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14 葛根湯 かっこんとう 出典 傷寒論 金匱要略 1 太陽病 項背こわばること 汗なく 悪風する証 傷寒論 太陽 病中篇 解説 を 几几とする見方もあり その場合はキキと音読する は 短羽の鳥の飛び立つときの首を前傾させる様子をいい 几几は硬く強ばる状 態を指す ともに葛根湯の 項背強 の状態を形容したものとみなされる 2 太陽と陽明との合病 自下利する証 同上 3 太陽病 汗なく 小便反つて少なく 気 胸に上衝し 口噤みて語る を得ざる証 金匱要略 䛢湿喝病篇 腹候 急性病初期では脈が重要とされ 腹候は考 慮しない 慢性疾患では 腹力中等度かそ れ以上 2-4/5 葛根湯証は一般に筋緊張 の傾向が認められる 腹候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 太陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度かそれ 以上 2-4/5 慢性疾患の 葛根湯証は一般に筋緊張 の傾向が認められる 脈浮実数 太陽病では舌候の変化は原則と してない 口訣 首から上の症状には葛根湯を考慮 道聴子 急性熱性の首の張る状態に用いるのは誰もが知っているが 古方の常と して応用範囲の広いことはいうまでもない 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 自然発汗がなく 頭痛 発熱 悪寒 肩こり等を伴う比較的体力のあるも のの次の諸症 感冒 鼻かぜ 熱性疾患の初期 炎症性疾患 結膜炎 角 膜炎 中耳炎 扁桃腺炎 乳腺炎 リンパ腺炎 肩こり 上半身の神経痛 じんましん b 漢方的適応病態 表寒 表実 14

15 活用自在の処方解説 1 構成生薬 葛根4 大棗3 麻黄3 甘草2 桂皮2 芍薬2 生姜2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 辛温解表 生津 舒筋 辛温解表 舒筋 より深い理解のために 本方が日本で広く用いられる理由としては 薬味構 成から麻黄湯と桂枝湯の中間の効果とされ第一選択としやすいこと また 葛根が辛涼解表の効果をもつところから 表熱 悪寒を伴わない急性発熱で温 病などが考えられ銀翹散などが適応される にもある程度対応できたことな どが考えられる すなわち 葛根湯そのままでは辛温解表剤 傷寒 中風に適 応 にも 辛涼解表剤にもなる 石膏を加味すればさらによい という考え方で ある 効果増強の工夫 肩関節周囲炎などの治療には 附子を加えると一層有効である 処方例 ツムラ葛根湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 感冒 流感 肺炎 麻疹 丹毒 猩紅熱 脳膜炎 日本脳炎 リンパ 腺炎 扁桃腺炎 中耳炎などで 発熱悪寒頭痛 項背部がこるもの あるいは軽咳 あるいは軽咽頭痛などを伴ってもよい 肩こり 四十肩 五十肩 高血圧症による肩や首のこり 首が回らぬ もの 腰痛 関節リウマチなどで実証で腹部に変化なきもの 破傷風初期 小児ひきつけ 脊髄空洞症などで項背強急するもの 口が開かぬものを痙病と見て治した例がある トラコーマ 結膜炎 眼瞼炎 網膜炎 虹彩炎 急性球後視神経炎な どの眼病で 頭痛項背強ばるもの ただし下剤の証がないもの 副鼻腔蓄膿症 鼻炎 肥厚性鼻炎などで頭痛項背強ばるもの 気管支喘息で表実頭痛または項背がこるもの 皮膚炎 失神 じん麻疹などで 発赤強く分泌のない表証のもの フルンケル カルブンケル 面疔 背癰 皮下膿瘍 筋炎などで発熱 頭痛または悪寒などの表証のあるもの 10 急性腸炎 急性大腸炎で発熱頭痛または悪寒など表証があるもの 11 夜尿症を治した例がある 12 乳児の無声を治した例がある 15

16 2 葛根湯加川芎辛夷 かっこんとうかせんきゅうしんい 出典 本朝経験方 本方は 傷寒論 金匱要略 が出典の葛根湯に辛夷と川芎の二味を加味し て 副鼻腔炎の炎症と頭痛などの改善を狙った処方で わが国の経験方で ある 腹候 急性病初期では脈が重要とされ 腹候は考 慮しない 慢性副鼻腔炎では 腹力中等度 かそれ以上 2-4/5 本方証は一般に筋緊 張の傾向が認められる 腹候図は葛根湯に 準ずる 気血水 気が主体の気血水 六病位 太陽病 腹候 慢性副鼻腔炎で は 腹力中等度かそれ以 上 2-4/5 本方証は一般 に筋緊張の傾向が認めら れる 脈 舌 慢性副鼻腔炎などに適用する場合 脈は有力で 少なくとも沈微ではない こと 舌候は 脾虚 淡白舌など や陰虚 紅舌など を思わせるものではな いこと 口訣 急性副鼻腔炎には 本方より葛根湯が適する場合が多く 急性で鼻汁が 粘稠あるいは膿性のものには葛根湯加桔梗石膏 鼻閉頭痛頭部圧迫感が著 しいものに本方が適応する 現代漢方治療の指針 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 鼻づまり 蓄膿症 慢性鼻炎 b 漢方的適応病態 表寒 表実 構成生薬 葛根4 大棗3 麻黄3 甘草2 桂皮2 芍薬2 川芎2 生姜1 辛夷2 (単 位g) TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 辛温解表 排膿 通竅 16

17 活用自在の処方解説 より深い理解のために 2 竅は穴の意で 通竅とは鼻孔のような身体にもとも とある外部に開かれた 孔 が通じるようにする作用のことである ちなみに 九 竅とは 眼 二つ 鼻 二つ 口 耳 二つ さらに前陰 後陰を指す 効果増強の工夫 もし便秘傾向があるようならば 抗炎症効果も有する大黄を適宜配合する 処方例 葛根湯加辛川芎夷 局方 大黄末 7.5g㾹 1.5g㾸 分 食前14日分 本方で先人は何を治療したか 桑木崇秀著新版 漢方診療ハンドブック より 慢性副鼻腔炎 鼻づまり 本方の話題 本方の特徴はいうまでもなく 葛根湯というもっとも知名な漢方薬の加味 方であることだ 葛根湯はよくも悪くも日本漢方医学の象徴的存在である 有名な落語の葛根湯医者を思い出す方も多いだろう この作品は江戸時代に 舞台を設定しているが これが成り立つためには誰もが知っている風邪に対 する葛根湯の日常的な服用が前提とならねばならない だからこそ 病人で ない付添の伴の者にまで葛根湯を勧める不条理が笑いを誘うのである 葛根 湯はきわめて多様な応用を許す漢方薬である その加味方である本方も 多 分かなり広範な応用範囲があるであろうことは疑いない そのような考えを進めるに当たって 根拠になるのは辛夷と川芎という生 薬の薬能である 辛夷は呼吸器に関連した外界と通じる通路を開き 風寒を去る作用がある 鼻閉の改善がその直接的な効能として挙げられる 敷衍すれば原因不明の嗅 覚脱失などにも応用が可能であろう 川芎については 当帰と同じセリ科植物で活血と気を巡らす作用があり 一方では風邪を去り頭痛 身体痛 関節痛などを緩和する作用がある 以上 よりすれば 本方は炎症性の耳鼻科疾患をはじめとする上焦の急性 あるい は慢性疼痛性疾患に有効であることが推測される 17

18 3 乙字湯 おつじとう 出典 原南陽著 叢桂亭藏方 痔疾 脱肛痛楚し あるいは下血腸風し あるいは前陰痒痛する者を 理 する方 腸風下血し 久服して無効なるは 理中湯 人参湯 に宜し 理は ただす おさめる つくろう 意 腹候 腹力は中等度かそれ以上 2-4/5 で 瘀血 の圧痛を認めることが多い 腹候図 気血水 血が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈 平 脈有力 舌 乾燥白苔 口訣 腹候 腹力は中等度かそ れ以上 2-4/5 で 瘀血の 圧痛を認めることが多 い 南陽は柴胡升麻を昇提の意に用いたれど も やはり湿熱清解の効に取るがよし そのうち升麻は古より犀角の代用 にして止血の効有り 浅田宗伯 女子前陰部瘙痒症に対して奇効を得る場合がある 現代漢方治療の指 針 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 病状がそれほど激しくなく 体力が中位で衰弱していないものの次の諸症 キレ痔 イボ痔 b 漢方的適応病態 升提作用の有効である 脱肛 痔核の脱出 構成生薬 当帰6 柴胡5 黄䊫3 甘草2 升麻1 大黄0.5 単位g 18

19 活用自在の処方解説 より深い理解のために 3 本方は原南陽の原方の大棗を当帰に変化させた浅田 宗伯の処方である 緩急の大棗を除き 活血の当帰を加えたことにより 鎮 痙の効果がやや弱くなるかわりに うっ血性腫脹を除く効果が強められてい る 柴胡 升麻には 昇提 升提 作用 身体上部に臓器を引き上げるという作用 があると信じられている 脱肛に有効な理由とされる 水戸藩医であった原南陽は 甲字湯 瘀血治療薬 乙字湯 痔疾薬 丙字 湯 淋の病の治療薬 丁字湯 癖嚢の治療薬 慢性腹痛 吐宿水 食後の腹 痛 などの処方を創製した 現在用いられるものはほとんど乙字湯のみで 漢方エキス製剤となっている 大黄が入っていて便秘の方にも用いやすい 処方である TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 升提 緩急 清熱化湿 効果増強の工夫 痔核を瘀血の表現として 桂枝茯苓丸を合方し作用を増強する 処方例 ツムラ乙字湯 ツムラ桂枝茯苓丸 7.5g㾹 7.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 痔核の疼痛 出血 肛門裂傷 脱肛の初期軽症 婦人の陰部痒痛 皮膚病 の内攻に伴う神経症 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 実証の痔 脱肛 痔出血 桑木崇秀著新版 漢方診療ハンドブック より 実証で便秘傾向の者の痔核 脱肛 痔出血 時に婦人の陰部痒痛 注 意 事 項 本方は黄䊫を含む方剤であるので 投与前と投与 カ月後の肝機能を比較 し安全性を確認することが望ましい 19

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21 活用自在の処方解説 5 構成生薬 桂皮4 延胡索3 牡蛎3 茴香1.5 甘草1 縮砂1 良姜0.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温中散寒 止痛 止嘔 制酸 より深い理解のために 胃痛だろうが 生理痛だろうが 腹痛一般に効くこ とである 単なる胃の薬には留まらない 食思不振 元気がない 疲れやす いなどの気虚を伴う慢性の腹痛に用いる場合には 人参の入った補気の処方 を配合するか 後に切り替える必要がある 著者は初学の頃に 勤務していた病院関係者に胸やけの薬を問われたとき 自信がなかったので西洋医学の制酸剤のたっぷり入った薬を処方した 週間して彼に会うと私を避けるふうである 胸やけはどうかと問うと 彼 は答えにくそうに市販の安中散ですっかり治ったと言った 安中散の薬名を みるたびにそのことを思い出す 効果増強の工夫 鎮痛効果を増すために芍薬甘草湯を短期間だけ頓用する 処方例 1 ツムラ安中散 7.5g 2 ツムラ芍薬甘草湯 分 2.5g 食前 有痛時頓用 芍薬甘草湯併用は短期間に留めるのが原則である 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 神経性胃痛 胃神経症 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 胃酸過多症 疼痛 胃下 垂症 慢性胃炎 幽門狭窄 胃の腫瘍 婦人の血気刺痛 鬱血をかねた神経 性疼痛 月経痛 悪阻 ヒステリー 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 胃炎 胃酸過多症 減酸症 桑木崇秀著新版 漢方診療ハンドブック より 冷え症で胃アトニータイプの者の胃十二指腸潰瘍 慢性胃炎 胃酸過多症 で心下部の持続性疼痛を目標とする 21

22 6 十味敗毒湯 じゅうみはいどくとう 出典 華岡青洲経験方 華岡青洲が 和剤局方 の荊防排毒散を改良して創方したもの 癰疽および諸般の瘡 腫起 憎寒 壯熱 䉀痛するを治す 癰科方筌 癰疽門 腹候 腹力は中等度以上 2-4/5 ときに心下痞 䌤を認める 柴胡を含むために 胸脇苦満 を認めるとする論者もある 腹候図 気血水 気血水いずれも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 脈 有力 舌 舌質淡紅 乾燥傾向の白苔 腹候 腹力は中等度以上 2-4/5 ときに心下痞 䌤を認める 柴胡を含む ために 胸脇苦満を認め るとする論者もある 口訣 蕁麻疹以外には 化膿傾向がポイント 道聴子 青洲が荊防排毒散を改良したものだが たしかに原方より優れている 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 化膿性皮膚疾患 急性皮膚疾患の初期 じんましん 急性湿疹 水虫 b 漢方的適応病態 風湿熱の皮疹 構成生薬 桔梗3 柴胡3 川芎3 茯苓3 防風1.5 甘草1 荊芥1 生姜1 樸樕 3 独活1.5 単位g 樸樕 ボクソク クヌギ科の樹皮 わが国だけで用いられる生薬で 性 味ははっきりしない TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 袪風化湿 清熱解毒 より深い理解のために 荊防排毒散 万病回春 は 荊芥 防風 羌活 独活 柴胡 前胡 薄荷 連翹 桔梗 枳殻 川芎 金銀花 茯苓 甘草 下線部は 本方と共通 22

23 活用自在の処方解説 6 効果増強の工夫 アトピー性皮膚炎などに消風散などと合方して用いられる 処方例 ツムラ十味敗毒湯 ツムラ消風散 g㾹 g㾸 分 または分 食前 もろもろの皮膚疾患用の薬方に本方を追加して効果増強を図ることができ る また樸樕は本方にしか配合されていないので その皮膚炎改善作用を 期待して他薬方にしばしば合方される 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 化膿性疾患 皮膚疾患の初期 あるいは体質改善目的で一般に用いる 癰 䉜 湿疹 蕁麻疹 フルンクロージス アレルギー体質改善薬 乳腺炎 リンパ腺炎 上顎洞炎 水虫 面疱 中耳炎 麦粒腫 外耳炎など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より フルンケル カルブンケル 皮下膿瘍 筋炎 中耳炎 リンパ腺炎 桑木崇秀著 漢方診療ハンドブック より 化膿性疾患 癰 䉜 皮膚疾患 湿疹や蕁麻疹 初期 フルンクロージス アレルギー体質の改善薬 乳腺炎 リンパ腺炎 麦粒腫 ものもらい など の初期 本方の話題 本方の特徴は 中国では用いられない樸樕が配合されていることである 樸樕はクヌギ科の樹木の樹皮であり あまり詳しい薬能はわかっていない クヌギ科というと外皮はザラザラした手触りなので あるいは形象薬理学的 に似た状態の皮膚を治するということかもしれない 江戸時代にも半数以上の生薬は輸入品であったから 名前だけで実物が入 手できない生薬がわが国のなんという生薬に相当するかという研究は 漢方 蘭方を問わず重要な研究対象であった これについては むしろヨーロッパ から遠いことからオランダ医学の先人が苦心を重ねたようである 教科書に ある有名な薬の代替品を見い出すのは重要な研究で 竹節人参などもそのよ うにして発見された薬用人参の代替品であった 著者に漢方の指導をしてく ださった藤平健先生は 柴胡加竜骨牡蛎湯と小柴胡湯にはお種人参ではなく 竹節人参を指定して用いられた 伊藤清夫先生は脱毛症に積極的に竹節人参 を処方されたことを思い出す 23

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25 活用自在の処方解説 7 腎虚 腎は五臓の つで 人体の成長 発育 生殖を司り 体内の水分 を正常に代謝する このような生理機能は腎の有する精気が担うとされ ている 腎の精気が不足した状態を腎虚と呼び 成長障害やむくみ 耳 鳴や聴力低下などを来す 構成生薬 地黄6 山茱萸3 山薬3 沢瀉3 茯苓3 牡丹皮2.5 桂皮1 附子0.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温補腎陽 不足した腎の陽気を温めて補うこと 効果増強の工夫 1 方中の附子を増やすのが一般的 ブシ末 調剤用 ツムラ g/ 日を加える 処方例 ツムラ八味地黄丸 g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ g㾸 分 または分 食前 2 胃弱の人には次のような合方も勧められる 処方例 ツムラ八味地黄丸 ツムラ人参湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 病名のみ引用 1 腎炎 ネフローゼ 腎臓結石 腎臓結核 萎縮腎 腎盂炎 蛋白尿 2 膀胱炎 老人性膀胱萎縮 膀胱結核 膀胱結石 膀胱括約筋麻痺 膀 胱直腸障害 前立腺肥大症 尿閉 尿失禁 夜尿症など 3 脳出血 動脈硬化症 高血圧症 低血圧症など 4 気管支喘息 心臓喘息 肺気腫など 5 咳で寒因のもの 6 糖尿病 尿崩症 7 脚気で 動悸 息切れ 浮腫 脚弱などのうちどれかがあるもの 8 腰痛 坐骨神経痛 リチャード氏病 畸型性脊椎症 遊走腎などで腰 が痛むもの 9 腰脚麻痺 下肢麻痺など 10 頭痛 肩こり 11 神経衰弱 遺精 夢精 早漏 陰萎 陰茎強直症など 12 ノイローゼ 脱力感 健忘症 朦朧感など 13 胃痛で胸やけ げっぷ 不眠のもの 14 その他次の諸症 回虫 下痢腹痛横断 五更瀉 大小便秘結 動悸 上衝 面赤 声嗄 夜間肩痛 内痔核 脱肛 痔瘻 白帯下 吐血 眼瞼湿疹など眼部の異常 15 老人性皮膚疾患に応用 25

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27 活用自在の処方解説 8 2 肝鬱化火 胃気上逆 ゆううつ感 いらいら 怒りっぽい 不眠 顔 面紅潮 目の充血 胸脇部が張って苦しい 口が苦いなどの肝鬱化火 の症候に 悪心 嘔吐 上腹部膨満感 便秘などの胃気上逆を伴うもの より深い理解のために 肝鬱化火とは 肝気鬱結が持続したために自律神経 機能の過亢進や異化作用亢進が発生し これに伴って熱証がみられる状況を いう 構成生薬 柴胡6 半夏4 黄䊫3 芍薬3 大棗3 枳実2 生姜1 大黄1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和解半表半裏 瀉下熱結 疏肝解欝 理気止嘔 清熱瀉下 効果増強の工夫 いろいろと工夫の余地があるが 着眼点は芍薬と枳実を含むことである 芍薬は単独では甘草と併用して緊張と痛みを緩和する 枳実 芍薬に桔梗 が加われば排膿散で 化膿性炎症を解く作用が期待できる すなわち 芍 薬甘草湯の合方で疼痛の寛解 桔梗湯の合方で化膿症の改善が得られるこ とになる 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 病名を摘録 1 チフス マラリヤ 丹毒 猩紅熱 ワイル病など 2 気管支喘息 気管支拡張症 肺炎 肺気腫 肋膜炎 肺結核など 3 心臓弁膜症 心筋障碍 心嚢炎 心悸亢進症 心臓喘息など 4 高血圧症 動脈硬化症 脳出血 脳軟化症など 5 胃炎 胃酸過多症 胃潰瘍 腸炎 大腸炎 食傷 十二指腸潰瘍 虫 垂炎 胆石症 肝炎 肝硬変症 胆嚢炎 黄疸 すい臓炎 常習便秘 イレウス 口中臭気 吃逆など 6 急性慢性腎炎 ネフローゼ 萎縮腎 腎臓結石 陰萎など 7 糖尿病 肥満症 脚気など 8 半身不随 肋間神経痛 腰痛 てんかん ノイローゼ 神経衰弱 気 鬱症 癎 麻痺 不眠症 肩こりなど 9 結膜炎 虹彩炎 角膜炎 白内障などの眼病 中耳炎 耳鳴 難聴な どの耳病 咽喉腫痛し声が鼻に漏れて言語を弁ぜぬもの 歯痛など 10 禿頭 ふけ 頭髪赤きもの じん麻疹 帯状疱疹など 11 痔 亀胸 亀背に脈腹により使つた例がある 12 不妊症 交接後出血 無月経に 脈腹に従って使つた例がある 27

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29 活用自在の処方解説 9 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 1 体力中等度で上腹部が張って苦しく 舌苔を生じ 口中不快 食欲不振 時により微熱 悪心などのあるものの次の諸症 諸種の急性熱性病 肺炎 気管支炎 感冒 胸膜炎 肺結核などの結核性諸疾患の補助療法 リンパ腺炎 慢性胃腸障害 産後回復不全 2 慢性肝炎における肝機能障害の改善 b 漢方的適応病態 1 半表半裏証 少陽病 すなわち発熱性疾患の経過中にみられる 発熱 往来寒熱 胸脇部が脹って苦しい 胸脇苦満 胸脇部痛 口が苦い 悪心 嘔吐 咳嗽 咽のかわき 食欲がない 目がくらむなどの症候 2 肝鬱化火 脾気虚 痰湿 すなわち ゆううつ感 いらいら 怒りっ ぽい 口が苦い 胸脇部が脹って苦しい 寝つきが悪いなどの肝鬱化 火の症候に 元気がない 食欲がない 疲れやすいなどの脾気虚の症 候と 悪心 嘔吐 咳嗽 多痰などの痰湿の症候を伴うもの 構成生薬 柴胡7 半夏5 黄䊫3 大棗3 人参3 甘草2 生姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和解半表半裏 清熱透表 疏肝解欝 補気健脾 和胃止嘔 効果増強の工夫 瘀血の存在する場合には適切な駆瘀血剤と合方される 処方例 ツムラ小柴胡湯 ツムラ桂枝伏苓丸 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒 流感 チフス ワイル氏病 麻疹 丹毒 猩紅熱 泉熱 マラ リヤ 暑気あたり 小児原因不明の熱 抗生物質を使用後高熱が下ら ぬものなど 2 気管支炎 気管支喘息 気管支拡張症 肺炎 膿胸 肺気腫 肺結核 肋膜炎など 3 頭痛 肋間神経痛 半身不随等で胸脇苦満を伴うもの 4 肝炎 胆嚢炎 胆石症 黄疸 肝機能障害等で或は発熱或は寒熱或は 無熱 或は黄疸があり胸脇苦満心下痛食欲不振嘔吐 或は神経症状あ るもの 5 胃炎 胃酸過多症 胃酸欠乏症 胃潰瘍 胃痛 吐血 便秘 食欲不 振吃逆等で胸脇苦満 或は胃部疼痛嘔吐するもの 29

30 6 リンパ腺炎 るいれき 扁桃腺炎 中耳炎 乳嘴突起炎 耳下腺炎 乳腺炎 各種化膿症等で発熱疼痛 或は食欲不振或は胸脇苦満するもの 7 腎炎 腎石 腎孟炎等で或は発熱 往来寒熱或は無熱で胸脇苦満 或 は浮腫するもの 8 急性附属器炎 産褥熱で発熱 往来寒熱し 血の道症で月経止まず 寒熱胸脇苦満 神経症状があるもの 9 急性睾丸炎 副睾丸炎で発熱腫痛するもの 10 陰部瘙痒症 いんきんたむし 霜やけ 帯状疱疹 禿頭 頭汗症等で 或は胸脇苦満 或は瘙痒不眠 或は痛むもの 11 車酔いで嘔吐胸脇苦満 打撲で発熱胸脇苦満するもの 12 神経質 ノイローゼ 肝積持ち 唖 どもり 不眠症 てんかん 精 神分裂症 痙攣発作など 本方の話題 奥田謙藏は著書 古方要方解説 で小柴胡湯を いわゆる少陽正対の方にし て その応用範囲最も広大なり と述べられた その内容と先生が昭和12年 月に 漢方と漢薬 第四巻第五号に投稿された治験例を参考までにご紹介し よう 熱性病 胸痛あり 時に発熱 悪寒し 心下痞䌤して嘔し 脈弦なる証 悪風して時に発熱し 気欝し 胸満感あり 汗出でて尿利減少する証 熱候無く 腹痛刺すが如く 嘔 渇ありて心煩し 脈沈なる証 熱性病 便秘し 時に譫語し 喘咳ありて嘔吐し 食欲無くして脈浮緊の証 熱性病 胸腹膨満を覚えて食を欲せず 若し食すれば嘔吐する証 胸部膨満感ありて心悸亢進し 時時腹痛し 其の脈沈遅なる証 発汗を行ひて後 発熱減退するも 未だ心身爽快ならず 時に腹痛甚しく 口乾きて嘔する証 婦人 産後の頭痛にして 胸脇苦満を訴ふる証 小児 乳食を吐し 発熱する証 10 諸種の黄疸にして 腹痛 嘔吐を発する証 11 マラリア 及び其の類似疾患 12 フルンケル 及び其の類似疾患にして 往来寒熱を発する証 30

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33 活用自在の処方解説 10 構成生薬 柴胡5 半夏4 黄䊫2 甘草2 桂皮2 芍薬2 大棗2 人参2 生姜1 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和解半表半裏 解表 疏肝解鬱 補気健脾 和胃止嘔 効果増強の工夫 消化性潰瘍への鎮痛効果を高めるために桂枝加芍薬湯を併用する 処方例 ツムラ柴胡桂枝湯 ツムラ桂枝加芍薬湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 あるいは分 食前 上記の桂枝加芍薬湯の代わりに芍薬甘草湯を用いる場合には 甘草量 が過剰となる危険性があるので 芍薬甘草湯は頓用として定時服薬としな いことが大切である 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒 流感 マラリヤ 肺炎等で発熱表証があり或は咳食欲不振心下 圧重感 直腹筋緊張等の裏証を帯るもの 2 肺結核 肋膜炎で発熱汗出で 軽咳或は胸痛し 脇下直腹筋緊張する もの 3 胃痛 胃酸過多症 減酸症 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 急性虫垂炎 急 性大腸炎 膵臓炎 胆石症 肝炎 黄痘 肝機能障害等で疼痛 心下 部緊張し或は嘔 呑酸嘈雑等するもの 4 急性腎炎 ネフローゼ 腎孟炎等で発熱心下支結するもの 5 肋間神経痛 頭痛 関節痛等で或は発熱或は無熱 心下緊張するもの 6 ノイローゼ 神経衰弱 血の道症 ヒステリー てんかん 癎 脳症 等で神経質となり 不眠 いらいら怒りつぼい 頭痛など 7 盗汗 夜尿症などに使つた例がある 8 結膜炎 フリクテン 緑内障などで胃部が緊張するもの 9 皮膚瘙痒症で 神経がたかぶつたものなどを治した例がある 33

34 11 柴胡桂枝乾姜湯 さいこけいしかんきょうとう 出典 傷寒論 金匱要略 1 傷寒 すでに発汗し またこれを下し 胸脇満微結し 小便不利 渇 して嘔せず ただ頭に汗多く 往来寒熱し 心煩する証 傷寒論 太 陽病下篇 2 瘧 寒多くして微しく熱あり あるいは ただ寒して熱せざる証 金 匱要略 瘧病篇附方 腹候 腹力中等度よりやや軟 1-3/5 軽度の心 下痞䌤 胸脇苦満 臍上悸を認める 腹候図 気血水 気水主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈 弦細 舌質は乾燥 舌苔は少し 腹候 腹力中等度よりや や 軟 1-3/5 軽度の心 下痞䌤 胸脇苦満 臍上 悸を認める 口訣 婦人積聚水飲を兼ね時々衝逆 肩背強急 するものに験あり 浅田宗伯 極く軽度の胸脇苦満を胸脇満微結とみなす 藤平健 本方は伝統的に呼吸器疾患に適用され 補中益気湯と略同病位にある 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 体力が弱く 冷え症 貧血気味で 動悸 息切れがあり 神経過敏のもの の次の諸症 更年期障害 血の道症 神経症 不眠症 b 漢方的適応病態 1 津液不足 裏寒の症候を伴う半表半裏証 舌質は乾燥 舌苔は少 脈 は弦細 2 肝鬱化火 胃寒 津虚 舌質は乾燥 舌苔は少 脈は沈弦細 構成生薬 柴胡6 黄䊫3 括楼根3 桂皮3 牡蛎3 甘草2 乾姜2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和解散結 温裏祛寒 和解半表半裏 温裏祛寒 生津止汗 疏肝解欝 安神 潤燥 温裏 34

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36 12 柴胡加竜骨牡蛎湯 さいこかりゅうこつぼれいとう 出典 傷寒論 傷寒 之を下し 胸満 煩驚し 小便利せず 䋫語し 一身ことごとく 重く 転側すべからざる証 傷寒論 太陽病中篇 腹候 腹力は中等度かそれ以上 3-5/5 胸脇苦 満 臍上悸を認め 心下痞䌤を伴う 腹候図 気血水 気水中心の気血水 六病位 少陽病 ツムラの製剤は大黄が入らない のが特徴で 清熱安神の性格はやや穏やか で用いやすい 脈 舌 腹候 腹力は中等度かそ れ 以 上 3-5/5 胸 脇 苦 満 臍上悸を認め 心下 痞䌤を伴う 脈 実 弦やや緊 舌 乾燥白苔 有熱時は 脈は弦数 舌質は紅 苔は黄やや膩の傾向 口訣 この方は肝胆の鬱熱を鎮墜するの主薬 浅田宗伯 雑病においては柴胡桂枝乾姜湯と間違いやすい それはともに動悸を手 がかりとするからであるが 姜桂は虚候にとり この方は実候にとりて施 すべし 浅田宗伯 うつ状態の例には 第一選択として本方を用いることが多い 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力があり 心悸亢進 不眠 いらだち等の精神症状のあるものの 次の諸症 高血圧症 動脈硬化症 慢性腎臓病 てんかん ヒステリー 小児夜啼症 陰萎 より深い理解のために 本方は 生活習慣病の時代に再び脚光を浴びるよう になった 高血圧症や動脈硬化症に対して適応を有する漢方製剤は珍しい存 在である 一方 それを支持する基礎および臨床の研究結果が出ている b 漢方的適応病態 1 心肝火旺 脾気虚 痰湿 すなわち いらいら 不眠 多夢 驚きや すい 動悸 のぼせ 落ち着かない 胸脇部が脹って苦しい 筋肉が びくびく引きつるなどの心肝火旺の症候に 疲れやすい 食欲不振 36

37 活用自在の処方解説 12 悪心 腹部膨満感などの脾気虚 痰湿の症候を伴うもの 腹部で動悸 を触れることが多い 2 少陽病 半表半裏証 に 動悸 驚きやすい 不眠 胸苦しいなどの心 肝火旺の症候を伴うもの 構成生薬 柴胡5 半夏4 桂皮3 茯苓3 黄䊫2.5 大棗2.5 人参2.5 牡蛎2.5 竜骨 単位g 2.5 生姜1 原方には安神の鉛丹が入るが毒性のために現在は用いられない 中国では 代わりに代赭石を用いるが これも長期間ではヒ素中毒などの問題も起こ りうるとされる TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱安神 補気健脾 化痰止嘔 効果増強の工夫 大黄を加味して 攻下とともに清熱安神作用を強化することができる 処方例 ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯 局方大黄末 7.5g㾹 1.0g㾸 分 食間 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 神経衰弱 ノイローゼ ヒステリー 更年期障害 血の道症 精神分 裂症 てんかん 脳症 譫妄 夜泣き 四十肩 陰萎 不眠症 耳鳴 眩暈 日射病 施灸後火傷による煩躁などで 煩驚 不眠 動悸 興 奮など各種の刺激性神経症状を呈し腹動 便秘 胸脇苦満 寒熱など があるもの 2 バセドゥ氏病 脚気等で実証で動悸腹動便秘するもの 3 心臓弁膜症 心悸亢進症 心臓喘息 狭心症 心筋障害等の実証で胸 苦しく動悸腹動便秘或は浮腫小便不利するもの 4 動脈硬化症 高血圧症 脳出血等の実証で 動悸 肩こり めまい 不眠腹動 便秘 浮瞳 麻痺等があるもの 5 慢性リウマチ 半身不随 麻痺等の実証で 運動障害小便不利 或は 腹動神経症状を伴うもの 6 腎炎 ネフローゼ 萎縮腎 尿毒症等で浮腫動悸 腹動 小便不利 便秘神経症状のある実証のもの 7 肝硬変症で心下部苦しく 或は腹水浮腫 便秘小便不利するもの 8 眼病で胸腹動 頭眩するものに使つた例がある 9 禿頭病に使つた例がある 37

38 14 半夏瀉心湯 はんげしゃしんとう 出典 傷寒論 金匱要略 1 心下満ちて痛まざる証 傷寒論 太陽病下篇 2 嘔して腸鳴り 心下痞する証 金匱要略 嘔吐噦下利病篇 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 軽度の心 下痞䌤を認める 腹候図 気血水 気水中心の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌苔は白から微黄 脈は滑 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-3/5 軽度の心 下痞䌤を認める 口訣 これは熱邪が水邪を挟んで心下に結ぼれ 痞䌤を起こして升降の気を阻 み あるいは水邪が上下に動いて時に嘔吐 腹中雷鳴 下痢を発する等の 証に対する薬方である 奥田謙藏 心下部の痞塞感が第一で 悪心 嘔吐 食欲不振を訴え 他覚的には心 下部に抵抗をみとめ しばしば胃内停水 腹中雷鳴 下痢を伴い 舌白苔 を生じることが多い 矢数道明 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 みぞおちがつかえ ときに悪心 嘔吐があり 食欲不振で腹が鳴って軟便 または下痢の傾向のあるものの次の諸症 急 慢性胃腸カタル 発酵性下 痢 消化不良 胃下垂 神経性胃炎 胃弱 二日酔い げっぷ 胸やけ 口内炎 神経症 b 漢方的適応病態 脾胃不和 すなわち悪心 嘔吐 吃逆 上腹部の膨満感とつかえなどの胃 気上逆の症候に 腹鳴 下痢などを伴うもの 構成生薬 半夏5 黄䊫2.5 人参2.5 甘草2.5 大棗2.5 乾姜2.5 黄連1.0 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和胃降逆 消痞 止瀉 清熱 調和腸胃 38

39 活用自在の処方解説 14 より深い理解のために 北京中医薬大学の劉渡舟教授によれば 別な言い方 では 清上温下 上部の熱を冷まし下部の寒を温める 苦降辛開 黄連黄䊫の 苦味で胃気を下降させ 乾姜の辛で脾気を開く 䣈痰消痞 半夏により痰飲 を取り除き 心下痞満を消失させる という 教授は 心下痞満に痰飲の症 候を伴ったものとして 痰飲の存在を重視している 劉渡舟著 中国傷寒論 この見解は口訣に引用した奥田謙藏の解釈とも共通する 効果増強の工夫 急性の胃腸炎などに五苓散と併用する 処方例 ツムラ半夏瀉心湯 ツムラ五苓散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 慢性炎症性腸疾患などに四君子湯と併用し下痢改善と補気作用を期待する 処方例 ツムラ半夏瀉心湯 ツムラ四君子湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 胃炎 胃酸過多症 胃拡張症 胃下垂 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 悪阻 胃腸カタル 薬物副作用 神経性嘔吐等で心下部がつかえ 嘔吐下利 胸やけ 食欲不振腹鳴 の内の一つ或は二つ以上あるもの 2 口中糜爛 便秘 吃逆 食道痛 胃痛 腹満痛等で心下がつかえるもの 3 肺結核で心下部硬く腹鳴するものに使った例がある 4 蓄膿症で心下痞䌤するを治した例がある 5 視力障害で心下痞するを治した例がある 6 喘息で心下痞するもの 7 心中煩悸 悲傷 癎 精神分裂症等で心下痞するもの 8 月経不順 経閉で心下痞するものを治した例がある 9 鼠毒で心下痞するものを治した例がある 10 浮腫で心下痞するもの 39

40 15 黄連解毒湯 おうれんげどくとう 出典 王燾著 外台秘要 時疾 煩悶に苦しみ 乾嘔 口燥 呻吟 錯語して臥すを得ざるを治す より深い理解のために 時疾は時病 時令病ともいい その季節に多発する 病を指す 伝染性 流行性のものが少なくない 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認め ることがある 腹候図 気血水 気水主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈は数で有力 舌質は紅 黄苔 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 めることがある 口訣 のぼせて胃部がつかえるもの あるいは軟便で便秘したり 目が充血す るもの 現代漢方治療の指針 本方は充血を去り 精神不安をのぞくから 喀血 吐血には止血と同時 に精神症状も消散させる 同 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力があり のぼせ気味で いらいらする傾向のあるものの次の諸 症 喀血 吐血 下血 脳 血 高血圧 心悸亢進 ノイローゼ 皮膚そ う痒症 胃炎 b 漢方的適応病態 1 熱盛 すなわち高熱 顔面紅潮 目の充血 熱感 口や咽のかわき 口が苦い いらいら 転々反側 不眠などで 甚だしければ意識障害 狂躁状態を呈する 2 血熱妄行 すなわち 熱盛に伴う各種の出血あるいは発疹 3 肝胆湿熱 脾胃湿熱 膀胱湿熱 すなわち 口がねばる 口が苦い 口臭 歯痛 悪心 嘔吐 胸脇部や腹部の膨満感 腹痛などがあり 黄疸 あるいは膿血性の下痢 裏急後重あるいは頻尿 排尿痛などが 生じる 発熱を伴うことが多い 4 心火旺 肝胆火旺 胃熱 いらいら のぼせ 顔面紅潮 目の充血 40

41 活用自在の処方解説 15 口臭 口が苦い 口渇 口内炎 動悸 頭がさえて眠れない 気分が 落ち着かない 胸脇部が脹って苦しい 上腹部痛 悪心などの症候 より深い理解のために 熱盛 実熱 実火 とは炎症症状をいい 三焦の実 火 とは全身の炎症を意味する また これに伴う脳の充血や自律神経系興奮 による血管透過性増大に伴う出血や発疹のことである 湿熱 とは 炎症とともに炎症性滲出や水分の吸収 排泄の障害がみられ るもので 消化器系 泌尿器系の炎症で生じる 心火旺 肝胆火旺 胃熱 は 主に脳の興奮性増大 脳の充血 自律神経系 の興奮などによる症候で 軽度の炎症も介在する 不眠 動悸 落ち着きがな いなどの大脳皮質や心臓の駆血能に関連した症候を 心火旺 いらいら 胸脇 部の脹った痛み 怒りっぽいなど自律神経系の失調に関連した症候を 肝胆火 旺 悪心 上腹部痛 歯痛など上部消化器系に関連した症候を 胃熱 という 構成生薬 黄䊫3 黄連2 山梔子2 黄柏1.5 単位g より深い理解のために 本方は三焦の実火 実熱 熱盛 に対する基本処方 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱瀉火 解毒 清熱化湿 止血 効果増強の工夫 効果を増強する目的で 大黄を加味 東洞は 去黄柏加大黄として好んで 用いたという 東洞の治験を追試するには 三黄瀉心湯を合方すればよさ そうである 処方例 ツムラ黄連解毒湯 ツムラ三黄瀉心湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 吐血 喀血 衂血 下血 血尿 麻疹 痘瘡 皮膚病 皮膚瘙痒症 じん 麻疹 諸熱性病の残余余熱 狂躁症 喜笑やまざる症 血の道症 めまい 心悸亢進症 ノイローゼ 精神病 脳溢血 高血圧症 酒渣鼻 黒皮症な ど 龍野一雄著 改訂新版漢方処方集 より 吉益南涯の黄解散として 喀血 吐血 鼻血 桑木崇秀 脳充血または高血圧 脳梗塞による精神不安や不眠 喀血 吐血 衂血 眼出血 球結膜下出血 網膜出血 過飲による心煩 急性胃炎 火傷後の 興奮 皮膚瘙痒症で赤味が強く痒さのひどいもの 41

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43 活用自在の処方解説 より深い理解のために 16 精神症状 咽喉部 胸部の異常感 水毒 手足の冷え などに着眼して運用するとよい 構成生薬 半夏6 茯苓5 生姜1 厚朴3 蘇葉2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気降逆 化痰散結 より深い理解のために 燥性が強いので 水毒のあるもの以外に適応しては ならない すなわち 津液の乏しいもの 陰虚 には用いない方がよい 効果増強の工夫 肝鬱を解く目的の疏肝剤と併用して 効果が増強される 江戸時代から 古典的柴胡剤と合方し広く応用された 次の処方は柴朴湯として知られている 処方例 ツムラ半夏厚朴湯 ツムラ小柴胡湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 咽頭炎 喉頭炎 気管支炎 肺結核 気管支喘息 声帯浮腫 声がれ 神経性食道狭窄症 バセドウ氏病 悪阻等で咽の奥 食道辺に異物感 や乾燥刺戟感 痒い感 詰る感じ等がし 或は咳 動悸 めまい 腹満 足冷等を訴えるもの 2 神経質 ノイローゼ 気鬱 神経衰弱 血の道症 精神分裂症等で 疲労頭重 めまい 不安 動悸 胸中苦悶 足冷 咽中異常感等を訴え 腹満 胃部振水音を認めることが多い 3 腎炎 ネフローゼ 心臓不全等の 虚証で 浮腫し咽中に異常感を訴 えるもの 4 陰嚢水腫の虚証で腹満するものを治した例がある 5 胃下垂で胃部振水音や涎沫があるもの 6 ヘルニヤで腹満するものに使つた例がある 7 身体 手足 疼痛し 或は拘攣搐搦するも他に変化なく 気によるも のに使つた例がある 43

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45 活用自在の処方解説 より深い理解のために 17 本方は主として消化管や組織の余剰の水分を血中に 引き込むことによって利尿し 同時に口渇 下痢 浮腫 留飲などを寛解す るものである したがって 脱水には用いるべきでない 甘草や人参剤を用いて浮腫が出現する場合があるが 本方で速かに消褪す る 構成生薬 沢瀉4 蒼朮3 茯苓3 猪苓3 桂皮1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 利水滲湿 通陽 解表 利水して体内の湿をさばき 温めて 表を発する より深い理解のために 五苓散は 水湿による尿量減少 口渇に対する代表 処方である したがって 1 脱水には禁忌 2 明確な熱証を呈するもの には適さない 3 気虚 陽虚による痰飲には適切な配慮が必要である ち なみに真武湯は 陽虚の下半身の水滞に用いるとされている 効果増強の工夫 附子を加えて利尿効果を増強する 処方例 ツムラ五苓散 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒 流感 急性腸カタル 消化不良 コレラ コレラ様吐瀉 小児 吐乳等で 発熱 下利 嘔吐 煩渇 尿利減少するもの 2 胃拡張 胃アトニー 胃下垂 留飲症 胃液分泌過多症 幽門狭窄等 で口渇 嘔吐 胃部振水音 心下部がつかえ小便不利するもの 3 虚証の黄痘に使つた例がある 4 糖尿病で煩渇小便不利するもの 5 腎炎 ネフローゼ 膀胱炎 尿毒症 尿閉 心臓不全等で 浮腫 小 便不利 煩渇 或は発熱頭痛 脳症を伴うもの 6 てんかん メニエール氏症候群 日射病 脳水腫等でめまい 昏倒 煩渇小便不利 腹動 口からあぶくを出す等があるもの 7 夜尿症で煩渇するもの 咳をすると小便が漏れるものに使つた例がある 8 結膜炎 角膜フリクテン 角膜潰瘍 斜視等の眼病で 羞明 充血 閃視飛蚊症等があり 煩渇 小便不利等のもの 9 禿頭 脱毛で肛門また陰部に瘡を生ずるもの 或は子宮出血後に起つ たものに使つた例がある 10以下略 45

46 18 桂枝加朮附湯 けいしかじゅつぶとう 出典 吉益東洞経験方 吉益東洞が 傷寒論 の桂枝加附子湯より創方したもの 桂枝湯証にして 悪寒し および肢節微痛し 以て屈伸し難き者を治す 吉益東洞著 方極 腹候 中等度よりやや軟 2-3/5 胃内停水を認 めることがある 腹候図 気血水 気主体の気血水 六病位 腹候 中等度よりやや軟 2-3/5 胃内停水を認 めることがある 太陽病 脈 舌 慢性疾患であれば 淡白舌 微白苔 脈は 沈弱 口訣 桂枝剤中に附子あるものは 皆陽証中の客寒なり 腹診配剤録 本方適応症に似て 咽喉がかわき 夜間排尿回数が多いものには八味丸 を用いる場合が多い 現代漢方治療の指針 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 関節痛 神経痛 b 漢方的適応病態 寒湿痺 朮附湯 朮 附子 のもつ散寒祛湿の効能を桂枝湯で補助するもの 浮腫が明らかなときには茯苓を配合して利尿を強める 構成生薬 桂皮4 芍薬4 蒼朮4 大棗4 甘草2 生姜1 附子0.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 散寒祛湿 止痙 解表 効果増強の工夫 附子末を加味して 鎮痛効果を増強 処方例 ツムラ桂枝加朮附湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 46 分 食間

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48 19 小青竜湯 しょうせいりゅうとう 出典 傷寒論 傷寒 表解せず 心下に水気 停水 あり 乾嘔し 発熱して咳し 或は 渇し 或は利し 或は噎 むせること し 或は小便利せず 少腹満し 或 は喘す 傷寒論 太陽病中篇 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 胃内停水 を認める 腹候図 気血水 水と気が主体 六病位 太陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-3/5 胃内停水 を認める 脈は 浮緊あるいは滑 舌苔は白潤 ある いは白滑 口訣 気管支炎にして微熱あり 背部に悪寒を感ずる証 奥田謙藏 心下に水飲があって しかも表の邪が解せず この水飲動揺によって 諸症候を現わすものである 矢数道明 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 1 下記疾患における水様の痰 水様鼻汁 鼻閉 くしゃみ 喘鳴 咳嗽 流涙 気管支喘息 鼻炎 アレルギー性鼻炎 アレルギー性結膜炎 感冒 2 気管支炎 b 漢方的適応病態 1 表寒による寒痰の喘咳 2 風水 すなわち 突然発生する全身浮腫と尿量減少で 表証を伴うこ とがある 構成生薬 半夏6 甘草3 桂皮3 五味子3 細辛3 芍薬3 麻黄3 乾姜3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 別名 温肺化痰湯 辛温解表 温肺化痰 平喘止咳 利水 48

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51 活用自在の処方解説 20 構成生薬 黄耆5 防已5 蒼朮3 大棗3 甘草1.5 生姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補気健脾 利水消腫 祛風止痛 効果増強の工夫 1 附子を加えて鎮痛 利水作用を増強 処方例 ツムラ防已黄耆湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食間 2 金匱要略の加減にならって 少量の麻黄剤合方で 利水 鎮痛 鎮咳 を増強 処方例 ツムラ防已黄耆湯 ツムラ越婢加朮湯 7.5g㾹 2.5g㾸 混合して 分 食前 3 以上を勘案して さらに冷えが加わった場合に対処 処方例 ツムラ防已黄耆湯 7.5g ツムラ越婢加朮湯 2.5g 混合して 分 食前 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒で桂枝湯証のごとく 発熱 悪風 頭痛 身体疼 自汗脈浮だが 身重感 また小便不利するもの 2 腎炎ネフローゼ 妊娠腎等 脈浮 小便不利 浮腫 特に下半身に多 いもの 3 陰嚢水腫で脈浮のもの 4 知覚また運動麻痺で 脈浮 汗が出やすいもの 5 カルブンケル 筋炎 骨髄骨膜炎 踝骨カリエス 結核性足関節炎等 で潰瘍となり 脈浮 或は痛み 或は浮腫するもの 6 肥満症で 筋肉軟くぶよぶよし 或はのぼせ 或は気鬱或は月経不順 するもの 7 皮膚病で顔色薄黒きもの 8 冷え性で温剤が効かぬもの 51

52 21 小半夏加茯苓湯 しょうはんげかぶくりょうとう 出典 金匱要略 にわかに嘔吐 心下痞し 膈間に水有り 眩悸す 痰飲咳嗽篇 まず渇し 後に嘔す 同 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-4/5 胃内停水 を認める場合がある 腹候図 気血水 水と気が主体 六病位 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-4/5 胃内停水 を認める場合がある 少陽病 脈 舌 脈は滑 舌苔は白滑 口訣 日を経て食すすまざるもの この方に生姜を倍加して能く効を奏す 浅田宗伯 痰飲の発生する根本原因を除くものではなく 対症的に頓服すべきもの 中医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 体力中等度の次の諸症 妊娠嘔吐 つわり そのほかの諸病の嘔吐 急性 胃腸炎 湿性胸膜炎 水腫性脚気 蓄膿症 b 漢方的適応病態 痰飲による胃気上逆 すなわち悪心 嘔吐 吃逆 口渇がない或はやや口 渇して飲むとすぐ吐くなどの症候で 上腹部のつかえ めまい 動悸を伴 うことがある 咳嗽 喀痰に用いてもよい 構成生薬 半夏6 茯苓5 生姜1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和胃降逆 化痰利水 より深い理解のために 中の薬能である 52 類似した構成と薬効の二陳湯は 燥湿化痰 理気和

