Microsoft Word - rp1507b(北村).docx

Similar documents
Microsoft Word - rp1501c(北村).docx

Microsoft Word - Report (北村)最終版2.docx

Microsoft Word - wt1608(北村).docx

調査実施の背景 2015 年 1 月からの相続税における基礎控除の引き下げを前に 孫等への教育資金一括贈与の非課税制度に対する社会的反響が続いています 一般社団法人信託協会のとりまとめによれば この制度に基づく教育資金贈与信託の受託契約件数は取り扱い開始以降増加を続け 2014 年 9 月現在で 8

Microsoft Word - ○Report白書1804修正3(北村).docx

Microsoft Word 年1月(リリース).doc

<4D F736F F D20819D819D F F9193C18F FEA816A8DC58F4994C52E646F6378>

Microsoft Word - rp1410b(水野).docx

Microsoft Word - notes①1210(的場).docx

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

Microsoft Word - notes①1301(小谷).docx

「学び直し」のための教育訓練給付制度の活用状況|第一生命経済研究所|的場康子

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

出産・育児調査2018~妊娠・出産・育児の各期において、女性の満足度に影響する意識や行動は異なる。多くは子どもの人数によっても違い、各期で周囲がとるべき行動は変わっていく~

三世代で暮らしている人の地域 親子関係 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 < 減り続ける > 戦後 高度経済成長を迎えた我が国においては 産業構造の変化により都市化 工業化が進む中で 多くの人が地方から都市に移動し核家族化が進んだ 低成長経済に移行した後

PowerPoint プレゼンテーション

man2

結婚しない理由は 結婚したいが相手がいない 経済的に十分な生活ができるか不安なため 未婚のに結婚しない理由について聞いたところ 結婚したいが相手がいない (39.7%) で最も高く 経済的に十分な生活ができるか不安なため (2.4%) 自分ひとりの時間が取れなくなるため (22.%) うまく付き合え

平成29年高齢者の健康に関する調査(概要版)

15 第1章妊娠出産子育てをめぐる妻の年齢要因

Microsoft Word - rp1504b(宮木).docx

Microsoft Word - リリース doc

2. 調査結果 1. 回答者属性について ( 全体 )(n=690) (1) 回答者の性別 (n=690) 回答数 713 のうち 調査に協力すると回答した回答者数は 690 名 これを性別にみると となった 回答者の性別比率 (2) 回答者の年齢層 (n=6

調査実施の背景 2015 年 4 月から子ども 子育て支援新制度 以下 新制度 が施行され 保育事業の拡大が図られます そのため保育人材の確保が重要な課題となっており 保育士確保のための取組が強化されています しかし保育士のみでは必要量を満たせないことから 子育て分野で働くことに関心のある地域住民に

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 30~60 代の既婚男女 2. サンプル数 800 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2006 年 1 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 769 名 (96.1%

調査の結果 問 1 あなたの性別は 調査に回答していただいた生徒の性別は 男 が問 % 女 が 49.5% です 男 女 問 2 あなたは, 生まれてからずっと鈴鹿市に住んでいますか 生まれたときから鈴鹿市に ずっと住ん

25~44歳の出産・子育ての意識と実態

1. 交際や結婚について 4 人に3 人は 恋人がいる または 恋人はいないが 欲しいと思っている と回答している 図表 1 恋人が欲しいと思わない理由は 自分の趣味に力を入れたい 恋愛が面倒 勉強や就職活動に力を入れたい の順に多い 図表 2 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚

結婚総合意識調査2018

Microsoft Word - rp1410a(的場).docx

第 1 章アンケートの概要 1-1 調査の目的 1-2 対象者 1-3 調査方法 1-4 実施期間 1-5 調査結果サンプル数 第 2 章アンケート調査結果 2-1 回答者自身について (1) 問 2: 年齢 (2) 問 5: 同居している家族 2-2 結婚について (1) 問

出産・育児・パートナーに関する実態調査(2015)

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

<4D F736F F D208DC590565F CC97B78D7382C98AD682B782E992B28DB88CB48D652E646F6378>

初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 問 33 問 8- 母 ) 図 95. 初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 母親 ) 初めて親となった年齢 を基準に 10 代で初めて親となった 10 代群 平均出産年齢以下の年齢で初めて親となった平均以下群 (20~30 歳 ) 平均

表 110 性 別子からの仕送りの有無別個人数 子からの仕送り ありなし 昨年収入ありと答えた人の 男性 歳 歳 歳 歳 歳 0 77

質問 1 企業 団体にお勤めの方への質問 あなたの職場では定年は何歳ですか?( 回答者数 :3,741 名 ) 定年は 60 歳 と回答した方が 63.9% と最も多かった 従業員数の少ない職場ほど 定年は 65 歳 70 歳 と回答した方の割合が多く シニア活用 が進んでいる 定年の年齢 < 従業

