F54D3D DD700104A2

Similar documents
最高裁○○第000100号

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

最高裁○○第000100号

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

最高裁○○第000100号

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

判決【】

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

平成  年(オ)第  号

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

PowerPoint プレゼンテーション

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

民事訴訟法

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

0A8D6C A49256C A0

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

21855F41214EA DB3000CCBA

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

最高裁○○第000100号

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

税研Webセミナー利用規約

平成  年(オ)第  号

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

裁判年月日 平成 25 年 9 月 19 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 24( ワ )26067 号 事件名 区分所有建物使用差止請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA 事案の概要 原告が 被告に対し 管理組合集会決議がないのに住宅以外の用途

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

〔問 1〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している

インターネット上の誹謗中傷対応の基礎(Web公開用)

平成  年(行ツ)第  号

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

滞納処分によって財産の差押えを受け 被告がその売却代金等の配当を受けたことについて 本件各申告の一部は錯誤に基づく無効なものであり これを前提としてされた滞納処分も無効であるから 被告は法律上の原因なく配当を受けているとして 不当利得返還請求権に基づき 前記第 1の請求記載の各金員の支払を求めている

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

めた事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実 ) (1) 当事者ア原告は, 映画プロデューサーである ( 甲 1,2) イ被告は, 新聞社であり, ウェブサイト 朝日新聞デジタルAJW を運営するものである (2) 原告の著

平成  年(あ)第  号

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

市町村合併の推進状況について

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

競走馬の馬名に「パブリシティ権」を認めた事例

(Microsoft Word -

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

<4D F736F F D208FA495578CA0904E8A FD782C982A882AF82E991B98A F9E8A7A82CC8E5A92E82096F6E05694FC89C02E646F63>

<4D F736F F D A A835290B695FA BC96BC8F88979D8DCF816A2E646F63>

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

H 刑事施設が受刑者の弁護士との信書について検査したことにつき勧告

Transcription:

平成 14 年 ( ワ ) 第 27910 号著作権に基づく差止等請求事件口頭弁論終結日平成 15 年 6 月 10 日判決原告株式会社ダイヤモンド社同訴訟代理人弁護士浅倉隆顕被告株式会社合人社計画研究所同訴訟代理人弁護士石田天洋同西島良尚主文 1 被告は, 別紙目録記載の記事を複製し又はその複製物を頒布してはならない 2 被告は, 上記 1 記載の複製物を廃棄せよ 3 被告は, 原告に対し, 金 1 万 0500 円及びこれに対する平成 14 年 9 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 原告のその余の請求を棄却する 5 訴訟費用は, 原告に生じた費用の3 分の2を原告の負担とし, その余は被告の負担とする 6 この判決は, 第 1ないし第 3 項に限り, 仮に執行することができる 事実及び理由第 1 請求 1 主文第 1,2 項と同旨 2 被告は, 原告に対し, 金 201 万 0500 円及びこれに対する平成 14 年 9 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 1 争いのない事実等 (1) 原告は, 雑誌, 図書の発行及び販売等の事業を営む株式会社であり, ビジネス情報週刊誌 週刊ダイヤモンド を発行している 被告は, ビル マンション等不動産の総合管理等を目的とする株式会社である (2) 原告は, 別紙書面目録記載の記事 ( 以下 本件記事 という 甲 4) の著作権を有している 原告は, 被告に対し, 本件記事の複製について, 明示的な許諾を与えたことはない (3) 原告が発行する 週刊ダイヤモンド 2000 年 2 月 19 日号に, 被告が, 管理を委託されている管理組合の理事長を名誉毀損で訴え, 係争中であるとの記事が掲載された ( 乙 11) 同 2001 年 3 月 31 日特大号には, マンションが危ない! と題する記事が掲載され, その中で, 被告は, 大手マンション管理会社ベスト ランキング の37 位に位置づけられていた ( 乙 12) 同 2001 年 9 月 8 日号では, 被告が管理組合の理事長を名誉毀損で訴えた前記訴訟において被告の請求が棄却され, マンション管理組合の資金が被告の社長名義の口座を通っていたことが明らかになったとする記事が掲載された ( 以下 別件記事 という 乙 13) 被告は, 被告の系列会社であるウェンディ企画株式会社 ( 以下 ウェンディ企画 という ) が発行する月刊マンション通信誌 ウェンディ 第 148 号 ( 平成 13 年 9 月 15 日発行 ) において, 週刊ダイヤモンドマンション関連記事の丸投げ デッチ上げ判明 という見出しで, 別件記事は, 致命的な事実誤認に基づいた資料や原資料の図表を改ざんするなどして構成されているという反論記事を掲載した ( 甲 13, 乙 14) さらに, 同記事は, インターネット上のウェブサイトWendy-netにおいても, 掲載された ( 甲 14) その後, 週刊ダイヤモンド 2002 年 2 月 16 日特大号には, 沈むマンション市場 と題する特集に本件記事が掲載され, その中で, 被告は, 20 02 年版大手マンション管理会社ベスト ランキング の4 位に位置づけられた ( 甲 4) 原告は, 平成 14 年 3 月 13 日, ウェンディ企画に対し, ウェンディ の上記記事が原告の名誉を毀損すると主張して損害賠償等請求訴訟を提起した ( 東京地方裁判所平成 14 年 ( ワ ) 第 5176 号事件 ) これを受けて, 被告は, 同年 9 月 20 日, 原告に対し, 別件記事が被告の名誉を毀損するとして損害賠償等請求訴訟を提起した ( 東京地方裁判所平成 14 年 ( ワ ) 第 20513 号事件 )

