最上川流域の文化的景観 調査報告書 平成 23 年 3 月山形県教育委員会

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2 最上川流域の文化的景観 調査報告書 平成 23 年 3 月山形県教育委員会

3 表紙写真 上: 曳舟の様子 ( 羽州川通絵図自米沢正部最上左沢 山形県立博物館蔵 ) 左上: 山居倉庫と新井田川 ( 酒田市 ) 右上: 最上峡の入口本合海 ( 新庄市 ) 中央: 日本一公園から見た最上川 ( 大江町 ) 左下: 最上川上流部の谷地河原堤防 ( 直江石堤 )( 米沢市 ) 右下: 十日町河岸商家群の丸大扇屋 ( 長井市 )

4 はじめに 本書は 山形県教育委員会が平成 19 年度から 22 年度に実施した 最上川流域の文化的景観 保存活用調査の成果をまとめたものです これまで 政策研究大学院大学の篠原修教授を委員長とする 最上川の重要文化的景観調査検討委員会 ( 平成 19~21 年度 ) と 最上川流域の文化的景観保存活用委員会 ( 平成 22 年度 ) において 調査及び検討を行ってきました 最上川は 県民の生活と文化を生み育んだ 母なる川 です 源流から河口まで山形県のみを流れ 全長 229 km 流域面積は県土の 76% 流域人口は県人口の約 8 割にも及びます 古くから舟運に活用され 近世には流通 往来の大動脈となるなど 人々は最上川を様々に活用して 生活や産業を豊かなものにしてきました 文化的景観は 平成 16 年の文化財保護法の一部改正により 新たな文化財として位置づけられたもので 地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの と定義されています 最上川流域の文化的景観 は山形県の文化と生活を物語る宝であり 私たちはこれを未来へと大切に引き継いでいかなくてはなりません 本書がそのための理解促進や地域学習などの一助となれば幸いです 最後になりましたが 調査に御協力いただいた関係各位に 心からお礼申し上げます 平成 23 年 3 月 山形県教育委員会教育長相馬周一郎

5 例言 本報告書は 山形県教育委員会が国庫補助を受けて平成 19 年度から 22 年度に実施した 最上川流域の文化的景観 保存活用事業の報告書である 本書の内容は 最上川の重要文化的景観調査検討委員会( 平成 19 年度 ~ 21 年度 ) 最上川流域の文化的景観保存活用委員会( 平成 22 年度 ) における調査及び検討内容を反映している 本書の写真は 大部分が本事業の中で新たに撮影したものであるが 撮影者や所有者がある場合は写真の下に ( ) 書きで示した 本書の作成は 株式会社マヌ都市建築研究所に委託し 編集は山形県教育委員会文化財保護推進課が行った 本書で使用した地図は国土地理院発行の地図ほかを使用した Ⅲ 最上川流域の景観分析 の流域の景観単位の選択基準は 次の基準による 重要文化的景観選定基準 ( 平成 17 年 3 月 28 日文部科学省告示第 47 号 ) 一地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された次に掲げる景観地のうち我が国民の基盤的生活又は生業の特色を示すもので典型的なもの又は独特のもの ( 一 ) 水田 畑地などの農耕に関する景観地 ( 二 ) 茅野 牧野などの採草 放牧に関する景観地 ( 三 ) 用材林 防災林などの森林の利用に関する景観地 ( 四 ) 養殖いかだ 海苔ひびなどの漁ろうに関する景観地 ( 五 ) ため池 水路 港などの水の利用に関する景観地 ( 六 ) 鉱山 採石場 工場群などの採掘 製造に関する景観地 ( 七 ) 道 広場などの流通 往来に関する景観地 ( 八 ) 垣根 屋敷林などの居住に関する景観地二前項各号に掲げるものが複合した景観地のうち我が国民の基盤的な生活又は生業の特色を示すもので典型的なもの又は独特のもの