調査実施の背景 わが国は今 人口構造の変化に伴う労働力の減少を補うため 女性の活躍を推進し経済成長を目指しています しかし 出産後も働き続ける女性は未だ多くないばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も少ない状況が続いています 女性の活躍を促進させるためには 継続就業のための両立支援策ととも

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

「終活」に関する意識調査

Press Release 2019 年 4 月 18 日 楽天インサイト株式会社 もらいたいプレゼント トップは 母への感謝の言葉 家族旅行 が昨年に比べ増加 母の日に関する調査 URL: 楽天インサイト

Microsoft Word - ○201701Report(的場)校正会議再修正版.docx

人生100年時代の結婚に関する意識と実態

スライド 1

Microsoft Word - Notes1104(的場).doc

PowerPoint プレゼンテーション

第4章妊娠期から育児期の父親の子育て 45

2017 年 2 月 27 日株式会社カカクコム 価格.com 生命保険 に関する調査結果を発表加入率は約 8 割 若年層ほど低い傾向 加入中の生命保険は終身タイプがトップ将来への不安?20 代の加入目的 老後保障 貯蓄 が他世代よりも高い結果に補償内容への理解度 十分理解できていない加入者が 53

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

目次 I. 転入者 転出者転出者アンケート実施概要 調査の目的 調査の内容 調査の方法等... 3 II. 調査の結果 回収の状況 転入者調査... 4 (1) 回答者の属性について... 4 (2) 転入前 転入後のお

目次 Ⅰ 調査概要 1 1. 調査目的 1 2. 調査項目 1 3. 調査設計 1 4. 回収結果 1 5. 報告書の見方 1 Ⅱ 調査結果 2 1. 回答者の属性 2 (1) 性別 2 (2) 年代 2 (3) 結婚の状況 2 (4) 働き方 3 (5) 世帯構成 3 (6) 乳幼児 高齢者との同

◎公表用資料

「いい夫婦の日」アンケート結果 2014

質問 1 敬老の日 について (1) 贈る側への質問 プレゼントは何を贈る予定ですか? ( 回答者数 :4,450 名 ) (2) 贈られる側への質問 プレゼントは何がほしいですか? ( 回答者数 :1,061 名 ) 昨年同様 贈る側 贈られる側ともに 食事 グルメ がトップ 贈られる側は 旅行

<4D F736F F D DE97C78CA78F418BC B28DB895F18D908F DC58F49817A2E646F63>

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

困窮度別に見た はじめて親となった年齢 ( 問 33) 図 94. 困窮度別に見た はじめて親となった年齢 中央値以上群と比べて 困窮度 Ⅰ 群 困窮度 Ⅱ 群 困窮度 Ⅲ 群では 10 代 20~23 歳で親となった割 合が増える傾向にあった 困窮度 Ⅰ 群で 10 代で親となった割合は 0% 2


調査概要 調査対象 : 東京都 愛知県 大阪府 福岡県の GF シニアデータベース 有効回答件数 :992 件 標本抽出法 :GF RTD( ランダム テレフォンナンバー ダイアリング ) 方式 調査方法 : アウトバウンド IVR による電話調査 調査時期 : 平成 23 年 8 月 4 日 (

<4D F736F F D F838B837E E A838A815B83588DC58F4994C52E646F6378>

長く働き続けるための「学び直し」の実態と意識

1 調査目的 今年度策定する 津山市総合戦略 で 子どもを産み 育てやすい環境づくりに 向けた取組みを進めるにあたり 出産 子育ての現状を把握するために実施した 2 調査内容の背景と設問設定理由国では 出生率を 2.07 まで高めることで 2060 年に現状の社会構造を維持できる人口 1 億人程度を

平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 日常生活に関する事項

表 6.1 横浜市民の横浜ベイスターズに対する関心 (2011 年 ) % 特に何もしていない スポーツニュースで見る テレビで観戦する 新聞で結果を確認する 野球場に観戦に行く インターネットで結果を確認する 4.

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

1. 職場愛着度 現在働いている勤務先にどの程度愛着を感じているかについて とても愛着がある を 10 点 どちらでもない を 5 点 まったく愛着がない を 0 点とすると 何点くらいになるか尋ねた 回答の分布は 5 点 ( どちらでもない ) と回答した人が 26.9% で最も多かった 次いで

調査の概要 1 調査目的 人口減少社会に関する意識の傾向を分析するため 全世代を対象に 子育てや親世代と の同居 近所づきあいや移住に関する意識調査を実施した 2 調査方法 アンケート調査をエム アール アイリサーチアソシエイツ株式会社に委託し インタ ーネットモニター会社に登録しているモニターに対

2008/3/4 調査票タイトル : ( 親に聞く ) 子どものダイエットについてのアンケート 調査手法 : インターネットリサーチ ( ネットマイル会員による回答 ) 調査票種別 : Easyリサーチ 実施期間 : 2008/2/22 14:28 ~ 2008/2/22 21:41 回答モニタ数