53 活用自在の処方解説 21 効果増強の工夫 鎮吐作用の増強には陳皮を加味する意味で二陳湯を合方する 処方例 ツムラ小半夏加茯苓湯 ツムラ二陳湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 生のヒネショウガを小指の先ほどすり下ろして薬液に混ぜるとさらに鎮 吐作用が強まる 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 嘔吐で或は心下部がつかえ眩悸し 或は渇して水を飲むと嘔くもの 或は汗や頭汗があり 小便不利するもの 2 全身浮腫 陰嚢に及び 嘔逆 気息急迫 小便不利するものを治した 例がある 3 眩暈を発し 手足微厥 脈細 嘔 悸 心下痞満するものを治した例 がある ヒ ン ト つわりにかつて用いられた処方は 本方と乾姜人参半夏丸とがある 本方 で無効なときには試みるとよい しかし近年では 妊娠中の服薬に対してひ どく神経質になる妊婦およびその家族も少なくないので 実際に服薬を勧め ることには慎重になったほうがよい 残念なことに 現代は専門家としての 医師の意見が患者側の思い込みでいかようにも扱われる時代である よかれ としたことが 思いもよらぬ非難の矛先を向けられかねない社会情勢下では 情けないが医師は自己防衛に努めるほかはないようである 本方は必ずしもつわりの専門薬ではない 胃腸炎などで嘔吐が続くときや 嘔吐があるために本来の治療薬が服用できないときに 本方をまず服用させ て鎮吐し しかるのちに目的の治療薬を飲ませるなども行われる そのよう な保険診療上の適応も当然認められている 53

54 22 消風散 しょうふうさん 出典 外科正宗 風湿血脈に浸淫し 瘡疥を生ずるを致し 瘙痒絶えざるを治す および 大人小児 風熱䛾疹身に遍く 雲片斑点 たちまち有り たちまち無きに 並び効あり 外科正宗 瘡疥門 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹部皮膚に肌膚 甲錯を認める 腹候図 気血水 血水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈は数 舌質は紅 舌苔は微黄 口訣 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹部皮膚に肌 膚甲錯 乾燥してザラザ ラと粗造なこと を認め る 慢性の皮膚疾患にバランスのよい薬方で ある 道聴子 急性症状には無効で この場合は越婢加朮湯が適する 現代漢方治療 の指針 本方は 湿疹群 蕁麻疹群 痒疹群に対する代表処方である 中医処 方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 分泌物が多く かゆみの強い慢性の皮膚病 湿疹 蕁麻疹 水虫 あせも 皮膚そう痒症 b 漢方的適応病態 風湿熱の皮疹 すなわち かゆみが強い 夜間に増悪する傾向がある 局 所の発赤と熱感 浸出液が多いあるいは水泡形成 体のほてりや熱感 口 渇などがみられる 構成生薬 石膏3 地黄3 当帰3 牛蒡子2 蒼朮2 防風2 木通2 知母1.5 甘草1 苦参1 荊芥1 胡麻1.5 蝉退1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 疏風 清熱化湿 養血潤燥 54

55 活用自在の処方解説 22 より深い理解のために 疎風 とは 祛風解表薬を用いて 風邪を疏散する 治法 風寒表証には防風 桂枝 藁本などを用い 風熱表証には薄荷 牛蒡 子などを用い 風湿表証には羌活 白芷などを用いる 効果増強の工夫 1 十味敗毒湯を合方して祛風化湿 清熱解毒作用を増強する 処方例 ツムラ消風散 ツムラ十味敗毒湯 7.5g 㾹分 食前 㾸 5.0g 黄連解毒湯を合方して清熱作用を増強する 処方例 ツムラ消風散 ツムラ黄連解毒湯 7.5g 㾹分 食前 㾸 5.0g 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より すべて頑固な皮膚病 湿疹 じん麻疹 水虫 あせも 皮膚瘙痒症 夏期 に悪化する皮膚病など 龍野一雄著 改訂新版漢方処方集 より 頑固乾燥性で 夏期また温暖時に増悪する皮膚病 じん麻疹 ヒ ン ト 消風散はバランスのよい薬ということができる 皮膚炎は悪化して外来を 訪れる例が大半であるから その時点では患部は炎症し赤く発赤腫脹してい る場合が多い そのときの治療には まず熱を冷ますことが必要である 消風散はその構成生薬が 大寒の石膏を始めとして六種の寒涼薬 地黄は議 論が分かれるところから 数に含めないでおく と四種の温薬 二種の平薬 温 めも冷しもしない である 全体としては 寒涼薬がやや勝った構成となって いる すなわち 皮膚炎初診時には適した薬味構成である ただし皮膚炎だからといって すべて消風散でよいというわけにはいかな いのはもちろんである かぶれなど接触皮膚炎の急性症状には本方は無効で この場合は越婢加朮湯が適する 現代漢方治療の指針 という口訣もある 55

56 23 当帰芍薬散 とうきしゃくやくさん 出典 金匱要略 1 婦人懐妊し 腹中䉘痛する証 金匱要略 婦人妊娠病篇 2 婦人 腹中諸疾痛の証 婦人雑病篇 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 瘀血の圧 痛を認める 胃部振水音を聞く場合がある 腹候図 気血水 血水主体の気血水 六病位 太陰病 脈 舌 脈は軟滑 あるいは細 舌は淡紅 胖大 舌苔は白 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-3/5 瘀血の圧 痛を認める 胃部振水音 を聞く場合がある 口訣 其の人 心下に支飲ありて小便少なく 或は冒する者は 当帰芍薬散之 を主る 能条保庵著 医聖方格 和血に利水を兼ねたる方ゆえ 建中湯の症に水気を兼るものか 逍遙散 の症に痛みを帯ぶるものかいずれにも広く用うべし 浅田宗伯 顔にはけして熱色を帯びず 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく 腰脚の冷えやすいものの次の諸症 貧 血 倦怠感 更年期障害 頭痛 頭重 めまい 肩こり等 月経障害 月 経困難 不妊症 動悸 慢性腎炎 妊娠中の諸病 浮腫 習慣性流産 痔 腹痛 脚気 半身不随 心臓弁膜症 b 漢方的適応病態 血虚 脾虚湿盛 すなわち 皮膚につやがない 頭がボーッとする 頭痛 手足の痺れ感 筋の痙攣 月経量が少ない 月経が遅れる 月経痛などの 血虚の症候に 食欲不振 疲れやすい 顔や手足のむくみ 頭が重い 腰 や四肢の冷え 腹痛 泥状 水様便 白色帯下 尿量減少などの脾虚湿盛 の症候を伴うもの 構成生薬 芍薬4 蒼朮4 沢瀉4 茯苓4 川芎3 当帰3 単位g 56

57 活用自在の処方解説 23 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補血活血 健脾利水 調経止痛 より深い理解のために 上記の病態を目標に男性に適用できる また半夏厚 朴湯や香蘇散を合方すると理気剤が加味されることになり応用が拡大する 効果増強の工夫 1 単独では冷えや痛みに効果不十分なときには附子を加味する 処方例 ツムラ当帰芍薬散 5.0g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.0g㾸 分 食前 2 自律神経の不安定な例に理気剤を加える 処方例 ツムラ当帰芍薬散 ツムラ半夏厚朴湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 疲労性 冷え性 貧血性 脈沈弱 無気力 消極的気質等の体質 眩暈 耳鳴 心悸亢進 冷感等の血管運動神経障碍 便秘 下痢 浮腫 胃 部振水音等の新陳代謝及び胃腸障碍 気鬱引込み思案 記憶力減退 頭痛頭重 肩こり 四肢倦怠 腰痛 背痛 腹痛 しびれ感 不眠 嗜眠等の精神及び神経障碍 月経不順 帯下等の婦人科的症状などが 組合さつて起る 2 神経質 ノイローゼ 神経衰弱 ヒステリー 精神分裂症等で 1 の症 状があるもの 3 肺結核 肋膜炎 気管支喘息等で 虚証 疲れやすく 貧血し 肩こり 背痛 頭重 息切れなどするが 咳や呼吸困難は殆どないもの 4 胃アトニー 胃下垂 胃液分泌過多症 胃酸過多症 胃痛 十二指腸 潰瘍などで疲れやすく 頭重 めまい 胃部振水音などするもの 5 腹水 鼓脹で 虚証体質と 食欲不振 腹痛 浮腫 眩 小便不利な どを兼ねているもの 6 慢性下痢 赤痢 肝硬変症 虫垂炎などに使つた例がある 7 高血圧症 低血圧症 メニエール氏症候群 甲状腺腫 バセドゥ氏病 等の虚証で 動悸めまいなどしやすいもの 8 心臓弁膜症 心臓不全 期外収縮 心臓性喘息等で動悸 浮腫 貧血 足冷などするもの 9 腎炎 ネフローゼ 萎縮腎等で8)の如き症状を呈するもの 10 夜尿症 前立腺肥大症で 貧血 冷え性 胃部振水音などあるもの 11 結核性腹膜炎で硬結 或は鈍痛 或は腹水を伴い 貧血冷え性のもの 57

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61 活用自在の処方解説 24 より深い理解のために 肝気鬱結とは ゆううつ感 いらいら 怒りっぽい 頭痛 胸脇部が張って苦しい 脇の痛み 腹痛などをいう 血虚の症候とは 頭がふらつく 頭がボーッとする 目が疲れる 四肢がしびれる 皮膚につ やがない 動悸 眠りが浅い 多夢などをいう 脾虚とは 食欲がない 疲 れやすい 倦怠感 浮腫 下痢傾向 あるいは下痢便秘の交代などの症候を いう 月経については 不定な周期 過少月経 無月経など 構成生薬 柴胡3 芍薬3 蒼朮3 当帰3 茯苓3 山梔子2 牡丹皮2 甘草1.5 生姜1 薄荷1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 疏肝解欝 健脾補血 瀉火 調経 逍遙散に熱証を伴うもの 効果増強の工夫 服後の状態からの判断により 瀉肝 清熱 補気 補血のいずれに重点を 置くかでさまざまな兼用方 合方がありうる 例として瀉肝には竜胆瀉肝湯 清熱には黄連解毒湯 補気には四君子湯 補血には四物湯などが考えられる 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 更年期障害 血の道症 月経不順 流産や中絶および卵管結紮後に起こる 諸神経症状に用いられ また不妊症 結核初期症候 尿道炎 膀胱炎 帯 下 産後口内炎 湿疹 手掌角皮症 肝斑 肝硬変症 慢性肝炎 疳癪持 ち 便秘症等に応用される 龍野一雄 改訂新版漢方処方集 より 月経不順 血の道症 帯下 ノイローゼ 不眠症 心悸亢進症 気鬱症 以上の状態で熱候または上部に充血症状あるもの 桑木崇秀 漢方診療ハンドブック より 虚証の冷えのぼせ 上熱下寒 更年期障害 月経不順 指掌角皮症 61

62 25 桂枝茯苓丸 けいしぶくりょうがん 出典 金匱要略 出典の 金匱要略 の条文は要領を得ない内容なので方極を引用する 経水変有り 或いは胎動き 拘攣上衝し 心下悸するものを治す 方 極 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 瘀血の圧痛を 認める 腹候図 気血水 気血主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 瘀血の圧痛を 認める 舌質は紫 あるいは瘀斑がみられることが 多い 脈は渋あるいは細 あるいは弦 口訣 小柴胡湯との合方は胃腸障害も予防でき 便秘のひどくない蕁麻疹に卓 効を示すことが多い 現代漢方治療の指針 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 体格はしっかりしていて赤ら顔が多く 腹部は大体充実 下腹部に抵抗の あるものの次の諸症 子宮並びにその付属器の炎症 子宮内膜炎 月経不 順 月経困難 帯下 更年期障害 頭痛 めまい のぼせ 肩こり等 冷 え症 腹膜炎 打撲傷 痔疾患 睾丸炎 b 漢方的適応病態 下焦の血瘀 すなわち 下腹部の痛みや圧痛抵抗 あるいは腫瘤 月経不 順 月経困難 不正性器出血などに 下肢の冷えや静脈のうっ滞あるいは のぼせ 頭痛 肩こりなどの症状を伴うもので 舌質は紫あるいは瘀斑が みられることが多い 脈は渋 あるいは細 あるいは弦 一般的な血瘀に 用いてもよい 構成生薬 桂皮3 芍薬3 桃仁3 茯苓3 牡丹皮3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 活血化瘀 消䛾 62

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64 26 桂枝加竜骨牡蛎湯 けいしかりゅうこつぼれいとう 出典 金匱要略 小腹弦急し 陰頭冷え 目眩し 髪落ち 失精 夢交する証 金匱要 略 血痺虚労病篇 腹候 腹力中等度よりやや軟 1-2/5 臍上悸を 認め ときに軽度の腹直筋緊張がある 腹 候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度よりや や 軟 1-2/5 臍上悸を 認め ときに軽度の腹直 筋緊張がある 舌質 やや淡白 舌苔は薄白 脈は軟 口訣 この方は虚労 失精の薬だが 活用すれば小児から成人の遺尿にもきく 浅田宗伯 遺精もそうだが夜尿症 前立腺肥大症や萎縮腎で小便近きもの 帯下な どすべて締まりがなくて下に漏れる症状を対象にして本方を使う 区別を 要するのは八味丸である 龍野一雄 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 下腹直腹筋に緊張のある比較的体力の衰えているものの次の諸症 小児夜 尿症 神経衰弱 性的神経衰弱 遺精 陰萎 b 漢方的適応病態 気血不足 虚陽浮越 すなわち 不安感 不眠 動悸 多夢 夢精などの 虚陽浮越の症状に 元気がない 食が細い しびれ 顔色がわるいなどの 気血不足の症候を伴うもの 構成生薬 桂皮4 芍薬4 大棗4 牡蛎3 竜骨3 甘草2 生姜1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 安神 通陽 補気血 調和栄衛 安神 補虚 64

65 活用自在の処方解説 26 効果増強の工夫 冷えの強い例で効果不十分であれば 附子末を加える 処方例 ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 性的神経衰弱 遺精 夢精 夢交 陰萎 陰茎強直症等で身体がやせ 艶なくめまいがし 四肢倦怠 口唇乾燥 下腹がつれてすじばり 胸 腹の動悸甚しきもの 2 婦人の血の道 性的神経衰弱等で 気がふさがり かーッとなつたか と思うとぞーッとし 月経不順 不眠 多夢 驚きやすく 動悸や息 切れがするもの 3 頭髪が脱けやすいもの 脱毛症 禿頭病 ふけ多きもので 疲労感強 くのぼせ感があり 或は脈緊弦 或は胸腹動悸 或は下腹がつれるもの 4 神経衰弱 不眠症 健忘症 対人赤面症 ノイローゼ てんかん 精 神分裂症 交感神経緊張症 バセドウ氏病 神経性心悸亢進症 腹部 大動脈瘤 小児夜啼き等で興奮しやすく 落つかず 動悸 多汗 驚 き易い 脈微弦等の症状あるもの 5 夜尿症 前立腺肥大症 萎縮腎等で 脈緊弦 腹動 少腹弦急 のぼ せ等のあるもの 6 虚労性の慢性下痢 ヒ ン ト 本方は桂枝湯に竜骨 牡蛎を配したものだが 適応病名からもおわかりの ように 性的神経症とでも呼ぶような病状に対して伝統的に用いられている 類聚方広義 で尾台榕堂は 心気鬱結し 胸腹に動悸があり 寒気や熱感を次々 と覚えて 月経が不順で 夢を見て驚きおそれる婦人が 夢の中で性交して 身体が次第に羸痩する状態に適応するとしている 近年では高齢認知症者の性的逸脱行動が本方にて改善したとの報告もある 男性不妊症の第一人者東京歯科大学市川総合病院石川博通教授 リプロダク ションセンターセンター長 は 本方が勃起障害に有効な可能性を示唆してい る 興味深い漢方薬であるといえよう 65

66 27 麻黄湯 まおうとう 出典 傷寒論 太陽病 頭痛 発熱し 身疼腰痛し 骨節疼痛し 悪風し 汗なくして 喘する 傷寒論 太陽病中篇 傷寒 脈浮緊にして汗を発せず よりて衂をいたす 同上 他にも条文 は多い 腹候 急性疾患初期では脈が重要とされ 腹候は 考慮されない もしリウマチなどの慢性疾 患に適用するとすれば 腹力中等度かそれ 以上 3-4/5 である 腹候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 太陽病 脈 舌 脈浮緊 舌苔は白薄苔 口訣 腹候 急性疾患初期では 脈が重要とされ 腹候は 考慮されない もしリウ マチなどの慢性疾患に適 用するとすれば 腹力中 等度かそれ以上 3-4/5 である 身体疼 いた む者 吉益東洞 この方は太陽傷寒無汗の症に用う 桂麻の弁 仲景氏厳然たる規則あり 犯すべからず 又喘家風寒に感じて発する者この方を用うれば速やかに癒 ゆ 朝川善庵終身この一方にて喘息を防ぐという 浅田宗伯 乳児の鼻閉には 母親の指先を濡らして麻黄湯の粉末をつけ 児の頬粘 膜にすり付けたのち乳を含ませればまもなく改善する 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 悪寒 発熱 頭痛 腰痛 自然に汗のでないものの次の諸症 感冒 イン フルエンザ 初期のもの 関節リウマチ 喘息 乳児の鼻閉塞 哺乳困難 b 漢方的適応病態 表寒 表実 すなわち 悪寒 無汗 発熱 頭痛 身体痛 咳嗽あるいは 呼吸困難 口渇がないなどで 鼻閉 鼻水 ふるえなどを伴うことが多い 舌苔は白薄 脈浮緊 構成生薬 杏仁5 麻黄5 桂皮4 甘草1.5 単位g 66

67 活用自在の処方解説 27 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 辛温解表 止咳平喘 効果増強の工夫 本方の7.5g中には 麻黄5.0gのエキスを含むので 麻黄を含む他薬との合 方は避けるべきである 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒 流感 チフス初期 肺炎初期 麻疹等の急性伝染性熱病の実証で 悪寒 発熱 脈浮緊 或は無汗のもの 2 感冒で 項背強り 膝が痛むものを治した例がある 3 小児の感冒で鼻がつまるもの 4 流感で鼻血が出るもの 5 気管支喘息で脈浮緊のもの 或は感冒から喘息を併発し 頭痛発熱無 汗のもの 6 夜尿症を治した例がある 7 乳汁不足を治した例がある ヒ ン ト 麻黄湯は近年 漢方を専門とする以外の医師からもインフルエンザの治療 薬として認識されるようになった ただ麻黄湯だけがインフルエンザ治療に適しているのかといえばそうでは ない 医療用漢方製剤には状態によって第一選択にしうる薬剤として 桂枝湯 葛根湯 小青竜湯 麻黄附子細辛湯 香蘇散 升麻葛根湯などいろいろとある 1918年から1919年にかけて世界的に流行したいわゆるスペイン風邪と呼ばれ るインフルエンザに わが国の漢方家森道伯が香蘇散 小青竜湯 升麻葛根 湯のそれぞれ加味方で対処したことが 漢方一貫堂医学 矢数格著 にみえ る 実際に 著者の外来で鼻汁から抗原が検出されて診断したインフルエンザ 例に香蘇散を用いて 良好な経過をとった経験がある また解熱までの経過 を短くすることを重要とし そのために薬用量を多く必要とするという論者 もあるが 安全性の面はどうなっているだろうか 安全に快適に治療期間が 短縮されればいうことはないのだが 67

68 28 越婢加朮湯 えっぴかじゅつとう 出典 金匱要略 肉極を治す 熱すれば則ち身体津脱し 䊝理開き 汗大いに泄れ 厲風 気 下焦脚弱なる証 金匱要略 中風歷節病篇 腹候 腹力中等度かそれ以上 3-5/5 腹候図 気血水 水が主体の気血水 六病位 太陽病 脈 舌 脈は浮滑 舌は薄白苔 腹候 腹力中等度かそれ 以上 3-5/5 口訣 条文の 肉極 を翼状贅片とみなして 本方で消褪せしめ得る可能性があ る 藤平健 本方の適応に裏水とあるが 風水 風邪に湿邪の加わったもの の誤りで あろう 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 浮腫と汗が出て小便不利のあるものの次の諸症 腎炎 ネフローゼ 脚気 関節リウマチ 夜尿症 湿疹 b 漢方的適応病態 風水 すなわち急激に発症する全身の浮腫と尿量減少で 浮腫は顔面には じまり 全身に及ぶ 皮膚には光沢があり 圧すると陥凹するがすぐに元 に戻る 初期には 発熱 悪風 咽痛 咳嗽などの表証を伴うことが多い 舌苔は薄白 脈は浮滑 以上 越婢湯の主治 越婢加朮湯は浮腫が強く健 脾利水の朮を加え 組織内の水を血管内に引き入れ利尿により排泄するも の より深い理解のために 急性の関節痛で 腫れて熱感あり 自汗 疲れやすい 舌質が淡白等 衛気虚の症候があれば 本方よりは防已黄耆湯などを考慮す る 構成生薬 石膏8 麻黄6 蒼朮4 大棗3 甘草2 生姜1 単位g 68

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71 活用自在の処方解説 29 構成生薬 麦門冬10 半夏5 粳米5 大棗3 人参2 甘草2 単位g より深い理解のために 気の上逆による咽喉不利 のぼせ 顔面紅潮 咽喉 の乾燥感 刺激感 連発する咳 痰は少なく切れにくい 声が嗄れる 半夏 が燥性である以外はすべて滋潤性である TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 滋陰益気 補益肺胃 降気 効果増強の工夫 1 血虚を伴う場合に 四物湯合方 処方例 ツムラ ツムラ 麦門冬湯 9.0g 四物湯 㾸 5.0g 㾹分 食前 2 口腔内乾燥などで腎虚を伴う場合に 八味地黄丸合方 処方例 ツムラ ツムラ 麦門冬湯 9.0g 八味地黄丸 㾸 5.0g 㾹分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 咽頭炎 喉頭炎 肺炎 肺結核 百日咳などで 乾性の咳が顔が赤く なるほど立続けに劇しく出て 咽に乾燥感 刺戟感等があり 或は略 血することもある 2 高血圧症 動脈硬化症 脳出血等でのぼせ感が強く 或は言語渋り或 は咽喉不利感を訴えるもの 3 咽をつぶし声がかれ 咽に乾燥異常感があるもの 或は老人で食物が 咽につまり通りにくいもの 4 腎臓結石のようで下腹から腰にかけて不快感があり 劇しく咳するも のを治した例がある 5 慢性の下利で癎によるものを治した例がある 6 産後の喘息で 大便秘結するものに使つた例がある 71

72 30 真武湯 温陽利水湯 しんぶとう おんようりすいとう 出典 傷寒論 1 太陽病 発汗し 汗出でて解せず なお発熱し 心下悸し 頭眩し 身䜚動し 振振として地に倒れんと欲す 傷寒論 太陽病中篇 2 少陰病 腹痛し 小便利せず四肢沈重 疼痛し 自下利し 或は䈙し 或は嘔す 少陰病篇 腹候 腹力中等度より軟 1-3/5 胃内停水を認 めることがある 腹候図 気血水 水が主体の気血水 六病位 少陰病 脈 舌 原則として 舌質は淡白 胖大 舌苔は白 滑 脈 沈遅 無力 腹候 腹力中等度より軟 1-3/5 胃内停水を認 めることがある より深い理解のために 舌苔の白滑とは 水っぽく粘液でテラテラ光る苔 口訣 本方のめまいは 雲の上を歩むような頼りなさ また まっすぐな廊下 を歩くといずれかに寄ってしまうようなものである 藤平健 本方の適用される症例はどこでも 沢山ある ただ寐 いね んと欲する を見いだせばよい 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 新陳代謝の沈衰しているものの次の諸症 胃腸疾患 胃腸虚弱症 慢性腸 炎 消化不良 胃アトニー症 胃下垂症 ネフローゼ 腹膜炎 脳溢血 脊髄疾患による運動ならびに知覚麻痺 神経衰弱 高血圧症 心臓弁膜症 心不全で心悸亢進 半身不随 リウマチ 老人性そう痒症 b 漢方的適応病態 陽虚水泛 ようきょすいはん すなわち 浮腫 特に下半身 尿量減少 泥状 水様便 四肢が重だるい 冷え 寒け 口渇はない 疲れやすい 元気がない ときに腹痛 甚だしければ腹水や胸水を生じるなどの症候 構成生薬 茯苓4 芍薬3 生姜1.5 蒼朮3 附子0.5 単位g 72

73 活用自在の処方解説 30 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温陽利水 より深い理解のために 本方は陽虚の浮腫に対する代表的処方である 中 医処方解説 効果増強の工夫 gの附子末を追加する 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒 流感 肺炎 肋膜炎 肺結核 葛根湯や小柴胡湯を服用して反つ て熱が上昇するもの等で 発熱だけするか 或は発熱し他覚的所見が多 いのに自覚症が少いか 或は咳 軟便 小便不利等を伴う 虚証のもの 2 神経衰弱 メニエール氏症候群 脳出血 高血圧症 アテトーゼ 振 顧麻痺 眼球振盪症 内耳疾患 小脳疾患 錐体外路疾患等の虚証で 眩暈 振顫 運動失調 脚弱症等があり 多くは冷え性 胃部振水音 小便不利する 3 心臓弁膜症 心臓不全等の虚証で 心悸亢進 小便不利 或は浮腫軟 便のもの 4 腸炎 大腸炎 腸結核等の虚証で 下利 小便不利 或は腹痛 或は 胃部振水音があるもの 5 消化不良で 貧血 下利 小便不利 甚しければ発熱痙攣を伴うこともある 6 腎炎 ネフローゼ 萎縮腎の虚証で 浮腫 小便不利のもの 7 慢性腎炎で 高血圧 網膜出血 目眩 頭痛 頻尿を治した例がある 8 マラリヤで 発作前水瀉するものに使つた例がある 9 結核性腹膜炎の惨出液 腹水で 虚証 小便不利し 或は腹痛 或は 軟便 或は便秘のもの 10 幽門狭窄 胃液分泌過多症 胃アトニーの類で 或は下利し 或は浮 腫するもの 11 吐血で胸中煩悶 脈沈微 腹満 浮腫するを治した例がある 12 脚気で四肢重だるく 或は動悸 浮腫 小便不利等のもの 13 肥満症で虚証 貧血 動悸 小便不利等のもの 14 癎の脱症 半身不随で口眼喎斜 搐搦するものに使つた例がある 15 筋肉リュウマチ 関節リュウマチ等で疼重する虚証のもの 16 湿疹 じん麻疹 老人性瘙痒症等で 患部貧血性 或は浮腫状 或は うすい分泌多量 或はかゆく虚証のもの 17 遺尿 夜尿症で冷え性 貧血或は蒼黒いもの 18 陰証の雀目 陰証の眼底出血 パンヌス等に使つた例がある 73

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75 活用自在の処方解説 31 構成生薬 大棗4 呉茱萸3 人参2 生姜1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温中補虚 降逆止嘔 散寒止嘔 温胃止痛 健脾益気 効果増強の工夫 習慣性頭痛に本方はしばしば用いられる 類似の状態に適応される桂枝人 参湯や五苓散との鑑別が必要だが 一方を主方として 一方を頓用指示と することにより 早期に鑑別が可能となる 処方例 ツムラ呉茱萸湯 ツムラ五苓散 7.5g 分 食前 包 2.5gとして 包 頭痛時に頓用 日 包 頭痛時に頓用 日 包まで 処方例 ツムラ桂枝人参湯 ツムラ呉茱萸湯 7.5g 分 食前 包 2.5gとして 包まで 胃虚寒の嘔吐に用いる場合には二陳湯などと合方する 処方例 ツムラ呉茱萸湯 ツムラ二陳湯 5.0g㾹 分 5.0g㾸 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 胃炎 胃下垂 胃拡張 幽門狭窄 胃酸過多症 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 蛔虫 流行性黄疸 急性肝炎 悪阻 二日酔等で嘔吐し心下部が強く つかえ 或は痛み 概して貧血冷え性のもの 2 急性腸炎で劇しく下利嘔吐 或は頭痛し冷えるもの 3 胃酸過多症で足冷え 胸やけし 心下が苦しいもの 4 胃液分泌過多症 蛔虫 小児のよだれ生唾を吐くもの等で 唾液や胃 液が多量に口から出るもの 5 吃逆し 冷え性で 胸元がつかえ張るもの 6 感冒 片頭痛 薬物中毒 尿毒症 子癇 ひきつけ 虚脱 昏倒 脳 腫瘍 中枢神経疾患 或は胃病 或は婦人病等で 頭痛劇しく 嘔吐 煩躁 眩暈 食不進 冷汗 胸心下苦悶 足冷 或はのぼせ等がある もの 7 項背強で 心下も強く緊張し冷えるもの 75

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77 活用自在の処方解説 32 構成生薬 乾姜3 甘草3 蒼朮3 人参3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温中散寒 補気健脾 効果増強の工夫 附子を加えて四逆湯加人参 蒼朮となる 処方例 ツムラ人参湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 本方の内容は 乾姜 甘草 蒼朮 人参 附子となり 乾姜 甘草 附子が四逆湯なの で 四逆湯加人参 蒼朮となり 虚寒の下痢や厥冷の甚だしい例に適応がある 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 胃アトニー 胃下垂 胃液分泌過多症 胃潰瘍 胃酸過多症 胃酸欠 乏症 胃腸カタル 腸カタル コレラ様吐瀉 胆石症等で胃部が病硬し 食欲なく足冷 或は下利 胃部振水音 疼痛 嘈囃等を伴うもの 2 よだれ 悪阻 蛔虫等で 生唾や胃のきみずが多く口に出るもので 1 のごとき症状があるもの 3 心臓弁膜症 心臓神経症で心悸亢進し 心下痞䌤また足冷等があるもの 4 喘息で胸痺 或は裏寒するもの 5 肋間神経痛 肋膜炎 心痛等で 胸痛心下痞 手足冷のもの 6 肩痛 四十肩五十肩 項強で のごときもの 7 柔痙で 自汗厥冷するのに使つた例がある 8 腰痛で 寒性の下痢するものを治した例がある 9 糖尿病で 足冷 中焦虚寒のものを治した例がある 10 浮腫 萎縮腎で胃弱 心下痞のもの 11 蛔虫で 腹痛 下痢 よだれ 生唾などあるもの 12 吐血 喀血 腸出血 痔出血 子宮出血等で胃虚寒のもの 13 神経衰弱で 貧血 足が冷えて眠れぬもの 或は心悸亢進するものを 治した例がある 14 肺結核の軽症 また恢復期で倦怠 胃弱 足冷のもの 15 カタル性鼻炎 アレルギー性鼻炎 肥厚性鼻炎等でくしやみが多く出て 胃症状足冷などするもの 16 口噤 失音 四肢強直 五臓中寒を治した例がある 17 小児慢驚 脾胃虚寒 泄瀉するを治した例がある 18 腕を風車のごとくに振廻して止まず 心下痞鞍するを治した例がある 19 舌病 軟便のものを治した例がある 20 帯下で 足冷 小便自利 或は目眩 頭重 軟便等あるもの 77

78 33 大黄牡丹皮湯 だいおうぼたんぴとう 出典 金匱要略 腸癰 小腹腫痞し これを按ずれば即ち痛み 淋のごとく 小便自から 調い 時々発熱し 自汗出で 復た悪寒し その脈遅緊にして 膿未だな らざる証 瘡癰腸癰浸淫病篇 腹候 腹力は中等度以上 3-5/5 特に右下腹に 強い 瘀血の圧痛を認める 腹候図 気血水 血が主体の気血水 六病位 陽明病 脈 舌 舌質は紅 舌苔は黄あるいは黄で乾燥 脈 弦緊 あるは弦数 腹候 腹力は中等度以上 3-5/5 特に右下腹に 強い 瘀血の圧痛を認め る 口訣 本方は 虫垂炎の内服薬として有名な治療薬である 充分瀉下させるこ とがポイント 道聴子 陽証にはこの方を用い 陰証には薏苡附子敗醤散を用いて手際よく治す 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力があり 下腹部痛があって 便秘しがちなものの次の諸症 月 経不順 月経困難 便秘 痔疾 b 漢方的適応病態 腸癰 虫垂炎など すなわち 発熱 腹痛 特に右下腹部 圧痛あるいは 抵抗 便秘などがあり 甚だしければ身体を折り曲げ下肢を屈曲させるも の 構成生薬 桃仁4 牡丹皮2 大黄2 冬瓜子6 芒硝1.8 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱瀉下 活血消癰 効果増強の工夫 本方単独では瀉下効果が不足する場合には 大黄甘草湯など他の大黄剤の 合方も考慮される 78

79 活用自在の処方解説 33 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 急性慢性虫垂炎で 実証 脈実し数ならざるもの 2 肛囲炎 痔漏 尿道炎 睾丸炎 副睾丸炎 前立腺炎 子宮内膜炎 帯下 附属器炎 産褥熱 骨盤腹膜炎 バルトリン氏腺炎 腹部臀部 下肢鼠径部のフルンケル カルブンケル 皮下膿瘍 リンパ腺炎 骨 髄骨膜炎 乳腺炎 乳腺腫等で実証のもの 3 赤痢様の下利 血便 腹痛 発熱 小便数難のものを治した例がある 4 腹満鼓脹の実証のものに使つた例がある 5 直腸膣漏を治した例がある 6 経閉で妊娠のごとく 下腹膨満するものに使つた例がある 7 膝関節炎で右下腹に抵抗 便秘するものを治した例がある 8 頭部腫塊 るいれき 皮膚病 眼口鼻の病に使つた例がある ヒ ン ト 大黄牡丹皮湯は古来急性虫垂炎と思われる病気に用いられた 虫垂炎はむ ろん外科的疾患であるが 現在でも事情があって手術をできれば避けたいと いう患者には適応される 著者も56歳の知人男性の限局性腹膜炎が疑われた虫垂炎に 本方内服と 日間の抗生剤の点滴を併用して保存的に治癒せしめ得た経験をした 知人で あったので悪化時には手術という前提で治療に入ることができたが 今の時 代であるから十分なインフォームド コンセントが必要であろう 龍野一雄 先生は 虫垂炎の治療について貴重な論稿を残した 先人である 氏によれば 虫垂炎のほとんどは漢方治療のみで治癒させるこ とができるということであるが そのためには処方の使い分けが重要である と力説している 鑑別を要するそれらの処方には 柴胡桂枝湯 大黄牡丹皮湯 桂枝茯苓丸 桂枝加芍薬湯 大建中湯 薏苡附子敗醤散などがある 薏苡附 子敗醤散以外は すべて医療用漢方製剤に存在することを忘れないでほしい 79

80 34 白虎加人参湯 びゃっこかにんじんとう 出典 傷寒論 金匱要略 1 大汗出でて後 大煩渇して解せず 脈洪大なる証 太陽病上篇 2 若しくは吐し 若しくは下して後解せず 熱結ぼれて裏に在り 表裏 ともに熱し 時々悪風し 大いに渇し 舌上乾燥して煩し 水数升を 飲まんと欲する証 太陽病下篇 3 口燥渇し 心煩し 背微悪寒する証 太陽病下篇 4 渇して水を飲まんと欲し 表証無きもの 太陽病下篇 5 䇻 中熱 熱射病 にして 汗出でて悪寒し 身熱して渇する証 金 匱要略 痙湿䇻病変 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 めることがある 腹候図 気血水 気水が主体の気血水 六病位 陽明病 脈 舌 脈は大で 無力 舌質は紅で乾燥 舌苔は 黄 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 めることがある 口訣 明らかな表証がある場合には用いない 浅田宗伯 白虎湯証の熱によって津液枯渇したものに対して 人参をもって滋潤す るのである 龍野一雄 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 のどの渇きとほてりのあるもの b 漢方的適応病態 気分熱盛 陽明病経証 すなわち 息切れ 無力感 疲労感など気虚の症 候を伴うもの 舌質は紅で乾燥 舌苔は黄 脈は大で 無力 構成生薬 石膏15 知母5 甘草2 人参1.5 粳米8 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱瀉火 生津止渇 補気 80

81 活用自在の処方解説 34 効果増強の工夫 本方は発熱性疾患が一定程度経過した状態が適応で 病位でいうと陽明病 期となる しかし 長引いた発熱例では少陽病と鑑別がつきかねる場合も あったようで 先人も小柴胡湯などと合方している 処方例 ツムラ白虎加人参湯 ツムラ小柴胡湯 6.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 流感 チフス 肺炎 脳炎脳膜炎等で 高熱煩渇するもの 2 日射病 熱射病で 高熱 煩渇 脳症等を起したもの 3 脳出血で 発熱 煩渇 煩躁 譫妄等を起し脈大のもの 4 糖尿病 バセドゥ氏病で 煩渇 或は煩躁 脈大のもの 5 皮膚炎 じんま疹 湿疹 ストロフルス 乾癖等でかゆみが劇しく 患部は赤味が強く乾燥性で 煩渇するもの 6 胆嚢炎で高熱煩渇するもの 7 腎臓炎 尿毒症で高熱煩渇 或は煩躁 脳症あるもの 8 夜尿症で脈大 煩渇するもの 9 虹彩毛様体炎 角膜炎等で 充血 発赤 熱感等が強く煩渇するもの 10 歯槽膿漏で糖尿を伴い 煩渇するものを治した例がある 11 嗅覚なきものを治した例がある 12 骨盤腹膜炎で 高熱 煩渇 自汗するものを治した例がある 13 小児麻痺で渇するものを治した例がある 14 腰部神経痛で 渇舌 乾燥するものを治した例がある 15 感冒後言語障害 内熱煩渇を治した 加藤勝美氏 ヒ ン ト 本方の適応は のどの渇きとほてりのあるもの という漠然としたもので あるが これを医学的観点から 熱性疾患の遷延例や口渇ある糖尿病 患部 に火照りのある皮膚炎などという病名に置き換えて適応をみいだすことが求 められる すなわち これらの症状症候を伴う疾患に適応があると判断する のが 臨床医の医学的判断と呼ばれるものである 81

82 35 四逆散 しぎゃくさん 出典 傷寒論 四逆し その人あるいは悸し あるいは小便利せず あるいは腹中痛み あるいは泄利下重する証 少陰病篇 腹候 腹力中等度 3/5 胸脇苦満 腹直筋の攣 急を認め ときに心下痞䌤を伴う 腹候図 気血水 気血が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 肝気鬱血 脾胃不和では脈は弦あるいは沈 舌質は紅 舌苔は薄白 熱厥では脈は弦数 舌質は紅 舌苔は黄 腹候 腹力中等度 3/5 胸脇苦満 腹直筋の攣急 を認め ときに心下痞䌤 を伴う 口訣 この方 内は熱結を解し 外は四逆を治す ゆえに四逆散と名づくと この方は 小柴胡湯の変方もしくは類方とみなすべきものなり 奥田謙藏 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力のあるもので 大柴胡湯証と小柴胡湯証との中間証を表わすも のの次の諸症 胆嚢炎 胆石症 胃炎 胃酸過多 胃潰瘍 鼻カタル 気 管支炎 神経質 ヒステリー b 漢方的適応病態 1 肝気鬱結 肝脾不和 すなわち ゆううつ感 情緒不安定 いらいら ヒステリックな反応 ため息が多い 胸苦しい 胸のつかえ 胸脇部 が脹って苦しい 胸脇苦満 腹が脹る 食欲がない 悪心 便秘と下 痢が交互に来る 排便しても後に残る 便が切れ切れあるいは細い 頻尿などの症候 女性は 月経周期が一定しない 月経痛 あるいは 無月経 月経月の乳房の緊満痛など 2 熱厥 すなわち 発熱 身体の熱感 胸脇部が脹って痛い 腹痛 下痢 口が苦い 悪心などに伴い 軽度の四肢の冷えがみられる 構成生薬 柴胡5 芍薬4 枳実2 甘草1.5 単位g 82

83 活用自在の処方解説 35 より深い理解のために 柴胡 芍薬 枳実は大柴胡湯にも近似する 浅田宗 伯 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 疏肝解欝 理気止痛 肝気を通じて鬱を解き 気を巡らせて止痛する 透 熱 より深い理解のために 本方は肝気鬱結に対する基本処方である 中医処 方解説 効果増強の工夫 腹部膨満感などを伴い理気剤を追加したい場合には 香附子 蘇葉 陳皮 を加味する目的で香蘇散の眠前少量投与も試みるとよい 処方例 1 ツムラ四逆散 7.5g 分 3 食前 2 ツムラ香蘇散 2.5g 分 1 眠前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 急性伝染病 マラリヤ等で少陰病に属し 四逆散の条文のごとき症状 を呈するもの 2 気管支炎 気管支喘息 肺結核 肋膜炎等で 咳して直腹筋の緊張が 強いもの 3 胃酸過多症 胃潰瘍 胃液分泌過多症 十二指腸潰瘍 胆石症 結核 性腹膜炎等で直腹筋緊張 或は心下部疼痛 或は胸やけ 圧重感 振 水音等があるもの 大腸炎 直腸炎 直腸潰瘍等で下利下垂し 手足 が冷えるもの 4 腎炎で 浮腫 小便不利 或は動悸し 直腹筋緊張するもの 5 半身不随 肩こり 筋攣縮症 ヒステリー てんかん 神経質 高血 圧症 癎 肝積持ち 遺精等で心下部拘急 直腹筋緊張 神経症状等 があるもの 6 蓄膿症で 直腹筋攣急するものに使つた例がある 7 歯ぐきが腫れ 痛み発熱甚しいものを治した例がある 8 乳癌 子宮癌 9 副睾丸炎のしこり 10 痔核 枳実 芍薬に着眼 83

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85 活用自在の処方解説 36 構成生薬 石膏10 防已4 桂皮3 人参3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 利水滲湿 益気 清熱 利水して体内の湿をさばき 気を益して 熱を冷 ます 効果増強の工夫 利尿効果を高めるために五苓散を合方するのは理に適っている また不整 脈の自覚症状を減少させられる可能性がある 五苓散は甘草を含有しない 製剤であるので カリウムを変動させる可能性は少ないと思われる 処方例 ツムラ木防已湯 ツムラ五苓散 5.0g㾹 分 5.0g㾸 食前 利尿効果という視点から強心作用をもつ附子を配合することもある この 場合に少量から増量するのが安全である 処方例 ツムラ木防已湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 0.5g㾸 混合し分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 腎炎 ネフローゼ 妊娠腎 心臓弁膜症 心筋変性 心臓不全 心臓 喘息 動脈硬化症 脚気等に於て呼吸困難 咳 動悸 浮腫 小便不利 心下堅満 腹満 口渇 顔色黒ずみ 脈沈緊等の症状があるもの 2 アジソン氏病 黒皮症 ヒ ン ト 木防已湯は心循環器系の薬剤と受け止められているためか用いられる機会 の少ない漢方製剤であるが 自覚症状の強い動悸や不整脈には著効を奏する ことがあり 循環器専門医による臨床応用が望まれている製剤の つである 心不全に適応するというイメージが邪魔して多様な臨床応用を妨げていると いう印象がある 本来は腎性浮腫などにも適応を有しているし さらに呼吸 苦を伴う慢性呼吸器疾患などにも応用が可能なはずである 著者も交連切開術後に 整脈にもかかわらず頑固な動悸を訴える患者に本 方が切れ味よく奏効した一例を経験している 85

86 37 半夏白朮天麻湯 はんげびゃくじゅつてんまとう 出典 李東垣著 脾胃論 眼黒の頭旋悪心煩悶 気短促上喘息 力なくして言ふを欲せず 心神顛 倒 兀兀 ゆらゆら動いて安定しない様 やまず 目あえて開かず 風雲の 中にあるがごとく 頭苦痛して裂くがごとく 身重くして山のごとし 四 肢厥冷して安臥する事を得ず 脾胃論 腹候 腹力は中等度よりやや軟 2-3/5 胃内停 水を認めることがある 腹候図 気血水 気水が主体の気血水 六病位 腹候 腹力は中等度より や や 軟 2-3/5 胃 内 停 水を認めることがある 少陽病 脈 舌 脈は滑 舌質は淡白 舌苔は白膩 口訣 水毒と頭痛が目的である 嘔吐が激しいものは呉茱萸湯がよい 浅田 宗伯 本方は脾気虚に伴うめまいに対する代表処方である 中医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 胃腸虚弱で下肢が冷え めまい 頭痛などがある者 b 漢方的適応病態 脾気虚の痰濁上擾 すなわち 頭がふらつく 頭が重くはる 目がくらむ 甚だしければ回転性のめまい発作で立っていられない 悪心 嘔吐などの 痰濁上擾の症候に 食欲不振 元気がない 疲れやすい 胸腹部が脹って 苦しい 泥状 水様便などの脾気虚の症候を伴う 舌質は淡白 舌苔は白 膩 脈は滑 より深い理解のために 上擾とは ノボリ乱すこと また 痰飲のうちで身 体上部の失調症状を呈するものを 特に痰濁というようである 構成生薬 陳皮3 半夏3 白朮3 茯苓3 黄耆1.5 沢瀉1.5 人参1.5 黄柏1 生姜0.5 天麻2 麦芽2 乾姜1 単位g 86

87 活用自在の処方解説 37 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 化痰熄風 補気健脾 利水消食 より深い理解のために 熄 息 風 内風を平熄する方法 内風の症状として 眩暈 震顫 発熱 抽搐 ひきつけ 小児の驚風 癲癇などがある 効果増強の工夫 痰飲が上衝して起こすめまいや頭痛であれば 五苓散などが併用される 処方例 ツムラ半夏白朮天麻湯 ツムラ五苓散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方は血に対処する内容が乏しいところから 要すれば当帰芍薬散を合方 する 処方例 ツムラ半夏白朮天麻湯 ツムラ当帰芍薬散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 眩暈 頭痛 食後疲れて眠くなる者 常習性頭痛 常習性のめまい 低血 圧者の頭痛とめまい メニエール病 胃腸虚弱者の高血圧で頭痛めまいす る者 胃アトニー 胃下垂症 上顎洞化膿症など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 虚証 冷性の劇しい頭痛 眩暈 悪心 煩悶 目を開くことが出来ず 身 重く四肢冷え安臥することを得ぬもの 胃腸虚弱者 また低血圧症の頭痛 眩暈 桑木崇秀著新版 漢方診療ハンドブック より 顔色の悪い胃弱者で 腹部に振水音を触れるような人の頭痛 めまいに適 する ヒ ン ト 本方の働きは胃内の水分が上衝してめまい 頭痛がするのを治療すること である このように水が失調すると病的な精神が醸されるようである 本方 がパニック障害の一部に有効である理由かもしれない 87

88 38 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう 出典 傷寒論 手足厥寒 脈細にして絶せんと欲し 内に久寒有る証 傷寒論 厥陰 病篇 腹候 腹力は中等度よりやや軟 2-3/5 腹候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 太陰病 脈舌 脈は沈細 あるいは細弱 舌質は淡白 舌 苔は白 腹候 腹力は中等度より やや軟 2-3/5 口訣 桂枝湯の加味方というより桂枝加芍薬湯の加味方と考えれば 主として 下焦に効く理由が分かりやすい 桑木崇秀 本方は当帰四逆湯合呉茱萸湯 腹痛 嘔吐が加わる と考えてもよい 中 医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 手足の冷えを感じ 下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなりやすいも のの次の諸症 しもやけ 頭痛 下腹部痛 腰痛 b 漢方的適応病態 血虚受寒 すなわち 寒冷によって生じる 四肢や下腹部の冷えと痛み しびれ あるいは凍瘡などで 舌質は淡白 舌苔は白 脈は沈細 あるい は細弱 以上は当帰四逆湯と共通 本方はさらに寒冷がはげしいもの より深い理解のために 本方の特徴は 1 シモヤケ 2 腰 腹部に寒冷 により増悪する痛みがあるなどで いずれかがあれば本方の適用 四逆とは 四肢が厥逆 冷える すること 構成生薬 大棗5 桂皮3 芍薬3 当帰3 木通3 甘草2 呉茱萸2 細辛2 生姜1 単 位g 88

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90 39 苓桂朮甘湯 りょうけいじゅつかんとう 出典 傷寒論 金匱要略 傷寒 若しくは吐し 若しくは下して後 心下逆満し 気 胸に上衝し 起てば則ち頭眩し 脈沈緊 身 振振として動揺する証 傷寒論 太陽 病中篇 心下に痰飲あり 胸脇支満し 目眩する証 金匱要略 痰飲䈙嗽病篇 短気し 微飲あり まさに小便より之を去るべき証 同上 腹候 腹力は中等度よりやや軟 1-3/5 胃内停 水と臍上悸あり 腹候図 気血水 気と水が主体 六病位 少陽病 脈 舌 脈は沈 沈緊 舌質は淡紅で胖大 舌苔は 白 白滑 口訣 腹候 腹力は中等度より や や 軟 1-3/5 胃 内 停 水と臍上悸あり これら をともに認めれば めま いには奏効が期待でき る この方は支飲を去るを目的とす 気咽喉 に上衝するも目眩するも手足振掉するも皆 水飲に因る也 浅田宗伯 学童の立ちくらみに 胃内停水と臍上悸をともに認めれば 九分九厘奏 効する 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 めまい ふらつきがあり または動悸があり尿量が減少するものの次の諸 症 神経質 ノイローゼ めまい 動悸 息切れ 頭痛 b 漢方的適応病態 脾虚の寒飲 すなわち 疲れやすい 食欲がない めまい感 立ちくらみ などの脾虚の症候に 悪心 嘔吐 上腹部膨満感 腹鳴 胃部の振水音あ るいは多量の白痰 咳嗽あるいは軽度の浮腫などの痰飲 水湿の症候がみ られ 四肢の冷え 動悸 耳鳴 肩こりなどを伴うことが多い 舌質は淡 紅で胖大 舌苔は白 白滑 脈は沈 沈緊 構成生薬 茯苓6 桂皮4 蒼朮3 甘草2 単位g 90

