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1 海洋開発産業概論第 1 版 2016 年 3 月

2 本教材は 平成 27 年度国土交通省委託事業 海洋開発技術者育成のための基盤整備業務 において作成されたものです

3 目 次 1 序論 海洋開発産業の定義 海洋開発の意義 海洋開発の必要性 ~ 世界的な流れ~ 海洋開発産業の規模 海洋開発に影響を与える要因 海洋開発における沿岸国の権利 日本における海洋開発の重要性 海洋開発産業の背景と現状 海洋資源開発 海洋石油 天然ガス開発 新たな資源開発への挑戦 海洋再生可能エネルギー開発 洋上風力発電 その他発電システム 海洋石油 天然ガス開発の実際 一般的な開発の全体工程 開発の全体工程 各段階での主なタスク プロジェクト事例 イクシス LNG プロジェクト 国内プロジェクト 海洋再生可能エネルギー開発の実際 発電システム 洋上風力発電 その他の再生可能エネルギー発電システム 開発の全体工程 工程全体の流れ 各段階の主なタスク プロジェクト事例 ~ 福島復興 浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業 ~ 概要 研究課題

4 5 安全と環境保全 過去の事故事例と安全 環境保全規制の強化 HSE (Health, Safety and Environment) HSE とは リスク評価の手法 環境影響評価 環境影響評価とは 海洋開発における環境影響評価の必要性 環境影響評価の事例 プロジェクト マネジメント プロジェクト マネジメントとは 組織マネジメント (Human Resource Management) の概要 プロジェクト計画の概要 スケジュール管理の概要 コスト管理の概要 リスク管理 (Risk Management) の概要 品質管理の概要 契約 保険 ファイナンスの基礎 契約とは 契約の種類 主な保険の種類 ファイナンスとは ( 付録 ) 世界のプロジェクト 海洋石油 天然ガス開発プロジェクト 海洋再生可能エネルギー開発プロジェクト ( 洋上風力発電 )

5 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 1 序論地球表面の約 70% は海で覆われている 古来から人類は広大な海を交通 貨物輸送 水産資源確保の場として利用してきたが 経済 社会の発展のため 海洋に豊富に存在する鉱物資源 エネルギー等の有効利用の必要性が 益々高くなってきている すなわち 海洋開発産業の重要性が高まっていると言える 海洋開発産業とは何か また どのような背景でその重要性が増しているのか 本章で概説する 1.1 海洋開発産業の定義 海洋開発産業 と一口に言っても その領域は多岐にわたる 例えば ブリタニカ国際大百科事典では 海洋開発産業 の定義は下記のように述べられている 海洋開発にたずさわる産業の総称 おもな部門としては海底油田, 海底鉱物資源, 熱水鉱床や温度差発電, 波力発電, 水産増養殖を対象とした資源エネルギー開発, 海上空港, 人工島といった海上, 海中のスペース利用や海底パイプラインの敷設などの海洋土木などがある 本書では 海洋開発産業の中でも 海洋資源 (Ocean Resources) 開発及び海洋再生可能エネルギー (Ocean Renewable Energy) 開発を対象とし その産業の全体像や開発の各工程の概要を説明し 関連する基礎知識について紹介する 図 に示すように 海洋資源開発 海洋再生可能エネルギー開発の中でもいくつかの分類に分かれるが その中でも 既に商業化されている分野と 商業化に向け研究開発の段階にある分野とがある (1) 海洋資源開発 資源 とは 産業等に利用可能な自然から採れる有用物であり 海洋資源の中には 石油 天然ガスの他 メタンハイドレート (methane hydrate) 1 海底熱水鉱床(sea-floor hydrothermal deposit) 2 などの海底鉱物資源などがある 海洋資源開発のうち 既に商業化されているのは 海洋石油 天然ガス開発である 本書では 海洋石油 天然ガス開発を中心に扱うこととするが 海洋石油 天然ガス開発と密接に関連するその他の資源開発についても 新たな開発分野として紹介する 水産資源の増養殖についても 海洋資源開発の一分野と捉えられるが 本書では扱わないこととする (2) 海洋再生可能エネルギー開発エネルギーとは ある物体が 仕事をする ( ものを動かす 温める 光らせる等 ) 力 1 メタンハイドレートとは 天然ガスの主成分であるメタンをカゴ状の水分子が取り囲んだ物質で 低温高圧の海底下や凍土下に存在する 第 3 章で詳述する 2 海底熱水鉱床とは 海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿してできたものであり 鉄 亜鉛 銅 コバルト 鉛 金 銀などが含まれている 第 3 章で詳述する -1-

6 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 を指す 再生可能エネルギーは 石油 天然ガスや石炭といった有限な資源である化石エネルギーとは異なり 自然界に常に存在するエネルギーのことである 大きな特徴として 枯渇しない どこにでも存在する 発電時( 利用時 ) に CO2 を排出しない ( 増加させない ) の三点が挙げられる 海洋再生エネルギーとは 洋上の風力 波力 潮流 海流等の海洋の自然エネルギーを指し これらのエネルギーを電気エネルギーに変換して発電を行う 本書では 海洋再生可能エネルギー開発のうち 欧米を中心に商業化されている洋上風力発電を主に扱う また 将来の事業化を見据え研究開発が進められている波力発電 潮流 海流発電等についても紹介する 海洋資源開発 海洋再生可能エネルギー開発 海洋石油 天然ガス開発 洋上風力発電 波力発電 メタンハイドレート開発 海底鉱物資源開発 潮流 海流発電 海水温度差発電 水産資源の増養殖 潮汐発電 は既に商業化されている分野は商業化に向け研究開発段階の分野 図 本書で扱う海洋開発産業の領域のイメージ 1.2 海洋開発の意義 海洋開発の必要性 ~ 世界的な流れ~ (1) 海洋資源開発世界の一次エネルギー 3 需要は これまで拡大を続けてきた その中でも 石油 天然ガスは 現在 一次エネルギー全体の過半を占める重要なエネルギー源である 石油 天然ガス需要は 今後長期的にも成長が見込まれ 国際エネルギー機関 (International Energy Agency(IEA)) の見通しによると 2035 年の世界のエネルギー需要は 2009 年の約 1.4 倍に 天然ガス需要は約 1.6 倍に増加すると予想されている また 3 一次エネルギーとは 石油 石炭のように 自然から採取されたままの物質を源としたエネルギーを指す 電気 都市ガス などは 一次エネルギーを加工した二次エネルギーと呼ぶ -2-

7 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 -3- 一次エネルギー需要に占める石油 天然ガスのシェアは 2035 年時点でも過半となる見通しである 石油 天然ガス開発は 開発コスト及び生産効率性の観点から 技術的に開発が容易な所謂 イージーオイル ガス から優先的に進められるため これまで陸上もしくは浅海の在来型油ガス田が従来の石油 天然ガス開発の中心的役割を担ってきた しかし 将来的に更なる石油 天然ガスの生産が必要となる中 今後はより難易度の高い場所での探鉱 開発 生産を進めていくことが求められる 石油 天然ガス需要の成長を支えるため 近年は シェールオイル ガス (shale oil and gas) を代表とする非在来型資源 4の生産拡大が顕著である 一方で 中長期的に拡大する石油 ガス供給を支えるために重要な役割を担う可能性がある生産手段の一つが 海洋での石油 天然ガス開発であると言える 現在の世界における生産量のうち海洋油ガス田からの生産が約 4 割とされており 今後も海洋における開発の拡大が期待される (2) 海洋再生可能エネルギー開発世界的に地球温暖化対策が強く求められる中 温室効果ガスである CO2 の削減が課題となっている 化石燃料と異なり 利用時に温室効果ガス (greenhouse gas) である CO2 を排出しない 再生可能エネルギーへの期待が高まっている このうち 風力発電に関しては 陸上に比べ強く安定した風が吹く海洋が注目されている 洋上風力発電は 欧州を中心に商業化されており 今後も世界的に更なる普及が見込まれている この他 潮汐発電が一部の国で商業化されており 波力発電 潮流 海流発電 海水温度差発電についても 実証研究段階ではあるが 今後の利用可能性に期待がもたれている 海洋開発産業の規模現状において 海洋開発産業はどのくらいの規模を有するのだろうか? 上述のように 海洋開発産業の中で 既に商業化されているのは 海洋石油 天然ガス開発と洋上風力発電の二つである これら二つを比較すると 海洋石油 天然ガス開発の方が 圧倒的に市場規模が大きいことから 以下で 海洋石油 天然ガス開発産業を例に 他の産業との比較を試みる 一般財団法人エンジニアリング協会が平成 26 年度に実施した試算によれば 探査船 洋上掘削リグなどの海洋石油 天然ガス開発に必要となる設備の年間建造費は $1080 億 ( 仮に 1 $=100 円とすると およそ 11 兆円 ) である 集計や試算の方法の違いもあるため厳密な比較はできないが これらの設備の製造業は 現在において既に造船業や民間航空機製造業と比較しても遜色ない規模を誇っている ( 表 参照 ) 4 非在来型資源とは 通常の油ガス田以外から開発される石油 天然ガスであり 固い岩石中に閉じ込められている シェールオイル シェールガス のほか 高粘度の油を含む砂岩である オイルサンド などが代表例とされる また 近年脚光を浴びている メタンハイドレート も非在来型資源と言われる これらは通常の油ガス田からの石油 天然ガス (= 在来型資源 ) に比べて開発が難しい特徴を持つ

8 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 さらに 海洋石油 天然ガス開発産業 全体を見渡すと これらの設備の製造業のほかに これらによって探査 掘削などの操業を行う市場も存在する この市場の規模は 同試算によると年間約 $1500 億 ( およそ 15 兆円 ) である このように 設備投資や操業に要する費用などをすべて足し合わせると 海洋石油 天然ガス開発の市場規模は $4000 億 ( およそ 40 兆円 ) とも試算され 巨大な市場が形成されていると言える 表 世界市場における海洋石油 天然ガス開発と他産業との規模の比較 市場規模 ( 年間 ) データの説明 海洋石油 天然ガス開発 造船業 民間航空機産業 $1080 億 $ 930 億 - ( およそ 11 兆円 ) ( およそ 9 兆円 ) 11.5 兆円 エンジニアリング協会 2014 年竣工船舶の取引 2012 年の市場規模 3 による設備建造費試算 額 2 額 1 1 出所 : エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書 2 出所 :Clarksons Research :World Shipyard Monitor, Volume 22, No.11, 出所 : 経済産業省産業技術環境局 : 我が国企業の国際競争ポジションの定量的調査 海洋石油 天然ガス開発の必要性 重要性は今後益々高まることが予想され 市場の成長が見込まれることから 海洋開発市場全体としての規模は更に大きく拡大していくものと考えられる 1.3 海洋開発に影響を与える要因資源 再生可能エネルギーの種類の別は問わず 我々は 存在する資源やエネルギーの全てを利用できるわけではない 環境上の制約や 技術的な制約等により 利用できるものは限られる また そうした制約がクリアされた場合でも 開発コストが高く 収益が得られない場合 または他の選択肢と比較して収益性に乏しい場合には 開発を断念するという判断がなされることとなる すなわち 資源 エネルギー開発において 経済性が成り立つかどうかという点は 最も重要な要素の一つであり 海洋開発についても同じことが言える 例えばシェールオイル ガスや深海での石油 天然ガス開発 再生可能エネルギー開発等の新たな分野への投資は 中長期的に必要であることは変わらないものの 陸上の油 ガス田からの産出に比べてコストがかかるため 短期的には石油価格の変動に左右される面がある 1.4 海洋開発における沿岸国の権利海洋開発においては 沿岸国にどのような権利が与えられているかという点も押えておく必要がある -4-

9 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 20 世紀に入り 貿易や遠洋漁業の拡大などによって海洋の利用が広がり 国際的な慣習法の法典化に向けた動きが見られるようになった 中でも重要な契機となったのは 1945 年トルーマン米大統領が行った トルーマン宣言 である 同宣言は 大陸棚の海底と地下の天然資源に対する管轄権や沿岸の漁業を規制する水域を一方的に主張したものであった この宣言を受け 他国も追随するかたちで一方的に沿岸海域の管轄権を主張することになったことから 国際連合は 1958 年に第一次国連海洋法会議を開催し ここで 領海と接続水域に関する条約 や 公海に関する条約 等 後の国連海洋法条約のベースとなる ジュネーブ海洋法四条約 が採択された その後 1960 年代に入り アフリカや中南米の新興国が基線 5から 200 海里 6までを領海 (territorial sea) または 排他的経済水域 (exclusive economic zone, EEZ) である と主張するようになったこと等を受け 10 年間という長い時間をかけた各国の粘り強い交渉の後 領海等の範囲について合意に至り 1982 年に国連海洋法条約 (UNCLOS: United Nations Convention on the Law of the Sea) が採択された 同条約は 海の憲法 とも呼ばれ 海域分類や権利義務関係 海洋環境の保全 紛争解決手続きなどが規定された 沿岸国では 下記の通り 領海内での主権の行使が認められている他 EEZ や大陸棚 (continental shelf) においても権利が与えられている (1) 領海 : 領海の基線からその外側 12 海里 ( 約 22km) の線までの海域を指す 沿岸国の主権は 領海の上空並びに領海の海底及びその下にも及ぶが 外国船舶は無害通航権を有する (2) EEZ: 領海の基線からその外側 200 海里 ( 約 370km) の線までの海域 ( 領海を除く ) を指す EEZ においては 以下の権利が認められている 1 天然資源の開発等に係る主権的権利 2 人工島 設備 構築物の設置及び利用に係る管轄権 3 海洋の科学的調査に係る管轄権 4 海洋環境の保護及び保全に係る管轄権 EEZ では 沿岸国は水域と海底とその下の天然資源の探査 開発に主権的権利を有している すなわち 海水中の水産資源及び海底の鉱物資源に対し権利を行使できる (3) 大陸棚 : 領海の基線からその外側 200 海里 ( 約 370km) の線までの海域 ( 領海を除く ) を基本とするが 大陸辺縁部の外縁がこれを超えて延びている場合には 延長することができる なお 大陸棚においては 以下の権利が認められている 5 基線 : 海岸の低潮線 湾口もしくは湾内等に引かれる直線 6 海里 : 長さを表す単位で 1 海里が緯度 1 分に相当する メートル換算にすると 1 海里は 1852 m である -5-

10 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 1 天然資源の開発等に係る主権的権利 2 人工島 設備 構築物の設置及び利用に係る管轄権大陸棚では 沿岸国は海底とその下の天然資源の探査, 開発に権利を有していると言える 海底の鉱物資源や海底に定着性の生物資源が対象となるが, 海水中の資源については対象外となっている 尚 大陸棚の外は 深海底 とし そこにある資源は人類共通の財産とされている 海上保安庁海洋情報部が公表している海域分類のイメージを図 に示す ( 基線 ) 海上保安庁海洋情報部ウェブサイトより図 海域分類のイメージ図 に 海上保安庁海洋情報部が公表している日本の領海等の概念図を示す 他国との境界が未確定の海域もあるが 日本が海洋開発の権利を行使できる海域は 概ね同図の通りであると考えられる 日本の領海 排他的経済水域 (EEZ) 大陸棚は世界第 6 位の広さを誇る -6-

11 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 注 ) 外国との境界が未画定の海域における地理的中間線を含め便宜上図示海上保安庁海洋情報部ウェブサイトより図 日本の領海等概念図 1.5 日本における海洋開発の重要性日本は 世界第 6 位の面積を誇る広大な領海 排他的経済水域 (EEZ) 大陸棚を有している 近年 これらの海域でメタンハイドレートや海底熱水鉱床などの鉱物資源の存在が確認されており 資源開発の期待が高まっている 他方 資源国における資源ナショナリズムの高まり等により 資源の安定供給が脅かされる可能性があり 他国の資源政策に左右されない資源の確保は重要な課題である また メキシコ湾 北海 ブラジル沖などでは既に海洋開発のフィールドが存在し 今後も開発が進められると見込まれる中 我が国が有する優れた技術を海外に展開することで 我が国の産業の更なる発展が望める このように 海洋開発に挑戦することは 資源の確保や経済成長の観点から非常に重要である しかしながら 我が国の周辺で資源を採掘することが経済的 エネルギー的に合理的であるかどうかの判断をしたり 環境に配慮しながら生産を続けたりするためには 賦存量 7 賦存状況や 採掘に伴う環境への影響を予め把握しなければならない また 生産に必要となる技術の開発も必要となる このように 我が国周辺の海域における海洋開発には 多くの解決すべき課題が残されている 海洋開発分野は国際的な競争に晒されており これらの問題を一つ一つ解決していかなければ 目の前にある資源の開発ビジネスを諸外国に奪われる事態にもなりかねない このように 海洋開発は極めて重要であるが 一方で課題も山積しており 中長期的な観点から計画的に課題解決に向けた取り組みを推進していく必要がある 7 賦存量 : ある資源について 理論的に導き出された総量 -7-

12 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 こうした背景の中 海洋に関する施策を総合的 一体的 計画的に推進するため 海洋基本法 が制定され それに基づく 海洋基本計画 が策定されている また 経済産業省は メタンハイドレートや海底熱水鉱床などの商業化までの工程表を示すなど 国においても中長期的な視点で 計画的に海洋開発に取り組んでいる また このように重要な海洋開発分野において 海洋資源の成因に関する科学的研究 将来の開発を見越した生態系調査及び長期監視技術開発を進めるとともに 民間と協力して海洋資源調査技術の開発を進めるため 国家プロジェクトとして 戦略的イノベーション創造プログラム (Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program, SIP) 8 の 10 の課題の一つとして 次世代海洋資源調査技術研究開発計画 ( 海のジパング計画 ) が進められている 本プログラムは 得られた技術等を民間に移転し 世界に打って出ることができる海洋資源調査産業を創出することが狙いであり 海洋開発分野の可能性をまた一つ広げるものである さらに 国土が狭く 土地確保が難しい日本では 資源開発 再生可能エネルギー開発以外でも海洋の活用は重要であり 過去にも洋上施設建設のプロジェクトが進められてきた 例えば 急激な石油価格の変動や戦争などの有事に備え 日本では 10 カ所の国家石油備蓄基地があるが そのうち 長崎県の上五島 福岡県の白島の 2 箇所の石油備蓄基地は 浮遊式海洋構造物 ( 洋上タンク方式 ) による洋上石油備蓄システムをとっている( 図 1.5.1) また 日本で技術開発されたメガフロート ( 超大型浮体構造物 ) は 水深や地盤に関係なく海域を利用可能であり 耐震性に優れ 埋め立て工事と比較して環境への影響が少ないことなどから 洋上空港への利用等が期待される 2000 年には 横須賀沖にて長さ 1000m 級の実証浮体が建造され 実際に YS-11 機等を用いた離着陸試験が行われている ( 図 1.5.2) ( 上五島国家石油備蓄基地 ) 出典 : 上五島石油備蓄株式会社ウェブサイト ( 白島国家石油備蓄基地 ) 出典 : 白島石油備蓄株式会社ウェブサイト 図 洋上石油備蓄の例 8 戦略的イノベーション創造プログラム (Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program, SIP): 内閣府の総合科 学技術 イノベーション会議が司令塔となり 府省の枠や旧来の分野の枠を超えた科学技術イノベーションを実現するために創 設されたプログラム -8-

13 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 図 横須賀港沖合の浮体空港実証実験用の空港モデル ( 出典 : 一般社団法人海洋産業研究会ウェブサイト ) 日本は 四方を海に囲まれた海洋国家であり 石油や鉱物等のエネルギー資源の輸入のほぼすべてを海上輸送に依存している また 国土面積が小さく 天然資源の乏しい島国である日本にとって 海洋の生物資源や周辺海域の大陸棚 深海底に埋蔵される海底資源は 非常に重要である このように 我々の生活と海洋は切っても切れない関係にあり 環境保全等に配慮しつつ海洋開発を行っていくことは 海洋立国を目指す日本にとって最重要課題の一つである それを担う海洋開発産業は 将来にわたり極めて重要な役割を果たしていくものであると言える -9-

14 海洋開発産業概論 教材 1 章序論 < 参考資料リスト> (1) ブリタニカ国際大百科事典 (2) 造船業 海洋産業における人材確保 育成方策に関する検討会第一回検討会資料 海洋開発分野の技術者育成の方向性について ( 案 ) (3) 一般財団法人エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書平成 27 年 4 月 (4) 経済産業省産業技術環境局 : 我が国企業の国際競争ポジションの定量的調査報告書 2014 年 3 月 (5) Clarksons Research: World Shipyard Monitor, Volume 22, No.11, 2015 (6) International Energy Association: World Energy Outlook 2013 (7) みずほ銀行産業調査部 海洋資源開発産業の現状と展望 2014 年 (8) 三井海洋開発株式会社ウェブサイト (9) 外務省ウェブサイトわかる! 国際情勢トップページ Vol.61 海の法秩序と国際海洋法裁判所 2010 年 7 月 23 日 (10) 海上保安庁海洋情報部ウェブサイト管轄海域情報 ~ 日本の領海 (11) 総合海洋政策本部 海洋基本計画 2013 年 5 月 (12) 経済産業省 海洋エネルギー 鉱物資源開発計画 2013 年 12 月 (13) 資源エネルギー庁 石油 天然ガスをめぐる最近の動向 平成 23 年 11 月 (14) 内閣府政策統括官 ( 科学技術 イノベーション担当 ) 次世代海洋資源調査技術( 海のジパング計画 ) 研究開発計画 2015 年 5 月 (15) 上五島石油備蓄株式会社ウェブサイト (16) 白島石油備蓄株式会社ウェブサイト (17) 一般社団法人海洋産業研究会ウェブサイト 浮体構造物( マリンフロート ) の活用に関する調査研究

15 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 2 海洋開発産業の背景と現状 2.1 海洋資源開発海洋開発の領域の一つである海洋資源開発の背景とその現状について 海洋石油 天然ガス開発を中心に 開発の歴史 その分布と賦存量 開発及び生産産業を構成するプレイヤーなどを紹介するとともに 今後の産業界の動向について紹介する 更に 海洋石油 天然ガスと密接に関連するメタンハイドレート 海底熱水鉱床などの海底鉱物資源の開発についても新たな資源開発への挑戦として紹介する 海洋石油 天然ガス開発 (1) 海洋石油 ガス開発の歴史 1 石油産業の成立と発展 a) 石油産業の誕生その歴史は 19 世紀 1859 年米国ペンシルべニア州オイルクリークと呼ばれる地域で 鉄道員であったエドウィンドレークが機械堀りで 世界で初めて 地下 23m の地層から石油を採掘したことから始まると言われている 当時の石油の用途は灯油が主であり その後 現代の石油産業への歴史を作ったのは 1870 年に米国オハイオ州クリーブランドにスタンダード石油を設立し 原油の精製により軽質油 中質油 重質油を分留することで多用途の石油を販売して成功を収め 多数の傘下企業を抱えるスタンダード トラストとして成長させたジョン ロックフェラーである その後 20 世紀に入り 米国で更に大規模な油田の発見が続き 米国の石油産業は大きな成長を遂げ テキサコ ガルフ オイルなどの新しい石油会社が生まれて来た しかしながら 一大帝国を築いたスタンダード トラストは米国世論の反発もあり 1911 年に裁判により解体され エクソン モービル シェブロン アモコ コノコの前身会社が生まれた 一方 米国以外でも 帝政ロシアのアゼルバイジャンにあるバクー地方で スウェーデンのノーベル兄弟によって油田が開発され ロスチャイルド家によりヨーロッパ アジア市場にコーカサス鉄道で輸送され 灯油として販売された このバクー石油はまた タンカーで極東にも運ばれている 1892 年に初めて成功したこの試みは スエズ運河を経由した世界で初のタンカーによる海上輸送であり 横浜でマーカス サミュエル商会を設立して運輸商事に携わっていた英国人のマーカス サミュエルによって行われた 同社はその後 1897 年に北ボルネオの油田開発権を獲得し シェル運輸商事として 世界の貿易港毎に船舶用の給油施設を設け 燃料油の販売も手掛け 成功を収めた また その当時 オランダ領のジャワ島 スマトラ島 ボルネオ島の石油開発はオランダのロイヤル ダッチ石油会社が一手に手掛けていた しかしながら 同社は十分な販売網を有していなかったため 1903 年にアジア アフリカ ヨーロッパへの販売について マーカス サミュエルの会社であるシェルトランスポート & トレーディング カンパニーと業務提携を行った その後 1907 年に両者はロイヤル ダッチ シェル社として完全統 -11-

16 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 -12- 合し 1914 年にメキシコ 1928 年にベネズエラのマラカイボ油田の開発に成功し 米国スタンダード石油とともに世界の石油産業界の二大巨星となった b) 石油産業の成長 1910 年代以降 スタンダード石油 ( スタンダード トラスト解体後スタンダード石油ニュージャージー 後のエクソン ) とロイヤル ダッチ シェルの二大石油会社に加え 米国系のモービル シェブロン テキサコ ガルフ及び英国系のブリティッシュ ペトロリアム (BP) を加えた 7 社がメジャーズ ( セブン シスターズとも言われる ) と呼ばれ世界の石油産業を形成した 時に 第一次世界大戦を通じて 船舶 飛行機 自動車などの燃料として役割の重要性が増し エネルギー源の中心となって来た その状況下 石油の大量消費に新しい油田の発見の必要性が増し その中から 先ずは英国アングロ ペルシャ会社 ( 後のブリティッシュ ペトロリアム ) が 1906 年にイランで石油を発見し 第二次世界大戦までに次々とイランの大油田が発見された それに続いてトルコ領であったイラクでもブリティッシュ ペトロリアムを中心としたトルコ石油会社 ( 後のイラク石油会社 ) によって キルクーク油田が 1927 年に開発された 中東での石油開発は 英国系石油会社を中心として その後もクウェート アラブ首長国連邦 オマーンと進められた この中東での油田発見により それまでの米国とロシアを中心とした世界の石油産業の地図は大きく塗り替えられることとなった そのなかで 出遅れた米国系石油企業は サウジアラビアにその利権を求め シェブロンとテキサコはアラムコ社をサウジアラビアに設立し 1940 年にアブ キェーク油田 以後第二次世界大戦後にガワール油田やサファニア油田などの世界最大級の油田を次々と発見 開発に成功した c) 民族資本の台頭 OPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries, 石油輸出機構 ) の設立とメジャーズの市場独占の排除第二次世界大戦後 新しい歴史の流れは植民地主義の終結 民族自決主義の台頭と言うナショナリズム中心の世界観となり 石油産業の構造もこの新しい動きとともに変遷することとなった 1951 年のイランにおけるアバダン紛争に代表される かつて被植民地であった産油国で石油利権を産油国に取り戻そうとする動きが起こった この紛争は産油国側の挫折となるが これを契機に国際石油資本と産油国との長い闘いとなり 10 年後の 1960 年に 中東産油国 ( クウェート サウジアラビア イラン イラク ) とベネズエラによる OPEC の結成 設立に結び着くこととなった 更に ナショナリズム中心の世界観の台頭は 石油資源を国内に持たない消費国による国有石油会社の設立とその国際舞台への登場につながり また 1950 年代以降の石油開発の舞台を陸上から大陸棚を中心とした海洋へと変遷させてきた d) オイルショックと OPEC 離れ 1970 年代に入ると 産油国 OPEC の力が国際石油資本に対抗できるまで育ってきたことがあり 国際石油資本の力に陰りが見えてきた その状況下 1973 年の第 4 次中東紛争を契機に OPEC は石油価格の引上げと生産量削減 ( 石油戦略 ) を決定 その結果起こった第一次オイルショックは 石油を世界の経済ば

17 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 かりか政治をも動かす戦略物資に変えてしまう結果となった これを武器に OPEC は国際石油資本が持つ石油利権を次々と接収 国有化していった クウェートの KOC サウジアラビアのアラムコ イランの NIOC イラクの INOC が国有化された この動きは 1979 年のイラン革命を引き金に 再びオイルショックを引き起こすこととなった ( 第二次オイルショック ) この二度にわたるオイルショックは 世界の石油産業の構造 世界の経済構造まで大きく変えて行くこととなった 世界的に石油節約 代替エネルギー開発の動きが主流となってくるとともに 政治リスクの少ない地域での石油開発 および 自国でのエネルギー確保の動きが強くなり メジャーズも含めて 海洋油田の開発へと向かっていった 具体的には 1970 年代以降の北海油田の開発 メキシコのユカタン半島沖合の油田開発 ブラジル沖合プレソルト 1 油田などの開発は OPEC 離れを象徴する出来事となった 以下に 最近の世界の石油開発の生産量分布マップ ( 図 2.1.1) および生産量マップ ( 図 2.1.2) を示す 図 世界の石油開発マップ ( 出典 :BP Statistical Review of World Energy 2013) 1 プレソルト油田 : ブラジル沖合のエスピリトサント盆地 カンポス盆地 サントス盆地の大水深に存在する延長約 1,000km 幅数 100km に及ぶ下部白亜系岩塩層直下の炭酸塩岩を貯留岩とする大水深 大深度の新プレイの呼称 -13-

18 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 世界の原油生産量 原油確認埋蔵量 可採年数 ( 出典 : 今日の石油産業 2015 石油連盟編 ) 現在では 世界の石油開発 石油生産の拠点は 従来の OPEC 中心からグローバルな分布へと変化している また 米国では 1990 年代から新しい石油 天然ガス資源として重要視されていたシェールオイル シェールガスが 石油 天然ガス価格の上昇や水平破壊 水平坑井などの掘削 生産技術が進歩 確立したことを受けて また 米国政府のサポート (2005 年 Energy Policy 法など ) もあり 2000 年代に入り急激にその生産量を増加させている 米国におけるシェールオイルの生産量は 2008 年の日量約 500 万バレル 2 から 2015 年の予想では 900 万バレルを超えるとされている 更に シェールガスでは 1996 年は年量 0.3 兆立方フィートに過ぎなかったが 2012 年には年量 10 兆立方フィートを超えており 2013 年以降 従来の天然ガスを含めると 天然ガスの生産量で ロシアを超えて世界第一位の生産国となっている 以上のように 米国でのシェールオイル ガス開発 生産増大が可能になったことより 世界のエネルギー事情が大きく変わりつつあり これを称して シェールガス革命と言われている 2 バレル : 米国の油田で 石油の輸送に樽 ( たる )( バレル ) が使われたことから その後 国際的な原油 石油製品の取引の体積の 単位となった 1 バレルは約 リットル -14-

19 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 2 天然ガス産業の成立と発展 a) 天然ガス開発の創生期天然ガス田の開発及びその利用は 第二次世界大戦前から世界に先駆けて 米国に於いて始まった 米国中西部での石油探鉱とともに発見された大量の天然ガスは パイプラインで東部の需要地へ輸送された 更に 第二次世界大戦後も大規模高圧パイプラインからなる供給ネットワークを拡大し カナダ西岸も含む国際パイプラインを形成している 欧州においては 第二次世界大戦後 先ずフランス南部 イタリア北部でガス田の発見があり 天然ガスの利用が始まった その後 1959 年にオランダの北海周辺で巨大なガス田であるフローニンゲン ガス田が発見され これを契機に欧州各国にパイプラインが敷設され 天然ガス供給ネットワークが形成された このネットワークへの天然ガス供給源として 北海の中部 北部のガス田の開発 更にはロシア アルジェリア ( 地中海横断パイプライン ) のガス田開発と供給ラインの拡大が続き 大規模な供給ラインが整備された 2000 年代に入り 中央アジアのトルクメニスタンのガス田およびロシアのガス田や ASEAN のインドネシア ブルネイのガス田 中南米のボリビアのガス田などでもパイプライン ネットワークの建設が始まり 一部供給を開始している b) 液化天然ガス (LNG) の出現と躍進天然ガスの主成分のメタンは 常温では気体であり 臨界点のマイナス 気圧 或は沸点のマイナス 気圧で初めて液化する 21 世紀のクリーンな主要エネルギーとして期待される天然ガスであるが この性状が輸送 貯蔵効率の改善 設備 管理面での高い障壁を作り その供給ネットワークは圧力を加えてパイプラインで圧縮輸送する方式に頼っていた 従って そのネットワークはガス田に近いパイプライン網が設置できる国域に限られていた つまり 主要な天然ガス産業 貿易は 米国を中心とする北米圏 欧州を中心とするロシア 北アフリカ圏に限られていた このような状況ではあったが 超低温域での熱力学 材料力学の進歩に伴い 1940 年代には米国が夏場 ( 非需要期 ) に LNG をタンクで貯蔵する試みを 1950 年代には欧州が大西洋地域で LNG を輸送する試みを行い LNG の輸送に関連する技術 材料 機器 装置品の開発 ノウハウの蓄積が進められた そして 1954 年に米国で LNG 輸送用のバージ Methane が建造され ミシシッピー河口のガス田よりシカゴまで LNG 試験輸送を行った この輸送はタンク損傷が激しく 失敗に終わったが LNG 輸送船開拓史の第一番船として Methane はその名を刻むこととなった その後 英米両国を中心に LNG の洋上輸送が推進され 1959 年戦時標準船を改造した Methane Pioneer で 米国ルイジアナ州のレイク チャールズより大西洋を渡り 英国テムズ河口のキャンベイ島へ輸送したのが最初の洋上輸送の成功となった その後 本格的なプロジェクトとしての洋上 LNG 輸送は 1964 年に アルジェリアから英国への LNG 輸送用に LNG 専用船として Methane Princess 及び Methane -15-

20 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 Progress が建造されて始まった しかしながら このプロジェクトは 翌 1965 年に北海の英国鉱区でガス田が発見されたため 途中で棚上げとなってしまった この LNG 成立期において 我が国では 高度経済成長を成し遂げていたが その反動として 1960 年代より深刻な大気汚染 水質汚染の公害問題が発生していた これに対処するために クリーンなエネルギー源である天然ガスが石炭 石油の代替として用いることが検討され 1969 年から LNG 船 Polar Alaska による米国アラスカから横浜への洋上 LNG 輸送 輸入が始まった これが世界における本格的な大型 LNG 船による洋上輸送の始まりである この本格的な洋上 LNG 輸送プロジェクトの開始と成功 及び遠距離の天然ガスの国際パイプライン ネットワークの拡大を契機に 更には 1970 年代からの2 度のオイルショックもあり アジア 中東 豪州などの以前まで開発の目が向けられていなかった地域での開発が始まり 天然ガス田の開発は世界的に広がることとなった 具体的な新規開発田は アラスカ リビア ブルネイ アブダビ インドネシア 更には マレーシア カタール ナイジェリア エジプト 豪州などである 当初は LNG の価格は石油より高かったが 大気汚染などの環境対策費が不要であり 2 度のオイルショックによる石油価格の高騰もあり 石油に対し価格面でも有利となったことにより 1980 年代以降 世界的に LNG の導入が着実に増加することとなった 更に 前項で概説のシェールガス革命により 2010 年代半ばより 米国は石油 天然ガス輸入国から輸出国に転じることとなり 世界の天然ガス事情は大きく変わりつつある 3 海洋石油 天然ガス開発の歴史 a) 海洋石油 天然ガス開発の創成期海洋での石油 天然ガス発見のために最初に行われた海洋掘削は 1896 年に米国カリフォルニア西海岸のサンタバーバラのサマーランド油田の海への延長部で行われたものであると言われており その後 1910 年代に行われた米国の内陸湖カドー湖の岸から離れた水上での掘削が最初の油田開発と言われている 1920 年代に入り ベネズエラのマラカイボ湖 ソ連のバクー油田のカスピ海部分 1930 年代に 米国のカリフォルニアとメキシコ湾岸及び英領ボルネオのブルネイ沖で海洋油田の開発が盛んに行われるようになった 但し この頃までは 開発地域は 岸に近く 水深が浅く 静穏な地域であり 生産方法は 海岸から延長された桟橋又はプラットフォームを用いた掘削或は海岸から傾斜堀りによるものだった その後 米国ルイジアナ沖で全域が海に分布している油田が発見され さらに カナダのエリー湖水域でのガス田が発見されるなど 徐々に陸域から離れていくことになる そして 1938 年にはルイジアナの海岸より約 2.5km 離れた場所で メキシコ湾で初の油井が掘られた ルイジアナの油田海域は非常な遠浅で 海岸より 100km 位離れても水深 50m 程度で 豊富な石油が存在するため 海洋石油開発はルイジアナ沖を中心にして始められることとなった ここで海洋石油の開発技術が発達 確立し 世界に拡がっていった -16-

21 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 b) 本格的な海洋石油 天然ガス開発の開始世界で初めての商業的な海洋での石油掘削 生産は 1947 年に 海岸より陸地が見通せないほど離れたルイジアナの沖合海域で オクラホマの Kerr-McGee Corporation が固定式プラットフォームによって行ったとされている これを契機に本格的な海洋石油 天然ガス開発が開始され 1947 年は海洋油田の開発が始まった年とされている c) 海洋石油 天然ガス開発の発展期メキシコ湾米国海域で始まった海洋石油開発は 1950 年代に入り 従来の固定式プラットフォームに代わってジャッキアップ型 ドリル シップなどの移動式掘削装置が開発され 新たな局面を迎えた これらは 海洋油田探査 掘削に大いに寄与し 1950 年代後半の米国 中東でのさらなる海洋油田の発見に 更には世界各地での海洋油田開発に繋がっていくこととなった その後 1961 年にセミサブ型 ( セミサブマージ型 半潜水型 ) 掘削装置が開発され アラスカのクック湾 ナイジェリア ガボン エジプトのスエズ湾 オーストラリアのバス海峡 ブルネイ 北海 イタリアのアドリア海などの海洋油田の開発が行われた 海洋で石油開発が始まった当初は 生産プラットフォームは着底式であり その設置海域は水深 200m~300m 以浅が限界であった つまり 開発海域も浅海域に限定されていた 1970 年代に入ると 前項 石油産業の成立と発展 で記しているオイルショック後の世界の石油産業の構造 世界の経済構造の変化に伴い 海洋石油 天然ガス開発は更に活発化し 着底式プラットフォームの設置が困難な水深の海域へ拡がることとなり 浮体式生産設備の開発へと繋がることとなった 最初の浮体式生産設備は 1975 年地中海で運用を開始し 更に ブラジル沖海域での浮体式生産設備による海洋石油 天然ガス開発の拡大に繋がっていった 1977 年にブラジルの国営石油会社であるペトロブラスは掘削リグを改造したセミサブ型生産設備の運用を開始した なお 1970 年代から 80 年代にかけて 日本の造船所も半潜水式リグ FPSO 3 などの海洋開発用の浮体構造物を建造していた しかしながら 1985 年のプラザ合意以降の円高の影響で競争力を失い これらの建造から撤退してしまった 現状ではシンガポール 韓国 中国が中心となって建造している 海洋石油 天然ガス開発は その掘削設備 生産設備及び石油探査技術の発展 進化に伴い 1970/1980 年代には 北海油田 メキシコのユカタン半島沖合の油田 ブラジル沖合プレソルト油田の開発活発化 更には 1980 年代のサハリンなどの氷海域での石油開発 2000 年代のメキシコ湾大水深海域などでの油田開発と世界的に拡大するとともに より水深の深い海域 ( 深海域 ) へも拡がっていった 更に 2000 年代後半より クリーン エネルギー源としての天然ガスの重要度が増したことに伴い 海洋天然ガス田の開発が活発化している このような背景のなかで オー 3 FPSO: Floating Production, Storage and Offloading system の略称で浮体式海洋石油 ガス生産貯蔵積出設備を指す -17-

22 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 ストラリア西海域で進められている開発では FLNG 4 などの新しい技術 高度な洋上生産設備が用いられている このような技術 設備の高度化 進化とともに新しい海域での海洋石油 天然ガス開発が始まっている 図 に海洋石油 天然ガス開発の歴史 図 に掘削リグ等の種類 図 に石油生産プラットフォームの種類を示す 図 海洋石油 天然ガス開発の歴史 ( 出典 : 横浜国立 学 統合的海洋教育 研究センター シンポジウム 海洋石油開発技術と船舶工学 佐尾邦久編講演資料 ) 4 FLNG:Floating Liquefied Natural Gas の略称で 広義には洋上における LNG の液化設備および再ガス化設備全般を差す 狭義には洋上にて液化 貯蔵 出荷を行う LNG-FPSO(Floating Production, Storage and Off-loading system) を差すこともあ る -18-

23 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 掘削リグの種類 ( 出典 : みずほ銀行産業調査部 海洋資源開発産業の現状と展望 2014 年 ) 図 石油生産プラットフォームの種類 ( 出典 : みずほ銀行産業調査部 海洋資源開発産業の現状と展望 2014 年 ) 以上を踏まえ 石油 天然ガス開発の歴史を表に取りまとめると 表 のようになる -19-

24 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 石油 天然ガス開発の歴史 西暦 ( 年 ) 石油開発 石油 天然ガス開発 ( 全般 ) 天然ガス開発 海洋石油 天然ガス開発 世界の主な出来事 1850 年代 1959 年 : 米国オイルクリークで世界で初めて石油採掘 1870 年代 1970 年 : 米国オハイオ州で ジョンロックフェラーがスタンダードオイル設立 ( 石油産業の始まり ) 1870 年中頃 : 帝政ロシア バクー地方で ノーベル兄弟によって油田開発が始まる アメリカ南北戦争普仏戦争ドイツ帝国成立 アメリカのエジソンが蓄音機を発明 1880 年代 1886 年ごろより ロスチャイルド家がバクー油田の石油生産を担い 欧州 アジアへの鉄道による輸送わ始める 1890 年 : マーカス サミュエルにより タンカーによるスエズ運河経由の石油輸送に初めて成功する 1890 年代 1900 年代 1897 年 : マーカス サミュエル商会 ( シェル商事 ) 北ボルネオの油田開発権を取得し 世界の貿易港に船舶用燃料施設を設け 燃料の販売を開始 米国石油産業の伸長 (1901 年ガルフオイル 1901 年テキサコオイルなどの新しい石油会社が設立される ) 1902 年 : シェル商事は蘭ロイヤル ダッチ石油会社と石油の欧州 アジア アフリカへの販売の業務提携 1906 年 : 英国アングロ ベルシャ ( 後のブリティッシュ ペトロリアム :BP) がイランで油田発見 1896 年 : 米国カリフォルニア西海岸のサマーランド油田の油田の海への延長部で世界で初めての海洋掘削を実施 ノーベル賞が創設される ライト兄弟が飛行機による人類初の有人動力飛行 血の日曜日事件 ロシア第 1 次革命開始 1907 年 : ロイヤル ダッチ シェル社設立 米海軍が真珠湾に基地を建設 1910 年代 1911 年 : スタンダード トラスト解体 ( エクソン モービル シェブロン アモコ コノコの前身会社発足 ) 後継会社はスタンダード石油ニュージャージー ( 後のエクソン )) 天然ガスの商業的利用の始まり :1800 年代後半より 世界に先駆けて 米国で 中西部での石油採掘と共に産出される随伴の天然ガスをパイプラインで東部に輸送し利用 伊土戦争 年迄中華民国建国第二次バルカン戦争第一次世界大戦勃発 ロシア革命が起こる第一次世界大戦が終わるパリでベルサイユ条約 1920 年代 1930 代 1940 年代 1950 年代 1927 年 :BP を中心としたトルコ石油会社によりイラン キルクーク油田の開発が始まる 石油メジャース = セブン シスターズ ( スタンダード石油ニュージャージー ロイヤル ダッチ シェル モービル シェブロン テキサコ ガルフおよび BP) による世界の石油開発 供給市場の独占が続く 1936 年 : シェブロン及びテキサコによるサウジ進出 ( アラムコ社設立 ) 1940 年 : アラムコによるアラブ アブキェーク油田開発 1940 年代後半 : アラムコによるガワール油田 サファニア油田と世界最大級の油田が次々に開発される 民族資本の台頭 メジャーズによる市場独占の排除の動きが活発化 欧州における天然ガス利用の始まり : フランス南部 イタリア北部でのガス田発見により天然ガス利用が始まる 1954 年 : 米国で世界に先駆け LNG 輸送バージ "Methane" による LNG の試験輸送実施 1959 年 :LNG 輸送船 "Methane Pioneer" による世界初めての海上輸送 ( 米国 ~ 英国 ) 1959 年 : オランダ北海周辺で巨大なフローニンゲンガス田発見 ベネズエラのマラカイボ湖 ソ連のバクー石油のカスピ海岸部分の水深の浅い海域で海洋油田の開発が始まる 1938 年 : メキシコ湾の米国ルイジアナの海岸より 2.5km 離れた水深の浅い海域で 初めて油井を掘る 1947 年 : 世界で初めての固定式プラットフォームによる本格的な海洋油田の掘削 ( 陸地が見通せない米国ルイジアナ沖合 ) 1950 年代 : より深い水深での海洋油田開発の為 ジャッキアップ型 掘削船などの移動式掘削装置が開発され 米国 中東での新油田発見に繋がる ワシントン会議ソビエト社会主義共和国連邦成立 国共内戦 年迄ジュネーブ国際経済会議開催 (52 カ国 ) パリ不戦条約世界大恐慌 ヒトラーが独首相に就任 ナチス政権始まる第二次エチオピア戦争 年迄スペイン内戦 第二次世界大戦 ( ヨーロッパ戦争 ) 勃発ダンケルクの戦い モスクワの戦い スターリングラードの戦いイタリアが連合国に無条件降伏連合軍によるノルマンディー上陸作戦ドイツが連合国に無条件降伏ギリシャ内戦 年迄 第 1 次中東戦争中華人民共和国が成立 中華民国 台湾 ) 朝鮮戦争 年迄 朝鮮戦争が休戦アルジェリア戦争 年迄第一次スーダン内戦 年迄第 2 次中東戦争 ( スエズ戦争 ) ソ連が人工衛星スプートニク 1 号の打上げ成功金門砲戦 ( 中華人民共和国 VS 中国人民解放軍 ) 中印国境紛争 年迄 ( 中国 VS インド ) -20-

