Ⅳ 統計にみる民の健康状態 民の健康状態 - 循環器疾患 ( )- 127
民の健康状態 - 循環器疾患 ( )- 調査研究部 Health Status in Chiba - Circulatory Disease(Cerebrovascular Disease and Aortic dissection) - Dept.Survey and Research キーワード : 循環器疾患 年齢調整死亡率 標準化死亡比 保健所管内 市町村 はじめに当財団調査研究部では 県民の健康状態に関する基礎資料を提供する目的で 主な死因別死亡の実態について保健所管内および市町村を単位とする統計を定期的に報告している 第 1 回目は 死因の第 1 位である 悪性新生物 をとりあげた 第 2 回目は 循環器疾患のうち と をとりあげる は昭和 37 年をピーク 1) に内の死亡数第 1 位であったが その後年々減少をつづけ 悪性新生物 心疾患 肺炎に続き死亡数第 4 位となっている しかし 平成 23 年の全死亡者に占める割合は約 9.7% 2) で依然と高く 予防活動の促進は急務である また はにおける死因別死亡数では平成 22 年以降 10 位以内に入っており 全国に比べると死亡数に占める割合が高いという特徴を持つ 今回は ( 全体 ) およびについて 2007 年 ~ 2011 年の死亡の状況について取りまとめた 本資料が 県及び県内各市町村においての実態把握や 今後の健康施策の策定等に役立てる基礎資料として活用されることを願う 方法と用語の定義 1. 集計対象と人口 1) 資料の出典死因別死亡数は人口動態統計 ( 厚生労働省 ) 3) および衛生統計年報 4) の値を用いた 人口は 全国値については統計局発行 推計人口年齢 (5 歳階級 ) 月別人口- 総人口 日本人人口 5) 県および市町村については総合企画部統計課 年齢別 町丁字別人口調査における登録人口 6) を用いた 2) 対象年 2007 年 ( 平成 19 年 ) から 2011 年 ( 平成 23 年 ) の 5 年間とした 3) 対象疾患循環器疾患の分類として 死因簡単分類に記載されているのうち およびとした 2. 集計方法 1) 死亡数対象年の和 (5 年間の死亡数 ) とした 2) 粗死亡率 ( 人口 10 万対 ) 対象年の死亡数を 同期間中の人口で除し 人口 10 万人当たりに換算した 3) 年齢調整死亡率 ( 人口 10 万対 ) 昭和 60 年日本人モデル人口を標準人口とし 以下の式により値を算出した Σ{ } ( 地域の年齢階級別死亡率 ) ( 標準人口におけるその年齢階級の人口 ) Σ( 標準人口における年齢階級別人口 ) 10 万 このように標準人口を使用して死亡率を求めることにより 年齢不詳の死亡数は考慮されないが 人口の年齢構成の相違に基づく死亡率の差を除外 ( 年齢構成の違いを調整 ) することができる 4) 標準化死亡比 (SMR:Standardized Mortality Ratio) 全体を標準地域とし 標準地域での年齢階級別死亡率を 対象地域の年齢階級別の人口に乗じて その地域の死亡数を求め 実際に観察した死亡数 ( 年齢不詳を除く ) と この期待数との比に を乗じた値を標準化死亡比として示した ( ある期間にその地域で観察された死亡数の総和 ) ( の年齢階級別死亡率 ) Σ{ ( その地域の年齢階級別人口 )} 127
調査研究ジャーナール 2013 Vol.2 No.2 当該地域の死亡が標準地域より大きければ 比は より大きくなり 小さければ より小さくなる 5)75 歳未満年齢調整死亡率 75 歳以上の死亡を除き壮年期の死亡の状況を把握するために 3) に示した年齢調整死亡率の計算において 死亡数 人口ともに 75 歳未満までの値を用いて算出した 6) 市町村合併 保健所管内変更の扱い平成 24 年度末の市町村および保健所管内に基づき集計をした 対象年内に合併のあった市町村については 合併前の市町村の値の和を各年における当該市町村の値とし 保健所管内については平成 24 年度末の管内区分に基づき 過去の年次を再集計した 結果 1. 