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93 活用自在の処方解説 より深い理解のために 40 水熱互結とは 主として全身の炎症による水分の吸 収 排泄の障害で 五苓散で述べたような水分の偏在や吸収障害による下痢 がみられ 同時に循環水分量の減少に伴う口渇 尿量減少が起こる 元来陰 虚や血虚の体質のものが吸収障害を起こすと 陰虚血虚の程度が強くなり いらいら ほてり 不眠などの興奮症状が明らかになる 構成生薬 猪苓3 茯苓3 滑石3 沢瀉3 阿膠3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 利湿清熱 滋陰止血 水をさばき 熱 炎症 を冷まし 陰を補って止血作用を発揮する 効果増強の工夫 血尿の場合 必要があれば顔色のよい例では黄連解毒湯と合方し 貧血様 の例では四物湯と合方する あまり冷えの強い例には不適であり他の工夫 を要する 処方例 ツムラ猪苓湯 ツムラ黄連解毒湯 処方例 ツムラ猪苓湯 ツムラ四物湯 7.5g 㾹分 食前 㾸 5.0g g 㾹分 食前 㾸 5.0g 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 急性膀胱炎 尿道炎 膀胱結石 膀胱腫瘍 膀胱結核 淋病 フィラ リヤ病 急性腎炎 腎石 腎孟炎 腎臓結核等で排尿困難 尿意頻数 排尿痛 血尿などがあり 或は発熱 口渇するもの 2 腸出血 肛門出血 子宮出血等で口渇 頻尿 或は肛門熱感 疼痛 心煩等があるもの 3 喀血で口渇 心煩 不眠 咳 小便不利等を伴うもの 4 急性腸炎 大腸炎 直腸炎 直腸潰瘍等で 下利血便 或は小便不利 口渇するもの 5 腎炎ネフローゼ等で 浮腫 口渇 小便不利し 或は血尿 或は心煩 するもの 6 不眠症で 或は口渇 小便不利 或は下利 咳 嘔などを伴うもの 7 てんかん 時々ひきつけるもので 或は下利 或は小便不利 或は不 眠心煩などするもの 93

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95 活用自在の処方解説 41 食後 頭がボーッとする 汗をかきやすい 息ぎれ 便秘あるいは泥 状 水様便などの症候 あるいは胃アトニー 遊走腎 脱肛 子宮脱 ヘルニアなど 2 脾不統血 気不摂血 すなわち 脾胃気虚の症候とともに生じる少量 かつ間欠的に持続する出血で 下半身や皮下の出血が多い 婦人では 月経周期の短縮や過多月経が生じ 経血はうすいことが多い 3 気虚の発熱 すなわち 慢性に繰り返す微熱で精神的 肉体的疲労に伴っ て発生する 頭痛 悪寒 自汗などがみられることもある 構成生薬 人参4 蒼朮4 黄耆4 当帰3 陳皮2 大棗2 柴胡2 甘草1.5 生姜0.5 升麻1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補気健脾 升陽挙陥 甘温除熱 より深い理解のために 補気作用とは抗うつ作用を含むものと考えられる 効果増強の工夫 人参の増量 2 3 gを加味 少量の附子を加味するなどがある 全身倦怠感などの改善に 腎虚があれば六味丸や八味地黄丸と合方するの はよい手段である 処方例 ツムラ補中益気湯 ツムラ六味丸 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 結核症 夏痩せ 病後の疲労 虚弱体質改善 食欲不振 虚弱者の感冒 痔疾 脱肛 子宮下垂 胃下垂症 陰痿 半身不随 多汗症 風邪引きや すき者 虚弱児体質改善等 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 疲労状態 夏やせ 感冒 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 胃アトニータイプの者のカゼが長引いて微熱や痰や盗汗のとれない場合 同様な体質者の肋 腹膜炎 肺結核 慢性副鼻腔炎 虚弱者の痔核 脱肛 胃腸の弱い虚弱者の病後や術後の体力回復 低血圧症 95

96 43 六君子湯 りっくんしとう 1 出典 龔廷賢著 万病回春 脾胃虚弱 飲食少しく思ひ 或は久しく瘧痢を患ひ 若くは内熱を覚え 或は飲食化し難く 酸を作し 虚火に属するを治す 須らく炮姜を加えて 其効甚だ速かなり 補益門 2 腹候 腹力中等度以下 1-3/5 胃内停水を認め る 腹候図 3 気血水 気と水が主体 4 六病位 少陽病 5 脈 舌 腹候 腹力中等度以下 1-3/5 胃内停水を認 める 舌質は淡白で胖大 舌苔は白滑 白厚膩 脈は軟滑 滑弱 より深い理解のために 白膩厚苔は水分の吸収 排泄障害を示すとされる 6 口訣 この方は理中湯の変方にして 中気をたすけ 胃を開くの効あり ゆえ に老人 脾胃虚弱にして 痰あり 飲食を思わず あるいは大病後 脾胃 虚し 食味無きものに用う 浅田宗伯 畢竟 脾胃虚弱 水湿を帯びるものを治す 死が近くなった病人に 末 期だからといって 附子剤を与えるのはいたずらに苦しめるだけになりか ねない その時に六君子湯を与えれば元気も引き立ちて至って楽になるも のだ 梧竹樓方函口訣 脾胃門 百々漢陰 百々鳩窓著 7 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 胃腸の弱いもので 食欲がなく みぞおちがつかえ 疲れやすく 貧血性 で手足が冷えやすいものの次の諸症 胃炎 胃アトニー 胃下垂 消化不 良 食欲不振 胃痛 嘔吐 b 漢方的適応病態 脾胃気虚の痰湿 脾虚生痰 すなわち 元気がない 疲れやすい 食欲が ない 食べると腹が脹るなどの脾胃気虚の症候に 悪心 嘔吐 呑酸 上 腹部のつかえ 水様便 胸苦しい 咳嗽 痰が多い あるいは浮腫などの 痰湿の症候を伴うもの 96

97 活用自在の処方解説 43 8 構成生薬 人参4 蒼朮4 茯苓4 半夏4 陳皮2 大棗2 甘草1 生姜0.5 単位g 9 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補気健脾 理気化痰 利水消腫 気を増して胃腸を調え 気をめぐらせて 消化管の水を除く より深い理解のために 本方は気の不足を補って 胃腸機能を高め 水滞を さばき 補中益気湯の弟分といった趣の薬方である 元気になるとうつ状態 も改善される 効果増強の工夫 六君子湯は多くの方剤に含まれ その薬効の中心部分を構築している 六君子湯を分解すると 四君子湯と二陳湯になる 補気が必要であれば 少量 たとえば2.5gほど の四君子湯を合わせることもあり得る 胃内の水 のさばきを重視すれば 少量の二陳湯を追加する場合もあるであろう そ のようにして患者の病態に合わせていくのである 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 慢性胃炎 胃下垂症 胃アトニー症等に用いられ また慢性腹膜炎 胃癌 胃潰瘍 消化不良症 自家中毒症 食欲不振 虚弱者の胃腸型感冒 嘔吐 悪阻 神経衰弱症 肩こり 虚弱者や老人 脳溢血患者の養生薬に応用さ れる 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 四君子湯の証で胃液分泌過多あるもの 胃弱 胃液分泌過多 胃下垂 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 胃アトニー 胃下垂 慢性胃炎 慢性下痢のある場合には四君子湯がよい ヒ ン ト 六君子湯は補気利水の代表薬である 癌の術後などに十全大補湯が用いら れるが 地黄の味が口につき 胃もたれして服用しにくくなったと訴える患 者も少なくない そのようなときには 百々漢陰のいうように六君子湯に換 えることがある これは今風にいえば 患者のQOLを重視した治療である 百々漢陰のような先人があったことを われわれは誇りにしてよいことで ある 97

98 98

99 活用自在の処方解説 45 構成生薬 桂皮4 芍薬4 大棗4 甘草2 生姜1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 辛温肌解 調和営衛 より深い理解のために 営衛不和の表現としては 自汗だけではなく 営衛 のめぐりが滞ることによる全身の瘙痒 あるいは肌膚の痺れ 感覚障害など もある たとえば 金匱の黄耆桂枝五物湯は 営衛のめぐりが滞って痺鬱し たものに表気の虚 ゆえに黄耆を加える を兼ねている血痺の証を治療してい るのはその証拠である 裴永清著 傷寒論の読み方50 効果増強の工夫 感冒の治療では鑑別が重要なので 他薬と合方するよりはむしろ他の方剤 を処方することを考えるが 本方を 体力が衰えた ことを主目標として用 いる場合には種々の合方により効果を期待できる場合がある 次の処方例 は 関節痛があって胃腸虚弱な高齢者を想定したものである 処方例 ツムラ桂枝湯 ツムラ防已黄耆湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒 流感 丹毒等の急性熱病で 表熱 頭痛 身痛 悪風 自汗 鼻血 脈浮弱数等が若干組合さつているもの 2 発汗後に再び煩が起るもの 3 下後 或は表虚して 気上衝 或は身痛するもの 4 表熱また表虚で 鼻鳴 乾嘔 或は心下悶 不能食のもの 5 表裏に他病なく ただ自汗が出るもの 6 頭が寒いと訴えるが 附子の証なきもの 7 妊娠で 悪阻 頭痛 自汗 悪心等あるもの 8 肺結核で微熱が続くもの 9 自汗に拘泥せず 佐藤省吾氏 99

100 46 七物降下湯 しちもつこうかとう 出典 修琴堂 大塚敬節 方 疲れやすくて最低血圧の高いもの 尿中に蛋白を証し 腎硬化症の疑い のある高血圧患者 いろいろの薬方を用いて奏効しない者に用いることに している 漢方医学 釣藤には脳血管の痙攣を予防する効があるらしいし 黄耆には 毛細血 管を拡張して血行をよくする効があるらしいので これを用いることに よって血圧が下がるのではないかというのが私の考えであった 四物湯を 用いたのは 眼底出血の 止血の意味であり 黄柏を入れたのは 地黄が胃 にもたれるのを予防するつもりであった 同 腹候 腹力は中等度かそれ以下 2-3/5 腹候図 気血水 気血が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌脈は弦細 質は淡白 腹力 腹力は中等度かそ れ以下 2-3/5 口訣 皮膚は乾燥傾向で どちらかといえば褐色を呈している 道聴子 本方は血圧にこだわらずに 血虚の肝陽上亢を目的として用いた方がよ い 中医処方解説 より深い理解のために 肝陽上亢とは 目がかすむ 目がくらむ まぶしい 目の乾燥感や痛み 視力減退 頭痛 頭のふらつきなどの肝陰虚 火旺の状態 肝陽上亢がさらに進むと 肝陽化火となる 陽が上亢すれば熱となり 熱が 極まれば火を生じる 五行の考え方では 木が鬱して火に変化するとして臨 床症状を説明する 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 身体虚弱の傾向のあるものの次の諸症 高血圧に伴う随伴症状 のぼせ 肩こり 耳なり 頭重 b 漢方的適応病態 血虚の肝陽化風 すなわち 顔色が悪く 皮膚に艶がなく 四肢がしびれ 筋肉が引きつるなどの血虚の症候と のぼせ ほてり 目まい ふらつき 100

101 活用自在の処方解説 46 手足のふるえ 耳鳴などの肝陽化風の症候を伴うもの 舌質は淡白 脈は 弦細 構成生薬 芍薬4 当帰4 黄耆3 地黄3 川芎3 釣藤鈎3 黄柏2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補血益気 熄風 効果増強の工夫 降圧 鎮静作用をもつ補肝腎の杜仲を加えたものを八物降下湯という 中医処方解説 より 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 高血圧症の虚証で大黄剤や柴胡剤を用いることが出来ないもの 腎障害の あるもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 冷えや皮膚枯燥 燥証 のある虚弱体質者の高血圧 ことに眼出血や結膜充 血のある場合 ヒ ン ト 七物降下湯は医療用漢方製剤中でもっとも成立年代が新しい方剤である 創方者である大塚敬節氏の著書 漢方医学 創元社 からその経緯をご紹介し よう そして いろいろ考えた末に 私の作った薬方が四物湯に 釣藤 黄耆 黄柏を加えたものであった 中略 釣藤には脳血管の痙攣を予防する効があるらしいし 黄者には 毛細血管 を拡張して血行をよくする効があるらしいので これを用いることによって 血圧が下がるのではないかというのが私の考えであった 四物湯を用いたの は 止血の意味であり 黄柏を入れたのは 地黄が胃にもたれるのを予防す るつもりで まことにお粗末な恥ずかしいような浅見で組み合わせて作った のである 中略 それからやがて二十年になろうとしている 私の右眼は失明をまぬがれ 脳出血にもならなかった その間に 共著のものなど合して十数種の漢方の 単行本を診療の余暇に書くことができた これは私の健康状態がよかったた めである 私は自分の経験から七物降下湯を用いるコツを覚えた そして疲れやすく て最低血圧の高いもの 尿中に蛋白を証し 腎硬化症の疑いのある高血圧患者 いろいろの薬方を用いて奏効しない者に用いることにしている このように して この薬方で血圧の安定した患者はどれほどあるか たいへんな数に上 ると思う そのうち暇を見つけて統計をとってみたいと考えている 101

102 47 釣藤散 ちょうとうさん 出典 許叔微著 本事方 肝厥頭暈 陰虚生風で生じた肝陽が上逆し 頭暈や神経症をもたらした 病症 を治す 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 ときに心下痞 䌤を認める 腹候図 気血水 気水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈 弦軟やや数 舌質はやや紅 舌苔は膩 苔 中医処方解説 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 ときに心下痞 䌤を認める 口訣 この方は 俗にいわゆる癇症の人 気逆甚しく 頭痛眩暈し 或は肩背 強急眼目赤く心気欝塞者を治す 浅田宗伯 本方は愁訴の多い患者に用いられ 特に頭痛が多く 頭重 肩凝り 眩 暈を訴え さらに便秘 不眠 夜間尿 手足冷え 心下痞 動悸 耳鳴 のぼせ 怒りやすい 食欲不振等がある 細野史郎 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 慢性に続く頭痛で中年以降 または高血圧の傾向のあるもの b 漢方的適応病態 脾胃気虚 痰湿の肝陽化風 すなわち 頭のふらつき めまい感 頭痛 耳鳴 顔面紅潮 目の充血 目がかすむ いらいら 肩こり 眠りが浅い 手足のふるえなどの肝陽化風の症候に 食欲不振 元気がない 疲れやす い 悪心 嘔吐 咳嗽 喀痰 腹が脹るなどの脾気虚 痰湿の症候を伴う 舌質はやや紅 舌苔は膩 脈は弦軟やや数 より深い理解のために 肝陽化風とは 肝の陽気が疾病の過程中に風証を現 すこと 風は陽邪で六淫の つ 特徴は遊走性で変化しやすいことである 構成生薬 釣藤鈎3 陳皮3 半夏3 麦門冬3 茯苓3 人参2 菊花2 防風2 石膏5 単位g 甘草1 生姜1 102

103 活用自在の処方解説 47 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 平肝潜陽 明目 補気健脾 化痰 平肝熄風 清熱 健脾益気 より深い理解のために 潜陽とは 陰虚で肝陽上昇 上亢 するものを治療す る方法 肝陽の上昇とは 頭痛眩暈 耳鳴耳聾 肢体麻木あるいは震顫を表 わす 潜陽の方法は重質の鎮墜薬 石膏など を用いて虚陽を収斂させる 常 に平肝 滋陰などの法と併用する 効果増強の工夫 臓腑の肝胆の機能失調に関連する抑肝散との異同は 両者とも釣藤鈎が配 されている点で共通するが 釣藤散は六君子湯ベースで人参があり 抑肝 散には柴胡 当帰が配されているところが相違する すなわちこれらの相 違からこの二方は合方したり 兼用したりすることが可能である 釣藤散で頭痛や肩背痛が改善したが不眠が残る場合 次のように用いるこ とがある 処方例 ツムラ釣藤散 7.5g 分 食前 ツムラ抑肝散 2.5g 分 眠前 釣藤散は高齢者の認知症にも有効であるというプラセボを用いた臨床研究 結果があり また当帰芍薬散も同様に認知症に效果を有するということが 富山大学の後藤准教授らによって報告されている 先に指摘したように釣 藤散は血に働く生薬が配剤されていないので 二者の合方は合理性を持つ 可能性がある 処方例 ツムラ釣藤散 ツムラ当帰芍薬散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 中年以後の神経症でやや虚状を呈し 頭痛 眩暈 肩こり 肩背拘急など を主訴とするものに用いる すなわち本方は 神経症 頭痛 眩暈 肩こ り 更年期障害 動脈硬化症 高血圧症 慢性腎炎 脳動脈硬化症 メニ エール病など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 ノイローゼ 頭痛 肩こり 更年期障害 動脈硬化症 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 脳動脈硬化症による頭痛 めまい 肩こり 更年期障害 ただし 必ず熱 証であることが条件 103

104 48 十全大補湯 じゅうぜんたいほとう 出典 陳師文ほか編 和剤局方 男子婦人 諸虚不足 五労七傷 飲食進まず 久病虚損 時に潮熱を発 し 気骨脊を攻め 拘急疼痛 夜夢遺精 面色痿黄 脚膝力なく 一切病 後 気旧のごとからず 憂愁思慮 気血を傷動し 喘嗽中満 脾胃の気弱 く 五心煩悶するを治す 補虚損附骨蒸門 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 悪性腫瘍治療の 補助療法の際には脾胃への納まりがよけれ ば 腹力や腹候にはこだわらずに用いてよ い これはその他の気血双補薬についても 当てはまる 腹候図 気血水 気血水のいずれとも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 脈は沈細弱 舌質は淡白で胖大 口訣 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 悪性腫瘍治療 の補助療法の際には脾胃 への納まりがよければ 腹力や腹候にはこだわら ずに用いてよい これは その他の気血双補薬につ いても当てはまる この方 局方の主治によれば 気血虚す というが八珍湯の目的にて 寒というが黄 耆 肉桂 桂皮 の目的なり また 黄耆を用うるは人参に力を併せて自汗 盗汗を止め 表気を固むるの意なり 固表 浅田宗伯 この方は 気血 陰陽 表裏 内外 皆虚したものを大いに補う とい う意味で十全大補湯と名付けられた 矢数道明 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 病後の体力低下 疲労倦怠 食欲不振 寝汗 手足の冷え 貧血 b 漢方的適応病態 気血両虚 すなわち 元気がない 気力がない 疲れやすい 倦怠無力感 食欲不振 軟便 泥状便などの気虚の症候と 顔色が悪い 皮膚につやが ない 頭がふらつく 目がかすむ 四肢のしびれ感 筋肉のひきつりなど の血虚の症候がみられるもの 構成生薬 黄耆3 桂皮3 地黄3 芍薬3 川芎3 蒼朮3 当帰3 人参3 茯苓3 甘 104

105 活用自在の処方解説 48 草1.5 四君子湯+四物湯+桂皮 黄耆 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温補気血 あるいは 気血双補 温陽祛寒 より深い理解のために 本方は気血両虚に対して全面的な効能をもつが 構 成薬物が多いので急性の失血や極度の衰弱の改善には無理があり 他の適切 な手段を構じる必要がある 効果増強の工夫 1 最初は 内容生薬の増強を図る 処方例 ツムラ十全大補湯 ツムラ紅参末 7.5g㾹 3.0g㾸 分 食前 2 内容に含まれない生薬を加味する 処方例 ツムラ十全大補湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 諸貧血症 産後 手術後の衰弱 諸熱性病後の衰弱 癰疽の後 痔瘻 カ リエス 腎臓結核 瘰癧 白血病 諸出血の後 視力減退 脱肛 子宮癌 乳癌等 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 疲労 衰弱 貧血 失血 産後 手術後 カリエス 痔漏 るいれき 白 血病 脱肛 神経衰弱 遺精 視力減退 或は男子婦人諸虚不足 一切病 後に気もとの如く回復せざるもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 大病後や手術後などの全身衰弱 貧血 カリエス 寒性膿瘍 その他 貧 血性で 気力 体力ともに衰えた場合 食欲不振 下痢のある場合を除く ヒ ン ト 十全大補湯は悪性腫瘍術後にしばしば用いられるが 同様な状態に適応さ れることの多い補中益気湯との鑑別が問題となる 十全大補湯は四君子湯 四物湯 黄耆 桂枝の内容であり おおまかに補 中益気湯と比すると四物湯が含有されているのが特徴である すなわち補血 を要するようであれば十全大補湯 要さないようであれば補中益気湯という 鑑別が成り立つ しかしその間は厳密な線引きが難しく 最後は主治医の臨 床的な判断で決定する以外にはない 105

106 50 荊芥連翹湯 けいがいれんぎょうとう 出典 森道伯著 漢方一貫堂医学 荊芥連翹湯は柴胡清肝散 湯 の変方であつて 青年期の解毒証体質を主 宰する処方である すなわち柴胡清肝散の去加方に 万病回春 の荊芥連翹 湯を合方した一貫堂の創方で 耳鼻両方の病気を同一の処方で治すること ができる処方である 矢数格 漢方一貫堂医学 幼年期の柴胡清肝散 湯 証が長じて青年期となると 荊芥連翹湯証とな るので 同様に解毒証体質者である ゆえに 幼年期扁桃炎 淋巴腺肥大 等にかかる者は 青年期になると蓄膿症となり 肋膜炎を起こし 肺尖カ タルと変り 神経衰弱症を病む この体質の者がすなわち荊芥連翹湯証で ある 同上 より深い理解のために 一貫堂の三大証体質とは 解毒証体質 柴胡清肝湯 荊芥連翹湯 瘀血証体質 通導散 臓毒証体質 防風通聖散 である 腹候 腹力中等度以上 3-4/5 腹直筋の攣急を 認める 皮膚は色素沈着あり 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度以上 3-4/5 腹直筋の攣急 を認める 皮膚は色素沈 着あり 原方となった温清飲より推測して 脈は 細数 舌質は紅 舌苔は黄 中医処方解 説 荊芥連翹湯証の者の脈は緊脈を呈している 矢数格 口訣 皮膚の強い色素沈着と腹直筋の緊張とで本方の適用を決定することが多 い 道聴子 青年期における一貫堂医学の解毒証体質者は 扁桃炎 中耳炎を病みや すかつた小児期とはちがつて体質に変化を来たし 主として蓄膿症を起こ すようになる したがつて 同医学の病理によれば 小児期の扁桃炎と 青年期の蓄膿症とは同一性質の病気であることがわかり 蓄膿症が手術だ けでは根治しにくい理由も理解される 矢数格 106

107 活用自在の処方解説 50 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 蓄膿症 慢性鼻炎 慢性扁桃炎 にきび b 漢方的適応病態 血虚 血熱 肝鬱 風熱 すなわち 皮膚につやがない 頭がふらつく 目がかすむ 爪がもろい 手足のしびれ感 筋肉の引きつれ などの血虚 の症候とともに のぼせ ほてり イライラ 不眠 目の充血 口渇など の熱証や 鼻出血 不正性器出血 下血など鮮紅色の出血がみられたり 灼熱感のある暗赤色の発疹 湿潤性がない あるいは皮膚炎 口内炎が生じ るもの さらに ゆううつ感 いらいら 怒りっぽい 頭痛 胸脇部が張っ て苦しい 脇の痛み 腹痛などの肝気鬱結の症候を伴い 熱感を自覚する もの 構成生薬 黄䊫1.5 黄柏1.5 黄連1.5 桔梗1.5 枳実1.5 荊芥1.5 柴胡1.5 山梔子1.5 地黄1.5 芍薬1.5 川芎1.5 当帰1.5 薄荷1.5 白芷1.5 防風1.5 連翹1.5 甘草1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱解毒 疏肝解欝 凉血止血 解表 効果増強の工夫 著者は本方をアトピー性皮膚炎や慢性扁桃炎にしばしば適応する 一貫堂 処方であるので 温清飲が配剤されているが 熱性強くやや力不足の感が あるときには黄連解毒湯を適量追加する 処方例 ツムラ荊芥連翹湯 ツムラ黄連解毒湯 5.0g㾹 2.5g㾸 混合して分 朝夕食前 同様に 血虚の状が目立つときには四物湯を適量追加する 処方例 ツムラ荊芥連翹湯 ツムラ四物湯 5.0g㾹 2.5g㾸 混合して分 朝夕食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 青年期腺病体質の改善 急性慢性中耳炎 急性慢性上顎洞化膿症 肥厚性 鼻炎など また扁桃炎 衂血 肺浸潤 面疱 肺結核 増殖型のもの 神 経衰弱 禿髪症など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 急性中耳炎 蓄膿症 肥厚性鼻炎 扁桃腺炎 鼻血 にきび 青年期腺病 質改造 107

108 51 潤腸湯 じゅんちょうとう 出典 龔廷賢著 万病回春 大便閉結して通ぜざるを治す 中略 実熱燥閉は本方による 万病回 春 大便閉門 腹候 腹力は中等度よりやや軟 1 3/5 腹候図 気血水 血水が主体の気血水 六病位 太陰病 腹候 腹力は中等度より やや軟 1-3/5 脈 舌 舌は紅で乾燥 舌苔は少 脉細数 口訣 仲景の麻子仁丸よりいでたるもので 老人 虚人 血燥の人 大黄ばか りを用いがたき者に用いる薬なり この証 大黄ばかりを飲めば腹が痛ん で微利するばかりである 百々漢陰 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 便秘 b 漢方的適応病態 血虚 陰虚の便秘 すなわち 口が渇く 咽の乾燥 午後の熱感 手の平 や足の裏のほてり 盗汗 痩せるなどの陰虚の症候に 兎糞状の便や便秘 を伴うもの 皮膚の枯燥を認めることが多い 構成生薬 地黄6 当帰3 黄䊫2 枳実2 杏仁2 厚朴2 大黄2 桃仁2 麻子仁2 甘草1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 滋陰補血 潤腸通便 効果増強の工夫 本方は高齢者の便秘の改善に用いることは自明のことだが 本方ですら腹 痛下痢するものにはどう対処したらよいかを考えることは大切である つの答えは桂枝加芍薬湯を適量追加することである 処方例 ツムラ潤腸湯 ツムラ桂枝加芍薬湯 g㾹 2.5g㾸 混合し分 食前朝夕

109 活用自在の処方解説 51 もしよい結果が得られなければ 大建中湯を少量加えることである 処方例 ツムラ潤腸湯 ツムラ大建中湯 5.0g㾹 混合し分 2.5g㾸 食前朝夕 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 常習性便秘 なかでも弛緩性常習性便秘 高血圧症 動脈硬化症 慢性腎 炎などを合併した便秘症 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 虚証の便秘 動脈硬化症の便秘 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 老人 虚弱者の便秘 燥屎 ヒ ン ト 便通がつかないというとすぐに大黄剤を処方したくなるが そのまえに大 黄を用いるべき状態かどうかを確認してからでも遅くはない 大黄剤を用いるのは実秘であることが前提となる 実秘とは実証の便秘の 状態である しからば実証の便秘とはなにかというと 裏実の状態で裏に実 熱がこもり これを下すことが熱性疾患を改善させる端緒となるような便秘 である 逆の場合を虚秘といい これは陰虚 津液の損耗 やその結果の虚熱などに より生じたものであるから 原則的には大黄剤で下すと下痢腹痛を引き起こ してかえって全身状態を悪化させる危険性がある 潤腸湯は高齢者の便秘のために考案されたものであるから ほどほどに津 液の枯燥した高齢者が前提であり 地黄が多く配剤され 杏仁 麻子仁 当帰 桃仁などとともに滋潤しつつ 存在する実熱を下すように働く ちょうど実秘 虚秘の中間状態と思えばよい ではもっと虚秘に偏った便通異常には何を用いるかというと 芍薬で緩め るか 人参で温めるかして腸を動かし便通を付けるという方法がある それ が桂枝加芍薬湯であり 大建中湯である 潤腸湯単独でうまくいかないとき にこれらの方剤を適量加えて よい結果を期待するという理由がおわかりだ ろう 109

110 52 薏苡仁湯 よくいにんとう 出典 皇甫中撰注 王肯堂訂補 明医指掌 手足の流注 疼痛 麻痺不仁 もって屈伸しがたきを治す 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 腹候図 気血水 血水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度よりや や軟 2-3/5 舌苔は白 白膩 脈滑 口訣 この方は麻黄加朮湯 麻杏仁薏苡甘草湯の一等重きものに用いゆるなり その他桂芍知母湯の症にして附子の応ぜざる者に用いて効あり 浅田宗 伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 関節痛 筋肉痛 b 漢方的適応病態 湿痺 着痺 すなわち 四肢や躯幹の痺れ痛み 重 だるい 運動障害 軽度の浮腫 冷えなどを伴うもの 構成生薬 薏苡仁8 蒼朮4 当帰4 麻黄4 桂皮3 芍薬3 甘草2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 通陽利水 活血止痙 効果増強の工夫 ここでは 祛風湿 止痛の附子を加味して 処方例 ツムラ薏苡仁湯 7.5g㾹 分 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 食間 構成生薬から補血 袪湿の薬味が少ないので 疎経活血湯と合方が可能である 処方例 ツムラ薏苡仁湯 ツムラ疎経活血湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 麻黄が比較的多いので消化器症状を呈する例には桂枝加朮附湯と合方する 桂枝麻黄各半湯の派生方ともみなすことができるからである 処方例 ツムラ薏苡仁湯 ツムラ桂枝加朮附湯 g㾹 5.0g㾸 混合し分 食前

111 活用自在の処方解説 52 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 関節リウマチの亜急性期および慢性期 多発性関節リウマチ 漿液性関節 炎 結核性関節炎 筋肉リウマチや脚気など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 四肢疼痛 麻痺 運動障害で附子剤の応ぜざるもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より リウマチで 寒証でなく 自汗を伴わない慢性化したもの ヒ ン ト まず関節リウマチやその類症にどのような方剤が用いられるか概観してみ よう 本方をはじめ生薬麻黄が配剤されている麻黄含有剤と非麻黄含有剤に 大別すると 麻黄を含む剤には麻黄湯 葛根湯 越婢加朮湯 麻杏薏甘湯 薏苡仁湯 五積散などがあり 麻黄を含まない剤には桂枝加朮附湯 防已黄 耆湯 真武湯 疎経活血湯 大防風湯などがある 本方の主治について 矢数道明氏は 漢方診療医典 で以下のように述べて いる 本方は関節リウマチの亜急性期および慢性期に入った場合によく用いられ る 麻黄加朮湯や麻杏薏甘湯よりもやや重症で 熱感 腫脹が去らず 慢性 症に移行しようとするものが目標である 外来で訪れる程度の亜急性期のも のによい 桂枝芍薬知母湯の手前に用いる 奨液性の関節炎や結核性の関節 炎でも 水がたまって腫脹 疼痛のあるものには用いてよい 本方は麻黄加 朮湯と麻杏甘石湯とを合して杏仁を去り 当帰と芍薬とを加えたものである 表の水の動揺を治すのが麻黄加朮湯で 当帰 芍薬 薏苡仁は血燥を潤すも のである 以上の目標に従って本方は多発性関節リウマチ 漿液性関節炎によく用い られ また結核性関節炎 筋肉リウマチや脚気などにも応用される このような記述からすると 疾病が急性期において治癒せず 亜急性期 慢性期にいたると血の異常を伴うようになり しかもその働きが低下する つまり血虚の状態を帯びるにいたることが理解される 慢性病では多くの疾 病が血虚の状を呈してくるという原則は 治療戦略を立てるにあたり大変重 要な意義を有するといえよう 111

112 112

113 活用自在の処方解説 53 より深い理解のために 痺症 とは 筋肉や関節のしびれ痛みを主とする疾 患に相当し 風湿痺 は遊走性の痛み 風 や軽度の浮腫 湿 のみられるもの をいう 中医処方解説 構成生薬 当帰2 地黄2 川芎2 蒼朮2 茯苓2 桃仁2 芍薬2 牛膝1.5 威霊仙1.5 防已1.5 羌活1.5 防風1.5 竜胆1.5 生姜0.5 陳皮1.5 白芷1 甘草1 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 祛風湿 補血 活血化痰 効果増強の工夫 1 便秘があれば積極的に少量の大黄を加味する 消炎鎮痛効果も期待で きる この場合は 局方の大黄末が便利で 0.5g分包としてエキス剤に加味する 処方例 1 ツムラ疎経活血湯 2 局方大黄末 7.5g 分 食前 1.0g 分 眠前 2 鎮痛効果を増強するために 附子末を加味する 処方例 ツムラ疎経活血湯 7.5g㾹 分 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 食前 3 鎮痛効果を増強するために少量の麻黄剤 越婢加朮湯など を併用する 処方例 ツムラ疎経活血湯 ツムラ越婢加朮湯 7.5g 㾹分 食前 食後 2.5g 㾸 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 筋肉リウマチ 痛風 漿液性膝関節炎 腰痛 坐骨神経痛 下肢麻痺 脚 気 浮腫 半身不随 高血圧 産後の血栓性疼痛など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 神経痛 リウマチ 腰痛 浮腫 半身不随 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 陳旧性の神経痛 ことに坐骨神経痛 瘀血と湿証が認められれば確実である ヒ ン ト 慢性疼痛性疾患でこれほど有用性の高い薬はないと著者は考える 113

114 54 抑肝散 よくかんさん 出典 薛鎧 薛己 父子でセツガイ セツキと読む 著 保嬰撮要 肝経の虚熱 搐を発し あるいは発熱咬牙 あるいは驚悸寒熱 あるい は木土に乗じて嘔吐痰涎 腹脹食少なく 睡臥不安なるものを治す 急 驚風門 腹候 腹力中等度以下 2-3/5 腹直筋の拘攣を 認める 腹候図 気血水 気血水いずれにも関わる 六病位 少陽病 脈舌 原則的に 舌質はやや紅 舌苔は白 脈は 弦細軟 腹力 腹力中等度以下 2-3/5 腹直筋の拘攣 を認める 口訣 本方を用いる時は 怒りはなしやと問うべし 目黒道琢 この方を大人の半身不随に用いるのは和田東郭の経験である 浅田宗 伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症 神経症 不眠症 小児夜泣 き 小児疳症 b 漢方的適応病態 気血両虚の肝陽化風 すなわち いらいら 怒りっぽい 頭痛 めまい感 眠りが浅い 頭のふらつき 筋肉の痙攣やひきつけ 手足のふるえなどの 肝陽化風の症候に 元気がない 疲れやすい 食が細い 皮膚につやがな い 動悸 しびれ感などの気血両虚の症候を伴うもの 中医処方解説 より深い理解のために 五臓の肝と胆の機能を考えよう 肝胆の機能は 情 報の処理と決断 である 構成生薬 蒼朮4 茯苓4 川芎3 釣藤鈎3 当帰3 柴胡2 甘草1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 平肝熄風 補気血 平肝鎮驚 理気和胃 114

115 活用自在の処方解説 54 効果増強の工夫 1 ふるえ ふらつきなど風動の症候が強ければ 処方例 ツムラ抑肝散 7.5g ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯 㾹分 食前 㾸 5.0g いらいら のぼせ ほてりなど肝火の症候が強ければ牡丹皮 山梔子 などを加える目的で 処方例 ツムラ抑肝散 ツムラ加味逍遙散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 3 悪心 嘔吐 腹部膨満感などの症状と 舌苔が白膩で 痰湿の症候を 伴う時は 陳皮 半夏を配した抑肝散加陳皮半夏とする 処方例 ツムラ抑肝散加陳皮半夏 7.5g 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 癎症 神経症 神経衰弱 ヒステリー等に用いられ また夜啼 不眠症 癇癪持ち 夜の歯ぎしり 癲癇 不明の発熱 更年期障害 血の道症で神 経過敏 四肢萎弱症 陰痿症 悪阻 佝僂病 チック病 脳腫瘍症状 脳 出血後遺症 神経性斜頸等に応用される 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 痙攣 驚悸 或は発熱 或は寒熱 或は嘔吐痰涎 腹脹 食欲不振 不眠 のもの 或は左直腹筋緊張 心下部つかえ 四肢拘攣 或は麻痺 不眠 腹動 怒気あるもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より パーキンソン病 脳出血後のふるえ 乳幼児のひきつけ 夜驚症 眼瞼痙 攣 神経性斜頸 歯ぎしりなど ヒ ン ト 怒りを外に表す患者への適応は容易だが 現代の日本人は怒りを内に秘め ており そのあまり自分が怒っていることすら自覚しない例がある 怒り の有無を丁寧に問うことが本方を活用する鍵であり 症例は意外に多い メ ンタルヘルス外来管理の要薬の つといってよい 115

116 55 麻杏甘石湯 まきょうかんせきとう 出典 傷寒論 1 発汗して後 汗出でて喘し 大熱無き証 傷寒論 太陽病中篇 2 下して後 汗出でて喘し 大熱無き証 同下篇 腹候 腹力中等度 2-4/5 腹候図 気血水 気と水が主体 六病位 少陽病 腹候 腹力中等度 2-4/5 脈舌 舌苔は黄 脈 滑数 口訣 痔疾の痛み 睾丸炎に有効である 古矢知白 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 小児ぜんそく 気管支ぜんそく より深い理解のために 気管支炎にも用いられるが 保険請求時の病名が適 正か注意する 類似する五虎湯の適応症は せき 気管支喘息 b 漢方的適応病態 肺熱の喘咳 すなわち 咳嗽 呼吸困難 呼吸促迫 口渇 熱感 発熱 無感 あるいは有汗などの症候で 舌苔は黄 脈は滑 中医処方解説 構成生薬 石膏10 杏仁4 麻黄4 甘草2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清肺平喘 止咳 清肺平喘 辛涼宣泄 より深い理解のために 本方の特徴は味が淡味で服用しやすいことである ことに小児には服用しやすいことで知られ 確実な効果が期待される 本方 は肺熱 肺 気道の炎症 の咳嗽 呼吸困難に対する基本処方とされている 効果増強の工夫 1 咽頭痛や咳嗽の強い場合には 消炎 鎮咳の桑白皮を加えて五虎湯と する 処方例 ツムラ五虎湯 g 分 食前

117 活用自在の処方解説 55 2 痰が多い時は二陳湯を合方する 五虎二陳湯 処方例 ツムラ麻杏甘石湯 ツムラ二陳湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 3 本方はその構成から桂枝湯を合して大青竜湯に近似した方剤として運 用される 処方例 ツムラ麻杏甘石湯 ツムラ桂枝湯 7.5g㾹 7.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 心臓喘息 気管支喘息の発作で 或は汗が出 或は顔面浮腫 咽乾口渇 或は胸痛 或は心悸亢進するもの 2 肺壊疽で発熱喘咳 脈浮数 臭痰膿血 渇して水を飲まんと欲するも のに桔梗を加える 類聚方広義 3 痔核 睾丸炎の腫痛に使つた例がある ヒ ン ト 大塚敬節氏は 漢方診療医典 で本方について次のように述べている 本方は麻黄湯の桂枝の代りに石膏を加えたものであるから 麻黄湯のよう な表証がなく そのため悪寒を訴えることなく 裏に熱があるから 口渇 自汗を伴なうことがある 本方の石膏は清熱剤で 麻黄 杏仁と協力して熱を解し 鎮痛の効があり 喘咳 自汗を治する 麻黄 杏仁は血行を盛んにして水分の停滞を疎通し 喘咳を治する 甘草は諸薬を調和して その薬効を助ける 本方は気管支喘息 喘息性気管支炎 百日咳に用い 痔核の疼痛に用いて いて奇効を奏する また乳幼児の感冒によく用いられる 117

118 56 五淋散 ごりんさん 出典 和剤局方 腎気不足 膀胱熱あり 水道通ぜず 淋瀝して宣らず 出る事少なく起 こること多く 臍腹急痛 蓄作時あり 労倦すればすなわち発し あるい は尿が豆汁のごときを治す あるいは砂石のごとく 或は冷淋膏のごとく 或は熱淋便血 並びに皆之を治す 和剤局方 積熱篇 より深い理解のために 五淋とは 五種の淋疾のことで 石淋 気淋 膏淋 労淋 熱淋 外台秘要方 を指している 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 気血水いずれにも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 炎症を前提として 舌紅 舌苔は黄 脉数 滑 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 口訣 中医学的には尿路系の炎症に対する第一選択といわれています 中医 処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 頻尿 排尿痛 残尿感 b 漢方的適応病態 熱淋 すなわち 強い尿路の炎症を伴う病態に対して 茯苓 沢瀉 車前 子 滑石 木通による利尿作用と 沢瀉 車前子 滑石 木通による抗菌 消炎作用などによりその改善を目指す薬方である 構成生薬 茯苓6 黄䊫3 甘草3 地黄3 車前子3 沢瀉3 当帰3 木通3 山梔子2 芍薬2 滑石3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱利水 活血止痛 効果増強の工夫 本方は排尿痛があって小便がたらたらとしか出ず 時に血尿や膿尿があっ 118

119 活用自在の処方解説 56 たり 結石があるものを治す方剤であるから 痛みに対して芍薬甘草湯の 併用は有効であろう 結石の場合には排石を容易にすることが期待できる 処方例 ツムラ五淋散 ツムラ芍薬甘草湯 7.5g 分 食前 包 2.5g 包として痛むとき頓用 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 尿道炎 膀胱炎 膀胱結石 腎臓結石 淋疾 虫垂炎など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 尿道炎 膀胱炎 膀胱結石 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 湿証の膀胱炎 尿道炎 ヒ ン ト 五淋のそれぞれを解説する 石淋とは 下焦に湿熱があり それが尿中の 不純物を凝結させて石を形成することによって引き起こされる淋症を指す 気淋とは 気機の鬱結あるいは中気下陥によって引き起こされる淋症を指す 膏淋とは 小便が混濁して脂肪や米のとぎ汁のようになる淋症を指す 労淋 とは 淋症が久しく愈えず 疲労すると症状が悪化する病証を指す 血淋と は 尿中に血液が混じる淋症を指す 以上 中医基本用語辞典 東洋学術出版 社刊 これらをみると本方は尿路感染症や尿路結石症 血尿を来すさまざまな疾 患に用いることができるようである 中医処方解説 の本方の條を引用すると 利水の茯苓 沢瀉 車前子 滑石 木通は程度の異なる利尿作用をもち 沢瀉 車前子 滑石 木通は抗菌 消 炎作用をもつ 山梔子 黄䊫には鎮静 解熱 消炎 抗菌作用があり 黄䊫 は利尿作用と流産防止作用ももっている 赤芍 当帰には鎮静 鎮痛 抗菌 作用があり また血管拡張によって炎症性のうっ血を除き 滋養強壮の効果 もある 赤芍は甘草とともに平滑筋けいれんを抑制し鎮痙効果を現す 黄䊫 当帰 赤芍 甘草は子宮の調整に働いて流産を防止するので 妊婦が服用し てもよい利点がある 以上のように 本方は消炎 鎮静 鎮痛 解熱 利尿などの作用により尿 路系の炎症を鎮めるものである 119

120 57 温清飲 うんせいいん 出典 龔廷賢著 万病回春 やや久しく虚熱に属するものは よろしく血を養いて而して火を清くす 婦人経脈住まらず あるいは豆汁のごとく 五色あいまじえ 面色痿黄 臍腹刺痛 寒熱往来し 崩漏止まざるものを治す 血崩門 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに心下痞䌤 あり 腹候図 気血水 血が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は紅 舌苔は黄 脉細数 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに心下痞 䌤あり 口訣 この方は 温と清と相合するところに妙ありて 婦人漏下あるいは帯下 あるいは男子下血久しく止まぬ者に用いて験あり 浅田宗伯 全体では 消炎 解熱 鎮静 抗菌作用とともに滋養強壮 鎮痛 鎮痙 循環改善の効果が得られ 清熱と補血という攻補兼施の処方となっている 中医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 皮膚の色つやが悪く のぼせるものに用いる 月経不順 月経困難 血の 道症 更年期障害 神経症 b 漢方的適応病態 血虚 血熱 すなわち 皮膚につやがない 頭がふらつく 目がかすむ 爪がもろい 手足のしびれ感 筋肉の引きつりなどの血虚の症候とともに のぼせ ほてり いらいら 不眠 目の充血 口渇などの熱証や 鼻出血 不正性器出血 下血など鮮紅色の出血がみられたり 灼熱感のある暗紅色 の発疹 湿潤性がない あるいは皮膚炎 口内炎などが生じるもの 構成生薬 地黄3 芍薬3 川芎3 当帰3 黄䊫1.5 黄柏1.5 黄連1.5 山梔子1.5 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱瀉火 解毒 補血活血 止血 120

121 活用自在の処方解説 より深い理解のために 57 血虚 血熱とは 栄養不良状態 血虚 とともに 慢 性の炎症 脳の充血や興奮性増大 自律神経系の興奮 血管透過性増大など がみられるものである 一般には 慢性の炎症や出血に伴って全身的な栄養 状態の悪化が加わって生じることが多いが 元来血虚の体質のものに炎症や 興奮性増大が加わって生じることもある 中医処方解説 効果増強の工夫 血熱と血虚の程度や原因の違いなどにより 黄連解毒湯と四物湯の割合を 変えて対処することも考えられる 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 婦人血崩の病 諸出血 慢性で頑固な皮膚粘膜疾患でとくに皮膚そう痒症 慢性湿疹 尋常性乾癬 掌蹠膿疱症 皮膚炎 じん麻疹 ベーチェット症 候群 眼症状少ない など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 子宮出血 メトロパチー 子宮がん 痔 膀胱腫瘍 腎臓結核 じん麻疹 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 分泌物のあまりない熱証の皮膚疾患 ヒ ン ト わが国の漢方家で本方やその関連処方をしばしば用いたのは森道伯 である その直弟子であった矢数道明氏 は次のように述べ ている 本方は一貫堂蔵方の柴胡清肝湯 竜胆瀉肝湯 荊芥連翹湯等の基本をなす もので 恩師森道伯翁はこれによつて一貫堂医学の三大体質 臓毒症 瘀血症 解毒症 の一つとしていた解毒症体質の改善を企図した これらの処方は 清肝 瀉肝等の方名に示すように いずれも肝臓機能の 障害を伴うものに用いるとされているので 本方と肝機能 あるいはアレル ギー性体質との関連性が考えられる 温清飲は 四物湯と黄連解毒湯との合方されたもので 温補養血に清熱瀉 火を兼ねた独自の方剤で その応用範囲は広い その応用目標は 皮膚の色が黄褐色で 渋紙のように枯燥しているものが 多い 六五 たいてい体質的疾患または慢性的に経過したもので 肝臓機 能障害を伴い あるいはアレルギー性体質といわれている皮膚過敏のものに 用いられる また本方を基本とした柴胡清肝湯 竜胆瀉肝湯 荊芥連翹湯等は一貫堂経 験による解毒症体質の体質改善薬として広範な治療領域を有しているもので ある 臨床応用漢方処方解説 矢数道明著 121

122 58 清上防風湯 せいじょうぼうふうとう 出典 龔廷賢著 万病回春 面に瘡を生ずる者は上焦の火なり 上焦の火を清し 頭面に瘡䉜風熱の 毒を生ずるを治す 面病門 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は紅 あるいは尖紅 舌苔は黄 脈は 数 あるいは浮数 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 口訣 この方は風熱上焦のみに盛んに 頭面に瘡癰毒腫などの症あれども た だ上焦ばかりのことにて中下二焦の分さまで壅滞することなければ 下へ 向けてすかす理はなき故 上焦を清解発散する手段にて防風通聖散のごと き黄硝滑石の類は用いぬなり 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 にきび b 漢方的適応病態 1 上焦の風熱の皮疹 すなわち 身体上部 特に顔面 の発赤 熱感 か ゆみ 疼痛 化膿傾向をもつ皮疹で 目の充血 顔面紅潮 口渇などを伴 うことが多い 舌質は紅 舌苔は黄 脈は数 2 表熱の頭痛 すなわち 軽度の発熱 咽痛 頭痛などの症候 舌質は 尖紅 脈は浮数 より深い理解のために 以上の効能からすれば 本方は頭痛 軽症感冒 感 冒類似病態に適応できるはずである 構成生薬 黄䊫2.5 桔梗2.5 山梔子2.5 川芎2.5 浜防風2.5 白芷2.5 連翹2.5 黄 連1 甘草1 枳実1 荊芥1 薄荷1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 祛風 清熱解毒 止痛 122