25 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 西暦 ( 年 ) 1960 年代 1970 年代 1980 年代 石油開発 1960 年 : 中東産油国とベネズエラによりOPEC 設立される 1973 年 :OPEC 石油戦略を決定 ( 石油価格のの引上げと生産量削減 ) OPEC 諸国による メジャーズの石油利権の接収と国有化 (KOC,ARAMCO NIOC INOC などの設立 新しい石油開発の対象は 陸上から大陸棚を中心とした海洋石油開発への進出となる 石油 天然ガス開発 ( 全般 ) 天然ガス開発 フローニンゲンガス田発見を契機に欧州各国を結ぶパイプラインによる供給ネットワークが敷設される 1964 年 : 世界最初の LNG の商業的輸送として アルジェリア ~ 英国間の LNG 船によるプロジェクト開始 ( 翌年中断 通り止め ) 1964 年 :LNG 船 "Polar Alaska" による本格的 LNG 洋上輸送 ( アラスカ ~ 日本 ) 開始 石油の代替エネルギー クリーンなエネルギーとして 大々的なガス田の開発加速 ( アラスカ リビア ブルネイ アブダビ インドネシア マレーシア カタール ナイジェリア エジプト 豪州など ) 海洋石油 天然ガス開発 1961 年 : セミサブ型掘削装置の開発により アラスカのクック入江 ナイジェリア ガボン エジプトのスエズ湾 オーストラリアのバス海峡 ブルネイ 北海 イタリアのアドリア海などでの海洋油田に繋がる 1975 年 : 世界で初めての浮体式生産が地中海イタリア海域に設置 これを契機に 従来の着床式生産設備 ( 水深 200~300m が設置限界 ) に代わり より深い海域での油田開発へ拡大する ブラジルのカンボス海盆及びサントス海盆 メキシコのユカタン半島沖合など ベトナム戦争勃発キューバ危機 キプロス内戦 年迄コロンビア紛争 - 継続南ローデシア紛争 年迄第 3 次中東戦争 ( 六日戦争 ) プラハの春 ( チェコ事件 ソ連のチェコ介入 ) 中ソ国境紛争ヨルダン内戦 ( 黒い九月事件 ) カンボジア内戦 年迄第 4 次中東戦争 ( 十月戦争 )( 第一次石油危機 ) キプロス紛争ベトナム戦争が終わる 世界の主な出来事 イラン革命 第 2 次オイルショックイラン イラク戦争 年迄 フォークランド紛争 ( マルビーナス戦争 ) ペレストロイカが始まるチェルノブイリ原子力発電所事故 ベルリンの壁崩壊 ( 米ソ 冷戦終結宣言 湾岸戦争 年迄 東西ドイツの統一湾岸戦争 ソビエト連邦崩壊 1990 年代 1990 年代半ば : 氷海海域サハリン沖での海洋石油開発プロジェクト開始 1990 年代半ば : 氷海海域での海洋石油開発の開始 香港が中国に返還される 1999 年 : 氷海サハリン 2 生産開始 1999 年 : 氷海サハリン 2 生産開始 アフガニスタン侵攻 アメリカ同時多発テロ事件 2000 年代 2003 年 : メキシコ湾にて Drilling Ship による水深 3051m での掘削に成功 ( 世界記録 ) イラク戦争 ロンドン同時爆破事件 世界同時不況 シリア内戦

26 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 (2) 石油 天然ガスの分布と資源量 1 世界の石油 天然ガスの分布と資源量地下に存在するすべての石油の量は 資源量 (Resources) といい この資源量のうち 既発見であり かつ経済的 技術的に回収 ( 採取 ) 可能な量を 埋蔵量 (Reserves) という また 可採年数 (R/P) は現在の技術と価格の下で採掘可能であると考えられる石油埋蔵量 (R) をその年の石油生産量 (P) で割ったものをいう 2014 年時点での世界合計で確認埋蔵量は 約 1.7 兆バレル 可採年数は 59 年と言われている かつて可採年数は約 30 年と算出された時期もあったが 最近の可採年数は OGJ(Oil and Gas Journal) で 59 年 BP 統計で 53 年 ( カナダの ベネズエラのオイルサンド 米国のシェールオイルを含む ) とむしろ伸びる状況にある これは 技術革新による新規油田の発見や採掘技術の進歩や 原油価格上昇に伴う採算性の向上などによって 生産量を上回るペースで石油埋蔵量が増加を続けてきた結果である 石油の地域分布は偏っており アジア 特に中東地域が約 60% を占める ついで北アメリカの約 20% ヨーロッパと南アメリカの 10% である 尚 世界的には オイルサンド オイルシェール等の 非在来型石油 が豊富に存在している オイルサンドは大部分がカナダに 次いでナイジェリア マダガスカル アメリカなどに賦存しており オイルシェール ( 油母頁岩 ) はアメリカ ブラジル 中国 カナダ ロシア コンゴなど世界各地に分布している また オイルサンドの一種であるオリノコタールはベネズエラのオリノコ川流域を中心に存在する超重質油である 最近 このような非在来型石油資源の開発が進んだこともあり 石油の埋蔵量は飛躍的に増加している 世界全体の石油の生産量 確認埋蔵量 可採年数に関しては 前掲の図 に示したように石油連盟のデータを発表している他 BP 社がデータを発表している ( 図 2.1.6) -22-

27 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 年 2004 年 2014 年における世界石油可採埋蔵量 ( 出典 :BP Statistical Review Of World Energy-2015) -23-

28 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 2 海洋石油 天然ガスの分布と賦存量 1980 年代以降 新しい油田の開発は 海洋に主体を移しており 北海油田 メキシコのユカタン半島沖合 ブラジル沖合プレソルト油田 アフリカ東岸 西岸 フィリピン マレーシアなどの新しい油ガス田が開発されている この海洋油ガス田開発地域の確認埋蔵量は情報 データが乏しく 正確な割合は不明ながら 生産量ベースでの海洋石油占める割合は 2015 年時点で約 30%( 図 2.1.7) とされており 近々 40% を超えると言われている 図 世界の海洋石油 天然ガス生産量推移 ( 出典 :Infield Systems 社ウェブサイト ) -24-

29 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 (3) 産業を構成するプレイヤー海洋石油 天然ガスの開発 生産には 多くの企業が関与している この産業を作り出している源泉はエクソン シェル BP ペトロブラスなどの石油上流会社である 石油会社が発注する物理探査 掘削 ( 試掘と生産井掘削 ) 開発( 生産設備の設計 建造 設置 ) 生産業務 さらに生産終了後の廃鉱 撤去 再利用 処分の業務によって これらの業務に必要となる設備の製作と操業 さらにはそれらの検査 保守 補修という広範な業務が作り出されている 業務は 発注者から主請負会社 (Main Contractor 或いは EPCI 5 Contractor) 造船所などの部分請負会社 (Sub-Contractor) を経て 機器メーカーや材料メーカーのような細部まで発注が順次なされていく 設備の製作はこの逆であり 機器や材料から順次組み立てられ 何段階もの検査 試運転を経て完成する流れとなる -25- (4) 極地 氷海 大水深での石油 天然ガス開発への挑戦世界の一次エネルギー需要は これまで順調に拡大を続け そのなかで石油 天然ガスは全体の過半を占める重要なエネルギー源となっている すなわち 世界経済の全体の活発化のために 安定したエネルギー源として 石油 天然ガスの生産量を増加 確保していく必要がある 石油 天然ガスは 現在注目を集めている再生可能エネルギーに比べると そのエネルギー投入効率 (100 のエネルギーを生み出すに必要なエネルギー比率 ) が非常に良く経済的であり 且つ 発電 燃料用エネルギー源としてのみならず 化学製品などの原材料としても重要な資源であるため その安定供給は世界経済に大きく影響する シェールガスを代表とする非在来型資源の生産拡大は 石油 天然ガスの供給量拡大の顕著な事例であるが 長期的 安定的な石油 天然ガス供給源として 更なる海洋石油 天然ガス資源の開発が重要視され 期待されている 現在 世界の石油生産量のうち海洋油ガス田からの生産は約 40% とされているが 大水深海域 極地海域での石油 天然ガス開発が進むことで 生産量の更なる伸長が期待されている 1 大水深海洋石油 天然ガス開発海洋石油 天然ガス開発の歴史で概説したように 開発のフィールドは水深 300m 未満の浅い海域から 徐々に深い水深へと拡大して行った 特に 2003 年のイラク戦争勃発による石油価格暴騰以降 大水深油ガス田の開発が本格化し その中で水深の深い海域での海底油田の探査技術 掘削技術 生産技術の進歩 確立したことで 現在では 3,000m の海域での石油 天然ガスの開発 生産が可能なまでに至っている 更なる大水深での安全で 安定した海洋石油 天然ガス開発 生産の拡大を目指し 現在 新しい生産方式として海底生産システム (Subsea Production System:SPS) が脚光を浴びており 海底仕上げ井 (Subsea Completion Well) と海底機器 海底に設置される生産 処理設備 貯油設備及び積出設備 その操作 補修を行う水中ロボット AUV な 5 EPCI:Engineering, Procurement, Construction and Installation の略称で 基本設計 調達 建造 設置業務を指す

30 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 どの新規開発 信頼性向上などが急務の課題として取り組まれている 図 に大水深石油 天然ガス開発海域マップ 図 に海洋石油 天然ガス開発の水深の推移 図 に各水深に適合した生産設備の推移を示す 図 に示すように 水深に応じて 前述の TLP や FPSO に加え CPT(Compliant Piled Tower) SPAR や FPS(Floating Production System) などが用いられる 図 世界の大水深海洋石油 天然ガス開発マップ ( 出典 :JOGMEC 大水深石油開発のトレンド : 概説 ) 図 開発水深の推移 ( 出典 : 国土交通省海事レポート 2015) -26-

31 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 洋上石油生産設備の水深推移 ( 出典 : 海洋工学ハンドブック ( 第 5 版 )JOGMEC 編 ) 2 極地海域での石油 天然ガス開発既発見の深海域の巨大石油 ガス田の他 ニューフロンティアとして今後有望視されているのが北極圏での資源開発である 元々北極圏にはかなりの量の地下資源が眠っていると言われてきたが 地球温暖化の影響で海氷面積が減少するに伴い資源探査も容易になり 資源量の推定が正確になりつつある また 2008 年の米国地質調査所の調査によると 北極海には石油は世界全体の 13% (900 億バレル ) 天然ガスは同 30%(1,670 兆立方フィート ) も埋蔵していると推定されるなど 近年 そのポテンシャルに注目が集まっている このため 近年 ロシアやノルウェーを中心に開発が進められている これに対し 我が国政府も 我が国の北極政策 を策定し 北極海における資源開発に中長期的に取り組む姿勢を示している 尚 2014 年現在で 進められている開発プロジェクトの位置を図 に示す -27-

32 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 1 シュトックマンガス田 2 プリラズロムノエ油田 3 カラ海探鉱鉱区 4 バレンツ海西部探鉱鉱区 5 グリーンランド東岸海域 図 北極圏プロジェクトの位置図 ( 出典 :JOGMEC 世界が注目するニューフロンティア北極圏資源開発 ( JOGMEC NEWS Vol.36)) 3 大水深海洋石油 天然ガスの開発と我が国の海洋資源開発技術伸長の取り組み海洋開発のフィールドが増加し 多様化するに従って これまでに無い新たな発想に基づく技術や設備が必要になる 例えば 昨今の海洋石油 天然ガス開発の沖合化に伴い 新しい油ガス田の探査掘削を行うドリルシップや FPSO 等の多数の洋上施設と陸の距離が遠くなると 人員や機材 消耗品等をより効率的に輸送するための設備やシステムが必要となる このようなニーズに対応するものとして 沖合に洋上中継基地 ( ハブ浮体 ) を設置し 陸からハブ浮体まで人員や物資を船舶で大量輸送した上で ハブ浮体から多数の洋上施設までの間をヘリコプター等で小口輸送する ロジスティックハブ システム が検討されている このような動きに呼応して 我が国造船 海運企業等は 上記のようなシステムの安全性評価をはじめとする 海洋開発フィールドで求められる新たな技術の研究開発と実用化を目的とする J-DeEP 技術研究組合 を 2013 年 2 月に設立し 同システムの実現に向けた調査研究を実施した 同組合は ハブ浮体の投入が想定される海域の気象 海象条件下における要求性能を踏まえ ハブ浮体等の試設計 実環境下における運航シミュレーション 安全性 経済性 システム稼働率の分析 リスク評価等 本システム導入にあたって想定される課題を網羅的に検証してきた ( 図 ) このように新たな技術を世界に先駆けて実現することは 日本企業の受注機会の拡大につながるだけでなく 新たな技術の導入が期待される海洋資源開発プロジェクトへの参画機会の拡大にもつながる さらに我が国企業が海外で海洋開発事業の実績を積むことは 将来的には我が国の排他的経済水域の資源開発にも貢献するものと考えられる なお 海外での海洋開発プロジェクトへの参画を見据えて 海洋開発事業の拡大が見 -28-

33 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 込まれる中南米 アジア等において ロジスティックハブ システムの導入に向け 関係政府機関 企業等との協議が進められている 図 Logistics Hub System For Passenger ( 出典 :J-DeEP 技術研究組合パンフレット ) 新たな資源開発への挑戦 (1) メタンハイドレート 1 メタンハイドレートとはメタンハイドレートは メタンと水が低温 高圧の状態で結晶化した物質である 日本の周辺海域において相当の量が存在していると見込まれていることから 将来の天然ガス資源として期待されている メタンと水だけで構成されているため 火を近づけると水に囲まれていたメタンが燃え 水だけが残る 日本の周辺海域に存在するメタンハイドレートは その堆積深度から表層型と砂層型に分類できる 表層型メタンハイドレートは水深 500 メートル以深の海底面付近に存在するもので 日本海側を中心に確認されている 表層型は 採掘しようとすると分解しガス化してしまい回収ができなくなるため 生産が難しいと考えられているが 資源量を把握するための調査が行われるなど 研究 調査が徐々に進められてきている 他方 砂層型メタンハイドレートは水深が 500 メートル程度の深い海底面下数百メー -29-

34 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 トルの砂層に存在するものである 砂層型は 通常のガス田とは異なり資源 ( ガス ) が自噴しないため 減圧法や加熱法というメタンハイドレート特有の採取方法などについて研究が進められているが 基本的には掘った資源を上げてくるという 従来の石油 天然ガスにおける掘削 生産手法の活用が可能であるとともに 探査も行いやすい また 砂層型のメタンハイドレートはある程度量が存在すると指摘されていることもあり 表層型よりも従来型の石油 天然ガスにより近い砂層型を中心に研究開発が進められている 図 に砂層型と表層型メタンハイドレートの概念図を示し 表 に砂層型と表層型の特徴を比較する 図 砂層型と表層型メタンハイドレートの賦存形態概念図 ( 出典 : 海洋エネルギー 鉱物資源開発計画 経済産業省) 表 砂層型と表層型の特徴 項目 砂層型 表層型 賦存形態 水深が 500 メートル以深の海底面下数百メートルの地層中に砂と混じり 水深 500 メートル以深の海底に塊状で存在する 合った状態で賦存する 賦存海域 東部南海トラフ海域を中心に相当量の賦存が見込まれている 日本海側を中心に確認されている 生産技術 技術開発 経済産業省の取り組み 自噴しないため 減圧法や加熱法という採取方法などについて研究が進められている 在来型石油 天然ガス資源の生産技術に加え 新たな技術開発が必要である 平成 30 年度を目途に 商業化の実現に向けた技術の整備を行う 採掘しようとすると 分解しガス化してしまい回収ができなくなるため 生産がなかなか難しいと考えられている 分布する海域や資源量等の本格的な調査の実施と その結果を踏まえた開発手法の検討が必要である 日本海側を中心に資源量を把握するため 平成 25 年度以降 3 年間程度で 広域的な分布調査に取り組む 海洋政策研究所第 97 回海洋フォーラム 石油 天然ガスを取り巻く現状 資料 (2012 年 ) に基づき作成 -30-

35 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 2 資源分布メタンハイドレートは世界の大洋の周辺に分布している その量は 石油 天然ガス 石炭などの化石燃料の総量にも匹敵すると推定されているが 海底堆積物中に存在する全てのメタンハイドレートが資源として使えるわけではない 資源として使えるためには 密集し まとまって存在している必要がある 図 に地球規模の分布 図 にBSR 6 からの日本周辺の分布推定海域を示す 図 メタンハイドレートの地球規模の分布 ( 出典 : 明治大学ガスハイドレート研究所ウェブサイト ) 赤は確認済み 黄色は BSR から推定 図 BSR から日本周辺でメタンハイドレートが分布すると推定される海域 ( 出典 : 明治大学ガスハイドレート研究所ウェブサイト ) 6 BSR については 次ページ 3 資源量 エネルギーポテンシャルを参照のこと -31-

36 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 3 資源量 エネルギーポテンシャル全世界の海域には 1,000~5,000 兆 m 3 の資源量が存在する推定されており その資源ポテンシャルは膨大である 在来型天然ガスの究極可採資源量 7436 兆 m 3 と比較すると 2~11 倍の量であり 海洋メタンハイドレートの 10% が開発可能になれば 34~172 年分の天然ガスの供給が可能になる 特に 日本周辺の全海域に分布するメタンハイドレートには約 12 兆 m 3 ( 日本の国内ガス消費量の 100 年分以上に相当 ) のメタンガス相当と推定されることから 日本のエネルギーセキュリティ確保に貢献する新たな国産エネルギー資源として期待されている メタンハイドレートの調査は 石油 天然ガスと同様に 反射法地震探査 ( 音波探査 ) によって実施される この調査データから BSR( 海底擬似反射面 :Bottom Simulating Reflector) と呼ばれる特徴的な反射面を確認することによって 地層中のメタンハイドレートの存在を推定している BSR は地層中に海底面とほぼ並行する形で表れ メタンハイドレートが安定的に存在する領域の基底部に相当する BSR 分布図は メタンハイドレートの存在 ( 平面的な広がり ) を知る手がかりとなる しかし BSR 分布図だけでは メタンハイドレートの資源量 ( 空間的な広がり ) を特定することはできない メタンハイドレートの賦存状態 ( どのような状態で存在しているか ) を把握するためには 詳細調査 ( 三次元地震探査特殊解析や掘削調査等 ) によって メタンハイドレート濃集帯の分布状況を知ることが必要である メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム (MH21) 8 は 石油公団他が 2000 年に取りまとめた BSR 分布図を基に 2001 年度から東部南海トラフ海域をモデル海域とした詳細調査 ( 三次元地震探査や掘削調査等 ) を実施してきた さらに 2007~2008 年度には 詳細調査による BSR の推定手法及びノウハウの新たな蓄積を活用して 日本周辺海域における既存二次元地震探査調査データの見直し作業を実施した これに基づき 東部南海トラフ海域に賦存するメタンハイドレートの資源量を約 1.1 兆 m 3 ( 日本の天然ガス消費量の約 13.5 年分 ) と算定し公表 (2007 年 経済産業省 ) した 表 に海域メタンハイドレートの資源量をまとめる 表 海域メタンハイドレートの資源量海域賦存量 ( 兆 m 3 ) 消費量との対比全世界の海域 1,000~5,000 在来型天然ガスの究極可採資源量 436 兆 m 3 と比較すると 2~11 倍の量日本周辺海域 12 日本の国内ガス消費量の 100 年分以上東部南海トラフ海域 1.1 日本の天然ガス消費量の約 13.5 年分 海洋政策研究所第 97 回海洋フォーラム 石油 天然ガスを取り巻く現状 資料 (2012 年 ) 及びメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム 日本周辺海域におけるメタンハイドレート起源 BSR 分布図 (2009 年 ) より作成 7 究極可採資源量 : 可採埋蔵量とその計算時点までの累計生産量を合わせた資源量 8 メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム (MH21): 平成 13 年 7 月に発表された 我が国におけるメタンハイドレー ト開発計画 を実現するため 平成 13 年度に設立された官民学共同の組織 -32-

37 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 4 採取方法メタンハイドレートの採集方法は 海底探鉱手法 自噴回収手法 土木手法 加熱法 減圧法 化学的手法など各種提案されているが 現時点では加熱法と減圧法が有力とされている ただし 加熱法と比較すると減圧法のほうがより効率的であるということが 2008 年カナダ北西部陸上の永久凍土帯における産出試験で判明したため 現在では減圧法が最も有力な生産手法と考えられている 同産出試験において 5.5 日間連続ガス生産を実現しており この方式による陸上での生産試験は成功したと言えるが 長期間の継続生産 海域での減圧法の効率確認などの課題が残されている a) 加熱法温水注入などでメタンハイドレート層の温度を上げることで メタンハイドレートからメタンを取り出す方法 メタンハイドレートからメタンが自壊するほど海底の温度を引き上げるには膨大なエネルギーを要する b) 減圧法海底下数百 m 程度に存在するメタンハイドレート層まで掘削し 生産井内を減圧することでメタンハイドレートをメタンガスと水に分解し ガスを採取する方法である ( 図 ) 日本では 2013 年 3 月に 渥美半島から志摩半島沖合で 約 6 日間にわたり減圧法によるガスの生産実験が行われ 日量平均 20,000m 3 の 累計約 120,000m 3 連続ガス生産が実施された 図 減圧法の概念図 ( 出典 : メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアムウェブサイト ) -33-

38 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 5 ロードマップメタンハイドレートフォーラム 2013( ) での メタンハイドレート開発研究の展望 で示されたメタンハイドレートの開発研究のロードマップを図 に示す 本ロードマップでは 砂層型メタンハイドレートについて引き続き海洋生産試験を推進し 平成 30 年代後半には民間主導の商業化プロジェクトが開始されるよう技術開発を進めていくこととされている 図 メタンハイドレート開発計画 ( 出典 : メタンハイドレートフォーラム 2013 メタンハイドレート開発研究の展望 ) -34-

39 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 (2) 海底鉱物資源開発 1 海底鉱物資源の概要近年 世界的に海底鉱物資源の権益を確保する動きが活発化している 海洋鉱物資源は 分布する場所 形成の仕方 形状 含まれる金属元素の違いなどから マンガン団塊 海底熱水鉱床及びコバルトリッチクラストの 3 種類に分けることができる 最近では 第 4 の資源としてレアアースを含む堆積物にも注目が集まり 学術調査の他 資源としてのポテンシャルを評価する試みも行われている 図 に海底鉱物資源分布概念図 表 に分布概要 表 に特徴を示す 図 海底鉱物資源の分布概念図 ( 出典 :JOGMEC ウェブサイト ) -35-

40 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 海底鉱物資源の分布概要 種類 海底熱水鉱床 コバルトリッチクラスト マンガン団塊 レアアース堆積物 海底分布の概要 海底面から噴出する熱水から金属成分が沈殿してできた銅 鉛 亜鉛 金 銀などからなる多金属硫化物鉱床で 海底面でチムニーやマウンドを形成する マンガン団塊と類似の鉄 マンガン酸化物で 海山の斜面や頂部の玄武岩などの基盤岩を厚さ数 mm から数 10cm でアスファルト状に覆っている 特にマンガン団塊に比べてコバルトの品位が 3 倍程度高く また微量の白金を含むのが特徴である 水深が 4,000 から 6,000m の比較的平坦な大洋底に半埋没している 直径 2~15cm 程度の球状ないし楕円状の鉄 マンガン酸化物の塊である マンガン 鉄を主成分とする酸化物で ニッケル 銅 コバルトなどの有用金属が含有されている 水深が 4,000 から 6,000m の比較的平坦な海底に分布する泥質な堆積物である 高濃度のレアアースを含んでおり 太平洋の広範囲に存在しているため資源量が膨大だと言われている ( 出典 :JOGMEC ウェブサイト ) 表 海底鉱物資源の特徴 項目 海底熱水鉱床 コバルトリッチク マンガン団塊 レアアース堆積物 ラスト 水深 700~2,000m 800~2,400m 4,000~6,000m 4,000~6,000m 含有する有用金属 分布海域 ( 代表的海域 ) 分布域の地形 地質 鉱石資料 銅 鉛 亜鉛 金 銀 レアメタル 海底拡大軸 背弧海盆 火山弧 ( 東太平洋海膨 沖縄諸島 伊豆 小笠原諸島など ) 過去 現在の熱水活動域 マンガン 銅 ニッケル コバルト 白金他大洋の海山 海台 ( 南鳥島 ウェーク島 マーシャル諸島 ハワイ諸島等周辺 平頂海山斜面部および平頂部 比較的凹凸に富む マンガン 銅 ニッケル コバルト他 大洋の深海底 ( ハワイ南東方海域など ) 比較的平坦 遠洋性堆積物分布 レアアースを含有 太平洋の海底に後半に渡って分布 ( 南東太平洋や中央太平洋 ) 平坦な海底 粘土状の堆積物 ( 出典 :JOGMEC ウェブサイト ) -36-

41 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 2 海底熱水鉱床の開発状況ここでは 海底鉱物資源の中から 海底熱水鉱床を取り上げ その開発状況につき概説する a) 概要海底熱水鉱床は 地下深部に浸透した海水がマグマ等により熱せられ 地殻から有用元素を抽出した 熱水 が海底に噴出し 周辺の海水によって冷却される過程で 銅 鉛 亜鉛 金 銀等の各種金属が沈殿してできたものである 一般に 海底熱水鉱床は 水深 1,000~3,000m の中央海嶺など海底が拡大する場所 ( 海底拡大軸 ) やニュージーランド~フィジー パプアニューギニア~マリアナ~ 日本に至る西太平洋の島弧 - 海溝系に分布し 世界で約 350 か所程度の徴候地が見つかっている 日本周辺海域では 沖縄トラフや伊豆 小笠原海域において 海底熱水鉱床の徴候が数多く確認されている 日本周辺海域の海底熱水鉱床は 世界的にも比較的分布水深が浅く 開発に有利であるとされている 我が国以外でも ロシア フランス 中国 韓国 インド ブラジルが国際海底機構から公海域での探査権を取得し 世界的にも権益確保の動きが活発化している また 韓国は トンガやフィジーの探査鉱区を取得して 掘削調査などを行っている さらに 民間企業の Nautilus Minerals 社がパプアニューギニアの領海内での開発を目指して 採鉱システムの開発を行っている b) 探査方法既存の熱水鉱床探査手法は 特徴的な海底地形や現在の熱水活動などを精密海底地形調査により摘出する方法が適用されている 一方で 海底地形からでは存在が把握できない潜頭性鉱床に対する探査手法は 大きな資源量が期待されているにもかかわらず 世界的に見ても確立されていない このことから 文部科学省認可法人として民間企業により技術研究組合 (J-MARES) が設立され SIP 課題 次世代海洋資源調査技術 において 熱水鉱床を対象とした調査システム 運用方法の確立を目的とした研究開発を進めており 将来の調査産業創出を目指している c) 全体システム全体システムは採鉱の母船となる採鉱船 採鉱物を海底から母船まで送る揚鉱管 採鉱機と揚鉱管を繋ぐフレキシブルホース 海底を走行し採鉱する採鉱機 システムを支援する DPS 9 や ROV/AUV および陸域への鉱石輸送を行うシャトル運搬船などによって構成される 全体システムの構成要素の概念図と必要となる機能を図 と表 に示す 9 DPS:Dynamic Positioning System の略称 従来のアンカーとチェーンによる機械的係留方式が困難な大水深の海域などに おいて 船または浮体式海洋掘削リグ ( 船型 半潜水型 ) を洋上の一定位置に保持するにあたり 船自体の持つ推進装置 ( スラ スター ) を自動的に制御することにより アンカーなしで船を定位置に保持するシステムを指す -37-

42 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 DPS 又は係留索 採鉱船 (Mining Vessel) 船型 半潜水型 SPAR 型 ROV/AUV 揚鉱管 (Riser System) フレキシブルホース 採鉱機 (Miner) 図 全体システムの概念図 ( 出典 : 海洋エネルギー 鉱物資源開発に関する取組と成果 今後の方向性について 2012 年 6 月 20 日 資 源エネルギー庁 ) 機材 表 採鉱全体システムの構成要素と必要となる機能 必要となる機能 採鉱母船 DPS または係留索で定位置を保持しながら 鉱物を海上まで引き上げ それをシャトル運搬船に積み込む すべての活動の基地となる艦体で 油ガス開発におけるプラットフォームと同等の揚鉱機能 管理機能 生活機能を有する DPS または係留索想定される海象条件のもとで採鉱船を定位置に保持する機能揚鉱管鉱石を採鉱船まで流体輸送する揚鉱装置フレキシブルホース採鉱機と揚鉱管をつなぐとともに採鉱機の活動を支援する 採鉱機海底で採鉱作業を行う 海底での走行機能 採鉱機能 およびモニタリング機能が必要である シャトル運搬船採鉱した鉱物を採鉱船から陸上まで輸送する ROV AUV 探査 海底環境のモニタリング 採鉱活動の支援 ( 出典 : 一般財団法人エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書, 2015 年 4 月 ) -38-

43 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 2.2 海洋再生可能エネルギー開発海洋再生可能エネルギー開発についても 今後の発展が期待される海洋開発の重要な分野である 以下に既に商業化されている洋上風力発電について エネルギー分布や賦存量 導入ポテンシャル 市場動向 今後の課題について概説する また 商業化に向け実証研究が進められている他の海洋再生可能エネルギー利用についても これまでの研究開発の経緯 今後の課題や見通し等について概説する 洋上風力発電風力発電は 風の運動エネルギーを風車によって回転エネルギーに変え その回転を直接 または増速機を経た後に発電機に伝送し 電気エネルギーに変換する発電システムである 風が持つ運動エネルギーは風を受ける面積に比例し 風速の3 乗に比例して増大する性質を持っており 理論的には風速が2 倍になると風力エネルギーは8 倍になる 従って より風の強い場所に設置すること 大きい翼で効率良く風を受けることが重要となる 風力発電は欧州を中心に導入 普及のための取り組みが進んでおり 近年では陸上風力発電 ( 図 2.2.1) のみならず 洋上に風車を設置する洋上風力発電の導入が進められている ( 図 2.2.2) ( 新出雲風力発電所 ) (London Array) 図 陸上ウィンドファーム 10 の例 図 洋上ウィンドファームの例 出典 : ユーラスエナジーウェブサイト 出典 :London Array ウェブサイト 10 ウィンドファーム (wind farm) とは 多数の風力タービンを 1 カ所に設置し発電する施設を言う -39-

44 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 (1) 洋上風力発電のメリット一般に 洋上の風速は強勢で乱れが小さいことから 風力発電に適している つまり 洋上では陸上よりも良い風況が得られる 世界の洋上の年間平均風力エネルギー密度の分布を図 に示す 北半球冬季は 特に米国東岸や英国 ノルウェー沖の北海 日本沿岸域などの風況が良い また 豪州沿岸 南アフリカ アルゼンチン南部などは一年を通して風況に恵まれている 海上風 ( 高さ 10m) の平均風力エネルギー密度図 世界の風力エネルギー密度分布 ( 洋上 ) 出典 :NASA ウェブサイト風力エネルギーは風速の3 乗に比例して増大するため 経済性を確保するためには 風況の良い場所の選定が必要であり その目安は年間平均風速 7m/s 以上とされている 図 及び図 に 日本の陸上と洋上の風力ポテンシャルマップを示す 図 から分かるように 陸上において 7m/s 以上の風況を得られる地域は少ないが 北海道や北東北を中心に風況に恵まれた地域も存在する 一方 洋上において 7m/s 以上の風況を得られる地域 ( 下図のオレンジや赤い部分 ) が陸上より多く 北海道や北東北 関東 九州などを中心に洋上の風況に恵まれている ( 図 2.2.5) -40-

45 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 日本の風力ポテンシャルマップ ( 陸上 ) 出典 : 平成 22 年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業 ( 風力エネルギーの導入可能量に関する調査 ) (2011, 資源エネルギー庁 ) -41-

46 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 日本の風力ポテンシャルマップ ( 洋上 ) 出典 : 平成 22 年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業 ( 風力エネルギーの導入可能量に関する調査 ) (2011, 資源エネルギー庁 ) -42-

47 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 (2) 洋上風力発電の導入ポテンシャル 1 導入ポテンシャルに関する用語の定義今後日本ではどの程度洋上風力発電が見込まれるのか その量を表す用語として 賦存量 導入ポテンシャル 導入可能量 がある 其々の定義は 以下の通りである a) 賦存量賦存量とは 設置可能面積 平均風速 河川流量等から理論的に算出することができるエネルギー資源量である b) 導入ポテンシャル導入ポテンシャルとは 自然要因 ( 標高 傾斜など ) 法規制( 自然公園 保安林など ) 等の開発不可能地を除いて算出したエネルギー量である c) 導入可能量導入可能量とは 経済性 ( 固定価格買取制度 収益率など ) を考慮し 導入ポテンシャルから絞り込んだエネルギー量である 2 導入ポテンシャル及び導入可能量の試算洋上風力発電については 試算によって幅はあるが 導入可能量は 17 万 kw~4500 万 kwの間とされている これは一般的な家庭の消費電力に換算すると12 万世帯 ~3,200 万世帯分に相当する また 洋上風力の電力供給エリア別の導入ポテンシャル分布状況を図 に示す 同図より 電力供給エリア別の導入ポテンシャル分布状況を見ると 九州エリアが最も大きく 全体の 29% を占めており 北海道エリアが 26% 東北エリア 14% でそれに続いている なお 九州地域の中でも 風速 m/s 及び m/s のエリアにおける導入ポテンシャルが特に大きく それぞれ全国のポテンシャル全体の 12% と 9% を占める 図 洋上風力の電力供給エリア別の導入ポテンシャル分布状況 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) ( 平成 22 年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査 (2011, 環境省 ) より NEDO 作成 ) -43-

48 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 (3) 市場動向 1 世界の導入実績世界及び主要国における洋上風力発電累積導入量の推移は図 の通りであり 近年堅調な伸びを見せている 2011 年の累積導入量が 4,117MW に対し 2014 年に 8,739MW となっており 3 年の間に倍増していることがわかる 世界的に見ると イギリスの導入量が最も多く 全体の 50% を占めている 次いで デンマーク ドイツ ベルギーと続いており 遠浅の地形が多く地理的なメリットのある欧州で先行して導入が進められていることがわかる 中国もベルギーに次いで導入量が多く 積極的な取り組みが窺える 日本でも導入が進められているものの 世界的に見るとその量は僅かであるのが現状である 図 世界及び主要国における洋上風力発電累積導入量の推移 出典 : Global Wind Report Annual Market Update(2014, GWEC) 2 洋上風力発電産業におけるプレイヤーと市場シェア a) サプライチェーン洋上風力発電産業を担うプレイヤー ( 企業 ) には どのようなものがあるだろうか 導入で先行する欧州において市場が拡大するにつれ サプライチェーンが構築されつつある 図 に 洋上ウィンドファームの主要構成要素とプレイヤーを示す 図 に示 -44-

49 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 -45- すように 洋上ウィンドファームの主要構成要素としては 風力発電機 洋上変電所 海底送電線 通信ケーブル 港湾施設などが挙げられ 様々な企業が関わっている 風力発電機については かねてからデンマークとドイツの企業が 主要サプライヤーとしての役割を果たしてきた また オランダ ベルギー 英国の企業は 北海の石油 ガス開発のノウハウを生かし, 海洋土木工事の分野で重要な役割を果たしている 関連電気設備や海底ケーブルのサプライヤーは ノルウェーやスウェーデン ドイツ イタリアなど 各国に分散している 近年 洋上風力市場を牽引しているイギリスは 洋上風力発電産業に積極的に投資しており 北海における国内外市場への展開を見据え 同国東海岸に関連設備を増強している このように 欧州は洋上風力発電市場を支えるサプライチェーンの拡充が進んでおり 同市場の成長を支える基礎となっている 日本勢でも 三菱重工業等が風力発電機の市場に参入している 図 洋上ウィンドファームの主要構成要素とプレイヤー 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) ( Wind in our Sails (2011, EWEA) よ り NEDO 作成 ) b) 企業別市場シェア 風力発電機市場の現状 洋上風力発電の主要構成要素である 風力発電機の市場シェアについて 少し詳しく見てみる i) 世界の市場世界の市場シェアについては 洋上に限定したデータが見当たらないため 風力発電

50 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 機全体の市場について 図 にシェアの推移を示す 2010 年には欧米メーカーがシェアを落とし 中国メーカー 4 社が上位に進出した (Sinovel 第 2 位 Goldwind 第 4 位 Dongfang 第 7 位 United Power 第 10 位 ) 中国メーカー各社は 欧米メーカーから技術供与を受け 低コストの製品を量産している 中国国内市場の立ち上がりによって生産量を大きく伸ばし 生産技術の習熟 サプライチェーンの拡大を進めている 生産能力の拡大によって 近年は国内市場に加え 海外市場への進出も進んでいる また 独自の技術開発を積極的に進めており 陸上風力発電に加えて 洋上風力発電市場の獲得に向けた取り組みも進められてきた しかし ここ数年で上位企業は大きく様変わりし 2012 年は中国メーカーがシェアを落とす一方で 欧米メーカーがシェアを取り戻している (GE Energy 第 1 位,Vestas 第 2 位 Siemens 第 3 位 Enercon 第 4 位 ) この巻き返しの背景には 欧州メーカーが陸上風力発電に加えて 洋上風力発電市場の獲得に向けた動きを加速させたことにある 特に Siemens はシェアを伸ばしており 欧州企業が産業を牽引している現状が ここからも見て取れる 欧州や中国メーカーと比較して 日本メーカーは世界市場におけるシェアは小さいのが現状である 図 風力発電機の世界市場シェア (2010 年 ~2012 年 ) 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) (Emerging Energy Research 資料,BTM Consult ApS 資料より NEDO 作成 ) -46-

51 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 ii) 欧州市場世界の洋上風力発電市場の中心となっている欧州の市場の現状を見てみる 洋上風力発電市場においては現在 Siemens と Vestas の寡占状態にあり その他 Repower や Winwind,BARD,GE,Areva などが少量を供給している ( 図 ) しかし Doosan Gamesa Alstom Nordex 三菱重工業なども洋上風力市場参入への動きを見せており メーカー間の競争が激しくなることが予想されている 図 欧州の洋上風力発電機の市場シェア (2012 年時点 ) 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) ( The European offshore wind industry-key trends and statistics 2012 (2013, EWEA) より NEDO 作成 ) iii) 日本の市場日本国内の市場シェアについては 洋上に限定したデータが見当たらないため 風力発電機全体の市場について示す 2008 年時点では 日本国内市場の風力発電機については 大半が欧米製であった ( 図 ) 日本メーカーの市場シェアが小さい要因の一つとし 市場が未成熟であることが挙げられる 世界市場シェア上位のメーカーは いずれも拡大する自国市場において技術 実績を確立し 世界展開している企業である 一方 日本の風力市場は海外と比較して小さく 海外市場で競争力を発揮できる日本メーカーを育成する環境が整っていなかったという背景がある しかし 図 に示すように 国産機の導入割合は 2002 年頃から少しずつ増加しつつあり 日本メーカーも巻き返しを図りつつある -47-

52 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 風力発電機の日本市場シェア (2008 年 ) 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) 図 日本における海外機 国産機別導入割合 ( 累積基数 ) の推移 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) 3 発電コスト表 に 陸上及び洋上における風力発電の発電コストを示す 陸上風力発電の発電コストは 世界的に見ておおむね 10 円 /kwh 前後であり 従来型電源に対してコスト競争力を持つ水準にある 洋上風力発電のシステム価格は陸上風力発電の約 2 倍であるが 陸上よりも風況が良く 約 50% 程度多い発電量を得られるため 陸上風力発電とほぼ同水準の発電コスト ( 約 8~15 円 /kwh 程度 ) が実現可能とされている 但し この値は水深が 50m 未満の遠浅 -48-

53 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 海域に広く導入が進んでいる欧州の着床式洋上風力を前提としたものであり 日本で実証研究が進められている浮体式洋上風力発電については 同水準の発電コストを達成可能か否かは留意が必要である. なお 日本の風力発電の発電コストについては 国家戦略室のコスト等検証委員会で検討が進められており 陸上風力発電は好条件が揃った場合で約 10 円 /kwh と, 火力発電 ( 石炭,LNG) と同程度の発電コストになり得るという試算結果が示されている 洋上風力発電については 9.4~23.1 円 /kwh と 陸上風力発電よりも高めの発電コストになると試算されている 同委員会の報告書では 洋上風力発電では 送電線の敷設コストが陸上より高価になることが指摘されている 表 風力発電の発電コスト 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) (4) 研究開発動向 1 洋上風力発電の形態 着床式から浮体式へ 洋上風力発電は 海底に直接基礎を設置する着床式と 浮体を基礎として係留などで固定する浮体式に分類される このうち商業化されているのは着床式のみであり 浮体式については 商業化に向けた研究開発が進められている 図 に洋上風力発電の形態と水深の関係を示す -49-

54 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 洋上風力発電の形態と水深の関係 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO)( Dynamics Modeling and Loads Analysis of an Offshore Floating Wind Turbine (2007, NREL) より NEDO 作成 ) 洋上風力発電の商業化が進んでいる欧州の場合は 遠浅の海岸が多く 気象条件も比較的安定していることから ほとんどが着床式の洋上風力発電である 着床式洋上風車の支持構造の例を図 に示す 海底に 1 本の杭を打ち込むモノパイル式や コンクリートのケーソンを基礎とする重力式が主に用いられている これらの方式は 水深 20~30m までの海域が設置の目安となるが それより深くなると 深さに応じてコスト高となる また モノパイル式の場合には, 強度の維持が取りにくくなり 施工自体も難しくなる このため トライポッドと呼ばれる三脚式, あるいは格子梁 ( ジャケット式 ) などの立体骨組構造が有利となる 例として スコットランド近くの北海にあるベアトリスウィンドファーム実証プロジェクトでは 水深 45m において 2 基の 5MW 風車がジャケット構造物の上に設置されている しかし 水深が 50m 程度にまで達すると 浮体式の支持構造のほうがより経済的とされている -50-

55 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 着床式洋上風車の支持構造の例 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) ( Wind in our Sails (2011, EWEA) より NEDO 作成 ) 以上のことから 着床式は水深の浅い沿岸部に適するに対し 浮体式が適した水域は 50m から 200m 程度の水域であると言える 日本の場合は 近海には遠浅の海岸が少なく また 台風の襲来など 気象条件も比較的厳しいのが現状である 着床式の場合 台風などによって設備が損壊する危険性が大きい それに比べて 浮体式の場合は 強風によって海が荒れても 基礎が海底に固定されていないので 設備が損壊する危険性が少ないと言われる 一方で 着床式ではほとんど動揺が無いが 浮体式では 海面に浮かんだ風車と基礎構造物は, 風や波の影響によって生じる負荷を受けて動揺するため 設計上の技術が求められる こうした特性を踏まえて 現在日本沿岸での実証研究が進められており 将来的には浮体式洋上風力発電が普及するとみられている 浮体式で提案されている主要な支持構造の例を図 に示す スパー式は 浮力体を垂直方向に延長することによって浮力体の大部分を水没させる型式である また 緊 -51-

56 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 張係留式プラットフォーム (tension leg platform:tlp, 張力脚式と呼ばれる場合もある ) は 強制的に半潜水させた浮力体と海底を緊張係留ラインで結び, 強制浮力によって生じる緊張力を利用して係留される形式で セミサブ式は甲板 コラム フーティング等から構成され 所定の喫水まで沈めて半潜水状態となる形式のものである 図 浮体式洋上風車の支持構造の例 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) ( Wind in our Sails (2011, EWEA) より NEDO 作成 ) 2 浮体式の実証研究事業日本においては 2001 年度から複数の機関で 浮体式洋上風力発電の研究が実施されてきた ( 表 2.2.2) 2009 年 京都大学 佐世保重工などが 2MW クラスの風車をスパー型の浮体に搭載する想定で 10 分の 1 モデルの浮体を海上に浮かべる実験を実施した 2010 年度からは環境省が 浮体式洋上風力発電の実用化を目指し 100kW 級浮体式洋上風力発電実証事業 を開始した 2010 年度には 環境影響評価方法の検討 地域受容性評価 基本設計などを実施し,2011 年度の準備期間を経て 2012 年 6 月には洋上設置に成功 2013 年 10 月には 2MW の風車を導入して運転を開始した NEDO においては 2011 年度に 浮体式洋上風力発電に係る基礎調査 が実施された また 2012 年度からは経済産業省において 浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業 を開始し 福島県沖で事業を推進しており, その第一歩として,2MW クラスの浮体式洋上風車を 2013 年 11 月に運転開始した -52-

57 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 日本における浮体式洋上風力発電の研究開発の状況 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) 海外に目を向けると ノルウェーにおいて Statoil 社が また ポルトガルにおいて PrinciplePower 社が 実証試験を実施しており 世界的にも浮体式風車の実用化に向けて開発競争の時代に入りつつある また 2010 年 3 月 IEC ( International Electrotechnical Commission) の国際会議において 韓国から浮体式風車の国際標準化に向けた提案が行われ 日本が培ってきた技術的知見などを取り込みつつ 2015 年に最終ドラフト化されている (5) 風力発電のロードマップ 1 欧州主要国欧州主要国における導入目標を表 に示す 洋上風力発電の導入を推進している英国は 再生可能エネルギーに係る EU 指令で設定された導入目標 (2020 年までに 15%) を達成するため UK Renewable Energy Roadmap を策定し その中で 2020 年までに陸上風力発電 10~13GW, 洋上風力発電 11~18GW の導入が見込めると分析している また 環境先進国であるドイツでは EU 指令における導入目標を上回る 2020 年までに 35% という野心的な目標を掲げている 風力発電については 2020 年までに陸上風力発電 35.75GW 洋上風力発電 10GW の導入見通しを示している デンマークやスペインも野心的な導入目標を掲げている -53-

58 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 欧州主要国における導入目標 (2020 年 ) 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014,NEDO) 2 日本日本においては 国としての風力発電導入目標量は掲げられていない 環境省は 2012 年 8 月 31 日に グリーン成長の実現 と 再生可能エネルギーの飛躍的導入 に向けたイニシアティブを発表した その中で 今後 特に導入戦略が必要と考えられる再生可能エネルギーの一つに洋上風力発電を挙げ 各種施策を実施することによって 2020 年までに 400MW 2030 年までに 5,860MW を導入するシナリオを提示している (6) 今後の課題日本において洋上風力発電を推し進めていくためには 日本海側の冬季雷のような欧州とは異なった気象 海象条件や 沿岸に浅海域が少ないことなど 日本特有の諸条件を克服して必要がある 一般財団法人エンジニアリング協会の平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書の中では 我が国の洋上風力発電を今後推し進めていく際の課題として以下が挙げられている 1 全般 海外企業に勝る性能およびコスト競争力を持つ風力発電機の開発が必要である 洋上風力発電では 関係者( 特に水産関係者 ) との協力 協調を醸成していく必要がある 国内市場での技術力の育成 国際市場の獲得 国際標準への貢献が必要である 厳しい環境( 塩害や波浪等 ) に耐え得る高性能 高信頼性を追及していく必要がある 2 発電コストの低減 システム価格や運転保守費の低コスト化を図る 開発費および運転保守のコスト低減を図る 稼働率や設備利用率を上げて 十分な発電量を確保する 風車の大型化(6~7MW 10~20MW) により 基礎構造物や建設コストの相対 -54-