(4) 被告は, 平成 14 年 5 月 23 日ころ, 東京都杉並区 ( 以下略 )( 以下 本件マンション という ) の管理組合の平成 14 年度理事長である A( 以下 A という ) から, 被告のマンション管理に関する参考資料の請求を受けた なお, A は, 原告の社員であった 被告担当者 B( 以下 B という ) は,A に対し, 被告の経歴書や毎月の管理に関する書類の見本一式等に加え, 本件記事の複製物 1 部を郵送した B は, 同年 8 月 24 日,A 宅を訪れ, 本件マンションの管理組合理事会に対して, 被告のマンション管理の方針, 方法などについて説明及び質疑応答を行い, この際, 本件記事の複製物を理事の人数分である 4 部頒布した B は, 同年 9 月 1 日, 高井戸社会教育会館において, 本件マンションの区分所有権者に対して, 被告のマンション管理の方針, 方法などについて説明及び質疑応答を行い, この際, 本件記事の複製物を 30 部頒布した 2 本件は, 原告が, 被告が著作権者である原告に無断で本件記事を複製し複製物を頒布したことが複製権の侵害に当たると主張して, 被告に対し, 著作権法 11 2 条 1 項,2 項に基づき, 本件記事の複製及び複製物の頒布の差止め並びに複製物の廃棄を求めるとともに, 民法 709 条に基づき, 著作権侵害による損害賠償を求める事案である 3 争点 (1) 本件記事の複製に関して, 原告の黙示の承諾があったか (2) 被告による本件記事の頒布行為は, 正当防衛に該当するか (3) 原告の本訴提起は権利濫用に当たるか (4) 損害の発生の有無及びその額 (5) 過失相殺の有無 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点 (1)( 黙示の承諾 ) について 被告の主張 原告の発行する 週刊ダイヤモンド のような雑誌における取材記事については, 取材源である当事者の協力がないと作成できないものである このような場合, 少なくとも取材協力した記事に関しては, その取材源である当事者は, 著作権の一部を担っているといえる 本件のように, 取材に協力した被告が, その協力した記事の部分について,35 部だけ複製 頒布した行為は, 軽微な態様で, しかも, 逆に 週刊ダイヤモンド の宣伝になりこそすれ到底損害を与えるとは考えられない態様であるから, 社会通念上及び信義則上, 記事作成者の黙示の承諾があるか, 承諾が推定される 原告の主張 取材源である当事者が, 著作権の一部を担っているとの被告の主張は, 法律的な根拠がなく, 主張自体失当である (2) 争点 (2)( 正当防衛 ) について 被告の主張 原告は, 別件記事等の事実に反する記事により, 被告の名誉を毀損し, 現在も同記事を CD-ROM や D-VISION というインターネットサービス上で掲載することにより, 被告の名誉を毀損し続けている 被告は, このような原告の行為により, 管理委託契約の解約を迫られたり, 契約が締結されそうになる間際にマンションの管理組合理事等から別件記事を示されて契約が頓挫するなどの損害を被っていた 被告担当者 B は, 原告による名誉毀損行為が継続しておりこれによって被告の社会的評価が害されるおそれを避けるため, 必要かつ相当な名誉回復手段として, 本件記事の複製 頒布をしたものである すなわち,B が, 同じ 週刊ダイヤモンド が被告をランキングの比較的上位に掲載した本件記事を 35 部だけ複製 頒布したのは, 原告の名誉毀損による不法行為に対し, 被告の名誉を防衛するためにやむを得ずなした行為であって, 正当防衛 ( 民法 720 条 ) として, 違法性が阻却される 原告の主張 正当防衛が認められるには,1 侵害の急迫性,2 他人の不法行為の存在, 3 自己又は第三者の権利を防衛するためであること,4 やむことを得ずしてなした行為であることが必要であるところ, 被告の行為は, いずれの要件も欠くから, 正当防衛に当たらない 仮に, 別件記事について名誉毀損が成立するとしても, 同記事が掲載され