年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率の間には 高い地域 低い地域の大きな相違は見られなかったが についてはこの 2 つの死亡率の差が非常に小さいことがわかった これは 75 歳未満であっても全体の死亡率に近いことを示しており による死亡は年齢に依存しないことを示唆している 保健所別の年齢調整死亡率についてみると 総数ではは夷隅 は香取 は海匝 は印旛が最も高く は長生 は柏 は松戸 は海匝が最も低かった ( 表 ) 性では最も高かった地区は各死因とも総数と同じであったが 最も低い地区は は船橋 は柏 は習志野 は夷隅と異なっていた ( 表 ) 性においても の死亡率が高い地域は総数と同じであったが は市原が最も高く 最も低い地域はは長生 は千葉 は松戸 は海匝とが総数とは異なっていた ( 表 ) 2. 標準化死亡比 1) 保健所管内別保健所管内別におよびその関係疾患との性別標準化死亡比を図 ( 図 1 ~ 図 16) に示した 保健所管内別にみると 習志野保健所は性のが高い 市川保健所はのと性のが高い 松戸保健所は性のと性の大動 脈瘤及び解離が高い 野田保健所は性のが非常に高く のが高い 印旛保健所はの 性のが高い 香取保健所はのと 性のが高い 中でも性のは非常に高い 海匝保健所はのが非常に高く が高い 山武保健所はの が高い 長生保健所はのが高い 夷隅保健所はのと性のが高い 安房保健所は性のが高い 君津保健所は性の脳動脈瘤及び解離とが高い 市原保健所はのと性のが高い 千葉保健所はのが高い 船橋保健所は性のがわずかに高い 柏保健所は性の 性のが高いという特徴がみられた 2) 市町村別市町村別の状況を地図 ( 図 17 ~ 図 21) に示した 標準化死亡比を全体でみてみると 総数では旭市 銚子市 東庄町 匝瑳市周辺と富里市 八街市 山武市の県北東部周辺が高く 県北西部周辺が低い の高い地域はばらつきがあり 我孫子市 栄町 神崎町の北部 銚子市と山武市 富里市 酒々井町 九十九里町 大網白里市の県北西部周辺といすみ市 御宿町が高く 県北西部より西沿岸部にかけて低い は香取市 旭市 東庄町 多古町 八街市 富里市 山武市 芝山町 横芝光町の県北西部と富津市から鴨川市 勝浦市にかけて高く 県北西部周辺が低い は東庄町 銚子市 旭市 匝瑳市と東金市 八街市 富里町の県北西部周辺と長柄町が高く 県北西部周辺が低い は八千代市 四街道市 印西市 栄町 成田市 神崎町 富里市 多古町の県北部周辺と富津市が高く 県東部沿岸部が低いという特徴がみられた 考察厚生労働省が発表している平成 22 年の都道府県別年齢調整死亡率 7) のの順位を見ると は性 26 位 性 21 位 は性 24 位 性 19 位 は性 17 位 性 21 位であり 全国でみるととも中位からやや上位に位置し順位の差が小さいことが明らかになった およびその関連疾患との各市町村別 保健所管内別に年齢調整 128
死亡率 標準化死亡比を求めた結果 全体で標準化死亡比についてを基準に見ると高い市町村で約 1.6 倍 低い市町村で約 0.8 倍と大きな地域格差が生じた また 海匝 香取 山武地域は ともに多い地域であるがは内房地域に多いなど やによる死亡には 地域差 性差が存在することが明らかになった は 高血圧 糖尿病 脂質異常症 ( 高脂血症 ) などの生活習慣病と深く関わりがあり 生活習慣病が自覚症状のないままに進行した結果 発病に至り 最悪の場合 死につながったり 重い後遺症のため介護が必要になったりと QOL(Quality of Life) を著しく低下させる疾患の一つである 発症の危険因子として年齢 性 高血圧 脂質異常 糖尿病 心房細動 飲食 喫煙などの多くの要因が知られており これらの疾患を予防するためにも日頃より健康診断を受診し 自分の体の状態を把握するとともに 生活習慣の改善等を実行に移すことが非常に重要である 平成 20 年度より生活習慣病の要因となるメタボリックシンドロームに着目した特定健康診査 