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平成24年7月x日

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

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卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

無顆粒球症

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4. 発表内容 : [ 研究の背景 ] 1 型糖尿病 ( 注 1) は 主に 免疫系の細胞 (T 細胞 ) が膵臓の β 細胞 ( インスリンを産生する細胞 ) に対して免疫応答を起こすことによって発症します 特定の HLA 遺伝子型を持つと 1 型糖尿病の発症率が高くなることが 日本人 欧米人 ア

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平成24年7月x日

目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

ゲノム編集技術を用いて 拒絶反応のリスクが少ない ips 細胞を作製 ポイント 細胞移植の際 レシピエントとドナー注 1) 注 2) の HLA 型が一致しないと 移植したドナー細胞はレシピエントのキラー T 細胞注 3) からの攻撃を受ける また ドナー細胞の HLA が消失していると ドナー細胞

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論文の内容の要旨

平成 28 年 2 月 1 日 膠芽腫に対する新たな治療法の開発 ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変 T 細胞受容体 T 細胞療法 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 脳神経外科学の夏目敦至 ( なつめあつし ) 准教授 及び東北大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 下瀬川徹

九州大学学術情報リポジトリ Kyushu University Institutional Repository Neuronal major histocompatibility complex class I molecules are implicated in the generation

2 肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma 以後 HCC) は癌による死亡原因の第 3 位であり 有効な抗癌剤がないため治癒が困難な癌の一つである これまで HCC の発症原因はほとんど が C 型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎 肝硬変であり それについで B 型肝炎ウイルス

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年


( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

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制御性 T 細胞が大腸がんの進行に関与していた! 腸内細菌のコントロールによる大腸がん治療に期待 研究成果のポイント 免疫細胞の一種である制御性 T 細胞 1 が大腸がんに対する免疫を弱めることを解明 逆に 大腸がんの周辺に存在する FOXP3 2 を弱発現 3 する細胞群は がん免疫を促進すること

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

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パーキンソン病治療ガイドライン2002

小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

平成 2 3 年 2 月 9 日 科学技術振興機構 (JST) Tel: ( 広報ポータル部 ) 慶應義塾大学 Tel: ( 医学部庶務課 ) 腸における炎症を抑える新しいメカニズムを発見 - 炎症性腸疾患の新たな治療法開発に期待 - JST 課題解決型基

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

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するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

第6号-2/8)最前線(大矢)

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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研究成果報告書

研究の背景 1 細菌 ウイルス 寄生虫などの病原体が人体に侵入し感染すると 血液中を流れている炎症性単球注と呼ばれる免疫細胞が血管壁を通過し 感染局所に集積します ( 図 1) 炎症性単球は そこで病原体を貪食するマクロファ 1 ージ注と呼ばれる細胞に分化して感染から体を守る重要な働きをしています

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

1. 免疫学概論 免疫とは何か 異物 ( 病原体 ) による侵略を防ぐ生体固有の防御機構 免疫系 = 防衛省 炎症 = 部隊の派遣から撤収まで 免疫系の特徴 ⅰ) 自己と非自己とを識別する ⅱ) 侵入因子間の差異を認識する ( 特異的反応 ) ⅲ) 侵入因子を記憶し 再侵入に対してより強い反応を起こ

白血病治療の最前線

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研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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令和元年 10 月 18 日 がん免疫療法時の最適なステロイド剤投与により生存率アップへ! 名古屋大学大学院医学系研究科分子細胞免疫学 ( 国立がん研究センター研究所腫瘍免疫研究分野分野長兼任 ) の西川博嘉教授 杉山大介特任助教らの研究グループは ステロイド剤が免疫関連有害事象 1 に関連するよう

第一章自然免疫活性化物質による T 細胞機能の修飾に関する検討自然免疫は 感染の初期段階において重要な防御機構である 自然免疫を担当する細胞は パターン認識受容体 (Pattern Recognition Receptors:PRRs) を介して PAMPs の特異的な構造を検知する 機能性食品は

