第 2 章 海外大学等との国際交流 第 1 節海外大学訪問と協定締結 学術交流協定締結大学に所属する学生に限定して交換留学を推進 支援する 文部省 短期留学推進制度 に基づき 本学でも 短期留学受入れプログラム (NUPACE) の開始とともに 学術交流協定締結を推進し とくに実際の交換留学にとって大きな要素となる授業料相互不徴収協定の締結が不可欠であった このような背景もあり 留学生センターの短期留学部門 教育交流部門は 1998 年の日本国立大学協会 米国大学協会の日米大学間交流協定推進プロジェクト 1999-2000 年の日仏学生交流プロジェクト ( プログラム8) に積極的に参加したほか 戦略的に海外大学を訪問した結果 米国イリノイ大学アーバナ シャンペーン校 ニューヨーク大学 英国 ブリストル大学 フランス ストラスブール大学 グルノーブル大学 中国 北京大学 オーストラリア シドニー大学 など 海外有力大学との全学間学術交流協定の締結の中心的役割を果たした これらの活動が礎となって 2002 年 6 月に協定大学の学長 副学長を招聘して国際フォーラムを開催し 参加した24 大学 機関と共同して国際学術コンソーシアム21(Academic Consortium 21-AC21) を創立した 留学生センターも学内運営委員会に加わり その創立に貢献した 2003~2006 年の取り組みの成果は 前回の外部評価報告書の通りであるが 留学生センター教員が 総長裁量経費等の予算支援を受けて有力大学を訪問し オーストラリア国立大学 オーストラリア モナシュ大学 韓国ソウル国立大学 高麗大学との全学間協定締結を実現した 2007-2012 年はさらに活発な取り組みとなった 図 I-2-1の通り 本学の学術交流協定締結数は 2006 年度末時点での222 大学 機関 ( このうち全学間協定 59) であったが 2012 年度末時点では 328 大学 機関 ( 全学間 106) に達しており 全体で1.5 倍 そして全学間協定の数は倍増に近い 授業料相互不徴収協定を含む学生交流協定は 118 大学 ( 全学間 50) から178 大学 ( 全学間 94) となっている 2006 年 4 月から本部運営組織として国際企画室が設立され 同時に 名古屋大学における大学間交流協定等の取扱い 要項が改正され 国際企画室が全学間協定の窓口業務を中心的に担うこととされた しかし 必ずしも人員体制が十分でなく 学生交流協定交渉の経験蓄積も少ないことから 取扱い要項の中に 学生交流協定関係については留学生センターへ照会することが盛り込まれたため 留学生センターが否応なく関係することになっている
図 I-2-1 名古屋大学の学術交流協定 授業料不徴収協定の締結数と短期留学プログラム (NUPACE) 受入れ大学数 ( 累積 ) の推移 また 2008 年 4 月から2009 年 3 月の間 短期留学部門教授が 総長からの指名を受けて 総長補佐 ( 国際交流 留学生交流担当 ) および国際交流室長と担当することになり 全学の協定案件に関わることなった そして2009 年 3 月末にその任を終えた後も 様々に相談を受けており 一部は直接の交渉に関わる事例も少なくない さらに 2010 年 1 月 ~3 月にかけて グローバル30 予算に基づき これまで取り組んでいなかった地域の新たな海外協定大学開拓のために 短期留学部門および海外留学室の教職員が シンガポール 香港 (1 月 ) とヨーロッパ (2-3 月 ) の有力大学を訪問した この結果 訪問した 香港大学 香港中文大学 スウェーデン ウプサラ大学 ポーランド ワルシャワ大学 スイス ジュネーブ大学 イタリア ボローニャ大学 スペイン バルセロナ大学との全学間協定の締結交渉が進み 香港科技大学とは工学部 工学研究科部局間協定の締結に至った また 2011 年 11 月には 自動車工学サマープログラムのPRと協定大学開拓の目的で 同プログラム責任者の石田教授と短期留学部門教授が米国西海岸の大学を訪問し カリフォルニア大学バークリー校と同大学デービス校との全学間協定を締結した ( ただし 残念ながらこれら両大学とは 授業料相互不徴収協定の交渉には進んでいない ) 表 Ⅰ-2-1に2007 年以降に留学生センター ( 主に短期留学部門 ) が実質的に交渉して 協定締結に至った大学を年度毎に列挙した 2007 年度から2012 年度分までに 26の全学間協定締結に貢献したこととなり この間増加した全学間協定 47 大学の55% に匹敵し 有力な大学が多数含まれている