特定保健指導が実施されている しかし 内の平成 22 年度特定健康診査受診率 8) は 平均 35% 最も高かった市町村で 49% 最も低かった市町村で 19% と 30% もの地域差があった まずは 県民に広くこの健診の意義を周知徹底するとともに いかに受診率を市町村全体で向上させるかが課題である 次に は 急性期に一刻も早く適切な治療を行うか否かで予後に大きな影響を与えることが明らかとなっており 症状に応じた適切な医療機能のある救急医療機関に一刻も早く搬送することが重要である しかしながら 全市町村にこういった万全のインフラを整備するのは非常に難しい 今回の結果でも市町村によって標準化死亡比の差が 大きく表れたことがわかったが この差はこのような一連の医療インフラ整備の偏りが一つの要因となっているのではないかと推測できる 本報告では 標準化死亡比について図示し 地域特性を視覚的に提示した 保健所管内別 市町村別の標準化死亡比には地域特性がみられており 各地域に応じた効率的な健康施策の必要性を示唆している 平成 25 年 4 月発効となった 健康ちば 21( 第 2 次 ) においても 生活習慣病の発症予防と重症化防止 として循環器疾患がとりあげられている については その発症により寝たきりや認知症の主要な原因となっていることから 健康寿命の延伸する上でその発症の予防は介護予防の観点からも極めて重要とされている 本報告では に関して死亡の状況を過去 5 年間について取りまとめたが この疾患について 経年変化並びにその地域特性の変化を追うことはできていない 今後は データを整備し 過去に遡り経年変化を追うことのできる統計の作成を目指したい 引用文献 1) : 平成 21 年人口動態統計の概況 ( 確定数 ) 主要死因別死亡数及び死亡率 ( 人口 10 万対 ) 2) : 平成 23 年人口動態統計の概況 ( 確定数 ) 主要死因別死亡数及び死亡率 ( 人口 10 万対 ) 3) 厚生労働省 : 人口動態調査 死亡数, 性 年齢 (5 歳階級 ) 死因 ( 死因簡単分類 ) 別 (H.19 ~ H.23) 4) : 衛生統計年報 (H.19 ~ H.23) 5) 総務庁統計局 : 推計人口年齢 (5 歳階級 ),, 月別人口 - 総人口, 日本人人口 (H.19 ~ H.23 10 月 1 日 ) 6) 総合企画部統計課 : 年齢別 町丁字別人口調査における登録人口 (H.19 ~ H.23) 7) 厚生労働省 : 平成 22 年都道府県別年齢調整死亡率 8) : 特定健診 特定保健指導のデータ分析結果平成 22 年度集計結果保健所市町村別受診率 129
調査研究ジャーナール 2013 Vol.2 No.2 総 数 性 性 保健所 市町村 保健所 市町村 保健所 市町村 高値 低値 高値 低値 高値 低値 表 の年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率の高い地域及び低い地域 年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率 年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率 年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率 年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率 年齢調整死亡率 75 歳未満年齢調整死亡率 最高 海匝 海匝 夷隅 夷隅 香取 香取 海匝 海匝 印旛 香取 最低 習志野 習志野 長生 長生 柏 習志野 松戸 長生 海匝 長生 1 旭市 勝浦市 勝浦市 勝浦市 東庄町 多古町 富里市 芝山町 多古町 鋸南町 2 東庄町 御宿町 酒々井町 横芝光町 多古町 御宿町 旭市 神崎町 鋸南町 多古町 3 富里市 芝山町 横芝光町 いすみ市 芝山町 芝山町 銚子市 栄町 栄町 東庄町 4 勝浦市 東庄町 富里市 銚子市 御宿町 東庄町 八街市 八街市 成田市 成田市 5 匝瑳市 