59 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 的な低減を図る 交通船や作業船の開発 環境整備 港湾や船舶等のインフラ整備を図る 遠隔監視システムによる各パーツの健全性確認 定期的な点検や計画的な補修を行い 運転保守費の抑制を図る 3 設置可能地域の拡大 着床式洋上風力発電の確実な推進を図る 深い水深対応の浮体式上風力発電の技術を確立する 国内市場の拡大を図る 4 技術開発の推進 風車の大型化に向けて ドライブトレインや長翼ブレードを開発する フルスケール機による発電試験 遠隔監視技術を可能にする 基礎構造物の十分な検討を図る ( 設計 製作 施工 運転保守 撤去等総合的に ) 比較的安価で精度よく風況観測可能な洋上風況観測技術を確立する 5 系統連系対策 発電量予測の高度化を図る 系統の整備 強化を図る 出力 周波数変動対策を変電所内や系統側で実施して 狭域 広域による制御の検討できるようにする 6 環境調和と地域協調 環境影響評価の適切な実施を行う 地域や海域の状況に応じた総合的な観点から協議していく 海域利用者との協調を醸成する その他発電システム (1) 波力発電波力発電は波のエネルギーを利用した発電システムで 約 1 世紀にわたる技術開発の歴史がある 波力発電システムは主に振動水柱型 可動物体型と越波型という 3 種類に区分される また 海中に浮遊させる浮体式と 沖合または沿岸に固定設置する固定式とがある 波力発電システムについては 4 章で詳しく紹介する 1 波力エネルギーの分布と賦存量 a) 世界の波力エネルギーの分布と賦存量世界の波力エネルギーの分布試算例を図 に示す 世界的には 北大西洋 北太平洋 南米の南岸及び南オーストラリアの海域に大きな波力エネルギーが存在している 偏西風の影響によって 一般に波力エネルギーは大陸西海岸が大きく 東海岸は小さい傾向にある また 世界の波力エネルギーの理論的な賦存量は 8,000~80,000TWh/ 年である -55-

60 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 世界の波力エネルギーの分布 ( 年平均 :[kw/m]) 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) ( An International Vision for Ocean Energy (2012,IEA-OES) より NEDO 作成 ) b) 日本の波力エネルギーの分布と賦存量図 に 日本沿岸における湾岸線の単位長さあたりの波力エネルギー分布 (kw/m) を示す 図より 日本はユーラシア大陸の東側に位置することから 波力エネルギー密度が沿岸で 10kW/m 未満 沖合で 10~20kW/m 未満と 諸外国と比較して大きくないが 福島県 - 静岡県の沖や伊豆諸島 宮古島 - 石垣島の周辺は 日本では波力エネルギーが大きいところである なお 2011 年度の NEDO による 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 では 波力エネルギーの賦存量 ( 沖合 100km まで ) は 195GW と試算されており これは 2010 年の大手電力会社 10 社の総発電容量 ( 約 207GW) に相当する 図 日本沿岸の波力エネルギーの分布 (kw/m) -56-

61 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 出典 : 高橋重雄 日本周辺における波パワーの特性と波力発電 港湾技術研究資料 No 波力発電のポテンシャル世界の波力エネルギーの理論的な賦存量は 8,000~80,000TWh/ 年 このうち現状技術による発電ポテンシャルは 45,000TWh/ 年とする試算例がある 一方 日本近海の波力エネルギーのポテンシャルについては 1970~80 年代に実施された前田と木下らによる日本近海 および高橋らによる日本沿岸の波力エネルギー試算例がある また 最近では 東京都の呼び掛けで設置された 波力発電検討会 や NEDO によってポテンシャルが試算されている 表 に 海洋エネルギーのポテンシャル試算例 ( 波力発電 ) を示す 波力エネルギーの賦存量 ( 沖合 100km まで ) は 195GW と試算されている ただし 波力エネルギー密度が諸外国と比較して小さいことから 現状技術を想定した場合の発電可能量は 19GWh( 年間電力需要の約 2%) と試算されている 表 海洋エネルギーのポテンシャル試算例 ( 波力発電 ) 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) ( 前田久明木下健 波浪発電 (1979) 生産研究 31 巻 11 号, 高橋重雄 日本周辺における波パワーの特性と波力発電 (1989) 港湾技術研究 資料 No.654, 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 (2011,NEDO) より NEDO 作成 ) -57-

62 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 3 導入事例波力発電は近年 太陽光発電 風力発電と並ぶクリーンな発電方法として 欧州を中心に各国で開発が進められてきた 2008 年 9 月 ポルトガル沖で Pelamis 波力発電装置を用いた 総出力 2,250kW(750kW 機 3 基 ) の商用プラントが運転を開始したが 数週間で故障が発生し 運転停止となった 欧州海洋エネルギーセンター (EMEC) において改良機である Pelamis II の実証試験が行われていたが 2013 年 7 月にプロジェクトに参加していたドイツのエネルギー会社 E.ON 社が撤退したことを受け プロジェクトの大幅な見直しを迫られた 4 プロジェクトの事例 a) 欧州の事例欧州では 再生可能エネルギーを支援することによって世界の気候変動の脅威を打破するため またクリーン技術の主導的地位を得て経済成長のチャンスを掴むべく 産学官が連携して意欲的な取り組みが進められている 波力発電についても 1970 年代以降に関心が高まり 多くの研究開発が行われてきた 1970 年代のエネルギー危機後に研究開発予算は縮小したものの 周辺海域の波力エネルギー密度が高い英国を中心に 1990 年半ばから再び活発化し 多くのベンチャー企業が波力発電の開発に参入している 近年では大手開発事業者が同分野に参入し始めている 更に欧州では 表 で示すサイトに代表される実証試験サイトが複数 整備されており 企業の技術開発推進に大きく貢献している 表 欧州の主要な実証試験サイト 実証試験サイト EMEC ( スコットランドオークニー島 ) Wave Hub ( 南西イングランド ) Wave Energy Centre ( ポルトガル ) 概要実機スケールの実証試験が可能 送電線も整備 陸上までの海底ケーブル 変電所 風速 波高等の計測所 オフィス データ解析施設等を備える 近くに新たな実証サイトを整備する予定 世界最大の波力発電実証試験サイト 実機スケールの実証試験が可能 送電線も整備 ( 系統連系 ) 実証試験サイトを提供する他 企業の R&D 支援 海洋関係機関 ( EU-OEA や IEA-OES 等 ) の活動への参加 各種レポートの作成も実施 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) 最も進んでいるのは英国であり 研究開発段階に応じて 体系的な実証試験サイトが整備されている 中でも EMEC (European Marine Energy Centre) は スコットランド政府を代表してハイランド開発公社 (Highlands and Islands Enterprise) が招集した複数の公的機関および組織から約 500 万ポンドの出資を受け 2004 年 8 月に開設され 研究実証セン -58-

63 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 ターとして機能している 出資者には スコットランド開発公社 (Scottish Enterprise) オークニー諸島議会 (Orkney Islands Council) など地元スコットランドの組織をはじめ 英国貿易産業省 (DTI) やカーボントラストなどが含まれる EMEC のあるオークニー諸島は海洋条件に恵まれており 波力発電のフルスケール実証機の実海域試験を行うことができる 波力発電については深水域 ( 水深約 50m) のテストサイトを 5 つ 浅水域のテストサイトを 1 つ 陸上までの海底ケーブル 変電所 風速や波高などの計測所 オフィスおよびデータ解析施設などを備えている. 波力のテストサイトでは最大波高 15m の波を連続的に受けることができる また より波の穏やかな場所で実海域試験ができるサイトも用意されている また EMEC には 後述する潮流発電についても フルスケール実証機が備えられ 実海域試験を行っている 出典 :EMEC ウェブサイト 図 EMEC 実証試験サイト ( 波力サイト ) また 2010 年に南西イングランドの Wave Hub では 実機スケールの実証試験を行うことが可能である 2002 年に北東イングランドに整備された Narec では 初期試作機となる 1/10 スケールモデルの実証試験が行われている その他 ポルトガルの Wave Energy Centre などが整備されている b) 日本の事例日本の波力発電の開発は 1919 年に千葉県大東崎で実施された 振り子式および空気圧縮式の波力発電装置の現地実験に始まる 1965 年には 海上保安庁によって浮体式振動水柱型装置の益田式航路標識用ブイ ( 最大出力 30~60W) が採用され 世界で初めて実用化された波力発電装置となった 特に日本は四方を海に囲まれていることから 波力発電への期待は高く 海明 や -59-

64 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 海陽 ( 表 2.2.6) など さまざまな波力発電装置の実海域実験が精力的に行われた 2003 年に終了した マイティホエール の研究開発以後 日本では大規模な実証プロジェクトは行われておらず 結果として 継続的に研究開発を進めてきた欧米に遅れを取る状況にある 表 日本の主要な大規模実証プロジェクト ( 波力発電 ) 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) ( 海洋エネルギーの利用技術に関する現状と課題に関する調査 (2008,NEDO) 波浪エネルギー利用技術の研究開発 - 沖合浮体式波力装置 マイティホエール の開発 - (2004,JAMSTEC) より NEDO 作成 ) しかし 近年の世界的な海洋エネルギー技術開発の活発化や 再生可能エネルギー導入普及のニーズの高まりを受け 海洋エネルギー利用が再び脚光を浴びており 日本でも NEDO が中心となって海洋エネルギーの研究開発プログラムを実施している ( 表 表 2.2.8) -60-

65 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 NEDO の海洋エネルギー技術研究開発 (1/2)( 波力発電 ) 機械式 空気タービン式 ジャイロ式 (Power Bouy) ( 振動水柱型 ) 事業期間 H23~27 年度 H23~27 年度 H23~27 年度 イメージ 体制 三井造船 ( 株 ) 三菱重工鉄構エンジニアリング ( 株 ) 東亜建設工業 ( 株 ) 日立造船 ( 株 ) ( 株 ) ジャイロダイナミクス 原理 波の上下運動をラック & ピニオンで回転運動に変換し 発電機で発電 波で生じる空気室の動揺を空気タービンの回転運動に変換し発電機で発電 波による上下運動をフライホイルの回転運動に変換し発電機で発電 開発項目 同調制御を利用した 緊張係留によるパワーブイの開発 空気室とウォールによる共振現象を利用した 高効率な防波堤設置の波力発電の開発 密室構造で発電機が外気 海水に接しないジャイロ式の波力発電の開発 設備容量 定格 80kW 級 定格 100kW 級 定格 100kW 級 寸法等 フロート直径 :8.5m 全高 53m( 海面上 10m) ウォール幅 :20m ウォール奥行 :10m 係留装置 :26mX3.4mX 29.4m( 基礎含む ) 浮体 :4.2mX3.4mX 14.8m 表 NEDO の海洋エネルギー技術研究開発 (2/2)( 波力発電 ) 越波式 リニア式 事業期間 H24~27 年度 H26~29 年度 イメージ 体制 市川土木 ( 株 ) 協立電機 ( 株 ) いであ ( 株 ) 釜石 大槌地域産業育成センター 東京大学 東北大学 横浜国立大学 ( 独法 ) 海上技術安全研究所 原理 越波による位置エネルギーをタービンの回転運動に変換し 発電機で 波のうねりによる上下運動を利用したリニア式波浪発電 発電 開発項目 傾斜角度と水槽容量の最適化及び放流管等への生物付着対策による高効 次世代同調制御とアレー制御技術の開発 率越波式の波力発電の開発 設備容量 25kW 級 200kW 寸法等 デバイス幅 :20m 奥行 :5m 高さ :5m フロート直径 :7m 重量 :200t 出典 : 一般財団法人エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書, 平成 27 年 4 月 (NEDO 資料よりエンジニアリング協会作成 ) 5 市場動向現在 波力発電の商用プラントは稼動していないが 英国のスコットランドを中心とする欧州各国でフルスケール実証機が設置され 実用化に向けた技術開発を推進している 技術開発が順調に進み 投資が活発化した場合 2020 年頃までに欧州を中心に初期 -61-

66 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 市場が形成されると見込まれている 6 ロードマップ a) 欧州のロードマップ欧州では 英国 アイルランド デンマーク フランス スペイン ポルトガルが海洋エネルギー導入目標を設定している 特に英国は 世界に先駆けて非常に野心的な導入目標 (2020 年までに 2GW) を掲げている 英国内でも 特にスコットランドが海洋エネルギー利用に積極的な取り組みを見せており 2020 年までに 1.6GW の導入目標を掲げている うち 0.6GW は波力発電で 導入目標達成に向けて 世界初の海洋エネルギー発電事業のための海域商用リースとなる ROUND1 プロジェクト (Pentland Firth and OrkneyWaters Round 1 Project) が開始されている b) 日本のロードマップ日本では 政府として波力発電についての導入目標値は掲げられていない 日本の海洋エネルギー資源利用推進機構 (OEA-J) が作成した 2050 年に向けた海洋エネルギー開発ロードマップで 波力発電については 2020 年までに 51MW 2030 年までに 554MW 2050 年までに 7,350MW の発電規模が期待されるとしている 表 OEA-J による波力発電の導入ロードマップ 前提条件 1: 日本周辺の波パワーの平均 7kW/m 前提条件 2: 日本沿岸の総延長 5,000km 前提条件 3: 日本周辺の波パワー総量 ( 前提条件 1 2 より 3,500 万 kw) の利用率 6.5% 前提条件 4: 稼働率 :Onshore25% Near-shore27% Offshore40% 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO)( 海洋エネルギー資源フォーラム 資料 (2008, 海洋エネルギー資源利用推進機構 ) より NEDO 作成 ) 7 今後の課題波力発電は 現在は欧州では商用化発電が始まった一方 我が国では実証試験が再開されたでところであり 今後の導入を推進していくうえで 課題が残されている 一般財団法人エンジニアリング協会の平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書の中では 今後の課題として以下が挙げられている a) 全般 日本の自然条件下( 欧州より波エネルギー密度が低い ) で成立する高効率 高信頼 -62-

67 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 性 低価格の波力発電装置を開発する必要がある 日本の高度の技術力を活かし 海外市場で競争力を有する装置開発 国内企業の育成を図る必要がある 関連海域での水産関係者を始めとする 地域との協調を図ることが必要である b) 高効率 高信頼性装置の開発 波力発電装置( タービン 発電機 ) 低コストで早期実現 エネルギー交換の中枢部の技術的確立 モニタリングシステム( 装置 海象 ) 遠隔操作システム 海洋環境への対応( 付着物防止 塩害 錆防止 漏水防止 ) c) 低コスト化の実現 イニシャルコストの削減( 低コスト材料 係留 送電線 施工技術 量産技術 ) ランニングコストの削減( 運転 保守管理 ) 競争力のある価格で製品の提供 d) 分散型電源としての実用化 国内導入促進 小規模は水産養殖用や製氷用の電源 離島等での独立系統として ディーゼル発電の補助用や代替電源用 国内導入促進により 技術改良 運用ノウハウ 実績の蓄積 国内企業の育成 e) 国内外の大規模システムへの導入 海外展開 送電技術の高度化 遠距離送電システム 出力の平滑化( エネルギー貯蔵 洋上水素製造 ) 国内で培った技術 ノウハウ 実績 早期に海外市場へ進出 市場シェアの獲得 (2) 潮流 海流 潮汐発電潮流発電 海流発電 潮汐発電は 海水の運動エネルギーを利用して タービンによる回転運動に変換させて発電する方式である 発電システムの詳細については 第 4 章を参照されたい 潮流発電潮流発電は 潮流の運動エネルギーを利用し タービンによって回転エネルギーに変換して発電する方式である 潮流は 月と太陽の引力で生じる周期的な変動である 潮汐 によって起こる水平方向の流れであり 潮の干満によって規則的に流れるため 発電に利用する場合には予測が可能であり信頼性の高いエネルギー源となる 流速に対する地形の影響が大きく 海峡や水道などの流路の幅が狭い地点では 流速が速くなるため 発電量も大きくなる -63-

68 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 海流発電海流は 太陽熱と偏西風などの風によって生じる大洋の大循環流であり 地球の自転と地形によってほぼ一定の方向に流れている 海流発電は 一般的にエネルギー変換装置として水車を用い 海流の運動エネルギーをタービンの回転を介して電気エネルギーに変換する発電システムである 潮汐発電潮汐発電は 潮汐に伴う潮位差を利用してタービンを回し発電する方式で 潮流発電や海流発電とは異なり 水力発電の応用であるため 古くから実用化されている技術である 水力発電と同様の原理を用いて 潮位差が大きい湾や河口の入り口などにダムと水門を建設し 潮汐差によって生じる水位差によって発電する. 基本的には満潮時に貯水し 干潮時に水門を開いて水を放出することによって発電機を回して発電する 主に干潮時の一方向の流れによってのみ発電する方式と タービンが双方向の流れに対して回転し 交互に発電できる二方向方式がある 1 潮流と海流の分布 a) 潮流及び潮汐の分布 i) 世界潮汐と潮流は ともに天体の運行に基づく海水の運動であるため 変化の周期などは同一に表される しかし 潮汐の大きさと潮流の最強流速の関係は場所によって異なり 潮汐は大きいものの潮流が微弱な場所や 潮汐は小さいものの潮流が極めて強い場所など様々で 地域性が非常に強いエネルギーであるといえる 図 に 世界の潮位分布 ( 主太陰半日周潮 11) を示す 図 から 欧州近海やカナダ北東部 中国から朝鮮半島沿岸で大きな潮位が見られる したがって こうした海域で潮汐発電導入のポテンシャルが高いと考えられる 図 世界の潮位分布 ( 主太陰半日周潮 ) 出典 : An International Vision for Ocean Energy (2012,IEA-OES) 11 主太陰半日周潮 : 月による起潮力を調和分解して展開したときの最大の振幅をもつ項 M2 分潮とも呼ぶ -64-

69 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 これに対し 潮流は 流速に対する地形の影響が大きい すなわち 海峡や水道などの流路の幅が狭い水域では流速が速くなる ii) 日本の潮流 潮位の分布図 に 日本の潮流エネルギー密度を示す 図 より 日本で潮流が強い個所のほとんどは 瀬戸内海と九州西岸にあることがわかる また 津軽海峡でも強い潮流が見られる なお 潮汐発電は 満潮時と干潮時の潮位差が大きいほど大きな潮汐力エネルギーが得られ 一般に潮位差 5m 以上が実用化の目安となっている 諸外国には 10m 以上の潮位差が得られる地点が存在するのに対し 日本では 最も好条件の有明海でも最大潮位差 4.9m であり ポテンシャルは小さいとされている 図 日本の潮流エネルギー密度 [kw/m2]( 月齢周期平均 ) 注 : 海図に記載のある日本沿岸の海峡 瀬戸 水道など 281 地点のうち 流速表示のある 150 地点 出典 : 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 (2011,NEDO) b) 海流の分布 i) 世界の海流の分布海流は季節によって流速が変化する海流や 時期によっていくつかのパターンのうちのいずれかになる海流など 流速や流向が潮汐周期よりも長い時間スケールで 安定的に変化するものもある 図 に世界の主な海流の分布を示す 世界の海流の代表的なものは黒潮 メキシ -65-

70 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 コ湾流 ( 北大西洋海流 ) 南インド海流などであり これらは特に流速が速く 流量が多い 図 世界の主な海流の分布 1 黒潮 2 親潮 3 北太平洋海流 4 北赤道海流 5 赤道反流 6 南赤道海流 7 南インド海流 8 南大西洋海流 9 北大西洋海流 10 南極海流 11カリフォルニア海流出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) ( 気象庁ウェブサイトより NEDO 作成 ) ii) 日本の海流の分布日本周辺には黒潮が流れているため 海流エネルギーのポテンシャルは大きい 図 に 日本の海流エネルギー密度を示す 安定した海流エネルギーが得られる地点としては 八重山諸島 トカラ列島 足摺岬沖 八丈島沖などが挙げられる -66-

71 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 図 日本の海流エネルギー密度 [W/m 2 ] 出典 : 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 (2011,NEDO) 2 潮流 海流 潮汐発電のポテンシャル表 に日本の海洋エネルギーのポテンシャルを示す NEDO によって現状技術を想定した場合の発電可能量と試算されている 潮流の場合は 6TWh 海流の場合は 10 TWh 潮汐の場合は 0.38/TWh と試算されている 表 日本の海洋エネルギーのポテンシャルポテンシャル (MW) 潮流海流潮汐 海洋エネルギーポテンシャル 22, , 導入ポテンシャル 1,870 1, 発電ポテンシャル 海洋エネルギーポテンシャル : 海水のもつ物理的な位置エネルギー 運動エネルギー導入ポテンシャル : 物理的条件を考慮し 発電デバイスを理想的に海上または陸上に敷設した場合に得られる設備容量 (MW) 発電ポテンシャル : 物理的条件を考慮し 発電デバイスを理想的に海上または陸上に敷設した場合に得られる年間を通じた総発電量 (TWh/ 年 ) 出典 : 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 (NEDO ) -67-

72 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 3 導入事例 a) 潮汐発電潮汐発電は 水力発電の応用技術であることから古くから実用化されており 海洋エネルギー利用を先導する技術である ただし 前述したとおり 日本の潮汐発電のポテンシャルは小さいことから 国内で稼動しているプラントはない 表 に 海外の主要な潮汐発電所を示す 潮汐発電プラントとして最も有名なランス潮汐発電所は ランス川河口に位置し 潮位差が最大 13.5m 平均 8.5m と潮汐発電に適した潮位条件をもつ ( 図 ランス潮汐発電所 ( フランス )) 1967 年から発電を開始しており 46 年間にわたる稼動実績がある 長さ 750 メートルの堤防下に出力 10MW の円筒水車 (4 枚羽根横軸円筒カプラン水車 )24 台が設置されており 最大定格出力は 240MW 年間の発電量は約 600,000MWh, 平均出力は約 68MW である タービンは双方向に機能し 川の流れと潮汐を相互に利用する仕組みとなっている また韓国では 世界最大規模となる始華湖潮汐発電所 ( 発電出力 254MW) が 2011 年に運転を開始した ( 図 ) 同国では さらに数ヵ所の潮汐発電が計画されている 表 世界の主要な潮汐発電所 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) -68-

73 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 出典 :Tidal Energy ウェブサイト 図 ランス潮汐発電所 ( フランス ) 図 始華湖潮汐発電所出典 : 韓国海洋研究所ウェブサイト b) 潮流発電及び海流発電前述の通り 潮汐発電は 1967 年から実用運転が行われているのに対し 潮流発電は実証試験段階であり 海流発電は実証研究に取り掛かった状況である -69-

74 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 4 プロジェクトの事例 a) 欧州の事例欧州では 波力発電の項で 実証初期段階用のサイトとして紹介した Narac が 2002 年に北東イングランドに整備されており 前述の EMEC などのフルスケールの実証実験に進む前段階での検証が行われている 潮流発電については 3MW 級のドライブトレインやブレード試験を行うことが可能である また 前述の EMEC において 波力発電だけではなく 潮流発電のフルスケール実証機の実海域試験を行っている 潮流発電については 水深 20~50m の 5 つの試験サイトがあり 大潮時には 4m/sec の潮流を得ることができる また 波力サイトと同様 陸上までの海底ケーブルや変電所 風速や潮流速度などの計測所 オフィス データ解析施設などを備えている より潮流の穏やかなテストサイトも別途用意されている 図 EMEC 実証試験サイト ( 潮流サイト ) 出典 :EMEC ウェブサイト また 2013 年 9 月にスコットランド政府が スコットランドとオークニー諸島を隔てるペントランド海峡 (Pentland Firth) における Meygen 潮力発電施設の建設を承認し 商業化に向けた実証研究プロジェクトが進行している Meygen 潮力発電施設は 2020 年代初めまでに 398MW の電力を供給することが期待されている b) 日本の事例 NEDO では 平成 23 年 (2011 年 ) 度から海洋エネルギーの技術研究開発に取り組んでおり 潮流 海流発電では 表 ~ 表 に示す 9 件が実施されている また 環境省の平成 26 年度潮流発電技術実用化推進事業として 長崎県五島市沖 ( 東亜建設工業 ) と兵庫県淡路市岩屋沖 ( 三菱重工業 ) の 2 箇所が採択され 潮流発電の開発や実証がスタートした -70-

75 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 NEDO の海洋エネルギー技術研究開発 (1/3)( 潮流 海流発電 ) 着定式 (H23) 浮体式 (H24) 水中浮遊式 (H23) 事業期間 H23~25 年度 H26~29 年度 H24~27 年度 H23~27 年度 H26~29 年度 イメージ 体制 川崎重工業 ( 株 ) 九州大学 (H26 より ) 三井海洋開発 ( 株 ) ( 株 )IHI ( 株 ) 東芝 ( 株 ) 三井物産戦略研究所 (H27 まで ) 東京大学 (H27 まで 原理 海底にブレードや発電機等からなるナセルを設置し 潮流の流体エネルギーを回転運動に変換し発電機で発電 浮体構造物に垂直タービンを適用し 潮流の流体エネルギーを回転運動に変換し 発電機で発電 海中に浮遊式のブレードや発電機等からなる装置を設置し 潮流の流体エネルギーを回転運動に変換し発電機で発電 開発項目 設備やメンテナンスの際に 潜水士を不要にする海底設置式の潮流発電の開発 新型ナセル ブレード 荒天時に耐えうる浮体構造 係留方法の確立と共に 高効率垂直式潮流タービンの開発 浮体 係留システムの安定性やメンテナンス性の高度化タービン発電機の高効率化 設備容量 定格 100kW 級 25kW 級 定格 2000kW 級 寸法等 海底設置 : 水深 30~50m 水中翼直径 :18m ナセル長 :17m 鉛直軸ロータ : 直径 15mX 長さ 20m 浮体 : 直径 29mX 高さ 7m 水深対応 :18m 以上 タービン直径 :40m 幅 :29.4m( ブレード含め ) 奥行 :10m 表 NEDO の海洋エネルギー技術研究開発 (2/3)( 潮流 海流発電 ) 油圧式 (H24) 橋脚利用式 (H24) 相反転プロペラ式 (H25) 事業期間 H24~27 年度 H24~25 年度 H25~27 年度 イメージ 体制 佐世保重工業 ( 株 ) 東京大学九州大学 ナカシマプロペラ ( 株 ) 五洋建設 ( 株 ) 広島工業大学 ( 株 ) 協和コンサルタンツアイム電機工業 ( 株 ) 前田建設工業 ( 株 ) 九州工業大学 早稲田大学 原理 上げ潮 下げ潮にそれぞれ対応したツインロータにより 潮流の流体エネルギーを回転運動で油圧に 上げ潮 下げ潮に一枚翼により 潮流の流体エネルギーを回転運動に変換し同期発電機で発電 相互に逆回転する二段のプロペラと内外二重の回転電機子から構成される相反転方式の発電ユニット 変換し 油圧式の同期発電機で発電 開発項目 ツインブレードの開発 対称ブレードの開発 相反転プロペラ式ロータ 高効率油圧制御システムの開発 橋脚設置用の基礎開発 設備容量 250kW 級 100kW 級 ~900kW 寸法等 浮遊設置 : 水深 15~50m ブレード直径 :3.0m 湯量 :200 リットル 基礎構造 : 幅 9mX 長さ 20m ( 橋脚構造 : 幅 25mX 高さ 25m) ブレード直径 :3.2m ブレード直径 :7.0m -71-

76 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 NEDO の海洋エネルギー技術研究開発 (3/3)( 潮流 海流発電 ) 海中浮遊式 (H25) 垂直軸直線翼式 (H26) 橋脚 港湾構造物仕様式 (H26) 事業期間 H25~27 年度 H26~29 年度 H26~29 年度 イメージ 体制 ( 株 ) 大島造船所中国電力 ( 株 ) 三菱重工業 ( 株 ) サイエンスリサーチ ( 株 ) 広島工業大学 原理 ツインロータ 2 組 ( 双発 ) からなる海流発電装置 自律型姿勢制御シ 潮流の流体エネルギーを垂直軸直線翼により 回転運動に変換した 海峡や瀬戸において 既存の構造物を活用した潮流発電 ステム技術は 海流中の挙動変化に応じた期待の安定性と発電効率の最適化 発電機で発電 開発項目 インテリジェント自律型姿勢制御システム技術 低回転 高効率 IPM 型多極発電機と垂直軸翼の開発 垂直軸型揚力式タービン 非接触動力伝達機構 設置 メンテナンス施工方法 設備容量 2MW 級 50kW 型 120kW 級 寸法等 ブレード直径 :45m 翼車 : 高さ 12m 外径 10m 水深 :20m 流速 0.5~1.5m/s ブレード長 :5m ロータ直径:5m 最大注速 :3.5m/s 出典 : 一般財団法人エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書, 平成 27 年 4 月 (NEDO 資料よりエンジニアリング協会作成 ) 5 市場動向現在 潮汐発電の稼働実績がある一方 潮流と海流発電については 商用プラントが稼動していない現状である しかし 欧州各国でフルスケール実証機が設置され 実用化に向けた技術開発を推進している 6 ロードマップ a) 欧州のロードマップ欧州では 英国 アイルランド デンマーク フランス スペイン ポルトガルが海洋エネルギー導入目標を設定している 特に英国内では 海洋エネルギー利用に積極的な取り組みを見せており 2020 年までに 1.6GW の導入目標を掲げている うち 1GW は潮流発電で達成する計画である b) 日本のロードマップ日本の海洋エネルギー資源利用推進機構 (OEA-J) が作成した 2050 年に向けた海洋エネルギー開発ロードマップで 潮流発電については 2020 年までに 130MW 2030 年までに 760MW 2050 年までに 7,600MW の発電規模が期待されるとしている -72-

77 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 OEA-J による潮流発電の導入ロードマップ 前提条件 : 稼働率 :30% 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) ( 海洋エネルギー資源フォーラ ム 資料 (2008, 海洋エネルギー資源利用推進機構 ) より NEDO 作成 ) 7 今後の課題前述のように 潮汐発電はフランスや韓国で 200MW 以上の大規模な商用化が行われているが 潮流発電は MW 級の実証試験段階であり 海流発電は実証研究に取り掛かった状況である 日本では潮汐発電には取り組んでいないが 潮流発電や海流発電の実証試験段階にあり 今後の導入推進のためには 課題が残されている 一般財団法人エンジニアリング協会の平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書の中では 今後の課題として以下が挙げられている a) 全般 日本の自然条件下で成立する高効率 高信頼性 低価格の潮流 海流発電装置を開発する必要がある 日本の高度な技術力を活かし 海外市場で競争力を有する装置開発 国内企業の育成を図る必要がある 関連海域での水産関係者を始めとする 地域との協調を図ることが必要である b) 発電コストの削減 発電効率の向上( 発電機の高効率化 最適制御 ) 流速条件の良好な適地選定 イニシャルコストの削減( 低コスト材料 係留 送電線 施工技術 量産技術 ) ランニングコストの削減( 運転 保守管理 ) c) 高耐久化 海洋環境への対応( 付着物防止 塩害 錆防止 漏水防止 ) 機器への負荷緩和( キャビテーション防止 乱流の把握 ) d) 管理 運用 海流発電出力の平滑化( エネルギー貯蔵 ) モニタリングシステム( 装置 海象 ) -73-

78 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 遠隔操作システム 最適運転制御システム 海水中の浮遊物除去 (3) 海洋温度差発電海洋温度差発電 (Ocean Thermal Energy Conversion:OTEC) は 表層の温かい海水 ( 表層水 ) と深海の冷たい海水 ( 深層水 ) との温度差を利用する発電技術である 海洋の表層 100m 程度までの海水には 太陽エネルギーの一部が熱として蓄えられており 低緯度地方では年間を通じてほぼ 26~30 程度に保たれている 一方 極地方で冷却された海水は 海洋大循環に従って低緯度地方へ移動する 移動によって 周辺の海水との間に温度差が生じ 密度が相対的に大きい極地方からの冷たい海水は深層へと沈み込んでいく 表層水と深層 600~1,000m に存在する 1~7 程度の深層水を取水し 温度差を利用して発電する 海洋温度差エネルギーは 昼夜の変動がなく 比較的安定したエネルギー源であり 季節変動が予測可能であるため 計画的な発電が可能となり 将来的にはベース電源のひとつとして期待できる 1 海水温度差の分布 a) 世界の海水温度差の分布図 に表層と深層 1,000m との海水温度差分布を示す 海洋温度差発電では 経済性を成立させるために平均的に 20 程度の温度差が必要とされている 海の表層と深層 1,000m との温度差は赤道付近で大きく インド 東南アジア オーストラリア南部 メキシコ ブラジル アフリカ中部などの沖合が温度差に恵まれている 単位 : 図 表層と深層 1,000m との海水温度差分布 出典 : 佐賀大学海洋エネルギー研究センターのウェブサイト -74-

79 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 b) 日本の海水温度差の分布 日本周辺の海洋温度差分布を図 に示す これによると 沖縄 ~ 紀伊半島や小笠 原の温度差が比較的大きく 海洋温度差発電に適した海域である 図 日本周辺の海水温度差 出典 : 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 (NEDO 2011) 2 海洋温度差発電のポテンシャル IEA-OES の資料によると 世界の海洋温度差エネルギーの年間発電量は 理論的には 10,000TWh とされている 一方 日本の経済水域内の熱エネルギーの総量は 106,000TWh と試算されており このうち 1% を電力として取り出した場合でも発電電力量は 1,060TWh となり 日本の年間電力需要を賄える規模となる これは約 1 億トンの石油に相当するエネルギー量である また 2010 年度に NEDO により実施された 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 では 日本の排他的経済水域 (EEZ) 内の発電ポテンシャルを 1,368TWh( 表層 - 深層間の温度差が 20 以上の海域を対象とした場合 ) と算定しており 前述した概 -75-

80 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 算値とほぼ同様の数値となる ( 表 ) 表 海洋温度差発電の発電ポテンシャル (MWh/ 年 ) 1: 沿岸固定, 離岸距離 30km 以内 2: 沖合浮体, 離岸距離 30km 以内 3: 沖合浮体, 離岸距離制限なし 出典 : 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 (2011,NEDO) 3 導入事例 現在 商用運転している海洋温度差発電プラントは 国内外とも存在しない 実証試 験プラントについては 日米欧で建設されている 4 プロジェクトの事例表 に 世界の主要な海洋温度差発電実証プラントを示す 海洋温度差発電の歴史は古く 1881 年にはフランスでその原理が提唱されていた 1970 年代のオイルショック以降 各国で研究開発が進められてきたが これまでの実証試験は 100kW 級にとどまっており 実用化には 1MW 以上の実証試験が不可欠であるとされている 日本の技術レベルは現在 世界トップレベルであり 近年 米国などから協力依頼および共同研究の依頼が多数きている 日本の現在の技術的地位を維持するためにも MW 級の実証試験を早急に実施する必要がある 2011 年から開始された NEDO の 風力等自然エネルギー技術研究開発海洋エネルギー技術研究開発 では 海洋温度差発電については, 佐賀大学および神戸製鋼所の研究グループのプロジェクトが採択されている -76-

81 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 表 世界の主要な海洋温度差発電実証プラント 出典 : 海洋エネルギーの利用技術に関する現状と課題に関する調査 (2008,NEDO) -77-

82 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 5 研究開発の動向 日本は 世界最高レベルの海洋温度差発電研究設備を持つ佐賀大学海洋エネルギー研 究センター ( 図 ) の長年にわたる研究開発により 技術面で世界に先行している 図 佐賀大学海洋エネルギー研究センター 30kW 海洋温度差発電システム 出典 : 佐賀大学海洋エネルギー研究センター 日本の海洋温度差発電技術の優位性は コア技術となる海洋温度差に特化した熱交換器 世界最高レベルの効率を誇る発電サイクル システム制御技術およびそれらを組み合わせた高度なプラントシステムの設計技術にある また 日本は海洋深層水の汲み上げ実績で世界トップレベルであり 取水技術の信頼性は高い 2013 年 4 月には沖縄県久米島において 実海水を用いて発電を行う設備としては世界で唯一となる実証試験プラントが稼働を開始した 図 沖縄県海洋温度差発電実証設備 出典 : 沖縄県海洋温度差発電実証設備ウェブサイト -78-

83 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 一方で 1990 年代の実証試験を境に 一時 研究開発が行われていなかった海外においても 研究開発を再開する動きが見られる 2008 年には 米国エネルギー省 (Department of Energy:DOE) の海洋エネルギー推進プロジェクトの一貫として海洋温度差発電が盛り込まれ ハワイ州では米国エネルギー省の支援によって 10MW 級の実証試験が計画されている フランス 台湾 韓国など数多くの国々においても数 MW 級の開発プロジェクトが計画されている 日本の技術競争力を保ち かつ世界市場シェアを獲得していくためには 国内での迅速な実証実験の実施および他国の追随を許さないコア技術の研鑽に取り組む必要がある 6 ロードマップ a) 米国のロードマップ米国ハワイ州は 同州の再生可能エネルギーの導入計画の中で 海洋温度差発電を 2015 年までに 35MW 2030 年までに 365MW 以上導入する目標を掲げている ( 表 米国ハワイ州の導入ロードマップ ) 表 米国ハワイ州の導入ロードマップ 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO) (HCEI Road Map より NEDO 作成 ) b) 日本のロードマップ日本では 海洋温度差発電の導入目標値は掲げられていない OEA-J が作成した 2050 年に向けた海洋エネルギー開発ロードマップ ( 表 ) によれば 海洋温度差発電については 2020 年までに 510MW 2030 年までに 2,550MW 2050 年までに 8,150MW の発電規模が想定あるいは期待されるとしている 表 OEA-J による海洋温度差発電の導入ロードマップ 注 : 発電端出力に対する設備利用率は 56% としている 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 (2014, NEDO)( 海洋エネルギー資源フォーラム資料 (2008, 海洋エネルギー資源利用推進機構 ) より NEDO 作成 ) -79-

84 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 7 今後の課題海洋温度差発電は 現在は実証試験段階で商用化発電はまだ実現していない 我が国は世界の最先端の研究を進めており 太平洋やインド洋でのプラント計画も支援しているが 今後の導入推進の上では課題も残されている 一般財団法人エンジニアリング協会の平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書の中では 今後の課題として以下が挙げられている a) 全般 大型化プラント(MW 級 ) の実証試験により 技術開発の推進 信頼性の向上を図る必要がある コア技術を確立して 国際競争力をつけて 日本の技術的優位性の維持する必要がある 関連海域での水産関係者を始めとする 地域との協調を図ることが必要である b) コア技術の確立 チタン製プレート型熱交換器 発電効率の向上( サイクル熱効率 高効率作動流体 高効率新サイクル ) 制御技術 プラントシステムの設計技術 c) 発電コストの低減 材料の低コスト化 施工費の削減( 新型取水管 取水管敷設の高度化 ) メンテナンス費削減 d) 事業性の向上 モニタリングや海洋環境予測のシステム開発 遠隔操作システム( 特に沖合浮体型 ) 表層水側の熱交換器や配管の汚れ 排水による環境への影響 大規模プラント技術の確立 高度な全体システム構築 大規模化での発電コスト低減 複合利用( 海水淡水化 漁場造成 冷熱利用等 ) -80-

85 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 < 参考資料リスト> (1) 森島宏 : 天然ガスのすべて -21 世紀の主役エネルギーの最新知識, 石油 / 天然ガスレビュー, 2014 年 (2) ( 社 ) 日本船舶海洋工学会海中技術研究会編 : 海洋底掘削の基礎と応用, 成山堂書店,2010 年 (3) 社団法人日本エネルギー学会天然ガス部会編 : 天然ガスのすべて -その資源開発から利用技術までー, コロナ社,2008 年 (4) 山崎豊彦 : オイルフィールド エンジニアリング入門 - 石油 天然ガスを開発するー編, 海文堂,2002 年 (5) BP: BP Statistical Review of World Energy stical_review_of_world_energy_2013.pdf (6) 石油連盟編 : 今日の石油産業 2015, 2015 年 (7) 佐尾邦久 : 海洋開発産業の全体像, 海洋 油開発と船舶 学 ( 講演資料 ) %E6%96%B0).pdf (8) みずほ銀行産業調査部 : 海洋資源開発産業の現状と展望 2014 年 (9) Infield Systems 社ウェブサイト (10) 一般財団法人エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書,2015 年 4 月 (11) JOGMEC: 大水深石油開発のトレンド : 概説, 2014 年 (12) 国土交通省 : 海事レポート 2015, 2015 年 (13) JOGMEC 編 : 海洋工学ハンドブック第 5 版,2010 年 (14) JOGMEC: 世界が注目するニューフロンティア北極圏資源開発, JOGMEC NEWS Vol.36, 2014 年 (15) J-DeEP 技術研究組合パンフレット (16) 経済産業省 : 海洋エネルギー 鉱物資源開発計画,2013 年 (17) 松山泰浩 : 海洋政策研究所第 97 回海洋フォーラム講演 石油 天然ガスを取り巻く現状 ~メタンハイドレート開発を中心に~ 2012 年 (18) メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム : 日本周辺海域におけるメタンハイドレー -81-

86 海洋開発産業概論 教材 2 章海洋開発産業の背景と現状 ト起源 BRS 分布図,2009 年 (19) メタンハイドレートフォーラム 2013 資料 メタンハイドレート開発研究の展望 (20) 明治大学ガスハイドレート研究所ウェブサイト (21) メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアムウェブサイト (22) JOGMEC ウェブサイト海底鉱物資源 (23) 資源エネルギー庁 : 海洋エネルギー 鉱物資源開発に関する取組と成果 今後の方向性について,2012 年 (24) NEDO: 再生可能エネルギー技術白書第 2 版,2014 年 (25) ユーラスエナジーウェブサイト (26) London Array ウェブサイト (27) 資源エネルギー庁 : 平成 22 年度新エネルギー等導入促進基礎調査事業 ( 風力エネルギーの導入可能量に関する調査 ) 報告書,2011 年 (28) 石原孟 : 我が国の洋上風力発電の技術課題と将来展望, コースタル テクノロジー 2012 特別記念講演, (29) 国土交通省 : 洋上風力発電の市場について ( 発表資料 ) (30) 高橋重雄 : 日本周辺における波パワーの特性と波力発電, 港湾技術研究資料 No.654, 1989 年 (31) EMEC ウェブサイト (32) Tidal Energy 社ウェブサイト (33) 韓国海洋研究院ウェブサイト (34) NEDO: 海洋エネルギーポテンシャルの把握に係る業務 報告書, 2011 年 (35) IEA-OES : An International Vision for Ocean Energy,2012 (36) NEDO: 海洋エネルギーの利用技術に関する現状と課題に関する調査 報告書, 2008 年 (37) 佐賀大学海洋エネルギー研究センターウェブサイト (38) 沖縄県海洋温度差発電実証設備ウェブサイト

87 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 3 海洋石油 天然ガス開発の実際 3.1 一般的な開発の全体工程 開発の全体工程一般的な石油 天然ガスの資源開発は 図 に示すようなプロセスで進展する まず鉱区取得から始まり 有望な油ガス田の探査 試掘などによる確認 商業生産の可能性評価 施設の計画や生産施設の建設等を経て生産までの油ガス田で行われる直接的な開発工程を上流 その後の原油などをから生産地から精製基地までの輸送や 石油精製品の製造などを下流と区別することもある 本章では 上流部門を対象に開発工程を概説する 可採埋蔵量をすべて採取し終えた油ガス田は終末期を迎え廃坑とされるが プロジェクトの着手から廃坑まで 10 年 ~30 年の長期にわたる事業である また 入札から生産へ移行するまで一般的には 4~5 年の期間を要している 図 石油 天然ガス資源開発プロジェクトにおける開発の流れ 出典 :JOGMEC 基礎講座テキスト 開発技術 -83-

88 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 -84- 上流部門における各段階の概要は以下のとおりである (1) 鉱区取得石油 天然ガス資源の開発プロジェクトの第一歩は 産油国 産ガス国が設定する鉱区権の取得である 鉱区権は の所有者が行う鉱区の入札等により取得する あるいは 既に鉱区権を保有する石油開発企業から譲渡を受けるなどの方法が一般的である (2) 探鉱鉱区の地層中に 石油 天然ガスの存在を実際に確認し かつその埋蔵量や油 ガス層の状況が商業的に成功する可能性があるかを 種々の手法を段階的に駆使して調査を行い 総合的な検討を行う 地層を広域的に調べる地質学的な調査 物理探査などから開始し 油井を実際に掘削し石油 天然ガスの存在を確認する試掘井の掘削 油ガス層の広がりを調査する評価井の掘削などが行われる (3) 開発鉱区内で確認された油ガス層について技術的な面からの検討に加えて 経済的にも商業生産が可能と判断されると 原油 天然ガスの生産 貯蔵 出荷施設等の設計から建設 パイプライン敷設 生産井の掘削など 商業化へむけて開発が行われる ガスには パイプラインなどでガスとして供給するケースと 液化して専用タンカー等で供給するケースがある 液化プラント設備は大規模設備であり 採算性の検討に与える影響が極めて大きい ガス田の開発においては この期間に長期間に亘る顧客を確保することも重要なタスクである (4) 生産全ての生産施設 設備の建設が完了した後 試運転等などで性能の確認を行い 石油 天然ガスの生産を始める 生産開始後には 所期の生産量を確保することが重要であり 安全管理 の状態監視と変化があった場合の対策 設備機器の維持管理などが行われている (5) 廃坑生産を続け経済的な埋蔵量をすべて汲み切れば その油ガス田の寿命は終了し 坑井の廃坑や生産施設の撤去などを行う 契約や撤去に伴う法的な処置を終えて 石油開発の一連の工程は終了する 各段階での主なタスク (1) 鉱区取得アメリカやカナダなどを除くほとんどの国では 地中に存在する石油 天然ガスなどの所有権は国家に属するものとしている そのため 石油 天然ガス開発は 相手国政府の鉱区設定から公募による入札開始 開発希望者の入札 入札評価などの手続きを踏むことが一般的で 落札後に相手国政府と石油開発に関する契約を結ぶ 契約に関しては第 6 章にて述べる

