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1 資 料 - ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに 関 する ファクトシート ( 平 成 年 月 日 版 ) 国 立 感 染 症 研 究 所

2 目 次 1. 対 象 疾 患 の 基 本 的 知 見 (1) 疾 患 の 特 性 1 臨 床 症 状 : 潜 伏 期 間 主 症 状 重 篤 度 合 併 症 後 遺 症 等 不 顕 性 感 染 の 割 合 鑑 別 を 要 する 他 の 疾 患 検 査 法 治 療 法 予 防 法 その 他 ( 病 原 体 の 生 態 免 疫 学 等 ) () 我 が 国 の 疫 学 状 況 ( 及 び 諸 外 国 に 於 ける 状 況 国 内 との 比 較 ) 1 患 者 数 ( 性 年 齢 階 級 別 経 年 変 化 地 域 分 布 等 ) 死 亡 者 数 HPV 遺 伝 子 型 の 分 布. 予 防 接 種 の 目 的 と 導 入 により 期 待 される 効 果 (1) 感 染 症 対 策 としての 観 点 () 公 共 経 済 学 的 な 観 点 () 各 国 の 状 況.ワクチン 製 剤 の 現 状 と 安 全 性 (1)の 目 的 が 達 成 できるワクチンの 種 類 開 発 状 況 () 製 剤 としての 特 性 安 全 性 副 作 用 有 効 性 抗 体 持 続 時 間 接 種 スケ ジュール( 国 外 のケース) キャッチアップの 必 要 性 等 1 海 外 での 有 効 性 評 価 有 効 性 の 持 続 時 間 我 が 国 での 有 効 性 評 価 ワクチン 型 以 外 に 対 する 効 果 副 反 応 接 種 スケジュール () 需 要 と 供 給 の 見 込 み 1 1 供 給 について 需 要 について 1 1

3 対 象 疾 患 の 基 本 的 知 見 (1) 疾 患 の 特 性 ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus: HPV)の 感 染 は 子 宮 頸 がん( 扁 平 上 皮 がん 腺 がん) 及 びその 前 駆 病 変 [cervical intraepithelial neoplasia (CIN) 及 び ] 尖 圭 コンジローマ 等 の 発 症 原 因 である HPV ワク チンは HPV 感 染 を 予 防 することで これらの 疾 患 の 発 症 を 予 防 する 1 臨 床 症 状 : 潜 伏 期 間 主 症 状 重 篤 度 合 併 症 後 遺 症 等 パピローマウイルス 科 (Papillomaviridae)には 約,000 塩 基 対 の 環 状 DNA をゲノムとする 直 径 0- nm の 小 型 ウイルスが 属 している ほ 乳 類 を 宿 主 とする 様 々なウイルスがあり 宿 主 の 名 前 をつけてヒトパピローマ ウイルスのように 名 付 けられている 宿 主 域 は 厳 格 で HPV はヒト 以 外 の 動 物 に 感 染 しない 主 要 キャプシド(L1) 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 の 相 同 性 に 基 づ いて これまでに 0 以 上 の 遺 伝 子 型 に 分 類 されている 1) 約 0 種 の 遺 伝 子 型 は 粘 膜 の 病 変 から 0 種 は 皮 膚 の 病 変 から 分 離 され それぞれ 粘 膜 型 HPV 皮 膚 型 HPV と 呼 ばれる 粘 膜 型 のうち 尐 なくとも 種 (HPV )は 子 宮 頸 がんから DNA が 検 出 され 高 リス ク 型 HPV と 呼 ばれている ) 高 リスク 型 HPV のうち HPV/HPV1 が 海 外 の 約 0%の 子 宮 頸 がん 発 生 に 関 わっていると 推 定 されている ) また 高 リスク 型 HPV 感 染 は 海 外 において 尐 なくとも 0%の 肛 門 がんと 0%の 膣 がん 外 陰 部 がん 陰 茎 がんに 関 わると 推 定 されている ) 粘 膜 型 HPV のうち 低 リ スク 型 HPV( 特 に HPV )は 男 性 女 性 の 生 殖 器 にできる 良 性 のいぼ ( 尖 圭 コンジローマ)の 原 因 となる 粘 膜 型 HPV は 性 行 為 を 介 して 生 じる 表 皮 の 微 小 なキズから 生 殖 器 粘 膜 の 基 底 細 胞 に 侵 入 し ゲノムが 核 内 エピゾームとして 維 持 される 潜 伏 状 態 となる ) 感 染 細 胞 の 分 裂 時 にはゲノムも 複 製 し 娘 細 胞 に 分 配 される 潜 伏 感 染 細 胞 が 表 皮 形 成 の 分 化 を 始 めると 分 化 終 盤 でウイルス 増 殖 が 起 こ る 子 宮 頸 部 の 移 行 帯 ( 扁 平 上 皮 と 円 柱 上 皮 が 接 する 境 界 )は 細 胞 増 殖 が 速 く HPV の 潜 伏 持 続 感 染 が 頸 管 部 で 起 こると HPV 増 殖 時 に CIN1 と 呼 ばれる 病 変 が 生 じる CIN1 は 大 部 分 が 自 然 に 治 癒 するが 稀 に HPV ゲノム が 染 色 体 に 組 み 込 まれた 細 胞 が 生 じて 高 い 増 殖 能 を 持 つことがある こ のような 異 常 細 胞 が 上 皮 内 で 占 める 割 合 が 上 昇 することで 子 宮 頸 がんの 前 駆 病 変 (CIN CIN)が 生 じ さらに 悪 性 形 質 を 獲 得 して 基 底 膜 から 真 皮 へ 浸 潤 すると 浸 潤 がんに 進 行 する 一 方 子 宮 頸 部 病 変 を HPV 増 殖 による 一 連 の 変 化 と 捉 えて 扁 平 上 皮 内 病 変 (squamous intraepithelial lesion: SIL)とする 細 胞 診 ベセスダシ ステムでは 病 変 の 進 行 に 応 じて low-grade SIL(LSIL)と high-grade SIL (HSIL)に 分 類 する LSIL には HPV 増 殖 による 細 胞 変 化 と CIN1 が 相 当 し HSIL には CIN 及 び が 相 当 する 子 宮 頸 がんでは 細 胞 DNA へ 組 み 込 まれた 高 リスク 型 HPV の E/E がん 遺 伝 子 が 恒 常 的 に 高 発 現 している E 蛋 白 質 は p 蛋 白 質 の 分 解 を 誘 導 し E 蛋 白 質 は Rb 蛋 白 質 の 機 能 を 阻 害 して 細 胞 の 不 死 化 をもたらすが これ