基本情報

質問 1 敬老の日 のプレゼントについて (1) 贈る側への質問 敬老の日 にプレゼントを贈りますか? ( 回答数 :11,202 名 ) 敬老の日にプレゼント贈る予定の方は 83.7% となり 今年度実施した父の日に関するアンケート結果を約 25% 上回る結果となった 敬老の日 父の日 贈らない

調査概要 調査名 : おせち料理と正月に関する意識調査 調査方法 :WEB モニターによるアンケート 対象 :20~60 歳代男女 実施期間 : 平成 27 年 10 月 9 日 ~10 月 12 日 サンプル数 :1,000 人 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 女性 100 人

Microsoft Word - REPORT07.1-2月号(鈴木)訂正版.doc

Microsoft Word - Notes①1201(小谷).doc

Microsoft Word - Focus12月(的場).doc

日本医師会男女共同参画についての男性医師の意識調査 クロス集計

平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(概要版)2/4

電通総研、「女性×働く」調査を実施

出産・育児に関する実態調査(2014)

Microsoft Word 年10月(HP).doc

第15回出生動向基本調査

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D D8297EE90A291D182CC8F5A88D38EAF92B28DB8838A838A815B83588DC58F4994C5>

「夫婦関係調査2017」発表

02世帯

~「よい夫婦の日」、夫婦間コミュニケーションとセックスに関する実態・意識調査~

1-1_旅行年報2015.indd

<4D F736F F F696E74202D C83728E8B92AE8AC28BAB82C68E8B92AE91D C98AD682B782E9837D815B F B835E C837294D E89E695D2816A2E707074>

< 調査概要 ( 経営者版 )> 調査期間 : 平成 29 年 8 月 2 日 ( 水 )~10 月 20 日 ( 金 ) 調査地域 : 全国 調査方法 : 当社営業職員によるアンケート回収 回答数 :13,854 部無作為に 5,000 サンプル ( 男性 :4,025 名 :975 名 ) を抽

第 3 章各調査の結果 35

『いい夫婦の日』夫婦に関するアンケート調査 【プレゼント編】調査報告書

(2) あなたは選挙権年齢が 18 歳以上 に引き下げられたことに 賛成ですか 反対ですか 年齢ごとにバラツキはあるものの概ね 4 割超の人は好意的に受け止めている ここでも 18 歳の選択率が最も高く 5 割を超えている (52.4%) ただ 全体の 1/3 は わからない と答えている 選択肢や

平成23年度 旭区区民意識調査

調査の実施背景 戦後 日本の平均寿命は飛躍的に延び 平成 年 7 月に厚生労働省が発表した 平成 年簡易生命表 によると 65 歳の平均余命は 男性は 8.86 歳 女性は.89 歳となっています 約 0 年あるセカンドライフをより有意義に 楽しく暮らすためには人生設計や事前の準備が必要なのではない

スライド 1

【訂正版】出産・育児に関する実態調査2016」発表。約8割が「自然分娩」で出産し、約4人に1人は立ち会い出産を実施。若い人ほど立ち会い出産を経験する割合が高い。出産時の入院・分娩費用は平均42.5万円

Microsoft Word - news1207.doc

1. 結婚についての意識 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚はしたほうがよい ) の割合は男性の方が高い一方 自身の結婚に対する考えについて いずれ結婚するつもり と回答した割合は女性の方が高い 図表 1 図表 2 未婚の方の理想の結婚年齢は平均で男性が 29.3 歳 女性は 2

Transcription:

祖父母による孫育て支援の実態と意識 祖父母にとっての孫育ての意味 主任研究員北村安樹子目次 1. はじめに 16 2. 祖父母による孫育ての実態 18 3. 孫育てをめぐる祖父母の意識 20 4. まとめ 23 要旨 1 全国の孫がいる55~74 歳の男女 1,000 名を対象にアンケート調査を実施し 孫の世話や孫の親からの子育ての相談の実態とともに 祖父母が孫育ての支援をすることについての意識をたずねた 2 最も親しくしている孫について 孫の母親に頼まれて面倒をみた経験がある人は祖父で 59.8% 祖母では73.0% を占めた 孫と同居する場合や30 分未満の範囲に近居する祖父母では 経験者が8 割を超えた 3 子育ては 祖父母を頼らず 親自身で行うべきだ という考え方にそう思うと答えた人は祖父母の約 8 割を占めた このような考えをもつ人は 孫の面倒をみた経験をもつ人の8 割近くを占めた 4 孫の世話は大変だが 娘や息子のためには引き受けるべきだ という考え方にそう思うと答えた人は祖父母の約 7 割を占めた このような考えをもつ人は 孫の面倒をみた経験をもつ人では8 割前後 面倒をみた経験をもたない人でも6 割前後を占めた 5 孫の親が祖父母に子育てを頼ることと 祖父母が孫育てを引き受けることをめぐって 祖父母の6 割近くは 親自身で行うべきだが 引き受けるべき という複雑な意識を抱いている ただし 若い祖父母には 孫の世話を許容する人も一定の割合を占めることが確認された キーワード : 祖父母 孫 孫育て 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 15

