその損失を補償することができる 188 説明覚書に直接の記載はないが 規則 834/2007 の前文 (32) の条項を指していると思われる この条項では 例えば産出物を直接最終消費者に販売するだけの事業者に各種の義務を課すことは不公平である可能性を指摘し 加盟国が義務免除をすることが出来ると定めている 130

136 以上のように要約される規則案の全体構成は下記の通りである Chapter I Subject matter, scope and definitions Article 1 Subject matter Article 2 Scope Article 3 Definitions Chapter II Principles of organic production Article 4 General principles Article 5 Specific principles applicable to agricultural activities and aquaculture Article 6 Specific principles applicable to the processing of organic food and feed Chapter III Production rules Article 7 General production rules Article 8 Conversion Article 9 Prohibition of the use of GMOs Article 10 Plant production rules Article 11 Livestock production rules Article 12 Production rules for seaweed and aquaculture animals Article 13 Production rules for processed food and feed Article 14 Production rules for wine Article 15 Production rules for yeast used as food or feed Article 16 Production rules for other products Article 17 Adoption of exceptional production rules Article 18 Collection, packaging, transport and storage Article 19 Authorisation of products and substances used in organic production Article 20 Presence of non-authorised products or substances Chapter IV Labelling Article 21 Use of terms referring to organic production Article 22 Compulsory indications Article 23 Organic production logo of the European Union Chapter V Organic certification Article 24 Organic certification system Article 25 Organic certificate Article 26 Group of operators Chapter VI Trade with third countries Article 27 Export of organic products Article 28 Import of organic products Article 29 Recognition of control authorities and control bodies Article 30 Equivalence under a trade agreement Article 31 Equivalence under Regulation (EC) No 834/2007 Chapter VII General provisions SECTION 1 FREE MOVEMENT OF ORGANIC PRODUCTS Article 32 Non-prohibition and non-restriction of the marketing of organic products SECTION 2 INFORMATION AND REPORTING Article 33 Information relating to the organic sector and trade Article 34 Information relating to the competent authorities, control authorities and control bodies Article 35 Report Chapter VIII Procedural, transitional and final provisions SECTION 1 PROCEDURAL PROVISIONS Article 36 Exercise of the delegation Article 37 Committee procedure SECTION 2 REPEAL, AMENDMENTS, TRANSITIONAL AND FINAL PROVISIONS Article 38 Repeal Article 39 Transitional measures relating to conversion to organic farming Article 40 Transitional measures relating to the origin of plant reproductive material, animals for breeding purposes and young stock of aquaculture animals Article 41 Transitional measures relating to control authorities and control bodies recognised under Article 33(3) of Regulation (EC) No 834/

137 Article 42 Transitional measures relating to applications from third countries submitted under Article 33(2) of Regulation (EC) No 834/2007 Article 43 Transitional measures for stocks of organic products produced in accordance with Regulation (EC) No 834/2007 Article 44 Amendments to Regulation (EU) No [ ][on official controls] Article 45 Entry into force and application (3) 主な論点 年 12 月までの間に計 14 回の三者協議 ( 欧州委員会 農相理事会 欧州議会農業委員会 ) が持たれたが三者合意には至らず 2016 年 12 月 7 日の三者協議で 議論は 2017 年 1 月以降に持ち越されることとなった 報道資料及び本事業で行った現地調査によると 合意に至っていない論点のうち意見の乖離が大きいものは下記の 3 点である 非認可 禁止農薬の残留検出時の有機認証取り消し基準について 有機生産に使用が認められていない農薬の残留が検出された際の扱いにつき 欧州委員会は消費者寄りの厳しい提案を行っている 関連する条文は第三章 Prodution Rules( 生産に関するルール ) の第 20 条 Presence of non-authorised products or substances である 第 20 条は 3 つの項目から成っており 第 1 項では一定のレベルを超える非認可物質が検出された製品は有機表示を行ってはならないことを定めており 第 2 項では 第 1 項で言及されている一定のレベルの設定 及びそのレベルの規制を適用する際の条件は EU 委員会が delegated acts ( 欧州委員会に委任される法案 ) を採択する権限をもつことが示されている 第 3 項は 有機農家が不正物質の混入を避けるための努力を尽くしたという前提において 加盟国は有機表示の取り消しから生じた損失を補償できるとしている 欧州委員会は消費者の信頼に重きを置き生産者 事業者に対し厳しい立場を採っており 複数の残留物質が検出された際には自動的に有機製品としての認証を取り消すことを主張している この委員会の主張に対し 欧州議会及び加盟国 ( デンマーク ドイツ アイルランド オランダ オーストリア スウェーデン 英国 ポーランド フィンランド スロベニア ) は 隣接する農家が使用した農薬などの混入により罰則を受ける可能性があるのは有機生産者に対して不公平であると反論している 欧州議会は非認可物質の検出があった場合は調査を行い不正の程度を調査するべきだとし 調査の終了まで一時的に有機ラベルの使用を停止すべきだとしている 191 現行規則では残留物質が検出された際には有機製品としての表示 販売が出来ないこととなっており 一定以上の残留が認められた場合は有機製品認証の取り消しとなるが その基準については EU 全体での一貫性はなく 複数の基準値が定められている ( 一例としては イタリアにおける有機農産品 1 キログラム当たり 0.01 ミリグラム以上 =0.001%( 加工品は除く )) EU 全体の統一基準値の導入については イタリア ベルギー及び南欧諸国が支持している一方 ドイツとデンマークは反対している 加盟国間 欧州委員会 欧州議会それぞれの意見が一致していないが イタリアの農業政策関連シンクタンク及び農林政策省の有機農業担当者によると イタリアでは 2011 年に 0.001% という一律基準を設定したが その後も国内の有機面積が増えていることから 有機生産者に対して特に大きな負担ではなかったのではないかとする一方 反対派の意見が強いため EU 域内での一律基準導入は見送られるだろうとしている ( 彼らの意見では農産品のサプライチェーンの中で どの地点で禁止残留物質が使用 混入したかを特定するのは非常に難しく 調査に数か月を要することもあり 出荷前の 0.001% の検出という一律基準を設けることが効率的だという ) しかし イタリアにおける別の農業生産者団体は 基準値は導入するものの すぐには適用しない ( 基準値の妥当性を科学的に検証し数年後に施行する ) という妥協案で議論が落ち着いているとしている 189 Farm Council: Governments divided on prospects for organic deal Agra Europe, December Organic Overhaul At Crossroads as all sides reflect on next steps Agra Facts, No.93-16, December EP News: Organic reform hurdles; 017 budget deal backed; Ghana deal approved; Agra Facts, No.90-16, December