4 だけでは 細 胞 はがん 化 せず 子 宮 頸 がん 発 生 の 必 要 条 件 となるが 十 分 条 件 ではない がん 化 するには 他 の 共 役 因 子 ( 喫 煙 HLA 型 など)が 関 与 する と 考 えられている 初 期 の 子 宮 頸 がんでは 通 常 ほとんど 自 覚 症 状 がない がんが 進 行 すると 不 正 性 器 出 血 性 行 為 の 際 の 出 血 異 常 な 帯 下 などがみられる 不 顕 性 感 染 の 割 合 海 外 においては 性 活 動 を 行 う 女 性 の 0% 以 上 が 生 涯 で 一 度 は HPV に 感 染 すると 推 定 されている ) 子 宮 摘 出 術 を 受 けた 女 性 からも HPV DNA が 検 出 さ れることから HPV は 子 宮 頸 部 以 外 の 膣 部 や 外 陰 部 など 女 性 生 殖 器 全 体 に 感 染 することが 示 されているが ) ウイルス 増 殖 がない HPV 潜 伏 感 染 細 胞 は 病 変 を 作 らず また 頸 管 部 以 外 で HPV 増 殖 が 起 こっても 目 立 つ 病 変 を 形 成 することは 尐 ない 頸 管 部 における HPV の 一 過 性 増 殖 に 起 因 する CIN1 は 自 然 治 癒 することが 多 く( 若 い 女 性 CIN1 の 0%が 年 以 内 に 消 失 することが 報 告 されている ) ) 治 癒 に 伴 って HPV DNA も 検 出 されなくなることから 婦 人 科 医 の 多 くは HPV 感 染 は 一 過 性 で 短 期 間 の 後 に 排 除 される と 考 えて いる しかし 高 齢 女 性 で 二 次 的 に HPV 検 出 率 が 上 昇 すること ) HPV 既 感 染 者 にワクチンを 接 種 しても HPV DNA が 検 出 され 続 けること ) などから HPV の 潜 伏 持 続 感 染 はかなりの 長 期 に 渡 ることが 推 定 される 頸 部 以 外 で の 潜 伏 持 続 感 染 で 生 じた HPV が 頸 部 に 感 染 することに 留 意 する 必 要 があ る 潜 伏 感 染 細 胞 の 消 長 潜 伏 感 染 細 胞 から HPV の 増 殖 が 起 こる 頻 度 増 殖 するウイルス 量 などの 正 確 な 情 報 は 無 い 鑑 別 を 要 する 他 の 疾 患 子 宮 頸 部 細 胞 診 分 類 のベセスダシステムでは SIL 診 断 上 のグレーゾーン として ASC(atypical squamous cells)という 領 域 を 設 定 している ASC は 細 胞 異 型 が 腫 瘍 性 病 変 の 基 準 に 満 たないものや 採 取 や 固 定 などの 過 程 で 生 じた 検 体 の 変 化 で 判 定 不 能 のものを 示 す ASC は ASC-US(undetermined significance LSIL を 否 定 できない)と ASC-H(HSIL を 否 定 できない)に 二 分 される ASC は 化 生 上 皮 が 原 因 の 局 所 病 変 であり HPV とは 無 関 係 の 非 腫 瘍 性 病 変 と HPV が 関 連 する 腫 瘍 性 病 変 に 区 別 される HPV 関 連 の 病 変 のう ち 尖 圭 コンジローマは 低 リスク 型 HPV( 主 に HPV/HPV)の 感 染 増 殖 によるものである 検 査 法 ( 迅 速 検 査 検 診 確 定 診 断 等 ) (ア) 子 宮 頸 部 への HPV 感 染 の 診 断 臨 床 検 体 から HPV を 分 離 できる 細 胞 や HPV に 対 する 血 清 学 的 診 断 法 が ないため HPV 感 染 を 確 定 診 断 する 唯 一 の 方 法 は 検 体 中 の HPV DNA の 検 出 である HPV DNA の 検 出 には 研 究 領 域 では PCR 法 サザンブロット 法 ドットブロット 法 in situ ハイブリダイゼーション 法 が 用 いられる PCR 法 は 感 度 特 異 性 が 高 く 最 もよく 用 いられる in situ ハイブリダ イゼーション 法 は 組 織 中 での HPV DNA の 局 在 を 知 ることができるが

5 感 度 特 異 性 が 低 い 欠 点 がある 子 宮 頸 部 からの 細 胞 採 取 では HPV が 潜 伏 する 基 底 細 胞 を 確 実 に 採 取 することが 出 来 ないため HPV DNA が 検 出 さ れなくても HPV 感 染 を 完 全 には 否 定 できない ) 臨 床 現 場 での HPV DNA 検 査 のための 体 外 診 断 用 医 薬 品 として 現 在 我 が 国 で 認 可 されている 市 販 キットに ハイブリッドキャプチャー 法 (Digene)とアンプリコア 法 (Roche)がある ハイブリッドキャプチャ ー 法 は 米 国 FDA で 承 認 を 受 け 世 界 の 多 くの 国 で 使 用 されている ただ し これらは 種 類 の 高 リスク 型 HPV をまとめて 検 出 するもので 個 々 の HPV 遺 伝 子 型 の 判 定 (HPV タイピング)は 出 来 ない HPV タイピングには PCR/シークエンシング 法 PCR/ 制 限 酵 素 消 化 断 片 多 型 法 PCR/リバースブロットハイブリダイゼーション 法 (PCR/RBH 法 ) などがあり PCR/RBH 法 を 用 いた 市 販 キットとしてリニアアレイ 法 (Roche)がある PCR/RBH 法 は HPV 複 合 感 染 を 高 感 度 に 検 出 できるが PCR/シークエンシング 法 と PCR/ 制 限 酵 素 消 化 断 片 多 型 法 は 複 合 感 染 の 判 定 が 難 しい これらの HPV DNA 検 査 タイピングは 厳 密 な 実 験 室 設 備 と 試 薬 管 理 を 必 要 とするため 病 院 保 健 所 衛 生 研 究 所 での 一 般 的 な 診 断 法 としては 使 用 されていない 通 常 は 臨 床 検 査 会 社 が 受 託 する 形 で 実 施 されている 我 が 国 では ASC-US を 対 象 にした 高 リスク 型 HPV をまとめて 診 断 する HPV DNA 検 査 が 平 成 年 度 の 診 療 報 酬 改 定 において 保 険 収 載 されたが そ の 実 施 は 施 設 基 準 を 満 たした 医 療 機 関 に 限 られている (イ) 子 宮 がん 検 診 子 宮 頸 部 から 採 取 された 擦 過 細 胞 中 の 異 常 な 細 胞 の 有 無 を 検 査 す る 子 宮 頸 部 の 移 行 帯 を 含 む 領 域 から 採 取 した 細 胞 を スライドグラ ス 上 に 塗 抹 固 定 し 顕 微 鏡 観 察 を 行 う 00 年 に 子 宮 頸 がん 検 診 の 対 象 年 齢 が 0 歳 以 上 から 0 歳 以 上 に 引 き 下 げられ 厚 生 労 働 省 では 子 宮 頸 がんの 早 期 発 見 のために 年 に 一 度 の 検 診 を 推 奨 している 一 方 近 年 米 国 英 国 では 塗 抹 細 胞 診 に 代 わり プラスチック 製 のはけを 用 いて 子 宮 膣 部 と 頸 管 部 の 細 胞 を 一 括 して 採 取 し 固 定 液 中 に 回 収 した 後 装 置 を 用 いて 均 一 で 単 層 の 細 胞 標 本 を 作 製 する 液 状 処 理 細 胞 診 が 取 り 入 れられている 細 胞 診 で 異 常 細 胞 が 認 められた 場 合 コルポスコープ( 膣 部 拡 大 鏡 ) を 用 いた 精 密 検 査 が 行 われる コルポスコープで 子 宮 頸 部 粘 膜 表 面 を 拡 大 して 病 変 部 位 を 細 かく 観 察 する また 疑 わしい 部 位 から 組 織 を 採 取 し 組 織 標 本 を 作 成 して 病 理 観 察 を 行 い 病 変 部 位 の 病 理 診 断 を 下 す 子 宮 がん 検 診 とは 子 宮 頸 部 の 細 胞 診 に 加 え 問 診 により 子 宮 体 がんの 有 症 状 者 に 子 宮 体 部 の 細 胞 診 を 行 うもの 治 療 法 子 宮 頸 がんの 治 療 法 には 外 科 療 法 放 射 線 療 法 化 学 療 法 がある CIN や 早 期 がんに 対 しては 凍 結 療 法 高 周 波 療 法 レーザー 療 法 により 局