表 I-2-1 2007 年以降に留学生センターが新規の協定締結に関わった大学一覧 年度 大学 全学協定 / 部局間協定 ( ) 内窓口部局 基本協定 授業料相互不徴収協定 2007 デンマーク コペンハーゲン大学 全学 ( 国際企画室 ) 学生交流協定締結交渉 米国 シカゴ大学 * 全学 ( 国際企画室 ) 2008 米国 ミネソタ大学 * 全学 ( 国際企画室 ) 英国 ロンドン大学東洋アフリカ学院 全学 ( 国際企画室 ) (SOAS) ブラジル サンパウロ大学 全学 ( 国際企画室 ) 米国 ケンタッキー大学 全学 ( 国際企画室 ) 工学研究科部局間 全学間 カナダ トロント大学 全学 ( 国際企画室 ) FacultyofArtsandScience * 台湾 国立清華大学 全学 ( 国際企画室 ) 韓国 延世大学校 全学 ( 国際企画室 ) インド タタ基礎科学研究所 全学 ( 国際企画室 ) 2009 米国 カリフォルニア大学ロサンゼル 全学 ( 国際企画室 ) 学生交流協定締結交渉 ス校 * フランス パリ東大学 全学 ( 国際企画室 ) フランス パリ ディドロ大学 ( パリ 全学 ( 国際企画室 ) 多元数理部局間 全学間 第 7 大学 ) 2010 香港科技大学 工学部 * 工学研究科 部局間協定 香港中文大学 全学 ( 国際企画室 ) 香港大学 * 全学 ( 国際企画室 ) ポーランド ワルシャワ大学 全学 ( 国際企画室 ) スイス ジュネーブ大学 全学 ( 国際企画室 ) スペイン バルセロナ大学 全学 ( 国際企画室 ) スウェーデン ウプサラ大学 全学 ( 国際企画室 ) 米国 ノースカロライナ大学チャペル 全学 ( 国際企画室 ) ヒル校 * フランス ストラスブール大学 全学 ( 国際企画室 ) ストラスブール大学群から統合 2011 スウェーデン王立工科大学 全学 ( 国際企画室 ) イタリア ボローニャ大学 全学 ( 国際企画室 ) 2012 米国 カリフォルニア大学 バークリー 全学 ( 国際企画室 ) 大学院生交流を含む 校 * 米国 カリフォルニア大学デービス校 全学 ( 国際企画室 ) * フランス リヨン高等師範大学 全学 ( 国際企画室 ) 理学研究科 情報科学研究 科 部局間協定 全学間 2013 ドイツ アーヘン工科大学 全学 ( 国際企画室 ) 理学研究科部局間 全学間 台湾国立交通大学 工学研究科 部局間協定 フランス グルノーブル大学 全学 ( 国際企画室 ) グルノーブル大学群から統合 フランス人間科学研究財団 全学 ( 国際企画室 ) *Times 大学ランキング 2012 Top 100 位以内 Top101-200 位 備考 表 Ⅰ-2-2は 名古屋大学が締結している協定の中で 留学生センターが直接交渉して締結している大学の一覧を示す 部局間協定が2 大学含まれるが 49 大学を数える この中で Times2012 大学ランキングで100 位以内は13 大学 101-200 以内も14 大学を数える 名古屋大学が2010 年までのTimes Rankingでは80 位代だったが 2011 年以降は調査会社と評価指標が変わり 201-225 位に落ち込んでしまった 従って 200 位以内に入らない大学を決して軽んじてはならない 分野によって また評価指
標によって ランキングが大きく変わるからである いずれにせよ名古屋大学と肩を並べる あるいはより有力な大学との継続的な学生交換を推進することが 本学学生にとって有力な海外留学先が増えることになる また 有力大学との全学的 組織的交流が 本学の国際交流戦略としても重要であり 留学生センターがこの分野でも全学的に大きく貢献している 世界展開力強化事業申請の際にも プロジェクトに関与する大学と学術交流協定を締結し 授業料相互不徴収協定を含む学生交流協定に基づいて学生交換できることが前提条件になっているため 有力大学との全学間交流協定は ここでも大きく貢献している 表 I-2-2 留学生センターが協定窓口または交渉担当となっている協定大学一覧 国大学協定窓口部局 基本協定 授業料相互不徴収協定 締結年 1 米国 ニューヨーク大学 * 全学 ( 留センター ) 2001 2 セント オラフ大学 全学 ( 留センター ) 2000 3 南イリノイ大学カーボンデール校 全学 ( 留センター ) 2000 4 シンシナティ大学 全学 ( 留センター ) 2000 5 イリノイ大学アーバナ シャンペーン校 * 全学 ( 工学 ) 2000 6 シカゴ大学 * 全学 ( 国際企画室 ) 2007 7 ミネソタ大学 * 全学 ( 国際企画室 ) 2007 8 ケンタッキー大学 全学 ( 国際企画室 ) 2008 9 