123 活用自在の処方解説 58 効果増強の工夫 効果を増強するために加石膏 あるいは加大黄として用う 浅田宗伯 処方例 1 ツムラ清上防風湯 2 局方大黄末 7.5g 分 食前 1.0g 分 眠前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 面疱 頭部湿疹 眼充血 顔面充血 酒䉠鼻など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 顔面に充血性のにきび フルンケルを生じ或は眼充血 酒䉠鼻 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 血色の良い青年男女の面疱 酒䉠鼻 婦人の顔が真っ赤になってほてる場 合 ヒ ン ト 矢数道明氏は本方の応用や目標を次のように挙げている 上焦部とくに顔面に鬱滞した熱を発表清解させるもので 次のような疾患 に用いる 面庖 にきび 強壮の青年男子に多く 女子の場合も壮実で顔色赤く 発疹も充血して赤いもの 頭部湿疹 眼充血 顔面充血 酒䉠鼻などによい 上焦の実熱というのが目標で 上部 顔面や頭部 に血熱が鬱滞し 瘡を発し 顔面赤く 上衝を訴える場合に用いる 上部に集まった熱の邪は 上部で発 表し清解する方がよい 体質もそれほど虚弱でない場合で 面疱などは赤紫 色になっているものが多い 面疱に用いるとき 薏苡仁を5.0gぐらい加えるとよい 通じが少ないとき は必ず大黄を g加える 便秘の傾向あるものにそのまま用いると 一 時発散の効によって発疹が増悪したようになることがある ここで上部に集った熱邪は 上部で発表し清解するのがよいと指摘してい るのは 上部の熱を解くには攻下する場合もあるからで 口訣に挙げた宗伯 の言はそのあたりの機微を述べたものである 治頭瘡一方などは攻下して頭 瘡の邪熱を除く手段である 実際の臨床はこの つの手段の間に存在するの である 123

124 59 治頭瘡一方 ぢづそういっぽう 出典 本朝経験方 本方は香川修庵とも伝えられる本邦先人の経験方である 参考までに 本方の評価を 勿誤薬室方函口訣 より引用すると この方は 頭瘡のみならず すべて上部顔面の発瘡に用う 浅田宗伯 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 血水が主体の気血水 六病位 少陽病 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 脈 舌 舌質は紅 舌苔は黄 脈数 口訣 同じく体上部の皮膚疾患に用いるといえども 清上防風湯は清熱を主と し この方は解毒を主とするなり 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 湿疹 くさ 乳幼児の湿疹 b 漢方的適応病態 風湿熱の皮疹 すなわち かゆみ 発赤 熱感 化膿傾向 水疱や滲出物 などがみられ 舌質は紅 舌苔は黄 脈数 構成生薬 川芎3 蒼朮3 連翹3 防風2 甘草1 荊芥1 紅花1 大黄0.5 忍冬2 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 祛風 清熱解毒 活血化湿 効果増強の工夫 十味敗毒湯との合方などは試みられる意味がある 処方例 ツムラ治頭瘡一方 ツムラ十味敗毒湯 7.5g 㾹分 食前 5.0g 㾸 炎症がいかにも激しく 顔面の発赤が酷い場合の皮膚炎には 黄連解毒湯 の合方が行われる 処方例 ツムラ治頭瘡一方 ツムラ黄連解毒湯 g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前

125 活用自在の処方解説 59 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 小児の胎毒 小児頭部湿疹 胎毒下し 諸湿疹 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 小児頭部の湿疹を目標に 分泌物 痂皮の多い便秘がちのものに適する ヒ ン ト 本方は一名を大芎黄湯といい 本朝経験方の つである 本方の運用につ いて矢数道明氏は次のように述べている 本方は 中和解毒の効があるとされ 小児の胎毒に用いる すなわち 本 方は主として小児頭部湿疹 胎毒下し 諸湿疹に用いられる 福井家 福井家の流儀のこと にては黄䊫を加え 紅花 蒼朮を去るという 目標は小児の頭瘡で 分泌物 瘙痒 痂皮を認めるものである 小児の頭瘡 大 人でもよい 顔面 頸部 腋窩 陰部等に発赤 丘疹 水疱 糜爛 結痂を 作るもので 実証に属し 大体において下剤の適応するものを目標とし 通 じのあるものは大黄を去る 長期連用する 方解すれば 連翹 忍冬は諸悪瘡を治し 防風は上部の滞気をめぐらし 風湿を去る 荊芥は瘡を治し 瘀を消し 頭目を清くする 紅花は血を破り 血を活かし 瘀を消す 蒼朮は湿を燥かし 川芎は諸薬を引いて上部に作用 する 加減としては 桃仁 石膏を加えて 口渇甚だしく煩躁するものに用いる 治頭瘡一方にて治らないものは 馬明湯加減方を用いるがよい 臨床応 用漢方処方解説増補改訂版 125

126 60 桂枝加芍薬湯 けいしかしゃくやくとう 出典 傷寒論 もと太陽病 これを下し 因りて腹満し 時に痛む証 傷寒論 太陰 病篇 腹候 腹力中等度よりやや軟 1 2/5 腹直筋の 緊張を認めることがある 腹候図 気血水 気血が主体の気血水 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は正常か淡紅 薄白苔 脈は軟 やや 弦 腹候 腹力中等度よりや や 軟 1-2/5 腹 直 筋 の 緊張を認めることがあ る 口訣 腹柔軟なるも虚脹し あるいは疼痛を発し 便通に著変なきもの 奥 田謙藏 手術のできない慢性虫垂炎やいわゆる移動性盲腸に本方を連用させて奇 効を奏することが少なくない 現代漢方治療の指針 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 腹部膨満感のある次の諸症 しぶり腹 腹痛 b 漢方的適応病態 1 脾虚あるいは気血不足のものの腹痛 すなわち 顔色がさえない 不 活発 やや疲れやすい 食が細い 腹満感ありなどの体質で 時に腹痛が 有り 温めたり 押さえたりすると軽減するもの 舌質は正常か淡紅 薄 白苔 脈は軟やや弦 2 虚弱者や小児の感冒 構成生薬 芍薬6 桂皮4 大棗4 甘草2 生姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 緩急止痛 温中補虚 効果増強の工夫 本方を芍薬甘草湯の変方とみる見方があり 痛みに対する効果を考えると 附子を加味して芍薬甘草附子湯の加方とすることができる これは腰痛な 126

127 活用自在の処方解説 60 どに応用可能である 処方例 ツムラ桂枝加芍薬湯 7.5g㾹 分 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 急性慢性の下痢を起す腸カタル 大腸カタル 腸結核 直腸潰瘍等で 虚証で腹満或は腹部鈍痛するもの 2 急性虫垂炎や移動性盲腸で 虚証で腹痛軽熱があり 嘔吐せぬもの 3 慢性虫垂炎 結核性腹膜炎で 虚証でしこりを主とし 或は腹満 或 は鈍痛があるもの 4 急性虫垂炎から限局性腹膜炎を併発 又は急性虫垂炎を誤下して限局 性腹膜炎を起した虚証のもの 5 原因不明の虚証の腹痛 6 痔核 脱肛で虚証のもの ヒ ン ト 本方の運用について奥田謙藏は 古方要方解説 で 以下の症状を挙げてい る 熱候去り 腹柔軟なるも虚脹し あるいは疼痛を発し 便通に著変なき証 発汗の後 微熱なお去らず 腹軟にして虚脹し これを按ずれば痛み あ るいは下痢する 消化不良による腹痛など 熱性下痢 腰痛を発する証 痔瘻など 咳嗽を頻発するために腹筋攣急 疼痛するもの また 類聚方広義 で尾台榕堂は この方に附子を加えて 桂枝加芍薬附子 湯となづく 桂枝加芍薬湯の症にして 悪寒するものを治す また腰脚攣急し 冷痛 悪寒する者を治す と本方の応用を述べている 腹部のみならず腰や下 肢の神経痛用の症状に対する適応も想定している 127

128 128

129 活用自在の処方解説 61 構成生薬 桃仁5 桂皮4 大黄3 甘草1.5 芒硝0.9 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱瀉下 活血逐瘀 効果増強の工夫 本方を用いてまだ薬力が不足するという場合には 通導散に転方するのも 一法である 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 頭痛 めまい 耳鳴 肩こり のぼせ 口燥 動悸 腰痛 下腹痛 便秘 煩熱 足冷等の自律神経症状 興奮 不眠 健忘 狂状 譫妄 等の精神症状 鬱血 充血 出血等の循環障害 下腹膨満 少腹急結 総腸骨動脈圧痛等の腹証などを呈する実証のもの 2 月経不順 月経困難 無月経 帯下 子宮内膜炎 附属器炎 更年期 障害 メトロパチー 流産 流産癖 不妊 人工流産後 産後悪露残留 交接後腹痛 陰門腫痛 バルトリン氏腺炎で )の症状があるもの 3 ヒステリー 血の道症 ノイローゼ 神経衰弱 発狂 てんかん 狂 躁病 脳充血 脳出血 動脈硬化症 高血圧症 脳膜炎後 狐つき等 で )の症状があるもの 4 痔 下肢静脈瘤 肛囲炎等で 顔面に充血 或は鬱血斑 頭痛肩こり 等があり 或は少腹急結 或は便秘するもの 5 気管支喘息 心臓喘息で )の症状があるもの 6 急性大腸炎 直腸炎 赤痢等で 下利 血便 腹痛し実証のもの 7 瘀血性の黄疸に使つた例がある 8 䏩噎即ち食道狭窄様症状に使つた例がある 9 心胸卒痛 胸腹痛で )の症状を伴うものに使つた例がある 10 腹部腫瘍 鼓脹の実証 瘀血性のものに使つた例がある 11 蟯虫が出た例がある 12 膀胱炎 膀胱結石 腎臓結石 尿道炎 前立腺炎 前立腺肥大等で疼痛 排尿困難 排尿痛 尿意頻数 或は血尿等のある実証のもの 13 チフス 脳炎 脳膜炎 丹毒 猩紅熱その他の急性伝染病で 高熱 譫妄等の脳症を発し )の症状を伴うもの 14 吐血 喀血 鼻血 結膜出血 眼底出血 歯齦出血 舌出血 腸出血 肛門出血 子宮出血 血尿 皮下出血等で )の症状を伴うもの 15 歯痛 むし歯 歯槽膿漏で 実証 のぼせ 顔面 歯齦 鬱血斑 便 秘するもの 16 蓄膿症で15)のごときもの 17以下を略 129

130 62 防風通聖散 ぼうふうつうしょうさん 出典 劉河間 劉完素 著 宣明論 中風 一切の風熱 大便閉結し 小便赤渋 顔面に瘡を生じ 眼目赤痛 し 或は熱は風を生じ 舌強ばり 口噤し 或は鼻に紫赤の風棘䛾䛺 酒 䉠鼻の発疹 を生じ しかして肺風 気管支喘息様疾患を意味する となり 或は癘風 癩病および類似症 となり 或は腸風 痔疾患 あつて痔瘻となり あるいは陽鬱して諸熱となり 譫妄驚狂する等の症を治す 中風門 より深い理解のために 本方は一貫堂処方の臓毒症体質改善薬として有名で ある 腹候 腹力中等度以上 3-5/5 腹部膨満あり 腹候図 気血水 気血水いずれも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 脈は滑数から弦数 舌質は紅 舌苔は 黄 厚膩から垢濁 口訣 腹候 腹力中等度以上 3-5/5 腹部膨満あり 森道伯先生の医術として 最も特色とするところは防風通聖散を多用し たことであって 晩年の 総患者数の三十 は同方およびその加減方を用 いている 矢数格 本方の正証は 皮膚が比較的黄白色を呈し 脈は充実して力があり 便 秘がちで 肥満重役型の太鼓腹で 臍を中心に病毒充満するというもので ある 矢数道明 喘息と顔面に瘡を生じている人のために そもそも作られた方剤であり アトピー性皮膚炎や喘息を合併している例にしばしば適応する 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 腹部に皮下脂肪が多く 便秘がちなものの次の諸症 高血圧の随伴症状 ど うき 肩こり のぼせ 肥満症 むくみ 便秘 b 漢方的適応病態 表寒 裏実熱 すなわち 悪寒 頭痛 無汗 咳嗽 呼吸困難などの表寒 の症候に 口が苦い 口渇 目の充血 咽痛 いらいら 腹部膨満感 便 130

131 活用自在の処方解説 62 秘 尿が濃いなどの裏実熱の症候を伴い 高熱がみられる 構成生薬 黄䊫2 甘草2 桔梗2 石膏2 白朮2 大黄1.5 荊芥1.2 山梔子1.2 芍 薬1.2 川芎1.2 当帰1.2 薄荷1.2 防風1.2 麻黄1.2 連翹1.2 生姜0.3 滑石3 無水芒硝0.7 単位g より深い理解のために 大黄 芒消を含むことより 承気湯類とみなすこと もできる TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 辛温解表 清熱解毒 瀉下 利水 効果増強の工夫 攻下が不足しているという判断があれば 大黄や大黄剤を加える 処方例 ツムラ防風通聖散 局方大黄末 7.5g 㾹分 食前 1.0g 㾸 本方で先人は何を治療したか 矢数道明 臨床応用漢方処方解説 より 脳卒中 慢性腎炎 各種の皮膚疾患 精神疾患 喘息 糖尿病など 中医 学的には感冒 肺炎など急性疾患に応用 肥満体質者 常習性便秘 高血圧 中風予防 脳溢血 慢性腎炎 頭瘡 丹毒 禿髪症 発狂 酒䉠鼻 痔疾 梅毒 諸皮膚病 蓄膿症 喘息 糖 尿病 脚気 癰疽 性病等 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 脳出血 高血圧症 動脈硬化症 便秘症 酒䉠鼻 痔 皮膚病 蓄膿症 眼病 糖尿病 喘息 肥満症 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 高血圧 脳出血 常習性便秘 慢性腎炎 糖尿病 皮膚疾患 慢性副鼻腔 炎 酒䉠鼻 肥満症 ヒ ン ト 本方は単なるやせ薬ではない 著者の施設では肝障害などの副作用を多く 経験しているので 肝機能の定期的なチェックが勧められる 副作用は女性 に頻度が高い印象がある 131

132 63 五積散 ごしゃくさん 出典 和剤局方 中を調え 気を順らし 風冷を除き 痰飲を化す 脾胃宿冷 腹脇脹痛 胸膈停痰 嘔逆悪心 或は外風寒に感じ 内生冷に傷られ 心腹痞悶 頭 目昏痛 肩背拘急 肢体怠惰 寒熟往来 飲食進まざるを治す 及び婦人 血気調はず 心腹撮痛 つまむような痛み 経候ひとしからず 月経不順 或は閉じて通ぜず 並に宜しく之を服すべし 傷寒門 より深い理解のために 五積とは 気 血 飲 食 痰を指すとされている 森道伯 一貫堂 先生は本方をよく用いたと伝えられている 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに腹部膨満 を認める 腹候図 気血水 気血水のいずれにも関わる 六病位 少陽病位 脈 舌 舌苔は白厚膩苔 脈は浮弦 あるいは浮遅 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに腹部膨 満を認める 口訣 先哲この方を用うる目的は 腰冷痛 腰腹攣急 上熱下冷 少腹痛の 症なり 浅田宗伯 諸病に効あることは宋以来俗人も知る薬にて また軽蔑すべからず 浅 田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 慢性に経過し 症状の激しくない次の諸症 胃腸炎 腰痛 神経痛 関節 痛 月経痛 頭痛 冷え症 更年期障害 感冒 b 漢方的適応病態 1 表寒 寒湿困脾 すなわち 生冷の飲食物の摂取や寒冷の環境によって 悪寒 発熱 頭痛 関節痛 鼻水などの表寒の症候と 悪心 嘔吐 下痢 腹部膨満 腹痛 腹や四肢の冷えなどの脾胃の寒湿の症候がみられるもの 2 寒湿中経 すなわち 冷房など寒冷の環境によって生じる 身体の冷え 悪寒 頭痛 四肢の痺れ 筋肉痛 特に下半身や大腿内側 などの症候 132

133 活用自在の処方解説 63 構成生薬 蒼朮3 陳皮2 当帰2 半夏2 茯苓2 甘草1 桔梗1 枳実1 桂皮1 厚 朴1 芍薬1 生姜1 川芎1 大棗1 白芷1 麻黄1 単位g より深い理解のために 生薬構成の特徴 本方は桂枝湯や麻黄湯 平胃散 苓桂朮甘湯 二陳湯 排膿散 排膿湯 四 物湯の一部 ほかにも苓桂甘棗湯 奔豚 茯苓甘草湯 脱汗 桂枝甘草湯 叉 手 甘草麻黄湯 橘皮枳実生姜湯 胸痺 桔梗湯などの方意を含む つまり 五積散は一方でそのような役目を果たす可能性があるということである これらすべてが症候として現われるのは 更年期障害などを除いて多くはな いが 便利な処方であることは間違いない TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温中散寒 理気化湿 補血活血 辛温解表 通絡調経 発表温裏 順気化痰 活血消積 効果増強の工夫 1 鎮痛効果を高めるのに 処方例 ツムラ五積散 ツムラ芍薬甘草湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 2 冷えが強い時に 処方例 ツムラ五積散 7.5g 㾹分 食前 㾸 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.0g 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 体質的には肝と脾の虚弱のものが 寒と湿とに損傷されて起こる諸病に用 いる 急性 慢性胃腸炎 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 胃酸過多症 胃痙撃 疝気 腸 神経痛 腰痛 坐骨神経痛 諸神経痛 リウマチ等に用いられ また脚気 白帯下 月経痛 月経不順 冷え症 半身不随 打撲傷 心臓弁膜症 老 人の感冒 喘息 難産催生剤 酢を加える 死胎を下す 麻黄を去り 桂 枝を倍にし 附子を加える ジフテリアの一症 奔豚症 神経性心悸亢進 症 など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 神経痛 リウマチ 腰痛 冷え症 疝気 血の道 胃カタル 婦人病 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 腰痛 神経痛 胃腸炎 月経困難症 冷え症 133

134 64 炙甘草湯 しゃかんぞうとう 出典 傷寒論 金匱要略 1 傷寒 脈結滞し 心動悸する証 傷寒論 太陽病下篇 2 虚労不足 汗出でて悶え 脈結悸して行動常の如き証 金匱要略 千金翼方より 3 肺痿 涎唾多く 心中温温液液たる証 金匱要略 外台秘要より 腹候 腹力中等度より軟 1 3/5 臍上悸 ある いは臍下悸があり ときに軽度の腹直筋の 拘攣を認める 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌質はやや紅で 乾燥しやせて 舌苔は少 ない 脈は結代あるいは細弱 腹候 腹力中等度より軟 1-3/5 臍 上 悸 あ る いは臍下悸があり とき に軽度の腹直筋の拘攣を 認める 口訣 この方は心動悸を目的とす 浅田宗伯 不整脈のなかでも 虚している 熱候としてたとえば口がはしゃぐ 手 足の芯がほてる 息が熱く感じる 燥いた症状として息が切れる 便秘す る などの症状のどれかがあるものを参照して用いる 龍野一雄 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 体力が衰えて 疲れやすいものの動悸 息切れ b 漢方的適応病態 心気陰両虚 すなわち 脈の結滞 息切れ 疲労感などの心気虚の症候が 主で 動悸 咽や口の乾燥感 眠りが浅い 寝汗 やせる 便が硬いなど の心陰虚の症候を伴うもの 舌質はやや紅で 乾燥して痩せている 舌苔 は少なく 脈は結代あるいは細弱 構成生薬 地黄6 麦門冬6 桂皮3 大棗3 人参3 麻子仁3 生姜1 炙甘草3 阿膠 2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 益気通陽 滋陰補血 134

135 活用自在の処方解説 64 効果増強の工夫 動悸が強い例では 桂枝加竜骨牡蛎湯を合方する 処方例 ツムラ炙甘草湯 ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯 6.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 チフス 肺炎 流感その他の急性伝染病で 熱高く 動悸虚煩 不眠 譫妄などがあるもの 2 肺結核で 高熱 息苦しく 盗汗 喀血 皮膚乾燥 咳などが著明の もの 3 心臓弁膜症 期外収縮 遷延性心内膜炎等で動悸 或は脈結滞するもの 4 バセドゥ氏病 神経性心悸亢進症 交感神経緊張症 ノイローゼ 本 態性高血圧症等で 動悸がし汗をかきやすく 直ぐ疲れ のぼせ気味 のもの 5 百日咳などで 息切れ動悸し 衰弱を現すもの 6 音声を発しがたく 胸腹動悸し 胸下痞鞍 便秘するもの 7 口内炎 舌炎 歯齦炎 扁桃腺膿瘍等で 濁唾を出し 飲食すること 能わず 衰弱が加わるもの 8 癎症又は老人虚弱者の便秘 9 慢性下痢で 動悸息切れするものを治した例がある 10 指の爪が反り裂け 息切れ 動悸するものを治した例がある 11 肝臓肥大 黄疸で 息切れ 浮腫 目眩 耳鳴 食欲不振 手足煩熱 等のものを治した例がある 12 腎臓炎の蛋白尿を 虚労行動常の如しで 本方を投じて 治した例がある ヒ ン ト 本方の目標は古典の記述通り 脈の結滞 あるいは 心の動悸 で 内科的 な日常診療では本條文が念頭にあれば適応機会は意外に多い 本方は 人参 麦門冬 阿膠 麻子仁などの滋潤する生薬と 桂枝去芍薬湯からなる方剤で 胸部を作用の場として滋潤を専らにすると考えると方剤の性格がわかるよう な気がする 135

136 65 帰脾湯 きひとう 出典 厳用和著 済生方 脾経失血 寝ること少なく 発熱盗汗 或いは思慮して脾をやぶり 血 を摂すること能はず 以て妄行をいたし 或いは健忘䇝忡 心悸亢進 驚 悸して寝ねず 或いは心脾傷痛 嗜臥少食 或いは憂思して脾をやぶり 血虚発熱 或いは肢体痛をなし 大便調はず 或いは経候たいらかならず 晡熱内熱 或いは瘰癧流注 消散潰斂すること能わざるを治す 済生方 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 腹候図 気血水 気血水いずれにも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 脈は細弱 無力 淡白舌 腹候 腹力中等度よりや や軟 2-3/5 口訣 この方に柴胡 山梔子を加えたる すなわち加味帰脾湯 は 前症に虚熱 を挟み 或いは肝火を帯ぶる者に用ゆ おおよそ補剤を用ゆる時は小便通 利少なき者多し この方も補剤にして 且つ利水の品を伍されども 方中 の木香気を下し 胸を開く 故によく小便を通利せしむ 浅田宗伯 夜間によく眠られずしかも日中の食後に眠くなるなど 他の方剤ではい かんともし難い状態に応じることができる 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症 貧血 不眠症 b 漢方的適応病態 心脾両虚 すなわち疲れやすい 倦怠無力感 元気がない 息切れ 食欲 不振 腹が張る 軟便や水様便などの脾気虚の症候と 健忘 頭がふらつ く ボーッとする めまい感 動悸 眠りが浅い 多夢などの心血虚の症 候が見られるもの 皮下出血 不正性器出血などの慢性反復性の出血傾向 脾不統血 気不摂血 を伴うことが多い 中医処方解説 より 構成生薬 黄耆3 酸棗仁3 人参3 白朮3 茯苓3 遠志2 大棗2 当帰2 甘草1 生姜1 木香1 竜眼肉3 単位g 136

137 活用自在の処方解説 より深い理解のために 65 養血安神作用 竜眼肉 遠志 酸棗仁 当帰 と理気 作用 木香 生姜 大棗 が本方独自の効果をもたらす可能性がある TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 気血双補 補脾 養心安神 効果増強の工夫 いらいら のぼせ ほてり 胸苦しいなどの肝火旺の症候には 柴胡3 5g 山梔子2 5gを加味して清熱を強める すなわち加味帰脾湯 本方で先人は何を治療したか 万病回春 龔廷賢 の医案 一婦人 母を哭することを為し 吐血咳嗽 発熱盗汗 経水めぐらず これ悲しみて肺を傷り 思ひて脾を傷る 朝に補中益気湯を服し 桔梗 貝母 知母をくわえ 夕に帰脾湯を服し 六味丸を送下して愈ゆ 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 腸出血 子宮出血 胃潰瘍 血尿等による貧血と衰弱 白血病 バンチ病 健忘症 嚢腫腎 不眠症等に用いられ また神経性心悸亢進症 食欲不振 月経不順 ヒステリー 神経衰弱 遺精 慢性淋疾 瘰癧の潰瘍等 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 神経衰弱 健忘症 不眠症 ノイローゼ 神経性心悸亢進症 食欲不振 胃アトニー 胃下垂 貧血 吐血 肛門出血 血尿 月経不順 子宮出血 遺精 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 胃腸の弱いアトニー体質者の貧血 諸出血 同様体質者の不眠症 健忘症 ヒ ン ト 土佐道寿の 医方口訣集 には 六君子湯や補中益気湯を用いて改善しない ものに本方を用いると良いとある 十全大補湯や補中益気湯など を用い 福井楓亭は 方䗑弁解 に 他の補剤 て胸に滞るようなときに本方に換えると 氷砂糖を食したときのように胸が さっぱりするものだ と述べている この つは覚えておいて損がない口訣 である 137

138 66 参蘇飲 じんそいん 出典 和剤局方 感冒にて発熱頭疼するを治す あるいは痰飲凝結により 兼ねて以て熱 を為すに並びに宜しく之を服すべし 和剤局方 傷寒附中暑 腹候 腹力中等度 2-4/5 心下痞䌤を認める場 合がある 腹候図 気血水 気水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 腹 候 腹 力 中 等 度 2-4/5 心下痞䌤を認 める場合がある 気虚湿痰の風寒咳嗽は 舌質は淡紅 舌苔 は白から白膩 脈は浮緩 脾虚湿困の場合は 舌質は淡白 舌苔は白膩 脈は軟滑 口訣 香蘇散と並び 胃腸虚弱者の感冒薬として重宝している 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 感冒 せき b 漢方的適応病態 1 気虚湿痰の風寒咳嗽 すなわち 咳嗽 多痰 鼻水 鼻閉などに 発熱 軽度の悪寒 頭痛 身体痛 咽痛などの表証を伴い 食欲不振 元気がな い 疲れやすいなど気虚の症候がみられるもの 悪心 嘔吐 腹部膨満感 腹痛などが生じることも多い 2 脾虚湿困 食欲がない 元気がない 疲れやすい 味がないなどの脾 気虚の症候に 悪心 嘔吐 上腹部のつかえ 腹部膨満感 腹痛 下痢な どの湿盛の症候を伴うもの 表証がみられることもある 構成生薬 半夏3 茯苓3 葛根2 桔梗2 陳皮2 大棗1.5 人参1.5 甘草1 枳実1 蘇葉1 生姜0.5 前胡2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 益気解表 化痰止咳 理気和胃 138

139 活用自在の処方解説 66 効果増強の工夫 悪寒 呼吸困難など表寒の症候が強ければ 麻黄附子細辛湯を少量加味す る 処方例 ツムラ参蘇飲 ツムラ麻黄附子細辛湯 7.5g㾹 混合し再分包 分 2.5g㾸 食間 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 胃の弱い人で 葛根湯や桂枝湯が胸につかえるという 感冒に咳嗽を兼ね たものによい 感冒 気管支炎 肺炎 酒毒 気鬱 悪阻など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 感冒で発熱頭痛 咳痰 声重く鼻水が出て 胃部が痞え張り あるいは嘔 吐するもの 胃腸が弱い人の感冒 気鬱 つわり 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 胃アトニー証の感冒で 咳と痰のあるもの ヒ ン ト 各種口訣の追加 この方 肺熱咳嗽 肌熱の強きを標的とすべし 肺寒咳嗽の者は用ゆるこ とを禁ず 誤り用ゆれば 即時に害は見えねども虚労に変じて死す この こと 加藤 謙斎戒められて 参蘇飲の用い損じ 労咳になること世上に間々 あること心得べし 肺寒の証はしばしばくさめし 鼻に清涕を流し 脈遅 なり 餐英館療治雑話 目黒道琢 この方を用いる目的は 肌熱の痰咳を目的に用いる方なり 参蘇飲の脈は 沈数か 細数かなるべし もし大数などには効無し 経験筆記 津田玄仙 参蘇飲の汗 汗出ずること久しくして 参耆等の薬を用いて効あらず 汗 乾けばすなわち熱す これ風邪経絡に伏す しばらく参蘇飲を与えれば病 やむ 同 感冒に痰を挟みたる者に用ゆ 雑証すべて痰を目的にして用ゆ 中風の風 寒に感冒するに用いる定席なり 本方に中風の主治あり また痰を目的と して用ひたるものとみゆ 漢陰臆乗 百々漢陰 139

140 67 女神散 にょしんさん 出典 浅田宗伯家方 本朝経験方 血証 上衝 眩暈を治し 産前後通治の剤なり 勿誤薬室方函 腹候 腹力中等度 2-4/5 ときに臍上悸 臍下 悸を認める 腹候図 気血水 気血水のいずれも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は舌尖紅 脈は細数 腹 候 腹 力 中 等 度 2-4/5 ときに臍上悸 臍下悸を認める 口訣 この方は元 安栄湯となづけて 軍中七気を治する方なり 余家 婦人 血症にもちいて特験あるをもって今の名とす 世に称する実母散 婦王湯 清心湯みな一類のくすりなり 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 のぼせとめまいのあるものの次の諸症 産前産後の神経症 月経不順 血 の道症 b 漢方的適応病態 気血両虚の気滞 心火旺 すなわち のぼせ めまい感 頭痛 不眠 い らいら 肩こり 動悸などの心火旺の症候と ゆううつ感 胸苦しい 腹 が脹る 悪心 腹痛などの気滞の症候に 目がかすむ しびれ 食欲不振 元気がないなどの気血両虚の症候を伴う 月経不順 月経量が少ない 月 経痛などを伴うこともある 構成生薬 当帰3 川芎3 蒼朮3 香附子3 人参2 桂皮2 黄䊫2 檳榔子2 黄連1 木香1 丁子1 甘草1 さらに本来は 大黄が入る 単位g より深い理解のために このままでも二味の瀉心湯あるいは黄連解毒湯の一 部を含むが 大黄が加わることで三黄瀉心湯の方意が構成される TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気活血 気血双補 清心火 140

141 活用自在の処方解説 より深い理解のために 67 著者の位置づけでは 加味逍遙散と同様な例で 若 干実候寄りの方剤 効果増強の工夫 抑肝散 加味逍遙散などとの組み合わせが可能 便秘があれば 三黄瀉心 湯または 大黄甘草湯を少量加える 処方例 1 ツムラ女神散 2 ツムラ三黄瀉心湯 7.5g 分 食前または食後 2.5g 分 眠前 兼用方 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 更年期障害 産前産後に起こった自律神経症候群で のぼせとめまいを主 訴とするもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 胃アトニー傾向のある虚弱体質者の更年期 産前産後の諸神経症 ことに めまい ヒ ン ト 女神散と同様な主治をもつものが ご存知の加味逍遙散である この 方 の鑑別は興味深いテーマである 先人がどのように両者を解説しているかを 比較してみよう 矢数道明氏の 漢方後世要方解説 から引用する 女神散 この方は気を順らし 血熱を涼ます剤で 別に安栄湯と名づけ 軍中の神 経症を治するものとしていた 浅田家にて血の道症に用いて特験ありとし 実母散 婦王湯などの婦人の自律神経障害に用いられる 目標は上衝 眩暈 で更年期の血の道症に効がある 比較的実証のものによい 産前産後の神経 症候群にも用いられる 加味逍遙散 逍遙散は 小柴胡湯の変方で 小柴胡湯よりは少しく虚状を帯び 柴胡姜 桂湯 補中益気湯よりはやや力あるものである 婦人の虚労 結核の初期に 用い 又中和の剤であるから病後の調理によく用いられる 加味逍遙散は清熱を主とし 上部の血症に効がある 頭痛 面熱 衄血 肩背こわばる等 上部の血熱を清解する 又婦人の肝気亢ぶり 種々と申分 絶えざる神経症にも広く用いられる 応用として 結核初期軽症 婦人神経症 気欝症 月経不順 慢性尿道炎 白帯下 婦人の皮膚病にて荏苒として癒えざるものに四物湯と合方して用いる 産後舌爛 肝硬変症の腹水なきもの 構成生薬を比較すると共通するものが少なく 合方や兼用方に適した方剤 であることがおわかりいただけるだろう 141

142 68 芍薬甘草湯 しゃくやくかんぞうとう 出典 傷寒論 傷寒脈浮に 自汗出で 小便数に 心煩し 微悪寒し 脚攣急するに 反つて桂枝を与えて その表を攻めんと欲するは これ誤りなり 之を得 てすなわち厥し 咽中乾き 煩躁し 吐逆する者は 甘草乾姜湯を作りて 之を与え 以てその陽を復す もし厥いえ 足温まる者は さらに芍薬甘 草湯を作りて之を与うれば その脚即ち伸ぶ 太陽病上篇 腹候 腹力によらず適用可能である 腹直筋の拘 攣している場合が多いが それが無くとも 症状のみで適応してよい 腹候図 気血水 気血が主に関係する 六病位 太陰病 脈 舌 舌候はさまざまで一定せず 脈は 痛みか ら弦であろう 腹候 腹力によらず適用 可能である 腹直筋の拘 攣している場合が多い が それが無くとも症状 のみで適応してよい 口訣 ありとあらゆる痛みに 一度は適用してみること 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛 b 漢方的適応病態 平滑筋 骨格筋の痙攣性疼痛に頓服として用いる 末梢性の鎮痙 鎮痛以外に中枢性の鎮静作用も有する 中医学的には筋の 痙攣は肝の機能失調によると考えられており この鎮静 鎮痙 鎮痛作用 を 平肝 とよぶ なお 白芍 炙甘草ともに滋養強壮作用があり 身体を 栄養 滋潤する 中医処方解説 より深い理解のために 横紋筋 平滑筋 いずれも治療可能なところに注目 構成生薬 甘草6 芍薬6 単位g より深い理解のために 使用上の注意として 7.5gの常用量中に甘草6gを含 むことから治療上必要な最短期間の投与にとどめることが大切である 142

143 活用自在の処方解説 68 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 平肝 解痙止痛 効果増強の工夫 鎮痛効果を増すために 附子を加味する 附子の働きは温裏祛寒で 血管 拡張 血行促進の効能をもち かつ鎮痛作用がある 芍薬甘草湯証で寒証 を呈するものに適用される 処方例 ツムラ芍薬甘草湯 7.5g㾹 分 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 食間 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 脚気 腓腸筋痙攣 筋肉リユウマチ 眼病 舌強直 寝ちがえ等で痙 攣様にすじがつれるもの 2 胃痙攣 腸疝痛 嵌頓ヘルニヤ イレウス 胆石発作 膵臓炎等急性 腹症と云われる発作性の腹痛で 腹壁が痙攣様につれて堅くなつてい るもの 3 小児の夜啼きで腹筋が攣急するもの 4 下肢無力症 脚弱 5 咳を発して放屁するものを治した例がある 6 気管支喘息で 呼吸困難や劇しい咳のために筋肉に力を籠めているもの 7 歯痛で腹筋ひきつるものを治した例がある ヒ ン ト 本方はその成り立ちからも頓用かあるいは短期間の使用にとどめるべき薬 方である 理由はいうまでもなく 甘草を 日量として多く含むために 偽 アルドステロン症を発症しやすいからである ここに興味深い臨床研究論文がある 熊田卓 熊田博光 与芝真ほか TJ-68ツムラ芍薬甘草湯の筋痙攣(肝硬変に伴うもの)に対するプラセボ対照 二重盲検群間比較試験 臨床医薬 である 本論文は 肝硬変症例におけるこむら返りに対する芍薬甘草湯の効果をプラセボコント ロールで示したものである このトライアルでは ツムラ芍薬甘草湯7.5gを 分 で連日14日用いているが 実薬65例中 例の偽アルドステロン症が発生 したと記されている いずれも服薬中止のみで治癒したとのことであった 甘草に由来する偽アルドステロン症の発生頻度を知る上で貴重な記録とい うことができる 143

144 69 茯苓飲 ぶくりょういん 出典 金匱要略 心胸中に 停痰 宿水有り 自ら水を吐出し 後 心胸の間に虚気満ち 食すること能わず 本方は 痰気を消し よく食せしむ 金匱要略 外 台秘要方を引用 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 心下痞䌤 胃内 停水を認める場合がある 腹候図 気血水 気水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 胃の痰飲では 舌苔は白潤 脈滑 脾気虚の痰飲では 舌質は淡白 舌苔は滑 脈は軟滑 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 心 下 痞 䌤 胃 内停水を認める場合があ る 口訣 この方は後世いうところの溜飲の主薬なり 人参湯の症にして胸中痰飲 ある者に宜し 浅田宗伯 枳実 陳皮 生姜を含み 橘皮枳実生姜湯の方意を醸すことから胃腸虚 弱な小児から高齢者の各種の咳嗽によくきく 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 吐きけや胸やけがあり尿量が減少するものの次の諸症 胃炎 胃アトニー症 b 漢方的適応病態 胃の痰飲 すなわち 上腹部がつかえて苦しい 膨満感 胃部の振水音 ときに水様物の吐出などの症候 脾気虚の痰飲 すなわち 食欲不振 疲れやすい 元気がない 食べ ると腹がはるなどの脾気虚の症候に 上腹部膨満感 胃部振水音 尿量減 少 呑酸 嘔吐などの痰飲の症候を伴うもの 構成生薬 茯苓5 蒼朮4 陳皮3 人参3 枳実1.5 生姜1 単位g より深い理解のために 本方は橘皮枳実生姜湯 枳朮湯 枳実 朮 四君子 湯の合方とみなし得る 類聚方広義の頭注欄を参照のこと 144

145 活用自在の処方解説 69 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気化痰 和胃降逆 健脾益気 効果増強の工夫 二陳湯との合方は作用増強が期待される 処方例 ツムラ茯苓飲 ツムラ二陳湯 7.5g㾹 7.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 胃アトニー 胃下垂 胃拡張 胃液分泌過多症 胃ノイローゼ 胃腸 性神経衰弱 肺結核初期 蛔虫 食道憩室等で胃部膨満 噯気 振水 音などするもの 2 胃酸過多症 留飲症等で 虚証で 嘈囃 胃部痞満 振水音 噯気吐 水などするもの 3 胃癌 肝臓癌で浮腫あるもの 茯苓 枳実 4 吃逆 老人の咳痰 小児消化不良 百日咳等で心下痞満し 或は嘔吐 下利 或は咳逆等を伴うもの 類聚方広義 ヒ ン ト 尾台榕堂の 方伎雑誌 には茯苓飲のエピソードがでている 完訳方伎雑誌 寺澤捷年注訳 の記述を要約してご紹介しよう ある婦人が 疝積留飲痛を患うこと 3 4 年であった 痛みが起こると激 しく まさに死せんとするが如くで 多くの医者にかかっても治らなかった アメリカの医者ヘボンが横浜に来ていて世評が高かったので 籠に乗って診 察を受けた ヘボンは何か器具を使ったり 鼻や耳を病人の胸や腹へ当てた りして診察したので 病人も家人も日本の医者とは大違いだと感服していた 診察を終ったヘボンは この病は不治の病だといって薬もくれなかった 名医 扁鵲のように思っていた医者に見放され 患者はすっかり落胆して どうせ死ぬならばとて物も食べず気も塞がってしまった 親族会議の結果 私が頼まれて診察した 痩せ衰えて血色なく 心下痞䌤し 昼夜数回も背にかけて痛み 時に水飲を吐し 食物進まず 人に会うのも嫌 だという 手足に少し浮腫もあり 脈は沈んで弱いが死症とは思われない そこで茯苓飲に半夏を加えて与え 消塊丸を 1 カ月ばかり兼用したところ 心下痞䌤もゆるみ 吐水も止み 食欲が出てきた そこで当帰四逆加呉茱萸 生姜湯に転方し 消塊丸を3.75gずつ 1 カ月ほど用いたところ諸症去って元気 なときのようになった ヘボンに断られた病気が治ったので患者も家族も私 に感謝したが 笑いたくなることである 145

146 70 香蘇散 こうそさん 出典 和剤局方 四時の瘟疫傷寒を治す 傷寒門 本方の特徴 胃腸虚弱な人にも安心な風邪薬という点である 腹候 上気道炎急性期 すなわち表寒感冒には 症状と脈象のみで適用され 腹候にはよら ない 慢性疾患に応用する場合には 腹力中等度 前後 1 4/5 ときに心下痞䌤を認める 腹 候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 太陽病 脈 舌 脈は浮または やや弦 舌は白薄苔 腹候 上気道炎急性期 すなわち表寒感冒には 症状と脈象のみで適用さ れ 腹候にはよらない 慢性疾患に応用する場合 に は 腹 力 中 等 度 前 後 1-4/5 ときに心下痞 䌤を認める 口訣 本方は森道伯氏がスペイン風邪に挑んだ三処方の一つである 道聴子 胃腸型感冒 の治療目的でつくられたもの 中医処方解説 この方は気剤のなかにても揮発 気鬱を発散する の効がある 浅田宗 伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 胃腸虚弱で神経質の人の風邪の初期 b 漢方的適応病態 脾胃気滞 すなわち 腹が脹る 遊走性の腹痛 悪心 嘔吐などの症 候で 舌苔は白薄 脈はやや弦 気滞を伴う表寒感冒 すなわち 頭痛 悪寒 無汗 身体通などの表 寒の症候に 脾胃気滞を伴うもの 舌苔は白薄 脈は浮 より深い理解のために 脾胃気滞を伴う状態に広く応用できる 構成生薬 香附子4 蘇葉2 陳皮2 甘草1.5 生姜1 単位g 146

147 活用自在の処方解説 70 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気和胃 理気解表 効果増強の工夫 川芎茶調散を加えて 鎮痛 発汗 解熱作用を強め 頭痛を改善する 処方例 ツムラ香蘇散 ツムラ川芎茶調散 5.0g㾹 5.0g㾸 混合し分 として食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 感冒 神経衰弱 ヒステリーなど 魚中毒 腹痛 血の道症 経閉 下血 薬煩 神経病 狂乱をおこしそうなとき アレルギー性鼻炎 蓄膿症 嗅 覚脱失 鼻閉塞など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 漢方その他の熱病で 頭痛 発熱 悪寒するもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 胃弱者 神経質者の感冒の初期 麻黄が入った方剤では胃にもたれるもの 魚や蟹の中毒によるじん麻疹 ヒ ン ト 本方には香附子 蘇葉 陳皮など理気薬の構成割合が多いことから ガス が停滞したり 遊走性の腹痛があったり 腹部膨満感を覚えたりすることに も対処できる 視点を変えると理気薬とは消化管運動薬とも理解されるので 現代人に多い非器質的な腹部愁訴には不可欠の薬剤である 理気薬には 胸に作用する括䋃仁や薤白 胃に作用する枳実 香附子 半夏 陳皮 紫蘇葉 木香 腸に作用する厚朴 香附子 枳実 木香などがあって 中 医処方解説 香附子 枳実 木香などは腹部一般に広い作用点を有するこ とがわかる このような見地に立てば 過敏性腸症候群には少量兼用方などの工夫で改 善が期待できよう 147

148 71 四物湯 しもつとう 出典 和剤局方 栄衛を調益し 気血を滋養す 衝任虚損 月水ととのわず 臍腹䉘痛 崩中漏下 血瘕塊硬 発歇疼痛 妊娠宿冷 将に理宜を失し 胎動して安 からず 血下りて止まず 及び産後虚に乗じて 風寒内にたたかい 悪露 下らず 結して瘕聚を生じ 少腹堅痛し 時に寒熱を作すを治す 婦人 諸疾門 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 臍上悸 また は臍下悸を認めることがある 腹候図 気血水 血が主体の気血水 六病位 太陰病 脈 舌 虚脈であるが定まった脈状はない 舌質は 淡白 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 臍 上 悸 ま た は臍下悸を認めることが ある 口訣 血道を滑らかにするの手段なり それ故血虚は勿論 瘀血血塊の類 臍 腹に滞積して種々の害をなすものに用うれば たとえば戸障子の開闔 か いこう にきしむ者に上下の溝へ油を塗るごとく活血して通利を付けるな り 浅田宗伯 いわゆる肝虚とは腎気もまた虚するなり 水分の悸 臍上悸 があれば 肝虚の証として疑いなし 地黄を含む本方の目標である 和田東郭 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 皮膚が枯燥し 色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症 産後あ るいは流産後の疲労回復 月経不順 冷え症 しもやけ しみ 血の道症 b 漢方的適応病態 血虚 すなわち 顔色が悪くつやがない 皮膚がカ サカサして潤いがない 爪の色が悪くもろい 目がかすむ 目が疲れる 目の乾燥感 頭がボーッとする ふらつく 動悸 四肢のしびれ感 筋肉 がびくびく引きつる 筋肉の痙攣がよく起きるなどの症候で 女性では月 経周期の延長 月経量が少ない 無月経などがみられる 構成生薬 地黄3 芍薬3 川芎3 当帰3 単位g 148

149 活用自在の処方解説 71 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補血活血 調経 効果増強の工夫 本方は基本処方として血虚を伴うさまざまな病態に適応される 四物湯を 含む薬方は実に多い 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 月経異常 不妊症 血の道症 産前産後諸病 産後の脚弱 産後の舌爛れ 産後血脚気 皮膚病 乾燥性 痿癖 下肢運動麻痺 カリエスなど 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 貧血 月経不順 腹痛 子宮出血 腹塊 不安 産後悪露下らず 下腹堅 痛 ときに寒熱をなすものなど 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 虚弱体質者で 湿証でないものの月経不順 産前産後の異常 血の道症 指掌角皮症 ヒ ン ト 四物湯が 婦人患者の心身ともに改善したという矢数道明氏の経験例を紹 介する 三四歳の韓国婦人 四年前二度目のお産後からこの病状が起こった とに かくつらくてつらくて なんともお話のしようがない 呼吸が苦しくて息を 吸う力がない 動悸がしていまにも心臓が止まりそうである 肩は破れるよ うに凝って 腰は痛むし 子宮が下がってくるし 冷汗が流れてきて 足は 氷のように冷たく いまにも消えてなくなりそうに全身がだるくなって起き ておれず グッタリ倒れるように横になる 顔色が一日七度も変わり 七面 鳥のようだと人からいわれる 黒くなったり 赤くなったり 蒼白になったり 桜色になったりする だるくなると箸を持つのもいやになり 憂鬱でなんとも申しようがない ときどき足の裏に火がついたかと思われるようにほてってくる 四年間 家 事一切は他人まかせで 一流大病院数カ所を次々と訪れて 際限もなく以上 のような訴えを繰り返してきた 栄養は普通 このときの顔色は真赤であった 脈は沈んで微弱 舌白苔 月経はきわめて少ない 腹は軟弱で綿のようである 臍傍に動悸と圧痛がある 私はこの腹証により 四物湯に脚気加減をして与えた この方は瘀血を去り 血熱をさまし 婦人血の道の神経症状をよく鎮静させる能がある 本方服用 により俄然好転し 二カ月後には家事一切を自ら行なうようになった 臨 床応用漢方処方解説 ちなみに四物湯脚気加減は 四物湯加木瓜 g 蒼朮 g 薏苡仁 gの内 容である 149

150 72 甘麦大棗湯 かんばくたいそうとう 出典 金匱要略 婦人の蔵躁 しばしば悲傷して哭せんと欲し 象心霊の所作のごとく しばしば欠伸する証 婦人雑病篇 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 だが 腹力に関わ らず用いられる ときに腹直筋の緊張を認 めることがある 腹候図 気血水 気が主体の気血水 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 だが 腹力に関 わらず用いられる とき に腹直筋の緊張を認める ことがある 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は淡白 脈細 口訣 小児啼泣止まざる者に用いて速効あり 浅田宗伯 虚弱な小児や婦人 神経過敏で厭世的傾向があったり 他愛なく喜んだ りするもの 現代漢方治療の指針 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 夜泣き ひきつけ b 漢方的適応病態 臓躁 すなわち 不安感 悲哀感 驚きやすい 寝つきが悪い 眠りが浅 い 頭がボーッとするなどの心血虚の症候に 食が細い あくびがよく出 るなどの脾虚の症候を伴うもの 甚だしければけいれん 意識喪失を来す より深い理解のために 臓躁とは ヒステリー様の症候をいうが 心血虚と 脾虚の軽度のものと考えられ 軽い栄養不良に伴う脳の抑制過程と興奮過程 の失調状態と推察する 構成生薬 大棗6 甘草5 小麦20 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 心安神 健脾緩中 効果増強の工夫 安神薬の配合をある解説書では勧めている 著者は未験だが酸棗仁湯など 150

