実証研究の目的 東日本大震災の被災地域である福島県浜通り地域において 花き生産を中心とした農業経営の収益性向上に貢献するため 夏秋トルコギキョウと低温性花きのカンパニュラ メジューム ( 以下カンパニュラ ) を効率的に組合せた周年生産体系の現地実証を行い その成果を普及させることを目的としています

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実証研究の目的 東日本大震災の被災地域である福島県浜通り地域において 花き生産を中心とした農業経営の収益性向上に貢献するため 夏秋トルコギキョウと低温性花きのカンパニュラ メジューム ( 以下カンパニュラ ) を効率的に組合せた周年生産体系の現地実証を行い その成果を普及させることを目的としています この実証成果は 福島県浜通り地域である南相馬市の実証現地において得られた結果に基づいていることから 成果の活用については気象条件等に十分留意するとともに各担当機関にご確認ください 実施課題における実証成果と担当機関 ( 研究担当者 ) トルコギキョウと低温性花きの組み合わせによる効率的周年栽培技術の確立 1. トルコギキョウの夏秋期における省力安定生産技術の確立赤色光の終夜電照による秋出しトルコギキョウの早期抑制宮城県農業 園芸総合研究所園芸栽培部 : 山口義昭効率的かん水によるトルコギキョウ管理作業の省力化福島県農業総合センター作物園芸部 花き科 : 佐久間光子 2. 低温性花きとの組み合わせによる効率的な栽培体系の確立カンパニュラの深夜 2 時間電照による無加温ハウスでの早春出荷福島県農業総合センター作物園芸部 花き科 : 佐久間光子カンパニュラの冬期無加温栽培における保温方法福島県農業総合センター浜地域研究所 : 三田村敏正カンパニュラの電照栽培における光の強さ福島県農業総合センター作物園芸部 花き科 : 佐久間光子カンパニュラの育苗における高温の影響福島県農業総合センター浜地域研究所 : 三田村敏正トルコギキョウとカンパニュラの組合せによる無加温パイプハウスの周年有効利用福島県農業総合センター作物園芸部 花き科 : 佐久間光子 3. 実栽培規模での現地実証 トルコギキョウ + カンパニュラの周年栽培経営モデル 東京農業大学 国際バイオビジネス学科 : 土田志郎

赤色光の終夜電照による秋出しトルコギキョウの早期抑制 後から発蕾まで 赤色光源を用いて終夜電照する 節数の増加により早期が抑制され 期が無電照よりも遅くなる 電照の効果には品種間差がみられる 電照 無電照 終夜電照 発蕾 赤色 LED ランプ 赤色光源 電球色電球形蛍光ランプ 2m 間隔 1.5m の高さで設置 同じ日で収穫期を分散できる 切り花長が大きく増加する品種例 品種名 抑制日数 ( 日 ) 切り花長増加 (cm) セレモニーライトヒ ンク 12 14 コレソ ライトヒ ンク 9 11 ロシ ーナ (3 型 ) フ ルー 8 13 コレソ ローサ 7 11 クレアタ フ ルヒ ンク 6 11 電照 無電照 品種 : コレソ ローサ 日を変えなくても 電照で期を分散させることができ 収穫労力の集中を軽減できる 電照効果の高い品種は 切り花品質の向上 ( 切り花長の増加 ) も期待できる 電照 無電照 お問い合わせ先 宮城県農業 園芸総合研究所園芸栽培部

効率的かん水によるトルコギキョウ管理作業の省力化 土壌水分センサーを活用した点滴かん水を行うことにより 手かん水と同等の切り花が収穫でき かん水作業時間を短縮することができる 土壌水分センサー 抑制作型におけるかん水作業時間 センサー利用かん水 慣行手かん水 0 200 400 600 800 時間 ( 分 /2.5a) 抑制作型における切り花調査 かん水条件 切り花長 (cm) 切り花重 (g/ 本 ) 節数 ( 節 ) 有効花蕾数 ( 個 / 本 ) センサー利用かん水 (pf 値 1.8( 発蕾以降 2.1) 以上で点滴かん水 ) 84.2 76.0 12 4.8 慣行手かん水 86.6 88.2 12 5.6 注 ) 品種 : パティオブルーピコティ :7 月 20 日収穫 :10 月 20 日 ~11 月 10 日 かん水作業時間の短縮により 他作型の収穫等の労働競合が軽減され 栽培面積の拡大が図れる お問い合わせ先 福島県農業総合センター作物園芸部 花き科