1. はじめに (1) 祖父母のライフデザインと孫育てわが国の60 歳以上の男女を対象とする内閣府の意識調査によると 老後における子どもや孫との望ましいつき合い方について いつも一緒に生活できるのがよい と考える人は次第に減少し ときどき会って食事や会話をするのがよい と考える人が増えている ( 内閣府 2011) 以前は前者の関係を支持する人が最も多かったが 2000 年代に入ってからは後者の関係を支持する人が上回るようになった つまり 日本の高齢者が理想とする老後生活は 子どもや孫といつも一緒に生活する 密着型 から 親子双方がそれぞれのプライベートな時間 空間を確保した上で ときどき会ってともに過ごす時間を楽しむ 交流型 に転換したと考えられる ( 北村 2014) このような価値観の変化には 次のような時代背景が関連していると思われる 第一に 時代の変化とともに 人々が現役時代から生活設計を行えば 老後の生活費や介護を子や孫に頼ることなく過ごせる世の中になってきたことである 第二は これまで 高齢期 としてひとくくりに捉えられてきた60 歳以降の人生が長くなり 医療 介護等が必要になる前の健康寿命期をできるだけ長く維持するために多様な活動をしたり 生活費を積み増すために働き続けたいと考える人が増えていることである つまり 高齢者にとって 老後 子や孫とどのような距離感でつきあっていくのかは 長くなった高齢期の働き方や過ごし方をめぐる自身のライフデザインによって 多様なものに広がりつつある 60 歳以上の男女の意識にこのような大きな変化が生じている一方で 現在子育て中の親にとって祖父母は 依然子育ての重要なサポート資源として機能している実態がある 子どもがいる1 万組以上の夫婦から回答を得た内閣府の調査によると 親からの子育て支援の度合いについて 母親では とてもよく支援をしてもらっている または よく支援をしてもらっている と答えた割合が57.3% であり 全く支援をしてもらっていない または あまり支援をしてもらっていない と答えた割合を大幅に上回る ( 図表 1) これらの実態には地域差もみられ 北陸が64.1% と最も高いが 最も低い首都圏でも54.5% と半数を超えている 以上の背景をふまえ 当研究所では全国の孫がいる55~74 歳の男女 1,000 名を対象に 祖父母による孫育て支援の実態を明らかにするためのアンケート調査を行った この調査では祖父母から孫や孫の親への経済的支援の実態等についてもたずねており これらの結果については北村 (2015) にまとめている 一方 本稿では 祖父母による孫育ての実態のうち 孫の世話という物理的な支援のほか 孫の親の子育ての相談にのるといった精神的な支援の実態についてみる また 親が孫育てを祖父母に頼ることや 祖父母が孫育てを引き受けることについての祖父母自身の考えについても明らかにする 16 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

全国 (n=12,177) 17.3 40.3 20.4 12.9 9.1 57.6 < 地域ブロック別 > 図表 1 母親からみた祖父母からの子育て支援の度合い ( 全国 地域ブロック別 ) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 北海道 (n=537) 16.9 39.8 22.2 14.2 7.8 56.7 東北 (n=656) 19.2 41.6 19.8 10.4 9.0 60.8 北関東 (n=471) 15.9 40.3 18.7 12.3 12.7 56.2 首都圏 (n=3,963) 15.7 38.8 20.7 14.0 10.8 54.5 北陸 (n=393) 18.6 45.5 19.1 11.7 5.1 64.1 中部 (n=1,854) 19.0 40.9 20.1 12.0 8.0 59.9 近畿 (n=2,373) 17.2 40.2 21.8 12.1 8.7 57.4 中国 四国 (n=945) 19.4 42.5 18.3 13.2 8.6 61.9 九州 沖縄 (n=985) 18.0 40.7 18.7 13.9 8.7 58.7 とてもよく よく どちらとも あまり 全く 支援をして 支援をして いえない 支援をして 支援をして もらっている もらっている もらっていない もらっていない 注 : 内閣府 都市と地方における子育て環境に関する調査報告書 2014 年 3 月より筆者作成 調査対象者は第 1 子が0~18 歳 で 妻が20~49 歳の夫婦 調査時期は2011 年 11 月 17 日 ~28 日 調査方法は インターネット アンケート 夫側 妻側両方 の両親が他界している人は除外 また 支援をしてもらっている 計 は とてもよく支援をしてもらっている と よく支援をし 支援をしてもらっている 計(2) 調査概要調査概要は図表 2のとおりである 対象者は事前調査で孫がいると回答した人のなかから 性年代別にほぼ均等の数になるよう割付を行って計 1,000 名とした ただし 55~59 歳の男女については 事前調査において孫がいると答えた人が他の年代に比べて少なかったため 60~74 歳の各年代に比べて回答者数が少なくなっている 回答者の主な属性は図表 3の通りである 回答者の平均年齢は65.1 歳であり 平均で1 人あたり2.5 人の孫がいる ( 図表省略 ) なお 初孫が生まれた時点の平均年齢を最年長の孫の学齢に基づいて推計したところ 男性が58.0 歳 女性が56.0 歳であった ( 図表省略 ) 図表 2 調査の概要 調査対象全国の孫がいる55~74 歳の男女 調査方法インターネット調査 ( 株式会社クロス マーケティングのモニター ) サンプル数 1,000 名 調査時期 2014 年 11 月 5 日 ~7 日 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 17