138 この基準値の設定有無及びそのレベル次第では日本を含む第三国からの輸入時にも影響を与え得る ( 厳しい基準が EU への有機製品輸出に適用され得る ) ため 今後とも注視が必要である 2 グリーンハウスでの生産ルールグリーンハウスなどの施設栽培 (protected cropping) での有機生産について 土壌による栽培のみに限って有機生産と認めるべきか 人工的基層を認めるかについて合意に至っていない 現行規則 834/2007 号には ( 有機生産は土壌栽培に限るとの記述はないものの ) 有機生産は土壌の浸食を防ぎ 土壌の肥沃性に貢献するものでなければならないとの記述があり ( 前文 12 項 ) 同様の記述は改革案の前文 (18 項他 ) からも読み取ることができる フランスとイタリアの農相はグリーンハウスでの有機生産は土壌生産 (soil-bound) のみに限定すべきで 人工基層による栽培は認めないとする一方 オランダ デンマーク スウェーデンは土以外の人工基層による有機栽培も認めるべきと主張している イタリア農林政策省の有機農業担当者によると 有機生産は農業を通じて土壌を豊かにするという考えが根付いている国 地域もある一方 北ヨーロッパの国々では有機生産を拡大するための土壌が十分でなく 土の温度が低く生産に適さないという背景が人工基層による栽培を認めるべきとの主張の背景となっている 3 有機種子の扱いに関する例外について 現行規則 改革案のいずれも 有機生産には有機製法によるインプット ( 種子含む ) を用いなければならないとしているが 現在種子業者による有機種子の生産が十分でなく 例外的に従来通りの製法による種子が有機生産向けに購買 使用されている状況である 欧州議会は例外を継続し 有機種子を登録したカタログに記載のないものでも販売を認めるよう要求しており 欧州委員会や加盟国は欧州議会の姿勢に反対である 欧州委員会の改革案は生産に関する例外措置を廃止することで種子を含む有機インプットの生産力向上につながるだろうとしている (4) 第三国からの輸入 欧州委員会規則 1235/2008(2009 年 1 月 1 日より適用 ) は 第三国から輸入される有機製品も域内産品と同様に規則 834/2007 の要件を満たすことを義務付けている 192 この要件を満たし 域外からの EU 域内へ有機製品輸入するには二つのスキームがあり いずれも EU 域内の有機生産基準との同等の基準により生産されたものであるという認証を取得する仕組みである ( 同等性認証 ) 一つは ある域外国における有機生産ルール及び管理 監督手法の体系が EU 域内基準と同等の有効性を持つと見なされる場合 その国からの特定カテゴリーの製品を有機製品として EU 域内で輸入 流通できるとするものである 現時点では日本を含む 12 か国がこのスキームを利用可能な国として認定されている 同等性認証のもう一つは 同等性を日本のようには認められていない第三国からの輸入の場合について 規則 1235/2008 の付属文書 6 で EU が認めた登録認定機関が EU 有機製品との同等性を認証し EU への有機製品としての輸入を可能とする仕組みである なお 同等性認証の他に EU 域内ルールと完全に同じ基準に生産された製品を輸入する仕組み ( コンプライアンス認証 ) の導入が 2011~12 年の導入をめどに検討されていたが 現時点では実現に至っていない 農業生産者らによるイタリアの団体 Confagriculture によると 日本や米国など既に同等性の認証を受けている第三国に対しては 改革案施行後も現行と同じ運用が継続される 改革案の影響を受 192 ジェトロ EU 輸入管理その他 VI. 食品ラベル表示 添加物に関する規制 EU 基準との同等性を認められた第三国の所轄当局や規制機関 ( 登録認定機関 ) は 第三国リスト ( 規則付属書 III) に記載される リストに記載された第三国から EU に有機製品を輸出する際には これらの登録認定機関による検査 認証を受けた上 発行された証明書を添付する 一方 リストに記載されていない第三国から有機製品として輸出するためには 改めて EU の認証を取得する必要がある 現在 第三国リストに掲載されている国は以下のとおり アルゼンチン オーストラリア コスタリカ インド イスラエル スイス ニュージーランド チュニジア ( 規則 537/2009 による ) 日本 ( 規則 471/2010 による ) カナダ ( 規則 590/2011 による ) 米国 ( 規則 126/2012 による ) 韓国 ( 規則 2015/131 による 133