た雑誌の発売日である平成 13 年 9 月 1 日から相当期間経過することによって, 侵害の急迫性は失われ, 被告に正当防衛が成立する余地はない また, 他人の不法行為が成立するためには, 客観的に明白な不法行為がなければならないが, 別件記事が不法行為に該当するかどうかは裁判所の判断を待たなければ分からないのであるから, 客観的に明白な不法行為があったとはいえない 防衛するためとは, 権利侵害との因果関係及び防衛の認識のことをいうが, 本件記事の複製物の頒布は, 被告の営業の一環であって, 被告が主張する名誉毀損とは因果関係もなければ, 防衛の認識もない 本来, 被告は, 名誉を毀損されたと考えるのであれば, 司法手続による救済を求めるべきであり, しかも, 被告は, 平成 13 年 9 月下旬ころから現在に至るまで, ウェンデイ の前記記事を掲載し, 逆に原告の名誉を毀損することによって防衛行為を行っているのであるから, さらに複製権侵害という客観的に明白な違法行為をする必要はなく, やむことを得ずしてなした行為とはいえない (3) 争点 (3)( 権利濫用 ) について 被告の主張 原告が侵害されたと主張する利益は, 被告が複製した本件記事 35 部の使用料 1 万 0500 円相当にすぎない 他方, 被告が, 原告の別件記事により被った損害は, その比ではない また, 平成 14 年 5 月 23 日の時点で, 既に原告は被告に対し, 訴訟を提起していたのであるから, 原告と信義則上同一視できる原告社員の A は,B から本件記事の複製物を 1 部送付された時に,B に注意するなどの対応ができたはずである しかし,A は, その後も約 4 か月間,B に対し, 多くの資料を作成させるように仕向け,2 度も B に本件記事の複製物を持参させるに任せており, 係争中の相手に対し, おとり捜査的で著しく不公正な対応を行ったものである さらに, 本件記事は, 被告の原告に対する情報提供等の協力がないと成立しえなかった記事であり, 取材協力者によるある程度の使用は, 許容されていると信じても社会通念上やむを得ず, その侵害の程度 態様は軽微である したがって, 仮に, 原告に軽微な損害賠償請求権があるとしても, 当事者の客観的利益状況及び原告社員 A の意図から, 原告の損害賠償請求は, 権利の濫用である 原告の主張 本件で比較されるべきは, 原告の複製権に基づく請求を認めることによって原告が得る利益と被告が被る直接的な損害であって, 被告が主張する名誉毀損による損害は, 間接的なものにすぎず, 比較の対象足り得ない A は, 被告に対し, 管理の内容を説明する資料を請求したのであって, 本件記事を違法に複製せよなどとは一言も言っていない 被告は, 頼まれもしないのに, 自ら本件記事の複製物を送付してきたのである A は, 名誉毀損に関する原被告間の係争に関して, 全く無関係であり, 原告と信義則上同一視できるはずがない したがって, 原告の請求は, 権利濫用とはいえない (4) 争点 (4)( 損害 ) について 原告の主張 ア著作権法 114 条 2 項に基づく損害原告は, D-VISION というデータベースサービスをインターネット上で提供しており, その中で 週刊ダイヤモンド の記事を PDF ファイルで配信している D-VISION の料金体系は, 法人会員については, 最低利用料金が月額 2000 円であり, 月額の情報料金が 2000 円を超える場合は, 最低利用料金は発生しないが,2000 円未満の場合は, 最低利用料金が発生する そして, 利用料金は,1 頁 100 円,2 頁 150 円,3 頁 200 円,4 頁 25 0 円,5 頁 300 円,6 頁 350 円,7 頁以降一律 400 円である 被告が複製したのは 5 頁であるから,1 部当たり 300 円である そして, 被告は, 合計 35 部頒布したから, 損害額は,1 万 0500 円である (300 円 35 部 =1 万 0500 円 ) イ懲罰的賠償 ( 慰謝料 ) 著作権法 114 条 2 項は, 権利者に最低限の損害賠償額を保障するものと解されているが, 侵害者は, 当初から許諾を得て利用していた者と同等の負担をすれば済むので, いわゆる侵害得となってしまうおそれがある 被告は, 原告との間の東京地方裁判所平成 14 年 ( ワ ) 第 5176 号事件に