6 所 のがん 細 胞 を 破 壊 することが 行 われる また 子 宮 頸 がんを 物 理 的 に 除 去 する 外 科 手 術 として 子 宮 頸 部 円 錐 切 除 術 単 純 子 宮 全 摘 出 術 広 汎 子 宮 全 摘 出 術 などがあり 病 変 のステージに 応 じて 術 式 が 選 択 される 放 射 線 療 法 はステージに 応 じて 単 独 または 外 科 手 術 と 組 み 合 わせて 行 う 化 学 療 法 は 主 として 進 行 性 のがんに 適 用 される なお 既 に 感 染 した HPV を 排 除 する 治 療 薬 は 開 発 されていない また 子 宮 頸 がんに 対 するがん 治 療 ワ クチンは 実 用 化 されていない 尖 圭 コンジローマに 対 しては 治 療 薬 としてイミキモド(ベセルナクリ ーム: 持 田 製 薬 )が 開 発 使 用 されている 予 防 法 HPV ワクチンは HPV/1 の 感 染 を 防 御 することで HPV/1 による CIN/ 子 宮 頸 がん( 扁 平 上 皮 がん 腺 がん)を 予 防 する また 四 価 の HPV ワクチンは HPV/ の 感 染 を 防 御 することで HPV/ による 尖 圭 コ ンジローマも 予 防 する HPV 感 染 で 起 こる CIN/ 及 び 子 宮 頸 がんの 早 期 発 見 治 療 には 子 宮 頸 部 細 胞 診 でのスクリーニングが 有 効 である その 他 ( 病 原 体 の 生 態 免 疫 学 等 ) 潜 伏 感 染 状 態 では HPV 抗 原 は 殆 ど 産 生 されず 免 疫 系 から 逃 れている 分 化 に 連 動 する HPV 増 殖 でも 作 られるウイルスは 微 量 で 粘 膜 表 面 に 限 定 されることから やはり 免 疫 系 を 強 く 刺 激 することは 無 い そのため 感 染 者 の 血 清 中 の 抗 HPV 抗 体 価 は 一 般 に 低 い ) HPV は 男 性 生 殖 器 にも 感 染 する が 感 染 部 位 や 生 態 は 明 らかにされていない ()わが 国 の 疫 学 状 況 (および 諸 外 国 における 状 況 国 内 との 比 較 ) 1 患 者 数 ( 性 年 齢 階 級 別 経 年 変 化 地 域 分 布 等 ) (ア) 子 宮 頸 がん 高 リスク 型 HPV の 持 続 感 染 は 子 宮 頸 がん 発 生 の 最 大 リスク 因 子 であり ほぼ 0%の 子 宮 頸 がんで 高 リスク 型 HPV DNA が 検 出 される 00 年 の 世 界 保 健 機 関 (WHO)の 報 告 では 全 世 界 で 年 間 約 0 万 人 に 子 宮 頸 がんが 発 生 し 約 万 人 が 死 亡 していると 推 定 されている ) 子 宮 頸 がんの 発 生 頻 度 は アフリカ 南 アジア 東 南 アジア 中 南 米 カリブ 海 沿 岸 地 域 で 高 い( 図 1) 欧 米 や 日 本 などの 先 進 諸 国 では 子 宮 頸 がん 検 診 によ る 細 胞 診 スクリーニングの 導 入 により 前 がん 病 変 の 除 去 治 療 が 可 能 で あり 発 展 途 上 国 と 比 べて 子 宮 頸 がんの 患 者 数 は 比 較 的 低 く 抑 えられて いる

7 図 1 全 世 界 の 子 宮 頸 がん 患 者 数 ( 全 年 齢 女 性 万 人 対 )(00 年 ) ) 我 が 国 の 子 宮 がんの 罹 患 者 数 は 年 間 1, 人 ( 子 宮 頸 がん:, 人 子 宮 体 がん:,1 人 どちらか 不 明 ながん: 人 )と 報 告 されている ( 全 国 がん 罹 患 モニタリング 集 計 ) 00 年 上 皮 内 がんを 除 く) なお 子 宮 体 がんは HPV 感 染 が 原 因 ではない 年 齢 別 にみた 子 宮 頸 がん 罹 患 率 は 0 歳 代 後 半 から 0 歳 前 後 まで 増 加 した 後 横 ばいになる( 図 ) 人 口 万 対 子 宮 頸 がん 子 宮 体 がん 図 年 齢 階 級 別 子 宮 がん 罹 患 率 (00 年 ) ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター) 歳

8 近 年 の 我 が 国 の 子 宮 がん 罹 患 者 数 の 推 移 では 歳 以 下 での 罹 患 者 数 の 増 加 が 認 められる( 図 ) なお 子 宮 体 がんの 大 部 分 は 0 歳 以 降 に 発 生 し 歳 以 下 の 子 宮 がんのほとんどは 子 宮 頸 がんである( 図 ) また 歳 以 下 では 子 宮 頸 がんは 乳 がんの 次 に 罹 患 率 が 高 い( 図 ) 図 部 位 別 がん 罹 患 数 の 推 移 ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター) 図 部 位 別 がん 罹 患 率 (00 年 ) ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター)

