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おきみちりゅうとう
5 years ago
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1 平成 23 年 11 月 19 日知財契約の種類と注意点 ~ 契約書の読み方作り方日本弁理士会東海支部知的財産権支援キャラバン隊弁理士弁護士加藤光宏 1

共同開発に関係する契約 2 契約の成立契約書の必要性 3 契約の意義 4 契約の拘束力 5 契約の解釈 6

共同開発に関係する契約レターオブインテント共同出願契約研究成果の取扱いに関する覚書特許を受ける権利譲渡契約研究

2 共同開発に関係する契約 2 契約の成立契約書の必要性 3 契約の意義 4 契約の拘束力 5 契約の解釈 6 契約書があれば完璧か? 7 知財契約と独占禁止法の関係 8 契約書の形式 9 契約書のドラフティング 10 気をつけたい表現あれこれ 11 2 A 社共同研究の打診技術情報の開示 B 社秘密保持契約 (NDA) 有休物援受契約 (MTA) オプション契約共同開発に関係する契約レターオブインテント共同出願契約研究成果の取扱いに関する覚書特許を受ける権利譲渡契約研究開発実用化フィージビリティスタディ契約共同研究開発契約開発委託契約技術援助契約オプション契約ライセンス契約特許ノウハウ譲渡契約合弁事業設立契約 A 社 D 社ライセンス等 C 社業務委託契約秘密保持契約 (NDA) 実用化特許出願権利化 3

3 契約の成立契約書の必要性契約は申込みと承諾 ( 合意 ) によって成立する一部の契約 ( 保証契約など ) を除き口約束でも契約成立申込み ( 売ってください ) 承諾 ( 売りましょう ) 売買契約成立通常はその場で本を渡し代金を支払うので即時に契約終了 BOOK 契約成立の判断もややこしい!? それ下さい時価あいよ 3,000 円ね 1000 はい 3,000 円! 価格の合意もできているのはどの時点? 契約書はなぜ作成するのか? 1. 合意したという事実内容の明確化契約してから時間が経つと言った / 言わないの紛争になる内容を文章化しておかないと相互の認識が異なることがある 2. 責任追及するための証拠となる口約束を立証するのは難しい冗談冗談お前田のサインか! 100 万円で買うよ! ああいいよ! 合意は成立したか? 本当は自分で書いたニセモノ 4 契約の意義契約と法律の関係法強行規定 ( 当事者の合意でも排除できない ) 例 ) 公序良俗違反職務発明の対価 (?) 律任意規定 ( 当事者の合意で異なる定めが可能 ) 法律と異なる契約は無効契約の意義契約で法律の内容を具体化法律で定めて例 ) 取引の目的物代価支払方法などいない事項について取極め契約で法律と異なる規定 ( 特約条項 ) 例 ) 当事者の責任軽減など契約自由の原則はあるが何でも取極めできる訳ではない 1 合意内容が可能であることタイムマシンの売買契約 2 合意内容が確定していること支払えるようになったら代金を払う 3 合意内容が適法であること代金の支払いに代えて覚せい剤をグラム渡す 4 合意内容が社会的妥当性のあること違反駐車には金 10 万円の罰金を請求します 5

4 契約の拘束力契約の成立により法的義務が発生する契約成立後にこれでは困るやっぱりやめた / 変えてくれと言っても通らない契約違反 ( 債務不履行 ) は損害賠償や契約解除の原因となる合意解除 ( 解約 ) 内容の変更 ( 更改 ) には新たな合意が必要となる契約終了後も責任が残る場合がある欠陥商品を売買した場合瑕疵 ( かし ) 担保責任秘密情報を授受した場合秘密保持義務など 6 契約書の表示 ( 記載内容 ) を中心に解釈する ( 表示主義 ) そんなつもりじゃなかったのにと言っても契約書に書かれている以上仕方ない例 ) 迷惑をかけないからと言われたので保証人欄にサインしただけで保証人の責任など知らなかった保証人欄にサインがある以上本人の意思に関わらず保証人の責任を負うことになる記載内容の解釈には種々の事情が考慮される [ 判例 ] 東京地判平 H6 年度契約 ( 自動更新条項あり ) 申出がない場合には本契約は同一条件で期間満了の日から一年間更新されるものとし H8 年度契約 ( 自動更新条項なし ) 甲は特段の事由がない限り当該契約の更新を拒絶できないものとする裁判所の判断契約の解釈実施許諾を受けた業者は設備を備え人員を雇用するのだからこの契約はその性質上一年限りで終了することを予定した契約ではなく継続することを前提とした契約と解することができる事件の概要パチスロ機の特許権原告について実施許諾被告パチスロ機製造 H6 年度毎年更新 H8 年度 ~ H9 年度 H11 年被告から契約更新の申出なしパチスロ機製造は継続原告が被告を特許権侵害で提訴実施許諾が H9 年度以降も自動更新されているか否かが争点 7