経験あり 計Report 図表 3 回答者の主な属性 n % n % 性別 男性 500 50.0 孫の人数 1 人 329 32.9 女性 500 50.0 2 人 246 24.6 年代 55-59 歳 178 17.8 3 人 166 16.6 60-64 歳 275 27.5 4 人 147 14.7 65-69 歳 274 27.4 5 人以上 112 11.2 70-74 歳 273 27.3 最年長の孫 就園前 184 18.4 配偶 既婚 ( 配偶者あり ) 876 87.6 の学齢 園児 170 17.0 状況離別 死別 ( 配偶者なし ) 124 12.4 小学生 370 37.0 孫との 同居 67 6.7 中高生 196 19.6 同別居別居 933 93.3 大学生以上 80 8.0 注 : 学齢が 大学生以上 には 学校を卒業している 孫を含む 2. 祖父母による孫育ての実態 (1) 孫の面倒をみた経験はじめに 祖父母による孫の世話の実態をみる ( 図表 4) 父親の依頼で面倒をみた図表 4 孫の親に頼まれて 孫の面倒をみた経験 ( 性別 孫との居住関係別 孫の親の続柄別 ) 45.9 22.7 31.4 現在ある 0% 過去にある 20% 40% これまでにない 60% 80% 100% 全体 (n=1,000) 44.7 44.7 21.7 21.7 33.6 33.6 66.4 祖父 (n=500) 42.0 42.0 17.8 17.8 40.2 40.2 59.8 祖母 (n=500) 47.4 47.4 25.6 25.627.0 27.0 73.0 < 孫との居住関係別 > 同居 (n=66) 72.7 13.6 72.7 13.6 13.6 13.6 86.4 近居 30 分未満 (n=319) 66.5 66.5 17.9 15.7 17.9 15.7 84.3 別居 2 時間未満 (n=303) 40.6 40.6 23.4 23.4 36.0 36.0 64.0 別居 2 時間以上 (n=312) 20.5 25.6 53.8 53.8 46.2 < 孫の母親の続柄別 > 実子 (n=440) 33.6 33.6 19.8 19.8 46.6 46.6 53.4 実子の配偶者 (n=558) 18.5 14.3 14.3 67.2 32.8 注 : 最も親しい孫についての回答 実子の配偶者 (n=440) 36.4 36.4 18.6 18.6 45.0 45.0 55.0 実子 (n=558) 51.4 51.4 24.2 24.2 24.4 24.4 75.6 全体 (n=1,000) 25.1 16.7 58.2 58.2 41.8 祖父 (n=500) 23.2 14.2 14.2 62.6 37.4 祖母 (n=500) 27.0 19.2 53.8 53.8 46.2 < 孫との居住関係別 > 同居 (n=66) 39.4 39.4 12.1 12.1 48.5 48.5 51.5 近居 30 分未満 (n=319) 38.6 38.6 16.3 16.3 45.1 45.1 54.9 別居 2 時間未満 (n=303) 22.1 16.8 16.8 61.1 38.9 別居 2 時間以上 (n=312) 11.2 11.2 17.9 17.9 70.8 29.2 < 孫の父親の続柄別 > 現在ある 過去にある これまでにない 母親の依頼で面倒をみた経験経験18 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