9 年 と 1 年 と 比 較 すると 0 歳 代 以 下 の 年 齢 層 で 子 宮 がん 罹 患 率 が 増 加 している( 図 ) これには 性 交 渉 開 始 時 期 の 低 年 齢 化 が 関 係 し ていると 考 えられる また 通 常 の 細 胞 診 による 子 宮 頸 部 のがん 検 診 で は 扁 平 上 皮 がん 及 びその 前 がん 病 変 に 比 べて 腺 がん 及 びその 前 がん 病 変 の 検 出 率 が 低 く 検 診 の 普 及 にも 関 わらず 近 年 世 界 的 に 腺 がんは 増 加 傾 向 にある ) 図 年 齢 階 級 別 罹 患 率 の 比 較 ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター) (イ) 尖 圭 コンジローマ 感 染 症 法 の 類 感 染 症 である 尖 圭 コンジローマの 定 点 当 たり 報 告 数 は 男 女 ともに 000~00 年 に 増 加 傾 向 が 見 られていたが 00 年 以 降 は 減 尐 している 00 年 の 定 点 当 たり 報 告 数 は. 人 / 年 ( 男 性. 人 / 年 女 性. 人 / 年 )であった( 図 0 年 1 月 日 現 在 ) ) 00 年 の 患 者 数 は. 万 人 (% 信 頼 区 間 :.~. 万 人 )と 推 計 されている 1) 定 点 当 た り 累 積 報 告 数 年 001 年 00 年 00 年 00 年 00 年 00 年 00 年 00 年 00 年 男 性 女 性 図 尖 圭 コンジローマの 定 点 当 たり 報 告 数 の 年 次 推 移 )

10 死 亡 者 数 我 が 国 の 子 宮 がんによる 死 亡 数 は 年 間,0 人 ( 子 宮 頸 がん:, 人 子 宮 体 がん:1,0 人 どちらか 不 明 ながん:1,0 人 )と 報 告 されている ( 図 00 年 ) 1) 年 齢 別 では 0 歳 代 後 半 からの 死 亡 率 の 増 加 が 認 めら れる( 図 ) 図 日 本 人 の 部 位 別 がん 死 亡 数 (00 年 ) ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター) 図 日 本 の 子 宮 頸 がん 年 齢 別 死 亡 率 (00 年 ) ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター)

11 子 宮 頸 がんの 予 防 対 策 として 我 が 国 で 1 年 の 老 人 保 健 法 制 定 により 国 からの 公 費 補 助 を 受 ける 形 で 導 入 された 子 宮 頸 部 のがん 検 診 と 治 療 成 績 の 向 上 により 子 宮 頸 がんによる 死 亡 率 はこの 0 年 間 で 著 しく 減 尐 した ( 図 ) しかし 欧 米 と 比 較 して 子 宮 頸 部 のがん 検 診 受 診 率 は 約 0%と 低 く( 図 ) 米 国 英 国 と 比 較 すると 死 亡 率 の 低 下 は 横 ばい 状 態 となって いる( 図 ) 図 年 齢 階 級 別 子 宮 頸 がん 死 亡 率 推 移 ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター) 図 子 宮 頸 部 のがん 検 診 受 診 率 の 国 際 比 較 ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター)

12 図 子 宮 頸 がん 死 亡 率 の 国 際 比 較 ( 国 立 がんセンターがん 対 策 情 報 センター) HPV 遺 伝 子 型 の 分 布 (ア) 海 外 での 分 布 海 外 の 子 宮 頸 がん( カ 国 0 例 )で 検 出 される HPV 遺 伝 子 型 を ) PCR 法 で 調 べた 症 例 対 照 研 究 では %の 検 体 で HPV DNA が 検 出 され HPV の 検 出 頻 度 は 上 位 から HPV であった HPV/HPV1 は 全 体 の 約 0%を 占 めた ま た 世 界 の 地 域 別 に 子 宮 頸 がんの HPV 型 分 布 を 調 べたメタアナリシス 1) では HPV(-%)と HPV1(-%)が 共 通 して 上 位 を 占 めたが それ 以 外 の 型 には 地 域 間 で 違 いが 認 められ 特 にアジアでは HPV(%) と HPV(%)の 頻 度 が 他 地 域 より 高 かった (イ) 我 が 国 での 分 布 我 が 国 の 子 宮 頸 部 細 胞 診 正 常 女 性 ( 例 )と 子 宮 頸 がん 患 者 ( 例 )を 対 象 にした PCR/シークエンシング 法 による HPV 遺 伝 子 型 の 調 査 0) では HPV 陽 性 率 は 細 胞 診 正 常 女 性 では.% 子 宮 頸 がん 患 者 では.%であった HPV 型 別 の 頻 度 は 細 胞 診 正 常 女 性 では 上 位 から HPV (.0%) HPV1(.%) HPV(.1%)であり 子 宮 頸 がん 患 者 では 上 位 から HPV(.%) HPV(.0%) HPV(.0%) HPV1(.%) HPV 1) (.1%)であった( 図 ) なお 同 グループの 別 の 報 告 では CIN 患 者 での HPV 陽 性 率 は.1% HPV 型 別 の 頻 度 は 上 位 から HPV(1.%) HPV (.0%) HPV1(.0%) HPV1(.%) HPV(.%)であった

13 図 日 本 の CIN 患 者 と 子 宮 頸 がん 患 者 に 検 出 される HPV 遺 伝 子 型 分 布 0, 1) ) PCR/ 制 限 酵 素 消 化 断 片 多 型 法 を 用 いた 報 告 では 細 胞 診 正 常 女 性 (1 例 ) CIN 患 者 (CIN1:1 例 CIN/:0 例 ) 子 宮 頸 部 浸 潤 がん (0 例 )を 対 象 に HPV 型 別 頻 度 を 調 査 し HPV 陽 性 率 は 細 胞 診 正 常 女 性 で.% CIN1 患 者 で.% CIN/ 患 者 で.% 浸 潤 がん 患 者 で.% であった HPV 型 別 の 頻 度 は 浸 潤 がんで 上 位 から HPV(0.%) HPV1 (.%) HPV(.%) HPV(.1%) HPV(.1%)であった サザンブロッティング 法 を 用 いた 子 宮 頸 部 扁 平 上 皮 がん( 例 )での HPV 型 調 査 ) では 上 位 から HPV(1.%) HPV(.%) HPV(.%) HPV1(.%)であった この 報 告 では 子 宮 頸 部 腺 がんが 含 まれていない ため HPV1 の 頻 度 が 低 い(0.1%) 我 が 国 の 子 宮 頸 がんで 検 出 される HPV 型 別 分 布 は 報 告 ごとに 成 績 が 異 なっている 現 在 の HPV ワクチンの 対 象 となっている HPV/HPV1 の 割 合 には 0-0%の 幅 がある PCR による 核 酸 増 幅 過 程 を 含 む 診 断 手 技 で 信 頼 される 成 績 を 得 るには 試 薬 や 器 具 のバリデーションが 不 可 欠 であ るが これらの 調 査 を 行 った 大 学 施 設 等 が 診 断 ラボの 基 準 を 満 たしてい たかどうか 不 明 である 00 年 に WHO は HPV 実 験 室 診 断 法 を 標 準 化 するためのラボラトリー ネットワークを 構 築 して HPV タイピング 方 法 の 標 準 化 を 進 めている 感 度 と 特 異 性 が 明 確 な 標 準 方 法 を 用 いることで 国 際 的 に 比 較 可 能 な HPV 型 別 分 布 のデータが 今 後 得 られることが 期 待 される