6 緒 言 少なくとも日本人であるなら 最上川という名の川の存在は知っている筈である 学校で習う芭蕉の 五月雨を集めて早し最上川 の句を通じて 又 多少とも文学に興味のある人間なら この川筋が斎藤茂吉の故郷であり この川をこよなく愛した茂吉が数多くの秀歌を詠んだことも知っていよう あるいは交通史をかじった人間なら 最上川が酒田湊を通じて 古代から近代初頭に至るまでの長い間 日本海側交通の大動脈として在り続けたことも周知の事実であろう だが この舟運の大動脈を整備し 運用し 維持するに当たってなされた先人達の知恵と工夫の数々はほとんど歴史の中に埋もれ 今の我々が知る所は少なかった この度の 最上川流域の文化的景観 調査により つまり各専門家 ( 委員 ) と県庁及び地元の人々の努力により いかに難所を超えて舟を通すかの工夫が開削の跡として明らかになり 又 舟を曳く舟道がどこに設けられたのかが明らかになった そして船頭達が舟運の安全を祈って祀った神社の数々も その先人達の祈り 工夫の積み重ねは 世界にもまれな川絵図として我々の前に在る 集落の豊かさ 貧しさを分けるのは交易である と民俗学者の宮本常一は言う 自給自足の農村や漁村などというものは 歴史の学者の勝手な創作だともいう 古来から人間は人と物資の交流を通じて 生活を豊かにしようと努力してきたのだと宮本は言う 宮本の言う所に従えば 最上川の流域は律令の 水駅 の時代から 日本の中でも有数の豊かな地域であった それは住民の心にも反映していたのであろう 芭蕉が訪れたのも その最上川流域の土地と人の豊かさ故だったのである 私も今回の調査を通じて その豊かさを実感する 最上川流域の文化的景観保存活用委員会 委員長 篠原修

7 目 次 Ⅰ 文化的景観保護の経緯 1 1 文化的景観保護の取組み 2 2 県土景観保全の取組み 5 Ⅱ 最上川流域の特性 7 1 最上川の概要 9 2 自然的な特性 12 ⑴ 地形 ⑵ 地質 ⑶ 気候 ⑷ 水質 ⑸ 植生 ⑹ 動物 3 歴史的 文化的な特性 18 ⑴ 流通 往来の歴史 ⑶ 流通 往来と文化 ⑵ 川絵図 ⑷ 農林水産業との関わり 4 河川利用の特性 35 ⑴ 河川管理の歴史 ⑵ 現代の河川利用 Ⅲ 最上川流域の景観分析 39 1 流域の景観単位 40 2 景観認知に関する調査 109 ⑴ 最上川に関する景観認知 ⑵ 流通 往来に関する景観認知

8 Ⅳ 最上川流域の文化的景観 の本質的価値 流通 往来に関する価値 148 ⑴ 河川 ⑵ 舟運難所とその周辺 ⑶ 河岸 湊町 ⑷ まとめ 2 多様な河川利用に関する価値 158 ⑴ 城下町における利水 治水 ⑵ 農林水産業における河川利用 ⑶ まとめ 3 最上川流域の文化的景観 と最上川 161 Ⅴ 保存活用に向けて 保存活用の目的と期待される効果 164 ⑴ 目的 ⑵ 期待される効果 2 保存活用の方向性 166 ⑴ 文化的景観の範囲の考え方 ⑶ 体制づくりの考え方 ⑵ 重要な構成要素の考え方 ⑷ 保存活用の取組み例 参考文献等

9 最上川の位置 ( 飛島 ) 遊佐町 酒田市 真室川町 ( 秋田県 ) ( 日本海 ) 三川町 最鮭川村上川庄内町戸沢村 金山町 新庄市 舟形町 最上町 鶴岡市 大蔵村 大石田町 尾花沢市 村山市 西川町 河北町寒河江市 東根市 大江町 中山町 天童市 ( 新潟県 ) 朝日町 山辺町 山形市 ( 宮城県 ) 白鷹町 長井市 南陽市 上山市 小国町 川西町 高畠町 飯豊町 米沢市 ( 福島県 )