89 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 (2) 探鉱 1 探鉱の流れ探鉱の中心的な業務は 油 ガスが胚胎している可能性が高いと推定される地下構造を抽出するために行う地質学的調査 物理探査 石油地質評価 および試掘井の掘削である 代表的な流れを図 に示す 試掘により油 ガスを持つ層が発見されると 全体の生産能力と可採鉱量を求めるための詳しい評価を行う 必要があれば 物理探査や評価井の掘削を追加的に実施することもある 次の段階として 生産施設の規模等についても技術的な検討とともに 経済性の検討を行う 開発が経済的にも可能であると判断された場合には 開発計画を策定 の開発実施へと移行していく なお 試掘の結果が不成功だった場合や 不採算と判断された場合には 鉱区権は放棄される 図 開発における探鉱の流れ出典 :JX エネルギー社ウェブサイト 2 探査の方法 a) 地質学的調査石油や天然ガスの鉱床が形成される機構から 鉱床の存在は 個々の堆積盆地の地質学的特性と大きく関係していると考えられている 従って 表面地層の分布などの地質学的特性を調査することで 石油の生成された場所である根源岩や 最終的な集積場所である貯留岩の分布の可能性についてある程度の予測が行える 地質学的調査としては 地表面の踏査 航空写真や衛星写真など解析等が行われている b) 物理探査地下構造を探るために行う調査が 物理探査 ( 物理探鉱 ) である 岩石や地層は固有の物理的特性をもっており 物理的特性を直接あるいは間接的に測定して地下構造を調べる方法を地球物理探査 あるいは単に物理探査という 物理探査の対象となる物性には 重力や磁力などの直接測定できる特性と 地震波の伝播速度や比抵抗など人工的に何らかのエネルギーを投入して得られた測定値を解析し 間接的に解明可能な物性とがある -85-

90 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 主な物理探査法の概要は以下のとおりである i) 地震探査法 : 地下を進む地震波は 速度や密度の変化する地層の境界面で反射 屈折を起こす 人工的な発振源から地震波を起こし そこから一定距離を離れた受信点で反射波や屈折波を観測して 地下の構造や物性分布を推定する方法で 最も一般的な方法である 特に反射波を用いるものを反射波地震探鉱と呼び 屈折波を用いる場合は 屈折波地震探鉱と呼んでいる 石の探鉱は地下深部を対象とすることが多く 反射法が一般的である ii) 重力探査 : 地球が均質な完全な回転楕円体であると仮定すれば 地球上のあらゆる場所の重力値は理論値として決まる しかし 地層による密度差 山塊など周辺地形や潮位変化の影響 地球内部の不均質さ等から観測値は理論値と異なる この重力の偏差を地表や水底において測定し 地質構造を推定し鉱床の存在可能性を調査する探査法が重力探査である 微細な構造解析には適さない概査法の一つであり 探鉱の初期段階で磁力探査とともに用いられることが多い iii) 磁力探査 : 地球磁場の歪みを測定することにより地下構造を解明しようとする探査の方法である 自動車 航空機 船により実施可能で空間内の磁力を連続的に測定し 磁性の大きい造岩鉱物の基盤岩の構造を調べる堆積盆地評価を目的とした概査法の一つである c) 海洋での地震探査海中で音波を発生させると 海底下に伝播してゆく過程で海底面や地層の境界面で一部エネルギーが反射されてくる 海洋ではこの反射波を計測し処理することで地底構造を調べることができる 海中にいる魚群の検出や 水深を知るために利用される魚群探知機の送信器及び受信器が船底の一か所に設置されている点を除けば 同じ仕組みである 図 は地震探鉱で得られた地下構造断面の例である 図 地震探鉱記録断面の例 ( 左 : 二次元探査 右 : 三次元探査 ) 出典 : 日本物理炭礦株式会社ウェブサイト探査船による地震探査 データ収録の仕組みを図 に示す 震源として 探査船の船尾付近に高圧空気を瞬間的に海中に放出することにより 音 -86-

91 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 波 ( 超音波 ) を発生するエアガンを曳航し さらに受振器として水中マイクロフォン ( ハイドロフォン ) を規則的な間隔で多数配列したストリーマケーブルを曳航する エアガンや受信機の位置を GPS 衛星の位置情報等を利用して精度よく計測しつつ 規則的に発信しデータを収録する 得られたデータに様々な処理を施し 実際の地層構造などが表現された反射記録を得る 図 地震探査データ収録の概念図 出典 : 日本物理炭礦株式会社のウエブサイトから 1 本のストリーマケーブルからは ストリーマケーブルに沿った断面のデータが得られる 1 隻の探査船でストリーマケーブルを複数本同時に曳航して受振器を適宜面的に配置すれば 一度に調査地域全体にわたって任意の断面のデータが得られる 前者を二次元地震探査 後者を三次元地震探査と言う 図 は 経済産業省が所有 JOGMEC が運航する物理探査船 資源 であり 三次元地震探査の専用船である エアガンは船尾から長さ 15m 程度の距離を曳航される浮き 6 本に吊るされており 長さ 4800m のストリーマケーブル 10 本を間隔約 100m で曳航する 図 物理探査船 資源 出典 : 物理探査ニュース No.10 ( 社 ) 物理探査学会 -87-

92 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 d) データの処理地下には反射面となる地層の境界が無数にあり 様々な深度で地震エネルギーが反射される 実際に収録されるデータは 残響より深い深度で反射してきた地震波と混ざり合った不明瞭な情報である 残響の影響を除去し各反射面を明瞭に復元する処理 ( デコンボリューション処理 ) や 数多くのデータの平均処理などによりノイズ成分を処理する等 多様な処理を経て震探断面が作成される データ処理は非常に多くの仮定からなるが 地域的な特性や費用を考慮して 必要かつ最適な処理の方法 手順が決定される e) 震探解釈作成された震探断面を基に地質的解釈を行う作業を震探解釈という 震探断面上の様々な形態的特徴から 地下構造 層序や地層の堆積のサイクル 堆積環境 岩相およびその分布 構造形成の時期などを推定し 堆積盆地の地史を解明する 解釈作業の一環として地下構造図 等層厚線図 堆積復元図等の各種図面を作成 試掘対象構造 ( プロスペクト ) を摘出し 地質学的調査の結果も合わせてその評価を行う 3 試掘 油 ガス層の存否やその広がりは 坑井を掘って実際に油 ガス層を掘り当てないと認知できない 未知の油 ガス層を探し当てるために掘られる坑井を試掘井と呼ぶ その後に油 ガス層の広がりや層の厚み等々の全体像の把握のために掘られる坑井を 探掘井と呼ぶ a) 掘削作業坑井の掘削作業には ドリルパイプの先端に取り付けたビットを回転させて岩石を粉砕し 掘削流体 ( 泥水と呼び ベントナイトやバライト等を混ぜて粘性や比重を調節した特殊な液体 ) を循環させて岩石の掘り屑を取り除きながら地層を掘り進むロータリー掘削方式が用いられている 海洋掘削は 図 に示すような方法で進められ このような海洋構造物と装置を合わせて掘削装置 ( 掘削リグ ) と呼ぶ -88-

93 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 図 掘削リグと海洋掘削のイメージ例 出典 : 日本海洋掘削社ウェブサイト 掘削リグは 主に以下のような機器から構成される ドローワークス : ドリルストリング ( ドリルパイプやビット等を連結した一連のパイプ ) 等の揚降に用いられるウインチ装置 トップドライブシステム : リグ中央のデリック ( 櫓 ) から吊り下げられており 内蔵されたモーターによりドリルストリングに回転力を与える装置 マッドポンプ : 泥水を循環させるポンプ マッドポンプによって加圧された泥水はドリルパイプ内側を通って先端のビットから噴射され ドリルパイプの外側から上昇して再びマッドポンプに戻る 泥水は掘り屑を地上まで運び出すとともに その水頭圧力によって坑井壁の崩壊を防止し 石油や天然ガス等の地層流体の暴噴を抑える役割もある 噴出防止装置 : 坑井内の圧力バランスが崩れ 地層流体が坑井内に侵入する事態 ( キック ) が生じると 地層内流体が地表まで吹き上げ制御不能の大事故となる キックの兆候があった場合 坑口を一時的に密閉してキックを制御するため 坑口上に設置する装置 -89-

94 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 掘削リグについては 海底に脚を固定する着底式と浮体を利用した浮体式があり 図 に示すようにそれぞれいくつかの形式がある 形式ごとの特性 稼働場所の水深 海 底土質 波浪などの海象条件等を総合的に考慮して安全性と経済性から選択される 着底式 浮体式 図 海洋掘削で用いられる移動式掘削装置 出典 :JX エネルギー社のウエブサイトから 代表例であるジャッキアップ型 ( 着底式 ) およびセミサブ型 ( 浮体式 ) の特徴は次のとおり ジャッキアップ型リグ : 掘削装置を搭載した船体部と昇降可能な脚からなる 掘削時には脚を着底させ船体部を海面上に持ち上げる 海底土質の影響を受けるが波浪による動揺はほとんどない 一般的には水深 10~80mの海域で使用される セミサブ型リグ : ローアーハル ( 下部船体 ) 上に複数のコラムを立て掘削装置を搭載したデッキ ( 作業甲板 ) を有する構造 掘削時はローアーハルにバラスト水を注水し デッキ部を海面より上げた半潜水の状態とし波の影響を小さくしている アンカーおよびワイヤーやチェーンによる係留装置 あるいは自動船位保持装置 (DPS) により掘削場所に留まる 一般的には水深 40~800mの幅広い海域で使用される b) 坑井調査掘進中の坑井から掘り屑 コアなどを採取し 地下地質の化学的および物理的情報を計測することを坑井調査と呼ぶ 坑井調査として以下に概説するような坑井地質調査 泥水検層 ( マッドロギング ) 物理検層 生産テスト等が行われ 油 ガス層の定性的 定量的調査と評価を行う 坑井地質調査 : -90-

95 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 坑井掘削中に 掘削泥水の循環によって地表に運ばれてくる掘り屑 ( カッティングス ) を一定の間隔で採取し 岩質 岩相および油徴などの調査を行う 泥水検層 : 循環泥水およびカッティングスからガスを分離して ガスクロマトグラフィーによってガスの成分を分析する ガスの成分比は 地層中の炭化水素が ガスであるか原油であるかを判断する指標となる 物理検層 : 物理検層は 坑井掘削中および掘削終了後 測定機器を坑井内に降ろし 坑井近傍の地層や地層中の流体に関する物性値 例えば比抵坑 密度 弾性波速度 孔隙率などを深度に対して連続的に測定する技法である 坑井近傍の貯留層性状について (1) 砂岩 / 頁岩の識別 (2) 炭化水素 / 水の識別 (3) 貯留層パラメータである孔隙率 水飽和率の推定等を行うことが検層の大きな目的である ドリルステムテスト (Drill Stem Test : DST): 坑井の掘進中または掘削終了後 その地層の潜在的生産能力を確かめるために行われる地層試験 ( フォーメ-ション テスティング formation testing ) の方法の一つで ドリル ステム ( ドリル ストリング ) を通じて行う方法なので この名称がついている 油 ガスの賦存が予想される地層に対し実際に生産テストを行い 直接的に油 ガス層の調査 評価を行う 生産能力 流体性状 地層圧力のほか 坑底圧力の推移を解析することにより 浸透率 生産性障害 地層の広がり等の推定ができる (3) 開発探鉱の結果 採算性のある油田またはガス田が発見されると その後石油 天然ガスを採収する生産井を掘削し 所要の生産処理施設 積出し施設などの建設へと移行する この期間を開発段階という 開発に進むにあたっては 試掘 探掘で得られたデータを基に油層評価 生産計画 掘削計画 施設計画などからなる開発計画を作成し その採算性を検討する 通常 開発に要する資金は探鉱に要する費用の数倍から数十倍程度となり 開発計画では投下資金に対し最も効率的な収益が得られるよう計画の最適化および経済性評価に関する綿密な検討が行われる 1 油層評価油層評価の目的は油 ガスの原始埋蔵量の評価および採収率の評価を通じて どれだけの油 ガスを採収できるか すなわち可採埋蔵量を評価することにある 物理探鉱 検層解析 コア分析 流体分析などのデータを基に 油田面積 有効層厚 孔隙率 飽和率などを求め 原始埋蔵量と可採埋蔵量を算出する 油田の生産挙動を予測する上で最も重要な点は 油層内の石油の流れである排油機構の評価であり 自然の水押しが期待できない場合などでは 人工採油法あるいは後述する水攻法の適否と適用時期などの決定が開発計画における重要な課題となる -91-

96 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 2 生産計画の策定基本的な生産計画では ピーク生産レート ピーク生産期間 掘削と並行して生産を開始するか 全坑井の掘削終了後に生産を始めるかなどの決定が課題であるが 各年の生産予測量を油層評価に用いたシミュレーションにより 各年の生産量を予測する方法が一般的となっている 3 掘削計画の策定生産井の坑井数および坑井配置は 油ガス田のピーク生産レート 坑井当たりの生産能力 構造形態 排油機構などを考慮して決定する 坑井間隔決定する上では浸透率の大きさを考慮する必要があり 掘削位置を決定する上では ガスキャップや底水の存在を考慮する必要がある 掘削が終了した坑井の上部 海洋の場合には 海底面やプラットフォーム上などに坑井仕上げと呼ぶ設備を取り付け 坑井の保護や生産流量の調整などを行っている 坑井仕上げの方式は 坑井刺激法や出砂対策の必要性 人工採油法の適否の可能性などとも関連し 開発計画作成時の検討項目である 4 施設計画の策定生産施設は 一般的には坑井 集油 ( 集ガス ) 施設 処理施設 貯蔵施設 送油 ( 送ガス ) 出荷施設からなる 生産施設の基本的な構成は 陸上か海上かにかかわらず共通であるが 海洋油ガス田の場合には 坑井から処理までの過程を海上に建設したプラットフォームで行い 油をパイプラインで陸上基地へ送り 最終処理 貯蔵 出荷をすることが一般的である 図 に油 ガスの生産に使用される海洋プラットフォームの代表例を示す 固定式 浮遊式双方でこれまで多数の形式が開発されているが 水深や海象 気象条件など 使用場所における環境条件 離岸距離 生産量などに応じて選択されている 浮遊式生産システムは 海底仕上げされた坑井と ステーション タンカーや半潜水式生産装置などの浮遊構造物とを生産ライザーなどで連結して原油の生産を行うシステムである この方式では現地での生産プラットフォームの建設工事や海底パイプラインの敷設を行う必要がなく 初期投資額が小さくなることや 開発の意思決定から生産開始までの期間の短縮化が可能となることから プロジェクトの経済性が高まるので 小規模油田の開発に適用されることが多くなっている -92-

97 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 図 生産プラットフォーム 出典 海洋工学ハンドブック 第 5 版 JOGMEC 編 ⑤ その他 上記のほかに 原油価格の長期見通しや石油開発権に関する契約条件なども開発の経 済性評価にとって重要な要素である (4) 生産 ① 原油の回収 油層から原油を採収する方法には 時系列的に物理的に異なる採収法が適用されるこ とから 一次 二次 三次という分類が用いられている 自然の排油エネルギーにより 原油を回収する方法が一次回収であり 自噴採油とポンプによる人工採油などである 一次回収では十分な生産量が得られない場合 さらに回収率を上げるため二次回収を適 用する 二次回収とは 油層圧力を保持するため水やガス等の本来地下にあった流体を 油層に圧入し 回収率の高い排油機構を人為的に作る技術のことであり 水を利用した 水攻法と呼ばれる方法が一般的である 三次採収法は 二次採収後に適用される採収法 であり 外部から界面活性剤 水蒸気 炭酸ガスや天然ガスなどの油層には存在しない 流体を油層に圧入し 二次回収で残留した油を流動化させ回収する方法で 原油の粘性 原油のミシブル 1化 など物理化学的な性質の変化を利用した方法である 最近では 排油機構や流体の置換機構に対する理解が深まり 油田開発時において どの原理の採取法をいつの時点で適用すれば最も経済性の高い生産計画が得られるかが 検討されるようになっている そのため 生産開始当初から水やガスの圧入を行ったり 若干の一次採収後に従来は三次採収法に分類されていた熱攻法を適用したり また天然 ガスの圧入でも圧入圧力を高めてミシブル状態を作り出し採収率を増加させたりするな ど これまでの分類法がなじまなくなってきているような背景があり 熱あるいは化学 1 ミシブルとは 2つの流体が接する時に両者の間に界面が生じることがない状態のことで どのような割合で混合しても界面 が生じることなく完全に混じり合う混和性を示す性質のことである 通常の状態ではガスと原油との間には界面があり非ミシブ ル状態であるが ある状態にすることで界面が消失しミシブル状態になることが知られている -93-

98 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 薬品などを加えて 油の性状を変化させ 流動性を改善し回収率を向上させる方法に対して増進回収法 EOR(Enhanced Oil Recovery) という用語が使用されている 図 に EOR のイメージを示す 図 EOR イメージ図出典 :JOGMEC ウェブサイト 2 石油の生産坑井から得られる流体 ( 生産流体 ) は 油やガス 不純物等の混合物であり 原油とするためには 不要物を除去するさまざまな処理が必要である 海洋の場合 生産過程の一つとしてこの処理を洋上で行っているが 処理には多様な設備機器を必要とするため 図 に示すように複数の坑井 ( 生産井 ) から得られる流体をパイプラインで結び一ヶ所に集め利用効率を高めている 小規模油田 大水深油田 氷海域油田等の開発の進展に伴って 海底仕上げ井 フローラインとマニホールドで構成されるシステムが広く適用されている この生産方式をサブシー生産システム (Subsea Production System) と呼んでいる なお 本来のサブシー生産システムとは 図 のように海底仕上げ井と海底機器 海底に設置された生産 処理施設 貯蔵施設及び積み出し施設などからなる海底で完結された生産システムのことを言うが 現状では上記の生産方式を指して用いられることも多い サブシー生産システムの保守作業には 専用作業船から遠隔操作される ROV ( Remotely Operated Vehicle ) や水中で自律的に稼働する AUV (Autonomous Underwater Vehicle) 等が用いられる ( 図 図 ) -94-

99 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 図 海洋油田のレイアウト例 出典 : アブダビ石油社ウェブサイト 図 サブシー生産システムの構成 出典 : 金城秀樹 海洋開発におけるサブシー生産システムの動向と展望 2015 図 ROV の例 出典 :SAAB 社製品パンフレット 図 AUV の例 出典 :ROV Committee of Marine Technology Society ウェブサイト -95-

100 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 処理の過程は 坑井から得られる流体からガスや地層水を取り除く分離から始まる 分離に用いる装置がセパレータである セパレータで分離された油は 計量されたのち 貯油タンクに貯蔵される 一般にはここで 販売契約で定められた含水率以下になるまで静置される 海洋では 製品の積出しは パイプラインやタンカー輸送などにより行われる 図 は プラットフォームおよび洋上貯油 出荷タンカーを用いて海上油田を開発する場合の概念図である 図 海上の概念図出典 :JX エネルギー社ウェブサイト 3 天然ガスの生産天然ガスは 原油に比べ貯留層内における流動性が良く 一般に坑井当たりの生産性も高いため 少ない坑井数で開発を行うことができる 回収率が油よりも高い 固定顧客への供給契約のため一定量の生産を維持しなければならないなどの違いがあるが 開発や生産における基本的な技術は共通である (5) 撤去 廃坑石油 天然ガスの開発では可採埋蔵量を取りつくせば生産終了となり 坑井や生産設備は撤去や廃棄処理がされる 坑井では坑口や坑内に将来の地震などに対しても十分耐えられる遮蔽を行い廃坑とし 生産施設は解体されて撤去される 固定式の海洋プラットフォームでは海底面で切断 上部を撤去することが多い また契約期間の満了により生産を終結することもあり得るが この場合には契約の定める内容で坑井や生産施設が譲渡されるか撤去となる -96-

101 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 3.2 プロジェクト事例 イクシス LNG プロジェクト (1) イクシス LNG プロジェクトとはイクシス LNG プロジェクトは オーストラリア連邦西オーストラリア州 ( 西豪州 ) の沖合約 200km( 図 3.2.1) に位置するイクシスガス コンデンセート田より産出される天然ガスを 全長約 890km のガス輸送パイプラインにて北部準州のダーウィンに輸送し 陸上に建設する LNG プラントで液化して出荷するものである 年間 890 万トンの LNG( 日本の LNG 年間総輸入量の約 1 割 2) 年間 160 万トンの液化石油ガス (LPG) 及び日量約 10 万バレル ( ピーク時 ) のコンデンセートの生産 出荷が見込まれ これは 現在オーストラリアで生産されている油田の中でも最大規模となる 2016 年 2 月現在 イクシス LNG プロジェクトはまだ開発中であるが 2017 年第 3 四半期 (2017 年 7 月 -9 月期 ) の生産開始を予定している 図 イクシス LNG プロジェクトの位置出典 :INPEX ウェブサイトイクシス LNG プロジェクト ( 図 3.2.2) は 日本企業が主導する初の大型 LNG 開発プロジェクトである 国際石油開発帝石株式会社 ( 以下 INPEX) が操業主体 ( オペレーター ) となり インペックス イクシス社など豪州グループ会社を通じてプロジェクトパートナーとともに進めているイクシスガス コンデンセート田の開発事業であり 40 年という長期 年における日本の LNG 輸入量は約 8,900 万トン -97-

102 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 にわたって稼働が見込まれる世界的にも大規模な LNG 開発プロジェクトである 図 イクシス LNG プロジェクト 出典 :INPEX のウェブサイト 本プロジェクトには INPEX の他 日本のガス会社 電力会社が参加している プロジェ クト参加各社の出資比率は 表 の通りである 表 プロジェクト参加企業の出資比率 INPEX % 仏トタル (TOTAL) % 台湾中油 (CPC) 2.625% 東京ガス 1.575% 大阪ガス 1.200% 関西電力 1.200% 中部電力 0.735% 東邦ガス 0.420% 出典 :INPEX のウェブサイト イクシス LNG プロジェクトから生産される LNG の約 7 割相当 ( 年間約 570 万トン ) が日本向けに供給される予定であり ( 図 3.2.3) 日本へのエネルギー安定供給に大きく貢献することが見込まれるとともに INPEX がオペレーターとしてイクシス LNG プロジェクトを推進することにより 日本企業の国際的競争力強化に資することが期待される -98-

103 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 図 生産される LNG の提供状況出典 :INPEX のウェブサイト (2) 主要な設備表 に開発コンセプトの概要を 図 に開発の全体イメージを示す 表 開発コンセプトの概要 生産量開発井 ( 海底仕上げ ) 海底パイプライン陸上施設 ( ダーウィン ) 陸上貯蔵施設 LNG 年間 890 万トン LPG 年間 160 万トンコンデンセート日量約 10 万バレル ( ピーク ) Brewster 部層 30 坑 Plover 層 20 坑 CPF FPSO SPS ガス 輸送パイプライン フローライン フレキシブルライザーなど 42 パイプライン約 890km の敷設 LPG LNG コンデンセートを生産 貯蔵 出荷 LNG タンク :2 165,000 m3 C3( プロパン ) タンク :1 85,000 m3 C4( ブタン ) タンク :1 60,000 m3コンデンセート :2 60,000 m3-99-

104 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 3FPSO 2 沖合 生産処理施設 CPF 4 陸上ガス液化プラント 1 海底生産システム SPS 図 開発の全体イメージ 出典 :INPEX のウェブサイト 以下に 生産の流れに沿って 主要な設備を概説する 1 海底生産システム (SPS: Subsea Production System)( 図 3.2.5) 生産井から産出された生産物は 生産マニホールドに集められ 専用パイプであるフローライン フレキシブルライザーを通じて 沖合 生産処理施設に送られる 図 海底生産システムのイメージ出典 :INPEX のウェブサイト 2 沖合生産 処理施設 (CPF: Central Processing Facility)( 図 3.2.6) 海底生産システムから送られた生産物は 沖合 生産処理施設でガスとコンデンセートに分離 処理される ガスは 陸上の液化プラントにパイプラインを通じて送られ コンデンセートは FPSO( 沖合生産 貯油出荷施設 ) に送られる 沖合 生産処理施設の大きさは約 150m 約 110m 総排水量は 14 万トンと 半潜水 -100-

105 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 式の海上生産施設としては世界最大規模を誇る 日量最大 1,657 百万立方フィートのガ スの処理が可能である 図 沖合 生産処理施設のイメージ出典 :INPEX のウェブサイト 3 FPSO(Floating Production Storage and Offloading)( 図 3.2.7) 沖合生産 処理施設にて一次処理したコンデンセートは FPSO で受け入れ 貯蔵し タンカーへ出荷されるとともに コンデンセートからガスを抽出 昇圧し 沖合生産 処理施設に戻す 本 FPSO は 長さ約 336m 幅約 59m と大型原油タンカーに匹敵する大きさで 100 万バレル超の原油貯蔵能力を持つ FPSO からは日量 8.5 万バレル ( ピーク時 ) のコンデンセートの出荷が可能である 図 FPSO のイメージ出典 :INPEX のウェブサイト 4 陸上ガス液化プラント ( 図 3.2.8) 陸上ガス液化プラントにパイプラインを通じて運ばれた天然ガスから コンデンセー -101-

106 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 トと LPG を抽出し 残る天然ガスは冷却し液化される 陸上ガス液化プラントでは LNG 年間 890 万トン LPG 年間 160 万トンに加え コンデンセートを出荷可能である 図 陸上ガス液化プラントのイメージ 出典 :INPEX のウェブサイト なお 本プロジェクトの主要なコントラクターは 表 の通りである 表 主要なコントラクター上流事業沖合生産 処理施設 (CPF) Samsung Heavy Industries( 韓 ) 海底生産システム (SPS) GE Oil & Gas( 米 ) FPSO Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering ( 韓 ) フローライン フレキシブルライザーなどの接続作業等 McDermott( 米 ) 下流事業陸上 LNG プラント日揮 千代田化工 KBR 社 ( 米 ) の企業連合ガス輸送パイプライン (GEP) Saipem( 伊 ) 三井物産 住友商事 メタルワン出典 :INPEX のウェブサイト (3) プロジェクトの工程イクシス LNG プロジェクトの歩みを以下に整理する 1 鉱区取得 1998 年 公開入札に応札し 鉱区を取得した 2 探鉱 2000 年 第一次掘削キャンペーンにおいてガス コンデンセートの胚胎を確認し 2003 年と 2007 年 第二次と第三次の掘削を行った そして 2008 年 LNG プラント建設予定地を北部準州ダーウィンに決定した 2011 年 連邦政府 北部準州政府からの承認 ( 環境許認可 ) を取得し 液化天然ガス (LNG) 売買契約を締結した 2012 年 1 月に -102-

107 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 最終投資決定を実行し 鉱区取得から 14 年余りを経て 2012 年 12 月にプロジェクト ファイナンス契約 ( プロジェクト ファイナンス契約については 6 章参照 ) に調印した 3 開発プロジェクト開始の最終決定を受け 主要な施設の建造が開始されるとともに 生産井の掘削が進められている a) 陸上ガス液化プラント 2012 年 5 月にオーストラリア北部準州のダーウィンにて ガス液化プラントの起工式を開催し 建設工事が開始された 2014 年 7 月にはプラント建設用のモジュール搬入が開始され 工事が進められている ( 図 図 ) 図 モジュール搬入の様子 図 プラント用大型モジュール 出典 :INPEX のウェブサイト b) 沖合生産 処理施設 (CPF) 2013 年 1 月に建造工事に着手した沖合生産 処理施設は 2014 年 4 月から韓国巨済 ( コジェ ) の造船所にてハルブロックや世界各地で製造された機器の本格的な組み立て作業を行い ( 図 ) 2015 年 9 月に進水した ( 図 ) 韓国巨済からイクシスガス コンデンセート田まで約 6,000km の距離を曳航され 水深約 250m の洋上に設置 係留される 図 CPF のハルブロック 図 進水した CPF 出典 :INPEX のウェブサイト -103-

108 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 c) 沖合生産 貯油出荷施設 (FPSO) 2013 年 6 月より建造 建設に着手し 2014 年 2 月に FPSO 船体の本格的な組み立て作業を建造地の韓国オクポにて開始した ( 図 ) 2014 年 7 月には進水が行われた 進水した船体に世界各地から調達する上載機器の据付し 完成後にイクシスガス コンデンセート田まで曳航され 洋上に設置 係留される予定です 図 FPSO の組み立ての様子出典 :INPEX のウェブサイト d) 海底生産施設 (SPF) 海底生産施設は 2014 年 11 月に設置工事が開始された まず 生産物を洋上の CPF に輸送するためのフレキシブルライザー管等を支える構造物である ライザー サポート ストラクチャー (RSS, 図 ) を海底面に設置した RSS の設置には 深海での作業に特化した専用船が投入された 2015 年 6 月には 複数の生産井を接続するための装置である 生産マニホールドの設置工事が開始された ( 図 ) 図 RSS 図 生産マニホールドの設置作業 出典 :INPEX のウェブサイト e) ガス輸送パイプライン ガス コンデンセート田と陸上液化プラントを結ぶ約 890km にわたるガス輸送パイプライン敷設工事は 2014 年 6 月より 港近郊の浅海エリアから開始された ( 図 ) -104-

109 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 半潜水式のパイプライン敷設の専用船 SEMAC-1 を投入し ダーウィン湾を起点に約 164km の浅海エリアで敷設作業が行われた また CPF までの残る約 718km のパイプラインの敷設は 深海でのパイプライン敷設作業に特化した最新鋭の専用船である カストローネ を別途投入し 敷設作業が行われた ( 図 ) 2015 年 11 月に パイプラインの敷設作業が完了した 図 敷設作業の様子 図 深海での敷設作業 出典 :INPEX のウェブサイト f) 生産井生産井の掘削準備は 2014 年 4 月に開始 使用予定の掘削リグ ENSCO-5006 ( 図 ) をシンガポールで改良工事を施し 2014 年 11 月には 生産井をコントロールするため海底の生産井頂部に設置される坑口装置 ( クリスマス ツリー ) が資材基地に搬入されるなどの準備が進められた その後 同リグは現地に曳航 設置され 2015 年 2 月より掘削作業を開始した 図 掘削リグ ENSCO-5006 出典 :INPEX のウェブサイト -105-

110 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 4 生産 2017 年第 3 四半期 (2017 年 7 月 -9 月 ) の生産開始を予定している 図 に 2016 年 2 月現在でのプロジェクトの歩みの概要をまとめる 図 プロジェクト年表 -106-

111 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 国内プロジェクト日本は 石油 天然ガスの供給をほぼ輸入に頼っているのが現状であるが 国内での石油 天然ガス開発が全く行われていないというわけではない 国内の石油 天然ガス田は 最も安定した供給源であるというだけでなく 我が国の石油 天然ガス開発の技術的な基盤を維持 発展させる上でも重要な場と位置付けられる このことから 国内でも石油 天然ガス開発の取り組みは進められてきた ( 図 ) 図 日本の主な油ガス田本項では 日本における海洋における石油 天然ガス開発の事例として 磐城沖ガス田 岩船沖を取り上げ概説する (1) 磐城沖ガス田磐城沖ガス田は 福島県双葉郡楢葉町の沖合約 40km の陸棚 ( 水深 154m ) に位置するガス田である ( 図 ) 1984 年から 2007 年まで 23 年間の長期にわたり天然ガスの生産操業を行った 磐城沖ガス田は 日本の太平洋側海域では初めての本格的な海洋ガス田であった 図 は 磐城沖ガス田の陸上プラントの外観である -107-

112 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 図 磐城沖ガス田の位置とプラットフォーム及び 関東甲信越地方の天然ガス主要幹線パイプライン 出典 :INPEX ウェブサイト 図 陸上プラント 出典 : 経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山保安部会 ( 第 7 回 ) 資料 2007 年 磐城沖ガス田は INPEX グループとエクソンモービルグループとの共同事業として運営 された 権益比率は 磐城沖石油開発株式会社 (INPEX の 100% 子会社 ) が 50% エクソン -108-

113 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 モービル有限会社が 35% 東燃ゼネラル石油株式会社が 15% であった 海上の施設は固定式のプラットフォーム ( 図 ) 1 基で 生産された天然ガスは海底パイプライン ( 外径 324mm 長さ 41km ) で楢葉町に建設されたガス処理プラントに送られ ガスは同プラントに隣接する東京電力 ( 株 ) 広野火力発電所に燃料として販売された 磐城沖ガス田の累計生産量は天然ガスが約 56 億 m 3 ( 原油換算約 3,500 万バレル ) で コンデンセート約 71,480kl ( 約 45 万バレル ) であった 図 磐城沖ガス田のプラットフォーム 出典 : 経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山保安部会 ( 第 7 回 ) 資料 2007 年 磐城沖ガス田は 2007 年に商業生産を終了し 2010 年に施設の撤去工事が完了している 磐城沖ガス田の開発の歩みの概要を表 に示す 表 磐城沖ガス田開発の歩み ( 概要 ) 1973 年ガス田発見 1981 年プラットフォーム製作開始 1983 年プラットフォーム設置 1984 年 7 月商業生産開始生産された天然ガスおよびコンデンセートは 全量を東京電力株式会社の広野火力発電所へ供給 2007 年 7 月商業生産終了 2009 年 4 月新日鉄エンジニアリング株式会社がプラットフォームの撤去作業の設計 施工 輸送 揚陸及びプロジェクト全体管理業務を受注 2010 年 7 月撤去工事完了 -109-

114 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 (2) 岩船沖岩船沖は 1983 年に発見された国内では最大級の海洋ガス田で 新潟市から北東に約 30km 新潟県北蒲原郡中条町の胎内川の河口から沖合に 4km の所に位置している ( 図 ) 岩船沖は現存する国内唯一の海洋油ガス田であり 2012 年に原油累計生産量が 500 万 kl に達した 現在 石油資源開発株式会社 (JAPEX) 日本海洋石油資源開発株式会社 (JPO) および三菱ガス化学株式会社の 3 社で石油 天然ガスの生産 開発が進められている 図 岩船沖岩船沖の位置 出典 :JPO のウェブサイト 岩船沖は 新潟県胎内市の胎内川河口沖合の周辺海域に広がっている 探鉱は 1958 年に始まり 足掛け 25 年以上にわたった 1982 年に当該海域においてエアガンによる物理探鉱調査を実施した結果 石油 天然ガスを貯留できる器としての層位封塞型構造の存在が予測され また周囲陸域 海域の地質状況から見て 出油 出ガスの可能性が大きいと判断された 1983 年 3 月に 試掘井 岩船沖 SIM-1 で成功を収め 1984 年内に 3 坑の試掘井を掘削した ( 表 3.2.5) その結果 いずれの試掘井においても出油 出ガスに成功した 1984 年 10 月から これらの成果を基に 構造の地質 構造解析 油層評価 埋蔵量計算及び経済性検討を実施した結果 岩船沖構造は 開発生産に移行できると判断され 1989 年 3 月に開発に移行することを決定した 1990 年に岩船沖プラットフォーム ( 水深 36m 図 ) 海底パイプライン(21km) を建設し 並行して開発井を掘削した 岩船沖海底パイプラインは プラットフォームと新潟市太郎代の陸上基地とを結ぶ 全長 21km 直径 32cm の海底土中の埋設導管であり 岩船沖において生産された原油および天然ガスは本管の中を通り陸揚げされている 1990 年 9 月 15 日 第 1 号井の SIM-B1 が開坑され 同年 12 月 5 日に石油 天然ガスの生産が開始された 1991 年に生産量は 原油 740kl/ 日 ガス 125,000m 3 / 日となっている なお ピーク時の生産レートは 原油約 1,100kl/ 日 天然ガス約 300,000m 3 / 日を予定 -110-

115 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 している 岩船沖は 1990 年に生産を開始して以来安定した操業を継続している 表 岩船沖海域で実施された探鉱作業 1958 年 北蒲原重力探鉱 1964 年 蒲原沖地震探鉱 岩船沖背斜構造発見 1965 年 岩船沖磁力調査 1965 年 岩船沖 SK-1 2D 試掘 西山層より少量の油ガス産出 1969 年 日本海エアガン調査 1973 年 北蒲原沿岸エアガン調査 1975 年 北蒲原浅海エアガン調査 岩船沖背斜鼻状沈降部に貯留岩の発達の 可能性発見 1982 年 岩船沖南岸エアガン調査 ( 精査 ) 年 岩船沖 SIM 試掘 1985 年 三次元エアガン調査 出典 : 中林健一 岩船沖油田の開発 出典 :JAPEX のウェブサイト 出典 : 経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山 図 岩船沖プラットフォーム 保安部会 ( 第 7 回 ) 資料 2007 年 -111-

116 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 岩船沖ガス田の開発の歩みの概要を表 に示す 表 岩船沖ガス田の開発の歩みの概要 1983 年ガス田発見 1989 年開発移行決定 1990 年プラットフォーム パイプラインの建設 生産井掘削 12 月商業生産開始 -112-

117 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 < 参考資料リスト> (1) 石油技術協会編 : 石油鉱業便覧, 2013 年 (2) オイル フィールドエンジニアリング入門 山崎豊彦編 海文堂, 2002 年 (3) JX エネルギー社 : 石油便覧 (4) 一般財団法人エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書, 2015 年 (5) JOGMEC: 基礎講座テキスト 開発技術, 2013 年改訂版 (6) 日本物理探礦株式会社 物理探査手法 (7) 日本海洋掘削株式会社 海洋掘削の技術 (8) JOGMEC 編 : 海洋工学ハンドブック第 5 版,2010 年 (9) JOGMEC: 炭酸ガス (CO2) 圧入攻法 (10) 金城秀樹 : 海洋開発におけるサブシー生産システムの動向と展望 ( 三井物産戦略研究所レポート ) 2015 年 (11) JOGMEC: 海底生産システムの現状 :Subsea Production System (SPS) -どこまで信頼性を保ち 機器を海底に設置できるか, 2009 年 (12) SAAB 社製品パンフレット (13) Remotely Operated Vehicle Committee of Marine Technology Society ウェブサイト (14) JOGMEC: 国際石油開発帝石のオーストラリアイクシス LNG プロジェクトに係る債務保証 ( 完工保証 ) 採択について (15) 国際石油開発帝石 (INPEX):Ichthys LNG Project, (16) 国際石油開発帝石 (INPEX): オーストラリアイクシス LNG プロジェクト 生産開始スケジュール及び LNG 生産能力増加について, 平成 27(2015) 年 9 月 11 日 (17) 国際石油開発帝石株式会社 : 磐城沖ガス田の生産操業終了に伴う関連施設の撤去作業の開始について ( お知らせ ), 平成 22(2010) 年 4 月 28 日 (18) JOGMEC: 石油 天然ガス資源情報 (19) 経済産業省中央鉱山保安協議会石油鉱山保安部会 ( 第 7 回 ) 資料 2007 年

118 海洋開発産業概論 教材 3 章海洋石油 天然ガス開発の実際 (20) 石油資源開発株式会社 : 事業紹介, 国内事業 - 国内, (21) (22) 三菱ガス化学株式会社 : 事業 製品, 岩船沖の開発, (23) 日本海洋石油資源開発株式会社 : 事業案内 (24) 中林健一 : 岩船沖油田の開発, 石油技術協会誌,VOL.56,NO.6, Nov

119 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 4 海洋再生可能エネルギー開発の実際再生可能エネルギーとは 自然界に常に存在する 繰り返し起きる自然現象により得られるエネルギーのことであり 海洋に目を向けると 波 海潮流 潮汐など海水を媒体とする運動エネルギーに加え 海水温などの熱エネルギー 塩分濃度などの化学エネルギーも再生可能エネルギーである また 風のような大気を媒体とする運動エネルギーや 太陽光エネルギーなどの自然エネルギーも海洋空間においては豊富に得られる 自然の持つエネルギーは 輸送しやすく利用しやすい電気エネルギーへと変換することが一般的である 洋上の風エネルギーを電気エネルギーに変換する洋上風力発電については 陸上風力発電でエネルギー変換技術の基本形はほぼ確立されており 実用化されている 洋上風力発電では より規模の大きな発電のための技術開発や 厳しい設置環境に適合させるための技術開発が進んでおり 商業化や実証研究が進展している 波力 潮流 海洋温度差などを利用した発電に関しては実用的なエネルギー変換の方法を模索している段階にある 本章では 各発電システムについて概説するとともに 洋上風力発電を主体に開発作業の工程 具体例について紹介する 4.1 発電システム 洋上風力発電 (1) 風車流体の持っているエネルギーを回転運動に変換する原動機を総称してタービンと呼ぶ 風力発電では 空気の運動エネルギーを風車すなわち風力タービンによって回転エネルギーに変換し 次に風車の回転エネルギーによって発電機を回転させ 目的とする電気エネルギーに変換している 風車は昔から動力源として利用されており さまざま形状がある 羽根の形や風に対する羽根の回転面の向きなどの特徴によって 図 のような分類がされている 羽根の回転軸が風向きに対して水平となる水平軸タイプと 回転軸が風向きに対して鉛直となる垂直軸タイプとに大別し 次に作動原理として羽根に生じる揚力を利用するものと抗力を主に利用するものとに区別している 1 水平軸 揚力型風車では プロペラ型風車が 風力発電機としてはもっとも多く利用されている セイルウイング風車は羽根に三角帆を貼ったものであり オランダ風車も羽根として帆を貼ったものである ともにゆっくりと回転し 主に揚水ポンプの原動機として利用されている 一方 垂直軸 揚力型風車では ダリウス型風車や直線翼式 ( ジャイロミル型風車 ) が 1 揚力と抗力 : 気流の進行方向に対して飛行機の翼のような形状が 翼の上面と下面に生じる圧力差により受ける垂直方向の力を揚力 気流の進行方向の物体にあたる力を抗力といい 主として揚力で回転力を得る風車を揚力形風車 主として抗力で回転力を得る風車を抗力形風車と呼ぶ -115-

120 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 ある ダリウス型風車やジャイロミル型風車の羽根は ともに飛行機の翼と同じ断面をしており ダリウス型風車では羽根を弓形に曲げている これら風車は 小型の風力発電機に使用されることが多い 垂直軸抗力型には サボニウス式 パドル式 クロスフロー式 S 型ロータ式などがある サボニウス風車は円筒を縦半分に切って円周方向にずらした形をしたものである パドル風車は 風速計によく使われている半球形の受風面を持つ風車である 図 風車の分類出典 : 西華産業株式会社ウェブサイトから (2) 風車の構造プロペラ式風力発電システムを例として 風車の構造を図 に示す 風力発電システムは 機能ごとに区分すると 1 風力エネルギーを機械的動力に変換するブレードなどのロータ系 2ロータの回転動力を発電機へ伝える伝達系 3 発電機本体などの電気系 4 発電機の運転 制御を行う制御系 および5 発電機本体などを支持する基礎 構造系からなっている それぞれの系に含まれる代表的な構成要素を表 に示す -116-

121 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 洋上風車 ( 着床式 ) の構造例 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書初版 2012 年 表 プロペラ式風力発電機の構成要素例 出典 :NEDO 風力発電導入ガイドブック (2008 年 2 月改訂第 9 版 ) 主な機器の特徴を次に記す 1 ブレード 中大型のプロペラ型風力発電機では ブレードの回転により生じる騒音 ブレードの -117-

122 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 製作コスト 製作工場から設置場所への輸送などの得失から 3 枚翼型が主流となっている ブレードの材質は 軽量で耐久性のあるガラス繊維強化プラスチック (GFRP) が主として使用され 必要に応じて雷対策 塩害対策などの工夫がされている 2 発電機発電機には 交流発電機である誘導発電機あるいは同期発電機が使用される 誘導発電機には出力変動による電圧変動の問題があるが 発電機の構造が簡単で製造コストが低い 同期発電機は電圧制御が可能であり 電力系統への影響が少なく コスト高だが発電電力の品質が良く実用機への採用が増えている 3 増速機増速機は ロータ軸の回転数を交流発電機が要求する入力回転数に増速するための歯車装置で ブレードと発電機の中間に置かれる 4 運転 制御系風車は 風速が上がればブレードの回転速度は上がり発電機の出力が増える しかし 一定の速度を超える強風では ブレードの回転速度が過大となってブレードの破損事故 あるいは発電機の出力が過大となって発電機の焼損事故等が 惹き起こされる恐れがあり 風車の出力 ( 回転 ) を制御する必要がある 風車の回転速度を制御する代表的な方法は ピッチ制御と呼ばれる方法であり 風速と発電機の出力を検知して 発電機出力が目標値 ( 定格値 ) となるように ブレードの取付け角 ( ピッチ角 ) を変化させて 風車の回転速度を制御する方法である ピッチ制御は 台風等の強風時にブレードのピッチ角をゼロ度 すなわちブレードを風向に平行 ( フェザー状態 ) にすることで ロータを停止させる機能としても利用されている 風車の回転速度を制御する方法として ほかにストール ( 失速 ) 制御と呼ばれる方法がある ストール ( 失速 ) 現象とは 流れの中で翼の迎角を大きく ( 流入角度を大きく ) していくと 翼の上面で流れの剥離が起こり 急激に揚力を失う現象のことである ピッチ角を固定した風車では 流入する風の風速でブレードへの相対流入角が変わる 一定以上の風速ではストール現象が起き ブレードが揚力を失うようなブレード形状として 風車の出力 ( 回転 ) を抑制する方法をストール制御と呼んでいる 図 は ピッチ制御 ストール制御の出力特性を模式的に示したものである 一定風速以上になると発電を開始 ( カットイン ) し 発電機定格出力に達する風速以上では ピッチ制御もしくはストール制御により出力制御を行い 更にある風速以上では危険防止のため発電を停止 ( カットアウト ) する制御を行う ピッチ制御はピッチ角を変えるための油圧装置等が必要となりコスト面では割高になるが ストール制御に比べて定格風速付近での発電効率を良くすることができ 定格風速を超えた領域においても細かい制御が可能である -118-