139 けるのは 12 か国以外の認証を受けていない無い国であり そうした国々では引き続き独立の登録認定機関が認証を行うが 今までは各機関が独自の基準を用い それに対し EU が同等性を認める運用となっていたが 今後は EU が定めた基準への準拠を求めるようになるという ( 但し使用が認められる農薬に一部例外を認める可能性がある ) こうした厳格化の背景には 現在 EU 域外のそれぞれの登録認定機関による基準が 80 以上乱立している状態であり EU 基準に比して緩やかとみられる基準も含まれいてることが挙げられる (5) 有機生産者らの見方 有機農業関連行政の担当者などによると 有機市場は確実に拡大しているとの実感が聞かれる一方 その拡大市場に対し必ずしも全ての有機農家がアクセス出来るわけではないという声が聞かれる イタリア マルケ州の農村振興政策担当者によると 小規模農家はサプライチェーンを通じ最終消費者へ産品を届けるための販路を持っておらず しかも EU 内外の競争力のある生産者による商品が EU 域内市場を流通している環境で販売を行わなければならない 有機農産品の更なる市場拡大のためには 欧州委員会農業委員のチオロシュ氏と同様に消費者から信頼されるサプライチェーンを構築する必要があると政策担当者は指摘しており そのためには生産者である農家を団結させ一定の供給を確保した上で 生産者 ( 団体 ) 流通業者 加工業者が契約などの手法で最終消費者のもとに信頼できる農産品を届けるサプライチェーンを作り上げる必要があるとしている 一方で イタリア農業全体に共通する特徴として 農家の個人主義的傾向があり 彼らが団結するのは難しいとの課題を指摘している なお このマルケ州では農村振興政策の第 16 手法 (Cooperazione) で 有機農業者の協力を促進している 前項の 1.1. フード チェーンにおける生産者の交渉力強化に関する措置の検討状況 の内容にも関連するが フード チェーンにおいて 零細且つそれぞれ個別に農業を経営する生産者が 集約が進む加工業者や小売業者とのビジネスにおいて交渉力を持つには生産者同士の協力が一つの選択肢として考えられており マルケ州におけるこの協力促進の取組は 零細有機農家がフード チェーン下流の業者と妥当な条件で契約などの交渉を進め 彼らの農産品をマーケットに届けるための試みであると解することができる マルケ州における支援内容は 生産者団体の運営コストの州による負担や 生産者団体が CAP の農村振興プログラムにおける有機農業支援に優先的に申請できる仕組みの採用などである また有機生産者を団体で捉えるという観点では 農家の団体認証制度についても前向きに評価する声が聞かれる イタリア農林政策政省の有機農業担当官及び同国の農業政策シンクタンクによると 農家にとって有機認証はコスト面及び煩雑な手続きが障壁となっており 特に零細農家の有機農業への転換を妨げる要因となっている 農家の協力促進はフード チェーンの確立だけでなく そもそも彼らが有機生産を始め認証を取得する後押しも期待できる 134