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 * 全学 ( 国際企画室 ) 2009 10 ノースカロライナ大学チャペルヒル校 * 全学 ( 国際企画室 ) 2010 11 カリフォルニア大学バークリー校 * 全学 ( 国際企画室 ) 2011 12 カリフォルニア大学デービス校 * 全学 ( 国際企画室 ) 2011 13 カナダ ヨーク大学 全学 ( 留センター ) 2006 14 トロント大学 Faculty of Arts and 全学 ( 国際企画室 ) 2008 Science * 15 英国 シェフィールド大学 全学 ( 工学 ) 1998 ( 学生交流協定 ) 16 ブリストル大学 * 全学 ( 工学 ) 2000 17 マンチェスター大学 * 部局 ( 理学 ) 1999 18 ロンドン大学東洋アフリカ学院 (SOAS) 全学 ( 国際企画室 ) 2010 19 フランス ストラスブール大学 全学 ( 留センター ) 2000 大学群統合 20 グルノーブル大学 全学 ( 留センター ) 2000 大学群統合 21 リヨン第 3 大学 全学 ( 留センター ) 2006 22 フランス パリ東大学 全学 ( 国際企画室 ) 2009 23 フランス パリ ディドロ大学 ( パリ第 7 大学 ) 全学 ( 国際企画室 ) 2009 24 フランス リヨン高等師範大学 全学 ( 国際企画室 ) 2012 25 ドイツ ケムニッツ工科大学 全学 ( 工学 ) 2000 26 フライブルク大学 全学 ( 留センター ) 2001 27 ミュンヘン工科大学 全学 ( 理学 ) 2003 28 ブラウンシュバイク工科大学 全学 ( 工学 ) 2006 29 アーヘン工科大学 全学 ( 国際企画室 ) 2013 30 デンマークコペンハーゲン大学 全学 ( 国際企画室 ) 2007 31 スウェーデ スウェーデン ウプサラ大学 全学 ( 国際企画室 ) 2010 32 ン スウェーデン王立工科大学 全学 ( 国際企画室 ) 2011
33 ポーランドワルシャワ大学 全学 ( 国際企画室 ) 2010 34 スイス ジュネーブ大学 全学 ( 国際企画室 ) 2010 35 スペイン バルセロナ大学 全学 ( 国際企画室 ) 2010 36 イタリア ボローニャ大学 全学 ( 国際企画室 ) 2011 37 オーストラリア シドニー大学 * 全学 ( 工学 ) 2000 ( 学生交流協定 ) 38 モナシュ大学 * 全学 ( 工学 ) 2005 ( 学生交流協定 ) 39 オーストラリア国立大学 * 全学 ( 留センター ) 2006 40 ブラジル ブラジル サンパウロ大学 全学 ( 国際企画室 ) 2008 41 中国 北京大学 * 全学 ( 工学 ) 2001 42 吉林大学 全学 ( 国際言文 ) 2002 43 香港 香港科技大学 工学部 * 工学研究科 2011 44 香港中文大学 全学 ( 国際企画室 ) 2011 45 香港大学 * 全学 ( 国際企画室 ) 2011 46 韓国 ソウル国立大学 * 全学 ( 留センター ) 2006 47 高麗大学 全学 ( 留センター ) 2006 48 韓国 慶煕大学 全学 ( 国際企画室 ) 2007 49 韓国 延世大学校 全学 ( 国際企画室 ) 2008 *Times 大学ランキング 2012 Top 100 位以内 Top101-200 位 第 2 節 国際学術コンソーシアム 1996 年に発足した短期留学受入れプログラム (NUPACE) への学術交流協定大学からの学生受入れを拡大するために 学術交流協定締結を積極的に進める中で 有力大学との連携が深まり 松尾稔総長 ( 当時 ) の発案で 2002 年 6 月に協定大学の学長 副学長を招聘して国際フォーラムを開催し 参加した24 大学 機関と共同して国際学術コンソーシアム21(Academic Consortium 21-AC21) を創設した 国際学術コンソーシアム創設に 留学生センターが大きく関与した経緯については 留学生センター 外部評価報告書 (1998-2002) に報告している 国際学術コンソーシアム (AC21) の準備運営委員会の段階から 関係大学間の学生交流に貢献すべく留学生センターが参画し 2002 年のAC21 発足後に発足したAC21 推進室の担当コーディネータに 元 留学生センター 短期留学部門教員が就任し (2005 年離職 ) 他の構成員にも留学生センター教員が複数加わった 2003 年から2006 年の間は 2 年に一度の国際フォーラムとして 2004 年オーストラリア シドニー大学 