おいて, 週刊ダイヤモンド 2001 年 3 月 31 日特大号における 大手マンション管理会社ベスト ランキング で 37 位にランキングされたことに対して, マンション業界の常識からすると, 採点項目や配点が極めて不合理, ずさんな評価, マンション管理業界に対する知識のない者が短期間にデッチ上げた記事 と罵倒しておきながら, 本件記事の 2002 年版大手マンション管理会社ベスト ランキング において 4 位にランキングされるや, 原告に無断で本件記事の複製を行い, 自らの営業の手段として用いており, このような被告について, 決して侵害得が許されてはならない したがって, 原告は, 被告に対し, 上記アに加え, 慰謝料として 200 万円の支払を求める 被告の主張 原告の主張は, いずれも争う 懲罰的損害賠償なる我が国には存在しない制度を持ち出すのは失当である また, 財産的損害については特段の事情がない限り慰謝料が認められることはあり得ないことであり, 本件においては, 原告に悪質な誘因行為があり, 被告担当者が原告の名誉毀損記事の影響を払拭するためやむを得ない状況の下でやむを得ない態様で複製したものであるから, 慰謝料が認められるべき事情はない (5) 争点 (5)( 過失相殺 ) について 被告の主張 仮に, 上記被告の (3) の主張が認められないとしても, 本件マンションの管理組合の責任者としての権限を持ち, 常に被告担当者との連絡窓口となっていた原告社員の A が, 被告担当者から最初の複製物 1 部の交付を受けたときに警告を発するなどしてそれ以降の損害を防止できるにもかかわらず, あえて以後も 2 度にわたり, 部数を増やすような状況を作出し, 本件記事の複製物を交付させ続けたことは, 損害の拡大に被害者側が寄与した過失がある このようなおとり捜査的で不公正な態様での被害者側の寄与があったことからすれば, 損害の公平な分担の観点から, 相当程度の過失相殺が認められるべきである 原告の主張 被告の主張は, 争う 第 3 当裁判所の判断 1 前記争いのない事実に証拠 ( 甲 3,5,6,10,15,16, 乙 1 ないし 8,10) 及び弁論の全趣旨を総合すれば, 次の事実が認められる (1) 本件マンションの管理組合の平成 14 年度理事長である A は, 原告の出版事業局第一編集部に所属する社員であった ( 甲 15) 出版事業局は, 書籍 ( 単行本 ) の企画を行っている部署であり, 週刊ダイヤモンド の企画 編集 制作等は, ビジネス情報事業局の週刊ダイヤモンド編集部及び同制作部において行われている ( 甲 16) A は, 平成 14 年 ( 以下, 特に断らない限り, 月日は平成 14 年のものである )5 月 23 日ころ, 被告に架電し, 本件マンションの管理委託業務の見積りを依頼すると同時に, 被告の管理に関する参考資料を請求した 被告の東京本店一課課長代理 B は, そのころ,A に対し, 被告の経歴書や毎月の管理に関する書類の見本一式等に加え, 本件記事の複製物 1 部 ( 表紙について A4 のもの 1 枚,50 頁ないし 53 頁については,50 頁と 51 頁が見開きで A 3 のもの 1 枚,52 頁と 53 頁が見開きで A3 のもの 1 枚の合計 3 枚で, 上から表紙,50 頁 51 頁,52 頁 53 頁の順番で左詰で並べられ, 左上の部分がホチキスで留められたもの 甲 3) を郵送した A は,5 月 29 日,B に対し, 上記見積りに必要な書類を送付し,6 月 1 5 日の理事会までに見積りや被告の管理業務仕様書を用意するよう依頼した ( 乙 1) A は,6 月 14 日,B に対し, 見積りをファックスするよう依頼し ( 乙 2 の 1),B は, 概算見積書を提出した ( 乙 2 の 2) B は,7 月 2 日ころ,A に対し, 管理に関するご提案書 と題する書面を提出した ( 乙 3) A は,7 月 22 日,B に対し, 今後の予定を連絡するとともに, 居住者にアンケート調査をするための資料の追加送付を依頼した この依頼書には, アンケートの際の居住者用参考資料として, 御社の資料 ( パンフレット ) を 2 セット ( 含提案書 A3 版 ) 下記まで御送付いただきたく存じます と記載されている ( 乙 4)