14 予 防 接 種 の 目 的 と 導 入 により 期 待 される 効 果 (1) 感 染 症 対 策 としての 観 点 海 外 での 臨 床 試 験 の 成 績 から HPV 感 染 予 防 ワクチンは HPV/HPV1 の 感 染 を 防 御 して HPV/HPV1 が 関 連 する 子 宮 頸 部 前 がん 病 変 (CIN/)および 子 宮 頸 がん( 扁 平 上 皮 がん 腺 がん)の 発 生 を 予 防 し 子 宮 頸 がん 患 者 数 死 亡 数 を 減 尐 させると 考 えられている 近 年 我 が 国 の 0-0 歳 代 の 女 性 にお ける 子 宮 頸 がんの 罹 患 率 および 死 亡 率 が 増 加 傾 向 にあることから 思 春 期 前 の 女 児 への HPV ワクチンの 接 種 促 進 を 求 める 声 が 上 がっている 一 方 HPV 感 染 から 子 宮 頸 がん 発 生 まで 年 以 上 が 必 要 であり 海 外 で HPV ワクチンの 接 種 が 開 始 されたのが 00 年 であることから 実 際 に HPV ワクチン 導 入 が 全 人 口 レベルでの 子 宮 頸 がん 患 者 死 亡 者 の 減 尐 につながるかは 今 後 の 長 期 に 渡 る 調 査 検 証 が 必 要 である 水 痘 や 麻 疹 等 は 感 染 局 所 で 一 時 増 殖 したウイルスが 血 流 を 介 して 全 身 に 広 がり さまざまな 臓 器 で 増 殖 し 感 染 者 が 発 症 する 治 癒 すれば 体 内 から ウイルスは 一 掃 され 強 い 病 後 免 疫 が 残 る これらのウイルスに 対 するワク チンによって ヒトに 予 め 免 疫 記 憶 を 与 えておけば 一 時 増 殖 に 呼 応 して 速 やかに 免 疫 系 が 立 ち 上 がり ウイルスの 全 身 への 拡 大 を 止 めて 発 症 を 防 ぐ 一 方 HPV は 感 染 すると 一 時 増 殖 を 経 ずに 潜 伏 持 続 感 染 の 状 態 となるので ワクチンで 誘 導 された 抗 体 は 常 に 生 殖 器 粘 膜 に 存 在 して 感 染 を 防 がなけれ ばならない つまり 多 くのウイルスワクチンが 発 症 予 防 をめざすのに 対 し HPV ワクチンは 感 染 予 防 をめざす 従 って ワクチンによって 誘 導 された 抗 HPV 抗 体 のレベルが 長 期 間 維 持 されることが 重 要 である 血 清 中 の 抗 HPV 抗 体 が 生 殖 器 粘 膜 に 滲 出 することで HPV 感 染 を 阻 害 すると 考 えられているが 接 種 から 0-0 年 後 の 0-0 歳 代 の 女 性 での 抗 HPV 抗 体 の 滲 出 状 態 も 含 めて 感 染 防 御 に 必 要 な 抗 体 のレベルは 現 時 点 では 不 明 である 血 中 の HPV 抗 体 価 ) の 推 移 をモデリング 法 により 推 定 することで 二 価 ワクチンで 最 低 0 年 間 四 価 ワクチンで 0 年 間 ) の 抗 体 価 の 維 持 が 推 定 されているが 実 際 の 接 種 か ら - 年 しか 経 過 していないことから 有 効 な 抗 体 価 と 継 続 期 間 についてデ ータが 得 られるのはこれからである () 公 共 経 済 学 的 な 観 点 費 用 対 効 果 分 析 には ワクチンによる 免 疫 維 持 期 間 が 重 要 な 因 子 となる この 因 子 が 明 らかでないため 正 確 な 解 析 は 難 しいが これまでの 調 査 期 間 の 抗 体 減 衰 度 から 推 定 して 年 以 上 の 効 果 があるとの 前 提 で 計 算 されてい る 海 外 での 費 用 対 効 果 分 析 では 歳 女 児 での 定 期 接 種 と 1 歳 までのキャッ チアップ 接 種 を 組 み 合 わせることが 英 国 では 最 も 費 用 対 効 果 が 高 いと 報 告 されている ) また 米 国 での 解 析 では 歳 女 児 での 接 種 のみで$,00/ QALY(quality-adjusted life year) 歳 女 児 での 接 種 および 1 歳 までの キャッチアップ 接 種 で$,00/QALY が 見 積 もられている ) 海 外 での 子 宮 頸 がんでの HPV/HPV1 の 検 出 率 0%を 用 いて 我 が 国 での HPV ワクチン 導 入 の 費 用 対 効 果 を 数 学 的 モデルで 試 算 した 結 果 では 歳 女

15 子 全 員 にワクチン 接 種 した 場 合 (ワクチン 費 用 を,000 円 /1 人 と 仮 定 ) 子 宮 頸 がんの 罹 患 率 死 亡 率 が 約 0% 減 尐 し 増 分 費 用 効 果 比 10 万 円 /QALY が 見 積 もられている ) しかし 我 が 国 の 子 宮 がん 罹 患 患 者 数 および 死 亡 数 のデータには 子 宮 頸 がんか 子 宮 体 がんかが 不 明 のがんが 含 まれており 正 確 な 子 宮 頸 がんの 罹 患 患 者 数 および 死 亡 数 は 把 握 されていない また 子 宮 頸 がんに 検 出 される HPV/HPV1 の 正 確 な 割 合 も 確 定 していない そのため 現 時 点 では 我 が 国 での HPV ワクチン 導 入 の 費 用 対 効 果 の 正 確 な 評 価 は 難 しい () 各 国 の 状 況 WHO は 00 年 月 の position paper ) において 発 展 途 上 国 を 含 めた 世 界 全 体 での HPV ワクチンの 使 用 を 推 奨 し 国 のワクチン 接 種 プログラムに 導 入 すること およびその 財 政 的 基 盤 を 作 ることの 重 要 性 を 強 調 している また WHO は 各 国 の 政 策 立 案 者 に 向 けた HPV ワクチン 導 入 のためのガイドラインを 示 している ).ワクチン 製 剤 の 現 状 と 安 全 性 (1)の 目 的 が 達 成 できるワクチンの 種 類 開 発 状 況 0 年 月 の 時 点 で 世 界 で 使 用 されている HPV 感 染 予 防 ワクチンには 二 価 ワクチンと 四 価 ワクチンがあり 両 者 とも 組 換 え DNA 技 術 を 用 いて HPV の L1 キャプシド 蛋 白 質 を 発 現 させ ウイルス 様 粒 子 (virus-like particles: VLP)に 再 構 成 したものを 抗 原 として 用 いている VLP にはウイルス DNA は 含 まれていないので ワクチン 自 体 には 感 染 性 はない ワクチンは 感 染 予 防 を 目 的 とするもので 既 感 染 者 から HPV を 排 除 する 効 果 は 認 められない 二 価 ワクチンは 製 品 名 サーバリックス (グラクソ スミスクライン 社 ) で 我 が 国 で 00 年 月 に 承 認 され 月 から 販 売 が 開 始 されている バ キュロウイルス/ 昆 虫 細 胞 で 発 現 精 製 した HPV/1 の VLP を 抗 原 としてい る 一 回 接 種 量 (0. ml) 中 に HPV VLP 0μg HPV1 VLP 0μg モノ フォスフォリルリピッド A 0μg および 水 酸 化 アルミニウム 00μg を 含 む チメロサールや 抗 生 物 質 安 定 化 剤 は 含 まない モノフォスフォリルリピッ ド A は サルモネラ 菌 細 胞 壁 成 分 のリポポリサッカライドから 加 水 分 解 にて 調 整 した 新 規 アジュバントである 我 が 国 では 歳 以 上 の 女 性 が 接 種 対 象 で 0, 1, ヶ 月 の 三 回 筋 肉 内 接 種 する 四 価 ワクチンは 製 品 名 ガーダシル (メルク 社 / 万 有 製 薬 )で 我 が 国 で は 0 年 月 の 時 点 で 承 認 されていない 酵 母 細 胞 で 発 現 精 製 した HPV///1 の VLP を 抗 原 としている 一 回 接 種 量 (0. ml) 中 に HPV VLP 0μg HPV VLP 0μg HPV VLP 0μg HPV1 VLP 0μg およびアル ミニウム μg を 含 む チメロサールや 抗 生 物 質 安 定 化 剤 は 含 まない HPV/ VLP を 含 むことで 尖 圭 コンジローマに 対 する 予 防 効 果 もある 米 国 では - 歳 の 女 性 が 接 種 対 象 で 0,, ヶ 月 の 三 回 筋 肉 内 接 種 する サーバリックスとガーダシルはともに 一 回 使 用 量 (0. ml)が 充 塡 され