5 契約書の効力が争われる事件もあるカツラ事件 Y 氏保証人事件カツラの代金を支払え注文した覚えはない! 仮契約しかしていない契約書があれば完璧か? 契約書 X 社事件の概要父が息子の借金の保証人として返済を迫られた契約書には保証人欄に自分 ( 父 ) の名前が記入され実印が押してあり印鑑証明も整っていた事件の概要 Y 氏が X 社を訪問しカツラの相談をした X 社はカツラの費用詳細打合せ作成に要する期間を説明 Y 氏は ( 仮契約のつもりで ) 契約書にサインその直後 Y 氏は米国に長期出張 (Y 氏と X 社は長期間連絡なし ) 年経過 X 社からカツラが完成した旨の連絡 Y 氏は正式注文した覚えがないとして受取拒絶保証人印印鑑証明印実印 8 知財契約と独占禁止法の関係独占禁止法違反にならないよう契約内容に注意特許権は独占権だが独占禁止法の適用が排除されている ( 独禁法 21 条 ) しかし権利の正当な行使と認められない行為には独占禁止法の適用があるどんな行為が独占禁止法違反となるのか? 公正取引委員会知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針 ( 平成 22 年 1 月 1 日 ) 参照 A 社ライセンサー仕入れ先の制限部品原材料 B 社ライセンスを拒絶 E 社特許持ちより C 社 D 社権利消滅した技術不要な技術にライセンス料請求販売価格の制限ライセンシー ( 新規参入 ) 製品 9

6 契約書の形式は原則自由であるが証拠力確保のための注意がある複数ページの契約書の場合一体性を確保する契約書契約書の形式署名, 記名押印について誰が署名等するか? 代理権を有している者収入印紙について契約の種類に応じて印紙税法で定められた額の収入印紙を貼る全ページ間に当事者全員の契印 ( 割印 ) を押す本契約書製テープ個人個人名個人事業者屋号 + 個人名商店法人代表取締役等の役職者社代表取締役住所は必要? 法律上は要求されないが相手を明確に特定するために記載した方が良い印紙には消印 ( 割印 ) を押す ( 全員でなくてもよい ) 印紙印紙は税務上の義務なので契約の効力とは無関係製本テープで製本しテープと本体の間に当事者全員の契印 ( 割印 ) を押す印鑑は実印でないと不可? 三文判でも構わないが証明力の点で実印の方が好ましいシャチハタは不可と解されている参考文献契約書の基本知識とつくり方小山内怜治著日本能率協会マネジメントセンター 10 契約書のドラフティング意識すること契約書作成有利な契約を狙うと失敗する自分にとって利益になる契約を考える自分の利益 = 相手の不利益とは限らない相手の意図を確認推察する不利な契約は回避する契約の落とし穴を探す現在はもちろん将来を見据える契約対象になる技術の展開を考える互譲の精神が重要自分の要求を押しつけるだけでは合意できない自分の利益 ( 目的 ) を維持しながら譲れる部分を考える単なる損得勘定ではダメ 1. 最初のドラフトは相手任せにしないチェックで落とし穴を見つけるのは難しい 2. シンプルなひな形をベースに作成過去の契約書の流用は避ける 3. 譲歩幅を持たせておく最初のドラフトで成立する可能性は低い 4. 矛盾する記載に注意単一条文内での矛盾条文間での矛盾 11

円を支払うものとする義務を弱く表現確認にすぎない金円を支払う執行可能な表現印鑑 ( 印影 ) 印章解除契約成立時からなかったものとなる ( 遡及効 ) 解約将来に向かって消滅する ( 将来効 ) 12 契約書の書式 13 各パート記載の注意 (1)~ 表題前文