(2) A は,8 月 14 日,B に対し, 理事会との面談及びプレゼンテーション会への出席及び管理業務仕様書の作成を依頼した ( 乙 5 の 1 ないし 7) A は,8 月 19 日,B に対し, 同月 24 日の理事会との面談の案内をした この連絡書面には, 御用意いただきたいもの : 先日のファックスでお願いした改訂版管理委託内容, 仕様書, お見積り との記載がある ( 乙 6) B は, 理事会との面談のために概算見積書の修正版を作成し ( 乙 7), 同月 24 日,A 宅における理事会において, 理事らとの間で, 被告のマンション管理の方針, 方法などについて説明及び質疑応答を行った B は, この際, 理事 4 名各自に対し, 概算見積書等の説明資料を渡したが, その中に本件記事の複製物も入っていた (3) A は,8 月 26 日,B に対し, プレゼンテーション会の連絡をするとともに, プレゼンテーション会用資料についてどの程度のものを用意できるか尋ね, 仕様, 点検回数等については他社とあまり変わらないので, 御社の特徴や他社と特に違う点の資料をご用意いただくのがいいかと思いますが, いかがでしょうか と提案した ( 乙 8 の 1 ないし 5) B は, これを受けて,8 月 31 日, 最終の 管理に関するご提案書 を作成し ( 甲 10, 乙 10),9 月 1 日, 高井戸社会教育会館において, 本件マンションの居住者に対して, 被告のマンション管理の方針, 方法などについて説明及び質疑応答を行い, この際, 最終提案書とともに本件記事の複製物を 30 部頒布した 本件マンションの戸数は 30 戸であるが, このときの参加者は 13 世帯 17 名だったため, その場で配られなかった残りは理事会が預かった 2 争点 (1)( 黙示の承諾 ) について本件記事の複製について明示的な許諾がなかったことは当事者間に争いがなく, また, 本件全証拠によっても, 原告が被告に対し, 本件記事の複製を黙示に承諾したと認めるに足りる証拠はない 甲第 4 号証によれば, 本件記事のうち, 2002 年版大手マンション管理会社ベスト ランキング は, 大手マンション管理会社のアンケート回答結果をもとに得点化して作成されたものであり, 本件記事は, 取材源である当事者から情報提供を受けているものの, 原告が独自の観点から情報を整理し記述したものであって, 被告が著作した部分は存在しないことが認められる 被告も, 原告が本件記事の著作権者であることは認めているのであるから, 被告が取材に協力したというその一事をもって, 著作権の一部を担っているといえないことは明らかである また, 被告は, 取材に協力したこと及び本件記事の複製部数が比較的少ないことから, 原告の承諾が推定される旨主張するが, これより原告の承諾を推定することはできないし, 違法性を欠くということもできない したがって, 黙示の承諾があったとする被告の主張は, 理由がない 3 争点 (2)( 正当防衛 ) について被告は, 本件記事の複製及び頒布行為が原告の別件記事に対する正当防衛行為である旨主張する しかしながら, そもそも本件記事は, 別件記事とは全く無関係な記事であり, 本件記事を複製 頒布することにより, 別件記事の内容が覆ったり, 被告の名誉が回復されるわけではないから, 本件記事の複製行為をもって, 被告が主張する原告の名誉毀損行為に対する防衛行為ということはできない また, 前記 1 で認定した事実からすると,B は, 本件記事を被告の営業活動のために使用したものであり, 別件記事に対する防衛の意思があったということもできない さらに, 別件記事が平成 13 年 9 月 8 日発売号に掲載されたものであるのに対し, 本件における被告の複製行為は, それから 8 か月余り経った平成 14 年 5 月 23 日ころに行われているのであるから, 侵害の急迫性は既に失われているというべきである 被告は, 別件記事に対しては, 実際に被告が行ったように, 名誉毀損に基づく謝罪広告等を請求する訴えを提起して公の救済を求めることも, 別件記事に対する反論記事を書いて名誉の回復を図ることもできたのであり, 別件記事と無関係な本件記事を複製し頒布する必要性は認められず, やむを得ない行為であったということはできない たとえ, 早急に被告の名誉を回復する措置が必要であったとしても, 別件記事とは無関係な本件記事を複製するという間接的な行為をもって, 民法 720 条所定の正当防衛行為とはいい得ない したがって, 被告の行為は, 正当防衛行為とは認められず, 被告の主張は理由がない