10 Ⅰ 文化的景観保護の経緯 この章では 山形県における文化的景観保護の取組みと県土景観保全の 取組みについて概要をまとめた -1-

11 1 文化的景観保護の取組み 最上川については 舟運に着目した調査が以前から行われており 中でも昭和 53 年度 (1978) から実施した 山形県歴史の道調査事業 では 最上川流域に点在する舟運関連の史跡や文化財などの総合的な把握調査が行われ その歴史的な特色が明らかにされてきた 最上川の文化的景観の価値については 平成 17 年 (2005) の文化的景観保護制度の発足と前後して文化庁で実施した以下 2つの調査研究において ともに 重要地域 に選択されている まず 平成 12~15 年度に行われた 農林水産業に関連する文化的景観の保護に関する調査研究 では 最上川が 土地利用 風土 伝統的産業及び生活を示す文化財と一体となり周辺に展開する複合景観として評価された つづいて 平成 17~19 年度の 採掘 製造 流通 往来及び居住に関連する文化的景観の保護に関する調査研究 では 河川流通系の複合景観として 最上川の景観の重層性や景観の一体性が評価された 時を同じくして 山形県は平成 16 年度から世界遺産への登録を目指した世界遺産推進プロジェクトを開始した 最上川を軸に 山形県の持つ文化資産を国内外に発信することで 地域振興や全国的にも失われつつある 川の文化 の再興に結びつけようとしたものであった 県は 県内 26 市町村やNPO 団体 教育機関などと連携し 学術研究会やシンポジウムなどを開催し 暫定リスト登録に向けた取組みを推進してきた 暫定リストへの提案 最上川の文化的景観 - 舟運と水が育んだ農と祈り 豊饒な大地 - は 平成 20 年に国の文化審議会において 提案書の基本的主題を基に 提案地方公共団体が準備を進めるべき文化資産 ( カテゴリー Ⅰa) の評価を得たが その後の情勢の変化により 世界遺産登録推進事業は平成 21 年度に中止された 最上川流域の文化的景観保護の取組みは この世界遺産登録推進事業の中で 平成 19 年度から開始された 文化的景観の保存活用のために 学識経験者等に -2-

12 よる 最上川の重要文化的景観調査検討委員会 を設置し 流域の保存調査を実施し 関係機関 関連市町村等との連携により 重要文化的景観への選定申出の取組みを行ってきた 平成 22 年度には 最上川流域の文化的景観保存活用委員会 に改組し 保存計画の検討 関係者との合意形成など 選定に向けた準備を重ねてきた この報告書は その成果である また 県内市町村では 平成 20 年度から大江町が 22 年度から酒田市が文化的景観保護事業を開始しており 今後 長井市と米沢市においても開始の予定である 最上川流域の文化的景観保護の主な取組み 平成 19 年度 19 年 12 月最上川の文化的景観関係市町村等連絡会議 20 年 1 月第 1 回最上川の重要文化的景観調査検討委員会 20 年 2 月景観法及び文化的景観保護制度説明会 20 年 3 月第 2 回最上川の重要文化的景観調査検討委員会 20 年 3 月最上川の文化的景観構成要素の基礎資料作成 平成 20 年度 20 年 6 月第 1 回最上川の重要文化的景観調査検討委員会 20 年 10 月市町村世界遺産 文化財保護行政主管課長等会議 21 年 3 月第 2 回最上川の重要文化的景観調査検討委員会 21 年 3 月最上川の文化的景観保存活用基礎資料作成 平成 21 年度 21 年 9 月関係市町村連絡会議 21 年 9 月第 1 回最上川の重要文化的景観調査検討委員会 22 年 1 月第 2 回最上川の重要文化的景観調査検討委員会 22 年 3 月第 3 回最上川の重要文化的景観調査検討委員会 22 年 3 月 最上川の文化的景観 景観認知調査分析 平成 22 年度 22 年 11 月第 1 回最上川流域の文化的景観保存活用委員会 23 年 1 月関係市町村会議 23 年 1 月第 2 回最上川流域の文化的景観保存活用委員会 23 年 3 月第 3 回最上川流域の文化的景観保存活用委員会 23 年 3 月 最上川流域の文化的景観 調査報告書刊行 -3-