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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解禁時間 ( テレビ ラジオ WEB): 平成 20 年 9 月 9 日 ( 火 ) 午前 6 時 ( 新聞 ) : 平成 20 年 9 月 9 日 ( 火 ) 付朝刊 平成 20 年 9 月 2 日 報道機関各位 仙台市青葉区星陵町 4-1 東北大学加齢医学研究所研究推進委員会電話 022-717-8442 ( 庶務係 ) 東京都千代田区四番町 5 番地 3 科学技術振興機構 (JST) 電話 03-5214-8404( 広報課 ) キラー T 細胞のはたらきを調節する受容体分子を発見 移植免疫, 癌免疫, 感染免疫などにおいて中心的な役割を担うキラー T 細胞のはたらきの強さを, 免疫細胞上にある受容体の一種である PIR( ピア )-B というタンパク質が調節していることを, 東北大学加齢医学研究所の遠藤章太助教, 高井俊行教授 ( 遺伝子導入研究分野 ) の研究グループが突き止めた.PIR-B が欠損したマウスでは皮膚移植片の生着率が低下して拒絶され易くなる反面, 癌免疫が増強され, 癌細胞の増殖が抑えられた. この受容体のはたらきを自在にコントロールする方法が見つかれば, 皮膚移植, 臓器移植, 骨髄移植, 癌, 感染症の患者にとって朗報となろう. この研究は,JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の一環として行われ, この成果は米国科学アカデミー紀要 2008 年 9 月号での論文掲載に先立ち 9 月第二週に電子版で公開される つきましては 成果の内容に関する説明会を下記のとおり行いますので お知らせいたします. 記 日時平成 20 年 9 月 4 日 ( 木 ) 午後 4 時から午後 5 時 ( 予定 ) 場所東北大学加齢医学研究所星陵プロジェクト総合研究棟 1 階セミナー室 1 980-8575 仙台市青葉区星陵町 4-1 以上 < 本件問い合わせ先 > 高井俊行 ( たかいとしゆき ) 東北大学加齢医学研究所遺伝子導入研究分野教授 980-8575 仙台市青葉区星陵町 4-1 TEL: 022-717-8501 E-mail: tostakai@idac.tohoku.ac.jp

移植医療の成功のためには, シクロスポリンや FK506 などの強力な免疫抑制剤を使用することでレシピエントの免疫活性を抑え, 拒絶反応をコントロールすることが重要である. また急性骨髄性白血病の有力な治療法である骨髄移植では, レシピエントの免疫作用を弱めてから行われるため, ドナー側の細胞がレシピエント組織を攻撃する移植片対宿主病 (GVHD) に代表される不適合反応をうまく抑えることが成否のポイントとなっている. さらに癌患者では, 癌に対する免疫応答がごく弱いものであるために異常自己細胞である癌細胞を効果的に除去できないことが, 治療において大きな問題となっている. これら移植された組織, 臓器, レシピエント側の組織, 癌細胞などを攻撃して破壊してしまう重要な免疫系細胞がキラー T リンパ球 ( キラー T 細胞 ) である. キラー T 細胞は, その抗原受容体と共刺激分子である CD8 を利用して標的細胞上の抗原ペプチド MHC クラス I 分子複合体を認識し, 攻撃する ( 図 1). 高井教授らはキラー T 細胞の活性を制御する免疫細胞上の受容体を調べ,T 細胞抗原受容体や CD8 と同じく MHC クラス I 分子を認識している PIR-B がキラー T 細胞の制御を行うことを突き止めた.PIR-B を欠損したマウスのキラー T 細胞は正常マウスに比べて活性化しており, 皮膚移植片の拒絶力が強まり, また癌細胞の定着を効果的に抑制した ( 図 2). この分子機構は MHC クラス I 分子を巡る分子どうしの競合関係であると思われ, 実際に CD8 が MHC クラス I 分子に結合するのを PIR-B が立体障害により阻害していることを示唆するデータが得られたため ( 図 3),PIR-B がキラー T 細胞の攻撃力の強さを調節していると結論付けた ( 図 4). < 今後期待できる成果 > PIR-B の MHC クラス I 分子結合活性のある部分を薬剤として投与するなど,PIR-B によるキラー T 細胞抑制効果をうまく利用すれば, 皮膚移植, 臓器移植, 骨髄移植の生着率を上昇させることができる. また逆に PIR-B の MHC クラス I 分子結合活性を阻害する薬剤が開発できれば, 癌免疫を増強させることができ, またウィルス感染などへの抵抗力の向上が図れるなど, 広範囲に応用が期待される. また, 慢性リウマチ関節炎など, キラー T 細胞の活性が亢進している自己免疫疾患の治療にも応用可能と考えられる. ******** < 本研究テーマが含まれる科学技術振興機構の研究領域等は以下の通りである > 研究領域 :JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) 免疫難病 感染症等の先進医療技術 研究総括 : 岸本忠三大阪大学教授 研究テーマ : IgL 受容体の理解に基づく免疫難病の克服 ( 研究代表者 : 高井俊行 ) 研究期間 : 平成 13 年 - 平成 18 年 < 本研究テーマに対する研究支援は上記の他, 以下の各所から得られた > 1.21 世紀 COE プログラム シグナル伝達病 ( 拠点リーダー : 菅村和夫東北大学教授 ) 平成 15 19 年度 2. グローバル COE プログラム Network Medicine ( 拠点リーダー : 岡芳知東北大学教授 ) 平成 20 年度 3. 文部科学省科学研究費補助金 : 基盤研究 (A)( 代表者 : 高井俊行 ) < 論文名 > Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America Regulation of cytotoxic T lymphocyte triggering by PIR-B on dendritic cells ( 日本語訳 : 樹状細胞上の PIR-B による細胞傷害性 T リンパ球の活性化の調節 ) by Shota Endo, Yuzuru Sakamoto, Eiji Kobayashi, Akira Nakamura, and Toshiyuki Takai