カンパニュラの深夜 2 時間電照による無加温ハウスでの早春出荷 品種はカンパニュラ メジューム チャンピオン シリーズが適する 電球型蛍光灯 ( もしくは赤色光 LED) を用い 深夜 23 時から翌 1 時までの 2 時間 から発蕾まで電照する 無加温パイプハウスに 10~12 月すると 最低気温 0 を目安とした温度管理で 2~4 月に出荷できる 電照 (23:00~1:00) 発蕾まで 収穫 冬期間のパイプハウスを有効利用できる 春の需要期 ( 卒業式 春彼岸 送別会 ひな祭りなど ) に出荷が可能となる お問い合わせ先 福島県農業総合センター作物園芸部 花き科

温度 ( ) 規格別収量割合 (%) カンパニュラの冬期無加温栽培における保温方法 冬期間の夜間トンネル被覆資材として 農業用ビニールや農業用 PO フィルムを使用すると 無加温でカンパニュラを栽培することができる 8 6 4 2 0-2 -4 ハウス内温度の推移 農ビ PO 不織布無処理 内カーテン + トンネル被覆 100% 80% 60% 40% 20% 0% 0 農ビ農 PO 不織布無処理 2L L M S 被覆期間 :12 月下旬 ~3 月中旬 保温資材の違いによる規格別収量割合 品種 : チャンピオン スカイブルー 暖房を行わずに冬期間の栽培が可能となる 不織布を用いた場合や無被覆の場合よりも 2L 規格の割合が多くなる お問い合わせ先 福島県農業総合センター浜地域研究所

カンパニュラの電照栽培における光の強さ 電照光源からの距離が離れると 光の強さは弱まり 収穫時期が遅れ 切り花の長さは短く 節数が多くなる 電球形蛍光灯 ( 電球色 23W ) を使用した場合 照度が約 30lx で促進効果が得られ 一定規格の切り花が収穫できる 11 月下旬における切り花品質 ( チャンピオン スカイブルー ) 光の強さ PPFD 照度 (μmol m-2 s-1) (lx) 切り花長 (cm) 茎径 ( mm ) 節数 ( 節 ) 有効花蕾数 ( 個 / 本 ) 切り花重 (g) 平均収穫日 1 53 65.8 8.1 21.2 15.8 61.7 4 月 1 日 0.5 27 63.4 8.0 22.5 16.2 62.1 4 月 3 日 0.1 5 54.8 8.7 25.4 15.3 63.4 4 月 10 日 蛍光灯 30lX 付近 設置一例 120 cm 3m 蛍光灯 均一な生育 切り花が得られ 適切な光源設置数により 電気使用量のコスト低減が図れる お問い合わせ先 福島県農業総合センター作物園芸部花き科

発芽率 (%) カンパニュラの育苗における高温の影響 カンパニュラの育苗を 人工気象器を用い一定温度で行った場合 発芽率は 20 と 25 では高くなるが 30 では低下する 100 80 60 40 20 30 25 20 0 スカイブルーピンクホワイトパープル 図 1 温度の違いがカンパニュラの発芽に及ぼす影響 品種はスカイブルー ピンク ホワイト パープルいずれもチャンピオンシリーズ 8 月や 9 月に播種する場合 育苗ハウス内が高温にならないよう 遮熱対策を行うことで 発芽率の低下を防ぐことができる お問い合わせ先 福島県農業総合センター浜地域研究所