4 争点 (3)( 権利濫用 ) について本件全証拠によっても, 原告の本件損害賠償請求が権利濫用であると認めるに足りない 被告が本件記事を複製した部数は, 合計 35 部であり, 本件マンションの理事ないし居住者に頒布されていることから, その著作権侵害の程度は必ずしも重大なものとはいえないものの, 侵害の程度 態様が軽微であるからといって, 直ちに違法性が阻却されるわけではない 被告は, 原告の主張する利益に比して原告の名誉毀損により被った被告の損害が過大である旨主張するが, 前記 3 のとおり, 被告の行為は正当防衛行為とは認められず, 本件記事の複製物は当該名誉毀損記事とは無関係であるから, そもそも名誉毀損の点は利益衡量の対象足り得ない また, 被告は,A が B に対し, 損害を拡大するよう仕向けた旨主張するが, 前記 1 で認定したとおり,A が B に請求した資料は, 見積書, 提案書, 管理業務仕様書, 被告会社の資料 ( パンフレット ) 及び管理委託内容等であり, いずれも管理会社の選択に当たって必要な資料であって, 管理組合の理事長として当然請求すべきものであった また,A が B に対し, ことさら本件記事の複製物を再度請求したとの事実を認めるに足りる証拠はない そうすると,B は, 自らの判断で本件記事を複製し, 頒布したものであり,A が B に対し, 損害を拡大するよう仕向けたということはできない 前記 1 認定の事実によれば,A は, 原告の社員ではあるが, 役員ではなく, 週刊ダイヤモンド の編集 制作とも無関係な出版事業局第一編集部に所属しており, 原告社員としての立場を離れて, 本件マンションの管理組合の理事長という個人的な立場において B と交渉していたということができる そうすると,A に, 本件記事の複製頒布につき原告の承諾があったか否かを確認し,B に対し注意を与えるべき法律上の義務があったということもできない 5 争点 (4)( 損害 ) について (1) 著作権法 114 条 2 項に基づく損害について甲第 12 号証及び弁論の全趣旨によれば, 原告が, インターネット上で提供している D-VISION NET というデータベースサービスでは, 週刊ダイヤモンド の記事を PDF ファイルで配信するにあたって, 法人会員のサービス料金が定められており, その法人会員 料金表によると, 最低利用料金が月額 2000 円 ( ただし, 月額の情報料金が 2000 円を超える場合は発生しない ) であり, 利用料金は,1 頁 100 円,2 頁 150 円,3 頁 200 円,4 頁 250 円,5 頁 300 円,6 頁 350 円,7 頁以降一律 400 円であることが認められる したがって, 原告は, 週刊ダイヤモンド の記事の複製を許諾するにあたって, 上記の金額を受けているのであるから, 著作権法 114 条 2 項に規定される その著作権の行使につき受けるべき金銭の額 として, 上記料金表に基づき算定するのが相当である 本件において, 被告が複製したのは,5 頁であるから,1 部当たり 300 円である そして, 被告は, これを合計 35 部複製し頒布したのであるから,30 0 円に 35 を乗じて得られた 1 万 0500 円が, 原告が受けた損害額と認められる (2) 懲罰的賠償 ( 慰謝料 ) について我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は, 被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し, 加害者にこれを賠償させることにより, 被害者が被った不利益を補てんして, 不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり, 加害者に対する制裁や, 将来における同様の行為の抑止, すなわち一般予防を目的とするものではない したがって, 不法行為の当事者間において, 被害者が加害者から, 実際に生じた損害の賠償に加えて, 制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは, 我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものである ( 最高裁平成 5 年 ( オ ) 第 176 2 号同 9 年 7 月 11 日第二小法廷判決 民集 51 巻 6 号 2573 頁参照 ) したがって, 原告の懲罰的賠償を求める主張は, 我が国の公の秩序に反するから, 理由がない 原告は, 上記賠償金を慰謝料として請求するが, 本件において, 原告は, 複製権という財産権の侵害のみを主張しているところ, 本件複製権侵害行為によって原告が著しい精神的苦痛を被り, その結果, 財産的損害の賠償に加えて, さらに慰謝料を認めなければならないような事情が存するとは認められない したがっ