16 たシリンジとして 供 給 され - の 冷 蔵 保 存 ( 凍 結 不 可 ) これまでに 世 界 0 カ 国 以 上 で 承 認 販 売 されている () 製 剤 としての 特 性 安 全 性 副 作 用 有 効 性 抗 体 持 続 時 間 接 種 スケ ジュール( 国 外 のケース) キャッチアップの 必 要 性 等 1 海 外 での 有 効 性 評 価 HPV 感 染 から 子 宮 頸 がんの 発 生 まで 年 以 上 かかることと 発 がんをエ ンドポイントとするのは 倫 理 上 の 問 題 があるため ワクチンの 有 効 性 を 検 討 する 臨 床 試 験 は 前 がん 病 変 (CIN CIN)の 発 生 をエンドポイントとし て 実 施 された 大 規 模 な 第 三 相 無 作 為 化 二 重 盲 検 試 験 が ガーダシル(- 歳 の 人 ) サーバリックス(- 歳 の 1 人 )を 対 象 に 行 われた ワクチンに 含 まれる HPV 型 の 未 感 染 女 性 に 対 して1 回 目 の 接 種 から ヶ 月 の 時 点 で ワクチン 投 与 群 とプラセボ 投 与 群 とを 比 較 して HPV/1 によ る CIN に 対 して 0% CIN に 対 して % 上 皮 内 腺 がん(AIS)に 対 して 0%の 予 防 効 果 が 認 められた(ガーダシル 表 1) 0) また1 回 目 の 接 種 か ら. ヶ 月 の 時 点 で HPV/1 による CIN 以 上 の 病 変 に 対 して.1% CIN 以 上 の 病 変 に 対 して 0%の 予 防 効 果 が 認 められた(サーバリックス 表 ) 1) 表 1 ガーダシルの 有 効 性 試 験 N n 有 効 性 (% 信 頼 区 間 ) HPV/1 による CIN ワクチン 群,0 0 0% ( to 0) プラセボ 群,0 HPV/1 による CIN ワクチン 群,0 1 % ( to 0) プラセボ 群,0 HPV/1 による AIS ワクチン 群,0 0 0% (<0 to 0) プラセボ 群,0 1 表 サーバリックスの 有 効 性 試 験 N n 有 効 性 (.1% 信 頼 区 間 ) HPV/1 による CIN+ ワクチン 群, 1.1% (. to 0) プラセボ 群, HPV/1 による CIN+ ワクチン 群, 0 0% (. to 0) プラセボ 群, さらに 上 の 年 齢 層 の HPV 未 感 染 女 性 (- 歳 1 人 )を 対 象 にした 臨 床 試 験 で は ワ ク チ ン 投 与 群 と プ ラ セ ボ 投 与 群 と を 比 較 して HPV///1 の 持 続 感 染 および 子 宮 頸 部 病 変 に 対 して 0.%(% 信 頼 区 間.-.)の 予 防 効 果 が 認 められた(ガーダシル) ) - 歳 と 比 較 して これらの 年 齢 層 の 女 性 はワクチン 接 種 による 抗 HPV 抗 体 産 生 が 若 干 低 いが ワクチン 接 種 は HPV 感 染 防 御 に 有 効 と 考 えられる 一 方 HPV/1 既 感 染 女 性 (1- 歳 1 人 )に 対 してサーバリック スを 接 種 した 臨 床 試 験 では 接 種 後 ヶ 月 の 時 点 の HPV DNA の 検 出 頻 0) 1)