< 用語解説 > PIR( ピア, ペア型イムノグロブリン様受容体 ) PIR は, 免疫細胞上にある受容体の一種で,PIR には免疫を強めると考えられる PIR-A と, 逆に弱める PIR-B があり, いずれも主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) クラス I 分子を認識する.PIR-A のはたらきはよく分かっていないが,PIR-B は多様な局面で抑制的な役割を担うことが分かってきている. MHC クラス I 分子 (major histocompatibility complex 主要組織適合遺伝子複合体 ) MHC 分子は, 細胞内で抗原が分解されてできたペプチドを分子の先端に結合して細胞表面に発現する. T 細胞は, 抗原を直接認識することができず, 細胞表面に発現する抗原ペプチドと MHC 分子を複合体として認識する. 白血球型,HLA 型と呼ばれるものとほぼ同義. レシピエント他の人から提供された臓器 組織 血液を移植, 輸血してもらう人のこと. T 細胞胸腺に由来する免疫細胞で, 樹状細胞から提示を受けた異物を T 細胞抗原受容体と共刺激分子を使って認識し, 抗原に対抗するための免疫反応を起こさせ, あるいは制御する細胞である. ヘルパー T 細胞, キラー T 細胞, レギュラトリー T 細胞が知られている. ヘルパー T 細胞は MHC クラス II 分子上の抗原ペプチドを認識して細菌や寄生虫感染に対抗するのに対し, キラー T 細胞は MHC クラス I 分子上の抗原ペプチドを認識し, ウィルスや細胞内寄生性細菌に感染した細胞の排除, 移植片の攻撃, 癌細胞の攻撃を行う. 共刺激分子 T 細胞の抗原認識の際に, 主刺激となる T 細胞抗原受容体からの刺激に対して, 協調して作用するシグナルを伝える分子. 共刺激がないと T 細胞は活性化できずに不応答になることが知られており, 免疫応答には不可欠であることが知られる. 代表的な T 細胞の共刺激分子には,CD4,CD8,CD28 などがある. CD8 キラー T 細胞がもつ共刺激分子で,MHC クラス I 分子を認識することでキラー T 細胞の抗原受容体が抗原ペプチドと MHC クラス I 分子複合体を認識することを助ける.CD8 が無いマウスはキラー T 細胞そのものが発達しない. ヘルパー T 細胞が MHC クラス II 分子を認識する際には CD4 という共刺激分子を使う. 樹状細胞異物である抗原を細胞内に取り込んで加工し,MHC クラス II 分子や MHC クラス I 分子上に抗原ペプチドを載せ, ヘルパー T 細胞とキラー T 細胞に提示することで免疫応答を開始させる, 組織にくまなく分布する重要な細胞. この細胞表面上に制御性 MHC クラス I 受容体である PIR-B が発現する.

1 MHC I T CD8

2 PIR-B T B6 Pirb / P = 0.0367 100 80 60 40 20 0 B6 Pirb / P = 0.0510 0 10 20 30 40 50 % 100 80 60 40 20 0 B6 DC Pirb / DC PBS 0 20 40 60 80

3 PIR-B CD8 MHC I MHC I α2 α1 PIR-B CD8αα α3 β 2 m PIR-B CD8αα 100 Subtracted RU 75 50 25 0 0 50 100 150 rcd8αα (µm)

4 PIR-B T CD8 PIR-B T MHC I CD8 PIR-B PIR-B

< 会場案内図 > 東北大学加齢医学研究所星陵プロジェクト総合研究棟 1 階セミナー室 980-8575 仙台市青葉区星陵町 4-1 TEL:022-717-8501 詳細は次の加齢医学研究所アクセスマップを参照ください http://www.idac.tohoku.ac.jp/ja/visitors/index.html