山武市 いすみ市 袖ヶ浦市 山武市 山武市 東庄町 銚子市 富里市 山武市 5 流山市 流山市 白井市 白井市 白子町 白子町 流山市 長南町 銚子市 南房総市 4 八千代市 白井市 白子町 長柄町 八千代市 八千代市 浦安市 一宮町 大網白里市 一宮町 3 印西市 白子町 鋸南町 鋸南町 長南町 睦沢町 八千代市 多古町 長生村 睦沢町 2 白井市 睦沢町 長柄町 芝山町 一宮町 長南町 印西市 白井市 長柄町 長生村 1 長南町 長南町 長南町 長南町 睦沢町 酒々井町 白井市 睦沢町 睦沢町 長柄町 最高 海匝 海匝 夷隅 夷隅 香取 香取 海匝 山武 印旛 香取 最低 柏 柏 船橋 船橋 柏 柏 習志野 長生 夷隅 長生 1 旭市 勝浦市 勝浦市 勝浦市 多古町 多古町 芝山町 芝山町 富里市 多古町 2 勝浦市 芝山町 東庄町 東庄町 御宿町 東庄町 八街市 神崎町 多古町 東庄町 3 東庄町 東庄町 いすみ市 横芝光町 勝浦市 御宿町 旭市 長柄町 成田市 横芝光町 4 芝山町 御宿町 銚子市 銚子市 東庄町 勝浦市 富里市 九十九里町 白井市 成田市 5 八街市 旭市 横芝光町 酒々井町 山武市 山武市 神崎町 成田市 栄町 鋸南町 5 浦安市 流山市 鴨川市 芝山町 佐倉市 睦沢町 我孫子市 印西市 大多喜町 神崎町 4 八千代市 印西市 芝山町 長南町 九十九里町 八千代市 印西市 一宮町 長柄町 一宮町睦沢町 3 長南町 白子町 長南町 大多喜町 睦沢町 長南町 浦安市 白井市 長生村 長生村 2 印西市 長南町 御宿町 御宿町 神崎町 白子町 八千代市 多古町 白子町 白子町 1 白井市 睦沢町 大多喜町 鋸南町 白子町 酒々井町 白井市 睦沢町 睦沢町 長柄町 最高 海匝 海匝 夷隅 夷隅 香取 海匝 海匝 海匝 市原 夷隅 最低 習志野 習志野 長生 長生 千葉 習志野 松戸 市川 海匝 長生 1 富里市 大多喜町 大多喜町 大多喜町 芝山町 芝山町 富里市 栄町 神崎町 鋸南町 2 旭市 八街市 酒々井町 勝浦市 東庄町 長柄町 旭市 富津市 鋸南町 神崎町 3 銚子市 栄町 御宿町 九十九里町 長柄町 御宿町 銚子市 長生村 栄町 栄町 4 匝瑳市 山武市 勝浦市 御宿町 横芝光町 八街市 長生村 八街市 芝山町 芝山町 5 大多喜町 匝瑳市 富里市 匝瑳市 鴨川市 匝瑳市 東庄町 大網白里市 白子町 いすみ市 5 一宮町八千代市白井市白井市印西市南房総市館山市白井市大網白里市 4 睦沢町 南房総市 南房総市 芝山町 八千代市 八千代市 睦沢町 九十九里町 匝瑳市 3 八千代市 睦沢町 長生村 長生村 睦沢町 一宮町 印西市 芝山町 睦沢町 2 白井市 白井市 長柄町 長柄町 一宮町 睦沢町 白井市 睦沢町 九十九里町 1 長南町 長南町 長南町 長南町 長南町 長南町 芝山町 長柄町 長柄町 鴨川市南房総市東庄町九十九里町一宮町睦沢町長生村長柄町長南町御宿町 130
保健所管内別 の標準化死亡比 図 1 習志野保健所 130 図 5 印旛保健所 155 135 115 75 図 2 市川保健所 図 6 香取保健所 170 150 130 70 50 図 3 松戸保健所 図 7 海匝保健所 135 125 115 75 図 4 野田保健所 150 130 70 50 図 8 山武保健所 131
調査研究ジャーナール 2013 Vol.2 No.2 保健所管内別 の標準化死亡比 70 60 145 125 65 図 9 長生保健所 図 13 市原保健所 150 130 70 50 125 115 75 65 図 10 夷隅保健所 図 14 千葉市保健所 70 60 75 65 図 11 安房保健所 図 15 船橋市保健所 140 115 60 75 65 図 12 君津保健所 図 16 柏市保健所 132
総数 図17 市町村別 標準化死亡比 図18 市町村別 標準化死亡比 総数 総数 図19 市町村別 標準化死亡比 133
調査研究ジャーナール 2013 Vol.2 No.2 総数 図20 市町村別 標準化死亡比 総数 図21 市町村別 標準化死亡比 134