123 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 ピッチ制御機 ストール制御機の出力特性 出典 : エネルギア総研レビュー No.9 風力発電における運転制御方法 ( ピッチ制御 ストール制御 ) 風車のロータを風向きに追従させる制御をヨー制御という プロペラ型風車には タワーやナセルの風下側でロータが回転するダウンウインド型風車とロータがタワーやナセルの風上側で回転するアップウインド型風車とがある ダウンウインド型風車では ロータに働く空気力そのものが自動的にロータを風向きに追従させる力として働くため ヨー制御に特別な駆動機構は必要としない しかし タワーによる風の乱れを受けるなどのデメリットもあって タワーの風上側にロータ面が向くようにしたアップウインド型風車が大型風車の主流となっている アップウインド型風車では ナセル上に設けた風向センサーで風向を検出し ロータを風向きに追従するよう旋回させる駆動装置をナセルとタワーの間に設け ヨー制御を行っている その他 ナセル内に安全のため台風時や点検時にロータの回転を停止させるブレーキ装置が設けられている 5 系統連系など電気系交流発電機の出力を他の発電機に接続された電力系統に並列に繋ぎ送電することを系統連系と呼ぶ 風力発電で発電した電力は 一般には電力会社の電力網と接続し送電することになる 風力発電で発生した電力の電圧や周波数の変動が発生すると電力会社の系統全体の品質に悪影響を及ぼすため 厳しい電力の品質管理が求められる 交流発電機の出力を電力系統に連系する場合 図 に示すとおり 変圧器によって電圧変換のみを行って直接系統に接続する AC リンク方式 発電機の交流出力を一旦コンバータにより直流に変換したのちインバーターにより電力系統と同じ周波数の交流に変換する電力変換装置を使用した DC リンク方式がある DC リンク方式では 風力発電システムに固有の問題である風速変動にかかわらず 電圧や周波数の制御が可能であり 風の強さに応じてもっとも効率の良いロータの回転数において運転できる可変速運転が可能となるため大型機に主に採用されている -119-

124 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 プロペラ型風力発電システム 出典 :NEDO 風力発電システムの設計マニュアル 1996 年 洋上風力発電における施設配置概念図を図 に示す 洋上に風力発電機を設置し 運転監視や系統連系のための施設を陸上に設置 その間を送電ケーブルや海底送電ケーブルで結んでいる 大規模な洋上風力発電施設などでは 大量の電気を効率良く送電するために風車近くの洋上に変電設備を設けて高圧化し送電することもある 図 洋上風力発電システムの施設配置概念図出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書初版 2012 年 6 基礎や浮体洋上風力の発電施設を支持する構造物には 構造形式として大きく分けると 海底に直接基礎を設置する着床式と 浮体を風車の基礎として利用する浮体式がある 図 に示すように およそ水深 60m までは着床式が 60m 以上では浮体式が選択されている -120-

125 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 洋上風力発電施設の支持構造物形式と水深の関係 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 2014 年 ( Dynamics Modeling and Loads Analysis of an Offshore Floating Wind Turbine (2007, NREL) より NEDO 作成 ) 図 に様々な着床式支持構造物の形式を示す 着床式支持構造物は モノパイル式 重力式 ジャケット式 ( 格子梁式 ) の3つの基本的な形式に分類される モノパイル式の発展形として 3 本のパイルを使用するトリパイル式や 4 本または 8 本のパイルを使用するドルフィン式があり トリポッド形式と呼ばれるモノパイル式とジャケット式のハイブリッド形式やハイブリッド重力式と呼ばれるジャケット式と重力式のハイブリッド形式もある 水深 30m までの水深では 海底に 1 本の杭を打ち込むモノパイル式やコンクリートのケーソンを基礎とする重力式が主に用いられている 水深がおよそ 30m~60m 海域では 施工の難易度 経済性からトリポッド式やジャケット式が有利となる 例えば スコットランド近くの北海にあるベアトリスウインドファーム実証プロジェクトでは 水深 45m において 2 基の 5MW 風車がジャケット構造物の上に設置されている 国内で稼働中の洋上風車の場合では 酒田港と瀬棚港においてドルフィン式が 鹿島港ではモノパイル式 銚子沖では重力式 北九州沖では重力 ジャケット式 ( ハイブリッド式 ) が採用されている -121-

126 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 着床式洋上風力発電の支持構造物 出典 :NEDO 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 2014 年 ( Wind in our Sails (2011, EWEA) より NEDO 作成 ) 風車を設置する場所の水深が 60m 程度にまで達すると 着床式に比べて浮体式の支持構造のほうがより経済的に有利であるとされている 浮体式の支持構造は 浮体の形状と係留システムなどによって特徴づけられるが 主なものを図 に示す スパー式 ( カテナリー係留 ) 出典 :Statoil 社サイト セミサブ式 ( カテナリー係留 ) 出典 :GustoMSC 社サイト 緊張係留式 (TLP) ( テンションレグ係留 ) 出典 :PelaStar 社サイト 図 浮体式洋上風力の支持構造の例 -122-

127 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 浮体式支持構造物の代表的な形式としては スパー式 セミサブ式 ( セミサブマージブル式 : 半潜水式 ) 緊張係留式(TLP: Tension Leg Platform) がある スパー式は 浮体を一本の細長い円筒形とし大部分を海中に沈めた構造物である 魚釣りに使用する自立うき ( 棒うき ) が波の中でも安定して立って浮くのと同様の原理で 海面を横切る面積を小さくすることで波の影響を小さくし 重量物をこの浮体の下方に搭載し浮体全体の重心を浮体が受ける浮力の中心より下側とすることで復原力 2を得て 浮体を安定させている セミサブ式は トラスやラーメン構造とした浮体構造物であり およそ高さの半分をバラスト 3 により海中に沈めることで波浪の影響を小さくしようとする方式である セミサブ式は スパー式に比べて水深が浅いところでも設置可能である TLP とは セミサブ型の浮体を後で述べる緊張係留により海底に繋いだものである また 代表的な係留システムには カテナリー係留 緊張係留 (TLM: Tension Leg Mooring) がある 懸垂線状に垂らした鋼製のチェーンやロープの自重によって生じる張力によって水平方向の復原力を得る係留方法をカテナリー係留と言い ロープの途中にシンカー ( 重り ) やブイ ( 浮き ) を加えることがある 緊張係留は 海底から浮体を結んだ係留ケーブルによって 浮体を海中に引き込むことで得られる余剰な浮力により生じる鉛直方向の張力を利用して水平方向の安定を得る方式である 浮体式支持構造による洋上風力発電は現在実証実験の段階にあり スパー式とセミサブ式は フルスケール機が稼働し実証実験が行われている 長崎県五島沖ではカテナリー係留を使用したハイブリッドスパー式 福島県沖ではカテナリー係留を使用したコンパクトセミサブ式浮体や カテナリー係留と V 字型セミサブ式 同じくカテナリー係留を使用したアドバンストスパー式が採用されている 4 (3) 風車の規模 発電量 1 風車の規模風は質量を有する空気の流れであり運動エネルギーを持っている その運動エネルギーは運動エネルギーの法則に従って以下のように表わされる 風の運動エネルギー =1/2 風の質量 風速の 2 乗 1 式 風の質量 は 所定の断面積を単位時間あたりに通過する空気の質量のことであり 以下で表される 風の質量 = 断面積 空気密度 風速 2 式 2 船やブイなどの浮体は波や風などの外力が働くと傾斜するが その外力が無くなった時に元に戻ろうとする力 3 浮体の重量を増すために積み込む水 ( 海水 ) などの重量物 プロジェクト事例 ~ 福島復興 浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業 ~ を参照 -123-

128 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 この2 式を1 式に代入すると 以下のことが示される 風車への流入エネルギーは断面積に比例する 風車への流入エネルギーは空気密度に比例する 風車への流入エネルギーは風速の3 乗に比例する 風の運動エネルギーが断面積に比例するので 風力発電機の発電容量は風車の受風面積 すなわちロータの大きさによって決まることが分かる また 風の運動エネルギーは風速の3 乗に比例することから 風速の変動によって発電量が大きく変動することが分かる 風車の受ける風の運動エネルギーから風車が回転する機械的エネルギーへの変換効率 ( 出力係数 ) の理論的な最大値は BETZ の限界 として約 59% であることが知られている 実際の風車では空気の抵抗や粘性による損失のため 変換効率は理論値には達せず プロペラ型では 40% から 45% 程度である 参考までに 図 に理想風車で得られる風力エネルギー密度を 図 に各種風車の出力係数を示す 図 理想風車で得られる風力エネルギー密度 出典 : 牛山泉 さわやかエネルギー風車入門 1996 年 図 各種風車の出力係数 出典 : 牛山泉 さわやかエネルギー風車入門 1996 年 -124-

129 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 実際の風力発電システムでは さらに増速機などの機械系伝達効率や発電機の効率などが加わるため 風力エネルギーから電気エネルギーに変換できる割合 すなわち総合効率はこれらの積となり 20% から 40% 程度と見積もられる これらを総合すると プロペラ型の風力発電機においては以下の目安が得られる 風力発電機の出力目安値 (kw) = 0.4 (kw/m 2 ) 風車の投影面積 (m 2 ) 今後主流となる 5MW 級の風力発電の場合は ロータ径は目安として約 126m となる 日本最大の観覧車 ( 葛西臨海公園 ) でさえ直径は 111m であり 風力発電のロータがいかに大きいかがわかる 2 発電電力量設置する発電機 ( 風力発電システム ) が発電できる電力量を計画段階で推計するためには 設置しようとする風力発電システムの出力曲線と設置地点の風速出現確率分布を用いて計算することになる ただし 風速の出現確率分布を得るには長期にわたる観測を必要とする このため 長期のデータがまだ得られておらず 出現確率分布を把握できていないものの 概略の評価を行わねばならない事情がある場合には この種の自然現象の出現確率はレイリー分布等で表される確率分布に近いことを利用して推定することもある 表 は風車規模と年間発電量の目安を示す 表 風車規模と年間発電量の目安 注 : 表中 ( ) 内の数値は風速の高度分布を考慮し修正した風速 出典 :NEDO 新エネルギーガイドブック, 2008 年 その他の再生可能エネルギー発電システム (1) 波力発電海上を吹く風のエネルギーが海面に波を起こす 波の持つ運動エネルギーを取り出して発電しようとするのが 波力発電である 風力発電では 風のエネルギーを風車によって直接回転エネルギーに変換し 発電機を駆動する これに対して 波力発電の場合には 直接回転運動に変換することができず 一旦別の媒体の運動エネルギーへと変換し 次に発電機を駆動する回転エネルギーを得る方法を取っており さまざまな方法が試行されている このため 波力発電は波のエネルギーを変換する方法によって 以下のような分類がされている -125-

130 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 1 可動物体型 (Moving Body Type) 海面に浮かべた可動物体の動揺を機械的な運動エネルギーに変換し これを動力源として油圧発生装置 ( 油圧ポンプ ) などを動かして油圧モーターにより回転運動に変換して発電機を駆動する 可動物体型として分類される波力発電には 以下のようなものがある ア. 固定点として利用する大型の浮体にヒンジやガイドなどによって取り付けた対象海域の波長に比べて小さい寸法とした浮体 受圧板を波の力を受ける可動物体として使用する一点吸収型 (Point Absorber Type) イ. ヒンジなどで接続された複数の同程度の大きさの浮体を入射波の進行方向に置きそれぞれ異なる波の位相で運動させることにより生じる力を受ける減衰器型 (Attenuator 型 ) ウ. 沿岸域海底に置かれた基礎にフラップをヒンジなどで接続し 沿岸では水粒子の運動は楕円になることを利用してその水平運動成分 ( サージ ) によりフラップを前後に動かす Oscillating Surge Wave Converter 型エ. 海底等に固定された構造物とその上の波によって上下する浮体からなる Submerged Pressure Differential 型オ. 海底をピン支持とした振動板の振動に伴い高圧の水が海底のパイプを通して海岸に送られ陸上の水力発電装置を使用する Oscillating Wave Surge Converter 型 図 はスコットランドのオーシャン パワー デリバリー社が開発している ペラミス (Pelamis うみへび) と名付けられた可動物体型波力発電装置の一例である 関節部 ラムシリンダー 図 ペラミス ( 可動物体型波力発電装置 ) 出典 :Richard Yemm et al. Pelamis: experience from concept to connection, Phil. Trans. R. Soc. A (2012) 370, ,

131 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 全長 180m 直径 4m 総重量約 1350 トン 4 個の円筒形の浮体をまっすぐ3つの関節で接続している 波の中では浮体をつなぐ関節の角度が変化する 関節角度の変化を油圧に変換する 図 ( 下 ) に ペラミスの関節部分の切断図を示す 減衰器型の名前の由来となるラムシリンダーなど油圧機構が装備されているのが見える 発電能力は 1 基あたり約 0.75MW である ペラミスとならんで最も実用化に近いものと見られる波力発電装置に米国のオーシャン パワー テクノロジー社 (OPT: Ocean Power Technologies) が開発した一点吸収型に分類される パワーブイ (PowerBuoy) がある 図 に示すような装置で構造がシンプルかつ大部分が水中に没しているので 安全性や信頼性で有利と見られている 2005 年から 2008 年にかけて 米国ニュージャージー沿岸に定格 40kW 級の初期の試験機による試験を始め 2008 年にスペイン 2011 年にスコットランド オークニー 2011 年から 2013 年にふたたび米国ニュージャージーでの試験など実績を積み 改良を重ねてきている 図 一点吸収型パワーブイ出典 :Ocean Power Technologies 社ウェブサイト 2 振動水柱型 (OWC: Oscillating Water Column Type) 下面のみを開放した円筒を海面に差し入れると 波が通過するとき空気室内の海面は少し上下するが 特定の周期の波の中では円筒内の空気が共振を起こして大きく上下する この現象は水柱振動と呼ばれる 波の通過によって水柱振動が起きている空気室内では内部の圧力は大きく変化し 空気室の上面に穴があれば大きな空気の出入りが生じる そこに空気タービンを置き発電する方式である 空気タービンには往復気流中でも常に一方向に回転することができ 形状や構造が簡単であるウェルズタービンが主に採 -127-

132 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 用されている 図 は 浮体式振動水柱型波力発電装置の模式図及び航路標識ブイの電源装置と しての利用例である 小型の波力発電機としては大いに実績がある 図 振動水柱型波力発電装置出典 : 緑星社ウェブサイト 3 越波型 (Overtopping Type) 波は護岸や防波堤などの海岸構造物に衝突すると静水面上よりも高く打ち上がり また傾斜海岸では遡上して行く 一般には 海岸構造物に衝突し打ち上げた海水が構造物の天端を越えて陸側 堤内に流入する現象を越波と呼ぶ 越波型とは 越波による海水を貯水池あるいは貯水槽等で一時的に貯留し 貯水面と海面との高低差を利用し 排水路にタービン及び発電機を設置して発電する方式の波力発電装置である 図 はウエーブドラゴン社の開発した浮体式の越波型発電装置の例である 片側が越波を考慮した断面形状となっている浮体本体 浮体本体の両側に設置する大きな波の反射板 そしてこれらを係留する装置から構成されており 浮体上部に貯留した海水を排水する際に発電するための低圧タービンと発電機が 排水路に複数設置されている 図 越波型波力発電装置の例 出典 :Wave Dragon ApS 社ウェブサイト -128-

133 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 (2) 潮流 海流発電 (Tidal Current Power, Ocean Current Power) 潮流とは 月 太陽 地球などの天体運動により生じる潮汐現象により海水が移動する流れであり 潮汐と同じように 1 日 1 回または 2 回の周期的な変化をする 海流とは 太陽熱によって生じる海水や大気の循環によって引き起される流れであり ほぼ流れの向きや速さが一定している 一般的に潮流は 地形の影響を受けて強まるため比較的浅い海域で見られ 海流は 地球の自転の影響も受けており黒潮やメキシコ湾岸流のように大陸の西側において深い海域を流れている 潮流 海流発電システムは このようにして生じた潮流あるいは海流による海水の流れの持つ運動エネルギーを 流れの中におかれたタービンにより回転エネルギーに変換し このエネルギーを発電機の原動力として利用し 電気エネルギーを得るシステムである 潮流 海流発電では 水平軸型タービンの一つであるプロペラ型が多くのプロジェクトで採用されている 一方 周期的な潮流の向きの変化に対応できるため 流れの方向に対する依存性が無い垂直軸のダリウス式やサボニウス式などのタービン形式も採用されている 海底に設置した構造物にタービン部を固定する着底式 係留された浮体に取り付ける浮体式に加えて 海底などから係止したタービン部を水中に浮遊させる浮遊式などがある 潮流 海流発電はまだタービンの高効率化 係留システムの安定性などの諸課題を解決すべく研究開発が進められている状況である 着底式潮流発電の例 ( 構想 ) を図 に 浮遊式海流発電の例を図 に示す 図 着底式潮流発電の例 ( 構想 ) 出典 : 川崎重工ウェブサイト ( ニュース 2011 年 10 月 19 日 ) -129-

134 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 浮遊式海流発電 ( 構想 ) の例出典 :IHI 技報 Vol.53 No.2 ( 2013 ) (3) 潮汐発電 (Tidal Power) 潮位差が大きい湾や河口の入り口に堤防と水門を建設しダムを作る 高潮位の時には開門し 低潮位の時には閉門する等の水門操作をすると堤防の内外で水位差ができる こうして作ったダムに 水力発電の技術を応用したものが潮汐発電である 基本的には低潮位の時に生じる流れに対応して発電する一方向式であるが 高潮時の流れにも対応して発電する双方向式もある 図 は フランスにあるランス潮汐発電所であり 1966 年 11 月 26 日に完成した世界初にして当時の世界最高出力の潮汐発電所である ランス川河口に全長 750m となる 2 基のダムを建設しランス川を完全に堰き止め 平均で 8m 最大で 13.5m という大きな潮位変化により 24 基のタービンが最大 240MW の電力を生み出している 図 は 韓国にある始華湖 ( シファホ ) 潮夕発電所 2011 年から運転を開始し設備容量は 254MW で世界最大級の規模である 図 ランス潮汐発電所 ( 仏 ) 出典 :Tidal Energy ウェブサイト 図 始華湖潮汐発電所 ( 韓国 ) 出典 : 韓国海洋研究所ウェブサイト (4) 海洋温度差発電 (OTEC: Ocean Thermal Energy Conversion) 海水の温度は 太陽の熱によって温められた表層が高く 深度が上がるにつれて次第に下がり 約 600m~1000mの深層部では一定となる 表層の海水と深層部にある冷海水との間には約 10~25 の温度差がある 例えば 赤道直下での海洋表層水は 30 近くあるが 水深数百メートルの海洋深層水は 5~10 であり 20~25 の温度差がある この海洋に蓄えられた熱エネルギーを 表層水と深層水の間の温度差を利用して熱サイクルによ -130-

135 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 り電気エネルギーに変換する発電システムが海洋温度差発電 (OTEC) である OTEC に利用される電熱サイクルには オープンサイクルとクローズドサイクル そしてこれらのサイクルを組みわせたハイブリッドサイクルの 3 つがある 1 オープンサイクル蒸発器 凝縮器 タービン 発電機から構成され 作動流体を循環させる必要がないため作動流体ポンプはない このシステムでは 蒸発器 タービン 凝縮器内をあらかじめ真空ポンプで真空にしておき 温海水を蒸発器内に導入して蒸発させて水蒸気を得る この水蒸気を作動流体として タービンに送り タービンを回して発電を行う タービンから出た膨張した水蒸気は凝縮器に入り 冷海水によって冷却され 海に排出される この様に作動流体である水蒸気はサイクル内を循環しないのでオープンサイクルと呼ばれる 排出した水は飲料水としても使用できる このサイクルについては 日本ではほとんど研究されていないが フランス政府は現在でも積極的に研究を行っている 図 海洋温度差発電 オープンサイクル出典 : 佐賀大海洋研究センターウェブサイト 2 クローズドサイクル蒸発器 凝縮器 タービン 発電機 作動流体ポンプから構成される 蒸発器 凝縮器 タービンはパイプで繋がれていて 作動流体が封入されている 作動流体は 蒸発器で高温熱源から熱を受け取り タービンで仕事 ( 発電機を回転させる ) を行い 凝縮器で低温熱源へ熱を捨て 再び蒸発器で熱を受け取り これらの装置を循環する このサイクルは火力や原子力発電所と同じサイクルであるが 低温熱源として約 5 の深層水 ( 冷海水 ) 高温熱源として約 18~30 の表層水 ( 温海水 ) を使うことが異なる また 作動流体は 各熱源の温度が低く 温度差も小さいことから 15~25 で蒸発する物質を使用する この作動流体には フロン 22 やアンモニアが適当であると言われていたが 現在ではアンモニア / 水の混合媒体が有望視されている -131-

136 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 海洋温度差発電 クローズドサイクル 出典 : 佐賀大海洋研究センターウェブサイト クローズドサイクルは ランキンサイクル に基づいたものであり このランキンサイクルを用いて海洋温度差発電所をつくると 熱効率はたかだか2~3% となる アンモニア 90% に水 10% の混合物質の作動流体を用いたサイクルが考案され 図 に示すウエハラサイクルと呼ばれる かなり複雑なものであるが このサイクルは2つのサイクル 1つは従来のランキンサイクル 他の1つは吸収サイクルと呼ばれているものに相当する この2つのサイクルを同時に動かすために タービンは 2 つある 一つは 11~12 気圧で動くタービン もう1つは6 気圧で動くタービンである このウエハラサイクルを用いて海洋温度差発電所をつくると その熱効率は約 5% となる ランキンサイクルの熱効率 2~3% を考えると かなり高い効率であることがわかる このウエハラサイクルを用いることによって 海洋温度差発電は実用化されようとしている ウエハラサイクルの特徴は 作動流体にアンモニア / 水混合液を用いて 2 段階で発電し 作動流体の蒸発器と凝縮器に独特のプレート式熱交換器を用いる点である 図 ウエハラサイクル 出典 : 佐賀大海洋研究センターウェブサイト -132-

137 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 3 ハイブリッドサイクルクローズドサイクルとオープンサイクルを組み合わせたサイクルで 基本構造はクローズドサイクルであるが 蒸発器に導入する高温熱源が異なる クローズドサイクルでは 蒸発器に温海水を直接導入するのに対し ハイブリッドサイクルでは 一旦オープンサイクルの蒸発器に温海水を導入し そこで得られた水蒸気を高温熱源として使う このことから クローズドサイクルに比べ 蒸発器の海水による汚染がなく 性能の低下が防げる また オープンサイクル同様 蒸発器から排出された水は 飲料水として使えるため 淡水化技術の応用として考えられている 図 海洋温度差 ハイブリッドサイクル 出典 : 佐賀大海洋研究センターウェブサイト 図 は沖縄県久米島に建設された沖縄県海洋温度差発電の実証実験設備であり 平成 25 年 4 月から本格稼働している 平成 25 年 3 月の試験運転では 表層水温 23.5 深層水温 9.3 の条件で 3.1 キロワットの発電が確認されている 図 沖縄県海洋温度差発電実証設備 ( 久米島 ) 出典 : 沖縄県海洋温度差発電実証設備ウェブサイト -133-

138 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 4.2 開発の全体工程 工程全体の流れ海洋再生可能エネルギーの開発工程について 洋上風力発電事業計画の場合を主体として概説する 開発工程の一般的な例として NEDO( 国立研究開発法人新エネルギー 産業技術開発機構 ) が洋上風力発電の導入促進を目的に発電事業者等への参考として作成した 着床式洋上風力発電導入ガイドブック に示されている洋上風力発電事業計画の流れを図 に示す 実現可能性調査 から開始し 基本設計 実施設計 建設工事 の各段階へと順次に進め 事業 を開始する やがて設備等の寿命等を迎えて 撤去 解体 により計画を終了する 各段階において必要となる種々の技術的な検討とともに関係する法規の検討を行い適切な時期に管轄諸官庁への許認可手続きを行うことが求められている また 漁業 海運業などの海域を利用する利害関係者との調整や電力会社との協議も各段階で必要である 日本において洋上風力発電を計画する場合 立地調査などの計画開始から発電事業の開始までに要する期間として 10 年余が想定されており 同ガイドブックに 図 のようなタイムテーブルが例として示されている -134-

139 海洋開発産業概論 教材 4 章海洋再生可能エネルギー開発の実際 図 洋上風力発電に係る導入の流れ 出典 :NEDO 着床式洋上風力発電導入ガイドブック ( 第 1 版 ) 2015 年 -135-

140 -136- 図 洋上風力発電導入のタイムテーブルの例出典 :NEDO 着床式洋上風力発電導入ガイドブック ( 第 1 版 ) 2015 年

141 4.2.2 各段階の主なタスク (1) 立地海域調査事業を実施しようとする候補地を選定するために候補海域について自然条件および社会的条件の双方から調査する 調査すべき自然条件としては 風 落雷 台風 地震 波浪 潮汐 潮流 天候に関する状況 地形 ( 海底地形 ) 地質 及び海洋生物の棲息状況等広範な内容がある 風 波及び潮流など自然条件の多くは 国などの諸機関等がそれぞれ観測点を定めて観測を行っており統計資料等が利用可能である場合が多い これらの中から近隣の観測データを利用し 候補地の状況を推定することが行われている 風況が風車の運転状況すなわち発電量など事業の成否に直接的に関係することは自明であるが 自然条件は その他にも設備や施設の設計条件 建設工事の方法 必要工事期間などにも影響を及ぼす さらには維持管理の内容等にも自然条件が大いに影響するため 自然条件について広範に調査を行う必要がある 社会的条件の代表例としては 関連法規 関係官庁の許認可と系統連系が挙げられる 国は海域の利用に関しては様々な法令により制約を設けている 主なものとして 自然公園法 自然環境保全法 文化財保護法 景観法 海岸法 港湾法 国土計画利用法などがある 立地を予定する海域でこれらの関係する法令の規定する条件を満たすかどうか 法令の定める許認可手続きなどについて検討を行う 建設工事に関しても 建築基準法 電波法 航空法 消防法 騒音規制法 振動規制法 自然環境保全法 海岸法 海上交通安全法 港則法 船舶安全法 航路標識法など関係する法律が多数あり 当該事項の有無や手続きなどを調査する (2) 気象 海象調査立地調査段階では参照可能な付近の地点の気象 海象データを利用して何らかの方法により候補地の気象 海象を推定している この段階では 候補海域において風況観測塔などの観測設備を設けて実測データを得て 気象状況等に関する推定の精度を上げることがプロジェクトリスクの低減や収益性の正確な評価のためには有効である 統計的に有意な実測データを得るためには 事象の性質や参照可能な付近地のデータの有無等にもよるが すくなくとも数年以上の期間にわたって継続した観測が必要とされる (3) 基本設計気象調査や経済性検討 地域住民との調整などを踏まえて 風車の設置点や施設規模を設定するために行う事前調査を基本設計と呼んでいる 風車の場合 基本設計の手順は以下のとおりである -137-

142 1 風車設置点の決定 2 風力発電設備規模の設定 3 風車の機種選定 4 海底地形 土質調査 5 支持構造物の選定 施設の基本配置 6 経済性の検討 (4) 環境影響評価基本設計と並行して環境影響評価を進める 環境影響評価法では 環境アセスメントを実施すべき事業の規模 環境アセスメントを実施する場合の手続き等について定めている 影響を受ける対象を環境要素と呼び 人間や生物などがこれにあたる 影響を受ける対象を環境要素と呼び人間や生物などである また 影響を及ぼす要因としては 騒音 水質 ( 水の濁り ) 地形 地質 風車の影( シャドー フリッカー ) 景観などが挙げられる 表 は法令が定める風力発電における環境影響評価における参考項目の一覧表である 環境影響評価法では 風力発電については総発電量 10,000kW 以上の場合を対象としており 7,500kW 以上で個別に必要と判断されると対象となる場合がある 着床式洋上風力発電の場合 水中騒音による魚類及び海棲哺乳類等の海洋生物への影響 バードストライク 海草 海藻など植物への影響 景観 水の濁り 海底地形の改変などについて検討を行っている -138-

143 表 風力発電における環境影響評価に係る参考項目の一覧 出典 :NEDO 着床式洋上風力発電導入ガイドブック( 第 1 版 ) 2015 年 (5) 実施設計実施設計において 洋上風車システム及び電気設備を主な対象として設備に関する仕様を決め 関連する施設を対象として建築 土木工事に関する設計を行う 工事内容としては 洋上風力発電設備に関する海底地盤整備 支持構造物の設置 風車の据付 海底送電線などの敷設 洋上変電所の建設などの諸工事があるが これらが支障なく安全に行われるように適切な工事計画を策定する 工事計画には 工事工程は勿論のこと その前提となる工事手順や必要な工事機材あるいは資材保管場所等に関する計画 必要な手続き 安全対策などが含まれている (6) 建設工事工事等の契約手続 土木工事 風車設置工事 電気工事及び試運転 検査を行う (7) 事業開始運転 保守 補修 損害保険等の契約手続を初め 稼働後には運転監視 電気設備及び風車設備本体の保守点検を行う (8) 撤去 20 年間等の稼働後に 施設を撤去 解体する -139-

144 4.3 プロジェクト事例 ~ 福島復興 浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業 ~ プロジェクト事例として 今後の日本の洋上風力発電事業の発展において極めて重要なプロジェクトとして位置づけられている 現在福島沖で進められている 福島復興 浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業 を取り上げる 概要着床式洋上風力発電については商用化され 欧州では大規模なウインドファームが実現している一方 浮体式について現在実証研究段階にある 浮体式洋上風力発電に関しては ノルウエーやポルトガルなどで実証研究が行われており 日本でも五島列島沖などで実証研究が行われているが 発電設備 1 基での実証実験であり 大型のウインドファーム実現までにはまだまだ様々な課題がある 遠浅で地形的に有利な欧州と比較して 日本では漁業権の調整の問題等もあり 今後洋上風力発電を普及させていくためには 浮体式の技術を導入していくことが欠かせない このような状況下 経済産業省が主体となり 浮体式洋上風力発電のビジネスモデルを確立し 大規模浮体式洋上風力ウインドファームの事業展開を実現することに大きく寄与することを目的として 福島浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業が開始された 本実証研究プロジェクトは 丸紅株式会社 ( プロジェクトインテグレータ ) 東京大学( テクニカルアドバイザー ) 三菱商事株式会社 三菱重工業株式会社 ジャパンマリンユナイテッド株式会社 三井造船株式会社 新日鐵住金株式会社 株式会社日立製作所 古河電気工業株式会社 清水建設株式会社及び みずほ情報総研株式会社の 11 社からなる 福島洋上風力コンソーシアム が経済産業省の委託により取り組んでいる また 本実証研究プロジェクトの展開により 東日本大震災の被害からの復興に向けて 再生可能エネルギーを中心とした新たな産業の集積 雇用の創出を行い 福島が風車産業の一大集積地となることを目指している 図 に実証実験海域の概略位置を 図 に実証研究プロジェクトで設置される浮体の全容を示す 図 実証研究プロジェクトの概略位置 ( 出典 : 株式会社丸紅ウェブサイト ) -140-

145 図 実証研究プロジェクトで設置される浮体の全容 出典 : 福島洋上風力コンソーシアムウェブサイト 研究課題浮体式洋上風力発電は 世界的にも実証研究が始まったばかりであり 大規模浮体式洋上ウインドファームを実現するためには 浮体式風車 浮体式変電設備 送電システム等の技術的な課題が残されている 図 に 本プロジェクトの理念と方針を示す 本実証研究事業では 技術的な課題のみならず 社会的な合意形成に向けた取り組みも進められる 図 実証研究プロジェクトの理念と方針 出典 : 福島洋上風力コンソーシアムウェブサイト 具体的には 以下をテーマに研究に取り組んでいる (1) 世界最大級の 7MW 浮体式風車や世界初の 25MVA 浮体式洋上変電設備及び 66kV の -141-

146 大容量ライザーケーブルの開発により浮体式洋上風力発電の事業性の検証を行うこと (2) 世界初の浮体式洋上観測システムを構築して浮体の動揺を考慮した気象 海象の観測手法を確立し浮体式洋上風力発電の性能評価を可能にすること (3) 複数タイプの風車と浮体を用いることにより各種浮体式洋上風力発電システムの特性及び制御効果を明らかにすること (4) 浮体式洋上風力発電所の送変電システムの開発 (5) 腐食及び疲労に強い高性能鋼材の開発 (6) 厳しい環境条件での建設に向けての施工技術開発等の技術課題に挑戦しており あわせて将来大規模な洋上風力発電を実現するために欠かせない社会的合意形成の在り方 すなわち漁業との共存方策の提案 航行安全性と環境影響の評価手法の確立 なお コンソーシアムメンバーの主な役割については 表 に示す通りである -142-

147 表 コンソーシアムメンバーの主な役割 出典 : 福島洋上風力コンソーシアムウェブサイト 事業の流れ本実証研究事業は 2011 年 3 月に発生した東日本大震災からの復興事業としての側面を持ち 経済産業省の委託事業として進められている 2012 年 3 月に先述のコンソーシアムが委託先として採択され 2011 年度内に事業が開始された 本実証研究プロジェクトは 図 に示すように 第 1 期 第 2 期からなる 第 1 期では 2MW のダウンウインド型浮体式洋上風力発電設備 1 基と 世界初となる 25MVA 浮体式洋上変電所 1 基を事業海域に設置し 風力発電から浮体式の変電所を経由し陸上の電力網へ送電するための海底ケーブルを設置している 2013 年 3 月に建設が開始され 同 11 月に運転開始 実証実験が始まった 本プロジェクト開始から 第 1 期運転開始までの間 航行安全を期すための関連団体との協議や地元漁業関係者への説明 内閣府 国交省 環境省 農林水産省などの関係省庁 地元行政への説明を行うとともに 環境アセスメント等の許認可を取得した 2014 年から開始した第 2 期では 5MW の浮体式ダウンウインド型洋上風車および 7MW の油圧ドライブ型浮体式洋上風力発電設備それぞれ1 基を新設する 表 図 4.3.5~ 図 に 本実証研究プロジェクトにおける主な施設を示す -143-

148 図 プロジェクト計画の概要 表 本プロジェクトの主な施設 設備名称設備規模風車形式浮体形式工期 浮体式洋上サブステーション ふくしま絆 容量 25MVA 電圧 66kV 変電所 ( 日立製作所製 ) アドバンストスパー ( ジャパンマリンユナイテッド製 ) 第 1 期 ダウンウインド型風車搭載用セミサブ ふくしま未来 2MW ダウンウインド型 ( 日立製作所製 ) 4 コラム型セミサブ ( 三井造船製 ) 第 1 期 7MW 風車搭載用セミサブ ふくしま新風 7MW 油圧式ドライブ型 ( 三菱重工業製 ) 3 コラム型セミサブ ( 三菱重工業製 ) 第 2 期 5MW 風車搭載用アドバンストスパー ふくしま浜風 5MW ダウンウインド型 ( 日立製作所製 ) アドバンストスパー ( ジャパンマリンユナイテッド製 ) 第 2 期 -144-

149 水面上高さ 約 61m 浮体長さ X 幅 約 33mx 約 33m 浮体高さ 71m 喫水 50m 変電設備 観測設備 ヘリデッキなどを装備 図 浮体式洋上サブステーション ふくしま絆 風車ロータ径ハブ海面高浮体長さ X 幅浮体高さ喫水 80m 105m 約 58m x 65m 32m 17m 図 ダウンウインド型風車搭載用セミサブ (2MW) ふくしま未来 -145-

150 7MW 風車搭載用セミサブ ふくしま新風 5MW 風車搭載用アドバンストスパー ふくしま浜風 風車ロータ径 :167m ハブ海面高 :105m 浮体長さ X 幅 : 約 85m x 約 150m (V 字の一辺が約 106m) 浮体高さ :32m 喫水 :17m 風車ロータ径 :126m ハブ海面高 :86m 浮体長さ X 幅 : 約 59m x 51m 浮体高さ :48m 喫水 :33m 図 第 2 期の主な建造施設 -146-

151 < 参考資料リスト> (1) NEDO: 風力発電導入ガイドブック第 9 版 2008 年 (2) 西華産業ウェブサイト : (3) 一般財団法人エンジニアリング協会 : 平成 26 年度 海洋石油ガス開発技術等に関する動向調査 報告書平成 27 年 4 月 (4) NEDO: 風力発電システムの設計マニュアル 1996 年 (5) NEDO: 再生可能エネルギー技術白書初版 2012 年 (6) NEDO: 再生可能エネルギー技術白書第 2 版 2014 年 (7) EWEA:Wind in Our Sails 2011 (8) Statoil 社ウェブサイト : (9) GustoMSC 社ウェブサイト : (10) Pelaster 社サイト : (11) 牛山泉 : さわやかエネルギー風車入門 三省堂書店 1996 年 (12) NEDO: 新エネルギーガイドブック 2008 年 (13) Richard Yemm et al. Pelamis: experience from concept to connection, Phil. Trans. R. Soc. A (2012) 370, , 2011 (14) Ocean Power Technologies 社ウェブサイト : (15) 緑星社ウェブサイト : (16) Wave Dragon ApS 社ウェブサイト : (17) 川崎重工業ウェブサイト : (18) IHI: 黒潮で発電!? 水中浮遊式海流発電システムの開発 IHI 技報 Vol.53 No.2, c2c7b1e4ee4d1306.pdf (19) Tidal Energy 社ウェブページ (20) 韓国海洋研究院ウェブページ (21) 佐賀大学海洋研究センターウェブサイト : (22) 沖縄県海洋温度差発電実証設備ウェブサイト : (23) NEDO: 着床式洋上風力発電導入ガイドブック ( 第 1 版 ) 2015 年 (24) 福島洋上風力コンソーシアムウェブサイト :

152 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 5 安全と環境保全海洋開発の現場では 事故が起こると 人命を危機に晒すことはもとより 莫大な被害や深刻な環境汚染を招きかねない 過去に発生した事故を契機として 安全と環境に対する意識が高まったことから 関連国の政府や各企業は 様々な対策を講じている この章では 実際に起きた事故を契機に制定された規則や 安全や環境等を継続的に保全していくための企業の取り組みとしての HSE(Health, Safety and Environment) マネジメントシステム リスク評価の手法 環境影響評価について概説していく 5.1 過去の事故事例と安全 環境保全規制の強化安全 環境保全に向けた取り組みが強化される流れの中で 過去の重大事故は各国政府や国際機関による規制強化に向けた重要な契機となった 以下 海洋石油 天然ガス開発における過去の主要な事故と それを契機に制定された規則等について概説する (1) Alexander Kielland 事故 (1980 年ノルウェー 転覆 ) 北海ノルウェー沖の Ekofisk 油田で作業員の浮体式宿舎として使用されていたセミサブ式居住ユニットである Alexander Kielland ( 図 5.1.1) は 1980 年 3 月 27 日 波高 12m の強風を伴う暴風で転覆し 123 人の死者を出した ( 図 事故発生位置 ) Alexander Kielland は 事故当日の午後になり天候が悪化したため 近くの固定式石油プラットフォームとの接触を避けるために位置を移動した 移動の際は 推進装置を持っていなかったので 各コラムのアンカー索を緩めウィンチで巻き込む方法をとっていた 位置を移動してから半時間後に乗組員は強い衝撃を受けたが 悪天候下で時折発生する波浪衝撃に似ていたので特に気にする者はいなかった その後の第二の衝撃の直後 Alexander Kielland は 30~35 程度まで一気に傾き 一旦静止したように見えたが 徐々に傾きながら沈み始め 最初の衝撃があってから約 20 分後に完全に転覆した ( 図 5.1.3) 後に 5 脚構造の 1 脚のブレーシングの溶接の疲労亀裂により構造が崩壊したと究明された 事故及び被害拡大の原因として 重要な構造部材であるブレースに 艤装部材をずさんな方法で溶接取り付けを行ったこと その部分に対して疲労寿命設計の必要性の認識がなかったこと 溶接の溶け込み不良により欠陥が残っていたこと 定期検査時に疲労亀裂を発見できなかったこと 構造強度の冗長度が不足していたため 一部材 ( ブレース ) の破壊が主要構造の崩壊につながったこと 余剰浮力が少なく 浮体としての沈下や転覆に対する冗長性が少なかったこと 上部構造が水密でなかったこと 船体傾斜が大きく 波高の高い洋上で救命ボートが安全に着水 離脱できなかったこと等が挙げられ これを受けてノルウェー政府や DNV 等の関係機関が事故原因への対策 -148-

153 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 を講じた Alexander Kielland は移動式ユニットであったことから ノルウェー海事庁が当時の監督官庁であり 国家石油庁 (Norwegian Petroleum Directorate, NPD) の役割は居住区の検査に限定されていたが この事故を契機として 北海向けの新たな規制制度が策定された 規制改革により それまで海洋開発産業の規制に関与していた複数の機関に代わって ノルウェー海域における海洋開発の安全性の総合的な責務は NPD に付託された NPD はノルウェー沖の石油 ガス運用に使用される設備 及び機器について厳格な基準を策定し これを施行した 図 Alexander Kielland 図 事故発生位置 出典 : 畑村創造工学研究所失敗知識データベース 図 Alexander Kielland の転覆状況 出典 : 畑村創造工学研究所失敗知識データベース (2) Ocean Ranger 事故 (1982 年カナダ 転覆 ) Alexander Kielland 事故からわずか 1 年 11 か月後の 1982 年 2 月 15 日 カナダのニューファウンドランド岸オフショアで セミサブ掘削リグ Ocean Ranger が沈没した Ocean Ranger 号は 1976 年 ODECO 社で設計 日本で建造された設計最大波高 33m の当時最 -149-

154 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 大級のセミサブ式リグであった 事故当時の風速は 45m/s 波高は 21~24m で 荒天ではあるが 設計条件を上回るようなレベルではなかった 陸上基地への リグは ノットの西風を受けて正船首方向に 8~10 フィートで沈み 左舷に 12~15 傾斜して危険なため 全員が救命ボートに乗り組み中である との連絡を最後に 転覆沈没し 84 人の乗員全員が命を失った 米国 Coast Guard の事故調査報告書によると 事故は左舷後方 2 番目のコラムにあるバラスト制御室の舷窓が波浪の衝撃荷重で破れたことから始まった 破れた舷窓から大量の海水がバラスト制御室に流入し 制御盤等電子機器類が水浸しになった この海水で 電磁式スイッチがショートし バラストタンク内のバルブが勝手に自動開閉した 開いたバルブが原因で 左舷船首方向へ船体が傾斜した オペレータが電源を切り すべてのバルブが閉まり一旦は傾斜が止まった しかし 船体の姿勢を示す計器類が 水準器を除きすべて消えた状態になった 2~3 時間後 制御盤のスイッチを再投入したが スイッチがショートしていたため バルブが開き 左舷船首部のバラストタンクに海水が移動し 船体の傾斜が益々増大した 乗組員がサクションポンプで 船首部のバラスト水を汲み出そうとしたが ポンプのヘッドが足りず バラスト水がさらに船首部に流入し傾斜がさらに厳しくなった 手動で動くバルブも操作したが 誤った操作であり 事態をより悪化させた 船体傾斜が大きくなり 波浪により コラム上部にあるチェーンロッカー開口部より浸水し 約 15 度の傾斜となった 同報告書では 適切な人員の関与があれば 本事故は避けられたとしている また 設計の不備により救命ボートは 1 隻しか発進することができず 救助のために待機していた船も リグからの要請が遅れたこと及び荒天のため 沈没時の救助に間に合わず 結果として乗組員全員が死亡する大惨事となった Alexander Kielland Ocean Ranger の事故を契機として IMO MODU コード及び MODU バラストシステム制御 ポンプの容量と性能 冗長性 通信 水密性の船級規則に大幅な改正が行われた (3) Piper Alpha 事故 (1988 年英国 爆発 ) 1988 年 7 月 6 日 北海油田の石油 ガス生産プラットフォームである Piper Alpha において大量のガスリークが発生して引火 爆発し 2 時間の内に 90 メートルのプラットフォームは完全に炎に包まれ崩壊した この事故により 当時プラットフォームにいた 229 人のうち 167 人が死亡し 救助隊員 2 名も巻き込まれて死亡するという 海上油田における史上最悪の事故となった 事故発生の経緯は以下の通りである -150-

155 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 1 プラットフォームに設置されていたコンデンセート輸送用ポンプ 2 基のうち 1 基が計画点検用に安全弁が取り外され 使用不可の状態にあったが そのことが管理者から担当者に伝わらなかった ( 管理者が忙しそうだったので 担当者はメモを残して帰ってしまったが 当該メモは紛失した ) 2 一般の海上プラットフォームと同様に Piper Alpha は自動消火設備を装備していたが ダイバーによる点検作業時は 海水汲み上げポンプによる吸い込み事故防止のため 消火設備は手動で起動するようになっていた 3 事故当日 もう一つの稼働できる状態にあったポンプが起動できず 1の情報伝達の不備もあり 安全弁が取り外された方のポンプが起動された 4 起動後 安全弁の代わりに臨時で取り付けられていた蓋が破損し その結果可燃性ガスが噴出して引火した 5 火災が発生した区画の防火壁がガス爆発に耐えられず 爆発と火災はプラットフォーム上に広がった 6 爆発はコントロールルームを破壊し 避難指示等の指揮を執る者の大半が死亡した 7 プラットフォームに引き込まれているパイプライン等も破損し 他のプラットフォームから送られた原油が噴出し火災が拡大し 脱出もままならず 多くの犠牲者が出た また Piper Alpha は 安全上の考慮により 危険な工程は人員を配置する場所から離れて行うよう各モジュールを設計するという原則に則って建造されていたが 天然ガス生産のための改造の際 コントロールルームに隣接する場所にガスコンプレッサーを設置するなど 安全原則が無視された設計が行われた このことも事故の一要因として指摘された Piper Alpha 事故については 事故後 カレン卿を委員長とする調査委員会によって調査が行われ 106 の勧告を含む報告書 (Callen Report) が示された Callen Report における勧告のポイントは 1オペレータによる自律的安全管理体制の要求 2 客観的安全性評価の二つである Piper Alpha 事故後 英国では海洋開発の管轄が UKHSE(Health and Safety Executive) に移管され 1990 年に健康安全省が単独で海洋開発の安全規制当局となった 1992 年に UKHSE は Callen Report の勧告を受け Offshore Installations (Safety Case) Regulations(Safety Case 法 ) を公布し これが 1993 年に発効 (2005 年に改訂 ) した この規定により 英国北海に生産設備を設置する際に オペレータ及び所有者は重大災害を引き起こす可能性のあるハザードをコントロールする方法を提示し 斯かるハザードコントロール手法を実施するための安全管理システムが適切であることを実証する Safety Case を UKHSE に提出し 承認を受けなければならなくなった Safety Case 法は オイルメジャー等が積極的に受け入れ 英国に留まらず で後述するようにその後世界中で海洋構造物を対象に実践し広まった -151-