経験あり 計Report 回答者のうち 孫の母親に頼まれて孫の面倒をみた経験がある人 ( 現在ある 過去にある の合計割合 以下同じ ) は66.4% となっている 居住関係別にみた場合 同居や近居 30 分未満の人では8 割を超えるが 別居 2 時間未満の人では6 割強 別居 2 時間以上の人では46.1% にとどまる また 孫の親の続柄別にみると 母親が嫁の人 (55.0%) より娘の人 (75.6%) の方が 面倒をみた経験がある人の割合は大幅に高い これらの傾向は 孫の父親の依頼で面倒をみた経験に関してもおおむね共通する ただし 父親の依頼で面倒をみた経験がある人は41.8% であり 母親の依頼に比べて 20ポイント以上も少なかった (2) 孫の親からの子育ての相談にのった経験次に 祖父母が 孫の親からの子育ての相談にのった経験についてみる ( 図表 5) 図表 5 孫の親からの子育ての相談にのった経験 ( 性別 孫との居住関係別 孫の親の続柄別 ) 現在ある過去にあるこれまでにない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 (n=1,000) 31.5 31.5 15.0 15.0 53.5 53.5 46.5 祖父 (n=500) 21.8 11.0 11.0 67.2 32.8 祖母 (n=500) 41.2 41.2 19.0 19.0 39.8 39.8 60.2 < 孫との居住関係別 > 同居 (n=66) 47.0 47.0 13.6 13.6 39.4 39.4 60.6 近居 30 分未満 (n=319) 37.6 37.6 18.5 18.5 43.9 43.9 56.1 別居 2 時間未満 (n=303) 26.4 26.4 14.5 59.1 59.1 40.9 別居 2 時間以上 (n=312) 26.9 26.9 12.2 60.9 60.9 39.1 < 孫の母親の続柄別 > 実子の配偶者 (n=440) 22.0 11.1 11.1 66.8 33.2 実子 (n=558) 39.1 39.1 18.1 18.1 42.8 42.8 57.2 全体 (n=1,000) 7.7 13.4 13.4 7.7 78.9 78.9 21.1 7.6 祖父 (n=500) 11.6 11.6 7.6 80.8 80.8 19.2 祖母 (n=500) 15.2 15.2 7.8 77.0 77.0 23.0 < 孫との居住関係別 > 7.8 9.1 同居 (n=66) 19.7 9.1 71.2 28.8 近居 30 分未満 (n=319) 17.2 10.3 10.3 72.4 27.6 別居 2 時間未満 (n=303) 11.2 11.2 7.6 7.6 81.2 81.2 18.8 別居 2 時間以上 (n=312) 10.3 10.3 4.8 84.9 84.9 15.1 < 孫の父親の続柄別 > 4.8 実子 (n=440) 18.2 9.3 9.3 72.5 27.5 実子の配偶者 (n=558) 9.7 9.7 6.5 83.9 83.9 16.1 6.5 現在ある 過去にある これまでにない 注 : 最も親しい孫についての回答 母親からの相談にのること父親からの相談にのること第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 19

そう思わない 計Report 回答者のうち 孫の母親からの子育ての相談にのった経験がある人は46.5% となっている 居住関係別にみた場合 同居や近居 30 分未満の人では半数を超えるが 別居 2 時間未満や別居 2 時間以上の人では4 割前後にとどまる また 孫の親の続柄別にみると 母親が実子の配偶者の場合 (33.2%) より実子の場合 (57.2%) の方が 相談にのった経験をもつ人の割合が大幅に高い これらの傾向は 孫の父親に関してもおおむね共通するが 孫の父親からの子育ての相談にのった経験がある祖父母は21.1% と 孫の母親からの場合に比べて20ポイント以上低い 父親の場合 祖父母にとって最も親しい孫であっても 世話の面だけでなく相談の面でも 祖父母を頼りにすることは母親に比べて少ないことがうかがえる 3. 孫育てをめぐる祖父母の意識 (1) 子育てを祖父母に頼ることへの意識次に 親が子育てを祖父母に頼ることや 祖父母が孫の世話を引き受けることについて 回答者がどのような考えをもっているのかをみる 図表 6は 子育ては 祖父母を頼らず 親自身で行うべきだ という考え方につい 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図表 6 そう思う 計全体 (n=1,000) 31.3 48.6 15.4 4.7 79.9 20.1 祖父 (n=500) 34.4 48.2 12.8 4.6 82.6 17.4 祖母 (n=500) 28.2 49.0 18.0 4.8 77.2 22.8 < 年代別 > 子育ては 祖父母を頼らず 親自身で行うべきだ ( 性別 年代別 孫の面倒をみた経験別 ) 55-59 歳 (n=178) 21.3 50.0 22.5 6.2 71.3 28.7 60-64 歳 (n=275) 25.8 51.3 16.0 6.9 77.1 22.9 65-69 歳 (n=274) 30.7 53.3 12.8 3.3 83.9 16.1 70-74 歳 (n=273) 44.0 40.3 12.8 2.9 84.2 15.8 < 母親の依頼で面倒をみた経験別 > 経験あり (n=664) 25.2 51.8 17.6 5.4 77.0 23.0 経験なし (n=336) 43.5 42.3 11.0 3.3 85.7 14.3 < 父親の依頼で面倒をみた経験別 > 経験あり (n=418) 24.2 52.9 17.2 5.7 77.0 23.0 経験なし (n=582) 36.4 45.5 14.1 4.0 82.0 18.0 そう思う どちらかといえばそう思う どちらかといえばそう思わない そう思わない 20 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