151 活用自在の処方解説 72 の兼用は期待できるかもしれない 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 ヒステリー 泣き中風 笑止まざるもの 夢遊病 小舞踏病 チック病 てんかん 憂鬱病 狂躁病等で 不随意運動 無意識夢中の運動 欠 伸などし 或は泣き悲しみ 或は笑うなどの精神症状があるもの 2 小児の夜啼きで 泣くが如く長啼きをするもの 3 胃アトニー 内臓無力 或は下垂 飢餓感が強いもの等で 疲れやす く欠伸の出るもの ヒ ン ト このようにほとんど日常の食材からなるような方剤がどうしてこのような 効果を発揮するのだろう わが師匠 藤平健先生の興味深い治験例を著書 漢 方臨床ノート 治験篇 から要約して紹介しよう ヒステリー 25歳の女性があるとき藤平医院を初診した 多彩な症状があったが 当初 理由もなく悲しむという愁訴を目標に 甘麦大棗湯を投与した 多少うつの 傾向があるとみたのである これである程度よくなり 薬を飲んだり止めた りしながら一年ほど経過したのであるが あるとき 肩が非常に凝る 気分 も沈むし 寒くて仕方がない と訴えてきた そこで 今回は灸をやってみようと思い立った 背中の両方の脾兪にハリ をして その上にもぐさを置き 火を付ける すぐあたたかくなって気分がよくなりますよ 少し動悸がするかもしれな いけれど 心配ないですからね と いって 私は次の患者の診察に移ったの であるが しばらくすると 先生 気持が悪い という 顔色が青ざめ 脈 を診ると だんだん小さくなっていく様子 あわてて 人ほど従業員を呼び みんなで背中をなでたり 手足をマッサージしたりし 息が苦しそうなので 六神丸を服用させた 中略 みんなでけんめいにマッサージしているというのに 本人は なんだか 私は今日 お姫様になったみたい などといっている 約30分でいくらか安静 になったので カーテンを閉めてそのまま寝かせておいた ところが しばらくして行ってみると 姿が見えない 従業員に聞くと ト イレに行きました との答えである トイレに行けるくらいなら とホッと安 心したのだが このときはじめて ヒステリーの発作だったのではないかと 気がついた 別室の電話で 家の人に問い合わせてみると しょっちゅうこ のような発作を起こしているという 動悸がするかもしれない といった私 の言葉が暗示となって 発作を誘発してしまったようである 患者に 咽に何かひっかかったような感じがありますか と聞くと あると いう そこでAを半夏厚朴湯エキス g Bを甘麦大棗湯エキス gとして Aを朝 Bを夕飲むように指示した その後の経過は順調で 約半年の服薬で発作が起こらなくなり 多彩な愁 訴も消失した 151

152 73 柴陥湯 さいかんとう 出典 本朝経験方 傷寒論 中の小柴胡湯 小陥胸湯を合方したもので本朝経験方 小陥胸湯の条文を引くと 病 まさに心下にあり これを按ずれば即ち痛み 脈浮滑なる証 太 陽病 下篇 腹候 腹力中等度 2-4/5 心下痞䌤と ときに 胸脇苦満を認める 腹候図 気血水 気水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌苔が黄膩などの熱痰の症候を伴うもの 脈は滑数 腹 候 腹 力 中 等 度 2-4/5 心 下 痞 䌤 と ときに胸脇苦満を認め る 口訣 痰咳の胸痛に運用すべし 浅田宗伯 乾性肋膜炎などにありては 証により 本方を適用す 奥田謙藏 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 咳 咳による胸痛 b 漢方的適応病態 半表半裏証に 咳嗽 胸痛 胸内苦悶 黄色粘稠な喀痰 上腹部のつかえ 口乾 舌苔が黄膩などの熱痰の症候を伴うもの 脈は滑数 構成生薬 柴胡5 半夏5 黄䊫3 大棗3 人参2 黄連1.5 甘草1.5 生姜1 括楼仁3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和解半表半裏 清熱化痰 効果増強の工夫 本方の主治の場は横隔膜の上下から胸部にあるので 半夏厚朴湯の合方な どは試みられてよいだろう 152

153 活用自在の処方解説 73 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 肺炎 胆石症 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 肋膜炎 気管支炎 膿胸 ヒ ン ト 本方は結核の多かった時代には結核性胸膜炎によく用いられた 大塚敬節 氏の 漢方診療三十年 には示唆に富む治験例がある ほぼ全文をご紹介しよ う 湿性肋膜炎 四十四歳の婦人 数日前から からだを動かすとき何となく息苦しかったが せきもなく 熱もなく 食欲にも異常がなかった ところが 昨日 たまた ま田舎から来客があり 客とともに井頭会園に遊んだところ 帰途呼吸が苦 しくなり やっとの思いで帰宅して 往診を乞われた 患者は 中肉中背で色白く 筋肉は軟い 脈をみると 沈 小 数で 動 くと口が乾く 大便は一日一行で 汗は出ない 熱もない 聴診打診上 左 側肋膜に滲出液がかなりたまっているのがわかる 病気は左側滲出性肋膜炎 である 肋膜炎には 小柴胡湯や柴陥湯を用いるのが一般の傾向であるが この患者は熱もなく 脈も沈 小 数であるから柴胡姜桂湯にした これを のむと 食欲が全くなくなり よけいに息が苦しいという そこで柴陥湯に 転じた すると ますます心下部のつかえがひどくなり 食はすすまず 手 足が冷えるようになった 元来この患者は 始めから熱性症状がなかったのに 柴胡 黄䊫 半夏 黄連 括呂仁 かろにん などの冷薬を用いて 熱を下げようとしたため 病気はか えって悪化し 手足は冷えるようになったのである このことにやっと気付 いた私は 真武湯を与えた 薬が証に合うとおそろしいものである たった一回のんだだけで 胸が軽 くなり とても気持がよいという つづいて 一カ月の服薬で滲出液は全く とれた その頃から少しせきが出るようになり ときどき三十七度二 三分 の熱が出るようになった またときどき呼吸が苦しいような気持になって のぼせることがあるという 肩もこることがある こんな病状であったから 桂枝人参湯に転方し これを三週間ほど服用し 体温も下り 呼吸も楽になった しかし 心下部のつかえがとれず この部 が膨満して食がすすまないので 茯苓飲に転じ これを続服すること三カ月 で病気前より健康状態がよくなった 茯苓飲は 胃に水やガスがたまって この部が膨満して飲食がすすまない のを治する効があるが 私は先年 肋膜炎の患者で 胸部からみずおちにか けて膨満して全く食欲のないというものに これを用いて 食もすすみ 滲 出液も同時にとれたものがあった さて 肋膜炎には 柴胡剤がよいという先入観のために 真武湯を与えて 裏の寒を去らねばならない場合に ますます裏を冷やす柴胡剤を用いたのは 明らかに失敗であった 漢方は証に随って治すべきであると いつも口に唱えながら このような 誤りをすることがよくある 反省 反省 153

154 74 調胃承気湯 ちょういじょうきとう 出典 傷寒論 1 胃気和せず 䋫語する証 傷寒論 太陽病上篇 2 発汗の後 悪寒せず ただ熱する証 太陽病中篇 3 陽明病 吐せず 下らず 心煩する証 陽明病篇 4 傷寒 吐して後 腹脹満する証 同上 腹候 腹力中等度かそれ以上 3-4/5 腹候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 陽明病 脈 舌 脈沈実 沈数 乾燥した白 黄苔 腹候 腹力中等度かそれ 以上 3-4/5 口訣 この方は 承気中の軽剤なり 浅田宗伯 燥屎 臍下の気海 石門のあたりに在り 腹診配剤録 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 便秘 b 漢方的適応病態 強い腹部膨満感やつかえを伴わない便秘に適応し 大黄甘草湯に芒硝を加えた 一般的な便秘向きにしたもの 構成生薬 大黄2 甘草1 芒硝0.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱瀉下 効果増強の工夫 他の瀉下効果のある薬方と証に応じた合方が可能である 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 大承気湯証に似てそれほど腹堅ならず 熱症状が主である 2 流感 肺炎 チフス 化膿症 麻疹 丹毒 原因不明の熱等で 発熱 或は潮熱 腹満便秘 或は譫妄 脳症 心煩等するもの 3 消化不良で 潮熱 口唇乾燥 譫妄 腹満するもの 4 頭痛で 煩躁 便秘のもの 154

155 活用自在の処方解説 74 5 むし歯 歯痛 口角糜爛 鵞口瘡 咽喉種痛等に使つた例がある 6 吃逆で胃中不和のもの 7 食道狭窄 食道癌 胃癌等で 胸腹痛 或は妨満し 腹中に塊があり 咽喉乾燥 鬱熱便秘するもの 類聚方広義 8 糖尿病で実証 口渇 便秘 小便が赤いなどのもの 9 ものもらいに使つた例がある 10 夜啼きに使つた例がある 11 尿閉に使つた例がある 12 疥癬で 浮腫 唇乾 腹満 両便秘するものに使つた例がある ヒ ン ト 浅田宗伯は 承気とは順気であり 気を巡らすことであるといっている 宗伯のいう 承気中の軽剤 とは 大承気湯のように本格的な発熱性疾患に 用いるにはやや非力なことを指摘したものであろう 矢数道明氏は本方の目的を 腹満 便秘 心煩としている 本方が承気湯中の軽剤であっても 漢方診療医典 47ページに大塚敬節氏の 次のような記述があることに注意しなければならない これは本方に限らず 下法を適用する際には臨床家が常に心得ねばならないことである こんな例があった 急性肺炎の患者で 40 近い体温の上昇があり うわ ごとをいい 数日間便秘していたので 陽明裏実証と判断して 調胃承気湯 を与えたところ 回のんだだけで 数時間後には数行の下痢があり 眼球 は上転して 脈は乱れて重篤の状態となった これは虚証を実証と誤認して 裏を攻めたために起こった症状であるから 急いで真武湯を与えたところ 下痢が止み 脈が落付いて 死の転帰をとらないですんだ そこで虚実の判定に自信のないときには まず虚証として治療するのが安 全である 実証を虚証と誤っても すぐに病人を危篤に陥し入れることは少 ないが 急性病のさいに虚証を誤って攻めると 往々にして とりかえしの つかない状態になることがある 私の恩師湯本求眞先生は 古方の一つ時 いつとき 殺し 後世のなぶり殺し という言葉を 私に授けられた この意味は とかく東洞流の古方の医者は 虚証の患者でも 実証と診断して これを攻め 回の治療で殺すが 後世 派の医者は実証の患者でも これを虚証と診断して 温補剤 人参 黄耆 附 子のような薬物の入った方剤 をもちい 長い年月をかけて なぶり殺しにす るというのである 古方の信奉者であった湯本先生はこの言葉のあとで だか ら古方は罪が軽く 後世は罪が重いのだ とつけ加えられた この言葉は 古 方と後世の偏向な治療法を戒められたものである 155

156 75 四君子湯 別名 四味湯 補気湯 しくんしとう 出典 和剤局方 栄衛気虚 臓腑怯弱 心腹脹満 全く食を思わず 腸鳴泄瀉 嘔噦吐逆 するを治す 大いに宜しくこれを服すべし 一切気門 腹候 腹力中等度よりやや軟 1 3/5 ときに胃 内停水を認める 腹候図 気血水 気水が主に関わる 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は淡白で胖大 舌苔は白薄 脈は細弱 あるいは沈緩 腹候 腹力中等度よりや や 軟 1-3/5 ときに胃 内停水を認める 口訣 この方および六君子湯みな飲食進み難く 気力薄きを以て主症とす 浅 田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 やせて顔色が悪くて 食欲がなく 疲れやすいものの次の諸症 胃腸虚弱 慢性胃炎 胃のもたれ 嘔吐 下痢 b 漢方的適応病態 脾胃気虚 すなわち 元気がない 気力がない 疲れやすい 全身の無力 感 声に力がない 息切れ 口数が少ない 顔色が白い 食欲不振 少食 味がない 軟便 水様便あるいは便秘などの症候で 舌質は淡白で胖大 舌苔は白薄 脈は細弱あるいは沈緩 浮腫を伴うこともある 構成生薬 蒼朮4 人参4 茯苓4 甘草1 生姜1 大棗1 単位g より深い理解のために 本方は六味であるが 生姜と大棗は昔から患家で自 家用のものを入れた したがって この二味を薬味に数えない TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補気健脾 利水消腫 効果増強の工夫 本方は四物湯や平胃散などとともに 多数の方剤の一部をなしている 156

157 活用自在の処方解説 75 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 胃腸虚弱 食欲不振 貧血 嘔吐 下痢等に用い その他老人や虚弱者の 出血 甚だしく貧血のもの 四肢の無力症 痔疾 脱肛 半身不随 遺尿 症 夜尿症など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 胃腸無力 心腹脹満 食欲不振 腸鳴下痢 嘔吐吃逆するもの 或は脾衰 肺損 食欲不振 体痩面黄 皮膚に皺多く抜毛多きもの 胃アトニー 内 臓下垂 痔出血 貧血 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 顔色の悪い虚弱体質者 ヒ ン ト 矢数道明氏は四君子湯の目標を次のように述べている 元気の衰えたもの 胃腸の虚弱と貧血を目標とし 種々の疾患に用いる 脈は軟弱 腹証も弛緩性 アトニー性で軟弱である 胃内停水をみとめ 食欲不振 全体に元気の衰え たものを目標とする 古人は貧血気味で顔色蒼白 言語に力がなく 手足倦 怠で 脈に力がないという五つの症があれば 四君子湯の目標がそろってい るとした 臨床応用漢方医学解説 ここに貧血気味な顔色とあるので われわれは四物湯など補血の薬を思い 浮かべやすいが 四物湯の項では同氏は次のような興味深い指摘をしている 四物湯は婦人の血の道症といわれる神経症状を鎮静させる効能があり 貧 血を治するものであるが 血の熱を冷まし 滋潤の作用があるので 口唇が 蒼白となるほど高度の貧血あるもの および胃腸虚弱で泄瀉しやすいものに は用いられない このような場合には四君子湯がむしろ適しているのである 著者は矢数道明氏が講演の中で 血を補うよりは 気を補え という口訣 を披露され 高度の貧血では補血剤の四物湯では不適切であり そのときに は補気剤である四君子湯が最適と述べられたのを思い出す 157

158 76 竜胆瀉肝湯 りゅうたんしゃかんとう 出典 薛鎧 薛己 父子 著 薛氏十六種 肝経の湿熱 玉茎患瘡 或は便毒 下疳 懸癰 腫痛 小便赤渋滞 陰 嚢腫痛を治す 薛氏医案十六種 より深い理解のために 多くの同名処方があり 清代の呉謙らによる 醫宗金 鑑 には柴胡が加わっている わが国の一貫堂森道伯家方には温清飲ほかが加 わる 腹候 腹力中等度以上 3-5/5 腹候図 より深い理解のために 後世方の腹候は古 方とは異る考え方であるが 矢数格氏によ れば 腹証上肝経に沿って緊張 圧痛あり 皮膚の色が浅黒い 気血水 水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度以上 3-5/5 参考 後世方の腹候は古 方とは異る考え方である が 矢数格氏によれば 腹証上肝経に沿って緊 張 圧痛あり 皮膚の色 が浅黒い 肝胆火旺 肝火上炎 では 舌質は紅 舌苔 は黄 脈は弦数 下焦の湿熱では 舌質は紅 舌苔は黄膩 脈は弦滑数 口訣 竜胆瀉肝湯証は 同じく解毒証体質でも結核性疾患とは比較的無関係で ある 概して婦人病や泌尿生殖器病 花柳病などに運用される しかも処 方構成の上から言つて 下焦 すなわち臍部より下の疾病によく用いられ る 矢数格 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力があり 下腹部筋肉が緊張する傾向があるものの次の諸症 排 尿痛 残尿感 尿の濁り こしけ 帯下 b 漢方的適応病態 医宗金鑑 肝胆火旺 肝火上炎 すなわち はげしい頭痛 目の充血 目やに 眼痛 口が苦い 急性の難聴や耳鳴 耳痛 胸脇部の脹った痛み いらい ら 怒りっぽい 不眠 尿が濃いなどの症候 黄疸が出ることがある 158

159 活用自在の処方解説 76 下焦の湿熱 すなわち 排尿痛 頻尿 濃縮尿 排尿困難 あるいは 陰部湿疹 陰部の腫脹疼痛 黄色の帯下などの症候 構成生薬 地黄5 当帰5 木通5 黄䊫3 車前子3 沢瀉3 甘草1 山梔子1 竜胆1 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清肝瀉火 清熱利湿 疏肝解欝 効果増強の工夫 もし本方を強化したいと思ったら 少量の大黄 0.5g/日 あるいは 附子 を加えるのがよい この場合の大黄は下剤でなく 附子も温補目的ではな い 膠着した病状を破る一種の変調療法である このような目的には大黄 も附子も せいぜい1g程度しか用いない 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 急性または亜急性の尿道炎 膀胱炎 バルトリン腺炎 帯下 陰部痒痛 子宮内膜炎 膣炎 下疳 鼠径リンパ腺炎 睾丸炎 陰部湿疹 トリコモ ナス等 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 一貫堂竜胆瀉肝湯について 尿道炎 膀胱炎 バルトリン腺炎 帯下 子 宮内膜炎 陰部痒痛 睾丸部湿疹 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 尿道炎 淋疾 膀胱炎 膣炎 子宮内膜炎 外陰部の痒痛 陰部湿疹 頑 癬 高血圧症 緑内障 中耳炎 ヒ ン ト 苦心のあげく本方で改善した藤平健先生の症例を 漢方臨床ノート 治験 篇 より概略を紹介しよう 20歳の女子で会社員 カ月前から排尿痛と残尿感が起こって病院の泌尿 器科を受診し 膀胱炎と診断され治療を受けているがよくならない 体格は中肉中背 脈は弦 舌には乾湿中間の白苔が中等度 腹力中等度 上腹部に振水音が顕著に聞かれ 臍傍右下 回盲部およびS 状部に抵抗と圧痛が証明される 膀胱部は圧痛のみを訴える 以上の所見から 中略 清心蓮子飲 煎薬 を 一週間分投与 夜間尿は回 数がやや減ったようでもあるが 下腹部の痛みや残尿感は まだかなりある 転方 猪苓湯エキス g 桃核承気湯エキス gを それぞれ半量ずつ朝夕 交互に服用 悪化 転方 猪苓湯 五淋散 不変 転方 煎薬 猪苓湯合苓桂朮甘湯 転方 さらに腹力が実してきたので 煎薬 清心蓮子飲合猪苓湯 最後に 竜胆瀉肝湯 煎薬 として 初診より カ月で完治 廃薬 159

160 77 芎帰膠艾湯 別称 膠艾湯 膠艾四物湯 きゅうききょうがいとう 出典 金匱要略 婦人漏下あるは 半産の後因りて続いて下血しすべて絶えざる者有り 妊娠下血する者有り もし妊娠腹中痛むは胞阻となす 膠艾湯これを主る 婦人妊娠病篇 より深い理解のために 同篇には 桂枝茯苓丸 芎帰膠艾湯 当帰芍薬散の 順に記述されている 腹候 腹力中等度より軟 1 2/5 ときに瘀血の 圧痛点が陽性で 腹直筋緊張を認める場合 がある 腹候図 気血水 血が主体の気血水 六病位 太陰病 脈 舌 舌質はやや淡白 脈は細 腹候 腹力中等度より軟 1 2/5 ときに瘀血の圧 痛点が陽性で 腹直筋緊 張を認める場合がある 口訣 寒証の出血に用いるべきで炎症性 充血性の血熱妄行には不適で その 場合には 黄連解毒湯か 三黄瀉心湯である 現代漢方治療の指針 出血の有無に関わらず下腹部の鈍痛に使うことができる 龍野一雄 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 痔出血 b 漢方的適応病態 血虚の出血 すなわち 顔色が悪い 皮膚につやがない 目が疲れる し びれ感 筋肉の引きつり 頭がボーッとするなどの血虚の症候とともにみ られる出血で 少量で持続性のことが多く 不正性器出血 血便 血尿な どとしてみられる 構成生薬 地黄5 芍薬4 当帰4 甘草3 川芎3 艾葉3 阿膠3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補血止血 調経安胎 160

161 活用自在の処方解説 77 効果増強の工夫 疲れやすい 食欲がないなど気虚の症候があれば人参 場合により黄耆な どを含むいわゆる補気剤を合方する 処方例 ツムラ芎帰膠艾湯 ツムラ四君子湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 流産 メトロパチー 子宮癌等で虚寒性の子宮出血があるもの 2 肛門出血 痔出血 腎臓結核 腎臓結石 腎臓腫瘍 膀胱結核 膀胱 腫瘍等の血尿で 足冷 下腹鈍痛 腰痛等を伴うもの 3 吐血 喀血 口内出血 眼出血で下部虚寒のもの 4 下腹冷痛し 脈沈微 下腹軟 足冷するもの 5 妊婦が転んで腹痛や出血を起したもの 打撲症などに使つた例がある 6 難産に使つた例がある 7 ダクラス氏窩膿瘍を治した例がある 8 喉頭結核で 咽痛 無声 手足煩熱 下腹不仁するものを治した例が ある ヒ ン ト 大塚敬節氏が 症候による漢方治療の実際 に紹介された一例をご紹介しよ う 42歳の男子 三ヶ月前より血尿が出るようになった 日によってはブドウ 酒のようになり また日によっては桃色になることもあるという その他に は別に何の症状もない しかしこの血尿はいつまでも治らないので 某大学 病院に入院した そこではいろいろと詳しく検査したのち腎臓からの出血で あることをつきとめた しかし原因がわからず 特発性腎出血ということに なった ところがこの血尿はいつまでもとまらないので 退院して私に治を 乞うた 腹診上は特にとりたてていうほどのものはなく ただ僅に臍部で動 悸がやや亢進しているだけである 顔色は黒い方で やや貧血の傾向がある 脈はやや沈で小である 食欲は普通で 大便も 日 行あり 排尿時にも苦 日後には肉眼では血尿 痛はない 以上の所見から芎帰膠 湯を与えたところ らしいところがなくなり その後 時々 疲れたときなどに血尿を出すこと があったが だんだんそれも遠のき ヵ月後には 体重が kgほど増しまっ たく健康体になってしまった 161

162 78 麻杏薏甘湯 まきょうよくかんとう 出典 金匱要略 病者一身悉く腫れ 発熱 日晡所に劇しきものは 風湿と名付く この 病汗出で風に当たりて傷れ あるいは久しく冷を取りて傷れて致すところ なり 麻黄杏仁薏苡甘草湯を与うべし 䛢湿䇻病篇 腹候 腹力中等度 2-4/5 腹候図 気血水 気水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈浮 有力 舌紅 白苔 腹候 腹力中等度 2-4/5 口訣 その証一等重きものは名医指掌薏苡仁湯 痛熱はなはだしき者は当帰拈 痛湯に宜し 浅田宗伯 疣贅など に有効 奥田謙藏 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 関節痛 神経痛 筋肉痛 b 漢方的適応病態 風湿の表証 すなわち 本方は風湿の表証で 疼痛よりも浮腫が主なもの に用いる 宣肺の麻黄 杏仁 祛風湿の薏苡仁および炙甘草からなる 麻 黄加朮湯との比較では 麻黄加朮湯は桂枝の配合があって発汗作用が強く 風寒湿の表証に適応するのに対し 本方は寒証が余り強くなく 発熱が 午後に強くなる といわれるようにやや熱証に傾くものに適している 構成生薬 薏苡仁10 麻黄4 杏仁3 甘草2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 祛風湿 解表 止咳平喘 効果増強の工夫 本方は麻黄湯の変方であるから 傷寒論 の桂麻各半湯にならって異なる 性格の方剤を構成可能と思われる むろんリウマチ向きに附子の加味もあ りうるであろう 次の例は風寒表証を帯びた症例を想定している 162

163 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ麻杏薏甘湯 ツムラ桂枝加朮附湯 5.0g㾹 5.0g㾸 混合し分 あるいは分 78 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 リウマチ 神経痛で発熱し 夕方になると痛みが増すもの 2 いぼで やや硬く乾燥性のもの 3 水虫で乾燥性のもの 一部がジクジクしていてもよい 4 頭のふけ 手の甲の荒れ 進行性手掌角皮症 凍傷 湿疹等で落屑状 に乾燥するもの かゆみを伴うものもある 5 喘息 肺壊疽 妊娠腎等で 喘咳 顔面浮腫するもの 6 胃痛に用いた例がある 7 項背強り首が廻らぬのを 水枕で冷して治せぬのに用いた例がある ヒ ン ト 大塚敬節氏は 症候による漢方治療の実際 で本方について次のような解説 を加えている この方は麻黄湯の桂枝の代わりに薏苡仁の入ったもので 筋肉リウマチ その他の筋のいたむものに用いる 福井楓亭は この症は湿気が皮膚にあって 関節には変化がなく 熱が出て 体の痛むものに用いる といっている 氏は続いて 頸が回らなくなった男性に葛根湯を投じてなおらなかったが 男性が一週間頚に氷枕を当てていたことにヒントを得て 風湿 類似状態に おちいったとして麻杏薏甘湯を用いたところ 日分で半ば治り 日分で全 治した例を披露している 一方 本方剤は奥田謙藏の口訣にあるように皮膚疾患に伝統的に用いられ てきた 大塚氏は同書の中で 麻杏薏甘湯は 俗に水虫とよばれている汗疱 性白癬 ママ に用いられる ただし これの効くのは軽症で 化膿の傾向の ないものである 化膿の傾向があれば十味敗毒湯加連翹がよい と述べている 163

164 79 平胃散 へいいさん 出典 和剤局方 脾胃和せず 飲食を思わず 心腹脇肋 脹満刺痛 口苦くして味なく 胸満短気 嘔噦悪心 噫気呑酸 面色萎黄 肌体痩弱 怠惰嗜臥 体重く 節痛するを治す 常に服すれば 気を調え 胃を温め 宿食を化し 痰飲 を消し 風寒冷湿 四時非節の気を避く 飲食傷門 腹候 腹力中等度 2-4/5 胃内停水を認めるこ ともある 腹候図 気血水 水と気が主として関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌苔は白厚膩 脈は軟緩 腹 候 腹 力 中 等 度 2-4/5 胃内停水を認 めることもある 口訣 平胃散は胃もたれ 安中散は胃痛を目標にして鑑別する 道聴子 胃内に食毒と水毒が停滞するのを平らかにする意味で平胃散といい 理 気化湿の基本処方である 中医処方解説 はかの行かざる病人 なかなか治らない病人 何とも 適方を 見付け難 き者 色々に治さんと思ふ薬を用ひたる者の後などには かまわず平胃散 を用い 軽快するものなり 老医口訣 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 胃がもたれて消化不良の傾向のある次の諸症 急 慢性胃カタル 胃アト ニー 消化不良 食欲不振 b 漢方的適応病態 湿困脾胃 湿阻中焦 すなわち 湿邪による胃腸障害で 上腹部膨満 胸 がつかえる 腹痛 口がねばる 味がない 食べたくないなどの症候で 悪心 嘔吐 下痢 四肢が重だるいなどの症状を伴うことも多い 構成生薬 蒼朮4 厚朴3 陳皮3 大棗2 甘草1 生姜0.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気化湿 胃和 164

165 活用自在の処方解説 79 効果増強の工夫 胃もたれに心窩部痛が加わるような場合には 少量の芍薬甘草湯合方も考 えられる 処方例 ツムラ平胃散 ツムラ芍薬甘草湯 7.5g 2.5g 可能ならば2剤を混合して再分包し 分 3 食前内服 この2剤中の甘草は合計3gとなる 芍薬甘草湯は基本的に頓用で用いる が 少量であれば長期服用も可能となる 甘草は経験的に1日5g以内にと どめる 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 急性胃腸炎後の食欲不振 慢性胃炎で 腹鳴下痢すると気持ちが良いとい うもの 胎盤残留 喘息 黄胖病 胃腸虚弱で風邪引きやすいもの 諸病 難治で不可解のもの 食毒水毒による頭痛 眼疾 頭瘡など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 急性慢性胃腸カタル 食過ぎて起こる喘息 胃腸が虚弱で風邪を引きやす いもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 急 慢性胃炎 消化不良 食あたり あきらかに熱実証のものと極端に寒 証のものには用いがたい ヒ ン ト 本方は理気化湿の基本処方で 多くの処方に組み込まれている 芳香化湿 の蒼朮 厚朴 陳皮と 和胃の生姜 炙甘草 大棗から構成されている 中 医処方解説 本方から派生する方剤はいずれも個々の特徴によって知られている 不換金正気散は 半夏5.0g 䋋香1.0gを加味したもので 消化器型の感冒 によい 胃苓湯は 本方に五苓散を合方したもので 本書にも記載されているごとく 急性胃腸炎による下痢に用いる 加味平胃散は 神曲 神麹 麦芽 山査子各2.0gを加味し 消化不良や食 欲不振によい 香砂平胃散は 香附子 砂仁 縮砂 各2.0gを加え 一層消化を助ける 平胃散加減方 一貫堂 は 茯苓 白朮各2.5g 黄連1.0g 山梔子1.5gを加味 したもので 呑酸 嘈雑 空腹時の疼痛があり 胃酸過多や胃潰瘍で 心下 部がそれほど肥厚しないものに用いる 臨床応用漢方処方解説 165

166 80 柴胡清肝湯 さいこせいかんとう 出典 本朝経験方 本方は森道伯が 明医雑著 の同名方より牡丹皮 升麻を除いたもの ある いは 外科枢要 の同名方から人参を去って創方したもの すなわち本朝経 験方 肝胆三焦之風熱を治し 頸項腫痛 結核を消散する 矢数格著 漢方一 貫堂医学 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに胸脇苦満 や心下痞䌤を認める 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 小児の脈はあまり重要視することはでき ないが 原則としては緊脈である 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに胸脇苦 満や心下痞䌤を認める 口訣 解毒証体質者は皮膚が黄褐色あるいは色素沈着しやすい 矢数格 また腹診をするとき くすぐつたがる小児は柴胡清肝散証の強いものと 思つてさしつかえなく 腹診時の腹壁の異常過敏性は解毒証体質者に特有 であつて 柴胡清肝散証ばかりでなく 荊芥連翹湯証 竜胆瀉肝湯証など にも同様にこの現象を認めるものである 矢数格 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 かんの強い傾向のある小児の次の諸症 神経症 慢性扁桃炎 湿疹 b 漢方的適応病態 血虚血熱 風熱 すなわち 一貫堂の解毒証体質に適応される 構成生薬 柴胡2 黄䊫1.5 黄柏1.5 黄連1.5 括楼根1.5 甘草1.5 桔梗1.5 牛蒡子 1.5 山梔子1.5 地黄1.5 芍薬1.5 川芎1.5 当帰1.5 薄荷1.5 連翹1.5 単 位g より深い理解のために 全体に寒涼薬の多いのが特徴である 166

167 活用自在の処方解説 80 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱解毒 祛風排膿 養血 止血 効果増強の工夫 方中に温清飲が配されており さらに清熱が必要な場合には黄連解毒湯を 加え あるいは補血が必要な場合には四物湯を少量追加することにより薬 能を加減することが可能である 処方例 ツムラ柴胡清肝湯 ツムラ黄連解毒湯 7.5g㾹 2.5g㾸 混合し分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 小児腺病体質の改善薬として用いられ 肺門リンパ腺腫 頸部リンパ腺腫 慢性扁桃炎 咽喉炎 アデノイド 皮膚病 微熱 麻疹後の不調和 いわ ゆる疳症 肋膜炎 神経質 神経症等に応用 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 腺病質 肺門リンパ腺炎 アデノイド 扁桃腺肥大症 るいれき 皮膚病 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 腺病質の子供で頸部のリンパ腺や扁桃腺の腫れやすい体質の改善に用いる 肌は赤黒く 手足は特に冷たくはないものに適用 ヒ ン ト 一貫堂の柴胡清肝湯に精通しておられたのは道斎 矢数各先生である 先 生の著書 漢方一貫堂医学 から紹介する 柴胡清肝散はもちろん純粋の感冒薬ではない しかし 前に記したように 小児の解毒証体質者は 体質上感冒にかかりやすく したがつて この体質 者にとつては感冒薬よりも 感冒予防薬を論じる方がより必要なことであろ う 森道伯先生が この小児の解毒証体質者に柴胡清肝散を与えた理由は じつにこの体質者を向上させて 後に肺結核を起こす余地を与えないように と考えられたにほかならないのである 解毒証体質者は風邪にかかり 扁桃炎を併発し易く また気管支炎も容易 に起こすのである ゆえに このような体質の者には 感冒が治つたあとも この柴胡清肝散を服用させてこれらの病気を起こさせないように努めなけれ ばならない その意味でわれわれはかなりの成績をあげているのである 予防医学の重要性が叫ばれている今日 一貫堂医学は注目に値するテーマ である 167

168 81 二陳湯 にちんとう 出典 和剤局方 痰飲が患をなし あるいは嘔吐悪心 あるいは頭眩心悸 あるいは中脘 快からず あるいは発して寒熱をなし あるいは生冷を食うによって 脾 胃和せざるを治す 和剤局方 痰飲門 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-4/5 胃部振水 音 胃内停水 を認める 腹候図 気血水 水と気が主体である 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-4/5 胃部振水 音 胃内停水 を認める 舌苔は白滑 脈滑 口訣 本方は燥湿化痰の基本処方で 多くの処方に組み込まれている 中医 処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 悪心 嘔吐 b 漢方的適応病態 肺胃の痰湿 すなわち 白色で多量の喀痰 咳嗽 あるいは口がねばる 悪心 嘔吐などの症候で めまい感 動悸 不眠などを伴うこともある 構成生薬 半夏5 茯苓5 陳皮4 甘草1 生姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 燥湿化痰 理気和中 効果増強の工夫 他の薬方と合わせてその効果を増強する たとえば 小青竜湯と合わせる と その痰飲をさばく効果を増して 鼻炎の鼻水を改善させる可能性が出 てくる 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 痰飲による諸病 嘔吐 悪心 眩暈 頭痛 悪阻 気鬱 食傷 二日酔い 脳溢血など 168

169 活用自在の処方解説 81 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 胃病 眩暈 頭痛 咳痰 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 顔色のあまりよくない胃アトニータイプの者の悪心 嘔吐 悪阻 ヒ ン ト 二陳湯は つわりに用いられる小半夏加茯苓湯に陳皮 甘草を加味した内 容である 小半夏湯に厚朴 蘇葉を加味すれば半夏厚朴湯だから 二陳湯と 半夏厚朴湯は近い処方である 水飲を茯苓で小水に通じて半夏 陳皮でその 上衝をさばく二陳湯と 厚朴と蘇葉という胃腸に作用してその蠕動を促し 気を通じて巡らせようとする半夏厚朴湯とは 痰飲と気の相違があってもあ る種の共通点がある 二陳湯は 燥湿化痰 の基本処方で 多くの方剤に組み込まれている 中医 処方解説 矢数道明氏に妊娠悪阻に対する本方加味の素晴らしい治験例がある 三四歳の婦人 妊娠四カ月である いままで妊娠すること二度 二度とも つわりがひどくて人工流産してしまった 今度はどうしても生ませたいと 家族のものもみんな望んでいるので いのちがけでがんばるつもりであると いう しかし 今度もつわりはひどくて約二カ月 ほとんど食事がもたない 吐物に血が混じって出ることもある すっかり痩せ衰え 顔色は蒼白で 脈 も腹も軟弱である 心下部に停水があり わずかに膨満しているものがある 舌白苔があり 便秘して脱肛する 私は小半夏加茯苓湯でもよいと思われたが 心下の停飲と痞満と胃熱に対 して 二陳湯加味方の方がよいと思い 二陳湯に悪阻加減をして三日分与えた さかずきに一杯ずつ 徐々に冷服させた 一杯のんで落ちついたら また一 杯のむというようにしたのであるが 初めのうちはむかむかしていたが吐か ないですみ その後だんだん食物がおさまり 三日後にはあの激しい嘔吐が ほとんど治った 二陳湯悪阻加減 二陳湯に砂仁 連翹 黄䊫各 gを加味 したもの 169

170 82 桂枝人参湯 けいしにんじんとう 出典 傷寒論 太陽病 外証いまだ除かずしてしばしば之を下し 遂に恊熱して利し 利下やまず 心下痞䌤し 表裏解せざるものは 桂枝人参湯これを主る 太 陽病下篇 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 心下痞䌤 を認める 腹候図 気血水 気が主体の気血水 六病位 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-3/5 心下痞䌤 を認める 陰病 脈 舌 脈は表熱では浮弱 それ以外は沈弱遅 舌 苔は淡白 湿潤 口訣 この方は桂枝湯の変方もしくは類方とみなすべきなり 奥田謙藏 頭痛といえば第一選択に考える 藤平健 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 胃腸の弱い人の次の諸症 頭痛 動悸 慢性胃腸炎 胃アトニー b 漢方的適応病態 1 脾胃虚寒で表寒を伴う感冒 すなわち 脾胃虚寒が基礎にあるものが 感冒にかかり 悪寒 頭痛 発熱 関節痛など表寒を呈したものに用い 人参湯で脾胃虚寒の状態を改善すると同時に 発汗 解熱 鎮痛 抗菌作 用を持つ辛温解表の桂枝によって表寒を取り除くのである 2 脾胃虚寒 すなわち 桂枝の温通の作用により 末梢血管の拡張を来し 消化管の分泌を促して消化吸収を強めるので 人参湯の温中散寒 益気健 脾の効能が増強され 脾胃虚寒に適用される 3 脾胃実寒 寒邪直中 2 と同様な理由による より深い理解のために される 170 実地臨床では 頭痛 下痢 寒証が強い場合に適用

171 活用自在の処方解説 82 構成生薬 桂皮4 甘草3 蒼朮3 人参3 乾姜2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温中散寒 健脾益気 辛温解表 効果増強の工夫 胃腸炎に対する効果の増強にはむろん つの視点がある つは水をさば く作用に注目することと 人参湯の適応である裏寒に注目してそれを強化 することである 水飲をさばく作用の増強に注目し 処方例 ツムラ桂枝人参湯 ツムラ五苓散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 裏寒に対する薬能を増強して附子理中湯などを想定し 処方例 ツムラ桂枝人参湯 5.0g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 急性腸炎 急性大腸炎 熱病に下剤を使用した後等で 発熱或は悪風寒 身体痛 脈浮等の表証と 下利 心下痞䌤があるもの 2 感冒 流感等で発熱 脈浮弱 頭痛 或は悪寒などの表証があり 平常 冷え症 軟便などの裏寒があるもの 感冒悪感頭痛 桂枝 くしやみ 乾姜 3 小児ひきつけで 臍下から心へ上衝するものに使つた例がある ヒ ン ト 桂枝人参湯を常習頭痛に応用することは藤平健先生がたぶん初めである 漢方臨床ノート 治験篇 からその下りを引用してみよう 私自身常習頭痛の経験者であるのであるが かつては呉茱萸湯がよく応じ たのに ここ数年それが応じなくなり ふとした機会に 頭痛 嘔吐 下痢 脈浮という状態の頭痛発作から 桂枝人参湯証に思いが及び それを服用し たところ頓坐的に発作が治まった これを数日服用することによって 以後 この発作が出現しなくなったのである この経験から 頭痛も 上衝という病理概念の重要な一症状であるから これがあって さらに下痢があれば 本方証として一応妥当と認められるの であるが あるいは下痢がなくても 上衝急迫 の一証で 常頭 に応用でき るのではないかと推量し これを応用してみたところ 既述のような成績を 得たわけである 興味深い経験というべきであろう 171

172 83 抑肝散加陳皮半夏 よくかんさんかちんぴはんげ 出典 本朝経験方 抑肝散加陳皮半夏は抑肝散に陳皮半夏の二陳湯を合わせた薬方である 江 戸時代の 北山友松子 1640ごろ 1701 によって作られたと伝えられて いる 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 腹直筋の 緊張 および臍上悸 水分之悸 を認める 腹 候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 少陽病 脈舌 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-3/5 腹直筋の 緊張 および臍上悸 水 分之悸 を認める 原則的に 舌質はやや紅 舌苔は白 脈は 弦細数 口訣 抑肝散と同様に 怒りはなしやと問うべし 目黒道琢 があてはまる 著 者 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症 神経症 不眠症 小児夜泣 き 小児疳症 b 漢方的適応病態 気血両虚の肝陽化風に痰湿の症候が加わる すなわち いらいら 怒りっ ぽい 頭痛 めまい感 眠りが浅い 頭のふらつき 筋肉のけいれんやひ きつり 手足の震えなどの肝陽化風の症候に 元気がない 疲れやすい 食が細い 皮膚につやがない 動悸 しびれ感などの気血両虚の症候を伴 い さらに 舌苔が白膩 悪心 嘔吐 腹部膨満感などの痰湿の症候を認 めるもの 構成生薬 半夏5 蒼朮4 茯苓4 川芎3 釣藤鈎3 陳皮3 当帰3 柴胡2 甘草1.5 単 位g 172

173 活用自在の処方解説 より深い理解のために 83 本方の構成は 抑肝散の適用状態に 悪心 嘔吐 腹部膨満感などの症状と白膩の舌苔が観察され 痰湿の存在が加わった状態 に適すると考えられる すなわち 抑肝散に二陳湯を合方したものに相当す る 渡来人を父に持つ北山友松子が多湿の日本の風土に合わせて工夫したと いうことかもしれない TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 平肝熄風 補気血 燥湿化痰 理気和中 効果増強の工夫 抑肝散の項 p.114 を参照されたい 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 癎症 神経症 神経衰弱 ヒステリー等に用いられ また夜啼 不眠症 癇癪持ち 夜の歯ぎしり 癲癇 不明の発熱 更年期障害 血の道症で神 経過敏 四肢萎弱症 陰痿症 悪阻 佝僂病 チック病 脳腫瘍症状 脳 出血後遺症 神経性斜頸等に応用される 抑肝散の証が長びいて 虚状を呈してきたとき特有の腹証になるが その ときには陳皮 半真の加味方を用いるのである 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 癎 神経衰弱 血の道症 脳出血 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 抑肝散の証で より虚証のもの ヒ ン ト 高橋道史氏の 浅田流漢方診療の実際 には 本方により改善した経験例が 述べられている ある日 中年婦人が尋ねてきて言うには 自律神経の病気で洋医の診療を 受けているが 経過がはかばかしくないので漢方で治療を望むという 見る からに眼光鋭く 落ち着きがない 近ごろ頭痛や めまい 肩こり 動悸 カッ として気が荒くなる やたらに怒りたくなるなどがあるという 脈は浮緊で数 腹部に胸脇苦満はないが 左側の腹直筋は拘攣し 臍上に 動悸が亢進している 北山友松子の口訣の通り 抑肝散に陳皮 半夏を加味 して投与したところ 初診から39日して来院したときには大いに良くなって いた 北山友松子は江戸前期の医師で 父は明からの亡命者馬命于 バメイウ 母は丸山の遊女という伝説的な出自の漢方家である 173

174 84 大黄甘草湯 だいおうかんぞうとう 出典 金匱要略 食しおわりて すなわち吐するものは 大黄甘草湯これを主る 嘔吐 噦下痢病篇 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 で 幅広く用いう る 腹候図 気血水 気と血に関わる 六病位 腹力 腹力中等度前後 2-4/5 で 幅広く用い うる 太陰病 脈 舌 脈沈数 または沈遅 舌候 乾燥 口訣 便秘以外にこれという症状のない場合に用いてよい 藤平健 いわゆる南薫を求めんと欲せば必ず先づ北牖を開くの意にて 胃中の壅 閉を大便に導きて上逆の嘔吐を止めるなり 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 便秘症 b 漢方的適応病態 便秘 構成生薬 大黄4 甘草2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 通便 効果増強の工夫 腹部膨満感が強いときは 枳実 厚朴などを配する意味で大承気湯を合わ せる 処方例 ツムラ大黄甘草湯 ツムラ大承気湯 5.0g 分 食前 2.5g 分 眠前 大承気湯は瀉下効果が強いので少量ずつ適量をさぐるのがよい 174

175 活用自在の処方解説 84 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 食道癌 胃癌 幽門狭窄等の類似疾患 心胸痛 悪阻等で嘔吐便秘す るものに使つた例がある 2 常習便秘 3 カルブンケル等の化膿症の初起 腫痛 䉀熱するものに使つた例がある 4 黄疸 浮腫状にして面目ともに青く 狂言妄語し 声が出ぬものに使っ た例がある ヒ ン ト 大黄甘草湯というと多くの人は緩下剤と思うだろう しかし 出典の 金匱 要略 では食べ終わったときに食べたものを吐く時に用いるとなっており 通 常の緩下剤とは異る文脈で語られている つまり 食べたものが胃に納まる ようにする目的で本来用いられたものである 浅田宗伯の口訣もそのような考え方に沿って理解しなければ到底わからな いことになる 宗伯は本方の効能を説くのに 南薫を求めんと欲すれば 必ず先づ北牖 ホ クユウ を開く というよく知られた古訓を引用した 春まだ浅い頃に暖かな 南風を室内にいれようとすれば 南向きの窓をいっぱいに開いても十分であ るわけでなく むしろ北側に向いた明かり取りの小窓をあけるのがよい そ うすれば南薫はひとりでに入ってくる という主旨である 南薫とは食物で あり 北牖という明かり取りの小窓を開けるとは便通であり 本方の役割は 北の小窓を開くことと同じということがわかろう 漢方が生体機能をどのよ うに観ているかを直感させる口訣である 本方に芒消を加味すると調胃承気湯 さらに桂枝 桃仁を加えて桃核承気 湯となるなど多くの攻下の方剤が派生する 175

176 85 神秘湯 しんぴとう 出典 浅田宗伯家方 外台秘要 の同名方に厚朴を加味 久咳奔喘して 坐臥するを得ず 並びに喉裏呀声気絶するものを療す 外台秘要 腹候 腹力中等度 2-4/5 胸脇苦満を認めるこ ともある 腹候図 気血水 気と水に関わる 六病位 腹 力 腹 力 中 等 度 2-4/5 胸脇苦満を認 めることもある 少陽病 脈 舌 舌苔は白 脈は弦 口訣 吾が門厚朴を加ふものは 易簡に一名降気湯の意にもとづくなり 浅 田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 小児ぜんそく 気管支ぜんそく 気管支炎 b 漢方的適応病態 肝気鬱結の喘咳 すなわち 咳嗽 呼吸困難 喘鳴 少痰とともに いら いら ゆううつ感 胸脇部が脹って苦しいなどの肝気鬱結の症候を伴うも の 精神的な要素の強い咳嗽 呼吸困難によい 悪寒 頭痛 発熱などの 表証がみられることもある 構成生薬 麻黄5 杏仁4 厚朴3 陳皮2.5 甘草2 柴胡2 蘇葉1.5 単位g より深い理解のために 本方は柴朴湯に麻杏甘石湯を加えた内容に近似する TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 止咳平喘 疏肝解欝 理気化痰 効果増強の工夫 痰が多いときには 半夏 生姜 茯苓を加味する目的で合半夏厚朴湯とする 処方例 ツムラ神秘湯 ツムラ半夏厚朴湯 g㾹 5.0g㾸 分 食前

177 活用自在の処方解説 85 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 気鬱の神経症を兼ねた気管支喘息 肺気腫 小児喘息 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 気管支喘息で発作時坐位呼吸 奔喘するもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 気管支喘息で呼吸困難の著しいもの ヒ ン ト 本方は浅田家方であり 木村済生塾出身の高橋道史氏に治験例がある 某高校一年生 十七歳 男 割合体躯の整った体格ではあるが 幼少のこ ろから喘息に苦しめられて顔色映えず 神経質になっている 本人はもちろ ん家族も一日として安ずる日がない と連れ添うて来た母親の悲痛な言葉で あった 中略 目下某病院にて毎日注射療法をしているが発作は未だ一日二回は必ず起り しかも一回は必ず夜間忽然として来襲し呼吸急迫 苦しくあえぎ 気絶えん として坐臥するを得ず あるいは母親の肩にすがり または柱に拠りかかり てその苦を逃がれんとす かくするうちに咳嗽と少量の喀痰を排出して発作 が止む 所見 胸部を診するに気管支音である笛声 ギーメン著明 呼吸やや困難 である 腹部を診んとして仰臥させようとするに呼吸切迫して診断上最も肝 腎の腹部を診ることができなかった 食事はやや不振で膏梁肉食を好む 先ず肉食を極力節制させ 主として野菜を食するように勤め さもなけれ ば漢方薬の効は半減するであろうと注意す 処方 神秘湯加厚朴甘草湯の薬味の分量は麻黄 蘇葉 柴胡 杏仁 橘皮 厚朴 甘草 以上七味で 甘草は比較的大量を用いた事を大書 せねばならない なぜならもし甘草を少量にすれば神秘湯としての効果が半 減するからである 浅田宗伯著 古方薬議 には甘草の部に 味は甘平 毒を解 し中を温め気を下し瀉を止め経脈を通じ咽痛を治す 麻黄に伍して剛柔相済 して以って内を安んじ 外を攘う功を立つ とあり よって甘草を大量にした 理を知ることができると思う 他に頓服薬として麻黄甘草湯を冷却して発作 ある毎に少量ずつ徐々に嚥下させた 経過 服薬後たちどころに効果があらわれ 二十日間を過ぐるに 喘鳴も 減少し 呼吸困難あるも 服薬前のような苦しみがなくなったという 二ケ 月にしてほとんど全治することができたが 再発の憂をなくするにはなお二 ケ月服薬を要することを注意しておいた 一部変更 177