156 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 (4) Macondo 事故 (2010 年米国 爆発 油流出 ) 2010 年 4 月 20 日 米国ルイジアナ州メキシコ湾の沖合 Macondo 油田において探鉱中であったセミサブ式掘削リグ Deepwater Horizon で爆発炎上した ( 図 5.1.4) この事故により Deepwater Horizon は沈没し 11 人の人命が失われた 図 爆発炎上する Deepwater Horizon 出典 :Final Report on the Investigation of the Macondo Well Blowout, The Deepwater Horizon Study Group (DHSG), March 1, 2011 海底の油井からの原油流出を止める作業は困難を極め メキシコ湾に 105 日間にわたって原油が流出したことにより環境が破壊され 油田運用主体であった BP は罰金及び補償として 400 億ドル以上の支払いを余儀なくされた 事故の原因は掘削プログラムの設計が不適正であったこと 油井のケーシングの不良 さらに複数の人的ミスに起因すると考えられた しかしリグの警報器と安全システムの誤作動もまた大事故に至った一因とされている Deepwater Horizon 事故により 米国の規則及び基準に様々な変化があった また将来事故が発生した場合の経済的リスクが引き上げられた それまで任意とされていた米国石油協会 (American Petroleum Institute, API) の推奨実践例 (Recommended Practice) であった RP 75 のうち 13 の規格が義務化され 規制が強化された また 海洋開発の監督機関は組織再編成の結果 安全 環境執行局 (Bureau of Safety and Environmental Enforcement, BSEE) と海洋エネルギー管理局 (Bureau of Ocean Energy Management, BOEM) の 2 つの別々の機関に分割された 2014 年 12 月の BOEM の発表で 米国における海洋環境汚染事故の財務的リスクがさらに高まった 米国での海洋資源開発における安全及び環境保全に関するオバマ政権の継続的取り組みの一環として BOEM は行政措置として海洋石油 ガス設備の油濁関連の損害賠償責任額の上限を 7,500 万ドルから約 1 億 3,400 万ドルに引き上げた これは Deepwater Horizon の石油流出に関する国家委員会をはじめとする複数の研究による損害賠償責任額の上限引き上げ勧告と一致しており 1990 年油濁防止法で許される最大幅の引 -152-

157 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 き上げである Deepwater Horizon 事故により 米国での海洋開発において事故を起こした場合 巨額の財務的な負担が発生することがはっきり示され 事故防止及び環境保全の重要性が一層認識されるようになった 5.2 HSE (Health, Safety and Environment) 前項にて述べた重大事故を契機に 海洋開発産業において 安全及び環境保全の重要性が認識され オイルメジャーを中心に各社においても取り組みがなされるようになった 各社のウェブサイト等を通じて CSR の一環として発信している例も多く 安全 環境への取り組みは社会へのアピールポイントの一つとしても認識されるようになってきている 本テキストでは 安全環境保全の取り組みを自律的継続的に行うための仕組みである HSE マネジメントシステム (HSE Management System, HSEMS) を取り上げ その成り立ちやリスク管理の手法等について概説する HSE とは HSE とは 事業活動に伴う労働安全衛生問題や環境問題を示す言葉である これらの問題に系統的かつ効率的に対処してリスクを出来る限り低減し 企業価値を高めるため HSE に対する方針を立て HSEMS を構築して 様々な取り組みを行っている 最近では HSE( 健康 安全 環境 ) の要素に加え 品質管理 (Quality) 保安 (Security) の要素も合わせて考えるようになり HSEQ(Health, Safety, Environment and Quality) HSSE(Health, Safety, Security and Environment) SHES(Safety, Health, Environment and Security ) などそれぞれの分野 企業で様々な呼び方をされている (1) HSEMS の成り立ち現在色々な産業分野に普及している HSEMS という管理手法は 1974 年に英国で制定された労働安全衛生法 (Health and Safety at Work, etc. Act) が基となっている 英国に端を発した労働安全衛生法は 初期のころは 1802 年に発布された 工場法 (Factory Act) であった その後 工場法は産業の発展と共に規則が増え 複雑化していった その国家による細かい規則は やがて時代の変化とともに 産業技術の進歩に追いついていくのが困難な状況になった 1972 年に英国の Lord Robens が座長を務める委員会による Report of the Committee on Safety and Health at Work いわゆる Robens レポート が発表されて以来 英国の旧来の労働安全衛生法体系は崩壊し 新しく生まれ変わったと言われている 同時に Robens レポートで提言された新しい労働安全衛生体制を牽引していく役目の政府機関で 後に海洋開発事業の安全衛生も管轄することになる UKHSE 設立された UKHSE はその後 20 年以上かけて 英国の労働安全衛生に関する法律の構造を近代化するために長い努力をしてきたと言われている 英国労働安全衛生法は 後にオイルメジャーの HSEMS に大きな影響を与えた 特に 何を行うのかという点に関しては 従来の複雑な法規制を廃して 各産業界の自主的リス -153-

158 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 クアセスメントによる評価項目を設定し運営するという法体系に変わったことは リスクアセスメント リスク低減策決定 実行 点検 継続的改善サイクル を回すと言う いわゆる PDCA (Plan, Do, Check and Act) 概念 の導入に繋がり 今日の HSESM の根幹を成す また どこまで対策をとれば良いかという点に関しては 合理的で実行可能なリスク低減策は採用すべし といういわゆる ALARP (As low as reasonably practicable 概念 ) または SFAIRP (So far as is reasonably practicable) 概念 が同法を契機として導入されるようになった (2) Safety Case 法前述の Piper Alpha 事故調査委員会から出された Cullen レポートの 106 の勧告を受けて 1992 年に英国で制定された Offshore Installations (Safety Case) Regulations いわゆる Safety Case 法も HSE 活動に大きな影響を与えた 本法は 英国が管轄する海域で操業する海洋構造物での重大事故 災害のリスクを低減させることを目的として制定され 英国領海 大陸棚で操業する海洋構造物に対して 客観的な安全性評価 自律的な安全管理体制 を施すよう要求するものである 英国で海洋開発を行うにあたっては オペレータ等の事業者は重大災害を引き起こす可能性のあるハザードをコントロールする方法を提示し そのハザードコントロール手法を実施するための安全管理システムが適切であることを実証する Safety Case を UKHSE に提出しなければならない 同省は書類審査を行い 3 年ごとに政府が更新 監査する Safety Case 法により HSEMS すなわち計画的に PDCA サイクルを回しながら HSE 活動を継続的に行う仕組みを構築することが求められるようになった オイルメジャーは この Safety Case 法を全面的かつ協力的に受け入れて 英国に留まらず その後世界中で海洋構造物を対象に HSEMS を構築 実践し広めて行った (3) 世界初の海洋石油 天然ガス開発 HSEMS ガイドライン Safety Case 法の成立を踏まえ 1994 年 E & P Forum(Oil Industries Exploration & Production Forum, 当時, 現在は International Association of Oil & Gas Producers, IOGP) は具体的に何をなすべきかについてのガイドライン Guideline for the Development and Application of Health, Safety and Environmental Management Systems(E & P Forum) を発表した ( 図 5.2.1) これは オイルメジャーとしての世界初の海洋石油 天然ガス開発の HSEMS のガイドラインである このガイドラインは海洋構造物の Operation( 操業 ) を主たる活動対象として作成され その骨子は 次の二つである リスクアセスメントを基にした PDCA サイクルを回す 合理的かつ実行可能なリスク低減策は全て採用する このオイルメジャー発行の HSEMS ガイドラインの出現により Safety Case 法とその実践版である HSE 活動 は単なる英国内に留まったローカルな制度ではなく 世界中で実践される HSE に大きく飛躍していった 英国の制度がオイルメジャーの影響力により事実上 世界のスタンダードになった -154-

159 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 図 世界初の海洋石油 天然ガス開発 HSE MS ガイドライン (4) OCIMF の船舶建造 修理 HSE ガイドライン 1994 年の E&P Forum ガイドラインが主として操業を対象としていたのに対し 建造分野の HSE ガイドラインとして オイルメジャーは 2003 年に OCIMF (Oil Companies International Marine Forum) Health, Safety and Environment at New-Building and Repair Shipyard and During Factory Acceptance Testing(2003) を発表した このガイドラインが出されて以来 オイルメジャーは船舶や海洋構造物の新造や修理 改造の商談開始の条件として 商談を進めようとする造船所に対して HSEMS が確立されていることを要求し始めた そのため 世界の造船所に HSE が急速に普及していくことになる HSE の価値は 単に安全衛生の向上に寄与することだけでなく 受注競争に参戦するために必要な営業武器としての一面も持ち合わせるようになった また 2010 年 4 月に起きたメキシコ湾で操業中のセミサブ式掘削リグ Deepwater Horizon の事故を受けて オイルメジャーはますます HSE 活動に力を入れている さらに一般商船のオーナーも HSEMS を導入したことで 造船会社などでは今や一般的なものになっており 船舶や造船に関する様々認証を行っている IACS(International Association of Classification Societies, 国際船級協会 ) でも オイルメジャーの HSE 推進活動に沿って 造船所 協力会社 舶用機器メーカー等における船級検査員と工場の全作業員の安全衛生を追求する 安全衛生方針 を IACS のホームページ冒頭に掲げて 労働安全衛生に注力する旨を記載している -155-

160 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 図 OCIMF の船舶建造 修理 HSE ガイドライン 図 IACS の安全衛生方針 ( ウェブサイト ) (5) HSEMS と品質 環境 労働安全衛生マネジメントシステムの相互関係 先述の世界初の海洋石油 天然ガス開発 HSEMS ガイドラインの序章では HSEMS の 原則 確立のための必要条件として 以下が述べられている オイルメジャーが追求する HSE マネジメントシステムの大原則は ゴール設定アプローチ (Goal setting Approach) である ゴール設定アプローチ をしっかり実践するにはそもそも企業内に ISO9001 マネジメントシステム ( 品質管理システム ) が確立されていなければならない 安全追求 (S) と環境保全 (E) は必ずしもいつも調和可能なテーマではない 人を救出する時に環境を犠牲にすると言う総合判断が必要な場合がある その逆もある 安全と環境は不可分であり常に一体で同じ土俵で考えなければならない 上記のことから HSEMS を確立するためには 品質マネジメントシステム (ISO 9001) 環境マネジメントシステム (ISO14001) 労働安全衛生マネジメントシステム (OHSAS18001, 2016 年中に ISO45001 としてリニューアルされる見通し また国内においては厚生労働省の 労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針 (OSHMS 指針 )) の 3 つのマネジメントシステムが構築されていることが望ましい 上記の 3 つのマネジメントシステムは 密接に関連し合い 切り離せないものである 例えば 品質管理が機能していなかった場合 構造物建造中 部品に不良が多く出る状態につながりかねず 製造ラインが混乱し 事故 災害が起こる可能性が高まる また引き渡し後の構造物に重大な品質不良があれば 操業中の事故 災害に繋がりかねない 前述の Piper Alpha 事故がその事例である その意味で品質マネジメントシステムと労働安全衛生マネジメントシステムは切り離せない関係となっている また労働安全衛生マネジメントシステムが機能していなかった場合 作業環境としての騒音 振動 照明等が不十分であったり 危険化学物質の取り扱いが乱暴な職場では そ -156-

161 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 れらにより事故 災害が起こったり 作業員の健康障害が起こったりする その意味で環境マネジメントシステムと労働安全衛生マネジメントシステムには密接な関係があると言える 図 に HSEMS と 3 つのマネジメントシステムの相互関係を示す HSEMS は これらの 3 つのマネジメントシステムを統合して 先述の 合理的で実行可能なリスク低減策は採用すべし という ALARP 概念 に基づき 大局的な見地から PDCA サイクルを回しながら運用していくものであると考えられる HSEMS 顧客 品質 MS 環境 MS ISO 9001 企業 ISO 環境 品質不良 事故 OHSAS 社員 協力事業者等 労働安全衛生 MS 環境汚染健康障害 図 HSE と 3 つのマネジメントシステムの相互関係また 2001 年の米国同時多発テロ事件以降 テロの脅威が高まる中で テロ等の犯罪行為による被害 損害のリスクから社員 生産操業 資産を守るためにセキュリティマネジメントシステムを構築することも重要になっており セキュリティの要素についても併せ HSSE として考える企業も増えている 犯罪行為に対し平時からの備えを充実させるとともに 有事の際の対応能力を高めておくために セキュリティ情報の収集および分析 操業する地域のセキュリティリスク評価 セキュリティレベルの決定 セキュリティ対策の策定 誘拐 テロ 暴動 紛争 戦争など重大事象発生時の緊急対応および危機管理 社員の国内退避や国外退避に関する支援などの実施要領をあらかじめ定め 訓練しておくことが重要である 海洋開発においては 海洋構造物に適用される ISPS コード (International Ship and Port Facility Code ) 等 海洋特有のルールに則った対応も求められる (6) HSEMS の内容 1 HSEMS モデル HSEMS を構築していくためには HSEMS モデルを最初に定めることが重要である HSEMS モデルを定めることにより その企業が HSE 活動にどのように取り組むか -157-

162 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 キーワードとなる言葉を示す その意味するところについては 別途ガイドラインや手順書などの詳細文書によって補完される 図 に HSEMS モデルの例を示す 図 は 日本を代表する石油 天然ガス開発オペレータ企業である国際石油開発帝石 ( 株 )( 以下 INPEX) のものであるが HSEMS の対象や運用手続きは 各企業の立場や方針によって異なる 例えば 図 の図中 計画の中に コントラクター管理 が含まれるのは INPEX がオペレータであり コントラクターの HSE についても自社の責任の下 管理するという方針があるからである INPEX の HSEMS モデルは ISO9000 OHSAS18001 ISO14001 OSHMS 指針 IOGP のガイドラインを参照して作成された 環境安全方針には 法令遵守 マネジメントシステム運用ならびに継続的改善 リスク管理 環境アセスメントの実施と環境負荷低減 緊急時対応 経営資源の投入 啓発 教育 請負業者管理 コミュニケーションについて述べられており その内容を受けて HSE を実行していく上で重要と考える要素を包括的に関連付けている 各要素は それぞれがその内容を説明する文書を有しており そのなかで要件定義を行っている 全社の取り組みを示す文書に従う形で 各操業現場にも文書作成を求めており その関係は図 に示す通りである -158-

163 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 図 HSEMS モデルの例 出典 : 国際石油開発帝石 ( 株 )HSEMS 文書 -159-

164 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 図 HSE 文書構造出典 : 国際石油開発帝石 ( 株 )HSEMS 文書 2 HSE 文書 HSEMS には その内容を説明するために HSE 文書が必須である HSE 文書は 方針 規則 要領 指針などから構成されるのが通常である HSE 文書は社内あるいはグループ会社内の HSE に関する取り組みであるが その内容には 社外の HSE 上の要求や取り決めに対してどのように取り組むかが含まれる すなわち プロジェクト実施に際しては 法律を遵守するというごくあたり前のことから 国際規格や産業界の標準をどの程度参照するかなどを特定する 表 に INPEX の HSE 文書の例を示す -160-

165 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 表 HSE 文書の例 出典 : 国際石油開発帝石 ( 株 )HSEMS 文書 3 HSE 組織 HSE 活動を有効に実践していくためには 必要な能力を有する人材を確保育成することが肝要である そのためには リスクを評価した上で必要な能力を特定すること 必要な能力を持つために HSE 組織の整備や人材調達のための計画そして目標を立てること 不足する能力については教育訓練により補うこと など各要素を関連付けることが大切である また 組織の HSE 能力は組織全体のパフォーマンスとして測定されるため HSEMS 実践のための組織は HSE 担当部門をどうするかの検討にとどまらず 全社的な HSE に関する計画や種々の課題への取り組みについて意思決定を行うための社内横断的な組織のあり方 事業推進部門ならびにコーポレート部門との関連についても対象として検討し決定する必要がある 通常 HSE 担当部門は HSEMS の管理人 (Custodian) としての役割を担うし HSE に関する重要事項の決定は HSE 委員会等の社内横断的な組織により行われる HSE 担当部門と事業部門との関係は それぞれが HSE の実践能力をどの程度有しているか どのようなリスクを有しているかにより決定される -161-

166 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 たとえば 操業主体として 大きな資産を有している あるいは長く生産操業を続けている事業部門は 現地に本社と同様な HSE 担当部門を有している場合が多い 4 PDCA サイクル継続的な改善を図るための PDCA サイクルは HSE 活動を進めていく上で必要不可欠な要素である INPEX の例では 前出の図 に示すような Access を含む A-PDCA サイクルを採用している 同社の A(Assess)-P(Plan)-D(Do)-C(Check)-A(Act) の内容は以下のとおりである A(Assess) では リスク管理と法的およびその他の要求事項を設定する P(Plan) では HSE 重点目標やその達成のためのプログラムの策定 日常的に管理すべき作業計画の策定 HSE 上講ずべき措置を取りまとめた HSE 計画書の作成 請負業者に対して行うべき HSE 上必要な管理計画の策定 設備の設計や保全において行うべき HSE 上必要な管理計画の策定 緊急時対応計画の策定 交通安全上必要な管理計画の策定を行う D(Do) C(Check) では HSE プログラムの進捗確認とその報告 定めた計画や手順が適正に実施されているかどうかの監視 測定 そして是正および予防措置の実施 事故の調査 再発防止策の策定 HSE 関連データの収集 分析を行う A(Act) では マネジメントレビューの HSE 文書の見直し HSE 実施体制の強化 HSE 実施状況の改善 各所への HSE 支援 HSE 重点目標の見直しなどを行う 5 リスク評価 HSEMS にあっては リスク評価はその中核をなす取り組みである ビジネスを取り巻くリスクは多々あるが HSE におけるリスクとは 人 設備や資産 環境 世評 遵法などを対象としている HSE リスクは ビジネスにおけるあらゆる作業にあるため 適切な業務プロセスに区分し それぞれの業務を主管する部署が評価チームをつくり リスク評価を実施する リスク評価とは 特定したハザードに対し 発生頻度と結果の重大性からリスクを見積もり 許容範囲かどうかを評価することである その手法については 次項で概説する リスク評価の手法 HSEMS において重要な概念として 合理的に可能な限りリスクを低減する ALARP 概念 について先述したが リスク低減策を講じる上で リスク評価が欠かせない ここでは リスク評価の代表的な手法として HAZID(Hazards Identification) 及び HAZOP(Hazard & Operability Study) について概説する (1) HAZID/HAZOP とは HAZID 及び HAZOP は システムの潜在的危険因子の発生頻度を専門家間の討議によ -162-

167 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 り決定し その発生頻度を減少させるための対処方法を抽出するリスク評価手法である HAZOP については 特にシステムの運用に潜むリスクの評価に用いられることが多い また 英国健康安全省の Marine Risk Assessment, Offshore Technology Report No.2001/063 では 主な HAZID の手法の一つとして 他のリスク評価手法と共に HAZOP が紹介されている 次項で HAZOP の手順について概説する (2) HAZOP の手順 HAZOP は 1960 年代に化学プロセスにおける複数の独立した事象が複雑に絡む故障を扱うために開発されたリスク評価手法である 現在では 他の産業でも有効性が認められ活用されている HAZOP では システムの運用における潜在的な危険性や阻害要因を漏れなく特定するため システムの状態の 設計意図からのずれ すなわちプロセス異常に着目する 設計意図からのずれ を洩れなく洗い出すための案内役として ガイドワードが設定されている これらガイドワードと 対象とする設備 システムの設計 運転パラメータや操作を組み合わせることにより 設計意図あるいは運転意図からの ずれ を系統的に想定することができる 表 HAZOP におけるガイドワード ガイドワード No/Non Reverse More Less As well as Part of Other than Sooner than Later than Longer than Shorter than 意味意図したことが全く起こらない意図と反したことが起こる意図した最大値を超えることが起こる意図した最小値を下回ることが起こる意図したことはすべて達成されるが その他に余分なことが起こる意図したことの一部しか達成されない意図したことと別のことが起こる意図した時期 タイミングより早い意図した時期 タイミングより遅い意図した時間よりも長時間かかる意図した時間よりも短時間で終える 出典 : 高圧ガス保安協会 : リスク アセスメントガイドライン (Ver.1), 2015 年に基づき作成 HAZOP の標準的な手順は 以下の通りである 1 分析対象となるプロセスの範囲設定と分析の目的の策定 2 メンバーの選定 ( 数名 ) プロセスに詳しい経験豊富なリーダー 設計や運転に携わる化工 化学 機械 計装などの各エンジニア -163-

168 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 安全担当者等 3 基礎資料の収集 システムの構成要素である機器 装置類 配管及びプロセス系統図 プロセス フロー ダイヤグラム 運転保守マニュアル 設定値に関するデータ 過去の事故 トラブル情報等 4 ガイドワードの選定 5 質問の作成 ( ガイドワードを用いた設計意図 操作意図からのずれの仮定 ) 6 ワークシートのフォーム ( 図 5.2.7) の作成 各設計仕様の項目 ずれ 原因 危険因子 防護機能 対策などのマトリックス表 7 逸脱による潜在的な危険因子 操作上の問題点 対策の検討 リーダーによる質問 各メンバーによる回答 グループ討議を経た結論付け 8 分析結果のワークシートへの記述 図 HAZOP ワークシートフォームの例 5.3 環境影響評価規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業において 重大な環境影響を未然に防止する上で 事前の環境影響評価が必要不可欠である 本項では 環境影響評価について概説するとともに 具体例を紹介する 環境影響評価とは 環境影響評価(Environmental Impact Assessment) は 一般に 環境アセスメント と呼ばれることもある 本テキストでは 環境影響評価 を用いるが 以下に引用する文 -164-

169 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 献によっては 環境アセスメント を使用している場合もある ここでは 両者は同義であると整理する 環境影響評価は 事業が認可を受ける前に 事前に 環境や社会への影響を予測し その対策を事業計画に組み込む機会とするものである すなわち 事業者自ら周辺環境の調査 当該事業が環境に与える影響の予測 評価 その対策の検討を行い その結果について周辺住民等の一般市民や専門家の意見を聴き より望ましい事業計画をつくりあげることを目的として行うものである 開発事業が環境や社会に与える悪影響を最小限にとどめるため 他の規制等とともに大きな役割を果たしている 環境影響評価が世界で初めて導入されたのはアメリカである アメリカでは 1969 年に国家環境政策法 (National Environmental Policy Act) が制定され 連邦政府が関与する事業については環境への配慮を求めるとする環境影響評価が法制度化された その後 先進国を中心に 各国において続いて法制化された 1974 年に経済協力開発機構 (Organization for Economic Cooperation and Development:OECD) が決議した 環境政策に関する宣言 (Declaration on Environmental Policy) を皮切りに 1982 年の国際連合による 世界自然憲章 (World Charter for Nature) など 環境保全には環境影響の評価が重要であるとする考えを示す文書等が国際機関からも発行されている また 途上国への開発援助プロジェクトにおける環境影響評価制度も 世界銀行を中心に策定されている 大規模なインフラ設備等の開発 整備を行う場合 世界銀行グループの国際金融公社 アジア開発銀行 国際協力機構 国際協力銀行等の融資機関から 多額の資金援助を事業者や事業の実施場所となる国が受ける場合がある こうした機関では 民間セクターに投融資する場合に課す様々な条件の一つとして環境や社会への配慮を盛り込んでいる この環境への配慮には 環境影響の評価や環境保全措置が含まれることが多く 様々な事業種の環境影響の評価に関するガイドラインを作成している 日本では 1993 年には環境基本法が制定され その中で環境影響評価の規定が盛り込まれたことを踏まえ 1997 年に 環境影響評価法 が成立した その後 法律の完全施行後 10 年が経過したことを受けて法律の見直しに向けた検討が行われ 2011 年に 計画段階環境配慮書手続 ( 配慮書手続 ) や環境保全措置等の結果の報告 公表手続 ( 報告書手続 ) などを盛り込んだ 環境影響評価法の一部を改正する法律 が成立し 改正された環境影響評価法は 2013 年 4 月に完全施行された 図 に 環境影響評価の流れを示す 環境影響評価に関する法体制は各国によって異なるものの 評価の流れは概ね下記の通りと考えられる 第一段階で 環境影響評価の必要性 またどの程度の評価が必要となるのかを決定した上で 評価の進め方を設計する 第二段階では 第一段階での計画に沿って 調査 影響の予測 評価を行い 環境影響評価書を作成する 第三段階では 必要に応じて修正を行った上で 評価を決定し 事業に着手する 第四段階として 事業着手後も追跡調査を行い 必要に応じた環境保全措置を講じる -165-

170 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 環境影響評価においては 利害関係者などと情報交流を行い 事業内容の周知 相談を行 うことも重要である 図 環境影響評価の一般的な流れ出典 : 環境アセスメント学会編 : 環境アセスメント学の基礎 海洋開発における環境影響評価の必要性海洋開発事業は 事業規模も大きい場合が多く 環境への影響も多岐に及ぶと考えられる そのため 環境影響評価の必要性が極めて高い産業であると言えよう 以下に 海洋石油 天然ガス開発事業と 海洋再生エネルギー開発のうち洋上風力発電事業において想定される環境への影響要因について概説する (1) 海洋石油 天然ガス事業が環境に与える影響海洋石油 天然ガス開発事業については 油分や化学物質 低レベルの放射性物質等の海水流出や 海洋構造物が海底土壌の性状へ与える影響 大気汚染や光害 騒音などが懸念される 北東大西洋に面する 15 カ国と欧州連合の間で締結されている 北海を含む北東大西洋周辺の海洋環境保護を目的とする OSPAR 条約 1 の意思決定機関である OSPAR 条約委員会は Assessment of impacts of offshore oil and gas activities in the North-East Atlantic の中で 北海における海洋の石油 可燃性ガス開発が海洋環境に与える要因を特定し それぞれの影響について検討している 表 に 北海における海洋の石油 可燃性天然ガス開発活動が海洋環境に与える潜在的な要因 (OSPAR 条約抜粋 ) を示す 1 OSPAR 条約 : 正式名称は Convention for the Protection of the Marine Environment of the North-East Atla, オスロ条約 ( 欧 州投棄規制条約 1972) とパリ条約 ( 陸上起因海洋防止条約 1974) が基となっているため オスロ パリ条約とも呼ばれる -166-

171 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 表 北海における海洋の石油 可燃性天然ガス開発活動が海洋環境に与える 潜在的な要因 1) 油分探鉱及び生産の様々な段階において油が流出することがあり 随伴水と共に海洋へ排出されることも多い また 生産施設の甲板や機械設置場所の排水にも少量の油が含まれることもある 坑井試験 改修時のフレアリングの際等に油が漏れ落ちることもあるが 深刻な影響を及ぼす程度のものではないと考えられている 通常の生産活動等以外でも 掘削 海洋施設の供用及び船舶輸送時の事故等においても 油の流出が発生することがある 2) 化学物質掘削泥水や随伴水には化学物質が含まれていることがあるため これが海洋に排出されることも考えられる こうした化学物質は石油 可燃性天然ガスの掘削に不可欠のもので 特に以下の用途を挙げることができる 掘削装置 タービンの洗浄 掘削パイプ接続部の潤滑剤 坑口 防墳装置 海底バルブ (subsea valves) の管理に使用される油圧油 炭化水素の生産 処理に使用される化学物質 水系掘削泥水及び有機系掘削泥水 セメンチングに使用する化学物質 改修に使用される化学物質 坑井刺激に使用される化学物質 坑井仕上げに使用される化学物質 圧入時に使用される化学物質 (water injection chemicals) 水及び油のトレーサー 定期的な補充を必要とする閉鎖系施設に使用される化学物質 ジャッキの潤滑油これら以外にも パイプラインの維持や安全性の確保を目的として 殺生物剤や脱酸素剤が使用されることもある 海洋に排出される化学物質は 海生生物に急性又は長期間にわたる有毒作用をもたらす可能性があり 長期的影響の中でも特に ホルモン攪乱 変異原性及び生物毒性の影響が懸念されている 難分解性で生物濃縮性のある化学物質は食物連鎖の中で毒性が強まるため ウミドリや海洋哺乳類等の上位捕食者及び人間が高濃度に暴露することもある 一方で低濃度でも ホルモン 免疫システム及び生殖過程に悪影響を与える物質も存在する このように 生物学的影響は海洋生物個体にとどまらず 生物種全体に拡大し 生態系の構造にも悪影響を及ぼし得るため 注意が必要である 加えて 海洋施設 (offshore installations) の労働者に対しても アレルギーや皮膚炎症 さらに癌等の化学物質による影響もあるとされている -167-

172 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 3) 低レベルの放射性物質 OSPAR では石油 可燃性天然ガス産業において排出される低レベル放射性物質についてのデータを毎年収集している 自然起源放射性物質 (NORM) として主に随伴水に含まれ またパイプライン等のスケールに蓄積する他に 放射性トレーサーも発生源となる 4) 随伴水随伴水とは 石油 可燃性天然ガスの生産に伴い貯留層から排出される水を指し 石油 可燃性天然ガス等の炭化水素がこの水に含まれていることから 排出前に可能な限り油分を除去する必要が生じる 一般的に 貯留層から生産される石油 可燃性天然ガス量が減少するにつれて随伴水の量は増加する 随伴水は多くの場合 海洋への排出又は貯留層に戻すことによる処分が行われる また 随伴水は重金属や芳香族炭化水素 アルキル化フェノール 放射性物質等の貯留層から発生する低濃度の有害物質を含んでいる 5) 堀り屑堀り屑は 掘削やそれに付随した掘削泥水が排出されるところで生じ 一般的には 流れの弱いプラットフォーム周辺に堆積する 掘削泥水には 水系掘削泥水と油等の有機系掘削泥水があり 古い堀り屑の堆積物は有機系掘削泥水を含む場合がある このため 堀り屑の堆積物中の油残渣の移動や自然浸出は 海洋への油の流出源になり得る 浸出率が低いため自然浸出が大きな問題となることは考えにくいものの 曳網漁業や設備廃棄への物理的な障害となる堀り屑の堆積物の移動時には 石油を含む汚染物質が海洋へ流出する可能性があるとされている 現在の取り組みでは 海洋への投棄による堀り屑の処分は水系のみとなっており これには主に イルメナイト ベントナイト バライト等の比重調整剤が含まれている 堀り屑と比重調整剤は微量の重金属を含むことがあるが 生物学的に問題となる量ではないとされている 6) 海洋施設海洋施設には パイプラインやプラットフォーム 掘削リグ等がある パイプラインの設置面積は 長さ 直径及び埋設の有無によって決まる 底層の流れや海底土壌の性状は パイプライン周辺での堆積や洗掘に影響を及ぼす 埋設されたパイプラインによる環境影響は 直接埋設された地帯を超えて拡大することはないと推定されており また 埋設パイプラインそのものへの影響も特に懸念されていない これ以外にも多くの設備が海底に物理的な影響を与えうるが 設備が多様なため 影響範囲を特定することが困難となっている 設備が真下に直接埋設される地帯のみがプラットフォーム等の構造物の物理的な影響を受けると想定されているが パイプラインは海底又は海底下に複数本を長距離にわたって敷設することが多いため 物理的影響は他の設備よりも大きいと考えられている -168-

173 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 8) 大気汚染海洋での石油 可燃性天然ガス生産では抽出 (extract) 処理 輸出に大量の電力を要するため 発電に伴って大気汚染物質が排出される また 坑井試験時や坑井洗浄時 (well clean-up operations) にプラットフォームの安全性を確保するために行われる石油 可燃性天然ガスのフレアリングもこうした排出を伴う それに加えて タンカーへの積み下ろしも揮発性有機化合物 (VOCs: volatile organic compounds) を排出する 9) 光害フレアリングや海洋の構造物から生じる光は 鳥類に影響を及ぼす可能性が指摘されており 特に渡り鳥の移動時期にこうした影響が見られるとの報告がある 10) 騒音海洋での石油 可燃性天然ガス開発に付随する建設 掘削 海上交通 地震探査等からの騒音が引き起こし得る影響は 受け手の感受性や音源からの距離によって様々であるが 例えば 稚魚 幼魚の死亡率の増加や 永続的又は一時的な聴覚低減 魚類や海生哺乳類の移動という影響が考えられる こうした騒音の発生源として最も重要と考えられるのは地震探査で 音源近傍の海生生物に聴覚閾値の変化が起こることもあれば 地震探査地点から深海域や離れたところへの回避という一時的な行動変化が見られたという例も報告されている また 地震探査の音源から 5m 以内では魚類の死亡率が増加することも報告されている ( 出典 :OSPAR 条約 ) -169-

174 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 (2) 洋上風力発電事業が環境に与える影響洋上風力発電事業についても 今後の開発における環境保全対策の参考とすべく環境に与える影響が検討されている 図 は 着床式洋上風力発電導入における洋上風力発電所を構成している風車 洋上変電所 支持構造物及び海底ケーブルが動植物に与える影響に関する環境影響要因について その伝達経路を図示したものである 着床式洋上風力発電所は 主として風力発電設備 ( 支持構造物及びタワーを含めた風車 ) 洋上変電所 ( 支持構造物 洋上変電所 ) 及び海底ケーブルから構成されており これらの施設を建設するために複数の工事が行われる 環境への影響が最も大きな工事として 支持構造物の設置 海底ケーブルの敷設に伴う海底地盤の被覆 根固工事 掘削工事あるいはパイルの打設等が挙げられる さらに 風力発電設備の 存在 供用 時においては 鳥類への影響としてバードストライク 生息環境の喪失 変更 視覚的な刺激に対する回避行動 ( 障壁影響 ) 等が考えられる 図 着床式洋上風力発電の導入における環境影響に関する伝達経路 出典 :NEDO 着床式洋上風力発電の環境影響評価手法に関する基礎資料 ( 第一版 ) 2015 年 9 月 -170-

175 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 環境影響評価の事例 (1) イクシス LNG プロジェクト海洋石油 天然ガスプロジェクトにおける環境影響評価の具体例として 3 章で紹介したイクシス LNG プロジェクトを取り上げる イクシス LNG プロジェクトでは オーストラリア連邦政府および北部準州政府が定める環境評価実施手順 (EPBC Act, EA Act) を共に満たす環境影響評価報告書 (EIS: Environmental Impact Statement) を作成し 両政府からイクシス LNG プロジェクトの実施に対する承認 ( 環境許認可 ) を 2011 年に取得し 2012 年より開発を開始した 本プロジェクトの環境影響評価のプロセスを図 に示す 環境影響評価報告書では 本プロジェクトが影響を及ぼす可能性があるものとして 以下の環境影響要素を挙げ それぞれについて調査している 1 沖合の海洋環境海洋学と水力学の面から 以下の項目について調査 検証した 海底と測深 水中騒音 水質 海洋沈殿物 深海の生物と生態系 保護種 海洋大型動物 2 沿岸の海洋環境海洋学と水力学の面から 以下の項目について調査 検証した 測深 水中騒音 水質 海洋沈殿物 海洋生態系 海洋生物 保護種 海洋有害生物 3 陸上の環境地形学 広域地質学の面から 以下の項目について調査 検証した 地質 地震活動 水質 地下水 植物生態系 -171-

176 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 植生 陸上動物 保護種 外来生物種 無脊椎動物 食毛目虫 4 局所的気象気象学的に解析し 大気の状態を調査した 5 社会文化環境 土地保有期間と海洋利用 人口統計と人口推移 収入 教育 訓練 住宅 道路交通 海上交通 社会インフラとサービス 娯楽 アボリジニ文化遺産 アボリジニ文化以外の遺産 騒音 景観と照明 6 経済環境 オーストラリア国内石油ガス産業 地域の労働者の状況 地域産業 漁業と海事産業 産業インフラとサービス その他 本プロジェクトにより排出 ( 放出 ) される物質 ( 温室効果ガス 大気汚染 照明 騒音 振動 液体排出物 液体 固形廃棄物 ) について特定し リスク評価を行っている 実施したリスク評価に基づき 海洋 陸上 温室効果ガス及び社会経済の環境影響要因に対し 対策を明記している -172-

177 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 図 イクシス LNG プロジェクトの環境評価手順 出典 :Ichthys Gas Field Development Project DRAFT ENVIRONMENTAL IMPACT STATEMENT (2) 福島洋上ウィンドファーム実証研究プロジェクト洋上風力発電事業における環境影響評価の具体例として 4 章で紹介した福島洋上ウィンドファーム実証研究プロジェクトを取り上げる 当該プロジェクトの環境影響評価は 2,000kW 風力発電機 1 基と付帯施設である浮体式洋上変電所 海底ケーブル敷設に係る 浮体式洋上風力発電設備 ( ふくしま未来 ) 設置実証研究事業 と 7,000kW 風力発電機 2 基の設置に係る 浮体式洋上超大型風力発電機設置実証事業 の 2 つに分けて実施された 我が国において環境影響評価法の対象となる事 -173-

178 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 業は風力発電については 全ての場合で手続きが必要な第 1 種事業は総発電量 10,000kW 以上 個別に必要かどうか判断を行う第 2 種は 7,500kW 以上と規定されているため 前者は環境影響評価法に準じた自主的な環境影響評価として実施し 後者 ( 総発電量 14,000kW) は環境影響評価法の対象として実施された 以下では 後者の 浮体式洋上超大型風力発電機設置実証事業 における環境影響評価について取り上げる 当該事業での環境影響評価の評価項目を表 に示すとともに 調査の概要を環境要素ごとに示す 1 大気汚染 騒音 ( 水中騒音含む ) 対象事業実施区域及びその周辺における水中騒音の現地調査を実施 建設及び稼働段階において 先行事業の水中音の測定結果から影響を予測 建設時の水中音が魚類の 威嚇レベル ( 魚が驚いて深みに潜るか 音源から遠ざかる反応を示すレベル ) を超えるか否か また 稼働時の水中音が魚類の 誘致レベル (110~130 db; 魚にとっては快適な音の強さ ) の範囲内にあるかについて判断 2 水環境 水質 水の濁り 対象事業実施区域及びその周辺における水の濁りの現地調査を実施 講じる環境保全措置を策定 工事の実施に伴う一時的な水の濁り等による水質への影響を予測 3 その他の環境 ( 電波障害 ) 対象事業実施区域及びその周辺の漁業無線の受信レベルの測定 受信状況の現況調査結果に基づき 定性的な予測手法を用いて 障害が起こりうる範囲を予測 4 動物 重要な種類及び注目すべき生息地 ( 海域に生息するものを除く ) ( 海鳥 ) 対象事業実施区域及びその周辺において 現地調査及び文献その他の資料調査により 重要な鳥類を確認 重要な鳥類の種別ごとに 生息環境の減少 喪失 騒音による餌資源の逃避 減少 人工魚礁機能による餌資源の誘引 移動経路の遮断 阻害 ブレード及びタワーへの接近 接触 とまり場としての利用による誘引 夜間照明による誘引を環境影響要因として取り上げて影響を予測 講じる環境保全措置を策定 ( 海生動物 ) 対象事業実施区域及びその周辺における海生動物の現地調査により 重要な種を特定 海産哺乳類 漁業生物 魚卵 稚魚 動物プランクトン 重要な種に対する環境影響予測を実施 講じる環境保全措置を策定 -174-

179 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 ( 海生植物 ) 対象事業実施区域及びその周辺における植物プランクトンの現地調査により 出現する種を特定 講じる環境保全措置を策定 植物プランクトンに対する環境影響を予測 5 景観 主要な眺望点及び景観資源並びに主要な眺望景観 文献その他の資料調査及び現地調査により 対象事業実施区域を視認できる可能性 不特定多数の利用 海上からの代表的視点 観光客を含め 不特定多数の利用の点から主要な地点を選定 講じる環境保全措置を策定 各地点での環境影響を予測 6 廃棄物等 産業廃棄物 講じる環境保全措置を策定 対象事業実施区域における工事での対象事業実施区域における建設工事に伴い発生する廃棄物を予測 -175-

180 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 表 環境影響評価の項目 ( 風力発電 ) 出典 : 福島沖浮体式洋上超大型風力発電機設置実証事業環境影響評価書 -176-

181 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 本プロジェクトでは 環境影響評価の中で考えられた環境保全策として 騒音や超低周波音 景観といったような生活環境への影響を避けるため 可能な限り陸域から離し 約 18km の沖合に浮体式洋上風力発電機を設置した また 風力発電機をメーカー工場で制作することで 対象事業実施区域における工事を浮体係留のアンカーやチェーンの施設程度のものとし 工期の短縮を図った 土地又は工作物の存在及び供用においては 鳥類を誘引しにくいとされる白色閃光灯を用いた航空障害灯を採用するなど 鳥類等に対しても影響の回避 低減を目指した 風力発電機事態の色彩についても 背景になじみやすいとされる薄いグレーを採用した 工事実施に関わる環境保全に対しては メーカーの工場で制作されたものを曳航し 当該区域での工事を係留作業に留めることで騒音 ( 水中騒音を含む ) の発生を抑制し ライザーケーブル施設は 浚渫等は行わず ROV(Remotely Operated Vehicle) による埋設を実施し 底土の巻き上げを最小限に抑え 環境への負荷を低減している また 工事中及び供用時には 監視も行われ 事前に環境監視計画を策定 環境監視の結果 環境保全上特に配慮を要する事項が判明した場合には 速やかに関係機関と協議を行い 所要の対策を講じることとした 経済産業省令の規定により 当工事は 予測の不確実性の程度が大きい選定項目について環境保全措置を講ずる場合 に該当するため 工事終了後には 事後調査を行っている -177-

182 海洋開発産業概論 教材 5 章安全と環境保全 < 参考資料リスト> (1) ( 社 ) 日本船舶海洋工学会 : 大規模海上浮体施設の構造信頼性および設計基準研究委員会最終報告書, 2009 年 (2) ( 一財 ) エンジニアリング協会 : 平成 26 年度大水深海底鉱山保安対策調査 ( 大水深海底鉱山開発危害 鉱害防止調査 ) 報告書, 2015 年 (3) 橘内良雄 小林英男 : 海洋油田プラットフォームの転覆 畑村創造工学研究所失敗知識データベース (4) Health and Safety Executive, UK:Offshore Installations (Prevention of fire and explosion, and emergency response) regulations1995, Approved Code of Practice and guidance, OCIMF Health, Safety and Environment at New -Building and Repair Shipyard and during Factory Acceptance Testing(2003) (5) The Deepwater Horizon Study Group :Final Report on the Investigation of the Macondo Well Blowout, 2011 (6) 日本船舶輸出組合他 : オフショア浮体構造物に係る各種基準 規則等の概説 ~ 技術要件の発展の経緯や業界慣行 基準 規則 ガイドライン等について 2015 年 (7) E & P FORUM : Guidelines for the Development and Application of Health, Safety and Environmental Management Systems, 1993 (8) OCIMF:Health, Safety and Environment at New-Building and Repair Ship Yards and During Factory Acceptance Testing, 2003 (9) 米澤哲夫 : HSE マネジメントシステムの現状と動向 ~Health, Safety and Environment ~, 天然ガスレビュー 47(4), pp.15-26, 2013 (10) 高圧ガス保安協会 : リスク アセスメントガイドライン (Ver.1), 2015 年 (11) 三友信夫 : リスク評価について, 海上技術安全研究所報告第 8 巻第 4 号,pp , 2009 年 (12) ( 一財 ) エンジニアリング協会 : 平成 26 年度大水深海底鉱山保安対策調査 ( 大水深海底環境影響検討調査 ) 報告書, 2015 年 (13) 環境アセスメント学会編 : 環境アセスメント学の基礎, 恒星者厚生閣, 2013 年 (14) 着床式洋上風力発電の環境影響評価手法に関する基礎資料 ( 第一版 ) 平成 27 年 9 月国立研究開発法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 (15) INPEX Browse Ltd.: Ichthys Gas Field Development Project DRAFT ENVIRONMENTAL IMPACT STATEMENT (16) 経済産業省資源エネルギー庁 : 福島沖浮体式洋上超大型風力発電機設置実証事業環境影響評価書 -178-

183 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 6 プロジェクト マネジメント海洋開発事業は大規模なプロジェクトであり 円滑に進めるためには プロジェクト マネジメントに関する知識や技能が求められる また 契約 保険及びファイナンスについての知識も プロジェクトを遂行する上で非常に重要である 本章では プロジェクト マネジメント 契約 保険 及びファイナンスの基礎的な事項について概説する 6.1 プロジェクト マネジメントとはプロジェクト マネジメントとは 目的達成に向け 限られた資源 ( 人材 技術 ノウハウ 資金 ) を効率良く投入し その効果を最大限に引き出すべく プロジェクトを計画 実行 コントロールすることである 従来日本においては プロジェクト マネジメントは 製造業を支えてきた品質 (Quality) コスト (Cost) 納期(Delivery) QCD 管理活動と考えられ 独立した概念としては捉えられていなかった 現在のプロジェクト マネジメント概念が確立したのは 冷戦期のアメリカ国防総省だったと言われている ソ連に有人ロケットの打ち上げで先を越されたことに危機感を覚えたアメリカ国防総省は 軍事プロジェクトのプロセスをスピードアップさせるため プロセスを体系化し整理した 1958 年にはポラリスミサイルプロジェクトに際し "Program Evaluation and Review Technique"(PERT) が開発されている 同時期にデュポン社でも クリティカルパス法 (CPM) と呼ばれる手法が開発された その後 1987 年に米国の非営利団体である PMI ( Project Management Institute ) が "Project Management Body of Knowledge"(PMBOK) というガイドブックを策定してから世界各国に浸透し 現在では 体系だったプロジェクト マネジメントの世界標準として受け入れられている PMBOK は 最新の研究成果を元に 4 年毎に改定され続けている PMBOK の意義は プロジェクト マネジメントを初めて体系化したこと 及びプロセスをマネジメントするという考え方の重要性を押し出したことであり その知識管理体系は 10 の知識エリア 5 のプロセス群 47 のマネジメント プロセスから構成されている ( 図 6.1.1) PMBOK により それまでプロジェクト マネジメントと言っても その示す範囲 内容は各人で理解が異なり スケジュール管理と理解したり 原価管理と理解したりとまちまちであったが 管理エリアとプロセス群に体系化することにより その範囲や内容が明確になった 更に それまで製造業で謳われていた QCD 管理を中心としたプロジェクト マネジメントは ゴール ( 目標 ) だけを目指したものであったが そこに至るプロセスもマネジメントの対象として示され スコープ管理 リスク管理 要員管理 コミュニケーション管理 調達管理など 目標達成に向けてそのプロセスを管理することの重要性が認識されるようになった -179-