140 3.7. 乳製品価格下落に伴う酪農家支援策 (1) EU 生乳クオータ制度概要 EU では域内の乳製品過剰及び生乳価格の低迷を防ぐことを基本的な目的として 生乳の生産調整政策である生乳クオータ制度が 1984 年に開始された ( 生乳クオータは 生乳生産割当 生乳割当と訳されることもある ) 毎年度 生乳の生産 ( 出荷 ) 可能量を各加盟国で算出 設定し そのクオータは個々の生乳生産者または生乳の買い手に配分され ( どちらに配分するかは国により異なる ) 各加盟国において 生乳生産量がクオータ量を超過した場合 生産者に超過量に応じた課徴金が発生する制度である 193 生乳クオータは 導入当初 5 年間のみの時限立法に基づく制度であったが 終了期限を更新し続けることで 2015 年 3 月末の終了まで約 30 年間にわたって継続された 年の導入以来 乳製品の過剰在庫問題の解決に寄与するとともに 域内乳価の高値維持や安定化にも関与し EU 酪農政策の基軸としての役割を長年にわたりになってきた本制度の撤廃は EU 農政の歴史の中でも大きな節目の改革であった 195 ( なおクオータ廃止は 2003 年に決定され 2009 年からは毎年クオータ量を 1% ずつ増加させるソフトランディングと呼ばれる措置が導入されている 196 ) 生乳取引価格は クオータが撤廃された 2015 年 4 月以降 増産を反映して 低迷が続いている EU が実施する公的在庫のほかにも民間事業者の保管経費の一部を補助する民間在庫補助 (PSA) の在庫量も積み上がっている 年下半期においては乳製品価格の上昇 生産者乳価の底入れといった傾向も見られるが 198 EU は生産調整にインセンティブを付与するなどクオータ廃止と方向性の異なる政策を実施中であり 今後も価格下落対策 酪農家支援策の舵取りが注目される (2) 価格動向 生産の動向など 2013 年から現在に至るまでの生産者乳価の推移は下記の通りとなっている 2013 年以降の傾向としては 2013 年末 ~2014 年初旬以降は下落基調が続いており 2015 年も価格は低迷を続け 2016 年後半に入り回復の兆しが見受けられる 2016 年 11 月時点では 100 キログラム当たり 30.5 ユーロとなっている しかしながら 2017 年 1 月に欧州酪農ボード (European Milk Board) 199 へ行ったヒアリングでは 生乳価格は十分に回復しておらず その低価格が原因となり規模の経済によるメリットを追求し市場に多くの生乳が供給されるという市場の性質による悪循環から脱していないとの認識であった 193 クオータを超過した場合には 超過量 100 キログラム当たり ユーロの課徴金が科せられる ( 独立行政法人農畜産業振興機構平成 27 年 10 月 28 日発表海外情報 亀岡公平 EU 生乳クオータ制度の廃止と対応策 30 年間続いた生産調整の終焉 農林金融 2015 年 9 月号 195 木下順子 EU の酪農政策改革と生乳生産 乳業の動向 - 生乳クオータ制度廃止 (2015 年 ) を目前に控えて- 農林水産政策研究所プロジェクト研究 主要国の農業戦略等に関する研究 平成 25 年度カントリーレポート第 2 章 196 独立行政法人農畜産業振興機構平成 27 年 3 月 31 日発表海外情報 ( 及び農林水産省平成 26 年度海外農業 貿易事情調査分析事業 ( 欧州 ) 報告書第 Ⅱ 部 EU 生乳生産割当の廃止 (2015 年 3 月末 ) 後の酪農政策 Ⅱ-2 ページ 197 独立行政法人農畜産業振興機構平成 27 年 12 月 17 日発表海外情報 独立行政法人農畜産業振興機構平成 28 年 10 月 25 日発表海外情報 欧州酪農ボードは約 10 万の酪農家を代表するロビイング団体である 135

141 図表 57 EU における生産者乳価の推移 出所 : 欧州委員会 EU Milk Market Observatory EU prices of raw milk, n.pdf 生産の推移は下記の通りとなっている 2013 年から 2015 年にかけては 前年同月生産量を上回る増産基調であったことが分かる これは 生乳クオータ制度の廃止を見越した増産の動きを反映したものと思われる 200 この傾向は 2016 年前半まで続き 後半に入ると 2015 年の生産量を下回るレベルで推移している 2015 年の EU における生乳生産量は 1 億 5,020 万トンで 2016 年は前年を 1.2% 上回る 1 億 5,200 万トンになると見込まれている 農林水産省平成 26 年度海外農業 貿易事情調査分析事業 ( 欧州 ) 報告書第 Ⅱ 部 EU 生乳生産割当の廃止 (2015 年 3 月末 ) 後の酪農政策 Ⅱ-18 ページ 201 独立行政法人農畜産業振興機構平成 28 年 12 月 21 日発表海外情報 年 12 月 28 日アクセス 136

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