13 最上川の重要文化的景観調査検討委員会 ( 平成 19~21 年度 ) 委員 ( 五十音順 ) 氏名職名備考入間田宣夫東北芸術工科大学教授 岩鼻通明 江頭宏昌 山形大学農学部教授 山形大学農学部准教授 菊地和博 佐藤五郎 東北芸術工科大学准教授 学校法人椎野学園米沢中央高等学校副校長 篠原修政策研究大学院大学教授委員長 吉田敏晴国土交通省東北地方整備局山形河川国道事務所長平成 19 年度前内永敏国土交通省東北地方整備局平成 20~21 年度山形河川国道事務所長 オブザーバー氏名職名鈴木地平文化庁文化財部記念物課文部科学技官 事務局 : 山形県教育委員会教育やまがた振興課 ( 平成 19 年度 ) 文化遺産課 ( 平成 20~21 年度 ) 最上川流域の文化的景観保存活用委員会 ( 平成 22 年度 ) 委員 ( 五十音順 ) 氏名職名備考入間田宣夫東北芸術工科大学教授副委員長 岩鼻通明 山形大学農学部教授 江頭宏昌 菊地和博 佐藤五郎 山形大学農学部准教授 東北文教大学短期大学部教授学校法人椎野学園米沢中央高等学校副校長 篠原修政策研究大学院大学教授委員長 オブザーバー氏名職名鈴木地平文化庁文化財部記念物課文部科学技官 事務局 : 山形県教育委員会文化財保護推進課 -4-

14 2 県土景観保全の取組み 県では 美しくうるおいのある県土づくりをすすめるため 平成 7 年 (1995) に県の景観づくりの方向と施策の体系を示した 山形県県土景観ガイドプラン を策定した その中で 県土の景観形成の目標像の一つに 月山 鳥海山等の山岳と最上川の映える景観 が位置づけられた 平成 16 年の景観法施行を受け 平成 19 年には 山形県景観条例 を公布した 翌年に ふるさとやまがた美しい景観づくり基本方針 並びに 山形県景観計画 を策定して 同年 7 月から景観条例を施行し 景観形成施策を推進している 山形県県土景観ガイドプラン における県土景観に対する精神は ふるさとやまがた美しい景観づくり基本方針 に受け継がれており 最上川を 県土景観の骨格をなす山河 として位置づけ 県民の景観イメージ上 きわめて大切な存在であり 河川景観の保全 育成と水面越しの眺望景観の創出を図る河川としている 山形県景観行政関連年表 平成 7 年 6 月 山形県県土景観ガイドプラン策定 16 年 6 月 18 日景観法公布 16 年 12 月 17 日景観法施行 19 年 12 月 21 日山形県景観条例公布 20 年 5 月 23 日ふるさとやまがた美しい景観づくり基本方針策定山形県景観計画策定 20 年 7 月 1 日山形県景観条例施行 -5-

15 なお 県内の自治体においても 5 市町が景観行政団体となり うち 4 市町に おいて景観計画の策定が行われている ( 平成 23 年 2 月現在 ) 景観計画策定等の状況 団体名 景観行政団体 景観計画景観に関する条例公布 山形県 H H 山形県景観条例 H 大江町 H H 大江町景観条例 H 酒田市 H H 酒田市景観条例 H 鶴岡市 H H 鶴岡市景観計画に係る行為の制限等に関する条例 H 米沢市 H H 米沢市景観条例 H 長井市 H H23.3 予定長井市景観条例 H23.3 予定 景観に関する自主条例をもつ市町村 団体名景観に関する自主条例公布 金山町金山町街並み景観条例 S 尾花沢市銀山温泉家並保存条例 S 河北町 河北町美しいまちなみ景観条例 H 山形市 山形市景観条例 H 高畠町 まほろばの里高畠 まちづくり景観条例 H 大蔵村 美しい村づくり条例 H

1-1 出生数 合計特殊出生率の推移 1-2 地域別合計特殊出生率の推移 1-3 出生数 出生率の推移 1-4 地域別出生率の推移 1-5 主要先進国の合計特殊出生率 1-6 地域別出生数の推移 1-7 母の年齢 (5 歳階級 ) 別非嫡出子の出生数の推移 1-8 男女別年齢階層別人口の推移 ( 山形県 ) 1-9 男女別年齢階層別人口の推移 ( 全国 ) 1-10 女性の有配偶率と有配偶出生率 (

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