178 86 当帰飲子 とうきいんし 出典 厳用和著 済生方 心血凝滞し 風熱を内蘊 し 発して皮膚に見われ 遍身瘡疥のものを 治す つつむ 済生方 腹候 腹力中等度よりやや軟 1 3/5 皮膚乾燥 あり 腹候図 気血水 血 水が主体である 六病位 太陰病 脈 舌 原則的に 舌質は暗紅 舌苔は薄く 脈は 細 腹候 腹力中等度よりや や 軟 1-3/5 皮膚乾燥 あり 口訣 この方は老人が血燥して 瘡疥を生ずるのに良い さらに熱が加わって 血熱となったものが温清飲である 浅田宗伯 炎症 浮腫の介在するものには不適 中医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 冷え症のものの次の諸症 慢性湿疹 分泌物の少ないもの かゆみ b 漢方的適応病態 血虚生風 すなわち 皮膚がかさかさしてつやがない 粃糠様の落屑 小 さな皸裂 遊走性のかゆみ かきむしって少量の出血や血痂がみられる 発赤や滲出物はみられないなどの症候 より深い理解のために 藤平健先生は当帰飲子を老人性の乾燥性皮膚瘙痒症 にしばしば用いられた 構成生薬 当帰5 地黄4 䋀蔾子3 芍薬3 川芎3 防風3 何首烏2 黄耆1.5 荊芥1.5 甘草1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 養血潤燥 祛風 補血潤燥 止痒 効果増強の工夫 䋀蔾子 何首烏などの生薬の入った薬方は少ないので 高齢者疾患の治療 178

179 活用自在の処方解説 86 目的に積極的に他薬と合方されてよい薬方である 高齢者の皮膚瘙痒症で一時的に悪化したものに 熱を抑えつつ 潤す作 用を期待して 処方例 ツムラ当帰飲子 ツムラ黄連解毒湯 7.5g 㾹分 食前 または食後 5.0g 㾸 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 皮膚瘙痒症 痒疹 瘡疥 ひぜん その他乾燥性皮膚疾患 慢性湿疹など 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 貧血で冷え症の 皮膚がかさかさした皮膚瘙痒症 ヒ ン ト ここで著者が留意する皮膚疾患漢方治療のポイントを述べてみよう 便宜 的に患者の状態を三段階に分けてそれぞれを論じてみる 第一段階は 増悪期で 激しい瘙痒 皮膚の発赤 腫脹 皮膚糜爛が特徴 である この時期に大切なことは迷わず強力な発表剤 抗炎症剤だけを投入 して炎症の沈静化を図ることで 具体的には越婢加朮湯や黄連解毒湯などで ある 間違えても四物湯などの補剤を用いてはいけない 火に油を注ぐとい う言葉通りになってしまう 桃核承気湯や通導散などの攻下の剤は時に用い る場合がある 第二段階は安定期で 皮膚は腫脹せずあってもわずかな部分のみであり 発赤も瘙痒も軽度である場合である 著者は消風散 十味敗毒湯 温清飲な どを中心に考えるが 白虎加人参湯 苓桂朮甘湯 十全大補湯 補中益気湯 など広範な選択がありうる 第三段階は枯燥期で 肌は腫脹も発赤もなく 枯れた状態である 皮膚は 乾燥し 皮膚の落屑が粉をまき散らしたようである この場合は四物湯を中 心に補血し 当帰飲子など 補血に若干の清熱剤を混じたものなどを用いる 安定期同様に薬方選択の幅は広い 要するに治療法は清熱と補血を意識して メリハリのついた治療方針を立 てて 腫れとかゆみに対して的確に対処することに尽きる なお 当帰飲子は䋀蔾子 何首烏が配剤されている数少ない医療用漢方製 剤である 179

180 87 六味丸 ろくみがん 出典 銭乙撰著 小児薬証直訣 体形痩弱 無力多困 腎気久しく虚し 寐汗発熱し 五臓ひとしく損じ 遺精便血 消渇淋濁などの症を治す この薬は燥ならず温ならず 専ら左 尺の腎水をおぎない 脾胃を兼ね理む 少年の水欠け火旺かんな陰虚の症 に最も宜しく之を服すべし 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 臍下不仁を認 める 腹候図 気血水 腎は特に気と水とに関わる 六病位 太陰病 脈 舌 脈 細数 弦細数 舌質は紅 暗紅で乾燥 舌苔は少ない あるいは無苔 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 臍下不仁を認 める 口訣 少年の水欠け火旺かんな陰虚の症に最も宜しく之を服すべし 龔廷賢 乳幼児 小児の発育不良や知能の発達不良等 女性では 無月経 経血 量過少 無排卵などに適用 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 疲れやすくて尿量減少または多尿で 時に口渇があるものの次の諸症 排 尿困難 頻尿 むくみ かゆみ b 漢方的適応病態 肝腎陰虚 すなわち 頭がボーッとする 頭がふらつく 思考力減退 め まい感 耳鳴 難聴 腰や膝がだるく力がない 口渇 特に夜間 咽の渇 き 体の熱感 手のひらや足のうらのほてり 歯の動揺 寝汗 遺精 性 欲の仮亢進 勃起不全 早漏 快感がないなどの機能不全を伴う 尿が濃 い 尿の余瀝 便が硬いなどの症候 女性では 無月経 経血量が少ない 無排卵などがみられる より深い理解のために 口がパサパサと乾燥しますか という問診は陰虚 を聞き出すのに有効 180

181 活用自在の処方解説 87 構成生薬 地黄5 山茱萸3 山薬3 沢瀉3 茯苓3 牡丹皮3 本方は 3補 地黄 山茱萸 山薬 の薬 3瀉 沢瀉 茯苓 牡丹皮 の薬か ら構成されている TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 滋補肝腎 清虚熱 利湿 より深い理解のために 手足の火照りなど 肝腎の陰虚 水血の不足状態 ボーッとする 頭がふらつく 思考力減退 耳鳴 難聴 下焦に力が入らない 盗汗 遺精 性機能異常 尿が濃い 硬便など に適用 これに冷えが加わる 陽虚 と八味地黄丸の適用証となる したがって 八味地黄丸証に多少の火 照りがあってよい 効果増強の工夫 補気剤との併用 処方例 ツムラ六味丸 ツムラ補中益気湯 5.0g 5.0g 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 漢方後世要方解説 より 性的衰弱で陰萎 遺精 耳鳴 初老以後の腰痛 眼精疲労 視力減退 糖 尿病による虚状 慢性腎炎 萎縮腎 夜尿症の一部 筋骨萎弱 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 神経衰弱 性的神経衰弱 初老の腰痛弱視 糖尿病 腎臓病 耳鳴 歯槽 膿漏 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 糖尿病 腰痛 ことに老人性のもの 性能力低下 陰萎 前立腺肥大症 夜間尿 181

182 88 二朮湯 にじゅつとう 出典 龔廷賢著 万病回春 痰飲雙臂痛むものを治す 又手臂痛むを治す これ上焦の湿痰経絡中を 横行して痛みを作すなり 万病回春 臂痛門 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-4/5 腹候図 気血水 水が主体の気血水 六病位 少陽病 腹候 腹力中等度よりや や軟 2-4/5 脈 舌 舌苔は白膩 脈滑 口訣 本方は湿痺に対する薬方で とくに上肢にこだわらずに適用される し びれ 痛みに だるい 重い感じを伴うものを湿痺という 中医処方解 説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 五十肩 b 漢方的適応病態 湿痺 着痺 すなわち 筋肉や関節のだるいしびれ痛み 運動障害 軽度 の浮腫などで 舌苔は白膩 脈は滑が原則である 構成生薬 半夏4 蒼朮3 威霊仙2.5 黄䊫2.5 香附子2.5 陳皮2.5 白朮2.5 茯苓2.5 甘草1 生姜1 天南星2.5 和羌活2.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 祛風湿 化痰利水 効果増強の工夫 痛みが強ければ 活血化瘀薬を配する目的で 疎経活血湯を合する 処方例 ツムラ二朮湯 ツムラ疎経活血湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 五十肩 四十肩 上膊神経痛など 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 182

183 活用自在の処方解説 88 胃アトニー傾向のある寒虚湿証者 ことに湿の著しいものの五十肩 頸腕 症 ヒ ン ト 山田光胤氏はご自身に本方を用いた経験を著書 漢方処方応用の実際 に 述べている 症例 著者自身の経験 満40歳の冬 肩から腕にかけて なんとなく痛 みを感じることが数日あった 気にもとめないでいたところ 痛みが漸次増 強し 腕をうしろへ廻せなくなり 電車のつり革につかまるのがつらくなった 夜ねていると 夜中になって 腕がぬけるようなだる痛さを感じて何回も 日がさめた 実に不快な痛みである 気をつけていると 就寝中腕をなげ出 して動かさないでいると 一層痛みが強まることに気づいた 葛根湯をのんでも いっこう効きめがない そうこうするうち これは 四十肩というやつかなと考えついた 週間も苦しんだあとである そこで二朮湯を煎じてのんだ するとその夜は 腕の痛みが軽くなったら しく 夜中に目がさめたのは 回だけだった 翌日の晩は 回も目がさめな かった 昼間の痛みも軽くなり 日間の服用で すっかり痛みがなくなっ た その後 年ばかりして 痛みが再発したがそのときは直ぐに二朮湯をのみ 日で治った これほど顕著に効いた例は 患者ではまだない それは 患者の場合は何 カ月も何年もたってから来るからではないかと考えている 四十肩の治療も 早ければ早いほど 治りも速いのであろう 二朮湯の注意 著者は高齢婦人に用いた二朮湯が 肝障害の原因として疑 われたケースを経験したことがある 他の方剤の経験から方中の黄䊫による 肝障害が疑われるので 連用する場合には最初の カ月が経過した時点で AST ALTなどをチェックした方がよい カ月が無事に過ぎれば それ以 後に生じた肝障害は経験していない 183

184 89 治打撲一方 ぢだぼくいっぽう 出典 本朝経験方 香川修庵 浅田宗伯の本方評を引用する この方は よく打撲筋骨疼痛を治す 勿誤薬室方函口訣 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 血が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈力は多様でよい 舌候も強い脾虚や陰虚 を示す以外は可 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 口訣 早期には桃核承気湯などの駆瘀血剤で 亜急性期から本方に転ずるとい う意見もある 打撲に起因する陳旧性の症候によく応ずる 道聴子 戦国時代の軍医達が考案 経験して秘伝としていたもの 打ち身の仕上 げの常方 石原明 遷延性の例には加附子 香川修庵 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 打撲によるはれ及び痛み b 漢方的適応病態 打撲 ねん挫による腫脹疼痛 構成生薬 桂皮3 川芎3 川骨3 甘草1.5 大黄1 丁子1 樸樕3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 活血化瘀 消腫 通陽 効果増強の工夫 日を経て治り難いものは附子を加味 処方例 ツムラ治打撲一方 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 駆瘀血作用を強めるために桂枝茯苓丸あるいは桃核承気湯を合方する 処方例 ツムラ治打撲一方 ツムラ桂枝茯苓丸 g㾹 5.0g㾸 分 食前

185 活用自在の処方解説 89 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 打撲による腫脹疼痛 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 打撲傷 ねんざ やや温性ながら 証によらずに適用可能 ヒ ン ト 治打撲一方は本朝経験方であり 大いに活用したいものである 鈴木洋著 漢方くすりの事典 によると 川骨と樸樕は次のように記載があ る 川骨 北海道 本州 四国 九州 朝鮮半島に分布するスイレン科の多年草 コ ウホネ 別名 カワホネ の根茎を用いる 川骨という生薬名は日本名の カワ ホネ を読み代えただけで 中国名ではない 中国では生薬としてコウホネを 用いていないが 近縁種のネムロコウホネN. pumilumを萍蓬草といい 根茎 や種子を薬用にしている コウホネは水性植物で 掘りだした根茎は乾燥す ると骨のようにみえるためその名がある コウホネの根茎にはアルカロイド のヌファリジンやデオキシヌファリジンが含まれ 中枢麻痺や血管収縮など の作用がある 日本漢方では利水 活血 強壮の効能があり 浮腫や婦人病 打撲傷などに用いる 打撲による内出血や腫脹 痺痛に川芎 桂枝などと配 合する 治打撲一方 産前 産後の血の道症に当帰 地黄 人参などと配合 する 実母散 民間では生の根茎をすって小麦粉とあわせて練ったものを乳 腺炎に外用する 樸樕 別名 土骨皮 日本各地の山林に自生するブナ科の落葉高木 クヌギなどの樹皮を用いる 日本で樸樕として用いられているクヌギおよび同属植物の樹皮には多量の タンニンやフラボノイドのクエルチトリンが含まれ 収斂 抗菌作用などが 知られている クヌギの樹皮はおもに日本漢方で用いられ 中国ではあまり 利用しない 漢方では瘀血を除き 解毒する効能があり 悪瘡 痔疾 下痢 下血に用いる 香川修庵は打身による腫れや痛みに川骨 川芎などと配合し て用いた 治打撲一方 華岡青洲は癰疽など化膿症の初期の治療に柴胡 独活 桔梗などと配合して用いた 十味敗毒湯 185

186 90 清肺湯 せいはいとう 出典 龔廷賢著 万病回春 一切の咳嗽 上焦痰盛なるを治す あるいは久嗽やまず あるいは労怯 となり 若しくは久嗽唖し あるいは喉に瘡を生ずるものは これ火肺金 をやぶるなり 咳嗽門 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌質 紅 乾燥 舌苔は黄 脈は細数 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 口訣 この方は痰火咳嗽の薬なれども虚火の方に属す とかく咳の長引きたる 者によろし ゆえに小青竜湯加石膏などをもちいて効なく 労咳をなすも のに用う 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 痰の多く出る咳 b 漢方的適応病態 肺熱 肺陰虚 すなわち 慢性の咳嗽 粘稠で切れにくい多量の喀痰 痰 がきれるまで激しく咳き込む 咽痛などの肺熱の症候に 体のほてり のぼせ いらいら 口渇 口内炎 嗄声などの陰虚の症候を伴う 本方の特徴 慢性の喀痰で 粘稠で切れにくい多量の喀痰 咽痛などの 肺熱 の症候に 体のほてり のぼせ いらいら 口渇 口内炎 嗄声な どの 陰虚 の症候を伴うものによい 構成生薬 当帰3 麦門冬3 茯苓3 黄䊫2 桔梗2 杏仁2 山梔子2 桑白皮2 大棗 2 陳皮2 天門冬2 貝母2 甘草1 五味子1 生姜1 竹筎2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清肺止咳 祛痰 滋陰 清肺止咳 化痰 滋陰 効果増強の工夫 あと少しの効果を得たい場合には 麻黄剤を少量組み合わせてみるとよい 場合がある 186

187 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ清肺湯 9.0g㾹 ツムラ麻杏甘石湯 2.5g㾸 混ぜ合わせて分 90 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 気管支炎 慢性気管支炎 慢性咽喉炎 肺炎 肺結核 気管支拡張症 気 管支喘息 心臓性喘息 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 慢性気管支炎 気管支拡張症 肺結核 熱証で 麦門冬湯を用いるべき場 合よりも慢性化して体力も弱まり 痰も多い場合が適応 ヒ ン ト 大塚敬節氏は 症候による漢方治療の実際 で清肺湯の治験例を紹介して いる 気管支拡張症などで 痰が多くて 咳の永びくものに用いる 一男子 36歳 数年前より咳嗽があり この咳嗽は午前中 ことに起床後 時間ほどがはなはだしく 痰も多く たちまち痰壷に一杯になるという また 年に 回 春秋のころに必ず喀血するという 患者は色浅黒く 栄養状態は上等ではないが 長期療養者としては わるい方ではない 食欲も普通で 大便も 日 行ある ただ 日起きていると疲れるので 半 日だけ起きているという 聴診上左背下部にラ音があり 患者の言によれば このラ音は日によって消失したり 強く現われたりするという 腹部を診てみると 中等度に弾力があり 軟弱無力というほどではない 私はこれに清肺湯を与えた あまり変化はないが 力がついてくる感じだ と患者はいう でいる中に ヵ月ほどたつと 痰が半減したという ひきつづいてのん 日急に高熱が出た しかしいつもは こんな熱は大抵 数日 は下がらないのに翌日は平熱になり 今までほど後が疲れないという 体重 も少し増した 服薬を始めて10ヵ月 その間 回の喀血もなく 痰も 朝 少し出るだけで治ったようだという そこで服薬11ヵ月目から勤務すること になった この患者は 医師から気管支拡張症と診断せられていたものである 187

188 91 竹筎温胆湯 ちくじょうんたんとう 出典 龔廷賢著 万病回春 傷寒にて日数過多してその熱が退かず 夢寐寧 安 からず 心驚恍惚 煩躁して痰多く眠らざる者を治す 傷寒門 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 ときに胸 脇苦満 胃内停水を認める 腹候図 気血水 気血水のいずれとも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度よりや や 軟 2-3/5 ときに胸 脇苦満 胃内停水を認め る 発熱性疾患の経過に生じる痰熱上擾では 舌質は紅 舌苔は黄膩 脈は弦滑数 痰熱上擾で肝気鬱結と 気陰両虚を伴う場合は 舌苔は黄膩 脈は弦滑 中医処方解説 口訣 この方は竹葉石膏湯よりはやや実して 胸膈に鬱熱有り 咳嗽不眠の者 に用う 雑病にても婦人胸中鬱熱有りて咳嗽著しい者に効あり 不眠のみ に拘るべからず 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 インフルエンザ 風邪 肺炎などの回復期に熱が長びいたり また平熱に なっても 気分がさっぱりせず せきや痰が多くて安眠ができないもの b 漢方的適応病態 発熱性疾患の経過に生じる痰熱上擾 すなわち持続性発熱 多痰を伴う 舌質は紅 舌苔は黄膩 脈は弦滑数 痰 熱上擾 すなわち いらいら 怒りっぽい 胸脇部の脹った痛み 腹部膨満感などの肝気鬱結の症候と 疲れやすい 食欲がない 口渇など の気陰両虚の症候を伴うもの 舌苔は黄膩 脈は弦滑 本方は痰熱上擾で 熱証の強いものに用いる処方である 中医処方解 説 構成生薬 半夏5 柴胡3 麦門冬3 茯苓3 桔梗2 枳実2 香附子2 陳皮2 黄連1 甘草1 生姜1 人参1 竹筎3 単位g 188

189 活用自在の処方解説 91 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清化熱痰 和胃降逆 清熱解欝 滋陰益気 より深い理解のために 温胆湯 二陳湯 竹筎 枳実 に 清熱の柴胡 黄連と 理気の香附子 祛痰の桔梗 滋陰の麦門冬 補気の人参を配した 竹筎は消 炎作用 効果増強の工夫 1 ゆううつ感 いらいら 怒りっぽい 胸脇部の張った痛みなど肝気鬱 結には 四逆散を合方する 処方例 ツムラ竹筎温胆湯 ツムラ四逆散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 2 不眠が強ければ 帰脾湯を合する 処方例 ツムラ竹筎温胆湯 ツムラ帰脾湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 3 動悸 不眠を伴えば 桂枝加竜骨牡蛎湯を合方 処方例 ツムラ竹筎温胆湯 ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 漢方後世要方解説 より 経過中熱が去らず 胸中鬱熱 痰があって不眠 煩躁するものの 諸熱性 病 痰が胸中に滞り 驚きやすく不眠の不眠症 胸中鬱塞し 痰が出て不 眠 驚きやすい心悸亢進症 酒客の痰持ち 酒客で顔色の赤いもの 不眠 の症あるもの 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 熱病 不眠症 心悸亢進症 肺炎 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 胃アトニー体質者の不眠 神経症 呼吸器疾患で熱が長引き 咳痰がとれ ず イライラして眠れないような場合 189

190 92 滋陰至宝湯 じいんしほうとう 出典 龔廷賢著 万病回春 婦人諸虚百損 五労七傷 経脈調わず 肢体羸痩するを治す この薬は もっぱら経水を調え 血脈を滋し 虚労を補い 元気をたすけ 脾胃を健 やかにし 心肺を養い 咽喉を潤し 頭目を清くし 心慌を定め 神魄を 安んじ 潮熱を退け 骨蒸を除き 喘嗽を止め 痰涎を化し 盗汗をおさ め 泄瀉を住め 鬱気を開き 腹痛を療し 胸膈を利し 煩渇を解し 寒 熱を散じ 体疼を去る 甚だしく奇効あり 万病回春 婦人科 虚労門 腹候 腹力中等度よりやや軟 1 3/5 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 腹候 腹力中等度よりや や軟 1-3/5 舌質は紅 舌苔は少 脈は弦細数 口訣 本方は内容が逍遙散に類似しており 柴胡桂枝乾姜湯を適用しがたい婦 人不定愁訴例によい場合がある 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 虚弱なものの慢性のせき たん b 漢方的適応病態 肝気鬱結 気血両虚 肺陰虚 すなわち 逍遙散の適応症に 咳嗽 痰が 粘稠で喀出しにくい 口渇 熱感 のぼせ 手のひらや足のうらのほてり 午後の微熱 寝汗などの肺陰虚の症候を伴うもの 構成生薬 香附子3 柴胡3 芍薬3 知母3 陳皮3 当帰3 麦門冬3 白朮3 茯苓3 貝母2 甘草1 薄荷1 地骨皮3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 疏肝解欝 滋陰清熱 理気健脾 潤燥化痰 効果増強の工夫 咳嗽に対する効果増強を狙って二陳湯を合方する 処方例 ツムラ滋陰至宝湯 ツムラ二陳湯 g㾹 5.0g㾸 分 食前

191 活用自在の処方解説 92 胸が詰まって苦しい状があれば胸痺に対する人参湯を合方する 処方例 ツムラ滋陰降火湯 ツムラ人参湯 6.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 結核または不明の微熱長引き 衰弱の傾向あるものに用いる 虚弱婦人に 多い 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 慢性気管支炎 肺結核 ヒ ン ト 本方の主治と臨床症例を 症候による漢方治療の実際 大塚敬節著 にみて みよう この方は逍遥散に 陳皮 知母 麦門冬 地骨皮 貝母 香附子を加えた もので 男よりも婦人に多く用いられる しかし香月牛山がのべているように 男女とも 衰弱して やせている患者で 慢性の咳が出て 熱が出たり 盗 汗が出たりするものによい 私は肺結核が永びき 熱はさほどなく 咳がい つまでもとまらず 息が苦しく 食がすすまず 貧血して血色のすぐれない ものに用いている 一婦人 43歳 20年前より肺結核にかかり いまだに全治しない 主訴は 頑固な咳嗽で 時に喘鳴を伴なうこともある 体温は あまり高くならないが 疲れるので ほとんど床についている 食欲もあまりなく 軟便で 下痢し やすい 月経は不順で 年に 回あるという 皮膚はガサガサして枯燥 の状があり 血色もよくない 脈は沈小で力がないが あまり速くない 腹 をみると 一体に弾力に乏しく 臍上で動悸をふれる 私はこれに滋陰至宝湯を与えたが これをのむと何となく気分がよいとい う 私の経験では すぐに著効はなくても気分がよいという時は この薬が 効いている証拠である そこでこれを ヵ月ほどのむと 体重が kgほど増し 咳 嗽も減じ 食がすすむようになった しかし時々憂欝な気分になることがあ るから 気分をひきたてる薬がほしいという 私は 薬を加減しておくと嘘 を云って この方をつづけた すると 半年ほどたつと 仕事がしてみたい というようになり 電車で来院した 私は 人がちがうのではないかと思った 血色もよくなり 生々としている 咳はまだ朝少し出るが ほとんど気にな らないという この患者は まだ服薬中であるが 初診時よりも体重は kg を増し 腹力もついてきた この滋陰至宝湯に似た処方に味麦益気湯がある 味麦益気湯は 補中益気 湯に 五味子と麦門冬を加えたものである 191

192 93 滋陰降火湯 じいんこうかとう 出典 龔廷賢著 万病回春 陰虚火動にて 発熱 咳嗽 吐痰 喘急 盗汗 口乾を治す この方六 味丸を与えて相かねてこれを服す 大いに虚労を補う神効あり 虚労門 腹候 腹力中等度よりやや軟 2-3/5 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌質紅 乾燥 舌苔は少 脈 細数 腹候 腹力中等度よりや や軟 2-3/5 口訣 皮膚が浅黒い 大便秘結 または硬 乾性ラ音の咳嗽によい 矢数有道 陰虚火動の主薬なり 当荘庵家方口解 北尾春甫 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 のどにうるおいがなく痰の出なくて咳きこむもの 本方の特徴 夜間の頑固な咳に本方の適用がある 特徴は 陰虚の存在 である 応用にドライマウス シェーグレン症候群などがある 陰虚 血 や水などの津液の不足 b 漢方的適応病態 肺腎陰虚 すなわち 乾咳 少痰あるいは粘痰 咽のかわき 痰に血がま じる 呼吸促迫などの肺陰虚の諸侯と ほてり のぼせ ふらつき 腰や 膝に力がない 寝汗などの陰虚火旺の症候を伴うもの 舌質は紅 乾燥 舌苔は少 脈細数 構成生薬 蒼朮3 地黄2.5 芍薬2.5 陳皮2.5 天門冬2.5 当帰2.5 麦門冬2.5 黄 柏1.5 甘草1.5 知母1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 滋補肺腎 清熱 滋陰清熱 止咳化痰 効果増強の工夫 1 同様な効用の麦門冬湯を合方することはよいアイディアである また 滋陰降火湯の効果を確認した後で効果がもう少しほしい時 柴朴湯や 清肺湯などを兼用することも考えられる 192

193 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ滋陰降火湯 ツムラ麦門冬湯 5.0g㾹 6.0g㾸 分 93 朝夕食前 2 夜に痰がからむ時には 処方例 ツムラ滋陰降火湯 ツムラ清肺湯 7.5g 分 食前 2.5g 分 眠前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 肺結核 腎盂炎などの消耗性高熱時 増殖型肺結核 乾性肋膜炎 急性 慢性気管支炎 急性 慢性腎盂炎 糖尿病 腎臓結核 淋疾など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 急性気管支炎 糖尿病 性的神経衰弱 膀胱尿道炎 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 慢性気管支炎 肺結核 熱 咳 痰がいつまでもとれず 顔色は浅黒く 皮膚乾燥性の傾向 ヒ ン ト 臨床応用漢方処方解説 矢数道明著 には矢数有道氏の珍しい治験例が引 用されている 二六歳の婦人 肋膜炎 肺尖カタルの既往歴がある 約一カ月前急性腎孟 炎にて入院加療し 退院後微熱がとれない わずかに悪寒があり 小便はや や白濁 大便は秘結 小柴胡湯 柴苓湯いずれも効がない 小柴胡湯は肝胆 の瀉火剤である 肝腎の瀉火剤を考えて滋陰降火湯を与えてみた すると効果顕著で翌日か ら平熱となり 小便白濁もとれ 月余の服薬で 腎孟炎も 肺尖カタルも 肋膜炎の方もすっかりよくなった 矢数有道 漢方と漠薬 五巻八号 ここでは肝胆の瀉火剤と肝腎の瀉火剤の別が語られている しからば両者 の相違はどうか 肝胆の瀉火とは 肝胆に生じた実熱を清熱することで代表 的な治療薬は小柴胡湯である 肝腎の瀉下とは 肝腎の陰液が不足して内熱 虚熱 を生じて状態を補陰し て清熱すると理解される 後者の剤が本方の効能であるということになる 193

194 95 五虎湯 ごことう 出典 龔廷賢著 万病回春 傷寒喘急は表を発するによろし 本方は 傷寒喘急を治す 痰あれば二 陳湯を加え和す 喘急門 喘急 喘息 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 気と水に関わる 六病位 少陽病 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 脈 舌 舌苔は黄 脈 滑数 口訣 この方は麻杏甘石湯の変方にして喘急を治す 小児に最も効あり 浅 田宗伯 浅田流は 五虎二陳湯 五虎湯合二陳湯 とすることが多い 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 せき 気管支ぜんそく b 漢方的適応病態 肺熱の喘咳 すなわち 咳嗽 呼吸困難 呼吸促迫 口渇 熱感 発熱 無汗あるいは有汗などの症候に さらに炎症が加わったもの 本方の特徴 本方は麻杏甘石湯に桑白皮を加味した内容である 味が淡 味で服用しやすく 小児には最適な鎮咳薬とされている 構成生薬 石膏10 杏仁4 麻黄4 桑白皮3 甘草2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清肺平喘 止咳 消炎鎮咳 より深い理解のために 本方は麻杏甘石湯の適応症に痰と炎症の状態が加 わったものである 桑白皮の主治は 消炎 鎮咳である 効果増強の工夫 1 痰が多いときは 二陳湯を合して五虎二陳湯とする 処方例 ツムラ五虎湯 ツムラ二陳湯 g㾹 5.0g㾸 分 食前

195 活用自在の処方解説 95 2 発熱 膿性喀痰などの化膿性炎症には 排膿散及湯を合わせて 消炎 去痰を図る 処方例 ツムラ五虎湯 ツムラ排膿散及湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 気管支喘息 ヒ ン ト 木村済生塾に学び 仙台で漢方の診療にあたられた高橋道史氏の著書 浅 田流漢方診療の実際 から本方の症例を引用しよう 一部省略 年令は六十才で 家庭的には恵まれてよいおばあさんであるが どうした ことか数年来身体が非常に疲れ易く おまけに肩が凝ったり胸部に圧迫感が あったりするので 洋医の診察を受けたが 病気はないから老年の変換期の 障害だろうとの診断であるという そこで鍼灸の治療を受けていたが 病状 が一進一退してなかなか快方にならない ところが最近になって感冒に罹り 咳嗽頻発し 常に咽喉が塞がり 喘鳴するので昨年十月二十日に来院した 愁訴は咳嗽と喘息である 少しく悪寒もあるという 平熱であるが脈は浮 緊で 胸部は呼吸音が粗雑で 処々に笛声を聴取する 腹部はフワリとして 抵抗はなく 心下はわずかに膨満しやや病硬の感がある 食事は普通で 二 便には変りはない このような病症に 小青竜湯加杏仁を投与した しばらく服薬して快調に なり 咳嗽もほとんど治したので 北海道に嫁している娘にもすすめて診を 乞いに来たときもあった ところが今年三月ころからの気候異変に遇い また感冒に冒され 咳嗽も 喘息も元通りの症状になったので 前方の小青竜加杏仁を服薬したが この 度は予期した効果はなかった この時の病症は 咽喉不利の症で 喉頭に何かつかえているようで 喀出 しようとしても出ないし 常に喘鳴して呼吸するにしたがって さらに甚し くなるという そこで五虎湯を調剤投薬したところ たちまち奏効し日一日 と快方に向い 十日の連服で全治してしまった さてこの五虎湯は 喘息の主要薬として用いられる薬方で 特に小児には 特効があると言われている 本方はただに気管支の喘息のみならず 気管支 炎のような笛声や喘鳴あるものには 大人 子供を問わず試みて確実に効を 奏するものである 要するに病名の如何に関せず 喘鳴あるものには必ず用 うべき薬方である 195

196 196

197 活用自在の処方解説 96 構成生薬 柴胡7 半夏5 茯苓5 黄䊫3 厚朴3 大棗3 人参3 甘草2 蘇葉2 生 姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 疏肝解欝 補気健脾 理気降逆 祛痰止咳 和解半解半表半裏 より深い理解のために もとの二方は燥性 乾燥させる性質 が強いので合方 である本方も適応に注意が必要である 舌の乾燥や粘った痰などの陰虚の兆 候があれば 第一選択としないほうがよい 効果増強の工夫 燥性を緩和する目的と鎮咳効果増強を意図して 麦門冬湯と合わせる 処方例 ツムラ柴朴湯 ツムラ麦門冬湯 5.0g㾹 分 2 朝夕食前 6.0g㾸 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 神経衰弱 ノイローゼ 発作が起きないかと気にしすぎる気管支喘息 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 小児喘息 気管支喘息の間歇期 カゼや気管支炎がこじれて咳が残ったと き のどに物がつかえるという不安神経症 ヒ ン ト 藤平健先生は 漢方臨床ノート 臨床篇 で気管支喘息に対する漢方治療を 論じている 小柴胡湯合半夏厚朴湯の症例を紹介してみよう 症例 16歳のかなりしっかりした体格の男子高校生 二年前から夜間になると連日喘息発作に苦しめられ あらゆる医治を受け たが効果がない 自覚的には 常に咽に痰がからんでいるような感があり 口中が粘り 朝 は口が苦い 大小便に著変はない 脈は弦やや細 舌には湿潤した微白苔 腹力は中等度で 心窩部に中等度 の抵抗ならびに圧痛があり 肋骨弓下には右に中等度 左に軽度の 抵抗と 圧に対する不快感とがある 上腹部に著明に振水音を証明する 小柴胡湯 半夏厚朴湯合方を投ずること一〇五日分で全治した 197

198 97 大防風湯 だいぼうふうとう 出典 和剤局方 風をさり気を順らし 血脈を活かし 筋骨を壮んにし 寒湿を除き 冷 気を逐う 又痢を患いたる後 脚痛み 䛯弱にして行履すること能わざる を治す 名付けて痢風という あるいは両膝腫れて大いに痛み 髀脛 も かがんで寝る して 屈伸 もやすね 枯腊してただ皮骨を存し 拘攣䶄臥 すること能わず 名付けて鶴膝風という これを服して気血流暢し 肌肉 ようやく生じて 自然に行履すること もとのごとし 和剤局方 諸風門 腹候 腹力中等度以下 1 3/5 血虚して肌は粗糙で肌膚甲錯の状態 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は淡紅 舌苔は白薄 脈細弱 口訣 本方は気血衰弱の候がなければ無効であ る 浅田宗伯 鶴膝風を手がかりとする方剤の一つであ る 道聴子 腹候 腹力中等度以下 1-3/5 血虚して肌は 粗糙で肌膚甲錯の状態 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 関節がはれて痛み 麻痺 強直して屈伸しがたいものの次の諸症 下肢の 慢性関節リウマチ 慢性関節炎 痛風 b 漢方的適応病態 気血両虚 肝腎不足の風寒湿痺 行痺 すなわち 四肢や躯幹の遊走性の しびれ痛み 冷え 運動障害 軽度の浮腫などの風寒湿痺の症候に 疲れ やすい 元気がない 食欲不振 顔色が悪い 頭がふらつく 皮膚につや がない 腰や膝に力がないなどの気血両虚 肝腎不足の症候を伴うもの 構成生薬 黄耆3 地黄3 芍薬3 蒼朮3 当帰3 杜仲3 防風3 川芎2 甘草1.5 羌活1.5 牛膝1.5 大棗1.5 人参1.5 乾姜1 附子1 単位g 198

199 活用自在の処方解説 より深い理解のために 97 本方は気血双補の八珍湯 四物湯合四君子湯 が基準 となっている TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 祛風湿 散寒 補気血 益肝腎 活血止痛 効果増強の工夫 リウマチに適応があるが 内容生薬には甘草のみ共通する麻杏薏甘湯を少 量併用することは可能である 処方例 ツムラ大防風湯 ツムラ麻杏薏甘湯 10.5g㾹 2.5g㾸 混合して分 とし食前服用 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 慢性経過で虚状を帯び 貧血気味となった下肢の運動麻痺と疼痛 慢性関 節リウマチ 脊髄癆 脊髄炎 半身不随 脚気 産後の痿躄 下肢運動麻痺 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 筋肉麻痺 膝腿痛 脊髄疾患 半身不随 脚気 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 寒虚症で衰弱し 皮膚枯燥した慢性関節リウマチ ヒ ン ト 本方の応用や目標を矢数道明氏は次のように述べている 応 用 慢性に経過して虚状を帯び 貧血気味となった下肢の運動麻痺 と疼痛に用いる すなわち本方は主として慢性関節リウマチ 脊髄癆 脊髄炎 半身不随 脚気 産後の痿癖 下肢運動麻痺 等に応用される 目 標 慢性に経過して体力衰え 貧血性となり 熱状なく 下肢の運 動障害を起こし 栄養も障害されて削痩し 歩行困難 または歩行不能となり あるいは関節強直を起こして年月を経たものに用いる 本方を服用して食欲 衰え または下痢する傾向のものには桂枝芍薬知母湯を試みるがよい 方 解 補血強壮を主として四物湯に人参 白朮 黄耆を配し 血行を よくし 肌肉を強め 冷えを去る 防風 羌活は諸風を去り 骨関節の麻痺 強直を治し 牛膝 杜仲は腰脚の筋骨を強壮にし 疼痛を緩解する 199

200 98 黄耆建中湯 おうぎけんちゅうとう 出典 金匱要略 虚労裏急 諸の不足する証 金匱要略 血痺虚労病篇 腹候 腹力は中等度以下から軟弱 1 3/5 とき に腹直筋の緊張を認める 腹候図 気血水 気が主体だが気血水いずれも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は正常か淡紅 舌苔は白薄 脈は軟や や弦 腹候 腹力は中等度以下 か ら 軟 弱 1-3/5 と き に腹直筋の緊張を認め る 口訣 小建中湯の一等虚したものに用いる 道聴子 仲景の黄耆は 大抵 表托 止汗 祛水の用とす 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 身体虚弱で疲労しやすいものの次の諸症 虚弱体質 病後の衰弱 寝汗 b 漢方的適応病態 気虚の腹痛 すなわち 小建中湯の適応症以外に 自汗 息切れ 食欲不 振 疲れやすい 元気がないなどの気虚の症候が顕著にみられるもの 構成生薬 芍薬6 黄耆4 桂皮4 大棗4 甘草2 生姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補気固表 緩急止痛 温中補虚 効果増強の工夫 腹満やガスの停滞があれば大建中湯を合わせる 処方例 ツムラ黄耆建中湯 ツムラ大建中湯 g㾹 分 7.5g㾸 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 小建中湯よりも表裏の虚がいちだんと著しく 後世方の十全大補湯と いうところに使う 2 自汗盗汗し 全身虚弱のもの 200

201 活用自在の処方解説 98 3 潰瘍 漏孔 中耳炎 蓄膿症 痔漏 臍炎などで虚証で 分泌物が薄 く多量のもの 4 風邪を引きやすく 咳が止まぬのを治した例がある 5 腹痛 腰痛に使つた例がある 6 結核性腹膜炎で 腹満腹痛するのに使つた例がある 7 暑気にあたり 手足だるく息切れ 口渇するもの 8 肺結核の軽症 又は回復期で 虚労を目標に加人参湯を使つた例がある 9 肺気腫で息切れするのに 加人参半夏湯を使つた例がある ヒ ン ト この方は小建中湯に黄耆を加えたもので 金匱要略 に 虚労 裏急 もろ もろの不足は黄耆建中湯之を主る とあり これによって 下腿潰瘍 手術後 肉芽の発生がわるいもの 諸種の化膿性腫物の自潰後 稀薄な膿が流れて よい肉芽がみられないようなものに用いる 華岡青洲はこれに当帰を加えて 帰耆建中湯として用いた こんな例がある 患者は 血色 栄養ともによくない15歳の男子 小学校の 年生のとき 肺門リンパ腺炎にかかったことがあるという こんどの病気はるいせきで約 10ヵ月ほど前に 頸部のリンパ腺が腫れているのに気付いた その後 数個 のリンパ腺が相次いで腫れ その中に瘻孔を作って 膿の出ているものが 個もあるという よくみると左右の頸部に数個のリンパ腺の腫脹があり 大きいものは鶏卵 大である その中の左側のものは瘻孔を作って膿が出ている ひどく疲れ せきも少し出る 右肺には明らかに浸潤を証明する 食欲はある 大便には 変化はない 内服薬には帰耆建中湯を用い 瘻孔のある部位には紫雲膏をはった これを 週間ほどのむと 疲労が軽くなり 週間ほどで瘻孔がふさがり 栄養血色ともによくなったが 全治しないうちに 家庭の都合で休薬した 大 塚敬節著 症候による漢方治療の実際 201

202 99 小建中湯 しょうけんちゅうとう 出典 傷寒論 金匱要略 1 傷寒 脈渋弦にして まさに腹中急痛すべき証 傷寒論 太陽病中篇 2 虚労 裏急し 悸し衂し 腹中痛み 夢に失精し 四肢䛥痛し 手足 煩熱し 咽乾き口燥く証 金匱要略 血痺虚労病篇 3 腹中痛む証 金匱要略 婦人雑病篇 腹候 腹力軟弱あるいは 拘攣して比較的緊張し た状態の間にある 1 3/5 ときに腹直筋 の強い緊張がある 腹候図 気血水 気が主体だが気血水いずれとも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は正常か淡紅 舌苔は白薄 脈は軟や や弦 腹候 腹力軟弱あるい は 拘 攣 し て 比 較 的 緊 張した状態の間にある 1-3/5 ときに腹直筋 の強い緊張がある 口訣 この方 よく中気を建立す 故にこれを建中湯と名づくと また 小と 称するは その大建中湯に比して作用緩和なるをもってなり 奥田謙藏 桂枝湯の変方とみるよりも 鎮痙の芍薬甘草湯の加方とするのがわかり やすい 中医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 体質虚弱で疲労しやすく 血色がすぐれず 腹痛 動悸 手足のほてり 冷え 頻尿および多尿などのいずれかを伴う次の諸症 小児虚弱体質 疲 労倦怠 神経質 慢性胃腸炎 小児夜尿症 夜なき b 漢方的適応病態 1 脾虚あるいは気血不足のものの腹痛 すなわち 顔色がさえない 不活発 やや疲れやすい 食が細いなどの体質で とき に腹痛 臍周囲の痙攣性疼痛が多い があり温めたり押さえたりすると軽減 するもの なお 頻尿で量が少ない 汗をかきやすい 動悸などを伴うこ とが多い 舌質は正常か淡紅 舌苔は白薄 2 虚弱者や小児の感冒 すな わち 平素虚弱状態のものがカゼを引いた場合などに適用する 構成生薬 芍薬6 桂皮4 大棗4 甘草2 生姜1 膠飴 単位g 202

203 203

204 204

205 活用自在の処方解説 100 構成生薬 蜀椒2 乾姜5 人参3 膠飴 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温中散寒 解痙止痛 補気健脾 効果増強の工夫 1 腹痛伴う下部消化管通過障害には小建中湯としばしば合方される 処方例 ツムラ大建中湯 10.0g㾹 10.0g㾸 ツムラ小建中湯 分 食前 2 冷えと痛みが激しいときは附子を加味 処方例 ツムラ大建中湯 15.0g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 3 下痢があれば合人参湯 処方例 ツムラ大建中湯 ツムラ人参湯 10.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 4 腹満が強ければ半夏厚朴湯を合方 処方例 ツムラ大建中湯 ツムラ半夏厚朴湯 10.0g㾹 分 5.0g㾸 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 腸疝痛 蛔虫 条虫 急性慢性虫垂炎 限局性腹膜炎 ダグラス氏窩 膿瘍 腸閉塞症 慢性腸狭窄 腎臓結石 胆石症 膵臓炎等で腹痛腸 蠕動不安 腹鳴し 或は腹満嘔吐を伴うもの 2 胃腸無力症 内臓下垂 尿道痛 不眠 前記疾患等で腹壁軟弱 腸の 蠕動不安 足冷があるもの 3 乳不足で 2 の腹証があるのを治した例がある 4 爪反り腹痛するものを治した例がある 5 食道狭窄で胃部の圧重膨満感 呑酸 嘈囃 噯気 悪心 涎沫等のもの 2 の腹証を呈するのを治した例がある 6 子宮後屈 流産癖で 2 の腹証を呈するものを治した例がある 7 眩暈 胃部振水音 頭重 悸 呑酸 嘈囃等を治した例がある 205

206 101 升麻葛根湯 しょうまかっこんとう 出典 龔廷賢著 万病回春 傷寒頭痛時疫にて 増寒壮熱して肢体痛み 発熱悪寒 鼻乾きて眠るを 得ざるを治す 兼ねて寒暄 あたたかい 時ならず 人多く疫を病み たち まち煖くして衣を脱するを治す および痘疹すでに発し 未だ発せず疑似 の間に宜しく服すべし 万病回春 傷寒門 すなわち麻痘初起の神方なり 万病回春 麻疹門 腹候 急性熱性疾患では腹候によらず 脈と症候 により適用を決定する ただ遷延例や慢性 疾患に応用するときには 腹力中等度前後 2-4/5 であれば適応可能である 腹候図 気血水 気血水いずれとも関わる 六病位 太陽病 脈 舌 太陽病類似状態なので 脈は浮 有力であ ろう 舌候は健康な状態と変わりなく た だ舌苔が厚めになることがある 腹候 急性熱性疾患では 腹候によらず 脈と症候 により適用を決定する ただ遷延例や慢性疾患に 応用するときには 腹力 中等度前後 2-4/5 であ れば適応可能である 口訣 森道伯翁は 大正年間のスペインカゼの流行に際し本方 小青竜湯 香 蘇散を駆使して治療した 矢数格 悪寒が軽度の感冒の初期にもちいる機会があります 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 感冒の初期 皮膚炎 b 漢方的適応病態 麻疹 はしか の初期あるいは類似状態 あるいは麻疹の発疹が十分に現れ ないもの すなわち 目の充血 流涙 くしゃみ はなみず 咳嗽 軽度 の悪寒あるいは熱感 発熱 下痢などを伴うことが多い 舌質は紅 構成生薬 葛根5 芍薬3 升麻2 甘草1.5 生姜0.5 単位g 206

207 活用自在の処方解説 より深い理解のために 101 麻疹に対する基本処方である かつて麻疹の治療で は無事に発疹期を迎えることが重要課題であった そのための解肌透疹の升 麻 葛根 補血の白芍 清熱解毒の生甘草 温中止嘔の生姜からなる 初期 は本方で発疹をみてから 白虎加人参湯や承気湯類に転方したものであろう TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 肌解透疹 清熱解毒 効果増強の工夫 咽痛があれば桔梗湯を合わせる 処方例 ツムラ升麻葛根湯 ツムラ桔梗湯 5.0g㾹 5.0g㾸 混合し分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 麻疹 痘瘡 猩紅熱などの発疹を伴う熱性病の初期 流感の頭痛甚しく脳 症状のあるもの 眼痛 鼻乾 衂血 不眠 流感 水痘 扁桃腺炎 皮膚 病 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 感冒 流感 麻疹 鼻血 眼充血 扁桃腺炎 皮膚病 ヒ ン ト 大正 年のいわゆるスペイン風邪と呼ばれる新型のインフルエンザは そ の高い死亡率で世界中を震撼させた まだ航空機が一般的でない時代であっ たが 流行は数カ月で地球を駆け巡るように伝搬し その感染性は極端に高 かった 欧米の成書によると 感染の蔓延を食い止めるのに最も効果的であっ たのは人口の移動を禁ずることであったという つまり 港湾を閉鎖して外 国からの流入を防止し 加えて国内では流行地からの人の移動を禁じた措置 がとられた 日本の秋田の地方紙秋田魁新報の大正 年の記事を読むと スペイン風邪 の死亡率は であったようである ただ入院例は40 前後が亡くなっ ている 記事の中には早期の肺炎と思われる記述があり ウイルス性の肺炎 で早期に重症化して死亡したのではないかと推測される その点でSARS 重 症急性呼吸器症候群 などと共通するようだ 矢数格著 漢方一貫堂医学 によると 森道伯は脳症を呈したインフルエン ザ例に升麻葛根湯加味を用いたという 症状として意識障害や頭痛は必発で あったろうから 本方をその他の原因と思われる意識障害や 頭痛に対して 応用することは現実的である 森道伯の事績は われわれ漢方に勤しむ医家 にとって大いなる希望を抱かせるものである 207

208 102 当帰湯 とうきとう 出典 孫思邈著 千金方 心腹絞痛し 諸虚冷気満痛す 腹候 腹力は中等度かそれ以下で幅広い 2-3/5 ときに臍上悸 臍下悸 腹部膨満を認める ことがある 腹候図 気血水 気血水がいずれも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は淡白 舌苔は白 脈沈細弱 腹候 腹力は中等度かそ れ以下で幅広い 2-3/5 ときに臍上悸 臍下悸 腹部膨満を認めることが ある 口訣 心腹冷気絞痛し 肩背へ徹して痛むものを治す 浅田宗伯 胸痛 腹痛で痛みが背中に抜けるというものに古来用いられる 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 背中に寒冷を覚え 腹部膨満感や腹痛のあるもの b 漢方的適応病態 気血両虚の寒痛 すなわち 疲れやすい 元気がない 食欲不振 皮膚に つやがない 四肢の痺れなど気血両虚の症候に 冷えると増強する腹痛 腹部膨満 腹や四肢の冷えなどの寒痛の症候を伴うもの 痛みは痙攣性で 激しいときは背部にまで放散する 一部の狭心痛に有効との説があるが 機序については不明である 中 医処方解説 構成生薬 当帰5 半夏5 桂皮3 厚朴3 芍薬3 人参3 黄耆1.5 山椒1.5 甘草1 乾姜1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補気養血 温中散寒 理気化痰 効果増強の工夫 気血両虚の寒痛に用いるのであるから 胸痛や腹部疝痛 腰痛に当帰四逆 加呉茱萸生姜湯と合わせることは可能である 同様に胸痺として人参湯と 併用も可能であろう 208