17 度 はワクチン 投 与 群 とプラセボ 投 与 群 とで 差 がなく HPV ワクチンにはウイ ルスを 排 除 する 効 果 がないことが 示 された ) 有 効 性 の 持 続 期 間 HPV に 対 する 感 染 防 御 機 構 は 中 和 抗 体 による 液 性 免 疫 が 主 と 考 えられて いる どちらのワクチンも ワクチンに 含 まれる HPV 型 の 未 感 染 女 性 に 回 接 種 することで ほぼ 全 ての 女 性 で 血 清 中 の 抗 HPV IgG 抗 体 が 陽 性 にな る これまでの 臨 床 試 験 では 回 接 種 後 に 上 昇 した 抗 HPV 抗 体 価 は 徐 々 に 減 尐 し -. 年 後 まで 維 持 される, ) さらに 長 期 に 渡 る 抗 体 価 の 推 移 は 不 明 である また - 歳 の 若 い 女 性 の 方 が それより 上 の 年 齢 層 の 女 性 (- 歳 )よりも 抗 体 産 生 応 答 が 高 いとされるが その 理 由 はわから ない 子 宮 頸 部 粘 液 中 に 血 清 IgG が 滲 出 することで 感 染 防 御 されると 考 え られるが HPV 感 染 阻 害 に 必 要 な 血 中 の 抗 HPV 抗 体 価 については 不 明 である ワクチン 接 種 の 長 期 に 渡 る 効 果 をフォローアップした 報 告 では ワクチ ン 型 HPV の 未 感 染 女 性 (- 歳 人 )への 接 種 から 年 の 時 点 で HPV///1 による CIN1- とコンジローマに 対 して.%(% 信 頼 区 間.-.)の 予 防 効 果 が 示 された(ガーダシル) ) またワクチン 型 の 未 感 染 女 性 (- 歳 人 )への 接 種 から. 年 の 時 点 で HPV/1 の 新 規 感 染 に 対 して.%(% 信 頼 区 間.-.) HPV/1 の 持 続 感 染 ( ヶ 月 間 隔 で 同 じ HPV DNA が 検 出 )に 対 して 0%(% 信 頼 区 間 1.-0) HPV/1 による CIN 以 上 の 病 変 に 対 して 0%(% 信 頼 区 間 1.-0)の 予 防 効 果 が 認 められた(サーバリックス) 1) これらの 成 績 から 接 種 から 尐 なくとも -. 年 後 までは ワクチン 型 HPV による 子 宮 頸 部 前 がん 病 変 の 発 生 を 予 防 する 効 果 が 持 続 すると 考 えられる 我 が 国 での 有 効 性 評 価 サーバリックスを 用 いた 我 が 国 での 第 二 相 無 作 為 化 二 重 盲 検 試 験 (0- 歳 0 人 )の 中 間 解 析 ) では 最 初 の 接 種 から. ヶ 月 の 時 点 で ワク チン 投 与 群 ではプラセボ 投 与 群 と 比 較 して HPV/1 の 持 続 感 染 (ヶ 月 間 隔 で 同 じ 型 の HPV DNA が 検 出 )に 対 する 0%(% 信 頼 区 間 0.-0) の 予 防 効 果 が 認 められた また ワクチン 三 回 目 接 種 からヶ 月 の 時 点 で ワクチン 投 与 群 で 自 然 感 染 時 の 倍 (HPV) 0 倍 (HPV1)の 血 中 抗 HPV 抗 体 価 が 検 出 されている ワクチン 型 以 外 に 対 する 効 果 ワクチンに 含 まれる 型 以 外 の HPV に 対 するクロスプロテクションについ ては HPV1 と HPV に 対 するある 程 度 の 感 染 予 防 効 果 がサーバリックス, ) 及 びガーダシル ) で 報 告 されている しかし 一 般 に L1 VLP による 免 疫 で 得 られる 抗 HPV 抗 体 は 型 特 異 性 が 高 いことから クロスプロテクションの 正 確 な 評 価 には 今 後 の 長 期 的 な 臨 床 試 験 の 成 績 が 必 要 である 第 二 世 代 の HPV ワクチンの 候 補 として HPV のもう 一 つのキャプシド 蛋 白 質 であり 型 共 通 エピトープを 持 つ L 蛋 白 質 を 抗 原 とした 型 共 通 ワクチンの 開 発 が

18 海 外 および 我 が 国 で 進 められている 副 反 応 HPV ワクチンに 含 まれる VLP は 非 感 染 性 の 蛋 白 質 抗 原 であり その 安 全 性 は B 型 肝 炎 ワクチンなどの 蛋 白 質 サブユニットワクチンと 同 等 と 推 定 され る ) 米 国 CDC によるガーダシルの 市 販 後 副 作 用 調 査 報 告 0) では 00 年 月 から 00 年 月 までの,00 万 回 の 接 種 から 件 の 副 作 用 情 報 が 得 られ 失 神 接 種 部 位 の 局 所 反 応 めまい 吐 き 気 頭 痛 などが 報 告 され ているが これらの 副 作 用 はバックグラウンドレベルと 同 等 であると 結 論 されている 我 が 国 でのサーバリックスの 臨 床 試 験 では A 型 肝 炎 ワクチン 接 種 のプラセボ 群 と 比 較 して 局 所 反 応 ( 疼 痛 発 赤 腫 張 ) 関 節 痛 疲 労 感 頭 痛 筋 肉 痛 が 報 告 されているが 重 篤 な 副 作 用 は 認 められない 1) 接 種 スケジュール HPV ワクチンは 性 交 渉 を 開 始 する 前 の 女 児 を 接 種 対 象 としており 多 くの 国 で - 歳 の 女 性 を 優 先 的 な 接 種 推 奨 年 齢 としている 幾 つかの 国 では この 年 齢 を 過 ぎた 女 性 に 対 してもキャッチアップ 接 種 を 推 奨 している 米 国 ACIP(the Advisory Committee on Immunization Practices)のガーダ シルに 対 するリコメンデーション ) では - 歳 の 女 児 が 定 期 接 種 対 象 と して 推 奨 され - 歳 の 未 接 種 者 がキャッチアップ 接 種 対 象 として 位 置 づ けられている またその 中 で HPV ワクチン 接 種 は 子 宮 頸 がん 細 胞 診 に 置 き 換 わるものではなく ワクチン 被 接 種 者 も 引 き 続 き 細 胞 診 スクリーニング を 行 う 必 要 があることが 示 されている 海 外 ではガーダシルは カ 国 (0 年 月 日 現 在 ) サーバリックス は 欧 米 を 中 心 に カ 国 (アジアではマレーシア)で 接 種 が 公 費 負 担 され ている 我 が 国 では 日 本 産 婦 人 科 学 会 日 本 小 児 科 学 会 日 本 婦 人 科 腫 瘍 学 会 日 本 産 婦 人 科 医 会 などから - 歳 の 女 児 での 接 種 が 推 奨 されている ま た - 歳 の 女 性 が 次 の 接 種 対 象 として 推 奨 されている () 需 要 と 供 給 の 見 込 み 1 供 給 について 製 造 販 売 業 者 によると 00 年 度 国 家 検 定 合 格 数 量 は. 万 シリンジ である 需 要 について 需 要 量 については 接 種 対 象 者 や 接 種 スケジュール 等 を 踏 まえ 今 後 検 討 が 必 要 である 1

19 参 考 文 献 1. de Villiers, E.M., et al., Classification of papillomaviruses. Virology, 00. (1): p Munoz, N., et al., Epidemiologic classification of human papillomavirus types associated with cervical cancer. N Engl J Med, 00. (): p Munoz, N., et al., Against which human papillomavirus types shall we vaccinate and screen? The international perspective. Int J Cancer, 00. 1(): p. -.. Parkin, D.M. and F. Bray, Chapter : The burden of HPV-related cancers. Vaccine, 00. Suppl : p. S/-.. zur Hausen, H., Papillomaviruses and cancer: from basic studies to clinical application. Nat Rev Cancer, 00. (): p Baseman, J.G. and L.A. Koutsky, The epidemiology of human papillomavirus infections. J Clin Virol, 00. Suppl 1: p. S-.. Castle, P.E., et al., Human papillomavirus prevalence in women who have and have not undergone hysterectomies. J Infect Dis, 00. 1(): p Moscicki, A.B., et al., Regression of low-grade squamous intra-epithelial lesions in young women. Lancet, 00. (): p. -.. Herrero, R., et al., Population-based study of human papillomavirus infection and cervical neoplasia in rural Costa Rica. J Natl Cancer Inst, 000. (): p. -.. Hildesheim, A., et al., Effect of human papillomavirus /1 L1 viruslike particle vaccine among young women with preexisting infection: a randomized trial. JAMA, 00. (): p. -.. Woodman, C.B., S.I. Collins, and L.S. Young, The natural history of cervical HPV infection: unresolved issues. Nat Rev Cancer, 00. (1): p. -.. Ochi, H., et al., Neutralizing antibodies against human papillomavirus types, 1, 1,, and in serum samples from women in Japan with low-grade cervical intraepithelial neoplasia. Clin Vaccine Immunol, 00. (): p Cervical cancer, human papillomavirus (HPV), and HPV vaccines - key points for policy-makers and health professionals. WHO/RHR/0. Geneva, Switzerland: WHO Press, 00.. 全 国 がん 罹 患 モニタリング 集 計 (00 年 罹 患 数 率 報 告 ).. Vinh-Hung, V., et al., Prognostic value of histopathology and trends in cervical cancer: a SEER population study. BMC Cancer, 00. : p.. 1