そう思わない 計Report てどう思うかをたずねた結果である これをみると そう思うと答えた人 ( そう思う どちらかといえばそう思う の合計 以下同じ) は79.9% を占め 祖父母の約 8 割が子育てを祖父母に頼らず 親自身で行うべきだとの考えをもっていることがわかる このような意識をもつ人は 祖母 (77.2%) より祖父 (82.6%) で 若い祖父母より年配の祖父母で多くなっている また 実際に母親や父親の依頼で孫の面倒をみた経験をもつ祖父母の8 割近くが 本来であれば 祖父母を頼らず 親自身で行うべきだという考えをもっていることも確認された (2) 孫の世話を引き受けることへの意識次に 祖父母が孫の世話を引き受けることについての意識をみる 図表 7は 孫の世話は大変だが 娘や息子のためには引き受けるべきだ という考え方についての回答結果である これをみると そう思うと答えた人は71.7% であり 約 7 割の祖父母が 孫の世話は大変であっても 引き受けるべきだと考えていることがわかる このような意識をもつ人は 年配の祖父母より若い祖父母で多くなっている また 実際に母親や父親の依頼で孫の面倒をみた経験をもつ人の8 割前後が 孫の世話は大変だが 引き受けるべきだという考えをもっていることも確認された 図表 7 孫の世話は大変だが 娘や息子のためには引き受けるべきだ そう思う 計0% 20% 40% 60% 80% 100% 全体 (n=1,000) 12.3 59.4 22.1 6.2 71.7 28.3 祖父 (n=500) 13.0 57.6 22.8 6.6 70.6 29.4 祖母 (n=500) 11.6 61.2 21.4 5.8 72.8 27.2 < 性 年代別 > ( 性別 年代別 孫の面倒をみた経験別 ) 55-59 歳 (n=178) 12.9 65.7 18.0 3.4 78.7 21.3 60-64 歳 (n=275) 13.5 57.5 21.1 8.0 70.9 29.1 65-69 歳 (n=274) 13.1 59.1 23.0 4.7 72.3 27.7 70-74 歳 (n=273) 9.9 57.5 24.9 7.7 67.4 32.6 < 母親の依頼で面倒をみた経験別 > 経験あり (n=664) 15.5 64.0 16.4 4.1 79.5 20.5 経験なし (n=336) 6.0 50.3 33.3 10.4 56.3 43.8 < 父親の依頼で面倒をみた経験別 > 経験あり (n=418) 16.5 64.6 16.3 2.6 81.1 18.9 経験なし (n=582) 9.3 55.7 26.3 8.8 64.9 35.1 そう思う どちらかといえばそう思う どちらかといえばそう思わない そう思わない 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 21

(3) 孫育てをめぐる複雑な思い図表 8 孫の親が子育てを祖父母に頼ることと 祖父母が孫の世話を引き受けることでは 回答者は孫の親が祖父母に子育についての考え方 ( 全体 ) てを頼ることと 祖父母が孫の世話を引頼ってよい ( 単位 :%) き受けることの双方についてどのようなが 引き受けなくてよい考え方をもっているのだろう 2.7 頼ってよい図表 8は 先にみた 子育ては 祖父し 引き受け母を頼らず 親自身で行うべきだ といるべき 17.4 親自身で行う考え方への回答と 孫の世話は大変だうべきだが 引き受けるが 娘や息子のためには引き受けるべき親自身で行べき 54.3 だ という考え方への回答を組み合わせうべきであたものである 全体で最も多かったのは り 引き受けなくてよい双方の設問にそう思うと答えた 親自身 25.6 で行うべきだが 引き受けるべき であり 54.3% を占めた 回答者の半数強は 孫の親が子育てを祖父母に頼ることと 祖父母が孫の子育てを引き受けることをめぐって 本来であれば 祖父母を頼らず 親自身で行うべきだという考えを抱きながらも 一方では娘や息子のためには引き受けるべきだとする複雑な意識を抱いていることがわかる これに次いで多かったのは 前者の設問にはそう思う 後者の設問にはそう思わないと答えた 親自身で行うべきであり 引き受けなくてよい であり 25.6% であった これらの人々は祖父母を頼ることと祖父母が引き受けることの双方を許容しない立場の考えをもっている なお 前者の設問にそう思わない 後者の設問にそう思うと答えた 頼ってよいし 引き受けるべき という考えの人は17.4% であった ここで 祖父母が孫の世話を引き受ける場合の意識に注目するため 全体で最も多かった 親自身で行うべきだが 引き受けるべき と 頼ることと引き受けることの双方を許容する 頼ってよいし 引き受けるべき と答えた人の割合を主な属性別に比較する ( 図表 9) まず 親自身で行うべきだが 引き受けるべき と答えた人は 性別 年代別 孫の面倒をみた経験別のいずれの比較においてもおおむね半数を超えている 実際に 孫の親の依頼で孫の世話を引き受けた経験をもつ祖父母においても 6 割前後がこのような複雑な意識をもっていることがわかる 一方 頼ってよいし 引き受けるべき と答えた人は 年配の祖父母より若い祖父母で多く 55-59 歳では27.0% を占める この割合は 親自身で行うべきだが 引き受けるべき と答えた人に比べれば20ポイント以上も低い しかし 若い祖父母のなかには 孫の親が子育てを祖父母に頼ることと 祖父母が孫の子育てを引き受けることの双方を許容する立場の考えをもつ人が一定の割合を占めることが確認された 22 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