209 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ当帰湯 5.0g㾹 ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯 処方例 ツムラ当帰湯 ツムラ人参湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 5.0g㾸 分 102 食前 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 漢方後世要方解説 より 心下部疼痛 狭心症様の胸部痛 慢性腹痛疝気 胃潰瘍 狭心症 胃拡張 症 腹部動脈硬化による久腹痛 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 寒虚証者の胸背痛 挟心症 肋間神経痛など ヒ ン ト 以下は高橋道史氏の当帰湯の治験である 高橋氏は木村済生塾出身の浅田 流の医家である 心胸痛満 胸痺 これは五十一歳の主婦である 初診は五月二十三日 しかし この人は十 年前に歯槽膿漏にて当院の漢方治療にて全治し その後は再発せず生活して いた ところがここ数年の間に 盲腸を手術し 胆石症にて胆石を除去したり 肝炎やら狭心症と色々と病気をして 今でも病の問屋のように 全身が悪い といっている 血色のよい元気そうな主婦で 病人とは思われない 主訴は 胸脇苦満で 心下から胸部にかけて いつもしめられるようで 咽喉までも苦しくなる また胃から背部に徹する痛みがある 医師は 狭心 症は殆んど全快したのだから この苦悶は神経のせいだという 食欲は不振 で便秘勝ちである 脈は浮緊で 腹部には特筆すべき症状は認められない それで この患者 の主訴の胸内苦悶と 背部に徹する疼痛を目標として 千金当帰湯を処方した 本方は千金には 心腹絞痛諸虚冷満痛を治すと また原南陽は胸痩心痛を治 すという いずれも胸内苦悶を主治としている さて 本方を十日間服用して 心腹の絞痛と 背部に徹する胸痛は 快調 に好転し 胸内苦悶は限局して 心臓部に軽度な絞痛を残すのみとなった 209

210 103 酸棗仁湯 酸棗湯 さんそうにんとう 出典 金匱要略 虚労 虚煩して眠ることを得ざる証 金匱要略 血痺虚労病篇 腹候 腹力は中等度以下で幅広い 1-4/5 腹候 図 気血水 血主体の気血水 六病位 太陰病 腹候 腹力は中等度以下 で幅広い 1-4/5 脈 舌 脈は弦細数 舌質は紅 口訣 血気虚燥 心火たかぶりて不得眠者はこの方の主なり 済生の帰脾湯は この方に胚胎するなり 浅田宗伯 不眠にも嗜眠のものにも適用する 吉益東洞 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 心身がつかれ弱って眠れないもの b 漢方的適応病態 心血虚 心肝火旺 すなわち 寝つきが悪い 眠りが浅い 多夢 動悸 健忘 頭のふらつきなどの心血虚の症候に いらいら 焦燥感 のどや口 の渇き のぼせ ほてり などの心肝火旺の熱証を伴うもの 構成生薬 酸棗仁10 茯苓5 川芎3 知母3 甘草1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 養心安神 清熱除煩 効果増強の工夫 尾台榕堂は 類聚方広義 で 脱血過多でぼうっとし めまい 不眠 煩熱 盗汗 浮腫あるものには当帰芍薬散と合方するとよいと述べている 処方例 ツムラ酸棗仁湯 ツムラ当帰芍薬散 g㾹 5.0g㾸 分 食前

211 活用自在の処方解説 103 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 虚労性の不眠症 2 疲労困憊 身熱盗汗 動悸口乾 喘嗽 軟便 小便渋 或は煩驚健忘 心神恍惚 眩暈 脱血などにも使う 類聚方広義 ヒ ン ト 江戸時代の吉益東洞に嗜眠に対する酸棗仁湯の治験例があり 尾台榕堂に より紹介されている 日の間こんこんと眠り 死んだようになって目 覚めないものにこの方を用いて速やかに奏効したという 尾台榕堂は 健忘がちであったり 驚いて動悸しやすかったり 胸苦しかっ たりするものにこの方でよくなる場合があり 黄連や辰砂を適宜加えて用い るという 大塚敬節氏の症例に次のようなものがある 患者は62歳の男子で 数年来 不眠 頭重 耳鳴 肩こりを訴え 疲れや すく 食もまたすすまないという いままでいろいろの睡眠薬を用い また 年間 医師の治療をうけているが よくならないという 患者はやせ型の体格で 腹部に力がなく 臍部で動悸がやや亢進している 私はこれに酸棗仁湯を与えたが 重がとれ カ月あまりの服薬で 耳鳴 肩こり 頭 時間の安眠ができるようになり 記憶力を増進した そこ で小柴胡湯に転じたところ 食欲が出て 体重も増加した ある日 患者が云うのに この頃は性欲が旺盛になって10数年前の若さに かえったと そこでますますこれを続服したところ 10数年前から痼疾であっ た痔核もまったく全治した 酸棗仁湯は 不眠に用いる方剤であるが これで盗汗がやんだり 便通が ついたりする 211

212 104 辛夷清肺湯 しんいせいはいとう 出典 陳実功著 外科正宗 肺熱 鼻内の䛱肉 初め榴子の如く 日後ようやく大となり 孔竅を閉 塞し 気 宣通せざるを治す 鼻痔門 腹候 腹力は中等度前後 3-4/5 腹候図 気血水 気血水いずれも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力は中等度前後 3-4/5 肺熱の鼻淵は 舌質は紅 舌苔は黄 脈数 肺熱 肺陰虚では 舌質は紅で乾燥 舌苔は黄 脈は数 口訣 本方はいわゆる ちくのう症 の内服薬として知られているもので 葛根 湯 葛根湯加川芎辛夷 伯州散などについで応用されている 現代漢方 治療の指針 膿漏 鼻淵 鼻中䛱肉 あるいは臭香を聞かざるなどの症 すべて熱毒 に属する者に用いて効あり 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 鼻づまり 慢性鼻炎 蓄膿症 b 漢方的適応病態 肺熱の鼻淵 すなわち 鼻づまり 膿性の鼻汁 頭痛 口渇 咽痛な どの症候 肺熱 肺陰虚 すなわち 咳嗽 粘稠で黄色の喀痰 呼吸促迫 口渇 咽痛などの症候 構成生薬 石膏5 麦門冬5 黄䊫3 山梔子3 知母3 辛夷2 枇杷葉2 升麻1 百合 単位g 3 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱解毒 通竅 潤肺化痰 止咳 212

213 活用自在の処方解説 104 効果増強の工夫 1 鼻閉のために葛根湯加川芎辛夷と合方して作用を強める場合がある 処方例 ツムラ辛夷清肺湯 5.0g㾹 ツムラ葛根湯加川芎辛夷 5.0g㾸 分 食前 2 必要により排膿散及湯と合方される場合がある 処方例 ツムラ辛夷清肺湯 ツムラ排膿散及湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 鼻閉塞 鼻茸 肥厚性鼻炎 上顎洞化膿症など あるいは他の処方で無効 な場合 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 濃い鼻汁が出る熱性の蓄膿症 肥厚性鼻炎 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 慢性副鼻腔炎 肥厚性鼻炎 ことに鼻茸によいようである ヒ ン ト いわゆる副鼻腔炎に用いられる漢方処方の鑑別について 漢方診療医典 の 記述をかいつまんで紹介しよう 文中の加味は省略する 葛根湯 急性症の初期に用いるもので 発熱 頭重 鼻閉塞 膿汁流出 肩こりなど有るものに用いる 荊芥連翹湯 筋骨質で皮膚の色浅黒く 腹筋が緊張している 手足の裏が しめりやすいもの 葛根湯の効かないものに用いる 大柴胡湯 筋骨質で強壮に見える体格で 心下部が堅く張って胸脇苦満の 証があり 肩こり 便秘がちなもの 防風通聖散 肥満体質者で美食家 脈腹ともに充実し 便秘の傾向あるも のには 本方を連用させる 苓桂朮甘湯 慢性化し 胃アトニーの傾向があって 胃内停水を認め め まい たちくらみなどあるもの 葛根湯や小柴胡湯に合方する場合もある 半夏白朮天麻湯 胃アトニー 胃下垂で 発作的に頭痛やめまい 嘔吐を おこすようなもの 補中益気湯 虚弱体質で疲れやすく 貧血性で慢性化したもの 213

214 105 通導散 つうどうさん 出典 龔廷賢著 万病回春 跌撲 打撲 傷損きわめて重く 大小便通ぜず すなわち瘀血散ぜず 肚 腹膨脹し 心腹を上り攻め 悶乱して死に至らんとする者を治す 先づこ の薬を服し 死血 瘀血を打ち下し 然して後に方に補損薬を服すべし 万 病回春 折傷門 腹候 腹力中等度かそれ以上 3-5/5 瘀血圧痛 点と腹部膨満を認め ときに心下痞䌤を伴 う 腹候図 より深い理解のために 1 腹直筋に相当し て上腹部に強い緊張を触知 2 瘀血により 腹部全体が膨満しているもの 矢数格著 漢 方一貫堂医学 気血水 血主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 腹候 腹力中等度かそれ 以上 3-5/5 瘀血圧痛点 と腹部膨満を認め とき に心下痞䌤を伴う 参考 1 腹直筋に相当し て上腹部に強い緊張を触 知 2 瘀血により腹部 全体が膨満しているもの 矢数格著 漢方一貫堂医 学 脈は渋 あるいは弦 舌は舌質暗紅 紫で 瘀斑を伴うことが多い 中医処方解説 一方 矢数格先生は 漢方一貫 堂医学 で 本方の脈証を細実としている 無論有力であろう 口訣 一貫堂の五大処方の一つで 紅花 蘇木の破血薬を含むのが特徴 矢 数格 顔色に赤味があり 脈が細実 矢数格 古方の桃核承気湯に比すべきもの 矢数道明 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力があり下腹部に圧痛があって便秘しがちなものの次の諸症 月 経不順 月経痛 更年期障害 腰痛 便秘 打ち身 打撲 高血圧の随伴 症状 頭痛 めまい 肩こり b 漢方的適応病態 血瘀 気滞 すなわち 血瘀の症候に 胸苦しい 腹が脹る 便秘などの 214

215 活用自在の処方解説 105 気滞の症候を伴い 甚だしければ乏尿 狂躁状態を呈するもの 舌質は暗 紅から紫で瘀斑を伴うことが多い 脈は渋あるいは弦 中医処方解説 構成生薬 枳実3 大黄3 当帰3 甘草2 紅花2 厚朴2 陳皮2 木通2 蘇木2 芒 硝1 単位g より深い理解のために 活血化瘀の当帰 紅花 蘇木と理気の枳実 厚朴 陳皮に瀉下の大黄 芒硝を加え さらに利水の木通と調和薬の甘草を配した もので 桃核承気湯よりも作用が強い 中医処方解説 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気活血 破血逐瘀 瀉下 中処 効果増強の工夫 のぼせや神経症状が本方単独では十分管理できない場合には 他の駆瘀血 剤を合方することも行われる 処方例 ツムラ通導散 ツムラ桂枝茯苓丸 7.5g㾹 2.5g㾸 混合して分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 打撲による内出血 瘀血による諸疾患 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 顔色もよく 体力もある便秘傾向の人の 月経困難ならびに婦人科諸疾患 打撲による鬱血 その他 月経異常 または瘀血を伴うと思われる諸病に 単独または兼用で用いる ヒ ン ト 矢数格氏は通導散証の望診として肥満 赤ら顔 暗赤色の爪色を挙げている まずこの証を呈する患者は肥満している者に多いとし 婦人で脂肪過多症 とか 卵巣機能障害と診断されて肥満している者は 明らかに瘀血を持って いる者と考えられ 通導散の適応症である しかし たとえ痩せている者で も通導散を与えなければならない場合もあるから 肥満が必ずしも通導散証 の絶対の条件とはならないとし その識別は顔色で決定されるのであると述 べている さらに瘀血を持っている者は 太っている やせているにかかわらず 赤 ら顔を呈する者が大部分である 通導散がそのような実証の者に効果的であ るのは 通導散が激烈な駆瘀血剤であるからである そして 通導散は 比 較的に生理的血液破壊作用 主として蘇木の作用 があるから 虚弱な者には 用いられないとしている 215

216 106 温経湯 うんけいとう 出典 金匱要略 1 婦人 下利して止まず 暮れには即ち発熱し 少腹裏急し 腹満し 手 掌煩熱し 唇口乾燥し 瘀血少腹にありて去らざる証 金匱要略 婦 人雑病篇 2 婦人 少腹寒えて 久しく受胎せず あるいは崩中 子宮出血の意 あ るいは月水過多 あるいは期に至るも来らざる証 同上 腹候 腹力は中等度かやや軟 1-3/5 瘀血の圧 痛を認める 腹候図 気血水 気血水いずれも関わる 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は淡白で 瘀斑 脈は沈細 腹候 腹力は中等度かや や 軟 1-3/5 瘀 血 の 圧 痛を認める 口訣 芎帰膠艾湯の去加方とみなすべきものにて 月経不順等にして 常に腰 脚に冷感あり かつて孕妊せざる証 奥田謙藏 癥塊 あり 快く血下らぬものは桂枝茯苓丸によろし そのまた一等重 きものを桃核承気湯とするなり 浅田宗伯 癥塊は筋腫などの腫物 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 手足がほてり 唇が乾くものの次の諸症 月経不順 月経困難 こしけ 更年期障害 不眠 神経症 湿疹 足腰の冷え しもやけ b 漢方的適応病態 下焦の虚寒 血瘀血虚 すなわち 下腹部や腰の冷えと疼痛 腹が脹る 下肢の冷え ひえのぼせ 腹部膨満感などの下焦の虚寒 血瘀の症候に 皮膚につやがない 口唇の乾燥 目が疲れる 頭がふらつく 手足のしび れ感などの血虚の症候を伴う かつ 手のひらのほてり 夕方に微熱など の陰虚火旺の症候もみられることがある 構成生薬 麦門冬4 半夏4 当帰3 甘草2 桂皮2 芍薬2 川芎2 人参2 牡丹皮2 呉茱萸1 生姜1 阿膠2 単位g 216

217 活用自在の処方解説 106 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温経散寒 補血調経 活血化瘀 益気和胃 温経散寒 補血祛瘀 効果増強の工夫 冷え 腹痛など下焦の虚寒が強いときには 人参湯を合わせる さらに証 に応じて 附子末を g加える 処方例 ツムラ温経湯 5.0g ツムラ人参湯 5.0g 分 食前 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.0g 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 月経不順 子宮出血 血の道症 更年期障碍 不妊症 精神分裂症等 で口唇乾燥 手掌煩熱 或は下腹膨満痛するもの 2 凍傷 乾癬 進行性手掌角皮症などで手掌煩熱 或は乾燥するもの 3 下利に使い得る 4 蓄膿症で 頭痛 手掌乾燥 煩熱するものを治した例がある 5 急性虫垂炎で 手足煩熱 口唇乾燥するものを治した例がある 6 潰瘍性大腸炎 ヒ ン ト 大塚敬節氏は温経湯で主婦湿疹の治療を試みて奏効している 患者は26歳の主婦である 20歳の時に左手に湿疹ができ 年間治らなかっ た 24歳の春結婚し 11月に妊娠した その頃より湿疹が増悪し25歳の春に は右手にもひろがった この年の11月には項部にもひろがり 手の方もわる くなった そして胸にも発疹が出はじめたので プレドニンをのんだ これ をのんでいる間はよいが やめるとまたひどくなった 目下妊娠 カ月であ るが 両足と項部に湿疹が出ている 時々頭痛のすることがあり 下痢をし やすいという 発疹の形状は 前の婦人のものとよく似ている 注 すりむい た後のような状態の発疹で 指頭大のもの やや乾燥し分泌物はない ので 温経湯を与えた すると10日分の服用で 湿疹の方は大いに軽快し カ月 で全快し 下痢もしなくなり 頭痛もないという 温経湯は手掌の湿疹ばかりでなく 胸部や背部の湿疹にも効くことがある 217

218 107 牛車腎気丸 済生腎気丸 牛車八味丸 ごしゃじんきがん 出典 厳用和著 済生方 腎虚 腰重く 脚腫れ 小便不利するを治す 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 臍下不仁あり ときに腹直筋の緊張を認める 腹候図 気血水 水主体の気血水 六病位 太陰病 脈 舌 脈は沈 尺脈が弱 舌質は 淡白 湿潤 八味丸に準ずる 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 臍下不仁あり ときに腹直筋の緊張を認 める 口訣 この方は 八味丸の証にして 腰重脚腫あるいは 痿弱するものを治す 浅田宗伯 この方は金匱の腎気丸とあれども 即ち 今言うところの牛車腎気なり 目的とするところは 脾腎二蔵の虚にして 小水の通じ悪しく 腹は脹り 腰より下にも水気あるものなり 浅井貞庵 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 疲れやすくて 四肢が冷えやすく 尿量減少 または多尿で時に口渇のあ る次の諸症 下肢痛 腰痛 しびれ 老人のかすみ目 かゆみ 排尿困難 むくみ b 漢方的適応病態 腎陽虚の水腫 すなわち 八味地黄丸の症候に 下半身の水腫を伴うもの 構成生薬 地黄5 牛膝3 山茱萸3 山薬3 車前子3 沢瀉3 茯苓3 牡丹皮3 桂皮 単位g 1 附子1 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温補腎陽 利水 効果増強の工夫 食欲不振 疲れやすい 泥状から水様便など脾胃気虚の症候がみられると きには 六君子湯を合方する 218

219 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ牛車腎気丸 ツムラ六君子湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 107 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 八味地黄丸の作用をさらに増強させたもの 腰痛著しく小便不利のもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 八味丸を用いたい場合で 尿量減少や浮腫のあるもの 老人性腰痛や糖尿 病性神経障害にはことに適している ヒ ン ト 牛車腎気丸は 金匱要略 の八味地黄丸に牛膝と車前子を加えたものである ので 八味地黄丸とその効能はほぼ重なると考えてよいであろう ここに著 者の師匠である藤平健先生の八味地黄丸による白内障治験の論稿を 部分的 に引用することをお許しいただきたい 八味地黄丸というと どうしても藤 平先生の御功績を語らないわけにはいかないのである 先生は老人性白内障に八味地黄丸を病名投与した284例の結果をまとめて 視力の上昇が54.6 不変26.8 低下18.6 であったことを日本東洋医学会 誌上で明らかにされた 半数を超える眼で視力が改善し 1/4以上で進行が停 止するという結果であった 著者が大変興味深く拝読したのは それに続く先生の文章である さて 証に随わずに 老人性白内障という病名だけによって八味丸を投与し た私の成績が 証に随って 薬方 もっともその大部分は八味丸なのであるが を投与した小倉氏の例と さほど大きな差がないということは 老人性白内 障の場合は その診断がついただけで ほとんど証を考慮することなく 一 律に八味丸を投与しても大過がないのだということを物語っているのではな いであろうか これを逆に言うと 八味丸の証を構成する一要因に老人性白 内障という一項目を加えても 必ずしも悪くはないのではなかろうか この ことはまた 漢方の証を構成する要因の中に 西洋医学的な病名 検査成績 などが 今後 次ぎ次ぎと組み入れられる余地のあることを示唆するもので あると思う 今日の洋漢渾然となった医療状況を見越したような言葉である 随証施治 をあれほど心がけられた藤平健先生の言葉であるからこそ 発せられて30数 年後の今日もなお千金の重みを持って感ぜられるのである 219

220 220

221 活用自在の処方解説 108 構成生薬 地黄4 当帰4 白朮4 茯苓4 人参3 桂皮2.5 遠志2 芍薬2 陳皮2 黄耆1.5 甘草1 五味子1 単位g より深い理解のために 本方は十全大補湯の川芎を除き 五味子 遠志 陳 皮を加えたものに相当する TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 気血双補 安神 祛寒 止咳 効果増強の工夫 不眠が強ければ 酸棗仁湯を合方する場合がある 処方例 ツムラ人参養栄湯 ツムラ酸棗仁湯 6.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 病後衰弱 産後衰弱症 結核症の衰弱 毛髪脱落 顔色光沢なく枯燥 心 悸亢進 不眠 健忘症などあるもの 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 大病後や手術後などの全身衰弱 貧血 呼吸器疾患の回復期で 咳 盗汗 などの残るもの その他 貧血性で 気力 体力ともに衰え 健忘 不眠 乾咳などのあるもの ヒ ン ト 江戸時代の百々漢陰 鳩窓の 梧竹樓方函口訣 には 本方のことを次のよ うに記している この薬は肺痿 慢性肺疾患 結核など の衰弱をともなう咳嗽の主な治療薬 である 午後になると発熱し まぶたや顔面に熱色が出て 脈は細数である だれもが肺痿虚労とわかるほどになるとしょせん治癒は期しがたいが 初期 にはやく予後を察してこの方を用いると 咳を止める効能は他の薬よりひと きわ優れているものである しかし 声が出なくなったようなものにはもは や効果はない この方は福井楓亭の常用薬であって 本方の名前が世の中に 広まったのはまったく楓亭の力によるのだ これを読むと 慢性気管支炎や気管支拡張症に本方を適応してみたくなる 221

222 109 小柴胡湯加桔梗石膏 しょうさいことうかききょうせっこう 出典 本朝経験方 金匱要略 の小柴胡湯に桔梗 石膏を加味した本朝経験方である 腹候 急性症には腹候によらず適用される 慢性 症には 腹力中等度前後 2-4/5 胸脇苦満 心下痞䌤 ときに腹直筋の拘攣を認める 腹 候図 気血水 気血水いずれも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌は白薄苔あるいは厚い白黄苔 脈は有力 口訣 腹候 急性症には腹候に よらず適用される 慢性 症には 腹力中等度前後 2-4/5 胸 脇 苦 満 心 下痞䌤 ときに腹直筋の 拘攣を認める 咽頭痛を主とする上気道炎には早期から 本方を適用してよい その際には辛涼解表薬のように作用している印象が ある 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 咽喉がはれて痛む次の諸症 扁桃炎 扁桃周囲炎 b 漢方的適応病態 熱証が強い小柴胡湯証 すなわち 咽痛 口渇 高熱などを伴う 慢性期 にはすなわち再発予防 構成生薬 石膏10 柴胡7 半夏5 黄䊫3 桔梗3 大棗3 人参3 甘草2 生姜1 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和解半表半裏 清熱 222

223 活用自在の処方解説 109 効果増強の工夫 もし炎症が相当に強く 日などやや日数を経て口渇などが顕著で あったならば 白虎加人参湯と合方することは考えられる 古人も小柴胡 湯合白虎湯という方剤を用いたと成書にある 処方例 ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏 ツムラ白虎加人参湯 7.5g㾹 6.0g㾸 混合し分 食前 本方で先人は何を治療したか 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 小柴胡湯の適応があって のどが腫れて痛む場合 ヒ ン ト 本方は小柴胡湯が基本であるので いわゆる少陽病にある扁桃炎ないしは 咽痛に用いなければならないと思われるかもしれないが そのように考える 必要はないようである 実際に用いてみると 初日の咽頭炎に用いてもよく 効く 本方を飲んだ患者に尋ねると 服用後に発汗する例もあるが全例では なく 咽の痛みが服用早期から改善してくるというのは共通している 内容 の生薬からいうと 桔梗と石膏の作用が前面に出て効いているように思われ る つまり抗炎症薬として最初から作用している印象があって 口訣の項に 辛涼解表薬のようだと書いたのはそのような意味である 小柴胡湯加桔梗石膏を使ってしみじみ思うのは 小柴胡湯は急性期の炎症 の強い時期には安心して使える薬であり 頼りになる薬であるということだ 223

224 110 立効散 りっこうさん 出典 曲直瀬道三著 衆方規矩 牙歯痛んで忍び難く 微し寒飲を悪み 大いに熱飲を悪み 脈三部陰盛 陽虚す これ五臓内に盛んに 六腑陽道の脈微小にして小便滑数なるを治 す 牙歯門 腹候 急性症には腹候によらず適用される 慢性 疾患では腹力中等度前後 2-4/5 に適用 腹 候図 気血水 気水主体 腹候 急性症には腹候に よらず適用される 慢性 疾患では腹力中等度前後 2-4/5 に適用 六病位 少陽病 脈 舌 特定の所見はない 口訣 口腔内の他の痛みにも応用される 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 抜歯後の疼痛 歯痛 b 漢方的適応病態 歯痛 頭痛 細辛 升麻 防風は主として顔面部の疼痛に有効とされ 発汗 解表にも働く 構成生薬 細辛2 升麻2 防風2 甘草1.5 竜胆1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 止痛 効果増強の工夫 風寒頭痛に有効な川芎茶調散は 併用することで効果増強が可能であろう 防風 甘草が共通だが 防風は満量でも合計で4g 甘草は3gであるので 問題はない 処方例 ツムラ立効散 ツムラ川芎茶調散 g㾹 7.5g㾸 分 食前 短期間の使用にとどめる

225 活用自在の処方解説 110 本方で先人は何を治療したか 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 歯痛 歯齦痛 口腔内の腫脹疼痛 ヒ ン ト 立効散のみならず 歯科口腔外科領域で適応可能と思われる漢方製剤は少 なくない 適応病名から方剤名を挙げてみよう ただし歯科領域と医科領域 では保険上の取り扱いが異なるので 留意することが必要である 口内炎に適応を有する漢方製剤 TJ-14 半夏瀉心湯 TJ-120 黄連湯 TJ-135 茵䋄蒿湯 口渇やドライマウスに有効と思われる漢方製剤 TJ-29 麦門冬湯 TJ-34 白虎加人参湯 TJ-93 滋陰降火湯 顎関節痛 顎関節炎 TJ-1 葛根湯 TJ-18 桂枝加朮附湯 TJ-52 薏苡仁湯 TJ-53 疎経活血湯 TJ-63 五積散 TJ-78 麻杏薏甘湯 化膿性疾患としての歯周病 TJ-6 十味敗毒湯 TJ-8 大柴胡湯 TJ-35 四逆散 TJ-122 排膿散及湯 225

226 111 清心蓮子飲 せいしんれんしいん 出典 和剤局方 心中蓄積 時常 ふだん に煩噪するに因りて 思慮労力 憂愁抑うつし 是れ小便白濁 或は沙漠あることを致し 夜夢走泄 遺瀝渋痛 便赤くし て血の如し 治痼冷門 或は酒色過度に因り 上盛下虚し 心火炎上 肺金剋を受け 口舌乾燥 し ようやく消渇をなし 睡臥安からず 四肢倦怠し 男子の五淋 婦 人の帯下赤白 同上 より深い理解のために 五淋とは 五種の淋疾のことで 石淋 気淋 膏淋 労淋 熱淋を指している 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認め る 腹候図 気血水 気水主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈は沈細数 あるいは沈細無力 舌質は紅 乾燥 舌苔は少 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 める 口訣 上盛下虚というのが目標となる 上盛下虚というのは 上部の心熱が盛 んになって下焦の腎の働きが弱くなり 上下の調和を失って 下焦にあた る泌尿器に症状を現わすことを意味するものである 矢数道明 イライラと疲労感が同時にあり 陰虚して虚熱を発した状態に泌尿生殖 器系の異常を伴ったもの 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 全身倦怠感があり 口や舌が乾き 尿が出しぶるものの次の諸症 残尿感 頻尿 排尿痛 b 漢方的適応病態 気陰両虚 心火旺 すなわち いらいら 焦燥感 不眠 多夢 口や咽の 乾燥感 口内炎 胸が熱苦しい 動悸 手のひらや足のうらのほてりなど の陰虚火旺の症候に 元気がない 疲れやすい 気力がない 食欲不振な 226

227 活用自在の処方解説 111 どの気虚の症候を伴う 尿量減少 濃縮尿 頻尿 排尿痛 残尿感 淋症 あるいは遺精 あるいは不正性器出血などがみられることも多い 構成生薬 麦門冬4 茯苓4 黄䊫3 車前子3 人参3 黄耆2 甘草1.5 蓮肉4 地骨 皮2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 益気滋陰 清心火 止淋濁 効果増強の工夫 いらいら 不眠などの状態が強いときには黄連解毒湯を少し混ずる 処方例 ツムラ清心蓮子飲 ツムラ黄連解毒湯 9.0g㾹 2.5g㾸 混合し分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 尿意頻数や尿混濁 遺精や遺尿 残尿感等である 婦人の帯下で 米のと ぎ汁のようなものが大量に下るというもの また糖尿病で神経症を兼ねて 体力衰え 食欲少なく 全身倦怠感を訴えるものなど 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 性的神経衰弱 夢精 無精 腎臓炎 膀胱炎 糖尿病 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 慢性膀胱炎 尿道炎 慢性腎炎や糖尿病でイライラのあるもの 性的神経 衰弱者の遺精 ヒ ン ト 矢数道明氏が著書の中で紹介している北尾春圃の陰痿症の治験例である 二三歳の男子 生れて以来遂に勃起不能で 男女の道を知らない 一カ月 に一度白濁の尿が出て 中に小さい虫が湧いている しばしば夢精をみて ひどい時は一夜に二回もあることがある 蒼白な顔色でいろいろの養生をし たが効がない これは陰痿湿熱に属するものとして清心蓮子飲を与え 一方 異効散を併用し 三年かかって治癒し 二人の子を得た 異効散は四君子湯 加陳皮である 227

228 112 猪苓湯合四物湯 ちょれいとうごうしもつとう 出典 傷寒論 傷寒論 を出典とする猪苓湯に 和剤局方 の四物湯を合方した本朝経験方 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 腹部の皮膚は 肌膚甲錯を認める 腹候図 気血水 血主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は紅 舌苔は黄 黄膩苔 脈は数 数 滑 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 腹部の皮膚は 肌膚甲錯を認める 口訣 大塚流では これを腎臓結核に用い 伯州散や露蜂房を兼用して効果を 挙げている 山田光胤 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 皮膚が枯燥し 色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症 排尿困 難 排尿痛 残尿感 頻尿 b 漢方的適応病態 血虚と水熱互結 湿熱 すなわち 血虚状態に 発熱 熱感 口渇 排尿 障害 尿量減少がみられ いらいら 不眠などを伴うことがある状態 構成生薬 地黄3 芍薬3 川芎3 沢瀉3 猪苓3 当帰3 茯苓3 阿膠3 滑石3 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 利湿清熱 滋陰止血 補血活血 効果増強の工夫 薬を合方したところにすでに工夫があるが それでも血尿が止まらない ような場合には 黄連解毒湯をまず用いて止血を図るか それらを合方す る方法がある 処方例 ツムラ猪苓湯合四物湯 ツムラ黄連解毒湯 g㾹 5.0g㾸 分 食前

229 活用自在の処方解説 112 本方で先人は何を治療したか 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 膀胱炎 尿道炎 尿路結石症で慢性化し 顔色不良で 排尿困難 残尿感 排尿痛 頻尿 血尿などを伴うもの ヒ ン ト 口訣にあるように 本方をよく用いたのは大塚敬節氏であった 当時は尿 路系の結核症に好んで用いられた 症候による漢方治療の実際 の記述を引 用しよう 膀胱や尿道からの出血で 排尿痛 尿意頻数などがあればこの方を用いる 腎膀胱結核からの出血に私は猪苓湯合四物湯を好んで用いる 排尿異常の項 を参照 橘窓書影に次の治験がある 浅草中代地書物仕立師 三河屋八右衛門息年20余 尿血 血尿の出る病気 を患うこと 年ばかり 調子のわるい時は 小便が淋瀝して堪えられないほ どに痛み 骨と皮ばかりにやせてしまった その間多くの医者がいろいろと 治療をしたが一向によくならないという 自分はこれに猪苓湯加甘草を与え 乱髪霜 味を温酒で呑むようにしたと ころ 10日もたたないうちに血尿もやみ 疼痛も軽くなり多年の痼疾もすっ かり治ってしまった 猪苓湯に甘草を加えたのは 急迫を緩解するためである 乱髪霜 らんぱつ そう は頭髪の黒焼で 利尿と止血の効がある 私もかつて腎臓結核の患者に 乱髪霜を用いたことがある 乱髪霜は 日3 5gでよい 霜は黒焼のこと 229

230 113 三黄瀉心湯 さんおうしゃしんとう 出典 金匱要略 1 心気不足にして 吐血 衂血する証 驚悸吐衂下血胸満瘀血病篇 2 医 かえって之を下し 心下即ち痞する証 婦人雑病篇 腹候 腹力中等度かそれ以上 3-5/5 心下痞䌤 を認めることがある 腹候図 気血水 気血主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 大 ないし浮大数 舌は乾燥 微白苔 な いしは黄苔 腹候 腹力中等度かそれ 以 上 3-5/5 心 下 痞 䌤 を認めることがある 口訣 実熱 実火 熱盛 に対する基本処方である 黄連解毒湯の黄柏 山梔子 を大黄に換えたものに相当する 黄連解毒湯が主に利尿効果によって毒素 を排出するのに対し 本方は瀉下効果によって排泄する 中医処方解説 本方の振り出し 和紙に包んで熱湯中で数分浸して成分を抽出する は実 用的なので広く用いられてよい 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力があり のぼせ気味で 顔面紅潮し 精神不安で 便秘の傾向 のあるものの次の諸症 高血圧の随伴症状 のぼせ 肩こり 耳なり 頭重 不眠 不安 鼻血 痔出血 便秘 更年期障害 血の道症 b 漢方的適応病態 1 熱盛 2 血熱妄行 3 湿熱 脾胃湿熱 肝胆湿熱 4 心火旺 肝胆火旺 胃熱 すなわち 黄連解毒湯とほぼ同じで 便秘傾向のものによい 構成生薬 黄䊫3 黄連3 大黄3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱瀉火 解毒 清熱化湿 瀉下 止血 230

231 231

232 114 柴苓湯 さいれいとう 出典 危亦林著 得効方 風に傷れ 暑瘧に傷れるを治す 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 胸脇苦満 心下 痞䌤を認め ときに腹皮拘攣をみる 腹候 図 気血水 水主体の気血水 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 胸 脇 苦 満 心 下痞䌤を認め ときに腹 皮拘攣をみる 六病位 少陽病 脈 舌 半表半裏証 少陽病 水滞では 舌質は紅 舌苔は薄白 脈は弦やや浮数 肝鬱化火 脾気虚 水滞では 舌質は紅 舌苔は白 白膩 脈は浮弦軟 口訣 この方は 小柴胡湯の症にして煩渇下痢する者を治す 暑疫には別して 効あり 浅田宗伯 故有地滋先生のステロイド維持量低減作用に関する研究以来 多くの疾 患に適用されるに至った 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 吐き気 食欲不振 のどのかわき 排尿が少ないなどの次の諸症 水瀉性 下痢 急性胃腸炎 暑気あたり むくみ より深い理解のために 本方は医学的判断で臨床応用されるケースが多いの で 病名に注意する b 漢方的適応病態 半表半裏証 少陽病 水滞 すなわち発熱性疾患の経過中にみられる 発熱 往来寒熱 胸脇部が脹って苦しい 胸脇苦満 胸脇部痛 口が苦い 悪心 嘔吐 咳嗽 咽のかわき 食欲がない 目がくらむなどの症候に下 痢 浮腫などの水滞を伴ったもの 肝鬱化火 脾気虚 水滞 すなわち ゆううつ感 いらいら 怒りっ ぽい 口が苦い 胸脇部が脹って苦しい 寝つきが悪いなどの肝鬱化火の 症候に 元気がない 食欲がない 疲れやすいなどの脾気虚の症候と 悪 232

233 活用自在の処方解説 114 心 嘔吐 咳嗽 多痰 浮腫などの水滞の症候を伴うもの 構成生薬 柴胡7 沢瀉5 半夏5 黄䊫3 蒼朮3 大棗3 猪苓3 人参3 茯苓3 甘 草2 桂皮2 生姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和解半表半裏 通陽利水 効果増強の工夫 柴苓湯は本来急性感染性胃腸炎などに用いられる方剤である 嘔吐を伴う 場合には半夏厚朴湯合方などが考えられよう 処方例 ツムラ柴苓湯 ツムラ半夏厚朴湯 6.0g㾹 5.0g㾸 混合し 分 食前 本方で先人は何を治療したか 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 腎炎 ネフローゼ 肝炎で腹水を伴うもの 急性腸炎 下痢 または胃炎 嘔 吐 潰瘍性大腸炎にもしばしば効を奏する その他 小柴胡湯を用いた い場合で 尿量減少やむくみのあるもの ヒ ン ト 保険診療を審査する立場からすれば 柴苓湯は最も査定されやすい方剤の つである 他の方剤と比較して比較的高価なことがたぶんその一因であり 適応される疾患が本来の急性疾患ではなくほとんど慢性疾患であることが第 二の理由である 付け加えれば 本方は漢方の専門家というよりも 西洋医学の専門医で難 治性疾患の治療薬剤に精通して限界を十分に知っている方により処方される 場合が多いように思われる つまり既存の治療薬が無効か効果を発揮しえな い状態に一縷の希望を託して用いているのである それが時には目覚ましい 効果を上げる場合があり ときどき著効例として 例報告される 漢方の専門家からみると このような投与法は漢方医学のすそ野を広める 意味ではたいへんにありがたいことである しかし より安価で使いやすく 同等の効果が期待できる漢方薬もほかにあるのに 本方だけしか用いられな いのはまことに惜しい気がするのも事実なのである 233

234 115 胃苓湯 いれいとう 出典 龔廷賢著 万病回春 中暑 傷湿 停飲 夾食 脾胃不和 腹痛洩瀉 渇を作し 小便利せず 水穀化せず 陰陽分かたざるを治す 万病回春 泄瀉門 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに胃内停水 を認める 腹候図 気血水 水主体で気血水が関わる 六病位 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 ときに胃内停 水を認める 少陽病 脈 舌 急性症であれば舌候は様々 やや慢性的な 状態であれば 舌苔は厚く ねっとりした膩苔 発熱が有れば 脈浮数 口訣 五苓散に平胃散の合方したものなので使いやすいのが一番の特徴 急性 症は終始これだけで治療する場合が多いが 必要な場合は抗菌剤 点滴と の併用も可能 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 水瀉性の下痢嘔吐があり 口渇 尿量減少を伴う次の諸症 食あたり 暑 気あたり 冷え腹 急性胃腸炎 腹痛 b 漢方的適応病態 湿困脾胃 すなわち 表証があり 水溶性下痢や浮腫を伴うもの 構成生薬 厚朴2.5 蒼朮2.5 沢瀉2.5 猪苓2.5 陳皮2.5 白朮2.5 茯苓2.5 桂皮2 生姜1.5 大棗1.5 甘草1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気化湿 利水止瀉 効果増強の工夫 1 脾胃虚を補し止痢作用を増強する場合には 四君子湯と合方する 処方例 ツムラ胃苓湯 ツムラ四君子湯 g 㾹分 食前 㾸 5.0g 1-0-1

235 活用自在の処方解説 急性下痢に腹痛を伴う場合に芍薬甘草湯を兼用する 処方例 1 ツムラ胃苓湯 2 ツムラ芍薬甘草湯 7.5g分 食前 1回2.5g頓用 日分 回分 腹痛時 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 急性胃腸炎 急性腎炎 ネフローゼ 夏期の食あたり 夏の神経痛など 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 急性腸カタル 食傷 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 急慢性胃炎 消化不良 食あたりなどで下痢する場合 ヒ ン ト あきば伝統医学クリニック経験例 夏のある日 中年男性が下痢を訴えて来院した 来院前日に腹痛があって 度下痢をしたという 今朝の便では軟便に粘液 血液が多少混ずると いうことであった 体温37.6 全身状態は良好で虚した様子もないので処方 はT社胃苓湯 7.5g分 日間とし 血便が混ずるというので 便培養のみ 実施した さらに血便の経過をみながら精査することを約束して帰宅した 日後朝出勤すると 検査所からファックスが来ており あの患者さ んの便から腸炎ビブリオが検出されたとのことであった 慌ててご本人に電 話すると来院してから症状は出ずに すでに仕事に出ているとの返事であっ た 下痢も血便もないという 週間後に便培養を再検査したがすでに陰性 となっていた 本例は胃苓湯単独と自然治癒力でビブリオが陰性になった例である 235

236 236

237 活用自在の処方解説 116 構成生薬 半夏6 茯苓5 蒼朮4 厚朴3 陳皮3 人参3 蘇葉2 枳実1.5 生姜1 単 位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 理気化痰 散結 和胃降逆 健脾益気 効果増強の工夫 たちくらみが強い場合には苓桂朮甘湯を合方することができる 処方例 ツムラ茯苓飲合半夏厚朴湯 ツムラ苓桂朮甘湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 茯苓飲を使うべき胃下垂 胃アトニー者で のどのつかえ感など 不安神 経症のあるもの ヒ ン ト 最近本方は不安神経症や 胃腸虚弱者で不定愁訴を訴える方々にしばしば 用いられて奏効する 著者の経験では大半が女性に対する適応である 症状 では めまいや吐き気 さらに咳嗽など下から衝き上げてくるものにはいず れも有効である 茯苓飲がそもそも陳皮 枳実 生姜と四君子湯あるいは人 参湯に近似した内容なので 消化器のみならず呼吸器の病状にも力を発揮す ることがわかるであろう 半夏厚朴湯はさらに気の循環を促すことで 茯苓 飲の薬効を助けている 237

238 117 茵䋄五苓散 いんちんごれいさん 出典 金匱要略 黄疸の病は 茵䋄五苓散これを主る 黄疸病篇 腹候 腹力中等度かその前後 2-4/5 ときに胃 内停水を認める 腹候図 気血水 水が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 原則として 舌質は紅 舌苔は微黄膩苔 滑脈 腹候 腹力中等度かその 前 後 2-4/5 と き に 胃 内停水を認める 口訣 湿熱と呼ばれる状態で 熱はさほどでないが 湿の状態が激しいもの むく みとか皮膚の腫脹などがあるもの 中医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 のどが渇いて 尿がすくないものの次の諸症 嘔吐 じんましん 二日酔 いのむかつき むくみ b 漢方的適応病態 脾胃湿熱 すなわち 悪心 嘔吐 食欲不振 口が ねばる 油料理や匂いで気分が悪い 口渇 軟便 腹部膨満感 尿量減少 などがみられ 甚だしければ黄疸を伴う より深い理解のために もともと黄疸に用いられることから 黄疸時の皮膚 のかゆみに用いられ 転じて各種のかゆみを伴う病態に対して適用されるよ うになった 皮膚疾患に応用する場合には レセプトの病名欄に注意してほ しい 湿潤した皮膚炎などに適用するときは 越婢加朮湯などとの鑑別を要する 構成生薬 沢瀉6 蒼朮4.5 猪苓4.5 茯苓4.5 茵陳蒿4 桂皮2.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱利水 退黄 効果増強の工夫 糜爛した皮膚炎などに 238

239 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ消風散 ツムラ茵䋄五苓散 7.5g㾹 7.5g㾸 分 117 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 黄疸で口渇 小便不利し 或は心下部がつかえ或は発熱するもの 2 肝硬変症で 黄疸 腹水のものを治した例がある 3 酒呑み 二日酔いで煩悶止まざるものに使つた例がある 4 月経困難で 激しい心下痛 嘔吐 煩渇 小便不利するものを治した 例がある ヒ ン ト 漢方診療三十年 の大塚敬節氏の治験例である この患者は 有名な画家であるが 胆石疝痛の発作がたびたび起るので 某病院で 胆嚢の摘出手術をうけた ところが その後も 毎年初夏の頃になると 胆石疝痛に似た症状が起る そのため 半年ぐらいは仕事ができないという 初めは 食欲がなくなる それがひどくなると嘔吐がはじまる 腹痛はひ どくはないが 嘔吐のため食事がとれないので 体力が衰え 僅かの腹痛に も堪えがたいという このような状態が十月頃までつづく そのため患者は 骨と皮になってしまうのが常であった 昭和二十二年の七月八日 私は この患者を茨城県の某町に見舞った 何をたべても吐くので やっとの思いで 重湯をすすっているというこの 患者は 発病してまだ七日あまりなのにかなり衰弱し それに黄疸もあらわ れている 脈には力がなく しかものろい 腹にも力がないが 心下部は 強く圧すといたむ のどは渇くが 吐くので できるだけ呑まないようにし ているという 尿量は一回に五〇ccから一〇〇ccぐらいで 柿の色のように 赤い 私は 口渇 嘔吐 尿利の減少 黄疸を目標にして 茵䋄五苓散を与えて 嘔吐をしずめることに成功した 嘔吐はやんだが 食欲がないので しばら く六君子湯を与えて様子をみることにした これをのむと日増しに体力がつ き 庭に萩の花の咲く頃には これを写生できるほどに力づいてきた それからもう十年あまりになるが この患者は 再びこのような発作を起 さない この場合も茵䋄五苓散で 胆道に残っていた石が排泄せられたのか もしれない 239

240 118 苓姜朮甘湯 別名 甘草乾姜茯苓白朮湯 甘姜苓朮湯 腎著湯 りょうきょうじゅつかんとう 出典 金匱要略 腎著の病 その人身体重く 腰中冷え 水中に坐するが如く 形水状の 如し かえつて渇せず 小便自利 飲食故の如きは 病下焦に属す 身労 汗出で 衣裏冷湿 久久にこれを得 腰以下冷痛して 腹の重きこと五千 銭を帯ぶるが如きは 甘姜苓朮湯 苓姜朮甘湯 これを主る 五臓風寒積 聚病篇 腹候 中等度よりやや軟 1-3/5 腹候図 気血水 気水が主体 六病位 太陰病 脈 舌 腹候 中等度よりやや軟 1-3/5 舌苔は滑 脈沈 口訣 この方は 五苓散の去加方とみなすべきである 奥田謙藏 老人 平日小便失禁し 腰腿沈重 冷痛するものを治す 尾台榕堂 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 腰に冷えと痛みがあって 尿量が多い次の諸症 腰痛 腰の冷え 夜尿症 b 漢方的適応病態 下焦の寒湿 すなわち 腰から下が冷えて痛む 甚だしければ水の中に坐っ ているような感じ 腰以下が重だるい 軽度の浮腫 よだれが多いなどの 症候があり 食欲は普通で口渇はなく尿量は多い 構成生薬 茯苓6 白朮3 甘草2 乾姜3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 祛湿散寒 止痛 効果増強の工夫 1 疲れやすい 食欲がない 下痢傾向などの脾気虚の症候があれば 人 参湯を合方する 処方例 ツムラ苓姜朮甘湯 ツムラ人参湯 g㾹 5.0g㾸 分 食前

241 活用自在の処方解説 冷えが強いときには 附子を加味する 処方例 ツムラ苓姜朮甘湯 7.5g 㾹分 食前 㾸 ブシ末 調剤用 ツムラ 0.5g 附子は少量より開始し 慎重に漸増するのがよい 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 腰痛 坐骨神経痛で腰脚が非常に冷えて 重く感じるもの 2 夜尿症 帯下で腰脚が強く冷えるもの 3 気管支喘息で足が非常に冷え 小便が多いもの 4 湿疹 潰瘍 漏孔などで分泌物が薄く 量が多く 肉の上りが悪く 足が冷えるもの 5 排尿困難 尿意頻数 排尿痛を訴えるもので 腰が強く冷える 或は 心下悸するのを治した例がある 6 精液自ら漏れ 小便頻数 腰冷えるものを治した例がある 7 脚痿弱して歩行できず 腰脚冷えるものを治した例がある 8 夏秋に身体だるく手足疼み 腰以下重く 或は浮腫 或は発熱悪寒 下利腹痛 小便不利 渇するものに使つた例がある 9 月経不順で 右脇下凝結し 腰以下浮腫 大便自利 小便不利のもの を治した例がある 10 腹痛甚しく 疼痛の状 腰にあつまるものを治した例がある 11 尿閉で 鼻清涕を出すものを治した例がある 12 妊娠腎で腰脚浮腫するのに用いた例がある また冷たい帯下がおり腰 脚が強く冷えるもの 13 子宮出血で めまい 頭重 肩こり 下腹膨満 腰脚冷えるものを治 した例がある ヒ ン ト 百々漢陰 鳩窓の 梧竹樓方函口訣 中湿類に珍しい記述があるので紹介し よう 本方は腎著病 腰冷えて重く覚ゆる症に用い 一切腰に冷湿の気を含みた ると見ゆる者 皆よし 山脇東洋の話に交腸病 こうちょうびょう にこれを 用いて奇効ありと 交腸とは大便小便道より出でて 小便大便道より出づる ものをいう これは古人にも往々治験のあることなり 241