2006 年英国 ウォーリック大学で開催され 2005 年からは2 年に一度の世界学生フォーラムを 2005 年名古屋大学 2007 年フランス ボンゼショセ工科大学にて開催している この間のAC21に関連する留学生センターの活動については 留学生センター 外部評価報告書 (2003-2006) に報告している そして それまでの活動実績の評価により 平野眞一総長 ( 当時 ) からの指名を受けて 留学生センター 短期留学部門教授が 2006 年 9 月から国際学術コンソーシアム (AC21) 推進室長 (AC21 全体の事務局長も兼ねる ) を担当した (2009 年 3 月まで ) 就任は 2006 年 7 月のウォーリック大学での国際フォーラム (AC21 総会も含まれる ) の終了直後であったが 国際フォーラムにAC21メンバーの8 大学しか集まらず 次期国際フォーラム予定大学の参加もないなど 容易でない事態であった 従って 就任の直後から 主要なメンバー大学を訪問して AC21の進め方を協議し 意見を反映させた運営に努力した 2006 年 12 月のヨーロッパ大学訪問時には
ウォーリック大学で国際フォーラム開催の苦労をねぎらいAC21 運営改善の意志を伝え フランス ボンゼショセ工科大学での2007 年国際学生フォーラムの準備状況を確認し ドイツ ケムニッツ大学との懇談では 2009 年国際学生フォーラムの開催が了解された 続いて 情報発信力を高め 1 年に2 回 Newsletter( 英文 ) を発行して AC21メンバーとの情報共有化を図り 学内向けには AC21 通信として AC21 推進室の活動を紹介し 学内関係者の理解を深める努力を進めた ノースカロライナ州立大学は 2008 年の国際フォーラムの予定大学であったが ウォーリック大学での国際フォーラムに参加せず その後の連絡も途絶えた状態であったため 2007 年 3 月に同大学国際担当副学長を訪問して懇談したところ 考え直す様子がうかがわれた ほとんど1 年あまりしか準備期間がないにも関わらず 改めて総長からの手紙によって開催を要請し 承諾を受けた タイ チュラロンコン大学もAC21 離脱を示唆していたが 上層部の交代時期をとらえて2008 年 6 月に同大学を訪問し 副学長らと懇談したところ 一転して積極的な姿勢に変わり 2011 年の世界学生フォーラムを引き受けても良いとの返事まで受けた 国際フォーラムや世界学生フォーラムなどのイベントだけでなく 複数のメンバー大学が協力して行う共同研究へのAC21ファンドの創設 (1 件 50 万円 年間 2 件 ) 自動車産業に関連づけた産学官連携活動のworkshopの試み 名古屋大学で行われたAC21 運営委員会のメンバーによる国際教育シンポジウムの開催 環境学研究科の日中学術フォーラムに併設されたミニ 国際学生フォーラムの開催 そして2008 年の国際フォーラム ( ノースカロライナ州立大学 ) に向けた学内研究 教育プロジェクトへの予算支援等を積極的に進めて行った この中には 工学部自動車工学サマープログラムの立ち上げ準備のための米国大学訪問も含まれ その後の同プログラムの発展に大きく貢献した この間 名古屋大学と関係の深い協定大学にメンバー参加を呼びかける試みも行い フランス ストラスブール大学 オーストラリア アデレード大学が参加の意志を伝えてきた また 米国ミネソタ大学も参加の可能性を示唆した 2008 年 7 月にノースカロライナ州立大学で開催された国際フォーラムおよびAC21 総会には 10 数の AC21メンバー大学が参加し 日本から文部科学省審議官と国際交流関係者 ミシガン大学菊池昇教授をはじめ 名古屋大学の要請で多数のプレゼンテーションを提供した ポスター発表にも 本学の学内支援予算採択担当者が積極的に発表し 研究 教育プロジェクトの交流が行われた 直後に行われたAC21 総会では フランス ストラスブール大学 オーストラリア アデレード大学の加入が承認され 2009 年ドイツ ケムニッツ大学での国際学生フォーラム 2010 年上海大学での国際フォーラムの準備状況が報告され 2011 年のタイ チュラロンコン大学での国際学生フォーラムの開催予定および2012 年アデレード大学での国際フォーラム計画も披露された 以上の経緯により 留学生センター 短期留学部門教授のAC21 推進室長就任の後 やや心配な状況にあった国際学術コンソーシアムを大きく立て直し 発展する体制に変革することができたと思われる 2009 年 4 月から総長体制が大きく変わったことにより 留学生センター 短期留学部門教授は同年 3 月末でAC21 推進室長の任を終えた