184 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 図 PMBOK の知識管理体系 出典 : 株式会社システムインテグレータの Website - プロジェクト マネジメント講座第一章より 日本では 1998 年に日本の産業界向けのプロジェクト マネジメント標準を確立するために日本プロジェクト マネジメント協会が設立された 同協会は PMBOK の普及促進や PMP(Project Management Professional) という資格の認定などに加え 経済産業省の支援を受け 2002 年に PMBOK などで整理されたプロジェクト マネジメントの仕組みに 複数プロジェクトからなる大規模プロジェクトの視点で 個々のプロジェクトの連携や相互作用を統合管理する管理手法であるプログラム マネジメントを加えた日本独自の考え方として P2M (Project & Program Management) を構築した 図 に P2M の知識体系の概要を示す -180-

185 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 図 P2M の知識体系概要 出典 : 日本プロジェクト マネジメント協会ウェブサイト PMBOK や P2M によってプロジェクト マネジメントの概念が確立する以前は プロジェクトの進行はベテラン社員の独自の勘など属人的な要素に頼る部分が大きかった 体系だったプロジェクト マネジメントの手法を使用することで 技術の伝達や標準化が可能になり プロジェクトの成果が高まることが期待されている 6.1.1~6.1.6 では プロジェクト マネジメントに係る基本事項として 組織マネジメント プロジェクト計画 スケジュール管理 コスト管理 リスク管理 及び品質管理について概説する 組織マネジメント (Human Resource Management) の概要 (1) 組織マネジメントの目的プロジェクト組織は プロジェクトを遂行するために編成された組織である このため限られた時間内でプロジェクトを成功裏に導くために プロジェクト組織に対して次の項目が求められる 1 意思決定が迅速に行われること 2 指示 命令が実質の実務担当者まで敏速かつ正確に伝達されること 3 実務者からの情報がタイムリーに上層へ伝達され かつ実務担当者の意見が汲み上 -181-

186 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント がる構造になっていること 4 担当者の権限と責任が明確であり 下位階層のモチベーションが高まる構造になっていること 5 個人の遂行能力の弱点は組織全体でカバーできる構造になっていること (2) プロジェクト マネージャーの役割プロジェクト遂行にあたっては プロジェクト マネージャーが指名されることが多い プロジェクト マネージャーは プロジェクトの執行責任者であり マネジメントに関してトップとしての権限を有し 責任を負う プロジェクト マネージャーには そのプロジェクトの目標を十分に理解した上で 組織の構築 リスクを踏まえた進捗確認 コストとのバランスを考慮した品質管理 プロジェクト計画の変更管理や顧客との交渉等において リーダーシップを発揮することが求められる (3) プロジェクト組織の形態プロジェクトは有期であるが 企業経営が持続し発展していくためには 将来のプロジェクトに対しても有効となるプロジェクト組織とはどうあるべきかを常に考える必要がある 人材 技術 ノウハウとそれを最大限に引き出すべく 一つのプロジェクトだけで終わらず 組織マネジメントの質を継続し高めることが望ましく それが可能となる組織形態が望まれる プロジェクトを遂行する組織形態は 機能型組織 プロジェクト型組織 それらの混合であるマトリックス型組織と大きく三つに分けることができる プロジェクトをどのような組織形態で実施するかは プロジェクトの特性や定常の組織形態によって異なる それぞれの組織形態の特徴を理解し プロジェクトが効果的に遂行できる組織形態を選定する必要があるが 一般的には マトリックス型 プロジェクト型を採用するケースが多い 図 6.1.3~ 図 に IT 産業業界を例とした機能型組織 プロジェクト型及びマトリックス型を示す 1 機能型組織 ( ファンクショナル型組織 ) 機能型組織は 定常形態で機能別に分かれた部門のメンバーを プロジェクトに対して集約して構成する組織形態である メンバーは 定常業務とプロジェクトの業務を兼務することが多い 権限を持つプロジェクト マネージャーは事実上存在せず ライン マネジャーがリソースの調整を図る そのため 適用できるプロジェクトは期間が短く 小規模 低リスクなものに限られ 要件や環境の変化への対応も遅れがちになる 図 に機能型組織の例を示す -182-

187 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 図 機能型組織 出典 : 日経 BP Website: IT エンジニアのスキル向上ゼミナール 上級 プロジェクトを成功させる組織作りの考え方 進め方 2 プロジェクト型組織 ( タスクフォース型組織 ) 機能型組織が機能を単位とするのに対して プロジェクト型組織ではプロジェクト単位で部門を設置し メンバーは既存の組織から完全に切り離され プロジェクトの専任となる組織形態である プロジェクト マネージャーは プロジェクトに関する権限と責任を持つ 大規模 高リスクのプロジェクトや 長期に及ぶプロジェクトに採用することが多い 図 にプロジェクト型組織の例を示す 図 プロジェクト型組織 出典 : 日経 BP Website: IT エンジニアのスキル向上ゼミナール 上級 プロジェクトを成功させる組織作りの考え方 進め方 -183-

188 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 3 マトリックス型組織マトリックス型組織は 機能型組織とプロジェクト型組織を混合させた組織形態となる 基本的には機能型と同様に機能を単位とする部門別の形態を保持し 機能部門が持つリソースの調整の権限を実際にプロジェクトに参加するメンバーに委譲した組織形態である 人的資源 技術サポートなどを得やすく 現場の問題点や要件 環境の変化に柔軟に対応できる プロジェクト マネージャーが事実上存在しないウィーク マトリックス型 その弱点を補うためにプロジェクト内に専任のプロジェクト マネージャーを置くバランス マトリックス型 更にはバランス マトリックス型をより発展させ プロジェクト マネジメントを専任で行う部門を独立させ プロジェクト マネージャーに各部門のライン マネジャーよりも強い権限を持たせて指示系統を明確にしたストロング マトリックス型組織モデルがある 図 は ストロング マトリックス型組織の例である 図 ストロング マトリックス型組織 ( 出典 : 日経 BP Website: IT エンジニアのスキル向上ゼミナール 上級 プロジェクトを成功させる組織作りの考え方 進め方 ) (4) プロジェクト マネジメント オフィス (Project Management Office, PMO) の役割企業によっては 個々のプロジェクトのために編成されたチームとは別に 組織全体のプロジェクト マネジメント能力を向上し活用することを目的として PMO を常設の部門として設置することもある PMO は プロジェクト進行中 プロジェクト チームのマネジメントを支援し プロジェクト完了と共に解散するチームに代わって そこで得たマネジメントのスキルやノウハウを吸い上げ体系化し 次期のプロジェクトへ発展させる役割を担う -184-

189 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント プロジェクト計画の概要 (1) プロジェクト計画の目的とねらいプロジェクトを成功に導くためには プロジェクト メンバーに常に適切にロードマップを示す必要がある プロジェクト計画の目的は プロジェクトに参加する各組織のメンバーに対し 自分たちは何をしなければならないのか 各組織の達成すべき目標は何か を明確に設定することである このため プロジェクト計画に関する情報を絶えず組織全体で共有することが重要である 一方で プロジェクトが計画通りに進行 完了することは 稀である このため プロジェクト計画は 状況の変化に応じて 変更に柔軟に対応できるものでなければならない プロジェクト計画策定のねらいとしては 以下の 4 点があると考えられる 1 プロジェクト意図の明確化 2 業務 リスク 責任の明確化 3 遂行中の指針としての役割 4 変更への柔軟な対応 (2) プロジェクト計画の流れプロジェクト計画の策定プロセスは まずプロジェクトの目的を設定し 次にプロジェクトを展開する手順 ( シーケンス ) 業務と作業 および達成すべきマイルストン(Milestone, プロジェクトにおいて重要な意味を持つ時点およびイベント ) を決め 詳細な計画に落とし込む流れとなる 図 に ある事業の請負業者 ( コントラクター ) の立場に立った場合のプロジェクト計画策定の流れの一例を示す 図 プロジェクト計画策定の流れ 出典 :( 一財 ) エンジニアリング協会 PM 基礎習得コースをもとに作成 -185-

190 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 図 の流れの概要は 以下の通りである 1 プロポーザル段階の関連書類をレビューする プロジェクト受注前に コントラクターは見積書を顧客に提出する 最初に顧客から提示された仕様書は 契約交渉の段階で変更されることが多い プロジェクト マネージャーは 顧客との間に取り交わされたメール レター 関係書類を整理し 顧客からの要求やそれに対するプロポーザル内容及びその経緯を把握し 契約書のドラフトを慎重に検討しなければならない 2 プロジェクト組織をつくる 契約後 プロジェクト マネージャーは プロジェクト組織の主要メンバーを任命する 主要メンバーは 詳細なプロジェクト遂行計画に参画する 業務が進むにつれ 必要に応じてメンバーを増員していく 3 顧客とのキックオフミーティングを開催する 契約発効後 できるだけ早く顧客とのキックオフミーティングを開催する必要がある ここで 達成すべき業務及び役務の範囲 プロジェクト組織と要員 全体スケジュール等を確認する 4 役務範囲を確認する 効果的にプロジェクトを管理 統制するためには そのプロジェクトの役務範囲をしっかり把握するとともに 関係者間でのコミュニケーションを円滑に行うため 役務範囲の定義のコード化が必要となる 役務範囲の定義に有効な技法として WBS(Work Breakdown Structure) が知られている WBS は プロジェクトをシステマチックに組織し 管理することを可能にする WBS は 業務内容を細分化し その階層構造をツリー構造で整理したものである 各要素はコード化され プロジェクトに関する文書 ( 技術文書 計画文書 報告文書 経理文書など ) に記載される 図 に WBS の例を示す 6 プロジェクト遂行方針を設定する プロジェクト マネージャーは プロジェクト遂行方針を設定し プロジェクトの目的 管理の優先順位 プロジェクト成功のための基本思想を表明する 7 プロジェクト実行予算を立てる 過去の実績データ等に基づいて プロジェクトの実行予算を立てる 8 日程計画 ( プロジェクトスケジュール ) を作成する プロジェクトの立ち上げ時に プロジェクト マスター スケジュールを作成する プロジェクト マスター スケジュールは プロジェクトの各フェーズで実行しなければならない主要な作業を一覧できるものである プロジェクト マスター スケジュール作成に当たっては そのプロジェクトのマイルストンや 遅れの原因となり得る項目を確認し それらに配慮するようにしなければならない 9 社内プロジェクト キックオフミーティングを開催する プロジェクト遂行基本方針策定後 直ちに社内でのキックオフミーティングを開催す -186-

191 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント る 契約に至るまでの経緯やプロジェクト遂行の基本方針を プロジェクト メンバー間で共有する 10 プロジェクト ナンバリングシステムを設定する 前述の WBS と関連付けて プロジェクト ナンバリングシステムや手順書を作成し 以下の項目などの番号 コードを規定する エンジニアリング文書番号 ( 図面 仕様書 Data Sheet 等 ) 調達文書番号 ( 仕様書 注文書等 ) マテリアル番号 ( 機器 マテリアル等 ) スケジュール作業項目コード コスト管理コード マンアワー ( 勤務時間 ) 管理コード 11 プロジェクト業務遂行要領書を作成する プロジェクト業務遂行要領書を作成し 顧客に提出して 承認を得る 12 プロジェクト マネジメント要領書を作成する プロジェクト マネジメント要領書を作成し 顧客に提出して 承認を得る 13 設計 調達 及び建設の基本計画を作成する 設計 調達 建設の基本計画については それぞれの担当マネージャーが作成し プロジェクト マネージャーが確認する 出典 : プロジェクト マネジメント用語辞典 図 WBS の例 -187-

192 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント スケジュール管理の概要 (1) スケジュール管理の目的スケジュール管理の目的は 第一に契約納期に業務完了を間に合わせること 第二に経済性を考慮して プロジェクトをできるだけ効率的に進めることである また スケジュールは 常に監視され 必要に応じて 適宜更新 見直しを行う必要がある したがって スケジュール管理により 下記がなされなければならない 1 プロジェクト スケジュールの目標を達成させるために 必要な鍵となるプロジェクトのマイルストンやスケジュール上の主要作業などが記載された プロジェクト マスター スケジュールを策定し 適宜更新する 2 プロジェクト マスター スケジュールと他の関連スケジュールが 適時にプロジェクト チーム内で効果的に共有されるようにする 3 スケジュール遅滞の兆候を 遅滞が発生する前にできるだけ早く把握し 予想して 素早く是正措置が取れるようにする 4 現場工事が求める納期に合うように 設計業務や調達業務が進行するよう プロジェクト マネージャーに対し 的確な判断が下せる根拠となる情報を提供する (2) スケジュール管理の基本的な考え方スケジュール計画は プロジェクトのスコープが確定するのに平行して 段階的に策定される スケジュール計画に当たっては 関連するあらゆるデータを利用する 効果的なスケジュール管理のためには プロジェクト全体のスケジュール管理の担当者と各機能別組織で実際に仕事をする人たちとの聞に良好なコミュニケーションを確立することが重要である コミュニケーションを強化するために定期的な会議を設定し プロジェクトのスケジュールの状態を評価する この会議を通して 問題を把握し 解決するためのアクション プランが決まり 行動に移される 問題がその会議でプロジェクト メンバーやスケジュール コントローラのレベルで解決できない場合には 速やかにプロジェクト マネージャーに解決が委ねられる (3) スケジュール業務管理の流れスケジュール策定と管理は 次の 3 段階のフェーズに分けられる 1 全体計画プロジェクト マスター スケジュールなどの策定を行う 2 詳細計画プロジェクト コントロール スケジュール 重点監視スケジュール 業務詳細スケジュールなどの策定を行う 3 監視 報告及び統制プロジェクト コントロール スケジュールを基に 詳細計画フェーズからプロジェクトの完工まで プロジェクトの進捗の監視 報告及びコントロールを行う -188-

193 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 図 に 各種スケジュールを策定する際のスケジュールの表記法の例を示す 更に 図 にプロジェクト マスター スケジュールの作成例を示す 図 スケジュールの 3 つの表記法 出典 : 日経 BP Website: プロジェクト マネジメントの理論と実践, 第 5 回より 図 プロジェクト マスター スケジュールの例出典 : 株式会社システムインテグレータの Website -プロジェクト マネジメント講座第 9 章 コスト管理の概要プロジェクト目標は コストが予算内に納まり 工期を守って 許容可能な品質を持って完成させることである プロジェクト遂行の全期間を通じ この三つの要求の聞には 常に -189-

194 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント トレードオフの関係が生じる 例えば 完成時間の短縮や品質の改善は コストを上昇させる傾向がある このコスト 時間 品質の三つの要求が常に相互に関連しすることに留意し 優先順位をつけバランスをとりながら進めることが必要である (1) プロジェクトのコスト管理の流れプロジェクトのコスト管理とは プロジェクトを決定 承認済みの予算内で完成するように計画 管理するプロセスをいう コスト計画を立て 見積もりを行って予算化し コントロールしていく流れとなる 図 にコストの管理サイクルを示す プロジェクトのコスト管理においては 多くのマネジメントサイクルと同様に PDCA(Plan, Do, Check and Action) の確実な実行が重要である 出典 : プロジェクト マネジメント用語辞典 図 コスト管理のサイクル (2) プロジェクト コスト管理の特徴プロジェクトにおけるコスト管理は プロジェクト毎に目標に沿った形で プロジェクト完了まで実施される 確定した原価は出来る限り早く把握集計し 今後の発生コストを予測することにより 常にプロジェクト完了時の予想コストを睨みつつ 今後のコスト発 -190-

195 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 生を統制することに重きが置かれる (3) プロジェクトのライフサイクルとコスト管理効果プロジェクトにはいくつかのフェーズ ( プロジェクト ライフサイクル ) があり そのフェーズの進行に伴って時間と費用の不確実性は減少する すなわち 各フェーズで得られるデータの種類 精度の変化に応じて コスト管理の統制できる範囲 精度および効果も変化することとなる 従って 各時点に即した管理 ( フェーズ コントロール ) が必要となる (4) スケジュールとコストの統合管理コストとスケジュールについては プロジェクト遂行の全期間を通して密接な相互依存関係とトレードオフ関係がある コスト スケジュールの統合管理を行うためには次の項目を実施する必要がある 1 コスト / スケジュール / 変更の情報を一元管理可能な構造に展開する 2 実行作業の進捗度についての客観的かつ具体的な測定基準を設定する 例えば アーンド バリュー ( プロジェクトの進捗状況 ( コストとスケジュール ) を客観的に測定するための指標 :Earned Value) などのツールを活用する リスク管理 (Risk Management) の概要 (1) リスク管理とは 1 リスクの定義プロジェクト マネジメントにおいて リスクとは 損失や被害 その他当該プロジェクト当事者にとり望ましくない出来事 であると定義される 従って 第 5 章で述べた HSEMS におけるリスク評価の対象よりも 広い範囲の事象を対象とする プロジェクトに二つと同じものがない以上 すべてのプロジェクトは大なり小なり 未経験 であり そこには必ず不確実性とリスクが存在する とくに最近のプロジェクトは グローバリゼーションの流れの影響や 世界標準 株主や内部統制からの要求 技術革新のスピード JV/Consortium での大型プロジェクト実施 安全 環境関係対応など対応すべき要求が増加しており リスク管理の重要性はますます増大している 2 リスク管理とは不確実性やリスクというと 一見コントロールすることは不可能のように思えるかも知れない しかし アプローチさえ間違えなければ リスクはある程度までは管理することが可能である リスク管理とは このリスクを低減し管理することを目的としたものである (2) リスク管理のプロセス図 にリスク管理のプロセスを示す リスク管理のプロセスは 大きく分けて以下から成る -191-

196 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 1 リスク管理方針の確立 (Plan) 2 リスク管理計画の策定 (Plan) 3 リスク対応策の実施 (Do) 4 マネジメント計画のパフォーマンス評価 (Check/Action) リスク管理方針の確立 組織的なレビューとフィードバック 基本的目標の設定 方針の確立 行動計画の策定 リスク管理計画策定 リスクの特定 リスク評価 リスク対応策の立案 選択 リスク対応策の実施 管理計画のパーフォーマンス評価 図 リスク管理のプロセス 出典 :( 一財 ) エンジニアリング協会 PM 基礎習得コーステキストをもとに作成 1 リスク管理方針の確立プロジェクトのリスク管理にどのような方針で取り組むかは プロジェクトのごく初期段階から策定される リスク管理方針の確立は 次のようなステップからなる 基本的目標の設定リスク管理の目標を明確にする 方針の確立リスク特定に際しての選定の指針や方法論 リスク評価の方法 対応策の立案 選択に当たっての方針を提示する 行動計画の策定リスク管理計画の実施後のパフォーマンス評価の方法やそれに基づく目標 計画の見直しのスケジュールについての計画を提示する 2 リスク管理計画リスク管理計画の策定は 1リスクの特定 2リスク評価 3リスク対応策の立案 -192-

197 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 選択の 3 つのステップから成る リスクの特定プロジェクトで発生する可能性のあるリスク事象をできるだけ多く網羅 特定する リスク特定の主な手法としては 以下が用いられている チェックリスト法 ブレーン ストーミング法 ツリー法 識者へのインタビュー リスクの評価リスクの分析 評価では リスク特定のプロセスを実施することによって挙げられたすべてのリスクに対して おもに確率の基本的手法を用いて定量化しプロジェクトへのインパクトを予測する これにより 対応が必要な項目の絞り込みと 対応策の立案に資する リスク評価に当たっては 以下が重要なポイントとなる 想定されるリスク事象が漏れ 落ちなく 網羅的に挙げられていること そのリスク事象が発生する可能性が妥当な確率で示されていること そのリスク事象が発生した場合の金額的インパクト ( 損害 ) が妥当な数値で示されていることリスク評価は確率モデルを用いて 金銭的期待値として定量的に評価する方法もとられるが リスクを俯瞰する定性的簡易法として用いられる手法として リスク マトリクス ( 図 ) がある リスク マトリクスは リスク事象のインパクトを横軸に 発生確率を縦軸にとって各々を区分することにより いくつかの箱を作り その中に各々のリスク事象をプロットする方法である リスク事象全体のなかで 各々の事象の位置を見極め リスク対策の優先度を決定する上では有効である -193-

198 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 図 リスク マトリクス 出典 :( 一財 ) エンジニアリング協会 PM 基礎習得コーステキスト リスク対応策の立案 選択リスク評価から決定した優先順位に従い対応策を練っていくのが リスク対応計画である リスク対応策には 大きく分けて以下の二つがある リスク コントロール プランリスクの発生を未然に防ぐことに着目した手法である リスク コントロール プランには 選択肢として以下が含まれる リスクの回避リスク要因を取り除いてしまうこと リスクの大きな作業そのものを取りやめること等を指す リスクの軽減リスクが起こる確率やインパクトをできる限り低く抑えること 例えば 作業に当たる人員のレベルを上げたり 人数を増やすことによって 品質を保持すること等が挙げられる リスクの分散リスクの請負手を増やし リスク事象が起こった場合のインパクトの負担を分散させること 例えばスケジュール遅延のリスク回避のため 複数のベンダーを起用すること等が挙げられる リスクの転嫁 -194-

199 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント リスク事象が起こった場合の結果を 第三者に転嫁させること 例えば 工事業者へ固定単価契約で発注し 工事業者に労働生産性の保証を求めること等もこれに該当する リスク ファイナンスリスク ファイナンスとは リスク事象が起こった場合の損害に対して あらかじめ金銭的負担を考慮するメカニズムである リスク ファイナンスには 以下の二つがある リスクの移転あらかじめ定められた費用を支払うことにより リスク事象が起こった場合の財政的な負担を第三者に移転すること 保険や為替予約などが典型的な例である リスクの保有リスクを認識したうえで 自社でリスクを保有すること 会社として貸倒引当金を用意すること等がこれに当たる 発生頻度が低く 損害も小さいリスクに対して用いる 表 にリスク事象への対応策検討例を示す 表 リスク事象への対応策検討例 出典 :( 一財 ) エンジニアリング協会 PM 基礎習得コーステキスト (3) リスクの対応策の実施上記で述べたように リスク管理においては様々なリスクに対して 計画を練り 分析 評価を行い 対応策を準備して プロジェクトの実施に移るわけであるが 実施段階では当然計画 準備した通りとなるものもあれば ならないものもある 従って 実施段階では 継続的にリスク事象を評価すると同時に それらの変化や新たに発生するリスク要因 -195-

200 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント に対して 適切に対応策を実施していくことが必要となる ブロジェクト実施段階では プロジェクト計画段階で明らかとなっている各々のリスク項目とそれらへの対応策を実行すると同時に 新たに発生するリスク事象を追加して対応策を練って実施するこが必要となる (4) 管理計画のパフォーマンス評価パフォーマンス評価は リスク項目一覧表の評価 更新などにより 実施されることが多い プロジェクト開始時点から認識 登録されているリスク項目 すでにリスク発生の可能性が無視できるほど極少となった項目 新たに発生した項目などについて プロジェクト コントロールの結果から得られるさまざまなデータを分析することにより 継続的に評価 更新する 品質管理の概要 (1) 品質管理の目的 1987 年に品質管理の国際規格として ISO9000 シリーズが制定されて 20 年以上が経過した ISO9000 シリーズは ISO(International Organization for Standardization, 国際標準化機構 ) による品質マネジメントシステムに関する規格の総称で その中核をなす規格は ISO9001 である もともと 現在の ISO9001 の前身となる規格が 事業所の性格に応じて ISO9001,ISO9002 ISO9003 に分かれていたことや 現在でも関連の規格が 9000 番台であるものが中心になっているため まとめて ISO9000 シリーズと呼ばれる 日本の中堅以上の企業の大半が品質管理を企業経営に活用し ISO9001 の認定認証を得るまでになった 当該認証が 多くのプロジェクト入札における事前審査の最低条件の一つとなっていることからもわかるように 品質管理はプロジェクト マネジメントの中でも最重要なものの一つになっている (2) 品質管理システムの歴史戦後日本の製造業は目覚ましい発展を遂げきたが 品質管理に対する考え方は 製造品に関連する品質管理が主流となってきた すなわち 日本式品質管理は 戦後のデミング博土によって導入された統計的品質管理 (SQC:Statistical Quality Control) 総合品質管理 (TQC: Total Quality Control) および検査から構成されており 製品供給者側が開発したシステムといえる すなわち 製品の品質検査 品質保証という点に重点が置かれ プロジェクト業務遂行の信頼性や効率にかかわる パフォーマンスの品質 は対象とされていなかった このような考え方は 1987 年に制定された ISO9000 シリーズの品質管理システムにおいても制定初期には同様な傾向が認められ 製造業における 品物の品質 を対象に規格化されていた その後 製造業以外の様々な分野において ビジネス活動自体の品質 に関心が高まってきたことを背景として 品質方針と品質目標 を定め これを達成するために 品質計画 を策定し 品質保証 と 品質管理 の活動を統合して 継続的に品質を改善し -196-

201 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント ていく 品質管理システム が求められるようになった また 顧客を中心とする すべてのステークホルダーのニーズに取り組むとともに 組織のパフォーマンスを継続的に改善するように設計されたマネジメントシステムを構築し 維持すれば 組織のマネジメントを成功に導くことが可能となるというコンセプトが ISO の品質管理システムの根幹である (3) プロジェクト品質管理の概要 2007 年 12 月に 日本プロジェクト マネジメント協会が発刊したプロジェクト & プログラムマネジメント標準ガイドブック ( 以下 P2M ガイドブック ) においては 品質管理を 顧客の要求に合った品質の製品やサービスを経済的につくりだすための一連の業務プロセス と定義している 製品やサービスに関する顧客要求を満足するよう 恒常組織やプロジェクトの制約条件及び外部環境要因を入念に調査し 経済的 効率的に設計 製造 販売して 顧客に安心 且つ 満足して使用してもらうことが重要である また プロジェクト内部に対しては品質管理を徹底し 欠陥を早期に発見することにより対策の選択肢が広がるとともに コスト超過やスケジュール遅れといった悪影響を最小化することが可能となる すなわち プロジェクト品質管理とは 会社の経営方針やプロジェクト方針 ( 計画 契約等 ) などに基づき 予め定められた品質システムのもとで後述する品質計画 品質保証 品質監査 品質改善などを通じて 計画された品質やサービスを顧客に提供するためのマネジメント機能である 品質管理の概要を図 に示す 図 品質管理の概要出典 :P2M プロジェクト & プログラムマネジメント標準ガイドブック (4) 品質管理のプロセス ISO9000 シリーズでは 品質管理システムの基本プロセスとして 運営管理のプロセス -197-

202 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 資源の運用管理 製品実現 測定 分析および改善の 4 つをあげ 組織の業務プロセスの 相互関係を明確にすることを要求している プロジェクト遂行にかかわる ISO9001 品質管理システム要求事項 の基本プロセスと 立上から終結までの各プロジェクトフェーズとの関係を表 に示す マークがある 項目については マネジメント行為が必要な項目である 表 品質管理とプロジェクト進捗状況の関係 項目名称 立上 計画 遂行 監視管理 終結 4.2 文書化に関する要求事項 5 経営者の責任 5.3 品質方針 5.4 計画 ( 品質目標 管理システム計画 ) 5.5 責任 権限およびコミュニケション 5.6 マネジメントレビュー 6 資源の運用管理 7 製品の実現 7.1 製品実現計画 ( 品質計画書 ) 7.2 顧客関連のプロセス 7.3 設計 開発 7.4 購買 7.5 製造およびサービスの提供 7.6 監視機器 / 測定機器の管理 8 測定 分析および改善 8.2 監視および測定 8.3 不適合製品の管理 8.4 データの分析 8.5 改善 出典 :( 一財 ) エンジニアリング協会 PM 基礎習得コーステキストをもとに作成 (5) プロジェクト品質管理遂行組織における責任と権限 品質管理におけるプロジェクト組織の責任と権限は 通常は会社の 品質管理マニュア ル (QMM:Quality Management Manual) や プロジェクト品質計画書 (PQP:Project Quality Plan)) 等において文書化され 明確に会社組織内に周知されることになる プロ ジェクト品質管理機能に係わる組織の例としは下記の通りとなる トップマネジメント ( 会社の経営者 ) プロジェクト マネージャー (PM) プロジェクト品質マネージャー (PQM) 品質管理マネージャー (QCM) (6) プロジェクト品質計画書の策定 ISO9000 シリーズでは 品質計画を 品質目標を設定し その品質目標を達成するため に必要な運用プロセスおよび関連する資源を規定することに焦点を合わせた品質管理の一部 と定義されている P2M ガイトブック においては プロジェクト品質計画を プロジェクトの契約や基 -198-

203 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 本要件設定に基づいて その製品またはサービスのもつ品質特性について 最も適切な品質水準を設定し それを満足する方法を決定すること と定義している これらの定義に従い プロジェクトの品質方針と品質目標 プロセスおよび資源 監査やプロセス改善の計画等を含めて プロジェクト チームが会社の品質方針をプロジェクト業務の中で実行していく方法を記述したプロジェクト品質計画書 (PQP) を策定する必要がある (7) プロジェクト品質保証 ISO9000 シリーズにおいて 品質保証は 品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点をあわせた品質管理の一部 であるとされ P2M ガイドブック では 顧客の要求する品質が十分満たされていることを保証するために実施する一連のシステム およびその活動 と定義されている 具体的には プロジェクトの品質保証は プロジェクトの契約締結時に合意した顧客要求事項 法規制 適用標準 規格などを満足させるためプロジェクト品質計画書に定めたプロジェクト マネジメント システムや業務手順を確実に遵守し プロジェクトにおける製品の品質を保証することである プロジェクト遂行について顧客やその他のステークホルダーの信頼と満足が得られるよう プロジェクト業務の遂行パフォーマンスを維持 向上させる体系的な品質活動が求められる (8) プロジェクト品質コントロールプロジェクトにおける品質コントロール (QC: Quality Control) は ISO9000 シリーズでは 品質に関する要求を満足するために用いられるべき手順を追った技術 活動 と定義されている P2M ガイドブック では QC を 製品やサーサービスが定められた品質基準に適合しているか否かを検査し 不満足な結果が得られた場合には その原因を調査し 取り除く手段を講じること と定義している これらを総合すると プロジェクトの QC とは プロジェクトの成果物 ( 製品やサービス ) が顧客との契約書 規格 仕様書などで規定された品質要求事項に適合しているか否かを判断するために 結果を試験や検査により監視し 不満足な結果 ( 不適合 ) の原因を除去するための方法を特定し 再発防止を図るための一連の活動である これまで QC といえば ハードの製品品質を管理対象にして 品質仕様や品質規格に対して不合格品が発生しないよう製品の製造工程を管理し 不良品の再発防止を行うことに重点が置かれてきた しかしながら ISO9000 シリーズにおける プロセス重視 のコンセプトにも見られるとおり プロジェクト品質管理における QC においては ハードの製品に加えて顧客に提供するサービスの品質 コスト スケジュールにおけるパフォーマンスなどのプロジェクト マネジメントの結果に対する QC が重要視されるようになってきた そのため プロジェクト マネジメントに関する QC は 従来の恒常組織の品質管理部署が主担当になるのではなく プロジェクト チーム内にその機能を持たせて実施していくこととなる -199-

204 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 6.2 契約 保険 ファイナンスの基礎 契約とは海洋開発に拘わらず あらゆる商務活動において 契約の概念が必要である 商務活動における契約とは 当事者同士が交渉を通じて当初合意した内容を書面において確認しておくこととともに 後日 相互の理解に差異や疑義が生じた場合の紛争解決の手段等あらゆる想定について対応できる様に規定することである また特に資源開発案件のような大型かつ長期にわたる事業の場合は 契約当事者企業での関係者が多岐にわたり また交代していくことも多い中で 継続的に理解を共通にして置くという実務面においても有用である 換言すれば 何事も発生しなければ 契約書は不要である 何かが発生したときに契約書が必要になる そして契約行為では必ず何かが発生するのが常である ということである 契約の種類以下で 海洋石油開発産業を例にとって契約の種類について 説明する (1) 事業権契約又は採掘権契約資源開発を語る上で 資源は誰のものか ということを考える必要がある 通常は海底資源を含め 開発前の資源は 法律的に当事国政府の所有物と規定される これら資源を対象にして当事国政府が鉱区入札を行い オイルメジャー ( シェルやエクソン等巨大資本 ) 等外国企業に開発の権利を与えることで 外国企業は事業権を獲得する この権利義務を規定するのが事業権契約乃至採掘権契約であり 生産分与契約と称する場合もある 主に次のような項目が規定される 1 開発の期間 ( 契約後埋蔵評価作業開始までの最長期間 商業化評価に要する最長期間 商業化後の最低開発継続期間等 ) 2 評価作業における最低費消金額 3 当事国政府に事業者が支払う調印時一時金 4 事業者の開発コスト回収方法 ( 期間 売上げに対するコスト回収比率 ) 5 当事国と事業者間の利益配分 6 税金 ( 免税期間 要件 ) 7 ロイヤリティ額 ( 当事国の所謂権利金収入分 ) 8 生産設備の所有権帰属先 9 当事国国営石油会社の事業参画権と参画条件 10 不可抗力規定 ( 天災等当事者の責任にも依らない様な事象での損害等規定 ) 11 適用法 ( 裁判等に準拠する法律 ) 12 損害保険 13 契約満了条件 (2) 合弁契約海洋石油開発等では投入資金が巨額で事業リスクも高いことから 事業者は何社かが集 -200-

205 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント まり共同で事業を行うケースが多い これら各参加事業者間同士の利害や権利義務を規定するのが合弁契約である 主な規定内容は以下の通りである 1 各社の出資比率 2 株式の規定 3 主幹事会社 ( オペレーター ) の権利義務 4 役員の選定 5 役員会 株主総会の開催要件 審議内容の規定 6 議決事項 議決事項の規定 7 各社の契約不履行の場合の規定 8 資金拠出 9 各社の事業撤退条件 10 新規事業者の参画要件 11 適用法 (3) 事業操業に関わる契約操業は 事業成功の根幹にかかわる業務であることは言うまでもない 事業者の一人が自ら操業するか あるいは第三者に操業業務を依頼するかであるが いずれにせよ 事業者と操業者 ( 総称しオペレーターと称する ) 間で操業に関わる契約を取り決める これには設備保守も含む 操業契約骨子は次の通りである 1 オペレーターの選定 2 オペレーターの責任範囲 3 操業 保守資金の予算及び拠出方法 4 損害保険の調達 5 オペレーターの交代要件 6 操業に関わる議決事項と招集方法 議決方法の取決め 7 不履行 不可抗力 仲裁 適用法 (4) 生産物販売契約石油開発により生産された原油ないし天然ガスを 国内及び海外の需要家に販売する上での 事業者と需要家間の権利義務を規定した契約である 重要な規定内容は 以下の通りである 1 売買契約期間 2 製品の品質条件 3 製品単価の規定フォーミュラ 4 買い手が自己事由で買い取らない場合の罰則規定 5 決済方法 6 納入場所 7 不可抗力事象 -201-

206 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント (5) 試掘設備調達 生産設備建設に関わる契約石油開発は多大な設備投資を伴う これら設備が納期通り 仕様通り 契約金額通り納入されることで操業が開始でき 事業者の収益採算も見通しが立つ このため失敗は許されず 経験豊富な建設企業 エンジニアリング企業に発注することになり 事業者とこれら設備建設業者 ( 総称してコントラクターという ) 間の権利義務を規定した契約が必要となる 主要規定内容は次の通りである 1 契約対象の仕様 2 契約金額 3 支払い条件 4 納期 5 不履行の場合の罰則 ( 納期遅延 品質未達等 ) 6 双方の作業範囲の規定 7 双方の責任の範囲の規定 8 コントラクターの最大責任金額 9 不可抗力 10 紛争処理及び仲裁規定 11 適用法 (6) 損害保険契約資源開発は巨額であり 自然災害 人災 設備不良等多岐にわたる事由により 事故が発生すると 多額の設備交換費用 修理費用が発生する これら偶発的な費用は 事業者の採算に含めておくことが困難なため 損害保険金で回収するのが通常である また当事国によっては 政治リスクが高く そうした要因で操業ができなくなる場合があり その損害を回収する政治リスク保険を付保するケースもある これらを目的として保険会社 ( 政治リスクに関しては政府系保険機関 ) と事業者間で損害保険契約を締結する 規定内容の概要は次の通りである 1 担保する危険の内容 ( 対象物 作業内容 ) 2 保険機関 3 保険金額 4 被保険者対象 5 免責金額 6 免責事由 7 原因調査方法 (7) 開発資金調達のための融資契約巨額の事業開発資金を事業者の自己資金で調達することは困難である 通常は銀行融資により資金を調達する ( 但し 社債発行する場合もある ) 事業者と融資者との間の融資条件を規定するのが融資契約であり 主に以下内容が規定される -202-

207 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 1 融資金額 建値 2 貸出時期と貸出実行の為の条件 3 借入人と貸出人 4 融資期間と元利返済方法 5 適用金利率 6 借入人誓約条項 制限条項 7 借入人法的表明事項 8 返済不履行の場合の規定 9 担保行使要件 ( 特にプロジェクトファイナンスの場合 ) 10 仲裁 適用法 以上の (1)~(7) の契約の構成を 図 に示す 図 石油事業形態 ( 契約関係 ) -203-

208 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 主な保険の種類大型開発事業を行う上で 保険付保は必要不可欠なものである 保険には政府系保険と民間保険の 2 種類があり 各々対象となる付保内容が異なる (1) 政府系保険具体的には独立行政法人日本貿易保険が取り扱う保険であり 民間保険会社では扱うことができない危険をカバーする その顕著なものが当事国での戦争 当事国による収用 為替制限である テロ 海賊行為 暴動などもカバーされる これらのリスクが事業者の投資決定阻害要因となる場合があり 日本国として民間事業をサポートするため 政府系保険がある (2) 民間保険政府系保険が存在する一方で 海洋開発を対象とした民間保険もある 以下に 物的損害を対象にした保険について プロジェクトの段階に応じて時系列的に整理する 1 探鉱保険 / 試掘保険 / 掘削保険 : 井戸の破損 暴噴制御の費用をカバーする保険である 2 建設保険 : 生産設備の建造中 輸送中据え付け試運転中に起こる事故の実損をカバーする保険 これには自然災害による物損も付保される 3 生産後保険 : 設備の操業開始後何らかの事由により 生産設備が故障したり修理が必要になる場合の費用をカバーする保険である 一方 物損とは別に 第三者に対する損害賠償をカバーする保険が存在する この保険により建造中乃至操業中の事故による従業員の人的被害 医療保障などをカバーする しかし 石油ガス資源開発における第三者損害保険カバーで 最も重要な付保事象は 暴噴や生産設備の事故により 原油等が大量に海洋に漏れ出し海洋汚染を起こした場合の政府または漁民等への損害賠償である 但し 民間保険会社は油濁事故における最大付保金額を 8-10 億ドルに限定しており それ以上の損害が生じた場合は事業者自らが負わなければならない この他 一定の期間制限を設け 操業できず本来得られる収入を得られない場合の損害をカバーする不稼働保険もある 以上のように 海洋開発事業の保険付保金額が巨額化するため 保険会社側も他の保険会社に再保険することで自社のリスクを軽減させている ファイナンスとは 前述の通り 海洋開発事業では 何千億円という巨額の投資資金が必要となるケースも多い 従って事業遂行には 如何に事業資金を調達するかが 事業者にとって投資決定のため -204-

209 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント の絶対要件となる ファイナンス即ち資金調達には主に以下の 2 通りがある (1) 事業者の信用力により資金を調達する方法 ( 銀行融資 社債発行によるものなど ) (2) 当該開発事業の事業性を金融機関が評価して融資を行う方法この方法を プロジェクトファイナンス と呼び 金融機関が事業に関わる全ての契約書を評価し また資源の埋蔵量評価 環境評価 保険契約評価 事業の採算性評価なども行った上 融資対象となる事業資産 設備を担保することにより融資を実行するものである これにより事業者は融資債務保証を免れ リスク軽減 事業採算の向上に繋げることができる 但し 銀行が融資対象金額相応の事業リスクを負うことになるため 融資金利は相応のものとなる 信用格付けが高いオイルメジャー等は前者による調達 信金調達力に制限のある中小石油会社は後者による調達が多いと言える またオイルメジャーであっても 特定国における政治リスク低減のため 後者を採用するケースもある 通常求められるプロジェクトファイナンスの要件は 次の通りである 1 事業資金全体に対する事業者の出資比率 : 通常 30% 程度が求められる 事業者の出資額が多いほど 事業者責任の強さが判断できるという考え方に立ち 30% が最低レベルとして一般的である 2 生産設備建設の完工保証 : 生産設備が完成しない 操業に支障があるような粗悪な設備である場合 融資者の資金回収が見込めないことから プロジェクトファイナンスの場合 融資銀行の貸出実行は完工後とするケースが多い 3 埋蔵量評価 : 埋蔵量と資源の採掘実現性がプロジェクト実現の根幹にかかわるため 事業者による埋蔵評価だけではなく 第三者検査機関に依頼して評価することが通例である 4 操業業者の実績と信用度 : 設備が完成しても操業がうまくいかなければ生産物を生まないため 操業者の過去の同種設備における操業実績を重要視する 5 生産物販売の確実性 : 生産開始後も 生産物を長期にわたり採算レベルに合致した期間や金額で購入する相手先との販売契約が担保されることが重要である 買う側の相手先の事由で買い取らない場合は 同等の金額を支払う義務を負わせる Take or Pay 契約が求められるケースがある 6 融資返済に適用される為替 : 原則 基軸通貨として途上国現地通貨は認めないケースが多く 当事国によっては 海外口座の開設により その国の為替制限リスクを排除する仕組みをつくるケースもある -205-

210 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント 7 自然災害 人災リスク及び政治リスクおける保険の付保内容 及び契約上の不可抗 力事象における損害負担の当事者規定を事前に評価する これは 損害により事業継続不能となった場合の融資金残債を保険金で回収するためである 事業規模の大型化により市中銀行一行で融資を行うケースは少なく 銀行融資団を組成し共同で融資を行う この場合必ずリーダー格になる銀行を決め これが幹事銀行として銀行団を取り纏める また 当該国のカントリーリスクや融資期間次第では 日本政府系融資機関である株式会社国際協力銀行との協調融資乃至独立行政法人日本貿易保険による政治リスク保険の付保を前提に組成するケースが多い 最近はプロジェクトファイナンスが台頭しており 我が国のメガ銀行 欧米市中銀行に加え アジア新興国の市中銀行もプロジェクトファイナンス融資団に参画するケースが出てきている 更には世界銀行 アジア開発銀行 アフリカ開発銀行等の国際金融機関との協調融資をする事例もある -206-

211 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント < 参考資料リスト> (1) 一般財団法人エンジニアリング協会テキスト L PM 基礎習得コース第 4 編 (2) 日本プロジェクト マネジメント協会ウェブサイト (3) 株式会社システムインテグレータ Website プロジェクトマネジメント講座, (4) 日経 BP Website プロジェクトマネジメントの理論と実践 (5) プロジェクト マネジメント用語研究会 : エンジニアリングプロジェクト マネジメント用語辞典, 重化学工業通信社, 1986 年 (6) 日本プロジェクトマネジメント協会 :P2M プロジェクト & プログラムマネジメント標準ガイドブック, 日本能率協会マネジメントセンター ; 改訂 3 版, 2014 年 (7) 井上義明 : 実践プロジェクトファイナンス, 日経 BP 社, 2011 年 -207-

212 海洋開発産業概論 教材 6 章プロジェクト マネジメント -208-

213 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 7 ( 付録 ) 世界のプロジェクト 7.1 海洋石油 天然ガス開発プロジェクト 1 Prelude( プレリュード ) FLNG プロジェクト世界で初めて FLNG(Floating LNG) 生産方式を採用 2 Lucius( ルシウス ) プロジェクト大水深海域で 世界最大級の SPAR 型生産方式を採用 3 Sakhalin-2( サハリン-2) プロジェクト極地における開発ロシア初の海洋石油 天然ガス開発プロジェクト 4 Goliat ( ゴリアテ ) プロジェクト世界最北端の海洋開発プロジェクト (2015 年時点 ) 円筒型の FPSO を採用 5 Asgard ( アスガルド ) プロジェクト世界で初めてサブシー コンプレッサーを導入 6 Kangean ( カンゲアン ) プロジェクトインドネシアにおける FPSO 採用プロジェクト 7 Snohvit ( スノービット ) プロジェクト陸上施設までのパイプラインの長さが世界最長 (2015 年時点 ) の極地開発プロジェクト CCS(Carbon Dioxide Capture & Storage) 技術が採用 8 Helang ( ヘラン ) プロジェクトマレーシアにおける海洋天然ガス開発プロジェクト 9 Knarr ( クナル ) プロジェクトノルウェーにおける FPSO 採用プロジェクト 10 Zakum ( ザクム ) プロジェクトアブダビにおける海洋石油 天然ガス開発プロジェクト 11 Magnolia ( マグノリア ) プロジェクトメキシコ湾における世界最大水深での TLP 採用プロジェクト (2015 年時点 ) 12 Guanabara Bay ( グアナバラ湾 ) における FSRU Experience FSRU(Floating Storage and Regasification Unit, 浮体式貯蔵再ガス化設備 ) 導入 209