7 気をつけたい表現あれこれ何気なく使う表現も意味の確認をしておいた方がよいからその他の, その他平成 23 年 4 月 1 日から同年 8 月 31 日まで含む含む平成 23 年 4 月 1 日から 7 日含まないで日数計算する平成 23 年 4 月 1 日から起算して 1 年含めて日数計算する A,B その他の X X に A,B が含まれる X A B A,B その他 X X に A,B が含まれない A B X 記名, 署名記名ゴム印, 印刷等も含む押印が必要署名直筆押印は無くてもよいものとする印鑑, 印章解除, 解約金円を支払うものとする義務を弱く表現確認にすぎない金円を支払う執行可能な表現印鑑 ( 印影 ) 印章解除契約成立時からなかったものとなる ( 遡及効 ) 解約将来に向かって消滅する ( 将来効 ) 12 契約書の書式 13 各パート記載の注意 (1)~ 表題前文 14 各パート記載の注意 (2)~ライセンスの許諾 15 各パート記載の注意 (3)~ロイヤルティ 16 各パート記載の注意 (4)~ 改良発明の取扱 17 各パート記載の注意 (5)~ 実施販売促進義務 18 各パート記載の注意 (6)~ 保証と責任 19 まとめ 20 13

8 契約書の書式特許権等実施許諾契約書 ( 以下甲という ) と ( 以下乙という ) とは以下に定める発明に関して本日次の条項によって実施許諾契約 ( 以下本契約という ) を締結する第 1 条甲は乙に対し次の発明について通常実施権を許諾する特許第号発明の名称 ***** 第 2 条甲は乙の同意を得ることなく本発明の実施を乙以外の者にも許諾できる第 3 条乙は甲に対し本契約の契約期間中に製品売上金額の % の金額を実施料として支払う : 第 * 条本契約に関する訴えは大阪地方裁判所を第一審の専属的管轄裁判所とする第 * 条本契約書は甲乙間の完全なる合意を記載し本契約締結以前のすべての書面口頭の合意または了解事項に優先する本契約の締結を証するため本契約書 2 通を作成し甲および乙がそれぞれ1 通を保管する平成年月日甲印乙印表題前文本体部分定義ライセンスの許諾技術指導ロイヤルティ改良発明の取り扱い販売促進契約期間と解約秘密保持保証と責任紛争処理完全なる合意 (Entire Agreement) 末尾文言署名 ( 記名押印 ) 14 各パート記載の注意 (1) 表題契約書覚書合意書など特に表題による法律効果に差違はない特許実施契約書秘密保持契約書など契約内容を簡潔に表示することが好ましい前文契約締結の目的背景意図などを書く契約の解釈時に参照される場合があるので契約内容に整合するように記載すること [ 判例 ] 東京地判昭原告着せかえ用人形の出願 (1)~(3) について被告に実施許諾被告権利化できると思って契約したのだから契約無効だ! 被告の主張を否定出願 (1)~(3) は権利化できなかった裁判所契約書の前文に原告が出願中であること被告が実施権を希望していることが書かれているから被告は事情を充分知っていたはずである 15

各パート記載の注意 (2) ライセンスの許諾何が許諾されているか明確に特定する許諾された権利は事業実施に十分か?( ライセンシー ) 将来のことを考える ~ 逃がさない与えすぎない!( ライセンサー ) ( 通常の条項例 ) 甲は乙に対し本件特許権について通常実施権を許諾するこれで良いか?

ビッグマーケットが生まれるかも知れないライセンサー全てロイヤルティの対象製品 A 製品 B 製品 C ライセンシー製品 A だけ製品 A 製品 A + 太陽電池急成長太陽光発電電卓用通常実施権を許諾これらの分野も許諾したことになるソーラーカー 16 ロイヤルティロイヤルティの種類イニシャルペイメント頭金各パート記載の注意 (3) Coffee Break

9 各パート記載の注意 (2) ライセンスの許諾何が許諾されているか明確に特定する許諾された権利は事業実施に十分か?( ライセンシー ) 将来のことを考える ~ 逃がさない与えすぎない!( ライセンサー ) ( 通常の条項例 ) 甲は乙に対し本件特許権について通常実施権を許諾するこれで良いか? 定義などで特許番号等で特定する出願中に予め実施許諾しておく ( 仮専用 / 通常実施権 ) も可能となった Coffee Break 専用実施権は設定 ( 特 77) 通常実施権は許諾 ( 特 78) 条文の用語に従う実施許諾の対象製品は? 将来の改良製品は? ビッグマーケットが生まれるかも知れないライセンサー全てロイヤルティの対象製品 A 製品 B 製品 C ライセンシー製品 A だけ製品 A 製品 A + 太陽電池急成長太陽光発電電卓用通常実施権を許諾これらの分野も許諾したことになるソーラーカー 16 ロイヤルティロイヤルティの種類イニシャルペイメント頭金各パート記載の注意 (3) Coffee Break ロイヤルティ実施許諾の代価特許料特許権者が特許庁に納付する特許権の維持費契約締結までのコストはここで回収しておくランニングロイヤルティーの収益はライセンシーの実施能力次第ランニングロイヤルティ売上基準 / 数量基準で繰り返し支払いミニマムロイヤルティ売上等に関係なく最低限支払うランニングロイヤルティランプサム一括払対象製品を明確にしておく改良製品も含まれるようにしておく独占的ライセンスでは必ず考慮すべしライセンシーが実施しないと通常のランニングロイヤルティは得られなくなってしまう実施しないときの解約権なども留保しておくことが望ましい契約期間にも要注意特許権消滅するまでノウハウ永久? 一定期間でロイヤルティの支払いを打ち切る ( ノウハウを買い取った扱い ) 侵害訴訟の和解などではランプサム原告さっさと利益を確定したい他の企業から特許を無効にされる前に片付けたい被告いつまでも関わっていたくない事業の報告監視が煩わしい 17