20 岡 部 信 彦 他, 感 染 症 発 生 動 向 調 査 から 見 たわが 国 の STD の 動 向. 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 新 興 再 興 感 染 症 研 究 事 業 ) 性 感 染 症 の 効 果 的 な 蔓 延 防 止 に 関 する 研 究 ( 研 究 代 表 者 小 野 寺 昭 一 ) 平 成 1 年 度 総 括 研 究 報 告 書, 永 井 正 規 他, 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 新 興 再 興 感 染 症 研 究 事 業 ) 国 際 的 な 感 染 症 情 報 の 収 集 分 析 提 供 機 能 および 我 が 国 の 感 染 症 サーベ イランスシステムの 改 善 強 化 に 関 する 研 究 ( 研 究 代 表 者 谷 口 清 州 ) 平 成 1 年 度 総 括 分 担 研 究 報 告 書,p 人 口 動 態 統 計 (00 年 ). 1. Clifford, G.M., et al., Human papillomavirus types in invasive cervical cancer worldwide: a meta-analysis. Br J Cancer, 00. (1): p Asato, T., et al., A large case-control study of cervical cancer risk associated with human papillomavirus infection in Japan, by nucleotide sequencing-based genotyping. J Infect Dis, 00. 1(): p 前 濱 俊 之 他, 日 本 婦 人 科 腫 瘍 学 会 雑 誌, 00. (): p. -.. Onuki, M., et al., Human papillomavirus infections among Japanese women: age-related prevalence and type-specific risk for cervical cancer. Cancer Sci, 00. 0(): p. -.. Matsukura, T. and M. Sugase, Human papillomavirus genomes in squamous cell carcinomas of the uterine cervix. Virology, 00. (): p. -.. David, M.P., et al., Long-term persistence of anti-hpv- and -1 antibodies induced by vaccination with the AS0-adjuvanted cervical cancer vaccine: modeling of sustained antibody responses. Gynecol Oncol, 00. ( Suppl): p. S1-.. Fraser, C., et al., Modeling the long-term antibody response of a human papillomavirus (HPV) virus-like particle (VLP) type prophylactic vaccine. Vaccine, 00. (1): p. -.. Jit, M., Y.H. Choi, and W.J. Edmunds, Economic evaluation of human papillomavirus vaccination in the United Kingdom. BMJ, 00. : p. a.. Kim, J.J. and S.J. Goldie, Health and economic implications of HPV vaccination in the United States. N Engl J Med, 00. (): p Konno, R., et al., Cost-effectiveness analysis of prophylactic cervical cancer vaccination in Japanese women. Int J Gynecol Cancer, 0. 0(): p. -.. Human papillomavirus vaccines. WHO position paper. Wkly Epidemiol Rec, 00. (): p Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent 1

21 high-grade cervical lesions. N Engl J Med, 00. (1): p Paavonen, J., et al., Efficacy of human papillomavirus (HPV)-/1 AS0-adjuvanted vaccine against cervical infection and precancer caused by oncogenic HPV types (PATRICIA): final analysis of a double-blind, randomised study in young women. Lancet, 00. (): p Munoz, N., et al., Safety, immunogenicity, and efficacy of quadrivalent human papillomavirus (types,,, 1) recombinant vaccine in women aged - years: a randomised, double-blind trial. Lancet, 00. (): p Villa, L.L., et al., High sustained efficacy of a prophylactic quadrivalent human papillomavirus types ///1 L1 virus-like particle vaccine through years of follow-up. Br J Cancer, 00. (): p. -.. Romanowski, B., et al., Sustained efficacy and immunogenicity of the human papillomavirus (HPV)-/1 AS0-adjuvanted vaccine: analysis of a randomised placebo-controlled trial up to. years. Lancet, 00. (0): p Konno, R., et al., Efficacy of human papillomavirus /1 AS0-adjuvanted vaccine in Japanese women aged 0 to years: interim analysis of a phase double-blind, randomized, controlled trial. Int J Gynecol Cancer, 0. 0(): p Harper, D.M., et al., Sustained efficacy up to. years of a bivalent L1 virus-like particle vaccine against human papillomavirus types and 1: follow-up from a randomised control trial. Lancet, 00. (1): p. -.. Paavonen, J., et al., Efficacy of a prophylactic adjuvanted bivalent L1 virus-like-particle vaccine against infection with human papillomavirus types and 1 in young women: an interim analysis of a phase III double-blind, randomised controlled trial. Lancet, 00. (0): p Brown, D.R., et al., The impact of quadrivalent human papillomavirus (HPV; types,,, and 1) L1 virus-like particle vaccine on infection and disease due to oncogenic nonvaccine HPV types in generally HPV-naive women aged - years. J Infect Dis, 00. 1(): p. -.. Schiller, J.T., et al., An update of prophylactic human papillomavirus L1 virus-like particle vaccine clinical trial results. Vaccine, 00. Suppl : p. K Slade, B.A., et al., Postlicensure safety surveillance for quadrivalent human papillomavirus recombinant vaccine. JAMA, 00. 0

22 (): p Konno, R., et al., Immunogenicity, reactogenicity, and safety of human papillomavirus /1 AS0-adjuvanted vaccine in Japanese women: interim analysis of a phase II, double-blind, randomized controlled trial at month. Int J Gynecol Cancer, 00. 1(): p Markowitz, L.E., et al., Quadrivalent Human Papillomavirus Vaccine: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Recomm Rep, 00. (RR-): p. 1-. < 作 成 > 国 立 感 染 症 研 究 所 病 原 体 ゲノム 解 析 研 究 センター 室 長 柊 元 巌 理 化 学 研 究 所 新 興 再 興 感 染 症 研 究 ネットワーク 推 進 センター チームリーダー 神 田 忠 仁 < 協 力 > 国 立 感 染 症 研 究 所 感 染 症 情 報 センター 室 長 多 田 有 希 予 防 接 種 推 進 専 門 協 議 会 1

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