不動産登記簿の表題部 表題部の落とし穴 基礎知識 司法書士法人 1 建物の所在地番と底地について 建物登記簿表題部の 所在 欄 建物登記簿表題部の 所在 欄にはその建物が建っている土地 ( 底地 ) の地番が記載されます ところが 底地の地番と建物の所在地 番が一致しないことがあります なぜ そのようなことが起こるのでしょうか たとえば 建物の表示登記をした後に 底地が分筆されたり合筆されたりして底地の地番に変更の生ずることがあります 建物登記簿表題部の 所在 欄 このとき建物の所在地番も同時に変更しておけば問題は生じないのですが 建物の所在地番については 放置される場合が多いのが現実です その結果 土地 建物を売買したり 担保権設定等を行う場合に ある土地の上に どのような建物が何戸あるか あるいはその土地上に建物が存在しないかを登記簿上調査するときには注意が必要です 取引の直接の対象となった土地の地番と同一の所在地番の建物の存否を調査するだけでは不十分です -1-
たとえば 土地登記簿表題部の 原因及びその日付 欄に合筆の記載のある土地上の建物について調査するときは その欄に記載されている合筆前のすべての土地の地番と同じ所在地番の建物の存否についても調査し あわせて建物図面で建物の位置関係 地積測量図で土地の位置関係も調査したうえで 売買や担保権設定の対象物件を特定する必要があります 合筆によって消滅した土地がさらに合筆地である可能性もありますから 閉鎖登記簿の閲覧も必要になります 土地登記簿表題部の 原因及びその日付 欄 たとえば 土地登記簿表題部の 原因及びその日付 欄に合筆の記載のある土地上の建物について調査するときは その欄に記載されている合筆前のすべての土地の地番と同じ所在地番の建物の存否についても調査します あわせて建物図面で建物の位置関係 地積測量図で土地の位置関係も調査したうえで 売買や担保権設定の対象物件を特定する必要があります 合筆によって消滅した土地がさらに合筆地である可能性もありますから 閉鎖登記簿の閲覧も必要になります このような調査が不十分なときには 土地を更地として売買したのに 合筆によって消滅した地番と同一所在地番の建物が現実には存在しないにもかかわらず 登記上残っているのが後日発見され その処理に困ることが起こったりします もっとも 建物が取り壊されて現実には存在しないという場合は その建物を表示する登記は空虚なもので法的には無効な登記が残っているにすぎないとも考えられます しかし その建物につき滅失登記を行うためには建物の所有権登記名義人の協力が必要となりますし 古い建物登記が残っていた場合には名義人が現在の底地所有者 -2-
からみて かなり以前の所有者名義だったり 相続が発生していたりして思わぬ手間と時間を要することがあります それのみならず 更地売買の売主には完全な所有権を買主に承継させるという意味で契約違反の問題が生じます また 担保権設定の際 建物が存在するのに 建物の所在地番と底地の地番が異な るから関係がないと思ってそれを看過すると 担保権実行により地上権が設定されたものとみなされ ( 民法 388 条 ) 担保価値の把握に問題が生じます したがって 後日の紛争を防止するため 取引の際に十分調査したうえでの処理が大切です 換地処分 底地の地番と建物の所在地番の不一致は 底地が土地区画整理法の換地処分による換地である場合にも起こります 換地処分というのは 土地区画整理工事完了後に 換地計画で区画整理前の土地 ( 従前の土地 ) に対して与えられるべきものとして指定された土地 ( 換地 ) について これを従前の土地とみなすというかたちでその権利関係を確定する処分です 換地処分によって 従前の土地に存した権利関係はそのまま換地に移行することになります 換地処分があった場合 従前の土地の登記簿の 原因及びその日付 欄に土地区画整理法の換地処分による換地である旨の記載がされます このとき同時に地番変更が行われるのが通常です 区画整理前から建物が存在している場合 その建物の所在地番は従前の土地の地番が記載されていますから 換地処分後は底地の地番と建物の所在地番は一致しないことになります -3-
建物の所在地番のみから底地の地番を調査する必要がある場合には 区画整理事務所に従前の土地と換地の地番について照会することが必要となることもあります 換地について分筆登記がされているような場合には 必ず 分筆前の土地の登記簿を閲覧する等の注意が必要です 2 表題部調査と登記済権利証について マンション等の敷地利用権が複数の共有になっている区分所有建物の登記簿の表題部は 建物全体を表示する部分 ( 一棟の建物の表示 ) と各区分建物を表示する部分 ( 専有部分の建物の表示 ) から構成されています そして それぞれに対応して建物の敷地権の目的となっている土地と敷地権の内容が表示されています この法改正前の区分所有建物につき売買 あるいは担保権設定等の際に調査すべき登記済証 ( 登記識別情報 ) につ 区分所有建物の登記簿の表題部 いては 法改正後の区分所有建物とは異なり 土地の登記済証 ( 登記識別情報 ) と建物の登記済証 ( 登記識別情報 ) が別個になっている場合があります 事前の登記簿調査の際 登記済証 ( 登記識別情報 ) 不備をさけるために 表題部の 敷地権の登記がなされた日付と甲区の所有地権取得登記の日付の前後関係に注意が必要です 土地区画整理に関し 従前の土地が数個で換地が1 個の場合 その換地につき 売買 あるいは担保権設定登記等を行うには 通常は土地区画整理法による換地処分によって所有権の登記をした旨の記載された登記済証 ( 登記識別情報 ) が必要になりますが この登記済証 ( 登記識別情報 ) がない場合には 従前の土地すべての登記済証 ( 登記識別情報 ) が必要です -4-
換地の登記簿の表題部 原因及びその日付 欄には 従前の土地が記載されていますから これを見落とさないことが必要です この場合 必ずその従前の土地の閉鎖登記簿を閲覧しなければ 登記済証 ( 登記識別情報 ) の確定ができないことになります さらに この換地につき分筆が行われ その分筆地が取引対象となっているときには その分筆地登記簿の表題部からは換地処分のあったことすら判明しませんし 甲区を見ても元になった換地の登記簿の甲区の最後の記載 ( 土地区画整理法の換地処分による所有権登記 ) が転記されるだけですので 本来の登記済証 ( 登記識別情報 ) の番号も判明しません したがって 必ず分筆前の登記簿の閲覧が必要です 3 自作農創設特別措置法関係の表示について 地目が農地の土地表題部の上部欄外に 自創法による買収登記嘱託書綴込帳 冊 丁 という表示がなされている場合があります これは 戦後のいわゆる農地改革により国が買収した農地につきなされた登記で 自作農創設特別措置法 ( 昭和 21 年 10 月 21 日法律第 43 号 ) に基づくものです 本来 登記簿の甲区欄に国 ( 農林省 ) の所有権登記を行うべきだったのが 短期間のうちにしかも大量の登記事務を処理する必要があったため 買収登記嘱託書綴込帳を指定するという簡略処理の記載によって甲区の登記がなされたものとしたものです その後 買収された農地は売渡されていきましたが 中には売渡がされないままになっているものがあるようです したがって あまり多くはないでしょうが 農地の土地表題部の欄外に右の記載がなされ しかも甲区欄には昭和 22 23 年頃の所有権登記しかないといったような場合には注意が必要です 甲区欄に記載された登記名義人は所有者ではなく国の所有と考えるのが相当です -5-