図表 9 親自身で行うべきだが 引き受けるべき 頼ってよいし 引き受けるべき と答えた人の割合 ( 性別 年代別 孫の面倒をみた経験別 ) 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) 55.8 14.8 祖父 (n=500) 52.8 51.7 52.7 20.0 祖母 (n=500) 27.0 55-59 歳 (n=178) 親自身で行うべきだが 引き受けるべき 18.2 60-64 歳 (n=275) 56.6 55.3 15.7 65-69 歳 (n=274) 12.1 70-74 歳 (n=273) 58.6 経験あり (n=664) 20.9 頼ってよいし 引き受けるべき 45.8 経験なし (n=336) 10.4 60.0 経験あり (n=418) 21.1 50.2 経験なし (n=582) 14.8 < 年代別 > < 母親の依頼で < 父親の依頼で 面倒をみた経験別 > 面倒をみた経験別 > 4. まとめ (1) 親の子育て支援者としての祖父母今回の調査の結果 祖母の7 割以上が孫の母親の依頼で孫の世話をした経験を 祖母の約 6 割が孫の母親の子育ての相談にのった経験をもっていることが確認された なかでも祖母は 孫の世話といった側面だけでなく 子育ての相談相手という精神的な側面でも孫の親の重要な支援者となっている実態が確認された 祖母と孫世帯が距離的に離れて住んでいる場合に比べて 近い範囲に住んでいる場合には このような傾向が特に顕著にみられた 冒頭で紹介した内閣府の調査では 子どもの世話をしてくれる人や子育ての相談相手が多い人ほど親は子育てをしやすいと感じていることが示されている 今回の調査では子育てをめぐる祖父母以外の支援資源の実態をたずねてはいないが 支援の選択肢の中で祖父母がどのような位置づけにあるのかは興味深い たとえば今回の調査において 祖父母が最も親しくしている孫の場合であっても 父親の依頼で祖父母が孫の世話をしたり 父親の子育ての相談相手となる状況は 母親に比べて少ない様子がうかがえた 男性は 進学や就職などの機会に親元を離れる選択をする人が女性に比べて多く 子育ての時期に祖父母の住まいとの距離が遠い人も少なくないと考えられる また 女性の場合 結婚や出産を経て以降も親と親密な関係を続ける人が多いのに比べて 男性ではそうしたコミュニケーションの面においても 親との関係が希薄なのかもしれない このように考えれば 父親にとっての子育て支援者を考える場合には 配偶者や祖父母以外の支援者の存在が 母親以上に重要なる場合もあるのではないだろうか 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 23

(2) 祖父母にとっての孫育ての意味今回の調査であらためて確認されたのは 孫の世話を引き受けたり 子育ての相談相手として 祖父母の多くが多様な形で娘や息子を支援している実態であった しかしながら 冒頭に述べたように 老後における子や孫との望ましいつき合い方をめぐる祖父母世代の価値観は時代とともに大きく変化しつつある 今回の調査でも 子育ては 祖父母を頼らず親自身で行うべきだ という考え方にそう思うと答えた人は 実際に孫の世話をした経験をもつ祖父母においても8 割近くを占めていた ただし 孫の世話をした経験をもつ祖父母では 孫の世話は大変だが 娘や息子のためには引き受けるべきだ という考え方にそう思うと答えた人も8 割前後を占めていた 両者を合わせると 祖父母の6 割近くは 孫の親が祖父母に子育てを頼ることと祖父母が孫の世話を引き受けることをめぐって 本来なら親自身で行うべきだと考えながらも 一方では娘や息子のためには引き受けるべきだとする ある種の複雑な意識を抱いていると考えられる これらの結果からは 孫の親が子育てを祖父母に頼ったり 祖父母が孫の世話を引き受ける場合に 祖父母が前述のような複雑な思いを抱く可能性があることを示唆している たとえば 祖父母に孫の世話より優先したいと考えている老後のライフデザインがあったり 生活費を増やすために働き続ける必要がある場合には 孫の世話を引き受けることを祖父母が負担に感じるケースもありうるだろう このようななか 若い祖父母では孫の親が子育てを祖父母に頼ることと 祖父母が孫の世話を引き受けることの双方を許容する考えをもつ人が年配の祖父母に比べて多い傾向がみられた ここには娘や息子のためであれば ときには孫の世話も引き受けて 成長する孫との交流を積極的に楽しんでいきたいとする思いも含まれているのではないだろうか ( 研究開発室きたむらあきこ ) 参考文献 北村安樹子,2015, 孫の教育 将来に対する祖父母の意識 孫がいる55~74 歳男女へのアンケート調査より Life Design Report (Winter 2015.1):21-32. 北村安樹子,2014, 祖父母による育児支援の行方 Life Design Report (Autumn 2014.10):70-74. 北村安樹子,2008, 子育て世代のワークライフバランスと祖父母力 祖父母による子育て支援の実態と祖父母の意識 Life Design Report (2008.5-6):16-27. 内閣府,2011, 高齢者の生活と意識第 7 回国際比較調査. 24 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部