各パート記載の注意 (4) 改良発明の取扱ライセンシーが実施をする中で改良発明が生まれることがあるライセンサー特許権実施許諾ライセンシーできれば使いたい改良発明予め実施許諾中に条項を盛り込んでおく改良発明の報告義務通常実施権の許諾義務 ( グラントバック ) 専用実施権の設定義務 ( グラントバック ) 独占禁止法違反の可能性改良発明の譲渡義務 ( アサインバック ) 18

10 各パート記載の注意 (4) 改良発明の取扱ライセンシーが実施をする中で改良発明が生まれることがあるライセンサー特許権実施許諾ライセンシーできれば使いたい改良発明予め実施許諾中に条項を盛り込んでおく改良発明の報告義務通常実施権の許諾義務 ( グラントバック ) 専用実施権の設定義務 ( グラントバック ) 独占禁止法違反の可能性改良発明の譲渡義務 ( アサインバック ) 18 実施販売促進義務 [ 判例 ] 大阪地判昭実施許諾原告計算機の発明利益を分配ところが原告の図面未完成などの事情により契約から商品化まで 1 年以上かかった完成した商品は他社製品よりコスト性能で劣っていたライセンサー実施を確保するための条項実施開始時期実施数量広告費などの定め最低実施料の定め各パート記載の注意 (5) ランニングロイヤルティはライセンシーが実施しなければ収益無しではライセンシーには実施義務があるのか? 被告裁判所ライセンシー計算機を生産するはずだった製造販売を早急に実施するという条項ありすっかり生産意欲喪失契約違反にならない被告の早急実施努力義務は一種の訓示的条項であり特段法的拘束力を定めたものではないと判示した実施が軌道にのらないときの逃げの条項最低実施料の段階的な増額 ( 軌道にのるまでは安く ) 実施義務の期間限定契約条件変更オプション ( 独占的非独占中途解約など ) 19

11 各パート記載の注意 (6) 保証と責任ライセンサー実施許諾ライセンシー保証条項を契約書に入れなければ保証責任を免れるか? 特許の有効性や技術の有用性を保証して欲しい特許が無効等ならお金をとって欠陥商品を売りつけたようなもの!! 民法 / 商法上の瑕疵 ( かし ) 担保責任を負うことになるそれなら契約で保証 / 責任の範囲を明確にしておいた方が良いとはいえ完全な保証は現実問題として無理妥当な落としどころを探す特許保証 ( 特許の有効性の保証 ) 非侵害保証 ( 第三者の特許を侵害しない保証 ) 技術の保証 ( 技術効果の保証 ) 契約時の有効性契約時は無効理由を知らない無効になったらロイヤルティ見直しなど契約時に一定範囲の調査侵害手続等の代行損害賠償客観的試験データの開示技術指導 20 まとめ 1. 契約は型にはまったものではない契約類型を参考にしながら事業展開に応じて創出する 2. 有利な契約を追い求めると失敗する落とし穴を避けつつ互譲の精神で検討する 3. 契約締結時だけでなく将来の状況を考える技術のトレンド事業展開を見通すことが必要 4. 完璧な契約書など存在しない失敗を怖れずその時の最善を尽くすべし 21

業務委託基本契約書

印紙 4,000 円業務委託基本契約書契約 ( 以下甲といいます ) と ( 選択してください : 株式会社ビーエスピー / 株式会社ビーエスピーソリューションズ )( 以下乙といいます ) は甲が乙に対して各種研修教育コンサルティング業務 ( 以下本件業務といいます ) を委託することに関し以下のとおり基本契約 ( 以下本契約といいます ) を締結します第 1 条 (