214 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )1 Prelude( プレリュード ) FLNG プロジェクト基本情報 所在地 Browse Basin, Australia 水深 ~250m 生産方式 Floating LNG (FLNG) オペレータ Royal Dutch Shell ( 以下 Shell) 出資者 Shell:67.5%, INPEX:17.5%, KOGAS( 韓国 ):10% OPIC( 台湾 ):5% 生産能力 LNG 360 万トン / 年コンデンセート 130 万トン / 年 LPG 40 万トン / 年主要寸法長さ :488m 幅 :74m プロジェクトの概要プレリュードガス田 コンチェルトガス田はそれぞれ 2007 年 2009 年に発見されたガス田で 西豪州 Broom から北北東 475km( 最も近い海岸線から 200km 以上 ) の沖合に位置している Shell はこれらのガス田を世界で初めてとなる FLNG 方式で開発することとし 2011 年 5 月に最終投資決定をした FLNG 方式は 生産した天然ガスの液化 タンク貯蔵 タンカーへの出荷までを洋上で完結できるため 陸上プラントまでのパイプライン敷設および浚渫作業が不要となり コスト削減 環境影響の低減 現地建設作業の削減といったメリットがある このため 陸上からの距離が遠い洋上ガス田開発の解決策として注目を集めている Prelude FLNG は 長さ 488m 幅 74m 重さ約 60 万トン LNG 貯蔵容量 22 万 m 3 ( オリンピックプール 175 杯分 ) の世界最大の浮体式洋上施設である 建造は 韓国の Samsung Heavy Industries の造船所で行われており 常時 5,000 人程度の作業員が建設に携わっている 本プロジェクトでは海底仕上げ坑井 マニホールド フローライン等からなるサブシーシス Prelude FLNG プロジェクトの所在地 (INPEX web サイトより ) FLNG 設備のイメージ (Shell web サイトより ) 210

215 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトテムを採用しており FLNG はタレットを介したムアリングチェーンによりガス田近傍で 25 年間に渡り係留される これら設備は最強レベルのサイクロン等荒天に耐え得るよう設計されている LNG 生産時には 240~280 人のスタッフが FLNG の操業に従事し (120~140 人の 2 交代 ) 定期検査期間には 300 人超が FLNG で作業を行う 日本企業としては INPEX( 国際石油開発帝石 ) が出資者として参画している他 川崎重工業が FLNG のボイラーユニットの設置を担当している プロジェクトの主要スケジュール 2007 年 1 月 プレリュードガス田発見 2009 年 3 月 コンチェルトガス田発見 2009 年 7 月 Technip Samsung コンソーシアムと FLNG の設計 建造 設置契約を締結 2011 年 5 月 最終投資決定 (Final Investment Decision) 2012 年 10 月韓国で FLNG 船体の建造工事開始 2013 年 9 月 海底生産井の掘削開始 2017 年 生産開始 ( 予定 ) web サイト / 参考資料 世界初の FLNG プロジェクト :Prelude LNG における技術的現況 JOGMEC,

216 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )2 Lucius( ルシウス ) プロジェクト基本情報 所在地米国ルイジアナ州沖合約 380km 水深約 2,164m 生産方式 Truss SPAR オペレータ Anadarko 出資者 Anadarko % Freeport %, ExxonMobil % Petrobras % INPEX 7.753% Eni 8.500% 生産能力石油 :80,000 barrels/day 天然ガス :450 million cubic feet/day 主要寸法 SPAR 直径 : 約 33.5m SPAR 長さ : 約 164m プロジェクトの概要 Lucius プロジェクトの所在地 (INPEX web サイトより ) ルシウス油ガス田は 2009 年 12 月に発見された 約 2,164m の大水深であるが 探鉱時に質の高い原油が産出されることが確認されている 試掘 開発を経て 2015 年 1 月に生産が開始された オペレータである米国の Anadarko 社は 大手独立系石油 天然ガス会社の一つである 生産プラットフォームは 円筒型の浮体である SPAR 型式が採用された 当該 SPAR には 6 つの海底生産井が繋がれ SPAR 自体は 直径約 33.5m 長さ約 164m と 世界最大の規模を誇る 風や波 潮流に対する動揺性能に優れ 貯油能力を持つため 大水深や遠隔海域における開発方式として注目されている SPAR のトップサイドは Mustang 社が Hull は Technip 社が それぞれ設計 調達 建造を担当している Hull は フィンランドにある Technip 社の造船所で建造された Hull 等建造のプロジェクトマネジメントは ヒューストンにある Technip 社のオペレーティングセンターで行われた Technip 社は 本プロジェクト以前にも Neptune や Nansen 等のプロジェクト向けに Anadarko 社向けに 6 つの SPAR を建造している 212 海底設備 (Anadarko 社資料より )

217 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト本油ガス田から生産された原油及び天然ガスは プラットフォーム上に設置された生産設備で処理された後 海底パイプラインを通じてルイジアナ州の陸上施設に送油 送ガスされる 日本の企業としては INPEX が 2012 年 8 月に出資し 一部権益を取得している Lucius Truss SPAR (Anadarko 社資料より ) プロジェクトの主要スケジュール 2009 年 12 月 ルシウス油ガス田構造発見 2010 年 1 月 試掘成功 2011 年 5 月 フローテスト成功 2011 年 12 月 プロジェクト認可取得 2012 年 7 月 開発権益に関する契約締結 2013 年 5 月 メキシコ湾に SPAR 到着 2015 年 1 月 生産開始 web サイト / 参考資料 smediabooklet.pdf 213

218 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )3 Sakhalin-2( サハリン-2) プロジェクト基本情報 所在地水深生産方式オペレータ ロシア サハリン島北東岸沖約 16km のオホーツク海 ~50m Integrated LNG Sakhalin Energy ( 下記出資者から成る ) 出資者 Shell:27.5%, Gazprom:50%, 三井物産 :12.5% 三菱商事 :10% 生産 処理能力 主要寸法 プロジェクトの概要 LNG プラント LNG:960 万トン / 年陸上処理施設原油 :6 万バレル / 日ガス :5100 万 m 3 / 日 - Sakhalin-2 プロジェクト (Sakhalin Energy web サイトより ) サハリン 2 プロジェクトは ロシア初の海洋石油 天然ガスプロジェクトである 開発エリアは主に Piltun - Astokhskoye ( ピルトン アストフスコエ ) 鉱区および Lunskoye( ルンスコエ ) から成る この海域は ほぼ 1 年中氷に覆われ 冬には気温がマイナス 45 まで低下することもあり 北極圏の強風と高い湿度により マイナス 70 の風速冷却 (wind-chill) が生じる このような厳しい気候条件では 屋外での作業は短時間のシフトを組んで行わなければならない 加えて サハリン地方は 過去 15 年の間にマグニチュード 6.4 と 7.6 の地震に見舞われており 当該プロジェクトのプラットフォームは巨大地震にも耐えうるよう設計されている また 本プロジェクトの海域は 太平洋西部に生息し絶滅危惧種に指定されているコククジラの回遊域でもあるため その保護計画が実施されている Piltun Astokhskoye A プラットフォームの外観 (Sakhalin Energy web サイトより ) 214

219 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト各プラットフォームから産出された原油 天然ガスは 陸上処理施設を経由し 約 800km のパイプラインを通じてサハリン島南部のアニワ湾に面したプリゴロドノエにある製品製造 出荷施設に移送される 同施設は LNG プラントや原油輸出ターミナル 港等から成る LNG プラントはロシアで初めて建設されたもので プラント建設工事は日本の千代田化工建設 東洋エンジニアリング等からなるコンソーシアムが受注した 本プロジェクトには 三井物産及び三菱商事が出資しており 他の出資者とともに設立した Sakhalin Energy 社が 1993 年に予備調査権を取得し 1994 年にロシア政府との間に生産分与協定 (PSA) を締結した その後ロシア政府より開発計画が承認され 開発が進められたが 環境対策を求められたことで開発費用が増大し Piltun Astokhskoye B プラットフォーム 2005 年には 総事業費が当初の 100 億ドルから 200 億の外観ドルに倍増されることとなった そうしたさなか 2006 (Shell web サイトより ) 年 9 月 ロシア政府により環境アセスメントの不備を指摘され 開発中止命令が出された その後の交渉で 同年 12 月にロシアのガスプロム参画が決まり 2007 年 4 月にはサハリン エナジーの株式の約 50% の株を取得した 2007 年 4 月にサハリン エナジーの環境是正計画がロシア政府によって承認され 開発中止の危機は免れた プロジェクトの主要スケジュール 1984 年ルンスコエ鉱区発見 1986 年ピルトン アストフスコエ鉱区発見 1994 年 4 月 Sakhalin Energy 社設立 6 月 Sakhalin Energy とロシア政府間で PSA を締結 1998 年 9 月ピルトン アストフスコエ-A プラットフォームを設置 1999 年 7 月ピルトン アストフスコエ鉱区における原油生産開始 2006 年 6 月ルンスコエ-A プラットフォーム設置 2007 年 7 月ピルトン アストフスコエ-B プラットフォームを設置 2009 年 1 月ルンスコエ-A プラットフォームから天然ガス生産開始 3 月 LNG 第 1 船出荷 web サイト / 参考資料 s-project.html

220 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )4 Goliat ( ゴリアテ ) プロジェクト 基本情報 所在地水深生産方式オペレータ出資者生産能力 ノルウェー Hammerfest 北東岸約 85km のバレンツ海 400m FPSO Eni Norge AS ( 以下 Eni) Eni:65%, Statoil:35%, 100,000 バレル / 日 主要寸法 円筒型 FPSO 直径 :107 m 高さ : 75 m Goliat プロジェクトの所在地 (Eni 社 web サイトより ) プロジェクトの概要ゴリアテプロジェクトは バレンツ海における最初の油田開発プロジェクトであり 2015 年時点で世界最北端の海洋開発プロジェクトである オペレータである Eni 社はイタリアの半国有の石油 ガス会社である 当該鉱区は 2000 年の最初の探査で発見された 2009 年 5 月にノルウェー政府により 海底生産設備と FPSO を含む開発計画が認可された 本プロジェクトの FPSO には ノルウェーの Sevan Marine 社が設計した円筒型浮体設備が採用され 韓国の Hyundai Heavy Industry で建造された 当該 FPSO は 10 万バレル / 日の生産能力を有し 100 万バレルの石油を貯蔵することができる また極地であるバレンツ海の厳しい自然環境に耐えうるよう設計されている 本 FPSO は 陸上からの供給電源と FPSO 内設置のガスタービン発電を組み合わせて電力が賄われており これによって CO2 排出量が削減された Goliat FPSO の Top Side と外観 (Eni 社 web サイトより ) 海底生産設備の設計 調達 施工については Aker Solutions が担当している ゴリアテにおける生産は 少なくとも 15 年は可能と見込まれている 216

221 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト ゴリアテ海底生産設備と FPSO のイメージ (Eni 社 web ページより ) プロジェクトの主要スケジュール 2000 年鉱区発見 2009 年 2 月 Sevan Marine 社提案の FPSO 採用決定 5 月ノルウェー政府により 開発計画認可取得 2010 年 1 月 Sevan Marine 社と契約締結 2 月 Hyundai Heavy Industry と FPSO の建造契約締結 2015 年 5 月 Goliat FPSO の設置完了 web サイト / 参考資料 ic/eni-in-the-arctic.pdf ort=

222 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )5 Asgard ( アスガルド ) プロジェクト基本情報 所在地ノルウェー海の Halten 堆水深 240~310m 生産方式 Asgard A:FPSO Asgard B: 半潜水式プラットフォーム Asgard C: 浮体式貯蔵設備 Subsea Compressor オペレータ Satoil 出資者 Petoro: 35.69% Statoil: 34.57% Eni Norge: 14.82% Total E&P Norge : 7.68% ExxonMobil :7.24% 処理能力 Subsea Compressor: 21million Sm 3 /d(11.5mw) 主要寸法 Subsea Compression station: m プロジェクトの所在地 (Statoil 社 web サイト ) プロジェクトの概要アスガルドプロジェクトは Midgard Smørbukk Smørbukk South の 3 つの鉱床を有し ノルウェー大陸棚において最大規模を誇る Midgard は Saga 社により 1981 年に確認され Smørbukk Smørbukk South は Statoil 社がそれぞれ 1984 年と 1985 年に発見した 本プロジェクトは 1995 年に開発権が取得されている 主要設備としては 石油生産船である Asgard A セミサブマーシーブル ガス コンデンセートプラットフォームである Asgard B コンデンセートの貯蔵タンカーである Asgard C がある 本プロジェクトは 2015 年に世界で初めてサブシー コンプレッサー (subsea compressor) を導入したことでも知られている 一般に 油ガス田からの生産が進むにつれ貯留層圧力が減退するため 石油 ガスの生産量は低下し 最終的には処理設備まで安定的に生産 輸送することができなくなる 貯留層に近い海底で昇圧処理することができれば より低い貯留層圧力となっても生産を継続することが可能となる より多くの石油 ガスを回収するためには 生産井のより近くで圧縮する必 Asgard A (FPSO)(Statoil 社 web サイト ) Asgard B ( 半潜水式プラットフォーム ) の外観 (Statoil 社 web サイト ) 218

223 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト要がある Statoil によると サブシー コンプレッサーの導入により 石油 ガスの回収率が飛躍的に向上し フィールドからの総回収量 ( 原油相当量 ) が 3 億バレル追加される見通しである サブシー コンプレッサーの開発プロジェクトは 2005 年に開始され Aker Solutions が設計 施工を担当した 同設備には 40 を超える新技術が採用されている 海底で気液分離され ガスはサブシー コンプレッサーにより 原油はポンプで圧縮された後 同一のパイプラインを通じて AsgardB に輸送され 更なる処理が行われる サブシー コンプレッサー (Statoil 社 web サイト ) フィールドレイアウト (Statoil 社 web サイト ) プロジェクトの主要スケジュール 1981~85 年 Midgard Smørbukk Smørbukk South の各鉱床発見 1999 年 5 月 Asgard A による生産開始 2000 年 10 月 AsgardB による生産開始 2005 年 サブシー コンプレッサーの開発プロジェクト開始 2010 年 12 月 Aker Solutions とサブシー コンプレッサーの設計 施工契約締結 2015 年 9 月 サブシー コンプレッサーの設置に成功 web サイト / 参考資料 sea%20compression%20technology.pdf px 219

224 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )6 Kangean ( カンゲアン ) プロジェクト基本情報 所在地水深生産方式オペレータ出資者処理能力 インドネシアバリ島北方沖約 90m FPU (Floating Production Unit) Kangean Energy Indonesia Ltd. JAPEX:25%, 三菱商事 :25%, PT Energi Mega Persada Tbk.: 50% 天然ガス :3 億立方フィート ( 原 主要寸法 油換算で日量約 5 万バレル )/ 日 Terang( テラン ) ガス田のみ BW Joko Tole (FPU) 全長 : m 幅 :42 m プロジェクトの所在地 ( 三菱商事 web サイトより ) プロジェクトの概要本プロジェクトでは TSB(Terang, Sirasun and Batur) ガス田群の一部であるテランガス田 Pagerungan( パゲルンガン ) ガス田 及び Pagerungan Utara( パゲルンガン ウタラ ) 油田から天然ガス 原油を生産している オペレータは インドネシアの PT Energi Mega Persada 社の子会社である Kangean Energy Indonesia Ltd. であり 日系では JAPEX 及び三菱商事がそれぞれ 25% の出資を行っている テランガス田は 1980 年 2 月に発見され 2012 年 5 月に商業生産が開始された 産出した天然ガスは海底生産施設を経て FPSO にて処理された後 東ジャワパイプラインを経由して東ジャワ州スラバヤ市近郊の国営電力会社や肥料工場などに販売されている 2015 年 8 月には 原油換算累計生産量が 5 千万バレルに達した 当該 FPSO は 2010 年 7 月 BW Offshore を中心としたコンソーシアムが受注した 新規に建造したものではなく Aframax サイズのタンカーを改造したものである テランガス田に配備されている FPU BW Joko Tole ( 三菱商事 web サイトより ) パゲルンガンガス田は 1985 年に発見され 220

225 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 1994 年に生産が開始された また 2011 年 1 月には パゲルンガン ウタラ油田で原油の生産が始まった 同油田で生産される原油は FPSO を利用し 処理 出荷される 同油田では Berlian Laju Tanker 社の小型 FPSO が採用されている 今後は TSB 鉱区の Sirasun( シラスン ) 及び Batur( バトゥール ) ガス田についても 商業生産に向け開発が進められる プロジェクトの主要スケジュール 1980 年テランガス田発見 1985 年パゲルンガンガス田発見 1994 年パゲルンガンガス田での商業生産開始 2010 年 1 月テランガス田開発作業に着手 2011 年 1 月パゲルンガン ウタラ油田で原油の生産開始 2012 年 5 月テランガス田商業生産開始 web サイト / 参考資料 s-field-offshore-bali-indonesia/ 221

226 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )7 Snohvit ( スノービット ) プロジェクト基本情報 所在地 Hammerfest( ノルウェー ) より 140km 北西沖のバレンツ海水深 250~345m 生産方式陸上 LNG プラント海底生産設備オペレータ Statoil 出資者 Statoil: 33.53% Petoro:30% TotalFinaElf: 18.4% Gaz de France: 12% Amerada Hess: 3.26% RWE Dea: 2.81% 生産能力 LNG 430 万トン / 年コンデンセート 74.7 万トン / 年 LPG 24.7 万トン / 年主要寸法 スノービットガス田の所在地 (Statoil 社 web サイトより ) プロジェクトの概要スノービットガス田は 1984 年にノルウェー北部のバレンツ海で発見された 欧州初の LNG プロジェクトである Snohvit は ノルウェー語で snow white を意味する 世界最北の海洋ガス田である 本プロジェクトは 2002 年 3 月に認可され 2007 年 9 月に生産が開始された スノービットガス田は 北緯 70 度 ( アラスカ北方の氷海と同じ緯度 ) に位置し バレンツ海の厳しい気象条件に晒されている 当該海域が氷に閉ざされることはないが 冬季には強い風波が生じるため 生産設備は海面の状況に左右されない海底にあり 陸上から遠隔操作されている 天然ガスは Hammerfest 近くの Melkoya という小さい島にある LNG プラントまで 143km の長さのパイプラインで運ばれている 混相流のパイプラインとしては 世界最長の長さである 同プラントで処理された LNG は LNG タンカーに積み出しされ 欧州や米国向け スノービットの全体像イメージ (Statoil 社資料より ) 222

227 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトに輸出される LNG タンカーの運航は 川崎汽船 商船三井が担っている スノービットガス田は CCS(Carbon Dioxide Capture & Storage) 技術が採用されていることでも注目されている CCS とは火力発電所や製鉄所 ガス 油田等の大規模 CO 2 排出源で発生する CO2 を分離 回収して 圧入設備までパイプライン等で輸送し 石油掘削 天然ガス地下貯蔵等で蓄積された既存技術を応用して 地中の帯水層等に貯留する技術である 陸上のプラントでガスから分離された CO 2 は ガス田までパイプラインで運ばれ 海底に注入 貯留されている このため スノービットガス田には 8 つの生産井の他に 一つの CO2 圧入井が備えられている スノービットガス田における CCS は 2008 年 4 月に開始された 貯留される CO2 は 年間 70 万トン ( 日量 1900 トン ) とされる プロジェクトの主要スケジュール 1984 年スノービット油ガス田発見 2002 年 3 月プロジェクト計画認可 2007 年 9 月商業生産開始 2008 年 4 月 CCS 導入 web サイト / 参考資料 ryinthenorth.aspx?redirectshorturl=http%3a%2f%2fwww.statoil.com%2fsnohvit n%c2%bfvitprojects_session3.pdf argas.pdf 223

228 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )8 Helang ( ヘラン ) プロジェクト基本情報所在地マレーシア Sarawak 沖水深約 90m 生産方式ジャケット式オペレータ JXマレーシア石油開発 ( 株主は JX 石油開発 (78.7%) INPEX (15.0%) 三菱商事 (6.3%)) 出資者 JXマレーシア石油開発 :75% ペトロナス チャリガリ :25.0% 生産能力天然ガス :250 MMscfd コンデンセート :10,000 bpd 主要寸法 プロジェクトの概要 ヘランガス田の所在地 (INPEX 社 web サイトより ) ヘランガス田は 新日本石油開発 (2010 年 7 月ジャパンエナジー石油開発に経営統合 JX 石油開発として発足 ) が初めてオペレータとして手掛けたプロジェクトである 1999 年に三菱商事が 2000 年に帝国石油 ( 当時 現 INPEX) が出資し 本プロジェクトに参画している 1987 年に探鉱権益を取得し 1990 年に同ガス田発見に至った 当初は原油を求めての掘削であった ヘランガス田から産出される天然ガスは 海底のパイプラインを経由して Bintulu( ビンツル ) にある MLNG-Tiga 社の陸上液化プラントに送られて処理される ヘランガス田発見当初は 既存の MLNG-Dua 社に天然ガス買い取りを打診したが叶わなかった その後 1992 年に Shell をオペレータとする Jintan( ジンタン ) ガス田が 隣接する鉱区に発見されたことにより ペトロナス Shell 等と合意に至り 1995 年に両ガス田から供給される天然ガスの液化等を担う MLNG-Tiga 社が発足した MLNG-Tiga のプラントは 既存の MLNG-Satu MLNG-Dua と同じ敷地内に建設されている 洋上プラットフォーム (INPEX 社資料より ) 224

229 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 生産設備は マレーシアでは初めて掘削 生産 居住設備一体の全搭載型プラットフォームを採用した 大規模なプラットフォームとなったため マレーシアでは初めて ジャケットとプラットフォームを分離建設し まずジャケットを海底面に設置 その後プラットフォームを設置するというフロートオーバー工法が採られた 当該工事は マレーシアの国策により 国内企業である Malaysia Shipyard & Engineering(MSE) 社 ( 当時 現 Malaysia Marine and Heavy Engineering (MMHE) 社 ) が担当した 陸上の LNG プラントは 既存プラントと同様に Air Products & Chemicals Inc. (APCI) の開発した APCI プロセスを採用し EPC コントラクターとしては 日揮とマレーシアの KBR 社の連合が選定された ヘランガス田は 1990 年の発見以来 当初プロジェクトに参画していた Occidental 社の脱退 1997 年のアジア経済危機のあおりを受けた LNG 販売活動の不調など様々な困難を乗り越え 1999 年に計画承認 2000 年 12 月に開発開始 2003 年 11 月に商業生産が開始された プロジェクトの主要スケジュール 1990 年 11 月ヘランガス田発見 洋上プラットフォーム (INPEX 社資料より ) 1992 年ジンタンガス田発見 1995 年 MLNG-Tiga 社発足 1999 年計画承認 2000 年 12 月開発へ移行 2003 年 11 月 MLNG-Tiga への天然ガス供給開始 web サイト / 参考資料

230 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )9 Knarr ( クナル ) プロジェクト基本情報所在地ノルウェー沖北海水深 400m 生産方式 FPSO オペレータ BG Norge (Teekay より定期傭船 ) 出資者 Idemitsu Petroleum Norge: 25% BG Norge: 45% Wintershall Norge: 20% RWE Dea Norge:10% 生産能力石油 :63,000 バレル / 日 主要寸法 全長 :256.4m 幅 :48.0m クナル油田の所在地 ( 出光興産 web サイトより ) プロジェクトの概要クナル油田は 2008 年にクナル構造で発見された オペレータはノルウェーの BG Norge で 日本の出光興産の現地子会社 (Idemitsu Petroleum Norge) も出資している 2011 年には 4km 離れた西クナル構造でも油ガスの胚胎を確認し 両構造を開発 生産している クナル油田では サブシー テンプレートが設置され 複数のテンプレートから石油が FPSO に集められる この FPSO は 800,000 バレルの原油が貯蔵でき 100 人を収容できる宿泊設備が備わっている また タレットは 荒天に備え 船体が 360 回頭できるようになっている Knarr FPSO 外観 (RWE Dea Norge 社 web サイトより ) クナル油田で産出した原油は FPSO での処理後 シャトルタンカーで各地に向け出荷される 天然ガスについては 専用のパイプラインを通って 陸上の処理施設に送出される 本 FPSO Petrojarl Kunarr の設計 調達 施工については カナダの海運大手 Teekay が受注した 建造は韓国の Samsung Heavy Industries で行われた Knarr FPSO サブシーシステムイメージ (RWE Dea Norge 社 web サイトより ) サブシー テンプレート等の海底生産設備については 米国の FMC Technologies が受注し 226

231 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトた また 本プロジェクトの 45km に渡るフローラインは 海中でのエンジニアリングと建設を主要事業とする Subsea 7 社が設計 製造を受注した プロジェクトの主要スケジュール 2008 年 7 月クナル油田発見 2011 年 6 月計画承認 2015 年 3 月商業生産開始 web サイト / 参考資料

232 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )10 Zakum ( ザクム ) プロジェクト 基本情報 所在地 水深 アブダビ市北西約 80km 沖合のアラ ビア湾 5~15m 生産方式 ジャケット式 オペレータ Lower Zakum ( 下部ザクム ): Abu Dhabi Marine Operating Co.(ADMA-OPCO) Upper Zakum ( 上部ザクム ): Zakum Development Co. (ZADCO) いずれも下記出資者から成る 出資者 下部ザクム ADNOC :60% BP: 14 2/3% TOTAL :13 1/3% JODCO: 12% 上部ザクム ADNOC:60% ExxonMobil: 28% JODCO: 12% 生産能力 下部ザクム :30 万バレル / 日 上部ザクム :55 万バレル / 日 主要寸法 プロジェクトの概要 ザクム油田の所在地 (INPEX web ページより ) ザクム油田が発見されたのは 1963 年であり 下部油層 ( 下部ザクム ) は 1967 年 上部油層 ( 上部ザクム ) は 1982 年に生産が開始された 操業を担当するADMA-OPCO ZADCOともに ADNOC( アブダビ国営石油会社 ) と国際石油企業の共同操業形態をとっている 日本企業では 1973 年に国内主要石油開発会社 9 社出資して設立した JODCO( ジャパン石油開発 2004 年に INPEX が 100% 子会社化 ) が 海外石油開発から権益を継承し 事業に参画している ザクム油田では 油圧維持のための方策が講じられており 下部ザクムでは 1978 年から水攻法 2005 年から頂部ガス圧入が開始された 下部ザクムの権益を有する ADMA-OPCO では 新規の油田開発を含む増産計画が進められているが 2018 年に権益更改が予定されており 参加企業 下部ザクムの概要 (JODCO 社 web ページより ) 228

233 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトにとっては 権益を失った場合 開発投資に見合ったリターンを得られないまま撤退しなければならないというリスクを抱えているため 増産プロジェクトが遅延する可能性が指摘されている ZADCO 操業油田でも 油層圧維持のための方策が採られており 上部ザクム油田に対しては 1984 年から水攻法が実施されている また ADNOC の指示の下 生産能力を従来の 55 万バレル / 日から 2017 年までに 75 万バレル / 日に増強する UZ750 プロジェクトが進行中である 能力増強を実現するため 既存のサテライトプラットフォームに加え 四つの人工島を建設し そこから大偏距掘削をする開発コンセプトが採用されている 偏距 ( 坑井掘削位置から坑底ターゲットの水平距離 ) を増加させることにより 開発に要するプラットフォーム数の削減 井戸数の最適化など開発コストを削減できる 上部ザクムの権益については 2013 年 茂木経済産業相 ( 当時 ) のアブダビ訪問の際に 利権契約が 2041 年まで 15 年間延長されることになった 上部ザクムの概要 (JODCO 社 web ページより ) プロジェクトの主要スケジュール 1963 年 ザクム油田発見 1967 年 下部ザクムにおける生産開始 1982 年 上部ザクムにおける生産開始 web サイト / 参考資料 前田高行 :( ニュース解説 ) 石油 ガス開発で深まる日本とアブダビの重層的関係 t&log=0 猪原渉 (JOGMEC 調査部 ): アブダビの石油天然ガス開発をめぐる現況 - 重層的パートナーシップ の構築に JOGMEC も貢献 石油天然ガスレビュー Vol.47, No.6 229

234 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )11 Magnolia ( マグノリア ) プロジェクト基本情報 所在地水深生産方式オペレータ出資者生産能力主要寸法 米国ルイジアナ州キャメロンから 180 海里南方沖 1,433 m / 4,729 ft Tension Leg Platform (TLP) ConocoPhillips ConocoPhillips:75% Devon Energy:25% 石油 :5 万バレル / 日天然ガス :150 million standard cubic feet/day(420 万標準立法メートル / 日 ) 4,700 フィート (1,433m) の大水深プラットフォーム Magnolia field の所在地 (offshore technology web サイトより ) プロジェクトの概要 マグノリア油田はメキシコ湾沖の Garden Bank と呼ばれるルイジアナ州キャメロンから南方に約 180mile(290km) に位置している 4 億ドルをかけた 5 カ年計画の深海掘削プロジェクトで 1999 年に発見された 評価井を掘削した結果 合計層厚 400 フィートを超えるオイルサンド層を確認し 推定 1.5 億バレル以上に相当する原油を生産可能な油田と評価された (geology.comweb サイトより ) マグノリア油田の生産プラットフォームである TLP は 水深 4,700ft( 約 1,430m) に設置されており 2015 年時点においては最も大水深に設置された TLP である 水面上プラットフォームの最高部から生産井の底までは, 実に 22,000ft (6,706m) に達する ヒューストンにある ABB Lumus Global Americas が本プロジェクトにおける設計 調達 プロジェクトマネージメント さらに TLP 本体とその付帯システムの建造工事を一手に担っており TLP 自体は韓国の Samsung Heavy Industries にて建造された 最新の軽重量化設計技術 (state-of-the-art lightweight design technology) を取り入れ コスト削減と生産作業の柔軟性を持 (offshore technology.comweb サイトより ) TLP プラットフォーム 230

235 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトたせたものとなっている マグノリア TLP は周辺の油ガス田生産施設から 30mile(48km) 離れているため 今後の東南 Garden Bank 海域での油ガス田開発の拠点としての利用が可能である 本 TLP で生産された原油 ガスは 2 本のパイプラインで 同じく Garden Bank 海域内の 50mile(80km) 離れた Shell の操業するハブプラットフォームに送出され 更にそこから陸上へと繋がるパイプライン網へと送出される TLP (geology.com web サイトより ) 本油田を掘削した Conoco 社の深海掘削船 Deepwater Pathfinder (offshore technology.comweb サイトより ) プロジェクトの主要スケジュール 1999 年 5 月 石油 天然ガス田発見 2000 年 8 月 評価井掘削開始 2001 年 11 月 評価井掘削成功 2004 年 1 月 プラットフォーム建設終了 生産開始 2006 年 第一次油田開発終了 定常生産フェーズ移行 web サイト / 参考資料 pport=1 231

236 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 世界のプロジェクト ( 海洋石油 天然ガス )12 Guanabara Bay( グアナバラ湾 ) における FSRU Experience 基本情報所在地ブラジル リオデジャネイロコヴェルナドール島沖水深 N/A 設備方式 FSRU( 浮体式貯蔵再ガス化設備 ) オペレータ Petrobras 保有者 Excelerate Energy 用船者 Petrobras 設備能力貯蔵タンク量 : 173,400 立法メートル再ガス化能力 : 2,250 万立法メートル / 日主要寸法全長 :294.5m 全幅 :46.4m 載貨重量 :84,700 トン FRSU の所在地 (excelerateenergy.com サイトより ) プロジェクトの概要ブラジルの Guanabara Bay LNG Import Terminal にある Experience は 2014 年に稼働を開始した 世界最大 ( 当時 ) の FSRU(Floating Storage and Regasification Unit, 浮体式貯蔵再ガス化設備 ) である FSRU は LNG を貯蔵 再ガス化するために 洋上または岸壁に設置され LNG 受入設備として使用される Experience は ブラジル国内の LNG 需要の高まりを受け 2009 年から稼働していた同じ FSRU である Golar Winter をさらに大型化したものである その Golar Winter は LNG 運搬船を FSRU に改造したもので 現在は別の浮体式 LNG ターミナルに移動され 稼働を続けている FSRU( Experience 号 ) (excelerateenergy.com サイトより ) Experience は Excelerate Energy 社が提供する FRSU の 9 番船で Petrobras 社が契約する FSRU としては 3 隻目となる ブラジルの国営企業 Petrobras 社が Excelerate Energy 社と 15 年の長期用船契約し 韓国の Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering s (DSME) Okpo 造船所で建造された FSRU とし 232 Guanabara Bay LNG Import ターミナル (excelerateenergy web サイトより )

237 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトて利用する以外に LNG 運搬船としての利用も可能である 液化天然ガスを陸上へ輸送するための再ガス化装置には Moss 型 LNG 船を開発した Moss 社 ( 現 Moss Maritime 社 ) の 中間加熱媒体を使用しない直接熱交換式の Moss LNG Regasification System を採用している Experience が係留されている浮体式 LNG 受入基地の Guanabara Bay LNG Import Terminal は 当時のブラジル国内の再ガス化量の約半分を占めており 陸上の電力施設にガスを移送するために 15km のパイプラインが敷かれている Moss LNG Regasification System (mossmaritime web サイトより ) Experience を建造した Excelerate Energy 社は 2003 年に設立後 LNG の輸送および浮体式 LNG 基地の開発と運営を行っており 2005 年の Gulf Gateway プロジェクトにおいて 世界初の浮体式 LNG 受入基地を開発した その後 この LNG 受入基地はシェールガス生産増加の流れを受けて 2012 年に操業停止したが Guanabara Bay LNG Import Terminal のあるブラジルの他に イスラエル プエルトリコ ドバイにおける浮体式 LNG 受入基地で同社 FSRU が採用されている プロジェクトの主要スケジュール 2007 年 12 月 Guanabara Bay LNG Import Terminal 建設開始 2009 年 1 月 Guanabara Bay LNG Import Terminal 建設終了 2009 年 4 月 Golar Winter 就航 2014 年 1 月 FSRU Experience 就航 2014 年 5 月 Experience でのターミナル業務開始 web サイト / 参考資料 ( グローバルに拡大するFSU FSRU( 浮体式 LNG 受入基地 ) 永井一聡 ) 233

238 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 234

239 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 7.2 海洋再生可能エネルギー開発プロジェクト ( 洋上風力発電 ) 1 London Array ( ロンドン アレイ ) 洋上ウィンドファーム世界最大の洋上風力発電ファーム (2015 年時点 ) 2 Middelgrundens( ミドルグロン ) 洋上ウィンドファーム地元住民の出資によるデンマーク初の洋上風力発電プロジェクト 3 Samso( サムソ ) 洋上ウィンドファーム 100% 再生可能エネルギーを実現した島の洋上ウィンドファーム 4 Alpha Ventus ( アルファ ヴェンタス ) 洋上ウィンドファーム国を挙げて実現したドイツ初の洋上風力発電プロジェクト 235

240 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋再生可能エネルギー 洋上風力発電 )1 London Array ( ロンドン アレイ ) 洋上ウィンドファーム基本情報 所在地事業目的発電形式事業者 テームズ河口 20km の沖合商業発電着床式洋上風力発電 London Array Limited 出資者 : デンマークの DONG Energy 社 (25%) ドイツの E.ON 社 (30%) アラブ首長国連邦の Masdar 社 (20%) カナダの Caisse 社 (25%) 総発電量 630MW( 世界最大 ) 設備概要 3.6MW 着底式風力発電 175 基洋上変電施設 2 陸上変電施設 London Array プロジェクトの所在地 (London Arrayweb サイトより ) プロジェクトの概要 ロンドン アレイプロジェクトは 当該海域が洋上風力発電ファームに適しているとの環境調査結果を受け 2001 年にスタートした 本プロジェクトは 世界最大の洋上風力発電ファームプロジェクトである プロジェクト開始から 2 年が経過した 2003 年 London Array 社と Crown Estate( 英国政府の管理下にある不動産管理機関 ) との間に契約が締結され ウィンドファームサイトと海底ケーブル敷設エリアを 50 年間のリースできることとなった その後 2009 年 5 月に プロジェクトのフェーズ1に対する正式な認可が出され 同年 Cleve Hill substation( 陸上の変電施設 ) の建設工事が開始された 2011 年には 洋上における建設工事が開始され 2012 年 1 月に最初の風車が設置されて発電が開始された 同年 12 月までに 175 基全ての風車の設置が完了し 主要な工事を終えた 工事のピーク時には 約 1,000 人の人員と 60 隻の船舶が本プロジェクトに携わり 総計で約 5,500 万時間の労働時間が費やされた 2013 年 4 月 ロンドン アレイは商業運転を開始し 7 月には英国のキャメロン首相も出席し 236 洋上ウィンドファーム (London Arrayweb サイトより ) 洋上風力変電施設 (London Arrayweb サイトより )

241 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト て 操業開始式典を行った なお 元々 DONG Energy 社 E.ON 社 Shell Wind Power 社が同率シェアの株主であったが Shell Wind Power 社は 2008 年 米国での陸上風力プロジェクトに注力するという理由でプロジェクトから撤退した その結果 50% の株主になった E.ON 社は 本プロジェクトに強い関心を抱いていた Masdar 社に自社の 40% の株式を譲渡した E.ON 社は当時 ガス価格の低下 風力タービン価格の高騰により プロジェクトの採算性を疑問視していたが 英国政府が洋上風力単位発電量当りの発行証書数を増額するという案を示したことから 本プロジェクトに最終的に留まる決定をしたと見られている 後に カナダの投資ファンドである Caisse 社が参画した 風車設置工事の様子 (London Arrayweb サイトより ) ロンドン アレイプロジェクトは 更に 166 基の風車を導入し 発電容量を 1,000MW まで増やすフェーズ 2 が計画されていたが 野鳥保護の観点から問題が提起され 2014 年 2 月に計画が取り消された プロジェクトの主要スケジュール 2001 年 プロジェクト開始 2009 年 陸上の変電所の建設工事の開始 2011 年 洋上の建設工事の開始 2012 年 洋上風車設置 2013 年 商業発電開始 web サイト / 参考資料 ロンドン アレイホームページ 日本エネルギー経済研究所 : 世界最大の洋上風力ファーム London Array が操業開始,2013 年 8 月 237

242 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト 世界のプロジェクト ( 海洋再生可能エネルギー 洋上風力 )2 Middelgrundens( ミドルグロン ) 洋上ウィンドファーム 基本情報 所在地 水深 コペンハーゲン港から 3km の沖合 2m-6m 面積 10,000m 2 発電形態 タービン 発電容量 着床式洋上風力発電 20 基 (2MW) 40MW 株主ミドルグロン風力協同組合 :50% Copenhagen Environment and Energy Office / KMEK:50% Middelgrundens プロジェクトの所在地 (Middelgrundensweb サイトより ) プロジェクトの概要ミドルグロン風力発電所は 2000 年末 コペンハーゲン港から3kmの沖合で操業を開始した 1 基につき2MWの風力タービン 20 基を緩やかな曲線上に配置している デンマークにおける初の洋上プロジェクトである 発電能力は 年間 90GW 近くに達し これは コペンハーゲン市内の消費電力の約 3% を賄うことになり 32,000 世帯分にあたる ミドルグロン風力発電所は 地元のNPO コペンハーゲン環境 エネルギー事務所 と組合員約 8,550 人を有する ミドルグロン風力協同組合 により 50%(10 基 ) ずつ所有されている 同協同組合員は 風力発電所の建設に出資することでその所有権を得られるほか 出資額に応じて生産される電力を享受することができる 地域住民の投資によって風力発電所を所有するという ローカルオーナーシップ を採用することで 成功した事例と言える 洋上ウィンドファーム (Middelgrundensweb サイトより ) 本プロジェクトの構想は コペンハーゲン住民より洋上ウィンドファーム構想として 1993 年に出され 1996 年 9 月に地域住民から 組合形式によるさらに大きな風力発電建設の計画案が正式的に出された その後 建設許可に時間がか 238

243 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトかり 建造計画を提出してから許可を得たのは 1999 年 12 月であった また 第一回の公聴会で 風力タービン 27 基を 3 列に配置することを発表したが 次の公聴会で 景観に配慮することに重点を置き 20 基を曲線上に一列に配置することを決めた 2000 年 洋上の建設を始め 同年 12 月に 発電を開始したが 2001 年 3 月に本格生産を開始した しかし 2002 年 海底ケーブルを含めて三つの事故を起こった その原因は 開閉装置と変圧器の問題であり 九つの変圧器が短絡したが 現在 通常通り稼働している 風力タービンの構造 (Middelgrunden 洋上風力フォームのタービン ) (Jens H. M. Larsen Hans Christian Soerensen:Experiences from Middelgrunden 40 MW Offshore Wind Farm, より ) プロジェクトの主要スケジュール 1996 年 9 月建造計画の申請 1999 年 12 月建造計画の許可 2000 年 8 月土台設置 2000 年 11 月風力タービンのインストール 2000 年 12 月第一回発電の開始 2001 年 3 月正式的に生産開始 web サイト / 参考資料 4C offshore:middelgrunden Middelgrundens Vindmøllelaug 京都府議会 : ミドルグロン風力発電所 クリスチャンスハウン環境ポイント The Middelgrunden Offshore Wind Farm Jens H. M. Larsen Hans Christian Soerensen:Experiences from Middelgrunden 40 MW Offshore Wind Farm,Copenhagen Offshore Wind 26-28,October

244 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋再生可能エネルギー 洋上風力 )3 Samso( サムソ ) 洋上ウィンドファーム基本情報 所在地水深面積発電形態タービン発電容量 サムソ島以南 3.5km の沖合 10m-13m - 着床式洋上風力発電 10 基 (2.3MW) 23MW 株主 Samso 島自治体 :50% Difko A/S 社 :50% Samso プロジェクトの所在地 (DANISH WIND INDUSTRY ASSOCIATIONweb サイトより ) プロジェクトの概要サムソ洋上風力フォームはデンマークのサムソ島以南 3.5km の沖合に位置している 本プロジェクトは1 基につき 2.3MWの風力タービン 10 基で構成され 再生可能エネルギーとして生産された電力が島の住民の使用に供される 本ウィンドファームは サムソ島の自治体と Difko A/S 社は 50% ずつの株を所有しており オペレーターである Samso Havvind 社が ウィンドファームの開発 操業にあたっている サムソ島は 面積 114km 2 人口約 4,000 人の小島である サムソ島は 1997 年にデンマーク政府の再生可能エネルギーモデル地域に選ばれた その後 洋上風力発電のみならず 陸上風力発電 太陽光 バイオマス発電等の導入も進め 現在全てのエネルギー供給を再生可能エネルギーでまかなっている 洋上ウィンドファーム (offshore WIND web サイトより ) 2012 年において 生産量が 85.27GWh となっており サムソ洋上風力フォームの導入によって 毎年 二酸化炭素排出量が 32,922 トンの削減効果が得られる 本プロジェクトは 1999 年 6 月に洋上風力フォームの建設計画を申請し 2001 年 4 月にプロ 240

245 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクトジェクトの建設計画の許可を取得した 2002 年 10 月に 洋上の建設を開始した まず 2002 年 10 月 4 日に 基礎の設置を始め そして 同年 11 月 10 日にタービンの設置を開始した 2003 年 1 月に 第一回の生産は始まり 同年 2 月 28 日に 生産は正式的に開始した 2015 年 11 月 28 日に 一つのタービンの先端からナセルと羽根が離脱した この影響により 他の九つのタービンは生産が一時停止したが 12 月 4 日に稼働を再開した 建設工事の風景 (Samso Havvindweb サイトより ) プロジェクトの主要スケジュール 1999 年 6 月 建造計画の申請 2001 年 4 月 建設許可の取得 2002 年 10 月建設開始 2003 年 1 月 第一回の生産 2003 年 2 月 生産開始 web サイト / 参考資料 4C offshore :Samsø offshore Wind Farm LORC KNOWLEDGE:Samso Offshore Wind Farm offshore WIND biz:samsø Wind Farm Back in Action Danish Energy Authority:Offshore Wind Power- Danish Experiences and Solutions

246 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト世界のプロジェクト ( 海洋再生可能エネルギー 洋上風力 )4 Alpha Ventus( アルファ ヴェンタス ) 洋上ウィンドファーム基本情報所在地ボルクム島から 45km の沖合水深 30m 面積 4 km 2 発電形態着床式洋上風力発電タービン 12 基 (5MW) 発電容量 60MW 株主 EWE 社 :47.5% E.ON 社 :26.25% Vattenfall 社 :26.25% プロジェクトの概要 ドイツ北部の北海にあるボルクム島から 45km の沖合に ドイツの最初の洋上ウィンドファームが落成した 本プロジェクトは1 基につき 5MW の風力タービン 12 基で構成され 年間 220GWh の発電が行なわれる この発電量は およそ 5 万世帯の電力供給量にあたる 発電される風車からの電力は 60km の長さの 11 万ボルト海底高圧線で北ドイツ沿岸部を走る電力系統に接続される Alpha Ventus プロジェクトの所在地 (Alpha Ventus ホームページより ) Alpha Ventus ウィンドファームの構想は 2001 年より建設許可を取得したが 投資資金が莫大になることかつ建設の際に技術的に解決すべき問題点が多いことから実現は先延ばしにされてきた しかし 2006 年末に政府が 洋上風力発電の推進ためのインフラ整備の加速法案 を採択し 国を挙げて推進されてきた成果が今ようやく実った 洋上ウィンドファーム (Adwen 社のホームページより ) Alpha Ventus ウィンドファームを建設するために 株主となった EWE 社 E.ON 社と Vattenfall 社は合計出資 2.5 億ユーロを拠出し ドイツの政府機関である BMU(German Federal Ministry for the Environment, Nature, Conservation and 242

247 海洋開発産業概論教材第七章世界のプロジェクト Nuclear Safety) は 3,000 万ユーロの基金を提供した また 株主三社は DOTI 社を設立し オペレーターとしてウィンドファームの経営やメンテナンスをしている 2008 年 洋上の建設工事をするとともに 一部の発電と電力供給を始めた 2010 年 4 月に 落成式典を行い 完全操業開始した 年 Alpha Ventus ウィンドファームの毎年平均発電量は約 GWh となっており この発電量はおよそ 7.1 万世帯の電力供給量にあたる (4C offshore web サイトより ) 洋上風力発電所 プロジェクトの主要スケジュール 2001 年 11 月建造計画の許可 2007 年 8 月建設工事の開始 2008 年 7 月一部の発電と電力供給 2010 年 4 月落成式典の開催と完全操業開始 web サイト / 参考資料 Alpha Ventus Offshore Wind Farm Alpha Ventus Offshore Wind Farm alpha ventus - the first German offshore wind farm ドイツ初の本格的なオフショア ウインドファーム alpha ventus が完全操業開始 243

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