て, この点に関する原告の主張は理由がない (3) したがって, 原告の受けた損害は, 前記 (1) の額をもって填補するのが相当であり, それ以上の賠償額を請求する原告の主張は, 理由がない 6 争点 (5)( 過失相殺 ) について A は, 原告の役員ではなく, 週刊ダイヤモンド の編集 制作とは無関係の部署に所属していた上, 原告社員としての立場を離れて, 本件マンションの管理組合の理事長という個人的な立場において交渉したことは, 前記 4 で認定したとおりである たとえ, 原告が主張するとおり,A が原告社員という立場から, 原告とウェンディ企画との係争を知っていたとしても, 本件マンションの管理組合の理事長という個人的な立場において交渉した A に, 本件記事の複製頒布につき原告の承諾を得たか否かを確認し,B に対し注意を与えるべき法律上の義務があるということはできず,A が B に対し, 無断複製物と知りながら, ことさら本件記事の複製物を再度請求した事実も認められないから,A の対応が不公正な態様であるとまではいえない B が本件記事の複製物を交付したのは,B 自身の判断であり,A がそれに対し, 異議を唱えなかったからといって, 損害の拡大に寄与したということはできない したがって, 被告の過失相殺の主張は, 理由がない 7 結論よって, 原告の請求は, 著作権法 112 条 1 項,2 項に基づき, 本件記事の複製及び複製物の頒布の差止め及び廃棄を求め, 民法 709 条に基づき, 著作権侵害による損害賠償として 1 万 0500 円及びその遅延損害金の損害賠償を求める限度において, 理由があるからこれを認容し, その余は棄却することとして, 主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 47 部 裁判長裁判官髙部眞規子 裁判官東海林保 裁判官瀬戸さやか ( 別紙 ) 雑誌の名称発行所発行日対象範囲 目録 週刊ダイヤモンド 2002 年 2 月 16 日特大号株式会社ダイヤモンド社平成 14 年 2 月 16 日表紙及び50 頁ないし53 頁