242 119 苓甘姜味辛夏仁湯 苓甘五味加姜辛半夏杏仁湯 りょうかんきょうみしんげにんとう 出典 金匱要略 水去り嘔やみ その人 形腫るる者 痰飲䈙嗽病篇 腹候 腹力は中等度よりやや軟 1-3/5 胃部振 水音を認めることがある 腹候図 気血水 気水が主体 六病位 太陰病 腹候 腹力は中等度より や や 軟 1-3/5 胃 部 振 水音を認めることがあ る 脈 舌 舌苔は白滑 脈は滑 口訣 茯苓杏仁甘草湯の内容 茯苓 杏仁 甘草 を含むことから 強心作用と自覚的な動悸息切れの改善が期待できる 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 貧血 冷え症で喘鳴を伴う喀痰の多い咳嗽があるもの 気管支炎 気管支 喘息 心臓衰弱 腎臓病 b 漢方的適応病態 寒痰の喘咳 すなわち 咳嗽 呼吸困難 白色で薄い多量の痰 喘鳴 く しゃみ 鼻水 冷えなどの症候 胃内に溜飲のみられることも多い 構成生薬 杏仁4 半夏4 茯苓4 五味子3 甘草2 細辛2 乾姜2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 温肺化痰 平喘止咳 利水 肺を温めて水を除き 喘咳を治し 利尿を はかる より深い理解のために 医処方解説 242 小青竜湯の適応症で表証がないものに用いる 中

243 活用自在の処方解説 119 効果増強の工夫 呼吸困難がある咳嗽には 神秘湯合方 処方例 ツムラ苓甘姜味辛夏仁湯 ツムラ神秘湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 小青竜湯の適応証で虚寒のものに使う 2 腎炎ネフローゼ 萎縮腎 尿毒症 動脈硬化症 脳出血後の半身不随 脚気 心臓不全 心臓性喘息 栄養失調等で浮腫し脈沈手足冷え小便不利 し 或は喘咳或は腹水を伴うもの 3 気管支炎 気管支喘息 肺気腫 百日咳等で咳して顔がむくみ 足冷 小便不利 胃部振水音 咳によつて嘔く等があるもの ヒ ン ト 矢数道明氏に本方の治験例がある 臨床応用漢方処方解説 から気管支喘 息症例を紹介しよう 四三歳の婦人 昨年肺炎を経過し 八カ月前より風邪のあとで咳嗽喀痰が 続き 両側前胸痛 レントゲン数回所見なく 病院にては喘息といわれた 加療するも効なく 食欲衰え 呼吸困難 歩行も不自由になった 咳嗽は毎 夜十一時 一時 四時と三回苦しくなり 動悸 頻尿 唾様の淡い痰が出る 背や肩がひどく凝る 顔色蒼白で少し腫れ気味 脈は沈細で わずかに数である 腹は全般に虚 状で陥没し 心下部少しく張っている 胸部に笛声音をきき 小水泡音も聴 取できる 舌苔なく皸裂 くんれつ を生じ 荒れている 熱はなくて冷え症 である 全身の疲労衰弱 貧血 冷え症などから虚寒証であり 稀薄な痰 多尿 冷汗などより水分の停滞が想像される 苓甘姜味辛夏仁湯を与えたところ 一週間の服薬で諸症消失し 食欲が出て 一カ月後には軽作業に従事しても疲れず 体重増加し 顔面紅潮を呈し 三 カ月で全治した 再起不能とうわさされていたこの患者の治癒は奇跡的とさ えいわれた 243

244 120 黄連湯 おうれんとう 出典 傷寒論 胸中に熱あり 胃中に邪気あり 腹中痛み 嘔吐せんと欲する証 太 陽病下篇 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 める 腹候図 気血水 気水が主体 六病位 少陽病 脈 舌 脈弦数あるいは弦細 ときに緩 舌湿潤し て滑 ときに微白苔 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 める 口訣 反復する口内炎なら 一度は試みたい 道聴子 日常大酒を好むもの あるいは二日酔いで苦しむものに しばしば本方 証があるのは注意すべきである 奥田謙藏 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 胃部の停滞感や重圧感 食欲不振のあるものの次の諸症 急性胃炎 二日 酔 口内炎 b 漢方的適応病態 脾胃不和に腹痛を伴うもの 発熱性疾患の経過にもみられる 構成生薬 半夏6 黄蓮3 甘草3 桂皮3 大棗3 人参3 乾姜3 単位g より深い理解のために 半夏瀉心湯の黄䊫を桂枝に変えて 散寒止痛の効能 を強めたものである 中医処方解説 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 和胃降逆 消痞止痛 止瀉 清熱 調和腸胃 244

245 活用自在の処方解説 120 効果増強の工夫 腹痛の強い例に用いる場合には 少量の芍薬甘草湯を合方するか兼用を試 みる 処方例 ツムラ黄連湯 ツムラ芍薬甘草湯 7.5g㾹 2.5g㾸 混合して分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 胃炎 腸炎 胃腸炎 コレラ 消化不良 自家中毒 胆石 蛔虫 急 性虫垂炎初期などで 嘔吐腹痛とも著しいもの 2 胃酸過多症 胃潰瘍 胃癌 十二指腸潰瘍等で胃部疼痛し 或は嘔き 或は胸やけ噯気し 或は吐血するもの 3 二日酔いで 悪心嘔吐 胸中不快で 或は胃痛を伴うもの 4 歯痛 口内炎 口角糜爛 口臭等でのぼせ感があり 心下痞䌤 足冷 などを伴うもの 5 ノイロ ゼ てんかん 血の道症等で心煩身熱し 或は頭痛 腹痛を 伴うもの 6 肺結核で神経症状が強く心煩身熱するもの 皮膚病 煩熱かゆみ強く 胃中には反って寒あるもの ヒ ン ト 胸中に熱有り 胃中に邪気有り 腹中痛み嘔吐せんとす 黄連湯の出典である 傷寒論 の條文はまるで詩のように美しい 本方の適応について大塚敬節氏は 次のように述べている この方は半夏瀉心湯の黄䊫の代りに桂枝の入った方剤である 半夏瀉心湯 は心下痞䌤して 食欲不振 嘔吐 下痢などのあるものに用いるが また軽 微の腹痛のある場合にも応用できる この方は心下痞䌤よりも腹痛を目標にして用いる もし心下痞䌤が著明で あれば半夏瀉心湯などの瀉心湯の類を用い それで痛の止まない時にこの方 を用いる この方の腹痛は みずおちと臍との中間あたりから起るものによい 嘔吐はなくても用いてよい また食傷や急性の胃炎などの腹痛に用いること もある このさいに舌には白苔が厚くかかることが多い 245

246 121 三物黄䊫湯 さんもつおうごんとう 出典 金匱要略 四肢煩熱に苦しみ 頭 痛まず ただ煩する証 婦人産後病篇附方 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 血水が主体の気血水 六病位 少陽病 腹候 腹力中等度前後 2-4/5 脈 舌 脉細数 舌苔は少 口訣 この方は蓐労のみならず 婦人血症の頭痛に奇効あり 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 手足のほてり b 漢方的適応病態 陰虚火旺 構成生薬 地黄6 黄䊫3 苦参3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 滋陰清熱 効果増強の工夫 三物黄䊫湯は手足煩熱を目標に用いられる 疏肝解欝 瀉火の加味逍遙散 を併用して効果増強を図る 処方例 ツムラ三物黄䊫湯 ツムラ加味逍遙散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 朝夕食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 産褥熱 血の道症 更年期障害 月経閉止 ノイローゼ 自律神経不 安定症等で手足 特に手掌足心煩熱し 或は発熱寒熱し 或は顔面紅潮 舌燥 咽渇 自汗 或は眩暈 耳鳴 動悸 心胸安からず 或は不眠 煩躁 労状をなすもの 2 凍傷 火傷 じん麻疹 水虫 頑癬 乾癬等で 熱感とかゆみが強く 乾燥性で充血鬱血 発熱赤く 或は煩躁不眠等に陥るもの 246

247 活用自在の処方解説 分娩出血 吐血 下血その他の出血で 身体煩熱 倦怠 手掌足蹠ほ てり 或は唇舌乾燥 或は胸中煩熱 煩躁等を伴うもの 4 肺結核 夏まけ 夏の脚気等で 手足支体煩熱堪え難く 夜間最も甚 しくて眠ることが出来ず 或は口舌乾燥 肺結核では咳 喀血等をも 伴うもの 5 蛔虫で 手足煩熱 腹中熱感等あるもの ヒ ン ト 山田光胤氏は次のような治験を 漢方処方応用の実際 で述べている 症例 明治31年生まれの男子 会社社長 胃潰瘍の後遺症 および睡眠 中の足の攣縮 平生元気なひとであるが 終戦後間もないころ胃潰瘍になって胃切除の手 術をうけた しかしそれ以来ときどき胃部が痛むという 奥さんが肝臓癌で亡くなってから 手がしびれたり 夜中 睡眠中に足が ビクッとかなり激しくびくついて 驚いてめがさめることがしばしばある また動悸がしたり 驚きやすく 疲れやすいなどという神経過敏の訴えがあっ た 手足は冬でもあつく 夜ねぐるしいという 体格はガッチリとしていて いかにも事業家タイプの人だが 顔色が非常に悪く 脈は浮大で虚状である 腹証は右に胸脇苦満があり 心下に痞䌤があって 臍下は脱力し軟弱無力で ある また腰背部の志室の部分に圧痛が著明で いかにも虚しているという 状態であった この患者に 柴胡加竜骨牡蛎湯でも与えようかと思ったが 手足の煩熱を めあてに三物黄䊫湯を用いることにし 胃がときどき痛むというので瀉心湯 を合方して投与した すると 週間目に来院したときには 夜間の足のびくつきが全くなくなっ たという そのとき 口内炎が出て痛いというので 心下痞䌤をめあてに甘 草瀉心湯に変えた ところが これで口内炎は治ったが 夜間の足のびくつきがまた出て ね むれないという そこで 再び以前の処方にもどしたところ 週間後に来て びくつきは 全然おこらず 夜もよくねむれると報告した 以来同じ処方を数カ月つづけ 病気はすっかり治ってしまった 247

248 122 排膿散及湯 はいのうさんきゅうとう 出典 本朝経験方 金匱要略 の排膿散 排膿湯を合した吉益東洞 江戸時代 創方による本朝 経験方である 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 発熱などのあ る急性期は 腹候によらずに化膿状態があ れば適応される 腹直筋の拘攣があっても よい 腹候図 気血水 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 発熱などのあ る急性期は 腹候によら ずに化膿状態があれば適 応される 腹直筋の拘攣 があってもよい 血水主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 全身性の発熱があれば浮大 口訣 本方の眼目は 桔梗と枳実と合したるところにあり 浅田宗伯 桂枝茯苓丸と合して筋腫などの腫瘍性病変に適用される 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 患部が発赤 腫脹して疼痛を伴った化膿症 瘍 䉜 面疔 その他䉜腫症 b 漢方的適応病態 化膿性疾患 構成生薬 桔梗4 甘草3 枳実3 芍薬3 大棗3 生姜1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱解毒 祛痰排膿 止痛 和胃 効果増強の工夫 子宮筋腫などに駆瘀血剤と合方する 処方例 ツムラ桂枝茯苓丸 ツムラ排膿散及湯 7.5g㾹 7.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より フルンケル カルブンケル 蓄膿症 中耳炎 乳腺炎 痔瘻 潰瘍 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 248

249 活用自在の処方解説 122 排膿散は 活動期の癰 疔 䉜 瘭疽に用いられ 排膿湯は䉜 疔などの ごく軽度のものか極期をすぎたものを治する作用がある 本方は二方を合 方したもので 性格は排膿散にちかい ヒ ン ト 昭和60年ごろだが 著者らは自家製の排膿散を作って盛んに臨床応用した ことがあった 原方の排膿散は鶏子黄 卵の黄身 を混じて服用することになっ ているが 鶏子黄は省略して適応した 枳実 芍薬 桔梗の生薬末を混合し て作成するのであるが そのまま服用すると咽にイガイガした刺激があって なかなか飲みにくい ところがあるとき原方通りに 鶏子黄をいれて浅い茶 わんに末を加えてスプーンでかき混ぜたところペースト状になり 試みに口 に入れてみると刺激感はまったくなくて大いに飲みやすくなった 合計で32症例の排膿散の経過をまとめて昭和 年の日本東洋医学会 関東甲信越支部会で報告した 急性疾患では身体各部分の䉜 フルンケル 14例に 他の治療法を併用せず に本方単独で治療したところ有効11例 不変 例 悪化 例であった の男児の背中に多発したフルンケルは 成人量の2/3の排膿散 歳 日間の服用で 一部は自壊し 一部は吸収された 䉜ではかなり手応えを感じたので 臀部に発する癰 カルブンケル の 例に用いてみた しかし これらは効果を示す前に苦痛が増大して切開排 膿を余儀なくされた 特筆すべき齲歯の痛みであった これにはまことに有効で 服で痛 みが頓挫することがよくあった うっ滞性乳腺炎は軽症例では本方のみで十 分治療可能で 中等度以上の症例には抗生剤を併用して治癒している やや期待外れであったのは慢性副鼻腔炎で 既往に手術を受けたこともあ る比較的重症例を含む 例では 不変 例 悪化 例であった 249

250 123 当帰建中湯 とうきけんちゅうとう 出典 金匱要略 千金内補当帰建中湯 治婦人産後 虚羸不足 腹中刺痛してやまず 吸吸として少気し ある いは少腹中急を苦しみ 摩痛腰背に引き 食飲する能はず 産後一月 日 に得て四五剤を服するを善となし 人をして宜しく強壮ならしむ 婦人 産後病篇 腹候 腹力中等度よりやや軟 1-3/5 腹直筋の 強い緊張を認める場合と軟弱な場合とがあ る 腹候図 気血水 気血主体の気血水 六病位 太陰病 脈 舌 腹候 腹力中等度よりや や 軟 1-3/5 腹 直 筋 の 強い緊張を認める場合と 軟弱な場合とがある 舌質は正常か淡紅 舌苔は白薄 脈は軟や や弦 口訣 地黄 阿膠を加味したものは 去血過多の者に用いて 十全大補湯など より確実であることが多い 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 疲労しやすく 血色のすぐれないものの次の諸症 月経痛 下腹部痛 痔 脱肛の痛み b 漢方的適応病態 血虚の腹痛 すなわち 顔色がさえない 不活発 やや疲れやすい 食が 細いなどの体質で ときに腹痛 臍周囲の痙攣性疼痛が多い があり温めた り押さえたりすると軽減するもの さらに皮膚につやがない しびれなど の栄養不良状態 血虚 を伴うもの 特に産後の衰弱や月経困難症に適して いる 構成生薬 芍薬5 桂皮4 大棗4 当帰4 甘草2 生姜1 単位g 250

251 251

252 124 川芎茶調散 せんきゅうちゃちょうさん 出典 和剤局方 丈夫 婦人諸風上り攻め 頭目昏重 偏正頭疼 鼻塞がり 声重く 傷 風壮熱 肢体煩疼 肌肉蠕動 膈熱痰盛 婦人血熱攻注 太陽の穴痛むを 治す 但是風気に感ぜば悉く皆之を治す 常に服すれば頭目を清す 諸 風門 および傷寒門 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 腹候図 気血水 気が主体で気血水 六病位 太陽病 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 脈 舌 舌苔は白薄 脈浮 口訣 本方は風寒による頭痛に対する代表的処方である 中医処方解説 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 かぜ 血の道症 頭痛 b 漢方的適応病態 風寒の頭痛 すなわち 突発性の頭痛で 悪寒 発熱 鼻づまりなどの表 証を伴う めまいがみられることもある 構成生薬 香附子4 川芎3 羌活2 荊芥2 薄荷2 白芷2 防風2 甘草1.5 茶葉1.5 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 疏風散寒 止頭痛 より深い理解のために 本方は発散性が強いので 気虚 血虚 肝陽上亢 肝風内動などの頭痛には用いてならない 効果増強の工夫 悪寒が強く悪心 嘔吐を伴うときには 半夏厚朴湯を合方 処方例 ツムラ川芎茶調散 ツムラ半夏厚朴湯 g㾹 7.5g㾸 分 3 食前

253 活用自在の処方解説 124 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 頭痛鼻塞 声重く 壯熱 肢体疼痛のもの あるいは熱性または充血性頭 痛 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 頭痛ことにカゼによる頭痛 婦人常習頭痛 月経調節作用もありそうであ る ヒ ン ト 本方について 甲賀通元の著書に吉冨兵衛氏が注釈を加えた 和訓古今方彙 には 和剤局方の條文を引用して次のように書かれている 諸風上攻 頭目昏沈 偏正頭痛 ヘンセイズツウ 左に偏する頭痛は風と 血虚 右に偏する頭痛は痰と気虚 左右ともに痛むは気血両虚なり 鼻塞声 重 傷風壯熱 肢体酸疼 肌肉蠕動 膈熱痰盛 婦人血風攻め注ぎ 太陽穴 コ メカミ 痛むを治す 医方口訣集 の頭注にある北山友松子の口訣をみると 和剤局方の條文に 続けて 自分が思うには 感風気 の三字は本方の用法を示している ある 人は生れながらに風気を蓄えやすかったり あるいは風に傷れて服薬した結 果 風邪は去ったが頭痛が残ったりした場合に本方は適切である これはす なわち風気が上部になお留まっているからだ 和剤局方の條文に 諸風上攻 とあるのは 薬を用いるについての重要な留意点である とある なお服用法であるが 本方は細茶を加えて煎じる場合と 細茶を入れずに お茶で服用する場合とがあるように書かれており 漢方製剤を飲む場合でも お茶で服用するとさらに効き目が高くなるかもしれない 253

254 125 桂枝茯苓丸加薏苡仁 けいしぶくりょうがんかよくいにん 出典 本朝経験方 金匱要略 にある癥病漏下の桂枝茯苓丸に消炎排膿の薏苡仁を加えた本朝 経験方である 腹候 腹力中等度かそれ以上 3-5/5 瘀血の圧 痛を認め ときに腹直筋の拘攣を伴う 腹 候図 気血水 気血水のいずれとも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は紫あるいは瘀斑がみられることが多 い 脈は渋 あるいは細 あるいは弦 腹候 腹力中等度かそれ 以 上 3-5/5 瘀 血 の 圧 痛を認め ときに腹直筋 の拘攣を伴う 口訣 薏苡仁が加味されており 疣贅などの皮膚疾患や良性腫瘍としての子宮 筋腫などに適用しやすい内容である 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力があり ときに下腹部痛 肩こり 頭重 めまい のぼせて足 冷えなどを訴えるものの次の諸症 月経不順 血の道症 にきび しみ 手足のあれ b 漢方的適応病態 下焦の血瘀 すなわち 下腹部の痛みや圧痛抵抗 あるいは腫瘤 月経不 順 月経困難 不正性器出血などに 下肢の冷えや静脈のうっ滞あるいは のぼせ 頭痛 肩こりなどに 炎症 腫瘤などを伴うもの 構成生薬 薏苡仁10 桂皮4 芍薬4 桃仁4 茯苓4 牡丹皮4 単位g より深い理解のために 本方には薏苡仁を除けば 桂枝茯苓丸よりもそれぞ れ1gずつ薬味量が増やされている TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 活血化瘀 消癥 消炎消腫 254

255 活用自在の処方解説 125 効果増強の工夫 便秘を伴うときや 活血化瘀を強める必要がある場合は 大黄を加味して 逐瘀を期する 処方例 ツムラ桂枝茯苓丸加薏苡仁 局方大黄末 7.5g 㾹分 食前 㾸 1.0g 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 桂枝茯苓丸を使うべき状態で 皮膚の荒れやニキビ シミ シバカスのあ る場合 ヒ ン ト すでに述べたように 本方の特徴は桂枝茯苓丸の構成生薬が増量されてお り さらにヨクイニンが加味されていることである これにより原方の桂枝 茯苓丸とは異る応用が考えられる 本草学からみたヨクイニンについて知る ことはその助けとなろう ヨクイニンはハトムギや四石麦と呼ばれていた 雑穀として食用に供され る一方 民間療法や中国由来の本草学的知識から薬物として用いられたと思 われる 以下の記述は 漢薬の臨床応用 を参照した ヨクイニンはイネ科薏苡の成熟種子を乾燥したものである 性味は甘淡 性は微寒 帰経は 脾 胃 肺経である 薬能は 利水滲湿 清熱 排膿 除痺 健脾止瀉である 薬効として 風湿による筋疾患に対し鎮痙作用を発揮 あるいは止瀉作用 がある 臨床応用として 第一に軽症の水腫 特に脚気による水腫に用いられる 第二に 内臓の化膿症 すなわち肺癰や腸癰に用いられる 第三に リウマ チや神経炎の湿熱による痺痛に用い 筋肉の痙攣による疼痛を緩解する 第 四に 健脾止瀉作用として 脚気や脾虚による下痢に効果がある 皮膚の扁平疣贅に対する効果を期待するには ヨクイニン30gを煎じて服用 するか 60gを粥にして食べ カ月くらい続けると効果があるという 著者の 経験ではこの半量でも有効なように思われる 255

256 126 麻子仁丸 ましにんがん 出典 傷寒論 金匱要略 趺陽の脈浮にして䈷 浮なれば則ち胃気強し 䈷なれば則ち小便数なり 浮䈷相搏てば 大便則ちかたし その脾約を為す 麻子仁丸之を主る その脾胃 約せられて 津液めぐらざるが為なり との意 奥田謙 藏 傷寒論 陽明病篇 および 金匱要略 五臓風寒積聚病篇 腹候 腹力中等度 2-4/5 腹候図 気血水 血水主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌質はやや乾燥 脈細 有熱状態で浸液 が脱したものを想定 腹候 腹力中等度 2-4/5 口訣 胃中に熱ありて 小便の数多く 大便堅きもの 汗出で皮膚湿りたるも のによろし 汗無く皮膚カサカサのものに効なし 荒木性次 生まれつき体の弱い人 久病で羸痩した人 血燥の高齢者などによい 尾 台榕堂 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 便秘 b 漢方的適応病態 腸燥便秘 すなわち 発熱 発汗などに伴い軽度の腹痛 兎糞状の便ある いは便秘がみられるもの 習慣性便秘で兎糞状の排便がみられるもの 構成生薬 麻子仁5 大黄4 枳実2 杏仁2 厚朴2 芍薬2 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 潤腸通便 効果増強の工夫 麻子仁丸単独で不十分な場合に他の大黄剤を合わせることもできるが 麻 子仁丸の成り立ちから温下の剤が最適であるので 桂枝加芍薬大黄湯や潤 腸湯などがよい 256

257 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ麻子仁丸 7.5g 分 食前 ツムラ桂枝加芍薬大黄湯 5.0g 分 眠前 gの間で便通により調節すること 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 便秘で虚証の人 或は老人で大便堅く小便近きもの 2 尿意頻教 夜尿 萎縮腎で大便堅きものに使つた例がある ヒ ン ト 麻子仁丸は高齢者に用いる機会が多いが 漢方診療三十年 をみると大塚 敬節氏に次のような症例がある 患者は七十四歳の老婦人で 二十年ほど前から便秘のくせがあって いつ も下剤を用いている 初診は 昭和三十二年五月三日で これより約一カ年 ほど前 はき気があって 医師にかかったところ 胃下垂症と診断せられた という いまは はき気がないが みずおちが重くときどき軽い痛みがくる 脉をみると 弦大で 血圧は最高一七四 最低九二である 腹診すると 胸脇苦満はなく 一体に緊張力が弱い 私はこれに麻子仁丸料を与えた 麻子仁丸料というのは 麻子仁丸を丸と せず 麻子仁丸の材料を煎剤として用いることをいう なお この場合 私 は別に甘草一 五を これに加えることにしている なおこの患者には 大 黄の量を特別に少なくして 一日量〇 三を用いた ところが これがたいへんよく効いて 毎日 大便が快通するようになり 服薬二十日で休薬した それから一年あまりたった昭和三十三年九月上旬に とつぜん この老婦人から葉書が来て 患者をひとり紹介するからよろしく たのむとあり その末尾に 昨年はお薬をいただき あれきり二十年来の便 秘が治りましたとあった 257

258 127 麻黄附子細辛湯 まおうぶしさいしんとう 出典 傷寒論 少陰病 始めて之を得 反って発熱し 脈沈なる証 少陰病篇 腹候 急性症には腹候によらず適応される もし 喘息などの慢性疾患に適用する場合には 腹力中等度前後 2-4/5 である 腹候図 気血水 気を主体に気血水 六病位 少陰病 脈 舌 脈は沈脈が原則であるが 一定の傾向に乏 しい 腹候 急性症には腹候に よらず適応される もし 喘息などの慢性疾患に適 用する場合には 腹力中 等度前後 2-4/5 である 口訣 最初から咽にチクチクする痛みがあるカゼ のどチクの風邪 によい 藤平健 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 悪寒 微熱 全身倦怠 低血圧で頭痛 めまいあり 四肢に疼痛冷感ある ものの次の諸症 感冒 気管支炎 b 漢方的適応病態 陽虚の表寒 より深い理解のために 花粉症に小青竜湯はしばしば用いられるが 効き目 がもう少しほしいときなどに麻黄附子細辛湯の応用も考慮する また気管支 喘息にも応用される このような場合には レセプトに適用の理由を注記す るのが望ましい 構成生薬 麻黄4 細辛3 附子1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補陽 辛温解表 利水 効果増強の工夫 1 単純に冷えに対する効果を増強する場合にはブシ末 調剤用 ツムラ を g加える 258

259 活用自在の処方解説 処方例 ツムラ麻黄附子細辛湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 127 分 3 3 日分 咳嗽に対する効果増強には 証に応じて半夏厚朴湯や麦門冬湯を合方 処方例 ツムラ麻黄附子細辛湯 ツムラ半夏厚朴湯 7.5g 㾹分 食前 5.0g 1-0-1)㾸 浮腫が明らかなら 五苓散を配する 処方例 ツムラ麻黄附子細辛湯 ツムラ五苓散 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 自汗がみられるときは 桂枝湯を合方 処方例 ツムラ麻黄附子細辛湯 ツムラ桂枝湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 感冒 流感 気管支炎 肺炎等で 脈沈 熱感乏しく 悪寒 頭痛 或は咳 或は関節痛があるもの 2 頭痛 頭寒 足冷のもの 3 気管支喘息で脈沈 冷え性のもの 4 副鼻腔蓄膿症で 脈沈 或は鼻がつまるだけ 或は薄い鼻水が出るもの 5 急に声がつぶれて出ぬものを治した例がある 6 三叉神経痛で 脈沈 冷え性のもの 7 夜尿症 ヒ ン ト 私に漢方を教えてくださった藤平健先生は本方をよく用いられ 先生の講 義や雑談にもよく本方の話題が登場した 先生はよくご自身の病気治療から貴重なヒントを得ることが多かった 昭 和 年の 漢方の臨床 に投稿された 感冒にいたぶられるの記 では 約 カ月のあいだ感冒に苦しめられた闘病記である そこでは 咽がチクチ クして発症した風邪に 葛根湯 小青竜湯 桂枝加厚朴杏仁湯 甘草附子湯 四逆湯 附子湯 大青竜湯 柴胡桂枝湯 大青竜湯再服 茯苓甘草湯 五苓散 柴胡桂枝湯再服 五苓散再服 もう数えるのは止めよう その後 週間して ついに十全大補湯で改善するのである このような自己治療体験の結果たどりついたのが 麻黄附子細辛湯による ノドチクの風邪の口訣であった 259

260 128 啓脾湯 けいひとう 出典 龔廷賢著 万病回春 食を消し瀉を止め 吐を止め疳を消し 黄を消し脹を消し 腹痛を定め 脾を益し胃を健やかにす 小児常に傷食を患えば 之を服したちどころに 愈ゆ 泄瀉小児科門 啓脾丸として書かれている 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 める 腹候図 気血水 気水を主体に気血水 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は淡白で胖大 舌苔は白 脈軟 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 心下痞䌤を認 める 口訣 本方は鶏鳴瀉 すなわち脾胃虚にしばしばみられる朝方の 結核性など の 慢性下痢に適用された 道聴子 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 やせて 顔色が悪く 食欲がなく 下痢の傾向があるものの次の諸症 胃 腸虚弱 慢性胃腸炎 消化不良 下痢 b 漢方的適応病態 脾胃気虚の下痢 すなわち 軟便 水様便あるいは不消化下痢の明らかな もの 構成生薬 蒼朮4 茯苓4 山薬3 人参3 沢瀉2 陳皮2 甘草1 蓮肉3 山査子2 単 位g より深い理解のために 本方は 半夏を除いた六君子湯に 蓮肉 山査子 山薬 沢瀉を加えたもの TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 補気健脾 理気化痰 止瀉 260

261 活用自在の処方解説 128 効果増強の工夫 下痢を主とする慢性炎症性疾患であると 著者は半夏瀉心湯を併用して改 善した経験を有する 虚寒証であると人参湯や真武湯を合わせる 処方例 ツムラ啓脾湯 ツムラ半夏瀉心湯 7.5g 㾹混合し分 食前 g㾸 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 虚証で 脾胃虚弱の水様性下痢症 小児の消化不良症 腸結核 病後の胃 腸の強壮剤 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 消化不良 慢性胃腸カタル 腸結核 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 消化不良症 ことに小児の 慢性胃腸炎 ことに慢性の水瀉性下痢 ヒ ン ト 本方は結核が国民病であった時代には腸結核に用いられた 矢数道明氏は そのような 例を 臨床応用漢方処方解説 で紹介している 一七歳の男子 戦前から肺結核で私のところで漢方の薬をのんでいた 私 が五年間戦地に行って帰国してみると 患者は大森海岸近くの焼け残ったア パートで静養していた 老父母の間の一人息子であった 戦後はすっかり衰 えて ときどき喀血を繰り返し 腸結核を併発して 暁方四時ごろになると ゴロゴロと腹が鳴って 水様の下痢が起こり 日に三 四回もあるという これではとても助かる見込みはなく 死期も近いと思われた ところが啓脾湯を与えたところ 大便が固まってきて だんだん太ってきた 胸部所見は空洞がいくつもあってひどかった そのうち抗生物質ができるよ うになり これを併用させたところ 大変よくなって すっかり一人前となり あの骸骨のような患者は めでたく結婚生活に入ることができた 母親が大 変よろこんでわざわざあいさつにきた これは腸結核のとき啓脾湯で生命をつなぎとめ その後抗生物質の力によっ て普通人と同じ生活ができるようになったわけである 261

262 262

263 活用自在の処方解説 133 障害 うわごと 興奮状態などを呈する 構成生薬 厚朴5 枳実3 大黄2 芒硝1.3 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 峻下熱結 より深い理解のために 基礎に炎症による脱水があるが 瀉下することによ り 劇的に状況を変じて 脱水の進行を防ぐことも本方の目的となる この方 法を 急下存陰 と呼ぶ だから 下痢に本方を適用するという選択があり得 るのである むろん本方を適用する場合 脈は有力である必要がある 効果増強の工夫 大承気湯は単独でも攻下の作用は十分と思われるが 女性では桃核承気湯 や通導散などを併用して積極的に血瘀を下して精神症状を改善する場合が ある 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 チフス 肺炎 流感 麻疹 脳炎 脳膜炎等で脈大 潮熱 自汗 大 便硬 或は腹満便秘 燥尿宿食 或は譫妄脳症あるもの 2 破傷風 小児ひきつけ等で痙攣し 脈沈実或は大 腹硬満のもの 3 気管支喘息 心臓喘息で脈沈実 腹満便秘のもの 4 脚気衝心で心中懊䇦 浮腫動悸 大小便閉渋 短気腹満のもの 5 消化不良 自家中毒 大腸炎 赤痢等で高熱 痙攣発作 脳症 腹堅満 或は粘液膿性下利 腹痛等を伴うもの 6 疝積とて腹満痛 心下堅硬 二便不利のもの 不食病に使つた例がある 7 常習便秘で脈沈実 腹満或は深部に抵抗強きもの 8 胃癌の類で飲食味なく 或は食中食後 頻りに白沫を吐し 或は嘈囃 胸を刺し 或は食物胸膈に停蝕して痛み 或は食後悪心懊䇦し 或は 吐せば反つて快く 腹裏強靭にして腫塊あるもの 類聚方広義 9 尿閉で下腹硬満 悶乱 大便秘結のもの 10 痔で頑固な便秘をし 肛門火のごとく痛むものを治した例がある 11 小児前歯遅きもの 咽に魚の骨が刺つたものを治した例がある 12 月経閉止し耳内乾燥するを治した例がある 13 頭痛 片頭痛 歯痛 肩背が強くこるもの等で 脈実便秘するもの 14 腰脚麻痺で腹中に堅塊があり 便秘 口燥脈実のもの 類聚方広義 15 発狂で 胸腹満便秘のもの 263

264 134 桂枝加芍薬大黄湯 桂枝加大黄湯 けいしかしゃくやくだいおうとう 出典 傷寒論 本太陽病 医反つて之を下し 因って腹満時に痛むものは 太陰に属す るなり 桂枝加芍薬湯これを主る 大実痛するものは 桂枝加大黄湯之を 主る 太陰病篇 腹候 腹力中等度またはやや軟 1-3/5 腹直筋 緊張や腹部膨満感を伴うことがある 腹候 図 気血水 気血が主体の気血水 六病位 太陰病 脈 舌 舌質は乾燥傾向 脈は浮 浮数 浮緩 腹候 腹力中等度または や や 軟 1-3/5 腹 直 筋 緊張や腹部膨満感を伴う ことがある 口訣 本方でなければならないという高齢者便秘が必ずある 道聴子 この方は温下の祖剤なり 浅田宗伯 熱性下痢 あるいは赤痢などにして 下痢すること一日に十数回 腹痛 甚だしく 脈浮数にして力なき証 奥田謙藏 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 比較的体力のない人で 腹部膨満し 腸内の停滞感あるいは腹痛などを伴 うものの次の諸症 1 急性腸炎 大腸カタル 2 常習便秘 宿便 し ぶり腹 b 漢方的適応病態 裏寒腹痛 すなわち 脾虚や気血不足のもので腹痛便秘あるいは熱痢ある もの 慢性便秘 急性下痢のいずれもにも用いられる より深い理解のために 裏急後重を伴う急性下痢の場合 大黄は消炎止瀉に 働く 構成生薬 芍薬6 桂皮4 大棗4 甘草2 大黄2 生姜1 単位g 264

265 活用自在の処方解説 134 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 緩急止痛 温中散寒 通便 効果増強の工夫 高齢者に用いる場合に 便通はつくものの腹満感がとれないという場合が あり 理気剤を少量混ずる 処方例 ツムラ桂枝加芍薬大黄湯 ツムラ半夏厚朴湯 5.0g㾹 5.0g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 急性腸炎 大腸炎で下痢腹痛 或は裏急後重するもの 2 便秘で平素胃腸が弱いもの 3 急性慢性虫垂炎 移動性盲腸等で 腹満腹痛 患部の抵抗強く便秘す るもの 4 麻疹で腹満痛 腰痛が甚いのに使つた例がある 5 てんかんで 胸満 口眼喎斜 角弓反張 涎沫を吐し背攣急するものに 大陥胸丸を兼用して治した例がある 6 不眠症で 腹中拘急 大便硬のものを治した例がある 7 炎症性の眼病で 赤腫 疼痛はげしきものに 腹満 拘攣 便秘を目 標に使つた例がある ヒ ン ト 浅田宗伯は本方を評して温下の祖剤なりとした 温下の剤とは 気血を補 すことと大便を通じさせることをともに行う剤であるということである 和 田東郭は大黄附子湯の方解で 細辛と附子で腹底に固着した痼疾を温めて浮 き立たせて 大黄で下すのであると明快に述べた この大黄附子湯も古典的 な温下の剤である 温下の剤が適する人は 通常の大黄甘草湯や承気湯類で便通を付けようと すると 腹がしぶったり 瀉下効果が強く出過ぎたりしやすいものである 冷え性の人や 腹力の平均以下の人 高齢者などに特にそのような例が多い 桂枝加芍薬大黄湯はそのような場合に重宝な薬である 265

266 135 茵䋄蒿湯 いんちんこうとう 出典 傷寒論 金匱要略 頭に汗出で 身に汗無く 小便利せず 渇して水漿を飲み 瘀熱 裏に ありて身に黄を発する証 傷寒論 陽明病篇 身黄み 橘子の色のごとく 小便利せず 腹微満する証 同上 寒熱して食せず 食すれば即ち頭眩し 心胸安からず 久久にして黄を 発する証 金匱要略 黄疸病篇 腹候 腹力は中等度以上 3-5/5 心下痞䌤を認 めることがある 腹候図 気血水 水主体の気血水 六病位 陽明病 脈 舌 舌質は紅 舌苔は黄膩 脈は滑数や弦滑数 腹候 腹力は中等度以上 3-5/5 心下痞䌤を認 めることがある 口訣 発黄を治する聖剤なり 世医は黄疸初発に茵䋄五苓散を用うれども非な り まずこの方を用いて下を取りて後 茵䋄五苓散を用う可し 浅田宗伯 本方は梔子䋬湯の去加方とみなす可きなり 奥田謙藏 本方は湿熱に広く用いてよい 中医処方解説 より深い理解のために 湿熱とは 1 温病中の 1 つ 症状は発熱 頭痛 身 重く痛む 腹満して食少ない 小便少なく黄赤色 舌苔は黄膩で脈は濡数など 2 湿邪と熱邪が合わさって起こした病証 例として 湿熱発黄 湿熱下痢 湿熱帯下など 漢方用語大辞典 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 尿量減少 やや便秘がちで比較的体力のあるものの次の諸症 黄疸 肝硬 変症 ネフローゼ じんましん 口内炎 b 漢方的適応病態 肝胆湿熱 すなわち 口が苦い 口がねばる 口渇があるが水分を欲しな い 頭汗 いらいら 体の熱感 悪心 嘔吐 食欲不振 油っこいものや 匂いで気分が悪くなる 胸腹部の膨満感 尿が濃い 便秘あるいは便がスッ キリでないなどの症候で 甚だしければ全身の黄疸 発熱などがみられる 266

267 活用自在の処方解説 135 構成生薬 茵陳蒿4 山梔子3 大黄1 単位g TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 清熱利湿 退黄 効果増強の工夫 肝機能の改善を目的に用いる場合に小柴胡湯を併用することがある 処方例 ツムラ茵䋄蒿湯 ツムラ小柴胡湯 5.0g㾹 分 5.0g㾸 食前朝夕 茵䋄蒿湯は瀉下作用があるので 便通により茵䋄蒿湯の割合を変更す る 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 黄疸で実証 発熱 小便不利し 或は口渇 頭汗 腹満 眩暈 便秘 等を伴うもの 2 じん麻疹 血清病 その他の瘙痒性発疹でかゆみが強く安眠できず 口渇 便秘 腹満 或は小便赤き等の裏の瘀熱症状があるもの 3 口内炎 舌炎 舌瘡 歯齦腫痛 眼目痛などで 発赤疼痛 時に出血 があり 不眠 煩渇 口躁 便秘 腹満 小便赤きなど裏熱症状を伴 うもの 4 子宮出血で前記瘀熱症状があるもの 5 腎炎 ネフローゼで 浮腫 口渇小便不利し 前記瘀熱症状があるもの 6 血の道症 更年期障害 卵巣機能不全 自律神経不安定症 ノイローゼ バセドゥ氏病等で 寒くなつたり熱くなつたりし 月経不順 不眠 不安 胸中苦悶 食欲不振 小便不利 便秘 手掌又は結膜黄色を帯 びるもの ヒ ン ト 本方は蕁麻疹に対する適応を有するので しばしば慢性皮膚疾患に応用さ れる 藤平健先生はアトピー性皮膚炎に本方を活用された 論文中で 茵䋄蒿湯 は実証で咽の渇きを訴える者の皮膚の異常 ことに皮膚のかゆみに対し と きに偉功を発揮する薬方である と述べている 267

268 136 清暑益気湯 せいしょえっきとう 出典 張三錫著 医学六要 長夏 湿熱大勝 人これに感じ 四肢困倦 身熱心煩 小便少なく 大 便溏し あるいは渇し あるいは渇せず 飲食を思わず 自汗するを治す これは 内外傷弁惑論 の清暑益気湯条 腹候 腹力中等度かやや軟 2-3/5 腹候図 気血水 気血が主体の気血水 六病位 少陽病 脈 舌 脈は弱 数の傾向 舌候は 紅舌やや乾燥 薄い黄苔 腹候 腹力中等度かやや 軟 2-3/5 口訣 李東垣の 脾胃論 に同名方 15味あり があるが 本方は 近製と称され より簡潔な内容で 夏まけには速効がある 浅田宗伯 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 暑気あたり 暑さによる食欲不振 下痢 全身倦怠 夏やせ b 漢方的適応病態 気津両傷 すなわち 疲労感 無力感 息切れ 食欲減退などの気虚の症 候と 口渇 咽の渇き 尿量減少などの津虚の症候があるもの 発熱 腹 痛 下痢などの湿熱の症候を伴うこともある 構成生薬 蒼朮3.5 人参3.5 麦門冬3.5 黄耆3 陳皮3 当帰3 黄柏1 甘草1 五 単位g 味子1 より深い理解のために 本方も 四君子湯や生脈散 人参 五味子 麦門冬 などが入る 生脈散の主治は気津両傷である 夏負け 注夏病 の専用薬 の ような趣の薬だが通年の服用を希望される方もいる TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 益気生津 清熱化湿 268

269 活用自在の処方解説 136 効果増強の工夫 倦怠感が強い場合には少量の附子を加えて用いる 処方例 ツムラ清暑益気湯 7.5g㾹 ブシ末 調剤用 ツムラ 1.5g㾸 分 食前 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 注夏病 夏やせ 夏まけ の専剤 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 夏まけ 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 虚弱者で汗かきの者の 夏やせ 夏まけ ヒ ン ト 清暑益気湯についての諸家の説 大塚敬節氏は 證候による漢方治療の実 際 に この方は俗にいう 夏やみ の薬で夏になると食が減じ 水っぽいもの をほしがり 手足がだるく 足のうらがほてり 時に下痢したり 大便がゆ るくなったりするものを目標として用いる 氏は 急性肝炎で 倦怠感が甚 だしく 食のすすまない者に この方を用いて著効を得たことがある とし ている 医方口訣集 で長沢道寿は 弁惑論 中の清暑益気湯について 本方は 医 学六要 のそれに比して 神麹 沢瀉 升麻 青皮 葛根などが加わっている 長夏の湿熱のために四肢が困倦し 精神短少し 動作にものうくなるなどの 弁惑論の条文を述べ 自分がこれを用いる口訣に つあるとして 気弱な人 が暑湿にあって熱証を現わして虚熱を兼ねる場合と 老人や虚人が長夏で養 生の薬を要するときに試みに用い経過がよい場合であると述べている ともに参考になる説である 269

270 137 加味帰脾湯 かみきひとう 出典 龔廷賢著 済生全書 思慮して脾をやぶり 血を摂すること能わず 血妄行をいたし あるい は下り あるいは健忘 䇝忡 驚悸して寐られず 発熱盗汗し あるいは 心脾傷り痛み 嗜臥少食 大便不調 あるいは血虚発熱し あるいは肢体 重く痛むを治す 婦人月経不調 赤白帯下し あるいは晡熱内熱 あるい は瘰癧流注して消散潰斂する能わず あるいは思慮脾を傷りて瘧痢をなす には 柴胡 梔子を加えて加味帰脾湯と名づく 巻六 健忘門 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 臍上悸あるい は臍下悸を認めることがある 腹候図 気血水 気血水いずれも関わる 六病位 少陽病 脈 舌 舌質は淡白 脈は細弱 無力 口訣 腹候 腹力は中等度前後 2-4/5 臍上悸あるい は臍下悸を認めることが ある 帰脾湯の証に熱を兼ねるものに用う 甲賀通元 本剤が適応となる病名 病態 a 保険適応病名 病態 効能または効果 虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症 貧血 不眠症 精神不安 神経症 b 漢方的適応病態 心脾両虚の肝火旺 すなわち 疲れやすい 倦怠無力感 元気がない 息 切れ 食欲不振 腹が張る 軟便や水様便などの脾気虚の症候と 健忘 頭がふらつく ボーッとする めまい感 動悸 眠りが浅い 多夢などの 心血虚の症候がみられるもので さらにイライラ のぼせ ほてり 胸苦 しいなどの肝火旺の症候を伴うもの 中医処方解説 より 構成生薬 黄耆3 柴胡3 酸棗仁3 蒼朮3 人参3 茯苓3 遠志2 山梔子2 大棗2 当帰2 甘草1 生姜1 木香1 竜眼肉3 単位g より深い理解のために 帰脾湯に柴胡 山梔子が加わり 精神症状や肩こり 身体上部の熱感など疏肝清熱作用を期待したもの 270

271 活用自在の処方解説 137 TCM Traditional Chinese Medicine 的解説 気血双補 補脾 養心安神 疏肝清熱 効果増強の工夫 酸棗仁湯を合方して 不眠などに効果増強を期待することが可能である 処方例 ツムラ加味帰脾湯 ツムラ酸棗仁湯 7.5g 㾹分 食前 㾸 5.0g 本方で先人は何を治療したか 矢数道明著 臨床応用漢方処方解説 より 以下の帰脾湯の証に やや熱状の加わったもの すなわち 腸出血 子宮 出血 胃潰瘍 血尿等による貧血と衰弱 白血病 バンチ病 健忘症 嚢 腫腎 不眠症等に用いられ また神経性心悸亢進症 食欲不振 月経不順 ヒステリー 神経衰弱 遺精 慢性淋疾 瘰癧の潰瘍等 龍野一雄編著 改訂新版漢方処方集 より 神経衰弱 不眠症 盗汗 健忘症 神経性心悸亢進症 胃弱 熱病回復期 月経不順 血の道症 桑木崇秀著 新版漢方診療ハンドブック より 帰脾湯を使うべき状態で のぼせ イライラの強い場合 ヒ ン ト 大塚敬節氏の 症候による漢方治療の実際 には 加味帰脾湯の症例が紹介 されている 加味帰脾湯は帰脾湯に梔子と柴胡を加えた方で 帰脾湯の証で熱状のある ものに用いる つまり本方は貧血 健忘 動悸 神経過敏 不眠などのあるものに用いる方で 老人などで 物忘れをして困るというものによく この症状があって 眠れ ないものに用いる 老人でなくとも 虚弱な人を目標にする また軽い中風で 物忘れをし 言語のもつれるものに用いる 43歳の男子 腹膜炎にかかったことがある 元来 平素から虚弱な体質で あるが 年前より朝 夕に頭痛があり そのとき悪心を訴える 疲れ ると背がいたむ 甘い菓子を好む 脈は弱く 腹力もなく 腹部で振水音を きく 私はこれに半夏白朮天麻湯を与えた これで やや睡眠状態はよいようで あったが 週間ほどのむと また逆転してねむれなく 背がはるという そこで枳縮二陳湯にしてみたが これも効がない 桂枝加龍骨牡蠣湯 甘 草瀉心湯 神効湯など次々と用いたが どれもあまりきかない そこで加味帰脾湯とした のぼせ 頭痛 不眠 疲労感と胃腸虚弱な点を 考慮して この処方を選んだのである これをのみ始めてから 週間ほど たつと安眠できるようになり 血色もよくなった しかしまだ時々頭痛がある 271

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273 活用自在の処方解説 138 本方で先人は何を治療したか 龍野一雄著 新撰類聚方 増補改訂版より 1 咽頭炎 喉頭炎 扁桃腺炎等で咽痛し発熱しても 他の表証がないもの 2 肺壊疽 肺膿瘍 腐敗性気管支炎などで 咳嗽 膿性喀痰があるもの 初期又は軽症 ヒ ン ト 桔梗湯は桔梗と甘草の二味からなる簡潔な処方である 古来簡潔な処方ほ ど効果が鋭く早く顕れるといわれている 次の大塚敬節氏の経験はまさにそ の実例とも思われる 症候による漢方治療の実際 からの引用である 傷寒論には 甘草湯でよくならない咽痛にこの方を用いることになってい るので 急性咽頭炎にも用いるが 扁桃炎や扁桃周囲炎で悪寒や熱のないも のに用いてよい ある日 のどが腫れ塞って 口を開けることもできず 飲食もできないと いう青年を診察した 脈は大きいが 熱も悪寒もない 歯の間からのぞいて みると 扁桃周囲炎らしい そこで桔梗湯を与えたところ なかなか呑めな いので 少しずつ口に入れて を 分の 口ずつ呑み込むことにした すると一日分 位のんだ時 急に嘔逆の状になって のどに力が入ったとたんに いちどに 膿血が口から流れ出て それきり治ってしまった 周囲炎の患部 が破潰したのである 桔梗には排膿の作用もあり 催吐作用もあるから こ んな結果になったのであろう 私が漢方を独学で勉強している時 咽喉結核の患者に 桔梗湯を与えて はげしい喀血を誘発せしめたことがあった 桔梗を多量に用いると 食欲を 害したり 悪心を起こすことがあるから注意しなければならない 273

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