トルコギキョウとカンパニュラの組合せによる無加温パイプハウスの周年有効利用 福島県浜通り地方では トルコギキョウを 2 月中旬に 本葉 3 対展開の大苗をすると 豊富な日照条件を活用して 保温のみの無加温で 6 月下旬から出荷でき 従来の年内作型より在圃期間が 3 ヶ月短縮して 秋冬期に別品目の栽培が可能となる カンパニュラを 9 月にして電照栽培すると 無加温で 11~12 月に出荷できる 慣行冬越し作型栽培期間 温度 ( ) 35 30 25 20 15 10 5 0-5 2 月作型の栽培期間 旬平均最高気温 旬平均最低気温 旬積算日照時間 160 140 120 100 80 60 40 20 0 旬積算日照時間 ( 時間 ) 組合せ 1 組合せ 2 組合せ 3 組合せ 4 作型 トルコギキョウ 6 ~7 月出荷 カンパニュラ 11 ~12 月出荷 トルコギキョウ 8 月出荷 カンパニュラ 2~ 3 月出荷 トルコギキョウ 9 月出荷 カンパニュラ 3~ 4 月出荷 トルコギキョウ 10 月出荷 カンパニュラ 4~ 5 月出荷 旬別平均値 ( アメダス相馬 ) トルコギキョウとカンパニュラを1つのパイプハウスで栽培する年間有効利用が可能となり この組合せによってトルコギキョウの6~10 月出荷およびカンパニュラの11~12 月 2~4 月出荷体系ができる トルコギキョウ+カンパニュラの組合せ周年栽培イメージ図 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 お問い合わせ先 福島県農業総合センター作物園芸部 花き科 浜地域研究所

トルコギキョウ + カンパニュラの周年栽培経営モデル 経営モデルの概要 想定した経営モデルは 表 1 のとおり 花き栽培はハウス 26.6a を使用し 原則として家族労働力 2 名で栽培管理を行うことが前提となる 表 1 トルコギキョウ + カンパニュラの経営モデル ( 一般的担い手経営 ) 1 家族労働力 : 経営主とその妻 ( 最高で1 旬 140 時間労働可とする (1 1. 労働力 旬 9 日 経営主 1 日 8 時間 ) 21 旬最高で20 時間 (4 時間 5 日 ) 雇用労働を導入できるとする (4 時 間で3.2 千円支払う ) 2. 経営耕地 1ハウス用敷地 30a 既存設置ハウスを26.6aとする 2 水田 100a(1.82 万円 /10aで貸付) 3. 機械 施設 1ビニールパイプハウス2.5a 10 棟 1.6a 1 棟 2 作業所 3トラクタ1 台 4 軽トラ1 台 4. 販売先 1 花は農協経由で東京都中央卸売市場へ出荷 注 : 主な機械 施設の減価償却費は 原則として現地試験協力経営の H 経営のデータを使用 した ただし パイプハウスと作業所の購入額については H 経営の場合 通常よりも頑健 な構造で投資額が大きくなっているため 福島県のデータを参考にした また 販売価格 単収 種 肥料 資材費等は H 経営のデータを使用した 期待される所得増大効果 夏秋トルコギキョウ栽培にカンパニュラ電照栽培を組み合わせることで 表 2 のシミュレーション結果のように 経営全体の所得や 1 時間当たり所得が増大する また ハウス野菜との組み合わせも可能 表 2 経営モデルを用いたトルコギキョウ + カンパニュラ栽培の導入効果の推計 項目シミュレーション1 シミュレーション2 シミュレーション3 トルコギキョウ+カントルコギキョウ+カン選択可能作物条件トルコギキョウのみパニュラパニュラ+シュンギク 所得が最大となる作物の組み合わせと面積 お問い合わせ先 東京農業大学 国際バイオビジネス学科 トルコギキョウ 20a トルコギキョウ 20a トルコギキョウ 20a カンパニュラ 20a カンパニュラ 7.5a シュンギク 12.5a 1 売上 ( 販売単価 出荷量 ) ( 千円 ) 4,826 8,135 7,762 2 種苗 肥料 農薬 資材 燃料 出荷費 ( 千円 ) 2,274 4,251 3,794 3 建物 ( ハウス含む ) 機械費 ( 千円 ) 827 827 827 4 所得 (1-2-3) ( 千円 ) 1,725 3,057 3,141 5 雇用労働時間 ( 時間 ) 2 9 17 6 家族労働時間 ( 時間 ) 1,836 3,005 3,175 71 時間当たり所得 (4/6) ( 円 ) 940 1,017 989 注 : 表 1に示した経営条件で整数計画モデルを構築し 夏秋トルコギキョウ栽培にカンパニュラ電照栽培を組み合わせた場合の所得増大効果をシミュレーションした結果である ( ハウス26.6aを利用した場合の年間花き栽培所得 ) (2017 年 9 月現在 )